JPH11331357A - 拡声通話機 - Google Patents

拡声通話機

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JPH11331357A
JPH11331357A JP5920099A JP5920099A JPH11331357A JP H11331357 A JPH11331357 A JP H11331357A JP 5920099 A JP5920099 A JP 5920099A JP 5920099 A JP5920099 A JP 5920099A JP H11331357 A JPH11331357 A JP H11331357A
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signal
unit
closed loop
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synchronous
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Minoru Fukushima
実 福島
Hiroaki Takeyama
博昭 竹山
Masao Taki
昌生 多氣
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Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】閉ループ中に存在する周囲騒音及び音声信号の
レベルが大きい場合においても十分な精度で利得余裕値
を推定し、常に安定した通話を実現する。 【解決手段】挿入損失量調整手段8は、所定の時間間隔
でインパルス信号発生器9から信号経路へ複数回にわた
ってインパルス信号を送出させるためのタイミング制御
を行う同期制御部15と、包絡線検波器11の前段に設
けられ同期制御部15からのタイミング情報を受けてイ
ンパルス信号に対する応答信号Qを同期加算平均処理す
る同期加算平均部16とを具備する。而して、インパル
ス信号{P}に対する応答信号{Q}の移動平均を求め
て包絡線検波器11に出力しているため、応答信号
{Q}に対する周囲騒音及び音声信号の影響を軽減し、
利得余裕値を精度良く推定し挿入損失量を適切な値に設
定して、閉ループ系を安定化することができ、常に安定
した通話を実現する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家庭内、ビルディ
ング、工場等で用いられる拡声通話機に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、インターホンや電話機あるい
はPHS等の拡声通話機においては、スピーカからマイ
クロホンへの音響フィードバックおよびハイブリッド回
路(2−4線変換回路)におけるインピーダンスの不整
合により閉ループが形成され、増幅器の利得が大きすぎ
る等の理由により上記閉ループの利得が1倍以上になる
とハウリングが生じるため、通話品質を確保する上でハ
ウリングの抑圧が必要不可欠な課題となっていた。
【0003】そこで従来は、送受話信号のレべルに応じ
て受話信号または送話信号に所定量の損失を挿入するこ
とで閉ループ利得を抑圧するというハウリング抑圧方式
が用いられてきた。また、別の方式としてエコーキャン
セラを用いるものもあるが、エコーキャンセラにおける
適応フィルタの係数が収束していない過渡状態や系の変
動によりエコー経路が急激に変化した場合等において不
安定化しやすいため、挿入損失と併用する場合が多い。
【0004】上記何れの場合においても、挿入損失量を
大きくしすぎた場合には通話中に切断感を生じる(音声
が途切れる)等の通話品質の劣化を招くため、挿入損失
量を必要最小限とすることが望ましい。
【0005】このような課題に対して本発明者らは既
に、拡声通話系に形成される閉ループの利得余裕を随時
監視し、推定された利得余裕値に基づいて挿入損失量を
適応的に調整するようにした拡声通話機を提案している
(特願平9−61434号参照)。
【0006】図18(a)は上記出願に係る拡声通話機
を示すブロック図であり、集音した音を送話側の音声信
号(以下、送話信号と呼ぶ)として出力するマイクロホ
ン1と、マイクロホン1からの送話信号を増幅する第1
の増幅器2と、受話側の音声信号(以下、受話信号と呼
ぶ)に応じて鳴動するスピーカ3と、スピーカ3へ出力
される受話信号を増幅する第2の増幅器4と、送話側及
び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う
2−4線変換手段たるハイブリッド回路5と、送話側及
び受話側の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入
手段たる減衰器(アッテネータ)61,62と、各減衰器
1,62の損失量を可変制御する制御器7と、信号経路
に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マ
イクロホン1からスピーカ3への音響結合及びハイブリ
ッド回路5における反射により形成される閉ループにお
ける利得余裕を推定するとともに制御器7を介して推定
結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段8
とを備えている。なお、挿入損失量調整手段8は送話側
の信号経路上に設けることも可能である。
【0007】一方、同図(b)は上記挿入損失量調整手
段8の具体的な構成を示すブロック図であり、受話側の
信号経路にサンプル信号たるインパルス信号を送出する
インパルス信号発生器9と、受話信号にインパルス信号
を加算する加算器10と、インパルス信号に対する応答
信号の包絡線を検波する包絡線検波器11と、包絡線検
波器11の出力信号に基づいて閉ループ系における利得
余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部12とを備えて
いる。ここで、閉ループ利得余裕推定部12は、包絡線
検波器11の出力信号レベルを予め求めた閾値レベルと
比較する比較器13と、比較結果に基づいて閉ループ系
の利得余裕値を推定する判定部14とを具備している。
なお、サンプル信号としてはパルス幅が充分に短い単一
パルス信号であってもよいし、バースト信号(バースト
ノイズ)であってもよい。そして、図19に示すよう
に、第2の増幅器4→スピーカ3→マイクロホン1→第
1の増幅器2→減衰器61→ハイブリッド回路5→減衰
器62→挿入損失量調整手段8→第2の増幅器4により
閉ループが形成されている。
【0008】而して、加算器10の出力信号は、上記閉
ループ系にサンプル信号を入力したときの応答信号であ
り、加算器10の出力信号を観測することにより閉ルー
プ系のインパルス応答を推定することができる。抽出さ
れた包絡線成分は、閉ループ系の伝達関数における支配
極(複素平面上において最も虚軸に近い極)の実部と密
接な関係があり、包絡線の時間軸に対する減衰特性から
閉ループ系の安定度すなわち利得余裕を推定することが
できる。しかしながら、図18(a)における加算器1
0の出力信号は、サンプル信号に対する応答成分の他に
送受話音声信号および周囲雑音が重畳しており、上記挿
入損失量調整手段8にはサンプル信号に対する応答成分
のみを抽出する手段がないため、有音声区間および周囲
騒音信号のレベルが大きい場合には利得余裕値の推定精
度が劣化するという問題がある。このうち送受話音声に
よる推定精度の劣化に対しては、受話信号のレベルから
(あるいは送話信号のレベルであってもよい)、通話中
の無音区間を検出する無音検出器を設け、この無音検出
器にて無音区間が検出された場合にのみ閉ループ系にサ
ンプル信号(インパルス信号又はバーストノイズ)を入
力し、閉ループ利得余裕推定部12にて利得余裕値の推
定処理を行うことにより推定精度を改善することができ
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記拡声通
話系の閉ループ中に定常的な周囲騒音信号が存在し、か
つ、そのレベルが大きい場合には、上記出願に係る拡声
通話機では、利得余裕値を精度よく推定することができ
ない。また、上記手法では、閉ループ中に音声信号が存
在している状態では利得余裕値の推定処理を止める必要
があるため、通話中に系の利得余裕値が変動するような
場合にはこれに対応できず、系が不安定化する場合があ
る。
【0010】本発明は上記問題に鑑みて為されたもので
あり、その目的とするところは、閉ループ中に周囲騒音
や音声信号が存在し、かつそれらの信号のレベルが大き
い場合においても十分な精度で利得余裕値を推定し、常
に安定した通話を実現することのできる拡声通話機を提
供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、集音した音を送話側の音声信号
として出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音
声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号
に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音
声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側
の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する
損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を
可変制御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル
信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピ
ーカを通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推
定するとともに制御手段を介して推定結果に基づく損失
量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失
量調整手段が、信号経路にサンプル信号を送出するサン
プル信号発生器と、音声信号にサンプル信号を加算する
加算器と、サンプル信号に対する応答信号の包絡線を検
波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づ
いて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得
余裕推定部と、所定の時間間隔でサンプル信号発生器か
ら信号経路へ複数回にわたってサンプル信号を送出させ
るためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検
波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報
を受けてサンプル信号に対する応答信号を同期加算平均
処理する同期加算平均部とを具備して成ることを特徴と
し、スピーカからマイクヘの音響結合や送話側及び受話
側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う必要が
ある場合に用いられる2−4線変換手段におけるインピ
ーダンスの不整合による反射が原因となり形成される閉
ループ系に対して、サンプル信号を入力したときに観測
される応答信号の包絡線成分の減衰特性により利得余裕
値を推定し、所望の利得余裕値に対する過不足分を算出
することで挿入損失量を調整するため、ハウリングが発
生するまでの閉ループ系の利得余裕を所望の値に維持す
ることができ、ハウリングを生じることなく安定した通
話品質を維持することができるとともに、必要以上に挿
入損失量を大きくすることがないため、双方向同時通話
性能の実現可能性が高まる。しかも、同期制御部におい
てサンプル信号の送出タイミングを制御し、同期加算平
均部でサンプル信号に同期した移動平均処理を行うとと
もに、同期加算平均部の出力信号から包絡線検波器にて
包絡線成分を抽出するため、閉ループ中に存在する定常
