【発明の詳細な説明】
発明の名称
MHCクラスIの発現の評価方法及びクラスIの発現を調節することが可能なタ
ンパク質
これは、1995年6月7日に出願されたU.S.S.N.08/480,525号の一部継続
出願であり、この出願は1993年6月7日に出願されたU.S.S.N.08/073,830
号の継続であって、参照することによりその全体がここに組込まれる。
発明の分野
本発明の分野は哺乳類動物における自己免疫疾患及び移植拒絶の治療である。
より具体的には、本発明は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子の発現
を抑制することが可能な薬物を用いるこれらの疾患の治療及び予防方法、並びに
MHCクラスIの発現を抑制することが可能な薬物を開発又は評価する方法に関
する。また、本発明は、MHCクラスIの発現を調節することが可能な遺伝子及
びそれに対応するタンパク質にも関する。
発明の背景
免疫応答の主な機能は、自己を非自己抗原と区別し、後者を排除することであ
る。免疫応答には複雑な細胞−細胞相互作用が関与し、胸腺由来の(T)リンパ
球、骨髄由来の(B)リンパ球及びマクロファージの3種類の主要細胞型に依存
する。免疫応答には、主要組織適合複合体(MHC)によってコードされる分子
が介在する。MHC分子の2種類の主要なクラス、クラスI及びクラスIIは、各
々一組の細胞表面糖タンパク質を含む("Basic and Clinical Immunology"(1
991)Stites,D.P.and Terr,A.I.(eds),Appelton and Lange,Norwalk,C
onnecticut/San Mateo,California)。MHCクラスI分子は、異なる細胞型
では水準が異なるものの、事実上全ての体性細胞型で見出される。対照的に、M
HCクラスII分子は、通常、リンパ球、マクロファージ及び樹枝状細胞のような
僅かな細胞型にのみ発現する。
抗原は、クラスIもしくはクラスII細胞表面分子に関して免疫系で処理される
。CD4+ヘルパーTリンパ球はクラスIIMHC分子との関わりで抗原を認識し、
CD8+
細胞毒性リンパ球(CTL)はクラスI遺伝子産生物との関わりで抗原を認識す
る。現在、MHCクラスI分子は主として細胞性免疫応答の標的として機能し、
これに対してクラスII分子は液性及び細胞性免疫応答の両者を調節するものと信
じられている(Klein,J.and Gutze,E.,(1977)"Major Histocompatibility
Complex"Springer Verlarg,New York;Roitt,I.M.(1984)Triangle,(
Engl Ed)23:67-76;Unanue,E.R.(1984)Ann.Rev.Immunology,2:295-428
)。MHCクラスI及びクラスII分子は、免疫応答の媒介物質又は阻害物質とし
てのそれらの役割のために、自己免疫疾患の研究に関わる多くの研究の焦点とな
っている。MHC−クラスII抗原は自己免疫疾患の原因の研究の主な焦点であり
、これに対して、MHC−クラスIは歴史的に移植拒絶における研究の焦点であ
る。
グレーブス病は比較的普通の甲状腺の自己免疫障害である。グレーブス病にお
いては、甲状腺抗原、特には甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体が甲状
腺の機能を変化させ、甲状腺機能亢進症を生じる("Basic and Clinical Imm
unology"(1991)Stites,D.P.and Terr,A.I.(eds),Appelton and Lange,
Norwalk,Connecticut/San Mateo,California:pages 469-470)。グレーブ
ス病患者からの甲状腺細胞はMHC−クラスIIの異常な発現及びMHCクラスI
の発現の増加を示す。(Kohn et al.,(1992)In"International Reviews of
Immunology,"Vol.912:135-165)。
歴史的に、チオナミド療法がグレーブス病の治療に用いられている。最も一般
的に用いられるチオナミドは、メチマゾール(MMI)、カルビマゾール(CB
Z)及びプロピルチオウラシル(PTU)である。これらのチオナミドはチオ尿
素基を有し、最も効力が高いのはチオウレイレンである(W.L.Green(1991)I
n Werner and Ingbar's" The Thyroid":A Fundamental Clinical Text"6
ht edition,L.Braberman and R.Utiger(eds),J.B.Lippincott Co.page
324)。チオナミドは、甲状腺刺激自己抗体が刺激した甲状腺によって生じる、
甲状腺ペルオキシダーゼが触媒する甲状腺ホルモンの形成を阻害することにより
、甲状腺機能正常状態を回復する(Solomon,D.H.(1986)In"Treatment of
Graves's Hyperthyroidism".Ingbar,S.H.,Braverman,L.E.(eds)The T hyroid
:JB Lippincott Co.,Philadelphia,Pennsylvania,p.987-1014;Coo
per,D.S.(1984)N.Engl.J.Med.,
311:1353-1362;Cooper,D.S.(1991)Treatment Of Thyrotoxicosis.In W
erner And Ingbar's The Thyroid:A Fundamental and Clinical Text,"
6th edition.L.Braverman and R.Utiger(eds),J.B.Lippincott Co.page
s 887-916)。MMI及びPTUが腎臓内のペルオキシダーゼ依存性酵素を阻害
することが可能であり、かつMMIがラットの胃粘膜中の胃ペルオキシダーゼを
阻害することができることが報告されている(Zelman,S.J.et al.,(1984)J. Lab.Clin.Med.
104:185-192;Bandyopadhyay,U.et al.,(1992)Biochem J.
284:305-312)。また、PTUは、アルコール依存症に関連する肝毒性を阻害す
ることも報告されている(Orrego,H.et al.,(1987)N.Engl.J.of Med.317:1
421-1427)。チオナミドはグレーブス病の治療に長期間用いられており、患者の
大部分にはこの治療に関連する合併症は見られない(Cooper,D.S.(1991)Tre
atment Of Thyrotoxicosis.In Werner And Ingbar's The Thyroid:A
Fundamental and Clinical Text,"6th edition.L.Btaverman and R.Utig
er(eds),J.B.Lippincott Co.pages 887-916)。発熱、発疹、蕁麻疹のよう
な症状を含むアレルギー性反応が1−5%の患者で生じる。チオナミド療法に対す
る毒性反応は希であり、患者の0.2ないし0.5%にのみ生じる(Cooper,D.S.(1
991)Treatment Of Thyrotoxicosis.In Werner And Ingbar's The Thyr oid
:A Fundamental and Clinical Text,"6th edition.L.Braverman and
R.Utiger(eds),J.B.Lippincott Co.pages 887-916)。
チオナミドの甲状腺ホルモン合成に対する効果に加えて、グレーブス病におけ
るチオナミド療法は甲状腺自己抗体の低減に関連することが認められた(Cooper
,D.S.(1982)N.Clin.Endocrinol.Metab.29:231-238;Kuzuya,N.et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.
48:706-714;Bech,K.and Madsen,S.N.(1980
)Clin Encocrinol(Oxf)13:417-26;Hallengren,B.et al.(1980) J.Clin. Endocrinol.Metab
51:298-301;Cooper,D.S.(1991)Treatment Of Thyro
toxicosis.In Werner And Ingbar's" The Thyroid:A Fundamental and
Clinical Text,"6th edition.L.Braverman and R.Utiger(eds),J.B.Li
ppincott Co.pages 887-916)。チオナミドがこの効果を発揮する機序に関する
研究は矛盾したものである。仮説の1つは、チオナミドが甲状腺濾胞細胞に直接
作用し、続く甲状腺活性の調節が免疫効果を生じることを示唆する(Volpe et
al.,(1986)Clin.Endocrinol.
25:453-462)。第2の仮説は、チオナミドがリンパ球、特には甲状腺リンパ球に
直接作用することを示唆する(Weetman,A.P.(1992) Clin Endocrinol.37:31
7-318;McGregor,A.M.(1980)Brit.Med.J.,281:968-969)。また、MMI
が補助細胞による抗原の処理を妨げることも示唆されており、これは、これらの
細胞がペルオキシダーゼ酵素系を有することによるものである(Weetman,A.P
.(1983)Clin.Immuno.and Immunopath,28:39-45)。現在の総意は、免疫抑制
効果を含むチオナミドの治療作用が甲状腺特異的かつ甲状腺内のものであるとい
うものである(D.S.Cooper(1991)Treatment Of Thyrotoxicosis.In Wern
er And Ingbar's The Thyroid:A Fundamental and Clinical Text,"6th
edition.L.Braverman and R.Utiger(eds),J.B.Lippincott Co.pages 8
88-889)。
糖尿病の治療におけるMMIの使用に関する研究の結果も矛盾している。Hib
be,T.et al.,(1991);Diabetes Res.and Clin.Practice 11:53-58には、M
MIがマウスにおけるストレプトゾトシン介在糖尿病の発症を高めることが報告
されている。対照的に、Waldhausl,W.et al.(1987)Akt.Endokrin.Stoffw.8
,119(abstract)には、I型糖尿病の診断の少し後にMMIで処置した11名の患者
の54%で寛解が高められ、それらの治療がTヘルパー細胞に対するMMIの有名
な効果に基づくことが報告されている。これらの著者は、クラスI及びクラスII
抗原の水準には変化がなく、この効果がMMIによるものなのか、あるいは9ヶ
月の“蜜月”期間にわたる疾患の自然寛解によるものなのかは明らかではないと
報告した。BBラットにおいては、MMIは甲状腺炎の自発的発症を抑制したが
、糖尿病の発生を低減することはなかった(Allen,F.M.et al.,(1986)Am.J .Med.Sci.
,292:267-271;Braverman,L.E.et al.,(1987)Acta.Endocrinol .
(Coppenhagen)Suppl.281:70-76)。
Saji,M.et al.(1992a);Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:1944-1948に
は、ラット甲状腺細胞系FRTL−5におけるMHCクラスI遺伝子のホルモン
調節が記述されている。甲状腺刺激ホルモン(TSH)でのFRTL−5細胞系
の処理の結果、MHCクラスI DNAの転写が減少し、MHCクラスI抗原細
胞表面レベルが減少した。近年、Saji,M.et al.,(1992b)J.Clin.Endocrino l.Metab.
75:871-878の報告により、血清、インシュリン、インシュリン様成長
因子−I(IGF−1)、ヒド
ロコルチゾン及びグレーブス病患者に由来する甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗
体のような作用物質がFRTL−5細胞におけるMHCクラスI遺伝子の発現を
低減させることが示された。加えて、MMI又は高用量のヨウ化物でのFRTL
−5細胞の処理の結果、MHCクラスI遺伝の発現が低減した。このMHCクラ
スIの発現の低減に対するMMIの効果は転写のレベルであることが示され、か
つ甲状腺刺激ホルモン及び通常これらの細胞においてクラスIを抑制する他のホ
ルモンに付加的なものであった。Saji,M.et al.(1992b)J.Clin.Endocrinol .Metab.
75:871-878には、グレーブス病の治療の間甲状腺においてMMIが作用
するであろう新規の機序が示唆されている。これには、他のいかなる自己免疫疾
患に対しても推定はなされていない。これらの研究以前には、ラウス肉腫ウイル
ス、アデノウィルス12及び2並びに特定のグロスウイルスはMHCクラスIの発
現を減少させるが、SV40、Rad LV及びMo MuLVウイルスはクラスI M
HCの発現を増大させることが知られていた(Singer&Maguire(1990)Crit. Rev.in Immun.
10:235-257)。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、グレーブス病と同様に比較的出現率が
高い慢性自己免疫疾患である。SLEは女性で優勢に発症し、その出現率は20な
いし60歳の女性700名に1名である("Cellular and Molecular Immunology"(
1991)Abbus,A.K.,Lichtman,A.H.,Pober,J.S.(eds);W.B.Saunders
Company,Philadelphia:page 360-370)。SLEは、様々な自己抗体の形成及
び多臓器系の関与を特徴とする("Basic and Clinical Immunology"(1991)S
tites,D.P.and Terr,A.I.(eds),Appelton and Lange,Norwalk,Connect
icut,San Mateo,California;pages 438-443)。SLEの治療のための現在の
治療には、コルチコステロイド及びシクロスポリンのような細胞毒性薬物の使用
が含まれる。シクロスポリン、FK506、又はラパマイシンのような免疫抑制剤
は、T細胞の数及び機能を低下させることにより免疫系を抑制する(Morris,P
.J.(1991)Curr.Opin.in Immun.,3:748-751)。これらの免疫抑制療法はSL
E及び他の自己免疫疾患の症状を緩和するが、多くの副作用をもたらす。実際、
これらの薬剤を広範に用いる治療はその基層をなす疾患よりも高い罹患率を引き
起こすことがある。
乳癌を患うSLEに罹患した女性は特に困難に直面する。彼女達各人はSLE
の
コルチコステロイド及び細胞毒性薬物治療の結果として免疫が抑制されており、
癌の治療のための放射線療法により免疫抑制状態がさらに高められる。さらに、
現在選択されている方法である放射線療法は疾患の発現を悪化させ、又は深刻な
放射線合併症を誘発することがある。彼女達各人に対しては、SLE及び癌の同
時治療を可能にする代替療法の必要性が非常に高い。一般には、代替治療又は自
己免疫疾患の治療のための薬物の治療効力を評価する新規方法の必要性が非常に
高い。
自己免疫疾患について当てはまるのと同様に、移植拒絶の治療又は予防の異な
る方法に対する高い必要性が存在する。移植拒絶はホストとドナーとの組織適合
性の結果として生じ、組織の移植を成功させる上での主な障害である。現在の移
植拒絶の治療は、自己免疫疾患の治療と同様に、様々な免疫抑制薬及びコルチコ
ステロイド治療の使用を含む。
Faustmanら(PCT国際出願92/04033号)は、移植組織の表面上に存在する
抗原を修飾、除去又はマスクすることによる、レシピエント動物における移植組
織の拒絶を阻止する方法を確認している。とりわけ、この出願はヒト白血球抗原
(HLA)クラスI抗原の修飾、マスキング又は除去を示唆する。好ましいマス
キング又は修飾剤は、HLAクラスI抗原に対する抗体のF(ab)′断片である
。しかしながら、このような治療の有効性は、マスキング又は修飾剤としての機
能を果たす抗体に対するホストの免疫応答によって制限される。加えて、臓器移
植においては、マスキング抗体の灌流制限のためにこの治療は全ての細胞には影
響を及ぼさない。Faustmanらは、ホストへの移植に先立ってドナー細胞にウイ
ルスの断片又は全体を形質導入し、HLAクラスIの発現を抑制することを開示
している。ウイルス全体又はその断片の使用は、そのような移植組織のレシピエ
ントに潜在的な合併症をもたらす。これは、幾つかのウイルス、特にSV40がク
ラスIの発現を増加させるためである(Singer and Maguire(1990)Crit.Rev In Immunol.
10:235-237,TABLE2)。
Durantら(英国特許592,453号)は、自己免疫疾患及び宿主対移植片(HVG
)疾患の治療において有用であり得るイソチオ尿素組成物及びこれらの化合物の
免疫抑制の可能性を評価するための検定を確認している。しかしながら、この研
究
は、MMI又は自己免疫疾患の治療におけるMHCクラスI分子の抑制を記述し
ていない。
米国特許5,010,092号及び5,097,441号には、抗生物質とMMI又はCBZのい
ずれかとの同時投与による、哺乳類動物において抗生物質投与の結果生じる腎毒
性を低減させる方法が記述されている。これらの特許には、自己免疫疾患の治療
又は移植拒絶の治療及び予防におけるMHCクラスIの発現を抑制するためのM
MIの使用、並びに自己免疫疾患及び移植拒絶の治療において用いられる薬剤の
治療上の指標としてのクラスI分子の抑制は示唆も教示もされていない。
発明の要約
本発明は、哺乳類動物における自己免疫疾患治療の治療、及び移植レシピエン
トにおける移植拒絶の予防又は治療の方法に関する。これらの方法は、治療を必
要とする哺乳類動物にMHCクラスI分子の発現を抑制することが可能な薬剤を
投与することを包含する。また、本発明は、レシピエントへの移植に先立って、
移植可能な細胞、組織又は臓器をMHCクラスI分子を抑制することが可能な薬
剤で前処理することにも関する。特には、本発明は、哺乳類動物での自己免疫疾
患の治療における及び移植レシピエントにおける移植拒絶の予防又は治療のため
MMIの使用に関する。加えて、本発明は、MHCクラスI分子の発現を抑制す
ることが可能な薬剤を開発及び評価するためのイン・ビボ及びイン・ビトロ検定
方法をさらに包含する。
イン・ビボ法の1つは3工程を含んでなることが可能である。第1に、MHC
クラスI欠損マウスを用いて特定の実験的自己免疫疾患におけるMHCクラスI
の重要性を評価する。第2に、実験的に誘発され、もしくは自発的な特定の自己
免疫疾患のモデルとして有用な動物を評価される薬剤に露出する。第3に、処置
動物における自己免疫疾患の症状又は徴候の緩和を基準にその薬剤の治療上の効
力を評価する。
別のイン・ビボ法も3工程を含んでなることが可能である。第1に、哺乳類動
物の細胞系、組織又は臓器を薬剤で処理する。第2に、処理した細胞、組織又は
臓器を哺乳類動物に移植する。この哺乳類動物は、同様にその薬剤で処置されて
いてもよい。第3に、そのレシピエント哺乳類動物から細胞を取り出し、細胞の
生存率を評価する。
ここでは、様々な方法がイン・ビトロ検定のために提供される。それらの方法
の1つにおいては、MHCクラスI分子の発現を抑制する薬剤の能力を、哺乳類
動物の細胞を候補薬剤で処理し、処理細胞からの細胞抽出物をMHCクラスI調
節核酸配列と合わせ、この核酸配列と抽出物からのタンパク質との間での複合体
の形成を検出し、かつ処理及び非処理細胞からの抽出物での複合体形成における
変化を比較することにより評価する。別のイン・ビトロ法においては、細胞中で
クラスIの転写をダウン制御するその能力により薬剤の治療上の効力を評価する
ことが可能である。例として、MHCクラスIの転写のダウン制御はレポーター
遺伝子検定によって評価することができる。
さらに別のイン・ビトロ検定においては、MHCクラス分子の発現を調節する
ことが可能なタンパク質の発現を変化させるその能力により、MHCクラスI分
子の発現を抑制する薬剤の能力を評価する。
本発明のさらに別の目的は、MHCクラスIの発現を調節することが可能なタ
ンパク質をコードする核酸配列を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、ベクター及びクラスIの発現を調節することが可
能なここに提供される核酸配列の全て又はその一部を含む組換え分子を提供する
ことにある。
本発明のさらに別の目的は、MHCクラスIを調節することが可能なタンパク
質をコードする核酸配列の全て又はその一部によってコードされる組換えタンパ
ク質を産生させることにある。
本発明のさらなる目的は、これらのタンパク質、ペプチド又はそれらの一部と
反応するモノクローナル又はポリクローナル抗体を提供することにある。
本発明の目的は、自己免疫疾患を患う哺乳類動物の治療方法を提供することに
ある。
本発明の別の目的は、移植レシピエントにおける組織の拒絶を予防又は治療す
る方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、遺伝子治療を必要とする哺乳類動物に移植された、
組換え遺伝子を含む細胞の拒絶を予防する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、MHCクラスI分子を抑制することが可能な薬剤を評価
及び開発するためのイン・ビボ及びイン・ビトロ検定を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、候補薬剤の治療上の有用性を予想するイン・ビボ及
びイン・ビトロ検定を提供することにある。
図面の説明
図1A−1Dは、クラスI欠損マウスが抗−16/6Id抗体は産生するものの、抗
−DNA又は抗−核抗原抗体は産生しないことを示す。血清の連続2倍希釈をE
LISAにより免疫の10週間後に検定した。結果は5匹の別個の動物の測定の平
均であり、405nm×103でのODで、連続血清希釈の関数として表されている。標
準偏差値は平均の10%を超えなかった。16/6Id−免疫対照129マウス(○)
、16/6Id−免疫クラスI欠損マウス(◆)、及び卵白アルブミン免疫クラスI
欠乏マウス(●)の血清。
1A.免疫マウスの血清中の16/6Id;プレート上に固定された精製16/6Idの結
合の滴定。
1B.免疫マウスの血清中の一本鎖DNA;プレート上に固定された一本鎖DN
Aの結合の滴定。
1C.免疫マウスの血清中の核抗原;プレート上に固定された核抽出物の結合の
滴定。
1D.免疫クラスI欠損マウスの血清中の卵白アルブミン(●);プレート上に
固定された卵白アルブミンの結合の滴定。卵白アルブミンで免疫されていないク
図2A−2Dは、クラスI欠損マウスがモノクローナル抗−16/6Id抗体での免
疫に応答しないことを示す。血清の連続2倍希釈をELISAにより免疫の7週
間後に分析した。結果は6匹の動物の測定の平均である。標準偏差値は平均の10
%を超えなかった。抗−16/6Id免疫対照129(■)及び抗−16/6Id免疫クラス
I欠損マウス(●)の血清。
2A.免疫マウスの血清中の抗−16/6Id;プレート上に固定された精製ウサギ
ポリクローナル抗−16/6Id免疫グロブリンの結合の滴定。
2B.免疫マウスの血清中の一本鎖DNA;プレート上に固定された一本鎖DN
A
の結合の滴定。
2C.免疫マウスの血清中の16/6Id;プレート上に固定された16/6Idの結合の
滴定。
2D.免疫マウス血清中の核抗原;プレート上に固定された核抽出物の結合の滴
定。
図3A−3Bは、16/6Idを注射したクラスI欠損(3B)及び対照129(3A)マ
ウスの腎切片の免疫組織学的実験を示す。凍結腎切片(5μm厚)を固定し、FIT
C結合γ鎖特異的ヤギ抗−マウスIgGで染色した(倍率×200)。示される腎切
片は各群の1匹の個体からのものであり、その群を代表するものである。
図4A−4D。図4A及び4Bは、1回免疫し、かつ16/6Idを有するヒトモノク
ローナル抗−DNA抗体で追加免疫したマウスにおける抗−16/6Id及び抗−D
NA抗体の出現を示す。図4C及び4Dは、MMIでの処置の21 1/2週間後の
マウスにおける抗−16/6Id及び抗−DNA抗体の力価を示す。
4AはMMIでの処置の前のマウスにおける抗−16/6Id抗体の力価を示す。免
ルモン、とりわけチロキシン(T4)で処置され、又は処置されない16/6Id免疫
マウス(◇、◆、□)。
4BはMMIでの処置の前のマウスにおける抗−DNA抗体の力価を示す。表
示は(A)と同じである。
4CはMMI又はMMI及びチロキシン(T4)での処置の後のマウスにおける
抗16/6Id抗体の力価を示す。16/6Idで免疫はされてはいるが処置は受けていな
T4で60日(◇)処置した動物;16/6Idでは免疫されていないがMMIで60日処
置された動物(■)又はMMI及びT4で60日処置された動物(□)。
4DはMMI又はMMI及びチロキシン(T4)で処置した後のマウスにおける
抗DNA抗体の力価を示す。表示は(C)と同じである。
図5は、MMI又はチロキシン(T4)に露出していない16/6Id処置対照動物
(■);MMIに晒した16/6Id処置動物(○);及びMMI及びT4(□)に露
出した16/6Id処置動物における、追加免疫の3ヶ月、5ヶ月及び8ヶ月後の相
対白血球(WBC)数をWBCのパーセンテージとして示す。
図6A−6Bは、MMIで処置した16/6Id処置マウス(6B)対MMIで処置し
ていない16/6Id処置動物の腎臓における免疫複合体の発生を示す。
図7A−Dは、実験的SLE疾患の間のリンパ球集団に対するMMI処置の効
果を示す。この実験的SLE疾患は16/6Id処理の結果生じたものである。
びチロキシン(T4)で処置したマウス(■);16/6Idで免疫し、かつT4で処
球集団の分布を示す。
で処置したマウス(■)における全期間でのT細胞上のクラスIのレベルを示す
。
で処置したマウス(■)における全期間でのB細胞上のクラスIのレベルを示す
。
で処置したマウス(■)における全期間でのB細胞上のクラスIIのレベルを示す
。
図8は、NZBxNZWF1マウスにおける抗−DNA抗体の力価に対する2ヶ
月のMMI治療(ペレットの埋め込みにより15mgを30日間にわたって放出)の効
果を示す。対照動物(BxWF1)(□)及びMMIで処置したBxWF1動物(○
)。NZBxNZWF1マウスは、自発性SLEを発症するSLEのマウスモデル
である。
図9A−9Bは、PD1プロモーター5′部分の151(ボールド体)(配列番号1
の塩基54ないし220)、114(ボールド体及び下線)(配列番号1の塩基221ない
し320)、140(ボールド体及び矩形囲み)(配列番号1の塩基321ないし455)及び
238(ボールド体及び波形矩形囲み)(配列番号1の塩基456ないし692)領域又
は断片を含むPD1プロモーター(配列番号1)の配列を示す。238領域(配列番号1
の塩基456ないし692)はATに富む105領域(下線)(配列番号1の
塩基588ないし692)を含む。ATG開始部位はMetで始まるアミノ酸3文字暗号
で示されている。右側の数字は最上列の第1ヌクレオチドから数えた塩基対の数
を示す。
図10は、140断片(配列番号2)のサイレンサー及びエンハンサー領域を、ゲル
移動度シフト検定における活性についてのこの領域のマッピングに用いられるオ
リゴヌクレオチドと共に示す。移動度ゲルシフト検定における複合体形成に対す
るMMI効果に関連するサイレンサー領域は、インシュリン感受性である甲状腺
転写因子−2(TTF−2)様結合要素によって分離されている反対の矢印で示さ
れる。サイレンサー及びエンハンサー結合部位のマッピングは様々な二本鎖(ds
)−オリゴヌクレオチドによる複合体形成の阻害によって行った。140-bp Ava
II-DdeI DNA断片にまたがる一連のds−オリゴヌクレオチドをエンハンサ
ー及びサイレンサー複合体と競合する能力について試験した。それらのうち、競
合したものは示される96-bpのうちに含まれるものだけであった。結合に重要な
残基を決定するため、様々なds−オリゴヌクレオチドを合成し、サイレンサー及
びエンハンサー複合体形成を阻害するそれらの能力について試験した。矩形で囲
った領域は複合体の形成に重要であるds−オリゴヌクレオチドを用いる阻害研究
によって決定された配列を示し、点は本来の配列と同じ残基を示す。簡単にする
ため、競合研究において用いたds−オリゴヌクレオチド配列の一方の鎖のみを示
す。
図10(上)はサイレンサー結合部位のマッピングに用いられたオリゴヌクレオ
チドを示す。矢印はサイレンサーの構成要素との境界を示す。図10(下)はエン
ハンサー結合部位のマッピングに用いられたオリゴヌクレオチドを示す。矢印は
エンハンサーの断続的な逆転反復を示す。
図11は、配列の相同性を示すため、238断片(配列番号1の塩基456ないし692
)の114断片(配列番号36)、140断片(配列番号37)及び105断片(配列番号35
)の整列を示す。サイレンサー領域は、図10と同様に矢印により、140(配列番
号37)内に輪郭が示されている。151と同様に、全てMMIに応答する。図10と
同様に、TTF−2様配列も同定されている。(*)は140断片との一致を示し、
(●)は少なくとも他の1つの断片における140断片との相同性を示し、(--)
は最良の一致を導き出すためにコンピュータによって挿入されたギャップを
示す。右側の数字は、各々が1番から開始して連続的に番号がふられた場合の、
図9において定義される各断片における残基を示す。
図12A−Dは、図9に示される放射標識140(配列番号1の塩基321ないし455
)、114(配列番号1の塩基221ないし320)及び151(配列番号1の塩基54ないし
220)断片並びにFRTL−5ラット甲状腺細胞の細胞抽出物の移動度シフト検定
を示す。処理もしくは非処理FRTL−5細胞からの細胞抽出物を放射標識DN
A断片と共にインキュベートし、得られたDNA断片−タンパク質複合体をポリ
アクリルアミドゲル中で電気泳動させてオートラジオグラフィにより可視化した
。MMIによって影響を受けた複合体をAで示す。
12Aは140放射標識断片(配列番号1の塩基321ないし455)のゲル移動度シフ
ト検定を示す:レーン1は140放射標識断片(配列番号1の塩基321ないし455)
を単独で含み;レーン2は6H培地の存在下に維持され、かつMMIで処理され
たFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン3は6H培地の
存在下に維持され、かつMMIで処理されていないFRTL−5ラット甲状腺細
胞由来の細胞抽出物を含み;レーン4は5H培地の存在下に維持されたFRTL
−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン5は5H培地の存在下に維
持され、かつMMIで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出
物を含み;レーン6は5H培地の存在下に維持され、かつ甲状腺刺激ホルモン(
TSH)で処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;
及びレーン7は5H培地の存在下に維持され、かつMMI及びTSHで処理され
たFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含む。
12Bは114放射標識断片(配列番号1の塩基221ないし320)のゲル移動度シフ
ト検定をFRTL−5ラット甲状腺細胞抽出物と共に示す。レーン1は114放射標
識断片(配列番号1の塩基221ないし320)を単独で含み;レーン2は6H培地の
存在下に維持され、かつMMIで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来
の細胞抽出物を含み;レーン3は6H培地の存在下に維持され、かつMMIで処
理されていないFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン
4は5H培地の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出
物を含み;レーン5は5H培地の存在下に維持され、かつMMIで処理されたF
RTL
−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン6は5H培地の存在下に維
持され、かつ甲状腺刺激ホルモン(TSH)で処理されたFRTL−5ラット甲
状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;及びレーン7は5H培地の存在下に維持され
、かつMMI及びTSHで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞
抽出物を含む。
12Cは151放射標識断片のゲル移動度シフト検定をFRTL−5細胞抽出物と共
に示す。レーン1は151放射標識断片を単独で含み;レーン2は6H培地の存在下
に維持され、かつMMIで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞
抽出物を含み;レーン3は6H培地の存在下に維持され、かつMMIで処理され
ていないFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン4は5H
培地の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含
み;レーン5は5H培地の存在下に維持され、かつMMIで処理されたFRTL
−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン6は5H培地の存在下に維
持され、かつ甲状腺刺激ホルモン(TSH)で処理されたFRTL−5ラット甲
状腺細胞由来の抽出物を含む。図12Cのレーンa−dは、151放射活性断片(配列
番号1の塩基54ないし220)とFRTL−5細胞抽出物とのゲルシフト移動度検定
におけるA複合体の形成が、非標識105(配列番号1の塩基588ないし692)、140
(配列番号1の塩基321ないし455)、151(配列番号1の塩基54ないし220)及び
114(配列番号1の塩基221ないし320)断片による競合を受け得ることを示す。
レーン(a)のインキュベーション混合物は151放射標識断片(配列番号1の塩基
54ないし220)、5H培地の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由
来の細胞抽出物、及び非標識105断片(配列番号1の塩基588ないし692)を含み
;レーン(b)は151放射標識断片(配列番号1の塩基54ないし220)、5H培地の
存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物、及び非標
識140断片(配列番号1の塩基321ないし455)を含み;レーン(c)は151放射標
識断片(配列番号1の塩基54ないし220)、5H培地の存在下に維持されたFRT
L−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物、及び非標識151断片(配列番号1の塩
基54ないし220)を含み;レーン(d)は放射標識151断片(配列番号1の塩基54
ないし220)、5H培地の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状
腺細胞由来の細胞抽出物及び非標識114断片(配列番号1の塩基221ないし320)
を含む。
12Dは放射標識140断片(配列番号1の塩基321ないし455)のゲル移動度シフ
ト検定を3H培地中に維持された処理及び非処理FRTL−5細胞に由来する抽出
物と共に示す。5H培地と異なり、3H培地はインシュリンを含まない。レーン
(j)のインキュベーション物は140放射標識断片(配列番号1の塩基321ないし4
55)を単独で含み;レーン(e)は3H培地の存在下に維持されたFRTL−5ラ
ット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン(f)は3H培地の存在下に維持
され、かつMMIで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物
を含み;レーン(g)は3H培地の存在下に維持され、かつTSHで処理されたFR
TL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン(h)は3H培地の存
在下に維持され、かつMMI及びTSHで処理されたFRTL−5ラット甲状腺
細胞由来の細胞抽出物を含み;並びにレーン(i)は非標識105断片を3H培地の
存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の抽出物と共に含む。
図13はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)キメラで
の形質移入データを示し、これは、MMIが完全長のMHCクラスI PD1プロ
モーターの活性を阻害することを示す。FRTL−5ラット甲状腺細胞に完全長
のPD1プロモーター、CATキメラ構築体を形質移入し、これらの細胞に何も
処理を施さ
で処理した。
図14A−Bは放射標識238断片(配列番号1の塩基456ないし692)(図14(A
))又は放射標識Kオリゴヌクレオチド(配列番号38)(図14(B))のゲルシ
フト移動度検定を、5H培地中に維持された処理もしくは非処理FRTL−5ラッ
ト甲状腺細胞由来の抽出物と共に示す。MMIによって影響を受けた複合体をA
で示す。
14Aは、5H培地中に維持した処理もしくは非処理ラット甲状腺FRTL−5細
胞由来の抽出物及び図10に示される非標識二本鎖(ds)オリゴヌクレオチドと共に
インキュベートした放射標識238断片(配列番号1の塩基456ないし692)のゲル
移動度シフト検定を示す。レーン1のインキュベーション物は238放射標識断
片(配列番号1の塩基456ないし692)を単独で含み;レーン2は5H培地の存在
下に維持され、かつMMIで処理されないFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の
細胞抽出物を含み;レーン3は5H培地及び非標識105断片(配列番号1の塩基588
ないし692)の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出
物を含み;レーン4は5H培地及び非標識114断片(配列番号1の塩基221ないし3
20)の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含
み;レーン5は5H培地及び非標識140断片(配列番号1の塩基321ないし455)の
存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レ
ーン6は5H培地及び非標識151断片(配列番号1の塩基54ないし220)の存在下
に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン7
は5H培地及び非標識K−オリゴヌクレオチド(配列番号38)中に維持されたF
RTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン8は5H培地及び非
標識ds−オリゴヌクレオチドS2(配列番号4)(図10に図示)の存在下に維持さ
れたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン9は5H培地
及び非標識ds−オリゴヌクレオチドS3(配列番号10)(図10に図示)の存在下
に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;レーン10
は5H培地及び非標識ds−オリゴヌクレオチドS8(配列番号8)(図10に図示)
の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;
レーン11は5H培地及び非標識ds−オリゴヌクレオチドS6(配列番号6)(図10
に図示)の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物
を含み;レーン12は5H培地及び非標識ds−オリゴヌクレオチドS1(配列番号3
)(図10に図示)の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細
胞抽出物を含み;レーン13は5H培地及び非標識ds−オリゴヌクレオチドS7(配
列番号7)(図10に図示)の存在下に維持されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由
来の細胞抽出物を含み;レーン14は5H培地の存在下に維持され、かつMMI及
びTSHで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含み;
レーン15は非標識K−オリゴヌクレオチド(配列番号38)と5H培地の存在下に
維持され、かつMMI及びTSHで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由
来の細胞抽出物とを含む。
14Bは、5H培地中に維持された処理もしくは非処理ラット甲状腺細胞由来の
抽出物と共にインキュベートした放射標識K−オリゴヌクレオチド(配列番号38
)のゲル移動度シフト検定を示す。レーン16において、インキュベーション物は
、放射標識Kオリゴヌクレオチド(配列番号38)を5H培地単独の存在下に維持
されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物と共に含む。レーン17に
おいて、インキュベーション物は、放射標識Kオリゴヌクレオチド(配列番号38
)を5H培地の存在下に維持され、かつMMIで処理されたFRTL−5ラット甲
状腺細胞由来の細胞抽出物と共に含み;レーン18は放射標識Kオリゴヌクレオチ
ド(配列番号38)を5H培地の存在下に維持され、TSHで処理されたFRTL
−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物と共に含み;レーン19は放射標識Kオリ
ゴヌクレオチド(配列番号38)、並びに5H培地の存在下に維持され、かつMM
I及びTSHで処理されたFRTL−5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物を含
む。
図15A−15Bは、インシュリン及び5%血清を含む(図15A)、又はインシュ
リンを含まずに0.2%血清だけを含む(図15B)培地中に維持されたFRTL−5甲
状腺細胞における、MHCクラスIの転写率に対するMMI及びTSHの効果を
示す。5%仔ウシ血清を加えた5H培地(図15A)又は0.2%血清を加えた4H培地
(図15B)に7日間維持したFRTL−5甲状腺細胞を1×10-10M TSH、5mM
MMI、又はその両者に露出した。24時間後、核を単離し、[32P]UTPと共に
インキュベートした後核RNAを精製し、次いで過剰のクラスI cDNA及びβ
−アクチンとハイブリダイズさせた(Saji,M.,Moriarty,et al.,(1992b)J.C lin.Endocrinol.Metab.
75,871-878;Isozaki,O.,et al.,(1989)Mol.Endocr inol.
3,1681-1692)。オートラジオグラフィー及び濃度測定の後、TSH又はM
MIに露出していない対照細胞におけるアクチンRNAに対する放射標識クラス
Iの比を1に設定し、処理細胞からの値を比較した。β−アクチンRNA転写の
レベルは処理の影響を受けなかった。値は3回の実験の平均であり、P<0.05(*
)又はP<0.01(**)で有意の増加又は減少が認められる。0.2%血清を加えた
4H培地中の対照細胞(図15B)におけるクラスI転写率は5%血清を加えた5H
培地中におけるもの(図15A)より約3.2倍高く、これは、それぞれの条件下に
おけるクラスI RNAレベ
ルでの約4倍の高さと一致する(Sahi,M.,Moriarty,et al.,(1992b)J.Clin .Endocrinol.Metab.
75,871.878)。
図16A−16Bは、FRTL−5細胞における、ブタクラスIプロモーターの5′
−欠失変異体のCATキメラのプロモーター活性に対するMMI及びTSHの効
果を示す。(図15A)6H培地(+TSH)中で成長させたFRTL−5細胞に電
気穿孔法によりPD15′−隣接領域の異なる構築体を形質移入した。12時間後、
培地を新鮮な6H培地(+TSH)、5mM MMIを加えた新鮮な6H培地(+T
SH/+MMI)、又はTSHもしくはMMIを含まない新鮮な5H培地に変え
、36時間後にCAT活性を測定した。変換率をルシフェラーゼレベル及びタンパ
ク質に対して標準化し、6H培地中に維持した細胞における−1100bp構築体の活
性(最初の黒棒)に100%の対照値を割り当てた。異なる構築体の発現の基礎レ
ベルにおける相違は、Weissman,J.D.and Singer,D.S.(1991)Mol.Cell. Biol.
11,4217-4227;Giuliani,C.,et al.,(1995)J.Biol.Chem.270,11453-
11462;Ehrlich,R.,et al.,(1988)Mol.Cell Biol.8,695-703;Maguire,J
.E.,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,3078-3086;Howcroft,T.K.,et al.,
(1993)EMBO J.12,3163-3169に既に記述されている異なる調節要素の活性を
反映しており、その幾つかは(図16B)にまとめられている。値は、各々2回繰り
返した3回の異なる実験の平均±S.E.である。(図15B)異なる構築体のグラ
フ表示。示される調節要素には、(a)異なる組織における構造クラスIレベル
の調節に重要なサイレンサー/エンハンサー領域;(b)エンハンサーA;(c)
インターフェロン応答要素;(d)38bp構造サイレンサーであって、(e)この構
造サイレンサー要素内のCRE様配列を含む構造サイレンサーが含まれる。(f
)転写の開始に重要なCCAATボックスも示される。これらの要素及び後の図
の全てにおける番号付けは、+1、図9におけるヌクレオチド1091である転写の
始点(Giuliani,C.,et al.,(1995)J.Biol.Chem.270,11453-11462)から決め
られる。
図17A−17Bは、MMI及びTSHによって調節されるFr140タンパク質/D
NA複合体の形成を妨げるオリゴヌクレオチドの能力を示す(図12A)。(図17
B)は、それが複合体の形成に関与するサイレンサー領域、−724ないし−697bp
であることを示す(図17A);形成は、Fr140に対して5′及び3′の関連サイレ
ンサー要素配列を含むクラスIプロモーター断片によっても阻害され、この関連
サイレンサーのうちの2つは図11に示されている。図17Aにおいては、細胞をT
SHを含まない5H培地において7日間培養した。細胞抽出物を調製し、PD1プ
ロモーターのFr140放射標識プローブ、−770ないし−636bpと共にインキュベー
トした。矢印(A)は、MMI及びTSHによって減少し、E9オリゴヌクレオ
チド(図10)ではなく250倍過剰のS2(配列番号4)及びS6(配列番号6)によ
る阻害に基づいてサイレンサー要素と同定されるタンパク質/DNA複合体を示
す。矢印(b)は、サイレンサー要素を部分的にのみ阻害するS6(配列番号6)
オリゴヌクレオチド及びエンヘンサーのみを阻害するE−9による阻害に基づい
てエンハンサー要素として同定されるタンパク質/DNA複合体を示す。S3(
配列番号10)オリゴヌクレオチドは対照であり、効果はない。矢印(c)が示す
タンパク質/DNA複合体の機能は現時点では不明である。図17Bにおいては、
同じ抽出物を、100倍過剰の、Fr140:Fr151(−1047ないし−881bp)、Fr114
(−880ないし−771bp)及びFr105(−503ないし−399bp)に対して5′及び3′
の非標識断片と共にインキュベートした。これらのクラスI領域は、Fr140(配
列番号37)(図11及び12A−D)中のサイレンサーとかなりの相同性を有する領
域を含む。
図18A−18Cは、Fr140(配列番号37)と共に形成されるサイレンサー複合体
に対する塩濃度の上昇(図18A)及びNF−κBのp50もしくはp65サブユニット
(図18B)又はc−fos群の構成要素(図18c)に対する抗血清の効果を示す。F
RTL−5細胞をTSHを含まない5H培地において7日間培養した。細胞抽出物
を調製し、PD1プロモーターのFr140(配列番号37)放射標識プローブ−770〜
−636bpと共にインキュベートして複合体の形成をEMSAにより測定した。図1
2A−D、14A−B、及び17A−Bにおいて特徴付けられるサイレンサー複合体
を矢印で示す。(図18A)においては、濃度が増加するKClをインキュベーシ
ョン混合物に添加した。(図18B)及び(図18C)においては、プローブを添加
する前に、示される抗血清又は正常血清(レーン3、図18C)を抽出物と共に予
備インキュベートした。断続線は“超シフト”複合体の位置を示す。fosB、c−
fos、fra−1、及びfra−2に対する抗血清は、それぞれ、Santa Cruzから入手
したsc−48、
sc−413、sc−183、及びsc−57である。これらの結果は、サイレンサー複合体(
矢印)が1を上回るタンパク質/DNA複合体(図18A−C)を含んでなり、か
つそれらのタンパク質のうちの1つがNF−κBのp65サブユニット(図18B)
で、他のものがc−fos群の構成要素(図18C)、おそらくfra−1、fra−2又はfo
sB以外であることを示す。
図19A−19Cは、オリゴK(配列番号38)、サイログロブリン(TG)、イン
シュリン応答性要素(IRE)、又はオリゴKM、インシュリン応答性を失った
それらの変異体(Santisteban,P.,et al.,(1992)Mol.Endocrinol.6,1310-13
17;Aza-Blanc,P.,et al.,(1993)Mol.Endocrinol.7,1297-1306)の配列を
有するオリゴヌクレオチドを含むプラスミドによる同時形質移入を伴う、もしく
は伴わない、FRTL−5細胞に形質移入されたp(−1100)CAT(図19A)、
p(−127)CAT(図19B)、又はp(−127NP)CAT(図19C)のCAT活
性を示す。5%仔ウシ血清を加えた5H培地中で成長させたFRTL−5細胞に、
PD15′−隣接領域の異なる構築体及びオリゴKの配列を有するオリゴヌクレオ
チドを含む20もしくは40μgのプラスミド(それぞれ、オリゴK1、及びオリゴK
2)を同時形質移入した。あるいは、40μgのオリゴKM、前に記述されるオリゴ
Kの変異形態(Santisteban,P.,et al.,(1992)Mol.Endocrinol.6,1310-1317
;Aza-Blanc,P.,et al.,(1993)Mol.Endocrinol.7,1297-1306)を同時形質
移入した。p(−127NP)CATは、CREの非パリンドローム変異(図25Aを参
照)を下流サイレンサーの中に有するp(−127)CATキメラ(図16A)である
。36時間後にCAT活性を測定し、変換率を成長ホルモンレベルに対して標準化
した。オリゴK配列が挿入されたベクターでの対照形質移入の活性に100%の値
を割り当てた(各枠における最初の白抜きの棒)。オリゴK(配列番号38)又は
その変異体を同時形質移入した細胞のCAT活性における相違を対照値と比較し
た。値は、各々2回行った3回の異なる実験の平均±S.E.である。(図19A)
において、星印1つ(*)はオリゴK1によって引き起こされた活性の有意の(P
<0.05)の増加を示し;星印2つ(**)はオリゴK2による有意の増加(P<0.0
1)を示す。(図19C)において、オリゴK1の存在下における増加は有意(P<
0.01)である。
図20A−20Bは、オリゴヌクレオチドK(配列番号38)、サイログロブリンプ
ロモーターのインシュリン応答性要素(これは、メチマゾール(MMI)及びT
SHの能力を阻害してクラスIプロモーターのFr140とのサイレンサー複合体を
減少させることが可能である(図12A−D及び14A−Bを参照))でのラットF
RTL−5細胞発現ライブラリーのスクリーニングにより得られる、Sox−4と呼
ばれるクローンのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。この配列は1422ヌ
クレオチドを含み、そのオープンリーディングフレームは分子量約53,040の442
アミノ酸残基のタンパク質をコードする。マウスSox−4とのアミノ酸残基の相
違は特定の置換残基によりラット配列の下に示されている。ヒトSox−4(Van
de Wetering,M.,et al.,(1993)EMBO Journal 12,3847-3854)との相違は
断続線で示されている。ラット及びマウスSox−4はヒトSox−4より32残基小さ
い(Farr,C.J.,et al.,(1993)Mammalian Genome 4,577-584)。ヒトSox−4
における余分の残基の全て(示さず)は、示されるマウス及びヒトSox−4との
アミノ酸相違を含むタンパク質の1領域内のクラスターであり、それらは大部分
がグリシン及びアラニン残基である(Farr,C.J.,et al.,(1993)Mammalian Genome
4,577-584)。矩形で囲まれている残基はラット、マウス及びヒトSox
−4遺伝子で同じアミノ酸である。Sox−4タンパク質は配列特異的な様式でDN
Aに結合する転写レギュレーターのHMG(高移動度群)クラスの構成要素であり
、HMGボックスはボールド体で矩形に囲まれている。HMGボックスに加えて
、3種類のSox−4タンパク質全てに共通の特徴は、複数の推定カゼインキナー
ゼ及びヒストンキナーゼリン酸化部位を有するセリンに富むカルボキシ末端テー
ルである(Van de Wetering,M.,et al.,(1993)EMBO Journal 12,3847-3
854;Farr,C.J.,et al.,(1993)Mammalian Genome 4,577-584)。
図21は、放射標識オリゴヌクレオチドK(配列番号38)、オリゴヌクレオチド
Z(甲状腺ペルオキシダーゼプロモーターの等価インシュリン応答性要素)、又
はEMSAにおいて甲状腺転写因子−2(TTF−2)の結合と競合する能力を失っ
たそれらの変異体(Santisteban,P.,et al.,(1992)Mol.Endocrinol.6,1310-
1317;Francis-Lang,H.,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,576-588;Aza B
lanc,P.,et al.,(1993)Mol.Endocrinol.7,1297-1306)と共にインキュベート
した場合の、タンパク質−DNA複合体を形成する組換えラットSox−4タンパ
ク質、50ngの
能力を示す。対照オリゴヌクレオチド、サイログロブリンプロモーター由来のオ
リゴヌクレオチドCも用いられており、これはオリゴヌクレオチドK部位に隣接
し、かつTTF−2とは結合しないが甲状腺転写因子−1(TTF−1)又はPax
−8と結合することが可能である(Guazzi,S.,et al.,(1990)EMBO J.,9,3
631-3639;Francis-Lang,H.,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,576-588;
Santisteban,P.,et al.,(1992)Mol.Endocrinol.6,1310-1317;Zannini,M.
