JPS6221783Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はドラムブレーキ装置、具体的にはドラ
ムブレーキ装置のバツクプレートをセツトボルト
およびナツトによつて車軸筒のフランジに固定す
る際に、該ボルトの回止めの効果をもたらし、し
かも該ボルトを予め前記バツクプレートに抜出な
いように保持することのできるボルト仮止め装置
を備えた車両用ドラムブレーキ装置に関する。

ドラムブレーキ装置は、第１図に示す如く、一
対のブレーキシユー１，１を車輪とともに回転す
るブレーキドラム（図示省略）に押付けてその摩
擦力により制動を得るものであり、このブレーキ
シユー１，１のドラム側への拡伸は油圧シリンダ
装置２，２などによつてなされ、非制動時にはシ
ユー戻しばね３，４によつて前記シユーが内方へ
引戻される。油圧シリンダ２，２、ブレーキシユ
ー１，１等ドラムを除くブレーキ装置各部は、バ
ツクプレート８と称する保持板に保持されてい
る。戻しばね３，４は両側のブレーキシユー１，
１の間、あるいは図示の形式のものではバツクプ
レート８と各ブレーキシユーとの間に装着され
る。バツクプレート８は、その中心に車軸筒（第
１図には図示省略）が貫通する穴５が穿けられて
おり、前記車軸筒に形成されたフランジに複数個
のボルトおよびナツトにより固定される。第１図
はこのようなドラムブレーキ装置を車体の外方即
ち車輪側からみたもので、ドラムを取除いた状態
の正面図である。複数本の六角頭部付ボルト６，
７をバツクプレートの外面から該プレートおよび
車軸筒フランジの通し穴に挿入し、前記フランジ
の裏面（車体内方側のフランジ面）でナツトによ
つて締付け、これによつてブレーキ装置を車輪筒
に取付ける。この図でみるように、実際のドラム
ブレーキ装置の内部はスペースが少なく、組立て
たドラムブレーキ装置を車軸筒に取付ける場合
に、その都度バツクプレートに前記ボルトを通し
て組付けることは作業が非常にやつかいである。
したがつて通常はブレーキ装置の組立段階で、戻
しばねを装着する前に、バツクプレート８に予め
前記六角頭部ボルト６，７を挿入しておき、しか
る後シユー戻しばねを装着し、これをボルト抜止
めとしこの状態でブレーキ装置の完成品としてい
る。車両の組立においてこのブレーキ装置を車軸
筒のフランジに取付けるときに、このままでは前
記フランジの裏側から前記ナツトを締めようとす
ると、ボルトが共回りしてしまうので、ボルトの
頭部を回止め工具を使つて固定しなければならな
い。しかしながら、前述のごとく、ボルトの頭部
のまわりはスペースがせまく回止め工具を使うの
に手数を要し、特に戻しばねの裏側にあるボルト
は、この戻しばねがじやまになつて回止め工具が
かけにくく、ブレーキ装置取付けの作業性はきわ
めて悪かつた。

本考案は、回止め工具などを用いなくても、バ
ツクプレートと車軸筒のフランジを固定する頭部
付ボルトの抜止めおよびナツト締付けの際のボル
ト共回りを防止することができ、これによつてブ
レーキ取付けの作業性の向上を図り得るドラムブ
レーキ取付用ボルトの仮止め装置を備えた車両用
ドラムブレーキ装置を提供することを目的とす
る。

