JPH10234379A - 真菌抗原及びその製造方法 - Google Patents

真菌抗原及びその製造方法

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JPH10234379A
JPH10234379A JP9061807A JP6180797A JPH10234379A JP H10234379 A JPH10234379 A JP H10234379A JP 9061807 A JP9061807 A JP 9061807A JP 6180797 A JP6180797 A JP 6180797A JP H10234379 A JPH10234379 A JP H10234379A
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fungal
cell
antigen
cell wall
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JP9061807A
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Kazutada Takesako
一任 竹迫
Shigetoshi Mizutani
滋利 水谷
Masahiro Endo
政博 遠藤
Ikunoshin Katou
郁之進 加藤
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Takara Shuzo Co Ltd
Original Assignee
Takara Shuzo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】真菌を原因とするアレルギー性疾患及び/又は
感染症に対して有効で、より安全な減感作治療用アレル
ゲン組成物、生物学的製剤、又は診断用組成物として使
用することのできる新規な真菌抗原を提供すること、並
びにかかる真菌抗原の製造方法を提供すること。 【解決手段】細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の
少なくとも一部を除去した真菌細胞より得られる水溶性
画分であることを特徴とする真菌抗原、並びに(1)真
菌の生細胞を得る工程、(2)細胞壁を実質的に除去し
た、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞を
得る工程、(3)かかる真菌細胞をバーストさせる工
程、(4)水溶性画分を得る工程、の各工程を含むこと
を特徴とする、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁
の少なくとも一部を除去した真菌細胞より得られる水溶
性画分である真菌抗原の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞壁を有する病
原性微生物である真菌によるアレルギー疾患及び/又は
感染症の予防又は治療、及び真菌による疾患の診断に有
効な真菌抗原及びその製造方法に関する。さらに本発明
は、該真菌抗原として用いられる抗原性タンパク質をコ
ードするポリヌクレオチドに関する。さらに本発明は、
該真菌抗原を含有する生物学的製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】真菌は環境中に非常に多くの数、種類が
存在しており、脊椎動物はほとんど全てこれらの真菌に
感作されている。また、生体に常在している真菌も多
い。従って、脊椎動物では一般にこれらの真菌に対する
種々の生体防御免疫反応が用意されている。この反応
は、真菌により異なるが、一般的に真菌感染に対して重
要な働きをしている免疫反応には、活性化されたマクロ
ファージや多形核白血球(PMN )が食菌作用や殺菌作用
を示し、主役として働いているが、抗体や細胞性免疫も
大きく寄与していることも知られている。
【0003】しかし、生体が有している免疫系は、上記
のように必ずしも生体に有用に働くわけではない。その
一つとしてアレルギーがある。現在、喘息、アトピー性
皮膚炎、アレルギー性鼻炎をはじめとするアレルギー性
疾患が急激に増大しつつあるが、この中で真菌を原因と
するアレルギー性疾患も非常に多い。アレルギー性疾患
の多くは、その疾患の原因抗原に感作されることによ
り、血清及び組織において、アレルゲンである抗原に特
異的なIgE抗体(レアギン抗体)が産生され、該Ig
E抗体が肥満細胞及び好塩基球のレセプターに結合す
る。再びその抗原に暴露されると、細胞に結合したIg
Eが抗原により細胞表面上で架橋し、IgE−抗原相互
作用の生理学的効果が生ずる。これらの生理学的効果は
ケミカルメディエイターであるヒスタミン、セロトニ
ン、ヘパリン、好酸球遊送因子又は各種ロイコトリエン
等の放出を介して現れる。それらの効果は抗原が体内に
入る経路及び肥満細胞又は好塩基球上にIgEが沈着す
るパターンに依存して全身的又は局所的性質であり得
る。
【0004】全身的症状はアナフィラキシーショックが
含まれ、血管内での抗原に対するIgE−好塩基球応答
が起こる。その結果、主として平滑筋の収縮と毛細管の
拡張が起こり、発疹、嘔吐、下痢、呼吸困難等の症状が
現れ、激しい場合は死に至る。また、局所的症状は一般
に抗原が体内に入った位置の上皮表面に起こり、発赤や
丘疹として現れる。局所的症状が気管支の平滑筋の収縮
の場合、気管支喘息として現れる。
【0005】アレルギー性疾患を引き起こす原因菌とし
ては、カンジダ属(Candida )、アスペルギルス属(As
pergillus )、ムーコル属(Mucor )、ペニシリウム属
(Penicillium )、アルタナリア属(Alternaria)、ク
ラドスポリウム属(Cladosporium)、マラセチア属(Ma
lassezia)、ボトリチス属(Botrytis)、リゾプス属
(Rhizopus)、オーレオバシジウム属(Aureobasidium
)、フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Tri
choderma )、ヘルミンソスポリウム属(Helminthospor
ium)、ノイロスポラ属(Neurospora)、ワレミア属(W
allemia)、ロドトルラ属(Rhodotorulla)、トリコフ
ィトン属(Trichphyton )等が知られている。
【0006】また、上記免疫系を有するにも関わらず、
ヒト、動物を始めとする脊椎動物に感染して種々の疾病
を引き起こす真菌の存在も知られている。例えば、ヒト
の皮膚、口腔等に表在性真菌症を起こし、内臓、脳等に
全身性真菌症を起こし、ペット、家畜等の動物に対して
も同様の感染症を起こす。このうち、ヒトに感染して、
全身性真菌症を起こす原因真菌の主なものとしては、カ
ンジダ属(カンジダアルビカンス(Candida albicans)
他)、クリプトコッカス属(クリプトコッカス ネオフ
ォルマンス(Cryptococcus neoformans )他)、アスペ
ルギルス属(アスペルギルス フミガタス(Aspergillu
s fumigatus )他)、カリニ肺炎菌(ニューモシスチス
カリニ(Pnemocystis carinii))等が知られ、表在
性真菌症では、皮膚、口腔、膣等に感染するカンジダ
属、手足の皮膚に感染する白癬菌(トリコフィトン メ
ンタグロフィテス(Tricophyton mentagrophytes)、ト
リコフィトン ルブルム(Tricophyton rubrum )他)
等が主なものと考えられている。
【0007】家畜等に感染症を起こす真菌としては皮膚
糸状菌(Dermophytes )が多く、上記のトリコフィトン
(トリコフィトン ベルコーサム(T. verrucosum
他))の他に、ミクロスポルム(ミクロスポルム カニ
ス(M. canis)、ミクロスポルムジプセウム(M. gypse
um)他)が知られている。生活環境中にはこれら以外に
も多様な真菌が存在し、ヒト、動物に感染を引き起こす
と考えられている。さらに、近年、広範囲抗生物質の多
用、免疫抑制剤の使用、免疫抑制作用を持った制癌剤の
使用等により、これらの薬剤の投与を受けている患者は
免疫的易感染宿主(immunocompromised host)となり、
健常人では病原性の低い真菌による日和見感染が増大し
ている。また、AIDS患者においては、口腔カンジダ症が
繰り返し発生する他、各種真菌症が併発する。また、血
管内カテーテル留置、特に経中心高カロリー輸液法(IV
H )による治療を受けている患者では、カテーテルに起
因して真菌、特にカンジダによる感染症が起こる。
【0008】アレルギー性疾患の治療法としては、抗ヒ
スタミン薬、ステロイド性抗炎症薬、メディエイタ−遊
離抑制薬などが使用されている。しかし、抗ヒスタミン
薬は、倦怠感、眠気、めまい等、ステロイド剤は、副腎
萎縮、機能不全、胃潰瘍など様々な副作用の危険性があ
り、メディエイター遊離抑制剤も、問題となるアレルギ
ー性疾患以外に関与しているメディエイターの作用をも
抑制する危険性がある。この点において、抗原診断によ
り特定されたアレルゲンとの暴露の機会を減らす予防
法、及び/又はこれらの原因アレルゲンを用いた減感作
療法が優れた治療法とされている。
【0009】従って、アレルギー疾患に対しては、まず
原因となっている抗原を同定する診断が必要であり、そ
のためにまず100 種を超える市販のアレルゲンエキス、
時には自製のものについて、疑わしい抗原エキスを皮内
テストにより試験している。可能性の高い抗原が見つか
ると、血清中のIgE抗体価の測定、誘発テスト、又は
全血やリンパ球を用いたヒスタミン遊離試験により抗原
を特定することができる。
【0010】ヒトにアレルギー症状を惹起させるアレル
ゲンとして天然に存在する多くのものが知られている
が、市販の食品などのアレルゲンエキスは天然のアレル
ゲンを原料とした粗抽出物である。従って、当然多くの
物質の集合体であり、また複数の抗原が含有されてい
る。近年になって、分離精製技術及びアレルゲン活性評
価法が進展した結果、多くの食品アレルゲンから、アレ
ルゲンの本体である抗原性タンパク質が単離同定されて
きた。
【0011】また、環境中に存在するアレルゲンである
ダニ、スギ花粉、ネコの毛などからもそれぞれより主要
なアレルゲンとしてDer p I[Smith,W.A., et al.,Clin.
Exp.Allergy,Vol.24,220-228(1994)] 、Cry j I[Sone,
T. et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,Vol.199,619-
625(1994)] 、Fel d I[Morgenstern,J.P. et al.Proc.N
atl.Acad.Sci.USA,Vol.88,9690-9694(1991)] と命名さ
れた抗原性タンパク質が単離されている。更に、それら
のアレルゲンタンパク質をコードする遺伝子も単離さ
れ、遺伝子工学的手法により純粋なアレルゲンタンパク
質を大量に調製することが可能になっている。
【0012】一方、真菌のアレルゲンを単離する努力も
なされている。真菌細胞内に存在するタンパク質から、
例えばカンジダ・アルビカンスよりアルコールデヒドロ
ゲナーゼ(Can a I )[Shen,H.D. et al.,Clin.Exp.All
ergy,Vol.21,675-681(1991)]、エノラーゼ[Ishiguro,A.
