JPS6260719B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は破裂音を音韻別に識別する破裂音識別
装置に関するものである。

従来、破裂音の識別はマイクロホンにより検出
した音声波より破裂音に特徴的な周波数成分を周
波数フイルター等で検出することにより行つてい
るが、破裂音の持続時間は約10〜20msと短く破
裂音の各音韻を確実に識別する方法は知られてい
ない。

本発明の目的は破裂音の各音韻を簡便，確実、
かつリアルタイムで識別する破裂音識別装置を提
供することである。

実験によれば、破裂音発話時の口気流の流速波
形は各音韻によつて空間的に特有なパターンを示
す。一般的に破裂音は舌又は唇によつて形作られ
る口中の閉鎖によつて口内圧が上昇し、それが一
気に開放される時に生ずる音であるから、口中の
閉鎖点の形成される位置により破裂時の口気流の
方向が異なる現象が見られる。例えば、／Ｐ／の
有声音である／ｂ／は唇によつて閉鎖が形成され
るので、開放に伴う口気流はほぼ正面の方向に流
出する。同様に／ｋ／と／ｑ／は口中の奥の方で
閉鎖を形成し、／ｔ／と／ｄ／は舌と歯茎で閉鎖
を比較的前方で形成するため、それぞれ口気流の
方向が前方やや下方、前方下方に向いている。第
１図ａは実験による結果例を示すもので、特定の
発話者により破裂音／pa／，／ta／，／ka／と
それぞれの有声音である／ba／，／da／，／
ga／を発話した場合の口気流の分布パターンを
測定したものである。ｏは口の位置を示すが、破
裂音／ｐ／，／ｂ／は水平線oxに対して、ほぼ
０゜〜20゜の位置に口気流の方向が分布してい
る。破裂音／ｋ／，／ｑ／の口気流はこれに対し
て20゜〜50゜の位置に分布しており、破裂音／
ｔ／，／ｄ／は45゜〜70゜の位置に口気流の方向
が分布している。したがつてこれらの口気流の検
出は、第１図ｂに示すように複数個の口気流検出
器１ａ〜１ｗを口を中心に一定の各度を持つて配
置することにより可能となり、各音韻に特有な口
気流パターンを標準パターンとして記憶しておけ
ば、未知の口気流パターン入力に対しては、口気
流標準パターンとの一致度を見ることにより、各
音韻pb，td，kqに分離することができる。しか
しながら、破裂音発話時の口気流の方向は音韻に
よつてほぼ前記のように分離できるが、発話者が
異なつたり、同一発話者でも発声の仕方によつて
は口気流の方向が少しずつ異なり、特に／ｋ、
ｑ／と／ｔ，ｄ／の境界がはつきりせず、分離が
困難な場合がある。これに対して本発明による破
裂音識別装置では、複数の口気流検出器からの出
力信号を隣接した口気流検出器からの出力信号に
より側抑制をかけ、口気流パターンの境界を強調
し、各音韻の口気流標準パターンとの一致度によ
る破裂音音韻識別を容易にしている。

以下、本発明の実施例について図面とともに説
明する。

第２図は、本発明の破裂音識別装置の一実施例
を示すブロツク図である。

図において１ａ，１ｂ，１ｃ…１ｖ，１ｗは発
話時の口気流の流速および流速の変化（加速度）
を検出する複数個の口気流検出器であり、たとえ
ば、熱線式風速検出器や風防を除去したマイクロ
ホンなどで構成される。これらの口気流検出器１
ａ，１ｂ，１ｃ…１ｖ，１ｗは第１図ｂに示され
るように発話者の口の前方で発話にともなう口気
流が検出できる距離に、口を中心にしてそれぞれ
異なる角度をなすように分散して配置される。２
ａ，２ｂ，２ｃ，…２ｖ，２ｗはそれぞれ口気流
検出器１ａ，１ｂ，１ｃ…１ｖ，１ｗの出力信号
を隣接する口気流検出器の出力信号の大きさによ
り抑制する側抑制回路である。この側抑制回路２
ａ，…２ｗは一種の空間的な微分を行い、信号が
変化するところを強調し、特徴を際立たせる効果
がある。３は口気流標準パターン記憶回路で、破
裂音の各音韻に特徴的な口気流パターンを記憶し
ているメモリである。４は口気流パターン識別回
路で、側抑制回路２ａ…２ｗの出力信号のパター
ンと口気流標準パターン記憶回路３に記憶されて
いる破裂音の口気流標準パターンを比較し両者の
一致度により各音韻を識別する。

第３図に側抑制回路２ａ，２ｂ…２ｖ，２ｗの
詳細を示しさらに説明する。

図において、２１ｂは口気流検出器１ａの出力
と口気流検出器１ｃの出力とを加算する加算回
路、２２ｂは加算回路２１ｂの出力を1/2に減衰
する1/2減衰回路、２３ｂは口気流検出器１ｂの
出力から1/2減衰回路２２ｂの出力を減算する減
衰回路、２４ｂは減衰回路２３ｂの出力により利
得が変化する可変利得増巾器である。２１ｃは口
気流検出器１ｂの出力とさらに隣接するもう一方
（ch4）の口気流検出器の出力を加算する加算回
路、２２ｃは加算回路２１ｃの出力を1/2に減衰
する1/2減衰回路、２３ｃは口気流検出器１ｃの
出力から1/2減衰回路２２ｃの出力を減算する減
算回路、２４ｃは減算回路２３ｃの出力により利
得が変化する可変利得増巾器である。２３ａは口
気流検出器１ａの出力から口気流検出器１ｂの出
力を減算する減算回路、２４ａは減算回路２３ａ
の出力により利得が変化する可変利得増巾器であ
る。