的な周囲騒音のレベルが大きい場合においても周囲騒音
による影響を軽減して十分な精度で利得余裕値を推定
し、挿入損失量が適切な値に設定可能となって、常に安
定した通話を実現することができる。
【0012】請求項2の発明は、上記目的を達成するた
めに、集音した音を送話側の音声信号として出力するマ
イクロホンと、マイクロホンからの音声信号を増幅する
第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて鳴動する
スピーカと、スピーカへ出力される音声信号を増幅する
第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なくとも一方
の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段と、
損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御する制御
手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答
信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通じて形成
される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制
御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿
入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手段が、信
号経路に周期が有限の疑似白色信号を挿入する疑似白色
信号発生器と、音声信号に疑似白色信号を加算する加算
器と、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対する応答信
号の相互相関値を求めるとともに求めた相互相関値に基
づいて閉ループのインパルス応答を推定する相互相関演
算部と、相互相関演算部により推定された閉ループのイ
ンパルス応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器と、
包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループにおける利
得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部とを具備して
成ることを特徴とし、スピーカからマイクヘの音響結合
や送話側及び受話側と外部の通話回線との間で2−4線
変換を行う必要がある場合に用いられる2−4線変換手
段におけるインピーダンスの不整合による反射が原因と
なり形成される閉ループ系に対して、周期が有限の疑似
白色信号を入力したときに観測される応答信号と当該疑
似白色信号との相互相関値を求めるとともに求めた相互
相関値から推定される閉ループ系のインパルス応答信号
の包絡線成分の減衰特性により利得余裕値を推定し、所
望の利得余裕値に対する過不足分を算出することで挿入
損失量を調整するため、ハウリングが発生するまでの閉
ループ系の利得余裕を所望の値に維持することができ、
ハウリングを生じることなく安定した通話品質を維持す
ることができるとともに、必要以上に挿入損失量を大き
くすることがないため、双方向同時通話性能の実現可能
性が高まる。しかも、利得余裕の推定に疑似白色信号を
用いるので、使用者に聴感上の不快感を与えるのを防止
することができる。
【0013】請求項3の発明は、請求項2の発明におい
て、所定の時間間隔で疑似白色信号発生器から信号経路
へ複数回にわたって疑似白色信号を送出させるためのタ
イミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の前段
に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受けて相
互相関演算部により推定された閉ループのインパルス応
答信号を同期加算平均処理する同期加算平均部とを挿入
損失量調整手段が具備して成ることを特徴とし、同期制
御部において疑似白色信号の送出タイミングを制御し、
同期加算平均部で疑似白色信号に同期した移動平均処理
を行うとともに、同期加算平均部の出力信号から包絡線
検波器にて包絡線成分を抽出するため、閉ループ中に存
在する定常的な周囲騒音のレベルが大きい場合において
も周囲騒音による影響を軽減して十分な精度で利得余裕
値を推定し、挿入損失量が適切な値に設定可能となっ
て、常に安定した通話を実現することができる。
【0014】請求項4の発明は、請求項1又は3の発明
において、同期加算平均部の出力信号が一定値に収束し
たか否かを判定する収束判定部を挿入損失量調整手段が
具備し、収束判定部の判定結果に応じて同期制御部が同
期加算平均部における同期加算処理の継続/中断を決定
して成ることを特徴とし、同期加算平均部の出力信号が
一定値に収束するまでサンプル信号又は疑似白色信号の
送出と同期加算処理とを継続することによって、閉ルー
プ中に周囲騒音が存在する場合においても、周囲騒音が
存在しないときと同程度の精度で利得余裕値を推定する
ことが可能となる。
【0015】請求項5の発明は、請求項4の発明におい
て、閉ループ利得余裕推定部が推定処理を開始してから
の経過時間を測定するタイマ部を挿入損失量調整手段が
具備し、推定処理開始から所定時間が経過しても同期加
算平均部の出力信号が収束しない場合に同期制御部がサ
ンプル信号発生器によるサンプル信号の送出又は疑似白
色信号発生器による疑似白色信号の送出と同期加算平均
部による同期加算処理とを中断させて成ることを特徴と
し、利得余裕値の推定処理中にも閉ループ系の特性が変
化する場合においても、一度同期加算処理を中断させて
リセットすることで変化後の閉ループ系の利得余裕値の
推定処理を速やかに開始することができる。
【0016】請求項6の発明は、請求項1又は3の発明
において、閉ループ中に存在する信号の自己相関関数を
算出する自己相関関数算出部を挿入損失量調整手段が具
備し、算出された自己相関関数に基づいて同期制御部が
サンプル信号発生器からのサンプル信号又は疑似白色信
号発生器からの疑似白色信号の送出間隔と同期加算平均
部における同期加算回数を調整して成ることを特徴と
し、事前に算出された閉ループ中に存在する信号の自己
相関関数より、同期加算処理に要する時間を最小化する
ようにサンプル信号又は疑似白色信号の送出間隔及び同
期加算回数を調整することで利得余裕値の推定処理を高
速化することができる。
【0017】請求項7の発明は、請求項1又は3の発明
において、閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推
定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部による推
定結果に基づいてサンプル信号又は疑似白色信号の送出
レベルを調整する送出レベル調整部とを挿入損失量調整
手段が具備して成ることを特徴とし、閉ループ系に送出
するサンプル信号又は疑似白色信号のレベルを周囲騒音
レベルに対して充分な大きさに設定することにより、観
測点において高いS/N比でサンプル信号又は疑似白色
信号に対する応答信号を得ることができ、利得余裕値の
推定精度を向上させることができる。
【0018】請求項8の発明は、請求項1又は3の発明
において、閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推
定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部による推
定結果に基づいて同期加算平均部における同期加算回数
を調整する同期加算回数調整部とを挿入損失量調整手段
が具備して成ることを特徴とし、閉ループ系に存在する
周囲騒音のレベルに応じて同期加算回数を必要最小限に
設定することができるため、同期加算処理に要する計算
時間を最小化することができる。また、1回の利得余裕
値の推定処理に要するサンプル信号又は疑似白色信号の
送出回数を最小化することにより、サンプル信号又は疑
似白色信号が受話信号に重畳して聞こえることによる聴
覚上の不快感、違和感を軽減することができる。
【0019】請求項9の発明は、請求項7又は8の発明
において、閉ループ中に伝送される信号から周囲騒音信
号を抽出する周囲騒音抽出部を挿入損失量調整手段が具
備し、抽出された周囲騒音信号から騒音レベル推定部が
閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定して成る
ことを特徴とし、利得余裕値の推定処理中に閉ループ中
の周囲騒音レベルが変化するような場合においても、こ
れに適応してサンプル信号又は疑似白色信号の送出レベ
ルあるいは同期加算回数を調整するため、周囲騒音のレ
ベルが変動するような場合においても、これに追従して
精度良く利得余裕値を推定することができる。
【0020】請求項10の発明は、請求項1又は3の発
明において、閉ループ中に伝送される信号から周囲騒音
信号を抽出する周囲騒音抽出部と、抽出された周囲騒音
信号から閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定
する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部による推定
結果に基づいてサンプル信号又は疑似白色信号の送出レ
ベルを調整する送出レベル調整部と、騒音レベル推定部
による推定結果に基づいて同期加算平均部における同期
加算回数を調整する同期加算回数調整部とを挿入損失量
調整手段が具備して成ることを特徴とし、利得余裕値の
推定処理中に閉ループ中の周囲騒音レベルが変化するよ
うな場合においても、これに適応してサンプル信号又は
疑似白色信号の送出レベル及び同期加算回数を調整する
ため、周囲騒音のレベルが変動するような場合において
も、これに追従して精度良く利得余裕値を推定すること
ができる。
【0021】請求項11の発明は、請求項1又は3の発
明において、包絡線検波器により検波される包絡線の傾
きと所定値との大小関係を判定する傾き判定部と、送話
側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に挿入され傾
き判定部による判定結果に応じて増幅度を可変する利得
余裕調整用増幅器とを挿入損失量調整手段が具備して成
ることを特徴とし、傾き判定部にて包絡線の傾きが所定
値よりも大きいと判定された場合に利得余裕調整用増幅
器の増幅度を上げることによって利得余裕値が減少する
から、閉ループ系の利得余裕値が閉ループ利得余裕推定
部にて推定可能なレベルとなる。その結果、利得余裕値
が大きい状態においても利得余裕値を精度よく推定する
ことができため、閉ループ系の利得余裕値を常に充分な
値に維持可能なように挿入損失量を調整することができ
る。
【0022】請求項12の発明は、集音した音を送話側
の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホ
ンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側
の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出
力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側
及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失
を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入され
る損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出し
たサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホ
ン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利
得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に