et al.,Infect.Immun.,Vol.60,1550-1557(1992)] や、
アスペルギルス・フミガタスよりリボトキシン(Asp f
Ia)[Moser,M. et al.,J.Immunol.,Vol.149,454-460(19
92)]等の抗原性タンパク質が単離同定され、これらのい
くつかがアレルゲンとして作用することが知られてい
る。
【0013】しかし、カンジダ、アスペルギルスを含め
て一般的に真菌アレルゲンの場合、単一の主要アレルゲ
ンといえるものが存在する場合は少なく、複数のアレル
ゲンが存在し[Stewart,G.A. et al.,Clin.Exp.Allergy,
Vol.26,1020-1044(1996)] 個人によって異なる抗原、ま
た、各個人が複数の抗原をアレルゲンとして認識し反応
している。即ち、例えば同じカンジダアレルギーといっ
ても、各個人の反応する抗原は異なる場合が多く、しか
も各個人が複数のカンジダ由来抗原に反応していること
が知られている。
【0014】現在市販されている診断用又は治療用アレ
ルゲンエキスは、単なる抽出物やほとんど精製していな
く、さらに含有成分についても管理されていないものが
殆どである。真菌アレルゲンエキスとしては、カンジ
ダ、アスペルギルス、アルタナリア、クラドスポリウ
ム、マラセチア、ペニシリウムなどがある。しかしこれ
らの製造法は、上記のような食品や環境中の天然アレル
ゲン由来のアレルゲンエキスと異なる。つまり、原因真
菌の培養細胞自体ではなく、各々の属に属する代表的菌
株を、ある限定した栄養源を含む人工培地で長期培養し
て得られる、副次産物とも言える培養液中の菌体外分泌
物を原料とする。従って、本製造法により得られる抗原
は、自己細胞の消化物や細胞外分泌物であり、細胞壁多
糖が主成分と考えられ、当然、有効成分、即ちアレルゲ
ンの含量も明らかになっていない。
【0015】また、細胞壁に含まれる多糖、特にマンナ
ンは、一部のアレルギー患者において主要なアレルゲン
として働く一方、健常人でも細胞壁多糖に対するIgG 、
IgMを多量に持っている。さらに、マンナン自身、特に
中性マンナンは、マウスに対する致死的作用といった毒
性を有していることも知られている(日本医真菌誌第36
巻, 203-208, 1995 )。また細胞壁グルカンも炎症を引
き起こす等の病理学的作用を有することが知られている
[G.Kogan,et al. Biomedical and Biotechnological Ad
vaneds in Industrial Polysaccarides.251-258(198
9)]。従って、これらの細胞壁成分をヒト、動物に対し
投与する場合は、III 型過敏症、その他の影響も考慮す
る必要がある。
【0016】一方、真菌感染症に対する治療法として
は、抗真菌剤による治療が一般的であり、表在性真菌症
に対しては多くの薬剤が開発されおり、また、全身性感
染症に対しても幾つかの優れた薬剤が開発されている。
しかし、その効果は有効性、毒性、副作用などの面から
不十分である。例えば、古くから使用されてきたアンホ
テリシンB は重篤な腎障害を始めとする種々の副作用が
起こる。また、フルコナゾールを始めとする各種のアゾ
ール系抗真菌剤が開発されたが、作用が静菌的であり、
感染症が再発することが多い、また多用により耐性菌が
出現し始めている。耐性菌が出現すると、現在実用化さ
れている抗真菌剤の多くが類似の作用メカニズムを有し
ているため交差耐性となり、大きな問題となる可能性が
ある。表在性真菌症の場合でも、各種治療薬が開発され
ているが、長期の治療期間を要する、又再発を繰り返す
など、どれも十分とはいえず、さらに優れた薬剤の開発
が望まれている。さらに、爪白癬のように外用剤だけの
治療では不十分であるため、グリセオフルビン等の内服
薬を必要とする表在性真菌症もある。この際、長期にわ
たる投与が必要となり、薬剤による種々の副作用が生じ
る。また、表在性真菌症や、AIDSにおける口腔カンジダ
症のように、繰り返し感染が発生するため、有効な抗真
菌剤が開発されても費用の面で大きな問題がある。この
ように抗真菌剤による治療は種々の問題がある。
【0017】生体には本来これらの外来からの侵入物で
ある微生物と戦う感染防御力がある。この力を利用した
ものがワクチンである。病原性細菌に対してはワクチン
による感染予防が実施されており、古くから使用されか
なりの効果を挙げている。細菌感染症に対するこれらの
ワクチンは、弱毒菌(結核菌)、死菌(コレラ菌)、ト
キソイド(ジフテリア菌、破傷風菌)、細胞表面の莢膜
多糖体等の精製抗原(百日咳菌、肺炎球菌、インフルエ
ンザ菌、髄膜炎菌)を抗原として使用している。ワクチ
ンは病原菌の抗原性分子に対する抗体、及び細胞性免疫
により感染防御力を宿主に与えている。抗体は病原菌に
より分泌される毒性物質の中和、病原菌の細胞表面分子
に結合して宿主細胞への侵入を防ぐ役割を果たすと考え
られる。細胞性免疫では、CD4 +細胞、CD8 +T 細胞が
中心的役割を果たし、その病原菌の抗原性分子を認識
し、病原菌に特異的な防御反応を活性化している。これ
らの病原菌の有する抗原性分子である免疫原性物質が単
離同定され、これらの免疫原を感作抗原(ワクチン)と
して用いている研究もいくつかある。この場合、上記の
ように細胞表面分子である莢膜多糖体が免疫原としてよ
く使用されている。
【0018】真菌の場合も、細胞表面のマンナンを始め
とする細胞壁成分が、感染においても細胞の生体への接
着分子として重要な働きをしていると考えられている。
真菌細胞壁は、真菌細胞によってはその含量が全細胞の
30%以上を占め[Klis,R.U.et al.,Yeast,Vol.10,851-
869(1994)] 、マンナン、グルカン、キチン等の多糖を
主成分とする。実際、クリプトコッカスのガラクトキシ
ロマンナン[Devi,S.J.N. et al.,Infect.Immun., Vol.5
9,3700-3707(1991)]やカンジダ アルビカンスの接着因
子であるホスホマンノプロテイン(WO 95 /31998 号公
報)がワクチンとして、またこれらの抗原性分子に対す
る抗体が感染防御活性を有することが報告されている。
カンジダの生菌、死菌による感染防御免疫の誘導に関し
ても多くの報告[Segal,E. et al. Critical Reviews in
Microbiology,Vol.14,229-271(1987)] がある。この場
合も細胞表面分子である細胞壁成分に対する生体防御免
疫反応が主として機能していると考えられてきた。
【0019】その他真菌に対するワクチンとしては、リ
ボソームワクチン[Segal,E., Handbook of Applied My
cology, Volume 2:Immunizations against fungal dise
asesin man and animals., Humans, animals and insec
ts.)が、カンジダ アルビカンス、トリコフィトンを
始めとする真菌による感染症に対して試験され、実験動
物、さらに一部ヒト、家畜に対する効果も検討されてい
る。また、最近では、エノラーゼやストレスタンパク質
HSP90 (特表平4-502257号公報)が感染防御活性を誘導
できることが報告されている。しかし、上記の抗原性分
子はいずれもまだ十分な有効性を確認されているとは言
えない。また、多様性の高い脊椎動物に対して単一の抗
原性分子を用いた治療により充分な有効性を得られるか
どうかは疑わしい。
【0020】従って、真菌を原因とするアレルギー性疾
患や真菌感染症の治療において細胞壁成分が主要な抗原
として働いていない場合に、市販の又は公知の細胞壁成
分を含有する抗原組成物を用いることは、その抗原性が
危惧され、慎重になる必要がある。即ち、現在市販の真
菌アレルゲンエキスは全く不満足なものである。また、
抗原である真菌細胞自身又は、細胞壁成分を含有する抗
原をワクチンとして利用する際にも、過敏症などを引き
起こすなどの危険性がある。一方、現在のところ、有効
な抗原が十分量含有されている診断用及び/又は治療用
の医薬組成物は知られていない。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、アレル
ギー疾患の増大に伴い、治療用或いは診断用アレルゲン
エキスが数多く市販されているが、その有効成分は明ら
かになっていないものが多い。真菌アレルゲンエキスに
関しては、真菌細胞のどの部分に由来する成分であるか
も明らかになっていないが、製法上、その主要成分は細
胞壁由来多糖体であり、明らかに細胞内由来の抗原成分
が少なく、抗原成分に非常に偏りがあると考えられる。
従って、市販の真菌アレルゲンエキス、及び同様な方法
で得られる抗原エキスでは十分な治療及び診断は実施で
きないと考えられ、従来のアレルゲンエキスに含有され
る成分とは異なる、しかも、その成分の含量が異なるア
レルゲンエキスは高い有効性を発揮することが期待され
る。また、アレルギー性疾患に有効とされる減感作療法
の現状は、抗原液を週1〜2回、少量ずつ皮内に投与し
3〜4カ月かけて増量し、維持量に挙げ、更に1〜3年
投与し続ける必要がある。従って、増量が容易及び/又
は投与量を上げることが可能である抗原組成物の使用
は、優れた治療効果をより容易に得られることが期待で
きる。
【0022】更に、真菌症の増大に伴い、さらに現在使
用されている抗真菌剤の副作用、耐性菌の出現、医療費
の問題等から、有効性の高い、さらに安全性の高い、新
たな真菌症の治療薬の開発が強く望まれている。抗真菌
剤に比べてワクチンは多くの利点を有しており、これら
の真菌による感染症に対するワクチンを見い出すことが
できれば、これらの感染症に感染することに伴う苦痛や
衰弱を防止することができるだけでなく、これらの感染
症の治療を目的とする薬剤の投与量を明確に減少させる
こともできる。さらに、この様に薬剤の使用を回避する
ことにより、抗菌剤の過剰投与による病原性微生物に対
する選択圧が減少し、耐性菌の出現を減少させることが
できる。しかし、現在入手可能な抗原は充分な有効性が
無い。また、単独の抗原で感作するよりも複数の抗原で
感作する方が、耐性、有効性と言う点で、より優れた減
感作又は感染防御を誘導することができると期待され
る。更に、人をはじめとする哺乳動物は一般的に多様で
あり、たとえ1種類の真菌に感染又はアレルギー状態に
なったとしても、抗原として認識されるものは異なる可
能性が高い。したがって多様な抗原分子を十分量含有す
る抗原が望ましい。
【0023】一方、診断の面では、原因アレルゲンを特
定することが、有効な治療法の選択にとって重要であ
り、その抗原を用いた減感作治療などの有効性の高い、
さらに安全性の高い治療も可能となる。従って未知の抗
原を特定することは、これらの点から好ましい。
【0024】したがって本発明の目的は、かかる真菌を
原因とするアレルギー性疾患及び/又は感染症に対して
有効で、より安全な減感作治療用アレルゲン組成物、生
物学的製剤、例えば、ワクチン、又は診断用組成物とし
て使用することのできる新規な真菌抗原を提供すること
にある。さらに本発明の目的は、かかる真菌抗原の製造
方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、真
菌抗原として用いられる抗原性タンパク質をコードする
ポリヌクレオチドを提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来主と
して抗原性分子として研究されてきた真菌の細胞壁成分
に、生体に対し好ましくない免疫反応を引き起こすもの
があるため、真菌細胞より細胞壁を取り除き、得られる
プロトプラストを原料として細胞壁成分以外の抗原性、
アレルゲンとして活性を有する物質を探索した。その結
果、アレルギー性疾患を引き起こす真菌由来のプロトプ
ラストより得られる各種の細胞質内水溶性タンパク質を
含有する水溶性画分が、十分な抗原性を有し、アレルゲ
ンとしての活性が強いことを明らかにした。また、上記
水溶性画分が、診断用のアレルゲンとして十分な活性を
有していることを明らかにした。さらに、真菌感染症の
原因菌より調製した水溶性画分が、個体に投与した場
合、該真菌に対する感染防御免疫を誘導することを明ら
かにした。また、この画分より、従来解明されていなか
った新規な抗原性を有するタンパク質を単離することに
成功し、本発明を完成させた。
【0026】即ち、本発明の要旨は、〔1〕 細胞壁
を実質的に除去した、又は細胞壁の少なくとも一部を除
去した真菌細胞より得られる水溶性画分であることを特
徴とする真菌抗原、〔2〕 細胞壁を実質的に除去し
た、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞
が、該真菌細胞のプロトプラスト又はスフェロプラスト
である前記〔1〕記載の真菌抗原、〔3〕 水溶性画
分が、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なく
とも一部を除去した真菌細胞をバーストして得られる前
記〔1〕又は〔2〕記載の真菌抗原、〔4〕 水溶性
画分が、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少な
くとも一部を除去した真菌細胞をバーストして得られる
成分を約100000×gの条件下で遠心分離処理に付
して得られる上清画分である前記〔1〕又は〔2〕記載
の真菌抗原、
【0027】〔5〕 真菌細胞が、カンジダ属(Cand
ida )、アスペルギルス属(Aspergillus )、ムーコル
属(Mucor )、マラセチア属(Malassezia)、ペニシリ
ウム属(Penicillium )、アルタナリア属(Alternari
a)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、ボトリチ
ス属(Botrytis)、オーレオバシジウム属(Aureobasid
ium )、フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属
(Trichoderma )、ヘルミンソスポリウム属(Helminth
osporium)、ノイロスポラ属(Neurospora)、ワレミア
属(Wallemia)、ロドトルラ属(Rhodotorulla)、クリ
プトコッカス属(Cryptococcus)、リゾプス属(Rhizop
us)、アブシジア属(Absidia )、ノカルジア属(Noca
rdia)、ヒストプラズマ属(Histoplasma )、ブラスト
ミセス属(Blastomyces )、コクシジオイデス属(Cocc
idioides)、トリコフィトン属(Trichophyton)、ニュ
ーモシスチス属(Pnemocystis )、ミクロスポルム属
(Microsporum )、エピダーモフィトン属(Epidermoph
