JPH1192398A - 医薬用組成物 - Google Patents

医薬用組成物

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JPH1192398A
JPH1192398A JP9258963A JP25896397A JPH1192398A JP H1192398 A JPH1192398 A JP H1192398A JP 9258963 A JP9258963 A JP 9258963A JP 25896397 A JP25896397 A JP 25896397A JP H1192398 A JPH1192398 A JP H1192398A
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fungal
cells
cell
antigen
genus
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JP9258963A
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English (en)
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Kazutada Takesako
一任 竹迫
Masahiro Endo
政博 遠藤
Shigetoshi Mizutani
滋利 水谷
Ikunoshin Katou
郁之進 加藤
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Takara Shuzo Co Ltd
Original Assignee
Takara Shuzo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】真菌による感染症に感染することに伴う苦痛や
衰弱を防止し、かつ該感染症の治療を目的とする薬剤の
投与量を明確に減少させることが可能な真菌による感染
症に対するワクチンを提供すること。 【解決手段】細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全部
が除去された固定真菌細胞からなる真菌抗原を有効成分
とする医薬用組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬用組成物に関
する。さらに詳しくは、真菌感染及び真菌アレルギーの
予防、治療又は診断に有用な真菌抗原を有効成分とする
医薬用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】真菌は、ヒト及びヒト以外の哺乳類を始
めとする脊椎動物に感染して種々の疾病を引き起こすこ
とが知られている。例えば、ヒトに対して、皮膚、口
腔、膣等に表在性真菌症を起こしたり、内臓、脳等に全
身性真菌症を起こす。ペット、家畜等の脊椎動物に対し
ても同様の感染症を起こす。このうち、ヒトに感染して
全身性真菌症を起こす原因真菌の主なものとしては、カ
ンジダ属(カンジダ アルビカンス(Candida albican
s)等)、クリプトコッカス属(クリプトコッカスネオ
フォルマンス(Cryptococcus neoformans )等)、アス
ペルギルス属(アスペルギルス フミガタス(Aspergil
lus fumigatus )等)、カリニ肺炎菌(ニューモシスチ
ス カリニ(Pneumocystis carinii ))等が知られ、
表在性真菌症では、皮膚、口腔、膣等に感染するカンジ
ダ属、手足の皮膚に感染する白癬菌(トリコフィトン
メンタグロフィテス( Trichophyton mentagrophyte
s)、トリコフィトン ルブルム(T. rubrum )等)等
が主なものと考えられている。
【0003】家畜等に感染症を起こす真菌としては皮膚
糸状菌(Dermophytes )が多く、前記トリコフィトン属
(トリコフィトン ベルコーサム(T. verrucosum )
等)の他に、ミクロスポルム属(ミクロスポルム カニ
ス(Microsporum canis )、ミクロスポルム ジプセウ
ム(M. gypseum)等)が知られている。
【0004】近年、広範囲抗生物質の多用、免疫抑制剤
の使用、免疫抑制作用を持った制癌剤の使用等により、
これらの薬剤の投与を受けている患者は免疫的易感染宿
主(immunocompromised host)となり、健常人では病原
性の低い真菌による日和見感染が増大している。例え
ば、リンパ腫の患者における制癌剤の大量投与の際生じ
る好中球減少症(nuetropenia )に伴ってかなり高頻度
にカンジダ症が起こることが知られている。また、AIDS
患者においては、口腔カンジダ症が繰り返し発生する
他、各種真菌症が併発する。また、血管内カテーテル留
置、特に経中心高カロリー輸液法(IVH )による治療を
受けている患者では、カテーテルに起因して真菌、特に
カンジダによる感染症が起こる。さらに、健常な女性の
膣カンジダ症の発症頻度も相変わらず高い。
【0005】一方、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギ
ー性鼻炎をはじめとするアレルギー性疾患が急激に増大
しつつあるが、この中で真菌を原因とするアレルギー性
疾患も非常に多い。
【0006】アレルギー性疾患を引き起こす原因菌とし
ては、ペニシリウム属(Penicillium )、カンジダ属
(Candida )、アスペルギルス属(Aspergillus )、ア
ルタナリア属(Alternaria)、クラドスポリウム属(Cl
adosporium)、マラセチア属(Malassezia)、ボトリチ
ス属(Botrytis)、ムコール属(Mucor )、リゾプス属
(Rhizopus)、オーレオバシジウム属(Aureobasidium
)、フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Tri
choderma )、ヘルミンソスポリウム属(Helminthospor
ium)、ノイロスポラ属(Neurospora)、ワレミア属(W
allemia)、ロドトルラ属(Rhodotorula )、トリコフ
ィトン属(Trichophyton)が知られている。
【0007】真菌感染症に対する治療法としては、抗真
菌化学療法剤による治療が一般的であり、表在性真菌症
に対しては多くの薬剤が開発されており、また、全身性
感染症に対しても幾つかの優れた薬剤が開発されてい
る。しかし、その効果は有効性、毒性、副作用などの面
から不十分である。例えば、古くから使用されてきたア
ンホテリシンB は、重篤な腎障害を始めとする種々の副
作用が起こる。また、フルコナゾールを始めとする各種
のアゾール系抗真菌剤が開発されたが、作用が静菌的で
あり、感染症が再発することが多い、また多用により耐
性菌が出現し始めている。耐性菌が出現すると、現在実
用化されている抗真菌化学療法剤の多くが類似の作用メ
カニズムを有しているため交差耐性となり、大きな問題
となる可能性がある。表在性真菌症の場合でも、各種化
学療法治療薬が開発されているが、長期の治療期間を要
したり、再発を繰り返すなど、どれも十分とはいえず、
さらに優れた薬剤の開発が望まれている。さらに、爪白
癬のように外用剤だけの治療では不十分であるため、グ
リセオフルビン等の内服薬を必要とする表在性真菌症も
存在する。この際、長期にわたる投与が必要となり、薬
剤による種々の副作用が生じる。また、表在性真菌症や
AIDSにおける口腔カンジダ症のように、繰り返し感染が
発生するため、有効な抗真菌剤が開発されても費用の面
で大きな問題がある。
【0008】一方、病原性細菌に対しては、ワクチンに
よる感染予防が古くから実施されており、かなりの効果
を挙げている。細菌感染症に対するこれらのワクチン
は、弱毒菌(結核菌)、死菌(コレラ菌)、トキソイド
(ジフテリア菌、破傷風菌)、細胞表面の莢膜多糖体等
の精製抗原(百日咳菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、
髄膜炎菌)を抗原として使用している。ワクチンは、病
原菌の抗原性分子に対する抗体産生誘導及び細胞性免疫
により感染防御力を宿主に与えている。かかる抗体は、
病原菌により分泌される毒性物質の中和、病原菌の細胞
表面分子に結合して宿主細胞への侵入を防ぐ役割を果た
すと考えられる。細胞性免疫では、CD4 +細胞、CD8 +
T 細胞が中心的役割を果たし、その病原菌の抗原性分子
を認識し、病原菌に特異的な防御反応を活性化してい
る。これらの病原菌の有する抗原性分子である免疫原性
物質が単離同定され、これらの免疫原を感作抗原(ワク
チン)として用いている研究もいくつかある。この場
合、前記のように細胞表面分子である莢膜多糖体が免疫
原としてよく使用されている。
【0009】真菌は、環境中に非常に多くの種類が存在
しており、脊椎動物は、ほとんど全てこれらの真菌に感
作されている。また、生体に常在している真菌も多い。
従って、脊椎動物には、一般にこれらの真菌に対する種
々の生体防御免疫応答が備わっている。真菌感染に対し
て重要な働きをしている免疫応答としては、主として、
活性化されたマクロファージや多形核白血球(PMN )の
食菌作用や殺菌作用が挙げられるが、抗体や細胞性免疫
が寄与していることも知られている。真菌は、その細胞
表面にマンナン、グルカン、キチン等の多糖を主成分と
する細胞壁を有しており、真菌細胞によってはその含量
が全細胞の30%近くを占める場合がある[Klis,R.U. e
t al.,Yeast,Vol.10,851-869(1994)] 。これらの細胞壁
成分の中で、マンナンが最も抗原性が高い。マンナンは
細胞表層に存在する多糖であり、この多糖部分に対する
抗体が多量に作られる。ザイモザン(Zymosan )を始め
とする真菌細胞壁グルカンも種々の生理活性を有してお
り、非特異的な免疫増強作用を有することが知られてい
る。真菌細胞表面のかかる細胞壁成分が、感染において
も真菌細胞の生体への接着分子として重要な働きをして
いると考えられている。
【0010】真菌ワクチンに関して、クリプトコッカス
のガラクトキシロマンナン[Deri,S.J.N. et al.,Infec
t.Immun., Vol., 3700-3707,(1991)]やカンジダ アル
ビカンスの接着因子であるホスホマンノプロテイン(国
際公開95/31998 号パンフレット)がワクチンとして、
またこれらの抗原性分子に対する抗体が感染防御活性を
有することが報告されている。カンジダの生菌又は死菌
による感染防御免疫の誘導に関しても多くの報告[Sega
l,E. et al. Critical Reviews in MicrobiologyVol.14
229-271(1987)] がある。この場合も細胞表面分子であ
る細胞壁成分に対する生体防御免疫応答が主として機能
していると考えられてきた。
【0011】真菌に対するその他のワクチンとしては、
リボソームワクチン[Segal,E., Handbook of Applied M
ycology, Volume 2:Immunizations against fungal dis
eases in man and animals., Humans, animals and ins
ects.]が、カンジダ アルビカンス、トリコフィトン等
の真菌による感染症に対して試験され、実験動物、さら
に一部ヒト、家畜に対する効果も検討されている。ま
た、最近では、エノラーゼやストレスタンパク質HSP90
(特表平4-502257号公報)が感染防御活性を誘導できる
ことが報告されている。しかし、前記抗原性分子はいず
れもまだ十分な有効性を確認されているとは言えない。
また、多様性の高い哺乳類に対して、単一の抗原性分子
を用いた治療により十分な有効性を得られるかは疑問で
ある。
【0012】一方、アレルギー性疾患の治療法として
は、抗ヒスタミン薬、ステロイド性抗炎症薬、メディエ
イター遊離抑制薬などが使用されている。しかし、抗ヒ
スタミン薬は、倦怠感、眠気、めまい等、ステロイド剤
は、副腎萎縮、機能不全、胃潰瘍など様々な副作用の危
険性があり、メディエイター遊離抑制剤も、問題となる
アレルギー性疾患以外に関与しているメディエイターの
作用をも抑制する危険性がある。この点において、抗原
診断により特定されたアレルゲンとの暴露の機会を減ら
す予防法及び/又はこれらの原因アレルゲンを用いた免
疫療法の1つである減感作療法が優れた治療法とされて
いる。
【0013】従って、アレルギー疾患に対しては、まず
原因となっている抗原を同定する診断が必要であり、そ
のためにまず100 種を超える市販のアレルゲンエキス、
時には自製のものについて、疑わしい抗原エキスを皮内
テストにより試験している。可能性の高い抗原が見つか
ると、血清中のIgE抗体価の測定、誘発テスト又は全
血やリンパ球を用いたヒスタミン遊離試験により抗原を
特定することができる。
【0014】ヒトにアレルギー症状を惹起させるアレル
ゲンとして天然に存在する多くのものが知られている
が、市販のアレルゲンエキスは、天然のアレルゲンを原
料とした粗抽出物である。従って、当然多くの物質の混
合物であり、また複数の抗原が含有されている。近年に
なって、分離精製技術及びアレルゲン活性評価法が進展
した結果、多くの食品アレルゲン又は環境中に存在する
アレルゲンから、アレルゲンの本体である抗原性タンパ
ク質が単離同定されてきた。更に、それらのアレルゲン
タンパク質をコードする遺伝子も単離され、遺伝子工学
的手法により純粋なアレルゲンタンパク質を大量に調製
することが可能になっている。
【0015】一方、真菌のアレルゲンを単離する努力も
なされている。真菌細胞内に存在する蛋白質から、例え
ばカンジダ アルビカンスよりアルコールデヒドロゲナ
ーゼ(Can a I )[Shen,H.D. et al., Clin.Exp.Allerg
y, Vol.21, 675-681(1991)]、エノラーゼ[Ishiguro,A.
