JPS632786Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は重力に対して加熱部が上方に位置する
トツプヒート用複合ヒートパイプに関するもので
ある。

一般にヒートパイプは内壁面にウイツクを設け
た管状体の内部を減圧して作動液を封入したもの
で、この一端を作動液が蒸発する加熱部、他端を
作動液が凝縮する放熱部として作動液の蒸発→凝
縮サイクルに伴なう急速な熱輸送を行なう高性能
な熱伝達装置である。

このヒートパイプにおいてその熱輸送量の限界
はウイツクの最大毛細管力に依存する。即ち最大
熱輸送量は放熱部で凝縮した作動液をウイツクの
毛細管力により加熱部側へ還流させる量によつて
定まるもので、この作動液が蒸発する加熱部への
還流量が少なくなるとこれに伴つて最大熱輸送量
も減少してくる。

またこの毛細管力は重力など体積力に影響さ
れ、加熱部が下方にある場合には重力の作用と相
俟つて作動液は加熱部側に十分還流されるが、加
熱部が重力に対して上方にあるトツプヒートの場
合には、下方に位置する放熱部で凝縮した作動液
を重力にさからつてウイツクの毛細管力により上
方の加熱部に引上げるため作動液の還流量が少な
くなる。従つてトツプヒートの条件においてはウ
イツクの毛細管力に限界があるため最大熱輸送量
は小さくなり、長尺のヒートパイプは実用に適さ
ない。

このため上下方向に長い距離を熱輸送させる手
段として、従来複数本の短かいヒートパイプをそ
の長手方向に沿つて直線状に接続して複合した長
尺のヒートパイプがトツプヒート用として開発さ
れている。

しかしながらこの複合したヒートパイプは各ユ
ニツトの端部における接続部分での熱抵抗が極め
て大きいため全体として十分な熱輸送量が得られ
ない欠点があつた。

本考案はかかる欠点に鑑みヒートパイプの各ユ
ニツトの接続部分における熱抵抗を減少せしめる
と共に、全体をコンパクトな構成したトツプヒー
ト用複合ヒートパイプを開発したものである。

即ち本考案は管状体の内部に、その長手方向に
沿つた隔壁を設けて複数個に区分された長尺の中
空部を形成し、この中空部の内壁面にウイツクを
設けると共に、前記各中空部を所望の間隔で且つ
隣接する中空部とは異なる位置で夫々隔離して独
立した複数個のヒートパイプユニツトを形成して
なるトツプヒート用複合ヒートパイプである。

以下本考案の実施例を図面を参照して詳細に説
明する。

第１図は本考案の一実施例を示すもので、銅、
アルミニウムなど熱伝導性に優れた金属パイプ
（管状体）１の内部に、その長手方向に沿つて同
様に熱伝導性に優れた金属からなる隔壁２を設け
て２つに区分された長尺の中空部３，３を形成
し、この中空部３，３の内壁面にウイツク４を設
けると共に、前記中空部３，３をその長手方向に
沿つて所望の間隔で、且つ隣接する中空部３とは
異なる位置で夫々隔離板５…によつて隔離して、
この隔離した短尺の中空部３′…内に減圧状態で
作動液６を封入して独立した複数個のヒートパイ
プユニツト７…を形成したものである。

前記ウイツク４としては焼結体、金属メツシ
ユ、グラスフアイバーなど多孔質体の他、多数の
細溝など毛細管作用を有するものであれば何れの
ものでもよい。また作動液６としては水、フレオ
ン、アルコール、アンモニアなどの他、比較的融
点の低い金属が用いられる。

なお上記構成の複合ヒートパイプを製造する方
法としては例えば押出し成型によつて第２図に示
す如く中央部に隔壁２を一体に形成した金属パイ
プ１を製造した後、この隔壁２で区分された長尺
の中空部３，３の内壁面にウイツク４を設ける。
次に前記金属パイプ１の長手方向に沿つて隔離板
５を設ける位置に夫々スリツト８…を形成し、こ
のスリツト８に半円形状をなす隔離板５を嵌込ん
で溶接して、金属パイプ１の長手方向に沿つて交
互にずれた状態の中空部３′を形成する。次にこ
の各中空部３′の壁面（金属パイプ１の壁面）に
図示しない排気孔を設けて、ここから作動液６を
注入した後減圧するか、若しくは減圧した後作動
液６を注入し、しかる後ブラインドリベツトで前
記排気孔を密閉して夫夫独立したヒートパイプユ
ニツト７…を形成する。なお、この場合ブライン
ドリベツトの代りに通気孔を形成した細管を取付
けて、封じ切る方法でも良い。

