JPWO2002077239A1 - Hcv結合性ポリペプチド - Google Patents
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Abstract
生体へのHCVの感染を阻害、抑制又は低減させるための手段を提供すること。配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列における第1位〜第33位の部分又は該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を少なくとも含有した、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチド及びその誘導体;該ポリペプチドを含有したポリペプチド;ポリペプチドを有効成分として含有した、HCV感染防御剤;該ポリペプチドを有効成分として含有した慢性C型肝炎治療剤又は予防剤;該ポリペプチドをコードしたポリヌクレオチド;該ポリペプチドを、細胞へのHCVの結合を妨げるに十分な治療上有効量、投与対象物に投与する、慢性C型肝炎治療又は予防方法;並びに該HCV感染防御剤、該治療剤又は該予防剤を製造するための該ポリペプチドの使用。
Description
技術分野
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染を阻害、抑制又は低減させることが可能な技術に関する。具体的には、本発明は、HCVとの結合活性、特に、HCVのE2(エンベロープ2)タンパク質との結合活性を有するHCV結合性ポリペプチド;HCVの感染を阻害、抑制又は低減させることが可能なHCVの感染防御剤;慢性C型肝炎の治療又は予防に用いうる、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤;該ポリペプチドをコードしたポリヌクレオチド;慢性C型肝炎の治療又は予防方法;並びに該慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を製造するための該ポリペプチドの使用などに関する。
背景技術
現在、HCVが主要な原因となり年間の死者が三万人を超える肝がんの発症を抑制するために、インターフェロン以外の抗HCV薬の開発が嘱望されている。
これに関して、本発明者らは、近年、HCVとヒト肝細胞由来培養細胞とを用いるHCV感染系において、HCV初乳中に豊富に含まれ、鉄のトランスポーターファミリーの一員であるラクトフェリンが、ヒト肝細胞由来培養細胞へのHCVの感染を防御することを見出している[Ikeda et al,Biochem Biophys Res Commun.,245(2),549−553(1998);Ikeda et al,Virus Res.,66(1),51−63(2000)]。また、本発明者らは、実際に、慢性C型肝炎患者にウシラクトフェリンを経口投与し、効果を認めた症例を報告している[Tanaka et al,Jpn.J.Cancer Res.,90(4):367−371(1999)]。
また、最近、本発明者らは、前記HCV感染系を用いて、細胞へのHCVの吸着とラクトフェリンとの相互作用の時間的関係を解析した。その結果、本発明者らは、ラクトフェリンとHCVとを混合し、直ちに細胞に添加した場合でもHCV感染が完全に阻害されることを見出し、それにより、HCVとラクトフェリンとの相互作用は、HCVの細胞への吸着よりも早く起こることを明らかにした[第58回日本癌学会総会要旨集、145頁 No.223,(1999)]。
さらに、本発明者らは、HCVのどのタンパク質がラクトフェリンとの相互作用に関与しているのかを解析した結果、ラクトフェリンはHCVのE2タンパク質に直接結合することを明らかにした[第58回日本癌学会総会要旨集、145頁,No.223,(1999)]。
以上のように、ラクトフェリンとHCVのE2タンパク質との相互作用が、HCVの感染防御に重要であることが示されている。しかしながら、約700アミノ酸からなるラクトフェリン中のどの限定領域がHCVのE2タンパク質との結合に必須の領域であるかについては、未だ十分に明らかにされていないのが現状である。
発明の開示
本発明は、生体へのHCVの感染を阻害、抑制又は低減させるための手段を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、HCVとの結合活性を有するHCV結合性ポリペプチド及びその応用を提供することを目的とする。さらに詳しくは、本発明は、HCVの感染を阻害、抑制又は低減させることが可能であり、かつ生体への取り込みにより適したサイズである、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するHCV結合性ポリペプチドを提供することを目的とする。また、本発明は、HCVの感染を阻害、抑制又は低減させることが可能な、HCVの感染防御剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、慢性C型肝炎の治療又は予防に有用である、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、本発明のポリペプチドを効率よく供給することを可能にしうる、ポリヌクレオチドを提供することを目的とする。また、本発明は、慢性C型肝炎の症状の緩和、予防などを可能にしうる、慢性C型肝炎の治療又は予防方法を提供することを目的とする。
即ち本発明の要旨は、
〔1〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列における第1位〜第33位の部分又は該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を少なくとも含有してなる、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチド、
〔2〕 (I)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長、又は
(II)前記(I)記載のアミノ酸配列の一部からなる配列であって、かつ該配列が、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分若しくは該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を含有するものである配列、
を少なくとも含有してなる、前記〔1〕記載のHCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチド、
〔3〕 配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位の部分を少なくとも含有してなる、前記〔1〕又は〔2〕記載のポリペプチド、
〔4〕 配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位の部分を少なくとも含有してなる、前記〔1〕又は〔2〕記載のポリペプチド、
〔5〕 下記(a)〜(x):
(a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(b)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(c)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(d)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(e)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(f)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(g)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、
(h)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位、
(i)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(j)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(k)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(l)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(m)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(n)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(o)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、
(p)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位、
(q)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(r)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(s)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(t)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(u)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(v)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(w)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、及び
(x)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなる、前記〔1〕又は〔2〕記載のポリペプチド、
〔6〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも71%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有するポリペプチド、
〔7〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列の全長からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有するポリペプチド、
〔8〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の一部からなる配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列の全長からなり、かつ下記(i)又は(i’):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(i’)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
の特性と、
下記(ii):
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性とを有するポリペプチド、
〔9〕 置換位置が、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第4位、第5位、第7位、第8位、第9位、第10位、第11位、第13位、第16位、第17位、第20位、第21位、第24位、第27位、第28位、第31位、第37位、第54位、第56位、第58位、第59位、第63位、第67位、第68位、第71位、第72位、第74位、第77位、第78位、第81位、第89位、第92位及び第93位から選ばれるものである、前記〔7〕又は〔8〕記載のポリペプチド、
〔10〕 前記置換位置において置換されるアミノ酸が、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の当該置換位置に存在するアミノ酸の中から選ばれるものである、前記〔9〕記載のポリペプチド、
〔11〕 細胞へのHCVの感染に対する阻害能を有する、前記〔1〕〜〔10〕いずれか1項に記載のポリペプチド、
〔12〕 前記〔1〕〜〔11〕いずれか1項に記載のポリペプチドを含有してなるポリペプチド(ただしジーンバンクアクセッション番号:X52941、M63502及びAJ010930のそれぞれに示されたアミノ酸配列からなるポリペプチドを除く)、
〔13〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有してなる、HCVの感染防御剤、
〔14〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有してなる、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤、
〔15〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドをコードしてなるポリヌクレオチド、
〔16〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドを、細胞へのHCVの結合を妨げるに十分な治療上有効量、投与対象物に投与することを特徴とする、慢性C型肝炎の治療又は予防方法、並びに
〔17〕 HCVの感染防御剤、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を製造するための前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドの使用、
に関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の1つの態様としては、細胞へのHCVの吸着を阻害、抑制又は低減させることが可能であり、かつ生体への取り込みにより適したサイズである、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するラクトフェリン由来ポリペプチドが挙げられる。
具体的には、本発明のポリペプチドは、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列における第1位〜第33位の部分又は該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を少なくとも含有することに1つの大きな特徴がある。
したがって、本発明のポリペプチドは、HCV E2タンパク質との結合活性を呈するという優れた性質を発現する。
さらに、本発明のポリペプチドによれば、全長ラクトフェリンよりも短い長さであるにもかかわらず、HCVの感染を実際に阻害、抑制又は低減することができるという優れた性質を発現する。
また、本発明のポリペプチドは、国際公開第01/72322号パンフレット及び国際公開第01/47545号パンフレットのそれぞれに開示された、HCVへの結合活性を示しうる特定の配列からなるラクトフェリン由来部分ポリペプチドの配列〔GRRRRSVQWC AVSQPEATKC FQWQRNMRKV RGPPVSCIKR DSPIQCI(配列番号:9);DPDPNCVDRP VEGYLAVAVV RRSDTSLTWN SVKGKKSCHT AVD(配列番号:10)〕とは、異なるものであるにもかかわらず、HCV E2タンパク質との結合活性を呈し、さらには、HCVの感染を阻害、抑制又は低減することができるという驚くべき性質を発現する。
本明細書において、「ラクトフェリン」のアミノ酸配列を表記する場合、シグナル配列がプロセッシングされた成熟ラクトフェリンタンパク質のアミノ酸配列を指すものとする。すなわち、ラクトフェリンのアミノ酸配列の「610番目〜652番目」といった表記をする場合、当該アミノ酸配列は、ラクトフェリンの成熟タンパク質のN末端のアミノ酸を1番目のアミノ酸とした場合の数を示す。
また、以下、本明細書において、「ヒトラクトフェリン(X−Y)」の表記は、特に断りのない限り、ジーンバンクアクセッション番号:X52941に記載のヒトラクトフェリンのアミノ酸配列におけるX番目〜Y番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドを示す。さらに、本明細書において、「ウシラクトフェリン(X−Y)」の表記は、特に断りのない限り、ジーンバンクアクセッション番号:M63502に記載のウシラクトフェリンのアミノ酸配列におけるX番目〜Y番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドを示す。さらに、本明細書において、「ウマラクトフェリン(X−Y)」の表記は、特に断りのない限り、ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930に記載のウシラクトフェリンのアミノ酸配列におけるX番目〜Y番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドを示す。
前述のように、近年、ラクトフェリンが、HCVの感染防御に効果を有することが示されている[Ikeda et al,Biochem Biophys Res Commun.,245(2),549−553(1998);Ikeda et al,Virus Res.,66(1),51−63(2000);Tanaka et al,Jpn.J.Cancer Res.90(4),367−371(1999)]。また両者の相互作用に関して、ラクトフェリンはHCVのE2タンパク質に結合することが明らかにされている(第58回日本癌学会総会要旨集、145頁No.223,1999)。しかしながら、ラクトフェリン中のどの限定領域がHCVのE2タンパク質との結合に必須であるかについては明らかにされていなかった。
本発明者らは、ラクトフェリン中のどの領域がHCVのE2タンパク質に結合活性を有するのか、またその結合の強さはどの程度であるのかにつき鋭意検討を進めた。
すなわち、本発明は、ヒト、ウシおよびウマラクトフェリンそれぞれのカルボキシル末端93アミノ酸部分からなるポリペプチド、具体的には、下記3つの配列:
▲1▼配列番号:2に示されるヒトラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分、
ヒトラクトフェリンのアミノ酸配列(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)における第600番目〜第692番目の部分(配列番号:2)、
▲2▼配列番号:4に示されるウシラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分、
ウシラクトフェリンのアミノ酸配列(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)における第599番目〜第691番目の部分(配列番号:4)、
並びに
▲3▼配列番号:6に示されるウマラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分、
ウマラクトフェリンのアミノ酸配列(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)における第599番目〜第691番目の部分(配列番号:6)、が、いずれも、HCVのE2タンパク質との結合活性を有し、93アミノ酸部分の中にHCVのE2タンパク質との結合領域が存在するという本発明者らの驚くべき知見に基づく。しかも、これらのポリペプチドによれば、その結合の強さは、HCVの本来の受容体であるCD81ラージエクストラループへのHCVの結合活性と比較して2倍程度強いという、予想外の効果を発揮する。
さらに、本発明は、ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸のうちのどの限定領域がHCVのE2タンパク質との結合に必須であるのかについて、前記93アミノ酸部分(配列番号:2)をさらに限定した何種類かのポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合活性を調べた結果、ヒトラクトフェリンの600番目〜632番目(配列番号:2の第1位〜第33位)の33アミノ酸部分、若しくはヒトラクトフェリンの610番目〜652番目(配列番号:2の第11位〜第53位)の43アミノ酸部分を有していれば、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するという本発明者らの驚くべき知見に基づく。また、本発明は、ヒトラクトフェリンの第635番目(配列番号:2の第36位)のフェニルアラニンが保持されていることが、HCVのE2タンパク質への結合にとって重要であるという本発明者らの驚くべき知見に基づく。
また、これら3つの配列(配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6)間のアミノ酸の同一性は、それぞれ74.2%(ヒト−ウシ)および71%(ヒト−ウマ)であったことから、この程度の配列同一性を保持する程度にアミノ酸残基が置換されていても、HCVのE2タンパク質への結合活性を有することが明らかとなった。本発明は、以上のような知見に基づき完成するに至ったものである。
従って、本発明によれば、具体的には、(I)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長(93アミノ酸)、又は
(II)前記(I)記載のアミノ酸配列の一部からなる配列であって、かつ該配列が、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分若しくは該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を含有するものである配列、
を少なくとも含有した、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドが提供される。