et al., Infect.Immun., Vol.60, 1550-1557(1992)]
等、アスペルギルス フミガタスよりリボトキシン(As
p f Ia)[Mosor,M. et al., J.Immunol., Vol.149, 454
-460(1992)] 等の抗原性タンパク質が単離同定され、こ
れらのいくつかがアレルゲンとして作用することが知ら
れている。
【0016】しかし、前記真菌アレルゲンを含めて一般
的に真菌アレルゲンの場合、単一の主要アレルゲンとい
えるものが抗原性タンパク質として存在する場合は少な
く、複数の抗原性タンパク質が存在し[Stewart,G.A. e
t al., Clin.Exp.Allergy,Vol.26, 1020-1044(1996)
]、個体によって異なる抗原と反応したり、各個体が
複数の抗原をアレルゲンとして認識し反応していること
が知られている。
【0017】現在市販されている診断用又は治療用アレ
ルゲンエキスは、単なる抽出物やほとんど精製されてな
く、さらに含有成分についても管理されていないものが
殆どである。真菌アレルゲンエキスとしては、カンジ
ダ、アスペルギルス、アルタナリア、クラドスポリウ
ム、マラセチア、ペニシリウムなどのアレルゲンエキス
が市販されている。しかし、これらの製造法は、前記食
品や環境中の天然アレルゲン由来のアレルゲンエキスと
異なる。すなわち、原因真菌の培養細胞自体ではなく、
各々の属に属する代表的菌株を、ある限定した栄養源を
含む人工培地で長期培養して得られる、副次産物とも言
える培養液中の菌体外分泌物を原料とする。従って、か
かる製造法により得られる抗原は、自己細胞の消化物や
細胞外分泌物であり、マンナン、グルカンを始めとする
細胞壁多糖が主成分と考えられるが、これらの抗原の含
有量及び他の抗原性タンパク質の種類も明らかになって
いない。さらに、製造者間で品質が異なるため、使用に
際しては充分な注意が必要である。
【0018】市販の真菌アレルゲンエキスにも多く含ま
れる細胞壁多糖、特にマンナンは、一部のアレルギー患
者において主要なアレルゲンとして働く一方、健常人で
も細胞壁多糖に対するIgG 、IgM を多量に有している。
さらに、マンナン自体、特に中性マンナンは、マウスに
対する致死的作用といった毒性を有していることも知ら
れている[日本医真菌誌第36巻, 203-208,(1995)]。ま
た、細胞壁グルカンも炎症を引き起こす等の病理学的作
用を有することが知られている(Kogan,G. et al. Biome
dical and Biotechnological Advaneds in Industrial
Polysaccarides.251-258(1989)) 。
【0019】従って、抗原であるマンナンを始めとする
細胞壁成分や真菌細胞自体をワクチンとして利用する際
には過敏症を引き起こすなどの危険性がある。また、ア
レルギー性疾患の減感作治療等においても、必ずしも細
胞壁成分が主要なアレルゲンとして働いているわけでは
ないので、細胞壁成分を含有するアレルゲン組成物を用
いる場合、その抗原性が危惧され、ヒトに投与する際は
慎重にならなければならない。この点において、現在市
販の真菌アレルゲンエキスは、全く不満足なものであ
る。さらに、有効な抗原が、十分量含有されている診断
用及び/又は治療用の医薬組成物は知られていない。
【0020】真菌症の増大に伴い、さらに現在使用され
ている抗真菌化学療法剤の副作用、耐性菌の出現、医療
費の問題等から、有効性の高い、さらに安全性の高い、
新たな真菌症の治療薬の開発が強く望まれている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】抗真菌化学療法剤に比
べて免疫療法剤であるワクチンは多くの利点を有してお
り、これらの真菌による感染症に対するワクチンを見い
出すことができれば、これらの感染症に感染することに
伴う苦痛や衰弱を防止することができるだけでなく、こ
れらの感染症の治療を目的とする薬剤の投与量を明確に
減少させることもできる。さらに、この様に薬剤の使用
を回避することにより、抗菌剤の過剰投与による病原性
微生物に対する選択圧が減少し、耐性菌の出現を減少さ
せることができる。また、単独の抗原分子よりなる抗原
で感作するよりも、複数の抗原分子よりなる抗原で感作
する方が耐性、有効性という点でより優れた感染防御を
誘導することができると期待される。
【0022】本発明は、前記従来技術に鑑みてなされた
ものであり、本発明の目的は、真菌を原因とする疾患に
対して有効で、より安全な真菌抗原を有効成分とする医
薬用組成物、例えばワクチン組成物、抗真菌剤、減感作
用治療剤、アレルギー診断用抗原組成物、免疫調節用組
成物を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
は、〔1〕 細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全部
が除去された固定真菌細胞からなる真菌抗原を有効成分
とする医薬用組成物、〔2〕 真菌感染の予防又は治療
用である、前記〔1〕記載の医薬用組成物、〔3〕 真
菌アレルギーの予防用又は治療用である、前記〔1〕記
載の医薬用組成物、〔4〕 真菌抗原による感作の有無
を検出するためのものである、前記〔1〕記載の医薬用
組成物、〔5〕 免疫的に異常な疾患に対する免疫調節
用である、前記〔1〕記載の医薬用組成物、〔6〕 真
菌抗原が下記工程を包含する方法で製造されたものであ
る、前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の医薬用組成物、
(1)真菌細胞を得る工程、(2)工程(1)で得られ
た真菌細胞の細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全部
を除去した真菌細胞を調製する工程、及び(3)工程
(2)で調製した真菌細胞を固定して真菌抗原を調製す
る工程、〔7〕 真菌抗原が下記工程を包含する方法で
製造されたものである、前記〔1〕〜〔5〕いずれか記
載の医薬用組成物、(1)真菌細胞を得る工程、(2)
工程(1)で得られた真菌細胞を固定する工程、及び
(3)工程(2)で固定した真菌細胞の細胞壁の少なく
とも一部又は実質的に全部を除去して真菌抗原を調製す
る工程、〔8〕 真菌細胞が、カンジダ属(Candida
)、アスペルギルス属(Aspergillus )、クリプトコ
ッカス属(Cryptococcus)、ムコール属(Mucor )、リ
ゾプス属(Rhizopus)、アブシジア属(Absidia )、ノ
カルジア属(Nocardia)、トリコスポロン属(Trichosp
oron)、サッカロミセス属(Saccharomyces )、ヒスト
プラズマ属(Histoplasma )、ブラストミセス属(Blas
tomyces )、コクシジオイデス属(Coccidioides)、ト
リコフィトン属(Trichophyton)、ミクロスポルム属
(Microsporum )、エピデルモフィトン属(Epidermoph
yton)、スポロトリックス属(Sporothrix)、マラセチ
ア属(Malassezia)、ニューモシスチス属(Pneumocyst
is)、アルタナリア属(Alternaria)、クラドスポリウ
ム属(Cladosporium)、ボトリチス属(Botrytis)、オ
ーレオバシジウム属(Aureobasidium)、フザリウム属
(Fusarium)、トリコデルマ属(Trichoderma )、ヘル
ミンソスポリウム属(Helminthosporium)、ノイロスポ
ラ属(Neurospora)、ワレミア属(Wallemia)又はロド
トルラ属(Rhodotorula )に属する真菌の少なくとも一
菌株である、前記〔6〕又は〔7〕記載の医薬用組成
物、
〔9〕 真菌細胞が、カンジダ アルビカンス、ア
スペルギルス フミガタス、クリプトコッカス ネオフ
ォルマンス、マラセチア ファーファ及びサッカロミセ
ス セレビシェからなる群より選ばれた少なくとも一菌
株である、前記〔8〕記載の医薬用組成物、に関する。
【0024】
【発明の実施の形態】
【0025】本発明の真菌抗原とは、真菌細胞の細胞壁
の少なくとも一部又は実質的に全部が除去され、かつ固
定された固定真菌細胞である。以下、かかる真菌抗原を
「除壁真菌固定細胞」と称する場合がある。
【0026】なお、本明細書における「除壁真菌細胞」
とは、プロトプラストやスフェロプラストに代表される
細胞壁が除去された形態の真菌細胞を意味する。細胞壁
の少なくとも一部が除去される場合の除去の程度は、除
壁真菌固定細胞を生体に投与した際、細胞壁由来の成分
が量的に又は質的に生体に対し悪影響、例えば過敏症、
致死作用を示さなければよい程度であり、細胞壁を必ず
しも全て除去する必要はない。これら細胞壁由来の成分
の残存量は、例えば細胞壁成分に対する抗血清を用いた
凝集反応に対する阻害活性の測定等により定量すること
ができる。また、本明細書において、細胞壁の実質的に
全部を除去したとは、プロトプラストの形態になるまで
細胞壁を除去することを意味する。該形態は、顕微鏡観
察により確認できる。
【0027】また、本明細書における「真菌プロトプラ
スト細胞」とは、酵母状もしくは菌糸状の真菌細胞を細
胞壁溶解酵素等で処理し、グルカン、マンナンを始めと
する多糖類を主成分とする細胞壁を実質的に除去した真
菌細胞をいう。更に、本明細書における「生真菌細胞」
とは細胞壁を有する自然状態の生きた真菌細胞であるこ
とを意味する。
【0028】新鮮な生きた細胞より得られる真菌プロト
プラスト細胞は、等張液又は高張液に懸濁した状態では
球状又はそれに近い形状を有しており、その大きさは通
常、直径0.5 〜5 μm である。また適当な再生培地で培
養すれば、細胞壁を再生し元の形態を有する真菌細胞に
なることができる。即ち、プロトプラスト細胞は、基本
的に生育に必要な成分を全て有している。
【0029】なお、本明細書における「固定(fixatio
n)」とは、絶えず動的に変化している生細胞及び細胞を
構成する分子構造を、ある時点で一時的あるいは永久的
