JPH11317158A - 荷電粒子軌道計算方法及び荷電粒子軌道計算処理プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

荷電粒子軌道計算方法及び荷電粒子軌道計算処理プログラムを記録した記録媒体

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JPH11317158A
JPH11317158A JP12252798A JP12252798A JPH11317158A JP H11317158 A JPH11317158 A JP H11317158A JP 12252798 A JP12252798 A JP 12252798A JP 12252798 A JP12252798 A JP 12252798A JP H11317158 A JPH11317158 A JP H11317158A
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electron
charged particle
time
electric field
computer
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JP12252798A
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English (en)
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Shigeki Matsutani
茂樹 松谷
Akira Asai
朗 浅井
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スケールの異なる場合の系で、且つ淀み点を
もつ系に対しても自動的に時間を可変にでき、電子の軌
道計算を精度よく、短時間に計算することができるコン
ピュータによる荷電粒子軌道計算方法を提供する。 【解決手段】 与えられた電界の下で、微少時間後の荷
電粒子の位置を計算するためのコンピュータによる荷電
粒子軌道計算方法であって、前記電界の大きさに応じ
て、前記微小時間を時刻ごとに変化させ、ニュートン方
程式を解いて、微少時間後の荷電粒子の位置を計算する
ようにしている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷電粒子の位置を
計算するためのコンピュータによる荷電粒子軌道計算方
法に関し、特に、表面伝導型電子放出素子と引き上げ電
極とを有する系において、電子の位置を計算するための
コンピュータによる電子軌道計算方法に関する。
【0002】
【従来の技術】真空中での電子の軌道計算に関しては、
既に多くの文献があり、例えば、Principles of Electr
on Optics P.W.Hawkes and E.Kasper vol 1.2.Academic
Press,1989)に詳しい。それらによると、境界条
件に応じた電場を計算し、その電場に対してニュートン
の運動方程式を解くことで、電子の軌道計算は行われ
る。これらの計算方法に関しては種々の研究がなされ、
種々の電子源(熱電子源、スピトン等)を使用した電子
デバイス素子の電子光学的設計に関して重要な役割をな
してきた。特に、従来の真空管を使用した従来のモニタ
ーの開発設計に対して多大な貢献をしてきた。
【0003】本発明の軌道計算プログラムが対象とする
物理系として、電子放出素子が挙げられる。本発明の対
象とする系として、従来知られている表面伝導型電子放
出素子およびそれを用いた電子放出装置について記述す
る。
【0004】表面伝導型電子放出素子を利用した電子放
出装置は特徴として、構造が単純で製造も容易であり、
数[V]から数10[V]程度の駆動電圧で駆動が可能
であることなどから、最近、本出願人らによって平板型
表示装置として開発研究がなされてきている。
【0005】以下に表面伝導型電子放出素子を利用した
電子放出装置の構成および製造方法について特開平7−
235255号公報に沿って、説明する。
【0006】図5は従来の表面伝導型電子放出素子の概
略図である。(a)が素子を真上から見たもので、
(b)が横からみたものである。1はガラス基板であ
り、2素子陽電極であり、3は素子陰電極であり、不図
示の電源とつながっている。4および5は導電性薄膜で
あり、4は素子陽電極2と5は素子陰電極3と電気的に
連結されている。電極2,6の膜厚は、数10nmから
数μm程度のものである。他方、薄膜4,5の膜厚は、
1[nm]から数10[nm]程度のものである。6は
亀裂で、薄膜4と5とを電気的にほぼ不連続にしてい
る。亀裂の特徴については製造工程において述べる。
【0007】図5で、L1 は数[μm]から数100
[μm]であり、L2 は数10[μm]以上である。
また、W1 は数100[nm]以上の大きさを持って
いる。
【0008】電子は亀裂6の近傍から射出している。
【0009】次に表面伝導型電子放出素子を使用した電
子放出装置について、図2に沿って説明する。
【0010】図6は、表面伝導型電子放出素子を使用し
た電子放出装置の概略構成図である。
【0011】図6において、1はガラス基板、2及び3
は素子電極、4,5は導電性薄膜、6は亀裂部を示す。
また、10は素子に素子電圧Vfを印加するための電
源、11は素子電極2,3間を流れる素子電流Ifを測
定するための電流計、12は素子の電子放出部より放出
される到達電流Ieを捕捉するための引き上げ電極、1
3は引き上げ電極12に電圧Va を印加するための高