ここで、本発明のポリペプチドの長さは、前記(I)を含有する場合、少なくとも93アミノ酸残基、好ましくは、93〜500残基、より好ましくは、93〜300残基、さらに好ましくは、93〜200残基、よりさらに好ましくは、93〜100残基であるか、あるいは配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長そのものであることが望ましい。
また、前記(II)における「アミノ酸配列の一部」に関して、前記アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分を含有する場合、本発明のポリペプチドの長さは、少なくとも33アミノ酸残基、好ましくは、33〜92残基、より好ましくは、33〜80残基、さらに好ましくは、33〜60残基、よりさらに好ましくは、33〜50残基であることが望ましく、第11位〜第53位の部分を含有する場合、本発明のポリペプチドの長さは、少なくとも43アミノ酸残基、好ましくは、43〜92残基、より好ましくは、43〜80残基、さらに好ましくは、43〜60残基、よりさらに好ましくは、43〜50残基であることが望ましい。
なお、前記(II)においては、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分と該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分との両方を含有するもの、すなわち、第1位〜第53位を含有するものも包含される。
ここで、本発明においては、ジーンバンクアクセッション番号:X52941、M63502及びAJ010930のそれぞれに示されたアミノ酸配列の全長からなるポリペプチドは除外される。
好ましくは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列の全長、
又は
該アミノ酸配列の一部からなる配列であって、かつ該配列が、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分若しくは該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を含有するものである配列、
を少なくとも含有した、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドが挙げられ、具体的には、配列番号:2に示されたアミノ酸配列の全長又はその一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第1位〜第33位の部分を少なくとも含有するポリペプチド、又は配列番号:2に示されたアミノ酸配列の全長又はその一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第11位〜第53位の部分を少なくとも含有するポリペプチドが挙げられる。より具体的には、
▲1▼配列番号:2に示されたアミノ酸配列の全長からなるポリペプチド、
▲2▼配列番号:2に示されたアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第1位〜第33位の部分を少なくとも含有するポリペプチド、
▲3▼配列番号:2に示されたアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第11位〜第53位の部分を少なくとも含有するポリペプチド、
▲4▼配列番号:2において、第1位〜第33位の部分若しくは第11位〜第53位の部分が少なくとも保存されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
などが挙げられる。
前記において、「アミノ酸配列の一部からなるポリペプチド」とは、
▲1▼配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位の部分、若しくは第11位〜第53位の部分からなるポリペプチド、又は、
▲2▼当該部分を含み、かつこの位置より配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上、N末端方向及び/又はC末端方向に伸長したポリペプチド、すなわち、前記アミノ酸配列のN末端及び/又はC末端にアミノ酸残基が付加されたポリペプチド
を意味する。
ここで、前記▲2▼において、前記アミノ酸配列のN末端及び/又はC末端におけるアミノ酸残基の付加数は、ポリペプチドが、前記結合活性を呈し、HCVの感染を阻害、抑制又は低減させる能力を発揮する範囲であればよい。また、付加されるアミノ酸残基は、天然のアミノ酸配列、具体的には、配列番号:2、4及び6からなる群より選択されたアミノ酸配列における該当部分と同じアミノ酸残基であればよく、ポリペプチドの前記結合活性及びHCV感染を阻害、抑制又は低減させる能力を発揮させるに適した物理化学的性質を有するアミノ酸であればよい。さらにかかるアミノ酸残基は、生体への親和性を付与しうる種々の修飾残基であってもよい。
これら本発明のポリペプチドの具体例としては、例えば、
(a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチド、
(b)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位からなるポリペプチド、
(d)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位からなるポリペプチド、
(e)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチド、〔配列番号:7に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド〕
(f)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位からなるポリペプチド、
(g)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位からなるポリペプチド、
(h)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
(i)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチド、
(j)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位からなるポリペプチド、
(k)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位からなるポリペプチド、
(l)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位からなるポリペプチド、
(m)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチド、〔配列番号:8に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド〕
(n)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位からなるポリペプチド、
(o)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
(p)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
(q)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチド、
(r)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位からなるポリペプチド、
(s)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位からなるポリペプチド、
(t)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位からなるポリペプチド、
(u)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチド、
(v)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位からなるポリペプチド、
(w)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位からなるポリペプチド、
(x)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
などが例示される。
これらのポリペプチドは、化学的合成法又は遺伝子工学的手法のいずれでも作製されうる。すなわち、慣用の化学合成法により、ペプチド合成機などを用いて前記ポリペプチドを合成することもできれば、慣用の遺伝子工学的手法により、当該ポリペプチドをコードするDNAを発現させることによって、該ポリペプチドを調製することもできる。
ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献[ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,(1966);ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,(1976);ペプチド合成,丸善(株),(1975);ペプチド合成の基礎と実験,丸善(株),(1985);医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,(1991)]などに記載されている方法が挙げられる。
他方、前記ポリペプチドをコードするDNAを発現させて当該ポリペプチドを調製する手法としては、現在では当業者に周知の種々の手法が確立されており、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)などの基本書に従って行うことができる。以下、具体例を記述する。
まず、前記の種々のポリペプチドをコードするDNAは、ヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)、あるいはウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)のcDNA配列上の所望の部分をPCRにより増幅することによって単離することができる。なお、前記配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6に記載のポリペプチドをコードするDNAの塩基配列の一例として、それぞれ配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:5に記載の塩基配列を例示することができる。なお、当業者であれば、かかる塩基配列が、縮重若しくは核酸多型を介して異なる配列であってもよいことが理解されるであろう。
前記DNAを挿入する発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて、適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT−Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRc/RSV、pRc/CMVなどが挙げられる。
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの因子を適宜有していても良い。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc−Hisなど)、さらにはチオレドキシン及びHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
次いで、前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換・形質導入する。ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K−12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;Gibco−BRL社)を用いる方法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された形質転換細胞や形質導入細胞を選択することができる。
以上のようにして得られた形質転換細胞又は形質導入細胞を、例えば、ポリペプチドの発現に好適な条件下で培養し続けることにより、本発明のポリペプチドを得ることができる。得られたポリペプチドは、一般的な生化学的精製手段により、さらに単離・精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のポリペプチドを、前述のチオレドキシンやHisタグ、GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離・精製することができる。
このようにして調製された本発明のポリペプチドがHCVのE2タンパク質との結合活性を有することは、例えば、慣用の免疫学的手法、例えば、ファーウエスタンブロッティングなどあるいは物理学的手法、例えば、表面プラズモン解析などにより解析することができる。
前記ファーウエスタンブロッティングについては実施例に詳細に記載されているが、原理を簡単に述べると以下のようになる。
すなわち、まず、本発明のポリペプチドをSDS−PAGEに供し、これをメンブレン(PVDF膜)に転写する。このメンブレンとHCVのE2タンパク質[Vaccine,14(17/18),1590−1596(1996)]とを結合反応させ、その後、抗HCVE2(HCVのE2タンパク質)抗体を反応させる。ここで用いられる抗HCVE2抗体としては、例えばラット抗HCVE2モノクローナル抗体Mo−12[Microbiol Immunol.,42(12),875−877(1998)]が挙げられる。その後、標識二次抗体をさらに反応させる。ここで用いられる標識二次抗体としては、例えば、ラット抗HCVE2モノクローナル抗体を用いた場合、HRP標識抗ラットIgG二次抗体〔例えば、アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製、カタログ番号:NA935など〕が挙げられる。反応後、化学発光などの手法で標識を検出し、これをX線フィルムに感光させることなどにより、本発明のポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合活性を測定することができる。
表面プラズモン解析により、本発明のポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合活性を測定する場合、例えば、
HCVのE2タンパク質を固定化したセンサーチップに、本発明のポリペプチドを含有した溶液を接触又は一定の流速で送液するステップ、
ここで、本ステップにおいて、センサーチップにおけるHCVのE2タンパク質のかわりに、本発明のポリペプチドを用い、HCVのE2タンパク質を含有した溶液を用いることもできる、
及び
適切な検出手段により、光学的変動又は質量の変動として相互作用を検出するステップ;
を含む方法を行なえばよい。ここで、検出手段としては、例えば、蛍光度、蛍光偏向度等の光学的検出手段;マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF MS)、エレクトロスプレー・イオン化質量分析計(ESI−MS)等の質量分析計との組み合わせによる検出手段;水晶などの物質の固有振動数の変化による検出手段などが挙げられる。また、結合は、本発明のポリペプチドとHCVのE2タンパク質との複合体の形成を示すセンサーグラムの提示、例えば、送液によるタンパク質の導入により変動した光学的センサーグラム又は質量センサーグラムを指標として測定できる。また、結合速度により、HCVのE2タンパク質に対する本発明のポリペプチドの親和性等を推測することもできる。
また、本発明のポリペプチドが、肝細胞由来細胞へのHCVの感染を防御することを調べる手法としては、例えばBiochem Biophys Res Commun.,245(2),549−553(1998)やVirus Res.,66(1):51−63(2000)などを参考にして行うことができる。以下に一例を示す。
まず、ヒト肝細胞株PH5CH8を、肝細胞培養用培地〔組成:F12培地500ml,D−MEM 500ml,1%ウシ胎仔血清,100ng/ml EGF,200μg/ml カナマイシン,10μg/ml ゲンタマイシン〕の入った24穴プレートにまき、37℃で2日程度培養する。他方、HCVウイルス(例えば、Serum 1B−2 Genotype 1b)と本発明のポリペプチドとを混合し、4℃で60分程度反応させる。この反応物を先のPH5CH8細胞に添加し、37℃で90分間インキュベートする。その後PBSで細胞を洗浄し、32℃で8日間程度培養する。得られた細胞から常法によりRNAを回収する。このRNAに対し、例えば、RT−nested PCRを行うことによりHCVゲノムの一部を増輻し、得られた産物を電気泳動に供することにより増幅断片を検出する。増幅断片が検出されないか、又は検出されたとしても極めて弱いことにより、本発明のポリペプチドがHCVの感染防御効果を有することが確認される。増幅断片の量は、電気泳動後のゲル上の核酸を慣用の手段により染色し、バンドの強度をデンシトメーターなどにより測定することにより評価されうる。
さらに、本発明のポリペプチドの別の態様として、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列のラクトフェリンの配列に対して類似の構造(配列)を有し、かつHCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドが提供される。
本発明者らは、HCVが、ヒト及びチンパンジーにしか感染しないことが知られているにもかかわらず、前記配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなるポリペプチドが該HCVに結合すること及び配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6に示されたアミノ酸配列間の配列同一性(identity)は、それぞれ、ヒト−ウシ間で74.2%、またヒト−ウマ間で71%であることを見い出した。すなわち、本発明者らは、このように、ヒトラクトフェリン、さらには、該ヒトラクトフェリン由来のポリペプチドのみならず、ヒトラクトフェリンに対して前記の同一性を保つ程度のアミノ酸残基が置換されたポリペプチドであっても、HCVのE2タンパク質への結合活性を保持することを明らかとした。
従って、かかる知見に基づき、本発明のポリペプチドの別の態様として、本発明は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と71%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(以下、「相同的アミノ酸配列」と称する)の全長又はその一部からなり、かつ、
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCVのE2タンパク質との結合活性を有する、
という特性を有する、相同的ポリペプチドを提供するものである。
ここで、「相同的アミノ酸配列の一部からなるポリペプチド」とは、
▲1▼相同的アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、又は、
▲2▼当該部分を含み、かつ相同的アミノ酸配列上の該当位置よりN末端方向及び/又はC末端方向に伸長したポリペプチド、
であって、かつ、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドを意味する。
より具体的には、前記相同的アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第38位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第43位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第48位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチド、又は第1位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチドであって、かつ前記活性を有するものが例示される。
ここで、相同的アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の特定の部分に「該当する部分」とは、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と比較すべき配列とを、以下に述べるような手法を用いてアライメントした際に、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の該当部分に一致する配列部分を指す。
本発明においてアミノ酸配列の「配列同一性」とは、2つのポリペプチド間の残基の同一性および相同性をいう。すなわち、比較する2つの配列間でアミノ酸残基が完全に一致する場合(同一性)のみならず、アミノ酸残基の性質の類似性(相同性)も考慮に入れて、前記配列同一性が決定される場合もある。このような「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアライメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のポリペプチドは、2つの配列の最適なアライメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していても良い。
このようなアミノ酸配列の同一性に関しては、例えば、ソフトウェアVector NTI〔インフォマックス,インコーポレティッド(InfoMax,Inc)社製〕を用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994))を利用してアライメントを作成することにより、算出することができる。なお、ポリペプチド間の配列同一性は、配列解析ソフト、具体的には、Vector NTI、GENETYX−MAC〔(株)ゼネティックス社製)や公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えばホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般に利用可能である。