基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備
え、挿入損失量調整手段が、信号経路にサンプル信号を
送出するサンプル信号発生器と、音声信号にサンプル信
号を加算する加算器と、サンプル信号に対する応答信号
の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出
力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する
閉ループ利得余裕推定部と、包絡線検波器により検波さ
れる包絡線の傾きと所定値との大小関係を判定する傾き
判定部と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経
路に挿入され傾き判定部による判定結果に応じて増幅度
を可変する利得余裕調整用増幅器とを具備して成ること
を特徴とし、傾き判定部にて包絡線の傾きが所定値より
も大きいと判定された場合に利得余裕調整用増幅器の増
幅度を上げることによって利得余裕値が減少するから、
閉ループ系の利得余裕値が閉ループ利得余裕推定部にて
推定可能なレベルとなる。その結果、利得余裕値が大き
い状態においても利得余裕値を精度よく推定することが
できため、閉ループ系の利得余裕値を常に充分な値に維
持可能なように挿入損失量を調整することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を説明する前
に、基本となる先願(特願平9−61434号)に係る
拡声通話機の構成並びに動作について詳細に説明する。
【0024】従来技術でも説明したように、上記公報に
記載された拡声通話機は、集音した音を送話側の音声信
号(以下、送話信号と呼ぶ)として出力するマイクロホ
ン1と、マイクロホン1からの送話信号を増幅する第1
の増幅器2と、受話側の音声信号(以下、受話信号と呼
ぶ)に応じて鳴動するスピーカ3と、スピーカ3へ出力
される受話信号を増幅する第2の増幅器4と、送話側及
び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う
2−4線変換手段たるハイブリッド回路5と、送話側及
び受話側の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入
手段たる減衰器(アッテネータ)61,62と、各減衰器
1,62の損失量を可変制御する制御器7と、信号経路
に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マ
イクロホン1及びスピーカ3を通じて形成される閉ルー
プ系における利得余裕を推定するとともに制御器7を介
して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調
整手段8とを備えている。
【0025】一方、挿入損失量調整手段8は、受話側の
信号経路にサンプル信号たるインパルス信号を送出する
インパルス信号発生器9と、受話信号にインパルス信号
を加算する加算器10と、インパルス信号に対する応答
信号の包絡線を検波する包絡線検波器11と、包絡線検
波器11の出力信号に基づいて閉ループ系における利得
余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部12とを備え、
マイコンやDSP(DigitalSignalProcessor)など
で構成される。ここで、閉ループ利得余裕推定部12
は、後述するように包絡線検波器11の出力信号レベル
を予め求めた閾値レベルと比較する比較器13と、比較
結果に基づいて閉ループ系の利得余裕値を推定する判定
部14とを具備している。なお、サンプル信号として用
いるインパルス信号は、パルス幅が充分に短い単一パル
ス信号であってもよい。また包絡線検波器11は、整流
回路とローパスフィルタ回路の合成回路や、巡回型ロー
パスフィルタやリーク積分器等のデジタル回路、あるい
はDSP(DigitalSignalProcessor)などの信号処
理手段によって構成することができる。
【0026】また、図19に示すように第2の増幅器4
→スピーカ3→マイクロホン1→第1の増幅器2→減衰
器61→ハイブリッド回路5→減衰器62→挿入損失量調
整手段8→第2の増幅器4により閉ループが形成されて
いる。ここで、各部における伝達関数を以下のように定
義する。
【0027】S :スピーカ3の電気機械変換特性 G :スピーカ3からマイクロホン1への音響伝達特性 M :マイクロホン1の音響電気変換特性 Kr:第2の増幅器4の増幅特性 Kx:第1の増幅器2の増幅特性 Ar:受話側の減衰器62の減衰特性 Ax:送話側の減衰器61の減衰特性 Γ :ハイブリッド回路5における反射伝達関数 また、インパルス信号発生器9から出力されるインパル
ス信号をP、外部の通話回線から伝送されてくる遠端話
者音声入力信号をY(以下、「受話信号」と呼ぶ)、マ
イクロホン1の集音する近端話者音声信号と周囲雑音と
の和をX(以下、「音響信号」と呼ぶ)とすると、挿入
損失量調整手段8の構成要素の一つである加算器10の
出力信号(応答信号)Qは下記式で表される。
【0028】
【式1】
【0029】なお、上記式のL(s)は上記閉ループ系に
おける一巡伝達関数、sはラプラス変数をそれぞれ表
す。
【0030】ここで、閉ループ系の安定性は上記一巡伝
達関数L(s)により判別することができる。すなわち、
極座標系における一巡伝達関数L(s)のθ成分(=∠L
(s))が∠L(s)=2nπ(nは整数)となる全ての周波
数において、r成分(=|L(s)|)が|L(s)|<1な
らば閉ループ系は安定、|L(s)|≧1となる周波数が
存在すれば閉ループ系は不安定となり、その周波数にお
いて発振してハウリングが生じる。また、閉ループ系が
安定である場合に、∠L(s)=2nπとなる全ての周波
数における利得の最大値をLMAXとすれば、閉ループ系
の利得余裕値は1/LMAXで表される。よって、閉ルー
プ系の安定性の尺度は閉ループ利得余裕値により評価す
ることができる。
【0031】一方、閉ループ利得余裕値は、閉ループ系
のインパルス応答特性と密接な関係があり、閉ループ利
得余裕値が大きいほどインパルス応答信号Qの振幅が時
間とともに急激に減衰し、閉ループ利得余裕値が小さい
ほど減衰が緩やかになる。そこで、閉ループ利得余裕推
定部12において閉ループ利得余裕値を推定するための
サンプル信号(インパルス信号)Pを上記閉ループ系に
与えたときの応答信号Qを観測し、その応答信号Qの包
絡線成分から閉ループ系の時定数に関する情報を抽出し
て閉ループ系におけるハウリング発生限界までの閉ルー
プ利得余裕値の推定を行うとともに、推定結果に基づ
き、挿入損失量調整手段8にて上記所望の閉ループ利得
余裕値に対する実際の挿入損失量の過不足分を算出して
閉ループ系への挿入損失量を調整する。
【0032】すなわち、上述のように包絡線検波器11
で得られる応答信号Qの包絡線成分の時間特性が閉ルー
プ利得余裕値が大きいほど減衰が早く且つ小さいほど減
衰が緩やかになるという性質を有することから、閉ルー
プ利得余裕推定部12において事前に学習された種々の
利得余裕値に対する包絡線検波器11の出力データから
閾値レベルを求めておき、比較器13において観測され
る包絡線検波器11の出力信号レベルを上記閾値レベル
と比較することにより、その比較結果に基づいて判定部
14にて閉ループ利得余裕値が推定できる。そして、そ
の推定結果から、閉ループ利得余裕値を設計仕様で定め
た値とするために必要な損失量を挿入するべく、制御器
7に信号を伝送して制御器7によって減衰器61,62
減衰量を調節している。
【0033】上述のように上記拡声通話機では、インパ
ルス信号に対する応答信号から、閉ループ系での利得余
裕値を推定し、この利得余裕値の推定値と、目標とする
利得余裕値との差分を算出し、その算出結果に基づいて
信号経路に挿入する損失量を調整する挿入損失量調整手
段8を備えているので、通話中においても閉ループ系の
安定度に応じて挿入損失量を制御し、常に利得余裕値を
仕様で定めた値に維持することができ、ハウリングを生
じることなく安定した通話品質を維持することができ
る。また、従来例に比較して必要以上に挿入損失量を大
きくする必要がないため、双方向同時通話性能の実現可
能性が高まるという利点もある。
【0034】なお、上記基本構成並びに後述する各実施
形態においてはサンプル信号発生器にインパルス信号発
生器9を用いたが、代わりにバースト信号発生器を用い
てバースト信号をサンプル信号に用いてもよい。この場
合には、信号を送出している状態から送出を停止した瞬
間からの閉ループ系の過渡応答を観測し、その包絡線成
分から閉ループ系の時定数に関する情報を抽出する。而
してサンプル信号にバースト信号を用いた場合にも、信
号送出時間が閉ループ系の遅延時間に対して十分に短け
れば、その応答波形の包絡線成分より閉ループ系の時定
数に関する情報を抽出することができ、バースト信号の
信号送出時間を適切な値とすることにより通話中におけ
る違和感をなくし、サンプル信号の送出による通話品質
の劣化を抑えることができるという利点がある。但し、
種々の利得余裕値に対する閾値レべルを求めておく必要
があることはインパルス信号の場合と同様である。
【0035】(実施形態1)ところで、上記基本構成に
おいては式1で表される応答信号Qから利得余裕値を推
定しているが、上記式1からも明らかなように応答信号
Qにはサンプル信号Pのみに対する応答信号(式1の右
辺第1項)以外の信号が含まれている。そのため、受話
信号Y及びマイクロホン1の集音する音響信号Xのレベ
ルが大きく、式1の右辺第2項及び第3項が無視できな
い場合においては、利得余裕値を精度良く推定すること
が難しくなる。
【0036】そこで、本発明の各実施形態においては、
式1で表される応答信号Qのサンプル信号に対応する信
号(式1の右辺第1項)のみを抽出することにより、そ
の他の信号(式1の右辺第2項及び第3項)を充分に抑
圧し、精度良く利得余裕値を推定することができるよう
にしている。
【0037】図1は本実施形態における挿入損失量調整
手段8の構成を示すブロック図である。なお、本実施形
態の拡声通話機の全体構成は上述の基本例と共通である
から図示並びに説明は省略し、共通する部分については
同一の符号を付す。図1に示すように本実施形態におけ
る挿入損失量調整手段8は、インパルス信号発生器9、
加算器10、包絡線検波器11並びに閉ループ利得余裕
推定部12に加えて、所定の時間間隔でインパルス信号
発生器9から信号経路へ複数回にわたってインパルス信
号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部
15と、包絡線検波器11の前段に設けられ同期制御部
15からのタイミング情報を受けてインパルス信号に対
する応答信号Qを同期加算平均処理する同期加算平均部
16とを具備している。
【0038】図2は同期制御部15並びに同期加算平均
部16を示すブロック図である。同期制御部15は、図
3に示すように所定の時間間隔T1,T2,…,TN-1
に複数回励振されるインパルス信号(サンプル信号)P
0,P1,…,PN-1(以下、{P}と表記する。)をイ
ンパルス信号発生器9から送出させるとともに、図2に
示すようにインパルス信号P0…の送出に同期した同期
信号を同期加算平均部16に出力する。
【0039】一方、同期加算平均部16は、図2に示す
ように同期制御部15からの同期信号によってオン・オ
フされるスイッチ要素16aと、スイッチ要素16aを
介して入力されるインパルス信号{P}の応答信号
{Q}を所定の時間だけ遅延させる遅延器16b1〜1
6bN-1と、各遅延器16b1〜16bN-1の出力を加算
する加算器16c1〜16cN-1と、全遅延器16b1
16bN-1の出力信号の和(加算器16cN-1の出力)を
同期加算回数Nで除算する除算器16dとを備えて、イ
ンパルス信号{P}に同期して加算平均処理を行って応
答信号{Q}の移動平均を求めている。而して、音響信
号Xや受話信号Yの位相はインパルス信号{P}が送出
される時間間隔T1,T2,…,TN-1とは無関係である
ため、同期加算回数Nを充分に大きくとることで式1に
おける右辺第2項及び第3項が抑制されるとともに右辺