,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,4230-4241;Aza Blanc,P.,et al.,(199
3)Mol.Endocrinol.7,1297-1306)。合成二本鎖オリゴヌクレオチドを[γ32P]
ATP及びT4ポリヌクレオチドキナーゼで末端標識した後、使用前に8%未変性
ポリアクリルアミドゲルで精製した。結合反応を30μlの容積で20分間室温で行
った。反応混合物には、組換えタンパク質1μg並びに10mMトリス−Cl(pH7.9
)、1mM MgCl2、1mMジチオトレイトール、1mMエチレンジアミン四酢酸(E
DTA)、5%グリセロール、及び200mM KCl中のポリ(dI−dC)0.5μgが
含まれていた。標識プローブ50,000cpmを添加し、インキュベーションを室温で
さらに20分続けた。DNA−タンパク質複合体を5%未変性ポリアクリルアミド
ゲルで分離した。
図22A−22Bは、異なるラット組織(図22A)及び様々なホルモン混合物で示
される期間、24時間又は1週間、処理したラットFRTL−5甲状腺細胞(図22B
)のノーザン分析を示す。図21Aにおいては、示されるラット組織に由来するmR
NAを含むラットMultiple Tissue Northern Blot(Clontech、Palo Alto
、CA)をノーザン分析に用いた。図21Bにおいては、QDTM迅速ポリ(A)+m
RNA単離システム(5Prime→3Prime Inc.、Boulder,CO)を用いて培養
非機能性FRT(フィッシャーラット甲状腺)、BRL(バッファローラット肝
臓)、及び機能性FRTL−5(フィッシャーラット甲状腺L−5系)細胞から、
又はヒト甲状腺もしくは胸腺及びラット卵巣組織からmRNAを調製した。ノー
ザン分析では、レーン当り1.5μgのRNA、2%ホルムアルデヒドを含む1%アガ
ロースゲル、及びナイロンフィルター(Nytran、Schleicher and Schuell、
Keene,NH)を用いた。図21A及び21Bの両者について、完全長のラットSO
X−4又はラットβ−アクチンcDNA(Dr.B Paterson、NCI、Bethesda
、MDより入手)をランダムプライミングにより放射標識した。予備ハイブリダ
イゼーション及びハイブリダイゼ
ーション(1.0×106cpm/ml)はQuickhyb Hybridization Solution(Stratag
ene、LaJolla、CA)中で行った。洗浄は前に記述される通りに行った(Isoz
aki,O.,et al.,(1989)Mol.Endocrinol.3,1681-1692)。
図23は、Fr140とFRTL−5細胞抽出物との間でのサイレンサー及びエンハ
ンサー複合体形成を阻害する、Sox4に対する抗体の能力を示す。FRTL−5細
胞をTSHを含まない5H培地中で7日間培養した。細胞抽出物を調製し、PD1
プロモーターのFr140放射標識プローブ、−770ないし−635bpと共にインキュベ
ートして複合体形成をEMSAにより測定した。図12、14、17及び18において特
徴付けられるサイレンサー及びエンハンサー複合体が示されている。予備免疫し
た、又は免疫したウサギからの血清のIgG画分(それぞれ、レーン2及び3)を
、プローブを添加する前に、抽出物と共に予備インキュベートした。標準プロト
コル(Genosys Biotechnologies,Inc.、The Woodlands、Texas)に従い、
ラットSox−4(図20)のKLH−結合ペプチド359ないし373(GSSSSDD
EDDLLD)でウサギを免疫することにより抗体を作製した。プロテインA−
セファロースCL−4Bカラムを用いるアフィニティクロマトグラフィーによっ
てIgGを精製し、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4で平衡化したPierce(Rockf
ord、IL)脱塩カラムで脱塩した。このIgG溶出液を100容量のリン酸緩衝生
理食塩水、pH7.4に対して4℃で18時間透析し、Centricon10ユニット(Amicon
、Beverly MA)において500×g、4℃で3.5時間遠心することにより濃縮した
。IgGは検定まで−20℃で保存することが可能であった。ここで用いられるウ
サギ抗体は1:10,000希釈で合成ペプチドと反応し、ペプチド特異的、すなわち
残基226ないし239(図20)を模倣するSox−4由来の別の親水性ペプチドは認識せ
ず、かつELISAによる測定でウェスタンブロット処理された組換えSox−4
を検出することが可能である。
図24A−24Bは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって作製されたクラス
IPD−1ゲノム断片、−800ないし−605に対するDNAaseI保護分析を示す(
Saiki,R.K.,et al.,(1988)Science 239,487-491,46)。テンプレートは140断
片を含むPD−15′−隣接領域であった(Ehrlich,R.,et al.,(1988)Mol.Ce ll Biol.
8,695-703;Maguire,J.,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,3078-3
086)。正プライマーは5′末端のBamHI部位(下線)、
ATAGGATCCGAATAGGAAACACGGAGTATACTGATT
CAGを有し、PD−1配列の−800から−770bpまで広がっていた。逆プライマ
ーはHindIII部位(下線)、ATAAAGCTTCACTGGAGGTTTAT
GTCTGCTTCTGTGCTGを有し、−605から−634bpまで広がっていた
。この断片をBamHI及びHindIIIで消化し、記述されるようにCATキメラに
挿入した(Ehrlich,R.,et al.,(1988)Mol.CellBiol.8,695-703;Maguire,
J.,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,3078-3086;Giuliani,C.,et al.,(19
95)J.Biol.Chem.270,11453-11462)。必要に応じて、これを制限酵素消化に
より単離し(Ehrlich,R.,et al.,(1988)Mol.Cell Biol.8,695-703;Magui
re,J.,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,3078-3086)、QIAEX抽出キッ
ト(Quiagen、Chatsworth、CA)を用いて2%アガロースゲルから精製した。
コーディング鎖のデータは図24Aに示し、非コーディング鎖の結果は図24Bに示
す。この断片を[α32P]dCTP及びクレノウ断片で末端標識した後、8%未変
性ポリアクリルアミドゲルで精製した。DNAaseIフットプリント法(Ikuyama
,S.,et al.,(1992)Mol.Endocrinol.6,1701-1715;Shimura,H.,et al.,(199
3)J.Biol.Chem.268,24125.24137)では1、5又は10μgの精製組換えタンパク質
を用いた。初期インキュベーションは、室温で20分間、20μl反応容積で、KCl
を除いて10mMトリス−Cl、pH7.6、5mM MgCl2、0.1%トリトンX−100、及
び1μgのポリ(dI−dC)と共に行った。プローブ(50,000cpm)を添加した後
、反応混合物を室温で20分間インキュベートした。次に、DNAプローブを0.5
単位のDNAaseI(Promega、Madison、WI)を用いて室温で1分間消化し
た。80μlの停止溶液(20mMトリスHCl、pH8.0、250mM NaCl、20mMエチ
レンジアミン四酢酸(EDTA)、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1
0μgプロテイナーゼK、及び4μg超音波処理仔ウシ胸腺DNA)で反応を停止
させた。37℃で15分間インキュベートした後、消化産生物をフェノール抽出して
エタノール沈澱させ、8%配列決定ゲルで分離した。マクサム及びギルバートA
+G及びC+T配列決定反応(Maxam,A.M.,et al.,(1980)Method Enzymol.
65,499-560)を用いてフットプリントが付けられた領域の位置を定めた。Sox−
4及び対照組換えタンパク質、NF−κBのp50サブユニット、によってフットプ
リントが付けられた領域は各枠の右に示されており、これをクラスIプロモータ
ーのサ
イレンサー及びエンハンサー領域と比較する(図10を参照)。
図25A−25Bは、p(−127)CATプロモーターの活性に対するCRE様要素
の修飾の効果及び異種プロモーターの活性に対するCRE様要素の効果を示す。
図25Aにおいては、p(−127)CATプロモーター構築体中のCRE様要素を欠
失させ(ΔCRE)、又は示されるように非パリンドローム配列に変異させた(
NPCRE)。これらの誘導構築体のCAT活性を、FRTL−5細胞に形質移
入して5%仔ウシ血清を加えた3H培地中で2日間インキュベートした後、親のp
(−127)CAT活性と比較した。変換率をhGHレベル及びタンパク質に対して
標準化した。CAT活性を、pSV0対照キメラよりも平均して2倍CAT活性が
高い親のp(−127)CATと相対的に表す。データは3回の別々の実験の平均±
S.E.である。p(−127)CATより統計的に有意の増加(P<0.05)を星印で
示す。図25Bにおいては、−127と−90bpの間のクラスI DNA配列(CREと
呼ぶ)を、CAT遺伝子にライゲートして記述されるように(Shimura,Y.et a
l.(1994)J.Biol.Chem.269,31908-31914)FRTL−5細胞に形質移入したS
V40プロモーターを含む構築体の3′末端に導入した。これらの細胞を5%仔ウシ
血清を加えた3H培地中に2日間維持した後CAT活性を測定し、変換率をhGH
レベル及びタンパク質に対して標準化した。CREを含む構築体を図の左に図示
する。矢印は存在するCREの方向及びコピー数を示す。CRE部位が欠失して
いる(ΔCRE)か、又は非パリンドローム(NP CRE)形態(図25A)に
変異されている2種類の変異構築体も示す。CAT活性は、最小SV40プロモー
タを含み、平均で44±5%である親のプロモーター構築体、pCAT、に対して相
対的に示す。値は3回の別々の実験の平均±S.E.である。統計的に有意の減少
をP<0.05(*)又はP<0.01(**)として示す。
図26A−26Bは、FRTL−5細胞のTSH処理が細胞抽出物と−168ないし−
1bp(Fr168;図9におけるヌクレオチド923ないし1190)のクラスIプロモータ
ーの5′−隣接領域との間での新規タンパク質/DNA複合体の形成を誘発する
ことを示す。図26AはクラスI遺伝子プロモーターの5′隣接領域を図示するも
のである。全ての数字は、Giuliani C.,et al(1995)J.Biol.Chem.270:1145
3-11462(これは、参照することによりここに組込まれる)に定義されるように
+1と命
名される転写の出発点に対して相対的なものである。CRE様配列は、CAAT
及びTATAボックス、エンハンサーA(EnH)、及びインターフェロン応答要
素(IRE)の位置と同様に、−107ないし−100塩基対(bp)に示される。電気
泳動移動度シフト検定(EMSA)において用いられるDNA断片が示されてい
る。図26Bにおいては、EMSAを放射標識Fr168プローブを用いて行う。この
放射標識Fr168は、5%血清を加えた3H培地中で6日の後、1×10-10M TSH
が存在しない条件下(−)又は存在下(+)において48時間維持されたFRTL
−5細胞に由来する抽出物と共にインキュベートしたものである。Fr168プロー
ブを、抽出物単独(レーン1及び5)又は100倍過剰の非標識Fr168(レーン2及び6
)、Fr127(図9におけるヌクレオチド964ないし1090)(レーン3及び7)、又
はCRE−1、CRE様部位を含む38bpサイレンサー(図9におけるヌクレオチ
ド964ないし1001)(レーン4及び8)のいずれかの存在下においてインキュベー
トした。この実験及び記述すべきCRE−1を含む他の全ての実験においては、
結果を違えることなく、それを3′末端の10ヌクレオチドまで広がる48塩基対(b
p)の配列で置き換えることができる。タンパク質/DNA複合体は文字Aない
しGで示し、F及びGはTSH処理細胞の抽出物にのみ存在する複合体を表す。
図27A−27Bは、MHC5′−隣接領域の放射標識Fr168とタンパク質/DN
A複合体を形成する細胞抽出物の能力に対するFRTL−5細胞のMMI及び/
又はTSH処理の効果を示すものであり、このタンパク質/DNA複合体の形成
は、(図27A)TSH受容体(TSHR)インシュリン応答要素(図28C;Shimu
ra,Y.,et al.(1994)J.Biol.Chem.269,31908-31914)の配列を有する非標識
オリゴヌクレオチド(オリゴTIF)が存在しない条件下もしくは存在下におけ
るものであるか、又は(図27B)CREの非パリンドローム変異を有する(NP
CRE)もしくは変異がない(CRE−1)38bpの下流サイレンサーを含む非標
識オリゴヌクレオチドが存在しない条件下もしくは存在下におけるものである。
細胞を5%仔ウシ血清を加えた5H培地(TSH非含有)中に7日間維持し(レー
ン1;5H基本)、その時点で5mM MMI(レーン2)、1×10-10M TSH(レ
ーン5)、又はその2つを一緒に(レーン4)添加して36時間後に抽出物を調製し
、MHC5′−隣接領域、−168bpないし+1、の32P−放射標識Fr168と共にイ
ンキュベートした。図27A
においては、非標識競合体が存在しない条件下(レーン1、2、4、5)又は250倍
過剰の、TSHRインシュリン応答要素(オリゴTIF)もしくはTGインシュ
リン応答要素(オリゴK)の配列を有するオリゴヌクレオチドの存在下において
、複合体の形成をEMSAによって評価した。図27Bにおいては、MMI処理細
胞に由来する抽出物との複合体の形成を、非標識競合体が存在しない条件下(レ
ーン2)又は250倍過剰の、下流38bpサイレンサー(CRE−1;レーン3)もしく
はその非パリンドローム対応物(図25Aに示されるNP CRE;レーン4)の配
列を有するオリゴヌクレオチドの存在下において評価した。図27Bのレーン1は
プローブ単独である。矢印は、その形成が細胞のTSH/MMI処理によっては
増大するが、オリゴTIF又はCRE−1のイン・ビトロ添加によっては阻害さ
れる複合体を示す。
図28A−28Cは、インシュリン応答性を失ってはいないTSHRインシュリン
受容体要素の変異配列(Shimura,Y.,et al.,(1994)J.Biol.Chem.269:31908
-1914)(TIF変異体2)を有するオリゴヌクレオチドを含むプラスミドによる
同時形質移入を伴い、もしくは伴わずに、FRTL−5細胞に形質移入されたp(
−1100)CAT又はp(−127)CATのプロモーター活性に対するMMIの効果
を示す。DEAE−デキストラン法を用い、6H培地(+TSH)において成長さ
せたFRTL−5にPD15′−隣接領域の異なる構築体とオリゴTIFの変異体2
、TSHRインシュリン応答要素(Shimura,Y.,et al.,(1994)J.Biol.Chem .
269,31908-31914)の配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、もしくは含まな
いプラスミドとを同時形質移入した。12時間後、5mM MMI(MMI)を加え
た、もしくは差し引いた新鮮な6H培地に培地を変え、36時間後にCAT活性を
測定した。変換率及びタンパク質値を標準化した後、6H培地において維持し、
オリゴヌクレオチドを含まないプラスミドを同時形質移入した細胞における−11
00(図28A)又は127bp(図28B)の活性に100%の対照値を割り当てた(各枠に
おける最初の白抜きの棒)。オリゴTIF変異体を含むオリゴヌクレオチドを同
時形質移入した細胞の発現の差(各パネルの第2の白抜きの棒)を、MMIの存
在しない条件下(白抜きの棒)又は存在下(点を打った棒)の両者において評価
した。図28Cにおいて、変異体の配列及び活性がまとめられている。オリゴTI
F変異体2は、野性型
TSHRと比較した場合、一本鎖結合活性は失っているがインシュリン応答性は
保持している変異を有する(図28C;Shimura,Y.,et al.,(1994)J.Biol.Chem .
269,31908-31914)。値は、各々2回行われた3回の異なる実験の平均±S.E.
である。図28A及び28Bにおいて、星印1つ(*)はMMIによって引き起こさ
れた活性の有意の減少(P<0.01)を示し、星印3つ(***)はプロモーターの
活性を減少させるMMIの能力の有意の損失(P<0.01)を示す。図28Aにおい
て、星印2つ(**)はMMIが存在しない条件下におけるオリゴヌクレオチドの
同時形質移入によって引き起こされた基本プロモーター活性の増加(P<0.05)
を示す。
図29A−29Bは、TSHが存在しない条件下において、CRE様配列、−127
ないし−90bpを含む38bpサイレンサー領域がFRTL−5細胞に由来する抽出物
と複数のタンパク質/DNA複合体を形成し、そのうちの1つはCREBである
ものと思われることを示す。図29Aは、さらに、それらの形成がCRE様配列、
−107ないし−100bp、及びCREに隣接する配列に依存することを示す。放射標
識されたCRE−1と呼ばれる二本鎖38bpDNA断片、−127ないし−90bpを、5
%仔ウシ血清を加えた3H培地において6日間維持したFRTL−5細胞に由来す
る抽出物と共にインキュベートし、EMSAにより複合体を分析した。図26Aに
おいては、複合体の形成を、示される非標識二本鎖オリゴヌクレオチド:CRE
−1、CRE様配列を欠くΔCRE−1、及びコンセンサスCRE及びソマトスタ
チンプロモーターに由来する隣接残基を有するPromega CREの存在下もしく
は存在しない条件下において評価した。競合体の量がプローブを上回る倍数で、
その競合体の構造の図と共にゲルの組の各々の頂部に示されている。図26Bにお
いては、示されるように、CREB2、mXBP、ATF2、又はCREB−327(
それぞれ、レーン1−4)に対するウサギ抗血清2μlの存在下においてインキュ
ベーションを行った。断続線は、CREB−327抗体とのインキュベーションの
結果生じた超シフト複合体を示す。文字は抽出物によって形成された複合体の群
を表す。図26Bの実験におけるA複合体領域の分離の改善は、分離中に低ゲル濃
度を用いることで達成した。
図30A−30Cは、CRE様配列を有する38bpサイレンサー領域が、CREBに
加えて、甲状腺転写因子−1(TTF−1)及びPax−8の両者と複合体を形成す
ることを示し、さらに、それらの形成がポリ(dI−dC)濃度には依存しないこ
とを示
す。二本鎖の放射標識38bpDNA断片、−127ないし−90bp(CRE−1)を、5
%仔ウシ血清を加えた5H培地に6日間維持したFRTL−5細胞に由来する抽出
物と共にインキュベートし、3.0(図30B)及び0.5(図30A)μg/mlポリ(dI
−dC)においてEMSAにより複合体を分析した。図30Aにおいては、複合体
の形成を、示される非標識二本鎖オリゴヌクレオチド:CRE−1、CRE様配列を
欠くΔCRE−1、TSHR内にTTF−1要素を有するオリゴヌクレオチド、並
びにFRTL−5細胞におけるTTF−1結合及び活性を失ったそれらの変異体の
存在下又は存在しない条件下において評価した。TSHR TTF−1要素を含む
オリゴヌクレオチド及びその変異体の配列は図30Cに示されている(Shimura,
H.,et al.,(1994)Mol.Endocrinol.8,1049-1069;Ohmori,M.,et al.,(1995)Endocrinology
,136,269-282)。このTSHR TTF−1部位はPax−8を結合
しない(Shimura,H.,et al.,(1994)Mol.Endocrinol.8,1049-1069;Ohmori,
M.,et al.,(1995)Endocrinology,136,269-282;Civitareale,D.,et al.,(19
93)Mol.Endocrinol.7,1589-1595)。図30Bにおいては、CRE−1、TSHR
内にTTF−1要素を有するオリゴヌクレオチド、及びFRTL−5細胞における
TTF−1結合及び活性を失ったそれらの変異体の存在下又は存在しない条件下
において複合体の形成を再度評価した。加えて、TTF−1及びPax−8との相互
作用が可能な部位(TGオリゴCと呼ぶ)を有するサイログロブリンプロモータ
ー由来の二本鎖オリゴヌクレオチド、及びFRTL−5細胞におけるTTF−1及
びPax−8結合及び活性を失ったそれらの変異体の存在下においてインキュベー
ションを行った。TGオリゴC要素を含むオリゴヌクレオチド及びその変異体の
配列は図30Cに示されている(Civitareale,D.,et al.,(1989)EMBO J.,2
537-2542;Guazzi,S.,et al.,(1990)EMBO J.9,631-3639;Francis-Lan
g,H.,et al.,(1992)Mol.Cell Biol.12,576-588;Zannini,M.,et al.,(199
2)Mol.Cell Biol.12,4230-4241;Shimura,H.,et al.,(1994)Mol.Endocri nol.
8,1049-1069;Ohmori,M.,et al.,(1995)Endocrinology,136,269-282)。
各々の競合体の量はプローブの100倍過剰であった。文字は抽出物によって形成
された複合体の群を表し、38bpサイレンサーとのTTF−1及びPax−8含有複合
体は阻害データに基づいて示す。
図31A−31Cは、CRE様配列を含む38bpサイレンサー領域と共に形成された
C複合体がそのコーディング又は非コーディング鎖のいずれかと結合することが
可能なタンパク質を含むものと思われることを示す(図31A)。加えて、これら
の図は、これらがFRTL−5甲状腺細胞におけるTSHR遺伝子の発現のTS
H/cAMP抑制に重要な一本鎖結合タンパク質を含むように思われることを示
す(図31B)。CRE−1と呼ばれる、二本鎖放射標識38bpDNA断片、−127な
いし−90bpを、5%仔ウシ血清を加えた5H培地中に6日間維持したFRTL−5
細胞に由来する抽出物と共にインキュベートし、0.5μg/mlポリ(dI−dC)中で
EMSAにより複合体を分析した。(図31A)においては、プローブの100倍過剰
の、CRE−1のコーディング及び非コーディング鎖を含む非標識一本鎖オリゴ
ヌクレオチドの存在下又は存在しない条件下において複合体の形成を評価した。
(図31B)においては、SSBPと呼ばれる一本鎖結合タンパク質(Shimura,H
.,et al.(1995)Mol.Endocrinol.,9,527-539)と結合するTSHRの非コーディ
ング鎖に由来するオリゴヌクレオチド、及び甲状腺刺激ホルモン受容体サプレッ
サー要素タンパク質−1(TSEP−1)と呼ばれるY−ボックスタンパク質(図
38及び実施例11を参照)と結合するTSHRのコーディング鎖に由来する一本鎖
オリゴヌクレオチドの存在下又は存在しない条件下において複合体の形成を評価
した。これらはそれぞれオリゴSSBP及びオリゴTSEP−1と呼ばれ、それ
らの配列は図31Cに示されている。各々の非標識オリゴヌクレオチドの量がプロ
ーブを上回る倍数で示されている。記述されている方法(Dignam,J.,et al.,(1
983)Nucleic Acids Res.11,1475-1489)の変形により細胞抽出物を作製した。
反応混合物は、10mMトリス−Cl(pH7.9)、1mM MgCl2、1mMジチオトレイ
トール、1mMエチレンジアミン四酢酸及び5%グリセロール中に1.5フェムトモル
の[32P]DNA、3μgの細胞抽出物、及び0.5μgのポリ(dI−dC)を含む
ものであった。非標識二本鎖もしくは一本鎖オリゴヌクレオチドもこの結合反応
物に競合体として添加し、標識DNAを添加する前に抽出物と共に20分間インキ
ュベートした。インキュベーションに続いて、反応混合物を、160V、1×TBE
中、4℃での4もしくは5%未変性ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に処した
。
図32A−32Bは、CRE様配列を含む38bpサイレンサー領域(CRE−1)の
一本鎖成分が、TSHR最小プロモーターのY−ボックスもしくはTSHRサプ
レッサ
ー要素タンパク質−1(TSEP−1)(図32A)及び一本鎖結合タンパク質(SSB
P)(図32B)部位と結合するFRTL−5甲状腺細胞抽出物中のタンパク質と複
合体を形成することを示す。放射標識されたCRE−1と呼ばれる38bpDNA断
片、−127ないし−90bpの一本鎖成分を、5%仔ウシ血清を加えた5H培地中に6
日間維持したFRTL−5細胞に由来する抽出物と共にインキュベートし、図30
A−Cに説明されるように0.5μg/mLポリ(dI−dC)中でEMSAにより複
合体を分析した。図32Aにおいては、複合体の形成を、CRE−1の放射標識コ
ーディング鎖を用いて、プローブの100倍過剰の、TSHRの3つのTSEP−1
結合部位の各々の野性型(WT)及び変異配列を含む非標識一本鎖オリゴヌクレオ
チドの存在下又は存在しない条件下において評価した(実施例11を参照)。競合
体オリゴヌクレオチドの配列及びTSHR5′−隣接領域におけるそれらの位置
はゲルの下に示されており、黒塗りの棒はTSHRにおける各部位によるTSE
P−1結合に重要であるものと思われるCCTCモチーフを表す(実施例11を参
照)。各々の場合において、変異体1(MuT.1)オリゴヌクレオチドがTSE
P−1と結合するのに対して、変異体2(MuT.2)形態は結合活性を失っている
(実施例11を参照)。オリゴTSEP−1部位は、TSHR CREの構造的エン
ハンサー活性を抑制することが知られているTSHRの直列型反復(TR)にお
ける5′の10ヌクレオチドの活性を説明する(Ikuyama,S.,et al.,(1992)Mol. Endocrinol.
6,1701-1715;Shimura,H.,et al.,(1993)J.Biol.Chem.268,241
25-24137)。TSHR5′−隣接領域のTR及びCRE部位が示されている。(図
32B)においては、CRE−1の放射標識非コーディング鎖を用いて、プローブ
の100倍過剰の、TSHR5′−隣接領域の非コーディング鎖上のSSBP結合部
位の野性型(WT)及び変異配列を含む非標識一本鎖オリゴヌクレオチドの存在
下又は存在しない条件下において複合体の形成を評価した。SSBPは、TSH
R5′の非コーディング鎖上のTTF−1部位に隣接する二本鎖の部位に結合し、
示される変異はSSBP結合及び活性を排除するが、TTF−1結合及び活性は
排除しない(Shimura,H.,et al.,(1994)Mol.Endocrinol.8,1049-1069;Ohmor
i,M.,et al.,(1995)Endocrinology,136,269-282;Shimura,H.,et al.,(1995)Mol.Endocrinol.
,9,527.539)。
図33は、FRTL−5細胞のTSH処理がCRE様配列を含むクラスI 38bpサ
イ
レンサー領域へのCREB及びTTF−1の結合を減少させ、TSEP−1及びS
SBPとのタンパク質/DNA複合体を含むC複合体の形成の相対的な増加を引
き起こすことを示す。放射標識されたCRE−1と呼ばれる二本鎖38bpDNA断
片、−127ないし−90bpを、5%仔ウシ血清を加えた5H培地中に6日間維持した
FRTL−5細胞に由来する抽出物と共にインキュベートし、次いで同じ培地又
は1×10-10M TSHを加えた同じ培地でさらに16時間処理した。インキュベー
ションは、CREB−327に対するウサギ抗血清2μlの存在下又は存在しない条
件下において行った。図29、30、31及び32に説明される通りではあるが3μg/m
lポリ(dI−dC)の存在下において、EMSAにより複合体を分析した。A、
B、及びC複合体領域が示されており(図29、30、31及び32)、A領域はCRE
B及びPax−8との、BはTTF−1との、並びにCはTSEP−1及びSSBP
との複合体を含む(図29、30、31及び32)。
図34A−34Bは、放射標識Fr168、−168ないし+1bp(図34A)又は放射標識
Fr127、−127ないし+1bp(図34B)とのTSH誘発タンパク質/DNA複合体
の形成に対するオリゴTIF(Shimura,Y.et al.,(1994)J.Biol.Chem.,269
:31908-3194;図32)、TSHR上のTSEP−1結合部位の1つ、の効果を示す
。FRTL−5細胞を5%仔ウシ血清を含む5H培地中に6日間維持し、その時点
で新鮮な5H培地又は1×10-10M TSHを含む5H培地(6H)を36時間添加した
。細胞抽出物を調製し、MHC5′−隣接領域の32P−放射標識Fr168(図34A
)又はFr127(図34B)と共にインキュベートしてEMSAにより評価した。二
本鎖オリゴTIF、TSHR上のTSEP−1結合部位又はそれらの変異体(図3
2)の存在下又は存在しない条件下においてさらにインキュベーションを行った
。この変異体のうちの1つ、TIF Mut−2は、CCTC結合モチーフにおける
変異生成のためにTSEP−1結合活性を失っている。(図34B)において、我
々はさらに、TTF−1又はPax−8と結合することが可能なTGプロモーターに
由来するオリゴヌクレオチドはTSH誘発複合体(陰性対照)の形成を妨げるこ
とがなく、これに対してCRE−1はTSH誘発複合体の形成を阻害することを
示す。
図35A−35Cは、異種プロモーターに結合する際の、5′隣接配列(A)の1100b
pにわたる一連の欠失変異体又はCREを含む38bpサイレンサー領域のクラスI
遺
伝子プロモーター活性に対する10μmフォルスコリンの効果を示す。(図35A)
においては、FRTL−5細胞を75%集密まで成長させた後、5%仔ウシ血清を加
えた5H培地に6日間維持した。細胞を6H培地に12時間戻し、電気穿孔法により
、ブタクラスIプロモーターp(−1100)CATの5′−隣接領域の1100bpを含む
CATキメラ又はp(−1100)CATの5′−欠失を形質移入した。各々の欠失は
その5′残基の位置で示される。さらに12時間後、10μMフォルスコリンの存在
下又は存在しない条件下において培地を新鮮な5H培地に替えた。36時間後にC
AT活性を検定し、変換率をhGHレベル及びタンパク質に対して標準化した。
結果はpSV0に対して相対的に表す。このpSV0はプロモータがなく培地中にフ
ォルスコリンを含まない親CATベクターであり、その活性は100%に設定され
ている。値は3回の実験の平均±S.E.であり、P<0.05(*)又はP<0.01(* *
)での統計的に有意の増加又は減少が示されている。(図35B)においては、
細胞を同様に扱いはしたが、図35Cに示されるように1もしくは2コピーの38bp
サイレンサーを含むpCATプロモーターを形質移入した。さらに12時間後、10
μMフォルスコリンの存在下又は存在しない条件下において培地を新鮮な5H培
地に替え、CAT活性を36時間後に検定し、上述の通り変換率を標準化して結果
を親pCATプロモーターに対して相対的に表した。このpCATプロモーターは
、インサートを含まず、かつ培地中にフォルスコリンを含まないベクターであり
、その活性は100%に設定されている。値は3回の実験の平均±S.E.であり、
P<0.05(*)でのフォルスコリンの統計的に有意の効果が示されている。図35
Bにおいて、フォルスコリンの作用は1×10-10M TSH及び5mM MMIのいず
れかにより繰り返されている。
図36は、TSH誘発複合体の形成が−90ないし−1bpの要素のDNA配列に依
存することを示す。FRTL−5細胞を5%仔ウシ血清を含む5H培地中に6日間
維持し、その時点で新鮮な5H培地又は1×10-10M TSHを含む5H培地(6H)
を36時間添加した。細胞抽出物を調製し、32P−放射標識されたMHC5′−隣
接領域のFr127と共にインキュベートしてEMSAにより評価した。プローブを
示される倍数上回る濃度での非標識Fr127、Fr89、又はCRE−1(陽性対照)
の存在下又は存在しない条件下において、さらにインキュベーションを行った。
図37A−37Dは、MHC5′−隣接領域の放射標識Fr168とのMMI誘発タン
パク質/DNA複合体の形成を妨げる非標識Fr140の能力(図37A)及び38bp下
流サイレンサーとの複合体形成を妨げるオリゴヌクレオチドE9、上流エンハン
サー(図17A)の特異的インヒビターの能力(図37B)を示す。図37Aにおいて
は、FRTL−5細胞を5%仔ウシ血清を加えた5H培地(TSH非含有)中に7
日間維持し、その時点で5mM MMI(5H MMI+)又は1×10-10M TSHを
加えた5mM MMI(5H MMI/TSH+)を36時間添加した。細胞抽出物を
調製して放射標識されたMHC5′−隣接領域のFr168、−168bpないし転写の開
始点(+1)と共にインキュベートし、非標識競合体が存在しない条件下(第1及
び第3レーン)又は250倍過剰の非標識Fr140の存在下(第2レーン)において
EMSAにより複合体の形成を評価した。矢印は、その形成が細胞のTSH/M
MI処理によって増加するが、オリゴTIF又はCRE−1のイン・ビトロ添加
によって阻害される複合体を示す(図34を参照)。(図37B)においては、5%
仔ウシ血清を加えた5H培地(TSH非含有)中に7日間維持されたFRTL−5
細胞に由来する抽出物を放射標識38bp下流サイレンサー(CRE−1、図37Cに
図示)と共にインキュベートした。インキュベーションは250倍過剰の示される
非標識オリゴヌクレオチドの存在下又は存在しない条件下において行った。a及
びbを示す矢印は、それぞれ、下流サイレンサーとのTTF−1及びTSEP−1
/SSBP複合体を同定する。サイレンサー及びエンハンサーの両者の形成を阻
害するオリゴヌクレオチドS6(図17A)及びエンハンサーのみの形成を阻害す
るE9(図17A)は、CRE−1と同様に、両複合体の形成を低減させる(それぞ
れ、レーン4及び8対3;図37B)。
図38A−38B’は、TSHRの5’デカヌクレオチドのタンデムリピート
(tandem repeat)と反応するサプレッサータンパク質について、
甲状腺細胞発現ライブラリーをスクリーニングすることによって得られたクロー
ン9、31および40から誘導されたTSEP−1ヌクレオチドおよび予想され
るアミノ酸配列を示している。ラットのTSEP−1 cDNAおよびそれぞれ
のクローンの起源を図38Aに示しており;四角囲いはコード領域を示す。TS
EP−1のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を、図38Bに示す。ヌクレオチ
ド配列は、TSEP−1タンパク質の開始コドンから番号付けされている。実線
の下線は、6つの可能な核局在化シグナル(nuclear localiza
tion signal)を示す。ラットのTSHR最小プロモーター内の5’
−デカヌクレオチドのコード配列と結合でき、さらにそれと結合することによっ
てサプレッサーとして機能するであろう、タンパク質をコードするcDNA(I
kuyama,S.,ら、1992、MolEndocrinol.6,170
1−1715;Shimura,H.ら、1993、J.Biol.Chem.