yton)、スポロトリックス属(Sporothrix)、及び黒色
真菌(Dematiaceous fungi)に属する真菌からなる群よ
り選ばれる1種類以上の真菌より得られる前記〔1〕〜
〔4〕いずれか記載の真菌抗原、〔6〕 真菌細胞
が、カンジダ アルビカンスの少なくとも一菌株の細胞
である前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の真菌抗原、
〔7〕 真菌細胞が、アスペルギルス フミガタスの
少なくとも一菌株の細胞である、前記〔1〕〜〔5〕い
ずれか記載の真菌抗原、〔8〕 真菌細胞が、クリプ
トコッカス ネオフォルマンスの少なくとも一菌株の細
胞である、前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の真菌抗
原、
〔9〕 真菌細胞が、トリコフィトン属、ミクロ
スポルム属、又はエピダーモフィトン属に属する皮膚糸
状菌の一菌株の細胞である、前記〔1〕〜〔5〕いずれ
か記載の真菌抗原、〔10〕 カンジダ アルビカン
スに由来する抗原性タンパク質であって、配列表の配列
番号:1に示す部分アミノ酸配列を有し、分子量が約2
8000(SDS-PAGE、還元条件下)である抗原性タンパ
ク質からなる真菌抗原、
【0028】〔11〕 カンジダ アルビカンスに由来
する抗原性タンパク質であって、配列表の配列番号:4
に示す部分アミノ酸配列を有し、分子量が約27000
(SDS-PAGE、還元条件下)である抗原性タンパク質から
なる真菌抗原、〔12〕 配列表の配列番号:2に示す
アミノ酸配列を有し、カンジダ アルビカンスに由来す
る抗原性タンパク質からなる真菌抗原、〔13〕 配列
表の配列番号:2に示すアミノ酸配列において、1又は
2以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少
なくとも一つが生じ、カンジダアルビカンスに由来する
抗原性タンパク質からなる真菌抗原、〔14〕 配列表
の配列番号:2に示すアミノ酸配列、又はその一部を有
し、カンジダ アルビカンスに由来する抗原性タンパク
質をコードするポリヌクレオチド、〔15〕 配列表の
配列番号:2に示すアミノ酸配列において、1又は2以
上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少なく
とも一つが生じ、カンジダアルビカンスに由来する抗原
性タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
【0029】〔16〕 カンジダ アルビカンスに由来
する抗原性タンパク質をコードし、配列表の配列番号:
3に示す塩基配列、又はその一部を有するポリヌクレオ
チド、〔17〕 カンジダ アルビカンスに由来する抗
原性タンパク質をコードし、配列表の配列番号:3に示
す塩基配列において、1又は2以上の塩基の欠失、付
加、挿入又は置換の少なくとも一つが生じたポリヌクレ
オチド、〔18〕 カンジダ アルビカンスに由来する
抗原性タンパク質をコードし、前記〔14〕〜〔17〕
いずれか記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな
条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、〔1
9〕 (1)真菌の生細胞を得る工程、(2)細胞壁を
実質的に除去した、又は細胞壁の少なくとも一部を除去
した真菌細胞を得る工程、(3)細胞壁を実質的に除去
した、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞
をバーストさせる工程、(4)水溶性画分を得る工程、
の各工程を含むことを特徴とする、細胞壁を実質的に除
去した、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細
胞より得られる水溶性画分である真菌抗原の製造方法、
〔20〕 細胞壁溶解酵素処理及び/又は物理的処理に
より、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なく
とも一部を除去した真菌細胞を得る前記〔19〕記載の
製造方法、
【0030】〔21〕 細胞壁を実質的に除去した、又
は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞が、該真
菌細胞のプロトプラスト又はスフェロプラストである前
記〔19〕又は〔20〕記載の製造方法、〔22〕 細
胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なくとも一部
を除去した真菌細胞をバーストして得られる成分を約1
00000×gの条件下で遠心分離処理に付して水溶性
画分を得る前記〔19〕〜〔21〕いずれか記載の製造
方法、〔23〕 前記〔1〕〜〔13〕いずれか記載の
真菌抗原、又は前記〔19〕〜〔22〕いずれか記載の
製造方法で製造される真菌抗原を含有することを特徴と
する生物学的製剤、〔24〕 前記〔1〕〜〔13〕い
ずれか記載の真菌抗原、又は前記〔19〕〜〔22〕い
ずれか記載の製造方法で製造される真菌抗原を含有する
ことを特徴とする、個体に投与して真菌に対する感染防
御免疫を誘導又は治療効果を有する医薬組成物、〔2
5〕 前記〔1〕〜〔13〕いずれか記載の真菌抗原、
又は前記〔19〕〜〔22〕いずれか記載の製造方法で
製造される真菌抗原を含有することを特徴とする、個体
に投与して真菌に対する感染防御免疫を誘導又は治療効
果を有するワクチン組成物、〔26〕 前記〔25〕記
載のワクチン組成物を投与することを含む、真菌に対す
る脊椎動物の免疫応答を刺激する方法、〔27〕 ワク
チン組成物の投与対象となる脊椎動物において、該免疫
応答によりワクチン組成物の製造に使用した真菌及び/
又はその近縁菌の増殖を抑制し、該真菌及び/又はその
近縁菌に起因する疾病を予防又は治療する前記〔26〕
記載の方法、〔28〕 前記〔1〕〜〔13〕いずれか
記載の真菌抗原、又は前記〔19〕〜〔22〕いずれか
記載の製造方法で製造される真菌抗原を含有することを
特徴とする、個体に投与して真菌に対するアレルギー性
疾患を予防又は治療効果を有するアレルゲン組成物、
〔29〕 前記〔28〕記載のアレルゲン組成物を投与
することを含む、真菌に対する脊椎動物のアレルギー反
応を抑制する方法、〔30〕 アレルゲン組成物の投与
対象となる脊椎動物において、該免疫応答によりアレル
ゲン組成物の製造に使用した真菌及び/又はその近縁菌
に起因するアレルギー性疾患を予防または治療する前記
〔29〕記載の方法、
【0031】〔31〕 前記〔1〕〜〔13〕いずれか
記載の真菌抗原、又は前記〔19〕〜〔22〕いずれか
記載の製造方法で製造される真菌抗原を含有することを
特徴とする、該真菌による疾患の診断用組成物、〔3
2〕 前記〔31〕記載の診断用組成物を使用すること
を含む、真菌による脊椎動物の疾患を診断する方法、に
関する。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明を説明する。本発明
の真菌抗原は、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁
の少なくとも一部を除去した真菌細胞より得られる水溶
性画分であることを特徴とするものである。かかる真菌
抗原は、例えば生物学的製剤として使用される。本発明
の真菌抗原は、感染症の原因真菌あるいはアレルギー性
疾患の原因真菌より得られるものであり、感染症の原因
真菌に由来するものは、脊椎動物に獲得自動免疫を誘導
しうるものであるため、特にワクチン組成物として好適
に使用できる。一方、アレルギー性疾患の原因真菌に由
来するものは、脊椎動物の減感作に利用することがで
き、アレルギー性疾患の予防及び治療に好適に使用でき
る。さらに、かかる真菌抗原は、真菌による疾患の診断
に好適に使用できる。
【0033】1.真菌細胞について 本発明で使用される真菌としては、ヒト、動物を始めと
する脊椎動物に病原性を有する真菌又はその真菌と近縁
のものであれば特に限定はない。例えば、カンジダ属
(Candida )、アスペルギルス属(Aspergillus )、ム
ーコル属(Mucor)、マラセチア属(Malassezia)、ペ
ニシリウム属(Penicillium )、アルタナリア属(Alte
rnaria)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、ボト
リチス属(Botrytis)、オーレオバシジウム属(Aureob
asidium )、フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ
属(Trichoderma )、ヘルミンソスポリウム属(Helmin
thosporium)、ノイロスポラ属(Neurospora)、ワレミ
ア属(Wallemia)、ロドトルラ属(Rhodotorulla)、ク
リプトコッカス属(Cryptococcus)、リゾプス属(Rhiz
opus)、アブシジア属(Absidia )、ノカルジア属(No
cardia)、ヒストプラズマ属(Histoplasma )、ブラス
トミセス属(Blastomyces )、コクシジオイデス属(Co
ccidioides)、トリコフィトン属(Trichophyton)、ニ
ューモシスチス属(Pnemocystis )、ミクロスポルム属
(Microsporum )、エピダーモフィトン属(Epidermoph
yton)、スポロトリックス属(Sporothrix)、及び黒色
真菌(Dematiaceous fungi)に属する真菌からなる群よ
り選ばれる1種類以上の真菌が挙げられる。
【0034】アレルギー反応の抑制に使用する真菌抗原
の場合、用いられる真菌は、ヒトに対しアレルギー症状
を惹起する原因菌であることが有用性の観点から好まし
い。具体的には、カンジダ属真菌であるカンジダ アル
ビカンス、カンジダ トロピカリス(Candida tropicall
is) 、カンジダ グラブラタ(Candida glabrata)、カン
ジダ ボイディニイ(Candida boidinii)等;アスペル
ギルス属真菌であるアスペルギルス フミガタス、アス
ペルギルス フラブス(Aspergillus flavus)アスペル
ギルス レストリクツス(Aspergillus restrictus)、
アスペルギルスヴェルシコラ(Aspergillus versicolo
r)等;トリコフィトン属真菌であるトリコフィトン
メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes )
等;マラセチア属真菌であるマラセチア ファーファー
(Marassezia furfur )等;ムーコル属真菌であるムー
コル ラセモサス(Mucor racemosus )等;リゾプス属
真菌であるリゾプス オリザエ(Rhizopus oryzae )
等;ペニシリウム属真菌であるペニシリウム ノテタム
(Penicillium notatum )等;アルタナリア属真菌であ
るアルタナリア アルタナタ(Alternaria alternat
a)、アルタナリア キクチアナ(Alternaria kikuchia
na )等;クラドスポリウム属真菌であるクラドスポリ
ウム クラドスポリオイデス(Cladosporium cladospor
ioides)、クラドスポリウム カリオニイ(Cladospori
um carionii )等;ボトリチス属真菌であるボトリチス
シネラ(Botrytis cinera )等;オーレオバシジウム
属真菌であるオーレオバシジウム プルランス(Aureob
asidium pullulans )等;フザリウム属真菌であるフザ
リウム オキシスポルム(Fusarium oxysporum)等;ト
リコデルマ属真菌であるトリコデルマ ヴィリダエ(Tr
ichoderma viridae )等;ヘルミンソスポリウム属真菌
であるヘルミンソスポリウム マイジス(Helminthospo
rium maydis )等;ノイロスポラ属真菌であるノイロス
ポラ クラサ(Neurospora crassa )等;ワレミア属真
菌であるワレミア セビ(Wallemia sebi )等;ロドト
ルラ属真菌であるロドトルラ グルチニス(Rhodotorul
a glutinis)等が挙げられる。
【0035】使用される菌株としては、治療または予防
しようとするアレルギー症の原因菌と近縁のものであれ
ば特に限定されない。代表例としては、カンジダ抗原を
調製するためには、カンジダ属真菌、例えばカンジダ
アルビカンス ATCC 10231 、同TIMM 1768 、カンジダ
ボイディニイ ATCC 18810;アスペルギルス抗原を調製
するためは、アスペルギルス属真菌、例えばアスペルギ
ルス フミガタス ATCC 28212 、同TIMM 1776 、アスペ
ルギルス レストリクス ATCC 16912 ;アルタナリア抗
原を調製するためは、アルタナリア属真菌、例えばアル
タナリア アルタナ IFO 31188;マラセチア抗原を調製
するためは、マラセチア属真菌、例えばマラセチア フ
ァーファー ATCC 14521 、同TIMM 2782 が挙げられる。
【0036】本発明における脊椎動物の真菌感染症とし
ては、ヒトの場合、カンジダ症、アスペルギルス症、ク
リプトコッカス症、ムーコル症、放線菌症、ヒストプラ
ズマ症、ブラストミセス症、各種皮膚真菌症、癜風、カ
リニ肺炎等が挙げられる。したがって、本発明のワクチ
ン組成物の調製において用いられる真菌は、かかる真菌
感染症の原因菌であることが有用性の観点から好まし
い。
【0037】真菌感染症の予防及び/又は治療に使用す
る場合には、感染性を有する真菌又はその真菌と近縁の
ものが有用性の観点から望ましい。具体的には、カンジ
ダ症原因菌であるカンジダ アルビカンス、カンジダ
トロピカリス、カンジダ グラブラタ等;アスペルギル
ス症原因菌であるアルペルギルス フミガタス、アスペ
ルギルス フラブス等;クリプトコッカス症原因菌であ
るクリプトコッカス ネオフォルマンス等;ムーコル症
原因菌であるムーコル エスピー(Mucor sp. )、アブ
シジア エスピー(Absidia sp. )、リゾプス エスピ
ー(Rhizopus sp.);放線菌症原因菌であるノカルジア
アステロイデス(Nocardia asteroides )等;その他
内臓に真菌感染症を起こす原因菌であるトリコスポロン
クタネウム(Trichosporon cutaneum )、ロドトルラ
グルチニス(Rhodotorula glutinis)、ゲオトリクム
カンジズム(Geotrichum candidum )、ニューモシス
ティス カリニ(Pneumocystis carinii)、コクシジオ
