JPS583722B2 - 物質交換装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、膜を隔てて２種の流体を接触させ相互に物
質交換を行う物質交換装置に関し、特に血液がその老廃
代謝物や毒物を放出し、栄養物その他の物質を補給する
ための血液浄化装置として有用な物質交換装置に関する
ものである。

血液浄化装置として、一般に人工腎臓、人工肺臓、人工
肝臓等が知られている。

例えば、人工腎臓はカプロファン等の透析性物質交換膜
を隔てて血液と透析液とを接触させ、血液中の尿素、ク
レアチニン、その他の老廃物を透析液へ放出するもので
あり、また人工肺臓はシリコン膜等の物質交換膜を隔て
て血液と酸素流とを接触させ、血液中の炭酸ガスを放出
すると共に酸素を取り込むようにしたものである。

従来この種の血液浄化装置として利用されているものは
、その構造からコイル型、キール型、ハローファイバ型
に分類される。

すなわちコイル型は、筒（エンペロープ）状に形成した
物質交換膜を芯筒の周りに何重にも巻き付けて構成し、
筒の内側と外側との間で物質交換を行うものである。

また、キール型は、平膜状の物質交換膜を積層して構成
し、膜間を交互に血液流路と透析液もしくはガス流路と
して両者間の物質交換を行うものである。

さらに、ハローファイバ型は、中空繊維状の物質交換膜
を多数束ねて構成し、中空繊維の内と外とを異なる流体
通路として両者間の物質交換を行うものである。

しかしながら、上述した各型式の血液浄化装置は夫々一
長一短を有し、未だ完全に満足し得るものは得られてい
ない。

例えば、前記コイル型では、通常１本の筒状物質交換膜
を何重にも巻くため、必要な膜面積を確保するには流路
が長大となり、筒内部流路の圧損が大きくなり内圧が極
めて高くなる。

この結果、筒内部を血液流路とした場合には、内圧によ
る血液損傷が大きくなる欠点がある。

また、人工腎臓として使用する際に、筒内部を透析液流
路とした場合には、限外沢過量のコントロールが困難と
なったり、また人工肺臓として使用する際に、筒内部を
ガス流路とした場合には、流路が長いためガス流の下流
での炭酸ガス濃度が高くなって炭酸ガス放出能力が低下
する欠点がある。

また、前記キール型では、圧損を抑えることは可能であ
るが、流体の流れに斑を生じ易く、血液浄化能率も余り
高められない難点がある。

しかも、キール型は、コイル型と同様２つの流路の間の
隔壁が変形し易い薄膜であるため、両側の僅かの圧力差
によって流路の厚みが変化して物質交換性能も変動する
という重大な欠点を有する。

すなわち、流路の厚みが大きくなると、流体の流れの剪
断力が弱まり、拡散に対する境膜抵抗が増大して物質交
換性能が低下する。

さらに、ハローファイバ型では、中空繊維が圧力による
変形に対する抵抗を有するため、上述の型式の場合のよ
うに物質交換性能の変動は少ないが、製造工程において
接着剤の硬化進行中に遠心力を作用させておく必要があ
るため製造設備が高価になる。

また、構造上中空繊維の外側流路を充分コンパクトにす
るのが困難であり、外側流路の境膜抵抗が大きく、物質
交換性能も充分高めることができない欠点も有する。

そこで、発明者等は、上述した従来の型式の物質交換装
置の欠点を全て除去し、簡単な構成で物質交換性能の変
動がなくて圧損が少なく、しかも製造の容易な物質交換
装置を得るべく種々検討を重ねた結果、所定の膜厚を有
する物質交換膜にその対向する２つの切断面を貫通する
よう所定孔径の長形細孔（キャピラリ）を多数穿孔し、
このように構成した物質交換膜の前記長形細孔内と外側
とを夫々２つの流体流路として形成することにより、一
方の流体流路を形成する前記長形細孔はその構造上内圧
もしくは外圧に対する変形率が低いため、安定した物質
交換性能を繊維することができ、しかも膜の積層等を行
っても流体の流れに剪断力がかけられ境膜抵抗が小さく
なって極めて良好な物質交換を行うことができることを
突き止めた。

