JPH1192383A - 角膜上皮欠損症の治療用組成物及びその使用 - Google Patents
角膜上皮欠損症の治療用組成物及びその使用Info
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- JPH1192383A JPH1192383A JP25383497A JP25383497A JPH1192383A JP H1192383 A JPH1192383 A JP H1192383A JP 25383497 A JP25383497 A JP 25383497A JP 25383497 A JP25383497 A JP 25383497A JP H1192383 A JPH1192383 A JP H1192383A
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Abstract
する。 【解決手段】 糖質コルチコステロイドの一つであるヒ
ドロコルチゾンがウサギ由来の角膜上皮細胞の細胞分裂
を誘導することを発見した。この発見に基づき、角膜上
皮欠損症患者に対して異なる糖質コルチコステロイドで
あるメチルプレドニゾロンを生理食塩水を用いて希釈し
た溶液を点眼し、その治療効果を調べた。なお、この溶
液中には、防腐剤(保存剤)を含有しない条件で行っ
た。この溶液を点眼した結果、6例中6例が角膜上皮欠
損を治療することができた。
Description
治療する組成物、特に、ステロイド化合物を主成分とす
る組成物に関する。
あり、空気中の微生物から眼を保護する作用を有してい
る。
し表面側から角膜上皮2、角膜実質3、角膜内皮4から
構成されている。このうち角膜表面にある角膜上皮2
は、5から7層の厚みをもっており、一番下方から基底
細胞、翼状細胞、表層細胞とから構成されている。この
角膜上皮2の表層細胞は、通常は新陳代謝、すなわち、
細胞分裂の結果として古い細胞が剥がれ落ち、新たな細
胞に置き換わる。
傷、角膜潰瘍、角膜火傷、スティーブン症候群などの原
因による角膜の障害に対して、角膜移植が行われてい
る。しかし、この角膜移植の術後の問題として遷延性上
皮欠損症がある。この遷延性上皮欠損症は、上述した角
膜のうち上皮細胞が欠損する疾患である。
人工類液、ヒアルロン酸点眼、眼瞼縫合が行われてい
る。
延性上皮欠損症の治療として、上述したような人工類
液、ヒアルロン酸点眼、眼瞼縫合などによる治療では治
癒しない例があり、より効果的な治療方法が要望されて
いる。
るステロイド剤は眼科用にも開発されており、例えば、
アレルギーや感染症等による炎症又は手術後の炎症に対
して使用されている。しかし、ステロイド剤は細胞分裂
率を低下させるため上記遷延性上皮欠損症の治療には効
果がないと考えられていた。そのため、従来よりステロ
イド剤は、遷延性上皮欠損症には使用されていなかっ
た。
て、糖質コルチコステロイドが角膜上皮細胞の増殖を誘
導する新たな作用を発見した。この発見に基づき、本願
出願人らは、糖質コルチコステロイドを主成分とする新
たな角膜上皮欠損症の治療用組成物を完成させるに至っ
た。
膜上皮欠損症の治療用組成物は、糖質コルチコステロイ
ドを主成分とすることを特徴とする。詳細には、本発明
の角膜上皮欠損症の治療用組成物は、角膜上皮欠損症に
対する治療に効果のある量の糖質コルチコステロイド
と、薬学的に許可されている賦形剤と、を含むことを特
徴とする。
コステロイドは角膜上皮細胞の細胞増殖を誘導する作用
を有することから、本発明の組成物は、角膜上皮の細胞
増殖を促し、その結果、欠損部分を新たに増殖した細胞
により埋めることができたものと考えられる。また、糖
質コルチコステロイドは高い抗炎症作用を有するため、
角膜欠損部位及びその周囲の炎症を抑えて、患部の治療
を図ることができる。なお、ここでいう角膜上皮欠損は
遷延性の角膜上皮欠損だけでなく、一時的な角膜上皮欠
損なども含まれる。
ば、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサ
メタゾン、プレドニゾロン又はベータメタゾン等を好適
に使用することができる。
損症に対する治療効果のある量は、メチルプレドニゾロ
ンの場合では、好ましくは、組成物全容量の0.01%
から1.0%である。しかし、他の糖質コルチコステロ
イドの場合には、ステロイド作用の強度により、0.0
1%以下でも角膜上皮欠損症を治療することができ、ま
