JPH11316942A - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法

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JPH11316942A
JPH11316942A JP13754598A JP13754598A JPH11316942A JP H11316942 A JPH11316942 A JP H11316942A JP 13754598 A JP13754598 A JP 13754598A JP 13754598 A JP13754598 A JP 13754598A JP H11316942 A JPH11316942 A JP H11316942A
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nitrogen
magnetic
plasma treatment
treatment
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Shojiro Miyake
正二郎 三宅
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保護膜の厚さが数nm程度の超薄膜でありな
がら、高い硬度と耐摩耗特性を兼ね備えた磁気記録媒体
及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の磁気記録媒体は、窒素プラズマ
処理された傾斜層を表面に有する磁性膜と、該磁性膜の
表面上に設けた窒化含有カーボンからなる保護膜とを具
備することを特徴とする。本発明の磁気記録媒体の製造
方法は、磁性膜の表面を少なくとも窒素を含むガスを用
いてプラズマ処理した後、該磁性膜の表面上に窒化含有
カーボンからなる保護膜をスパッタ成膜することを特徴
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録媒体及びその
製造方法に係る。より詳細には、厚さが数nmオーダー
の極薄保護膜でも、優れた耐摩耗特性を有する磁気記録
媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録においてさらに高記録密度化を
図るためには、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間の実効
隙間をできるだけ小さくする必要がある。このため、磁
気ヘッドと磁気記録媒体の接触に起因するトライボロジ
カルな信頼性が課題となる。このトライボロジカルな課
題を克服できれば、最終的には磁気ヘッドを磁気記録媒
体に接触させた状態で記録再生する、接触記録が有利に
なる。最近、このような接触記録を前提とするコンタク
ト、ニアコンタクト方式の磁気記録装置が提案、開発さ
れている。しかし、この接触記録を採用する場合、磁気
記録装置の信頼性を確保するため、磁気ヘッドや磁気記
録媒体において、現在よりも極薄層の表面改質技術の開
発が必須である。
【0003】一方、磁気記録媒体の保護膜としては、ス
パッタカーボン膜が多用されており、更に水素含有カー
ボン膜、窒素含有カーボン膜[(C−N)膜と略記する
場合もある]など各種元素を添加するもとにより特性が
改善されている。その中でも、窒素を含有したカーボン
膜は、理論的にダイヤモンドの容積弾性率を超えること
が予測されている窒化炭素C34の形成を期待できるこ
ともあり、注目されている。本発明者は、反応性イオン
プレーティング法によって窒素含有カーボン膜を形成
し、走査型プローブ顕微鏡によるマイクロスクラッチ硬
さが窒素含有によって8倍程度向上することを報告[S.
Miyake.et.al.:Appl.Phys.Lett.,65,25(1994)3206]
し、更にイオン注入によるC−N膜のマイクロトライボ
ロジ特性に与える影響など基本的特性を明らかにした