以上のように側抑制回路２ａ，２ｂ，２ｃは構
成される。他の側抑制回路についても同様に構成
される。

第４図は側抑制回路の機能を示す信号波形図
で、以下、第３図，第４図を用いて本発明の実施
例の動作を説明する。

発話者により破裂音が発話された時、口気流検
出器１ａ…１ｗ（本実施例では23個の口気流検出
器を備えているものとする）にはその時の破裂音
の口気流の速度又は加速度に比例した信号が出力
される。この出力信号は空間的に破裂音の各音韻
ｐ，ｔ，ｋ，ｂ，ｄ，ｑ毎に特徴的なパターンを
示す。第４図に破線で示したパターンはその一例
である。

この口気流検出器１ａ，…１ｗからの出力信号
のパターンは、側抑制回路２ａ，…２ｗにより第
４図に実線で示すパターンに変形されるが、その
信号処理について口気流検出器１ｂの出力信号の
処理に注目して説明する。

口気流検出器１ａの出力信号をＡ、同様に口気
流検出器１ｂの出力信号をＢ、口気流検出器１ｃ
からの出力信号をｃとすると、側抑制回路２ｂに
おける可変利得増巾器２４ｂの利得は次の様に表
わされる。

利得（dB）＝ｋ・｛Ｂ−1/2（Ａ＋Ｃ）｝ ……(1) （ただしｋ：定数） 従つて、Ａ＝Ｂ＝Ｃの場合（隣接する口気流検
出器の出力が同一の大きさの時）、利得は0dBと
なり、口気流検出器１ｂの出力信号が増幅される
ことなくそのまま出力される。Ｂ＞1/2（Ａ＋
Ｃ）の場合には、利得は正となり、入力信号を増
幅して出力する。Ｂ＜1/2（Ａ＋Ｃ）の場合に
は、利得は負となり、入力信号を減衰させて出力
する。

口気流検出器１ｃの出力信号については、隣接
する口気流検出器１ｂ，１ｄの出力信号により、
側抑制回路２ｃにおいて前記と同様な処理が行わ
れる。

以下、口気流検出器１ｄ，…１ｖの出力信号に
ついて、それぞれ側抑制御回路２ｄ，…２ｖにお
いて同様の処理が行われる。

なお口気流検出器１ａは口気流検出器１ｂとの
み隣接しているので、口気流検出器１ａの出力信
号について口気流検出器１ｂの出力信号のみによ
つて側抑制がかけられる。

このように側抑制回路２ａ，…２ｗは、隣接す
る口気流検出器の出力の和の1/2を当該口気流検
出器の出力が超すと、当該口気流検出器の出力信
号を増幅して出力し、逆の場合には減衰して出力
し、空間的に配置された各口気流検出器の出力に
対し、一種の空間的な微分を行い、空間的に信号
が変化しているところを強調する。

口気流パターン識別回路４では、側抑制回路２
ａ…２ｗからの出力と、口気流標準パターン記憶
回路３にあらかじめ登録されている各音韻別の口
気流標準パターンを比較し、その一致度より破裂
音をpb，td，kqの音韻群に識別する。

以上のように本発明は複数個の口気流検出器と
各口気流検出器の出力信号を互いに隣接する口気
流検出器の出力信号によりコントロールする側抑
制回路に通し特徴抽出を行つた後、あらかじめ登
録しておいた破裂音の各音韻の口気流標準パター
ンとの比較を行い両者の一致度より破裂音の各音
韻を識別するように構成したので、各音韻の識別
を簡便、確実かつリアルタイムで行うことがで
き、その実用効果は大なるものがある。

【図面の簡単な説明】

第１図ａは破裂音の分布を示す図、第１図ｂは
口気流検出器の配置を示す図である。第２図は本
発明による破裂音識別装置の一実施例を示すブロ
ツク図、第３図は同実施例における側抑制回路の
詳細なブロツク図である。第４図は本発明の一実
施例の動作を説明する信号波形図である。 １ａ，１ｂ，１ｖ，１ｗ……口気流検出器、２
ａ，２ｂ，２ｖ，２ｗ……側抑制回路、３……口
気流標準パターン記憶回路、４……口気流パター
ン識別回路。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 口の前方に、口から異なる角度をなす位置に
   配置された複数個の口気流検出器と、前記複数個
   の口気流検出器の各出力信号を互いに隣接する口
   気流検出器の出力信号により制御する複数個の側
   抑制回路と、破裂音の各音韻の標準的な口気流パ
   ターンを記憶する口気流標準パターン記憶回路
   と、前記複数個の側抑制回路の出力と前記口気流
   標準パターン記憶回路内の口気流標準パターンと
   の一致度より破裂音の各音韻を識別する口気流パ
   ターン識別回路から構成され、破裂音発話時の口
   気流パターンの特徴から破裂音を検出することを
   特徴とする破裂音識別装置。