JPH11354033A - カラー陰極線管の製造方法及びバルブ内洗浄装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シャドウグリルを有するカラー陰極線管の電
子銃封止前の工程で、エアーブローによりグリル線の絡
みを解くことで、画像の色ムラをなくしたカラー陰極線
管の製造方法を提供する。 【解決手段】 １はパネル、２はＲＧＢの３色をコント
ロールするシャドウグリルのグリル線、３は外部磁気を
遮断するＩＭＳ、４は絡み解き及び管内不純物を除去す
るエアーの流れを形成するためのエアーチップであり、
矢印Ｅ２によって流れを示した管内のエアー（気体）
は、直接にシャドウグリルのフレーム７に向けて噴射さ
れ、その後、パネル１の蛍光面及びＩＭＳ３に対して一
定した流れとして形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、カラー陰極線管
の製造方法及びバルブ内洗浄装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】図５は、テレビ受信機に使用されるカラ
ー受像管の基本的な構造を示す断面図である。カラー受
像管は、図に示すようなフェイスパネル１（以下、パネ
ル１という。）とファンネル５をフリット封止した漏斗
状の形のガラスバルブにより構成される。ファンネル５
の内部には、複数の開口を有するほぼ四角錐状の内部磁
気シールド（以下、ＩＭＳという。）３が配置され、パ
ネル１の内面には蛍光体が塗付されるとともに、シャド
ウグリル（色選別機構）を構成するグリル線２が配置さ
れている。これらグリル線２やＩＭＳ３により、蛍光面
には３本の電子銃からの電子ビームが選別して照射さ
れ、所定のカラー画像を映し出すように構成されてい
る。

【０００３】このようなカラー陰極線管の製造時には、
一般的に、ガラスバルブ内に電子銃を封止する前の段階
で実施されるフリット封止炉によるバルブ形成工程にお
いて、パネル１の内面やファンネル５の内面から、或い
はグリル線２、フレーム７或いはスプリング８など、シ
ャドウグリルを構成する部品からガスが発生する。こう
したガスが滞留した状態でガラスバルブ内に電子銃を挿
入して封止すると、排気工程までにパネル１の内面の蛍
光面上に形成されたアルミ蒸着膜（メタルバック）及び
蛍光面が劣化する。

【０００４】そこで、電子銃の封止に先立って、パネル
１、及びファンネル５からなるガラスバルブ内部のエア
ーの置換が行われる。エアー置換においては、ファンネ
ル５のネック部６からエアーノズル９が挿入され、その
先端に設けたエアーコントロールチップ（以下、エアー
チップ、或いは単にチップという。）４によって、図５
に矢印で示すようなエアーの流れが形成される。

【０００５】図６は、従来のカラー陰極線管の製造工程
におけるエアー置換処理で採用されるチップ形状の代表
的な例を示す上面、及び側面断面図である。

【０００６】このようなエアー置換方法では、図６に示
すような、直径（χ１）が１［mm］〜１．５［mm］の円
形の空気穴を例えば水平方向に互いに９０度の向きで４
ケ所に設けたチップ４を有するエアーノズル９が用いら
れる。エアーノズル９は、パネル１の軸線１ａに沿って
挿入され、図７に示すようにパネル１の軸線１ａにほぼ
直角にチップ４からエアーＥ１が円錐形状に噴出され
る。図５に示すエアーチップ４の位置は基本的にはグリ
ル線２に接触していなければよいのであるが、実際には
グリル線２やＩＭＳ３がエアーの風圧によって変形しな
いように、ＩＭＳ３の外側でファンネル５の内面に向け
て、ＩＭＳ３の開口にあたる４方向にエアーＥ１を直接
噴射する方法が一般的である。

【０００７】このようにして、フレッシュなエアーＥ１
が陰極線管内の体積に対して２〜５倍の量だけ放出さ
れ、管内の空気と置換されることによって、パネル１の
内面に形成されている蛍光面及びアルミ膜の劣化を防止
すると同時に、管内に付着するゴミ等を除去して、良好
な耐電圧特性のカラー陰極線管を得ることができる。

【０００８】ところで、陰極線管の製造工程には、その
内部を排気して高真空にするために、ゲッター（ＢａＡ
ｌ₄＋４Ｎｉ）を高周波で加熱して蒸着させる工程が必
要である。色選別機構には、図５に示すグリル線２を並
べたシャドウグリルタイプと、シャドウマスクタイプと
があり、後者のものでは後述するゲッター膜の不均一に
よる色ムラは、構造上の相違から全く問題にならない。
しかし、図５のシャドウグリルタイプ（アパーチャーグ
リルタイプ）のものでは、グリル線２がフリット封止炉
を通ることにより加熱され、グリル線２に形成された黒
化膜（Ｆｅ₃０₄）の表面に薄くＦｅ₂０₃の膜が発生し
て、その表面が粗くなって滑りにくくなったり、熱膨張
により、グリル線２の張力が低下する。