イデス イミチス(Coccidioides immitis)、パラコク
シジオイデス ブラシリエンシス(Paracoccidioides b
rasiliensis )、ヒストプラズマ カプスラツム(Hist
oplasma capsulatum)、ブラストミセス デルマチチデ
ィス( Blastomyces dermatitidis )等;皮膚糸状菌
(デルマトフィテス(Dermatophytes ))であるトリコ
フィトン属(トリコフィトン メンタグロフィテス、ト
リコフィトンルブルム(Trichophyton rubrum )、トリ
コフィトン ベルコーサム(Trichophyton verrucosum
))、ミクロスポルム属(ミクロスポルム カニス(M
icrosporum canis )、ミクロスポルム ジプセウム(M
icrosporum gypseum ))、エピダーモフィトン エス
ピー(Epidermophyton sp.);黒色真菌(デマチアセウ
スフンギ(Dematiaceous fungi))であるフィアロフォ
ラ エスピー(Phialophora sp. )、クラドスポリウム
エスピー(Cladosporium sp.);癜風菌であるマラセ
チア ファーファー;その他皮膚真菌症原因菌としては
スポロトリックスシェンキ(Sporothix schenkii)、フ
ォンセケア ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoii )等が
挙げられる。
【0038】使用される菌株としては、治療または予防
しようとする真菌症の原因菌と近縁のものであれば特に
限定されないが、病原性(例えばマウスに対する致死毒
性)を有する菌株が望ましい。使用される菌株の代表例
としては、カンジダ症に対しては、例えば、カンジダ
アルビカンスATCC 10231、TIMM 1768 、TIMM 0239 ;ア
スペルギルス症に対しては、アスペルギルス フミガタ
ス ATCC 28212, ATCC42202, TIMM 1776;クリプトコッ
カス症に対してはクリプトコッカス ネオフォルマンス
ATCC 24067 、TIMM 0354 、夾膜欠損したクリプトコッ
カス ネオフォルマンス TIMM0357が挙げられる。さら
には、トリコフィトン属、ミクロスポルム属、又はエピ
ダーモフィトン属に属する皮膚糸状菌の一菌株の細胞も
挙げられる。
【0039】本発明において、真菌を原因とする疾患の
診断に使用する真菌抗原の場合、用いられる真菌は、疾
患の原因となる上記の真菌が好ましい。
【0040】2.真菌抗原について 本明細書において、「細胞壁を実質的に除去した、又は
細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞」における
「細胞壁を実質的に除去した真菌細胞」とは、該真菌細
胞のプロトプラストないしはプロトプラスト様のものを
いう。また、「細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌
細胞」とは、スフェロプラストないしはスフェロプラス
ト様のものをいう。即ち、細胞壁を実質的に除去した真
菌細胞の典型的なものは、該真菌細胞のプロトプラスト
であり、細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞の
典型的なものは該真菌細胞のスフェロプラストである。
したがって、「細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁
の少なくとも一部を除去した真菌細胞より得られる水溶
性画分」とは、水溶性画分が該真菌細胞のプロトプラス
ト又はスフェロプラスト等より得られるものであること
を意味する。
【0041】また、「細胞壁の少なくとも一部を除去」
するとは、細胞壁構成成分である、例えばマンナン、グ
ルカンを、細胞壁としての機能である形態の維持、低張
液に対する浸透圧耐性を失わせる程度に除去することで
あり、同時に細胞壁成分に起因した副作用が少なくとも
生じない程度に細胞壁を除去することをいう。本発明に
おいては、真菌細胞は細胞壁を実質的に除去したものを
用いることが好ましいが、生体に投与した場合、細胞壁
由来の成分が量的に又は質的に生体に対し悪影響、例え
ば過敏症、致死作用を示さなければ、細胞壁成分が一部
残存したものを用いても良い。水溶性画分は、細胞質に
存在する水溶性タンパク質、例えば、乳酸脱水素酵素、
6−ホスホグルコン酸脱水素酵素等を含有する。カンジ
ダ アルビカンスより得られる水溶性画分は、抗原性タ
ンパク質として既知のエノラーゼやHSP90 も含有する
が、従来単離又は同定されていない複数の抗原性タンパ
ク質をも含有する。
【0042】この水溶性画分には、上記タンパク質成分
の他、水に可溶な脂質、糖質、核酸等が含有されていて
もよい。さらに、細胞壁の一部が残存している真菌細胞
を用いた場合、本発明の真菌抗原を生体に投与した際、
細胞壁由来の成分が生体に対し悪影響、例えば過敏症、
致死作用を示さなければ、細胞壁由来の成分を不純物と
して微量含有していても良い。これら不純物としての細
胞壁由来抗原成分の混入量は、例えば、後述の実施例で
示すように、細胞壁成分に対する抗血清を用いた凝集反
応に対する、阻害活性の測定等により定量することがで
きる。
【0043】かかる水溶性画分は、細胞壁を実質的に除
去した、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細
胞を例えばバーストすることにより得ることができる。
このとき、バーストさせて得られる成分を遠心分離又は
濾過することは、水溶性画分を容易に得ることができる
ため、好ましい。好ましくは、上記のようにバーストし
て得られる成分を約100000×gの条件下で遠心分
離処理に付して得られる上清画分を水溶性画分として用
いることもできる。
【0044】さらに、本発明の真菌抗原は、目的に応じ
た分離精製手段により水溶性画分をさらに精製した画分
であっても良い。例えば、カンジダ アルビカンス TIM
M1768 を原材料として得られる水溶性画分から、イオン
交換樹脂等を用いたクロマトグラフィーにより得られる
画分も本発明の真菌抗原として使用することができる。
上記画分を更に疎水クロマトグラフィー等に付すことに
より、配列表の配列番号:1に示す部分アミノ酸配列
を有し、分子量が約28000(SDS-PAGE、還元条件
下)のタンパク質や、配列表の配列番号:4に示す部
分アミノ酸配列を有し、分子量が約27000(SDS-PA
GE、還元条件下)のタンパク質を含有する精製画分が得
られる。かかるタンパク質は抗原性タンパク質であり、
真菌抗原として用いることができる。精製或いは単離さ
れた抗原性タンパク質等の抗原は、真菌を原因とする疾
患の治療、診断に有用であり、特に単離された抗原性タ
ンパク質は、診断における原因抗原の同定等の面で有用
である。
【0045】また、本発明の真菌抗原として用いられる
抗原性タンパク質には、配列表の配列番号:2に示すア
ミノ酸配列を有し、カンジダ アルビカンスに由来する
抗原性タンパク質や、配列表の配列番号:2に示すアミ
ノ酸配列において、1又は2以上のアミノ酸残基の欠
失、付加、挿入又は置換の少なくとも一つが生じ、カン
ジダ アルビカンスに由来する抗原性タンパク質も包含
される。配列表の配列番号:2に記載のアミノ酸配列を
有するタンパク質は、配列表の配列番号:3に記載の塩
基配列を有するポリヌクレオチドから推定されるもので
あり、かかるポリヌクレオチドはカンジダ アルビカン
スTIMM1768のcDNA発現ライブラリーより該細胞に対
する抗血清を用いて単離することができる。
【0046】さらに、本発明は、上記のような単離され
た抗原性タンパク質と免疫学的に同等の性質を有する機
能的同等物をも本発明の真菌抗原として包含する。例え
ば、各種カンジダ アルビカンス、更にカンジダ アル
ビカンス以外のカンジダ属真菌の機能的同等物も本発明
に含まれる。即ち、例えば、配列表の配列番号:4に示
す部分アミノ酸配列を有する分子量約27000のタン
パク質はサッカロマイセス セレビシエのTranslation
controlled tumor protein(TCTP)ホモログと、配列番
号:1に示す部分アミノ酸配列を有する分子量約280
00のタンパク質は Triose phosphate isomerase(TPI)
と、それぞれホモロジーを有し、抗原性等の免疫学的性
質が同等の抗原も本発明に包含される。
【0047】また、単離された抗原性タンパク質を基に
抗原性断片を作成することもできる。抗原性断片を作製
するには、例えば、単離された抗原性タンパク質を原料
として、リシルエンドペプチダーゼ、トリプシン等のプ
ロテアーゼによる酵素消化、臭化シアン等による化学的
処理による切断後、目的の抗原性を有する断片をタンパ
ク質の精製において既知の方法により単離精製すること
により得ることができる。更に、抗原性断片の化学構造
に関する情報を基に、ペプチド合成技術を利用して化学
合成による製造も可能である。抗原性断片には、脊椎動
物、例えば哺乳動物、特にヒトにおける免疫応答、例え
ば最小量のIgEの刺激、IgEの結合、IgG及びI
gM抗体の生産の誘起、又は増殖などのT細胞応答及び
/又はリンホカイン分泌及び/又はT細胞アナージー誘
導などを引き起こす作用のある、カンジダ アルビカン
スをはじめとする真菌由来の抗原性タンパク質の断片が
含まれる。
【0048】抗原性断片の抗原性は、ヒトのボランティ
アへの皮膚試験、皮内試験の他、RAST、ELIS
A、又はヒスタミン遊離、末梢血リンパ球の幼若化反応
の測定などの試験管内試験においても評価することがで
きる。
【0049】なお、真菌抗原の安定性の強化及び/又は
所望の反応性の強化を目的として、すなわち治療目的か
らすれば、個体防御免疫能の誘導強化や、アレルギー反
応を減弱化または酵素活性を消失させるために、また診
断目的からすれば、抗原と抗体の特異的結合の強化を行
うために、抗原性タンパク質或いは抗原性断片を改変
し、誘導体化したり、ポリエチレングリコール(PEG)法
[Wie, et al., Int. Arch. Allergy Appl. Immunol.,Vo
l. 64,84-99(1981)]を用いてPEGと結合させることが
できる。タンパク質の改変には、ピリジルエチル化、還
元、アルキル化、アシル化、適当な担体への化学的カッ
プリング、温和なホルマリン処理、又は塩酸グアニジン
処理も含まれる。
【0050】3.本発明のポリヌクレオチドについて 本発明においては、単離された抗原性タンパク質の部分
アミノ酸配列の情報をもとに、PCR等により該抗原を
コードするポリヌクレオチドを単離することができる。
また、抗原となる真菌より得られるmRNAを基にcDNAを調
製し、ファージ等を用いたcDNA発現ライブラリーより、
該真菌に対する抗血清を用いて抗原性タンパク質をコー
ドするポリヌクレオチドを単離することもできる。
【0051】例えば、カンジダ アルビカンスTIMM1768
のcDNA発現ライブラリーより、該細胞に対する抗血
清を用いたイムノアッセイにより、配列表の配列番号:
3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドを単離す
ることができる。このポリヌクレオチドは配列表の配列
番号:2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコ
ードしていると推定される。
【0052】上記遺伝情報が得られれば、当然、抗原性
タンパク質の機能的同等物を、本発明の抗原性タンパク
質をコードするポリヌクレオチドの特定部位の突然変異
誘発を用いて既知の方法により抗原性タンパク質の構造
を改変することにより、得ることができる。例えば、タ
ンパク質をコードするポリヌクレオチドの1又は2以上
の塩基の欠失、付加、挿入又は置換によってアミノ酸残
基の欠失、付加、挿入又は置換を起こすことができる。
さらに、生物活性を保持したままの変異体を選択するこ
とも可能である。
【0053】したがって、本発明のポリヌクレオチドと
しては、カンジダ アルビカンスに由来する抗原性タン
パク質をコードし、配列表の配列番号:3に示す塩基配
列、又はその一部を有するポリヌクレオチドや、カンジ
ダ アルビカンスに由来する抗原性タンパク質をコード
し、配列表の配列番号:3に示す塩基配列において、1
又は2以上の塩基の欠失、付加、挿入又は置換の少なく
とも一つが生じたポリヌクレオチド等が挙げられる。
【0054】該変異体の作製方法としては、ギャップド
・デュプレックス法[wilfried,K. et al.,Nucleic Acid
s Research,Vol.12,9441-9456(1984)] 、デレーション
法[Celeste,Y.P. et al.,Gene,Vol.33,103-119,(198
5)]、PCR法[Wataru,I. et al.,Gene,Vol.102,67-70
(1991)] 、ウラシルDNA法[Thomas,A.K. et al.,Meth
ods in Enzymology,Vol.154, 367-382(1987), Pro.N.A.
S.,Vol.79,7258-7262(1982)] やカセット変異法[Jame
s,A.W. et al.,Gene,Vol.34, 315-323(1985)]等が知ら
れている。
【0055】さらに、上記の単離された抗原性タンパク
質をコードするポリヌクレオチドも本発明に含まれる。
具体的には、配列表の配列番号:2に示すアミノ酸配
列、又はその一部を有し、カンジダ アルビカンスに由
来する抗原性タンパク質をコードするポリヌクレオチド
や、配列表の配列番号:2に示すアミノ酸配列におい
て、1又は2以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又
は置換の少なくとも一つが生じ、カンジダ アルビカン
スに由来する抗原性タンパク質をコードするポリヌクレ
オチド等が挙げられる。
【0056】更に、これらのポリヌクレオチドにストリ
ンジェントな条件下でハイブリダイズする、カンジダ
アルビカンスに由来する抗原性タンパク質をコードする
ポリヌクレオチドも本発明に含まれる。そして、これら
を利用して遺伝子工学的手法により大腸菌、酵母、カ
ビ、脊椎動物細胞等において発現されるようにベクター
に組み込み、組換えタンパク質として調製することもで
きる。また、抗原性タンパク質をコードするポリヌクレ
オチドの一部を用いて、目的の抗原性断片を発現、調製
することもできる。
【0057】なお、本発明において、ストリンジェント
な条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、
0.5重量%SDS、0.1重量%ウシ血清アルブミン
(BSA)、0.1重量%ポリビニルピロリドン、0.