前記の配列同一性に関して、少なくとも71%、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
また、アミノ酸の置換される位置及びアミノ酸の種類に関しては、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第36位のフェニルアラニンが置換されずに保持されていることが望ましく、それ以外の点については、後述する本発明の改変ポリペプチドの項を参照されたい。
以上のような本発明の相同的ポリペプチドの具体例として、ラクダラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ131674)、ブタラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M92089)、ヤギラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X78902)、あるいはマウスラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:NM_008522)のC末端93アミノ酸の全長又はその一部(第1位〜第33位、若しくは第11位〜第53位の部分を含む)からなるポリペプチドが例示され得る。これら他種ラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分と、配列番号:2に示されたアミノ酸配列との配列同一性を、Vector NTIを用いて算出した結果を以下に示す。いずれもこの領域において、71%以上の配列同一性を保持するものである。
本発明の相同的ポリペプチドの作製法及び活性測定法は、前述の本発明のポリペプチドと同様である。
さらに本発明のポリペプチドの別の態様として、本発明は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列(以下、改変アミノ酸配列と称する)の全長又はその一部からなり、かつ、
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCVのE2タンパク質との結合活性を有する、
という特性を有する改変ポリペプチドを提供するものである。
ここで、「改変アミノ酸配列の一部からなるポリペプチド」とは、
▲1▼改変アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、又は、
▲2▼当該部分を含み、かつ改変アミノ酸配列上の該当位置よりN末端方向及び/又はC末端方向に伸長したポリペプチド、
であって、かつ、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドを意味する。
かかる改変ポリペプチドとしては、具体的には、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有する改変ポリペプチド;並びに、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の一部からなる配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ下記(i)又は(i’):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(i’)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
の特性と、
下記(ii):
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性とを有する改変ポリペプチドが挙げられる。
より具体的には、前記改変アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第38位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第43位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第48位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチド、又は第1位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチドであって、かつ前記活性を有するものが例示される。
ここで、改変アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の特定の部分に「該当する部分」とは、前記相同的アミノ酸配列の場合と同様のアライメントを行った結果、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の該当部分に一致する配列部分を指す。
前記においてアミノ酸配列の改変に係るポリペプチドは、当該ポリペプチドをコードするDNAを用いて慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させることにより得ることができる。ここで、部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法〔ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984)〕、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、例えば、前記HCVのE2との結合活性測定法に従って活性を測定することにより、当該活性を見出すことのできる範囲であれば良い。好ましくは、前記「相同的ポリペプチド」の項で述べたような範囲、すなわち、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と71%以上の配列同一性を有する範囲内で改変の行われることが望ましい。
また、前記置換、欠失、付加又は挿入のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。
アミノ酸の置換を有する改変ポリペプチドにおいて、かかる置換の局在位置は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6相互においてアミノ酸残基の一致していない部位(第2図参照)が好ましい。すなわち、具体的には、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第4位、第5位、第7位、第8位、第9位、第10位、第11位、第13位、第16位、第17位、第20位、第21位、第24位、第27位、第28位、第31位、第37位、第54位、第56位、第58位、第59位、第63位、第67位、第68位、第71位、第72位、第74位、第77位、第78位、第81位、第89位、第92位、第93位が挙げられる。なお、第36位のフェニルアラニンは置換しないことが望ましい。
また、前記置換位置において置換されるアミノ酸の種類は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の当該置換位置に存在するアミノ酸残基の中から選ばれることが好ましい。すなわち一例を示すと、配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第4位のアルギニンからグルタミン(ヒト→ウマ型)への置換や、第7位のリジンからアルギニン(ヒト→ウシおよびウマ型)への置換などが挙げられる。
さらに前記置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸との置換をも包含する。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
以上のような本発明の改変ポリペプチドの具体例としては、ラクダラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ131674)、ブタラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号;M92089)、ヤギラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X78902)、あるいはマウスラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:NM_008522)のC末端93アミノ酸の全長又はその一部(第1位〜第33位、若しくは第11位〜第53位の部分を含む)からなるポリペプチドが例示され得る。
以上のような改変ポリペプチドの作製法及び活性測定法は、前述の本発明のポリペプチドと同様である。
さらに、ラクトフェリンの特定のアミノ酸残基をアシル化又はアミノ化することにより、ラクトフェリンの抗HIV及び抗HCV活性が高まるという報告がなされており[J.pept.sci.,5(12),563−576(1999)]、本発明のポリペプチドにおいても、同様のアシル化およびアミノ化により活性の上昇することが期待される。
本発明はまた、本発明のポリペプチド(前記相同的ポリペプチドや改変ポリペプチドを含む)を含有するポリペプチドをも提供するものである。すなわち、前述のポリペプチドは、HCVのE2タンパク質との結合活性がある以上、当該ポリペプチドを含むポリペプチドにも、同様の結合活性の存することは明らかである。
好ましくは、ヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)、及びウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)上の該当位置であるC末端93アミノ酸部分より、N末端方向に伸長したポリペプチドが挙げられる。ただし、新規性の観点から、ジーンバンクアクセッション番号:X52941、M63502及びAJ010930のそれぞれに示されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、本発明の範疇から除かれる。
前記したように、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位の部分、及び第11位〜第53位の部分がHCVのE2タンパク質との結合活性を保持することが示された。従って、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第11位〜第33位(ヒトラクトフェリンの第610番目〜第632番目)の間に結合に重要な領域があると考えられる。
したがって、本発明により、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長又はその一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第11位〜第33位の部分を少なくとも含有することを特徴とする、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドも提供され得る。
以上述べた本発明の全てのポリペプチドは、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するものであり、さらには、HCV感染を阻害、抑制又は低減させる性質を有するため、HCVの感染防御剤として有効に使用することができる。すなわち本発明は、本発明のポリペプチドを有効成分とする、HCVの感染防御剤を提供するものである。
本発明のHCV感染防御剤のうち好ましいものは、HCVへの結合に重要な配列部分を有する、より短いポリペプチドを有効成分とするものである。すなわち、前記した本発明のポリペプチド、特に、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチドや、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチドが、本発明のHCV感染防御剤の好ましい有効成分として例示される。このようなポリペプチドは、ラクトフェリンそのものを投与する場合と比較して、より投与量が低減できるという効果や、経口投与時における吸収中のタンパク質の分解、及び静脈内注射時における副作用を低減させるといった効果を有し得る。
有効成分である本発明のポリペプチドは、そのまま投与することも出来るが、粒子状の剤形にして投与することもできる。剤形として、より具体的には、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤等の剤形にすることができる。投与量は、症状の程度、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.001mg/kg/回〜1000mg/kg/回であり、これを投与初期には連日投与し、その後、細胞内のウイルス量に応じて数日ないし数ヶ月に1回投与するのが好ましい。投与形態としては、剤形に応じて経口投与、動脈注射、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、皮内投与、肝臓に対する局所注射などが可能である。
また、有効成分である本発明のポリペプチドは血中で安定であることが好ましいが、その為に当該ポリペプチドを修飾しても良い。例えば、当該ポリペプチドとポリエチレングリコールとを結合させて血中半減期を長くすることが可能である。また、ポリペプチドのN末端への修飾やD−アミノ酸への置換によって、血中で安定なポリペプチドを作製することができる。
本発明のHCV感染防御剤は、具体的には、C型肝炎の治療剤又は予防剤として使用される。したがって、本発明により、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤が提供される。より具体的には、慢性C型肝炎や急性C型肝炎に使用される。特に、既存のインターフェロン療法に対して抵抗性を示すC型慢性肝炎の治療または予防において、有効に用いられる。
また、本発明のHCV感染防御剤は、インターフェロンと併用して使用することもできる。本発明のポリペプチドは、HCVと標的細胞との結合を直接阻害するものであるため、例えばインターフェロン投与終了時におけるインターフェロン抵抗性ウイルスの再燃を、より減少させることが可能となる。
さらに、本発明によれば、慢性C型肝炎の治療又は予防方法が提供される。かかる治療又は予防方法は、本発明のポリペプチドを、細胞へのHCVの結合を妨げるに十分な治療上有効量、投与対象物に投与することを1つの特徴とする。本発明の治療又は予防方法においては、本発明のHCV感染防御剤、本発明の慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を治療上有効量投与してもよい。また、本発明の治療又は予防方法においては、インターフェロンをさらに併用投与してもよい。
前記投与対象物としては、慢性C型肝炎を罹患した個体、慢性C型肝炎を罹患する恐れのある個体などが挙げられる。
本発明はまた、前記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供するものである。本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもRNAの形態であってもよい。これら本発明のポリヌクレオチドは、ヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)、あるいはウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)のcDNA配列を基にして、当業者であれば容易に製造することできる。詳しくは、前記本発明のポリペプチドの項を参照されたい。
このような本発明のポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、前述の本発明のポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド、配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:5からなる群より選ばれた塩基配列からなるポリヌクレオチド、該塩基配列の一部からなるポリヌクレオチドなどが挙げられる。また、本発明のポリヌクレオチドには、前記配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:5からなる群より選ばれた塩基配列などと、縮重若しくは核酸多型を介して異なる配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列の一部からなるポリヌクレオチドも含まれる。
本発明のポリヌクレオチドの長さは、前記アミノ酸配列の全長を含有したポリペプチドの場合、少なくとも279ヌクレオチド、好ましくは、279〜1500ヌクレオチド、より好ましくは、279〜900ヌクレオチド、さらに好ましくは、279〜600ヌクレオチド、さらに好ましくは、279〜300ヌクレオチドが望ましい。かかるポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの製造、前記治療又は予防剤への応用などに用いられうる。
また、「塩基配列の一部」は、本発明のポリペプチドの製造、前記治療又は予防剤への応用などに用いる場合、前記アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分を含有するポリペプチドに対応して、少なくとも99ヌクレオチド、好ましくは、99〜276ヌクレオチド、より好ましくは、99〜240ヌクレオチド、さらに好ましくは、99〜180ヌクレオチド、さらに好ましくは、99〜150ヌクレオチドが望ましく、第11位〜第53位の部分を含有するポリペプチドに対応して、少なくとも129ヌクレオチド、好ましくは、129〜276ヌクレオチド、より好ましくは、129〜240ヌクレオチド、さらに好ましくは、129〜180ヌクレオチドが望ましい。
さらに、「塩基配列の一部」は、ポリヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いて、本発明のポリペプチドを製造する場合、少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは、15〜200ヌクレオチド、より好ましくは、15〜100ヌクレオチド、さらに好ましくは、15〜50ヌクレオチドが望ましい。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを製造する際に有効に用いられ、該ポリペプチドを効率よく供給することを可能にしうる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
発現ベクターの構築と組換えタンパク質の発現及び精製
1)ヒトラクトフェリンの部分ポリペプチドを発現する発現ベクターの構築
白人種正常ヒト乳腺組織よりISOGEN(日本ジーン社製)を用いてRNAを抽出した。得られたRNAと、オリゴdTプライマー[ギブコ(Gibco)社製]とを用いて逆転写酵素SuperScriptTMII(Gibco社製)による逆転写反応を行ない、引き続き、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いて完全長のヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)cDNAを増幅した。なお、塩基配列に関して、配列番号:1に記載の塩基配列の第270位が、ジーンバンクアクセッション番号:X52941ではcであるが、実際に得られたcDNAではtであった。これは遺伝子多型によるものと考えられる。
さらに、発現させたい領域(以下の▲1▼〜▲6▼)を、それぞれに増幅するためのプライマーセットと、KOD DNAポリメラーゼとを用いたPCRにより増幅した。増幅産物を、IPTG誘導により還元タンパク質のチオレドキシン及びHis tagとの融合タンパク質として発現させることのできるpET32a[ノバージェン(Novagen)社製]のBamHI−HindIII siteに組み込んだ。以上の操作により、ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸(以下の▲1▼)と、それをさらに小さくした5種類の領域(以下の▲2▼〜▲6▼)を大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。
▲1▼ヒトラクトフェリン(600−692)
(アミノ酸配列;配列番号:2、塩基配列;配列番号:1)
▲2▼ヒトラクトフェリン(600−652)
(配列番号:2の第1位〜第53位、配列番号:1の第1位〜第159位)
▲3▼ヒトラクトフェリン(610−692)
(配列番号:2の第11位〜第93位、配列番号:1の第31位〜第279位)
▲4▼ヒトラクトフェリン(624−692)
(配列番号:2の第25位〜第93位、配列番号:1の第73位〜第279位)
▲5▼ヒトラクトフェリン(640−692)
(配列番号:2の第41位〜第93位、配列番号:1の第121位〜第279位)
▲6▼ヒトラクトフェリン(653−692)
(配列番号:2の第54位〜第93位、配列番号:1の第160位〜第279位)
2)ウマ及びウシラクトフェリンの部分ポリペプチドを発現する発現ベクターの構築
前記1)と同様の方法で、ウマ末梢血リンパ球から抽出したRNAを用いて逆転写反応を行い、ウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)のcDNAをKOD DNAポリメラーゼにより増幅した。得られた増幅産物を鋳型としてカルボキシル末端93アミノ酸をコードする領域(アミノ酸配列;配列番号:6、塩基配列;配列番号:5)をさらに増幅し、pET32aのBamHI−HindIII siteへ組み込んだ。