圧電源、14は表面伝導型電子放出素子より放出され引
き上げ電極に到達した電流Ieを測定するための電流計
である。さらに、必要に応じて、電子の到達位置の分布
を測定できるようにメッシュ状の電極あるいは、蛍光板
が引き上げ電極12に取り付けられている。電子を放出
させるにあたっては、素子電極2,3に電源10が接続
し、該電子放出素子と引き上げ電極12とに電源13が
接続している。更に、素子電流IfとIeを測定する際
には、図のように電流計11と14がそれぞれ接続して
いる。
【0012】真空装置16のなかに、表面伝導型電子放
出素子および引き上げ電極は図のように設置されてお
り、真空装置外から、それぞれの電圧等は制御できるよ
うになっている。尚、排気ポンプ15は、ターボポン
プ、ロータリーポンプからなる通常の高真空装置系と、
更に、イオンポンプからなる超高真空装置系からなる。
また、真空装置16全体、及び電子放出素子基板は、不
図示のヒーターにより101度まで加熱できる。
【0013】素子電圧Vf は0から数10[V]程
度、また、引き上げ電極の電圧Vaは0から数[KV]
になるように可変であるようになっている。引き上げ電
極と電子放出素子との距離Hは数[mm]程度のオーダ
ーになっている。
【0014】次に表面伝導型電子放出素子の製造方法に
ついて記述する。
【0015】図7において1は基板、2,3は素子電
極、4,5,7は伝導性薄膜で、6は後述のフォーミン
グ工程及び活性化工程によって形成された亀裂である。 [工程−a]清浄化した青板ガラス上に厚さ0.5ミク
ロンのシリコン酸化膜をスパッタ法で形成した基板1の
上に素子電極2,3をホトレジストで形成し、真空蒸着
法により厚さ5[nm]のTi、厚さ100[nm]の
Niを順次堆積した。ホトレジストパターンを有機溶剤
で溶解し、Ni/Ti堆積膜をリフトオフして、素子電
極2,3を形成した。素子電極間隔L1 は10[μ
m]とし、素子長さL3を800[μm]とした。ま
た、素子電極1と2の幅W1 は300[μm]とし
た。 [工程−b]続いて、素子電極間ギャップおよびこの近
傍に開口を有するマスクを用い、その上に膜厚100
[nm]のCr膜を真空蒸着により堆積・パターニング
し、その上に有機Pd(ccp4230奥野製薬(株)
社製)をスピンナーにより回転塗布、300℃で10分
間の加熱焼成処理をした。ここで、L2 は250[μ
m]とした。また、こうして形成された主として酸化パ
ラジウムよりなる微粒子からなる電子放出部形成用薄膜
7の膜厚は10[nm]、シート抵抗値は2×10
4[Ω/□]であった。なおここで述べる微粒子膜と
は、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造と
して、微粒子が個々に分散配置した状態のみならず、微
粒子が互いに隣接、あるいは、重なり合った状態(島状
も含む)の膜であった。 [工程−c]Cr膜をエッチャントによりエッチングし
て所望の電子放出部形成用薄膜7のパターンを形成し
た。 [工程−d]次に、図6の電子放出装置に素子を設置
し、真空ポンプにて排気し、2×10 -5Torrの真空
度に達した後、素子に素子電圧Vfを印加するための電
源10によって、素子電極2,3間にそれぞれ電圧を印
加し、フォーミングと呼ばれる通電処理を行う。これ
は、電源10により、電圧をパルス状あるいは、昇電圧
による通電処理するものである。この通電処理により電
子放出部形成用薄膜19は局所的に破壊、変形もしくは
変質し、亀裂部6が形成される。また、同時に、フォー
ミング処理中は、電子放出部形成用薄膜7が局所的に破
壊、変形しない程度の電圧、例えば0.1[V]程度の
電圧で、抵抗測定パルスを挿入し、抵抗を測定する。フ
ォーミング処理の終了は、その測定によって、電子放出
部形成用薄膜7の抵抗が約1Mオーム以上になった時と
し、同時に素子への電圧の印加を終了した。尚、このと
きのパルス電圧をフォーミング電圧と呼び、該フォーミ
ング電圧は、5.0[V]程度であった。 [工程−e]次に、フォーミング終了した素子に活性化
処理と呼ぶ処理を施す。活性化処理とは、10-4〜10
-5[Torr]程度の真空度で、フォーミング同様、電
圧パルスの波高値が一定のパルスを繰りかえし印加する
処理のことを言い、真空中に存在する有機物質から、炭
素及び炭素化合物を堆積することで、素子電流If、到
達電流Ieを著しく変化させる処理である。電源13に
よって、引き上げ電極を素子に比べて数[KV]程度高
電位にして、固定する。その後、10によって素子に電
圧パルスの波高値が一定のパルスを繰りかえし印加す
る。素子電流Ifと到達電流Ieを測定しながら、例え
ば、到達電流Ieが飽和した時点で、活性化処理を終了
する。活性化処理の進行の程度は、真空度、素子に印加
するパルス電圧等に依存している。フォーミングによっ
て変形、変質した薄膜の内、その一部あるいは近傍の被
膜の形成状態が該活性化処理によって変化する。
【0016】このようにして作製した電子放出素子を活
性化処理した真空度より高い真空度の真空雰囲気にし駆
動する。これによって、これ以上の炭素及び炭素化合物
の堆積を抑制することが可能となり、素子電流If、到
達電流Ieが一定に安定する。
【0017】上述のような素子構成と製造方法によって
作成された該電子放出装置の基本特性について説明す
る。図6に示した電子放出装置により測定された到達電
流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の典型
的な例を図8に示している。到達電流Ieは素子電流I