【０００９】図８は、シャドウグリルの構造を示す平面
図である。フレーム７上に張架された複数本のグリル線
２を有するシャドウグリル１０は、フレーム７の各辺に
設けたスプリング８によってパネル１の蛍光面に近接し
て配置されており、陰極線管の搬送時に生じる振動等に
よって、互いに接近したグリル線２の隣接するもの同士
が図８（ｂ）に示すように絡むことがある。そして、ゲ
ッターの加熱蒸着工程で、陰極線管のグリル線２に絡み
があると、図８（ｃ）に示すように通常は一定間隔であ
るのに対して、絡みの部分のみ間隔が異なり、ゲッター
の通過量が不均一となるため、パネル内面に付着するゲ
ッター膜も不均一となる。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】このように陰極線管の
製造工程で、パネル内面のゲッター膜が不均一に形成さ
れた場合には、蛍光体に到達した電子ビームによって励
起されるエネルギーが不均一となり、電子ビームによっ
て形成される蛍光面上の画像の一部分にスジ状の色ムラ
となって表れるという問題があった。

【００１１】この発明は、上述のような課題を解決する
ためになされたもので、第１の目的は、アパーチャーグ
リルを有するカラー陰極線管の電子銃封止前の工程で、
エアーブローによりグリル線の絡みを解くことで、画像
の色ムラをなくしたカラー陰極線管の製造方法を提供す
ることである。

【００１２】この発明の第２の目的は、カラー陰極線管
の電子銃封止前のエアーブロー工程に使用して、一定方
向にエアーの流れを形成するようにしたバルブ内洗浄装
置を提供することである。

【００１３】

【課題を解決するための手段】この発明に係るカラー陰
極線管の製造方法は、シャドウグリルが配置されたバル
ブ内に発生するガスをエアーの置換によって排出してか
ら、電子銃を封止するようにしたカラー陰極線管の製造
方法において、シャドウグリルのグリル線を保持する一
方のフレームに向けてエアーを噴射して、カラー陰極線
管のバルブ内に一定したエアーの流れを形成したもので
ある。

【００１４】また、エアーを、フレームによって保持さ
れているグリル線が伸びる方向に５０〜１００［mm］の
範囲に直接に当てるようにしてもよい。

【００１５】この発明に係るバルブ内洗浄装置は、色選
別機構が配置されたバルブ内に発生するガスをエアーの
置換によって排出するためのバルブ内洗浄装置におい
て、バルブ内に挿入されるエアーノズルと、エアーノズ
ルの先端部分に装着され、エアーノズルの軸線に対して
ほぼ４５度をなす角度の噴射孔が形成されたエアーチッ
プとを備えたものである。

【００１６】また、エアーチップの先端部分が球面をな
しており、この球面部分に対して所定の角度範囲に渡っ
て所定の開口幅を有する切り込みとして噴射孔を形成で
きる。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、添付した図面を参照して、
この発明の実施の形態について説明する。

【００１８】実施の形態１．図１は、実施の形態１のカ
ラー陰極線管の製造方法における陰極線管の構造、及び
エアーノズルによるエアー（気体）の流れを示す断面図
である。

【００１９】図において、１はパネル、２はＲＧＢの３
色をコントロールするシャドウグリルのグリル線、３は
外部磁気を遮断するＩＭＳ、４はエアーの流れを形成し
て絡み解き及び管内不純物を除去するためのエアーチッ
プであり、その詳細は後に図３、図４に基づいて説明す
る。ここでは、矢印Ｅ２によって管内のエアー（気体）
の流れを示しており、エアーは直接にシャドウグリルの
フレーム７に向けて噴射され、その後、パネル１の蛍光
面及びＩＭＳ３に対して一定した流れとして形成されて
いる。

【００２０】また、５はファンネル、６はネック部、７
はグリル線２を保持するフレーム、８は成形されたシャ
ドウグリルを保持するばね（スプリング）、９はエアー
チップを保持し、且つ抜き差しするエアーノズルであ
る。

【００２１】図２は、エアーチップ４からのエアー噴射
方向を示す図、図３は、エアーチップ４の先端の噴射孔
の形状を示す上面、及び側面断面図、図４は、エアーチ
ップ４からのエアーの噴出形状を示す斜視図である。

【００２２】ここでは、バルブ内の洗浄と同時に、電子
銃封止前にグリル線絡みを解くために、シャドウグリル
の一方の長辺部に向けてエアーブローが実行される。こ
のためのバルブ内洗浄装置は、ガラスバルブ内に挿入さ
れるエアーノズル９、及びエアーノズルの先端部分に装
着されたエアーチップ４、及び図示しないエアーボン
ベ、弁等から構成されている。