また、ウシ乳腺組織より抽出したRNAを用いて同じく逆転写反応を行い、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)cDNAを増幅した。得られた増幅産物を鋳型としてカルボキシル末端93アミノ酸をコードする領域(アミノ酸配列;配列番号:4、塩基配列;配列番号:3)をさらに増幅し、pET32aのBamHI−HindIII siteに組込み込んだ。
3)ヒトCD81のラージエクストラループを発現する発現ベクターの構築
ヒトCD81のラージエクストラループはHCVのE2タンパク質と結合することが知られており、HCV受容体の候補となっている[Pileri et al,Science,282(5390),938−941(1998)]。
ラクトフェリンとHCVのE2タンパク質との結合の強さと比較するため、SV40ラージT抗原で不死化したヒト肝細胞であるPH5CH8細胞よりRNAを抽出した。得られたRNAを鋳型とし、オリゴdTプライマーとを用いて逆転写反応を行い、ヒトCD81(ジーンバンクアクセッション番号:XM_006475)を含むcDNAをKOD DNAポリメラーゼを用いて増幅した。得られた増幅産物を鋳型としてさらに113番目から201番目のアミノ酸を含む領域をKOD DNAポリメラーゼを用いて増幅し、その増幅産物をpET32aのBamHI−HindIII siteに組込み、ヒトCD81ラージエクストラループの発現ベクターを構築した。
4)組換えタンパク質の発現及び精製
前記1)〜3)で得られた発現ベクターを宿主大腸菌AD494(DE3)(Novagen)に形質転換した。その後10mlのLB培地で37度で16時間培養したものを、50μg/mlのアンピシリンと15μg/mlのカナマイシンを添加した200mlのLB培地に加え37度で4時間培養した。その後、培養物に、1mMのIPTGを加え、さらに4〜5時間培養した。得られた培養物を、3000×gで10分遠心分離した。ついで、−80度でペレットを一晩冷凍し、10mlのB−PER登録商標〔ピアス(Pierce)社製〕にてペレットを溶解し、室温で15分攪拌した。その後、得られた混合物を、20000×gで30分遠心分離した。得られた上清を可溶性画分、ペレットを不溶性画分として取り扱った。
不溶性分画は、再度、200μg/mlのlysozyme(Sigma)を含むB−PER登録商標10mlでペレットを溶解し、室温で攪拌した。ついで、得られた混合物を、20000×gで30分遠心分離した。その後ペレットを、20mlの10倍希釈B−PER登録商標で溶解し、20000×gで30分遠心分離する操作を3回繰り返し、最終的に得られたペレットを6Mの尿素を含んだBinding buffer〔ノバージェン(Novagen)社製〕にて溶解して精製に用いた。
精製は、His−bind resin(Novagen社製)とHis・Bind登録商標Purification Kit(Novagen社製)を用い、製造者のマニュアルに従って行った。不溶性分画ではすべてのステップを、6M尿素存在下で行い、12%SDS−PAGEにて確認を行った。
実施例2
ファーウェスタンブロッティング(1)
実施例1で得られた精製ヒトラクトフェリン断片タンパク質が、HCVのエンベロープタンパク質であるE2タンパク質と結合するかをファーウェスタンブロッティングにて検討した。プローブとして、CHO細胞にて培養液中に分泌させたE2タンパク質[Inudoh et al,Vaccine,14(17/18),1590−1596(1996)]を用いた。
実施例1で得られた精製タンパク質をそれぞれ2μg用いて12%SDS−PAGEを行いPVDF膜に転写した。その後、2%のBSA(Sigma社製)を添加したN−buffer[50mM Tris(pH7.5),150mM NaCl,0.1%Triton−X,0.25%gelatin]にて1時間ブロッキングした。
E2タンパク質を含むCHO細胞の培養上清(総タンパク質量250μg)を、同じくBSAを添加したN−buffer 5mlで希釈した。得られた溶液と前記PDVF膜とを接触させて、室温で60分結合反応させた。前記PDVF膜を、N−bufferで10分x3回洗浄後、再び2%のBSA(Sigma)を添加したN−bufferで1時間ブロッキングした。
その後、ラット抗HCVE2モノクローナル抗体(Mo−12)[Inudoh et al,Microbiol Immunol.,42(12),875−877(1998)]を5mlのN−bufferで1000倍希釈した溶液と前記PVDF膜とを接触させ、60分反応を行った。前記PVDF膜を、0.1%Tris−saline solution[10mM Tris(pH7.5),150mM NaCl,0.1%Tween20]にて5分x3回洗浄後、1000倍希釈したHRP標識抗ラット二次抗体(Amersham Pharmacia cat.NA935)を加えた0.1%Tris−saline solutionと接触させて、30分反応を行った。ついで、前記PDVF膜を、0.1%Tris−saline solutionにて20分x3回洗浄した。ルネッサンスTMルミノールウェスタンブロット化学発光検出試薬プラス(NEN Life Science)にて化学発光させ、X線フィルム(KODAK BioMax)で感光した。
ヒト、ウシ、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸部分のファーウエスタンブロッティングの結果を第1図に示す。第1図のレーン1〜7は以下の結果を示す。
レーン1:空ベクターpET32aを発現させ得られたチオレドキシンタグ(22kDa)
レーン2:ヒトラクトフェリン(Sigma社製,L3770)
レーン3:ヒトトランスフェリン(Sigma社製,T6549,80kDa)
レーン4:ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸
レーン5:ウシラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸
レーン6:ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸
レーン7:ヒトCD81の113番目から201番目のアミノ酸
(このうちレーン4〜7はpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用)
その結果、ネガティブコントロールのチオレドキシンタグと全長のヒトトランスフェリンは、HCVのE2タンパク質との結合が認められなかったが、ヒト、ウシ、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸は、ポジティブコントロールのヒトラクトフェリン同様にHCVのE2タンパク質と結合し、その強度はヒトCD81に比べ二倍程度強いことが示された。
第2図は、ヒト、ウシ、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸配列のアミノ酸の同一性を示したものである。図中、*で表示されるアミノ酸はヒトラクトフェリンに対して同一のアミノ酸であることを示す。ヒトラクトフェリン(100%)に対する配列同一性は、ウシラクトフェリンで74.2%、ウマラクトフェリンで71.0%であった。この値は、ヒトトランスフェリン(59.1%)に対する配列同一性及びウシトランスフェリン(51.6%)に対する配列同一性と比べて高いものであった。
実施例3
ファーウェスタンブロッティング(2)
ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチド(実施例1−1)の▲1▼〜▲6▼参照)につき、実施例2と同様のファーウエスタンブロッティングを行った結果を第3図に示す。第3図のレーン1〜8は以下の結果を示す。
レーン1:ヒトラクトフェリン(Sigma社製,L3770)
レーン2:ヒトトランスフェリン(Sigma社製,T6549,80kDa)
レーン3:ヒトラクトフェリン(600−692)
レーン4:ヒトラクトフェリン(600−652)
レーン5:ヒトラクトフェリン(610−692)
レーン6:ヒトラクトフェリン(624−692)
レーン7:ヒトラクトフェリン(640−692)
レーン8:ヒトラクトフェリン(653−692)
〔レーン3〜8のうちレーン4のみ部分精製、他はそれぞれをpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用。なお部分精製とは、実施例1−4)の第1段落までの工程を行ったものを指す〕
この結果をまとめたものを第4図に示す。ヒトラクトフェリンとHCVのE2タンパク質の結合には、少なくともヒトラクトフェリンの610番目から652番目のアミノ酸(配列番号:2の第11位〜第53位)の間に結合に重要な領域があることが予想された。
実施例4
ファーウェスタンブロッティング(3)
ヒトラクトフェリンの610番目〜652番目のアミノ酸配列及びその前後の配列につき、実施例3と同様のファーウエスタンブロッティングを行った結果を第5図に示す。第5図のレーン1〜10は以下の結果を示す。
レーン1:ヒトラクトフェリン(Sigma社製,L3770)
レーン2:ヒトトランスフェリン(Sigma社製,T6549,80kDa)
レーン3:ヒトラクトフェリン(600−692)
レーン4:ヒトラクトフェリン(600−652)
レーン5:ヒトラクトフェリン(610−652)
レーン6:ヒトラクトフェリン(610−652)
(635番目のフェニルアラニンをロイシンに置換したもの)
レーン7:ヒトラクトフェリン(610−642)
レーン8:ヒトラクトフェリン(620−652)
レーン9:ヒトラクトフェリン(620−642)
レーン10:空ベクターを発現させ得られたチオレドキシンタグ(22kDa)
(レーン3〜10はそれぞれpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用)
この結果より、実施例3で予測したヒトラクトフェリン610番目から652番目(配列番号:2の第11位〜第53位)の領域がHCVのE2タンパク質と結合することが明らかになった。
さらに、635番目(配列番号:2の第36位)のフェニルアラニンをロイシンに置換することにより結合がほとんど認められなくなったことより、この結合にはヒトラクトフェリンの635番目のフェニルアラニンが重要であることが示された。
実施例5
ファーウェスタンブロッティング(4)
ヒトラクトフェリンの600番目〜652番目のアミノ酸配列及びさらにそれを縮めた配列につき、実施例2〜4と同様のファーウエスタンブロッティングを行った結果を第6図に示す。第6図のレーン1〜7は以下の結果を示す。
レーン1:ヒトラクトフェリン(600−622)
レーン2:ヒトラクトフェリン(600−627)
レーン3:ヒトラクトフェリン(600−632)
レーン4:ヒトラクトフェリン(600−637)
レーン5:ヒトラクトフェリン(600−642)
レーン6:ヒトラクトフェリン(600−647)
レーン7:ヒトラクトフェリン(600−652)
(レーン1〜7はそれぞれpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用)
この結果より、ヒトラクトフェリン600番目から632番目のアミノ酸(配列番号:2の第1位〜第33位)を有していればHCVのE2タンパク質と結合することが明らかとなった。
実施例6
前記実施例5などにおいて、HCVのE2蛋白質との結合が認められたヒトラクトフェリン(600−632):
VVSRMDKVER LKQVLLHQQA KFGRNGSDCP DKF(配列番号:7)と、
該ポリペプチドに相当する配列部分であるウシラクトフェリン(599−631):
VVSRSDRAAH VKQVLLHQQA LFGKNGKNCP DKF(配列番号:8)
とを合成した。
前記ポリペプチドを用い、培養肝細胞へのHCVの感染に対する防御活性を検討した。
ヒト肝細胞株PH5CH8を、肝細胞培養用培地〔組成:F12培地500ml,D−MEM 500ml,1%ウシ胎仔血清,100ng/ml EGF,200μg/ml カナマイシン,10μg/ml ゲンタマイシン〕100μlを含むコラーゲン処理96穴プレートに、5x104細胞/ウエルとなるように播種し、37℃で2日間培養した。他方、HCVウイルス陽性ヒト血清(1B−2/genotype 1b:2x104コピーHCVRNAを含む)と、前記ヒトラクトフェリン由来ポリペプチド又はウシラクトフェリン由来ポリペプチドとを混合し、4℃で60分間反応させた。
得られた混合物を、PH5CH8細胞に添加して37℃で90分間インキュベートした。ついで、PH5CH8細胞を、前記肝細胞培養用培地で3回洗浄し、さらに32℃で24時間培養した。
その後、細胞から常法によりRNAを回収し、0.5μgRNA中に含まれるHCV RNAをLightCycler(Roche Diagnostics)を用いて以下の文献(Nozaki A.and Kato N.,Quantitative Method of Intracellular Hepatitis C Virus RNA using LightCycler PCR.Acta Medica Okayama,56(2),107−110(2002))に従い定量した。
その結果、第7図のパネルAに示すように、ヒトラクトフェリン(600−632)は、濃度依存的にHCVの培養肝細胞への吸着を防御し、実際に、感染をも防御することが明らかとなった。また、第7図のパネルBに示すように、ウシラクトフェリン(599−631)も、濃度依存的にHCVの培養肝細胞への吸着を防御し、感染を防御する活性があることがわかったが、その活性は、ヒト由来のものと比べて低かった。
産業上の利用可能性
本発明により、HCVのE2タンパク質に結合活性を有するHCV結合性ポリペプチドが提供される。本発明によれば、HCVのE2タンパク質に結合することにより、HCVの肝細胞への結合を防ぎ、さらには、感染を防御することができ、それにより慢性C型肝炎などを治療または予防することが可能になる。したがって、慢性C型肝炎の治療剤または予防剤、慢性C型肝炎の治療または予防方法が提供される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図は、ヒト、ウシ及びウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸部分とHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、空ベクターpET32aを発現させて得られたチオレドキシンタグ(22kDa)の結果を、レーン2は、ヒトラクトフェリンの結果を、レーン3は、ヒトトランスフェリンの結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸の結果を、レーン5は、ウシラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸の結果を、レーン6は、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸の結果を、レーン7は、ヒトCD81(ジーンバンクアクセッション番号:XM_006475)の113番目〜201番目のアミノ酸の結果を示す。
第2図は、ヒト、ウシ及びウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸配列のアミノ酸の同一性を示したものである。図中、*で表示されるアミノ酸はヒトラクトフェリンと同一のアミノ酸であることを示す。
第3図は、ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、全長のヒトラクトフェリンの結果を、レーン2は、全長のヒトトランスフェリンの結果を、レーン3は、ヒトラクトフェリン(600−692)の結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリン(600−652)の結果を、レーン5は、ヒトラクトフェリン(610−692)の結果を、レーン6は、ヒトラクトフェリン(624−692)の結果を、レーン7は、ヒトラクトフェリン(640−692)の結果を、レーン8は、ヒトラクトフェリン(653−692)の結果を示す。
第4図は、第2図および第3図に示される結果をまとめた図である。図中の数値はヒトラクトフェリンおよびヒトCD81のアミノ酸番号を示す。
第5図は、ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、全長のヒトラクトフェリンの結果を、レーン2は、全長のヒトトランスフェリンの結果を、レーン3は、ヒトラクトフェリン(600−692)の結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリン(600−652)の結果を、レーン5は、ヒトラクトフェリン(610−652)の結果を、レーン6は、ヒトラクトフェリン(610−652)(ただし635番目のフェニルアラニンをロイシンに置換)の結果を、レーン7は、ヒトラクトフェリン(610−642)の結果を、レーン8は、ヒトラクトフェリン(620−652)の結果を、レーン9は、ヒトラクトフェリン(620−642)の結果を、レーン10は、空ベクターを発現させ得られたチオレドキシンタグ(22kDa)の結果を示す。
第6図は、ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、ヒトラクトフェリン(600−622)の結果を、レーン2は、ヒトラクトフェリン(600−627)の結果を、レーン3は、ヒトラクトフェリン(600−632)の結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリン(600−637)の結果を、レーン5は、ヒトラクトフェリン(600−642)の結果を、レーン6は、ヒトラクトフェリン(600−647)の結果を、レーン7は、ヒトラクトフェリン(600〜652)の結果を示す。
第7図は、培養肝細胞へのHCVの感染に対するヒトラクトフェリン(600−632)及びウシラクトフェリン(599−631)それぞれの影響を調べた結果を示す図である。図中、パネルAは、ヒトラクトフェリン(600−632)、パネルBは、ウシラクトフェリン(599−631)の結果を示す。
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染を阻害、抑制又は低減させることが可能な技術に関する。具体的には、本発明は、HCVとの結合活性、特に、HCVのE2(エンベロープ2)タンパク質との結合活性を有するHCV結合性ポリペプチド;HCVの感染を阻害、抑制又は低減させることが可能なHCVの感染防御剤;慢性C型肝炎の治療又は予防に用いうる、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤;該ポリペプチドをコードしたポリヌクレオチド;慢性C型肝炎の治療又は予防方法;並びに該慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を製造するための該ポリペプチドの使用などに関する。
背景技術
現在、HCVが主要な原因となり年間の死者が三万人を超える肝がんの発症を抑制するために、インターフェロン以外の抗HCV薬の開発が嘱望されている。
これに関して、本発明者らは、近年、HCVとヒト肝細胞由来培養細胞とを用いるHCV感染系において、HCV初乳中に豊富に含まれ、鉄のトランスポーターファミリーの一員であるラクトフェリンが、ヒト肝細胞由来培養細胞へのHCVの感染を防御することを見出している[Ikeda et al,Biochem Biophys Res Commun.,245(2),549−553(1998);Ikeda et al,Virus Res.,66(1),51−63(2000)]。また、本発明者らは、実際に、慢性C型肝炎患者にウシラクトフェリンを経口投与し、効果を認めた症例を報告している[Tanaka et al,Jpn.J.Cancer Res.,90(4):367−371(1999)]。
また、最近、本発明者らは、前記HCV感染系を用いて、細胞へのHCVの吸着とラクトフェリンとの相互作用の時間的関係を解析した。その結果、本発明者らは、ラクトフェリンとHCVとを混合し、直ちに細胞に添加した場合でもHCV感染が完全に阻害されることを見出し、それにより、HCVとラクトフェリンとの相互作用は、HCVの細胞への吸着よりも早く起こることを明らかにした[第58回日本癌学会総会要旨集、145頁 No.223,(1999)]。
さらに、本発明者らは、HCVのどのタンパク質がラクトフェリンとの相互作用に関与しているのかを解析した結果、ラクトフェリンはHCVのE2タンパク質に直接結合することを明らかにした[第58回日本癌学会総会要旨集、145頁,No.223,(1999)]。
以上のように、ラクトフェリンとHCVのE2タンパク質との相互作用が、HCVの感染防御に重要であることが示されている。しかしながら、約700アミノ酸からなるラクトフェリン中のどの限定領域がHCVのE2タンパク質との結合に必須の領域であるかについては、未だ十分に明らかにされていないのが現状である。
発明の開示
本発明は、生体へのHCVの感染を阻害、抑制又は低減させるための手段を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、HCVとの結合活性を有するHCV結合性ポリペプチド及びその応用を提供することを目的とする。さらに詳しくは、本発明は、HCVの感染を阻害、抑制又は低減させることが可能であり、かつ生体への取り込みにより適したサイズである、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するHCV結合性ポリペプチドを提供することを目的とする。また、本発明は、HCVの感染を阻害、抑制又は低減させることが可能な、HCVの感染防御剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、慢性C型肝炎の治療又は予防に有用である、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、本発明のポリペプチドを効率よく供給することを可能にしうる、ポリヌクレオチドを提供することを目的とする。また、本発明は、慢性C型肝炎の症状の緩和、予防などを可能にしうる、慢性C型肝炎の治療又は予防方法を提供することを目的とする。
即ち本発明の要旨は、