1重量%フィコール400、0.01重量%変性サケ精
子DNAを含む6×SSC(1×SSCは0.15MN
aCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0
を示す)中で、50℃にて12〜20時間インキュベー
トしてハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。ま
た、こうして得られた新たなポリヌクレオチドについ
て、そこにコードされているタンパク質が抗原性を有す
るかどうかは、該ポリヌクレオチドを適当な発現ベクタ
ーに組込み、タンパク質として発現させ、上記のカンジ
ダ アルビカンスに対する抗血清を用いたイムノアッセ
イによって調べることにより確認することができる。
【0058】本発明のポリヌクレオチドは特に限定され
ないが、DNA又はRNAであり、天然又は合成のどち
らでも構わない。本発明のポリヌクレオチドを発現させ
るために適したプロモーター、エンハンサー及び他の発
現調節要素を含む発現ベクターは、例えば、Sambrook e
t al. Molecular Cloning: A Laboratory manual 第2
版、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記
載されているものを利用することができる。脊椎動物、
酵母、カビ、又は昆虫細胞で発現された組換え体は、グ
リコシル化及び適したジスルフィド結合等の修飾を受け
ることができる。酵母細胞での発現に適したベクターと
しては、pYES2,YepSec等が挙げられ、入手
可能である。昆虫細胞では、バキュロウイルスベクター
(ファルミンゲン社製、サン ディエゴ、CA)が商業
的に入手でき、脊椎動物の細胞ではpMSGベクター
(ファルマシア社製)が入手可能である。
【0059】大腸菌における発現の場合、pTV118
ベクター等を使用すればよい。また、pMAL、pSE
M、pGEXを用いると、それぞれマルトース結合タン
パク質、β−ガラクトシダーゼ、グルタチオンS−トラ
ンスフェラーゼとの融合タンパク質として発現させるこ
とができる。融合タンパク質として発現させる場合、キ
ャリヤータンパク質とマラセチア由来の抗原性タンパク
質又はその断片の間の融合連結部位に酵素認識部位を導
入するのが特に有利である。融合タンパク質として単離
精製後、酵素認識部位での切断、続いて従来の方法を用
いた生化学的精製手段により、抗原性タンパク質又はそ
の断片のみを回収することができる。酵素認識部位には
血液凝固因子Xaまたはトロンビンの認識部位が含ま
れ、これらの酵素は市販のものが利用できる。さらに、
IPTG又は温度等による発現誘導可能なベクターも利
用できる。
【0060】発現ベクターの宿主細胞への導入方法は、
リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈法、DEAE
−デキストラン法、又はエレクトロポレーション法など
の従来法を用いて行う。
【0061】なお、本発明の真菌抗原(実施例1におけ
るCa-HSS)の毒性は低く、20mg/kgをマウスの静
脈内に投与しても、全く異常は認められないものであ
る。
【0062】4.真菌抗原の製造方法 細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なくとも一
部を除去した真菌細胞より得られる水溶性画分である真
菌抗原を製造する方法としては、例えば、(1)真菌の
生細胞を得る工程、(2)細胞壁を実質的に除去した、
又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞を得る
工程、(3)細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の
少なくとも一部を除去した真菌細胞をバーストさせる工
程、(4)水溶性画分を得る工程、といった工程を含む
製造方法が挙げられる。
【0063】工程(1) 工程(1)は、真菌の生細胞を得る工程である。より具
体的には、真菌を生育に適した培地で培養し、新鮮な真
菌の生細胞を得る工程である。まず、真菌の培養は、各
々に適した炭素源、窒素源、その他の栄養源を含む栄養
培地で、生育可能な温度、条件で実施すればよい。通
常、真菌の培養に用いられる栄養培地としては、サブロ
ー培地、ポテトデキストロース培地、ツァペックドック
ス培地、麦芽培地、イーストニトロゲンベース・グルコ
ース合成培地等が広く用いられる。必要に応じて、血清
や血清アルブミンを添加してもよい。また、癜風菌のよ
うにオリーブオイル等を添加した培地が生育に適してい
る真菌もある。培養温度は、15〜45℃位が一般的である
が、真菌によっては、培養温度により形態が変化する
(二形性真菌と言われるものが多い)ものもあり、適宜
選択する必要がある。
【0064】例えば、カンジダ アルビカンスの場合、
25〜37℃が好適に使用される培養温度であるが、30℃前
後では通常の培地では酵母状の生育をするが、37℃付近
では菌糸状の生育をしやすい。二形性の真菌では、細胞
壁構成成分、膜タンパク質を含む細胞内タンパク質等の
タンパク質成分も変化するため、目的に応じて培養条件
を変えてもよい。真菌は、通常の培養条件では凝集した
り菌塊を形成し不均一な細胞懸濁液になるものが多く、
この場合、次工程で細胞壁溶解酵素等を充分に作用させ
ることができない。そこで、なるべく均一な細胞懸濁液
を得るために、培養方法を工夫してもよい。例えば、ア
スペルギルス フミガタスの場合、0.5−1MのNa
Clを培地に添加する等、塩濃度を高めることで解消さ
れる。また、真菌としては上記に記載の真菌が挙げられ
る。
【0065】工程(2) 工程(2)は、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁
の少なくとも一部を除去した真菌細胞を得る工程であ
る。細胞壁の除去の程度は少なくとも浸透圧に感受性を
示す程度であれば良いが、更にプロトプラストの形態に
なるまで細胞壁を除去するのが好ましい。よって、細胞
壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なくとも一部を
除去した真菌細胞としては、該真菌細胞のプロトプラス
ト又はスフェロプラストが好ましい。細胞壁を実質的に
除去した、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌
細胞を得るには、例えば、真菌細胞に細胞壁溶解酵素を
作用させたり、真菌細胞を物理的に処理することにより
達成できる。また、細胞壁溶解酵素処理と物理的処理と
は併用しても良い。
【0066】細胞壁溶解酵素としては種々のものが知ら
れているが、市販の製品としてはザイモリエース(生化
学工業社製)、リチカーゼ(シグマ社製)、ヤタラーゼ
(大関−宝酒造社製)、キチナーゼ(宝酒造社製)、ト
リコデルマ ライジング エンザイム(ノボ−シグマ社
製)、カタツムリ腸管消化酵素β−グルクロニダーゼ
(シグマ社製)、ラミナリアーゼ(シグマ社製)等があ
る。これらの酵素は、各種の細胞壁多糖(キチン、β1,
3-グルカン、マンナン、ガラクトマンナン、キシログル
カン等)の溶解酵素よりなり、さらにプロテアーゼも含
有しているものが多い。
【0067】真菌細胞の細胞壁を溶解し、浸透圧に感受
性の裸の細胞、例えばプロトプラストを調製するために
は、まず、培養により得られた新鮮な細胞を洗浄後、0.
8 〜1.5Mのソルビトールやマンニトール、NaClを含
有する高張緩衝液中に懸濁する。これに必要量の細胞壁
溶解酵素を、酵素に適した温度、緩衝液、pHで10分
間〜数時間作用させ、細胞壁を除去する。この際、プロ
テアーゼを作用させることにより細胞壁をよりきれいに
除去することができる場合もある。真菌によってはプロ
テアーゼを作用させる必要がない場合もあり、その際は
PMSF、ペプスタチン等のプロテアーゼインヒビターを加
えてもよい。
【0068】また、物理的処理方法としては、例えば
2.5Mのショ糖溶液のような高張緩衝液中で目的菌体
を懸濁することにより原形質分離を起こさせ、ナイフで
細胞壁を切り取る方法がある。
【0069】工程(3) 工程(3)は、工程(2)で得られる、細胞壁を実質的
に除去した、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真
菌細胞をバーストさせる工程である。細胞をバーストさ
せる方法として、例えば、超音波処理、フレンチプレス
による処理の他、浸透圧差を利用した低張液処理があ
る。低張液処理でバーストさせるには、まず細胞を高張
液で充分洗浄した後、低張液、即ち生理食塩水またはイ
オン強度が低い緩衝液(例えば、カンジタ アルビカン
スTIMM 1768 の場合、生理食塩水)に懸濁することによ
り実施できる。使用される緩衝液としては、例えば、p
H5〜8のリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられ
る。細胞小器官をなるべく傷つけずに除去しようとする
場合、イオン強度を適当に選択すればよい。例えば、ミ
トコンドリアを菌体内と同様の機能を有する状態で調製
しようとする場合、例えば、0.5〜0.6Mのソルビ
トールや0.25Mのショ糖を含有する緩衝液中で超音
波やワーリングブレンダーやフレンチプレス等で処理す
ることにより、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁
の少なくとも一部を除去した細胞をバーストさせ、ミト
コンドリアを菌体内と同様の機能を有する状態のまま除
去することができる。
【0070】工程(4) 工程(4)は、水溶性画分を得る工程である。工程
(3)で得られる、バーストして得られる成分を、遠心
分離又はろ過することにより沈殿や残存物を除去し、得
られる上清又はろ液を水溶性画分とする。
【0071】水溶性画分を得るための遠心分離の条件と
しては特に限定されるものではないが、通常約1000
00×gで1時間程度の処理が好ましい。上記条件で上
清として回収されるものとしては、主として、細胞内水
溶性成分であり、タンパク質の他、核酸なども含有す
る。
【0072】上記のようにして得られる水溶性画分は、
フィルターによる滅菌操作処理を実施することが望まし
い。その他、エタノール、イソプロパノール、フェノー
ル、アセトニトリル等の有機溶媒による洗浄及び殺菌処
理、または加熱処理による殺菌処理をすることもでき
る。水溶性画分は、さらに、目的に応じ通常の分離精製
手段、例えば、含有成分の親和性、荷電状態、分子量、
疎水性等の違いによる分離精製手段、を用い、さらに精
製しても良い。精製には、目的に応じた緩衝液を用いる
ことが望ましい。
【0073】このようにして得られる水溶性画分は、真
菌細胞のプロトプラスト又はスフェロプラスト等の、細
胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なくとも一部
を除去した真菌細胞から得られるものであるため、水溶
性画分中に不可避的に混入し得る細胞壁成分の量は極め
て少ないものである。例えば、本発明の水溶性画分中の
細胞壁成分の量は、細胞壁成分を抗原とする、抗原抗体
反応を利用することにより定量することができる。より
具体的には、後述の実施例で示すように例えば真菌細胞
としてカンジダ アルビカンスTIMM 1768(血清型A)を
用いる場合、抗カンジダ血清である因子血清No.1(ヤト
ロン製)を用いて水溶性画分中の血清型Aカンジダ ア
ルビカンス由来の細胞壁マンナン(以下、血清型Aマン
ナンと略す)を定量することができる。このようにして
測定される血清型Aマンナンの量は、検出限界値(0.5m
g/mL)以下であるのが好ましい。
【0074】5.本発明の真菌抗原の使用方法について 本発明の真菌抗原は、アレルギー性疾患の減感作治療用
アレルゲン組成物の他、ワクチンを主とする生物学的製
剤、及び生体内診断及び/又は実験室診断に用いること
ができる。実験室診断に用いる製剤には、例えばマイク
ロタイター試薬、ラテックス凝集試薬、免疫比濁試薬、
酵素免疫試薬等の免疫学的診断薬も含む。また、本発明
の真菌抗原は脊椎動物に対して使用される。脊椎動物
は、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、ヒト及びヒト以外の
哺乳動物であり、これらは抗原と反応して抗体を産生す
る。その結果、全脊椎動物が抗原と反応することができ
る。よって、本発明の真菌抗原は、ヒトまたは家畜動物
などの哺乳動物に好ましく適用されるだけでなく、上記
の性質を有すれば、例えば魚類などの営利目的に飼育さ
れた脊椎動物も本発明の対象となる。
【0075】5−1.アレルギー性疾患の治療について 本発明の真菌抗原をアレルギー性疾患の予防や治療の目
的で患者に投与する際には、適当な塩溶液や懸濁液の形
で用いることができ、ポリエチレングリコールやフェノ
ールを添加してもよい。更にワクチン製剤化に使用され
るアジュバントを含む懸濁液又は溶液として投与するこ
ともできる。アジュバントは、普通、抗原と共に投与さ
れるが、抗原投与の前または後に与えてもよい。抗原は