fに比べて著しく小さいので、任意単位で示されてい
る。
【0018】図8からも明らかなように、該電子放出装
置は到達電流Ieと素子電圧Vfの関係に対して次の三
つの特性を有する。まず第一に、該電子放出装置はある
電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図4のVth)以上の素子
電圧を印加すると急激に到達電流Ie が増加し、一方
しきい値電圧Vth以下では到達電流Ieがほとんど検
出されない。すなわち、到達電流Ieに対する明確なし
きい値電圧Vthを持った非線形素子である。第二に、
到達電流Ieが素子電圧Vfに依存するため、到達電流
Ieは素子電圧Vfで制御できる。第三に、引き上げ電
極12に捕捉される到達電荷量は、素子電圧Vfを印加
する時間に依存する。すなわち、引き上げ電極12に捕
捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により
制御できる。
【0019】上記の特性によれば、引き上げ電極12で
捕捉される電子は、しきい値電圧以上では、対向する素
子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と巾で制御さ
れる。一方、しきい値電圧以下では殆ど引き上げ電極に
到達しない。従って、多数の電子放出素子を配置した場
合においても、個々の素子に上記パルス状電圧を適宜印
加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子
を選択し、その電子放出量が制御出来ることとなる。
【0020】この原理に基づき電子放出装置を複数構成
することによって、平板型画像表示装置を形成すること
が可能となる。その構成方法については、特開平7−2
35255号公報に詳しく記載されている。簡単に述べ
ると、平板型画像表示装置の画素に対応して、上記の表
面伝導型電子放出素子を同一基板上に複数配置し、それ
ぞれの素子電極2,3からの配線をいわゆる単純マトリ
クス状にそれぞれ行配線、列配線とするように配置す
る。また、引き上げ電極は共通のものを使用するが、引
き上げ電極上には各電子放出素子に対応した位置に蛍光
膜が塗布され、画素を形成している。従って、引き上げ
電極によって引き上げられた電子によって、画素を点灯
させることが可能となる。駆動においては、行配線には
選択的に正の電位V(Vth>V>Vth/2)を付与
し、列配線には選択に負の電位−V(Vth>V>Vt
h/2)を付与することにより、行列ともに選択された
素子のみが、Vthを越える素子電圧がかかることにな
る。このことと上述した表面伝導型電子放出素子を使用
した電子放出装置の特性によって、行列ともに選択され
た素子のみを駆動できるようになる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記表面伝導
型電子放出素子を用いた電子放出装置は、分布の特徴的
な長さのスケールが[nm]オーダーから[mm]オー
ダーという6桁も異なる電位分布を持っている。そのこ
とを詳しくみるために、前記表面伝導電子放出装置を用
いた電子放出装置の物理的機構について述べる。
【0022】上記に述べたように、フォーミングと呼ば
れる過程と活性化と呼ばれる過程を経ることによって表
面伝導型電子放出素子の導電性薄膜には亀裂が存在し、
該亀裂は、導電性薄膜を素子陽電極に電気的に連結した
部分と素子陰電極にそれぞれ電気的に連結した部分とを
分けるように形成されている。この薄膜亀裂のうち、n
mオーダーの幅を持っている箇所が有限の長さ存在する
ことが判ってきている。更に様々な検証実験とコンピュ
ータシミュレーションによって、該nmオーダーの亀裂
の高電位薄膜部側の先端部分から電子がほぼ等方に放出
されることが判って来ている。(正確には高電位薄膜部
の先端部から電子が等方に放出されると仮定すると実験
とシミュレーションとが矛盾なく一致することが判って
いる。)ここで高電位薄膜部とは、図6を参照すると、
薄膜部4と素子陽電極2等を含めたほぼ等電位と見なせ
る電気的に連結されたもののことである。同様に、薄膜
5と素子陰電極3等を含めたほぼ等電位と見なせる部分
を低電位薄膜部と以下呼ぶ。
【0023】このように高電位薄膜の先端から放出され
た電子の振る舞いは、電界放出型電子放出素子のよう
に、陰極側から放出される電子とは異なった振る舞いを
することが静電場中の電子の運動を考察することによっ
てわかる。以下表面伝導型電子放出素子を用いた電子放
出装置の特徴的な運動を考察する。
【0024】まず、亀裂部分が直線になっている場合の
静電的な電位分布について述べる。亀裂部が直線でか
つ、素子の電極および薄膜部の表面がz=0面上にあ
り、今考えている領域(後述)と比較して十分大きい面
積を持って広がっているとし、またその電位分布が高電
位薄膜部側と低電位薄膜部側とで完全に2値化している
とみなしてよいときは、高電位薄膜部側と低電位薄膜部
を静電学的に対向する2電極平板であるとして近似して
良い。更に、考えている領域に比較して、素子と引き上
げ電極12との距離Hが十分長い場合、表面伝導型電子
放出素子を用いた電子放出装置の電界分布(Ex ,
0,Ez )は、(x,z)面を複素平面として見なし
て、式(1)
【0025】
【数1】 として与えられる。ここで、i=√(−1),πは円周
率である。座標の中心は、亀裂の中央としており、Dは
実効的な亀裂の幅である。Vf は、素子にかかる電圧
で、0から数10[V]程度である。また、Va は引
き上げ電極と素子と間の電圧で、数[KV]から数10