[S.Miyake.et.al.:Nucl.Instr and Meth.in Phys.Res
B122(1997)643]。
【0004】磁気記録装置において磁気ヘッドと磁気記
録媒体の対向面の距離である、実効隙間を低減するため
には、磁気的ロスとなる保護膜の厚さを減らす必要があ
る。しかしながら、保護膜を数nm程度にすると原子数
十個程度の厚さになるため、摩擦摩耗に原子の粒子性が
出てくると考えられる。従って、保護膜だけでトライボ
ロジカルな耐久性を維持するのは困難な状況にあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高記録密度
化を図るために、保護膜の厚さが数nm程度の超薄膜で
ありながら、高い硬度と耐摩耗特性を兼ね備えた磁気記
録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、窒素プラズマ処理された傾斜層を表面に有する磁性
膜と、該磁性膜の表面上に設けた窒化含有カーボンから
なる保護膜とを具備することを特徴とする。
【0007】上記構成によれば、磁性膜上に傾斜組成的
な保護膜(上記傾斜層を含めた保護膜を指す)を形成し
たことになるので磁性膜上に不連続な保護膜を形成した
従来の構成に比べて、保護膜表面における摩擦係数が減
少し、スクラッチによる耐荷重性能及びマイクロ摩耗特
性が著しく向上する。その結果、トライボロジ特性に優
れた磁気記録媒体が得られる。
【0008】上記特徴により、保護膜の厚さを数nmオ
ーダーとしても十分に機械的な特性を維持することが可
能となる。また、上記磁性層としてはCoCrTa合金
が好適である。
【0009】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、磁性
膜の表面を少なくとも窒素を含むガスを用いてプラズマ
処理した後、該磁性膜の表面上に窒化含有カーボンから
なる保護膜をスパッタ成膜することを特徴とする。
【0010】上記方法によれば、窒素プラズマ処理され
た傾斜層を表面に有する磁性膜と、該磁性膜の表面上に
設けた窒化含有カーボンからなる保護膜とを具備する磁
気記録媒体を安定して作製することができる。
【0011】上記方法において、保護膜を形成する際、
スパッタリングガスとして窒素ガス又は窒素とヘリウム
を混合したガスを用いることが好ましい。特に、後者の
混合ガスを用いたとき、最も優れたトライボロジ特性が
得られる。
【0012】また上記方法において、保護膜を形成する
際、磁性膜に高周波電力を印加することによって、トラ
イボロジ特性をさらに改善することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を本発
明をなすに際して得た知見、その作用等とともに説明す
る。
【0014】図1に示すRFスパッタ装置を用いて、基
板上に設けられたCoCrTa合金からなる磁性膜の表
面に対して窒素プラズマ処理をした試料と、窒素プラズ
マ処理後した試料1の上に、保護膜として窒素含有カー
ボン膜[以下では、(C−N)膜と呼称する]を反応性
スパッタ法により形成した試料を、それぞれ作製した。
これら2種類の試料のビッカース硬さHvや摩擦係数μ
などを、未処理の試料(基板上に設けられたCoCrT
a合金からなる磁性膜)と比較検討した。
【0015】図1のスパッタ装置において、100は減
圧可能な真空容器、101は(C−N)膜作製用ターゲ
ット、102はRF電極、103は冷却水管、104は
高周波電源、105は基板、106は基板ホルダ、10
7はRF電極、108は冷却水管、109は高周波電
源、110はシャッター、111は駆動軸、112は真
空計、113は2系統のガス導入管、114はリークバ
ルブ、115は真空排気装置である。
【0016】表1には、磁性膜の表面改質を図るため、
窒素プラズマ処理を検討した際の各設定条件、(C−
N)膜RFスパッタ処理を検討した際の各設定条件、及
び、これらの検討結果に基づき複合処理した際の各設定
条件、を纏めて示した。
【0017】
【表1】