この目的のために本考案に係るドラムブレーキ
装置は、バツクプレートに取付けられかつ両端お
よび略中間部に、該バツクプレートを貫通して車
軸筒に螺合するボルトの通し穴を備えたボルト仮
止め板と、前記ボルト仮止め板の両端のボルト通
し穴に少くとも部分的にかぶさるように設けられ
たシユー戻しばねとを有し、前記ボルト仮止め板
は、前記両端のボルト通し穴の外側に該通し穴に
挿入されるボルトの頭部側面と係合するボルト回
り止め用舌片部が形成されかつ前記略中間部のボ
ルト通し穴の近くに該通し穴に挿入されるボルト
の頭部先端と係合可能なボルト抜止め部が設けら
れており、さらに前記ボルト仮止め板の前記略中
間部のボルト通し穴は、その穴側部がボルト頭部
の側面と係合する多角形状の穴として形成されて
成るものである。この場合、前記シユー戻しばね
に対応する位置にあるボルト即ち該戻しばねの後
側にあるボルトについては、戻しばね自体がボル
トの抜止めとなるので、この部分では仮止め板に
特別にボルト抜止め部を形成しなくてよく、又こ
のボルトが仮止板を保持しているため仮止板自体
をバツクプレートに溶接等により固定する必要は
ない。

以下、本考案を、図面を参照しながら、実施例
について説明する。

第２図は本考案の１実施例に係るボルト仮止め
板１０の平面図であり、その外状形状は第１図に
示す如くドラムブレーキ装置のバツクプレート８
の表面の左右両側に取付けられるような形状を成
している。この実施例では仮止め板１０の両端１
０ａ，１０ａに六角頭部付ボルト６，６（第１
図、第６図）の軸部が通る穴１１，１１が穿けら
れ、またその中間部分には六角頭部付ボルト７
（第１図、第６図）の六角頭部がごく小さな公差
で挿入され得る六角穴１２が穿けられている。両
端にあるボルト通し穴６，６の外側に、第３図に
最もよく示される如く、該ボルトの六角頭部の対
向側面と係合し得る一対の折返し部（舌片部）１
３，１３′が形成されている。前述した六角穴１
２およびこの折返し部１３，１３′によつて本考
案の回止め部が構成される。中央の六角穴１２の
付近に、或る間隔をもつて該穴の前方（上方）へ
伸びた舌片１４が形成されている。この実施例で
は第４図に最もよく示される如く、六角穴１２の
近くの板面を部分的に打抜き、その先端を該穴の
上方へ折曲げて該穴のほぼ軸線付近まで伸ばすこ
とにより形成してある。第５図ａ、ｂは仮止め板
の１０の他の実施例を示した図であり、この場合
は別体に造つた字状の小片１５を六角穴１２に
かぶせるようにスポツト溶接などで固着してあ
る。前述の折返し舌片１４あるいは前記字状小
片１５によつて本考案のボルト抜止め部が構成さ
れる。

第６図は本考案を適用してドラムブレーキ装置
のバツクプレート８を車軸筒のフランジ１６に固
着した状態を示す部分的な拡大断面図であり、そ
の断面の方向は、例えば第２図の抜止め板を取付
けた場合にそのほぼ−線に沿つた方向で断面
してある。これらの図を参照して本考案に係る仮
止め装置のさらに詳しい構成およびドラムブレー
キ装置に組込む順序を説明する。