に、その変化を停止させる操作を意味する。
【0030】除壁真菌固定細胞の固定の程度は、取り扱
いの点から、低張液中でもバーストしない程度に固定さ
れていることが好ましい。この場合低張液とは、例え
ば、0〜0.5Mの塩化ナトリウム等の塩を含有する蒸
留水又は緩衝液が挙げられる。
【0031】まず、本発明の医薬用組成物において有効
成分として含有する真菌抗原について説明する。本発明
の真菌抗原は、細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全
部が除去された固定真菌細胞からなる真菌抗原であり、
本発明の真菌抗原を調製するには、次の2つの態様が挙
げられる。まず第1の態様を詳細に説明する。
【0032】第1の態様は次の工程よりなる。 (1)真菌細胞を得る工程、(2)工程(1)で得られ
た真菌細胞の細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全部
を除去した真菌細胞を調製する工程、及び(3)工程
(2)で調製した真菌細胞を固定して真菌抗原を調製す
る工程。
【0033】(1)真菌細胞を得る工程 本工程はより具体的には、真菌を生育に適した培地で培
養し、新鮮な真菌の生細胞を得る工程を包含する。
【0034】まず、真菌の培養は、各々に適した炭素
源、窒素源、その他の栄養源を含む栄養培地で、生育可
能な温度、条件で実施すればよい。通常、真菌の培養に
用いられる栄養培地としては、サブロー培地、ポテトデ
キストロース培地、ツァペックドックス培地、麦芽培
地、イーストニトロゲンベース・グルコース合成培地等
が広く用いられる。必要に応じて、血清や血清アルブミ
ンを添加してもよい。また、癜風菌のようにオリーブオ
イル等を添加した培地が生育に適している真菌もある。
【0035】培養温度は、15〜45℃位が一般的である
が、真菌によっては、培養温度により形態が変化する
(二形性真菌と言われるものが多い)ものもあり、適宜
選択する必要がある。例えば、カンジダ アルビカンス
の場合、25〜37℃が好適に使用される培養温度である
が、30℃前後では通常の培地では酵母状の生育をする
が、37℃付近では菌糸状の生育をしやすい。二形性の真
菌では、細胞壁構成成分、膜タンパク質を含む細胞内タ
ンパク質等のタンパク質成分も変化するため、目的に応
じて培養条件を変えてもよい。
【0036】真菌は、通常の培養条件では凝集したり菌
塊を形成し不均一な細胞懸濁液になるものが多く、この
場合、次工程で細胞壁溶解酵素等を充分に作用させるこ
とができない。そこで、なるべく均一な細胞懸濁液を得
るために、培養方法を工夫してもよい。例えば、アスペ
ルギルス フミガタスの場合、0.5〜1MのNaCl
を培地に添加する等、塩濃度を高めることで解消され
る。得られた細胞は適当な洗浄液、例えば蒸留水などで
洗浄しておくことが望ましい。
【0037】なお、本発明では、新鮮な生真菌細胞を用
いるのが好ましいが、凍結や凍結乾燥により保存された
細胞を用いてもよい。
【0038】(2)工程(1)で得られた真菌細胞の細
胞壁の少なくとも一部又は実質的に全部を除去した真菌
細胞を調製する工程 工程(2)は、細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全
部を除去した真菌細胞を調製する工程である。細胞壁の
除去の程度は、後記工程(3)で得られる固定した除壁
真菌細胞を生体に投与した際、細胞壁由来成分が生体に
悪影響を及ぼさない程度であれば良いが、安全性の面か
らプロトプラストの形態になるまで細胞壁を除去するこ
とが好ましい。
【0039】細胞壁を除去するには、例えば、真菌細胞
に細胞壁溶解酵素を作用させたり、真菌細胞を物理的に
処理することにより達成できる。また、細胞壁溶解酵素
処理と物理的処理とは併用しても良い。
【0040】細胞壁溶解酵素としては種々のものが知ら
れているが、市販の製品としてはザイモリエース(生化
学工業社製)、リチカーゼ(シグマ社製)、ヤタラーゼ
(大関−宝酒造社製)、キチナーゼ(宝酒造社製)、ト
リコデルマ ライジングエンザイム(ノボ−シグマ社
製)、カタツムリ腸管消化酵素β−グルクロニダーゼ
(シグマ社製)、ラミナリアーゼ(シグマ社製)等があ
る。これらの酵素は、各種の細胞壁多糖(キチン、β1,
3-グルカン、マンナン、ガラクトマンナン、キシログル
カン等)の溶解酵素よりなり、さらにプロテアーゼも含
有しているものが多い。
【0041】真菌細胞の細胞壁を除去するには、まず、
得られる除壁真菌細胞がバーストしないように、0.8 〜
1.5Mのソルビトール、マンニトール、NaCl等を含有
し細胞壁溶解酵素の反応を実施できる適当な緩衝液中
に、工程(1)で得られた真菌細胞を懸濁させる。これ
に必要量の細胞壁溶解酵素を添加し、10分間〜数時間
作用させ、細胞壁を除去する。この際、プロテアーゼを
作用させることにより細胞壁をより完全に除去すること
ができる場合もある。真菌によってはプロテアーゼを作
用させる必要がない場合もあり、その際はPMSF(フェニ
ルメタンスルホニルフルオリド)、ペプスタチン等のプ
ロテアーゼインヒビターを加えてもよい。
【0042】また、物理的処理方法としては、例えば
2.5Mのショ糖を含む緩衝液のような高張緩衝液中で
目的菌体を懸濁することにより原形質分離を起こさせ、
ナイフで細胞壁を切り取る方法がある。
【0043】(3)工程(2)で調製した真菌細胞を固
定して真菌抗原を調製する工程 固定は、細胞又はその一部分の破損・自己融解を抑止
し、細胞の外形、内部構造、物質組成などをできるだけ
生きた細胞の状態で保存するために実施する。さらに、
除壁真菌固定細胞の取り扱いの点から、低張液中でもバ
ーストしない除壁真菌細胞の固定方法が好ましい。従っ
て、本発明における固定は、細胞内の抗原性物質をその
抗原性を保持したまま不溶化させる方法が望ましく、例
えば、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、四酸化
オスミウム、過マンガン酸カリウム、メタノール、エタ
ノール等を用いて、工程(2)で調製した真菌細胞を適
当な緩衝液中に懸濁させて行われる。好ましくは、0.5
〜5%のグルタルアルデヒド又は0.5 〜5%のホルムア
ルデヒドを含む適当な緩衝液中で行われる。緩衝液とし
ては、pH 5〜8 のクエン酸緩衝液やリン酸緩衝液が通常
用いられる。例えば、5〜20℃の低温での操作が好ま
しいが、25℃程度の室温で実施してもよい。固定時間
は、通常、1〜60分間である。
【0044】固定の程度は、生菌測定により確認するこ
とができる。本発明では生菌が確認できないことが好ま
しい。
【0045】固定終了後、遠心分離することにより、除
壁真菌固定細胞を得る。
【0046】前記処理により細胞内のタンパク質を凝固
変性させることができる。得られた除壁真菌固定細胞
は、蒸留水などにより十分洗浄するのが望ましい。また
前記方法による固定は、真菌細胞の細胞壁再生能力及び
細胞増殖能力を失わせる。
【0047】以上のようにして得られる除壁真菌固定細
胞を、本発明における真菌抗原として用いる。
【0048】本発明の第2の態様は、下記工程よりな
る。 (1)真菌細胞を得る工程、(2)工程(1)で得られ
た真菌細胞を固定する工程、及び(3)工程(2)で固
定した真菌細胞の細胞壁の少なくとも一部又は実質的に
全部を除去して真菌抗原を調製する工程。
【0049】(1)真菌細胞を得る工程 本工程は、真菌抗原製造の第1の態様における「(1)
真菌細胞を得る工程」に準じて実施すればよい。
【0050】(2)工程(1)で得られた真菌細胞を固
定する工程 本工程は、真菌抗原製造の第1の態様における「(3)
工程(2)で調製した真菌細胞を固定して真菌抗原を調
製する工程」に記載した化学的処理のほか、細胞壁を有
する真菌細胞を固定するための熱処理等の物理的処理に
よっても実施可能である。熱処理は、例えば、60〜1
00℃で1〜60分間加熱することにより行なうことが
できる。固定の程度は、生菌測定により確認することが
できる。本発明では生菌が確認できないことが好まし
い。
【0051】(3)工程(2)で固定した真菌細胞の細
胞壁の少なくとも一部を除去又は細胞壁を実質的に除去
して真菌抗原を調製する工程 本工程における固定した真菌細胞の細胞壁の除去は、適
当な緩衝液中に固定した真菌細胞を懸濁し、第1の態様
における「(2)工程(1)で得られた真菌細胞の細胞
壁の少なくとも一部又は実質的に全部を除去した真菌細
胞を調製する工程」に記載の細胞壁溶解酵素を反応させ
ることにより実施できる。細胞壁の除去程度は顕微鏡観
察によって確認でき、得られた細胞は細胞壁除去前の形
態を留める。得られた除壁真菌固定細胞は、蒸留水など
により十分洗浄するのが望ましい。
【0052】本発明の真菌抗原の調製に使用される真菌
細胞としては、第1の態様、第2の態様のいずれにおい
ても同様であり、ヒト、ヒト以外の哺乳類を始めとする
脊椎動物に病原性を有する真菌又はその真菌と近縁のも
のであれば特に限定はない。かかる真菌の例としては、
例えば、カンジダ属(Candida )、アスペルギルス属
(Aspergillus )、クリプトコッカス属(Cryptococcu
s)、ムコール属(Mucor)、リゾプス属(Rhizopus)、
アブシジア属(Absidia )、ノカルジア属(Nocardi
a)、トリコスポロン属(Trichosporon)、サッカロミ
セス属(Saccharomyces )、ヒストプラズマ属(Histop
lasma )、ブラストミセス属(Blastomyces )、コクシ
ジオイデス属(Coccidioides)、トリコフィトン属(Tr
ichophyton)、ミクロスポルム属(Microsporum )、エ
ピデルモフィトン属(Epidermophyton)、スポロトリッ
クス属(Sporothrix)、マラセチア属(Malassezia)、
ニューモシスチス属(Pneumocystis)、アルタナリア属
(Alternaria)、クラドスポリウム属(Cladosporiu
m)、ボトリチス属(Botrytis)、オーレオバシジウム
属(Aureobasidium )、フザリウム属(Fusarium)、ト