〔1〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列における第1位〜第33位の部分又は該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を少なくとも含有してなる、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチド、
〔2〕 (I)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長、又は
(II)前記(I)記載のアミノ酸配列の一部からなる配列であって、かつ該配列が、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分若しくは該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を含有するものである配列、
を少なくとも含有してなる、前記〔1〕記載のHCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチド、
〔3〕 配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位の部分を少なくとも含有してなる、前記〔1〕又は〔2〕記載のポリペプチド、
〔4〕 配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位の部分を少なくとも含有してなる、前記〔1〕又は〔2〕記載のポリペプチド、
〔5〕 下記(a)〜(x):
(a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(b)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(c)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(d)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(e)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(f)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(g)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、
(h)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位、
(i)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(j)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(k)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(l)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(m)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(n)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(o)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、
(p)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位、
(q)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(r)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(s)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(t)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(u)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(v)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(w)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、及び
(x)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなる、前記〔1〕又は〔2〕記載のポリペプチド、
〔6〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも71%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有するポリペプチド、
〔7〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列の全長からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有するポリペプチド、
〔8〕 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の一部からなる配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列の全長からなり、かつ下記(i)又は(i’):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(i’)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
の特性と、
下記(ii):
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性とを有するポリペプチド、
〔9〕 置換位置が、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第4位、第5位、第7位、第8位、第9位、第10位、第11位、第13位、第16位、第17位、第20位、第21位、第24位、第27位、第28位、第31位、第37位、第54位、第56位、第58位、第59位、第63位、第67位、第68位、第71位、第72位、第74位、第77位、第78位、第81位、第89位、第92位及び第93位から選ばれるものである、前記〔7〕又は〔8〕記載のポリペプチド、
〔10〕 前記置換位置において置換されるアミノ酸が、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の当該置換位置に存在するアミノ酸の中から選ばれるものである、前記〔9〕記載のポリペプチド、
〔11〕 細胞へのHCVの感染に対する阻害能を有する、前記〔1〕〜〔10〕いずれか1項に記載のポリペプチド、
〔12〕 前記〔1〕〜〔11〕いずれか1項に記載のポリペプチドを含有してなるポリペプチド(ただしジーンバンクアクセッション番号:X52941、M63502及びAJ010930のそれぞれに示されたアミノ酸配列からなるポリペプチドを除く)、
〔13〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有してなる、HCVの感染防御剤、
〔14〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有してなる、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤、
〔15〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドをコードしてなるポリヌクレオチド、
〔16〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドを、細胞へのHCVの結合を妨げるに十分な治療上有効量、投与対象物に投与することを特徴とする、慢性C型肝炎の治療又は予防方法、並びに
〔17〕 HCVの感染防御剤、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を製造するための前記〔1〕〜〔12〕いずれか1項に記載のポリペプチドの使用、
に関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の1つの態様としては、細胞へのHCVの吸着を阻害、抑制又は低減させることが可能であり、かつ生体への取り込みにより適したサイズである、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するラクトフェリン由来ポリペプチドが挙げられる。
具体的には、本発明のポリペプチドは、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列における第1位〜第33位の部分又は該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を少なくとも含有することに1つの大きな特徴がある。
したがって、本発明のポリペプチドは、HCV E2タンパク質との結合活性を呈するという優れた性質を発現する。
さらに、本発明のポリペプチドによれば、全長ラクトフェリンよりも短い長さであるにもかかわらず、HCVの感染を実際に阻害、抑制又は低減することができるという優れた性質を発現する。
また、本発明のポリペプチドは、国際公開第01/72322号パンフレット及び国際公開第01/47545号パンフレットのそれぞれに開示された、HCVへの結合活性を示しうる特定の配列からなるラクトフェリン由来部分ポリペプチドの配列〔GRRRRSVQWC AVSQPEATKC FQWQRNMRKV RGPPVSCIKR DSPIQCI(配列番号:9);DPDPNCVDRP VEGYLAVAVV RRSDTSLTWN SVKGKKSCHT AVD(配列番号:10)〕とは、異なるものであるにもかかわらず、HCV E2タンパク質との結合活性を呈し、さらには、HCVの感染を阻害、抑制又は低減することができるという驚くべき性質を発現する。
本明細書において、「ラクトフェリン」のアミノ酸配列を表記する場合、シグナル配列がプロセッシングされた成熟ラクトフェリンタンパク質のアミノ酸配列を指すものとする。すなわち、ラクトフェリンのアミノ酸配列の「610番目〜652番目」といった表記をする場合、当該アミノ酸配列は、ラクトフェリンの成熟タンパク質のN末端のアミノ酸を1番目のアミノ酸とした場合の数を示す。
また、以下、本明細書において、「ヒトラクトフェリン(X−Y)」の表記は、特に断りのない限り、ジーンバンクアクセッション番号:X52941に記載のヒトラクトフェリンのアミノ酸配列におけるX番目〜Y番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドを示す。さらに、本明細書において、「ウシラクトフェリン(X−Y)」の表記は、特に断りのない限り、ジーンバンクアクセッション番号:M63502に記載のウシラクトフェリンのアミノ酸配列におけるX番目〜Y番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドを示す。さらに、本明細書において、「ウマラクトフェリン(X−Y)」の表記は、特に断りのない限り、ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930に記載のウシラクトフェリンのアミノ酸配列におけるX番目〜Y番目のアミノ酸残基からなるポリペプチドを示す。
前述のように、近年、ラクトフェリンが、HCVの感染防御に効果を有することが示されている[Ikeda et al,Biochem Biophys Res Commun.,245(2),549−553(1998);Ikeda et al,Virus Res.,66(1),51−63(2000);Tanaka et al,Jpn.J.Cancer Res.90(4),367−371(1999)]。また両者の相互作用に関して、ラクトフェリンはHCVのE2タンパク質に結合することが明らかにされている(第58回日本癌学会総会要旨集、145頁No.223,1999)。しかしながら、ラクトフェリン中のどの限定領域がHCVのE2タンパク質との結合に必須であるかについては明らかにされていなかった。
本発明者らは、ラクトフェリン中のどの領域がHCVのE2タンパク質に結合活性を有するのか、またその結合の強さはどの程度であるのかにつき鋭意検討を進めた。
すなわち、本発明は、ヒト、ウシおよびウマラクトフェリンそれぞれのカルボキシル末端93アミノ酸部分からなるポリペプチド、具体的には、下記3つの配列:
▲1▼配列番号:2に示されるヒトラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分、
ヒトラクトフェリンのアミノ酸配列(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)における第600番目〜第692番目の部分(配列番号:2)、
▲2▼配列番号:4に示されるウシラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分、
ウシラクトフェリンのアミノ酸配列(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)における第599番目〜第691番目の部分(配列番号:4)、
並びに
▲3▼配列番号:6に示されるウマラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分、
ウマラクトフェリンのアミノ酸配列(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)における第599番目〜第691番目の部分(配列番号:6)、が、いずれも、HCVのE2タンパク質との結合活性を有し、93アミノ酸部分の中にHCVのE2タンパク質との結合領域が存在するという本発明者らの驚くべき知見に基づく。しかも、これらのポリペプチドによれば、その結合の強さは、HCVの本来の受容体であるCD81ラージエクストラループへのHCVの結合活性と比較して2倍程度強いという、予想外の効果を発揮する。
さらに、本発明は、ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸のうちのどの限定領域がHCVのE2タンパク質との結合に必須であるのかについて、前記93アミノ酸部分(配列番号:2)をさらに限定した何種類かのポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合活性を調べた結果、ヒトラクトフェリンの600番目〜632番目(配列番号:2の第1位〜第33位)の33アミノ酸部分、若しくはヒトラクトフェリンの610番目〜652番目(配列番号:2の第11位〜第53位)の43アミノ酸部分を有していれば、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するという本発明者らの驚くべき知見に基づく。また、本発明は、ヒトラクトフェリンの第635番目(配列番号:2の第36位)のフェニルアラニンが保持されていることが、HCVのE2タンパク質への結合にとって重要であるという本発明者らの驚くべき知見に基づく。
また、これら3つの配列(配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6)間のアミノ酸の同一性は、それぞれ74.2%(ヒト−ウシ)および71%(ヒト−ウマ)であったことから、この程度の配列同一性を保持する程度にアミノ酸残基が置換されていても、HCVのE2タンパク質への結合活性を有することが明らかとなった。本発明は、以上のような知見に基づき完成するに至ったものである。
従って、本発明によれば、具体的には、(I)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長(93アミノ酸)、又は
(II)前記(I)記載のアミノ酸配列の一部からなる配列であって、かつ該配列が、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分若しくは該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を含有するものである配列、
を少なくとも含有した、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドが提供される。
ここで、本発明のポリペプチドの長さは、前記(I)を含有する場合、少なくとも93アミノ酸残基、好ましくは、93〜500残基、より好ましくは、93〜300残基、さらに好ましくは、93〜200残基、よりさらに好ましくは、93〜100残基であるか、あるいは配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長そのものであることが望ましい。
また、前記(II)における「アミノ酸配列の一部」に関して、前記アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分を含有する場合、本発明のポリペプチドの長さは、少なくとも33アミノ酸残基、好ましくは、33〜92残基、より好ましくは、33〜80残基、さらに好ましくは、33〜60残基、よりさらに好ましくは、33〜50残基であることが望ましく、第11位〜第53位の部分を含有する場合、本発明のポリペプチドの長さは、少なくとも43アミノ酸残基、好ましくは、43〜92残基、より好ましくは、43〜80残基、さらに好ましくは、43〜60残基、よりさらに好ましくは、43〜50残基であることが望ましい。
なお、前記(II)においては、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分と該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分との両方を含有するもの、すなわち、第1位〜第53位を含有するものも包含される。
ここで、本発明においては、ジーンバンクアクセッション番号:X52941、M63502及びAJ010930のそれぞれに示されたアミノ酸配列の全長からなるポリペプチドは除外される。
好ましくは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列の全長、
又は
該アミノ酸配列の一部からなる配列であって、かつ該配列が、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分若しくは該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を含有するものである配列、
を少なくとも含有した、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドが挙げられ、具体的には、配列番号:2に示されたアミノ酸配列の全長又はその一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第1位〜第33位の部分を少なくとも含有するポリペプチド、又は配列番号:2に示されたアミノ酸配列の全長又はその一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第11位〜第53位の部分を少なくとも含有するポリペプチドが挙げられる。より具体的には、
▲1▼配列番号:2に示されたアミノ酸配列の全長からなるポリペプチド、
▲2▼配列番号:2に示されたアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第1位〜第33位の部分を少なくとも含有するポリペプチド、
▲3▼配列番号:2に示されたアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第11位〜第53位の部分を少なくとも含有するポリペプチド、
▲4▼配列番号:2において、第1位〜第33位の部分若しくは第11位〜第53位の部分が少なくとも保存されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
などが挙げられる。
前記において、「アミノ酸配列の一部からなるポリペプチド」とは、
▲1▼配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位の部分、若しくは第11位〜第53位の部分からなるポリペプチド、又は、
▲2▼当該部分を含み、かつこの位置より配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上、N末端方向及び/又はC末端方向に伸長したポリペプチド、すなわち、前記アミノ酸配列のN末端及び/又はC末端にアミノ酸残基が付加されたポリペプチド
を意味する。
ここで、前記▲2▼において、前記アミノ酸配列のN末端及び/又はC末端におけるアミノ酸残基の付加数は、ポリペプチドが、前記結合活性を呈し、HCVの感染を阻害、抑制又は低減させる能力を発揮する範囲であればよい。また、付加されるアミノ酸残基は、天然のアミノ酸配列、具体的には、配列番号:2、4及び6からなる群より選択されたアミノ酸配列における該当部分と同じアミノ酸残基であればよく、ポリペプチドの前記結合活性及びHCV感染を阻害、抑制又は低減させる能力を発揮させるに適した物理化学的性質を有するアミノ酸であればよい。さらにかかるアミノ酸残基は、生体への親和性を付与しうる種々の修飾残基であってもよい。
これら本発明のポリペプチドの具体例としては、例えば、
(a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチド、
(b)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位からなるポリペプチド、
(d)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位からなるポリペプチド、
(e)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチド、〔配列番号:7に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド〕