【0018】磁性膜の表面改質を目的とした窒素プラズ
マ処理は、磁性層であるCoCrTaとの表面反応によ
り、高硬度であるCrN、TaNの生成を期待して行っ
た。磁性膜の窒素プラズマ処理は、減圧した真空容器1
00内にガス導入管113から雰囲気ガスとして窒素を
導入し、圧力を7×10-2Torrに調整した後、基板10
5側にのみ高周波電源109からRF電力を印加するこ
とにより行った。その際、基板側RF電力を25〜40
0Wの範囲で変化させて、その依存性を調べた。
【0019】(C−N)膜RFスパッタ処理では、ガス
導入管113から窒素を含んだ雰囲気ガスを真空容器1
00内に導入し、圧力を7×10-2Torrに調整した後、
カーボンターゲット101をRFスパッタリングするこ
とによって、磁性膜の表面上に(C−N)膜を形成し
た。その際、雰囲気ガスとしては、2種類のガス(窒素
ガスのみ、窒素とヘリウムの混合ガス)を検討した。窒
素とヘリウムの混合ガスの場合は、分圧を窒素:ヘリウ
ム=1:1に制御した。また、基板側RF電力の依存性
(0〜100W)も検討した。
【0020】複合処理では、上記窒素プラズマ処理を終
えた磁性層の表面上に、上記(C−N)膜RFスパッタ
処理により(C−N)膜を形成した。その際、後述する
ところ形状評価の結果に基づき、処理後の磁性膜に形成
される変質層(傾斜層)が比較的浅く、磁気特性への影
響がないと考えられる条件、すなわち、窒素プラズマ処
理における基板側RF電力は25W、(C−N)膜RF
スパッタ処理における基板側RF電力は25Wという条
件を主に検討した。
【0021】ここで形成した(C−N)膜の厚さは、膜
特性が安定し、硬さなどの機械的物性値の評価を容易に
するため約30nmとした。
【0022】[窒素プラズマ処理した磁性膜の表面の形
状評価]表面改質した磁性膜の表面モルフォロジーの変
化を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
【0023】図2は、窒素プラズマ処理の前後で観測し
た磁性膜の表面モルフォロジーである。(a)は窒素プ
ラズマ処理前(未処理と表記)、(b)は基板側RF電
力=50Wで窒素プラズマ処理した後(50Wと表
記)、(c)は基板側RF電力=200Wで窒素プラズ
マ処理した後(200Wと表記)を示す。図2から、磁
性膜の表面の凹凸形状は、未処理(a)と比べ投入電力
50W(b)ではほとんど変化しないが、投入電力20
0W(c)では急激に増加することが分かった。
【0024】図3は、磁性膜の表面粗さRmaxとRF電
力との関係を示すグラフである。図3より、Rmaxは、
投入電力が100W程度までほとんど変化せず、200
W以上で急激に増大し、それ以上でほぼ一定(20〜2
5nm)となる傾向があることが確認された。
【0025】オージェ電子分光法(AES)の測定結果
によれば、200WではCoCrTa磁性層がエッチン
グによって数nm除去されており、400WではCoC
rTa磁性層がほぼ完全にエッチングされ、磁性膜の下
地のCr層に達していることが分かった。これに対し
て、50W以下ではエッチングはほとんど生じていない
ことが確認された。従って、磁気特性の劣化を防ぐため
には、50W以下のプラズマ処理が好ましいと判断し
た。磁性膜をこの条件で処理して得られた変質層(傾斜
層)は、AESで内部に窒素が検出されないことから、
本発明者は変質層(傾斜層)の厚さが非常に浅いと考え
た。
【0026】[窒素プラズマ処理、(C−N)膜RFス
パッタ処理、又は、複合処理した面の硬さ評価]超微小
硬度計を用い、表面改質した磁性膜のビッカース硬さを
押し付け荷重50mN、荷重時間10sで測定した。こ
の場合の圧子侵入深さは280〜500nmとなってお
り、処理層厚さに比べて著しく大きく、下地を含めた処
理層のマクロな硬さが得られる。
【0027】図4は、各処理を行った表面のビッカース
硬さHvを示すグラフであり、(a)は窒素プラズマ処
理面の硬さ、(b)は(C−N)膜RFスパッタ処理面