リコデルマ属(Trichoderma )、ヘルミンソスポリウム
属(Helminthosporium)、ノイロスポラ属(Neurospor
a)、ワレミア属(Wallemia)、又はロドトルラ属(Rho
dotorula )に属する真菌が挙げられる。
【0053】本発明における脊椎動物の真菌感染症とし
ては、ヒトの場合、カンジダ症、アスペルギルス症、ク
リプトコッカス症、ムコール症、放線菌症、ヒストプラ
ズマ症、ブラストミセス症、各種皮膚真菌症、癜風、カ
リニ肺炎等が挙げられる。したがって、真菌感染の予防
又は治療用の医薬用組成物の有効成分として用いる真菌
抗原は、かかる真菌感染症の原因菌から製造されること
が有用性の観点から好ましい。
【0054】具体的には、カンジダ症原因菌であるカン
ジダ アルビカンス、カンジダ トロピカリス(C. tro
picalis )、カンジダ グラブラタ(C. glabrata )
等;アスペルギルス症原因菌であるアルペルギルス フ
ミガタス、アスペルギルス フラブス(A. flavus )
等;クリプトコッカス症原因菌であるクリプトコッカス
ネオフォルマンス等;ムーコル症原因菌であるムコール
エスピー(Mucor sp.)、アブシジア エスピー(Abs
idia sp. )、リゾプス エスピー(Rhizopus sp.);
放線菌症原因菌であるノカルジア アステロイデス(No
cardia asteroides )等;その他内臓に真菌感染症を起
こす原因菌であるトリコスポロン クタネウム(Tricho
sporon cutaneum )、ロドトルラ グルチニス(Rhodot
orula glutinis)、ゲオトリクム カンジズム(Geotri
chum candidum )、ニューモシスティス カリニ(Pneu
mocystis carinii)、コクシジオイデス イミチス(Co
ccidioides immitis)、パラコクシジオイデス ブラシ
リエンシス(Paracoccidioides brasiliensis )、ヒス
トプラズマ カプスラツム(Histoplasma capsulatu
m)、ブラストミセス デルマチチディス( Blastomyce
s dermatitidis )、サッカロミセス セレビシエ(Sac
charomyces cerevisiae)等;皮膚糸状菌(デルマトフ
ィテス(Dermatophytes ))であるトリコフィトン属
(トリコフィトン メンタグロフィテス(T. mentagrop
hytes )、トリコフィトンルブルム(T. rubrum )、ト
リコフィトン ベルコーサム(T. verrucosum ))、ミ
クロスポルム属(ミクロスポルム カニス(M. cani
s)、ミクロスポルム ジプセウム(M. gypseum))、
エピダーモフィトン エスピー(Epidermophyton s
p.);黒色真菌(デマチアセウス フンギ(Dematiaceo
us fungi))であるフィアロフォラ エスピー(Phialo
phora sp. )、クラドスポリウム エスピー(Cladospo
rium sp.);癜風菌であるマラセチア ファーファ(Ma
lassezia furfur );その他皮膚真菌症原因菌としては
スポロトリックス シェンキ(Sporothrix schencki
i)、クラドスポリウム カリオニ(Cladosporium carr
ionii)、フォンセカエア ペドロソイ(Fonsecaea ped
rosoi)等が挙げられる。
【0055】使用される菌株としては、治療又は予防し
ようとする真菌症の原因菌と近縁のものであれば特に限
定されないが、病原性(例えばマウスに対する致死毒
性)を有する菌株が望ましい。使用される菌株の代表例
としては、カンジダ症に対しては、例えば、カンジダ
アルビカンスATCC 10231、TIMM 1768 、TIMM 0239 ;ア
スペルギルス症に対しては、アスペルギルス フミガタ
ス ATCC 28212, ATCC 42202, TIMM 1776;クリプトコッ
カス症に対してはクリプトコッカス ネオフォルマンス
ATCC 24067 、TIMM 0354 ;サッカロミセス症に対して
はサッカロミセスセレビシエATCC9763が挙げられる。
【0056】一方、アレルギー治療用の医薬用組成物の
有効成分として用いる真菌抗原は、ヒトに対しアレルギ
ー症状を惹起する原因菌より製造されることが有用性の
観点から好ましい。
【0057】具体的には、カンジダ属真菌であるカンジ
ダ アルビカンス、カンジダ トロピカリス、カンジダ
グラブラタ、カンジダ ボイディニイ(Candida boid
inii)等 ;アスペルギルス属真菌であるアスペルギル
ス フミガタス、アスペルギルス レストリクツス(As
pergillus restrictus)、アスペルギルス ヴェルシコ
ラ(Aspergillus versicolor)等;トリコフィトン属真
菌であるトリコフィトン メンタグロフィテス(Tricho
phyton mentagrophytes );マラセチア属真菌であるマ
ラセチア ファーファ;ムーコル属真菌であるムーコル
ラセモサス(Mucor racemosus );リゾプス属真菌で
あるリゾプス オリザエ(Rhizopus oryzae );ペニシ
リウム属真菌であるペニシリウム ノタタム(Penicill
ium notatum );アルタナリア属真菌であるアルタナリ
ア アルタナタ(Alternaria alternata)、アルタナリ
ア キクチアナ(Alternaria kikuchiana );クラドス
ポリウム属真菌であるクラドスポリウム クラドスポリ
オイデス(Cladosporium cladosporioides)、クラドス
ポリウム カリオニイ(Cladosporium carionii );ボ
トリチス属真菌であるボトリチス シネラ(Botrytis c
inerea );オーレオバシジウム属真菌であるオーレオバ
シジウム プルランス(Aureobasidium pullulans );
フザリウム属真菌であるフザリウム オキシスポルム
(Fusarium oxysporum);トリコデルマ属真菌であるト
リコデルマ ヴィリダエ(Trichodermaviridae );ヘ
ルミンソスポリウム属真菌であるヘルミンソスポリウム
マイジス(Helminthosporium maydis );ノイロスポ
ラ属真菌であるノイロスポラ クラサ(Neurospora cra
ssa );ワレミア属真菌であるワレミア セビ(Wallem
iasebi );ロドトルラ属真菌であるロドトルラ グル
チニス(Rhodotorula glutinis)等が挙げられる。
【0058】使用される菌株としては、治療又は予防し
ようとするアレルギー症の原因菌と近縁のものであれば
特に限定されない。代表例としては、カンジダ抗原を調
製するためには、カンジダ属真菌、例えばカンジダ ア
ルビカンス ATCC 10231 、同TIMM 1768 、カンジダ ボ
イディニイ ATCC 18810;アスペルギルス抗原を調製す
るためは、アスペルギルス属真菌、例えばアスペルギル
ス フミガタス ATCC28212 、同TIMM 1776 、アスペル
ギルス レストリクス ATCC 16912 ;アルタナリア抗原
を調製するためは、アルタナリア属真菌、例えばアルタ
ナリア アルタナ IFO 31188;マラセチア抗原を調製す
るためは、マラセチア属真菌、例えばマラセチア ファ
ーファ ATCC 14521 、同TIMM 2782 が挙げられる。
【0059】前記2つの態様の製造工程のいずれかを包
含する製造方法で得られた真菌抗原は、エタノール、エ
チレングリコールにより脱水してもよい。例えば、70
%、90%、99.5%エタノールで順に処理すればよ
い。この処理で遊離脂肪酸も除去される。脱水後、蒸留
水などにより十分洗浄するのが望ましい。
【0060】また、前記2つの態様の製造工程のいずれ
かを包含する製造方法で得られた真菌抗原は、90%ア
セトン、クロロホルム/メタノールによる化学的処理又
はリパーゼ等の脂質分解酵素による酵素的処理により脱
脂することができる。脱脂後、蒸留水などにより十分洗
浄するのが望ましい。
【0061】さらに、前記2つの態様の製造工程のいず
れかを包含する製造方法で得られた真菌抗原は、各種リ
ボヌクレアーゼ(RNase )やデオキシリボヌクレアーゼ
(DNase )で核酸を分解後、適当な緩衝液で十分洗浄す
れば核酸を除去することができる。その後、蒸留水など
により十分洗浄するのが望ましい。
【0062】一方、前記2つの態様の製造工程のいずれ
かを包含する製造方法で得られた真菌抗原ならびに脱
水、脱脂及び/又は除核酸処理を施した該真菌抗原は、
更に物理的に破砕してもよい。破砕液をそのまま、又は
破砕後遠心分離により不溶物を集め、免疫原として用い
ることができる。
【0063】このようにして得られた本発明の真菌抗原
は、細胞壁成分が除去されているため、生真菌細胞に比
べマクロファージに取り込まれた後分解が速いことが期
待できる。
【0064】本発明の除壁真菌固定細胞を免疫原として
使用したところ、意外にもワクチンとして生真菌細胞と
同等以上の感染防御活性を有していることが明らかとな
った。また、本発明の除壁真菌固定細胞は、アレルゲン
としても十分な活性を有し、健常人に常在する真菌を除
壁真菌固定細胞として用いたところ、健常人の免疫担当
細胞に対するサイトカイン遊離活性を有することが明ら
かとなった。さらに、本発明の除壁真菌固定細胞である
真菌抗原は、真菌に多量に存在する抗原性の高い細胞壁
成分を含まないため、生体に対しアナフィラキシー反応
を始めとする好ましくない免疫反応を起こさず、かつ、
細胞壁に多いグルカン、マンナン等の多糖類や糖タンパ
ク質による毒性もない画期的な真菌抗原である。
【0065】次に、本発明の真菌抗原を有効成分とする
医薬用組成物について説明する。
【0066】(1) 本発明の医薬用組成物は、前記真
菌抗原を有効成分とするものであり、真菌感染の予防又
は治療に用いられるものである。即ち、本発明は、該組
成物を投与することにより、真菌感染に対する哺乳類の
免疫応答を刺激する方法、及び投与対象の哺乳類におい