(f)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位からなるポリペプチド、
(g)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位からなるポリペプチド、
(h)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
(i)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチド、
(j)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位からなるポリペプチド、
(k)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位からなるポリペプチド、
(l)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位からなるポリペプチド、
(m)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチド、〔配列番号:8に示されたアミノ酸配列からなるポリペプチド〕
(n)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位からなるポリペプチド、
(o)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
(p)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
(q)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチド、
(r)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位からなるポリペプチド、
(s)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位からなるポリペプチド、
(t)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位からなるポリペプチド、
(u)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチド、
(v)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位からなるポリペプチド、
(w)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位からなるポリペプチド、
(x)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位からなるポリペプチド、
などが例示される。
これらのポリペプチドは、化学的合成法又は遺伝子工学的手法のいずれでも作製されうる。すなわち、慣用の化学合成法により、ペプチド合成機などを用いて前記ポリペプチドを合成することもできれば、慣用の遺伝子工学的手法により、当該ポリペプチドをコードするDNAを発現させることによって、該ポリペプチドを調製することもできる。
ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献[ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,(1966);ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,(1976);ペプチド合成,丸善(株),(1975);ペプチド合成の基礎と実験,丸善(株),(1985);医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,(1991)]などに記載されている方法が挙げられる。
他方、前記ポリペプチドをコードするDNAを発現させて当該ポリペプチドを調製する手法としては、現在では当業者に周知の種々の手法が確立されており、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd Edt.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)などの基本書に従って行うことができる。以下、具体例を記述する。
まず、前記の種々のポリペプチドをコードするDNAは、ヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)、あるいはウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)のcDNA配列上の所望の部分をPCRにより増幅することによって単離することができる。なお、前記配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6に記載のポリペプチドをコードするDNAの塩基配列の一例として、それぞれ配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:5に記載の塩基配列を例示することができる。なお、当業者であれば、かかる塩基配列が、縮重若しくは核酸多型を介して異なる配列であってもよいことが理解されるであろう。
前記DNAを挿入する発現ベクターとしては、用いる宿主や目的等に応じて、適宜選択することができ、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。
例えば、宿主が大腸菌の場合、ベクターとしては、pUC118、pUC119、pBR322、pCR3等のプラスミドベクター、λZAPII、λgt11などのファージベクターが挙げられる。宿主が酵母の場合、ベクターとしては、pYES2、pYEUra3などが挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合には、pAcSGHisNT−Aなどが挙げられる。宿主が動物細胞の場合には、pKCR、pCDM8、pGL2、pcDNA3.1、pRc/RSV、pRc/CMVなどが挙げられる。
前記ベクターは、発現誘導可能なプロモーター、選択用マーカー遺伝子、ターミネーターなどの因子を適宜有していても良い。
また、単離精製が容易になるように、チオレドキシン、Hisタグ、あるいはGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)等との融合タンパク質として発現する配列が付加されていても良い。この場合、宿主細胞内で機能する適切なプロモーター(lac、tac、trc、trp、CMV、SV40初期プロモーターなど)を有するGST融合タンパクベクター(pGEX4Tなど)や、Myc、Hisなどのタグ配列を有するベクター(pcDNA3.1/Myc−Hisなど)、さらにはチオレドキシン及びHisタグとの融合タンパク質を発現するベクター(pET32a)などを用いることができる。
次いで、前記で作製された発現ベクターで宿主を形質転換・形質導入する。ここで用いられる宿主としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。大腸菌としては、E.coli K−12系統のHB101株、C600株、JM109株、DH5α株、AD494(DE3)株などが挙げられる。また酵母としては、サッカロミセス・セルビジエなどが挙げられる。動物細胞としては、L929細胞、BALB/c3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、Hela細胞などが挙げられる。昆虫細胞としてはsf9などが挙げられる。
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、前記宿主細胞に適合した通常の導入方法を用いれば良い。具体的にはリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;Gibco−BRL社)を用いる方法などが挙げられる。導入後、選択マーカーを含む通常の培地にて培養することにより、前記発現ベクターが宿主細胞中に導入された形質転換細胞や形質導入細胞を選択することができる。
以上のようにして得られた形質転換細胞又は形質導入細胞を、例えば、ポリペプチドの発現に好適な条件下で培養し続けることにより、本発明のポリペプチドを得ることができる。得られたポリペプチドは、一般的な生化学的精製手段により、さらに単離・精製することができる。ここで精製手段としては、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。また本発明のポリペプチドを、前述のチオレドキシンやHisタグ、GST等との融合タンパク質として発現させた場合は、これら融合タンパク質やタグの性質を利用した精製法により単離・精製することができる。
このようにして調製された本発明のポリペプチドがHCVのE2タンパク質との結合活性を有することは、例えば、慣用の免疫学的手法、例えば、ファーウエスタンブロッティングなどあるいは物理学的手法、例えば、表面プラズモン解析などにより解析することができる。
前記ファーウエスタンブロッティングについては実施例に詳細に記載されているが、原理を簡単に述べると以下のようになる。
すなわち、まず、本発明のポリペプチドをSDS−PAGEに供し、これをメンブレン(PVDF膜)に転写する。このメンブレンとHCVのE2タンパク質[Vaccine,14(17/18),1590−1596(1996)]とを結合反応させ、その後、抗HCVE2(HCVのE2タンパク質)抗体を反応させる。ここで用いられる抗HCVE2抗体としては、例えばラット抗HCVE2モノクローナル抗体Mo−12[Microbiol Immunol.,42(12),875−877(1998)]が挙げられる。その後、標識二次抗体をさらに反応させる。ここで用いられる標識二次抗体としては、例えば、ラット抗HCVE2モノクローナル抗体を用いた場合、HRP標識抗ラットIgG二次抗体〔例えば、アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製、カタログ番号:NA935など〕が挙げられる。反応後、化学発光などの手法で標識を検出し、これをX線フィルムに感光させることなどにより、本発明のポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合活性を測定することができる。
表面プラズモン解析により、本発明のポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合活性を測定する場合、例えば、
HCVのE2タンパク質を固定化したセンサーチップに、本発明のポリペプチドを含有した溶液を接触又は一定の流速で送液するステップ、
ここで、本ステップにおいて、センサーチップにおけるHCVのE2タンパク質のかわりに、本発明のポリペプチドを用い、HCVのE2タンパク質を含有した溶液を用いることもできる、
及び
適切な検出手段により、光学的変動又は質量の変動として相互作用を検出するステップ;
を含む方法を行なえばよい。ここで、検出手段としては、例えば、蛍光度、蛍光偏向度等の光学的検出手段;マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF MS)、エレクトロスプレー・イオン化質量分析計(ESI−MS)等の質量分析計との組み合わせによる検出手段;水晶などの物質の固有振動数の変化による検出手段などが挙げられる。また、結合は、本発明のポリペプチドとHCVのE2タンパク質との複合体の形成を示すセンサーグラムの提示、例えば、送液によるタンパク質の導入により変動した光学的センサーグラム又は質量センサーグラムを指標として測定できる。また、結合速度により、HCVのE2タンパク質に対する本発明のポリペプチドの親和性等を推測することもできる。
また、本発明のポリペプチドが、肝細胞由来細胞へのHCVの感染を防御することを調べる手法としては、例えばBiochem Biophys Res Commun.,245(2),549−553(1998)やVirus Res.,66(1):51−63(2000)などを参考にして行うことができる。以下に一例を示す。
まず、ヒト肝細胞株PH5CH8を、肝細胞培養用培地〔組成:F12培地500ml,D−MEM 500ml,1%ウシ胎仔血清,100ng/ml EGF,200μg/ml カナマイシン,10μg/ml ゲンタマイシン〕の入った24穴プレートにまき、37℃で2日程度培養する。他方、HCVウイルス(例えば、Serum 1B−2 Genotype 1b)と本発明のポリペプチドとを混合し、4℃で60分程度反応させる。この反応物を先のPH5CH8細胞に添加し、37℃で90分間インキュベートする。その後PBSで細胞を洗浄し、32℃で8日間程度培養する。得られた細胞から常法によりRNAを回収する。このRNAに対し、例えば、RT−nested PCRを行うことによりHCVゲノムの一部を増輻し、得られた産物を電気泳動に供することにより増幅断片を検出する。増幅断片が検出されないか、又は検出されたとしても極めて弱いことにより、本発明のポリペプチドがHCVの感染防御効果を有することが確認される。増幅断片の量は、電気泳動後のゲル上の核酸を慣用の手段により染色し、バンドの強度をデンシトメーターなどにより測定することにより評価されうる。
さらに、本発明のポリペプチドの別の態様として、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列のラクトフェリンの配列に対して類似の構造(配列)を有し、かつHCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドが提供される。
本発明者らは、HCVが、ヒト及びチンパンジーにしか感染しないことが知られているにもかかわらず、前記配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなるポリペプチドが該HCVに結合すること及び配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6に示されたアミノ酸配列間の配列同一性(identity)は、それぞれ、ヒト−ウシ間で74.2%、またヒト−ウマ間で71%であることを見い出した。すなわち、本発明者らは、このように、ヒトラクトフェリン、さらには、該ヒトラクトフェリン由来のポリペプチドのみならず、ヒトラクトフェリンに対して前記の同一性を保つ程度のアミノ酸残基が置換されたポリペプチドであっても、HCVのE2タンパク質への結合活性を保持することを明らかとした。
従って、かかる知見に基づき、本発明のポリペプチドの別の態様として、本発明は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と71%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(以下、「相同的アミノ酸配列」と称する)の全長又はその一部からなり、かつ、
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCVのE2タンパク質との結合活性を有する、
という特性を有する、相同的ポリペプチドを提供するものである。
ここで、「相同的アミノ酸配列の一部からなるポリペプチド」とは、
▲1▼相同的アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、又は、
▲2▼当該部分を含み、かつ相同的アミノ酸配列上の該当位置よりN末端方向及び/又はC末端方向に伸長したポリペプチド、
であって、かつ、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドを意味する。
より具体的には、前記相同的アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第38位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第43位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第48位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチド、又は第1位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチドであって、かつ前記活性を有するものが例示される。
ここで、相同的アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の特定の部分に「該当する部分」とは、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と比較すべき配列とを、以下に述べるような手法を用いてアライメントした際に、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の該当部分に一致する配列部分を指す。
本発明においてアミノ酸配列の「配列同一性」とは、2つのポリペプチド間の残基の同一性および相同性をいう。すなわち、比較する2つの配列間でアミノ酸残基が完全に一致する場合(同一性)のみならず、アミノ酸残基の性質の類似性(相同性)も考慮に入れて、前記配列同一性が決定される場合もある。このような「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアライメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のポリペプチドは、2つの配列の最適なアライメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していても良い。
このようなアミノ酸配列の同一性に関しては、例えば、ソフトウェアVector NTI〔インフォマックス,インコーポレティッド(InfoMax,Inc)社製〕を用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994))を利用してアライメントを作成することにより、算出することができる。なお、ポリペプチド間の配列同一性は、配列解析ソフト、具体的には、Vector NTI、GENETYX−MAC〔(株)ゼネティックス社製)や公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えばホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般に利用可能である。
前記の配列同一性に関して、少なくとも71%、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
また、アミノ酸の置換される位置及びアミノ酸の種類に関しては、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第36位のフェニルアラニンが置換されずに保持されていることが望ましく、それ以外の点については、後述する本発明の改変ポリペプチドの項を参照されたい。
以上のような本発明の相同的ポリペプチドの具体例として、ラクダラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ131674)、ブタラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M92089)、ヤギラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X78902)、あるいはマウスラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:NM_008522)のC末端93アミノ酸の全長又はその一部(第1位〜第33位、若しくは第11位〜第53位の部分を含む)からなるポリペプチドが例示され得る。これら他種ラクトフェリンのC末端93アミノ酸部分と、配列番号:2に示されたアミノ酸配列との配列同一性を、Vector NTIを用いて算出した結果を以下に示す。いずれもこの領域において、71%以上の配列同一性を保持するものである。
本発明の相同的ポリペプチドの作製法及び活性測定法は、前述の本発明のポリペプチドと同様である。
さらに本発明のポリペプチドの別の態様として、本発明は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列(以下、改変アミノ酸配列と称する)の全長又はその一部からなり、かつ、
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCVのE2タンパク質との結合活性を有する、
という特性を有する改変ポリペプチドを提供するものである。
ここで、「改変アミノ酸配列の一部からなるポリペプチド」とは、
▲1▼改変アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、又は、
▲2▼当該部分を含み、かつ改変アミノ酸配列上の該当位置よりN末端方向及び/又はC末端方向に伸長したポリペプチド、
であって、かつ、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドを意味する。
かかる改変ポリペプチドとしては、具体的には、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有する改変ポリペプチド;並びに、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の一部からなる配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列からなり、かつ下記(i)又は(i’):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(i’)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
の特性と、
下記(ii):
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性とを有する改変ポリペプチドが挙げられる。