の硬さ、(c)は複合処理面の硬さである。各グラフに
は、上記3つの処理を行っていない磁性膜の結果(未処
理と表記)も合わせて示した。
【0028】窒素プラズマ処理した磁性膜の硬さを示す
図4(a)からは、投入電力の増加に伴い硬さが大きく
なり、200W、300WでHv=1000程度、更に
400WではHv=1600まで増大することが分かっ
た。しかしながら、上述したASEの評価結果に基づ
き、400Wでは磁性層がエッチングされ、下地のCr
の窒化物が形成されていると本発明者は推定した。
【0029】一方、図4(b)に示すように、(C−
N)膜RFスパッタ処理によっても硬さは増加すること
が分かった。基板を通じて磁性膜にRFバイアス電力
(Wsと表記)を100W投入した場合と投入しない場
合を比較するとその差は小さいが、バイアス電力を25
〜50W投入した場合に硬さが増大する傾向が確認され
た。また、導入ガスとしてN2ガスと(N2+He)ガス
を比較すると、磁性膜への投入電力量に依存せず(N2
+He)ガスの方が硬くなることが見出された。これは
He導入によるプラズマ励起の効果と、本発明者は考え
た。
【0030】図4(c)から、窒素プラズマ処理と(C
−N)膜RFスパッタ処理とを組み合わせた複合処理
は、硬さを著しく増大させる効果があることが分かっ
た。この場合、窒素プラズマ処理の電力は25Wと低
く、それだけでは効果は小さいが、窒素プラズマ処理後
に(C−N)膜を形成することにより著しく改善できる
ことが判明した。
【0031】[窒素プラズマ処理、(C−N)膜RFス
パッタ処理、又は、複合処理した面に対する摩擦試験]
各処理後の面に対して以下に示す2種類の摩擦試験を行
った。
【0032】往復型摩擦試験装置を用い、低荷重(2
0〜200mN)における摩擦係数の摩擦回数依存性を
調べた。その際、相手圧子にアルチック(Al23Ti
C)球(φ2.3mm)を用い、無潤滑で評価した。
【0033】油圧駆動式の往復型摩擦試験装置を用
い、高荷重(500mN)における摩擦係数の摩擦回数
依存性を測定した。その際、相手圧子としてダイヤモン
ド圧子(φ2mm)を用い、無潤滑で評価した。
【0034】図5は、荷重200mNにおける窒素プラ
ズマ処理面の摩擦係数μと摩擦回数との関係を示すグラ
フである。比較のため、窒素プラズマ処理前の磁性層表
面の摩擦係数を●印(未処理と表示)で示した。図5か
ら、未処理の磁性膜表面ではμ=0.5程度の値を示す
のに対して、窒素プラズマ処理をすることによって摩擦
係数が減少し、特に適切な条件ではμ=0.1程度まで
減少することが確認された。
【0035】図6は、窒素プラズマ処理面の摩擦痕形状
を示す写真であり、(a)は窒素プラズマ処理前(未処
理と表記)、(b)は基板側RF電力=25Wで窒素プ
ラズマ処理した後(25Wと表記)、(c)は基板側R
F電力=50Wで窒素プラズマ処理した後(50Wと表
記)を示す。図6から、未処理の磁性膜は凝着痕が見ら
れ損傷が著しいのに対して、窒素プラズマ処理すること
によって凝着痕は減少傾向を示し、特に50W以上では
凝着痕がほとんど発生しないことが分かった。
【0036】図7及び図8は、窒素プラズマ処理、(C
−N)膜RFスパッタ処理、又は、複合処理した面の摩
擦係数μと摩擦回数との関係を纏めて示したグラフであ
り、図7には(C−N)膜RFスパッタ処理する際のバ
イアス電圧Wsを0Wとした場合の結果を、図に8はW
sを25Wとした場合の結果を、それぞれ示した。図7
と図8において、●印は窒素プラズマ処理前(未処理と
表記)、▲印は基板側RF電力=25Wで窒素プラズマ
処理した面(窒素プラズマ処理、25Wと表記)、■印
は窒素ガスを用いて(C−N)膜RFスパッタ処理した
面(C−N窒素と表記)、▼印は窒素とヘリウムの混合
ガスを用いて(C−N)膜RFスパッタ処理した面(C
−N窒素+ヘリウムと表記)、★印は窒素ガスを用いて
複合処理した面(複合窒素と表記)、◆印窒素とヘリウ
ムの混合ガスを用いて複合処理した面(複合窒素+ヘリ
ウムと表記)、を示す。図7及び図8から、(C−N)