て該免疫応答により該真菌感染に起因する疾病を予防又
は治療するための、真菌感染に対する哺乳類の免疫応答
を刺激する方法を提供する。
【0067】かかる医薬用組成物の有効成分である真菌
抗原は、感染症の原因真菌又はそれらの変異株もしくは
近縁真菌より製造されることが好ましい。これらの真菌
の具体例は、前述されている。
【0068】本発明の医薬用組成物を個体に投与して、
真菌に対する感染防御免疫応答を誘導し、該免疫応答に
より該医薬用組成物の製造に使用した真菌及び/又はそ
の近縁菌の増殖を抑制し、該真菌に起因する疾病を予防
又は治療することができる。かかる医薬用組成物とし
て、例えばワクチン組成物が挙げられる。
【0069】本発明の医薬用組成物は、所望により各種
の添加剤を配合されていてもよく、またその剤型も種々
の剤型である事ができる。 かかる添加剤としては、所望
剤型を形成するための調剤用添加剤類を挙げることがで
きる。 これらの添加剤類の例としては、例えばアスコル
ビン酸、ビオチン、 パントテン酸カルシウム、ナイアシ
ン等の栄養剤;メタリン酸ナトリウム、 リン酸ナトリウ
ム(第1、第2、第3塩)、ピロリン酸ナトリウム等の
隠蔽剤;ソルビン酸カルシウム、 安息香酸等の保存料、
アラビヤゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、マ
ンニット、ソルビトール、乳糖、果糖、可溶性澱粉、ア
ミノ酸類、葡萄糖、砂糖、蜂蜜、脂肪酸エステル他の添
加剤類又は希釈剤類を挙げることができる。
【0070】本発明の医薬用組成物は、経口又は非経口
投与することができ、例えば、散剤、顆粒、ペレット若
しくは錠剤、コーティング剤、カプセル剤、液剤、シロ
ップ剤等の経口投与に適した剤型;注射剤、点滴剤、坐
剤、点眼剤、点鼻剤、噴霧剤などの非経口投与に適した
剤型にすることができる。
【0071】本発明の医薬組成物を特にワクチンとして
使用する場合について説明する。ワクチンとする場合、
安定剤として適当な濃度のヒト血清アルブミン、ゼラチ
ン、アミノ酸類等、防腐剤として適当な濃度のフェノー
ル、 チメロサール等を必要に応じ添加してもよい。ま
た、該医薬用組成物は液状のみならず、 凍結乾燥を行う
ことにより乾燥製剤としてもよい。 乾燥製剤は使用に際
して適当な溶剤、例えば注射用蒸留水で懸濁して用いて
もよい。
【0072】また、ワクチンは、より強い体液性免疫及
び/又は細胞性免疫を得るために、本発明の真菌抗原に
アジュバントを添加して製剤化することが好ましい。
【0073】アジュバントは通常、抗原と共に投与され
るが、抗原投与の前又は後に与えてもよい。アジュバン
トとしては、哺乳類のワクチン接種に適当なアジュバン
トを用いることができ、例えばフロイント(Freund's)
の完全又は不完全アジュバント;水酸化アルミニウム、
みょうばん等の無機物ゲル;リゾレシチン、ジメチルオ
クタデシルアンモニウムブロミド、リゾレシチン等の界
面活性剤;硫酸デキストラン、ポリIC等のポリアニオ
ン;ムラミルペプチド、タフトシン等のペプチド;Ribi
社製のモノフォスフォリルリピドA(MPL);CytRx
社製のTiterMax;コレラトキシンのBサブユニットがあ
るが、これらに特に限定されない。
【0074】また、ワクチンは、真菌抗原をリポソーム
又は他のマイクロキャリアーに取り込ませた形状で投与
することができる。当然、いくつかの異なる真菌抗原を
混合して用いることも可能である。それによって、複数
の真菌感染症に対する防御免疫を誘導することもでき
る。また、本発明のワクチンは、フルコナゾール、アン
ホテリシンB等の抗真菌化学療法剤やβ−ラクタム系抗
生物質を始めとする各種の抗細菌性抗菌化学療法剤と併
用してもよい。特に、抗真菌化学療法剤とは相加的又は
相乗的に働き、有効性を発揮する。
【0075】ワクチン投与の対象は、抗原と反応して抗
体を産生する全脊椎動物であり、具体的には魚類、両生
類、爬虫類、鳥類及びヒトを含む哺乳類である。即ち、
一般的なワクチン投与対象であるヒト又は家畜動物など
の他、例えば魚類などの営利目的に飼育された脊椎動物
も本発明の対象に含まれる。
【0076】ワクチンの投与方法としては、経口、経粘
膜(鼻、膣等)、経皮(皮下又は皮内)的に、又は静脈
内に投与すればよい。代表的な初回投与量は、タンパク
質量として0.001〜5mg/kg体重/回である
が、必要とする予防又は治療の程度に応じて、投与量を
増加したり、投与回数を増大させればよい。
【0077】本発明のワクチンを投与すると、強い細胞
性免疫及び/又は体液性免疫を誘導することができ、こ
れにより真菌感染を予防又は治療することができる。予
防又は治療の対象となる真菌のみならず、他の真菌に対
しても不十分であるが予防効果、治療効果を誘導するこ
とができる。これは、真菌相互の抗原の共通性による、
及び/又は免疫系が活性化されることにより、スーパー
オキサイドアニオン、一酸化窒素、各種サイトカイン等
が遊離され、これらが幅広い抗微生物活性を有している
ためと考えられる。
【0078】(2) また、本発明の医薬用組成物は、
真菌アレルギーの予防又は治療に用いられるものであ
る。即ち、本発明は、該組成物を投与することによる真
菌に対する哺乳動物のアレルギー反応を抑制する方法な
らびに該組成物の投与対象となる哺乳動物において、該
免疫応答により該組成物の製造に使用した真菌及び/又
はその近縁菌に対するアレルギー反応を抑制し、該真菌
に起因するアレルギー性疾患を予防又は治療する方法を
提供する。
【0079】かかる医薬用組成物の有効成分である真菌
抗原は、アレルギー性疾患の原因真菌又はそれらの変異
株もしくは近縁真菌より製造されることが好ましい。か
かる真菌の具体例は、前述されている。
【0080】該医薬用組成物は、前記方法で製造した真
菌抗原を適当な塩溶液や懸濁液の形で含むことができ、
ポリエチレングリコールやフェノールをさらに含んでも
よい。さらに、前記哺乳類のワクチン製剤化に使用され
るアジュバントを含む懸濁液又は溶液として投与するこ
ともできる。アジュバントは、通常、抗原と共に投与さ
れるが、真菌抗原投与の前又は後に与えてもよい。ま
た、該医薬組成物は、真菌抗原をリポソーム又は他のマ
イクロキャリアーに取り込ませた形状で投与することが
できる。当然、いくつかの異なる真菌抗原と混合して用
いることもでき、また市販の真菌アレルゲンエキス、ハ
ウスダスト、スギなどの各種アレルゲンエキス及び/又
は精製アレルゲンと混合して用いることも可能である。
それによって、複数のアレルゲンに感受性のアレルギー
性患者に、複数のアレルゲンに対する減感作免疫を誘導
することができる。
【0081】真菌アレルギーの予防又は治療剤の投与方
法としては、経皮(皮下又は皮内)、肺吸入、経粘膜
(鼻、眼、膣等)、経口、舌下、又は静脈内に投与すれ
ばよい。代表的な初回投与量は、治療を目的とする場
合、投与ルートにより異なり、タンパク質量として0.
2ng〜100μg/kg体重/回であるが、必要とす
る予防や治療の程度に応じて、投与量を増加したり、投
与回数を増大させればよい。
【0082】(3) また、本発明の医薬用組成物は、
真菌抗原による感作の有無の検出に用いられるものであ
る。即ち、本発明は、該組成物を使用することにより、
真菌による脊椎動物の疾患の診断方法を提供する。従っ
て、本発明の医薬用組成物は、診断用組成物として使用
することができ、診断用組成物として本発明の真菌抗原
を含有する診断用キットなどが例示される。
【0083】かかる医薬用組成物の有効成分である真菌
抗原は、感染症の原因真菌もしくはアレルギー性疾患の
原因真菌又はそれらの変異株や近縁真菌より製造される
ことが好ましい。かかる真菌の具体例は、前述されてい
る。
【0084】該医薬用組成物は、真菌皮膚反応による真
菌による感作状態、スクラッチテストによるアレルギー
性疾患等の診断を行う為の生体内診断及び/又は実験室
診断に用いる。実験室診断に用いる製剤には、例えばマ
イクロタイター試薬、ラテックス凝集試薬、免疫比濁試
薬、酵素免疫試薬等の免疫学的診断薬も含む。生体内診
断の目的で個体に対し、例えば、吸入誘発試験、皮膚テ
スト、鼻や眼の粘膜試験で使用する際は、前記製造方法
により製造した真菌抗原を凍結乾燥粉末又は適当な塩溶
液や懸濁液の形状で含有した該医薬組成物を用いること
ができ、ポリエチレングリコールやフェノールをさらに
添加してもよい。パッチテストには、白色ワセリンを基
剤としてラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を添加
したものに前記抗原成分を溶解したものを使用すること
ができる。
【0085】また前記製造方法で製造した真菌抗原は、
実験室診断、例えば、抗原抗体反応である凝集反応、沈
降反応、中和反応、標識抗体法等を用いた診断法、ヒス
タミン遊離試験、リンパ球幼若化試験、白血球遊走阻止
試験等にも使用することができる。例えば、IgE 抗体価
測定用の抗原として使用する際には、ペーパーディス
ク、セルローススポンジ、マイクロプレート等の固相体
に前記抗原成分を固定化して使用することができる。
【0086】真菌抗原による感作の有無の検出対象は、
真菌抗原と反応して抗体を産生する脊椎動物であり、具
体的には、魚類、両生類、爬虫類、鳥類及びヒトを含む
哺乳類である。従ってヒト又は家畜動物などの他、例え
ば魚類などの営利目的に飼育された脊椎動物も本発明の
対象に含まれる。
【0087】(4) また、本発明の医薬用組成物は、
免疫的に異常な個体に投与して免疫作用を調節するため
に用いられるものである。即ち、本発明は、該組成物を
投与することにより、免疫的に異常な哺乳動物の免疫応
答を調節する方法ならびに該医薬用組成物の投与対象と
なる哺乳動物において、該医薬用組成物の製造に使用し
た真菌及び/又はその近縁菌の抗原性を認識する免疫担
当細胞を刺激し各種サイトカインを遊離させる方法を提
供する。なおサイトカインを遊離する細胞としては、T
リンパ球やナチュラルキラー(NK)細胞等が挙げられ
る。
【0088】かかる医薬用組成物の有効成分である真菌
抗原は、カンジダ アルビカンスやマラセチア ファー
ファ等の常在真菌より製造されることが好ましく、特