第1項のインパルス信号{P}に対する応答成分のみが
強調され、実質的に式1の右辺第1項の上記応答成分の
みを抽出することが可能となる。なお、応答信号{Q}
の移動平均が求められたら、同期制御部15から出力さ
れるリセット信号により、同期加算平均部16の各遅延
器16b1〜16bN-1がリセットされ、同期加算平均部
16が新たに移動平均の算出可能な初期状態に復帰す
る。
【0040】そして、同期加算平均部16から出力され
る応答信号{Q}の移動平均が包絡線検波器11に入力
され、同期加算平均処理により得られたインパルス信号
{P}に対する閉ループ系の応答信号の包絡線成分が抽
出される。さらに、閉ループ利得余裕推定部12では、
包絡線検波器11で抽出された包絡線成分の時間軸に対
する減衰特性から利得余裕値を推定し、推定された利得
余裕値に基づいて所要の挿入損失量を算出する。なお、
インパルス信号{P}の時間間隔T1,T2,…,TN-1
は、利得余裕値の推定処理に必要な応答時間τに対して
充分に大きくする必要がある。また、利得余裕値の推定
処理に要する加算器11の出力信号の観測時間T(=T
0+T1+…+TN-1+τ)は、この時間T内における閉
ループ系の特性の変動が無視できる程度に短くする必要
がある。
【0041】上述のように本実施形態では、基本構成の
挿入損失量調整手段8に同期制御部15と同期加算平均
部16とを付加して、インパルス信号{P}に対する応
答信号{Q}の移動平均を求め、求めた移動平均を包絡
線検波器11に出力するようにしているため、閉ループ
中に周囲騒音や音声信号が存在する場合においても、応
答信号{Q}に対する周囲騒音の影響を軽減し、利得余
裕値を精度良く推定することができる。その結果、上記
のような場合においても挿入損失量を適切な値に設定し
て、閉ループ系を安定化することができる。特に、本手
法では、閉ループ中に存在する周囲騒音が広い周波数帯
域を持ち、自己相関が少ない場合にその効果が大きい。
【0042】(実施形態2)ところで、実施形態1にお
いては閉ループ系の利得余裕値を推定するためにサンプ
ル信号(インパルス信号又はバースト信号)を系に与え
ているが、通話中にインパルス信号やバースト信号がス
ピーカ3から聞こえるために使用者に聴感上の不快感を
与えてしまう虞がある。
【0043】そこで本実施形態は、インパルス信号やバ
ースト信号のように聴感上不快感を与える虞があるサン
プル信号を使う代わりに、疑似白色信号を用いて利得余
裕値を推定することによって、上述のような聴感上の不
快感を与えるのを防止している。
【0044】図4は本実施形態の挿入損失量調整手段8
を示すブロック図であり、信号経路に周期が有限の疑似
白色信号を挿入する疑似白色信号発生器24と、音声信
号に疑似白色信号を加算する加算器10と、疑似白色信
号と当該疑似白色信号に対する応答信号の相互相関値を
求めるとともに求めた相互相関値に基づいて閉ループの
インパルス応答を推定する相互相関演算部25と、相互
相関演算部25により推定された閉ループのインパルス
応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器11と、包絡
線検波器11の出力信号に基づいて閉ループにおける利
得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部12とを具備
している。なお、実施形態1と共通する部分については
同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】ここで、疑似白色信号としては、例えばM
系列信号を用いる。M系列信号とは、次式のf(x)がm
od2の原始多項式であるとき、 f(x)=1+c1x+c22+…cpp 次式により生成されるmod2上の数列atで表され
る。
【0046】at=c1t-1+c2t-2+…+cpt-p また、この周期Tは2p−1である。信号経路へ送出す
る信号p(t)がM系列信号であり、その周期Tが充分に
長ければ、M系列信号p(t)に対して次式が成り立つ。
【0047】
【式2】
【0048】ここで、ΨppはM系列信号p(t)の自己相
関値を表すが、M系列信号の自己相関値が時間に依存し
ないため、次式のように表現することができる。
【0049】Ψpp(t、t+τ)=Ψpp(τ) 相互相関演算部25においては、次式によりM系列信号
p(t)と加算器10の出力信号(応答信号)q(t)との相
互相関値を上記Aで規格化した値を求める。
【0050】
【式3】
【0051】ここで、加算器10の出力信号q(t)は次
式で表される。
【0052】
【式4】
【0053】但し、hp(σ)、hy(σ)並びにhx(σ)は
各々M系列信号p(t)の入力点から加算器10の出力点
への閉ループ系のインパルス応答、受話信号Yの入力点
から加算器10の出力点への閉ループ系のインパルス応
答、送話信号Xの入力点から加算器10の出力点への閉
ループ系のインパルス応答をそれぞれ表している。上記
式4を式3に代入すると次式が得られる。
【0054】
【式5】
【0055】上記式5は次式のように変形できる。
【0056】
【式6】
【0057】但し、Ψpy及びΨpxはそれぞれM系列信号
p(t)と受話信号Yとの相互相関値、M系列信号p(t)と
送話信号Xとの相互相関値を表し、各々次式で与えられ
る。
【0058】
【式7】
【0059】
【式8】
【0060】ここで、M系列信号p(t)と受話信号Y、
並びにM系列信号p(t)と送話信号Xとは互いに因果関
係がないため、それぞれの相互相関値Ψpy、Ψpxは時間
tに依存して変化する。また、M系列信号p(t)の周期
Tが充分に長いときには上記相互相関値Ψpy、Ψpxはゼ
ロとなる。よって、この場合には上記式6の右辺第2項
及び第3項がゼロとなり、次式のように変形できる。
【0061】
【式9】
【0062】従って、Ψpp(t、t+τ)=Ψpp(τ)で与え
られるM系列信号(疑似白色信号)p(t)と応答信号q
(t)との相互相関値を上記Aで規格化した値を算出する
ことにより、M系列信号p(t)から応答信号q(t)への系
のインパルス応答の遅延時間τにおける係数を求めるこ
とができる。但し、上記式9が成り立つのは、式7及び
式8で与えられる相互相関値Ψpy,Ψpxがゼロとみなせ
るほどM系列信号p(t)の周期Tが充分に長い場合であ
り、それ以外の場合においては、上記式6の右辺第2項
及び第3項は外乱成分となり、インパルス応答の推定精
度を劣化させる要因となる。
【0063】ところで、相互相関演算部25をデジタル
回路により実現する場合には、上記Ψpp(t、t+τ)=Ψ
pp(τ)を上記Aで規格化した相互相関値は次式で表され
【0064】
【式10】
【0065】但し、Iは離散時間系におけるM系列信号
p(t)の周期を表し、p(i)、q(i+j)は各々サンプル時
刻i,i+jにおけるM系列信号p(t)及び応答信号q
(t)のデータを表す。また、上記式7により得られる値
はM系列信号p(t)から応答信号q(t)への系のインパル
ス応答の1係数hp(j)であり、閉ループ系の利得余裕を
推定するために必要なインパルス応答観測時間をサンプ
ル時間Jとすると、hp(0),h(1),h(2),…,h(J-
1)の合計J個の係数を求める必要がある。よって、本実
施形態においては、M系列信号(疑似白色信号)p(t)
から応答信号q(t)への系のインパルス応答を推定する
ために、I×J回の積和演算を必要とする。
【0066】上述のような演算処理により求められる疑
似白色信号p(t)から応答信号q(t)への系のインパルス
応答(応答信号Q)が包絡線検波器11に入力され、実
施形態1で説明したように閉ループ利得余裕推定部12
において包絡線検波器11で抽出された包絡線成分の時
間軸に対する減衰特性から利得余裕値を推定し、推定さ
れた利得余裕値に基づいて所要の挿入損失量を算出す
る。
【0067】上述のように本実施形態では、基本構成の
挿入損失量調整手段8に対してインパルス信号発生器9
の代わりに疑似白色信号発生器24を付加するととも
に、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対する応答信号
の相互相関値を求めて相互相関値に基づいて閉ループの
インパルス応答を推定する相互相関演算部25を付加し
て、推定したインパルス応答(応答信号)から包絡線検
波器11並びに閉ループ利得余裕推定部12により利得
余裕値を推定するため、使用者に聴感上の不快感を与え
ることなく利得余裕値を精度よく推定でき、挿入損失量
を適切な値に設定して、閉ループ系を安定化することが
できる。
【0068】(実施形態3)図5は本発明の実施形態3
における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であ
り、実施形態2に対して実施形態1で説明した同期制御
部15並びに同期加算平均部16を設けた点に特徴があ
る。
【0069】本実施形態は、信号経路に送出する疑似白
色信号の周期が充分に長くなく、上記式6の右辺第2項
及び第3項がゼロとはみなせずに外乱要素となる場合
に、同期加算平均処理によりこれらの影響を低減し、閉
ループ系のインパルス応答の推定精度を向上させるもの
である。いま、M系列信号p(t)の周期をT1、同期加算
回数をNとすると、同期加算平均部16の出力値は次式
で表される。
【0070】
【式11】
【0071】上記式11に式6及び式9を代入して整理
すると次式が得られる。
【0072】
【式12】
【0073】ここで、相互相関値Ψpy,Ψpxは時間tに
関して不規則に変動するため、上記式12における右辺
第2項及び第3項が同期加算回数Nの値を充分に大きく
することにより抑圧することができる。
【0074】本実施形態によれば、信号経路に送出する
M系列信号p(t)の周期Tを実施形態2に比較して短く
することができるため、挿入損失量調整手段8をデジタ
ル回路で実現する場合にM系列信号p(t)の発生及び上
記式10の演算に必要となる記憶装置の容量や積和回数
を低減することができるという利点がある。なお、同期
加算平均部16より出力される閉ループ系のインパルス
応答(応答信号)は包絡線検波器11に入力され、実施
形態1と同様の演算処理によって所要の挿入損失量が算
出される。
【0075】(実施形態4)図6は本発明の実施形態4
における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であ
り、実施形態1に対して収束判定部17を設けた点に特
徴がある。
【0076】利得余裕値の推定処理を開始した後、M番
目のインパルス信号PM-1を閉ループに送出した後に同
期加算平均部15から出力される信号QM’(t)は次式で
表される。但し、0≦t≦τであり、t=0は閉ループ
系にM番目のインパルス信号PM-1を送出した瞬間を表
す。
【0077】
【式13】
【0078】さらに、M+1番目のインパルス信号PM
を送出した後に同期加算平均部16より出力される信号
M+1’(t)は次式で表される。
【0079】
【式14】
【0080】ここで、収束判定部17においては、同期
加算平均部16の出力信号Q’(t)を常時監視し、M+
1回目の同期加算平均処理により得られる信号QM+1
(t)と前回の同期加算平均処理により得られた信号QM
(t)との差が一定の範囲内に収束したか否かを判定す
る。すなわち、収束判定の規範は次式で与えられる。
【0081】
【式15】
【0082】上式は式14を用いて次式のように変形で
きる。
【0083】
【式16】
【0084】上式より、式15の収束条件を満たすため
には、αが十分に小さく(すなわち、同期加算回数Mが
十分に大きく)、かつ、同期加算平均部16の出力信号
Q’(t)が応答信号Q(t)の期待値E〔Q(t)〕に収束す
る必要があることが分かる。
【0085】而して、収束判定部17は、同期加算平均
部16の出力信号Q’(t)の収束が確認されるまで同期
加算処理を更新し、収束が確認された時点で同期制御部
15を介して同期加算平均部16における同期加算処理
を中断させるとともにインパルス信号発生器9からのイ
ンパルス信号{P}の送出を停止させる。なお、同期加
算平均部16の出力信号Q’(t)は包絡線検波器11に
入力され、以下、実施形態1と同様の処理により所要の