より具体的には、前記改変アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第38位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第43位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第48位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第1位〜第53位に該当する部分からなるポリペプチド、第11位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチド、又は第1位〜第93位に該当する部分からなるポリペプチドであって、かつ前記活性を有するものが例示される。
ここで、改変アミノ酸配列において、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の特定の部分に「該当する部分」とは、前記相同的アミノ酸配列の場合と同様のアライメントを行った結果、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の該当部分に一致する配列部分を指す。
前記においてアミノ酸配列の改変に係るポリペプチドは、当該ポリペプチドをコードするDNAを用いて慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させることにより得ることができる。ここで、部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法〔ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984)〕、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、例えば、前記HCVのE2との結合活性測定法に従って活性を測定することにより、当該活性を見出すことのできる範囲であれば良い。好ましくは、前記「相同的ポリペプチド」の項で述べたような範囲、すなわち、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と71%以上の配列同一性を有する範囲内で改変の行われることが望ましい。
また、前記置換、欠失、付加又は挿入のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。
アミノ酸の置換を有する改変ポリペプチドにおいて、かかる置換の局在位置は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6相互においてアミノ酸残基の一致していない部位(第2図参照)が好ましい。すなわち、具体的には、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第4位、第5位、第7位、第8位、第9位、第10位、第11位、第13位、第16位、第17位、第20位、第21位、第24位、第27位、第28位、第31位、第37位、第54位、第56位、第58位、第59位、第63位、第67位、第68位、第71位、第72位、第74位、第77位、第78位、第81位、第89位、第92位、第93位が挙げられる。なお、第36位のフェニルアラニンは置換しないことが望ましい。
また、前記置換位置において置換されるアミノ酸の種類は、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の当該置換位置に存在するアミノ酸残基の中から選ばれることが好ましい。すなわち一例を示すと、配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第4位のアルギニンからグルタミン(ヒト→ウマ型)への置換や、第7位のリジンからアルギニン(ヒト→ウシおよびウマ型)への置換などが挙げられる。
さらに前記置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸との置換をも包含する。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
以上のような本発明の改変ポリペプチドの具体例としては、ラクダラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ131674)、ブタラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号;M92089)、ヤギラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X78902)、あるいはマウスラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:NM_008522)のC末端93アミノ酸の全長又はその一部(第1位〜第33位、若しくは第11位〜第53位の部分を含む)からなるポリペプチドが例示され得る。
以上のような改変ポリペプチドの作製法及び活性測定法は、前述の本発明のポリペプチドと同様である。
さらに、ラクトフェリンの特定のアミノ酸残基をアシル化又はアミノ化することにより、ラクトフェリンの抗HIV及び抗HCV活性が高まるという報告がなされており[J.pept.sci.,5(12),563−576(1999)]、本発明のポリペプチドにおいても、同様のアシル化およびアミノ化により活性の上昇することが期待される。
本発明はまた、本発明のポリペプチド(前記相同的ポリペプチドや改変ポリペプチドを含む)を含有するポリペプチドをも提供するものである。すなわち、前述のポリペプチドは、HCVのE2タンパク質との結合活性がある以上、当該ポリペプチドを含むポリペプチドにも、同様の結合活性の存することは明らかである。
好ましくは、ヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)、及びウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)上の該当位置であるC末端93アミノ酸部分より、N末端方向に伸長したポリペプチドが挙げられる。ただし、新規性の観点から、ジーンバンクアクセッション番号:X52941、M63502及びAJ010930のそれぞれに示されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、本発明の範疇から除かれる。
前記したように、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位の部分、及び第11位〜第53位の部分がHCVのE2タンパク質との結合活性を保持することが示された。従って、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第11位〜第33位(ヒトラクトフェリンの第610番目〜第632番目)の間に結合に重要な領域があると考えられる。
したがって、本発明により、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長又はその一部からなるポリペプチドであって、かつ当該アミノ酸配列の第11位〜第33位の部分を少なくとも含有することを特徴とする、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するポリペプチドも提供され得る。
以上述べた本発明の全てのポリペプチドは、HCVのE2タンパク質との結合活性を有するものであり、さらには、HCV感染を阻害、抑制又は低減させる性質を有するため、HCVの感染防御剤として有効に使用することができる。すなわち本発明は、本発明のポリペプチドを有効成分とする、HCVの感染防御剤を提供するものである。
本発明のHCV感染防御剤のうち好ましいものは、HCVへの結合に重要な配列部分を有する、より短いポリペプチドを有効成分とするものである。すなわち、前記した本発明のポリペプチド、特に、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位からなるポリペプチドや、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第11位〜第53位からなるポリペプチドが、本発明のHCV感染防御剤の好ましい有効成分として例示される。このようなポリペプチドは、ラクトフェリンそのものを投与する場合と比較して、より投与量が低減できるという効果や、経口投与時における吸収中のタンパク質の分解、及び静脈内注射時における副作用を低減させるといった効果を有し得る。
有効成分である本発明のポリペプチドは、そのまま投与することも出来るが、粒子状の剤形にして投与することもできる。剤形として、より具体的には、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤等の剤形にすることができる。投与量は、症状の程度、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常0.001mg/kg/回〜1000mg/kg/回であり、これを投与初期には連日投与し、その後、細胞内のウイルス量に応じて数日ないし数ヶ月に1回投与するのが好ましい。投与形態としては、剤形に応じて経口投与、動脈注射、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、皮内投与、肝臓に対する局所注射などが可能である。
また、有効成分である本発明のポリペプチドは血中で安定であることが好ましいが、その為に当該ポリペプチドを修飾しても良い。例えば、当該ポリペプチドとポリエチレングリコールとを結合させて血中半減期を長くすることが可能である。また、ポリペプチドのN末端への修飾やD−アミノ酸への置換によって、血中で安定なポリペプチドを作製することができる。
本発明のHCV感染防御剤は、具体的には、C型肝炎の治療剤又は予防剤として使用される。したがって、本発明により、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤が提供される。より具体的には、慢性C型肝炎や急性C型肝炎に使用される。特に、既存のインターフェロン療法に対して抵抗性を示すC型慢性肝炎の治療または予防において、有効に用いられる。
また、本発明のHCV感染防御剤は、インターフェロンと併用して使用することもできる。本発明のポリペプチドは、HCVと標的細胞との結合を直接阻害するものであるため、例えばインターフェロン投与終了時におけるインターフェロン抵抗性ウイルスの再燃を、より減少させることが可能となる。
さらに、本発明によれば、慢性C型肝炎の治療又は予防方法が提供される。かかる治療又は予防方法は、本発明のポリペプチドを、細胞へのHCVの結合を妨げるに十分な治療上有効量、投与対象物に投与することを1つの特徴とする。本発明の治療又は予防方法においては、本発明のHCV感染防御剤、本発明の慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を治療上有効量投与してもよい。また、本発明の治療又は予防方法においては、インターフェロンをさらに併用投与してもよい。
前記投与対象物としては、慢性C型肝炎を罹患した個体、慢性C型肝炎を罹患する恐れのある個体などが挙げられる。
本発明はまた、前記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供するものである。本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態であってもRNAの形態であってもよい。これら本発明のポリヌクレオチドは、ヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)、あるいはウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)のcDNA配列を基にして、当業者であれば容易に製造することできる。詳しくは、前記本発明のポリペプチドの項を参照されたい。
このような本発明のポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、前述の本発明のポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド、配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:5からなる群より選ばれた塩基配列からなるポリヌクレオチド、該塩基配列の一部からなるポリヌクレオチドなどが挙げられる。また、本発明のポリヌクレオチドには、前記配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:5からなる群より選ばれた塩基配列などと、縮重若しくは核酸多型を介して異なる配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列の一部からなるポリヌクレオチドも含まれる。
本発明のポリヌクレオチドの長さは、前記アミノ酸配列の全長を含有したポリペプチドの場合、少なくとも279ヌクレオチド、好ましくは、279〜1500ヌクレオチド、より好ましくは、279〜900ヌクレオチド、さらに好ましくは、279〜600ヌクレオチド、さらに好ましくは、279〜300ヌクレオチドが望ましい。かかるポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの製造、前記治療又は予防剤への応用などに用いられうる。
また、「塩基配列の一部」は、本発明のポリペプチドの製造、前記治療又は予防剤への応用などに用いる場合、前記アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分を含有するポリペプチドに対応して、少なくとも99ヌクレオチド、好ましくは、99〜276ヌクレオチド、より好ましくは、99〜240ヌクレオチド、さらに好ましくは、99〜180ヌクレオチド、さらに好ましくは、99〜150ヌクレオチドが望ましく、第11位〜第53位の部分を含有するポリペプチドに対応して、少なくとも129ヌクレオチド、好ましくは、129〜276ヌクレオチド、より好ましくは、129〜240ヌクレオチド、さらに好ましくは、129〜180ヌクレオチドが望ましい。
さらに、「塩基配列の一部」は、ポリヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いて、本発明のポリペプチドを製造する場合、少なくとも12ヌクレオチド、好ましくは、15〜200ヌクレオチド、より好ましくは、15〜100ヌクレオチド、さらに好ましくは、15〜50ヌクレオチドが望ましい。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを製造する際に有効に用いられ、該ポリペプチドを効率よく供給することを可能にしうる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
発現ベクターの構築と組換えタンパク質の発現及び精製
1)ヒトラクトフェリンの部分ポリペプチドを発現する発現ベクターの構築
白人種正常ヒト乳腺組織よりISOGEN(日本ジーン社製)を用いてRNAを抽出した。得られたRNAと、オリゴdTプライマー[ギブコ(Gibco)社製]とを用いて逆転写酵素SuperScriptTMII(Gibco社製)による逆転写反応を行ない、引き続き、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いて完全長のヒトラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:X52941)cDNAを増幅した。なお、塩基配列に関して、配列番号:1に記載の塩基配列の第270位が、ジーンバンクアクセッション番号:X52941ではcであるが、実際に得られたcDNAではtであった。これは遺伝子多型によるものと考えられる。
さらに、発現させたい領域(以下の▲1▼〜▲6▼)を、それぞれに増幅するためのプライマーセットと、KOD DNAポリメラーゼとを用いたPCRにより増幅した。増幅産物を、IPTG誘導により還元タンパク質のチオレドキシン及びHis tagとの融合タンパク質として発現させることのできるpET32a[ノバージェン(Novagen)社製]のBamHI−HindIII siteに組み込んだ。以上の操作により、ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸(以下の▲1▼)と、それをさらに小さくした5種類の領域(以下の▲2▼〜▲6▼)を大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。
▲1▼ヒトラクトフェリン(600−692)
(アミノ酸配列;配列番号:2、塩基配列;配列番号:1)
▲2▼ヒトラクトフェリン(600−652)
(配列番号:2の第1位〜第53位、配列番号:1の第1位〜第159位)
▲3▼ヒトラクトフェリン(610−692)
(配列番号:2の第11位〜第93位、配列番号:1の第31位〜第279位)
▲4▼ヒトラクトフェリン(624−692)
(配列番号:2の第25位〜第93位、配列番号:1の第73位〜第279位)
▲5▼ヒトラクトフェリン(640−692)
(配列番号:2の第41位〜第93位、配列番号:1の第121位〜第279位)
▲6▼ヒトラクトフェリン(653−692)
(配列番号:2の第54位〜第93位、配列番号:1の第160位〜第279位)
2)ウマ及びウシラクトフェリンの部分ポリペプチドを発現する発現ベクターの構築
前記1)と同様の方法で、ウマ末梢血リンパ球から抽出したRNAを用いて逆転写反応を行い、ウマラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:AJ010930)のcDNAをKOD DNAポリメラーゼにより増幅した。得られた増幅産物を鋳型としてカルボキシル末端93アミノ酸をコードする領域(アミノ酸配列;配列番号:6、塩基配列;配列番号:5)をさらに増幅し、pET32aのBamHI−HindIII siteへ組み込んだ。
また、ウシ乳腺組織より抽出したRNAを用いて同じく逆転写反応を行い、ウシラクトフェリン(ジーンバンクアクセッション番号:M63502)cDNAを増幅した。得られた増幅産物を鋳型としてカルボキシル末端93アミノ酸をコードする領域(アミノ酸配列;配列番号:4、塩基配列;配列番号:3)をさらに増幅し、pET32aのBamHI−HindIII siteに組込み込んだ。
3)ヒトCD81のラージエクストラループを発現する発現ベクターの構築
ヒトCD81のラージエクストラループはHCVのE2タンパク質と結合することが知られており、HCV受容体の候補となっている[Pileri et al,Science,282(5390),938−941(1998)]。
ラクトフェリンとHCVのE2タンパク質との結合の強さと比較するため、SV40ラージT抗原で不死化したヒト肝細胞であるPH5CH8細胞よりRNAを抽出した。得られたRNAを鋳型とし、オリゴdTプライマーとを用いて逆転写反応を行い、ヒトCD81(ジーンバンクアクセッション番号:XM_006475)を含むcDNAをKOD DNAポリメラーゼを用いて増幅した。得られた増幅産物を鋳型としてさらに113番目から201番目のアミノ酸を含む領域をKOD DNAポリメラーゼを用いて増幅し、その増幅産物をpET32aのBamHI−HindIII siteに組込み、ヒトCD81ラージエクストラループの発現ベクターを構築した。
4)組換えタンパク質の発現及び精製
前記1)〜3)で得られた発現ベクターを宿主大腸菌AD494(DE3)(Novagen)に形質転換した。その後10mlのLB培地で37度で16時間培養したものを、50μg/mlのアンピシリンと15μg/mlのカナマイシンを添加した200mlのLB培地に加え37度で4時間培養した。その後、培養物に、1mMのIPTGを加え、さらに4〜5時間培養した。得られた培養物を、3000×gで10分遠心分離した。ついで、−80度でペレットを一晩冷凍し、10mlのB−PER登録商標〔ピアス(Pierce)社製〕にてペレットを溶解し、室温で15分攪拌した。その後、得られた混合物を、20000×gで30分遠心分離した。得られた上清を可溶性画分、ペレットを不溶性画分として取り扱った。
不溶性分画は、再度、200μg/mlのlysozyme(Sigma)を含むB−PER登録商標10mlでペレットを溶解し、室温で攪拌した。ついで、得られた混合物を、20000×gで30分遠心分離した。その後ペレットを、20mlの10倍希釈B−PER登録商標で溶解し、20000×gで30分遠心分離する操作を3回繰り返し、最終的に得られたペレットを6Mの尿素を含んだBinding buffer〔ノバージェン(Novagen)社製〕にて溶解して精製に用いた。
精製は、His−bind resin(Novagen社製)とHis・Bind登録商標Purification Kit(Novagen社製)を用い、製造者のマニュアルに従って行った。不溶性分画ではすべてのステップを、6M尿素存在下で行い、12%SDS−PAGEにて確認を行った。
実施例2
ファーウェスタンブロッティング(1)
実施例1で得られた精製ヒトラクトフェリン断片タンパク質が、HCVのエンベロープタンパク質であるE2タンパク質と結合するかをファーウェスタンブロッティングにて検討した。プローブとして、CHO細胞にて培養液中に分泌させたE2タンパク質[Inudoh et al,Vaccine,14(17/18),1590−1596(1996)]を用いた。
実施例1で得られた精製タンパク質をそれぞれ2μg用いて12%SDS−PAGEを行いPVDF膜に転写した。その後、2%のBSA(Sigma社製)を添加したN−buffer[50mM Tris(pH7.5),150mM NaCl,0.1%Triton−X,0.25%gelatin]にて1時間ブロッキングした。
E2タンパク質を含むCHO細胞の培養上清(総タンパク質量250μg)を、同じくBSAを添加したN−buffer 5mlで希釈した。得られた溶液と前記PDVF膜とを接触させて、室温で60分結合反応させた。前記PDVF膜を、N−bufferで10分x3回洗浄後、再び2%のBSA(Sigma)を添加したN−bufferで1時間ブロッキングした。