しかして上記の如く構成されたトツプヒート用
複合ヒートパイプは上下方向に立設又は傾むけて
機器に取付け、ヒートパイプの上端側を加熱部
Ａ、下端側を放熱部Ｂとする。この状態で上端側
の加熱部Ａを加熱すると、各ヒートパイプユニツ
ト７においてその上端側の加熱部ａのウイツク４
中に保持されている作動液６は蒸熱潜熱を奪つて
蒸発する。高温部ａ付近の蒸気圧は低温度の放熱
部ｂ付近の蒸気圧より高くなりこの圧力勾配によ
り、蒸気は下方の放熱部ｂへ流れ、疑縮潜熱を放
出して凝縮する。この凝縮した作動液６はウイツ
ク４の毛細管力により上方の加熱部ａに引あげら
れてここで再び蒸発して以後同様のサイクルをく
り返すことにより各ユニツトにおいて加熱部ａか
ら放熱部ｂへ熱輸送を行うものである。第１図に
は余分な作動流体が下部に停留しているがこれは
必ずしも必要でなくウイツク中にふくまれる程度
の作動流体量であれば良い。

この場合ヒートパイプユニツト７は交互に配置
してあるのでヒートパイプユニツト７の放熱部ｂ
は隔壁２を介して横方向に隣接するヒートパイプ
ユニツト７の加熱部ａと広い伝熱面積で接続する
ことができる。隔離板５の下側にウイツク４とつ
ながる別のウイツク（図示せず）を設ければ隔離
板５を介しても熱的につなげることができ、さら
に有効となることはもちろんである。このように
接続することにより接続の熱抵抗が少く、効率よ
く順次下方のヒートパイプユニツト７に熱輸送を
行なうことができる。このように順次下方に向つ
てヒートパイプユニツト７…に熱輸送して行くこ
とにより複合ヒートパイプ全体として優れた熱伝
達効率が得られるものである。

第３図乃至第５図は本考案の他の実施例を示す
ものである。

第３図は隔壁２で区分された金属パイプ１の外
壁面を絞り加工によりその長手方向に沿つて交互
に圧潰しこの圧潰した壁面を隔離板５として独立
したヒートパイプユニツト７…を形成し、その放
熱部ｂにおいて隔壁２を介して横方向に隣接する
ヒートパイプユニツト７の加熱部ａと接続した構
造のものである。

また第４図に示すものは中央部に隔壁２を設け
た角筒状の金属パイプ１を用い、隔壁２で区分さ
れた長尺の中空部３，３に夫々隔離板５…をその
取付位置をづらして交互に設けたものである。

更に第５図は６板の隔壁２…により等間隔に区
分された六角筒状の金属パイプ１を用い、各中空
部３…を夫々取付位置をずらして交互に取付けた
隔離板５…で隔離して独立したヒートパイプユニ
ツト７…を構成したものである。

以上説明した如く本考案に係るトツプヒート用
複合ヒートパイプによれば、各ヒートパイプユニ
ツトをその長手方向に沿つて交互にずらして接合
した構造とすることにより、ヒートパイプユニツ
トの上部を加熱部、下部を放熱部とした広い伝熱
面積が得られ、従来の如く上端部、および下端部
のみを伝熱面としたものに比べて熱抵抗が少なく
全体として優れた熱輸送を行なうことができ、高
低差の大きな伝熱機構として顕著な効果を有する
ものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す一部切欠斜視
図、第２図は第１図に示すヒートパイプを製造し
ている状態を示す斜視図、第３図乃至第５図は本
考案の夫々異なる他の実施例を示す斜視図であ
る。 １……金属パイプ（管状体）、２……隔壁、３，
３′……中空部、４……ウイツク、５……隔離板、
６……作動液、７……ヒートパイプユニツト、
Ａ，ａ……加熱部、Ｂ，ｂ……放熱部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 管状体の内部にその長手方向に沿つた隔壁を設
   けて複数個に区分された長尺の中空部を形成し、
   この中空部の内壁面にウイツクを設けると共に、
   前記各中空部を所望の間隔で且つ隣接する中空部
   とは異なる位置で夫々隔離して独立した複数個の
   ヒートパイプユニツトを形成してなるトツプヒー
   ト用複合ヒートパイプ。