に、カンジダ アルビカンスが好ましい。即ち、殆どの
ヒトがこれらの真菌由来の抗原に感作されているため、
カンジダ アルビカンス及びマラセチア ファーファ細
胞より製造される真菌抗原は免疫細胞に刺激を与え、各
種サイトカインを遊離させることができる。免疫的に異
常な個体とは、アレルギー、真菌感染、癌、AIDS、
自己免疫疾患等を発症している個体が挙げられるが、特
に限定されない。
【0089】該医薬用組成物を個体に対し使用する際に
は、乾燥粉末若しくは適当な懸濁液又は前記アジュバン
トを含む懸濁液の形で用いることができる。また、かか
るサイトカイン遊離活性を有する本発明の医薬用組成物
は、放出されたサイトカインが有効である疾患の治療剤
として用いることもできる。例えば、放出されたサイト
カインがインターフェロン−γ(IFN−γ)である場
合、該医薬用組成物は、癌やアレルギーの治療剤として
用いることができる。
【0090】免疫調節用の医薬用組成物の投与方法とし
ては、経皮(皮下又は皮内)、肺吸入、経粘膜(鼻、
眼、膣など)、経口、舌下、又は静脈内に投与すればよ
い。例えば、癌患者の免疫調節を目的とした場合、代表
的な投与量は、ヒトの場合タンパク質量として1μg〜
1mg/kg体重/回であるが、対象となる疾患及び目
的に応じて、投与量を増加したり、投与回数を増大させ
ればよい。
【0091】該医薬用組成物の投与対象は、真菌の抗原
性を認識する免疫担当細胞を有する脊椎動物であり、具
体的には、魚類、両生類、爬虫類、鳥類及びヒトを含む
哺乳類である。従ってヒト又は家畜動物などの他、例え
ば魚類などの営利目的に飼育された脊椎動物も本発明の
対象に含まれる。
【0092】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例に限定されるものではな
い。
【0093】実施例1. カンジダ アルビカンスの固
定プロトプラスト細胞よりなる真菌抗原の調製 1) プロトプラスト細胞の調製:カンジダ アルビカ
ンス(以下、C.アルビカンスと称する)TIMM17
68のサブローデキストロース(SD)寒天斜面培養物
の一白金耳分を、5 mlのYPD培地(酵母エキス1%、ポ
リペプトン2%、グルコース2%)を入れた試験管に植菌し
た。30℃で24時間振とう培養後、培養液10μl を、100
mlのYPD培地を入れた500 ml容三角フラスコに植菌
し、35℃で一晩振とう培養し、C.アルビカンス細胞を
得た。得られた100 mlの培養液(3.8×108 個/m
l)を、2,000 ×g で10分間遠心分離することにより
C.アルビカンス細胞細胞を集めた。集めた細胞を40 m
l の滅菌水で2 回洗浄後、38 mlのバッファーA [1 M N
aClを含む50 mM リン酸緩衝液(pH 7.5)]で1回洗浄
した。洗浄した細胞を38 ml のバッファーB (10 mM ED
TA及び0.13% 2-メルカプトエタノールを含むバッファー
A )に懸濁後(約1×109 個/ml)、35℃で 10 分
間緩やかに振とうした。続いて、この懸濁液に、3.3 mg
/ml のザイモリエース20T (生化学工業社製)を含むバ
ッファーA を4 ml加え、35℃で1時間緩やかに振とうし
た。さらに、12 mg/mlのトリコデルマ ライジングエン
ザイム(シグマ社製)を含む溶液を4 ml加え、35℃で1
時間緩やかに振とうした。得られた懸濁液を2,000 ×g
で10分間遠心分離することにより、球形のプロトプラス
ト細胞を集めた。この細胞を40 ml のバッファーA で3
回洗浄し、プロトプラスト細胞を得た。
【0094】得られたプロトプラスト細胞を含む懸濁液
をバッファーA で適当に希釈し、その0.1 mlを10 ml の
1M NaCl を含むYPD 寒天培地(寒天2%、酵母エキス1%、
ポリペプトン 2% 、グルコース 2% )と混和した後、あ
らかじめ1M NaCl を含むYPD寒天培地を固化させておい
た平板上に重層した。 30 ℃で3 日間培養した結果、再
生細胞のコロニーが出現し、この時のプロトプラストの
再生率は約50% であった。また同時に、プロトプラスト
細胞を含む懸濁液を生理食塩水で適当に希釈し、その0.
1 mlをYPD 寒天培地にまいて30℃で3 日間培養し、出現
コロニー数を測定した結果、105 個当り1個であっ
た。以上の結果より得られたプロトプラスト細胞の殆ど
は細胞壁を実質的に除去されていること、また多くのプ
ロトプラスト細胞が再生するのに必要な成分を有してい
ることが示された。
【0095】2) プロトプラスト細胞の固定及び抗原
液の調製:1)で得られたプロトプラスト細胞を含む懸
濁液に、10分の1量の37% ホルムアルデヒド溶液を加え
て室温でゆっくり転倒混和する。10分後、得られた懸濁
液を2,000 ×g で10分間遠心分離することにより、固定
処理されたプロトプラスト細胞を集めた。この細胞を40
ml の生理食塩水で3回洗浄したものを、固定プロトプ
ラスト細胞とした。以上の操作で100 mlの培養液から約
2×1010個の固定プロトプラスト細胞が得られた。こ
れを適当な細胞数濃度となるように生理食塩水に懸濁
し、C.アルビカンス抗原液として使用した。
【0096】3)固定プロトプラスト細胞の成分分析:
2)で得られたC.アルビカンス抗原液を水に対して透
析後、タンパク質及び中性糖の含量を、それぞれBCA キ
ット(宝酒造社製)及びフェノール硫酸法により定量し
た。その結果、約2×1010個の固定プロトプラスト細
胞(凍結乾燥重量約100mg )あたりタンパク質が約65m
g、中性糖が約5mg 含まれていた。
【0097】4)固定プロトプラスト細胞の毒性:2)
で得られた固定プロトプラスト細胞をタンパク質量とし
て20mg/kg体重をマウスの静脈内に投与し、3日
間観察したところ、全く異常は認められなかった。した
がって、固定プロトプラスト細胞よりなる抗原は低毒性
であることが明らかとなった。
【0098】実施例2. アスペルギルス フミガタス
の固定プロトプラスト細胞の調製 アスペルギルス フミガタスTIMM 1776 のSD寒天斜面培
養物に0.1 %ツィーン80を含む生理食塩水を加え胞子懸
濁液を調製した。この懸濁液の0.5 mlを100 mlのポテト
デキストロース培地(ディフコ社製)を入れた500 ml容
三角フラスコに植菌し、30℃で一晩振とう培養した。得
られた培養液をガラスフィルターでろ過し菌体を集め
た。集めた菌体を50 ml の0.8 M NaClを含む10 mM リン
酸緩衝液(pH6.0 )に懸濁後、10 mg/mlとなるようにヤ
タラーゼ(宝酒造製)を加え、30℃で4 時間緩やかに振
とうした。得られた懸濁液をガラスフィルターでろ過し
菌糸状の細胞を除き、プロトプラスト細胞を集めた。こ
の細胞を0.8M NaCl で2回洗浄し、約5×108 個の球
形又は球形に近いプロトプラスト細胞を得た。得られた
プロトプラスト細胞を含む懸濁液に、10分の1量の37%
ホルムアルデヒド溶液を加えて室温でゆっくり転倒混和
した。10分後、得られた懸濁液を2,000 ×g で10分間遠
心分離することにより、固定処理されたプロトプラスト
細胞を集めた。この細胞を約50 ml の生理食塩水で3回
洗浄し、約4×108 個の固定プロトプラスト細胞を得
た。
【0099】実施例3. クリプトコッカス ネオホル
マンスの固定プロトプラスト細胞の調製 クリプトコッカス ネオホルマンスTIMM 0357 のSD寒天
斜面培養物の一白金耳分を100 mlのYPD 培地を入れた50
0 ml容三角フラスコに植菌し、30℃で一晩振とう培養し
た。得られた培養液を2,000 ×g で10分間遠心分離する
ことにより細胞を集めた。集めた細胞を滅菌水で1回洗
浄後、50 ml の1M ソルビトール、100mM EDTA を含む1
00 mMクエン酸緩衝液(pH 5.8)に懸濁し、これに5 mg/
ml のトリコデルマ ライジングエンザイム(シグマ社
製)を加え、37℃で1時間緩やかに振とうした。細胞壁
を溶解後、2,000 ×g で10分間遠心分離することによ
り、プロトプラスト細胞を集めた。集めたプロトプラス
ト細胞を含む懸濁液に、10分の1量の37% ホルムアルデ
ヒド溶液を加えてゆっくり転倒混和した。10分後、得ら
れた懸濁液を2,000 ×g で10分間遠心分離することによ
り、固定処理されたプロトプラスト細胞を集めた。この
細胞を約50 ml の生理食塩水で3回洗浄し、約2×10
8 個の固定プロトプラスト細胞を得た。
【0100】実施例4. マラセチア ファーファの固
定プロトプラスト細胞の調製 マラセチア ファーファ TIMM 2782のオリーブオイル重
層寒天斜面培地[ポテトデキストロース寒天(日水製薬
製)3.9%、ネオペプトン(ディフコ社製)1%、酵母エキ
ス1%]での培養物の一白金耳分を8ml の液体培地[イー
ストニトロゲンべース(ディフコ社製)0.67% 、カシト
ン(ディフコ社製)0.5%、グルコース 2% 、ツイーン60
(ナカライテスク製)1%、モノオレイン(ナカライテス
ク製)0.1%、MEM ビタミン溶液(ギブコ社製)5%]を入
れた試験管に植菌した。27℃で3日間振とう培養後、培
養液を0.5ml ずつ同液体培地100ml を入れた500ml 容三
角フラスコに植菌し、27℃で3 日間振とう培養した。培
養液100 mlを2,000 ×g で10分間遠心分離することによ
り、細胞を集めた。集めた細胞を30mlの洗浄液A [ツイ
ーン80(ナカライテスク製)0.05% 、NaCl 0.8% ]で1
回洗浄し、30mlの洗浄液B (2M NaCl 、50mM リン酸緩
衝液 pH7.5、10mM EDTA )で4 回洗浄後、5mlのプロト
プラスト化バッファー(洗浄液B に0.14% 2-メルカプト
エタノールを加えたもの)に懸濁した。10 mg のトリコ
デルマ ライジングエンザイム(シグマ社製)、0.2 ml
のβ- グルクロニダーゼ タイプH-2 (シグマ社製)を
2 mlのプロトプラスト化バッファーに溶解し、これを前
記細胞懸濁液に加え、37℃で3時間振とうすることによ
り、細胞をプロトプラスト化した。2,000 ×g で10分間
遠心分離することにより球形又は球形に近いプロトプラ