[KV]程度で、素子と蛍光板との距離Hは数[mm]
オーダーである。したがって、Va /Hがほぼ106
[V/m]から107[V/m]のオーダーとなる。
【0026】また、実効的な幅Dというのは、亀裂中央
から亀裂Dの大きさの数10倍程度の位置で、実際の電
界と一致するように上記の式(1)とをフィッティング
した際のパラメータとしての幅の意味である。この幅は
表面伝導型電子放出素子においては数nm程度のオーダ
ーであることが経験的にわかっている。
【0027】式(1)で記述される電界を積分した電位
分布をスケール別に表したものが図9である。図9で、
(a)は[mm]オーダーの電位分布図である。(b)
は[μm]オーダーの電位分布図であり、(c)は[n
m]オーダーの電位分布図である。式(1)で近似され
る、111は高電位薄膜部、112は低電位薄膜部、1
13は引き上げ電極である。
【0028】この時、z=0面上、亀裂(y軸)に平行
でかつ、xの値が、式(2)
【0029】
【数2】 の直線上において、電界が淀むことがわかる。この電界
が淀む直線状の箇所を、以下、淀み線あるいは、(x,
z)面の断面形状を捕えて、淀み点と呼ぶ。この淀み点
の中心からの距離xs は、この系の特徴を表わす長さ
である。
【0030】該電子放出装置におけるオーダーでは、x
s >>Dとなり、xs は充分よい近似で、式(3)
【0031】
【数3】 となり、実効的な幅Dにxs が依存しないことがわか
る。Va =1[KV],Vf =15[V],H=5
[mm]では、xs =23.9[μm]程度である。
【0032】(3)式の近似は、電界分布を式(4)
【0033】
【数4】 と近似したことに相当し、この近似はxsと亀裂幅の比
が充分大きいとき、すなわち亀裂中央から実効的な亀裂
幅Dの数倍程度の半径の半円柱外の領域では、よい近似
であることがわかる。(4)式の右辺の第1項の表わす
ものはいわゆる回転電界である。他方、第2項の表す電
界を縦電界とよぶと、表面伝導型電子放出素子を使用し
た電子放出装置の特徴的な電界は、回転電界と縦電界の
和で近似できるということがわかる。
【0034】式(4)に相当する電位分布は(4)を積
分することによって得られ、式(5)
【0035】
【数5】 となる。ここで、Imは虚数部を表わす。
【0036】式(1)で与えられた電場を解析すると高
電位薄膜部1側に、電界がz軸正の向きのベクトル成分
をもつ領域が存在することがわかる。その領域の形状
は、亀裂中央と淀み点との中央を中心軸として、半径を
xs の半分とするほぼ半円をy軸方向の平行移動によ
って得られる内部のつまった半円柱状に形成されている
ことがわかる。この領域では、電子は下向きの力を受け
るので、以下これを負の勾配領域と呼ぶ。図9(b)に
対応する領域を斜線で示した。式(4)の近似がなりた
つときには、この負の勾配領域のzx−平面上では完全
な半円とx軸で囲まれる領域となる。
【0037】上述のように電子が薄膜の高電位薄膜部分
1の先端部からなんらかの効果によって放出されたとし
ても、負の勾配領域においては、電子は下方(図z軸負
の方向)の力を受けて落下することが分かっている。さ
らに、様々な解析から、電子は高電位薄膜部1表面に落
下し、一部は高電位薄膜1内に吸収され、素子電流とし
て流れ、一部は、再び真空中へ散乱をおこなうことがわ
かってきた。そのように、電子は薄膜の高電位薄膜部分
1の先端部で放出された後に、落下散乱を繰り返し、負
の勾配領域を抜けきったものだけが引き上げ電極3に到
達し、到達電流となる。
【0038】したがって、xs に比較して、高電位薄
膜部1および低電位薄膜部2の亀裂からのx方向の長さ
がxs に比較して長い場合、上記で近似したように薄
膜部を対向する電極平板と見なしてよく、また、亀裂の
蛇行のスケールがxs に比べて非常に小さければ、直
線亀裂と見なして良い。
【0039】つまり、上述の「考えている領域」という
のは電子のz方向の位置が素子表面からはかってxsの
数倍から十数倍程度の高さと、x方向には、淀み点の1
0倍程度の大きさをもつ。y方向に伸びた角柱の領域と
なる。つまり、1)。亀裂部がxs に比較して、その
蛇行が小さいとき直線的であると見なせ、2)。素子の
電極および薄膜部の表面の凸凹がxsに比較して著しく
平坦であり、3)。該角柱で囲まれる領域と比較して、
高電位薄膜部及び低電位薄膜部が、十分大きい面積を持
って広がっており、4)、H>>xs という状況が成
り立っているとき、式(1)あるいは、式(4)で記述
される電界分布を系はもつのである。一般的な表面伝導
型電子放出素子を用いた電子放出装置は上記の要件をほ
ぼ満たすことが判る。
【0040】該角柱で囲まれた領域を超えると電子は、
素子と引き上げ電極3との間の電界によって、ほぼ放物
運動を行う。
【0041】このような式(1)あるいは式(4)で近
似されるような電界分布は、引き上げ電極3に対応する
ような捕捉電極が等電位部1,2に対応する電極と同一
基板上に形成されているものと著しくその性質を異にし
ている。また、素子にかかる電圧値が大きい場合、例え
ば、Vf=101[V]の場合、Va=1[KV],H
=5[mm]では、xs=300[μm]程度となり、
上記(1)式あるいは式(4)で記述されるような素子
を形成するためには、[mm]オーダーの素子を考える
必要がある。従って、素子のかかる電圧値が大きくかつ
素子の大きさがサブミリメータ以下の場合、上述の表面
伝導型電子放出素子の特徴的な電界分布とは異なる電界
分布を持つことが容易に推測できる。
【0042】数[eV]から十数[eV]程度のエネル