まず、シユー戻しばね３，４を装着する前に、
中央のボルト７の六角頭部をバツクプレート８の
対応するボルト通し穴１９に通しておき、この上
から、ボルト仮止め板１０の六角穴１２に該ボル
ト７の頭部を通すようにして、仮止め板１０をバ
ツクプレート８上に設置する。その後戻しばね
３，４の下側に位置する両側のボルト６，６の軸
部を仮止め板１０の両端のボルト通し穴１１，１
１およびバツクプレート８の対応する通し穴２
０，２０に通す。このとき第６図に明瞭に示され
る如く、ボルト６，６の頭部の下面は仮止め板１
０の板面上に存する。そして最後に戻しばね３，
４を装着することにより、本考案を適用したドラ
ムブレーキ装置が完成する。このようにして組付
けたとき、第６図で分るように、本考案は、中央
のボルト７の頭部先端と舌片１４（または小片１
５）との間隙ｃが仮止め板１０の板厚ｔよりも小
さく、また両側のボルト６，６の頭部先端と戻し
ばね３または４との間隙ａが仮止め板１０の板面
から両端の折返し部１３および１３′（第６図に
は図示されず）の先端までの該折返し部の高さｂ
よりも小さくなるように構成されている。したが
つて、これらのボルト６，６，７にナツト１７，
１７，１８を仮止めしなくても両側のボルト６，
６は戻しばね３，４のために抜出ないので仮止め
板１０はこの状態で外れることがなく、また中央
のボルト７は舌片１４あるいは小片１５のために
上方へ抜出ない。このような構造のドラムブレー
キ装置を車両に組付けるには、ボルト６，６，７
を車軸筒のフランジ１６のボルト通し穴に通し、
該フランジの裏側からナツト１７，１７，１８に
よつて締付ける。この場合、上述のａ＜ｂ、ｃ＜
ｔの寸法関係により、ボルト６，６，７の軸方向
位置に拘らず、ボルト６，６はその頭部側面が折
返し部１３または１３′（第２図）によつて拘束
され、ボルト７の六角頭部も六角穴１２に拘束さ
れるので、ボルト６，６および７の共回りが防止
され、単にナツト１７，１７および１８の締付け
だけでバツクプレート８を車軸筒フランジに固着
することができる。なお、上述の各実施例で両端
のボルト６，６の頭部と係合する折返し部を各々
１対づつ合計４個形成したが各端についてそれぞ
れ１個だけ形成してもよい。また中央の六角穴１
２は、ボルト７の六角頭部の少なくとも１側面と
係合して回止めの効果をもつ四角穴その他類似形
状の穴であつてもよい。適用されるドラムブレー
キ装置も油圧シリンダおよび戻しばねをそれぞれ
２個有する第１図のような形式のものに限定され
るものでなく、任意形式のドラムブレーキ装置に
適用可能である。

以上の如く、本考案ではボルトの抜止めとして
従来のようにナツトを装着する必要はなく、また
回止め工具などを使用せずに簡単にブレーキ装置
を車軸筒に締付固定でき、その締付作業時間は従
来の30％ですむことが確認される。仮止め板の形
状もきわめて簡素でブレーキ装置自体の構成にス
ペース上障害とならない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案を適用したドラムブレーキ装置
のブレーキドラムを取外した状態の正面図、第２
図は本考案の１実施例に係るボルト仮止め板の平
面図、第３図は第２図の矢視Ａからみた側面図、
第４図は第２図の−線に沿つた断面図、第５
図ａは本考案の他の実施例に係るボルト仮止め板
の平面図、第５図ｂは第５図ａの−線に沿つ
た断面図、第６図は本考案を適用したドラムブレ
ーキ装置を車軸筒のフランジに取付けた状態で示
した部分的な拡大断面図である。 １……ブレーキシユー、３，４……シユー戻し
ばね、６，７……六角頭部付ボルト、８……バツ
クプレート、１０……ボルト仮止め板、１１……
ボルト通し穴、１２……六角穴、１３……折返し
部、１４……舌片、１５……小片。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. バツクプレートに取付けられかつ両端および略
   中間部に、該バツクプレートを貫通して車軸筒に
   螺合するボルトの通し穴を備えたボルト仮止め板
   と、前記ボルト仮止め板の両端のボルト通し穴に
   少なくとも部分的にかぶさるように設けられたシ
   ユー戻しばねとを有し、前記ボルト仮止め板は、
   前記両端のボルト通し穴の外側に該通し穴に挿入
   されるボルトの頭部側面と係合するボルト回り止
   め用舌片部が形成されかつ前記略中間部のボルト
   通し穴の近くに該通し穴に挿入されるボルトの頭
   部先端と係合可能なボルト抜止め部が設けられて
   おり、さらに前記ボルト仮止め板の前記略中間部
   のボルト通し穴は、その穴側部がボルト頭部の側
   面と係合する多角形状の穴として形成され、前記
   ボルト仮止め板の前記両端のボルト通し穴に挿入
   されたボルトが前記シユー戻しばねによつて抜止
   めされることを特徴とするドラムブレーキ装置。