またリポソームまたは他のマイクロキャリアーに取り込
ませて投与することができる。その他、公知の方法でポ
リエチレングリコールなどと化学結合させたものも使用
可能である。当然、いくつかの異なる真菌の同様の画分
と混合して用いることもでき、また市販の真菌アレルゲ
ンエキス、ハウスダスト、スギなどの各種アレルゲンエ
キス、及び/又は精製アレルゲンと混合して用いること
も可能である。それによって、複数のアレルゲンに感受
性のアレルギー性患者に、複数のアレルゲンに対する減
感作状態を誘導することができる。本発明の真菌抗原
は、アレルギー性疾患の治療に用いられるフルコナゾー
ル、アンホテリシンB 等の抗真菌剤やβ- ラクタム系抗
生物質を始めとする各種の抗細菌性抗菌剤と併用しても
よい。
【0076】投与方法としては、経皮(皮下または皮
内)、肺吸入、経粘膜(鼻、眼、膣等)、経口、舌下、
又は静脈内に投与すればよい。代表的な投与量は、治療
を目的とする場合、投与ルートにより異なり、0.01μg
〜5 mg/人であるが、必要とする予防や治療の程度に応
じて、投与量を増加したり、投与回数を増大させればよ
い。
【0077】また、本発明は、1)上記に記載の真菌抗
原、又は上記に記載の製造方法で製造される真菌抗原を
含有することを特徴とする、個体に投与して真菌に対す
るアレルギー性疾患を予防又は治療効果を有するアレル
ゲン組成物、2)該組成物を投与することを含む、真菌
に対する脊椎動物のアレルギー反応を抑制する方法、及
び3)該組成物の投与対象となる脊椎動物において、該
免疫応答により該組成物の製造に使用した真菌及び/又
はその近縁菌に対するアレルギー反応を抑制し、該真菌
及び/又はその近縁菌に起因するアレルギー性疾患を予
防または治療する方法、を提供する。
【0078】5−2.生物学的製剤としての使用につい
て 本発明の生物学的製剤は、上記に記載の真菌抗原又は上
記に記載の製造方法で製造される真菌抗原を有効成分と
して含有するものである。生物学的製剤とは、ワクチン
又はこれに類似する製剤であって、感染性疾病の病原微
生物に由来して、疾病又は障害の診断、予防若しくは治
療に使用される製剤であり、本発明においては真菌を原
材料とする。その他、本発明の真菌抗原を利用して得ら
れる治療血清等も含む。なかでも、多種類の真菌タンパ
ク質を含有している本発明の真菌抗原は、脊椎動物に獲
得自動免疫を誘導しうるものであり、特にワクチン組成
物として好適に使用できる。即ち、本発明の、脊椎動物
の真菌感染症に対し感染防御又は治療効果を有するワク
チン組成物は、上記の真菌抗原を有効成分として含有す
るものである。本発明の生物学的製剤やワクチン組成物
の有効成分として含有される真菌抗原は、例えば上記の
製造方法により得ることができる。なお、本明細書にお
いて、ワクチン組成物を単にワクチンという場合があ
る。
【0079】本発明の真菌抗原をワクチン組成物として
使用する際には、より強い体液性及び/または細胞性免
疫を得るために、該真菌抗原を下記のようなアジュバン
トを含む懸濁液又は溶液として製剤化し投与することが
好ましい。アジュバントは普通、抗原と共に投与される
が、抗原投与の前または後に与えてもよい。脊椎動物の
ワクチン接種に適当なアジュバントとしては、フロイン
ト(Freund's)の完全または不完全アジュバント;水酸
化アルミニウム、みょうばん等の無機物ゲル;リゾレシ
チン、ジメチルオクタデシルアンモニウムブロミド等の
界面活性剤;硫酸デキストラン、ポリIC等のポリアニオ
ン;ムラミルジペプチド、タフトシン等のペプチド;Ri
bi社製のモノフォスフォリルリピドA(MPL);CytR
x 社製のTiterMax;コレラトキシンのBサブユニットが
あるが、これらには限定されない。抗原はまたリポソー
ムまたは他のマイクロキャリアーに取り込ませて投与す
ることができる。当然、いくつかの異なる真菌の抗原を
混合して用いることも可能である。それによって、複数
の真菌感染症に対する防御免疫を誘導することもでき
る。本発明のワクチン組成物は、フルコナゾール、アン
ホテリシンB等の抗真菌剤やβ−ラクタム系抗生物質を
始めとする各種の抗細菌性抗菌剤と併用してもよい。
【0080】投与方法としては、経口、経粘膜(鼻、膣
等)、経皮(皮下または皮内)的に、または静脈内に投
与すればよい。代表的な初回投与量は、タンパク質量と
して0.001〜5mg/kg体重であるが、必要とす
る予防又は治療の程度に応じて、投与量を増加したり、
投与回数を増大させればよい。本発明の真菌抗原であ
る、水溶性画分を投与すると、優れた細胞性免疫及び/
又は体液性免疫を誘導することができ、これにより真菌
感染を防御又は治療することができる。防御又は治療の
対象となる真菌のみならず、他の真菌に対しても不十分
であるが防御効果、治療効果を誘導することができる。
これは、真菌相互の抗原の共通性、及び/又は免疫系が
活性化されることにより、スーパーオキサイドアニオン
や、一酸化窒素、各種サイトカインが遊離され、これら
が幅広い抗微生物活性を有しているからと考えられる。
【0081】また、本発明は、1)上記に記載の真菌抗
原、又は上記に記載の製造方法で製造される真菌抗原を
含有することを特徴とする、個体に投与して真菌に対す
る感染防御免疫を誘導又は治療効果を有する医薬組成
物、2)上記に記載の真菌抗原、又は上記に記載の製造
方法で製造される真菌抗原を含有することを特徴とす
る、個体に投与して真菌に対する感染防御免疫を誘導又
は治療効果を有するワクチン組成物、3)該ワクチン組
成物を投与することを含む、真菌に対する脊椎動物の免
疫応答を刺激する方法、及び4)ワクチン組成物の投与
対象となる脊椎動物において、該免疫応答によりワクチ
ン組成物の製造に使用した真菌及び/又はその近縁菌の
増殖を抑制し、該真菌及び/又はその近縁菌に起因する
疾病を予防または治療する方法、を提供する。
【0082】5−3.診断における使用について 本発明の真菌抗原を、生体内診断の目的で個体に対し、
例えば、吸入誘発試験、皮膚テスト、即時型又は遅延型
反応の測定、鼻や眼の粘膜試験で使用する際は、凍結乾
燥粉末、若くは適当な塩溶液や懸濁液の形で用いること
ができ、ポリエチレングリコールやフェノールを添加し
てもよい。パッチテストには、白色ワセリンを基剤とし
てラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を添加したも
のに上記抗原成分を溶解したものを使用することができ
る。
【0083】また本発明の真菌抗原は、実験室診断、例
えば、抗原抗体反応である凝集反応、沈降反応、中和反
応、標識抗体法等を用いた診断法、ヒスタミン遊離試
験、リンパ球幼若化試験等にも使用することができる。
例えば、IgE 抗体価測定用の抗原として使用する際に
は、ペーパーディスク、セルローススポンジ、マイクロ
プレート等の固相体に上記抗原成分を固定化して使用す
ることができる。
【0084】また、本発明は、1)上記に記載の真菌抗
原、又は上記に記載の製造方法で製造される真菌抗原を
含有することを特徴とする、真菌による疾患の診断用組
成物、2)該組成物を使用することを含む、真菌による
脊椎動物の疾患の診断方法、を提供する。
【0085】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例に限定されるものではな
い。
【0086】実施例1(カンジダ アルビカンス細胞の
細胞分画および水溶性画分の調製) 1)プロトプラスト細胞の調製:カンジダ アルビカン
スTIMM 1768 のサブロー寒天斜面培養物の一白金耳分を
YPD培地(yeast extract 1重量%、ポリペプトン2
重量%、グルコース2重量%)を入れた試験管に植菌し
た。30℃で24時間振とう培養後、培養液の一部を、三角
フラスコに入れたYPD培地に植菌し、35℃で一晩振と
う培養した。得られた培養液から、2,000 ×g 、10分間
の遠心分離処理により細胞を集めた。なお、得られた細
胞は酵母型であった。細胞を滅菌水で1回洗浄後、SS
B溶液(0.8 M ソルビトール入り50 mM リン酸緩衝液pH
7.5)で1回洗浄した。細胞を再度適当量のSSB溶液
に懸濁後、該SSB溶液の1/8容量の100mM E
DTA含有SSB溶液、及び適当量の2−メルカプトエ
タノールを加え、緩やかに振とうした。続いて、この懸
濁液に、終濃度 0.3mg/mLとなるようにザイモリエー
ス20T(生化学工業社製)を加え、35℃で1時間緩や
かに振とうした。さらに、終濃度 1mg/mL となるように
トリコデルマ・ライジングエンザイム(シグマ社製)を
加え、35℃で1時間緩やかに振とうした。得られた懸濁
液を2,000 ×g 、10分間の遠心分離処理に付し、プロト
プラスト細胞を集めた。この細胞をSSB溶液で十分に
洗浄し、細胞分画に供した。
【0087】2)プロトプラスト細胞からの細胞分画お
よび抗原液の調製:上記の様にして得られたプロトプラ
スト細胞に、約4×108 個/mLとなるよう滅菌生理
食塩水を加え、十分撹拌した後、氷上に10分間静置し
た。プロトプラスト細胞がバーストしたことを確認後、
このものを10,000×g 、30分間遠心分離処理に付した
後、得られた遠心分離上清をさらに100,000 ×g 、60分
間遠心分離に付した。得られた遠心分離上清を水溶性画
分(以下、Ca-HSSという。この画分にHSP90 およびエノ
ラーゼが含まれていた)とした。2Lの培養液より得ら
れた細胞を上記のように処理して得られたCa-HSS抗原液
約100mLのタンパク質濃度は3.5mg/mLであった(タ
ンパク質量はBSA を標準としてビシンコニン酸(BCA )
試薬により定量した)。
【0088】3)真菌細胞の細胞壁除去の程度の確認:
細胞壁の除去の程度は、顕微鏡下の細胞形態観察、細胞
を生理食塩水中でバーストさせた後の生菌数、及び血清
因子を用いた凝集反応の阻害による相対的定量法により
確認した。細胞形態は、例えば、カンジダ アルビカン
ス、アスペルギルス フミガタスの場合、上記の方法に
より細胞壁が除去されると、顕著な変化を起こした(図
1、図2)。また、上記の方法で作製したプロトプラス
ト細胞に対する、生理食塩水中でバーストさせた後の生
菌の比率は1%未満であった。また、作製したCa-HSS抗
原液を100 μlとり、YPD 寒天培地上に広げ、30℃で4
日間培養したが、カンジダ アルビカンス細胞のコロニ
ーの出現は見られず、Ca-HSS抗原液には生菌は存在しな
かった。
【0089】一方、抗カンジダ血清である因子血清No.1
(ヤトロン製)はカンジダ アルビカンスTIMM 1768
(血清型A)を凝集させるが、この凝集に対する阻害活
性を指標に、水溶性画分に含有される細胞壁成分の残存
量を、その構成成分である細胞壁マンナンの量として定
量した。細胞壁マンナン含量の比較の対照として、市販
のカンジダアレルゲンエキスであるアレルゲンスクラッ
チエキス「トリイ」カンジダ(鳥居薬品社製)を用い
た。また、陽性コントロールとして、小林らの方法[Kob
ayashi, H. et al., Arch. Biochem. Biophys. Vol.27
2, 364-375, (1989)]によりカンジダ アルビカンスJ-1
012株(血清型A)より精製した血清型Aマンナンの各
種濃度の溶液を用いた。
【0090】その結果、市販のカンジダアレルゲンエキ
ス(タンパク質濃度約0.4 mg/ml )中には、4.5 mg/ml
の血清型Aマンナンが含有されていたが、Ca-HSS(タン
パク質濃度約3.5 mg/mL )では凝集阻害は起こらず、Ca
-HSS中の血清型Aマンナンの含有量は、本法による検出
限界値の0.5mg/mL以下であることが明らかとなった。即
ち、本発明の真菌抗原は、タンパク質量が多く、細胞壁
多糖の主要成分であるマンナン量が従来のアレルゲンエ
キスと明らかに異なること、及び細胞壁が実質的に除去
されていることが示された。
【0091】得られたCa-HSS抗原液を精製水に対して透
析後、内液を凍結乾燥後秤量した。更に、その一部を精
製水で再溶解し、タンパク質、中性糖含量等を測定し
た。その結果、上記のCa-HSS抗原液10mLには、凍結乾
燥残さとして約 32 mg(タンパク質27 mg 、中性糖 1 m
g 、他水分等)が含まれていた。
【0092】実施例2(アスペルギルス フミガタス水
溶性画分およびクリプトコッカス ネオホルマンス水溶
性画分の調製) 1)アスペルギルス フミガタス水溶性画分(Af-HSS)
の調製:アスペルギルス フミガタスTIMM 1776 のサブ
ローデキストロース寒天斜面培養物に0.1 重量%ツィー
ン80を含む生理食塩水を加え胞子懸濁液を作製した。こ
の懸濁液の一部を、三角フラスコに入れたポテトデキス
トロース培地(ディフコ社製)に植菌し、30℃で一晩振
とう培養した。得られた培養液をガラスフィルターでろ
過し菌体を集めた。菌体を0.8 M NaClを含む10 mM リン
酸緩衝液(pH6.0 )に懸濁後、終濃度10 mg/mLとなるよ
うにヤタラーゼ(宝酒造社製)を加え、30℃で4 時間緩
やかに振とうした。得られた懸濁液をガラスフィルター
でろ過し、プロトプラスト細胞を集めた。この細胞を0.