ギーを持つ電子は、高エネルギーの電子と異なる性質を
持つことは知られているが、その性質は詳しくわかって
はいない。多くの考察から、高電位薄膜部1表面で弾性
散乱がおこり、その弾性散乱成分の全体の割合をβとす
るとこれはほぼ0.1以上、0.5以下程度であること
がわかってきている。また、エネルギーが低いための量
子論的な波動的な振る舞いのためと、薄膜表面の凸凹の
ために、等方に散乱している成分があることがわかって
いる。したがって、古典的には、ある方向に散乱される
割合が、確率的に与えられているように解釈される。
【0043】このような散乱機構のために、電子の運動
は統計的に扱うべきものであることが理解される。ま
た、βの値が1以下であることから、真空中の電子は散
乱を繰り返す度に、そのべき乗で減少していくことがわ
かる。
【0044】このように、対象とする電子放出装置は、
分布の特徴的な長さのスケールが[nm]オーダーから
[mm]オーダーという6桁も異なる電位分布を持って
いる。また、電界のオーダーも大きくことなり、特徴と
なる電界は、上述の亀裂近傍で、109[V/m]、負
の勾配領域外では、106[V/m]程度、更に、淀み
点近傍では0[V/m]という広範囲な電界分布を持
つ。そのため、該電子放出装置の電子の軌道を計算機内
で模擬的に再現するためには、そのような数桁のオーダ
ーにまたがる電子軌道計算を行わなければならない。
【0045】一般的に、数値計算は、微分方程式で与え
られる系を有限の格子に上での広い意味の差分方程式に
読み変える(近似する)ことによって計算される。対象
となる電子軌道計算においては、その有限量とは時間間
隔Δtとして現れる。系が微分方程式で与えられた場
合、Δtは細かい程厳密であることは明らかである。
が、計算機内の浮動小数点の桁数と、計算時間とによっ
てその下限が決定される。
【0046】他方、上述の亀裂近傍の式(4)の第1項
で表される回転電界は特徴となるスケールを持たず、中
心からの半径に応じて、その大きさを変化させる。今の
場合、亀裂幅Dが、回転電界からのずれを表している
が、その大きさは[nm]である。そのような亀裂の極
近傍では、電界の強度も強く、この領域での電子軌道を
計算機内で模擬するに当たっては、非常に小さな時間間
隔Δtを必要とする。逆に、負の勾配領域を越えると、
電子は緩い縦電界に支配されて、大まかな時間間隔で運
動しているに過ぎない。
【0047】つまり、時間間隔を固定するとしたとき、
[nm]オーダー亀裂近傍の運動を精度良く、模擬計算
するためには、時間間隔を小さくしなければならず、そ
うすると[mm]オーダーの運動を計算するのにほぼ、
その電界強度比の大きさで、時間を必要としてしまい、
許容し得る計算時間内に計算が終了しないことが起こ
る。
【0048】他方、淀み点近傍では、電子は力をあまり
受けることなく運動するのであるが、淀み点近傍を運動
する電子は、その後引き上げ電極に無散乱で到達する可
能性が非常に高いため、引き上げ電極での電子の到達分
布を計算する上では非常に重要である。
【0049】そこで、本発明は、スケールの異なる場合
の系で、且つ淀み点をもつ系に対しても自動的に時間を
可変にでき、電子の軌道計算を精度よく、短時間に計算
することができるコンピュータによる荷電粒子軌道計算
方法及び荷電粒子軌道計算処理プログラムを記録したコ
ンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを課
題としている。
【0050】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明方法は、与えられた電界分布の下で、微少時間
後の荷電粒子の位置を計算するためのコンピュータによ
る荷電粒子軌道計算方法であって、前記電界の大きさに
応じて、前記微小時間を時刻ごとに変化させ、ニュート
ン方程式を解いて、微少時間後の荷電粒子の位置を計算
するようにしている。
【0051】又、上記課題を解決するための本発明記録
媒体は、与えられた電界分布の下で、微少時間後の荷電
粒子の位置を計算するための荷電粒子軌道計算処理プロ
グラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
であって、前記電界の大きさに応じて、前記微小時間を
時刻ごとに変化させる手順を記録している。
【0052】すなわち、本発明においては、基板上に形
成された対向する陰極側素子電極と陽極側素子電極、及
び、前記の素子電極の間に形成された電子放出部を有す
る薄膜からなる表面伝導型電子放出素子と放出電子を引
き上げるため、基板上の平均電位に対して高電位の引き
上げ電極からなる系に関する、電子の軌道を計算する電
子軌道シミュレーションで、該電界分布より求められた
力によって微少時間Δt後の荷電粒子の位置を算出する
に当たって、電界の大きさ及び、電界と位置に応じて、
該微小時間Δtを各時刻毎に決定するようにしている。
【0053】
【本発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明
の実施の形態について説明する。
【0054】図1は本発明を実施するためのコンピュー
タシステムである。
【0055】図1に示すように、100は入力装置、1
01は出力装置、102は記憶装置であり、103は計
算装置で、104はモニターである。入力装置によっ
て、電子軌道計算に関するパラメータを決定して、計算
を行わせる。
【0056】入力装置100は、電子の射出位置、引き
上げ電極の電位Va、引き上げ電極と表面伝導型電子放
出素子との距離、高電位薄膜部極、低電位薄膜部間の電