膜RFスパッタ処理によって摩擦係数は減少傾向を示す
が、部分的には未処理を越えた摩擦係数が観測された。
これに対して、複合処理した面の摩擦係数は、比較的低
い値を示すことが分かった。
【0037】図9には(C−N)膜RFスパッタ処理し
た面の摩擦痕形状を示す写真を、図10には複合処理し
た面の摩擦痕形状を示す写真を示した。但し、図10の
複合処理では、窒素プラズマ処理する際の基板側RF電
力を25Wとした。図9及び図10において、(a)は
(C−N)膜RFスパッタ処理する際に、RFバイアス
電力を印加せずに、窒素とヘリウムの混合ガスを用いた
場合(Ws=0W、N2+Heと表記)を、(b)は
(C−N)膜RFスパッタ処理する際に、RFバイアス
電力を25W印加しながら、窒素とヘリウムの混合ガス
を用いた場合(Ws=25W、N2+Heと表記)を示
した。
【0038】図9(a)から、プラズマ処理が無い磁性
膜の表面に、RFバイアス電力を印加せずに(C−N)
膜RFスパッタ処理をした場合には、表面保護膜の剥離
が生じていることが確認された。この結果より、(C−
N)膜は比較的硬さは大きいが、下地との付着力が小さ
いので摩擦耐久性が小さく、大きな損傷が発生したと、
本発明者は考えた。これに対して、(C−N)膜RFス
パッタ処理する際にRFバイアス電力を印加した場合
[図9(b)]、及び、複合処理した場合[図9(a)
又は(b)]は、損傷がほとんど無く、表面保護膜の剥
離も観測されないことから、下地との付着力が著しく改
善されたと判断した。
【0039】また、ダイヤモンド圧子を用いた高荷重
(500mN)における摩擦試験では、窒素プラズマ処
理、(C−N)膜RFスパッタ処理、複合処理とも、上
述した低荷重の結果と同様の傾向は見られるが、未処理
との差が小さくなっていた。また、磨耗痕の観察では、
高荷重では処理層は破壊されていることが確認された。
よって、高荷重の磨耗条件では処理層を設けた効果が少
なくなったと考えた。
【0040】[窒素プラズマ処理、(C−N)膜RFス
パッタ処理、又は、複合処理した面に対するスクラッチ
試験]各処理層の耐荷重性能を明らかにするため、揺動
型スクラッチ試験を行った。その際、表面の破壊荷重を
評価するため、試験時のAE(アコースティックエミッ
ション)を測定した。
【0041】図11は、スクラッチ試験の結果を示すグ
ラフである。ここで、横軸は荷重、縦軸は摩擦力であ
り、各曲線の傾きは摩擦係数μに対応する。図11にお
いて、未処理とは窒素プラズマ処理前の磁性膜表面の結
果であり、N2プラズマとは基板側RF電力を25Wと
して窒素プラズマ処理した磁性膜表面の結果である。ま
た、N2はRFバイアス電力を印加せずに、窒素ガスを
用いて(C−N)膜RFスパッタ処理した面の結果を、
2+HeはRFバイアス電力を印加せずに、窒素とヘ
リウムの混合ガスを用いて(C−N)膜RFスパッタ処
理した面の結果を示す。さらに、複合N2はRFバイア
ス電力を印加せずに、窒素ガスを用いて複合処理した面
の結果を、複合N2+HeはRFバイアス電力を印加せ
ずに、窒素とヘリウムの混合ガスを用いて複合処理した
面の結果である。図11において、横軸から各曲線に向
けて延びた直線と各曲線との交点は、AE急増点から求
めた限界荷重Wcを示す。図11から、未処理の場合μ
=0.4程度であるのに対して、窒素プラズマ処理(N
2プラズマ)及び(C−N)膜RFスパッタ処理(N2
2+He)ではμ=0.14〜0.2に減少し、更に
複合処理(複合N2、複合N2+He)では著しく小さく
なり、初期の摩擦係数はμ=0.1程度であることが分
かった。この結果から、複合処理は特に摩擦力低減効果
が大きく、摩擦係数を大幅に改善できることが明らかと
なった。
【0042】図12は、スクラッチ試験時に測定したA
E波形であり、(a)は窒素プラズマ処理前の磁性膜表
面の結果を、(b)は基板側RF電力=25Wで窒素プ
ラズマ処理した面の結果を、(c)RFバイアス電力を
印加せずに、窒素とヘリウムの混合ガスを用いて(C−