挿入損失量が算出される。
【0086】上述のように本実施形態では、収束判定部
17の判定結果に応じて同期制御部15が同期加算平均
部16における同期加算処理の継続/中断を決定してい
るので、同期加算平均部16の出力信号Q’(t)が一定
値に収束するまでインパルス信号{P}の送出と同期加
算処理とを継続することによって、閉ループ中に周囲騒
音が存在する場合においても、周囲騒音が存在しないと
きと同程度の精度で利得余裕値を推定することが可能と
なる。なお、実施形態3の構成に対して収束判定部17
を設けても同様の作用効果を奏することができる。
【0087】(実施形態5)図7は本発明の実施形態5
における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であ
り、実施形態4に対してタイマ部18を設けた点に特徴
がある。
【0088】タイマ部18は、インパルス信号発生器9
から最初のインパルス信号P0が送出されると同時に同
期制御部15によってリセットされ、それ以後の経過時
間を測定する。この経過時間を示す信号がタイマ部18
から同期制御部15に随時入力されており、同期制御部
15では、経過時間が所定時間を越えても収束判定部1
7にて同期加算平均部16の出力信号Q’(t)の収束が
確認されなければ、同期加算平均部16にリセット信号
を出力して利得余裕推定処理を中断するとともに、イン
パルス信号発生器9からのインパルス信号{P}の送出
を停止させる。而して、インパルス信号{P}の送出中
に閉ループ系が変動し、長時間にわたって同期加算処理
を行ってもその出力信号Q’(t)が収束しないような場
合において、同期加算平均処理を一度リセットすること
により、閉ループ系が変動した後の利得余裕値を速やか
に推定することができる。
【0089】上述のように本実施形態によれば、利得余
裕値の推定処理中に閉ループ系の特性が変化し、タイマ
部18により測定される経過時間が所定時間を越えても
同期加算平均部16の出力信号Q’(t)が収束しない場
合には、一度同期加算処理を中断させてリセットするこ
とで変化後の閉ループ系の利得余裕値の推定処理を速や
かに開始することができる。なお、実施形態3の構成に
対して収束判定部17とともにタイマ部18を設けても
同様の作用効果を奏することができる。
【0090】(実施形態6)図8は本発明の実施形態6
における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であ
り、実施形態1に対して自己相関関数算出部19を設け
た点に特徴がある。
【0091】自己相関関数算出部19は、インパルス信
号P0…の送出以前に閉ループ中に存在する信号の自己
相関関数を算出するものである。ここで、インパルス信
号P 0…の送出以前に閉ループ中に存在する信号をr(t)
とし、その自己相関関数をR(τ)とすると、この自己
相関関数R(τ)は次式で表される。
【0092】
【式17】
【0093】ここで、インパルス信号{P}に対する応
答信号{Q}は、インパルス信号P 0…に対する応答成
分と元々閉ループ中に存在している信号r(t)(雑音成
分)との和で表される。従って、時間シフト量τと、所
定値以上の雑音成分の抑圧量を得るために必要な同期加
算回数Nとの関係を事前に調べておき、同期制御部15
にて、その関係と自己相関関数算出部19により得られ
る自己相関関数R(τ)とを照合することにより、同期
加算処理に要する時間T(=T0+T1+…+TN- 1
τ)を最小化するためのインパルス信号{P}の送出間
隔Tn(n=0,1,…,N−1)及び同期加算回数N
を求めることができる。その結果、利得余裕値の推定に
要する時間を短縮することができる。
【0094】上述のように本実施形態では、閉ループ中
に存在する信号r(t)の自己相関関数R(τ)を算出す
る自己相関関数算出部19を挿入損失量調整手段8に設
け、算出された自己相関関数R(τ)に基づいて同期制
御部15がインパルス信号発生器9からのインパルス信
号{P}の送出間隔Tnと同期加算平均部16における
同期加算回数Nを調整するようにしたので、事前に算出
された閉ループ中に存在する信号r(t)の自己相関関数
R(τ)より、同期加算処理に要する時間Tを最小化す
るようにインパルス信号{P}の送出間隔Tn及び同期
加算回数Nを調整することで利得余裕値の推定処理を高
速化することができる。なお、実施形態3の構成に対し
て自己相関関数算出部19を設けても同様の作用効果を
奏することができる。
【0095】(実施形態7)図9は本発明の実施形態7
における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であ
り、実施形態1に対して騒音レベル推定部20とインパ
ルス信号送出レベル調整部21とを設けた点に特徴があ
る。
【0096】騒音レベル推定部20は、インパルス信号
{P}の閉ループ系への送出以前に閉ループ中に存在す
る周囲騒音のレベルを推定するものであり、インパルス
信号送出レベル調整部21は、推定された周囲騒音のレ
ベルに応じてインパルス信号発生器9から出力されるイ
ンパルス信号P0…のレベルを調整するものである。す
なわち、本発明に係る利得余裕値の推定処理において
は、閉ループ中の周囲騒音レベルに対するインパルス信
号送出レベルの比(この比をここではS/N比と定義す
る)が利得余裕値の推定精度に影響を及ぼすことから、
閉ループにインパルス信号P0…が送出される以前の周
囲騒音レベルを騒音レベル推定部20で推定し、推定さ
れた周囲騒音レベルに対して上記S/N比が所定値以上
となるようにインパルス信号送出レベル調整部21にて
インパルス信号P0…の送出レベルを調整することで、
利得余裕値の推定精度を向上させることができる。
【0097】上述のように本実施形態では、閉ループ中
に存在する周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定
部20と、騒音レベル推定部20による推定結果に基づ
いてサンプル信号(インパルス信号)の送出レベルを調
整するインパルス信号送出レベル調整部21とを挿入損
失量調整手段8に設けたので、閉ループ系に送出するイ
ンパルス信号のレベルを周囲騒音レベルに対して充分な
大きさに設定することにより、観測点において高いS/
N比でインパルス信号{P}に対する応答信号{Q}を
得ることができ、利得余裕値の推定精度を向上させるこ
とができる。なお、実施形態3の構成に対して騒音レベ
ル推定部20並びに疑似白色信号の送出レベルを調整す
る手段を設けても同様の作用効果を奏することができ
る。
【0098】(実施形態8)図10は本発明の実施形態
8における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であ
り、実施形態1に対して騒音レベル推定部20と同期加
算回数調整部22とを設けた点に特徴がある。
【0099】騒音レベル推定部20は実施形態7と同様
に、インパルス信号{P}の閉ループ系への送出以前に
閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定するもの
であり、同期加算回数調整部22は、推定された周囲騒
音のレベルに応じて同期加算平均部16における同期加
算回数Nを調整するものである。一般に、周囲騒音のレ
ベルが大きい場合に周囲騒音を抑圧するためには同期加
算回数Nを大きな値に設定する必要があり、逆に、周囲
騒音のレベルが小さい場合には少ない同期加算回数Nで
も周囲騒音を抑圧することができる。
【0100】而して、このような周囲騒音レベルと同期
加算回数との統計的性質を予め定量的に調べておき、騒
音レベル推定部20で推定される周囲騒音レベルに対し
て同期加算回数調整部22により必要最小限の同期加算
回数Nを設定することで、同期加算平均に伴う遅延時間
を最小化することができる。
【0101】上述のように本実施形態では、閉ループ中
に存在する周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定
部20と、騒音レベル推定部20による推定結果に基づ
いて同期加算平均部16における同期加算回数Nを調整
する同期加算回数調整部22とを挿入損失量調整手段8
に設けたので、閉ループ系に存在する周囲騒音のレベル
に応じて同期加算回数Nを必要最小限に設定することが
できるため、同期加算処理に要する計算時間を最小化す
ることができる。また、1回の利得余裕値の推定処理に
要するサンプル信号(インパルス信号)の送出回数を最
小化することにより、インパルス信号が受話信号に重畳
して聞こえることによる聴覚上の不快感、違和感を軽減
することができる。なお、実施形態3の構成に対して騒
音レベル推定部20並びに同期加算回数調整部22を設
けても同様の作用効果を奏することができる。
【0102】(実施形態9)図11は本発明の実施形態
9における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であ
り、実施形態1に対して騒音レベル推定部20、インパ
ルス信号送出レベル調整部21、同期加算回数調整部2
2並びに周囲騒音抽出部23を設けた点に特徴がある。
但し、インパルス信号送出レベル調整部21及び同期加
算回数調整部22については、少なくとも何れか一方を
設ければよい。また、騒音レベル推定部20、インパル
ス信号送出レベル調整部21及び同期加算回数調整部2
2は実施形態7及び実施形態8と共通であるから説明を
省略する。
【0103】式1からも明らかなように、閉ループへの
インパルス信号{P}の送出中において観測される応答
信号qには、インパルス信号{P}に対する応答成分と
周囲騒音成分(および送受話音声成分)が混在してい
る。そこで、周囲騒音抽出部23によってこれら複数の
信号成分が重畳された信号から周囲騒音成分のみを抽出
し、抽出した成分から周囲騒音レベルを推定すること
で、インパルス信号{P}の送出後の利得余裕値推定処
理中においても、周囲騒音のレベルに応じて適応的にイ
ンパルス信号送出レベルや、同期加算回数Nを調整する
ことができるのである。
【0104】周囲騒音抽出部23は、図12に示すよう
に同期制御部15からインパルス信号Pk(k=0,1,…,N-
1)の送出タイミングに同期した同期信号が入力される
とリセットされるタイマ回路23aと、タイマ回路23
aにより計測される経過時間tk(各インパルス信号Pk
が閉ループ系に送出されてからの経過時間)とインパル
ス信号Pkに対する閉ループ系の応答時間τとの大小判
定を行う判定部23bと、閉ループ系の応答信号Qと判
定部23bの出力信号とを乗算するための乗算器23c
とを備えて構成される。ここで、乗算器23cの出力信
号は、騒音レベル推定部20に入力される。判定部23
bは、タイマ回路23aで計測される経過時間tkが応
答時間τよりも大きい(tk>τ)と判定した場合には
1を出力し、経過時間tkが応答時間τよりも小さい
(tk<τ)と判定した場合には0を出力するものであ
る。
【0105】すなわち、閉ループ系にインパルス信号P
kを送出してからの経過時間tkが応答時間τよりも大き
く且つ送出間隔Tk+1よりも小さい時間帯(τ<tk<T
k+1)においては、応答信号Qに含まれるインパルス信
号Pkに対する応答成分(式1における右辺第1項)は
無視でき、τ<tkを満たす時間帯における加算器10
の出力信号(応答信号)Qでは周囲騒音に対する成分
(及び送受話音声信号に対する成分)が支配的となるた
め、上述のように経過時間tkが応答時間τよりも大き
い(tk>τ)場合に応答信号Qをそのまま騒音レベル
推定部20に出力し、経過時間tkが応答時間τ以下
(tk<τ)の場合に騒音レベル推定部20に信号を出
力しないことによって、周囲騒音抽出部23にて閉ルー
プへのインパルス信号{P}の送出中に観測される応答
信号qより周囲騒音成分を抽出することが可能となる。
【0106】そして、その抽出された周囲騒音成分から
騒音レベル推定部20で周囲騒音のレベルを推定し、そ
の推定値に基づき、インパルス信号送出レベル調整部2
1及び同期加算回数調整部22の少なくとも何れか一方
でインパルス信号の送出レベル並びに同期加算回数Nの
調整(設定)を行う。なお、周囲騒音抽出部23にて周
囲騒音を抽出していない時間帯(tk≦τを満たす時間