位差Vf、及び亀裂の実効的幅d等の値を入力するため
のものである。また、高電位薄膜部表面上での散乱確
率、散乱分布の分布関数等をここで設定する。
【0057】図2は本発明方法のフローチャートであ
る。S01で、必要とされるパラメータを入力し、S0
2で電子軌道計算を実行させて、S03のように終了す
る。その後後処理S04として、計算データから所望の
物理量を算出する。
【0058】また、電子軌道計算装置内において計算領
域内の電界に関する境界条件を設定することによって所
望の点の電界分布が与えられるように計算を行う。計算
方法に関しては、有限要素法、境界要素法、差分法、そ
の他の数値的な計算手法、及び解析的な手法が用いられ
ることとなる。もちろん、電子軌道計算装置外で求めら
れた電界分布を利用してもよい。そのような操作によっ
てモデル化された模擬空間で、電界分布が基本的に与え
られたこととなる。本発明では、境界部以外の領域は、
物理的には真空であるとしている。このことは、モデル
となる実際の物理系において、充分真空性が高ければ良
い近似であると考えられる。
【0059】図3は、入力手段によって与えられたN本
の模擬電子の軌道計算を行う流れ図になっている。流れ
図に沿って、説明する。まず、S11でS01でのパラ
メータに応じて、初期条件を決定しておく。S12で、
必要に応じて模擬電子が運動する領域の電界分布を関す
る予め計算しておく。(有限要素法、差分法で電界を求
める場合は、各接点において電界分布を全て求める。ま
た、境界要素法を用いて電界を求める場合は、ここで境
界要素の所望の物理量について計算しておく。更に、解
析解によって電界を求める場合は、共通の物理量に関す
る計算を予め行っておく。)その後、N本の模擬電子に
関する軌道計算を行う。S13で模擬電子の番号を1と
して、S14−S16の順で1本目から、N本目までの
電子軌道計算を行うようになっている。
【0060】本実施形態では、Nを10000にしてい
る。S12において、電界を求めるにあたって、共通の
物理量に関する計算を予め行っておく。その後、N本の
模擬電子に関する軌道計算を行う。
【0061】1本目から、N本目までを順番に行うよう
になっている。図4は、模擬電子軌道の計算部(S1
5)をより詳しく記述した流れ図である。
【0062】図4は、模擬電子軌道の計算部をより詳し
く記述した流れ図である。S202において、模擬電子
の初期位置を設定する。次に、S203で所望の分布関
数に応じて、乱数による初速度(初期運動エネルギー、
初期運動方向)を決定する。その後S204で、模擬電
子の現状の位置近傍での電界を計算で求める。(有限要
素法等の場合、近傍の接点での電界値から、補間によっ
て求める。境界要素法、解析解の場合、それぞれの方法
でその位置での電界計算を行う。)求まった電界にした
がって、Δt時間を決定し(S204)、Δt時間後の
模擬電子の軌道をニュートン方程式式(6)
【0063】
【数6】 によって求める(S205)。但し、ここで、x=
(x,y,z)で、E=(Ex ,Ey ,Ez )で
与えられる位置ベクトル、及び電界ベクトルである。
【0064】これを離散化し、差分方程式に落す必要が
ある。最も、簡単な場合として、オイラー差分を使うと
式(7)
【0065】
【数7】 となる。実際に、実施形態で使用しているのはシンプレ
クティック数値解法等の運動の保存性に立脚した計算方
法を取っているが、式(7)に現れるような、時間間隔
の誤差の問題は同様に起きる。
【0066】課題で説明したように、時間間隔Δtは小
さければ小さい程、微分方程式(6)に近付く。しかし
ながら、Δtを小さくすればする程、その比の逆数に比
例して、計算時間が増えることとなる。また、あまり小
さすぎると計算機内の浮動小数点の問題に遭遇すること
となる。
【0067】従って、Δtは有限の大きさにとどめる必
要がある。
【0068】他方、系の大きさは図9に示したように、
6桁近く異なっていることが判る。そのため、スケール
の小さい部分に合わせて、時間間隔を小さくとると、今
度はスケールの大きいところで、時間間隔が細かすぎ
て、問題が許容できる時間内に計算が終らなくなること
が判る。
【0069】したがって、本発明の電子軌道計算装置内
では、Δtを式(8)
【0070】
【数8】 としてΔtを可変にしている。但し、Δt0、及びE0は
基準となるパラメータでS01で入力する値であり、Δ
t0は時間の次元を持ち、E0は淀み点近傍での時間スケ
ールを決定するパラメータである。
【0071】このΔtを使用して、実際には、シンプレ
クティック数値解法を使用して、模擬電子の運動を計算
し、Δt後の電子の位置を計算している(S205)。
シンプレクティック数値解法に関しては、「数理科学N
o.384JUNE1995年p37−p46,吉田春
夫」に詳しく述べられている。
【0072】また、例えば、エネルギー保存を課した差
分スキーム(「電子情報通信学会論文誌A Vol J
71−A No.3 p.778−784 1988
年、前田茂、和田聖治」の記ことを参照)等の方法を使
ってもよい。
【0073】もちろん、通常のルンゲクッタ法等を使用
してもよい。しかしながら、エネルギー保存あるいはシ
ンプレクティックな保存等に立脚した差分法がこのよう
なスケールの異なる問題には適当であることが知られて
いる。
【0074】このように求めた模擬電子のΔt後の位置
が、領域外にあるか否かを判定する。つまり、模擬電子
が境界を交差したか否かを見る。(S206)、もし領
域内にあればs207に進む。つまり、模擬電子は、非
境界部(真空中)を運動していることを意味し、境界部