N)膜RFスパッタ処理した面の結果を、(d)はRF
バイアス電力を印加せずに、窒素とヘリウムの混合ガス
を用いて複合処理した面の結果を示す。図12から、A
E波形は表面の巨視的な破壊が生じたとき急増すること
が分かった。この表面に破壊が生じる時の荷重をAE急
増点から求め限界荷重Wcと定義した。表2にこの結果
を纏めて示した。未処理[図12(a)]に比べ窒素プ
ラズマ処理[図12(b)]や(C−N)膜RFスパッ
タ処理[図12(c)]では多少この限界条件が増大す
る。これに対して、複合処理[図12(d)]では6倍
以上も表面の破壊荷重が増加することが明らかとなっ
た。
【0043】図13は、スクラッチ試験の結果を示すグ
ラフであるが、(C−N)膜RFスパッタ処理と複合処
理において、RFバイアス電力を25W印加した点のみ
図11と異なる。他の点は、図11と同様である。(C
−N)膜RFスパッタ処理した場合は、処理する際のガ
スがN2、N2+Heの何れであっても、バイアスを印加
した方(図13)がバイアス無し(図11)より摩擦係
数が小さく、限界荷重が増大することから、バイアスの
効果が大きいことが判明した。一方、複合処理した場合
は、摩擦係数が安定して低く、特に処理する際のガスを
2+Heとしたとき限界荷重が著しく増大することが
分かった。
【0044】図14は、原子間力顕微鏡(AFM)を用
いて評価したマイクロ磨耗形状であり、(a)は窒素プ
ラズマ処理前の磁性膜表面の結果を、(b)は複合処理
した面の結果を示す。また(a)と(b)において、上
図が観測された三次元画像であり、下図が膜の表面プロ
ファイルを示すグラフである。図14から、複合処理す
ることによって、磨耗量が著しく低減することが確認さ
れた。
【0045】図15は、各処理後の面に対して、荷重を
変えてマイクロ磨耗深さを測定した結果を示すグラフで
ある。荷重は2種類(500nNと1000nN)検討
した。比較のため、窒素プラズマ処理前の磁性膜表面の
結果(未処理と表記)も示した。図15における各処理
の名称は、図13と同様である。
【0046】図15の荷重が1000nNの結果から、
スパッタリングによる(C−N)膜を形成することによ
り磨耗量が減少すことるが明らかとなった。さらに、複
合処理するとマイクロ磨耗特性は著しく改善され、磨耗
はほとんど検出されないことが分かった。ビッカース硬
さでは下地の影響を受けており、8%程度の差しか確認
できなかったが、AFMによるマイクロ磨耗試験では表
面改質層のみの情報が得られるので差を明瞭に観測する
ことができた。
【0047】図15に示すように、荷重を小さくした場
合(500nN)も同様の傾向が確認された。(C−
N)膜の形成によって磨耗が減少しており、耐マイクロ
磨耗特性の向上がしていることが分かった。この場合の
磨耗深さは、膜厚に比べて小さいことから、下地の影響
を受けることなく、膜の特性が十分反映された結果と判
断した。また、(C−N)膜を形成する際に窒素とヘリ
ウムの混合ガスを用いた方が、窒素ガスのみ用いた場合
に比べて磨耗深さが減少することも分かった。この傾向
は、ビッカース硬さの結果とも一致することから、窒素
にヘリウムを添加することにより、磨耗特性がより改善
できると考えた。さらに、複合処理した場合、その効果
は著しく、この荷重範囲では磨耗は検出されない程小さ
かった。複合処理における(C−N)膜の形成条件は、
前述した(C−N)膜の形成条件[すなわち(C−N)
膜RFスパッタ処理の条件]と同一であるが特に複合処
理の方が優れた効果が得られた。この結果から、磁性層
の表面に傾斜層を形成する窒素プラズマ処理は、その上
に設けた(C−N)膜の付着力を改善するだけではな
く、マイクロ磨耗特性の改善ももたらすことから、複合
効果としてその上に設けた(C−N)膜自体の強度も向
上させていることが明らかとなった。
【0048】上述した評価量、すなわち、微小領域にお
ける膜の硬さや摩耗特性は、磁気記録媒体の摺動面に対
する評価法として多用されている。従って、上記特性の