【００２３】エアーチップ４から噴射された直後のエア
ーの噴出形状は、図４に示すように扇形状になる。即ち
シャドウグリルの長辺部に向うエアーＥ２は、噴射孔４
ａからシャドウグリルのグリル線２のフレーム７との接
続部分に向う線分を中心にして角度αの広がりをもって
おり、図２に示すようにフレーム７に対してグリル線２
が伸びる方向（図の横方向）にχ３、ＩＭＳ３に対して
は縦方向にχ４だけ広がって噴射される。その結果、グ
リル線２には、その付け根を中心にして複数のグリル線
２の全部を同時に上下左右方向の振動が与えられる。

【００２４】ここで、シャドウグリル中央部にエアーを
噴射していないのは、グリル線２の中央部分を振動させ
ると、その振幅の関係から、グリル線２に絡みが再発す
るおそれがあるからである。

【００２５】また、図３に示すように、エアーノズル９
の先端部分に装着されるエアーチップ４は、先端部分が
球面をなし、そこに一つだけ噴射孔４ａが形成されてい
る。そして、このエアーチップ４に形成される噴射孔４
ａは、エアーノズル９の軸線９ａに対してほぼ４５度を
なす角度（θ）で、球面部分に対して１８０度の範囲に
渡って開口幅χ２（＝０．５［mm］）の切り込みをなし
ている。なお、フレーム７は、例えば２１吋の大きさの
シャドウグリルの場合、約１４８３本のグリル線が張架
されたものである。

【００２６】このような形状の噴射孔４ａを有するエア
ーチップ４を用いて、グリル線２に振れを与えると同時
に、グリル線２を保持するフレーム７にエアーブローす
ることにより、グリル線２相互の絡みを防止するだけで
なく、グリル線２やフレーム７に付着するゴミ等を除去
して、良好な耐電圧特性のカラー陰極線管を得ることが
できる。

【００２７】なお、ネック部６から挿入されるエアーノ
ズル９は、エアーＥ２の角度θがシャドウグリルのグリ
ル線２を保持するフレーム７に対して４５度〜７０度の
範囲となるように位置決めして静止させればよい。その
場合に、噴射孔４ａの開口幅χ２、エアーチップ４から
のエアー流量、噴射孔４ａの角度によって、図２に示す
ピッチχ３、χ４を調整することができ、再絡みの発生
しない安定した状態で、洗浄のためのエアーブローを容
易に維持できる。この調整については、更に実施の形態
３において後述する。

【００２８】以上述べたように、電子銃封止前にシャド
ウグリルの長辺部に向けてエアーを噴射することによ
り、グリル線２の線間での絡みを解くことができ、その
後の陰極線管の製造工程で、パネル内面のゲッター膜が
不均一に形成されなくなるから、画面のスジ状のムラの
発生を防止することができる。

【００２９】また、シャドウグリルの長辺部に直接噴射
しているので、グリル線２全体に適度の揺れが発生し
て、グリル線２の外周に付着している不純物を確実に除
去することができ、且つファンネル５、パネル１の内壁
も一定方向に循環するエアーによってエアーの置換が行
われるので、蛍光面及びアルミ膜の劣化を防止すると同
時に、管内に付着するゴミ等を除去して、良好な耐電圧
特性のカラー陰極線管を得ることができる。

【００３０】さらに、管内の空気をフレッシュなエアー
に置換することにより、管内の装備品の劣化を防止する
ことができる。

【００３１】実施の形態２．実施の形態１では、シャド
ウグリルのグリル線相互の絡みを解くための工程とし
て、この発明のカラー陰極線管の製造方法を説明した。

【００３２】実施の形態２では、ゲッター膜による色ム
ラが全く問題にならない、シャドウマスクタイプのカラ
ー陰極線管の洗浄工程に適用するものである。図３に示
すような、一定方向にエアーの流れを形成するようにし
たバルブ内洗浄装置を用いれば、図１に示すように吹き
溜まりがないエアーの流れが形成されるから、全てのシ
ャドウマスクタイプのカラー陰極線管に同様に適用する
ことができる。

【００３３】実施の形態３．実施の形態１では、エアー
Ｅ２の噴射角度θを４５度〜７０度として、ＩＭＳ３と
シャドウグリルにそれぞれエアーを直接に当てて、その
後のエアーの流れが一定になるように形成していた。

【００３４】実施の形態３では、図２に示す距離χ３を
５０〜１００［mm］、距離χ４を０〜５０［mm］の範囲
でＩＭＳ３とシャドウグリルにそれぞれエアーが当たっ
て、その後のエアーの流れが一定になるように形成す
る。その場合に、エアーチップ４の噴射孔４ａの大きさ
は、エアーチップ４が挿入された位置、及び陰極線管の
サイズによって異なる。図２に示す角度θが４５度であ
れば、陰極線管のサイズが２１吋までの場合には、χ２
を０．５［mm］、エアー流量を６００〜１０００［l/Hr
/mmAq］に設定すると最も好ましい結果が得られた。