,268,24125−24137)を単離するために、サウスウエスタン法(
Vinson,C.R.ら、1988、Genes Dev.,2,801−8
06)およびTR2、ssTR2(+)のコード鎖を示す放射標識した合成オリ
ゴヌクレオチド(Shimura,H.ら、1993、J.Biol.Chem
.,268,2412−24137)を用いて、ラットのFRTL−5細胞発現
ライブラリーをスクリーニングした(Akamizu,T.ら、1990.Pr
oc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,87,5677−568
1)。TR2は、ラットのTSHRプロモーターの−177から−13bpに及
び、5’−及びび3’−の両側にタンデムリピート(TR)のデカヌクレオチド
を含み、さらにTRの5’側のCTに富むドメイン内にまでおよぶ(Shimu
ra,H.ら、1993、J.Biol.Chem.,268,24125−2
4137)。タンパク質は、TSHRの遺伝子発現においてそのタンパク質が持
つ機能的役割に従って、TSHRサプレッサーエレメント−結合タンパク質−1
またはTSEP−1と命名された(Shimura,H.ら、1993、J.B
iol.Chem.,263:24125−24137)。オーバーラップする
配列を持つ3
つのクローンを、TSEP−1の候補として同定した。クローン40(1405
bp)は、322アミノ酸からなるオープンリーディングフレームを持つタンパ
ク質をコードしていた(図38A)。クローン9(864bp)は、117bp
の5’−フランキング領域、ATG開始コドン、およびクローン40(図38A
)に示したオープンリーディングフレームのN−末端部分を含んでいた。クロー
ン31(1390bp)は、全長に近いオープンリーディングフレームおよびポ
リ(A)シグナルを含むクローン40の3’−非コード領域を含んでいた(図3
8A)。cDNAをクローン9から誘導し、β−ガラクトシダーゼ遺伝子と融合
させ、さらに、IPTGによって形質転換された細菌宿主内に導入した。得られ
たcDNAは、TR2のコード鎖[ssTR2(+)]と非常に強くハイブリダ
イズしたが、非コード鎖である[ssTR2(−)]または二本鎖のTR2とは
非常に弱くしかハイブリダイズしなかった。このcDNAは、−153から−1
14におよび、TRの3’−デカヌクレオチド+CRE様配列(−139から−
132bp)を包含する、一本鎖または二本鎖のTR1CREとはハイブリダイ
ズしなかった(Ikuyama,S.ら、1992、Mol.Endocrin
ol.,6,1701−1715;Shimura,H.ら、1993、J.B
iol.Chem.,268,24125−24137)。クローン化されたc
DNAが、甲状腺レセプター(TR)の5’デカヌクレオチドのコード鎖と相互
作用するタンパク質をコードすることは、精製された組換えタンパク質を用いた
実験により確認される。このcDNAがサプレッサーであることは、トランスフ
ェクション実験によって立証される。
図39A−39Cは、ラットのY−boxタンパク質をコードするpRcCM
V−TSEP−1と共にTRF甲状腺細胞内にコトランスフェクション(cot
ransfection)した後の、TRのそれぞれのデカヌクレオチドの突然
変異によるCAT活性への影響を示している。TRのデカヌクレオチドの突然変
異は、野生型のプロモーター配列ならびにそれぞれのデカヌクレオチドおよびT
SHRのCRE様部位の位置と同様に、図39Aに示されている。図39Bは、
代表的実験でのラットのデータを示し;図39Cは、CAT活性がp8CATプ
ロモーター−レスコントロール(less control)の活性と比例する
ことを示し、その活性は、任意に一体化される。すべての細胞は、pSVGHと
共にコトランスフェクトし、転化速度(conversion rate)は成
長ホルモン(GH)レベルで標準化した。プラスpRcCMV−TSEP−1(
黒色棒)またはその対照、TSEP−1発現ベクターを構築するために用いられ
るpRc/CMV(白色棒)、を示すTSHRプロモーター−CATキメラでト
ランスフェクションした後48時間に、細胞溶菌液を調製した。図39Cの活性
は、別々に行った4回の実験から得られた平均値±S.E.である。Y−box
(TSEP−1)誘導による有意のCAT活性の減少(p<0.01)を、2つ
星で示す。5’デカヌクレオチドの変異は、Mt−1またはMt−2であり、結
果としてTSEP−1によるTSHRの抑制が失われる。
図40A−A’−40D−D’は、FRTL−5またはFRT細胞内で、下流
(S−box)または上流(TIF−関連)Y−box結合部位を含むTSHR
プロモーター−CATキメラの発現を抑制するpRcCMV−TSEP−1の能
力を示す。図40Aでは、TSHRプロモーターキメラ、pTRCAT5’−2
20(Shimura,Y.ら、1994、J.Biol.Chem.,269
,31908−31914)を、pRcCMV−TSEP−1(白色棒)または
その対照プラスミドであるpRc/CMVのいずれかと共にFRTL−5細胞内
にコトランスフェクトした。すべての細胞は、プラスミドpSVGHと共にコト
ランスフェクトされ;細胞溶解液をトランスフェクション後72時間で調製し、
そして転化速度をGHレベルで標準化した。パネル上部では、CAT活性がp8
CATプロモーターの活性と比例することを示し(レスコントロール)、その活
性は任意に一体化される;下部では、CAT活性を、TSEP−1ベクター/対
照ベクター[TSEP(+)/TSEP(−)]の存在下での活性比率として示
している。p8CAT対照と比較した場合のY−box(TSEP−1)の誘導
による有意のCAT活性の減少を一つ星(p<0.05)で示す。図40Bおよ
び図40Cでは、コトランスフェクションをFRTL−5(図40B)またはR
FT細胞(図40C)に行った場合の、pTRCAT5’−177、5’−14
6、5’−131、5’−90またはp8CAT対照のCAT活性を、pRcC
MV−TSEP−1またはそのpRc/CMV対照[TSEP(+)/TSEP
(−)
]と共にコトランスフェクトされた細胞内での活性比率として示している。すべ
ての細胞は、プラスミドpSVGHと共にコトランスフェクションした。細胞溶
解液は、FRT細胞の場合には、トランスフェクション後48時間、FRTL−
5細胞ではトランスフェクション後72時間に調製され;転化速度をGHレベル
に標準化した。p8CAT対照と比較した場合の、TSEP−1誘導による有意
のCAT活性の減少を、一つ星で示す(p<0.05)。図40Dでは、Pro
megaからのpCAT−プロモータープラスミドへのTSHRインスリン応答
エレメントの配列、−220から−188bp(Shimuraa,Y.ら、1
994、J.Biol.Chem.,269,31908−31914)、を含
むオリゴヌクレオチドTIFを連結することによって、キメラを作り出した。構
築物は、インスリン応答因子配列の方向および数を示す矢印および(+)印で、
図式に示す。TIFキメラ又はpCAT対照は、FRTL−5細胞内にpRcC
MV−TSEP−1又はそのpRc/CMV対照と共にコトランスフェクション
し、そしてCAT活性を上記の方法に従って分析した。図40D底部では、Y−
box(TSEP−1)活性[TSEP−1(+)]は、pRc/CMV対照ト
ランスフェクション[TSEP−1(−)]の活性に比例して発現する。pRc
CMV−TSEP−1によって影響を受ける減少は、有意である(p<0.02
)。CAT比活性を示す全実験で活性は、別々に行われた3回の実験から得られ
た平均値±S.E.で示される。
図41A−41Dは、MHC クラスIプロモーターの下流サイレンサー(図
41A)、インターフェロン応答エレメントとの関係(図41A)、その役割な
らびに下流サイレンサー活性のモジュレーターとしての転写因子、TTF−1お
よびTSEP−1の作用との関係におけるTSHおよび/またはMMIによる抑
制(図41B−41D)を示す。CREを含む下流サイレンサーを図41Aに示
す。サイレンサーとしてのその活性は、図26A−Bに示すように、CREが変
異または欠失する場合には失われる。図26および27に示すように、EMSA
は、ラットのFRTL−5細胞のTSHおよび/またはMMI処理が、図41B
に示すようなクラスIプロモーターの168bpのプローブ、−168から+1
bp、との特異的なDNA複合体(矢印)の形成を増加させることを示す。複合
体の形成は、インビトロでの結合反応にTSHRインスリン応答要素、オリゴT
IF(Shimura,Y.ら、1994、J.BiolChem.,269,
31908−31914)を含む(列5)ことによって、妨げられるが、チログ
ロブリンインスリン応答要素、オリゴKを含むことによっては妨げられない(図
41Bに示す;図27Aも参照のこと)。複合体は、CREの非回文式変異(n
onpalindromic mutation)、NP CREを有する16
8bpのプローブを用いては、形成されない(図41B、列6;図27B)。下
流サイレンサーを含む127bpのクラスIプロモーター−CATキメラのプロ
モーター活性は、MMIによって減少する(図41C)。MMIの影響は、オリ
ゴTIFがp(−127)CATキメラと共にコトランスフェクトされた場合に
は失われるが、オリゴKがコトランスフェクトされた場合には失われない(図4
1Cに示す;図19Bおよび28Bも参照のこと)。TTF−1をコードするc
DNAを含むプラスミドと共にコトランスフェクションすると、活性が増加する
が、TSEP−1をコードするcDNAを持つプラスミドと共にコトランスフェ
クションすると、プロモーター活性が減少する(図41C)。サイレンサーは、
図41Dに要約したように、図29、30、31および33での複合体形成によ
って証明されるように、多数のタンパク質と相互作用し;これらのそれぞれは、
下流サイレンサーと結合するために完全なCREを必要とする(図41D)。こ
れらは、純粋タンパク質との直接結合反応による、またはそれらを結合すること
が知られているオリゴヌクレオチド:TTF−1、CREB、Pax−8、SS
BP、およびTSEP−1(Y−boxタンパク質):との競合による、抗体シ
フト分析を用いて同定される。これらの内の二つ、TTF−1およびTSEP−
1、との複合体形成は、それぞれ、TSHによって増加、またはTSHによって
減少する(図33)。このように、TTF−1複合体形成の減少により、TSH
は、TTF−1のエンハンサー作用を減少させることによクラス1の発現を減少
させるであろう(図41C)。TSEP−1複合体形成の増加により、TSHは
、そのサプレッサー機能を増加させ(図41D)、そしてクラスIの発現を減少
させるであろう。MMIは、TSHと同様に、これらの転写因子のそれぞれに影
響を与える。発明の詳細な説明
本発明をより完璧に理解する目的のために、以下の定義をここに記載する。哺
乳動物とは、限定するわけではないが、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラッ
ト、ハムスター、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジおよびヤギを含む。薬剤とは、限定
するわけではないが、MMI、MMI誘導体、CBZ、PTU、チオウレイレン
(thioureylene)、チオンおよびチオンアミドを含む。その他の候
補薬剤には、アミノチアゾール、1,1,3−トリシアノ−2−アミノ−1−プ
ロペン、フェナゾン、チオウレア、チオウレア誘導体、ゴイトリン(goitr
in)誘導体、チオウラシル誘導体、スルホンアミド、アニリン誘導体、過塩素
酸誘導体、ヨウ化物、チオシアネート、カルブタミド、パラ−アミノ安息香酸、
パラ−アミノサリチル酸、アムフェノン(amphenone)B、レゾルシノ
ール、フロログルシノール、および2−4−ジヒドロ安息香酸が含まれ、それら
のすべてがゴイトリノーゲン活性を持ち、甲状腺機能を抑制することは注目に値
する。当業者らは、実施例2から11に記載のインビボおよびインビトロでのア
ッセイで、それ以外の薬剤が開発されることもまた、理解するであろう。これら
の薬剤は、その起源が天然のものであっても、合成または組み換えによるもので
あっても良い。クラス1 MHC分子の発現を抑制する能力を持つ薬剤とは、薬
剤で処理していない哺乳動物細胞と比較して、薬剤で処理した哺乳動物細胞上の
MHC クラスI細胞表面分子を減少させるまたは排除する能力を持つ薬剤を意
味する。主要組織適合複合体(MHC)とは、ヒト白血球抗原(HLA)を含む
異なる種に記載された組織適合性抗原システムを包含することを意味する一般名
称である。組織とは、限定するわけではないが、単一細胞、細胞、器官全体およ
びその部分を含む。移植拒絶反応とは、限定するわけではないが、対宿主性移植
片病(graft versus host disease)および対移植片
性宿主病(host versus graft disease)を含む。自
己免疫疾患は、これらに限定されるわけではないが、自己免疫機能不全および自
己免疫障害を含む。
機能的均等物とは、均等である物質として、実質的に同一の活性を持つ任意の
物質を意味する。例として、物質には、限定するつもりはないが、核酸配列、遺
伝子、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質が含まれて良い。
本発明は、自己免疫疾患を治療する方法、および移植レシピエント内での組織
の拒絶反応を予防するまたは治療する方法を提供する。さらに具体的には、本発
明は、クラスI MHC分子の発現を制御する能力を持つ一つの薬剤または複数
の薬剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与する方法に関する。
この方法で治療できる自己免疫疾患の例としては、これらに限定されるわけで
はないが、慢性関節リューマチ、乾癬、若年型糖尿病、原発性特発性粘液水腫(
primary idiopathic myxedema)、全身性エリテマ
トーデス、ド・ケルヴァン甲状腺炎、甲状腺炎、自己免疫性ぜん息、重症筋無力
症、強皮症、慢性肝炎、アディソン病、性機能低下症、悪性貧血、白斑、円形脱
毛症、異所性皮膚炎(ecopic dermatitis)、コエリアック病
(Coeliac disease)、自己免疫性腸炎症候群(autoimm
une enteropathy syndrome)、特発性トロンボシチン
性紫斑病(idiopathic thrombocytic purpura
)、後天性脾萎縮症(acquired splenic atrophy)、
特発性尿崩症、抗精子抗体による不妊症、突然の聴力損失、感覚神経性聴力損失
、シェーグレン症候群、筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症のような自己免疫性脱
髄疾患、横断骨髄炎、失調性硬化症(ataxic sclerosis)、天
疱瘡、進行性全身性硬化症、皮膚筋炎、結節性多発性動脈炎、慢性肝炎、溶血性
貧血、進行性全身性硬化症、糸球体腎炎および特発性顔面神経麻痺が含まれる。
この方法によって自己免疫疾患を治療するための望ましい薬剤は、MMI、MM
I誘導体、CBZ、およびPTUである。
望ましい実施態様では、自己免疫疾患に罹患した哺乳動物、望ましくはヒトに
、クラスI MHC抑制薬剤、MMI、を投与する。治療に適当なMMI量は、
一日当たり約0.01mgから約500mgの範囲である。望ましい投与量は、
一日当たり約0.1mgから約100mgであり、より望ましい投与量は、一日
当たり約2.5−50mgである。治療に適当なCBZ量は、MMIと同じ範囲
である。投薬は、毎日、8時間間隔で、または朝食、昼食およびタ食と共に、お
お
よそ等量に分割した量で投与することができる。大人での望ましい維持投薬量は
、最大で1年間、一日当たり5−15mgである。治療は、最大で1年間、例え
ば一日当たり約2.5−30mg、続けることができる。別の方法として、治療
は、例えば、開始時には一日当たり50−100mg、その後、個体が受容した
そのような治療での甲状腺ホルモン[チロキシン(T4)またはトリヨウ素チロ
ニン(T3)]または甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルに応じて、4から
10週間内、一日当たり5−10mgに減らして、続けることができる。代わり
に、PTUを、自己免疫疾患に罹患した哺乳動物、望ましくはヒトに投与する。
治療に適当なPTU量は、一日当たり0.1mg−2000mgの範囲でもよい
。望ましいPTU投与量は、MMIに関して上に記載した投与量の範囲より10
倍高い範囲の内である。望ましいPTUの維持投与量は、子供では、0.4mg
/kgであり、最初は8時間間隔で毎日3回に分けて投与され、その後は、望ま
しく維持するために初期投与の半量である。当業者は、自己免疫疾患に罹患した
哺乳動物に投与する投与量は、哺乳動物の年齢、病気の重さ、および治療経過に
応じて変えることができることを理解している。当業者らは、罹患した哺乳動物
に適当な投与量を決定する数値を求めるための臨床パラメータを知るであろう。
その他の望ましい実施態様では、全身性エリテマトーデス(SLE)に罹患し
た、哺乳動物、望ましくはヒトに、MMIを投与する。治療に望ましい量は、約
2.5−50mg/日の範囲であり、6−12月以上投与されるが、さらに、投
与期間と同期間投与を中止する不連続治療で、5年以上の期間または必要な限り
、投与することができる。別の方法として、SLEの最近の治療法、ハイドロコ
ルチゾンおよび細胞毒性薬剤と共に、MMIを投与し、疾病を抑えることもでき
る。乳癌を持つSLE患者は、継続中のSLE治療によってすでに免疫抑制され
ているので、放射能治療で治療することは容易にはできない。また、SLEは、
放射線合併症に対する異常な感受性を伴い、それ故、放射能治療は病気を悪化さ
せるであろう。乳癌を持つSLE個体の治療にMMIを用いると、患者の病状の
悪化または放射線合併症を伴わずに、それぞれの患者に放射線治療を行うことが
可能になるであろうと、期待される。
その他の実施態様では、クラスI MHC抑制薬剤は、動物の血清中の甲状腺
自己抗体の発生に関連する自己免疫疾患に罹患した哺乳動物、望ましくはヒトに
投与される。
その他の実施態様では、クラスI MHC抑制薬剤は、レセプター自己抗体の
発生を特徴とする自己免疫疾患に罹患した哺乳動物、望ましくはヒトに投与され
る。例えば、自己免疫性ぜん息は、β−アドレナリンレセプター自己抗体と関連
する。クラスI MHC抑制剤、望ましくはMMI、での治療は、病気を緩和す
るであろう。そのような自己免疫病のその他の例として、重症筋無力症がある。
重症筋無力症は、アセチルコリンレセプター自己抗体と関連する。重症筋無力症
に罹患した個人は、甲状腺自己免疫症の頻度がより高い。TSHとアセチルコリ
ンのレセプターの間の構造的および機能的関係故に、重症筋無力症に罹患した動
物、望ましくはヒトのクラスI MHC抑制剤での治療は、病気の抑制を助ける
であろう。
哺乳動物の種の全MHC座は、多数の遺伝子を含み、多型性が高い。ヒトのH
LA複合体には、クラスI HLA分子をコードするHLA−A、HLA−Bお
よびHLA−C遺伝子、ならびにクラス11分子をコードするHLA−DR、HL
A−DQおよびHLA−DP遺伝子を含む。異なるHLA分子は、別々の抗原と
結合する。特定のHLA抗原は、特定の病気にかかりやすい体質と関連していた
。例えば、強直性脊椎炎はHLA−B27と関連し、慢性関節リウマチはHLA
−DR4と、そしてインスリン−依存性糖尿病はHLA−DR3およびHLA−
DR4と関連する(”Basic and Clinical Immunol
ogy”、1991、Stites,D.P.およびTerr,A.I.編、A
ppelton and Lange、Norwald,Connecticu
t/San Mateo,California)。インスリン−依存性糖尿病
は、HLA−DR2とは関連しない(”Basic and Clinical
Immunology”、1991、Stites,D.P.およびTerr
,A.I.編、Appelton and Lange、Norwald,Co
nnecticut/San Mateo,California)が、病気の
発現は、HLA複合遺伝子に近いその染色体塩基ゆえに、インスリン応答要素−
A結合タンパク質(IRE−ABP)に連結している。
HLA−B35(−)、クラスIハプロタイプ、の個人は、強皮症を発症する
危険性が低い。強皮症を発症するHLA−B35(+)の個人の内、80%は、
甲状腺自己免疫病を発症する、および/または甲状腺抗体を発生するであろう。
さらに、これらの個人は、急速に病気の進行するヒト免疫不全ウイルス(HIV
)感染症に特に罹りやすい(Kaplan,C.ら、1990、Hum.Her
ed.,40:290−298;Cruse,J.M.ら、1991、Path
ology,59:324−328;Itescu,S.ら、1991、J.o
f Acquired Immune Deficiency Syndrom
e,5:37−45;Scorza,R.ら、1988、Human Immu
nology,22:73−79)。クラスI MHC抑制剤は、強皮症症候群
を緩和するのみならず、HIVの進行をもまた緩和し、これらの個人のより良い
予後を可能にするはずである。望ましい実施態様では、HIVに罹患した個人を
治療するために用いられるクラスI MHC抑制剤は、MMIである。治療に望
ましい量は、約5−50mg/日の範囲である。
その他の実施態様では、MMIは、自己免疫疾患の治療の補助療法として、自
己免疫疾患に罹患した哺乳動物、望ましくはヒトに、投与される。例えば、ド・
ケルヴァン甲状腺炎は、最近では、ハイドロコルチゾンまたはサリチル酸塩で治
療され;ハイドロコルチゾンまたはサリチル酸塩にMMIを加えることは、病気
をより効率的に抑制するであろうと予想される。
その他の実施態様では、MMIおよび甲状腺ホルモンを、そのような治療を必
要とする哺乳動物に共に投与し、そうすることによって、MMIによる甲状腺ホ
ルモン生成の抑制を補う。甲状腺ホルモンチロキシン(T4)またはトリヨード
チロニン(T3)をMMIと共に投与することができる;チロキシンをMMIと
共に投与することが望ましい。望ましいチロキシン投与量は約0.01から0.
5mg/日、より望ましい投与量は約0.1から0.3mg/日である。
また、本発明の方法は、レシピエントの哺乳動物、望ましくはヒト内の移植組
織の拒絶反応を予防または治療するためにも適当である。移植することのできる
組織の例としては、限定するつもりはないが、心臓、肺、腎臓、骨髄、皮膚、膵
臓ランゲルハンス島細胞、甲状腺、肝臓および全内分泌組織、神経組織、筋肉、
繊維芽細胞、脂肪細胞、および造血肝細胞が含まれる。
望まし実施態様では、膵臓ランゲルハンス島細胞は、ドナーから単離され、そ
して糖尿病に罹患したレシピエント内に移植する前に、MMIで処理される。糖
尿病は、自己免疫疾患の結果として、ランゲルハンス島細胞の損失を原因として
起こる。ランゲルハンス島細胞の移植は、そのような欠失を修正するであろう。
ランゲルハンス島細胞は、約0.1から約50mMのMMIで処理することがで
きる。ランゲルハンス島細胞は、ランゲルハンス島細胞上のクラスI MHC分
子の発現を抑制するために、24から72時間または必要に応じてそれより長く
、水溶液の形の約0.1から約10mMのMMIで処理することが望ましい。移
植後、レシピエントを、MMI、またはMMIおよびハイドロコルチゾン、また
はMMIおよび免疫抑制剤で、さらに治療することができる。
ある組織の癌は、その組織および関連する癌の全体を破壊することによって治
療することができる。例えば、甲状腺癌を放射性ヨウ素で処理すると、正常組織
と病気組織の両方が破壊され、病気の進行が停止する。現在では、正常なヒトの
甲状腺細胞の連続培養が、入手できる。本発明のその他の実施態様では、これら
のヒト細胞を、MMIで処理すると、クラスI MHCの発現を抑制することが
でき、甲状腺細胞を必要とするレシピエントに移植することができた。この技術
は、細胞を培養液中で維持し、MMIで処理し、さらにレシピエント内に移植す
ることができるため、移植用のヒトのドナー細胞を要求に応じて提供するであろ
う。さらにもう一つの実施態様では、Sox−4タンパク質あるいはそれと機能
的に均等なタンパク質、またはY−Boxタンパク質あるいはそれと機能的に均
等なタンパク質の核酸配列は、限定するわけではないが、マイクロインジェクシ
ョン、エレクトロポレーション、ウイルストランスダクション、リポフェクショ
ン、リン酸カルシウム、ジーンボンバードメント(gene bombardm
ent)を仲介する粒子、Sox−4あるいはY−boxタンパク質あるいはそ
れと機能的に均等なタンパク質をコードする核酸配列のジーントランスファーま
たはダイレクトインジェクション、または当業者に既知の任意のその他の方法を
含む、慣用的方法論によって、ヒト細胞内に導入することができる。Soc−4
またはY−boxタンパク質またはそれと機能的に均等なタンパク質を発現させ
るため
に用いることのできるベクターの例としては、これらに限定されるわけではない
が、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、鶏痘ウイルスベクタ
ー、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはプラスミドが含まれる。その
ようなベクターは、当業者に既知の組織特異的プロモーターまたは遍在(ubi
quitous)プロモーターを持つであろう。Sox−4またはY−boxタ
ンパク質またはそれと均等なタンパク質を発現する哺乳動物細胞は、クラスI分
子の発現を抑制し、それによって移植拒絶反応を予防または阻害するであろう。
さらに、MMIによるクラスI MHCの抑制は、レシピエントの免疫系統がこ
れらの細胞を「非自己(nonself)」と認識する可能性を減少させるであ
ろうため、これらのヒトの細胞は、非共通遺伝子系(noncogeneic)
の個体からのものであっても良い。
本発明のその他の実施態様では、クラスI MHCの発現を抑制するために、
器官全体を、MMIのかん流によって、前処理することができる。低分子量の薬
剤ゆえに、MMIは、器官、十字血管関門に容易にかん流し、それ故、器官内の
大多数またはすべての細胞上に作用するであろう。このことから、移植における
ドナーとレシピエントの正確な適合必要性が減少するか、または排除されるであ
ろう。
その他の実施態様では、移植後、個体をMMIおよびヒドロコルチゾンで処理
する。移植後の個体の治療として、最近では、ヒドロコルチゾンを用いるか、ま
たは他の免疫抑制剤と共にヒドロコルチゾンを用いる。ヒドロコルチゾンおよび
その他のホルモンは、クラスI MHCレベルへの影響において、MMIと共に
付加的である。従って、MMIでの前処理、さらにMMIおよびヒドロコルチゾ
ン、またはMMI、ヒドロコルチゾンおよびその他の免疫抑制剤での移植後の処
理は、自己寛容(self tolerance)を強化するであろうと予想さ
れる。
本発明のその他の実施態様では、MMIは、組み換え遺伝子を含む細胞を前処
理するために用いられ、そうすることによって、遺伝子治療を必要とする哺乳動
物、望ましくはヒトに、細胞を移植することができる。個体への遺伝子治療を提
供するために、所望のタンパク質をコードする遺伝子配列をベクター内に挿入し
、
そして宿主細胞内に導入する。遺伝子治療に適するであろう病気の例としては、
これらに限定されるわけではないが、鎌状赤血球貧血、膵嚢胞性線維症、β−サ
ラセミア、血友病AおよびB、グリコシルトランスフェラーゼ酵素欠損症、およ
び癌が含まれる。遺伝子治療に用いることのできるベクターの例としては、これ
らに限定されるわけではないが、欠陥レトルウイルス、アデノウイルス、または
その他のウイルスベクターが含まれる(Mulligan,R.C.、1993
、Science,260:926−932)。遺伝子を運搬するベクターを細
胞内に導入することのできる手段としては、これらに限定されるわけではないが
、エレクロトポレーション、トランスダクション、あるいはDEAE−デキスト
ラン、リポフェクション、リン酸カルシウムを用いたトランスフェクションまた
は当業者に既知のその他の方法が含まれる(Sambrock,J.ら、198
9、”Molecular Cloning,A Laboratory Ma
nual”,Cold Spring Harbor Press,Plain
view,New York)。
遺伝子を運搬するベクターを導入することのできる細胞の例としては、限定す
るわけではないが、ヒト膵臓ランゲルハンス島あるいは甲状腺の細胞のようなヒ
トの正常細胞の連続培養物、またはラットFRTL−5細胞のような哺乳動物の
正常細胞の連続培養が含まれる。望ましい実施態様では、甲状腺特異的プロモー
ター下に組換え遺伝子を含むFRTL−5ラット甲状腺細胞を、MMIで処理し
、クラスI MHCを抑制する。処理した細胞は、哺乳動物、望ましくはヒト内
に移植され、そして病気を抑制する能力を持つ因子を分泌する。そのような細胞
は、延長培養内で、機能増殖状態(functioning growing
state)に維持することができ、さらに、MMIまたはホルモンを補足した
MMIで処理すると、クラスIを抑制することができる。様々な組み換え遺伝子
を持つ細胞は、要求に応じて容易に入手することができた。自己由来細胞の必要
性の除去は、移植に大きな進歩を許すであろう。
本発明のその他の実施態様では、クラスI MHCの発現を抑制するための薬
剤候補の可能性を評価するために、インビボでのアッセイが用いられる。アッセ
イの第一段階では、特定の自己免疫疾患の症状または信号をクラスI MHC−
欠失マウス内に誘発させることができるか否かを決定することによって、その特
定の自己免疫疾患でのクラスI MHCの役割が、評価される。クラスI MH
C欠失マウスで自己免疫疾患の誘発能力が欠如していることは、この病気におけ
るクラスI MHCの役割を示唆しているであろう。用いることのできるクラス
I MHC欠失マウスの例としては、これらに限定されるわけではないが、同族
組換えによって作り出されるクラスI MHC−欠失マウス、トランス遺伝子の
挿入によって作り出されたクラスI MHC−欠失マウス、および染色体の欠損
によって作り出されたクラスI MHC欠失マウス、が含まれる。クラスI M
HC欠失マウスもまた、市販されている。これらのマウスに自己免疫疾患を再生
成させることのできる方法としては、これらに限定されるわけではないが、ウイ
ルス感染、抗体による誘発、および化学薬品またはその他の環境作因による誘発
、が含まれる。別の方法として、クラスI欠失動物を自発性自己免疫の動物モデ
ルとつがわせ、その結果得られた子孫を、自己免疫疾患について分析することも
できる。
望ましい実施態様では、クラスI MHC欠失マウスは、16/6Idと命名
された主要イディオタイプを持つヒトのモノクローナル抗DNA抗体で、免疫化
される(Shoenfeld,Y.ら、1983、J.Exp.Med.,15
8:718−730)。この実施態様の次の段階では、自己免疫病の動物モデル
をクラスI MHC抑制剤に露出する。自己免疫動物モデルの例としては、これ
らに限定されるわけではないが、トランスジェニック動物、同族組み換えまたは
染色体欠損により作り出された動物、自然発生(naturally occu
rring)または自発性(spontaneously occurring
)の疾病を持つ動物が含まれる。
望ましい実施態様では、SLEを、実験的にマウス内で誘発させる。SLEを
実験的に誘発させる方法の例としては、これらに限定するつもりはないが、モノ
クローナル16/6イディオタイプ(Shoenfeld,Y.ら、1983)
、モノクローナル抗16/6Id抗体(Mendlovic,S.ら、1989
、Eur.J.Immun.,19:729−734)、および16/6イディ
オタイプに特異的なT細胞系(Fricke,H.ら、1991、Immuno
l
ogy,73:421−427)での免疫化が含まれる。用いることのできるマ
ウス系としては、これらに限定するつもりはないが、Balb、129、C3H
.SW、SJL、AKR、およびC3HSWが含まれる。望ましい方法は、ヒト
抗DNAモノクローナル抗体である16/6Id抗体でのマウスの免疫化である
(Shoenfeld,Y.ら、1983)。次に、免疫化された動物を、薬剤
、望ましくはMMI類似体に露出し、そして病気の症状の緩和について評価する
。16/6Id処理マウスで評価されるパラメーターとしては、これらに限定さ
れるわけではないが、白血球減少、蛋白尿、末梢血液リンパ球(PBL)上の細
胞表面マーカーのレベル、および腎臓内の免疫複合体沈着が含まれる。これらの
パラメーターを評価する方法の例としては、これらに限定されるわけではないが
、血液細胞、血清、組織生検または抽出物の分析、尿分析、ならびに抗体生成お
よび免疫活性化細胞の分析が含まれる。当業者らは、これらのパラメーターを評
価するために、慣用の方法を用いることができることを理解するであろう。これ
らのパラメーターの評価に用いることのできる慣用法の例としては、これらに限
定されるわけではないが、細胞数計測、ELISA(Heineman,W.R
.ら、1987、Methods of Biochemical Analy
ses,32:345−393)、タンパク質定量アッセイ(Ausebel,
J.ら、1987、”Current Protocols in Molec
ular Biology”,John Wiley and Sons,Ne
w York)、免疫組織学(”Basic and Clinical Im
munology”、1991、Stites,A.P.およびTerr,A.
I.編、Appelton and Lange,Norwalk,Conne
cticut San Mateo,California)、およびリンパ球
上の細胞表面マーカーの分析(”Basic and Clinical Im
munology”、1991、Stites,D.P.およびTerr,A.
I.編、Appelton and Lange,Norwalk,Conne
cticut/San Mateo,California)が含まれる。
本発明のその他の実施態様では、クラスI MHC分子の発現を抑制する能力
を持つ薬剤を評価および開発するために、もう一つのインビボでのアッセイが用
いられる。このインビボでの方法では、動物に移植される組織は、クラスI M
HC抑制剤で前処理される。移植することのできる組織の例としては、これらに
限定されるわけではないが、甲状腺細胞(thyrocyte)、肝細胞、神経
細胞、筋肉、繊維芽細胞、脂肪細胞、およびランゲルハンス島細胞、内分泌腺細
胞および組織、甲状腺、肝臓、皮膚、骨髄、腎臓、肺ならびに心臓が含まれる。
望ましい実施態様では、ラットの甲状腺FRTL−5細胞は、ラットまたはマウ
スに移植する前に、クラスI MHC抑制剤で前処理される。組織を移植するこ
とができる手段の例としては、これらに限定されるわけではないが、一般的外科
手術法、静脈注射および皮下注射が含まれる。望ましい実施態様では、ラットの
甲状腺FRTL−5細胞は、ラットまたはマウスの背中下方に皮下注射される。
前処理した移植組織は、レシピエントの動物内に、30−100日の間の期間、
留まっている。移植した組織の状態は、移植後60日に評価するのが望ましい。
当業者は、移植した組織を評価するために用いうる慣用法を理解しているであろ
う。望ましい実施態様では、前処理した移植FRTL−5細胞を注射した部位を
、レシピエントの動物から切除する。切除した組織は、FRTL−5細胞の存在
について、顕微鏡で評価する。さらに、FRTL−5細胞は、正常なFRTL−
5機能の指標となるcAMPレベルの増加およびヨウ素摂取の増加の原因となる
TSHの能力について評価される。移植前に候補薬剤で処理された、切除組織内
の、およびTSHが仲介するcAMPレベルまたはヨウ素摂取で増加を示す、F
RTL−5細胞が存在することは、移植拒絶反応の予防または治療に関する候補
薬剤の有用性を予言する。
本発明のその他の実施態様では、クラスI MHC分子の発現を抑制する能力
を持つ候補薬剤を評価し開発するために、インビトロでのアッセイが用いられる
。本発明の一つのインビトロでのアッセイは、候補薬剤で処理したまたは処理し
なかった細胞からの哺乳動物細胞抽出物中の一つのタンパク質または複数のタン
パク質と、クラスI MHCの核酸調節配列またはそれと機能的に均等な配列と
の、結合の変化を検出することによって、クラスI MHC分子の発現を抑制す
る候補薬剤の能力を評価する方法に関する。候補薬剤で処理した哺乳動物細胞か
らの抽出物を、クラスI MHCの核酸調節配列と合わせ、そして、前記の配列
と抽
出物からの複数のタンパク質または一つのタンパク質との間の複合体の存在を検
出する。哺乳動物細胞のタンパク質または複数のタンパク質と前記の核酸配列と
の結合の変化は、未処理細胞からの抽出物中で、タンパク質または複数のタンパ
ク質と同一のクラスI MHCの核酸調節配列との結合と比較することによって
、評価することができる。調節核酸配列とは、クラスI MHC遺伝子またはそ
れと機能的に均等な遺伝子の転写を調節する配列を包含するつもりである。変化
とは、処理抽出物対未処理抽出物中で検出された複合体シグナルの強化あるいは
出現、または、処理抽出物対未処理抽出物中で検出された複合体シグナルの減少
または欠如を意味する。タンパク質抽出物は、核抽出物かまたは細胞抽出物のい
ずれであっても良いが;細胞抽出物が望ましい。哺乳動物細胞からの細胞タンパ
ク質または核タンパク質の抽出物は、慣用の方法によってできる(Ausueb
el,J.ら、1987、”Current Protocols in Mo
lecular Biology”,John Wiley and Sons
,New York)。
このインビトロでのアッセイに用いることのできる核酸配列の例としては、こ
れらに限定されるわけではないが、クラスI MHCプロモーターの調節配列ま
たはそれと機能的に均等な配列を含む核酸フラグメントが含まれる。例として、
そのようなフラグメントは、一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドを含んで
いて良い。上流および下流サイレンサーのようなPD1サイレンサーエレメント
の調節領域をコードする配列を、この方法に用いることができる。PD1プロモ
ーターでは、上流サイレンサーは、PD1開始部位の5’側、約−724から約
−697塩基対に位置し、下流サイレンサーは約−127から約−90塩基対に
位置する。PD1プロモーターの2つのサイレンサー配列と機能的に均等な核酸
配列もまた、本発明に包含するつもりである。望ましい実施態様では、CRE上
の中心に位置する−107から−100bpの下流サイレンサー配列またはそれ
と機能的に均等な配列が、ここに記載されたインビトロでのアッセイに用いられ
る。
インビトロでのアッセイに用いることのできるさらなる核酸配列の例としては
、これらに限定されるわけではないが、エンハンサー領域をコードするクラスI
MHCプロモーターの調節配列が含まれる。例として、PD1 クラスI MH
Cプロモーターの上流および下流のエンハンサーを含む配列またはそれと機能的
に均等な配列を、この発明のインビトロでのアッセイに用いることができる。P
D1プロモーター内では、上流エンハンサーは、上流サイレンサーとオーバーラ
ップし(図9を参照のこと);下流エンハンサーは、インターフェロン応答エレ
メントの5’末端である(図16B)。上流サイレンサーおよびエンハンサーと
複合体を形成することのできるタンパク質の例としては、これらに限定されるわ
けではないが、Sox−4、C−jun族構成タンパク質(family me
mber)、c−fos族構成タンパク質(family member)、N
F−κBおよびそのサブユニットまたはそれらと機能的に均等なタンパク質が含
まれる。下流エンハンサー(エンハンサーA)と複合体を形成することのできる
タンパク質の例としては、これらに限定されるわけではないが、Sox4、NF
κ−Bおよびそのサブユニット、c−fosファミリーメンバー、Pax8、T
TF−1タンパク質、TSEP−1のようなY−boxタンパク質、またはそれ
らと機能的に均等なタンパク質が含まれる。クラスI MHC分子を抑制する能
力を持つ候補薬剤は、上流または下流エンハンサー配列との複合体の形成を減少
または排除するはずである。
このインビトロでのアッセイに用いることのできる哺乳動物細胞の例としては
、これらに限定されるわけではないが、哺乳動物細胞の甲状腺細胞、肝細胞、神
経組織、筋肉、繊維芽細胞、脂肪細胞、およびHELA細胞が含まれる。ラット
のFRTL−5甲状腺細胞が望ましい(American Type Cult
ure Collection,Rockville,Maryland,AT
CC−CRL8305)。
一つの実施態様では、このアッセイで用いられる核酸配列は、クラスI MH
C遺伝子のDNA調節配列、PD1と相同の配列から誘導される。望ましい実施
態様では、これらの核酸配列は、図9に示すように、DNAフラグメント114
(配列番号1の塩基221から320)、140(配列番号1の塩基321から
455)および238(配列番号1の塩基456から692)である。S1、S
2、S3、S5−8(配列番号3、配列番号4、配列番号10、配列番号5−配
列番号8)と命名した、図10に示す二本鎖オリゴヌクレオチド、または、二本
鎖のオリゴヌクレオチド(K)(配列番号38)もまた、用いることができる。
Kオリゴヌクレオチド(配列番号38)は、チログロブリンプロモーター内にあ
り(Santisteban,P.ら、1992、Mol.Endocrino
l.,6:1310−1317)、サイレンサー複合体内のSoc−4様結合部
位の配列に関連する(図10)、TTF−2/Sox−4反応エレメント、また
は核酸調節配列である。
望ましい実施態様では、クラスI MHC分子の発現を抑制する薬剤の能力は
、上記のクラスI MHC核酸調節配列、または一本鎖あるいは二本鎖のオリゴ
ヌクレオチドまたはそれと機能的に均等なものと、抽出物中の一つのタンパク質
または複数のタンパク質との結合の減少または増加によって、測定される。結合
の減少とは、処理抽出物対未処理抽出物内で検出された複合体のシグナルの減少
あるいは損失、またはシグナルの欠如を意味する。結合の増加とは、処理細胞対
未処理細胞内での複合体のシグナルの出現または増加を意味する。複合体とは、
核酸配列に結合したタンパク質または複数のタンパク質を意味する。
核酸配列と複合体を形成するタンパク質または複数のタンパク質は、至る所に
現れるか、または組織特異的であることができる。そのような複数のタンパク質
は、核酸配列と直接的に結合できるか、またはこの核酸配列を結合する能力を持
つタンパク質と相互作用する、あるいは複合体を形成することができる。この定
義には、一本鎖または二本鎖核酸配列と結合する能力を持つタンパク質も、包含
するつもりである。例として、クラスI MHC遺伝子の上流サイレンサーエン
ハンサーと細胞内で複合体を形成するタンパク質には、これらに限定されるわけ
ではないが、NF−KBおよびそのサブユニット(p65/50サブユニット)
、c−fos関連タンパク質またはその族構成タンパク質、C−jun関連タン
パク質またはその族構成タンパク質、Sox−4タンパク質またはそのようなタ
ンパク質と実質的に均等な生物学的活性を持つそれと機能的に均等なタンパク質
を含んでいて良い(実施例8;Kieran,M.ら、1990、Cell,6
2,1007−1018;Ghosh,S.ら、1990、Cell,62,1
019−1029;Ryseck,R.−P.ら、1992、Mol.Cell
B
iol.,12,674−684;Stein,B.ら、1993、EMBO
J.,12,879−3891;Stein,B.ら、1993、Mol.Ce
ll Biol.,13,3964−3974;Nishina,H.ら、19
90、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87,3619
−3623;Baldwin,A.ら、1988、Proc.Natl.Aca
d.Sci.U.S.A.,85,723−727;Fujita,T.ら、1
992、Genes and Develop.,6,775−787;Giu
liani,C.ら、1995、J.Biol.Chem.,270,1145
3−11462)。当業者は、細胞または組織の型と言ったような様々な因子が
、複合体と相互作用しているまたは複合体を形成しているタンパク質の正確な組
立を決定付けることを、正確に認識しているであろう。例として、細胞の下流サ
イレンサーと複合体を形成するタンパク質には、これらに限定されるわけではな
いが、甲状腺転写因子−1(TTF−1)、Pax8、Y−boxタンパク質、
一本鎖結合タンパク質(SSBP)、およびサイクリックAMP結合調節タンパ
ク質(CREB)またはそのようなタンパク質と実質的に均等な生物活性を持つ
それと機能的に均等なタンパク質を含んでいて良い(実施例9、11を参照のこ
と;Civitareale,D.ら、1993、Mol.Endocrino
l.,7,1589−1595;Civitareale,D.ら、1989、
EMBO J.,2537−2542;Guazzi,S.ら、1990、EM
BO J.,9,631−3639;Francis−Lang,H.ら、19
92、Mol.Cell Biol.,12,576−588;Zannini
,M.ら、1992、Mol.Cell Biol.,12,4230−424
1;Shimura,H.ら、1994、Mol.Endocrinol.,8
,1049−1069;Ohmori,M.ら、1995、Endocrino
logy,136,269−282;Davis,T.L.ら、1989、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86,9682−9686
;Kinniburgh,A.J.、1989、Nucleic Acids
Res.,17,7771−7778;Postel,E.H.ら、1989、
Mol.Cell Biol.,9,5123−5133;Kolluri,R
.ら、1
992、Nucleic Acids Res.,20,111−116;Jo
hnson,A.C.ら、1988、Mol.Cell Biol.,8,41
74−4184;Pestov,D.G.ら、1991、Nucleic Ac
ids Res.,19,6527−6532;Hoffman,E.K.ら、
1990、Proc,Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87,27
05−2709;Wolffe,A.P.ら、1992、New Biol.,
4,290−298;Kolluri,R.ら、1991、Nucleic A
cids Res.,19,4771;Ozer,J.ら、1990、J.Bi
ol.Chem.,265,22143−22152;Faber,M.ら、1
990、J.Biol.Chem.,265,22243−22254;Pet
ty,K.J.ら、GenBank Accesion Number M69
138;Didier,D.K.ら、1988、Proc.Natl.Acad
.Sci.U.S.A.,85,7322−7326;Sakura,H.ら、
1988、Gene,73,499−507;Spitkovsky,D.D.
ら、1992、Nucleic Acids Res.,20,797−803
;Sabath,D.E.ら、1990、J.Biol.Chem.,265,
12671−12678;Giuliani,C.ら、1995、J.Biol
.Chem.,270,11453−11462;Montminy,M.R.