従って、本発明の目的は、物質交換性能の変動および圧
損を除去し、簡単な構成でしかも製造の容易な物質交換
装置を提供するにある。

前記の目的を達成するため、本発明においては、所定肉
厚の物質交換膜の内部に所定方向に整列された長形細孔
を複数本平行に穿設し、かく穿設された物質交換膜を複
数枚積層し、この積層された物質交換膜の膜間と長形細
孔とをそれぞれ独立した流体流路として構成することを
特徴とする。

この場合、積層された物質交換膜の膜間に多孔性ないし
は網状支持体を介在させれば好適である。

前記の物質交換装置において、物質交換膜と支持体とを
所定の矩形寸法に構成したものを交互に重ねて積層した
構成とすることができる。

代案として１枚の物質交換膜をその長形細孔と平行に折
り畳むと共に前記膜間に支持体を介挿して積層した構成
とすることができる。

この場合、前記膜を両側から支持体で挾持してこれらを
一体的に折り畳んで構成してもよい。

また、物質交換膜と支持体とを重ね合せ、これらを物質
交換膜の長形細孔と平行する軸心となる芯筒の外周にコ
イル状に巻回した構成とすることも可能である。

前記の物質交換装置において、物質交換膜の長形細孔を
血液流路とし、前記膜間に血液浄化流体を供給すれば、
血液浄化装置を構成することができる。

さらに、前記の物質交換膜を折り畳んで構成した物質交
換装置において、物質交換膜の長形細孔を血液流路とし
、折り畳まれた前記膜の一側面を血液浄化流体流路とす
ると共に他側面を熱媒流路とすることにより、熱交換機
能を有する血液浄化装置を構成することができる。

次に、本発明に係る物質交換装置の実施例につき添付図
面を参照しながら以下詳細に説明する。

第１図は、本発明装置の要部となる物質交換膜１０の実
施例を示すもので、この膜１０は選択された物質のみを
通過させる性質を有する材料で構成され、対向する２つ
の切断面１０ａ，１０ｂを貫通するように長形細孔１２
が多数穿孔される。

この場合、膜厚ｄおよび孔径Φは特に限定されないが、
物質交換を最も効果的に達成するためには、膜厚ｄを５
０〜３００μとし、孔径Φを４０〜２５０μに設定する
のが好ましい。

なお孔径Φが膜厚ｄよりも小さいことは勿論である。

また、この膜１０を製造するに際しては、所望の直径の
針金を複数本並列に整列して配置し、これらの針金を物
質交換膜材料で被覆してフイルムを形成し、その後前記
針金をフイルムから除去することにより、第１図に示す
物質交換膜１０が容易に得られる。

上述の物質交換膜材料としては、夫々用途によって各種
の材料が選択される。

例えば、人工腎臓用としては、カプロファン、セルロー
ズ、アセテート、ポリビニルフオルマール、エバール、
ハイドロン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタク
リレート等が好適である。

また、人工肺臓用としては、シリコンゴム、天然ゴム、
ポリアルキレンスルフオン、エチルセルローズ、テフロ
ン等が好適である。

なお、０５μ以下の孔を膜の垂直方向に多数穿孔したマ
イクロポーラスフイルムも好適に使用できる。

さらにその他の用途として、海水の淡水化、下水の高次
処理、工場排水の金属回収等に、ポリアミド、セルロー
ズトリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリベンツ
イミダゾール、その他イオン交換膜が夫々好適である。