分に到達するまでは、真空中の与えられた静電場によっ
て力を受けて運動する。また、境界部にぶつかった場合
は、その境界部が模擬電子が散乱境界、即ち高電位薄膜
部表面であれば、そこで散乱をおこなう(S208)。
そうでなければ図4のS211に進む。散乱境界部でな
いと云うことは、吸収されることを意味し、S211で
その位置、速度、時刻等を算出する。本実施形態の場合
のモデルとなった実際の物理系においては、引き上げ電
極表面あるいは、高電位薄膜部と低電位薄膜部間の亀裂
内部を意味する。後者は数的に非常に少ないので無視す
る。
【0075】従って、本発明の電子軌道計算装置内にお
いては、散乱境界に入射してきた模擬電子は模擬的にす
べて散乱させることにし、その代わりに模擬電子に付随
したデータとして、実数の重みqを付加し、散乱位置で
の入射電子数分の散乱電子の数であるところの散乱確率
を掛けることによって、複数個の電子の代表としての意
味を模擬電子に与えることとする。このことによって、
シミュレータとしての精度は格段に向上することとな
る。計算機内の(x,y,z,u,v,w,t)の値
は、模擬電子を特徴づけるパラメータであり、x,y,
zはそれぞれ、模擬電子のx方向、y方向、z方向の位
置を示し、u,v,wは、模擬電子のx方向、y方向、
z方向の速度成分を示し、tは、初期時間をゼロとした
時の模擬電子の時間を表す。従来の電子軌道計算におい
ては、模擬電子は、x,y,z,u,v,w,tの7つ
のパラメータで指定されていたのに対して、本発明の電
子軌道計算装置内の模擬電子は、それらに、重みqを付
け加えた8つのパラメータで指定される。重みは、初期
状態において1になるようにしておき、散乱する度に、
散乱確率を掛けることによって、重みを減少するように
している。
【0076】このように、本発明の電子軌道計算装置に
おいては、模擬電子は、散乱境界上ですべて散乱され、
その点での散乱分布に従って、散乱方向、初期運動エネ
ルギーを乱数によって与える。つまり、図4のS209
で、散乱位置、(速度)、時刻を特定した後に、S21
0で重みを変更し、求めた散乱位置で、乱数によって散
乱分布に従って、S203で乱数を発生させ、模擬電子
の初速を生成し、再射出させる。この時、入射してきた
時の入射の際の運動エネルギー、方向に依存して散乱す
なわち、最射出の初期速度を決定してもよい。
【0077】このようにして、I番目の模擬電子が非散
乱境界(ディテクターその他に相当)に入射するまで、
繰り返される。但し、場合によっては、模擬電子に付随
する重みが極端に小さくなった際には、その後のI番目
の模擬電子に関する。
【0078】境界部が模擬電子が散乱をする境界部即
ち、高電位薄膜部表面であれば、上述の通り、等方に模
擬電子を散乱させる。更に、模擬電子に付随したデータ
として付加した実数の重みを変化させる。本実施形態で
は、散乱確率は20%としている。従って、計算機内に
仮想的に存在する模擬電子の重みは、初期状態で1とし
て1回散乱する度に0.2を掛けることとなる。散乱位
置での入射電子数分の散乱電子の数であるところの散乱
確率を掛けることによって、複数個の電子の代表として
の意味を模擬電子に与えることとする。このことによっ
て、シミュレータとしての精度は格段に向上することと
なる。
【0079】このようにして、I番目の模擬電子が非散
乱境界(ディテクターその他に相当)に入射するまで、
繰り返される。
【0080】I番目の模擬電子に関する計算が終了する
と、図3のS14,S16に従ってI+1番目の模擬電
子に関する電子軌道計算を始めることとなる。
【0081】最終的には、引き上げ電極にどれだけの重
みを持った模擬電子が何本、どの位置に入射したかの情
報が本発明の電子軌道計算装置によって計算されること
となる。計算の過程における軌道と電位分布の一部をモ
ニター6に出力したものが図5である。したがって、そ
れらの重みを、相当する電子の個数に再び換算し、実際
の電子の軌道を予想、あるいは比較できることとなっ
た。
【0082】表面伝導型電子放出素子を用いた電子放出
装置特有の性質をもった系に対して効率よく、その放出
電子の軌道を再現する電子軌道計算装置が提供された。
【0083】実際、Δtを可変にすることによって、ワ
ークステーションで、20時間程度かかっていた計算が
ほぼ同一精度で、2時間で終わるようになった。
【0084】上述の実施形態において、式(8)の代わ
りに以下のような計算手法を取ってみた。
【0085】まず、第1には、系が回転電界と縦電界と
の線形和によって表されていることを利用して、式
(9)
【0086】
【数9】 とした。この場合は、淀み点においても、時間間隔はほ
ぼ系の状況にあったものとなっており、パラメータの数
がE0の分減っており、現実の問題を計算するのに簡便
となる。
【0087】また、負の勾配領域を抜けると電子はほぼ
放物運動をすることがわかる。そのような単純な運動に
対しては時間の精度はそれほど必要でないので、Δtを
負の勾配領域の数倍の領域で場合を分けて、領域A内で
は、式(8)あるいは式(9)を適用し、それ以外のほ
ぼ放物運動する領域では、式(10)
【0088】
【数10】 としてもよい。即ち、式(11)
【0089】
【数11】 または、式(12)
【0090】
【数12】 としてもよい。本実施形態においては、α=5.0とし
た。また、領域Aの定義の仕方であるが、亀裂中央から
の距離を尺度にして、亀裂中央からの距離がxsの数倍
(例えば5倍)以下をAとしてもよい。
【0091】このようにすると更に、計算時間が短縮さ
れた。