【００３５】

【発明の効果】この発明は、以上に説明したように構成
されているので、以下に示すような効果を奏する。

【００３６】請求項１の発明では、シャドウグリルのグ
リル線を保持する一方のフレームに向けてエアーを噴射
して、カラー陰極線管のバルブ内に一定したエアーの流
れを形成するようにしたので、カラー陰極線管の電子銃
封止前の工程で、エアーブローによりグリル線の絡みを
解くことで、画像の色ムラをなくしたカラー陰極線管の
製造方法を提供できる。

【００３７】請求項２の発明では、エアーの噴射を、フ
レームによって保持されているグリル線が伸びる方向に
５０〜１００［mm］の範囲で直接に当てるようにしたの
で、確実にグリル線の絡みを解くことができる。

【００３８】また、請求項３のバルブ内洗浄装置では、
色選別機構が配置されたバルブ内に発生するガスをエア
ーの置換によって排出するためのバルブ内洗浄装置にお
いて、バルブ内に挿入されるエアーノズルと、エアーノ
ズルの先端部分に装着され、エアーノズルの軸線に対し
てほぼ４５度をなす角度の噴射孔が形成されたエアーチ
ップとを備えたので、カラー陰極線管の電子銃封止前の
エアーブロー工程に使用して、一定方向にエアーの流れ
を形成することができる。

【００３９】さらに、請求項４の発明では、エアーチッ
プの先端部分が球面をなしており、この球面部分に対し
て所定の角度範囲に渡って所定の開口幅を有する切り込
みとして噴射孔を形成したので、グリル線の一方の付け
根の全てに同時に直接エアーをあてて、その付け根を中
心としてグリル線を揺らして、グリル線に付着している
異物等を振るい落とすことにより、バルブ内の塵埃を効
果的に除去し、シャドウグリルの目詰まり不良や耐電圧
不良を一掃できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実施の形態１のカラー陰極線管の製造方法に
おける陰極線管の構造、及びエアーノズルによるエアー
の流れを示す断面図である。

【図２】 エアーチップからのエアー噴射方向を示す図
である。

【図３】 エアーチップの先端の噴射孔の形状を示す上
面、及び側面断面図である。

【図４】 エアーチップからのエアーの噴出形状を示す
斜視図である。

【図５】 カラー受像管の基本的な構造、及び従来のエ
アーノズルによるエアーの流れを示す断面図である。

【図６】 従来のカラー陰極線管の製造工程におけるエ
アー置換処理で採用されるチップ形状の代表的な例を示
す上面、及び側面断面図である。

【図７】 従来のエアーチップからのエアーの噴出形状
を示す斜視図である。

【図８】 シャドウグリルの構造を示す平面図である。

【符号の説明】

１ パネル、 ２ グリル線、 ３ ＩＭＳ（内部磁気
シールド）、 ４ エアーコントロールチップ（エアー
チップ）、 ５ ファンネル、 ６ ファンネルのネッ
ク部、 ７ フレーム、 ８ スプリング、 ９ エア
ーノズル、 １０ シャドウグリル。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シャドウグリルが配置されたバルブ内に
   発生するガスをエアーの置換によって排出してから、電
   子銃を封止するようにしたカラー陰極線管の製造方法に
   おいて、 前記シャドウグリルのグリル線を保持する一方のフレー
   ムに向けてエアーを噴射して、 前記カラー陰極線管のバルブ内に一定したエアーの流れ
   を形成したことを特徴とするカラー陰極線管の製造方
   法。
2. 【請求項２】 前記エアーを、前記フレームによって保
   持されているグリル線が伸びる方向に５０〜１００［m
   m］の範囲に直接に当てるようにしたことを特徴とする
   請求項１に記載のカラー陰極線管の製造方法。
3. 【請求項３】 色選別機構が配置されたバルブ内に発生
   するガスをエアーの置換によって排出するためのバルブ
   内洗浄装置において、 前記バルブ内に挿入されるエアーノズルと、 前記エアーノズルの先端部分に装着され、エアーノズル
   の軸線に対してほぼ４５度をなす角度の噴射孔が形成さ
   れたエアーチップとを備えたことを特徴とするバルブ内
   洗浄装置。
4. 【請求項４】 前記エアーチップの先端部分が球面をな
   しており、この球面部分に対して所定の角度範囲に渡っ
   て所定の開口幅を有する切り込みとして噴射孔を形成し
   たことを特徴とする請求項３に記載のバルブ内洗浄装
   置。