次に、上述した構成からなる物質交換膜１０を使用して
物質交換装置を構成した場合の実施例について説明する
。

第２図および第３図は、長手方向に長形細孔１２が形成
されるよう長方形の所定寸法に物質交換膜１０を構成し
、これらの物質交換膜１０を多孔性ないしは網状支持体
１４と交互に重ね合せて積層し、得られた積層体１６を
所定のケーシング１８内に収納すると共に積層体１６の
長手方向両端部に接着剤もしくはパッキング等のシール
材２０を施したものである。

このように構成することにより、前記ケーシング１８の
長手方向両端部に前記積層体１６を構成する物質交換膜
１０の長形細孔１２と連通するマニホルド２２，２４を
画成すると共にケーシング１８の長手方向両側端部にマ
ニホルド２６．２８を画成し、これらのマニホルド２２
．２４と２６．２８とは前記シール材２０によって気密
に離間される。

従って、ケーシング１８には、前記各マニホルド２２，
２４，２６ ，２８と外部流体回路とを連通ずるための
ポート３０，３２，３４．３６が夫々設けられる。

なお、本実施例において、物質交換膜１０と交互に積層
し対向隣接する膜表面間に多数の溝孔を形成するために
使要する多孔性ないしは網状支持体１４は、不織布、網
、スクリーンメッシュ、パンチングフイルム、エンボス
フィルム等が好適に採用され、物質交換膜の膜外表面流
路３７の閉塞を防止するスペーサとして、また膜外表面
流路３７で乱流を発生させて流体を混合する邪魔板とし
て、さらには膜補強材としての役割を果す。

なお、流体の乱流を発生させるためにはモノフィラメン
トを織って作製したスクリーンメッシュが支持体１４と
して最も好適である。

この場合、フィラメント径と孔径の比率を１／３〜１イ
０に設定するのが好ましい。

上述した構成からなる物質交換装置において、例えば、
ケーシング１８の長手方向に形成された第１流体流路３
０，２２，１２，２４，３２に血液回路を接続し、この
第１流体流路と交差する方向に形成された第２流体流路
３４，２６，３７，２８ ，３６に透析液回路を接続す
れば、前記物質交換膜１０の長形細孔１２と膜表面との
間で物質交換すなわち透析作用が行われ、人工腎臓とし
て有効に利用することができる。

同様にして第１流体流路に血液回路を接続し、第２流体
流路に酸素ガス回路を接続すれば、人工肺臓としても有
効に利用することができる。

第４図および第５図は、本発明に係る物質交換装置の別
の実施例を示すもので、一枚の帯状に構成した物質交換
膜１０を使用し、この物質交換膜１０を前記実施例と同
様に構成したケーシング１８内にジグザグに折り畳むと
共に重なり合う膜間に支持体１４を介挿し、両端部にシ
ール材２０を施して積層体１６を構成したものである。

この場合物質交換膜１０の折り目が長形細孔１２と平行
となるように折り畳む必要がある。

本実施例によれば、物質交換膜１０の相対する外表面に
夫々２系統の流体流路３７ａ ，３７ｂが形成される。

すなわち、ケーシング１８の長手方向両側端部に画成さ
れるマニホルド２６ ．２８は夫々異なる流体流路を形
成する。

この結果、前記各マニホルド２６および２８には、一対
のポート３４ａ，３４ｂおよび３６ａ ，３６ｂを設け
ると共に、各ポート３４ａと３４ｂおよび３６ａと３６
ｂが夫々膜間流路３７ａ ，３７ｂを通ることなく短絡
するのを防止するため、膜の折り目端部とケーシング内
面との間に接着剤もしくはパッキング等のシール材３８
を施す。

上述した構成からなる物質交換装置においては、第１流
体流路３０，２２，１２，２４．３２に血液回路を接続
し、第２流体流路３４ａ ，２６ ．３７ａ，２６，３
４ｂおよび第３流体流路３６ａ，２８，３７ｂ，２８，
２６ｂに夫々酸素ガス回路を接続すれば人工肺臓として
有効に利用することができる。

特に、本実施例では、第２流体流路または第３流体流路
に熱媒を供給するよう構成すれば、熱交換器を内臓した
物質交換装置として、例えば人工肺臓および人工腎臓に
有効に利用することができる。