スト細胞を集めた。これを10 ml の洗浄液B で3 回洗浄
した。得られたプロトプラスト細胞を含む懸濁液に、10
分の1量の37% ホルムアルデヒド溶液を加えて室温でゆ
っくり転倒混和した。10分後、得られた懸濁液を2,000
×g で10分間遠心分離することにより、固定処理された
プロトプラスト細胞を集めた。この細胞を50 ml の生理
食塩水で3回洗浄し、約1×109 個の固定プロトプラ
スト細胞を得た。
【0101】実施例5. サッカロミセス セレビシェ
の固定プロトプラスト細胞の調製 サッカロミセス セレビシェATCC9763のSD寒天斜面培養
物の一白金耳分を100mlのYPD 培地を入れた500 ml容三
角フラスコに植菌し、30℃で一晩振とう培養した。2,00
0 ×g で10分間の遠心分離により、得られた培養液から
細胞を集めた。集めた細胞を滅菌水で1回洗浄後、50 m
l の1M ソルビトール、100 mM EDTA を含む100 mMクエ
ン酸緩衝液(pH 5.8)に懸濁し、これに3.3 mg/ml のザ
イモリエース20T を含むバッファーA(実施例1参照)
を4 ml加え、35℃で1時間緩やかに振とうした。さら
に、5 mg/ml のトリコデルマ ライジングエンザイム
(シグマ社製)を加え、37℃で1時間緩やかに振とうし
た。得られた懸濁液を2,000 ×g で10分間遠心分離する
ことにより、プロトプラスト細胞を集めた。洗浄後、プ
ロトプラスト細胞を含む懸濁液に、10分の1量の37% ホ
ルムアルデヒド溶液を加えて室温でゆっくり転倒混和し
た。10分後、得られた懸濁液を2,000 ×g で10分間遠心
分離することにより、固定処理されたプロトプラスト細
胞を集めた。この細胞を約50 ml の生理食塩水で3回洗
浄し、約1×1010個の固定プロトプラスト細胞を得
た。
【0102】実施例6. カンジダ・アルビカンスの固
定プロトプラスト細胞よりなる真菌抗原の調製−2 1) 化学的固定処理による調製:実施例1−1)と同
様の方法で培養、集菌を行い、C.アルビカンス細胞を
得た。得られた細胞を蒸留水にて洗浄後、再度適当量の
蒸留水に懸濁した。細胞懸濁液の10分の1の量の37
%ホルムアルデヒド溶液を直接細胞懸濁液に加えた後、
ゆっくり転倒混和し室温にて5分間放置し、細胞を固定
した。次いで得られたホルムアルデヒド固定細胞を適当
量の蒸留水で2回洗浄後、実施例1−1)記載のバッフ
ァーAにて1回洗浄した。その後実施例1−1)と同様
の酵素処理を行い、細胞壁の除去操作を施した。
【0103】前記方法で得られた細胞は、フェノール・
硫酸法による糖定量の結果、細胞壁に含まれる中性糖の
約95%が除去されていた。
【0104】2) 物理的固定処理による調製:実施例
1−1)と同様の方法で培養、集菌を行いC.アルビカ
ンス細胞を得た。得られた細胞を蒸留水にて洗浄後、再
度適当量の蒸留水に懸濁した。細胞懸濁液を95℃、3
0分間処理し、細胞を熱固定した。次いで得られた熱処
理固定細胞を適当量の蒸留水で2回洗浄後、実施例1−
1)記載のバッファーAにて1回洗浄した。続いて実施
例1−1)と同様の酵素処理を行い、細胞壁の除去操作
を施した。
【0105】前記方法で得られた細胞は、フェノール・
硫酸法による糖定量の結果、細胞壁に含まれる中性糖の
約95%が除去されていた。
【0106】実施例7. ワクチン製剤の調製 1) 油中水系(不完全フロイントアジュバント)製剤
の調製 実施例1で調製したC.アルビカンス固定プロトプラス
ト細胞抗原液の必要量をとり、等容量の不完全フロイン
トアジュバント(ディフコ社製、以下、IFA と略す)と
十分に混合し、油中水系のワクチン製剤とした。
【0107】2) アラム製剤の調製 実施例1で調製したC.アルビカンス固定プロトプラス
ト細胞抗原液の必要量をとり、撹拌しながら等量のアラ
ム(ピアス社製)を滴下し、添加終了後、さらに30分間
撹拌してアラム製剤とした。
【0108】実施例8. C.アルビカンス固定プロト
プラスト細胞抗原のワクチン活性(感染防御免疫効果)
及び生真菌ワクチンとの比較 1) 延命効果の測定によるワクチン活性の評価:実施
例1で得られたC.アルビカンス固定プロトプラスト細
胞抗原液を、1×108 個/mlとなるように生理食塩水
で希釈した。希釈液に等量のIFA を加え、実施例6のよ
うにワクチン製剤とし、C57BL/6 マウス(8 週齢、雌)
に1匹当たり0.1 mlずつ皮下接種により免疫した。1週
間後、再度同量を皮下接種した。即ち、1匹当たりの投
与量は5×106 個/回となる。対照としてSD液体培
地で培養して得られたC.アルビカンスTIMM176
8生真菌細胞をIFA と混ぜ、固定プロトプラスト細胞と
同一の細胞数を1週間隔で2回皮下接種により免疫し
た。また、生理食塩水とIFA の混合物を同様に1週間隔
で2回皮下接種した。2回目の免疫の1週間後、全ての
免疫マウスに、SD液体培地で培養して得られたC.ア
ルビカンスTIMM1768生真菌細胞を5×105
ずつ静脈内感染させた。感染後、30日間生死を観察し
た。
【0109】結果を表1に示す。C.アルビカンス固定
プロトプラスト細胞抗原は、生真菌と少なくとも同等の
感染防御活性を示した。
【0110】
【表1】
【0111】2) 腎臓内菌数の測定によるワクチン活
性の評価:実施例1で得られたC.アルビカンス固定プ
ロトプラスト細胞抗原、生真菌(いずれも、5×106
個/回) 及び生理食塩水の各々のIFA との混合物を、前
記1)と同様にC57BL/6 マウスに皮下接種により1週間
隔で2回免疫した(各群5匹)。2回目の免疫の8日
後、全ての免疫マウスに、SD液体培地で培養して得ら
れたC. アルビカンスTIMM0136 生真菌細胞を1×10
5 個ずつ静脈内感染させた。感染後、6日目に両腎臓を
摘出し生理食塩水6mlでホモジナイズし、適当に希釈
した後その100 μlをSD寒天培地に塗布した。30℃で24
時間培養後、生育してきたC.アルビカンスのコロニー
数をカウントした。
【0112】結果を表2に示す。なお表2における腎臓
内菌数を示す対数は常用対数である。C.アルビカンス
固定プロトプラスト細胞よりなる真菌抗原は生真菌と同
程度の感染防御活性を示した。
【0113】
【表2】
【0114】実施例9. C.アルビカンス固定プロト
プラスト細胞抗原の細胞性免疫反応の誘導作用:カンジ
ダ抗原に対する特異的遅延型過敏症(DTH )反応 実施例8−1)に記載の方法に従って、C.アルビカン
ス固定プロトプラスト細胞抗原、生真菌(いずれも、5
×106 個/回)及び生理食塩水の各々のIFAとの混合
物を、C57BL/6 マウスに皮下接種により1週間隔で2回
免疫した(各群5匹)。2回目の免疫の13日後、カンジ
ダ抗原[実施例1−1)で調製したプロトプラスト細胞
を生理食塩水に懸濁しバーストさせた後、遠心分離によ
り回収される不溶性画分]10μg (タンパク質量とし
て)を各マウスのフットパッドに皮下投与し、24時間後
にフットパッドの腫れを測定した。
【0115】結果を表3に示す。表3より、C.アルビ
カンス固定プロトプラスト細胞抗原で免疫されたマウス
に、カンジダ抗原に対するヘルパーT 細胞の関与するDT
H 反応が誘導されていることが明らかとなった。また、
生真菌で免疫したマウスにおいてもカンジダ抗原に対す
る強い細胞性免疫が誘導されていた。
【0116】
【表3】
【0117】実施例10. C.アルビカンス生真菌で
免疫されたマウスの脾臓リンパ球のC.アルビカンス固
定プロトプラスト細胞抗原に対する特異的増殖及びサイ
トカイン産生 1) レスポンダー細胞及び抗原提示細胞の調製:実施
例8−1)に記載の方法に従って、5×106 個/回の
C.アルビカンスTIMM1768生真菌を皮下接種に
より1週間隔で2回免疫したBALB/cマウスより、2回目
の免疫後44日目に脾臓を取り出した。該脾臓をRPMI-164
0 培地中でホモゲナイズして、細胞懸濁液とし、これに
RPMI-1640 培地を加え洗浄遠心分離後、集めた細胞を10
% 牛胎児血清(FCS )を添加したRPMI-1640 培地に再懸
濁した。この細胞懸濁液をナイロンウールカラムに入
れ、37℃で1時間培養後、10%FCS添加RPMI-1640 培地で
溶出し、T細胞に富む画分を得た。遠心分離により細胞
を集め、10%FCS添加RPMI-1640培地に2×106 個/m
lとなるように懸濁し、レスポンダー細胞とした。
【0118】別に正常BALB/cマウスより脾臓を取り出
し、RPMI-1640 培地中でホモゲナイズして細胞懸濁液と
し、これにRPMI-1640 培地を加え洗浄遠心分離後、X 線
(7000R)を照射した。再度、洗浄遠心分離後、細
胞を10%FCS添加RPMI-1640 培地に3×106 個/mlと
なるように再懸濁し、抗原提示細胞とした。
【0119】2) 抗原特異的増殖作用:実施例1で得
られたC.アルビカンス固定プロトプラスト細胞を適当
に希釈した抗原液、及び生理食塩水を各々10μl ずつ96
ウェルマイクロプレートに分注後、レスポンダー細胞と
抗原提示細胞の細胞懸濁液を100 μl ずつ加え、37℃、
5%CO2 条件下で培養し、6日後に、3 H−チミジン
(37kBq/ウェル)を加えた。さらに18時間培養
後、細胞を回収し、細胞への3 H−チミジン取り込み量
を測定した。
【0120】結果を表4に示す。なお表4における抗原
濃度は、レスポンダー細胞を抗原刺激した際の1ウェル
中C.アルビカンス固定プロトプラスト細胞数である。
免疫マウス由来の脾細胞はC.アルビカンス固定プロト
プラスト細胞よりなる真菌抗原に対して濃度依存的な増
殖を示した。
【0121】
【表4】
【0122】3) 抗原特異的なサイトカイン産生誘導
作用:実施例10−1)で調製したレスポンダー細胞と
抗原提示細胞の細胞懸濁液を各2.5mlずつ取り50
ml容フラスコに入れた。 このフラスコに適当に希釈し
た実施例1で調製したC.アルビカンス固定プロトプラ
スト抗原液250μl(最終抗原濃度1×106 個/m
l)又は生理食塩水250μlを添加し、 立てた状態で
37℃、5%CO2 条件下で培養した。培養上清の一部
を1、4及び7日後に分取し、IFN−γ、インターロ