帯)においては、騒音レベル推定部20での騒音レベル
の推定処理を停止するのが望ましい。
【0107】上述のように本実施形態によれば、閉ルー
プ中に伝送される信号から周囲騒音信号を抽出する周囲
騒音抽出部23を挿入損失量調整手段8に設けたので、
利得余裕値の推定処理中に閉ループ中の周囲騒音レベル
が変化するような場合においても、これに適応してイン
パルス信号{P}の送出レベル及び同期加算回数Nの少
なくとも何れか一方を調整し、周囲騒音のレベルが変動
するような場合においても、これに追従して精度良く利
得余裕値を推定することができる。なお、実施形態3の
構成に対して騒音レベル推定部20、インパルス信号送
出レベル調整部21、同期加算回数調整部22並びに周
囲騒音抽出部23を設けても同様の作用効果を奏するこ
とができる。
【0108】(実施形態10)ところで、上述の各実施
形態では閉ループ系にサンプル信号(インパルス信号又
はバースト信号)を送出したときの応答信号の包絡線の
傾きを観測することで閉ループの利得余裕値を推定して
いるが、推定可能な利得余裕値には上限が存在する。つ
まり、閉ループ系の利得余裕値が所定の値以上(インパ
ルス信号に対する応答信号の包絡線の傾きが所定値以上
に大きく急峻)である場合には、包絡線の傾きを精度良
く求めることが困難となり、利得余裕値の推定精度も低
下してしまう虞がある。また、そのような傾向は、閉ル
ープ系を伝送するサンプル信号以外の信号(音声信号又
は周囲騒音信号)のレベルが高くなるほど顕著となる。
【0109】図14に示すようにマイク1、第1の増幅
器2、スピーカ3、第2の増幅器4で構成される閉ルー
プ系にインパルス信号を付加したときの応答信号の包絡
線の傾きを、インパルス信号以外の信号(ランダムノイ
ズ)を加算して観測した実験結果を図15〜図17に示
す。ここで、図15は同期加算処理を行わずに20dB
のランダムノイズを付加した場合、図16は同期加算処
理を行って20dBのランダムノイズを付加した場合、
図17は同期加算処理を行って40dBのランダムノイ
ズを付加した場合の各応答信号波形を示しており、各図
における曲線イ〜ハはそれぞれ閉ループ系の利得余裕値
が3dB、6dB並びに10dBの場合を示している。
これらの実験結果から、ランダムノイズ(サンプル信号
以外の信号)のレベルが高くなるほど(すなわち、曲線
イよりも曲線ロ、曲線ロよりも曲線ハ)、包絡線の傾き
を精度良く求めることが困難になることは明らかであ
る。
【0110】そこで、上記課題を解決するために本実施
形態では、実施形態1に対して包絡線検波器11により
検波される包絡線の傾きと所定値との大小関係を判定す
る傾き判定部26と、受話側の信号経路に挿入され傾き
判定部26による判定結果に応じて増幅度を可変する利
得余裕調整用増幅器27とを挿入損失量調整手段8に付
加した点に特徴がある。
【0111】図13は本実施形態における挿入損失量調
整手段8を示すブロック図である。包絡線検波器11に
て抽出される包絡線成分が傾き判定部26に入力され、
包絡線成分の傾きが次段の閉ループ利得余裕推定部12
において系の利得余裕値が精度よく推定可能な範囲か否
かを傾き判定部26で判定している。また、利得余裕調
整用増幅器27は第2の増幅器4の前段に挿入されてお
り、傾き判定部26から与えられる制御信号によって増
幅度が可変されるものである。
【0112】而して、傾き判定部26にて包絡線検波器
11にて抽出された包絡線成分の傾きを所定値と比較
し、所定値よりも小さい、すなわち推定可能と判定した
場合には上記包絡線成分を閉ループ利得余裕推定部12
に出力するとともに利得余裕調整用増幅器27の増幅度
を初期値(=1)に維持する。
【0113】一方、包絡線の傾きが急峻なために、傾き
判定部26にて包絡線成分の傾きが所定値よりも大き
い、すなわち推定不可能と判定した場合には制御信号を
出力して利得余裕調整用増幅器27の利得を増大させ
る。例えば、推定可能な上限値をLmax〔dB〕としたと
きに0〔dB〕からLmax〔dB〕刻みに段階的に増大させ
るようにすればよい。その結果、利得余裕調整用増幅器
27の利得分だけ系の利得余裕値が減少するから、利得
余裕調整用増幅器27の増幅度を適当な値に設定すれ
ば、系の利得余裕を閉ループ利得余裕推定部12におけ
る推定が可能な値とすることができる。また、これ以降
は包絡線検波器11で抽出される包絡線成分の傾きが小
さくなって傾き判定部26にて推定可能と判定されるよ
うになり、上記包絡線成分が閉ループ利得余裕推定部1
2に入力されて利得余裕の推定が行われる。
【0114】ここで、閉ループ利得余裕推定部12にて
推定される利得余裕値に利得余裕調整用増幅器27の増
幅度を乗じた値が実際の系の利得余裕値となるから、こ
の値に基づいて挿入損失量の調整を行う必要がある。
【0115】上述のように本実施形態によれば、包絡線
検波器11により検波される包絡線の傾きと所定値との
大小関係を判定する傾き判定部26と、受話側の信号経
路に挿入され傾き判定部26による判定結果に応じて増
幅度を可変する利得余裕調整用増幅器27とを挿入損失
量調整手段8に具備しているから、閉ループ系の利得余
裕が大きい状態においても利得余裕値を精度よく推定す
ることができる。その結果、閉ループ系の利得余裕値を
常に充分な値に維持可能なように挿入損失量を調整する
ことができる。なお、本実施形態では利得余裕調整用増
幅器27を送話側の信号経路に挿入しているが受話側の
信号経路に挿入しても同様の作用効果を奏することは言
うまでもない。また、本実施形態では実施形態1の構成
に対して傾き判定部26及び利得余裕調整用増幅器27
を付加する構成としているが、実施形態2又は3あるい
は図18に示す基本構成に対して傾き判定部26及び利
得余裕調整用増幅器27を付加する構成としても同様の
作用効果を奏する。
【0116】なお、上記実施形態1〜10における各挿
入損失量調整手段8は、基本構成と同様にマイコンやD
SPを用いて実現可能である。また、サンプル信号とし
てインパルス信号を例示したが、バースト信号をサンプ
ル信号に用いてもよいことは言うまでもない。
【0117】
【発明の効果】請求項1の発明は、集音した音を送話側
の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホ
ンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側
の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出
力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側
及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失
を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入され
る損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出し
たサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホ
ン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利
得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に
基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備
え、挿入損失量調整手段が、信号経路にサンプル信号を
送出するサンプル信号発生器と、音声信号にサンプル信
号を加算する加算器と、サンプル信号に対する応答信号
の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出
力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する
閉ループ利得余裕推定部と、所定の時間間隔でサンプル
信号発生器から信号経路へ複数回にわたってサンプル信
号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部
と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部からのタ
イミング情報を受けてサンプル信号に対する応答信号を
同期加算平均処理する同期加算平均部とを具備して成る
ので、スピーカからマイクヘの音響結合や送話側及び受
話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う必要
がある場合に用いられる2−4線変換手段におけるイン
ピーダンスの不整合による反射が原因となり形成される
閉ループ系に対して、サンプル信号を入力したときに観
測される応答信号の包絡線成分の減衰特性により利得余
裕値を推定し、所望の利得余裕値に対する過不足分を算
出することで挿入損失量を調整するため、ハウリングが
発生するまでの閉ループ系の利得余裕を所望の値に維持
することができ、ハウリングを生じることなく安定した
通話品質を維持することができるとともに、必要以上に
挿入損失量を大きくすることがないため、双方向同時通
話性能の実現可能性が高まるという効果がある。しか
も、同期制御部においてサンプル信号の送出タイミング
を制御し、同期加算平均部でサンプル信号に同期した移
動平均処理を行うとともに、同期加算平均部の出力信号
から包絡線検波器にて包絡線成分を抽出するため、閉ル
ープ中に周囲騒音や音声信号が存在する場合であって
も、これらの影響を軽減して十分な精度で利得余裕値を
推定し、挿入損失量が適切な値に設定可能となって、常
に安定した通話を実現することができるという効果があ
る。特に、本発明は、閉ループ中に存在する周囲騒音が
広い周波数帯域を持ち、自己相関が少ない場合に効果が
大きい。
【0118】請求項2の発明は、集音した音を送話側の
音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホン
からの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の
音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力
される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及
び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を
挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される
損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出した
サンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン
及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利得
余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に基
づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、
挿入損失量調整手段が、信号経路に周期が有限の疑似白
色信号を挿入する疑似白色信号発生器と、音声信号に疑
似白色信号を加算する加算器と、疑似白色信号と当該疑
似白色信号に対する応答信号の相互相関値を求めるとと
もに求めた相互相関値に基づいて閉ループのインパルス
応答を推定する相互相関演算部と、相互相関演算部によ
り推定された閉ループのインパルス応答信号の包絡線を
検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基
づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利
得余裕推定部とを具備して成るので、スピーカからマイ
クヘの音響結合や送話側及び受話側と外部の通話回線と
の間で2−4線変換を行う必要がある場合に用いられる
2−4線変換手段におけるインピーダンスの不整合によ