ら、1986、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,83,
6682−6686;Angel,P.ら、1987、Mol.Cell Bi
ol.,7;2256−2266;Leonard,J.ら、1992、Pro
c.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89,6247−6251;
Vallejo,M.ら、1992、J.Biol.Chem.,267,12
868−12875;Leonard,J.ら、1993、Mol.Endoc
rinol.,7,1275−1283;Ikuyama,S.ら、1992、
Mol.Endocrinol.,6,1701−1715;Habener,
J.F.、1990、Mol.Endocrinol.,4,1087−109
4)。
複合体の検出は、当業者に既知の様々な技術によって、行うことができる。単
一増幅による複合体の検出は、放射標識および酵素を含む様々な慣用の標識技術
によって成し遂げることができる(Sambrook,T.ら、1989、”M
olecular Cloning,A Laboratory Manual
”,Cold Spring Harbor Press,Plainview
,New York)。放射標識のキットもまた、市販されている。DNA配列
を標識する望ましい方法は、クレノウ酵素またはポリヌクレオチドキナーゼを用
いて32Pで行われる。さらに、ピリミジンおよびプリン環に化学基(chemi
cal moiety)を結合させる方法(Dale,R.N.K.ら、197
3、Proc.Natl.Acad.Sci.,70:2238−2242;H
eck,R.F.、1968、S.Am.Chem.Soc.,90:5518
−5523)、化学発光によって検出する方法(Barton,S.K.ら、1
992、J.Am.Chem.Soc.,114:8736−8740)および
ビオチニル化した核酸プローブを用いる方法(Johnson,T.K.ら、1
983、Anal.Biochem.,133:126−131;Ericks
on,P.F.ら、1982、J.of Immunology Method
s,51:241−249;Matthaei,F.S.ら、1986、Ana
l.Biochem.,157:123−128)および市販の生成物を用いて
蛍光による検出を可能にする方法を含む、単一増幅による非放射技術が知られて
いる。非放射標識のキットもまた、市販されている。DNAフラグメントまたは
二本鎖オリゴヌクレオチドと結合したタンパク質抽出物の複合体を検出するのに
有効な方法には、移動度−シフト分析、サザンウエスタン、および免疫沈降が含
まれる(Sambrook,J.ら、1989、Ausubel,J.ら、19
87、”Current Protocols in Molecular B
iology”、John Wiley and Sons,New York
)。望ましい方法は、放射標識した二本鎖核酸配列を用いたゲル移動度シフト分
析である。また、移動度シフト分析では、タンパク質抽出物−オリゴマー複合体
は、35Sまたはトリチル化されたチミジンで細胞を代謝により標識できる、標識
タンパク質抽出物を用いることによっても検出することができる。また、別の方
法として、125Iでの標識またはビオチンおよび様々な蛍光標識を用いる非放射
標識を、タンパク質抽出物を調製する前に用いることもできる。
本発明のその他のインビトロでのアッセイは、クラスI MHCプロモーター
およびその調節配列またはそれと機能的に均等な配列の下流に機能するように連
結されたレポーター遺伝子の活性を測定することによって、クラスI MHCの
発現を抑制する薬剤の能力を評価する方法に関係する。クラスI MHCプロモ
ーターおよびその調節配列に機能するように連結されたレポーター遺伝子を、哺
乳動物細胞に導入し、前記哺乳動物細胞を候補薬剤で処理し、さらに処理済およ
び未処理の哺乳動物細胞の溶解物中のレポーター遺伝子の活性を測定する。処理
済対未処理細胞の細胞溶解物中のレポーター遺伝子の活性が減少すると、クラス
I MHCの発現を抑制する候補薬剤は有効であると予測される。
レポーター遺伝子に機能するように連結することのできる望ましい調節配列は
、クラスIMHC、PD1遺伝子のサイレンサーおよびエンハンサー領域に相当
する配列である。例として、これらの配列は、これらに限定されるわけでないが
、114(配列番号1の塩基221から230)、140(配列番号1の塩基3
21から455)、151(配列番号1の塩基54から220)および238(
配列番号1の塩基456から692)の配列またはそれと機能的に均等な配列(
図9A−9B)を、それらの同種(cognate)のプロモーターと共に含ん
でいて良い。さらに、下流サイレンサー領域−127から−90bpまたは−1
27から−80bpまたはそれと機能的に均等な領域に相当する配列もまた、用
いることができる。当業者は、他のクラスI遺伝子の調節ドメインおよびプロモ
ータードメイン内に認められる配列的および機能的に相同な領域もまた使用する
ことができ、本発明に包含するつもりであることを、理解するであろう。レポー
ター遺伝子の例としては、これらに限定されるわけではないが、クロラムフェニ
コールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺
伝子、ルシフェラーゼ遺伝子およびヒト成長ホルモン(hGH)が含まれる(S
ambrook,J.ら、1989;Ausubel,F.ら、1987、”C
urrent Protocols in Molecular Biolog
y”、増補14版、9.6節、1990、John Wiley and So
ns,New York)。このインビトロでのアッセイに用いることのできる
哺乳動物細胞の例としては、これらに限定するつもりはないが、哺乳動物細胞甲
状
腺細胞、肝細胞、神経組織、筋肉、繊維芽細胞、脂肪細胞、およびHELA細胞
が含まれる。レポーター遺伝子に機能するように連結された調節配列を細胞内に
導入することのできる手段は、上記の手段と同一の手段である。望ましい実施態
様では、CAT遺伝子は、上記のPDI配列の一つと機能するように連結され、
そしてFRTL−5細胞内に導入される。
クラスI MHC分子の発現を抑制する候補薬剤の能力もまた、候補薬剤で処
理した哺乳動物細胞と候補薬剤で処理しなかった哺乳動物細胞内での細胞内mR
NAのレベルを比較することによって、評価することができる。細胞内mRNA
のレベルを測定する方法の例としては、これらに限定するつもりはないが、ノー
ザンブロッティング(Alwine,J.C.ら、1977、Proc.Nat
l.Acad.Sci.,74:5350−5354)、ドットおよびスロット
ハイブリダイゼーション(Kafatos,F.C.ら、1979,Nucle
ic Acids Res.,7:1541−1522)、フィルターハイブリ
ダイゼーション(Hollander,M.C.ら、1990、Biotech
niques,9:174−179)、RNアーゼ保護(Sambrook,J
.ら、1989、”Molecular Cloning,A Laborat
ory Manual”,Cold Spring Harbor Press
,Plainview,NY)、ポリメラーゼ連鎖反応(Watson,J.D
.ら、1992、”Recombinant DNA”、第二版、W.H.Fr
eeman and Company,New York)および核ランオフ(
run−off)アッセイ(Ausubel,F.ら、1989、”Curre
nt Protocols in Molecular Biology”、増
補9版、1990、John Wiley and Sons,New Yor
k)が含まれる。当業者に既知の慣用の方法論を、mRNAレベルまたは与えら
れた遺伝子の転写速度を評価するために用いることができる(Sambrook
,J.ら、1989、”Molecular Cloning,A Labor
atory Manual”,Cold Spring Harbor Pre
ss,Plainview,NY)。
さらなるその他のインビトロでのアッセイでは、クラスI MHCの発現を抑
制する候補薬剤の能力は、クラスI MHCの発現を調節する能力を持つ一つあ
るいはそれより多くのタンパク質またはそれらに相当するRNAの発現を変化さ
せる薬剤の能力を評価することによって評価される。例として、そのようなタン
パク質には、これらに限定されるわけではないが、Sox−4タンパク質または
それと機能的に均等なタンパク質、TTF−1甲状腺転写因子またはそれと機能
的に均等なタンパク質、一本鎖結合タンパク質(SSBP)の様なSSBPまた
はそれと均等なタンパク質、およびY−boxタンパク質またはそれと機能的に
と均等なタンパク質が含まれる。望ましい実施態様では、Sox−4タンパク質
およびY−boxタンパク質(本明細書中に記載されたTSEP−1を指す)の
mRNAの発現のレベルは、候補薬剤に露出した細胞内で、評価される。望まし
くは、ラットFRTL−5細胞が用いられる。慣用的方法論は、細胞内に存在す
るこれらの遺伝子の転写速度またはmRNAレベルを評価するために用いること
ができる(Ausubel,F.ら、1989、”Current Proto
cols in Molecular Biology”、1987、John
Wiley and Sons,New York)。そのような方法の例と
しては、これらに限定されるわけではないが、ノーザンブロット分析、またはポ
リメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれる。クラスI MHCの発現を抑制する
能力を持つ薬剤もまた、SSBPメッセンジャーRNA(mRNA)、Sox−
4 mRNA、またはTTF−1 mRNAのレベルを抑制または減少させるは
ずである。代わりに、Sox4またはTTF−1タンパク質のレベルを、候補薬
剤の治療への可能性の指標として評価することもできる。クラスI MHC分子
を抑制する能力を持つ薬剤は、SSBPまたはTTF−1タンパク質のレベルを
減少させるはずである。タンパク質レベルの評価は、これらに限定されるわけで
はないが、ウエスタンブロット分析、ELISAを含む当業者に既知の慣用的方
法論によって、評価することができる(Ausubelら、1987、”Cur
rent Protocols in Molecular Biology”
、John Wiley and Sons,New York,New Yo
rk;Sambrookら、1989、”Molecular Cloning
,A Laboratory Manual”,Cold Spring Ha
r
bor Press,Plainwiew,New York)。代わりの方法
として、Y−boxタンパク質のRNAまたはタンパク質またはそれと機能的に
均等なものの発現のレベルは、候補薬剤の治療への可能性を評価することができ
る。Y−boxタンパク質のRNAまたはタンパク質レベルは、もし薬剤がクラ
スI MHC分子を抑制する能力を持つならば、増加するはずである。当業者ら
に既知のまたは本明細書中に記載の慣用的方法論は、このアッセイに用いること
ができる。
さらにその他の実施態様では、クラスI MHCへの候補薬剤能力による治療
の可能性は、クラスIの発現を調節する能力を持つタンパク質の酸化/還元の状
態を評価する薬剤の能力によって、評価することができる。例として、そのよう
なタンパク質は、SSBP、TTF−1タンパク質、TSEP−1のようなY−
Boxタンパク質、Pax8タンパク質、CREBタンパク質,NF−κBおよ
びそのサブユニット、fos族構成タンパク質またはそれと機能的に均等なタン
パク質であって良い。例として、クラスI MHCの発現をも調節する能力を持
つタンパク質の酸化/還元状態を調節するまたは変化させる能力を持つ細胞内の
酵素への薬剤の影響を、評価することができる。別の方法として、クラスI M
HCを調節する能力を持つタンパク質の酸化/還元状態を調節する原因の酵素活
性を、評価することができる。そのような酵素の例としては、これらに限定され
るわけではないが、チオレドキシン、スーパーオキシドジスムターゼ、またはそ
れと機能的に均等な酵素が含まれる。例として、この方法に用いることのできる
アッセイには、これらに限定されるわけではないが、Noiva,R.、199
4、Protein Expr.Purif,5,1−13;Tonissen
,K.ら、1993、J.Biol.Chem.,268,22485−224
89;Hayashi,T.ら、1993、J.Biol.Chem.,268
,11380−11388;Okamato,T.ら、1992、Int.Im
munol.,4,811−819、に記載のアッセイが含まれ、ここに参照と
して組み入れられる。
また、本発明は、クラスI MHC発現を調節する能力を持つタンパク質をコ
ードする核酸配列をも、提供する。特に、本発明は、Sox−4タンパク質(実
施例8)およびTSEP−1と名付けられたY−boxタンパク質(実施例11
)の核酸およびアミノ酸配列を提供する。
図20に示すSox−4タンパク質の核酸配列、および図38に示すTSEP
−1と名付けられたY−Boxタンパク質の核酸配列は、本発明の望ましい実施
態様を表している。しかしながら、遺伝子コードの縮重により、図20および3
8に示すcDNA配列を変異させても、結果として、Sox−4またはTSEP
−1それぞれのタンパク質をコードする能力を持つDNA配列になるであろうこ
とを、当業者は理解するであろう。それ故、そのようなDNA配列は、図20お
よび28に示す配列と機能的に均等であり、本発明に包含するつもりである。さ
らに、当業者は、図20および28に示す核酸配列の与えられた種に、対立変異
が自然発生すること、およびこれらの変異もまた本発明により包含されるつもり
であること、を理解するであろう。
予想されるSox−4タンパク質は約53キロダルトンであり、予想されるT
SEP−1タンパク質は約42キロダルトン(kd)である。さらに、本発明は
、Sox−4またはTSEP−1タンパク質と実質的に同一の機能を持つタンパ
ク質またはペプチドまたはその類似体を含む。そのようなタンパク質またはポリ
ペプチドには、限定するわけではないが、Sox−4あるいはTESP−1タン
パク質のタンパク質フラグメント、または置換、付加、あるいは欠失変異体が含
まれる。また、本発明は、これらのタンパク質と実質的に相同なタンパク質また
はペプチドも包含する。
用語「類似体」は、一つまたはそれより多くの残基が機能的に類似した残基と
保存的に置換され、および本明細書に記載したようなSox−4またはTSEP
−1タンパク質抗原の機能的特色を示す、本明細書中の図20および38に具体
的に示したSox−4またはTESP−1配列と実質的に同一のアミノ酸残基配
列を持つ任意のポリペプチドを含む。保存的置換の例としては、イソロイシン、
バリン、ロイシンまたはメチオニンのような非極性(疎水性)残基を互いに置換
すること、アルギニンとリジン間、グルタミンとアスパラギン間、グリシンとセ
リン間を互いに置換するように一つの極性(親水性)残基を互いに置換すること
、リジン、アルギニンまたはヒスチジンのような一つの塩基性残基を互いに置換
す
ること、または、アスパラギン酸またはグルタミン酸のような一つの酸性残基を
互いに置換すること、が含まれる
本明細書中に記載のSox−4およびTSEP−1タンパク質の保存的に置換
された変異も、本発明に含むつもりである。また、慣用句「保存的置換」には、
非誘導残基の代わりに化学的に誘導された残基を用いることも含まれる。「化学
誘導」とは、官能側鎖の反応によって化学的に誘導された一つまたはそれより多
くの残基を持つ従属ポリペプチド(subject polypeptide)
を指す。そのように誘導された分子の例としては、例として、遊離アミノ基を誘
導して、塩酸アミン、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブ
チルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するそれら
の分子が含まれる。遊離カルボキシル基を誘導すると、塩、メチルおよびエチル
エステルまたはその他の型のエステルあるいはヒドラジドを形成することができ
る。遊離の水酸基を誘導すると、O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成す
ることができる。ヒスチジンのイミダゾール窒素を誘導すると、N−im−ベン
ジルヒスチジンを形成することができる。また、化学誘導体として、20の標準
アミノ酸の一つまたはそれより多くの天然発生のアミノ酸誘導体を含むそれらの
タンパク質またはペプチドが含まれる。例えば:4−ヒドロキシプロリンはプロ
リンの代わりに置換されていて良い;5−ヒドロキシリジンはリジンの代わりに
置換されていて良い;3−メチルヒスチジンはヒスチジンの代わりに置換されて
いて良い;ホモセリンはセリンの代わりに置換されていて良い;また、オルニチ
ンはリジンの代わりに置換されていて良い。また、本発明のタンパク質またはポ
リペプチドは、必要な活性が維持されている限り、Sox−4またはTSEP−
1タンパク質のDNAによりコードされているポリペプチドの配列と比較して、
一つまたはそれより多くの残基の付加および/または欠失を持つ任意のポリペプ
チドを含む。
また、本発明は、Sox−4核酸配列およびベクターの全体あるいは部分、ま
たはTSEP−1核酸配列およびベクターの全体あるいは部分を含む組換えDN
A分子を提供する。本発明に用いるに適当な発現ベクターは、核酸配列に機能す
るように連結された少なくとも一つの発現調節要素を含む。発現調節要素は、核
酸配列の発現を調節および抑制するために、ベクター内に挿入される。発現調節
要素の例としては、これらに限定されるわけではないが、lacシステム、ファ
ージラムダのオペレーターおよびプロモーター領域、酵母のプロモーター、なら
びにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルスまたはSV40から誘導され
たプロモーターが含まれる。さらなるの望ましいまたは必要とされる機能エレメ
ントには、これらに限定されるわけではないが、リーダー配列、終止コドン、ポ
リアデニル化シグナルおよび宿主系内で核酸配列の適切な転写そしてそれに続い
て起こる翻訳に必要または望ましい任意のその他の配列が含まれる。当業者は、
必要なまたは望ましい発現調節要素の適正な組み合わせが選ばれた宿主系に依存
することを、理解するであろう。さらに、発現ベクターは、宿主系内で核酸配列
を含む発現ベクターの輸送そしてそれに続いて起こる複製に必要なさらなるエレ
メントを含むはずであることが、理解されるであろう。そのようなエレメントの
例としては、これらに限定されるわけではないが、複製開始点および選択マーカ
ーが含まれる。さらに、当業者らは、そのようなベクターが、慣用の方法(Au
subelら、1987、”Current Protocols in Mo
lecular Biology”,John Wiley and Sons
,New york,New York)を用いて容易に構築される、または市
販されていることを、理解するであろう。
本発明のその他の態様は、Sox−4核酸配列あるいはTSEP−1核酸配列
の全体または部分、またはその組み合わせを含む組換え発現ベクターが挿入され
た宿主生物体に関する。本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞には、
動物、植物、昆虫および酵母細胞のような真核生物ならびに大腸菌のような原核
生物が含まれる。遺伝子を運搬するベクターを細胞内に導入することができる手
段として、これらに限定するつもりはないが、マイクロインジェクション、エレ
クロトポレーション、トランスダクション、あるいはDEAE−デキストラン、
リポフェクション、リン酸カルシウムを用いるトランスフェクション、または当
業者に既知のその他の方法が含まれる(Sambrookら、1989、”Mo
lecular Cloning,A Laboratory Manual”
,Cold Spring Harbor Press,Plainview、
N
ew York)。
望ましい実施態様では、真核生物細胞内で機能する真核生物の発現ベクターが
用いられる。そのようなベクターの例としては、これらに限定されるわけではな
いが、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルス
ベクター、ヘルペスウイルスベクター、鶏痘ウイルスベクター、細菌発現ベクタ
ー、pcDNA3(Invitrogen,San Diego,CA)の様な
プラスミド、バキュロウイルストランスファーベクターが含まれる。望ましい真
核生物細胞系には、これらに限定するつもりはないが、FRTL−5またはFR
T細胞のような甲状腺細胞、COS細胞、CHO細胞、HeLa細胞、NIH/
3T3細胞、またはBRL細胞が含まれる。特に望ましい実施態様では、組み換
え発現ベクターが、FRTL−5 NIH/3T3、COS、またはCHOのよ
うな哺乳動物細胞内に導入され、組換えタンパク質の適切なプロセシングおよび
修飾を確実なものにする。
一つの実施態様では、発現した組換えTSEP−1またはSox−4タンパク
質は、TSEP−1またはSox−4タンパク質に特異的な抗体を用いたクマシ
ーブルー染色およびウエスタンブロッティングを含むこの技術分野で既知の方法
に従って、検出することができる。
さらなる実施態様では、宿主細胞で発現する組換えタンパク質は、粗溶解物と
して得られるか、または沈降差、モレキュラーシーブクロマトグラフィー、イオ
ン交換クロマトグラフィー、等電点電気泳動、ゲル電気泳動、アフィニティー、
およびイムノアフィニティークロマトグラフィーならびにその類似法等を含んで
良いこの技術分野で既知の標準的なタンパク質精製方法によって精製することが
できる(Ausubelら、1987、”Curren Protocols
in Molecular Biology”,John Wiley and
Sons,New York,New York)。イムノアフィニティーク
ロマトグラフィーの場合、組換えタンパク質は、Sox−4またはTSEP−1
タンパク質に特異的な抗体をそれと結合する樹脂を含むカラムを通過させること
によって、精製することができる(Ausubelら、1987,”Curre
nt Protocols in Molecular Biology”,J
ohn Wiley and Sons,New York,New York
)。
本発明の核酸配列またはその部分は、生物サンプル内のSox−4またはTS
EP−1遺伝子の発現を検出するためのプローブとして有用である。サンプルの
例としては、これらに限定されるわけではないが、組織細胞、ホモジネート、抽
出物、生検、微細な(fine)針生検、または組織スライスが含まれる。それ
故、本発明のもう一つの態様は、生物サンプル内でSox−4またはTSEP−
1のいずれかのタンパク質をコードするメッセンジャーRNAを検出するための
バイオアッセイであって、前記の生物サンプルと、本発明の核酸配列の全体また
は部分とを、前記の核酸配列と前記のメッセンジャーRNAとの間での複合体の
形成を許す条件下で接触させる段階、前記の複合体を検出する段階、および前記
メッセンジャーRNAのレベルを検出する段階を含む、前記のバイオアッセイに
関する。RNAは、慣用の方法論によって、全体細胞RNAとして、またはポリ
(A)+RNAとして単離することが出来る。
その他の実施態様では、Sox−4またはTSEP−1 mRNAをそれぞれ
検出するために、図20および38のSox−4またはTSEP−1配列に基づ
くオリゴヌクレオチド対の組み合わせを、プライマーとしてポリメラーゼ連鎖反
応(PCR)に用いる。また、これらのプライマーは、Ausubelら編、1
987、”Current Protocols in Molecular
Biology”15章、John Wiley and Sons,New
York,New Yorkに詳細に記載された、選択されたRNA核酸配列を
増幅するための逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法に従う方法
に用いることができる。オリゴヌクレオチドは、様々な製造者から販売されてい
る自動装置によって合成することができるか、または本発明の核酸配列に基づい
て商品として製造することが出来る。当業者は、サンプル内で、Sox−4また
はTSEP−1のRNAをそれぞれ増幅するための、Sox−4またはTSEP
−1核酸配列に基づくPCRプライマーを選択する方法を知るであろう。
本発明のさらなるその他の実施態様では、Sox−4あるいはTSEP−1核
酸配列の全体またはその部分は、トランスジェニック動物を作り出すために用い
ることができる。望ましくは、Sox−4またはTSEP−1遺伝子は、胎芽期
、望ましくは一細胞期、一般的には約八細胞期より前に、動物または動物の先祖
内に導入される。Sox−4またはTSEP−1遺伝子を運搬するトランスジェ
ニック動物を作り出すことのできるいくつかの方法がある。一つの方法は、細胞
配列の全体または部分を運搬するレトロウイルスを用いることを含む。トランス
ジーンを含むレトロウイルスは、トランスフェクションによって胎芽期の動物内
に導入される。もう一つの方法は、胚内にトランスジーンを直接インジェクショ
ンすることを含む。さらにもう一つの方法では、当業者に既知の胎芽幹細胞法ま
たは相同組換え法を用いる。トランスジーンを導入することのできる動物の例と
しては、これらに限定するつもりはないが、霊長類、マウス、ラットまたはその
他の齧歯類が含まれる。そのようなトランスジェニック動物は、自己免疫、移植
拒絶反応、または癌を研究するための、そして自己免疫、癌または移植拒絶反応
の診断法または治療法を評価するための、生物モデルとして有用である。
さらに、本発明は、図20および38に定義したアミノ酸配列またはその唯一
の部分を持つSox−4あるいはTSEP−1のタンパク質またはペプチドのい
ずれかと反応する一つの抗体または複数の抗体を含む。本発明のこの実施態様で
は、抗体はその起源においてモノクローナルまたはポリクローナルである。抗体
を作り出すために用いられるSox−4あるいはTSEP−1タンパク質または
ペプチドは、天然起源または組換え起源からのものであって良く、化学合成によ
って作られても良い。天然のSox−4またはTSEP−1タンパク質は、ラッ
ト甲状腺のような哺乳動物の生物サンプルから単離することが出来る。天然タン
パク質は、組換えタンパク質に関して上記したのと同一の方法によって単離する
ことが出来る。組換えSox−4あるいはTSEP−1タンパク質またはペプチ
ドは、慣用の方法に従って製造し、精製することができる。合成Sox−4また
はTSEP−1ペプチドは、本発明が提供するまたは当業者に既知の方法によっ
て合成されるそれぞれのタンパク質の予想されるアミノ酸配列に基づいて、特別
注文によってまたは商品として作り出すことができる(Merrifield,
R.B.、1963、J.Amer.Soc.,85:2149)。もしペプチ
ドが抗原として短すぎるならば、ペプチドの抗原性を強めるキャリヤー分子と結
合さ
せることができる。キャリヤー分子の例としては、これらに限定されるわけでは
ないが、ヒトのアルブミン、ウシのアルブミン、およびキーホールリンペット(
keyhole limpet)ヘモシアニンが含まれる(”Basic an
d Clinical Immunology”、1991、Stites,D
.P.およびTerr,A.I.編、Appleton and Lange,
Norwalk Connecticut,San Mateo,Califo
rnia)。
本発明の検出法に用いられる模範的な抗体分子は、完全なイムノグロブリン分
子、実質的に完全なイムノグロブリン分子、または抗原結合部位を含むイムノグ
ロブリン分子のそれらの部分であり、F(ab);F(ab’);F(ab’)2
およびF(v)としてこの技術分野で既知のイムノグロブリン分子のそれらの
部分を含む。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、この技術分野で
既知の方法によって作り出すことができる(KohlerおよびMilstei
n、1975、Nature,256,495−497;Campbell,”
Monoclonal Antibody Technology,the P
roduction and Characterization of Ro
dent and Human Hybridomas”,Burdonら編、
1985、”Laboratory Techniques in Bioch
emistry and Molecular Biology”、13巻、E
lsevier Science Publishers,Amsterdam
)。抗体または抗原結合フラグメントもまた、遺伝子工学によって作り出すこと
ができる。大腸菌内で重鎖および軽鎖の両方の遺伝子を発現させる技術は、PC
T特許出願:公開番号WO901443、WO901443およびWO9014
424号公報:およびHuseら、1989、Science,246:127
5−1281の主題である。
本発明の抗体は、未変性または変性させたSox−4あるいはTSEP−1の
タンパク質またはペプチドまたはその類似体と反応できる。抗体が用いられるは
ずの特異的イムノアッセイは、どの抗体が望ましいかを指図するであろう。抗体
は、Sox−4あるいはTSEP−1のいずれかのタンパク質またはその部分に
対して、または、Sox−4あるいはTSEP−1のいずれかのアミノ酸配列に
相同な合成ペプチドに対して、作製できる。
一つの実施態様では、本発明の抗体は、生物サンプル内のSox−4またはT
SEP−1のいずれかのタンパク質を検出するためのイムノアッセイに用いられ
る。この方法では、本発明の抗体を生物サンプルと接触させ、TSEP−1また
はSox−4のいずれかのタンパク質と抗体との間の複合体の形成を検出する。
本発明のイムノアッセイは、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロットアッセ
イ、免疫蛍光アッセイ、酵素イムノアッセイ、化学発光アッセイ、免疫組織化学
アッセイおよびその類似アッセイであって良い(”Principles an
d Practice of Immunoassay”、1991、Chri
stopher P.PriceおよびDavid J.Neoman編、St
ockton Press,New York,New York;Ausub
elら編、1987、”Current Protocols in Mole
cular Biology”、John Wiley and Sons,N
ew York,New York)。ELISAに関するこの技術分野で既知
の標準技術は、”Methods in Immunodiagnosis”、
第二版、RoseおよびBigazzi編、John Wiley and S
ons,New York、1980、ならびに、Campbellら,”Me
chods of Immunology”、W.A.Benjamin,In
c.,1964、に記載されており、両方とも参照として本書に取り入れられる
。
本発明に従って投与されるクラスI MHC抑制薬は、これらに限定されるわ
けではないが、食塩水、緩衝液、デキストロース、エタノールおよび水を含む生
物学的に受け入れうるキャリヤーをさらに含む無菌の薬剤組成物として、投与す
ることができる。
投与されるクラスI MHC抑制薬は、単独でまたはその他の薬剤、ホルモン
または抗体と組み合わせて、投与することができる。薬剤の例としては、これら
に限定されるわけではないが、クラスI MHC抑制薬、免疫抑制薬、細胞毒性
薬、および抗炎症薬が含まれる。ホルモンの例としては、これらに限定されるわ
けではないが、コルチコステロイド、ステロイドおよびステロイド誘導体、エス
トロゲン、アンドロゲン、インスリン様成長因子Iの様な成長因子、グリコプロ
テインホルモン、サイトカインおよびリンホカインが含まれる。抗体の例として
は、これらに限定されるわけではないが、クラスI MHC抗原に対する抗体、
クラスII MHC抗原に対する抗体、および感染性抗原に対する抗体が含まれる
。
クラスI MHC抑制薬を投与する手段としては、これらに限定されるわけで
はないが、経口、舌下、静脈内、腹腔内、経皮、鼻腔内、硬膜下腔内、皮下、皮
内、または腸内が含まれる。罹患した部位への局所投与は、これらに限定される
わけではないが、局所適用、注射、点滴およびクラスI MHC抑制薬を含む多
孔性装置の皮下投入(移植)を含む、この技術分野に既知の手段を通して成し遂
げることができる。
自己免疫疾患および移植拒絶反応の治療でクラスI MHC抑制薬を投与する
望ましい手段は、経口である。移植するための組織を前処理する望ましい手段は
、インビトロでの水溶液でのかん流による。
本明細書中に引用した書籍、論文、または特許はすべて、参照として本明細書
に取り入れられる。以下の実施例は、本発明の様々な態様を具体的に説明するも
のであって、その範囲を制限するつもりのものではない。
実施例1
クラスIMHC欠損マウスにおける実験的SLE誘発の欠如 マウスでの実験的SLEの誘発
全身性エリテマトーデス(SLE)は、抗DNA、抗核抗原、および抗RNP
抗体を含む、自己抗体のアレーの存在を特徴とする自己免疫疾患である(Tal
al,N.ら、1977、Autoimmunity:Genetic,Imm
unology Virology and Clinical Aspect
s;Academic Press,NY)。ヒトでの疾病の進行は、白血球減
少症、蛋白尿、ならびに腎臓およびその他の器官の免疫複合体沈査と互いに関連
する。SLEの実験モデルは、16/6Idと命名された共通のイディオタイプ
を発現するヒトのモノクローナル抗DNA抗体での免疫化によって、マウス内に
誘発させることができる。一回の免疫化およびそれに続いて起こる16/6Id
での追加免疫の後、マウスは、16/6Id、DNAおよび核抗原に対する抗体
を生成する。4−6ヶ月間の後、免疫化されたマウスは、白血球減少症および蛋
白尿を発症し、免疫複合体が、それらマウスの腎臓内に認められる(Mendl
ovic,S.ら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S
.A.,85:2260−2264)。この実験モデルは、自己抗体の生成およ
びその臨床的明示に関して、ヒトの疾病と密接に近似している。いくつかのその
他の研究室では、マウス内でSLEを誘発するためにこれらの抗体を用いている
。16/6Idで免疫化したマウスで病気が誘発される免疫学的根拠は知られて
いない。細胞表面クラスI MHC分子を欠損したマウスは、クラスI分子の正
しい組立および細胞表面での発現に必要とされる、β2ミクログロブリンの遺伝
子を不活性化することによって、作り出された(Zijlstra,M.ら、1
990、Nature,344:742−746;Koller,B.ら、19
90、Science,248:1227−1230;マウスは、B.Koll
erに提供して頂いた)。これらのクラスI−欠損マウスもまた、CD4-CD
8+T細胞サブセットを作らない。クラスI欠損マウスは、一般的に健康であり
、抗体応答を生ずる能力、および様々なウイルス感染にもかかわらず生存する能
力を持つ;しかしながら、そのようなマウスは、正常な同腹子仲間(litte
rmates)より細胞内寄生物により感受性である。クラスI分子が実験的S
LEの誘発または伝播に一役を演ずるか否かを決定するために、この疾病を発症
する能力について、クラスI欠損マウスを試験した。
マウス(4−6グループ、129系統−クラスI欠損)を、完全フロイントア
ジュバント(CFA;Difco,Detroit,MI)中、アフィニティー
で精製した1μgのヒトモノクローナル16/6Idを後足皮内に注射して免疫
化し、そして3週間後、リン酸緩衝化塩類溶液(PBS)中の1μgの16/6
Idで追加免疫した(Mendlovic,S.ら、1988、Proc.Na
tl.Acad.Sci.,U.S.A.,85:2260−2264)。ニワ
トリのオバルブミン(Grade V、Sigma Chem.Co., St
.
Louis,M0)での129系統−クラスI欠損マウスの免疫化は、20μg
で行い、16/6Idと同じレジメンに従った。クラスI−欠損動物内の抗−16/6Idおよび抗−DNA抗体の分析
対照のクラスI+129系統マウス(Jackson Labs,Bar H
arbor,Maine)内、抗−16/6Idおよび抗−DNA応答を、EL
ISAによって、血清内で検出した。ELISAは、Mendlovic,S.
ら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),85:2
26−2264;Heineman,W.R.ら、1987、Methods
of Biochemical Analysis,32:345−393)に
記載の方法に従って、16/6Idおよび抗−16/6Idを用いて行われた。
抗−16/6Idおよび抗−DNA応答は、追加免疫後10日以内に検出され、
少なくとも6ヶ月間持続した;追加免疫後10週の動物からの結果を示している
(図1Aおよび1B)。16/6Idで免疫化した動物からの血清は、有意の抗
−ヒトイムノグロブリン反応性を含んでいなかった。クラスI−欠損マウスは、
対照の129系統マウスと同時に、抗−16/6Id抗体を作り出す16/6I
dで免疫化され、対照マウス129系統と有意には違わない力価を有していた(
図1A)。対照的に、クラスI−欠損マウスの血清は、有意の抗−DNA抗体を
含んでいなかった(図1B);有意の抗−DNA応答は、最大で少なくとも6ヶ
月の間、クラスI−欠損動物内では検出されなかった。この期間、抗−16/6
Idの力価は、クラスI欠損動物および対照の129系統動物の両方の血清内で
、高いままである。さらに、抗−核抗原抗体は、クラスI−欠損動物の血清内で
は検出されなかったが、16/6Idで免疫化した129系統動物の血清内には
見出された(図1C)。クラスI−欠損マウスは、オバルブミンでの免疫化が正
常マウスの抗体応答と著しくは異ならない抗体応答を引き出すため、一般的に抗
原に対する応答は貧弱ではない(図1D)。
以前は、C57BL/6マウスは、16/6Idに対して応答しないと、報告
されていた(Mendlovic,S.ら、1990、Immunology,
69:228−236)。C7BL/6マウスは、抗−16/6Id抗体を生成
することが出来ないため、この非応答は、抗−16/6Id抗体を作り出すが、
抗−DNAまたは抗−核抗原抗体を作らないクラスI欠損マウスの応答とは異な
る。さらに、C57BL/6X クラスI−欠損F1マウスは、16/6Idに
正常に応答した。モノクローナル抗−16/6Id抗体での免疫化に対するクラスI−欠失動物の 応答
16/6Idで免疫化した正常マウスの抗−DNA抗体の発生は、抗−抗−1
6/6Id抗体の生成と相関する(Menlovic,S.ら、1988、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:718−730);
抗−16/6Idでの免疫化は、DNAおよび核抽出物に対する抗体ならびに実
験的SLEの誘因となる(Mendlovic,S.ら、1989、Eur.J
.Immunol.,19:2260−2264)。クラスI−欠損マウスが、
16/6Idでの免疫化に応答して抗−DNA抗体を発生できないことは、それ
らマウスが抗−16/6Idに応答しない可能性を上昇させた。この可能性は、
クラスI−欠損マウスをネズミのモノクローナル抗−16/6Idで免疫化する
ことによって、評価された。
マウス(6グループ)は、CFA中の20μgのモノクローナル、抗−16/
6Id 1A3−2(Mendlovic,S.ら、1989、Eur.J.I
mmunol.,19:729−734)を後足に注射して免疫化し、そして3
週間後、同量のモノクローナル抗体/PBSで追加免役した。対照となる抗−I
d抗体(Mendlovic,S.ら、1989、Eur.J.Immunol
.,19:729−734)を注射したマウスは、応答を発生しなかった。対照
の129系統マウスがすべて、抗−16/6Idイディオタイプに応答したにも
かかわらず、クラスI−欠損マウスはすべてに応答しなかった(図2A−2D)
。このように、クラスI−欠損マウスは、オバルブミンおよび16/6Idに応
答する能力を持つが、それらのマウスは、抗−16/6Id抗体に対する応答を
欠く(図1A−1Dおよび2A−2D)。16/6Idで免疫化した正常およびクラスI欠失のマウスにおける白血球減少 、蛋白尿および免疫複合疾病の分析
16/6Idでの対照129マウスの免疫化は、広範囲の抗体応答を引き出す
だけでなく、白血球減少、蛋白尿、および腎臓の免疫複合疾病もまた誘発する(
表1、図3A)。クラスI−欠損マウスは、16/6Id免疫化後、全範囲の抗
体応答をマウントしなかったため、これらの疾病の臨床的出現へのそれらの感受
性をモニターした。全血液をマウスの尾静脈からヘパリン内に収集し、PBSで
1:10に希釈し、次いで、蒸留水中の1%酢酸で1:10に希釈して、赤血球
を溶解した。その後、白血球を、慣用の方法を用いて、顕微鏡を用いて血球計測
器でカウントした。尿中のタンパク質レベルは、Ames 2855 Uris
tix(Miles,Inc)を用いた慣用の比色アッセイで測定した。クラス
I欠損マウスのいずれもが、白血球減少または蛋白尿のどちらの証拠も示さなか
った(表1)。対照およびクラスI−欠損動物の腎臓での免疫複合疾病の評価は
、前記したようなFITC−結合ヤギ抗マウスIgG(ガンマ鎖特異的:Sig
ma Immunochemicals,St.Louis,MO.;Fric
ke,H.ら、1991、Immunoloby,72:42−427)で固定
し染色した冷凍腎臓切片、厚さ5μmを用いて、免疫組織学的に決定した。免疫
複合体沈査は、16/6Id−免疫化対照マウスの腎臓内に容易に検出されたが
;そのような沈査は、クラスI−欠損動物の腎臓内には見出されなかった(図3
B)。合わせて、これらのデータは、クラスI−欠損マウスが実験的SLEを発
症しないことを示している。
表Iの説明。 免疫してから5ヵ月または6ヵ月後、クラスI欠損マウス
および対照の129マウスから血液を採取した。白血球数は、個々の動物について
計測した。結果は平均±標準誤差を表わしている。16/6Idによって免疫したクラ
スI欠損マウスおよび対照の129動物の白血球数は、顕著に異なる(p<0.002);16
/6Idまたは卵白アルブミンによって免疫したクラスI欠損動物の白血球数は、顕
著に違わず(p<0.2)、正常範囲にある。尿中のタンパク質はエイムス2855ユリス
ティックス(Ames 2855 Uristix)(マイルズ・インコーポレーション(Miles
,Inc.))を用いて測定した;正常マウスは陰性であった。
実施例2
SLEマウスにおける治療薬としてのMMI
実施例1において述べたように、実験的SLEを誘導するために、完全フ
ロイントアジュバントに加えた、ヒトのモノクローナル抗DNA抗体である16/6
Idを用いて、Balb/cマウスの皮内へ免疫し、3週間後に生理食塩水中の16/6Id
によって追加抗原刺激した。追加抗原刺激後2週間以内に、すべてのマウスにお
いて抗16/6Id抗体が検出された(図4A)。2週間後、マウスはペレット状のMM
Iを皮内に接種され、その結果この薬剤が30日間にわたって放出された。これ
らの実験のペレットは15mgのMMIを含んでいた(1日あたり0.5mg放出;イノ
ベーティブ・リサーチ・オブ・アメリカ、トレド、オハイオ(Innovative Rese
arch of Amenca,Toledo,Ohio))。30日後に、処置を繰り返した。16/6Id免
疫したマウスのいくつかのグループ、すなわち:MMIのみで処置したマウスま
たは、甲状腺機能不全を避けるためにMMIとチロキシン(1.5mg/ペレット、3
0日間放出:イノベーティブ・リサーチ・オブ・アメリカ、トレド、オハイオ)
で処置したマウス、あるいはMMI偽薬(イノベーティブ・リサーチ・オブ・ア
メリカ、トレド、オハイオ)で処置したマウスを評価した。これに加え、16/6Id
で免疫しなかった正常マウスを、同等の薬物処方で処置した。マウスから一定の
間隔で採血を行い、種々の指数についてモニターした。血清は、実施例1で述べ
たようにELISA法を用い、抗16/6Id抗体および抗DNA抗体の存在について
アッセイした。末梢血細胞数を計数し、標識された市販の特異的抗体を用いたフ
ローサイトメトリーによって、MHCクラスIおよびクラスIIを含む、さまざま
な細胞表面マーカーの発現について分析した。これに加え、実施例1で述べたよ
うにして尿中のタンパク質を測定した。最後に、6ヵ月たった後、マウスを屠殺
し、免疫複合体蓄積物について腎臓を調べた。免疫組織学的観察は、実施例1で
述べたようにして行った。
抗16/6Idおよび抗DNA抗体形成におけるMMIの効果
16/6Idによる追加抗原刺激を行ってから2週間以内に、免疫したマウスす
べてにおいて、抗16/6Idおよび抗DNA抗体の検出を行った(図4A-4B)。無処
置の対照マウスでは、抗16/6Id抗体価は追加抗原刺激後4週間から8週間の間増
加し、また抗DNA抗体価は追加抗原刺激後4週間の間増加し;いずれも実験期
間中安定であった。16/6Id免疫マウスをMMIで処置することにより、処置期間
後
4ヵ月にわたって、少量ではあるが、再現性のある抗16/6Id抗体価レベルの低下
が起こった(表II-A、図4C)。抗DNA抗体価は、MMI処置した動物において
、無処置の16/6Id免疫動物よりも顕著に低下していた(表II-B;図4D)。MMI
とともにチロキシン(T4)処置することにより、部分的には抗16/6Id抗体価の
低下を回復することができたが(表II;図4C)、抗DNA抗体価については、顕
著な効果はなかった(表II;図4D)。偽薬のみでは、抗体価の穏やかな阻害が起
こったが、MMIの阻害と同等になることはなかった。総合すると、これらのデ
ータは、MMI処置によって、抗DNA抗体の生成が低下することを示している
。
a:Rxの列は動物が受けた処理を示す。
a:Rxの列は動物が受けた処理を示す。
白血球減少症およびタンパク尿症の発症におけるMMIの効果
このSLEモデルの特徴的性質は、16/6Id抗体で処置したマウスが時間相
関的にかつ、発症しつつある病気の臨床的な発現の一つとして、白血球減少症を
発症させることである(図5)。16/6Idで免疫し、MMIで処置したマウスは白血
球減少症を発症しなかった(図5)。MMIの効果は、チロキシンで同時に処置す
ることによって妨げられず(図5)、また偽薬処置によって繰り返されることもな
かった。MMI処置後、少なくとも4ヵ月継続したMMIの保護作用は消失した
。さらに、16/6Idで免疫したマウスにおける臨床的発現であるタンパク尿症は、
MMI処置により回避された。
腎臓における免疫複合体の発生におけるMMIの効果
4から6ヵ月後、16/6Idで免疫したマウスは腎臓機能不全によって死に至
る、腎臓における免疫複合体蓄積物を生じた(図6、左)。腎臓は、MMI処置が
終了してから5ヵ月後のマウスから単離され、実施例1で述べたようにして、凍
結および染色された。16/6Idで免疫した動物の腎臓において観察される免疫複合
体のパターンは、SLE患者由来のヒト腎臓におけるものと似ていた(図6A)。
16/6Id免疫マウスをMMIで処置すると、腎臓傷害の発生が顕著に減少した(図
6B)。MMIの効果は、チロキシンで同時に処置することによって妨げられず
、また偽薬処置によって繰り返されることもなかった。この効果は、MMI処置
後、少なくとも5ヵ月間見られた。
実験的疾患過程における、リンパ球集団へのMMIの効果
MMIが自己免疫甲状腺疾患の治療に広く用いられているが、種々のリン
パ球集団へのその効果、および細胞表面へのMHC抗原の呈示への効果について
は、これまで検討されてこなかった。MMIはin vitroにおいてMHCクラス
Iの転写を抑制することが示されており(サジ(Saji)ら、1992b)、またそれが実
験的なSLEの発生を緩和する能力を持つため、in vivoにおけるリンパ球に対
する効果を評価した。
エーリッヒ、R.(Ehrlich,R.)ら、(1989)Immunogenetics 30: 18-26
、において述べられた方法によると、MMI処置された16/6Id免疫マウスまたは
MMI処置されていない16/6Id免疫マウスからの抹消血リンパ球(PBL)は、
MMI処置後のT細胞およびB細胞の比率について、フローサイトメトリーによ
って分析した。T細胞は細胞表面マーカーであるThy1の発現によって、またB
細胞はB220またはMHCクラスIIの発現によって、これらマーカーに対する特
異的抗体によって検出することにより同定された。これらのMHCクラスIおよ
びMHCクラスII表面マーカー、ならびに他のものに対する抗体は、市販されて
いる(ファーミンゲン、ベーリンガー-マンハイム;エーリッヒ,R.ら、(1989)I
mmunogenetics30: 18-26)。16/6Id免疫マウス由来のPBLは、15-20%のB細胞
および25-30%のT細胞を一貫してに含んでいた(図7A)。B細胞でもT細胞でも
ない残りのものは、ナル(null)細胞と名付けられている(図7A)。この分布は
6ヵ月の期間に渡って顕著に変動しなかった。MMI処置がT細胞の比率に殆ど
もしくは全く効果を示さなかったにもかかわらず、MMI処置はPBLにおける
B細胞の画分を顕著に
低下させた(図7A)。染色されなかった細胞の画分において、付随的な増加が見
られた。これらの細胞集団における変化は、MMI処置の直後に最も顕著であっ
たが、MMI処置が打ち切られてから最大2ヵ月まで継続した。MMIと組み合
わせて行うチロキシン処置は、これらの効果を部分的に逆転する傾向があった。
T細胞およびB細胞集団のMHC細胞表面発現のレベルは、2色フローサ
イトメトリーによって評価した(エーリッヒ,R.ら、(1989))。16/6Id処置した
動物由来のPBLは、免疫していない対照と顕著に異なるレベルのMHCクラス
IまたはクラスIIを発現しなかった。MMI処置は、T細胞およびB細胞の表面
における、MHCクラスIの発現を低下させた(図7B、7C)。これに加え、B細
胞におけるMHCクラスIIレベルもまた低下した(図7D)。これらの効果は、16/
6Id追加抗原刺激後の初期、およびMMI処置後1週間以内に最も増強された。
フローサイトメトリーによって評価されたように(エーリッヒ,R.ら、(1989))
、他の細胞表面マーカーは、MMIによって影響を受けなかった。
実施例3
NZBマウスにおける治療薬としてのMMI
NZBxNZWF1マウス(ジャクソン・ラボズ、バー・ハーバー、メイン(
Jackson Labs,Bar Harbor,Maine))は、SLEを自然に発症する(スタイン
バーグ(Steinberg)、A.D.ら(1990)Immunological Reviews 118: 129-163;"
Cellular and Molecular Immunology"アバス、リヒトマンとルーバー(Abbas
,Lichtman,Ruber)編(1992)、360ページ)。これらのマウスはまた、腎臓傷害を
発症し、抗DNA自己抗体を生産する。
6週齢のNZBxNZWF1マウスは、この時点ではSLEの症状を示さな
いが、MMI治療を開始された。1錠の30日用MMIペレット(15mg MMI
)を、実施例1において述べたように、皮下に毎月接種した。血清中の抗DNA
抗体については、実施例1および実施例2で述べたように、毎月ELISA法で
抗体価を調べた。図8に示すように、MMIは16/6Idモデルにおけるように、こ
の自然発生した疾患モデルにおいても、2ヵ月後に抗DNA抗体価を顕著に減少
させた(実施例1および実施例2;図1A-1D、図2A-2D、および図4A-4D)。
抗DNA抗体に対するMMIの効果は、処置後3ヵ月でも、さらに増強された。
実施例4
ヒトにおけるSLE治療としてのMMI
SLEにかかっているヒトを治療するために、MMIは経口投与される。
初めは1日あたり最大で100mgの投与量で行う。これに続いて、最大20日間ま
で50mg、最大20日間まで40mg、連続的に最大30日間から60日間まで5mgか
ら30mgへと減少させていくような、段階的なプログラムを行うこともできる。最
大1年あるいはそれ以上の間、1日あたり5mgから10mgの継続投与も行うことが
できる。TSHレベルは、SLE患者に必要なMMIの治療レベルを評価するた
めに、モニターすることができる。TSHレベルが正常域よりも顕著に上昇した
場合、MMI投与量は次の投与レベルまで低下させることができる。それ以外に
とるべき方法としては、MMI投与量の変更を決めるために、甲状腺ホルモンレ
ベルを用いることもできる。正常域からの顕著な低下は、投与量がより低いとい
う指標として使うことができる。甲状腺機能正常状態を維持するために、患者を
甲状腺ホルモン(T4またはT3)とMMIで処置することができるため、TSH
レベルはより良い指標である。同様な指数は、子供においても評価に用いてよい
。
患者は、臨床的兆候および活発な疾患の症状の緩和についてモニターする
ことができる。特に、モニターされる指数は、自己抗体、特にDNA抗体、PB
L細胞表面マーカー、白血球減少症、タンパク尿症、高免疫グロブリン血症およ
び、穿孔生検による腎臓における免疫複合体レベルを含むことができる。
実施例5
ウィスターラット(Wister rat)またはBalb/cマウスへの移植のための、
メチマゾール(Methimazole)を用いた、in vitroにおけるFRTL-5の処置
ラットFRTL-5(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Ame
ncan Type Culture Collection)、ロックヴィル、MD;CRL 8305;US
4,609,622;US 4,608,341)細胞は、完全6H培地中でほぼコンフルエント
となるまで培養し、次に正常な完全6H培地存在下で、5mMのメチマゾールに対
して72時間さらしたものと、さらさなかったものを用意した(サジら(1992b))
。次に、4プレート
からトリプシン処理によって細胞を移動、および掻き取ることによって、または
2mMのEDTAを加えた冷HBSS(ハンクスバランス生理食塩水(Hanks Ba
lanced Saline Solution))を用いて採取した。細胞を分けるために遠心し
、完全培地に再懸濁して再び遠心沈殿させ、0.1mlから0.2mlの培地に懸濁した。
次に、細胞を正常のBalb/cマウス(NIH;ジャクソン・ラボズ、バー・ハーバ
ー、メイン)、またはウィスターラット(NIH;ジャクソン・ラボズ、バー・ハ
ーバー、メイン)の背中下部の皮下に注入した。60日後、注入部の細胞を、移
植部全体を外科的に切除し、個々の細胞を単離するために、コラゲナーゼとトリ
プシン混合液および、ニワトリ血清(CTC;コーン(Kohn)、L.D.ら、米国
特許第4,609,622号、アンベシ-インピオンベイト(Ambesi-Impiombato)、米国
特許第4,608,341号;コーン、L.D.とW.A.ヴァレンテ(Valente)、FRTL-
5 Today、アンベシ-インピオンベイトとH.ペリルト(Perrild)編、(1989):244
-273))にさらすことにより注入部より細胞を単離し、次に正常の6H培地の入っ
たペトリ皿に蒔いた。甲状腺細胞の存在は顕微鏡によって評価したが;しかしす
べての場合において細胞はコンフルエントまで培養し、6H培地を加えた24ウ
エルプレート内で副培養し、次にTSHによって誘導したヨウ素の取り込み、あ
るいはTSHによって誘導したcAMPレベルを測定する前に、TSHなしで5
日間維持した(コーンら、米国特許第4,604,622号)。TSHによって誘導された
増加は、TSHで処置していない対照細胞と比較した。甲状腺細胞(FRTL-5
)は、細胞がMMIで前処理された注入部位由来の培養においてのみ見い出され
た(表III)。これらの甲状腺細胞を含む培養は、TSHによるcAMPレベルの上
昇と、TSHによるヨウ素取り込みの上昇も示した(表III)。それと対照的に、
FRTL-5細胞がMMIで前処理されていない注入部位由来の培養は、繊維芽細
胞しか含んでいなかった(表III)。これに加え、TSHによるcAMPレベルの上
昇と、TSHによるヨウ素取り込みの上昇は見られなかった。これらの結果は、
MMIによるFRTL-5細胞の前処理は、移植後の拒絶を阻害することを示して
いる。同時に培養されたFRTL-5細胞を、陽性の対照として用いた。それぞれ
のグループは、4個体の動物からなっていた。この実験は繰り返して行い、同様
な結果を得た。
2番目の実験では、それぞれ2匹の動物は、0.2%血清および3H(インシ
ュリン、ハイドロコルチゾン、TSHを含まず)で6日間処理し、MMI存在下
あるいは非存在下で72時間処理した細胞を与えた。顕微鏡で評価すると、60
日後にはどの動物も甲状腺細胞を持たず、またどのアッセイにおいてもTSH反
応を示さなかった。これは、MMIの作用が血清を必要とし、またクラスIが、
in vitroでは血清およびインシュリン、およびハイドロコルチゾン、TSHがな
くてもこれらの条件下で最高に発現されるため、予想されたことである(サジら
、(1992b))。
第3番目の実験では、FRTラット甲状腺細胞、すなわちTSH受容体m
RNAをもたず、甲状腺機能を持たない細胞系列(アンベシ-インピオンベイト
、F.S.、クーン(Coon)、H.G.、(1979)、Int Rev Cytol Suppl.10:163-
171;アカミズ(Akamizu)T、ら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:5677
-5681)が、ネオマイシン選択法を用いて、ヒトTSHR cDNAで安定にトラ
ンスフェクションされた(ファンサンデ(Van Sande)J.ら、(1990)Mol.Cell.