た、1.0%以上でも、毒性を与えることなく角膜上皮
欠損症を適切に治療することができる場合がある。
れている賦形剤の中から主成分であるステロイド化合物
の作用を有効に維持または向上させることができるもの
を選択して使用する。また、この賦形剤は、目的に応じ
て液体、流動体または固体のいずれをも用いることがで
きる。
するために、pHの調整等の添加剤を用いることもでき
る。但し、上記組成物の構成成分には、ステロイド化合
物の作用を減縮するような物質、例えば、防腐剤又は保
存剤を添加することは避けることが好ましい。
(保存剤)が含まれている。従来のステロイド剤では角
膜上皮欠損症に効果がなかった理由が、この防腐剤が含
有されているためにステロイドホルモンの本来の細胞増
殖作用を阻害していることが考えられる。このことは上
述した糖質コルチコステロイドの角膜上皮細胞の増殖促
進作用が防腐剤の含まない条件下で発見されたことと一
致している。
成物を角膜上皮欠損症を伴なう患者に使用することを特
徴とする。使用する場合には、点眼液として直接角膜へ
投与するか、または、眼軟膏として結膜に塗布して間接
的に角膜に投与することも可能である。
に使用することにより、従来の治療方法では十分に治癒
できない患部をも効果的に治療することが期待できる。
本発明をより詳細に説明する。
ルチコステロイドを主成分とする。この糖質コルチコス
テロイドとしては、酢酸コルチゾン、コハク酸ヒドロコ
ルチゾン、メチルプレドニゾロン、トアムシノロン、ト
リアムシノロンアセトニド、フルオロシノロンアセトニ
ド、プロピオン酸ベクロメタゾン、リン酸ベタメタゾン
ナトリウム、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム等があ
り、好適には、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロ
ン、テキサメタゾン、プレドニゾロン又はベータメタゾ
ンなどを使用することができる。
量は、各物質の作用の強度等により適宜決定することが
できる。例えば、メチルプレドニゾロンの場合には、組
成物当たり0.01(W/V)%でも角膜上皮欠損症の
治療効果があり、また、1.0%でも、適切に角膜上皮
欠損症の治療することができる。従って、他のステロイ
ドについても、この値に基づいて決定することができ
る。
うな液体または眼軟膏のような軟固体として構成するこ
とができる。また、組成物を粉末状に構成しておき、使
用時に適宜、液体に溶解して使用することもできる。
ば、滅菌精製水、人工涙液、生理食塩水などの賦形剤に
上記ステロイド化合物を溶解、懸濁する。また、上記ス
テロイド化合物が水溶性でない場合には、ポリソルベー
ト80などの有機溶液に一旦溶解させた後、上記賦形剤
に混合することもできる。
度(pH)、浸透圧等を調整し、眼粘膜に刺激を与えな
いようにすることが好ましい。
に、pHは4.8〜8.5の範囲内とし、さらに好まし
くはヒトの涙液と同等の約pH7.4と一致させる。p
Hの調整物質としては、ホウ酸、無水亜硫酸ナトリウ
ム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウ
ム、塩化ナトリウムなどを用いることができる。
好ましい。涙液は、0.9W/V%塩化ナトリウム(生
理食塩水)と等張である。そのため、点眼剤は、食塩等
張法などに基づき生理食塩水と等張とすることが好まし
い。但し、眼は、塩化ナトリウムに換算して0.5〜
2.0%の範囲の浸透圧に耐え得る。この浸透圧を調整
するための等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウ
ム、ホウ酸、硝酸ナトリウムなどを用いることができ
る。
は、例えば、白色ワセリン、流動パラフィン、精製ラノ
リンなどの賦形剤中に上記ステロイド化合物を均質に混
合する。
するためには、適宜、等張化剤、安定化剤、乳化剤等を
添加することができる。しかし、防腐剤(保存剤)、例
えば0.04%ベンザルコニウムのようにステロイド化
合物の角膜細胞の増殖を阻害する物質の添加は避ける。
る場合には、予め上記ステロイド化合物の角膜細胞の増
殖を阻害しないことを確認した上で使用することが好ま
しいい。角膜細胞の増殖を阻害するか否かは、後述する
細胞実験に基づき確認してもよい。
の角膜細胞に対する増殖促進作用を阻害しない範囲で、