る反射が原因となり形成される閉ループ系に対して、周
期が有限の疑似白色信号を入力したときに観測される応
答信号と当該疑似白色信号との相互相関値を求めるとと
もに求めた相互相関値から推定される閉ループ系のイン
パルス応答信号の包絡線成分の減衰特性により利得余裕
値を推定し、所望の利得余裕値に対する過不足分を算出
することで挿入損失量を調整するため、ハウリングが発
生するまでの閉ループ系の利得余裕を所望の値に維持す
ることができ、ハウリングを生じることなく安定した通
話品質を維持することができるとともに、必要以上に挿
入損失量を大きくすることがないため、双方向同時通話
性能の実現可能性が高まるという効果がある。しかも、
利得余裕の推定に疑似白色信号を用いるので、使用者に
聴感上の不快感を与えるのを防止することができるとい
う効果がある。
【0119】請求項3の発明は、所定の時間間隔で疑似
白色信号発生器から信号経路へ複数回にわたって疑似白
色信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制
御部と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部から
のタイミング情報を受けて相互相関演算部により推定さ
れた閉ループのインパルス応答信号を同期加算平均処理
する同期加算平均部とを挿入損失量調整手段が具備して
成るので、同期制御部において疑似白色信号の送出タイ
ミングを制御し、同期加算平均部で疑似白色信号に同期
した移動平均処理を行うとともに、同期加算平均部の出
力信号から包絡線検波器にて包絡線成分を抽出するた
め、閉ループ中に存在する定常的な周囲騒音のレベルが
大きい場合においても周囲騒音による影響を軽減して十
分な精度で利得余裕値を推定し、挿入損失量が適切な値
に設定可能となって、常に安定した通話を実現すること
ができるという効果がある。特に、本発明は、閉ループ
中に存在する周囲騒音が広い周波数帯域を持ち、自己相
関が少ない場合に効果が大きい。
【0120】請求項4の発明は、同期加算平均部の出力
信号が一定値に収束したか否かを判定する収束判定部を
挿入損失量調整手段が具備し、収束判定部の判定結果に
応じて同期制御部が同期加算平均部における同期加算処
理の継続/中断を決定して成るので、同期加算平均部の
出力信号が一定値に収束するまでサンプル信号又は疑似
白色信号の送出と同期加算処理とを継続することによっ
て、閉ループ中に周囲騒音が存在する場合においても、
周囲騒音が存在しないときと同程度の精度で利得余裕値
を推定することが可能となるという効果がある。
【0121】請求項5の発明は、閉ループ利得余裕推定
部が推定処理を開始してからの経過時間を測定するタイ
マ部を挿入損失量調整手段が具備し、推定処理開始から
所定時間が経過しても同期加算平均部の出力信号が収束
しない場合に同期制御部がサンプル信号発生器によるサ
ンプル信号の送出又は疑似白色信号発生器による疑似白
色信号の送出と同期加算平均部による同期加算処理とを
中断させて成るので、利得余裕値の推定処理中にも閉ル
ープ系の特性が変化する場合においても、一度同期加算
処理を中断させてリセットすることで変化後の閉ループ
系の利得余裕値の推定処理を速やかに開始することがで
きるという効果がある。
【0122】請求項6の発明は、閉ループ利得余裕推定
部が推定処理を開始してからの経過時間を測定するタイ
マ部を挿入損失量調整手段が具備し、推定処理開始から
所定時間が経過しても同期加算平均部の出力信号が収束
しない場合に同期制御部がサンプル信号発生器によるサ
ンプル信号の送出及び同期加算平均部による同期加算処
理を中断させて成るので、事前に算出された閉ループ中
に存在する信号の自己相関関数より、同期加算処理に要
する時間を最小化するようにサンプル信号又は疑似白色
信号の送出間隔及び同期加算回数を調整することで利得
余裕値の推定処理を高速化することができるという効果
がある。
【0123】請求項7の発明は、閉ループ中に存在する
周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定部と、騒音
レベル推定部による推定結果に基づいてサンプル信号又
は疑似白色信号の送出レベルを調整する送出レベル調整
部とを挿入損失量調整手段が具備して成るので、閉ルー
プ系に送出するサンプル信号又は疑似白色信号のレベル
を周囲騒音レベルに対して充分な大きさに設定すること
により、観測点において高いS/N比でサンプル信号又
は疑似白色信号に対する応答信号を得ることができ、利
得余裕値の推定精度を向上させることができるという効
果がある。
【0124】請求項8の発明は、閉ループ中に存在する
周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定部と、騒音
レベル推定部による推定結果に基づいて同期加算平均部
における同期加算回数を調整する同期加算回数調整部と
を挿入損失量調整手段が具備して成るので、閉ループ系
に存在する周囲騒音のレベルに応じて同期加算回数を必
要最小限に設定することができるため、同期加算処理に
要する計算時間を最小化することができるという効果が
ある。また、1回の利得余裕値の推定処理に要するサン
プル信号又は疑似白色信号の送出回数を最小化すること
により、サンプル信号又は疑似白色信号が受話信号に重
畳して聞こえることによる聴覚上の不快感、違和感を軽
減することができるという効果がある。
【0125】請求項9の発明は、閉ループ中に伝送され
る信号から周囲騒音信号を抽出する周囲騒音抽出部を挿
入損失量調整手段が具備し、抽出された周囲騒音信号か
ら騒音レベル推定部が閉ループ中に存在する周囲騒音の
レベルを推定して成るので、利得余裕値の推定処理中に
閉ループ中の周囲騒音レベルが変化するような場合にお
いても、これに適応してサンプル信号又は疑似白色信号
の送出レベルあるいは同期加算回数を調整するため、周
囲騒音のレベルが変動するような場合においても、これ
に追従して精度良く利得余裕値を推定することができる
という効果がある。
【0126】請求項10の発明は、閉ループ中に伝送さ
れる信号から周囲騒音信号を抽出する周囲騒音抽出部
と、抽出された周囲騒音信号から閉ループ中に存在する
周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定部と、騒音
レベル推定部による推定結果に基づいてサンプル信号又
は疑似白色信号の送出レベルを調整する送出レベル調整
部と、騒音レベル推定部による推定結果に基づいて同期
加算平均部における同期加算回数を調整する同期加算回
数調整部とを挿入損失量調整手段が具備して成るので、
利得余裕値の推定処理中に閉ループ中の周囲騒音レベル
が変化するような場合においても、これに適応してサン
プル信号又は疑似白色信号の送出レベル及び同期加算回
数を調整するため、周囲騒音のレベルが変動するような
場合においても、これに追従して精度良く利得余裕値を
推定することができるという効果がある。
【0127】請求項11の発明は、包絡線検波器により
検波される包絡線の傾きと所定値との大小関係を判定す
る傾き判定部と、送話側及び受話側の少なくとも一方の
信号経路に挿入され傾き判定部による判定結果に応じて
増幅度を可変する利得余裕調整用増幅器とを挿入損失量
調整手段が具備して成るので、傾き判定部にて包絡線の
傾きが所定値よりも大きいと判定された場合に利得余裕
調整用増幅器の増幅度を上げることによって利得余裕値
が減少するから、閉ループ系の利得余裕値が閉ループ利
得余裕推定部にて推定可能なレベルとなり、その結果、
利得余裕値が大きい状態においても利得余裕値を精度よ
く推定することができため、閉ループ系の利得余裕値を
常に充分な値に維持可能なように挿入損失量を調整する
ことができるという効果がある。
【0128】請求項12の発明は、集音した音を送話側
の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホ
ンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側
の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出
力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側
及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失
を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入され
る損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出し
たサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホ
ン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利
得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に
基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備
え、挿入損失量調整手段が、信号経路にサンプル信号を
送出するサンプル信号発生器と、音声信号にサンプル信
号を加算する加算器と、サンプル信号に対する応答信号
の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出
力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する
閉ループ利得余裕推定部と、包絡線検波器により検波さ
れる包絡線の傾きと所定値との大小関係を判定する傾き
判定部と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経
路に挿入され傾き判定部による判定結果に応じて増幅度
を可変する利得余裕調整用増幅器とを具備して成るの
で、傾き判定部にて包絡線の傾きが所定値よりも大きい
と判定された場合に利得余裕調整用増幅器の増幅度を上
げることによって利得余裕値が減少するから、閉ループ
系の利得余裕値が閉ループ利得余裕推定部にて推定可能
なレベルとなり、その結果、利得余裕値が大きい状態に
おいても利得余裕値を精度よく推定することができた
め、閉ループ系の利得余裕値を常に充分な値に維持可能
なように挿入損失量を調整することができるという効果
がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1における挿入損失量調整手段を示す
ブロック図である。
【図2】同上における同期制御部並びに同期加算平均部
を示すブロック図である。
【図3】同上の動作を説明するための説明図である。
【図4】実施形態2における挿入損失量調整手段を示す
ブロック図である。
【図5】実施形態3における挿入損失量調整手段を示す
ブロック図である。
【図6】実施形態4における挿入損失量調整手段を示す
ブロック図である。
【図7】実施形態5における挿入損失量調整手段を示す
ブロック図である。
【図8】実施形態6における挿入損失量調整手段を示す
ブロック図である。
【図9】実施形態7における挿入損失量調整手段を示す
ブロック図である。
【図10】実施形態8における挿入損失量調整手段を示
すブロック図である。
【図11】実施形態9における挿入損失量調整手段を示
すブロック図である。
【図12】同上における周囲騒音抽出部を示すブロック
図である。
【図13】実施形態10における挿入損失量調整手段を
示すブロック図である。
【図14】同上の説明図である。
【図15】同上の説明図である。
【図16】同上の説明図である。
【図17】同上の説明図である。
【図18】(a)は本発明の基本構成を示すブロック
図、(b)は同じく挿入損失量調整手段の基本構成を示
すブロック図である。
【図19】同上における閉ループを説明するための説明
図である。
【符号の説明】
8 挿入損失量調整手段 9 インパルス信号発生器 10 加算器 11 包絡線検波器 12 閉ループ利得余裕推定部 15 同期制御部 16 同期加算平均部

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 集音した音を送話側の音声信号として出