Endocrinol,74:R1-R6)。トランスフェクションしたFRT
甲状腺細胞は、FRTL-5細胞と同様に、5mMのMMIで72時間処置し、上述
のように、Balb/cマウスの背中に移植した。60日後、細胞を単離し、上述の
ようにTSHによるcAMP反応の上昇が示された。MMIで処置されない、T
SHR cDNAでトランスフェクションした対照細胞、あるいはTSHR cDN
Aを持たない対照FRT細胞は、同様に移植して評価した場合、TSHによるc
AMP反応の上昇を示さなかった。これは、トランスフェクションした遺伝子が
、移植された細胞に対するMMI法に耐えられることを示している。
実施例6 ゲルシフトアッセイ法による、MHCクラスI発現におけるMMIの効果の評価
材料
精製したウシTSHは、NIHプログラム由来(NIDDK-bTSH-I-1
,30U/mg)、あるいは以前に述べられたようにして調製した(コーン、L.D.と
ウィナンド(Winand)、R.J.(1975)J.Biol,Chem.,250:6503-6508)。インシ
ュリン、ハイドロコルチゾン、ヒトのトランスフェリン、ソマトスタチン、グリ
シル-L-ヒストジル-L-リジンアセテートは、(シグマケミカル社、セントルイ
ス、MO)から入手した。[125I]cAMPラジオイムノアッセイキット、[α
-32P]dCTP(3000Ci/mmol)、および[32P]UTP(3000Ci/mmol)はデュ
ポン/ニューイングランドニュークレアー(DuPont/New England Nuclear
)(ボストン、MA)から入手した。
細胞培養
FRTL-5ラット甲状腺細胞(コーンら、米国特許第4,609,622号、アン
ベシ-インピオンベイト、ES、米国特許第4,608,341号)は述べたようにして増
殖させる。これらの細胞は、TSHがなければ増殖しないが、TSHがなくても
長期間生存したままでいる。それらの世代時間は約36±6時間であり;TSH
(5H)を含まず、5.0%の血清を含む培地中で6日後では、1x10-10mol/LのT
SHは8から10倍にヨウ素の取り込みを増加させ、チミジンの取り込みを10
倍以上増加させた。細胞は2倍体であり、大部分の実験においてその5から25
回の植え継ぎを行ったもので、5%の子ウシ血清、1mmol/Lの非必須アミノ酸(
GIBCO)および
6種のホルモン混合物(6H培地):すなわち、TSH(1x10-10mol/L)、インシュ
リン(10mg/L)、ハイドロコルチゾン(1nmol/L)、ヒトのトランスフェリン(5mg/
L)、ソマトスタチン(10μg/L)、およびグリシル-L-ヒスチジル-L-リジンア
セテート(10μg/L)を添加した、クーンの修飾F12培地において日常的に培養
された(コーン、L.D.ら、米国特許第4,609,622号、アンベシ-インピオンベイ
ト、E.S.、米国特許第4,608,341号)。それらは7−10日ごとに植え継がれ、
2日または3日ごとに新鮮な培地が与えられた。それぞれの実験において、使用
前4−6日の間、細胞は5%または0.2%の血清を加えたTSHを含まない培
地(5H)、TSHおよびインシュリンを含まない培地(4H)、またはTSHとイン
シュリンを含まず、またハイドロコルチゾンを含まない培地(3H)にシフトさ
れた。
細胞抽出物
細胞は5%の子ウシ血清を添加した6H培地中で、6−7日間、70−8
0%コンフルエントまで培養され、次に5%の子ウシ血清を添加した5H培地に
5日間シフトされた。TSH(1x10-10M)および/またはMMI(5mM)が、
適当な濃度になるように40−44時間添加された。次に細胞を採取し、ディグ
ナム,J.(Dignam)らの方法、Methods in Enzymology,101:582-598、の変法に
よって抽出物を調製した。簡単に述べると、細胞を冷リン酸緩衝生理食塩水(P
BS)で2回洗った後、掻きとることによって採取した。続いて、それらを沈殿
させ、冷PBSで洗い、次に再び沈殿させた。沈殿をディグナム緩衝液C(20m
M Hepes緩衝液、pH7.9、1.5mM MgCl2、0.42M NaCl、25%グリセロール
、0.5mMジチオスレイトール、0.5mMフェニルメチルスルフォニルフルオライド
、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチン)に再懸濁した。最終的なNa
Cl濃度は、細胞ペレットの容量に基づいて0.42Mに調整し、細胞を凍結融解を
繰り返すことによって溶解した。次にこの抽出物を、4℃で20分間、10,000xg
で遠心分離した。上清を回収し、小分けして−70℃で保存した。
ゲル・モビリティー・シフト・アッセイ
結合反応は、20μlの容量で、室温で30分間行った。典型的な反応混合
液は1.5fmolの32P DNA、3μgの細胞抽出物、10mM Tris-Cl(pH7.9)中の
3μgのポリ(dI-dC)、1mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、1mM EDT
Aおよび5%
グリセロールを含む。特異性を確かめるために、標識していない競合物(100
倍から1000倍過剰量の2本鎖オリゴヌクレオチド、または200倍過剰量の
PD1プロモーター断片)を、32Pを加える20分前に、適当な対照結合反応液
に添加した。インキュベーションした後、反応混合液を0.5xTBE中4%ポリア
クリルアミドゲルで90分から120分間、160Vで電気泳動し(サムブルック(
Sambrook)、J.、ら、(1989))、次に乾燥させてオートラジオグラフィーを行っ
た。プローブは、製造社の指示にしたがってクレノー酵素(インビトロ・ラベリ
ングキット、アマシャム(In Vitro labeling kit,Amersham))によって標識
し、G-50カラムで精製した(5'末端→3'末端)。
正の調節および負の調節(それぞれエンハンサーまたはサイレンサー領域)
因子は、ブタのMHCクラスI遺伝子、すなわちPD1のプロモーターにおいて
同定されている(シンガー(Singer)とマグアイアー(Maguire)(1990))。これら
のエンハンサーおよびサイレンサー領域は、トランス因子によって仲介されてい
る(シンガーとマグアイアー(1990)Cirt.Rev.Immunol.10:235-257)。2つの調
節ドメインが、PD1遺伝子の5’隣接領域において同定されている。一つの調
節ドメインは、転写開始部位から約-1塩基から-300塩基の間に存在する。この領
域はインターフェロン応答エレメントおよび主要エンハンサーを含み、また、サ
イクリックAMP応答エレメント(CRE)と相同的な部位を含む。ゲル・モビ
リティー・シフト・アッセイを用いた研究は、TSH/CAMPにより誘導され
たか、または修飾されたタンパク質が、この領域と相互作用し、また転写開始を
調節できることを示している(サジら、(1992a))。もう一つの複合的調節領域は
、サイレンサーとエンハンサー活性の重複を示すが、プロモーターの上流−69
0塩基から−769塩基対の間にマップされている(ワイスマン(Weissman)、J
.D.とシンガー、D.S.(1991)Mol.Cell.Biol.11:4217-4227)。エンハンサー
およびサイレンサーエレメントは、クラスI遺伝子の組織特異的発現と、組織特
異的レベルに関連している(ワイスマン、J.D.とシンガー、D.S.(1991))。
サジら、(1992b)の研究は、MMIで処置したラットFRTL-5細胞にお
いて、MHCクラスI遺伝子の発現が低下することを示した。この研究はまた、
MHCクラスIの発現におけるMMIの効果が転写レベルで起こることを示した
。したが
って、FRTL-5甲状腺細胞の系は、MMIの効果に関わる、調節性のDNA配
列エレメントおよびトランス作用因子を同定するための良い系である。PD1ゲ
ル・シフト・モビリティー・アッセイは、PD1遺伝子の5’隣接領域および、
MMI、TSH、ならびにMMIとTSHで処理したFRTL-5細胞からの細胞
抽出物を用いて行った。
図9A-9Bは、図に示されているようにPD1プロモーター(SEQ ID
NO:1)の5’部分の151領域(SEQ ID NO:1の第54塩基から220塩
基)、114領域(SEQ ID NO:1の第221塩基から320塩基)、140
領域(SEQ ID NO:1の第321塩基から455塩基)、および238領域(
SEQ ID NO:1の第456塩基から692塩基)を含むPD1プロモーター
配列を示している(ワイスマン、J.D.とシンガー、D.S.(1991))。図10は
、140領域のサイレンサーおよびエンハンサー領域(SEQ ID NO:2)を
、ゲルシフト活性についてその領域をマップするために用いたオリゴヌクレオチ
ドとともに示している。関連するサイレンサー領域は、TTF-2様の、インシュ
リン感受性エレメントによって分離された反対向きの矢印で示してある。図11
は、配列の相同性を示すために、PD1プロモーターの114領域(SEQ ID
NO:36)、140領域(SEQ ID NO:37)、および238領域の105領域
(SEQ ID NO:35)を並べたものを示している。サイレンサー領域は、T
TF-2様の領域によって分離された矢印で示してある。これらの断片は、PD1
クラスI MHC遺伝子のPD1プロモーター由来である(シンガーD.S.ら、(1
982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:1403-1407)。
図12A-12Dは、図9に示されている、放射性標識した140領域(SE
Q ID NO:1の第321塩基から455塩基)(図12Aと図12D)、114領域
(SEQ ID NO:1の第221塩基から320塩基)(図12B)、および151
領域(SEQ ID NO:1の第54塩基から220塩基)(図12C)断片を用いた
ゲルシフトを示している。MMIによって影響を受ける複合体はAという印をつ
けてある。図12A、図12Bおよび図12Cにおいて、レーン4はサイレンサー領域
(図10と以下を参照のこと)と、5H培地(TSH無添加)と5%の血清存在
下で維持したFRTL-5ラット甲状腺細胞由来の細胞抽出物との間で形成された
複合体を示している。5H培地中で維持した細胞から調製物を抽出する前に、2
4時間5mMのMMIを添加
した効果は、図12Aから図12Dのレーン5に示されている。5H培地中で維持し
た細胞から調製物を抽出する前に、24時間1x10-10MのTSHを添加した効果
は、図12Aから図12Cのレーン6に示されている。5H培地中で維持した細胞か
ら調製物を抽出する前に、24時間5mMのMMIおよび1x10-10MのTSHを添
加した効果は、図12Aと図12Bのレーン7に示されている。抽出物を調製する前
に、7日間1x10-10MのTSHを添加した効果(6H,MMI-)は、図12Aから
図12Cのレーン3に示されている。抽出物を調製する前に、24時間5mMのMM
Iおよび1x10-10MのTSHを添加した効果(6H,MMI+)は、それぞれの場
合のレーン2に示されている。図12Aから図12Cのレーン1は、放射性標識した
プローブのみを含む。200倍過剰濃度の、非標識の151断片(SEQ ID
NO:1の第54塩基から220塩基)が、標識した151断片(SEQ ID N
O:1の第54塩基から220塩基)による複合体Aの形成を競合する能力は、図
12CのレーンCに示されている。MMI感受性のA複合体形成を阻害するための
、200倍過剰濃度の非標識の105(SEQ ID NO:1の第588塩基から
692塩基)(図12Cのレーンa)、140領域(SEQ ID NO:1の第321
塩基から455塩基)(図12Cのレーンb)、および114領域(SEQ ID N
O:1の第221塩基から320塩基)(図12Cのレーンd)がしめされており、こ
れらはそれぞれの複合体で形成される複合体Aが、同一のものであることを示し
ている。パネルDでは、レーンeはサイレンサー領域(図10および下記を参照
)と、0.2%子ウシ血清を含む3H培地存在下で維持したFRTL-5ラット甲状腺
細胞由来の細胞抽出物との間で、基本的なA複合体が形成されることを示してい
る。5%血清を加えた5H中で維持された細胞に比べ(図12A)、MMI(レーン
f)、TSH(レーンg)、あるいはその両者を一緒に(レーンh)24時間加え
ても、3H培地中でのA複合体の形成には影響なかった(図12D)。3H培地は
インシュリンもTSHも含まない。200倍過剰濃度の非標識の105(SEQ
ID NO:1の第588塩基から692塩基)(レーンi)が3H培地におけるM
MI非感受性のA複合体の形成を阻害する能力は、同じ複合体が関与するかも知
れないことを示すが、3H培地にインシュリンおよび/または血清が含まれない
ことが、TSHとMMIの阻害効果を妨げている。3H細胞抽出物非存在下で、
A複合体が形成されないことは、レーンjに示し
てある。
図14(A)は、図9に示される放射性標識した238断片(SEQ ID
NO:1の第456塩基から692塩基)と、5%血清を加えた5Hホルモン混合
液(TSHを含まず)(5H基本培地)中で維持されたFRTL-5ラット甲状腺細
胞抽出物とを用いて行ったゲルシフトを示している(レーン2)。MMIによって
影響される複合体をAとして示した;5mMのMMIと、1x10-10MのTSHで2
4時間処置したFRTL-5細胞由来の細胞抽出物による、この複合体形成の阻害
は、レーン14に示されている。238コンストラクト(SEQ ID NO:1の
第456塩基から692塩基)は、105コンストラクト(SEQ ID NO:1
の第588塩基から692塩基)を含む(図9参照);放射性標識した238(S
EQ ID NO:1の第456塩基から692塩基)の200倍過剰濃度の非放射
性標識の105(SEQ ID NO:1の第588塩基から692塩基)が、複合
体Aの形成を阻害する活性をもつことによって明らかなように、複合体Aは23
8コンメトラクト(第456塩基から692塩基)の105部分(SEQ ID
NO:1の第588塩基から692塩基)で形成される(レーン3)。レーン2のA
複合体はサイレンサー領域の間で形成され(図10と上を参照)、また以下によっ
て明らかなように、114(SEQ ID NO:1の第221塩基から320塩基)
、140(SEQ ID NO:1の第321塩基から455塩基)、および151(
SEQ ID NO:1の第54塩基から220塩基)コンストラクト(図12)と
形成されるものと同じである。第一に、放射性標識した238(SEQ ID N
O:1の第456塩基から692塩基)に比べ、200倍過剰濃度の非放射性標識
の114(SEQ ID NO:1の第221塩基から320塩基)(レーン4)およ
び140(SEQ ID NO:1の第321塩基から455塩基)(レーン5)がA
複合体形成を阻害し;200倍過剰濃度の151(SEQ ID NO:1の第54塩
基から220塩基)は部分的にしか阻害しない(レーン6)。第二に、放射性標識
した238に比べ、1000倍濃度のサイレンサー領域の配列をもつ2本鎖オリ
ゴヌクレオチド(図10のS2(SEQ ID NO:4))が、A複合体の形成を阻
害し;エンハンサーエレメントの配列に似せた、同じ濃度の2本鎖オリゴヌクレ
オチド(図10のE1(SEQ ID NO:20))はA複合体形成になんの影響もも
たなかった。サイレンサー配列を修飾したオリゴヌクレオチド(図10のS1(
SEQ ID NO:3)、
S3(SEQ ID NO:10)、S6(SEQ ID NO:6)、S7(SEQ ID N
O:7)およびS8(SEQ ID NO:8))は、1000倍濃度で部分的な阻害作
用を示した(レーン9−13)。S1(SEQ ID NO:3)による阻害(レーン
12)は、図10中の矢印で示された末端反復部分の一つのみの変異が、阻害作
用を低下させるために十分であることを示唆しており;S8(SEQ ID NO
:8)による部分的な阻害(レーン10)は、チログロブリン(thyroglobulin)
プロモーター(サンティステーバン(Santisteban)、P.ら、およびMol.Endocr
inol.6: 1310-1317,1992)のTTF-2と反応する配列に類似し、また逆方向反復
配列(図10)の間にあるエレメントもまた、A複合体の形成に重要であること
を示唆した。この結論は、レーン7の結果によって支持される。1000倍濃度
の、チログロブリンプロモーター(サンティステーバン、Pら、Mol.Endocrin
ol.6: 1310-1317,1992)の甲状腺転写因子-2(TTF-2)反応性エレメントの配列
に類似したKオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:38)が存在することがA
複合体形成を増強し、またレーン15の結果は、1000倍濃度の、非標識のK
オリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:38)が、MMI/TSHの作用を逆転す
ることができたことを示す。したがって、MMI感受性A複合体形成の低下は、
TTF-2とインシュリンを必要とし、これは図12Dのデータと一致する。Kオ
リゴヌクレオチド(SEQ ID NO:38)はインシュリンによって誘導されたT
TF-2と「結び付き」、これは複合体形成の増加とMMI効果の低下をまねき、こ
れはすなわちインシュリンの必要性があるということである。
図14(B)はさらに、MMIの作用に対するTTF-2の重要性を示し、
またMMIの効果をアッセイするもう一つの手段を提供する。図14(B)は、
放射性標識したKオリゴヌクレオチド(TGACTAGCAGAGAAAACA
AAGTGA)(SEQID NO:38)および、5%血清を含む5Hホルモン混
合液(TSHを含まず)(5H基本培地)の存在下で維持された、FRTL-5ラッ
ト甲状腺細胞由来の細胞抽出物とを用いたゲルシフトを示している(レーン16)
。形成された上部のFRTL-5細胞タンパク質/DNA複合体は、5mMのMMI
(レーン17)、1x10-10MのTSH(レーン18)、および5mMのMMIと1x10-10
MのTSH(レーン19)によって、24時間細胞を処置することによって阻害
される。したがって、TTF-2上部タンパク質/DNA複合体は、MMIの作用
に必須であり、また図14Aで示されたA
複合体形成に重要である。その形成阻害はMMIの影響をアッセイする手段であ
り、またMMI作用のインシュリン依存性を支持するものである。
図12AからD、および図14AからBにいてA複合体の下に検出される
複合体は、エンハンサー複合体(A複合体の下で、最も上のバンド)または非特
異的複合体であると考えられている。図12AからD、および図14AからBに
おいて、オートラジオグラフィーの最も下にある強いシグナルは、結合しなかっ
たプローブである。
これらの結果を総合すると、複合体形成阻害は、MMIまたは他の薬がM
HCクラスI転写を負に調節することの指標として使うことができる。
A複合体は、異なるタンパク質から構成されると考えられている。異なる
タンパク質は、組織間の組織特異的複合体のレベルを決定するために重要である
。TSHはPD1プロモーターの-200から-1領域において、新たな甲状腺特異的
複合体の形成を誘導した。この複合体はまた、5mMのMMIによって増加し、こ
れにはTTF-2様の転写因子が関与した。この複合体はA複合体が減少するにつ
れて増加した。その形成は、TATAAボックス活性と関連していた。われわれ
は、この甲状腺特異的タンパク質/DNA複合体が組織特異的サイレンサー/エ
ンハンサー複合体をしのぎ(図10)、クラスI遺伝子の転写開始を低下させるこ
とによって、遺伝子発現を低下させるという考えを提案する。
実施例7
CATアッセイを用いた、MHCクラスIの発現におけるMMIの効果の評価
プラスミド構造、DNAプローブおよびオリゴヌクレオチド
pSV3CATのマルチクローニングサイトに挿入した、全長のPD1プロ
モーターおよびPD1 CATコンストラクトpH(-38)は、以前説明されている(
エーリッヒ、R.ら(1989)Immunogenetics 30: 18-26)。pSV3CATのマルチ
クローニング部位に挿入した、全長のPD1プロモーターの連続的欠失突然変異
については、以前説明されている(シンガーとワイスマン(1991);サジら(1992a)
;サジら(1992b))。簡単に述べると、PD1遺伝子の上流制御領域の5’内部欠
失シリーズは、Bal31消化によって作成した;5’末端シリーズは-1012塩基対
から-68塩
基対に渡り;すべては+15塩基対のところで、共通な3’境界を持っていた。こ
の欠失シリーズはまた、プロモーター活性を評価するために、pSV3CATレポ
ーターコンストラクトにもクローン化された(シンガーとワイスマン(1991);マ
グアイアー(Maguire)、J.ら、(1992)Mol.Cell.Biol 12 3078-3086)。
図13は、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)
キメラを用いたトランスフェクションデータを示しており、これはMMIが全長
PD1プロモーター活性を阻害することを示している。
ラットFRTL-5甲状腺細胞は、以前述べられたエレクトロポレーション
法(サジら、1992b)によってトランスフェクションする12時間前に、5%子
ウシ血清を含む新鮮な6H培地に加えられた。簡単に述べると、FRTL-5細胞
は80%コンフルエントまで増殖させ、採取し、洗浄し、0.8mlのエレクトロポ
レーション緩衝液(272mMショ糖、7mMリン酸ナトリウム,pH74、および1mM M
gCl2)中に、1.5x107細胞/mlで懸濁した。20μgの全長CATコンストラクトを
、5μgのpSVGHとともに添加した。次に、細胞に電気パルスをあたえ(33
0ボルト、電気容量25μFD)、そしてプレートにまき(プレートあたり約6x106
細胞)、5%の子ウシ血清培地を含む6H培地中で12時間培養した。このとき
、細胞は5%子ウシ血清を加えた5H培地(対照)、5%子ウシ血清と5mM MM
Iを加えた5H培地(MMI+)、5%子ウシ血清を加えた6H培地(TSH+)、も
しくは5%子ウシ血清と5mM MMIを加えた6H培地(MMI/TSH)内に置か
れた。40時間後、それらを採取する。細胞生存率は約80%であった。トラン
スフェクション効率を調べるためのhGH放射免疫アッセイに用いるために、培
地を採取し(ニコルス研究所、San Juan Capstrano,CA)、そして細胞をCA
Tアッセイ用に採取し、これには130μlの終容量中で20-50μgの細胞を用いた。
インキュベーションは37℃で2時間から4時間行い;アセチル化されたクロラ
ムフェニコールは、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分離し、TLC
プレートの陽性反応を示した部分を切り取り、シンチレーションカウンターで定
量した。データは、GH活性に対するCAT活性の比として示されている。全長
PD1プロモーターは、151(SEQ ID NO:1の第54塩基から220塩
基)および、114(SEQ ID NO:1の第221塩基から320塩基)、およ
び140(SEQ ID NO:1の第321
塩基から455塩基)、および238(SEQ ID NO:1の第456塩基から
692
に比べてCAT活性を低下させる。連続的欠損突然変異体のキメラ型CATコン
ストラクトのCAT活性は、クラスIプロモーター活性に対する、MMIの効果
をアッセイするために、CATアッセイに用いることができる。したがって、C
AT活性はクラスIプロモーター活性に対する、MMIの効果をアッセイするも
う一つの方法であり、また自己免疫疾患の治療または移植療法に関連する治療作
用に関して、MMIをまねることができる他の薬剤を評価するために用いること
ができる。
実施例8
上流サイレンサー/エンハンサーを制御する転写因子の同定と、
これらの因子に対するMMI/TSHの効果。
材料と方法
材料。
TSHおよび他のホルモンは、実施例6と同様である。MMIとインシュ
リンはシグマケミカル社(セントルイス、MO)から入手し、またNF-KBのp
50およびp65サブユニットに対するウサギポリクローナル抗体、c−fos
ファミリーおよびc−jun/AP1は、サンタクルーズ・バイオテクノロジー
、Inc.(Santa Cruz Biotechnology)(サンタクルーズ、CA)から入手した
。[α-32P]デオキシCTP(3000Ci/mmol)および、[14C]クロラムフェ
ニコール(50mCi/mmol)はデュポン/ニューイングランドニュークレアー(Du
Pont/New England Nuclear)(ボストン、MA)から入手し;[γ-32P]A
TP(6000Ci/mmol)はアマシャム社(アーリントンハイツ、IL)から入手し
た。子ウシ血清は、GIBCOラボラトリーズ・ライフ・テクノロジー、Inc.
(グランドアイランド、NY)の加熱処理した、マイコプラズマを含まない製品
であった。他のすべての材料は、特にことわりのない限りシグマケミカル社のも
のを用いた。
細胞培養。
FRTL-5ラット甲状腺細胞(インターシル・リサーチ・ファウンデーシ
ョン(Interthyr Research Foundation)、ボルチモア、MD;ATCC No.
CRL8305)は、以前詳細に報告されたすべての性質を保った、新鮮なサブクロ
ーン(F1)であった(実施例6;サジ、M.ら、(1992a))。新鮮な培地を2日ま
たは3日毎に加え、細胞を7日から10日ごとに継代した。個々の実験において
、細胞をTSHを含まない培地(5H培地)、またはTSHと、インシュリンを含
まず、0.2%の血清を含む培地(4H培地)に6日から8日間シフトされ;示し
たように他の試薬を添加した。
プラスミドの構造、DNAプローブおよびオリゴヌクレオチド。
クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)リポータ
ー遺伝子と連結した、ブタのMHCクラスI PD1プロモーターの、5’隣接
領域の1100塩基対をコードする全長のPD1プロモーターキメラは、クラスI配
列の-1100塩基対の連続的な欠失突然変異を持つキメラを有するとして述べられ
てきた(実施例7を参照)(ワイスマン、J.D.とシンガー、D.S.(1991)Mol.
Cell.Biol.11,4217-4227;ジュリアーニ(Giuliani)、C.、ら、(1994)J.Bio
l.Chem.270,11453-11462;エーリッヒ、R.、ら、(1988)Mol.Cell.Biol.8,6
95-703;マグアイア、J.E.ら、(1992)Mol.Cell.Biol.12,3078-3086;ハウ
クロフト(Howcroft)、T.K.ら、(1993)EMBO J.12,3163-3169)。5’末端
シリーズは、-1100から-89塩基対に渡り;すべては、+15塩基対の位置に共通
の境界部分を有した。異なるキメラの番号は+1、すなわち転写開始点から決定
され、本明細書に参考文献として取り入れらている番号を付したヌクレオチドに
拡張されている(ジュリアーニ、C.、ら、(1995)J.Biol.Chem.270,1453-114
62)。転写開始点は図9のヌクレオチド1091である。XbaIリンカーを付加した
後、pSV0CATのNdeI部位にマルチクローニング部位を持つ、pSV3CAT
のXbaI/HindIII部位にPD1断片をサブクローニングした。他のCATコンス
トラクトは5’末端にBamHI部位を持つ適当なフォワードプライマーと、3’
末端にHindIII部位を持つ転写開始点の-13から+1塩基を持つPD1配列のアン
チセンス・リバースプライマーをそれぞれ100pmol用いた、ポリメラーゼ連鎖反
応によって作成した。p(-127)CATおよびp(-89)CATの突然変異は2段階組
換PCR法によって作成した(サイキ(Saiki)、R.K.ら、(1988)Science239,
487-491;ヒグチ、R.
(1990)PCRプロトコル:方法と応用法ガイド(PCR Protocols: A Guide
to Methods and Applications) (イニス(Innis)、M.A.、ゲルファント(G
elfand)、D.H.、スニンスキー(Sninsky)、J.I.、およびホワイト(White)
、T.J.編、アカデミックプレス社、サンディエゴ、177-183)。第一段階では、
重複した配列を持つ2つのPCR産物を作成し、これらはどちらもPCRプライ
マーの一部として導入された同じ突然変異を含んでいる。第二段階のPCRはこ
れらの重複するPCR産物を鋳型とし、最終産物の5’末端または3’末端のD
NA配列をプライマーとして用いて行った。このPCR産物を上述のpSV3CA
Tまたはプロメガ社(マディソン、WI)から購入したpCAT-エンハンサー欠
失ベクターおよびpCAT対照ベクターのマルチクローニング部位に挿入した。p
CATベクターの場合、CRE様配列とその突然変異型を、プライマーの両端に
あるBamHI部位を用いて作成した。本明細書で用いられているブタのクラスI
(PD1)遺伝子の、異なる長さの5’隣接領域の下流にCAT遺伝子を含む、
pSV0系列のコンストラクトは、p(-1100)CAT、p(-400)CAT、p(-294)CA
T、p(-203)CAT、p(-127)CAT、およびp(-89)CATと命名され;5’末端
から+1塩基、すなわち転写開始点までのヌクレオチドに基づいて番号を付けて
いる。
本明細書で用いるPD1プロモーター領域に対するDNAプローブは、以
前報告されたようにして得た(実施例6;ワイスマン、J.D.とシンガー、D.S
.(1991)Mol.Cell.Biol.11,4217-4227;ジュリアーニ、C.、ら、(1994)J.Bi
ol.Chem.270,11453-11462;エーリッヒ、R.、ら、(1988)Mol.Cell.Biol.8,
695-703;マグアイア、J.E.ら、(1992)Mol.Cell.Biol.12.3078-3086;ハウ
クロフト、T.K.ら、(1993)EMBO J.12,3163-3169)。異なる組織におい
て、MHCクラスIのレベルを一定に調節するサイレンサーおよびエンハンサー
配列を含む2本鎖オリゴヌクレオチド、およびこれらの部位の突然変異を持つオ
リゴヌクレオチドは記載されたものである(ワイスマン、J.D.とシンガー、D.
S.(1991)Mol.Cell.Biol.11,4217-4227)。同様に、チログロブリン(TG)の
インシュリン応答エレメント(IREs)の配列、およびTSH受容体(TSHR
)プロモーター、オリゴKおよびTIFをそれぞれ含む2本鎖オリゴヌクレオチ
ドは、記載された通り合成した(サンティステーバン、P.ら、(1992)Mol.Endo
crinol.6,1310-1317;シムラ(Shimura)、Y.ら、(1994)J.Biol.Chem.269,
31908-31914)。オリゴKまたはオリゴTIFはまた、トランスフェクション実験
のためにアニーリングされ、pUC19プラスミドに挿入した。簡単に述べると、p
UC19プラスミドはXbaIで直鎖化し、アルカリホスファターゼによって脱リン
酸化し、T4 DNAリガーゼを用いて平滑末端をもつオリゴヌクレオチドと連結
した。
精製した後、方向の信頼性を確かめ、またコピー数を確認するために、プ
ラスミドの配列を決定した(サンガー、F.、ら、(1977)Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 74,5463-5467)。すべてのプラスミド標品は、CsCl勾配遠心分離法に
よって2回精製した(デイビス、L.G.、ら、(1986)Basic Methods in Molec
ular Biology、Elsevier,New York,93-98)。
トランスフェクション
クラスIプロモーター-CATキメラによって安定にトランスフェクショ
ンしたFRTL-5細胞は、すでに記載されている(ジュリアーニ、C.、ら、(199
5)J.Biol.Chem.270,11453-11462)。TSHまたはMMIの効果を調べるた
めに、細胞を6H培地中で70%から80%コンフルエントまで生育させ、5日
間TSHなしで(5H培地)維持し、この間細胞はCAT活性を測定する前に40
時間、1x10-10MのTSHまたは5mM MMIにさらされた。同じクラスI-CA
Tキメラを用いた、一過的トランスフェクションは、2つの方法のうち一方を用
い、エレクトロポレーション法(イクヤマ、S.ら、(1992)Mol.Endocrinol.6,
793-804;イクヤマ、S.ら、(1992)Mol.Endocrinol.6,1701-1715)を用いて行
った。6H培地中で維持されたFRTL-5細胞にトランスフェクションし、12
時間後次の3つの方法の一つで処置された:5mMのMMIが新鮮な6H培地とと
もに添加されるか;6H培地が新鮮な5H培地と置換されるか;または細胞が新
鮮な6H培地中で維持された。それ以外の方法としては、FRTL-5細胞は、T
SHなしで(5H)5日間維持され、トランスフェクションに先立ち、12時間
TSHを含む培地(6H)に戻した。次にそれらを6H培地にまき、次にこの培
地を、示したように5mMのMMIを含む5H培地またはMMIを含まない5H培
地、およびTSHを含む5H培地またはTSHを含まない5H培地と交換した。
エレクトロポレーション法(ジーンパルサー(Gene Pulser)、バイオラ
ッド、リッチモンド、CA)には、次に述べる例外を含む、実施例7およびすで
に述べられた方法で行った(イクヤマ、S.ら、(1992)Mol.Endocrinol.6,793-8
04;イクヤマ、S.ら、(1992)Mol.Endocrinol.6,1701-1715)。20μgのp(-1100
)CATまたは等モル量の欠失突然変異体、またはpSV0CAT(陰性対照)の
いずれかを用い;これらの量はプラスミド濃度の関数として、トランスフェクシ
ョン条件を最適化する予備実験において決めた。36時間から44時間後に細胞
を回収し、20μgの細胞溶解物を用い、37℃で4時間インキュベーションする
ことでCAT活性を測定した(イクヤマ、S.ら、(1992)Mol.Endocrinol.6,793
-804;イクヤマ、S.ら、(1992)Mol.Endocrinol.6,1701-1715;ゴルマン(Gor
man)、C.Mら、(1982)Mol.Cell Biol.2,1044-1051)。アセチル化したクロラ
ムフェニコールは薄層クロマトグラフィーによって分離し、オートラジオグラフ
ィーを行い;陽性を示す点を切り取り、シンチレーションカウンターで定量した
。
20μgずつのキメラクラスIプロモーター-CATコンストラクトとpUC1
9プラスミドを、オリゴK、オリゴTIF、またはそれぞれの突然変異型の存在
下、または非存在下で共トランスフェクションするために、DEAE-デキスト
ラン法(ロペタ、M.A.ら、(1984)Nucleic Acids Res.12,5707-5717)を用い
た。細胞は6H培地中で80%コンフルエントとなるまで生育させ、トランスフ
ェクション前に5H培地に12時間シフトし、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(
PBS)で2回洗い、プラスミドDNAと250μgのDEAE-デキストラン(5プ
ライム−3プライム社(5Prime-3 Prime,Inc.))を含む5mlの無血清5H培地
で、1時間インキュベーションした。次に、細胞はPBSに加えた10%ジメチ
ルスルフォキシドに3分間さらし、PBSで2回洗い、12時間5H培地で培養
し、そして、示したように、その中でMMIまたはTSH存在下、または非存在
下でさらに36時間維持した。CATアッセイは上述のようにして行った(実施
例7も参照のこと)。
トランスフェクション効率は、カリフォルニア大学、ラホヤのS.スブラ
マニ(Subramani)博士によって、快く提供された5μgのpRSVLucを用いた共
トランスフェクションによって決めた。CAT値、すなわち3つの実験の平均±
標準誤差は、プロメガのアッセイシステム、およびモノライト2010ルミノメータ
ーを用い、ルシフェラーゼ活性とタンパク量に対して標準化した。細胞の生存率
は、すべての実験において約80%であった。
抽出物。
細胞抽出物は、次の追加または例外を含め、実施例6に述べたように、す
でに記載された方法の修飾法(ディグナム、J.、ら、(1983)Nucleic Acids
Res.11,1475-1489)によって調製した。同じ実験において、細胞は80%コン
フルエントとなるまで6H培地中で生育させ、次に5%子ウシ血清を含む5H培
地(-TSH)、あるいはわずか0.2%の血清を含む4H培地(-TSH、-インシ
ュリン)において7日間維持した。実験は、細胞を1x10-10MのTSHまたは5mM
のMMIにさらすことで開始した。冷PBS、pH7.4で2回洗浄した後、500
gで遠心することによって沈殿させた。このペレットを2倍量のディグナム緩衝
液C(ディグナム、J.、ら、(1983)Nucleic Acids Res.11,1475-1489)中に
再懸濁し、細胞ペレットの体積に基づいて、最終NaCl濃度を0.42Mに調整した
。細胞は、凍結融解を繰り返すことによって溶解した。抽出物は4℃、20分間
、35,000rpm(100,000xg)で遠心した。上清を回収し、小分けにして−70℃で
保存した。
核抽出物を用い、複数の実験点をとって、たとえば経時的に行う実験など
でゲルモビリティーシフト実験あるいはウェスタンブロットアッセイを行うため
に、1つまたは2つの培養皿から核タンパク質を抽出するための、迅速で効果的
な技術を用いた。この方法は、造血細胞核を単離する方法(バンス(Bunce)、C
.M.ら(1988)Anal.Biochem.175,67-73)を修飾したものであり、次いで高塩濃
度緩衝液を用いて核からタンパク質を抽出する(ヘニングハウゼン(Henninghaus
en)、L.ら、(1987)Methoods in Enzymology 152,721-735)。この方法では、
すべての試料および試薬は氷上に保っておく。遠心分離には、微量遠心機を、そ
の最高回転数の設定で用いる。緩衝液Aならびに緩衝液Bは、0.5mM DTT、0
.5mM PMSF、2ng/mlペプスタチンA、および2ng/mlロイペプチンを含む。典
型的なものでは、5x105またはそれ以上の細胞を、Mg2+とCa2+を含まない10m
lのダルベッコ修飾リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、pH7.4を用いて洗浄し、
掻きとって1mlのDPBSを入れた微量遠心管に回収する。室温で30秒間遠心
して細胞を沈殿させ、緩衝液A(10mM HEPES-KOH、pH7.9、10mM KC
l、1.5mM MgCl2、0.1mM EDTA)中、0.3M
ショ糖、2%トゥイーン40(Tween40)を含む溶液の5倍量に再懸濁し、トラ
イアイス-エタノール中で凍結し、必要であれば、さらに分析するために、−8
0℃に保存する。細胞は37℃の水浴槽で解凍し、黄色いチップを付けた微量ピ
ペットを用いて、核を遊離させるために、50回から100回(細胞数および試
料の容量に応じて)ピペッティングする。試料を緩衝液A中1.5Mショ糖1mlを
含む溶液に重層し、4℃で10分間遠心分離する。核は遠心管の底に沈殿し、細
胞質オルガネラおよび細胞膜残査は中間層に位置する。核沈殿物を1mlの緩衝液
A中で、30秒遠心することによって洗浄し、次に10mlの緩衝液B(20mM H
EPES-KOH、pH7.9、420mM NaCl、1.5mM MgCl2、0.2mM EDTA
、25%グリセロール)に再懸濁する。時々ボルテックスによって撹拌しながら、
試料を20分間氷上に置き、それに続いて4℃で20分間遠心分離する。核タン
パク質を含む上清画分を小分けにし、−70℃で保存する。ショ糖遠心分離を行
う前に、細胞膜を破壊して核を遊離するために適したピペッティング操作は、良
い結果を得るために重要である。このショ糖遠心分離を行う前後に、核の純度お
よび/または他の細胞構成要素の分布は、トリパンブルー染色により試料を、位
相差顕微鏡のもとで観察することによって調べることができる。
電気泳動ゲル・モビリティー・シフト・アッセイ(EMSA)
PD1プロモータープローブは、以前報告されたように、制限酵素切断に
よって得られ(実施例6および実施例7;ワイスマン、J.D.とシンガー、D.S
.(1991)Mol.Cell.Biol.11,4217-4227;ジュリアーニ、C.、ら、(1995)J.B
iol.Chem.270:11453-11462;エーリッヒ、R.、ら、(1988)Mol.Cell Biol.8
,695-703;マグアイア、J.E、ら、(1992)Mol.Cell.Biol.12,3078-3086;ハ
ウクロフト、T.K.、ら、(1993)EMBO J.12,3163-3169)、QIAEX抽出
キット(キアジェン社(Qiagen)、チャッツワース、CA)を用い、2%アガロー
スゲルから精製した。これらは、クレノー断片を用い、[α-32P]dCTPで標識
し、一方、オリゴKはT4キナーゼを用いて[γ-32P]ATPで放射性標識した
。放射性標識したプローブは、120Vで1時間から2時間、8%非変成ポリア
クリルアミドゲル電気泳動することによって精製した(サムブルック、J.、フリ
ッシュ、E.F.およびマニアティス、T.(1989)Molecular Cloning: a labora
tory manual,第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラトラトリー・プ
レス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク)。細胞抽出物を用いた
結合反応は、室温で30分間、20μlの容量で行い;反応混合液は、いくつかの
実験で示したように、10mM Tris-Cl(pH7.9)、1mM MgCl2、1mMジチオス
レイトール、1mMエチレンジアミン・四酢酸(EDTA)、5%グリセロール、お
よびKCl中、1.5fmolの[32P]DNA、および3μgの細胞抽出物、3.0μgの
ポリ(dI-dC)を含んでいた。特にふれてあるところでは、標識していない2本
鎖オリゴヌクレオチドを競合物質として結合反応に加え、標識したDNAを加え
る前に、細胞抽出物とともに20分間インキュベーションした。同様に、抗血清
を用いるスーパーシフト実験では、細胞抽出物を、標識したDNAを加える前に
、免疫したウサギ血清または正常のウサギ血清いずれかを含む同様の緩衝液中で
、室温で20分間インキュベーションした。インキュベーション後、反応混合液
を、室温で、0.5xTBE中、160Vにおいて、1時間から2時間、4%または5
%の非変成ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した。ゲルを乾燥させ、オ
ートラジオグラフィーを行った。
転写伸長アッセイ。
In vitroの転写伸長(ラン-オン(run-on))アッセイは、すでに記載され
たようにして行った(サジ、M.、モリアーティ(Moriarty)ら、(1992)J.Clin.