8M NaCl で2回洗浄後、得られたプロトプラスト細胞に
1 ×108 cell/mL となるよう滅菌生理食塩水を加え、バ
ーストさせた。このものを10,000×g 、30分間の遠心
分離処理後、得られた上清を更に100,000 ×g、30分
間で遠心分離処理に付した。得られた上清をポアサイズ
が0.45μm のメンブランフィルターで濾過し、濾液を回
収した。この濾液をアスペルギルスフミガタス水溶性画
分(Af-HSS)抗原液(タンパク質濃度1.9 mg/mL)とし
た。
【0093】2)クリプトコッカス ネオホルマンス水
溶性画分(Crn-HSS )の調製:クリプトコッカス ネオ
ホルマンスTIMM 0354 のサブローデキストロース寒天斜
面培養物の一白金耳分を三角フラスコに入れたYPD培
地に植菌し、30℃で一晩振とう培養した。得られた培養
液から遠心分離処理により細胞を集め、細胞を滅菌水で
1回洗浄後、1M ソルビトール、100 mM EDTA 入り100
mMクエン酸緩衝液(pH5.8)に懸濁し、終濃度 5 mg/mL
となるようにトリコデルマ・ライジングエンザイムを加
え、37℃で1時間緩やかに振とうした。得られた懸濁液
を、2,000 ×g、10分間の遠心分離処理に付し、プロト
プラスト細胞を集めた。この細胞を上記の高張緩衝液で
洗浄後、1 ×108cell/mLとなるよう滅菌生理食塩水を加
え、バーストさせた。このものを10,000×g 、30分間
の遠心分離処理後、得られた上清を更に100,000 ×g、
30分間の遠心分離処理に付した。得られた上清をクリ
プトコッカス ネオホルマンス水溶性画分(Crn-HSS )
抗原液(タンパク質濃度2.9 mg/mL)とした。
【0094】実施例3(水溶性画分のアレルゲンとして
の活性) 1)カンジダ アルビカンス水溶性画分Ca-HSSのアレル
ゲンとしての活性:臭化シアンによるペーパーディスク
の活性化、及び抗原(実施例1で得られた Ca-HSS を、
タンパク質濃度として100 μg/mLになるように生理食塩
水で希釈した溶液)のペーパーディスクへのカップリン
グは、宮本らの方法[Miyamoto et al.,Allergy,Vol.22,
584-594(1973)]を参考に実施した。ヒト血清中IgE 抗体
価の測定は、ポリスチレンチューブに、抗原をカップリ
ングさせた上記ペーパーディスク1枚とヒト血清50μ
L を加えて、室温で3時間放置した。次いで、0.2重
量%のツイーン20を含む生理食塩水でペーパーディス
クを3回洗浄後、RAST-RIAキット(ファルマシア社製)
125I標識抗ヒトIgE 抗体50μL を加えて室温で一
晩放置した。上記洗浄液で再度3回洗浄後、ガンマカウ
ンターで放射能を測定した。
【0095】アレルギー患者のうち、市販の診断用アレ
ルゲン皮内エキス(鳥居薬品製)の皮膚テストで陽性の
24人について、Ca-HSSに対するIgE 抗体価を測定した
ところ、16人が陽性であった(0.35PRU/ml以上を陽性と
した)。即ち、本発明のCa-HSSは診断用アレルゲンとし
て有用であることが明らかとなった。
【0096】2)アルペルギルス フミガタス水溶性画
分Af-HSSのアレルゲンとしての活性:上記の1)と同様
に活性化したペーパーディスクに、生理食塩水で、タン
パク質濃度として100μg/mLとなるように希釈し
たAf-HSSをカップリングさせた。このペーパーディスク
を用いて、1)と同様の方法で市販の診断用アレルゲン
皮内エキスの皮膚テストで陽性の25人のアレルギー患
者について、Af-HSSに対するIgE 抗体価を測定したとこ
ろ、16人が陽性であった(0.35PRU/mL以上を陽性とし
た。)。即ち、本発明のAf-HSSは診断用アレルゲンとし
て有用であることが明らかとなった。上記の1)及び
2)の結果より、本発明の水溶性画分からなる真菌抗原
は、診断用アレルゲンとして有用であることが示唆され
た。
【0097】実施例4(油中水系製剤の調製) 上記の水溶性画分(Ca-HSS 抗原液等 )の必要量をとり、
等容量の不完全フロイントアジュバント(以下、IFA と
略す)又は完全フロイントアジュバント(以下、FAと略
す)(いずれもディフコ社製)と十分に混合し、油中水
系のワクチン製剤とした。
【0098】実施例5(ヒト皮膚反応による診断) 実施例1で得られた Ca-HSS の生理食塩水溶液(タンパ
ク質濃度3.5mg /mL)を1mg/mLとなるように生理食塩水
で希釈後、更に100 倍、1000倍に希釈した。各希釈液を
20μl ずつパッチスター(鳥居薬品製)に浸み込ませた
ものをボランティア4人の腕皮膚面に2日間貼付した。
剥がしてから1時間後の皮膚の状態を紅斑や丘疹の有無
により診断した。判定は国際接触皮膚炎症研究グループ
(ICDRG)の基準に従い行った。4人のうちアレルギー体
質の2人に明らかな紅斑が見られ、1人もわずかな紅斑
が見られた。このことから、本発明の真菌抗原が、個体
の遅延型過敏症(DTH) 反応を利用した診断に有効である
ことが明らかとなった。
【0099】実施例6(カンジダ アルビカンス水溶性
画分Ca-HSSからの抗原性タンパク質の精製) 1)抗原性タンパク質検出用抗体の調製:カンジダ ア
ルビカンス TIMM 1768をサブロー・デキストロース培地
で一晩振とう培養し、細胞を遠心分離処理により回収、
生理食塩水で洗浄し、得られた生細胞を1×108 個/mL
となるように生理食塩水に懸濁した。細胞懸濁液に等量
のIFA を加え混合後、BALB/cマウスに一匹当たり0.1 mL
ずつ皮下接種により免疫した。一週間後、再度同量の生
細胞を皮下接種した。即ち、一匹当たりの投与量は5 ×
106 個/回となる。二回目の接種から一週間後、この生
菌で免疫したマウスより全採血し、抗カンジダ血清を調
製した。図3(B)にCa-HSSをSDS-PAGEにより分離後、
得られた抗カンジダ血清によるイムノブロッティングの
分離結果を示す。図3(A)はCa-HSSの銀染色によるタ
ンパク質の検出結果である。
【0100】2)抗原性タンパク質検出用リンパ球幼若
化試験細胞の調製:1)と同じ方法で免疫したBALB/cマ
ウスより、最終免疫後15日目に脾臓を取り出し、RPMI
-1640 培地中でホモゲナイズし細胞懸濁液とした。これ
にRPMI-1640 培地を加え、遠心分離処理を行って洗浄し
た後、10重量%牛胎児血清(FCS )を添加したRPMI-1
640 培地に該細胞を再懸濁した。この細胞懸濁液をナイ
ロンウールカラムに入れ、37℃で1時間培養後、10重
量%FCS 添加RPMI-1640 培地で溶出し、T細胞リッチな
画分を得た。遠心分離処理で細胞を集め、10重量%FC
S 添加RPMI-1640 培地に1×107 個/mLとなるように懸
濁して、T細胞リッチな細胞懸濁液を得た。
【0101】3)Ca-HSSからの抗原性タンパク質の単
離:実施例1で得られたCa-HSS抗原液(タンパク質濃度
3.5mg/mL)から、DEAE-Sephacel (ファルマシ
ア社製)、MonoQ (ファルマシア社製)、Phenyl-Sepha
rose(ファルマシア社製)を用いてのカラムクロマトグ
ラフィーにより、抗原性タンパク質の単離を行った。抗
原性タンパク質の検出は、イムノブロッティングとリン
パ球幼若化試験を併用した。イムノブロッティングは以
下のように行った。即ち、クロマトグラフィーにより得
られる画分を、ゲル濃度が12.5重量%のSDS-PAGEに
付して、該画分に含まれるタンパク質を分離した後、PV
DF膜(ミリポア社製)に転写し、ブロックエース(大日
本製薬社製)で一晩ブロッキングした。その後、一次抗
体として1)で調製したマウス抗カンジダ血清の50倍
希釈液を用いて、二次抗体としてラット抗マウスIgG 抗
体を用いて抗原性タンパク質を検出した。
【0102】また、リンパ球幼若化試験は以下のように
行った。適当に希釈した上記画分を100 μl ずつ96ウェ
ルマイクロプレートに分注後、2)で調製のT細胞リッ
チな細胞懸濁液を100 μl ずつ加え、37℃、5体積%C
2 の条件下で培養した。2日後に 3H−チミジン(0.
5 μCi/ウェル)を加えた。18時間培養後、細胞を回
収し、細胞への 3H−チミジン取り込み量を測定した。
【0103】その結果、イムノブロッティングで検出さ
れるとともにリンパ球幼若化活性を有するタンパク質と
して、既知のエノラーゼ(分子量50000)の他に、
分子量約27000の新規タンパク質を単離した。ま
た、リンパ球幼若化活性を指標に抗原性タンパク質の単
離を行ったところ、既知のホスホグリセロムターゼ(分
子量26000)の他に分子量約28000の新規の抗
原性タンパク質を単離することに成功した。単離された
2種のタンパク質を還元条件下でSDS-PAGEに付した後、
銀染色により検出した結果を図4に示す。得られた2種
類の抗原性タンパク質のN末端アミノ酸配列をL−50
0型高速アミノ酸分析計(日立製作所社製)により決定
した。
【0104】その結果、分子量約27000 のタンパク質
は、配列表の配列番号:4に示す部分アミノ酸配列を有
し、サッカロマイセス セレビシエのTCTPホモログ
とホモロジーを示した。一方、分子量約28000 のタンパ
ク質は、配列表の配列番号:1に示す部分アミノ酸配列
を有し、サッカロマイセス セレビシエのTPIとホモ
ロジーを示した。上記のエノラーゼ、ホスホグリセロム
ターゼ、及び新規な2種のタンパク質のホモログは細胞
質内に存在することが知られている。即ち、Ca-HSSを始
めとする、本発明の真菌抗原は細胞質内に存在するタン
パク質を主として含有していることが明らかとなった。
【0105】実施例7(抗原性タンパク質をコードする
ポリヌクレオチドの取得) 1)カンジダ アルビカンスからのRNAの精製:カン
ジダ アルビカンスTIMM1768株の菌体よりRNAを得る
ため、該菌株をYPD培地で前培養後、一部を200m
LのYPD培地に植菌し、対数増殖期となるまで培養し
た。1000×g 、15分間の遠心分離処理により集菌し、
菌体を液体窒素により急速凍結した。乳鉢により凍結菌
体を粉末状に破砕した後、RNAイクストラクションキ
ット(ファルマシア社製)によりRNAを回収、精製し
た。
【0106】2)カンジダ アルビカンスのcDNAラ
イブラリーの作製:オリゴテックス−dT30<スーパ
ー>(宝酒造社製)を用いて、上記1)で得られたRN
Aの一部からポリ(A)+RNAを精製し、その一部を
用いて、cDNA合成キット(宝酒造社製)によりcD
NAを合成した。合成されたcDNAとラムダファージ
ベクターλSCREEN(ノバジェン社製)を連結後、ファー
ジメーカーシステムとファージパックイクストラクト
(ノバジェン社製)によりインビトロパッケージングを
行い、cDNAライブラリーを構築した。
【0107】3)カンジダ アルビカンスcDNAのク
ローニング:上記2)で得られたcDNAライブラリー
を宿主大腸菌BL21(DE3)pLysEに感染させ、トップアガロ
ース(0.7重量%バクトアガーを含むLB培地)と混
合後、LBプレートに重層し、37℃で培養し、プラー
クを形成させた。生じたプラーク上にナイロンメンブレ
ンHybond−N(アマシャム社製)を置き、更に3
7℃、4時間培養し、生成タンパク質をメンブレンに移
した。得られたメンブレンと、実施例6−1)で得られ
た抗カンジダ血清を用いて、血清に反応する抗原性タン
パク質のスクリーニングを行った。
【0108】イムノブロッティングは以下のように行っ
た。まず、ナイロンメンブレンをブロックエース(大日
本製薬社製)で一晩ブロッキングした後、一次抗体とし
て実施例6−1)で得られた抗カンジダ血清の500倍
希釈液を用いて、二次抗体として標識ラット抗マウスI
gG抗体を用いて抗原性タンパク質を発現しているプラ
ークを検出した。5×104 個のプラークをスクリーニ
ングした後、陽性のクローンの中から反応の強いプラー
クについて、更に解析を行った。即ち、大腸菌内でのオ
ートマチックサブクローニングにより、これらのファー
ジからcDNAを含む領域を自動的にサブクローニング
されたプラスミドを有する大腸菌を得た。これらの大腸
菌からプラスミドを精製し、約800bpのcDNAを
含むプラスミドであるp7Bを選び、該cDNAの塩基
配列を決定した。その塩基配列は配列表の配列番号:3
に示す通りであり、配列表の配列番号:2に示すアミノ
酸配列を有するポリペプチドをコードしている。配列表
の配列番号:2に示すアミノ酸配列が実施例6記載の分
子量28000のタンパク質のN末端アミノ酸配列を含
むことから、該DNAは該タンパク質の一部をコードす
る。
【0109】実施例8(真菌アレルギー皮内反応診断試
薬および診断用滴定試薬の調製) 実施例1で調製されたCa−HSS抗原液を乾燥して粉
末状で採取して、真菌アレルギー疾患に対する皮内反応
診断試薬及び真菌アレルギー診断用滴定試薬として用い
る。皮内反応診断試薬には0.5 %フェノールを添加した
0.9 %生理食塩水を溶媒とし、タンパク質濃度で1mg
/mlとし、これの1000倍希釈液を調製して用い
る。また、真菌アレルギー診断用滴定試薬には、タンパ
ク質濃度として1mg/mlの濃度でハンクス緩衝液に
溶解し、これをヒスタミン遊離滴定用試薬の原液として
その希釈液を用いる。
【0110】実施例9(減感作治療用抗原製剤の調製) 実施例1で調製されたCa−HSS抗原液を乾燥して粉
末状で採取して、真菌アレルギー疾患に対する減感作治
療剤として用いる。タンパク質濃度として1mg/ml
の濃度で0.5 %フェノールを添加した0.9 %生理食塩水
に溶解し、減感作治療用抗原の原液とする。
【0111】
【発明の効果】本発明の真菌抗原は、真菌を原因とす
る、アレルギー性疾患の減感作治療用アレルゲン組成
物、ワクチン組成物、疾患の診断薬として利用できる。
すなわち、本発明の真菌抗原は、従来使用されてきたア
レルゲンエキスと比較すると、糖含量が少なくタンパク
質含量が高いなど、従来の真菌アレルゲンと異なる性質
を有し、従来のアレルゲンエキスでは対応できなかった
アレルギー性疾患の治療に有用である。一方、真菌感染
に対する防御免疫能を誘導することもでき、ワクチンと
して使用することができる。また本発明の真菌抗原は安
全性の面でも、生菌を含まない、毒性が低い他、細胞壁
成分の含量が低いため、マンナン、グルカン等の細胞壁
成分による副作用を抑え、個体に有利な免疫反応を強化
することができる。更に、アレルギー性疾患の検査にお
いても、その構成成分の違いにより、従来のアレルゲン
エキスでは、検出できなかった疾患を検出することがで
きる。
【0112】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:11 配列の型:アミノ酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列の特徴:2、3、9(不明のアミノ酸)
【0113】配列番号:2 配列の長さ:248 配列の型:アミノ酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列: Met Ala Arg Gln Phe Phe Val Gly Gly Asn Phe Lys Ala Asn Gly 1 5 10 15 Thr Lys Gln Gln Ile Thr Ser Ile Ile Asp Asn Leu Asn Lys Ala 20 25 30 Asp Leu Pro Lys Asp Val Glu Val Val Ile Cys Pro Pro Ala Leu 35 40 45 Tyr Leu Gly Leu Ala Val Glu Gln Asn Lys Gln Pro Thr Val Ala 50 55 60 Ile Gly Ala Gln Asn Val Phe Asp Lys Ser Cys Gly Ala Phe Thr 65 70 75 Gly Glu Thr Cys Ala Ser Gln Ile Leu Asp Val Gly Ala Ser Trp 80 85 90 Thr Leu Thr Gly His Ser Glu Arg Arg Thr Ile Ile Lys Glu Ser 95 100 105 Asp Glu Phe Ile Ala Glu Lys Thr Lys Phe Ala Leu Asp Thr Gly 110 115 120 Val Lys Val Ile Leu Cys Ile Gly Glu Thr Leu Glu Glu Arg Lys 125 130 135 Gly Gly Val Thr Leu Asp Val Cys Ala Arg Gln Leu Asp Ala Val 140 145 150 Ser Lys Ile Val Ser Asp Trp Ser Asn Ile Val Val Ala Tyr Glu 155 160 165 Pro Val Trp Ala Ile Gly Thr Gly Leu Ala Ala Thr Pro Glu Asp 170 175 180 Ala Glu Glu Thr His Lys Gly Ile Arg Ala His Leu Ala Lys Thr 185 190 195 Ile Gly Ala Glu Gln Ala Glu Lys Thr Arg Ile Leu Tyr Gly Gly 200 205 210 Ser Val Asn Gly Lys Asn Ala Lys Asp Phe Lys Asp Lys Ala Asn 215 220 225 Val Asp Gly Phe Leu Val Gly Gly Ala Ser Leu Lys Pro Glu Phe 230 235 240 Val Asp Ile Ile Lys Ser Arg Leu 245