    力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を
    増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて
    鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を
    増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なく
    とも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入
    手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御
    する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対
    する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通
    じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定すると
    ともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整
    を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手
    段が、信号経路にサンプル信号を送出するサンプル信号
    発生器と、音声信号にサンプル信号を加算する加算器
    と、サンプル信号に対する応答信号の包絡線を検波する
    包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉
    ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推
    定部と、所定の時間間隔でサンプル信号発生器から信号
    経路へ複数回にわたってサンプル信号を送出させるため
    のタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の
    前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受け
    てサンプル信号に対する応答信号を同期加算平均処理す
    る同期加算平均部とを具備して成ることを特徴とする拡
    声通話機。
  2. 【請求項2】 集音した音を送話側の音声信号として出
    力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を
    増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて
    鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を
    増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なく
    とも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入
    手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御
    する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対
    する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通
    じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定すると
    ともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整
    を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手
    段が、信号経路に周期が有限の疑似白色信号を挿入する
    疑似白色信号発生器と、音声信号に疑似白色信号を加算
    する加算器と、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対す
    る応答信号の相互相関値を求めるとともに求めた相互相
    関値に基づいて閉ループのインパルス応答を推定する相
    互相関演算部と、相互相関演算部により推定された閉ル
    ープのインパルス応答信号の包絡線を検波する包絡線検
    波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループに
    おける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部とを
    具備して成ることを特徴とする拡声通話機。
  3. 【請求項3】 所定の時間間隔で疑似白色信号発生器か
    ら信号経路へ複数回にわたって疑似白色信号を送出させ
    るためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検
    波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報
    を受けて相互相関演算部により推定された閉ループのイ
    ンパルス応答信号を同期加算平均処理する同期加算平均
    部とを挿入損失量調整手段が具備して成ることを特徴と
    する請求項2記載の拡声通話機。
  4. 【請求項4】 同期加算平均部の出力信号が一定値に収
    束したか否かを判定する収束判定部を挿入損失量調整手
    段が具備し、収束判定部の判定結果に応じて同期制御部
    が同期加算平均部における同期加算処理の継続/中断を
    決定して成ることを特徴とする請求項1又は3記載の拡
    声通話機。
  5. 【請求項5】 閉ループ利得余裕推定部が推定処理を開
    始してからの経過時間を測定するタイマ部を挿入損失量
    調整手段が具備し、推定処理開始から所定時間が経過し
    ても同期加算平均部の出力信号が収束しない場合に同期
    制御部がサンプル信号発生器によるサンプル信号の送出
    又は疑似白色信号発生器による疑似白色信号の送出と同
    期加算平均部による同期加算処理とを中断させて成るこ
    とを特徴とする請求項4記載の拡声通話機。
  6. 【請求項6】 閉ループ中に存在する信号の自己相関関
    数を算出する自己相関関数算出部を挿入損失量調整手段
    が具備し、算出された自己相関関数に基づいて同期制御
    部がサンプル信号発生器からのサンプル信号又は疑似白
    色信号発生器からの疑似白色信号の送出間隔と同期加算
    平均部における同期加算回数を調整して成ることを特徴
    とする請求項1又は3記載の拡声通話機。
  7. 【請求項7】 閉ループ中に存在する周囲騒音のレベル
    を推定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部によ
    る推定結果に基づいてサンプル信号又は疑似白色信号の
    送出レベルを調整する送出レベル調整部とを挿入損失量
    調整手段が具備して成ることを特徴とする請求項1又は
    3記載の拡声通話機。
  8. 【請求項8】 閉ループ中に存在する周囲騒音のレベル
    を推定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部によ
    る推定結果に基づいて同期加算平均部における同期加算
    回数を調整する同期加算回数調整部とを挿入損失量調整
    手段が具備して成ることを特徴とする請求項1又は3記
    載の拡声通話機。
  9. 【請求項9】 閉ループ中に伝送される信号から周囲騒
    音信号を抽出する周囲騒音抽出部を挿入損失量調整手段
    が具備し、抽出された周囲騒音信号から騒音レベル推定
    部が閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定して
    成ることを特徴とする請求項7又は8記載の拡声通話
    機。
  10. 【請求項10】 閉ループ中に伝送される信号から周囲
    騒音信号を抽出する周囲騒音抽出部と、抽出された周囲
    騒音信号から閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを
    推定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部による
    推定結果に基づいてサンプル信号又は疑似白色信号の送
    出レベルを調整する送出レベル調整部と、騒音レベル推
    定部による推定結果に基づいて同期加算平均部における
    同期加算回数を調整する同期加算回数調整部とを挿入損
    失量調整手段が具備して成ることを特徴とする請求項1
    又は3記載の拡声通話機。
  11. 【請求項11】 包絡線検波器により検波される包絡線
    の傾きと所定値との大小関係を判定する傾き判定部と、
    送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に挿入さ
    れ傾き判定部による判定結果に応じて増幅度を可変する
    利得余裕調整用増幅器とを挿入損失量調整手段が具備し
    て成ることを特徴とする請求項2又は3記載の拡声通話
    機。
  12. 【請求項12】 集音した音を送話側の音声信号として
    出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号
    を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じ
    て鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号
    を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少な
    くとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿
    入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制
    御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に
    対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを
    通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定する
    とともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調
    整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整
    手段が、信号経路にサンプル信号を送出するサンプル信
    号発生器と、音声信号にサンプル信号を加算する加算器
    と、サンプル信号に対する応答信号の包絡線を検波する
    包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉
    ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推
    定部と、包絡線検波器により検波される包絡線の傾きと
    所定値との大小関係を判定する傾き判定部と、送話側及
    び受話側の少なくとも一方の信号経路に挿入され傾き判
    定部による判定結果に応じて増幅度を可変する利得余裕
    調整用増幅器とを具備して成ることを特徴とする拡声通
    話機。
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