イキン4(IL−4)を各々マウスIFN−γELISA キ
ット、マウスIL−4ELISA キット(共にENDOGEN 社
製)を使用して測定した。方法は製造元のプロトコール
に従った。なお各キットの検出限界値は、IFN−γが
0.015ng/ml、IL−4が0.005ng/m
lである。
【0123】結果を表5に示す。生真菌免疫マウス由来
の脾細胞は、C.アルビカンス固定プロトプラスト細胞
真菌抗原に対して応答した。即ち、IFN−γを産生
し、その量は抗原との反応時間と共に増大した。IL−
4も産生され、その量は抗原との反応時間と共に増大し
たが、IFN−γに比べると少なかった。
【0124】
【表5】
【0125】実施例11. ヒト末梢血リンパ球(PB
MC)のC.アルビカンス固定プロトプラスト細胞より
なる真菌抗原に対する特異的増殖及びサイトカイン産生 1) PBMC検体の調製:健常人から成分採血により
採血を行い、白血球画分を集め、さらに以下の分離方法
に従って、PBMCを調製した。すなわち、採血液をRP
MI-1640 培地で約2倍希釈後、フィコール−パック(Fi
coll-Paque)分離液(ファルマシア社製)上に重層し、
500×gで20分間室温で遠心分離した。中間層のP
BMC検体をピペットで回収、洗浄して90%牛胎児血
清(FCS 、インターゲン社製)と10%ジメチルスルホキ
シド(シグマ社製)からなる保存液に懸濁した状態で液
体窒素中に保存した。
【0126】2) 抗原特異的増殖作用:実施例11−
1)に記載の方法に従ってヒト健常人6人より得られた
PBMC6検体を融解後、RPMI-1640 培地で3回洗浄
し、更に以下のように処理した。まず5%ヒトAB血清を
添加したRPMI-1640 培地に懸濁し、1.5×106 個/
mlとなるように希釈し、96穴マイクロプレートに1
ウェルあたり100 μl 入れた。
【0127】次に、適当に希釈したC.アルビカンス固
定プロトプラスト細胞抗原液を1ウェルあたり5μl 加
え(最終抗原濃度1×106 個/ml)、37℃、5%CO
2 条件下で培養した。培養開始後6日目に3 H−チミジ
ンを加え(37kBq/ウェル)、18時間後細胞を回収
し、実施例10−2)と同様に、細胞への3 H−チミジ
ン取り込み量を測定した。
【0128】結果を図1に示す。PBMCはすべて、
C.アルビカンス固定プロトプラスト細胞抗原に対し抗
原特異的な増殖を示した。
【0129】3) 抗原特異的なサイトカイン産生誘導
作用:実施例11−1)に記載の方法に従ってヒト健常
人12人より得られたPBMC12検体を融解後、RPMI
-1640培地で3回洗浄し、更に以下のように処理した。
まず5%ヒトAB血清を添加したRPMI−1640培
地に懸濁し、1.5×106 個/mlとなるように希釈
し、24穴マイクロプレートに1ウェルあたり1ml入
れた。適当に希釈したC.アルビカンス固定プロトプラ
スト細胞抗原液を1ウェルあたり50μl加え(最終抗
原濃度1×106 個/ml)、37℃、5%CO2 条件
下で培養した。培養開始後1、4、7日目に培養上清を
サンプリングし、IFN−γ量をヒトIFN−γ EL
ISAキット(Amersham LIFE SCIENCE 社製)を使用し
て測定した。方法は製造元のプロトコールに従った。P
BMC12検体は、C.アルビカンス固定プロトプラス
ト細胞よりなる真菌抗原に対して応答してIFN−γを
産生し、その量は抗原との反応時間と共に増大した。
【0130】7日目のIFN−γの量を図2に示す。図
中で示した7検体が1 ng/ml以上のIFN−γ産生
量を示した。
【0131】実施例12. 真菌アレルギー皮内反応診
断試薬および診断用滴定試薬の調製 実施例1で調製したC.アルビカンス固定プロトプラス
ト細胞抗原液を用いて、真菌アレルギー疾患に対する皮
内反応診断試薬及び真菌アレルギー診断用滴定試薬とし
て用いる。皮内反応診断試薬には0.5 %フェノールを添
加した0.9 %生理食塩水を溶媒とし、固定プロトプラス
ト細胞抗原液をタンパク質濃度として1.0mg/ml
になるように希釈後更に100倍或いは1000倍にな
るように希釈する。また、真菌アレルギー診断用滴定試
薬には、固定プロトプラスト細胞をタンパク質濃度とし
て1mg/mlの濃度でハンクス緩衝液に溶解し、これ
をヒスタミン遊離滴定用試薬の原液としてその希釈液を
用いる。
【0132】実施例13. 減感作治療用抗原製剤の調
製 実施例1で調製したC.アルビカンス固定プロトプラス
ト細胞抗原液を用いて、真菌アレルギー疾患に対する減
感作治療剤として用いる。固定プロトプラスト細胞をタ
ンパク質濃度として1mg/mlの濃度で0.5 %フェノ
ールを添加した0.9 %生理食塩水に溶解し、減感作治療
用抗原の原液とする。
【0133】
【発明の効果】本発明の除壁真菌固定細胞よりなる真菌
抗原を含有する医薬用組成物は、感染防御効果の面で従
来の真菌感染に対する抗原に比べて優れていると共に、
生真菌細胞を含まない、毒性が低い、また、種々検討さ
れている真菌感染に対する抗原と全く異なり、種々の副
作用を有するマンナン、グルカン等の細胞壁成分の含量
が極めて低いため安全性の面でも優れている。即ち、固
定除壁真菌細胞よりなる真菌抗原は、ワクチンに代表さ
れる真菌感染の予防又は治療用の医薬用組成物やアレル
ギー予防用又は治療用の医薬用組成物の他、真菌に対す
る感作の有無を検出するための医薬用組成物などの有効
成分として有用である。特にカンジダ アルビカンス由
来の除壁真菌固定細胞よりなる真菌抗原は、ヒトに対し
ても抗原性を有しており、サイトカインを遊離させた
り、リンパ球の増殖を起こさせることができ、免疫調節
剤などの医薬用組成物の有効成分としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、C.アルビカンス由来の固定プロトプ
ラスト細胞刺激によるヒトPBMC検体の3 H−チミジ
ン取り込みを示す図である。
【図2】図2は、C.アルビカンス由来の固定プロトプ
ラスト細胞刺激によるヒトPBMC検体のIFN−γの
遊離量を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全
    部が除去された固定真菌細胞からなる真菌抗原を有効成
    分とする医薬用組成物。
  2. 【請求項2】 真菌感染の予防又は治療用である、請求
    項1記載の医薬用組成物。
  3. 【請求項3】 真菌アレルギーの予防用又は治療用であ
    る、請求項1記載の医薬用組成物。
  4. 【請求項4】 真菌抗原による感作の有無を検出するた
    めのものである、請求項1記載の医薬用組成物。
  5. 【請求項5】 免疫的に異常な疾患に対する免疫調節用
    である、請求項1記載の医薬用組成物。
  6. 【請求項6】 真菌抗原が下記工程を包含する方法で製
    造されたものである、請求項1〜5いずれか記載の医薬
    用組成物。 (1)真菌細胞を得る工程、(2)工程(1)で得られ
    た真菌細胞の細胞壁の少なくとも一部又は実質的に全部
    を除去した真菌細胞を調製する工程、及び(3)工程
    (2)で調製した真菌細胞を固定して真菌抗原を調製す
    る工程。
  7. 【請求項7】 真菌抗原が下記工程を包含する方法で製
    造されたものである、請求項1〜5いずれか記載の医薬
    用組成物。 (1)真菌細胞を得る工程、(2)工程(1)で得られ
    た真菌細胞を固定する工程、及び(3)工程(2)で固
    定した真菌細胞の細胞壁の少なくとも一部又は実質的に
    全部を除去して真菌抗原を調製する工程。
  8. 【請求項8】 真菌細胞が、カンジダ属(Candida )、
    アスペルギルス属(Aspergillus )、クリプトコッカス
    属(Cryptococcus)、ムコール属(Mucor )、リゾプス
    属(Rhizopus)、アブシジア属(Absidia )、ノカルジ
    ア属(Nocardia)、トリコスポロン属(Trichosporo
    n)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ヒストプラ
    ズマ属(Histoplasma )、ブラストミセス属(Blastomy
    ces )、コクシジオイデス属(Coccidioides)、トリコ
    フィトン属(Trichophyton)、ミクロスポルム属(Micr
    osporum )、エピデルモフィトン属(Epidermophyto
    n)、スポロトリックス属(Sporothrix)、マラセチア
    属(Malassezia)、ニューモシスチス属(Pneumocysti
    s)、アルタナリア属(Alternaria)、クラドスポリウ
    ム属(Cladosporium)、ボトリチス属(Botrytis)、オ
    ーレオバシジウム属(Aureobasidium )、フザリウム属
    (Fusarium)、トリコデルマ属(Trichoderma )、ヘル
    ミンソスポリウム属(Helminthosporium)、ノイロスポ
    ラ属(Neurospora)、ワレミア属(Wallemia)又はロド
    トルラ属(Rhodotorula )に属する真菌の少なくとも一
    菌株である、請求項6又は7記載の医薬用組成物。
  9. 【請求項9】 真菌細胞が、カンジダ アルビカンス、
    アスペルギルス フミガタス、クリプトコッカス ネオ
    フォルマンス、マラセチア ファーファ及びサッカロミ
    セス セレビシェからなる群より選ばれた少なくとも一
    菌株である、請求項8記載の医薬用組成物。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007515180A (ja) * 2003-12-23 2007-06-14 グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム ワクチン

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