また、本実施例の変形例として、一枚の帯状物質交換膜
の両外表面に夫々帯状に構成した支持体を当接して、こ
れらを一体的に折り畳んで積層体を構成することも可能
である。

このように構成した積層体を使用することによっても、
前記第４図および第５図に示す実施例と同一構造の物質
交換装置を製造することができる。

第６図は、本発明に係る物質交換装置のさらに別の実施
例を示すものである。

本実施例においては、帯状の物質交換膜１０と帯状の支
持体１４とを所定の芯筒４０にコイル状に巻回して構成
するものである。

この場合、物質交換膜１０の長形細孔１２をコイル軸方
向に配列させる場合と円周方向に配列させる場合とが可
能であるが、後者の場合長形細孔１２が著しく長くなっ
て圧力損失の点で不利となるため、一般的には前者の場
合が好適である。

すなわち第６図は、本実施例の製造状態を示すもので、
物質交換膜１０に支持体１４を重ね、前記膜１０の周辺
に接着剤またはその他のシール材４２を施し、長形細孔
１２が芯筒４０の軸方向に平行に配列するよう前記膜１
０を芯筒４０に巻きつけ、支持体１４を内在させたコイ
ル状の巻層体を形成する。

このように構成された巻層体の両端部にシール材４２の
層を貫通するチューブ４４ａ ，４４ｂを取り付け、こ
れらのチューブ４４ａ，４４ｂの一端部を巻層体の内部
に形成される膜外表面流路３７と連通させると共にチュ
ーブ４４ａ，４４ｂの他端部は芯筒４０の両端部に配置
したフランジ４６ ．４８に密着貫通させて外部流体回
路と連結し得るよう構成する。

なお、前記チューブ４４ａ ，４４ｂの本数はさらに増
設することが可能である。

次いで、巻層体を外筒（図示せず）内に挿入して、最外
の膜表面を外筒の内面に気密に接着もしくは密着するこ
とによりフランジ４６ ．４８の内側に夫々マニホルド
５０，５２を形成する。

この２つのマニホルド５０，５２は、物質交換膜１０の
長形細孔１２を介して相互に連通し、フランジ４６．４
８に設けたポート５４ ．５６を介して外部流体流路と
連通するよう構成される。

上述した構成からなる物質交換装置においても、第１流
体流路４４ａ，３７，４４ｂおよび第２流体流路５４，
５０，１２，５２，５６に夫々所要の流体回路を接続す
ることにより、人工肺臓もしくは人工腎臓として有効に
利用することができる。

本発明に係る物質交換装置は、その主要部を構成する物
質交換膜に形成される流体通孔が内圧および外圧に対し
て変形することが殆んどないため、安定した物質交換性
能を保持することができる。

すなわち、前記物質交換膜を使用して積層体もしくは巻
層体を構成してこれを所定のケーシング内に圧入固定し
ても、安定した流体流路を保持することができると共に
全体のコンパクト化も可能となる。

従って、本発明に係る物質交換装置は、ハローファイバ
型の物質交換装置に比べて流体の流れに剪断力をかける
ことができ、しかも多孔性ないしは網状支持体による攪
拌効果と相俟って境膜抵抗が小さくなり、極めて良好な
物質交換性能が発揮される。

次に、本発明を応用した人工肺臓の製造例につき説明す
る。

製造例 幅１５ｃｍ、長さ３０ｃｍ、厚さ２００μのシリコンゴ
ム膜に直径１００μの長形細孔を５０μピッチ間隔で穿
孔して物質交換膜を製作した。

また、幅約１５ｃｍ、長さ約３０ｃｍ、厚さ２４０μを
有し、孔径６００μの平織スクリーンメッシュからなる
支持体を製作した。

前記の物質交換膜２２枚と支持体２３枚を使用して、厚
さ約１０ｍｍの積層体を構成し、この積層体を使用して
第２図に示す構造からなる人工肺臓を作製した。

このように構成した人工肺臓の第１流体流路（長形細孔
側流路）にヘマトクリット値２５％のヘパリン化新鮮牛
血を８ ０ ０ ｃｃ／ｍｉｎ流すと共に、第２流体流
路（膜表面側流路）に酸素ガスを１ ｌ／ｍｉｎ流した
。