Endocrinol.Metab.75,871-878;イソザキ、O.、ら(1989)Mol.Endocrinol.3
,1681-1692)。精製した[32P]UTP-放射性標識した核RNAを小分けしたも
のを、ナイロンメンブレンに固定化した、過剰量のクラスI、TG、およびβ-
アクチンcDNA挿入物、または対照のpSG5(ストラタジーン)またはpBR32
2(ニューイングランドバイオラボ)プラスミドDNAとハイブリッド形成した
。
Sox-4のクローニングと組換え型Sox-4タンパク質
ラットSox-4をクローニングするために、8つの反復したチログロブリン
・インシュリン応答エレメントをもつ、重合したオリゴヌクレオチド(オリゴヌ
クレオチドK;TGACTAGTAGAGAAAACAAAGTGA)を用い、
サザンブロッティング法の変法(ヴィンソン(Vinson)、C.R.、ら、(1988)Gen
es Dev.2,801-806)によって、λgt11 FRTL-5甲状腺細胞のcDNA発現
ライブラリー(アカミズ、T.ら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,56
77-5681)をスクリーニングした。最初
のスクリーニングでは、ライブラリーを143cm2あたり40,000プラーク形成単位の
密度でプレートした。42℃で4時間置いた後、プレートに10mMのイソプロピ
ルβ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を染み込ませたニトロセルロース
フィルターを重層し、37℃で12時間インキュベーションした。培養プレート
からニトロセルロースフィルターを取り除き、室温で15分間風乾した。タンパ
ク質の結合した、乾燥したフィルターは、6M塩酸グアニジンを含む結合緩衝液
(10mM Tris-HCl、pH7.6、200mM KCl、5mM MgCl2、1mM EDTA、
1mMジチオスレイトール)中、4℃で10分間、プラットフォーム型の振盪機を
用いて変成させた。このステップを繰り返した後、変成溶液を塩酸グアニジンを
含まない等量の結合緩衝液で希釈し、4℃で5分間振盪し続けた。フィルターを
塩酸グアニジンの2倍希釈液で5分間、4回繰り返して洗浄し、そしてなにも添
加していない結合緩衝液を用いて5分間、2回洗浄し、続いて結合緩衝液に溶か
した5%のカーネーション脱脂粉乳を含む、ブロッキング溶液に移した。穏やか
に30分間振盪した後、フィルターを50μg/mlのポリ(dI-dC)、20μg/mlの変
成したウシ胸腺DNA、0.62mM ZnSO4、および0.25%脱脂粉乳を含む結合緩
衝液中で、1x106cpmの32P-標識したDNAプローブにさらした。それに続き、
オートラジオグラフィーを行う前に、フィルターを4℃で、0.25%の脱脂粉乳を
含む結合緩衝液中で10分間、3回洗浄した。スクリーニングに用いたプローブ
は、アニーリングし、リン酸化したオリゴヌクレオチドを、T4リガーゼで連結
することによって作成した。ライゲーション産物をアガロースゲル電気泳動で単
離し、pCAT-プロモータープラスミド(プロメガ社、マディソン、WI)の、
平滑化したXbaI部位にクローン化した。必要がある場合は、8回反復したオリ
ゴKを含むDNA断片を、保存してあるプラスミドから単離し、ニックトラスレ
ーションし、スクリーニングのプローブとして使用した。クローン化したcDN
AはpUC19のEcoRI部位にライゲーションし、すでに記載されているように
して配列決定を行った(イソザキ、O.、ら(1989)Mol.Endocrinol.3,1681-16
92 41)。塩基配列の整列と比較は、PC-GENEおよびGENE WORKS
ソフトウェア(インテリジェネティクス(IntelliGenetics)、マウンテンビュ
ー、CA)を用いて行った。
精製した組換え型タンパク質を得るため、ラットSox-4 cDNAのNcoI
-EcoRI
断片(-1から1411塩基対)を、pET30a(+)(ノバジェン(Novagen)、マディソン
、WI)のNcoIとEcoRI部位にライゲーションした。N-末端が6個連続した
ヒスチジン残基に連結された、組換え型タンパク質は、細菌株BL21(DE3)中
で作成した。単一のコロニーを、30μg/mlのカナマイシンを含む50mlのLB培地
に接種し、37℃で振盪培養した。OD600が0.6に達した時点で、イソプロピル
-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を、1mMとなるように加えた。1m
MのIPTGによる誘導を3時間行った後、細胞を遠心(5,000xg、5分間、4
℃)によって回収し、4mlの氷冷した結合緩衝液(5mMイミダゾール、0.5M N
aCl、20mM Tris-HCl,pH7.9)に再懸濁し、次に粘性がなくなるまで超音波
処理した。Ni2+結合樹脂(ノヴァジェン、マディソン、WI)を用い、親和性
により精製したタンパク質が得られた。細胞抽出物は遠心分離(39,000xg、20
分間、4℃)によって得られ;上清を樹脂-固定化されたNi2+を含むHis結合カ
ラムにかけ;このカラムを25mlの結合緩衝液で洗浄した。結合しなかったタン
パク質は、15mlの洗浄緩衝液で洗い;Sox-4はイミダゾールを含む、15mlの
溶出緩衝液で回収した。His結合カラムは5mlの樹脂を含み、7.5mlの脱イオン
水、12.5mlのチャージ緩衝液(50mM NiSO4)、ならびに12.5mlの結合緩衝液に
よって、続けて洗浄した。1/3量のストリップ緩衝液を添加した後、溶出画分
を20mM HEPES-KOH,pH7.9、100mM KCl,0.1mM EDTA,20%グリ
セロール、0.5mMジチオスレイトール(DTT)、0.5mMフェニルメチルスルフォ
ニルフルオライド(PMSF)、2μg/mlロイペプチン、2μg/mlペプスタチンA
に対して透析し、次に電気泳動ゲル・モビリティー・シフト・アッセイ(EMS
A)で用いるために、セントリコン10(アミコン、ビヴァリー、MA)で濃縮
した。
その他の方法および統計的有意性
タンパク質濃度はブラッドフォード法(バイオラッド)により、結晶化し
た子ウシ血清アルブミンを標準物質として用いて決定した。すべての実験は、異
なるバッチの細胞を用い、少なくとも3回繰り返し行った。測定値は、とくに断
わりのない限り、平均±標準誤差である。値どうしの有意性は、分散の二元分析
を用いて決定し;もしP値が0.05以下である場合、その値は有意であるとした。
結果
ラン−オン分析では、インスリン(5H)プラス5%血清を含有する培地中に
維持されたFRTL−5甲状腺細胞のMMIとTSH処理は、クラスI遺伝子の
転写速度を独立的にかつ加算的に減ずる(図15A;実施例7における図13と
一致)。MMIとTSHがクラスI遺伝子の転写を減ずる能力は培地中のインス
リン及び/又は血清の存在を必要とする。したがって、MMIとTSHは、単独
で又は一緒に、培地中にインスリンなしに、0.2%のウシ血清のみを加えて7
日間維持された細胞からの核を用いて試験したときに、クラスI転写速度を減ず
るそれらの能力を失う(図15B)。これらのデータは、MMIによるクラスI
の転写抑制がTSHによって加算的にかつ独立的に調節される因子を必要とする
のみでなく、インスリン及び/又は血清の成分によって調節される因子をも必要
とすることを示唆した。TSH作用はGravesのIgG産生におけるTSH
受容体自己抗体を刺激することによってデュプリケートされる(duplicated)こと
ができる(データ示さず)。
ラン−オン分析において最大に有効である同じ濃度において(図15A)、M
MIとTSHは、FRTL−5甲状腺細胞中に一時的にトランスフェクトされた
、クラスI 5’−フランキング領域、p(−1100)CATの1100bp
を含有するクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)キメ
ラの活性を独立的にかつ加算的に減ずる(図16Aと16B)。したがって、M
MIとTSHは甲状腺細胞における外因性並びに内因性クラスIプロモーター活
性を加算的にかつ独立的に調節する。TSH作用はGraves・IgG産生に
おけるTSH受容体自己抗体を刺激することによって再びデュプリケートされる
可能性がある。
MMIが作用しうる調節要素をさらに局在するために、FRTL−5細胞中に
安定に(表IV)又は一時的に(図16A〜16B)トランスフェクトされた1
100bp クラスIブタプロモーター−CATキメラの一連の5’欠失構築体
に対するMMIの効果。甲状腺細胞と非甲状腺細胞とにおいて示されるように(
図16A;表IV;Weissman,J.D.とSinger,D.S.(1
991)Mol.Cell.Biol.11,4217〜4227;Giu
liani,C.等(1995)J.Biol.Chem.270:11453
〜11462;Ehrlich,R.等,(1988)Mol.Cell.Bi ol
.8,695〜703;Maguire,J.E.等(1992)Mol. Cell.Biol
.12,3078〜3086;Howcroft,T.K.
等(1993)EMBO J.12,3163〜3169)、−1100、−4
00、−294及び−203bp間の5’欠失はクラスIプロモーター活性を増
強し、このことは−1100〜−203bp間の一連の負の調節要素の存在を実
証する(図16A)。−127bpまでの欠失はプロモーター活性を低下させる
が、−89bpまでの短縮はプロモーター活性を増強した(図16A)。これら
のデータは−203〜−127bpの間におけるエンハンサーAの存在(Tin
gとBaldwin(1993)Current Opinion in Im munol
.5,8〜16)、及び−127〜−89bp間の保存サイレンサー
の存在(実施例9)と一致する。MMIとTSHは試験した全てのキメラにおけ
る外因性プロモーター活性を加算的に低下させた(表IV,図16A)。転写開
始の89bp内のキメラに活性が持続したので、−89bpより下の要素の機能
は両方の作用剤によって影響された。しかし、これらのデータは、MMI/TS
Hが上流要素と相互作用するタンパク質の活性を調節する可能性と、これらの機
能が転写開始の−89bp内の要素に関連している可能性を排除しなかった。こ
の可能性は2つの観察により支持された。
表IVの説明.FRTL−5細胞は6H培地(TSH添加)においてほぼ集密に
まで増殖させ、5H培地(TSH含まず)中に7日間維持してから、TSH又は
MMIによって40時間処理した。対照細胞は5H培地中に同じ40時間維持し
た細胞であった。CAT活性を上述したように(実施例7;実施例8;材料と方
法)測定した。MMI処理又はTSH処理はpSV0対照を除いて全てのCAT
プラスミドによってトランスフェクトした細胞中でCAT活性を有意に低下させ
た(p<0.05又は0.01)。図16Bは用いた各キメラCAT構築体の構
造を表す。
第一に、MMIとTSHの付加効果はp(−1100)CATの外因性クラス
Iプロモーター活性をpSV0対照のレベルまで低下させた(図16A)。これ
は、クラスI RNAレベルを低下させるそれらの付加能力(Saji等(19
92b)J.Clin.Endocrin.Metabol.75:871〜8
78)と、クラスIプロモーター配列との複合体形成(実施例6)と、ラン−オ
ン分析(図15)とを相当する最小レベルに一致させる。−400bpまでの欠
失は、プロモーター活性をpSV0対照の活性の方向に減ずる両作用剤の付加能
力を除去したが;この現象は−203〜−127bp領域の欠失後にp(−12
7)CATキメラに復帰し、−89bpCATキメラ中で再び失われた。それ故
、内因性クラスI遺伝子発現の最大のTSH/MMI誘導低下に匹敵した、外因
性プロモーターに対する最大の加算的TSH/MMI活性は、−1100〜−4
00bp間と−127〜−89bp間の欠失で失われたサイレンサー要素の活性
に関連すると思われた。
第二に、実施例9に示すように、−127〜−89bp間のサイレンサーの機
能は、公知のcAMP反応性要素(CRE)に対して相同な、オクトマー配列、
−107〜−100bpに依存する(図9)(Saji,M.等,1992a,
1992b;Montminy,M.R.等(1986)Proc.Natl. Acad.Sci.U.S.A
.83,6682〜6686;Angel,P.
等(1987)Mol.Cell.Biol.7:2256〜2266;Leo
nard,J.等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S .A
.89,6247〜6251;Vallejo,M.等(1992)J.B iol.Chem.
267,12868〜12875;Leonard,J.等
(1993)Mol.Endocrinol.7,1275〜1283;Iku
yama,S.等(1992)Mol.Endocrinol.6,1701〜
1715;Habener,J.F.(1990)Mol.Endocrino l
.4,1087〜1094)。さらに、FRTL−5細胞のTSH/cAMP
処理が38bpサイレンサーのCRE様要素との新規なタンパク質/DNA複合
体の出現を誘導し、この形成が−89〜+1bp間のクラスIプロモーター領域
中の要素によって阻止されることが、実施例9に示される(実施例9)。下流の
サイレンサーと相互作用するタンパク質の2つ、甲状腺転写因子−1とY−ボッ
クスタンパク質(TSEP−1(TSHRサプレッサー要素タンパク質−1)と
呼ばれる)は+89〜+1bp範囲内の要素とも相互作用する(図43)。これ
らのデータは実際に下流サイレンサー並びに−89bpより下の要素と相互作用
する因子の活性を調節し得ることを示唆した。
実施例8の残りでは、−724〜−697bp間の上流サイレンサーの活性を
加算的にかつ独立的に調節するMMI/TSHの能力を特徴付ける。実施例9で
は、下流サイレンサー(−127〜−89bp)の活性を調節するMMI/TS
Hの能力を示す。さらに、それぞれに対するMMI/TSH作用が、異なる因子
にも拘わらず、インスリン及び/又は血清によって調節される因子を必要とする
こと、及び下流サイレンサーに対するMMI/TSH効果が機能的に顕著である
ことは、これらが相互作用性であることを示す(実施例8、9、10及び11)
。
−724〜−697bp間のサイレンサー要素が重複エンハンサー要素と共に
機能して、種々な組織におけるクラスI発現の構成的レベルを調節することが判
明している(実施例6;Weissman,J.D.とSinger,D.S.
(1991)Mol.Cell.Biol.11,4217〜4227)。5H
培地のみに維持された対照FRTL−5細胞からの抽出物と比較することによっ
て、MMIとTSHによる24時間の細胞処理(それぞれ、図12A,レーン5
と6)は、−770〜−636bp間の残基を包含するクラスIプロモーター・
フラグメントとのタンパク質/DNA複合体(矢印A)の形成を低下させた。こ
のフラグメントは140断片と名付けられ(図9と11)、上流サイレンサーと
その重複エンハンサーの両方を包含する(図10)。MMI/TSH効果は加算
的であった(図12A,レーン7)。さらに、6日間の細胞のTSH処理は24
時間のTSH処理(図12A,レーン6)よりも大きい減少を生じた(図12A
,レーン3)が;24時間のMMI処理はまた加算的であった(図12A、レー
ン2対3)。
140断片との複合体形成のTSH/MMI誘導低下は、ラン−オン分析にお
けるTSH又はMMI作用へのインスリン/血清の機能的必要性と一致して、イ
ンスリン/血清を必要とした(図15A〜15B)。したがって、FRTL−5
細胞のTSHとMMI処理は、インスリンなしで0.2%血清のみを添加した培
地中に維持されたFRTL−5細胞中でA複合体の形成を低下させなかった(図
12D)。非標識140断片の200倍過剰との自己競合によって実証されるよ
うに、複合体形成は特異的であった。
140断片はサイレンサーと重複エンハンサーの両方を包含する(図10)。
ゲルの頂部のMMI/TSH感受性複合体(図12A〜12D、複合体A)は、
その移動度と複合体の顕著さに基づいて、サイレンサーであると思われた(実施
例6;Weissman,J.D.とSinger,D.S.(1991)Mo l.Cell.Biol
.11,4217〜4227)。したがって、サイレン
サー複合体はゲルの頂部近くに移動し(Weissman,J.D.とSing
er,D.S.(1991)Mol.Cell.Biol.11,4217〜4
227);さらに、高レベルのサイレンサーと低レベルのエンハンンサー複合体
とは甲状腺細胞に見られる低レベルのクラスI発現と一致する(Saji,M.
,Moriarty等(1992)J.Clin.Endocrinol.Me tab
.75,871〜878;Saji,M.等(1992)Proc.Na tl.Acad.Sci.U.S.A
.89,1944〜1948;Weiss
man,J.D.とSinger,D.S.(1991)Mol.Cell.B iol
.11,4217〜4227)。高レベルの発現を有する組織、即ち、リ
ンパ球では逆のことがいえる(Weissman,J.D.とSinger,D
.S.(1991)Mol.Cell.Biol.11,4217〜4227)
。MMI/TSH効果がサイレンサー複合体に対するものであることを明確に確
立するために、サイレンサー複合体の形成を阻害することができるオリゴヌクレ
オチドの存在下(図17A,S2とS6)、エンハンサー複合体のみの存在下(
図17A、E9)又はいずれの存在下でもなく(図17A、S3)(Weiss
man,J.D.とSinger,D.S.(1991)Mol.Cell.B iol
.11,4217〜4227)その形成を評価した。S3又はE9によっ
てではなく、S2とS6による阻害によって実証されるように(図17A、レー
ン2および4対1、3および5)、その形成がMMIとTSHによって減ぜられ
る(図17A)複合体aはサイレンサーである。複合体bはサレンサーに対する
E
9効果の不存在下でのE9による阻害によって実証されるようにエンハンサーで
ある(図17A、レーン5)。
これらの関連配列を含むクラスIプロモーターからの非標識フラグメント、フ
ラグメント105(−503〜−399bp)、フラグメント114(−870
〜−770bp)並びにフラグメント151(−1036〜−871bp)を用
いて、それぞれが放射性標識140フラグメントによって形成されるサイレンサ
ー複合体の形成を阻害することができることを発見した(図17B、レーン7〜
9対6)。さらに、これらのフラグメントの各々をインスリンと血清の存在下で
維持した細胞からの抽出物と共にインキュベートしたときに、MMIとTSHを
単独に又は一緒にしたFRTL−5細胞の処理は、140フラグメントにおける
サイレンサーと同じ移動度を有する複合体の形成を同様に阻害したが、インスリ
ンと血清の不存在下では阻害しなかった(図12D)。これらの結果は、サイレ
ンサー要素が−1100〜−399bp間の複数の部位に存在するが、各々がT
SH/MMIによって同じように調節されることを示唆する。このことは、−1
100〜−294bp間のクラスIプロモーターの5’欠失による活性の漸次増
加と、クラスIプロモーター活性をpSV0対照のレベルにまで低下させるMM
I/TSHの能力の漸次喪失とに一致する(図16A)。
クラスI 5’−フランキング配列(−190〜−180bp)のエンハンサ
ーAはインターフェロン応答要素とCREの上流である(図16B)。インター
フェロン作用がクラスIレベルを高め、ヒドロコルチゾン作用がそれらを低下さ
せることが重要である(Giuliani,C.等(1995)J.Biol. Chem
.270:11453〜11462)。甲状腺細胞におけるエンハンサ
ーAとのタンパク質複合体は塩調節され、Mod−1と名付けられ、この複合体
はヒドロコルチゾン、インスリン/血清、又はインターフェロンによって調節さ
れ、NF−κBのp50サブユニットとfra−2を包含する(Giulian
i,C.等(1995)J.Biol.Chem.270:11453〜114
62)。140フラグメントとFRTL−5細胞抽出物とによって形成される、
サイレンサーとエンハンサーとの複合体は塩感受性である(図18A)。したが
って、塩が増加すると、サイレンサーが両方ともTSH/MMIによって調節さ
れ
る2つの分離したタンパク質/DNA複合体によって構成されることが認められ
た(データ示さず)。シフト分析に高い塩濃度(100μM KCl)を用いて
、下側の複合体が、この下側の複合体を上側の複合体のレベル又はそれよりやや
高いレベルまでスーパーシフトさせる、NF−κBのp65サブユニットに対す
る抗血清の能力によって実証されるように、NF−κBのp50サブユニットで
はなく、NF−κBのp65サブユニットとのアダクツであるように思われるこ
とを示すことができた(図18B,それぞれ、実線とダッシュ線)。上側複合体
はc−fosファミリー・メンバー(fomily member)又は関連タンパク質とのア
ダクツであるように思われる(図18C)。したがって、c−fosファミリー
・メンバーと反応する抗血清はスーパーシフトを生じたが(図18:レーン2お
よび4)、fra−1、fra−2、fosB、c−jun又はjunBに特異
的な抗血清(図18C、レーン5〜9)も対照の標準血清も(図18C、レーン
3)生じなかった。これらの結果は、初めて、上流サイレンサー複合体のタンパ
ク質成分を同定し、それとエンハンサーAとの関係を支持する。
MMIとTSHがサイレンサー複合体の形成を増加するのではなく減少したと
いう観察は、サイレンサー活性の増加に関連して反対のことが予想されていたの
で、意外であった。これの説明と、クラスIレベルに対するMMI/TSH作用
におけるその役割とは下記実験から明らかになった。第一に、上流サイレンサー
に対するMMI/TSH効果のインスリン/血清感受性が、TSHRのインスリ
ン応答要素ではなく、チログロブリン(TG)プロモーターのインスリン応答要
素(IRE)と相互作用するタンパク質に関連することが判明した。したがって
、in vitroでは、オリゴK、TG−インスリン応答要素の配列を有する
オリゴヌクレオチドの添加がMMI/TSH処理細胞からの抽出物中に明らかな
上流サイレンサーとの複合体形成の低下を阻害することができた(図14A、レ
ーン7と15)。これに反して、TSHRインスリン応答要素のオリゴTIFは
上流サイレンサーによる複合体形成に影響しなかった(データ示さず)。
第二に、上流サイレンサー複合体に対するMMI/TSH作用はTGインスリ
ン応答要素と相互作用するタンパク質を直接必要とすることが判明した。したが
って、オリゴK自体を放射性標識プローブとして用いた場合に、用いた条件下で
F
RTL−5細胞からの細胞抽出物によって2つの主要タンパク質複合体が形成さ
れた(図14B、レーン16)。非標識オリゴヌクレオチドの250倍過剰を用
いた競合によって実証され、オリゴKの突然変異形の250倍過剰によって(S
antisteban,P.等(1992)Mol.Endocrinol.6
,1310〜1317;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mol.E ndocrinol
.7,1297〜1306)又はオリゴTIFの250倍過
剰によって(データ示さず)は実証されなかったように、両方はオリゴKに特異
的であった。より重要なことには、MMI又はTSHによる24時間の細胞処理
はオリゴKとの上側タンパク質複合体の形成を低下させ、加算的に複合体形成を
阻害した(図14B、レーン17〜19対4、矢印A)。MMIの加算的効果は
、まさに140フラグメント中のサイレンサー複合体の場合におけるように、T
SH(6H培地)に6日間暴露された細胞中で明らかであった。さらに、オリゴ
KとのTSH/MMI調節複合体はその形成にインスリン/血清の存在を必要と
した。したがって、インスリンなしに、0.2%血清と共に(4H培地)維持さ
れた細胞からの抽出物中には複合体が存在せず、TSH/MMIはこの複合体の
形成の不存在に明確な影響を有さなかった。
第三に、クラスIプロモーターの140フラグメント中でTGインスリン応答
要素とサイレンサーとを結合するタンパク質が上流サイレンサー活性と、複合体
形成を低下させるMMI能力とのために必要であった。オリゴKを含有するプラ
スミドと、クラスIプロモーターのp(−1100)CATキメラとのFRTL
−5細胞中へのコトランスフェクション(cotransfection)は、プロモーター活性
を有意に増加させた(図19A、オリゴK1とオリゴK2)。この増加は、FR
TL−5細胞抽出物によってオリゴK複合体と競合させるその能力を有さないオ
リゴKの突然変異体とのコトランスフェクションによっては、デュプリケートさ
れなかった(図19A、オリゴKM)(Santisteban,P.等(19
92)Mol.Endocrinol.6,1310〜1317;Shimur
a,Y.等(1994)J.Biol.Chem.269,31908〜319
14;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mol.Endocrino l
.7,1297〜1306)。オリゴKのこの効果は、p(−127)CAT
キメラを用いた場合は、この効果が下流サイレンサーではなく上流サイレンサー
を必要とする効果であるという説明に一致して、デュプリケートされなかった(
図19B)。したがって、インスリン誘導タンパク質を、細胞中にトランスフェ
クトされたオリゴKへの結合によって除去すると、サイレンサー活性は機能的に
弱められるか又は除去され、エンハンサー活性の発現が生じた。
最後に、オリゴKと相互作用するインスリン誘導タンパク質がサイレンサー活
性(図19)と、MMI/TSH作用がサイレンサー複合体形成を低下させる可
能性(図14)とのために必要であるが、MMIによるクラスI遺伝子発現低下
におけるその役割は、下流サイレンサー及びTSHRインスリン応答要素と相互
作用するインスリン誘導タンパク質の作用によって顕著になる。したがって、オ
リゴTIFコトランスフェクションはp(−1100)CATプロモーターキメ
ラに対するMMI効果を喪失させるが(実施例9)、オリゴKとのコトランスフ
ェクションはp(−1100)CAT活性のMMI低下を防止しなかった(表V
)。
★ 活性の有意な増加、P<0.05又はこれより良好
★★ 活性の有意な低下、P<0.05又はこれより良好、MMIの不存在下の
活性との比較による。表Vの説明
.DEAE−Dextran方法を用いて、5%ウシ血清を加えた5
H培地中で増殖させたFRTL−5細胞を図16Aにおけるようにp(−110
0)CAT、又は20若しくは40μgのオリゴKオリゴヌクレオチド含有プラ
スミド(それぞれ、オリゴK1とオリゴK2)、又は40μgのオリゴKM含有
プラスミド(既述されたオリゴKの突然変異体)によってコトランスフェクトし
て(Santisteban,P.等(1992)Mol.Endocrino l
.6,1310〜1317;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mo l.Endocrinol
.7,1297〜1306;Shimura,Y.等
(1994)J.Biol.Chem.269,31908〜31914)、図
19Aに用いた。細胞は5mM MMIを含む又は含まない培地に維持した。C
AT活性を36時間後に測定し、転化速度(conversion rate)を成長ホルモンレ
ベルに均一化した(normalized);p(−1100)CATと、オリゴK配列が挿
入されたベクターとによる対照トランスフェクションの活性に100%の値を割
り当てた。オリゴK又はその突然変異体によってコトランスフェクトされた細胞
のCAT活性の差異を対照値と比較した。数値はそれぞれ2通りにおこなわれた
3種類の異なる実験の平均値±S.E.であった。
これらのデータの要約は以下のことを示唆した。上流サイレンサーは減少し、
下流サイレンサーをエンゲージさせ(engaged)機能的に顕著であるようにさせる
ためには上流サイレンサーをディスエンゲージさせ(disengaged)なければならな
いと思われる。上流サイレンサー要素によって形成された、p65及びc−fo
sの複合体は、それらがオリゴKに結合することができるインスリン誘導タンパ
ク質とも相互作用するときにのみ、サイレンサー機能を示す。TSH/MMI作
用はインスリン誘導タンパク質へのその作用によって上流サイレンサー複合体形
成を減ずる。上流サイレンサー複合体形成の減少は上流サイレンサー活性の喪失
に関連すると推定されるが、このことはそのMMI/TSH誘導活性が顕著であ
る下流サイレンサーへのMMI/TSH作用に必然的に付随すると考えられる。
したがって、上流サイレンサー部位の漸次欠失は下流サイレンサー活性の減衰を
生じるが、全ての上流サイレンサー部位が欠失したときに、それらの優勢は回復
する(図16A;表IV)。
本明細書中で得られ、特徴付けられたクローンは、上流サイレンサー及びTG
−インスリン応答要素と相互作用するインスリン誘導タンパク質であり、上記仮
説を支持する。これらの研究は、上流エンハンサーが、サイレンサーと同様に、
我々がSox−4と名付けたTG−インスリン応答要素反応性因子と相互作用す
ることをさらに実証する。
53,040の分子量を有する442アミノ酸残基タンパク質をコードするオ
ープン・リーディング・フレームを含む1422ヌクレオチド含有クローンが得
られた(図20A〜20B)。このタンパク質はマウスSox−4と98%類似
し(Van de Wetering等,EMBO.Journal(1993
)12:3847〜3854)、ヒトSox−4と類似する(Farr,C.J
.等(1993)Mammalian Genome,4,577〜584)。
マウスSox−4は、転写トランス活性化の要因であった、T−リンパ球からの
SRY関連遺伝子としてクローン化され、配列AACAAAGを結合することが
できる。その機能はまだ知られていない(Van de Wetering,M
.等,EMBO.J.(1993)12:3847〜3854)。ラットとマウ
ス
のSox−4はヒトSox−4よりも32残基小さい(Farr等,(1993
)Mammalian Genome,577〜584)。ヒトSox−4の追
加残基の全てと、マウスSox−4の異なる残基の大部分はタンパク質の1領域
内に集中し、主としてグリシンとアラニン残基である。マウスSox−4とヒト
Sox−4の両方の差異がこの領域に集中するので、ヒトSox−4中のこのイ
ンサート領域が中性スペーサー領域であることは明らかではない(Farr等,
(1993)Mammalian Genome,577〜584)。Sox−
4タンパク質は転写調節因子のHMG(高速移動群)クラスのメンバーであり、
配列特異的形式でDNAを結合し、T−細胞発達に重要な遺伝子を調節する精巣
発達決定遺伝子(TCF−1α)を調節するSRYと、脂質生成組織における多
様な遺伝子群の転写に対するインスリンの組織特異的効果の仲介に役割を果たす
ように思われるインスリンによる正負の調節を受ける遺伝子を調節するIRE−
ABP(インスリン応答要素A結合タンパク質)とを包含する(Alexand
er−Bridges M.等(1990)J.Cell.Biochem.4
8:129〜135)。3種類のSox−4タンパク質の全てに共通の特徴はH
MGボックス(図20、太線)と、複数の推定カゼインキナーゼとヒストンキナ
ーゼリン酸化部位を有するセリン富化カルボキシ末端(terminal tail)とを包含
する(Van de Wetering,M.等,EMBO.Journal(
1993)12:3847〜3854;Farr等,(1993)Mammal ian Genome
,577〜584)。HMGボックスは、クロマチンに結
合し、DNAの構造的組織化(structural organization)に重要である、HMG
−1と関連タンパク質へのその配列類似性によって定義されるドメインである。
例えばSox−4のような転写調節因子のHMGクラスでは、HMGボックスは
DNAの副溝への配列特異性DNA結合を示し、DNAヘリックスの強い屈曲を
誘導する(Van de Wetering,M.等,EMBO.Journa l
(1993)12:3847〜3854;Farr等,(1993)Mamm alian Genome
,577〜584;Ferrari等,EMBO J .
11:4497〜4506)。
本明細書中で述べ、特徴付けるSox−4組換えタンパク質はオリゴk、TG
インスリン応答要素に、又は関連オリゴヌクレオチド(Santisteban
,P.等(1992)Mol.Endocrinol.6,1310〜1317
;Francis−Lang,H.等(1992)Mol.Cell.Biol
.12,576〜588;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mol. Endocrinol
.7,1297〜1306)、甲状腺ペルオキシダーゼ・
プロモーター上の関連インスリン応答要素の配列を模倣するオリゴZに結合する
ことができる(図21)。競合研究に報告されるデータと一致して、TTF−2
、TGインスリン応答要素と相互作用する予定結合因子(presumptive binding f
actor)と相互作用するその能力を失うオリゴKの突然変異体とは、Sox−4は
結合しない(Santisteban,P.等(1992)Mol.Endoc rinol
.6,1310〜1317;Francis−Lang,H.等(1
992)Mol.Cell.Biol.12,576〜588;Aza−Bla
nc,P.等,(1993)Mol.Endocrinol.7,1297〜1
306)。オリゴZ突然変異体への結合も、EMSA研究においてTPOインス
リン応答要素と競合するその能力の低下と一致して、低下する。Sox−4はT
GプロモーターのオリゴCと弱く結合する(図21)、これは2種類の異なる転
写因子:甲状腺転写因子1とPax−8を識別する、チログロブリン(TG)又
は甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)インスリン応答要素近くの部位を模倣する
(Santisteban,P.等(1992)Mol.Endocrinol
.6,1310〜1317;Francis−Lang,H.等(1992)M ol.Cell.Biol
.12,576〜588;Aza−Blanc,P.
等,(1993)Mol.Endocrinol.7,1297〜1306;C
ivitareale,D.等(1993)Mol.Endocrinol.7
,1589〜1595;Civitareale,D.等(1989)EMBO J
.2537〜2542;Guazzi,S.等(1990)EMBO J.
9,631〜3639;Francis−Lang,H.等(1992)Mol .Cell.Biol
.12,576〜588;Zannini,M.等(19
92)Mol.Cell.Biol.12,4230〜4241;Shimur
a,H.等(1994)Mol.Endocrinol.8,1049〜106
9;Oh
mori,M.等(1995)Endocrinology,136,269〜
282)。これらのデータはTTF−2に与えられたオリゴヌクレオチド結合特
異性と一致して、単独でSox−4がTTF−2であることを示唆することがで
きる。
しかし、Sox−4はDNAアーゼ−1保護実験においてTG−プロモーター
のインスリン応答要素領域をフットプリントすることができるとしても、このフ
ットプリントはFRTL−5細胞抽出物中のTTF−2に割り当てられたTGイ
ンスリン応答要素部位よりもはるかに広範囲である。TGインスリン応答要素の
保護が存在するが、この保護はTTF−2とpax−8を結合することができる
オリゴC部位と、オリゴA領域にも及ぶ。この広範囲なフットプリントはTTF
−2を定義する今までの研究で予測された範囲を越える(Santisteba
n,P.等(1992)Mol.Endocrinol.6,1310〜131
7;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mol.Endocrinol
.7,1297〜1306)。
ノーザン分析もSox−4がTTF−2であることに一致したパターンに適合
しない。以前の研究によると、TTF−2は甲状腺特異性転写因子である(Sa
ntisteban,P.等(1992)Mol.Endocrinol.6,
1310〜1317;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mol.En docrinol
.7,1297〜1306;Civitareale,D.等
(1993)Mol.Endocrinol.7,1589〜1595;Civ
itareale,D.等(1989)EMBO J.2537〜2542;G
uazzi,S.等(1990)EMBO J.9,631〜3639;Fra
ncis−Lang,H.等(1992)Mol.Cell.Biol.12,
576〜588;Zannini,M.等(1992)Mol.Cell.Bi ol
.12,4230〜4241;Shimura,H.等(1994)Mol .Endocrinol
.8,1049〜1069;Ohmori,M.等(1
995)Endocrinology,136,269〜282)。したがって
、ラット組織によるSox−4のノーザン分析はマウス又はヒトSox−4によ
る以前のデータを実証し(Farr,C.J.等,(1993)Mammali a n Genome
,4,577〜584;Van de Wetering,M
.(1993)EMBO J.12,3847〜3854)、即ち、これらの分
析はSox−4が偏在する発現遺伝子であることを示す(図22A)。ノーザン
分析はさらに、TTF−2に関して予測されるように、インスリンによってSo
x−4を増加させることができるとしても(Santisteban,P.等(
1992)Mol.Endocrinol.6,1310〜1317;Fram
ics−Lang,H.,他、(1992)Mol.Cell.Biol.12
, 576−588;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mol.En docrinol
.7,1297〜1306)、この増加はFRTL−5細胞の
24時間以上のインスリン/血清処理を必要とし;これとは対照的に、TTF−
2によるオリゴK複合体形成のインスリン誘導増加は24時間目に既に顕著であ
る(Santisteban,P.等(1992)Mol.Endocrino l
.6,1310〜1317;Francis−Lang,H.等(1992)Mol.Cell.Biol
.12,576〜588;Aza−Blanc,P
.等,(1993)Mol.Endocrinol.7,1297〜1306)
。TTF−2による複合体形成は、0.2%血清含有4H培地中で、即ち、イン
スリン、インスリン様増殖因子又はTSHなしに数時間維持した後にインスリン
又はTSHで処理した細胞からの抽出物中で増加する(Santisteban
,P.等(1992)Mol.Endocrinol.6,1310〜1317
;Francis−Lang,H.等(1992)Mol.Cell.Biol
.12,576〜588;Aza−Blanc,P.等,(1993)Mol. Endocrinol
.7,1297〜1306)。このことはSox−4に該
当する(図22B)。しかし、インスリン又は血清の存在下で、即ち、5%血清
を加えた5H培地中の細胞において、TTF−2複合体形成は変化しない(Sa
ntisteban,P.等(1992)Mol.Endocrinol.6,
1310〜1317;Francis−Lang,H.等(1992)Mol. Cell.Biol
.12,576〜588;Aza−Blanc,P.等,(
1993)Mol.Endocrinol.7,1297〜1306)。これと
は対照的に、Sox−4RNAレベルはTSHを加えた5H培地中に1週間の細
胞では
TSHによって劇的に低下する(図22B、レーン6)。それ故、ノーザン分析
は以前の研究に基づいてTTF−2に関して予想されるようなRNA発現パター
ンに適合しない。
FRT細胞におけるSox−4の過剰発現はTG−CAT活性を変化させない
が、TTF−1はコトランスフェクション実験に影響を及ぼすことが判明してい
る(Shimura,H.等(1994)Mol.Endocrinol.8,
1049〜1069)。さらに、5%ウシ血清を加えた6H培地中に維持された
FRTL−5細胞中では、Sox−4RNAレベルが消滅的に低くなり、Sox
−4/DNA複合体形成が非常に低くなり(図22B)、Sox−4の過剰発現
が全長プロモーター上のTG−CAT活性をやや増加させることができるが、T
G−IRE部位が配置されたp(−170)には影響を及ぼさない(表VI)。
本明細書中で同定したSox−4タンパク質の性質はTTF−2に予測された
幾つかの性質に適合せず、TTF−2ではない。その代わりに、Sox−4はM
HCクラスI上流サイレンサー/エンハンサー複合体の成分であり、甲状腺及び
その他の組織におけるクラスI発現を調節する。
インスリンは上流サイレンサーとオリゴKによる複合体形成を増加させる。イ
ンスリンの存在下では、TSHは上流サイレンサー複合体を減少させ(図12と
14A)、オリゴKによる複合体形成を低下させる。これの根拠はインスリンの
存在下でのSox−4RNAレベルを低下させるTSHの能力である(図22B
)。Sox−4中のMMI作用の根拠はインスリンの存在下でSox−4mRN
Aを低下させるMMIの効果ではなく、チオレドキシン活性の変化である(表V
II)。したがって、Sox−4活性はフリーラジカル・スキャベンジャーとし
てのその作用を介してのMMIによる調節を必要とする可能性がある(Wils
on,R.等(1988)Clin.Endocrin.28:389〜397
;Wienzel,N.等(1984)J.Clin.Endocrinol. Metab
.58:62〜69)。
Sox−4によって調節されるサイレンサー成分はNF−kBのp65サブユ
ニットである(図18)。したがって、Sox−4への抗血清はp65上流サイ
レンサー複合体をスーパーシフトさせ(図23)、サイレンサー複合体形成を低
下させる。Sox−4又はFRTL−5細胞抽出物の存在下で140フラグメン
トによって同様なサイズの複合体を形成するc−junの能力と、c−junへ
の抗血清添加がエンハンサー複合体形成を阻害することによって実証されるよう
に、抗血清はまたc−junから成るエンハンサー複合体の形成を排除する(デ
ータ示さず)。それ故、Sox−4はサイレンサーとエンハンサーの両方の形成
に重要である。
Sox−4はエンハンサーとサイレンサーの両方にオーバーラップする領域を
フットプリントし(図24)、Sox−4をコードするcDNAをクラスIプロ
モーター−CATキメラとコトランスフェクトした場合に、クラスI発現を抑制
することができる(表VI)。この効果は、チログロブリンプロモーター−CA
Tキメラとコトランスフェクトした場合にSox−4の効果がない又はTG−C
AT活性が増加するので(表VI)、特異的である。
上流サイレンサー/エンハンサーのクラスI調節のために重要なオリゴK反応
性タンパク質はSox−4である。Sox−4はコトランスフェクション研究に
おいて実証されるようにクラスIのサプレッサーである。オリゴヌクレオチド(
オリゴK)のコトランスフェクションでは、Sox−4と反応するオリゴKは、
サイレンサーとのSox−4相互作用をブロックし、それを非機能的にし、エン
ハンサー複合体形成を増加させることによって、クラスIを増加させる。TSH
はSox−4mRNAレベルとサイレンサー複合体形成を低下させるので、So
x−4に対するその作用を評価する手段の1つは、サイレンサー複合体形成を測
定することの他にノーザン分析によってSox−4を評価することである(実施
例6)。MMI作用を測定する他の機構は、例えばチオレドキシン(表VII)
又はスーパーオキシドディスムターゼ(Wilson,R.等(1988)Cl in.Endocrinology
,28:389〜397)のような、転写因
子の酸化−還元状態において重要な酵素の作用に対する、そのフリーラジカルス
キャベンジイング効果を介する、MMIの効果によって調節されるSox−4活
性の増加を測定することである。これらの酵素はシステイン転写因子の酸化−還
元状態を調節することによって、それらの活性をモジュレートすることができる
(Allen,J.F.(1993)FEBS Lett.332,203〜2
07;Storz,G.等(1990)Science,248,189〜19
4;Toledano,M.B.等,(1994)Cell,78,897〜9
09;Galang,C.K.等(1993)Mol.Cell.Biol.1
3,4609〜4617;Pognonec,P.等(1992)J.Biol .Chem
.267,24563〜24567;Rigoni,P.等(199
3)Biochim.Biophys.Acta 1173,141〜146;
Gehring,W.J.(1994)Annu.Rev.Biochem.6
3:478〜526)。
太線数値はSox−4による有意な抑制を示す(P<0.05又はより良好)。
太線のイタリック体数値は有意な強化を示す。
★★ このクローンはTGプロモーターのインスリン応答要素であるオリゴK部
位を含有する(Santisteban,P.等(1992)Mol.Endo crinol
.6,1310〜1317;Francis−Lang,H.等(
1992)Mol.Cell.Biol.12,576〜588;Aza−Bl
anc,P.等,(1993)Mol.Endocrinol.7,1297〜
1306)。表VIの説明
.FRTL−5細胞を6H培地(TSH添加)においてほぼ集密に
まで増殖させ、次に5H培地(TSH含まず)中に7日間維持してから、実施例
7と8及び図16Aに述べたように、DEAE Dextranを用いて、記載
キメラによってトランスフェクトした。対照細胞はベクターのみによってトラン
スフェクトした。CAT活性を上述したように(実施例7;実施例8;材料と方
法)測定した。p(−127)に対して効果がなく、p(−127NP)CRE
に有意な効果があることは、図19C対19Bのデータと一致する。
太線数値は、MMIなしSox−1よりも大きな、MMI添加Sox−4による
有意な抑制を示す(P<0.05)。
太線の下線付き数値はトランスフェクションによる有意な効果がないことを示す
。太線のイタリック体数値はMMIによる有意な効果を示す。表VIIの説明
.FRTL−5細胞を6H培地(TSH添加)においてほぼ集密
にまで増殖させ、次に5H培地(TSH含まず)中に7日間維持してから、対照
プラスミド又はSox−4DNA含有プラスミドによってトランスフェクトした
。次に、細胞を5mM MMIによって又は5mM MMIなしで40時間処理
した。CAT活性を上述したように(実施例7;実施例8;材料と方法)測定し
た。MMI処理はSox−4トランスフェクタント(transfectant)のCAT活性
を、対照ベクターによってトランスフェクトした細胞におけるよりもさらに低下
させた(p<0.05)。図16Bは、用いた各キメラCAT構築体の構造を示
す。
実施例9
下流サイレンサーとホルモンにおけるその役割との同定、
及びクラスIレベルのMMI低下
材料と方法
材料.TSH、ホルモン及び他の材料は実施例6と8と同じである。
細胞培養物.FRTL−5ラット甲状腺細胞(Interthr Resea
rch Foundation,Baltimore,MD;ATCC No.