他の薬効を有する物質、例えば、抗生物質などを添加す
ることもできる。
る増殖作用 糖質コルチコステロイドとしてヒドロコルチゾンを用い
て、ウサギ由来の角膜及び角膜の縁の上皮細胞に対する
増殖促進作用を調べた。
プロトコールに従って培養する。
m2フラスコに3.6X103細胞数の3T3繊維芽細胞
を加え培養する。1週間に2回の割合で培地を交換し、培
養を継続する。細胞がセミコンフルエントの単一層を形
成したところで、マイトマイシンCを10-5Mとなるよ
うに添加して、2時間37度下で処理する。一方、60
cmΦシャーレに、ヒドロコルチゾン(Hc)及びIT
S(5mg/mlインスリン、5g/mlトランスフェ
リン、5ng/ml亜セレン酸ナトリウム)を含有した
ダルベッコウ変法イーグルス培地(DMEM)を加えた
ものを準備する。なお、対照として、ヒドロコルチゾン
を含有しないものも準備する。
を準備したシャーレに移し、後述する上皮細胞の培養に
おけるフィーダ細胞とする。なお、この操作は、上皮細
胞の培養開始から2時間前に行なう。
皮細胞の培養 ウサギ由来の角膜及び角膜の縁の上皮細胞は、Kruseら
の方法(Invest Opthalmol Vis Sci. 1991;32:2086-95)
に従い調整する。
ャーレを準備する。培地にはヒドロコルチゾンを含有し
たものと、含有していないものをそれぞれ準備する。
のうち5X104細胞数を上記フィーダ細胞を含むシャ
ーレに移し培養する。この培地は、2から3日毎に交換
し培養する。
皮細胞の栄養増殖 コロニー形成効率(colony forming efficiency:CFE)の
測定及びコロニーサイズの測定に基づき、ヒドロコルチ
ゾンに依存した上皮細胞の栄養増殖の有無を判定した。
6又は7日目に行った。このコロニー形成効率の測定
は、顕微鏡下でコロニーの形成の有無により行った。
は、コロニーの形成は観察されなかったのに対して、ヒ
ドロコルチゾン存在下では複数のコロニーの形成が観察
された。
をクリスタルバイオレットを用いて染色し、コロニーの
サイズを測定した。ヒドロコルチゾン存在下のシャーレ
には、1mm程度のコロニーが複数形成されていた。一
方、ヒドロコルチゾン非存在下のシャーレには、コロニ
ーは全く観察されていなかった。
地への添加の影響 上皮細胞培養時の培地に20%FBSを添加した場合の
コロニー形成頻度及びコロニーサイズへの影響を調べ
た。
条件で上記と同様の操作を行なった。対照として、20
%FBSを添加しない条件においても同時に操作した。
下でのコロニーの数については、大きな差は観られなか
った。しかしながら、コロニーサイズについては、FB
S非存在下では1mm程度であったのに対して、FBS
存在下では数mmから2cm程度に増加した。
が含有していない培養条件でも、コロニー数は少ないな
がら僅かにコロニーの形成が観られた。
皮細胞の細胞分裂を誘導するイニシエータとして作用
し、FBSは単に分裂が誘導された後の細胞分裂を促進
することが示唆された。
る物質の検索 上記においてヒドロコルチゾンに角膜上皮細胞の増殖作
用が存在することが発見されたことから、他の類似の脂
肪族炭素環式化合物における角膜上皮細胞の増殖作用の
検索を行なった。
験において培地中に20%FBS及びITS以外に種々
の脂肪族炭素環式化合物を添加した場合に形成されたコ
ロニー数を測定することにより行った。
として、アルドステロン(Ald)、デヒドロテストス
テロン(DHT)、エストランジオール(E2)、プロ
ゲステロン(P)、チロキシン(T3)、レチン酸(ビ
タミンA;RA)、コレカルシフェロール(ビタミンD
3;D3)、デヒドロエピダンドロステロン(DHE
A)、硫酸デヒドロエピダンドロステロン(DHEA−
S)について検索を行った。
して脂肪族炭素環式化合物を添加しない培地及び陽性対
照としてヒドロコルチゾンを添加した培地でも同時に操
作を行った。
d)は、陽性の対照であるヒドロコルチゾンの1/3程
度のコロニー形成活性が観察された。その他は陰性対照
と同程度であることから、コロニー形成活性がないこと
が示された。
−Kの交換を促進する作用を有するアルドステロンに低
いコロニー形成活性が認められたものの、他の脂肪族炭
素環式化合物には、コロニー形成活性は認められなかっ
た。
ルプレドニゾロンの適用 角膜上皮欠損症患者に対して、メチルプレドニゾロンを
点眼液として投与し、その効果を調べた。
6例の患者を対象に行った。なお、これら患者は、角膜