この場合、人工肺臓の入口部の血液の酸素分圧３５ｍｍ
Ｈｇ，炭酸ガス分圧５１ ｍｍＨｇの時、出口部の血液
の酸素分圧は１ ２ ５ｇｍＨｇ 、炭酸ガス分圧は４
０ｍｍＨｇであった。

また、血液出口を絞って、その血液出口圧力を３ ０
０ ｍｍＨｇに上げても人工肺臓の出口部の血液の酸素
分圧、炭酸ガス分圧は実質的に変らなかった。

以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発
明の精神を逸脱しない範囲内において種々の設計変更を
なし得ることは勿論である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る物質交換装置の主要部を構成する
物質交換膜の構成を示す要部切開断面斜視図、第２図は
本発明に係る物質交換装置の一実施例を示す平面断面図
、第３図は第２図のＩ−１ｎ線断面図、第４図は本発明
に係る物質交換装置の別の実施例を示す平面断面図、等
５図は第４図のＶ−Ｖ線断面図、第６図は本発明装置の
さらに別の実施例を示す製造状態斜視図である。 １０・・・・・・物質交換膜、１２・・・・・・長形細
孔、１４・・・・・・支持体、１６・・・・・・積層体
、１８・・・・・・ケーシング、２０・・・・・・シー
ル材、２２，２４，２６．２８・・・・・・マニホルド
、３０，３２，３４．３６・・・・・・ポート、３７・
・・・・・膜表面流路、３８・・・・・・シール材、４
０・・・・・・芯筒、４２・・・・・・シール材、４４
・・・・・・チューブ、４６，４８・・・・・・フラン
ジ、５０．５２・・・・・・マニホルド、５４．５６・
・・・・・ポート。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 所定肉厚の物質交換膜の内部に所定方向に整列され
   た長形細孔を複数本平行に穿設し、かく穿設された物質
   交換膜を複数枚積層し、この積層された物質交換膜の膜
   間と長形細孔とをそれぞれ独立した流体流路として構成
   することを特徴とする物質交換装置。 ２ 積層された物質交換膜の膜間に多孔性ないしは網状
   支持体を介在させてなる特許請求の範囲第１項記載の物
   質交換装置。 ３ 物質交換膜と支持体とを所定の矩形寸法に構成した
   ものを交互に重ねて積層してなる特許請求の範囲第２項
   記載の物質交換装置。 ４ １枚の物質交換膜をその長形細孔と平行に折り畳む
   と共に前記模間に支持体を介挿して積層してなる特許請
   求の範囲第１項記載の物質交換装置。 ５ １枚の物質交換膜を両側から支持体で挾持してこれ
   らを一体的に折り畳んで構成してなる特許請求の範囲第
   ４項記載の物質交換装置。 ６ 物質交換膜と支持体とを重ね合せ、これらを物質交
   換膜の長形細孔と平行する軸心となる芯筒の外周にコイ
   ル状に巻回してなる特許請求の範囲第２項記載の物質交
   換装置。 ７ 特許請求の範囲第２項乃至第６項のいずれかに記載
   の物質交換装置において、物質交換膜の長形細孔を血液
   流路としてなる血液浄化用物質交換装置。 ８ 特許請求の範囲第４項または第５項記載の物質交換
   装置において、物質交換膜の長形細孔を血液流路とし、
   折り畳まれた前記膜の一側面を血液浄化流体流路とする
   と共に前記膜の他側面を熱媒流路としてなる熱交換機能
   を有する血液浄化用物質交換装置。