【0114】配列番号:3 配列の長さ:831 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 配列: ACAATGGCTC GTCAATTTTT CGTAGGTGGT AACTTCAAAG CTAACGGTAC CAAACAACAA 60 ATCACTTCAA TCATCGACAA CTTGAACAAG GCTGATTTAC CAAAGGATGT CGAAGTTGTC 120 ATTTGTCCAC CCGCCCTTTA CCTTGGTTTA GCTGTTGAGC AAAACAAACA ACCAACTGTT 180 GCCATTGGTG CTCAAAATGT TTTTGACAAG TCATGTGGTG CTTTCACTGG TGAAACCTGT 240 GCTTCTCAAA TCTTGGATGT TGGTGCCAGC TGGACTTTAA CTGGTCACAG TGAAAGAAGA 300 ACCATTATCA AAGAATCCGA TGAATTCATT GCTGAAAAAA CCAAGTTTGC CTTGGACACT 360 GGTGTCAAAG TTATTTTATG TATTGGTGAA ACCTTAGAGG AAAGAAAAGG TGGTGTCACT 420 TTGGATGTTT GTGCCAGACA ATTGGATGCT GTTTCCAAGA TTGTTTCTGA TTGGTCAAAC 480 ATTGTTGTTG CTTACGAACC TGTTTGGGCA ATTGGTACTG GTTTAGCCGC TACCCCAGAA 540 GATGCTGAAG AAACCCACAA AGGTATTAGA GCTCATTTGG CCAAGACCAT TGGTGCCGAA 600 CAAGCTGAAA AAACCAGAAT CTTGTACGGT GGTTCAGTTA ACGGTAAGAA CGCTAAGGAT 660 TTCAAAGACA AAGCAAATGT TGATGGTTTC TTAGTCGGTG GTGCTTCATT AAAACCAGAA 720 TTTGTTGATA TCATCAAATC TAGATTATAA ACAGTATATT AAAAACTATA TGCCTATAGA 780 ATTTAGCATG TTGTTGTGAA TTTGTAATGA ATCTATAAAA ATGTGCTCAT G 831
【0115】配列番号:4 配列の長さ:30 配列の型:アミノ酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列の特徴:28、29(不明のアミノ酸) 配列: Met Leu Ile Phe Glu Asp Val Ile Ser Gly Asp Glu Leu Leu Ser 1 5 10 15 Asp Ala Tyr Asp Val Lys Leu Val Asp Gly Ala Val Xaa Xaa Ala 20 25 30
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、カンジダ アルビカンスTIMM17
68細胞(酵母型)の細胞壁除去前後の形態を示す、微
分干渉顕微鏡(ニコン社製)を用いての顕微鏡写真であ
る(倍率はいずれも1000倍)。Aは細胞壁除去前の
細胞であり、Bは細胞壁除去後の細胞である。
【図2】図2は、アスペルギルス フミガタス細胞の細
胞壁除去前後の形態を示す、微分干渉顕微鏡(ニコン社
製)を用いての顕微鏡写真である(倍率はいずれも40
0倍)。Aは細胞壁除去前の細胞であり、Bは細胞壁除
去後の細胞である。
【図3】図3において、(A)は、カンジダ アルビカ
ンス由来の水溶性画分Ca-HSSに含有されるタンパク質を
SDS-PAGEにより分離した後、銀染色によりタンパク質を
検出した結果を示す図である。また、(B)はマウス抗
カンジダ血清によるイムノブロッティングにより抗原性
タンパク質を検出した結果を示す図である。
【図4】図4はカンジダ アルビカンス由来の水溶性画
分Ca-HSSより単離された2種類の新規抗原性タンパク質
をSDS-PAGEにより分離した後、銀染色により検出した図
である。レーン1が、N末端アミノ酸配列が配列表の配
列番号:1に示される、分子量約28000のタンパク
質であり、レーン2が、N末端アミノ酸配列が配列表の
配列番号:4に示される、分子量約27000のタンパ
ク質である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 33/569 G01N 33/569 H //(C12P 21/02 C12R 1:725) (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内

Claims (32)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁
    の少なくとも一部を除去した真菌細胞より得られる水溶
    性画分であることを特徴とする真菌抗原。
  2. 【請求項2】 細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁
    の少なくとも一部を除去した真菌細胞が、該真菌細胞の
    プロトプラスト又はスフェロプラストである請求項1記
    載の真菌抗原。
  3. 【請求項3】 水溶性画分が、細胞壁を実質的に除去し
    た、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞を
    バーストして得られる請求項1又は2記載の真菌抗原。
  4. 【請求項4】 水溶性画分が、細胞壁を実質的に除去し
    た、又は細胞壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞を
    バーストして得られる成分を約100000×gの条件
    下で遠心分離処理に付して得られる上清画分である請求
    項1又は2記載の真菌抗原。
  5. 【請求項5】 真菌細胞が、カンジダ属(Candida )、
    アスペルギルス属(Aspergillus )、ムーコル属(Muco
    r )、マラセチア属(Malassezia)、ペニシリウム属
    (Penicillium )、アルタナリア属(Alternaria)、ク
    ラドスポリウム属(Cladosporium)、ボトリチス属(Bo
    trytis)、オーレオバシジウム属(Aureobasidium )、
    フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Trichode
    rma )、ヘルミンソスポリウム属(Helminthosporiu
    m)、ノイロスポラ属(Neurospora)、ワレミア属(Wal
    lemia)、ロドトルラ属(Rhodotorulla)、クリプトコ
    ッカス属(Cryptococcus)、リゾプス属(Rhizopus)、
    アブシジア属(Absidia )、ノカルジア属(Nocardi
    a)、ヒストプラズマ属(Histoplasma )、ブラストミ
    セス属(Blastomyces )、コクシジオイデス属(Coccid
    ioides)、トリコフィトン属(Trichophyton)、ニュー
    モシスチス属(Pnemocystis )、ミクロスポルム属(Mi
    crosporum )、エピダーモフィトン属(Epidermophyto
    n)、スポロトリックス属(Sporothrix)、及び黒色真
    菌(Dematiaceous fungi)に属する真菌からなる群より
    選ばれる1種類以上の真菌より得られる請求項1〜4い
    ずれか記載の真菌抗原。
  6. 【請求項6】 真菌細胞が、カンジダ アルビカンスの
    少なくとも一菌株の細胞である請求項1〜5いずれか記
    載の真菌抗原。
  7. 【請求項7】 真菌細胞が、アスペルギルス フミガタ
    スの少なくとも一菌株の細胞である、請求項1〜5いず
    れか記載の真菌抗原。
  8. 【請求項8】 真菌細胞が、クリプトコッカス ネオフ
    ォルマンスの少なくとも一菌株の細胞である、請求項1
    〜5いずれか記載の真菌抗原。
  9. 【請求項9】 真菌細胞が、トリコフィトン属、ミクロ
    スポルム属、又はエピダーモフィトン属に属する皮膚糸
    状菌の一菌株の細胞である、請求項1〜5いずれか記載
    の真菌抗原。
  10. 【請求項10】 カンジダ アルビカンスに由来する抗
    原性タンパク質であって、配列表の配列番号:1に示す
    部分アミノ酸配列を有し、分子量が約28000(SDS-
    PAGE、還元条件下)である抗原性タンパク質からなる真
    菌抗原。
  11. 【請求項11】 カンジダ アルビカンスに由来する抗
    原性タンパク質であって、配列表の配列番号:4に示す
    部分アミノ酸配列を有し、分子量が約27000(SDS-
    PAGE、還元条件下)である抗原性タンパク質からなる真
    菌抗原。
  12. 【請求項12】 配列表の配列番号:2に示すアミノ酸
    配列を有し、カンジダ アルビカンスに由来する抗原性
    タンパク質からなる真菌抗原。
  13. 【請求項13】 配列表の配列番号:2に示すアミノ酸
    配列において、1又は2以上のアミノ酸残基の欠失、付
    加、挿入又は置換の少なくとも一つが生じ、カンジダ
    アルビカンスに由来する抗原性タンパク質からなる真菌
    抗原。
  14. 【請求項14】 配列表の配列番号:2に示すアミノ酸
    配列、又はその一部を有し、カンジダ アルビカンスに
    由来する抗原性タンパク質をコードするポリヌクレオチ
    ド。
  15. 【請求項15】 配列表の配列番号:2に示すアミノ酸
    配列において、1又は2以上のアミノ酸残基の欠失、付
    加、挿入又は置換の少なくとも一つが生じ、カンジダ
    アルビカンスに由来する抗原性タンパク質をコードする
    ポリヌクレオチド。
  16. 【請求項16】 カンジダ アルビカンスに由来する抗
    原性タンパク質をコードし、配列表の配列番号:3に示
    す塩基配列、又はその一部を有するポリヌクレオチド。
  17. 【請求項17】 カンジダ アルビカンスに由来する抗
    原性タンパク質をコードし、配列表の配列番号:3に示
    す塩基配列において、1又は2以上の塩基の欠失、付
    加、挿入又は置換の少なくとも一つが生じたポリヌクレ
    オチド。
  18. 【請求項18】 カンジダ アルビカンスに由来する抗
    原性タンパク質をコードし、請求項14〜17いずれか
    記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下で
    ハイブリダイズするポリヌクレオチド。
  19. 【請求項19】 (1)真菌の生細胞を得る工程、 (2)細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なく
    とも一部を除去した真菌細胞を得る工程、 (3)細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少なく
    とも一部を除去した真菌細胞をバーストさせる工程、 (4)水溶性画分を得る工程、の各工程を含むことを特
    徴とする、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の少
    なくとも一部を除去した真菌細胞より得られる水溶性画
    分である真菌抗原の製造方法。
  20. 【請求項20】 細胞壁溶解酵素処理及び/又は物理的
    処理により、細胞壁を実質的に除去した、又は細胞壁の
    少なくとも一部を除去した真菌細胞を得る請求項19記
    載の製造方法。
  21. 【請求項21】 細胞壁を実質的に除去した、又は細胞
    壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞が、該真菌細胞
    のプロトプラスト又はスフェロプラストである請求項1
    9又は20記載の製造方法。
  22. 【請求項22】 細胞壁を実質的に除去した、又は細胞
    壁の少なくとも一部を除去した真菌細胞をバーストして
    得られる成分を約100000×gの条件下で遠心分離
    処理に付して水溶性画分を得る請求項19〜21いずれ
    か記載の製造方法。
  23. 【請求項23】 請求項1〜13いずれか記載の真菌抗
    原、又は請求項19〜22いずれか記載の製造方法で製
    造される真菌抗原を含有することを特徴とする生物学的
    製剤。
  24. 【請求項24】 請求項1〜13いずれか記載の真菌抗
    原、又は請求項19〜22いずれか記載の製造方法で製
    造される真菌抗原を含有することを特徴とする、個体に
    投与して真菌に対する感染防御免疫を誘導又は治療効果
    を有する医薬組成物。
  25. 【請求項25】 請求項1〜13いずれか記載の真菌抗
    原、又は請求項19〜22いずれか記載の製造方法で製
    造される真菌抗原を含有することを特徴とする、個体に
    投与して真菌に対する感染防御免疫を誘導又は治療効果
    を有するワクチン組成物。
  26. 【請求項26】 請求項25記載のワクチン組成物を投
    与することを含む、真菌に対する脊椎動物の免疫応答を
    刺激する方法。
  27. 【請求項27】 ワクチン組成物の投与対象となる脊椎
    動物において、該免疫応答によりワクチン組成物の製造
    に使用した真菌及び/又はその近縁菌の増殖を抑制し、
    該真菌及び/又はその近縁菌に起因する疾病を予防又は
    治療する請求項26記載の方法。
  28. 【請求項28】 請求項1〜13いずれか記載の真菌抗
    原、又は請求項19〜22いずれか記載の製造方法で製
    造される真菌抗原を含有することを特徴とする、個体に
    投与して真菌に対するアレルギー性疾患を予防又は治療
    効果を有するアレルゲン組成物。
  29. 【請求項29】 請求項28記載のアレルゲン組成物を
    投与することを含む、真菌に対する脊椎動物のアレルギ
    ー反応を抑制する方法。
  30. 【請求項30】 アレルゲン組成物の投与対象となる脊
    椎動物において、該免疫応答によりアレルゲン組成物の
    製造に使用した真菌及び/又はその近縁菌に起因するア
    レルギー性疾患を予防または治療する請求項29記載の
    方法。
  31. 【請求項31】 請求項1〜13いずれか記載の真菌抗
    原、又は請求項19〜22いずれか記載の製造方法で製
    造される真菌抗原を含有することを特徴とする、該真菌
    による疾患の診断用組成物。
  32. 【請求項32】 請求項31記載の診断用組成物を使用
    することを含む、真菌による脊椎動物の疾患を診断する
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010504278A (ja) * 2006-06-29 2010-02-12 バイオテック ツールズ エスエー 加水分解アレルゲンの製造方法

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