CRL8305)は、全ての性質が今までに詳述されている新しいサブクーロン
(F1)であった(Saji,M.等(1992a);Saji,M.等(19
92b);Kohn,L.D.等(1992)Intern.Rev.Immu nl
.9,135〜165;Kohn,L.D.等(1995)In:Vita mins and Hormones
(Litwack,G.編集)Acade
mic Press,San Diego 50,287〜384;Ikuya
ma,S.等(1992)Mol.Endocrinol.6,793〜804
;Ikuyama,S.等(1992)Mol.Endocrinol.6,1
701〜1715;Shimura,H.等(1994)Mol.Endocr inol
.8,1049〜1069;Ohmori,M.等(1995)End ocrinology
,136,269〜282;Shimura,H.等(1
995)Mol.Endocrinol.9,527〜539;Shimura
,Y.等(1994)J.Biol.Chem.269,31908〜3191
4;Kohn,L.D.等(1986)9月2日,米国特許第4,609,62
2号)(実施例6と8)。上述した種々な実験では、細胞をTSHを含有しない
5H培地、又はTSHを含有せず、インスリン又はヒドロコルチゾンを含有する
3H培地に維持した。
MHCクラスIプロモーター−CATキメラプラスミドの構築.PDIブタ5
’−フランキング配列CATキメラ、p(−1100)CAT、p(−549)
CAT、p(−400)CAT、p(−203)CAT及びp(−127)CA
Tの構築は既述されている(実施例6、7、8;Ehrlich,R.等(19
88)Mol.Cell.Biol.8,695〜703;Weissman,
J.D.とSinger,D.S.(1991)Mol.Cell.Biol.
11,4217〜4227;Maguire,J.E.等(1992)Mol. Cell.Biol.
12,3078〜3086;Howcroft,T.K.
等(1993)EMBO J.12,3163〜3169;Giuliani,
C.等(1994)J.Biol.Chem.270:11453〜11462
)(実施例7と8)。
トランスフェクション効率を評価するために構築されたプラスミドpSVGH
(Ikuyama,S.等(1992)Mol.Endocrinol.6,1
701〜1715)はp0GH(Nichols Institute,San
Juan Capistrano,CA)から単離され、pSG5発現ベクタ
ー(Stratagene,La Jolla,CA)のBamHI−XbaI
部位に挿入された、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子をコードするBamHI
−EcoRIフラグメントであった。
一過性発現分析−FRTL−5細胞を用いた一過性トランスフェクションは今
までに述べられている(Ikuyama,S.等(1992)Mol.Endo crinol
.6,1701〜1715;Shimura,H.等(1994)Mol.Endocrinol
.8,1049〜1069;Ohmori,M.
等(1995)Endocrinology,136,269〜282;Shi
mura,H.等(1995)Mol.Endocrinol.9,527〜5
39;Shimura,Y.等(1994)J.Biol.Chem.269,
31908〜31914;Giuliani,C.等(1995)J.Biol .Chem.
270:11453〜11462.実施例7と8)。
CAT分析を既述されたように、130μlの最終量で10〜30μgの細胞
溶解物を用いておこなった(Ikuyama,S.等(1992)Mol.En docrinol
.6,1701〜1715;Shimura,H.等(199
4)Mol.Endocrinol.8,1049〜1069;Ohmori,
M.等(1995)Endocrinology,136,269〜282;S
himura,H.等(1995)Mol.Endocrinol.9,527
〜539;Shimura,Y.等(1994)J.Biol.Chem.26
9,31908〜31914;Giuliani,C.等(1994)J.Bi ol.Chem.
270:11453〜11462.Gorman,C.M.等
(1982)Mol.Cell.Biol.2,1044〜1051.実施例7
と8)。インキュベーションは2時間後にアセチルCoA(20μlの3.5m
g/ml溶液)を補充して、37℃において4時間おこなった。
細胞抽出物.細胞抽出物はDignam等の方法の改変によって調製した(D
ignam,J.等(1983)Nucleic Acids Res.11,
1475〜1489;実施例6と8)。用いた核抽出物も実施例8の方法によっ
て調製した。
電気泳動移動度シフト分析(EMSA)−EMSAに用いたオリゴヌクレオチ
ドは、上記キメラCAT構築体の制限酵素処理後にQIEAX(Quiagen
,Chatsworth,CA)を用いて2%アガロースゲルから合成したか又
は精製した(実施例6と8)。
電気泳動移動度シフト分析は基本的には以前に既述されたようにおこなった(
Ikuyama,S.等(1992)Mol.Endocrinol.6,17
01〜1715;Shimura,H.等(1994)Mol.Endocri nol
.8,1049〜1069;Ohmori,M.等(1995)Endo crinology
,136,269〜282;Shimura,H.等(19
95)Mol.Endocrinol.9,527〜539;Shimura,
Y.等(1994)J.Biol.Chem.269,31908〜31914
;Giuliani,C.等(1995)J.Biol.Chem.270:1
1453〜11462;Hennighausen,L.とLubon,H.(
1987)Methods Enzymol.152,721〜735,実施例
6、8、10及び11)。
CREBと他の抗血清を用いた実験では、抽出物を抗血清又は正常ラビット血
清を含有する同一緩衝液中で20℃で1時間インキュベートした後、上記のよう
に処理した。
1,10−フェナントロリン−銅イオンを用いたフットプリント法:1,10
−フェナントロリン−銅イオンを用いたフットプリント法を本質的にKuwab
araとSigmanによって述べられているようにおこなった(Kuwaba
ra,M.D.とSigman,D.S.(1987)Biochemistr y
,26,7234〜7238)。PDIプロモーターの−168〜−1bpを
含む末端標識フラグメント(Fr168)を用いて、EMSAをスケールアップ
(scaling up)した後に、ゲルを200mlの50mM Tris−HCl(pH
8.0)中に浸漬して、20mlの各下記溶液を加えた:0.45mM CuS
O4を含有する2mM 1,10−オルトフェナントロリンと58mM 3−メ
ルカプトプロピオン酸。室温における15分間後に、28mM 2,9−ジメチ
ルオルトフェナントロリン(20ml)を加えて、反応を停止させ;2分間後に
、ゲルを蒸留水中で徹底的にすすぎ洗いし、遅延した帯(retarded band)が目視
可能になるまで、4℃において40分間オートラジオグラフィーした。問題のタ
ンパク質/DNA複合体による帯を切断し、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(
SDS)と10mM酢酸マグネシウムとを含有する0.5M 酢酸アンモニウム
中で37℃において一晩溶出させた。溶離したDNAをエタノールによって沈殿
させ、蒸留水中に再懸濁させた。同じカウント数の各サンプルを乾燥させ、10
mM EDTAと、0.025%ブロモフェノールブルーと、0.025%キシ
レンシアノールとを含有する98%ホルムアミド中に再懸濁させ、同じプローブ
を用いておこなったG+A及びC+T MaXam−Gilbertシークエン
ス反応(Maxam,A.M.とGilbert,W.(1980)Metho ds Enzymol
.65,499〜560)と共に8%シークエンシングゲ
ル上で分離させた。オートラジオグラフィーは−80℃において一晩おこなった
。
結果
−107〜−100bpのCRE様配列は構成的サイレンサー要素として機能
する。甲状腺細胞におけるMHCクラスI遺伝子転写はTSHによって、そのc
AMPシグナルを介して表される(Saji,M.等(1992a)、Saji
,M.等(1992b))。これらの研究の1つ(Saji,M.等(1992
)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89,1944〜19
48)はTSH応答を転写開始の127bp内にマッピングした(mapped)。この
DNAセグメントにおける配列検査(図9)は、特徴付けられたCREに対して
相同性を有する8bp配列(−107〜−100bp)の存在を明らかにした(
Montminy,M.R.等H.(1986)Proc.Natl.Ac ad.Sci
.U.S.A.83,6682〜6686;Habener,J.
F.(1990)Mol.Endocrinol.4,1087〜1094)。
このCRE様要素がクラスIプロモーター活性を調節するように機能するかどう
かを判定するために、5’−フランキング配列p(−127CAT)の127b
pを含有する親構築体から1セットの誘導構築体を作製した。1つの誘導体では
、8bpCRE様配列を単に欠失させた;他の誘導体では、CREオクタマーの
非パリンドローム突然変異をCRE様配列の代わりに用いた。両方の構築体は5
%ウシ血清を加えた3H培地中(図25A)又は5%ウシ血清を加えた5H培地
中(データ示さず)に維持されたFRTL−5細胞中にトランスフェクトしたと
きに、親構築体に比べて増大したプロモーター活性を示した。
異種プロモーターを抑制するCRE様要素の能力を、SV40最小プロモータ
ーの下流、−127〜−90bpの範囲の38bpDNAセグメントを導入する
ことによって評価した(Ikuyama,S.等(1992)Mol.Endo crinol
.6:1701〜1715;Shimura,H.等(1994)Mol.Endocrinol
.8:1049〜1069;Ohmori,M.
等(1995)Endocrinology,136:269〜282;Shi
mura,Y.等(1994)J.Biol.Chem.269,31909〜
31914)(図25B)。5’から3’方向に配置したときに、このDNAセ
グメントの単一コピーはSV40プロモーター活性を有意に減ずることができ、
その効果の大きさは挿入された38bpセグメントのコピー数と共に増大した(
図25B)。3’から5’方向に配置したときに、このDNAセグメントの2コ
ピーはSV40プロモーター活性を有意な減少できなかった。CRE様要素の欠
失または非パリンドローム変異のいずれかを含有する38bpセグメントの誘導
体はSV40プロモーター活性に有意な影響を与えなかった(図25B)。これ
らのデータ(図25B)は5%ウシ血清を加えた3H培地に維持された細胞中で
得られた;同じ結果が5%ウシ血清を加えた5H培地に維持された細胞によって
得られた(データ示さず)。
これらのデータから、FRTL−5ラット甲状腺細胞ではクラスI 5’−フ
ランキング領域の38bp(転写の開始点から−127〜−90bp)内に配置
された構成的サイレンサーの機能に関して8bpCRE様部位が重要であると結
論された。さらに、このCRE様部位に関連したサイレンサー活性の発現はヒド
ロコルチゾンの有無によって影響されないと、我々は結論する;我々は別に(G
iuliani,C.等(1995)J.Biol.Chem.270:114
53〜11462)、FRTL−5細胞におけるクラスI遺伝子発現を抑制する
ヒドロコルチゾン作用を異なる要素、エンハンサーA、転写の開始点から−18
0〜−1700bpに位置付けている。
FRTL−5甲状腺細胞のTSH又はフォルスコリン処理は新規なタンパク質
/DNA複合体を誘導し、その形成は、サイレンサー活性と同様に、CRE様部
位に依存する。FRTL−5細胞のTSH/フォルスコリン処理はクラスIプロ
モーターからの転写を低下させるので(Saji,M.等(1992)Proc .Natl.Acad.Sci
.U.S.A.89,1944〜1948;Sa
ji,M.等(1992)J.Clin.Endocrinol.Metab.
75,871〜878)、TSH/フォルスコリンがCRE依存性サイレンサー
活性を有する領域による任意の新規なタンパク質/DNA複合体の形成を変化さ
せるか又は誘導するかを知ることは重要であった。−168bp〜+1bpに及
ぶDNAフラグメント(Fr168;図26A)を、1x10-10M TSHを
加えて又はなしで48時間培養したFRTL−5細胞に由来する抽出物と共に、
ゲル移動度シフト分析に用いた(図26B)。いずれの抽出物によっても多数の
タンパク質/DNA複合体が形成された。タンパク質/DNA複合体A〜Dが両
方の抽出物に共通であり、細胞のTSH処理によって変化せず、−89〜+1に
配置されたDNA配列とのタンパク質相互作用に由来するように思われた。この
ことは、100倍過剰な非標識フラグメント127(Fr127)、−127〜
+1bpがこれらの複合体に関して競合するが、CRE−1と名付けられた−1
27〜−90bpに及ぶCRE様サイレンサー要素(図26B、レーン6と7)
はこれらのタンパク質/DNA複合体に影響を及ぼさなかったという事実によっ
て示唆された(図26B、レーン4と8)。Eと標識された複合体は如何なる競
合DNAフラグメントによっても排除されないので、非特異性であると思われる
。しかし、FRTL−5細胞のTSH処理が2つの新規な複合体FとGの形成を
誘
導したことは注目に値した(図26B、レーン5対レーン1)。下記によって実
証されるように、これらの形成は特異的であり、サイレンサー活性のために重要
なCRE様部位を必要とした。
TSH誘導FとG複合体の形成は、−168〜+1bp又は−127〜+1b
pの範囲である非標識DNAフラグメント(図26B、+TSH、レーン6及び
7対5)によってのみでなく、CRE−1と名付けられた、CRE様部位を含有
する−127〜−90bpフラグメント(図26B、+TSH、レーン8対5)
によっても防止することができた。さらに、G複合体による研究で説明されたよ
うに、1/10フェナントロリン−銅イオンを必要とする方法を用いる、TSH
誘導複合体のDNAフットプリント分析は2つの強度の過敏性部位(−131〜
−96bp)が結合した保護領域を同定した。CRE様部位(−107〜−10
0bp)はこの保護領域内にあり、−110bpのあまり顕著でない過敏性帯と
−95bpの顕著な過敏性帯とによって境界を画定される。CRE様部位の中央
にある−103bpの過敏性部位も観察された。同様なデータが複合体Fによっ
ても得られた。これらのデータは、TSH誘導FおよびG複合体が、CRE様部
位に依存するサイレンサー活性を有する38bp領域を包含することを確立した
。しかし、これらのデータは下流サイレンサー領域をこの38bpセグメントに
限定しない;このセグメントのサイレンサー活性はPDIクラスI 5’−フラ
ンキング領域の−80bpまで3’方向の10ヌクレオチドに及ぶことができる
。したがって、48bpセグメント(−127〜−80bp)はこの実験と以後
の実験において38bpサイレンサーの全ての活性をデュプリケートし、その活
性はCRE依存性である。
TSHの代わりにフォルスコリン(10μM)を用いて、F複合体とG複合体
の形成を誘導することができ、両方の形成はCRE様部位を含む−127〜−9
0bpCRE−1DNAフラグメントによって阻止された。さらに、フォルスコ
リン処理細胞とTSH処理細胞(データ示さず)からの抽出物を用いて、これら
の形成が共通(consensus)CRE配列がCRE様配列に置換した−127〜−9
0bp断片によっても阻止されたが、CRE様要素が欠失(△CRE)又は非パ
リンドローム(NP−CRE)置換によって除去された誘導体オリゴヌクレオチ
ドによっては阻止されないことを我々は実証した。CREの5’側の38bpサ
イレンサーの領域はTSH/cAMP誘導複合体の形成を阻止することができず
、CREオクタマーのいずれの側にも6塩基対のみを有する、CRE−2と呼ば
れる、CRE−1の短縮形でもなかった。これらのデータは、新規なF複合体と
G複合体のTSH誘導形成が、クラスIRNAレベルのTSH誘導抑制と丁度同
じように、TSHのcAMPシグナルによって仲介されることと(Saji,M
.等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89,
1944〜1948;Saji,M.等(1992)J.Clin.Endoc rinol.Metab
.75,871〜878)、TSH/cAMP誘導複合
体の形成がサイレンサー活性に重要なCRE様配列を必要とすることを確立した
。これらはさらに、CRE様部位に隣接する配列が複合体形成に関与することを
、延長したDNAフットプリント及び他のCRE部位による複合体の研究に一致
して示唆する(Montminy,M.R.等 H.(1986)Proc.N atl.Acad.Sci
.U.S.A.83,6682〜6686;Habe
ner,J.F.(1990)Mol.Endocrinol.4,1087〜
1094;Ikuyama,S.等(1992)Mol.Endocrinol
.6,1701〜1715)。
同様なEMSAデータがTSHを添加して又はTSHなしでインキュベートし
たFRTL−5細胞に由来する抽出物と共に放射性標識したFr127(−12
7〜+1bp)を用いて得られた。Fr168と同様に、TSH処理細胞又は非
処理細胞からの抽出物を用いて一連の複合体を形成し、これらの全ては非標識F
r127又はFr168によって競合されることができる。その上、TSH又は
フォルスコリンは新規なタンパク質/DNA複合体の出現を誘導した。TSH誘
導複合体は非標識CRE−1、−127bpから−90bpまでの範囲である3
8bp DNAフラグメントによって特異的に競合されることができる。これと
は対照的に、欠失(△CRE)又は置換(NP−CRE)のいずれかによって、
CRE様要素が除去された誘導体オリゴヌクレオチドはTSH誘導帯と競合する
又はTSH誘導帯を形成することができなかった。共通の基準CRE部位(conse
nsus canonical CRE site)が導入された誘導体(CON−CRE)はネイティブ
配列(CRE−1)と同様に競合において有効であった。CRE様要素の5’側
配列(−127〜−108bp)のみを含有するDNAフラグメントはTSH誘
導帯に競合することができなかった。
MMIとTSHは、38bp下流サイレンサー(−127〜−89bp)のC
RE様配列とのタンパク質複合体の形成を誘導し;その形成と機能はTSH受容
体(TSHR)のインスリン応答要素と相互作用するタンパク質に依存する。上
記結果(図26)において、我々は電気泳動移動度シフト分析(EMSA)と、
−168bp又は−127bpから+1bpまでの範囲である放射性標識DNA
フラグメントとを用いて、38bpサイレンサーのCRE部位と相互作用するT
SH/cAMP増強タンパク質/DNA複合体を同定した。5mM MMI(図
27A、レーン2対1、矢印)並びにTSH(図27A、レーン5対1、矢印)
によるFRTL−5細胞の処理は、放射性標識168bpフラグメントによる同
様な大きさのタンパク質DNA複合体の形成を誘導した。TSHプラスMMIに
よる処理は、いずれかの単独の処理よりも、タンパク質/DNA複合体の形成を
増加させた(図27A、レーン4対2又は5);この増加をデンシトメーターで
測定した、7回の実験において、TSH又はMMI又は両方によって誘導された
複合体の比は、それぞれ、1±0.2、0.8±0.3及び2.2±0.3であ
った。
放射性標識168bpフラグメントとのTSH誘導複合体を形成するFRTL
−5細胞抽出物の能力は、サイレンサー要素の38bp配列(−127〜−90
bp)を有する非標識オリゴヌクレオチドによって妨害されるが(図26B)、
サイレンサー内のCRE様部位が欠失した若しくはCRE様部位が非パリンドロ
ーム突然変異によって置換されたオリゴヌクレオチドによっては妨害されなかっ
た。MMIによって誘導された複合体は、CRE−1と呼ばれる非標識38bp
サイレンサーの250倍過剰量によっても妨害されるが(図27B、レーン3対
2)、CRE様部位の非パリンドローム置換を有する同量のサイレンサー・オリ
ゴヌクレオチドによっては妨害されなかった(図27B、レーン4対2)。した
がって、MMI増強並びにTSH増強サイレンサー複合体の形成は完全なCRE
様配列を必要とする。
MMI、TSH又は両方によって誘導されたタンパク質/DNA複合体の形成
はインスリン/血清感受性因子を必要とする。したがって、TSHRのインスリ
ン応答要素(IRE)の配列を有するオリゴヌクレオチド(オリゴTIF(TS
H受容体インスリン応答要素))(Shimura,Y.等(1994)J.B iol.Chem
.269,31908〜31914)の200倍過剰量もMM
Iによって(図27A、レーン3対2)、TSHによって(図27A、レーン9
対5)及びMMIプラスTSHによって(図27A、レーン8対4)誘導された
複合体形成を、in vitroで結合混合物に加えたときに、阻止することが
できた。TGプロモーターのインスリン応答要素の配列を有するオリゴヌクレオ
チド(オリゴK)(Satisteban,P.等(1992)Mol.End ocrinol
.6,1310〜1317)は、TSHによって(図27A、レ
ーン7対5と9)又はMMIプラスTSHによって(図27A、レーン6対4と
8)誘導された複合体形成を妨害しなかったので、オリゴTIFの効果は特異的
であった。TSH誘導複合体又はMMI誘導複合体中に、オリゴKと反応するタ
ンパク質であるSox−4が関与しないことは、下流CRE含有サイレンサーの
優勢と一致する。しかし、CREが欠失するか又は突然変異する場合には、So
x−4はp(−127NP)CATのCAT活性を増大させるオリゴKの能力に
よって図19Cにおいて実証されるように、下流で作用することができる。この
ことは2つのSox−4反応性部位(約−161bpのインターフェロン応答要
素と−127bpの下流サイレンサーとの間の1部位と、−89bpと−68b
pの間の他方の部位)の存在を表す。これらはCRE(−107〜−100bp
)が突然変異するか又は欠失する場合にのみ発現される(図19Cと表VI)。
−127〜+1bpフラグメントを用いて、同じデータが見られた。したがっ
て、フラグメント127を放射性標識プローブとして置換した場合に、細胞の5
mM MMI処理は複合体の形成を誘導した。この複合体はTSH誘導複合体と
同じ移動度を有した。MMIプラスTSHは加算的に複合体形成を増加させ;i
n vitroで加えたオリゴTIFはMMI/TSH誘導複合体形成を妨害し
たが、オリゴKは妨害しなかった。TSH/MMI誘導複合体の形成は250倍
過剰量の非標識38bpサイレンサー、CRE−1をインキュベーション中に含
めることによって妨害された。最後に、放射性標識127bpフラグメントがC
RE様部位の非パリンドローム置換を有する場合に、MMI処理抽出物は新しい
複合体を形成せず、このことはMMI誘導複合体を形成するためにCRE様オク
タマーが必要であることを示唆した。
−220〜−188bpのTSHRインシュリン応答エレメントは、FRTL
−5細胞抽出物とタンパク質/DNA複合体を形成することが可能な2つの領域
をもつことが分かっている(Shimura,Y.ら,(1994) J.Bi ol.Chem.
269,31908−31914)。3’側領域(図28C
、黒線)の突然変異体である突然変異体1(図28C)は最小TSHRプロモー
ターのCATキメラをFRTL−5細胞にトランスフェクトした後にインシュリ
ン応答性を失うので、この領域と相互作用するタンパク質はインシュリン応答性
に関連する。突然変異体1はYボックスタンパク質反応性も失う(実施例11)
。5’領域(図28、網状陰影領域)と相互作用するタンパク質は1本鎖結合タ
ンパク質であり、突然変異体2(図28C)のようなこの領域の突然変異体は、
インシュリン応答性を維持するが、1本鎖結合タンパク質と結合する能力を失う
(Shimura,Y.ら,(1994) J.Biol.Chem. 269
,31908−31914)。一方もしくは他方のオリゴTIF突然変異体又は
オリゴKの配列をもつオリゴヌクレオチドを含むプラスミドと共にブタクラスI
プロモーター−CATキメラをFRTL−5細胞にトランスフェクトし、トラン
スフェクトした細胞の各組の半数をMMIで処理した。TIF突然変異体2オリ
ゴヌクレオチドをp(−127)CATとコトランスフェクトすると、MMIに
より低下したプロモーター活性の有意(P<0.01)損失が生じた(図28)
が、基底又は構成的活性の有意変化は生じなかった。以下の記載から明らかなよ
うに、TGインシュリン応答エレメントであるオリゴKを含むプラスミドをコト
ランスフェクトした細胞ではMMI活性に何の効果もなかった。オリゴTIF突
然変異体1を含むプラスミドをコトランスフェクトしても倍増しなかった(デー
タは示さず)。オリゴTIF突然変異体2を含むプラスミドをコトランスフェク
トすると、p(−1100)CATキメラに明白なMMIにより誘導される低下
がなくなり(図28A)、下流サイレンサーに及ぼすその効果はプロモーター活
性を低下させるようにMMI作用に働きかける主効果であることが示唆された。
以下に記載するように(実施例10)、MMIの不在下でp(−1100)CA
Tの基底活性を増加させるオリゴTIFの能力(図28A)は下流サイレンサー
と上流サイレンサーに関連するエンハンサーの相互作用関係に起因すると思われ
る。
オリゴTIF突然変異体2は、細胞にトランスフェクトすると、MMI/TS
Hにより誘導されるタンパク質DNAと下流サイレンサーの複合体の形成に重要
なインシュリン応答因子と結合する。その結果、MMI/TSHにより誘導され
るクラスIプロモーター活性の低下を阻止する。オリゴK又はオリゴTIF突然
変異体1はMMIにより誘導されるプロモーター活性の低下を阻止することがで
きないので、その効果はTSHRインシュリン応答エレメントと相互作用する因
子に特異的となり、1本鎖結合タンパク質(SSBP)よりもむしろインシュリ
ン感受性因子及び/又はYボックスタンパク質TSEP−1がオリゴTIF配列
と相互作用することができる(実施例11参照)。これらのデータは、MMIと
TSHが−127〜−89bpの38bpサイレンサーエレメントとのタンパク
質複合体の形成を独立して付加的に誘導し、各場合の複合体の形成にはサイレン
サーの内側のCRE様部位の存在が必要であるという結論を裏付けるものである
。その形成には更に、同様にTSHR最小プロモーター内のインシュリン応答エ
レメントと相互作用するインシュリン/血清応答因子も必要である。MMI/T
SHにより増加されるサイレンサー(図26及び27)との複合体の形成はクラ
スI遺伝子発現に及ぼすMMI/TSH効果に機能的に結び付けられる(図28
)。
CRE依存性サイレンサーエレメントを含む38bpクラスI領域は複数のタ ンパク質と複合体を形成し、その一部はcAMPにより誘導されるTSHRの負 の調節に関与する。
38bpサイレンサーエレメントと相互作用することが可能
なタンパク質を特徴付けるために、セグメント−127〜−90bpの2本鎖オ
リゴヌクレオチドを放射性標識し、FRTL−5細胞抽出物と共にゲルシフトア
ッセイで使用した(図29)。4組の複合体が観察され(A〜D)、それらの形
成は異なる親和性で非標識プローブとの競合により阻止された(図29A、レー
ン3〜6と2を比較)ので、全複合体は特異的であると思われた。TSH/MM
Iにより誘導されるFr168(図26及び27)又はFr127との複合体と
同様に、全複合体の形成はCRE様エレメントに依存性であった。従って、それ
らの形成はCREを欠失(図29A、ΔCRE−1、レーン7〜9と2を比較)
又はその非パリンドローム形態に突然変異させた38bpサイレンサーにより阻
害
されなかった。
A領域の38bpサイレンサーと形成されるタンパク質/DNA複合体の1種
は、コンセンサスCRE(下線)を含むが、9〜10個の他の無関係なフランキ
ングヌクレオチドがソマトスタチンCREに由来するPromega社オリゴヌ
クレオチド5’−AGAGATTGCCTGACGTCAGAGAGCTAG−
3’により阻害された(図29A、レーン10〜12を2と比較)。同一複合体
はCRE結合タンパク質−327(CREB)(Waeber,G.ら(199
1) Mol.Endocrinol. 5,1418−1430)に対する抗
体を用いると上位シフトできた(図29B、レーン4)が、抗CREB2、抗m
XBP又は抗活性化転写因子2(ATF2−BR)ではできなかった(図29B
、レーン1〜3)。従って、−127〜−90bpの38bpサイレンサー内の
CRE様部位と相互作用するあるタンパク質はCREB(Montminy,M
.R.ら,H.(1986) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S .A.
83,6682−6686; Habener,J.F.(1990)
Mol.Endocrinol. 4,1087−1094; Waeber
,G.ら(1991) Mol.Endocrinol. 5,1418−14
30; Hoeffler,J.P.ら(1988) Science 242
,1430−1433; Deutch,P.J.ら(1988) J.Bio l.Chem.
263,18466−18472)又は免疫学的に関連するC
RE結合タンパク質であると同定することができる。
CREB以外に図29AのA及びB複合体における2本鎖結合タンパク質の2
種は甲状腺転写因子1(TTF−1)とPax−8である。TTF−1はFRT
L−5甲状腺細胞におけるTSHRの完全発現に重要な甲状腺特異的転写因子で
ある(Shimura,H.ら(1994) Mol.Endocrinol.
8,1049−1069; Ohmori,M.ら(1995) Endoc rinology
,136,269−282; Shimura,H.ら(19
95) Mol.Endocrinol. 9,527−539; Civit
areale,D.ら(1993) Mol.Endocrinol. 7,1
589−1595)。TTF−1とPax−8はチログロブリン及び甲状腺ペル
オキシダーゼ遺伝子の甲状腺特異的発現に必要である(Civitareal,
D.ら(1989) EMBO J. 8,2537−2542; Guazz
i,S.ら(1990) EMBO J. 9,631−3639; Fran
cis−Lang H.ら(1992) Mol Cell Biol 12:
576−588; Kikkawa,F.ら(1990) Mol.Cell. Biol.
10,6216−6224; Mizuno,K.ら(1991)
Mol.Cell.Biol. 11,4927−4933; Lazzar
o,D.ら(1991) Development 113,1093−110
4; Zannini,M.ら(1992) Mol.Cell.Biol.1
2,4230−4241)。TTF−1は甲状腺分化の開始から発現されるホメ
オドメインを含むDNA結合タンパク質である(Civitareale,D.
ら(1989) EMBO J. 8,2537−2542; Guazzi,
S.ら(1990) EMBO J. 9,631−3639; Franci
s−Lang H.ら(1992) Mol.Cell.Biol. 12:5
76−588; Lazzaro,D.ら(1991) Developmen t
113,1093−1104)。Pax−8はチログロブリン及び甲状腺ペ
ルオキシダーゼ遺伝子中のTTF−1認識部位の1つにオーバーラップする配列
と結合する対合ドメインを含むタンパク質であり、同様に甲状腺分化に関与する
(Zannini,M.ら(1992) Mol.Cell.Biol. 12
,4230−4241)。38bpクラスIサイレンサーと形成される図29A
のB複合体はタンパク質/DNAのTTF−1付加物を含み、図29AのA複合
体はCREB以外にPax−8付加物を含む。これは以下のように立証される。
38bpクラスIサイレンサーとのB複合体(図29A)の形成は、TSHR
からのTTF−1結合エレメントの配列をもつオリゴヌクレオチドにより阻害さ
れる[図30B、レーン5(TSHRオリゴTTF−1)と2を比較]が、TT
F−1に対するその反応性を失うオリゴヌクレオチドの突然変異形では阻害され
ない(図30B、レーン6と2を比較)。TSHR TTF−1結合部位はPa
x−8と相互作用しない(Shimura,H.ら(1994) Mol.En docrinol.
8,1049−1069; Ohmori,M.ら(19
95) Endocrinology,136,269−282; Shimu
ra,H.ら(1995) Mol.Endocrinol. 9,527−5
39; Civitareale,D.ら(1993) Mol.Endocr inol.
7,1589−1595)。3(図30B)又は0.5μgのポリ
dI−dCの存在下でも同一のデータが得られた。各オリゴヌクレオチドの配列
は図30Cに示す通りであり、それらの特性、TTF−1特異性及びPax−8
と結合できないことは個々に詳細に記載されている(Shimura,H.ら(
1994) Mol.Endocrinol. 8,1049−1069;Oh
mori,M.ら(1995) Endocrinology,136,269
−282; Shimura,H.ら(1995) Mol.Endocrin ol.
9,527−539; Shimura,Y.ら(1994) J.B iol.Chem.
269,31908−31914)。
TTF−1又はPax−8と相互作用するチログロブリンプロモーター上の部
位に似たオリゴヌクレオチドをオリゴCと呼ぶ(Civitareale,D.
ら(1989) EMBO J. 8,2537−2542; Guazzi,
S.ら(1990) EMBO J. 9,631−3639; Franci
s−Lang H.ら(1992) Mol.Cell.Biol. 12:5
76−588)。オリゴCの配列と、TTF−1又はPax−8と反応しなくな
ることが示されているオリゴCの突然変異体(Civitareale,D.ら
(1989) EMBO J. 8,2537−2542; Guazzi,S
.ら(1990) EMBO J. 9,631−3639; Francis
−Lang H.ら(1992) Mol.Cell.Biol. 12:57
6−588)の配列を図30Cに示す。予想通り、オリゴCはTTF−1と相互
作用するので、3又は0.5μgのポリdI−dCの存在下で図29AのB複合
体の形成を阻止することができる[図30B又は30A、レーン4(TGオリゴ
C)と2を比較]。他方、オリゴC突然変異体(TGオリゴC Mut)はB複
合体の形成を阻止しない(図30A、レーン5と2、図8B、レーン3と2を比
較)。これは、複合体BがTTF−1を含むことをTTF−1に特異的なTSH
RオリゴCで立証した上記データに一致する。他方、図29AのA複合体の一部
はオリ
ゴCにより阻害される(図30A又は30B、レーン4と2を比較)が、その突
然変異体(図30A、レーン5と2、図30B、レーン3と2を比較)や、TT
F−1のみに反応性のTSHRオリゴヌクレオチド(図30B、レーン5と4又
は2を比較)では阻害されないことに注目すべきである。このことから明らかな
ように、図29AのA複合体の一部はCREBに加え、Pax−8と38bpサ
イレンサーのCRE依存性相互作用を示す。
CRE依存的に38bpCRE−1オリゴヌクレオチドと相互作用する他の2
種のタンパク質は、(a)すぐ5’側でTTF−1部位に隣接するTSHRプロ
モーターの非コーディング鎖と結合する1本鎖結合タンパク質(SSBP)(S
himura,H.ら(1995) Mol.Endocrinol. 9,5
27−539)と、(b)最小TSHRプロモーター内の−163〜−141b
pのデカヌクレオチドタンデムリピートの存在により同定される部位でTSHR
のコーディング鎖と結合するYボックスタンパク質TSEP−1(TSHRサプ
レッサーエレメントタンパク質1)である(実施例11)。これは、(a)結合
アッセイで高濃度のポリ(dI−dC)(図30B)の存在下におけるC複合体
(図29A)の出現の低下が、1本鎖結合タンパク質により示される低ストリン
ジェントな配列特異的結合反応に起因する可能性と、(b)SSBPとTSEP
−1の両者が関与する可能性を評価した際に立証された。
まず、結合反応で非標識競合剤としてCRE−1のコーディング又は非コーデ
ィング鎖を加えると、CRE−1と呼ぶ2本鎖38bpサイレンサーと図29A
のA及びB複合体でなくC複合体の形成が低下した(図31、夫々レーン2及び
3と1を比較)。このことから、C複合体は1本鎖DNAとも結合できるタンパ
ク質の結合を含むと思われた。第2に、TSHR非コーディング鎖上に−194
〜−169bp(図31C)のSSBP結合部位を含む1本鎖オリゴヌクレオチ
ドと、TSHRのコーディング鎖上に−177〜−138bp(図9C)のTS
EP−1結合部位を含む1本鎖オリゴヌクレオチドは、各々−127〜−90b
pの2本鎖38bpクラスI CRE−1サイレンサーエレメントとのC複合体
の形成を阻害した(図31B、夫々レーン3、4及び6、7と2及び5を比較)
。これらのデータから、CRE依存的に38bpサイレンサーと相互作用する1
本
鎖結合タンパク質はTTF−1以外に、TSH/cAMPにより誘導されるTS
HRの抑制に重要な2種のタンパク質を含むと思われた。
第3に、放射性標識プローブとして38bp CRE−1サイレンサーのコー
ディング及び非コーディング鎖を使用した競合試験(図32)において、TSH
R上の3部位(図32A、下段)と相互作用するYボックスタンパク質であるT
SEP−1はCRE−1のコーディング鎖との特異的タンパク質/DNA複合体
の形成を阻害する(図32A)。各TSHR Yボックス結合部位はCCTCモ
チーフを含む(実施例11)。このモチーフを突然変異させると(Mut2)、
TSHRとTSEP−1の結合が消滅又は減少し、CCTCモチーフを含まない
野生型配列又は別の突然変異体(Mut1)に比較してTSEP−1抑制活性が
低下する(図32A、下段)。放射性標識プローブとしてCRE−1コーディン
グ鎖を使用した場合、過剰の野生型又はMut1オリゴヌクレオチドを加えるこ
とによりゲルの上部の主要タンパク質複合体の形成は阻止されるか又は低下した
(図32A、夫々レーン2とレーン3〜4、6〜7及び9〜10を比較)が、M
ut2オリゴヌクレオチドではそうではなかった(図32A、夫々レーン2とレ
ーン5、8及び11を比較)。TSHR上のSSBP結合ドメイン(図32B、
下段、黒線)は5’側でTSHRの非コーディング鎖上のTTF−1結合ドメイ
ンと隣接しており、2個のGヌクレオチド(図32B、下段、下線)を突然変異
させると、TSHR SSBP部位を含む1本鎖オリゴヌクレオチドとSSBP
の結合が低下するが、同一突然変異をもつ2本鎖オリゴヌクレオチドとTTF−
1の結合は低下しない(Shimura,H.ら(1994) Mol.End ocrinol.
8,1049−1069; Ohmori,M.ら(199
5) Endocrinology,136,269−282)。放射性標識プ
ローブとしてCRE−1非コーディング鎖を使用した場合、SSBPと結合する
ことが可能な過剰の野生型1本鎖オリゴを加えることにより、主要タンパク質複
合体の形成は低下した(図32B、レーン2とレーン3及び5を比較)が、突然
変異SSBPオリゴヌクレオチドでは低下の程度が著しく少なかった(図32B
、レーン2とレーン4及び6を比較)。
CRE依存性サイレンサー活性を示し、同様にCRE依存性のTSH/cAM
Pにより誘導される新規タンパク質複合体の形成に関与するクラスI 5’フラ
ンキング領域の−127〜−90bpの38bp CRE−1領域は、CRE依
存的に複数のタンパク質と相互作用する。本発明ではこれらのタンパク質の5種
類、CREB、TTF−1、Pax−8、TSEP−1及びSSBPを同定でき
る。CREB、TTF−1、TSEP−1及びSSBPの4種はFRTL−5甲
状腺細胞でTSHR最小プロモーターと相互作用する。TTF−1、SSBP及
びTSEP−1の3種はFRTL−5甲状腺細胞でTSH/cAMPにより誘導
されるTSHRの負の調節に重要であることが知られている(Ikuyama,
S.ら(1992) Mol.Endocrinol. 6,793−804;
Ikuyama,S.ら(1992) Mol.Endocrinol. 6
,1701−1715; Shimura,H.ら(1994) Mol.En docrinol.
8,1049−1069; Ohmori,M.ら(19
95) Endocrinology,136,269−282; Shimu
ra,H.ら(1995) Mol.Endocrinol. 9,527−5
39; Shimura,Y.ら(1994) J.Biol.Chem. 2
69,31908−31914; 実施例11)。1種TSEP−1はYボック
スタンパク質である。ヒトYボックスタンパク質YB−1もMHCクラスIIプ
ロモーターと相互作用し、リンパ球でTSH/cAMPにより誘導されるクラス
II遺伝子の抑制に重要である(Ivashkiv,L.B.ら(1991) J.Exp.Med.
174,1583−1592; Vilen,B.J.
ら(1992) J.Biol.Chem. 267,23728−23734
; Brown,A.M.ら(1993) J.Biol.Chem. 268
,26328−26333; Ivashkiv,L.B.ら(1994) I mmunopharmacology
27,67−77; Ting,J.P
.ら(1994) J.Exp.Med. 179,1605−1611; W
right,K.L.ら(1994) EMBO J. 13,4042−40
53; MacDonald,G.H.ら(1995) J.Biol.Che m.