その後、ラット抗HCVE2モノクローナル抗体(Mo−12)[Inudoh et al,Microbiol Immunol.,42(12),875−877(1998)]を5mlのN−bufferで1000倍希釈した溶液と前記PVDF膜とを接触させ、60分反応を行った。前記PVDF膜を、0.1%Tris−saline solution[10mM Tris(pH7.5),150mM NaCl,0.1%Tween20]にて5分x3回洗浄後、1000倍希釈したHRP標識抗ラット二次抗体(Amersham Pharmacia cat.NA935)を加えた0.1%Tris−saline solutionと接触させて、30分反応を行った。ついで、前記PDVF膜を、0.1%Tris−saline solutionにて20分x3回洗浄した。ルネッサンスTMルミノールウェスタンブロット化学発光検出試薬プラス(NEN Life Science)にて化学発光させ、X線フィルム(KODAK BioMax)で感光した。
ヒト、ウシ、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸部分のファーウエスタンブロッティングの結果を第1図に示す。第1図のレーン1〜7は以下の結果を示す。
レーン1:空ベクターpET32aを発現させ得られたチオレドキシンタグ(22kDa)
レーン2:ヒトラクトフェリン(Sigma社製,L3770)
レーン3:ヒトトランスフェリン(Sigma社製,T6549,80kDa)
レーン4:ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸
レーン5:ウシラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸
レーン6:ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸
レーン7:ヒトCD81の113番目から201番目のアミノ酸
(このうちレーン4〜7はpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用)
その結果、ネガティブコントロールのチオレドキシンタグと全長のヒトトランスフェリンは、HCVのE2タンパク質との結合が認められなかったが、ヒト、ウシ、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸は、ポジティブコントロールのヒトラクトフェリン同様にHCVのE2タンパク質と結合し、その強度はヒトCD81に比べ二倍程度強いことが示された。
第2図は、ヒト、ウシ、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸配列のアミノ酸の同一性を示したものである。図中、*で表示されるアミノ酸はヒトラクトフェリンに対して同一のアミノ酸であることを示す。ヒトラクトフェリン(100%)に対する配列同一性は、ウシラクトフェリンで74.2%、ウマラクトフェリンで71.0%であった。この値は、ヒトトランスフェリン(59.1%)に対する配列同一性及びウシトランスフェリン(51.6%)に対する配列同一性と比べて高いものであった。
実施例3
ファーウェスタンブロッティング(2)
ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチド(実施例1−1)の▲1▼〜▲6▼参照)につき、実施例2と同様のファーウエスタンブロッティングを行った結果を第3図に示す。第3図のレーン1〜8は以下の結果を示す。
レーン1:ヒトラクトフェリン(Sigma社製,L3770)
レーン2:ヒトトランスフェリン(Sigma社製,T6549,80kDa)
レーン3:ヒトラクトフェリン(600−692)
レーン4:ヒトラクトフェリン(600−652)
レーン5:ヒトラクトフェリン(610−692)
レーン6:ヒトラクトフェリン(624−692)
レーン7:ヒトラクトフェリン(640−692)
レーン8:ヒトラクトフェリン(653−692)
〔レーン3〜8のうちレーン4のみ部分精製、他はそれぞれをpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用。なお部分精製とは、実施例1−4)の第1段落までの工程を行ったものを指す〕
この結果をまとめたものを第4図に示す。ヒトラクトフェリンとHCVのE2タンパク質の結合には、少なくともヒトラクトフェリンの610番目から652番目のアミノ酸(配列番号:2の第11位〜第53位)の間に結合に重要な領域があることが予想された。
実施例4
ファーウェスタンブロッティング(3)
ヒトラクトフェリンの610番目〜652番目のアミノ酸配列及びその前後の配列につき、実施例3と同様のファーウエスタンブロッティングを行った結果を第5図に示す。第5図のレーン1〜10は以下の結果を示す。
レーン1:ヒトラクトフェリン(Sigma社製,L3770)
レーン2:ヒトトランスフェリン(Sigma社製,T6549,80kDa)
レーン3:ヒトラクトフェリン(600−692)
レーン4:ヒトラクトフェリン(600−652)
レーン5:ヒトラクトフェリン(610−652)
レーン6:ヒトラクトフェリン(610−652)
(635番目のフェニルアラニンをロイシンに置換したもの)
レーン7:ヒトラクトフェリン(610−642)
レーン8:ヒトラクトフェリン(620−652)
レーン9:ヒトラクトフェリン(620−642)
レーン10:空ベクターを発現させ得られたチオレドキシンタグ(22kDa)
(レーン3〜10はそれぞれpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用)
この結果より、実施例3で予測したヒトラクトフェリン610番目から652番目(配列番号:2の第11位〜第53位)の領域がHCVのE2タンパク質と結合することが明らかになった。
さらに、635番目(配列番号:2の第36位)のフェニルアラニンをロイシンに置換することにより結合がほとんど認められなくなったことより、この結合にはヒトラクトフェリンの635番目のフェニルアラニンが重要であることが示された。
実施例5
ファーウェスタンブロッティング(4)
ヒトラクトフェリンの600番目〜652番目のアミノ酸配列及びさらにそれを縮めた配列につき、実施例2〜4と同様のファーウエスタンブロッティングを行った結果を第6図に示す。第6図のレーン1〜7は以下の結果を示す。
レーン1:ヒトラクトフェリン(600−622)
レーン2:ヒトラクトフェリン(600−627)
レーン3:ヒトラクトフェリン(600−632)
レーン4:ヒトラクトフェリン(600−637)
レーン5:ヒトラクトフェリン(600−642)
レーン6:ヒトラクトフェリン(600−647)
レーン7:ヒトラクトフェリン(600−652)
(レーン1〜7はそれぞれpET32aで発現させ精製したタンパク質を使用)
この結果より、ヒトラクトフェリン600番目から632番目のアミノ酸(配列番号:2の第1位〜第33位)を有していればHCVのE2タンパク質と結合することが明らかとなった。
実施例6
前記実施例5などにおいて、HCVのE2蛋白質との結合が認められたヒトラクトフェリン(600−632):
VVSRMDKVER LKQVLLHQQA KFGRNGSDCP DKF(配列番号:7)と、
該ポリペプチドに相当する配列部分であるウシラクトフェリン(599−631):
VVSRSDRAAH VKQVLLHQQA LFGKNGKNCP DKF(配列番号:8)
とを合成した。
前記ポリペプチドを用い、培養肝細胞へのHCVの感染に対する防御活性を検討した。
ヒト肝細胞株PH5CH8を、肝細胞培養用培地〔組成:F12培地500ml,D−MEM 500ml,1%ウシ胎仔血清,100ng/ml EGF,200μg/ml カナマイシン,10μg/ml ゲンタマイシン〕100μlを含むコラーゲン処理96穴プレートに、5x104細胞/ウエルとなるように播種し、37℃で2日間培養した。他方、HCVウイルス陽性ヒト血清(1B−2/genotype 1b:2x104コピーHCVRNAを含む)と、前記ヒトラクトフェリン由来ポリペプチド又はウシラクトフェリン由来ポリペプチドとを混合し、4℃で60分間反応させた。
得られた混合物を、PH5CH8細胞に添加して37℃で90分間インキュベートした。ついで、PH5CH8細胞を、前記肝細胞培養用培地で3回洗浄し、さらに32℃で24時間培養した。
その後、細胞から常法によりRNAを回収し、0.5μgRNA中に含まれるHCV RNAをLightCycler(Roche Diagnostics)を用いて以下の文献(Nozaki A.and Kato N.,Quantitative Method of Intracellular Hepatitis C Virus RNA using LightCycler PCR.Acta Medica Okayama,56(2),107−110(2002))に従い定量した。
その結果、第7図のパネルAに示すように、ヒトラクトフェリン(600−632)は、濃度依存的にHCVの培養肝細胞への吸着を防御し、実際に、感染をも防御することが明らかとなった。また、第7図のパネルBに示すように、ウシラクトフェリン(599−631)も、濃度依存的にHCVの培養肝細胞への吸着を防御し、感染を防御する活性があることがわかったが、その活性は、ヒト由来のものと比べて低かった。
産業上の利用可能性
本発明により、HCVのE2タンパク質に結合活性を有するHCV結合性ポリペプチドが提供される。本発明によれば、HCVのE2タンパク質に結合することにより、HCVの肝細胞への結合を防ぎ、さらには、感染を防御することができ、それにより慢性C型肝炎などを治療または予防することが可能になる。したがって、慢性C型肝炎の治療剤または予防剤、慢性C型肝炎の治療または予防方法が提供される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図は、ヒト、ウシ及びウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸部分とHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、空ベクターpET32aを発現させて得られたチオレドキシンタグ(22kDa)の結果を、レーン2は、ヒトラクトフェリンの結果を、レーン3は、ヒトトランスフェリンの結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸の結果を、レーン5は、ウシラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸の結果を、レーン6は、ウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸の結果を、レーン7は、ヒトCD81(ジーンバンクアクセッション番号:XM_006475)の113番目〜201番目のアミノ酸の結果を示す。
第2図は、ヒト、ウシ及びウマラクトフェリンのカルボキシル末端93アミノ酸配列のアミノ酸の同一性を示したものである。図中、*で表示されるアミノ酸はヒトラクトフェリンと同一のアミノ酸であることを示す。
第3図は、ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、全長のヒトラクトフェリンの結果を、レーン2は、全長のヒトトランスフェリンの結果を、レーン3は、ヒトラクトフェリン(600−692)の結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリン(600−652)の結果を、レーン5は、ヒトラクトフェリン(610−692)の結果を、レーン6は、ヒトラクトフェリン(624−692)の結果を、レーン7は、ヒトラクトフェリン(640−692)の結果を、レーン8は、ヒトラクトフェリン(653−692)の結果を示す。
第4図は、第2図および第3図に示される結果をまとめた図である。図中の数値はヒトラクトフェリンおよびヒトCD81のアミノ酸番号を示す。
第5図は、ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、全長のヒトラクトフェリンの結果を、レーン2は、全長のヒトトランスフェリンの結果を、レーン3は、ヒトラクトフェリン(600−692)の結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリン(600−652)の結果を、レーン5は、ヒトラクトフェリン(610−652)の結果を、レーン6は、ヒトラクトフェリン(610−652)(ただし635番目のフェニルアラニンをロイシンに置換)の結果を、レーン7は、ヒトラクトフェリン(610−642)の結果を、レーン8は、ヒトラクトフェリン(620−652)の結果を、レーン9は、ヒトラクトフェリン(620−642)の結果を、レーン10は、空ベクターを発現させ得られたチオレドキシンタグ(22kDa)の結果を示す。
第6図は、ヒトラクトフェリンの種々の部分ポリペプチドとHCVのE2タンパク質との結合を調べたファーウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、レーン1は、ヒトラクトフェリン(600−622)の結果を、レーン2は、ヒトラクトフェリン(600−627)の結果を、レーン3は、ヒトラクトフェリン(600−632)の結果を、レーン4は、ヒトラクトフェリン(600−637)の結果を、レーン5は、ヒトラクトフェリン(600−642)の結果を、レーン6は、ヒトラクトフェリン(600−647)の結果を、レーン7は、ヒトラクトフェリン(600〜652)の結果を示す。
第7図は、培養肝細胞へのHCVの感染に対するヒトラクトフェリン(600−632)及びウシラクトフェリン(599−631)それぞれの影響を調べた結果を示す図である。図中、パネルAは、ヒトラクトフェリン(600−632)、パネルBは、ウシラクトフェリン(599−631)の結果を示す。
Claims (17)
- 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列における第1位〜第33位の部分又は該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を少なくとも含有してなる、HCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチド。
- (I)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の全長、又は
(II)前記(I)記載のアミノ酸配列の一部からなる配列であって、かつ該配列が、アミノ酸配列における第1位〜第33位の部分若しくは該アミノ酸配列における第11位〜第53位の部分を含有するものである配列、
を少なくとも含有してなる、請求項1記載のHCV E2タンパク質との結合活性を有するポリペプチド。 - 配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位の部分を少なくとも含有してなる、請求項1又は2記載のポリペプチド。
- 配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位の部分を少なくとも含有してなる、請求項1又は2記載のポリペプチド。
- 下記(a)〜(x):
(a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(b)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(c)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(d)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(e)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(f)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(g)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、
(h)配列番号:2に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位、
(i)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(j)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(k)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(l)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(m)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(n)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(o)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、
(p)配列番号:4に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位、
(q)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第53位、
(r)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第53位、
(s)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第11位〜第93位、
(t)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第93位、
(u)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第33位、
(v)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第38位、
(w)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第43位、及び
(x)配列番号:6に示されたアミノ酸配列の第1位〜第48位
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなる、請求項1又は2記載のポリペプチド。 - 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列と少なくとも71%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有するポリペプチド。 - 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列の全長からなり、かつ下記(i)及び(ii):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性を有するポリペプチド。 - 配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の一部からなる配列において第36位のフェニルアラニン以外の少なくとも1残基に、置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列の全長からなり、かつ下記(i)又は(i’):
(i)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第33位に該当する部分、若しくは第11位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
(i’)配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第1位〜第53位に該当する部分を少なくとも含有する、
の特性と、
下記(ii):
(ii)HCV E2タンパク質との結合活性を有する、
の特性とを有するポリペプチド。 - 置換位置が、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列の第4位、第5位、第7位、第8位、第9位、第10位、第11位、第13位、第16位、第17位、第20位、第21位、第24位、第27位、第28位、第31位、第37位、第54位、第56位、第58位、第59位、第63位、第67位、第68位、第71位、第72位、第74位、第77位、第78位、第81位、第89位、第92位及び第93位から選ばれるものである、請求項7又は8記載のポリペプチド。
- 前記置換位置において置換されるアミノ酸が、配列番号:2、配列番号:4及び配列番号:6からなる群より選ばれたアミノ酸配列上の当該置換位置に存在するアミノ酸の中から選ばれるものである、請求項9記載のポリペプチド。
- 細胞へのHCVの感染に対する阻害能を有する、請求項1〜10いずれか1項に記載のポリペプチド。
- 請求項1〜11いずれか1項に記載のポリペプチドを含有してなるポリペプチド(ただしジーンバンクアクセッション番号:X52941、M63502及びAJ010930のそれぞれに示されたアミノ酸配列からなるポリペプチドを除く)。
- 請求項1〜12いずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有してなる、HCVの感染防御剤。
- 請求項1〜12いずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有してなる、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤。
- 請求項1〜12いずれか1項に記載のポリペプチドをコードしてなるポリヌクレオチド。
- 請求項1〜12いずれか1項に記載のポリペプチドを、細胞へのHCVの結合を妨げるに十分な治療上有効量、投与対象物に投与することを特徴とする、慢性C型肝炎の治療又は予防方法。
- HCVの感染防御剤、慢性C型肝炎の治療剤又は予防剤を製造するための請求項1〜12いずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
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