白斑が2例、化学外傷、角膜潰瘍、角膜火傷、スティー
ブンジョンソン症候群が各1例であり、平均年齢は54
歳である。また、これら患者は、本試験を行う前に人工
涙液、ヒアルロン酸点眼、自己血清点眼、眼瞼縫合等の
処置を受けて角膜上皮欠損が治癒されなかった症例であ
る。
水を用いて1%に希釈してメチルプレゾニゾロン溶液を
生成した。なお、この溶液中には、防腐剤(保存剤)は
含有されていない。
者に点眼液として投与した。このうち、3例の患者につ
いては涙液焼灼を併せて行った。これら患者は、メチル
プレドニゾロン溶液投与開始から平均21.5日以内に
角膜上皮の欠損が治癒された。また、この治療中におい
て、眼圧上昇、感染などの副作用は認められなかった。
ゾニゾロン溶液についても、角膜上皮細胞欠損、具体的
には、遷延性上皮欠損症に対する有効な治療効果が認め
られた。
チルプレゾニゾロンを用いたが、糖質コルチコステロイ
ドは抗炎症作用の強度に違いがあるもののその性質につ
いては共通するため、メチルプレゾニゾロン以外の糖質
コルチコステロイドについても同様に角膜上皮欠損に対
する治療効果を有するものと考えられる。
ステロイドの新たに発見された作用を利用した角膜上皮
欠損の治療用組成物である。
の有用性を向上させることができるとともに、角膜上皮
細胞欠損症に対するより有効な治療法の実現が期待でき
る。
角膜上皮細胞に対する細胞増殖誘導作用をコロニー形成
数に基づき測定した結果を示すグラフである。
皮。
Claims (5)
- 【請求項1】 角膜上皮欠損症を治療するための組成物
であって、 角膜上皮欠損症に対する治療に効果のある量の糖質コル
チコステロイドと、 薬学的に許可されている点眼用賦形剤と、を含む角膜上
皮欠損症の治療用組成物。 - 【請求項2】 前記糖質コルチコステロイドが、メチル
プレドニゾロン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、プ
レドニゾロン又はヒドロコルチゾンであることを特徴と
する請求項1に記載の角膜上皮欠損症の治療用組成物。 - 【請求項3】 角膜上皮欠損症に対する治療効果のある
量が組成物全体に対して0.01%から1.0%である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の角膜上皮欠
損症の治療用組成物。 - 【請求項4】 構成成分として防腐剤を含まないことを
特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の角膜上皮欠
損症の治療用組成物。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の角膜上
皮欠損症の治療用組成物の角膜上皮細胞欠損を伴なう患
者への使用。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25383497A JPH1192383A (ja) | 1997-09-18 | 1997-09-18 | 角膜上皮欠損症の治療用組成物及びその使用 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25383497A JPH1192383A (ja) | 1997-09-18 | 1997-09-18 | 角膜上皮欠損症の治療用組成物及びその使用 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1192383A true JPH1192383A (ja) | 1999-04-06 |
Family
ID=17256791
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP25383497A Pending JPH1192383A (ja) | 1997-09-18 | 1997-09-18 | 角膜上皮欠損症の治療用組成物及びその使用 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1192383A (ja) |
-
1997
- 1997-09-18 JP JP25383497A patent/JPH1192383A/ja active Pending
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