270,3527−3533)。
CRE依存性38bpクラスIサイレンサーエレメントと相互作用する複数の タンパク質のTSH調節。
FRTL−5甲状腺細胞をTSH/フォルスコリンで
12〜18時間処理すると、クラスI RNAレベルの最大限の低下が生じる(
Saji,M.ら(1992a) Proc.Natl.Acad.Sci.U
.S.A.89,1944−1948; Saji,M.ら(1992b)J. Clin.Endocrinol.Metab.
75,871−878)。こ
の期間にTSHで処理した細胞からの抽出物は、活性と結合がCREに依存する
38bpサイレンサー領域と形成されるタンパク質/DNA複合体の量及び組成
を変化させる(図33)。即ち、TSH処理の結果、図29AのA及びB複合体
の形成が著しく低下するが、C複合体の形成は増加する(図33、レーン4とレ
ーン2を比較)。A複合体では、TSHはCREB相互作用を有意に低下させ、
これは抗CREB−327がA複合体を上位シフトさせる能力の低下により立証
される。TTF−1 B複合体も有意に減少する。CRE結合タンパク質とホメ
オドメインタンパク質はTSHR(Shimura,H.ら(1944) Mo l.Endocrinol.
8,1049−1069)及びソマトスタチンレ
セプター(Leonard,J.ら(1992) Proc.Natl.Aca d.Sci.
U.S.A.89,6247−6251; Vallejo,M.
ら(1992) J.Biol.Chem. 267,12868−12875
; Leonard,J.ら(1993) Mol.Endocrinol.
7,1275−1283)で相乗的に作用することが知られているので、両者が
同時に減少することは注目に値する。
in vivoTSH処理に似せて抗CREB−327をin vitro付
加すると、同様にC複合体形成を増加する(図33、レーン3と2をレーン4と
2に比較)が、A又はB複合体の形成は変わらない。従って、TSHにより誘導
されるC複合体の増加はTTF−1の減少とCREBとのその相乗作用に起因す
ると思われる。
TSH処理はTTF−1とTSHRの結合を低下させると同時に、SSBPと
TSHRの相互作用も低下させる(Shimura,H.ら(1995) Mo l.Endocrinol.
9,527−539)が、TSEP−1とTSH
Rの結合は低下させない(実施例11)。これは、TSH又は抗CREB−32
7により誘導されるC複合体形成の見かけの増加がSSBP複合体の増加に起因
しないことを示唆するものであると思われる。
従って、TSEP−1は38bpサイレンサーとのCRE依存性相互作用の相
対増加を示すタンパク質であると思われるので、TSEP−1がTSHにより誘
導されるFR168又はFr127との新規複合体の増加の重要な成分であるか
否かを調べた。TSEP−1と結合できるが、SSBP、TTF−1、CREB
又はPax−8とは結合しないオリゴヌクレオチドは、TSHにより増加するF
R168との複合体の形成を低下させることができた(図34A)ため、この可
能性が確認された。この実験で使用したTSEP−1結合オリゴは最小TSHR
プロモーターの−220〜−188bp(図32B)のインシュリン感受性エレ
メントに由来する。
CRE様部位は構成的サイレンサーの必須成分であり(本実施例、図25A〜
B)、TSHにより誘導される複合体の形成に関与する(本実施例、図26A〜
B、27A〜B)ことが分かっているので、TSH/cAMP又はMMIによる
クラスI遺伝子発現の負の調節におけるその役割を調べることが重要であった。
SV40最小プロモーターの下流の−127〜−90bpの2個の38bp D
NAセグメントを含むpCATプロモーター構築物をFRTL−5細胞に一過性
トランスフェクトした。上述のように(図25B)、5’→3’の向きに配置す
ると、このDNAセグメントの単一コピーはSV40プロモーター活性を有意に
低下させることができ、効果の大きさは挿入した38bpセグメントのコピー数
と共に増加した(図35B、C)。トランスフェクトした細胞をフォルスコリン
で処理すると、単一コピーが存在する場合にはプロモーター活性は更に低下した
(P<0.05)が、2個のコピーが存在する場合には低下しなかった(図35
B)。細胞を1×10-10M TSH又は5mM MMIで処理すると、フォル
スコリン活性は倍増する(データは示さず)。このように、TSH/cAMP及
びMMIはサイレンサーの活性を増加することができた。
CATに連結したクラスIプロモーターの一連の5’欠失構築物(図16A、
図35A)として、全て共通の3’末端をもつが、上流配列の長さが異なる構築
物をFRTL−5細胞に一過性トランスフェクトした処、TSHはCREを含む
−107〜−100bpの38bpサイレンサー領域を欠失するp(−89)C
AT(図16A、35A)のプロモーター活性を依然として低下させることがで
きた。従って、CRE様エレメントが構成的サイレンサーとして機能し、TSH
により誘導されるタンパク質/DNA複合体の形成に必要であり、pCATプロ
モーター構築物でTSH/cAMP応答性を示すという事実にも拘わらず、クラ
スIプロモーター活性のcAMP抑制には−89bpの下流の他のエレメントが
関与している。
89bp内の任意の転写開始DNA配列が38bp CRF−1サイレンサー
とTSHにより誘導されるFr168とのタンパク質/DNA複合体の形成に関
係するか否かを調べるために、−89〜+1bpフラグメント(Fr89)がT
SHにより誘導されるFr168との複合体形成に関して競合する能力を試験し
た。図36、レーン3及び4とレーン11を比較すると明らかなように、この9
0bpフラグメントはFR127(図36、レーン2)又はCRE−1(図36
、レーン1)と同様に、TSHにより誘導されるバンドの形成に関して競合する
ことができた。複合体形成に関して競合する90bpフラグメント中の正確な残
基はまだ同定されていないし、38bpサイレンサー領域とCRE依存性結合を
示すどの因子が90bpフラグメントと結合するかも不明である。
TSEP−1はCRE−1と結合するYボックス(実施例11)であり、TS
Hにより誘導されるFr168とのバンド形成に関与し、TSHR Yボックス
タンパク質からのTSEP−1と結合するオリゴヌクレオチドとの競合により立
証されるように、クラスIプロモーターの−89bp内の配列を含むMHCクラ
スI 5’フランキング領域の多重部位で相互作用することが知られている(実
施例11)。
実施例10
上流サイレンサー/エンハンサーと下流サイレンサーの相関調節
図19A〜Cに示すように、オリゴKをp(−127)CATキメラとコトラ
ンスフェクトしても活性に何の効果もなかった。他方、オリゴKをp(−127
)CATの非パリンドロームCRE突然変異体であるp(−127NP)CAT
と
コトランスフェクトすると、プロモーター活性に顕著な刺激効果があった(図1
9C)。これらのデータから、オリゴK(Sox−4、図20)と相互作用し、
上流サイレンサー機能に重要なタンパク質は下流で相互作用できるが、その相互
作用は下流サイレンサーが不活性化されたときにしか明白ではないと思われた。
上流サイレンサーに対して反応性のインシュリン誘導タンパク質を除去すると、
通常はp(127)CATキメラでは機能的下流サイレンサーの存在により無効
なエンハンサー活性が発現する。従って、上流領域と下流領域は相関しているが
、下流サイレンサーは機能的に優性であり、オリゴK反応性タンパク質に関連す
るエンハンサー活性を抑制する(Sox 4、図20)。
上流及び下流プロモーターの相関はEMSAでも立証される。即ち、168b
p構築物が放射性標識プローブである場合には、高濃度の非標識140フラグメ
ントは、MMI又はMMI/TSHにより誘導される下流サイレンサーのCRE
との複合体を形成を妨げた(図37A、レーン2と1及び3を比較)。TSH/
MMIによる下流サイレンサー複合体の形成の増加に関与するタンパク質と相互
作用する140フラグメント上の1部位はエンハンサーエレメントであると思わ
れる。即ち、140フラグメントのエンハンサー複合体のみの形成を阻害するオ
リゴE9(図17)は、下流38bpサイレンサーにより形成されるタンパク質
/DNA複合体の形成を阻害する(図37B、レーン8)。AP−1又はOct
−1コンセンサス配列をもつオリゴヌクレオチドは同様に下流サイレンサーとの
複合体形成を阻害せず(図37B、レーン6及び7)、ソマトスタチンCRE配
列に相当するPromega CREオリゴヌクレオチドも阻害しない(図37
B、レーン7)ので、阻害は特異的であると思われる。更に、非標識38bpサ
イレンサーの配列をもつオリゴヌクレオチド(図37B、レーン3、CRE−1
)はE9により阻害される全複合体の形成を阻止する。
従って、上流エンハンサー及び下流サイレンサーと結合するタンパク質、特に
下流サイレンサー及びTSHRの負の調節に重要なタンパク質間に相互作用があ
ると思われる。
実施例11 Yボックスタンパク質TSEP−1はMHCクラスIの重要な調節剤であり、そ の活性はTSH及びMMIにより調節される
材料と方法
TSEP−1のクローニング − TSHR最小プロモーター内の−162〜
−140bpのタンデムリピート(TR)配列の2つのデカヌクレオチドを含む32
P標識コーディング鎖オリゴヌクレオチドssTR2(+)(Shimura
,H.(1993) J.Biol.Chem. 268,24125−241
37)を使用したサウスウェスタンブロッティング(Vinson,C.R.ら
(1988) Genes Dev. 2,801−806)によりλgt11
FRTL−5甲状腺細胞cDNA発現ライブラリー(Akamizu,T.ら
(1990) Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.87,
5677−5681)をスクリーニングした。他の手順は実施例8のSox−4
のクローニングと同一手順に従った。
細胞 − 5%ウシ胎児血清(Biofluids,Rockville,M
D)を補充したクーンの改変ハムF−12でバッファローラット肝細胞(BRL
3A,ATCC CRL 1442)を培養した。FRTL−5(ATCC
CRL 8305)及びFRTラット甲状腺細胞を同一培地で培養した(Iku
yama,S.ら(1992) Mol.Endocrinol. 6,793
−804; Ikuyama,S.ら(1992) Mol.Endocrin ol.
6,1701−1715; Shimura,H.ら(1993) J .Biol.Chem.
268,24125−24137; Shimura
,H.ら(1994) Mol.Endocrinol. 8,1049−10
69; Shimura,Y.ら(1994) J.Biol.Chem. 2
69,31908−31914; Ambesi−Impiombato,F.
S.(1986) Fast−growing thyroid cell s
train.米国特許第4,608,341号; Ambesi−Impiom
bato,F.S.とCoon,H.G.(1979) Int.Rev.Cy tol.
(増補)10,163−171; 実施例6、7及び8)。
大腸菌におけるタンパク質生産 − pET系(Novagen,Madis
on,WI)を使用して組換えタンパク質を製造した。TSEP−1 cDNA
インサートを発現ベクターpET−30(+)のEcoRI部位に連結し、Hi
sタグ配列をそのN末端に連結させた。大腸菌BL21(DE3)を使用して形
質転換後、Sox−4について実施例8に記載した手順を実施した。
EMSA − アッセイでは、[γ−32P]ATP及びT4ポリヌクレオチド
キナーゼで末端標識後に8%天然ポリアクリルアミドゲル上で精製した合成1本
鎖又は2本鎖オリゴヌクレオチドを使用した(Ikuyama,S.ら(199
2) Mol.Endocrinol. 6,1701−1715; Shim
ura,H.ら(1993) J.Biol.Chem. 268,24125
−24137; Shimura,H.ら(1994) Mol.Endocr inol.
8,1049−1069; Shimura,Y.ら(1994)
J.Biol.Chem. 269,31908−31914; 実施例6及
び8)。FRTL−5核抽出物1μg又は組換えTSEP−1 50ngを実施
例6及び8に記載したように非標識競合オリゴヌクレオチドの存在下又は不在下
でインキュベートした。DNA−タンパク質複合体を5%天然ポリアクリルアミ
ドゲル上で分離した。
核抽出物は従来の記載通り(Ikuyama,S.ら(1992) Mol. Endocrinol.
6,1701−1715; Shimura,H.ら
(1993) J.Biol.Chem. 268,24125−24137;
Shimura,H.ら(1994) Mol.Endocrinol. 8
,1049−1069; Shimura,Y.ら(1994) J.Biol .Chem.
269,31908−31914)又は実施例8に記載の手順に
より調製した。大規模調製物では、6H培地でほぼコンフルエントまで増殖させ
た後に5H培地(−TSH)で7日間保存した細胞からFRTL−5抽出物を得
た。細胞を掻き取って回収し、Mg++Ca++を含まないダルベッコの改変PBS
(DPBS),pH7.4で洗浄し、500×gで遠心分離後に2% Twee
n−40、10mM HEPES−KOH,pH7.9、10mM KCl、1
.5mM MgCl2、0.1mM EGTA、0.5mM DTT、0.5m
M PMSF、2μg/mlロイペプチン及び2μg/mlペプスタチンAを含
む0.
3Mスクロース5ペレット容量に懸濁した。凍結、融解及び温和な均質化後、同
一緩衝液を含む1.5mMスクロースクッション上で25,000×gで遠心分
離して核を分離し、10mM EGTA、10%グリセロール、0.5mM D
TT、0.5mM PMSF、2μg/mlロイペプチン及び2μg/mlペプ
スタチンAに溶解した。100,000×gで1時間遠心分離後、上清を透析し
、ゲル移動度シフト分析に用いた。
結果
TSHレセプター(TSHR)プロモーターの−162〜−140bpのタン
デムリピート(TR)における5’デカヌクレオチドはプロモーターのCTリッ
チなS1ヌクレアーゼ感受性領域である(Ikuyama,S.ら(1992)
Mol.Endocrinol. 6,793−803; Ikuyama,
S.ら(1992) Mol.Endocrinol. 6,1701−171
5; Shimura,H.ら(1993) J.Biol.Chem. 26
8,24125−24137)。非甲状腺特異的因子は5’デカヌクレオチドの
コーディング鎖と結合し、−139〜−132bpのcAMP応答エレメント(
CRE)の構成的エンハンサー活性を抑制することによりTSHR遺伝子発現を
低下させる(Shimura,H.ら(1993) J.Biol.Chem.
, 268,24125−24137)。ここでは、5’デカヌクレオチドと相
互作用する1本鎖DNA結合タンデムをコードするcDNA(図38A〜B)を
クローニングし、TSEP−1と命名した。即ち、1405bpのクローン40
(図38A)は322アミノ酸のオープンリーディングフレームをもつタンパク
質をコードした(図38B)。配列比較の結果、オープンリーディングフレーム
によりコードされるタンパク質はサプレッサーとしてでなくむしろエンハンサー
として特徴付けられるラット肝臓タンパク質であるエンハンサー因子1A即ちE
F1A(Ozer,J.ら(1990) J.Biol.Chem.,265,
22143−22152; Faber,M.ら(1990) J.Biol. Chem.
,265,22243−22254)又はラットCBBF/CDS(
Petty,K.J.ら,GenBank Accession番号M6913
8)に似ていることが判明した。EFIAは2つの逆方向CCAATボックス
モチーフでラウス肉腫ウイルスの長い末端反復エンハンサー及びプロモーターと
相互作用する能力により同定された(Ozer,J.ら(1990) J.Bi ol.Chem.
,265,22143−22152; Faber,M.ら(
1990) J.Biol.Chem.,265,22243−22254)。
ラットCBBP/CDSは肝臓におけるリンゴ酸酵素遺伝子の構成的発現にその
結合が必要とされるタンパク質としてクローニングされた。TSEP−1は3種
のヒトYボックスタンパク質と約95%相同である。第1番目はYB−1であり
、ファミリーの名称の由来であるYボックスと呼ぶ主要組織適合性複合体クラス
II逆方向CCAATモチーフとの結合因子としてリンパ芽球細胞系から単離さ
れたタンパク質である(Didier,D.K.ら,(1988) Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.
,85,7322−7326)。第
2番目はDbpBであり、YB−1とほぼ相同配列であり、EGFRエンハンサ
ー及びヒトc−erbB−2エンハンサー内の逆方向CCAATモチーフと結合
する能力によりクローニングされたタンパク質である(Sakura,H.ら(
1988) Gene,73,499−507)。第3番目はDbpB NSE
P−1と同族又は相同であり(Kinniburgh,A.J.(1989) Nucleic Acid Res.
17,7771−7778; Koll
uri,R.ら,(1992) Nucleic Acid Res.,20,
111−116; Wolffe,A.P.,(1992) New Biol .
,4,290−298; Kolluri,R.ら,(1991) Nuel cic Acids Res.
19,4771)、c−myc、EGFR及び
Ki−rasのCTリッチなヌクレアーゼ感受性1本鎖結合エレメントと結合す
る能力によりクローニングされたタンパク質である。
これらのデータが示すように、クローンはYボックスファミリーのタンパク質
のメンバーであるタンパク質をコードした(Wolffe,A.P.,(199
2) New Biol.,4,290−298)。このファミリーの1員であ
るヒトNSEP−1はTRの5’デカヌクレオチドに関連するタンパク質と同様
に、CTリッチな1本鎖S1ヌクレアーゼ感受性プロモーター領域と結合する能
力に基づいて既にクローニングされている。しかし、MHCクラスII遺伝子の
サプレッサーであるヒトYB−1を除き(Ivashkiv,L.B.ら,(1
991) J.Exp.Med.,174,1583−1582; Ivash
kiv,L.B.ら,(1994) Immunopharmacology,
27,67−77; Vilen,B.J.ら,(1992) J.Biol. Chem.
,267,23728−23734; Brown,A.M.ら,(
1993) J.Biol.Chem.,268,26328−26333;
Ting,J.P−Yら,(1994) J.Exp.Med.,179,16
05−1611; Wright,K.L.ら,(1994) EMBO J.
,13,4042−4053; MacDonald,G.H.ら,(1995
) J.Biol.Chem.,270,3527−353; Benoist
,C.ら,(1990) Annu.Rev.Immuno.,8,681−7
15; Didier,D.K.ら,(1988) Proc.Natl.Ac ad.Sci.U.S.A.
,85,7322−7326)、Yボックスタンパ
ク質はサプレッサー活性よりもむしろエンハンサーに関連付けられている。無傷
のTR配列を含むプロモータークロラムフェニコールアセチルトランスフェラー
ゼ(CAT)キメラをコトランスフェクトするか又は各デカヌクレオチドの突然
変異を不活性化することにより、本発明者らはタンパク質が3’デカヌクレオチ
ドでなく5’デカヌクレオチドの機能を調節することを示す(図39A〜39C
)。
これは、クローニングしたcDNA(図38B〜38B’)を発現ベクターp
RcCMV−TSEP−1に挿入し、無傷のTR配列pTRCAT5’−177
又は3’、5’もしくは両者のデカヌクレオチドの突然変異体(図39A)夫々
pTRCAT5’−177mt1、pTRCAT5’−177mt2及びpTR
CAT5’−177mt1+2を含むTSHR CATキメラのコトランスフェ
クションによりTSHR遺伝子転写を低下させる能力を試験した際に調べた(S
himura,H.ら,(1993) J.Biol.Chem.268,24
125−24137)。TR内の各デカヌクレオチドを突然変異させると、pT
RCAT5’−177よりもCAT活性が有意増加し(図39B及び39C)、
両末端を突然変異させると、CREを含むがTRは含まないpTRCAT5’−
146と同等レベルまでプロモーター活性は更に増加する(図39B及び39C
)(Ikuyama,S.ら,(1992) Mol.Endocrinol.
6,1701−1715; Shimura,H.ら,(1993) J.B iol.Chem.
268,24125−24137)。従って、各デカヌク
レオチドはサプレッサーエレメントとして作用する。4回の実験で、TRの5’
及び3’デカヌクレオチドの両者をその野生型形態で含むpTRCAT5’−1
77とpRcCMV−TSEP−1をコトランスフェクトすると、CAT活性は
pRc/CMV対照ベクターをコトランスフェクトした場合のレベルの50±7
%まで低下した(図39B及び39C)。pRcCMV−TSEP−1発現ベク
ター又はpRc/CMVはpTRCAT5’−177を構築するために使用した
ベクターp8CATに何の効果もなかった。従って、既にクローニングされてい
るYボックスタンパク質はTSHRのサプレッサーであった。しかし、より重要
な点として、pRcCMV−TSEP−1のコトランスフェクションにより無傷
の5’デカヌクレオチド配列を含むpTRCAT5’−177mt1活性は有意
(P<0.01)に低下し、4回の実験で平均して対照値の45±5%まで低下
した。コトランスフェクションは突然変異5’デカヌクレオチド配列をもつpT
RCAT5’−177mt2の活性には有意な効果がなかった(図38B及び3
9C)。更に、突然変異TR配列の5’及び3’デカヌクレオチドの両者をもつ
pTRCAT5’−177mt1+2(図39A)とpRcCMV−TSEP−
1をコトランスフェクトしても、pRc/CMVのコトランスフェクションと同
様にCAT活性は低下しない(図39B及び39C)。これらのデータが示すよ
うに、図38のcDNAによりコードされるYボックスタンパク質ファミリーメ
ンバーはTR部位の3’デカヌクレオチドではなく5’デカヌクレオチドと相互
作用することによりTSHR遺伝子発現を抑制し、肝臓でのエンハンサートとし
ての役割にも拘わらず、TSEP−1に予想される機能的サプレッサー特性をも
つ。
同一突然変異をもつオリゴヌクレオチドを使用して、本発明者らはTSEP−
1と呼ぶ組換えタンパク質(TSHRサプレッサーエレメントタンパク質1)が
非コーディング又は2本鎖DNA配列でなく5’−TRのコーディング鎖と特異
的タンパク質−DNA複合体を形成することを示す。
即ち、機能データを確認すると、図38の全長クローンによりコードされる組
換えYボックスタンパク質はTRの5’デカヌクレオチドのコーディング配列と
特異的に結合することが分かった。大腸菌で生産させてアフィニティー精製した
組換えHisタグタンパク質はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(デー
タは示さず)によると約45kDaであり、Yボックスタンパク質の42kDa
寸法(Spitkovsky,D.D.ら,(1992) Nucleic A cids Res.
20,797−803)にHisタグを加えた寸法に一致
する。32P標識1本鎖及び2本鎖プローブを用いたEMSAによると、組換えタ
ンパク質はクローニング用プローブとして使用した1本鎖オリゴヌクレオチドで
あるTRのコーディング鎖ssTR2(+)と結合した。しかし、TRの非コー
ディング[ssTR2(−)]即ち2本鎖に相当するオリゴヌクレオチドには結
合しなかった。更に、組換えタンパク質はTSHRプロモーターのCRE様配列
と共にTRの3’デカヌクレオチド(Ikuyama,S.ら,(1992) Mol.Endocrinol.
6,1701−1715; Shimura
,H.ら,(1993) J.Biol.Chem. 268,24125−2
4137)を機能的形態で含む1本鎖又は2本鎖TR1CREプローブssTR
1CRE(+)、ssTRICRE(−)及びdsTR1CREにも結合しなか
った。これらのデータは、図38のクローンによりコードされるYボックスファ
ミリーのメンバーがTRの3’デカヌクレオチドでなく5’デカヌクレオチドの
コーディング鎖と相互作用することによりTSHR遺伝子発現のサプレッサーと
して作用するという結論を裏付けるものである。
ノーザン分析によると、TSEP−1は甲状腺特異的ではなく、TSH又はイ
ンシュリンにより調節されない。即ち、クローン31(図38A)からの放射性
標識インサートをプローブとして使用したノーザン分析によると、FRTL−5
細胞、バッファローラット肝(BRL)細胞及び非機能的ラット甲状腺FRT細
胞からのRNA調製物で1.5kb転写物が検出された。従って、mRNA寸法
はrt CBBF/CDS(Petty,K.J.ら,GenBank Acc
ession番号M69138 31)により肝臓で同定された寸法と同一であ
る。これらのデータは、5’デカヌクレオチドと結合するタンパク質がBRL細
胞に存在し、従って甲状腺特異的ではないという本発明者らの従来の考察(Sh
imura,H.ら,(1993) J.Biol.Chem. 268,24
125−24137)に一致し、Yボックスタンパク質としてのTSEP−1の
同定に一致する。TSHの存在下又は不在下で保存したFRTL−5ラット甲状
腺細胞からのポリ(A)+RNA調製物はYボックス転写物レベルに有意差がな
かった。細胞培地からインシュリン/血清を除去してもYボックスmRNAレベ
ルは変わらなかった。
従って、TSEP−1は主要組織適合性(MHC)クラスII遺伝子のYボッ
クスに結合するヒトYB−1と、TSHRと同様にGCリッチなプロモーターを
もつ遺伝子、c−myc、上皮成長因子レセプター、インシュリンレセプター及
びKi−rasのCTリッチな1本鎖ヌクレアーゼ感受性エレメントに結合する
ヒトNSEP−1(ヌクレアーゼ感受性エレメントタンパク質1)との両者に9
5%相同のYボックスタンパク質である(Ikuyama,S.ら,(1992
) Mol.Endocrinol. 6,793−803)。
TSEP−1は最小TSHRプロモーターの他の2部位と1本鎖特異的に結合
する。一方は最小TSHRプロモーターのインシュリン応答エレメントに関連し
、明白にCTリッチな領域には存在しない。他方はTSHRのSボックスの3’
末端の−120〜−113bpに位置し、CTリッチな領域に存在し、TSEP
−1はこれらの2部位の各々で機能的サプレッサーである(図40A〜C)。
EMSA及びオリゴヌクレオチド競合アッセイを使用し、TSEP−1が相互
作用すると思われるTSHR上の他の部位を決定した。放射性標識ssTR2(
+)とFRTL−5細胞からの核抽出物のタンパク質/DNA複合体の形成は相
同非標識オリゴヌクレオチドにより阻止され、その特異性を裏付けた。下流では
、放射性標識ssTR2(+)をプローブとして使用した場合には、−153〜
−114bpの非標識TR1CREは1本鎖又は2本鎖、コーディング又は非コ
ーディングのいずれも複合体形成を阻止しなかった(データは示さず)。他方、
ssS(+)と呼ぶ−131〜−100bpのTSHRのコーディング鎖配列に
相当する非標識1本鎖オリゴヌクレオチドは放射性標識ssTR2(+)複合体
形成の有効な阻害剤であった。ssS(+)の非コーディング鎖に相当する非標
識オリゴヌクレオチドssS(−)もその形成を阻害せず、TSHRのこの領域
に相当する2本鎖オリゴヌクレオチドも同様に阻害しなかった。
上流では、放射性標識ssTR2(+)とのタンパク質−DNA複合体の形成
は−194〜−169bpのTSHR配列に相当するコーディング、非コーディ
ング又は2本鎖オリゴヌクレオチドにより阻害されなかった。この領域は甲状腺
転写因子1(TTF−1)部位と、5’側でTTF−1部位に隣接する非コーデ
ィング鎖上の1本鎖結合タンパク質(SSBP)エレメントを含み、これらの部
位はいずれもTSHRの最大発現とTSH−cAMPによるTSHR遺伝子発現
の低下に結び付けられている(Shimura,H.ら(1994) Mol. Endocrinol.
8,1049−1069; Ohmori,M.ら,
(1995) Endocrinology,136,269−282; Sh
imura,H.ら(1995) Mol.Endocrinol. 9,52
7−539)。他方、TSHRインシュリン応答エレメントのコーディング鎖で
なく非コーディング鎖の配列をもつ−220〜−188bpのオリゴヌクレオチ
ド(オリゴTIF)はssTR2(+)複合体形成の有効な阻害剤であった。2
本鎖オリゴヌクレオチドも競合剤ではなかった。
これらのデータから、TSHRには2つの付加的なYボックスタンパク質結合
部位が存在し、両者とも1本鎖特異性を示すと思われた。一方はCREの下流の
−131〜−100bpに位置する。他方はインシュリン応答エレメントの領域
である−220〜−188bpに位置する。これを確認し、それらの機能的役割
を確定し、部位を決定するために、以下の実験を実施した。
まず、これらの他の部位を含むオリゴヌクレオチドを放射性標識プローブとし
て使用してオリゴヌクレオチド競合を実施した。即ち、−220〜−188bp
の領域に相当する非コーディング鎖オリゴヌクレオチド[オリゴssTIF(−
)]を放射性標識プローブとして使用した処、主要タンパク質−DNA複合体が
形成され、その移動度は同一甲状腺細胞抽出物と形成されたssTR2(+)複
合体と同一であることが判明した。更に、その形成はTR2[ssTR2(+)
]及びS領域[ssS(+)]の両者の非標識コーディング鎖により阻止される
が、
非コーディング鎖であるssTR2(−)又はssS(−)では阻止されないこ
とが判明した。放射性標識プローブとしてssS(+)と非標識ssTR2(+
)又はssTIF(−)を使用した競合実験でも同一の結果が得られ、非標識s
sTR2(−)又はssTIF(+)も競合剤ではなかった(データは示さず)
。そこで、同一細胞抽出物を使用し、これらの部位の存在、それらの結合特異性
及び同一寸法の複合体を形成する能力を逆競合実験により確認した。
第2に、放射性標識オリゴヌクレオチドを使用し、組換えYボックスタンパク
質が放射性標識ssS(+)及びssTIF(−)と複合体を形成するが、放射
性標識ssS(−)又はssTIF(+)とは複合体を形成しないことを直接結
合により示した。また、放射性標識2本鎖オリゴヌクレオチドであるdsS又は
dsTIFもTSEP−1タンパク質と複合体を形成しなかった。こうして、組
換えタンパク質による直接結合実験の結果、これらは1本鎖のYボックスタンパ
ク質結合部位であることが立証された。更に、放射性標識プローブを加える前に
組換えタンパク質をタンパク質キナーゼAの触媒サブユニット及びATPと共に
プレインキュベートした場合には複合体形成を強化できないことも立証された。
PKA効果は放射性標識プローブとしてssS(+)、ssTR2(+)又はs
sTIF(−)を用いると倍増した(データは示さず)。使用前に酵素を煮沸し
た場合には効果は失われ、アルブミンでなくバレイショ酸ホスファターゼに暴露
すると効果は逆行し、TTF−1に報告されている結果と同様であった(Shi
mura,H.ら(1994) Mol.Endocrinol. 8,104
9−1069; Ohmori,M.ら,(1995) Endocrinol ogy
,136,269−282)。
第3に、pRcCMV−TSEP−1のコトランスフェクション実験の結果、
どちらの部位もサプレッサーエレメントとして機能することが判明した(図40
A−A’〜40D−D’)。pTRCAT5’−220をFRTL−5細胞にコ
トランスフェクトすると、対照ベクター単独のコトランスフェクションに比較し
てCAT活性を有意に(p<0.05)低下させることができる(図40A−A
’)。しかし、この構築物は3個のYボックス部位を全て含んでいるので、−2
20〜−188bpの領域が機能的Yボックスサプレッサー部位であるかどうか
はこれらのデータでは立証できない。これを示すために、TSHRのインシュリ
ン応答エレメントの1又は2コピーを含むSV40に結合したプロモーター構築
物とpRcCMV−TSEP−1又はpRcCMV対照をコトランスフェクトし
た(図40D)。いずれの場合もYボックスタンパク質をコードするベクターの
コトランスフェクションはpRcCMVのコトランスフェクションに比較してプ
ロモーター活性を有意に抑制した(P<0.02)。pRcCMV−TSEP−
1をFRTL−5(図40B)又はFRT(図40C)細胞にコトランスフェク
トすると、−131〜−100bpの下流Yボックスタンパク質結合部位しかも
たないpTRCAT5’−146及びpTRCAT5’−131の活性は低下し
た(P<0.05)。他方、コトランスフェクションはYボックスタンパク質結
合部位をもたないpTRCAT5’−90又はp8CAT対照の活性には効果が
なかった
YボックスコトランスフェクションがpTRCAT5’−177mt1+2を
抑制できず、TRを欠失するpTRCAT5’−146又はpTRCAT5’−
131を抑制できるという事実から明らかなように、Yボックスタンパク質が5
’デカヌクレオチドと結合後まで下流Sボックス部位はTRの存在下で非機能的
である。従って、Yボックスタンパク質と5’デカヌクレオチドの結合は主要な
調節イベントであると思われ、Yボックスタンパク質NSEP−1はGCリッチ
なプロモーターをもつ遺伝子上のCTリッチなS1−ヌクレアーゼ感受性領域と
結合後に1本鎖三重DNA構造を促進すると示唆されているが、Sボックス及び
インシュリン応答エレメントに関連する他のYボックスタンパク質結合部位はこ
のような1本鎖三重DNA構造で有効になると思われる(Kolluri,R.
ら,(1992) Nucleic Acids Res. 20,111−1
16)。
突然変異分析によると、各TSEP−1部位の保存CCTC配列はTSEP−
1結合及び機能に重要である。各遺伝子座におけるYボックスタンパク質の結合
部位をより十分に確定するために、ssS(+)又はssTIF(−)オリゴヌ
クレオチドの種々の部分に突然変異を導入した。ssS(+)mt1オリゴヌク
レオチドはssS(+)の5’側半分に突然変異を含み、ssS(+)mt2は
3’側半分に突然変異を含む(図32及び34)。ssTIF(−)mt1は野
生型ssTIF(−)の5’側3分の1に突然変異を含み、ssTIF(−)m
t2はssTIF(−)の中央部分に突然変異を含む(図32及び34)。
放射性標識後にプローブとして使用した処、各mt1オリゴヌクレオチドは組
換えYボックスタンパク質と複合体を形成し、その移動は放射性標識野生型プロ
ーブにより形成される複合体と同一であった。他方、ssS(+)及びssTI
F(−)の両者のmt2突然変異をもつ放射性標識オリゴヌクレオチドは組換え
Yボックスタンパク質とタンパク質−DNA複合体を形成する能力を失った。非
標識mt2突然変異オリゴヌクレオチドは、放射性標識野生型オリゴヌクレオチ
ドと組換えYボックスタンパク質の間の複合体形成を阻止する能力も失った(デ
ータは示さず)。
突然変異によってYボックスタンパク質と結合できなくなったssS(+)及
びssTIF(−)領域とssTR2(+)配列を整列させると、全位置で保存
CCTCエレメントが認められる。各部位のCCTC配列をGTAGに突然変異
させると、組換えYボックスタンパク質結合の顕著な低下がEMSAにより検出
された。これらのデータが示すように、各Yボックスタンパク質結合部位即ちT
SHRの5’デカヌクレオチド、インシュリン応答エレメント領域及びSボック
ス領域内のCCTCモチーフはYボックスタンパク質の1本鎖結合活性に必須で
ある。
ラットTSHRのSボックスをこう呼ぶのは、マウスAαクラスII MHC
遺伝子のSボックスと1塩基しかミスマッチがなく、X及びYボックスと共に構
成的なクラスII遺伝子発現の抑制に重要であるからである。全てのクラスII
Sボックスの機能的に重要なコンセンサス配列はCCTC/Tである。つまり
、TSEP−1はラットTSHRプロモーターの1本鎖DNA結合部位と相互作
用することにより構成的TSHR遺伝子発現を抑制するYボックスタンパク質で
あり、このような部位の1つがTRの5’デカヌクレオチドであり、TSHR最
小プロモーターのCTリッチなS1ヌクレアーゼ感受性領域に存在する。別の部
位はこの遺伝子の抑制に関与するMHCクラスIIプロモーター内の部位に関連
すると思われる。
MHCクラスIの発現は発生中に調節され、組織によって異なり(Ting,
J.P−Yら(1993) Current Opinion in Immu nology
5,8−16)、発現レベルが異常に高いと自己免疫甲状腺疾患
(ATD)や糖尿病に結び付けられるので、発現の正確な調節は免疫応答の制御
に不可欠である(Todd,I.ら,(1986) Annals N.Y.A cad.Sci.
,475,241−249)。TTF−1は甲状腺発生と甲状
腺特異的機能に関連する遺伝子即ちTSHレセプター(TSHR)及びチログロ
ブリン(TG)の発現を調節するホメオドメインタンパク質である(Guazz
i,S.ら,(1990) EMBO J. 9,631−3639; Fra
ncis−Lang,H.ら,(1992) Mol.Cell.Biol.
12,576−588; Zannini,M.ら,(1992) Mol.C ell.Biol.
12,4230−4241; Shimura,H.ら,
(1994) Mol.Endocrinol. 8,1049−1069;O
hmori,M.ら,(1995) Endocrinology,136,2
69−282; Kohn,L.D.ら,(1995) Vitamins a nd Hormones
50,287−384)。そのRNAレベルは甲状腺
細胞でTSHによりダウンレギュレートされる(Shimura,H.ら,(1
994) Mol.Endocrinol. 8,1049−1069;Ohm
ori,M.ら,(1995) Endocrinology,136,269
−282)。MHCクラスIプロモーターの−127〜−89bpに位置し、−
107〜−100bpの環状AMP応答エレメント(CRE)に依存する機能と
、TSH又はメチマゾール(MMI)により調節される活性(実施例9)をもつ
下流38bpサイレンサーが同定された。ゲルシフトアッセイ(EMSA)を使
用すると、このサイレンサーにより形成されるタンパク質/DNA複合体はラッ
ト甲状腺に存在し、肝細胞には存在せず、その形成はTSHR上のTTF−1結
合部位及びTGプロモーターに似た非標識オリゴヌクレオチドにより阻害される
ので、この複合体はTTF−1を含むことが判明した(図30)。EMSA、組
換えTTF−1、並びにクラスIプロモーターの−127〜−104bp及び−
105〜−80bpに似たオリゴヌクレオチドを使用し、本発明者らはCRE
の下流及び上流の2つのTTF−1結合部位(図41A)を同定し、一方はTT
F−1特異的であり、他方はPax−8とも相互作用することができる。TTF
−1とCRE結合タンパク質CREBは夫々−120〜−89bp及び−113
〜−95bpの領域にフットプリントし、フットプリントのオーバーラップはT
TF−1とCREBの結合が相互に競合的であることを示す。
ラット甲状腺細胞でTTF−1を過剰発現させると、TTF−1部位とCRE
を含むクラスIリポーター遺伝子キメラp(−209)CAT又はp(−127
)CAT(図41C)の活性が増加するが、これらの部位を含まないキメラp(
−68)CATや、非パリンドロームCRE突然変異をもつキメラp(−209
NPCRE)の活性は増加しない。他方、TSEP−1又はYボックスcDNA
を過剰発現させると、クラスIプロモーター活性が低下する(図41C)。TS
HはクラスIレベルを低下させるときにこれに相関してTTF−1とサイレンサ
ーの複合体形成を低下させ、2個のYボックスタンパク質(TSEP−1)サプ
レッサー部位との複合体形成を増加し、その一方は各TTF−1エレメントの近
傍に位置する(図41A)。MMIはTTF−1 mRNAレベルも低下させ(
表VIII)、MMIは更にインターフェロンがTSEP−1 RNAレベルを
低下させる能力も逆行させる(表IX)。クラスIプロモーター−リポーター遺
伝子キメラをコトランスフェクトした場合に、TSEP−1はクラスI活性のサ
プレッサーである(図41C)。ゲルシフトアッセイとTSHR遺伝子からのオ
リゴヌクレオチド競合剤を使用し、本発明者らはCREを囲むクラスIプロモー
ターのコーディング鎖上の2つのTSEP−1部位を同定する。一方はCREの
3’側で48bpサイレンサーの内側に位置し、他方は上流でインシュリン応答
エレメントとCREの間に位置する。TSEP−1部位は各場合に甲状腺転写因
子1(TTF−1)エレメントに関連する。突然変異データは、夫々の部位との
TTF−1/TSEP−1結合が相互に排他的であることを示す。インターフェ
ロン(IFN)は甲状腺細胞におけるクラスI発現を増加し、MMIはこれを逆
行させる(M.Sajiら,(1992b))。IFNはTSEP−1 RNA
レベル(表IX)とクラスIプロモーターのこの領域との複合体形成を低下させ
(データは示さず)、MMIはこれを逆行させる(表IX)。つまり、TSEP
−1
はMHCクラスI及びTSHR遺伝子発現の負のレギュレーターである。
表VIIIの注:FRTL−5甲状腺細胞を80%コンフルエントまで増殖後にTS
Hを含まない培地に6日間維持した。実験の開始時に5mM MMIを含むか又
は含まない新鮮な培地に細胞を暴露した。24時間後に細胞を回収し、RNAを
分離し、記載通りにTTF−1のcDNAを使用してノーザン分析を実施した(
Shimura,H.ら,(1994) Mol.Endocrinol. 8
:1049−1069; Ohmori,M.ら,(1995) Endocr inology
136:269−282)。デンシトメトリーにより定量し、
未処理細胞のTTF−1レベルを100%とした。
表IXの注:FRTL−5甲状腺細胞を80%コンフルエントまで増殖後にTSH
を含まない培地に6日間維持した。実験の開始時にインターフェロン及び/又は
5mM MMIを含むか又は含まない新鮮な培地に細胞を暴露した。24時間後
に細胞を回収し、RNAを分離し、クローン40インサートを使用してノーザン
分析を実施した(図38)。表VIIIと同様に分析を行った(Shimura
,H.ら,(1994) Mol.Endocrinol. 8:1049−1
069; Ohmori,M.ら,(1995) Endocrinology
136:269−282)。デンシトメトリーにより定量し、未処理細胞のT
ESP−1レベルを100%とした。
要約すると、TTF−1は下流38bpサイレンサーに及ぼすその作用により
、甲状腺細胞におけるMHCクラスI遺伝子発現の正のレギュレーターである。
TSH及びMMIはTTF−1 RNA及びタンパク質レベルを低下させてTT
F−1の正の調節を低下させることにより、クラスI発現を低下させる。従って
、TTF−1及びクラスI発現は通常はTSHとMMIにより同時調節される。
TTF−1とこのサイレンサーの相互作用は通常はTSEP−1と相関される
。TSEP−1は通常はMHCクラスIを抑制し、抑制はインターフェロンによ
り解除される。TSEP−1結合、活性及び抑制はMMIにより正常に戻すこと
ができる。即ち、下流サイレンサーは通常はTSEP−1/TTF−1により調
節されるが、自己免疫甲状腺疾患では異常調節の対象となる組織特異的制御領域
であり、MMIの作用部位である。
以上、平明な理解を目的として本発明を図面と実施例により説明したが、請求
の範囲内で多少の変更や変形を実施してもよいことは言うまでもない。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C07K 16/18 C07K 16/18
C12N 15/09 ZNA C12P 21/02 C
C12P 21/02 21/08
21/08 C12Q 1/26
C12Q 1/26 1/68 A
1/68 G01N 33/53 M
G01N 33/53 33/566
33/566 C12N 15/00 ZNAA
//(C12N 15/09 ZNA
C12R 1:91)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU,
CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,H
U,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ
,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,
MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,R
O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM
,TR,TT,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 シンガー,ディナー・エス
アメリカ合衆国メリーランド州20815,チ
ェビー・チェイス,ラッフィン・ロード
6404
(72)発明者 サジ,モトヤス
アメリカ合衆国メリーランド州20852,ロ
ックヴィル,ロックヴィル・パイク
10228,アパートメント 401
(72)発明者 ジュリアーニ,セシディオ
アメリカ合衆国メリーランド州20817,ベ
セスダ,グリーン・ツリー・ロード 5618
(72)発明者 ション,ミンホー
アメリカ合衆国メリーランド州20852,ロ
ックヴィル,コングレッショナル・レーン
204,ティー−2
(72)発明者 スズキ,コーイチ
アメリカ合衆国メリーランド州20852,ロ
ックヴィル,ストーンウッド・レーン
11708
(72)発明者 オオモリ,マサユキ
アメリカ合衆国メリーランド州20852,ロ
ックヴィル,カリフォルニア・サークル
6020,ナンバー 309