【0092】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、ス
ケールの異なる場合の系でかつ、淀み点をもつ系に対し
ても自動的に時間を可変にでき、電子の軌道計算を精度
よくかつ、短時間に計算することができるようになっ
た。
【0093】このことにより、電子の真空中での軌道を
利用した装置の設計、開発が効率よくできるようにな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の計算を行うためのコンピュータシ
ステム。
【図2】本発明方法のフローチャート。
【図3】N個の電子の軌道計算を行う本発明方法のフロ
ーチャート。
【図4】電子軌道計算の詳細なフローチャート。
【図5】表面伝導型電子放出素子の電極配置の説明図。
【図6】引き上げ電極の配置を説明する図。
【図7】表面伝導型電子放出素子の製造工程図。
【図8】表面伝導型電子放出素子の基本特性を示すグラ
フ。
【図9】表面伝導型電子放出素子の電界分布を説明する
図。
【符号の説明】 1 基板 2,3 素子電極 4,5 電子放出部を含む薄膜 6 亀裂 7 電子放出部形成用薄膜 10 電源 11,14 電流計 12 引き上げ電極 13 高圧電源 15 真空ポンプ 16 真空装置

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 与えられた電界の下で、微少時間後の荷
    電粒子の位置を計算するためのコンピュータによる荷電
    粒子軌道計算方法であって、 前記電界の大きさに応じて、前記微小時間を時刻ごとに
    変化させ、ニュートン方程式を解いて、前記荷電粒子の
    位置を計算することを特徴とするコンピュータによる荷
    電粒子軌道計算方法。
  2. 【請求項2】 前記荷電粒子の位置に応じて、前記微小
    時間を時刻ごとに変化させることを特徴とする請求項1
    記載のコンピュータによる荷電粒子軌道計算方法。
  3. 【請求項3】 電子放出素子と引き上げ電極とを有する
    系において、電子の位置を計算するためのコンピュータ
    による電子軌道計算方法であって、 前記電子放出素子は、基板上に形成された一対の素子電
    極と、 前記一対の素子電極との間に形成された電子放出部とを
    有し、 前記引き上げ電極は、前記電子放出素子から放出された
    電子を引き上げるために、前記基板上の平均電位より高
    電位に保持されており、 微少時間後の荷電粒子の位置を計算する際には、前記電
    界の大きさに応じて、前記微小時間を時刻ごとに変化さ
    せ、ニュートン方程式を解いて、前記電子の位置を計算
    することを特徴とするコンピュータによる電子軌道計算
    方法。
  4. 【請求項4】 前記電子の位置に応じて、前記微小時間
    を時刻ごとに変化させることを特徴とする請求項3記載
    のコンピュータによる電子軌道計算方法。
  5. 【請求項5】 与えられた電界の下で、微少時間後の荷
    電粒子の位置を計算するための荷電粒子軌道計算処理プ
    ログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒
    体であって、 前記電界の大きさに応じて、前記微小時間を時刻ごとに
    変化させ、ニュートン方程式を解いて、前記荷電粒子の
    位置を計算する手順を記録したことを特徴とする荷電粒
    子軌道計算処理プログラムを記録したコンピュータ読み
    取り可能な記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記荷電粒子の位置に応じて、前記微小
    時間を時刻ごとに変化させる手順を記録したことを特徴
    とする請求項5記載の荷電粒子軌道計算処理プログラム
    を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  7. 【請求項7】 電子放出素子と引き上げ電極とを有する
    系において、電子の位置を計算するための電子軌道計算
    処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な
    記録媒体であって、 前記電子放出素子は、基板上に形成された一対の素子電
    極と、 前記一対の素子電極との間に形成された電子放出部とを
    有し、 前記引き上げ電極は、前記電子放出素子から放出された
    電子を引き上げるために、前記基板上の平均電位より高
    電位に保持されており、 微少時間後の電子の位置を計算する際には、電界の大き
    さに応じて、前記微小時間を時刻ごとに変化させ、ニュ
    ートン方程式を解いて、前記電子の位置を計算する手順
    を記録したことを特徴とする電子軌道計算処理プログラ
    ムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  8. 【請求項8】 前記電子の位置に応じて、前記微小時間
    を時刻ごとに変化させる手順を記録したことを特徴とす
    る請求項7記載の電子軌道計算処理プログラムを記録し
    たコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006032202A (ja) * 2004-07-20 2006-02-02 Hitachi High-Technologies Corp 荷電粒子線装置
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