優れた複合処理された保護膜を有する磁気記録媒体、す
なわち、窒素プラズマ処理された傾斜層を表面に有する
磁性膜と、該磁性膜の表面上に設けた窒化含有カーボン
からなる保護膜とを具備する磁気記録媒体は、優れた硬
さと摩擦耐久性を有するとともに、摩擦係数やマイクロ
磨耗の低減を図ることが可能である。
【0049】[極薄化した保護膜に対するマイクロ磨耗
試験]以下では、数nmオーダーの極薄保護膜を形成
し、この保護膜に対して原子間力顕微鏡(AFM)を用
いて行ったマイクロ磨耗試験について述べる。但し、極
薄保護膜は上記複合処理を用いて形成した。すなわち、
窒素プラズマ処理された傾斜層を表面に有する磁性膜上
に、(C−N)膜の形成時間を15、30、45sec
とすることにより、厚さが3、6、9nmの保護膜を作
製した。マイクロ磨耗試験は、圧子としてダイヤモンド
触針を用い、荷重12000nNで、所定の走査回数
(1〜10回)で試料表面を摩擦した際の磨耗深さを評
価した。
【0050】図16は、極薄化した保護膜に対するマイ
クロ磨耗試験の結果を示すグラフでる。図16におい
て、C−Nは、窒素プラズマ処理をしない磁性膜上に
(C−N)膜を形成した試料である。複合aは、窒素プ
ラズマ処理をした磁性膜上に、RFバイアス電力を25
W印加しながら(C−N)膜を形成した試料である。複
合bは、窒素プラズマ処理をした磁性膜上に、RFバイ
アス電力を50W印加しながら(C−N)膜を形成した
試料である。
【0051】図16の走査回数1回の結果から、窒素プ
ラズマ処理を行わず窒素含有カーボン膜[すなわち(C
−N)膜]を形成した試料は、保護膜の厚さに依存せず
磨耗深さが25nm以上と大きいのに対して、複合処理
した場合(複合aと複合b)には磨耗深さが小さくな
り、特に複合bではその効果が著しいことが分かった。
また、図16の走査回数10回の結果においても、同様
の傾向が確認された。従って、本願発明に係る保護膜
は、その厚さを数nmオーダーとしても、優れた硬さ、
摩擦耐久性、及び耐マイクロ磨耗特性を兼ね備えている
ことが確認された。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、保護膜の厚さが数nm
程度の超薄膜でありながら、高い硬度と耐摩耗特性を兼
ね備えた磁気記録媒体及びその製造方法を提供すること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】RFスパッタ装置を示す模式的な断面図であ
る。
【図2】窒素プラズマ処理の前後で観測した磁性膜の表
面モルフォロジーである。(a)は窒素プラズマ処理前
(未処理と表記)、(b)は基板側RF電力=50Wで
窒素プラズマ処理した後(50Wと表記)、(c)は基
板側RF電力=200Wで窒素プラズマ処理した後(2
00Wと表記)を示す。
【図3】磁性膜の表面粗さRmaxとRF電力との関係を
示すグラフである。
【図4】各処理を行った表面のビッカース硬さHvを示
すグラフであり、(a)は窒素プラズマ処理面の硬さ、
(b)は(C−N)膜RFスパッタ処理面の硬さ、
(c)は複合処理面の硬さである。
【図5】荷重200mNにおける窒素プラズマ処理面の
摩擦係数μと摩擦回数との関係を示すグラフである。
【図6】窒素プラズマ処理面の摩擦痕形状を示す写真で
あり、(a)は窒素プラズマ処理前(未処理と表記)、
(b)は基板側RF電力=25Wで窒素プラズマ処理し
た後(25Wと表記)、(c)は基板側RF電力=50
Wで窒素プラズマ処理した後(50Wと表記)を示す。
【図7】窒素プラズマ処理、(C−N)膜RFスパッタ
処理、又は、複合処理した面の摩擦係数μと摩擦回数と
の関係を纏めて示したグラフであり、(C−N)膜RF
スパッタ処理する際のバイアス電圧Wsを0Wとした場
合の結果を示す。
【図8】窒素プラズマ処理、(C−N)膜RFスパッタ
処理、又は、複合処理した面の摩擦係数μと摩擦回数と
の関係を纏めて示したグラフであり、RFスパッタ処理
する際のバイアス電圧Wsを25Wとした場合の結果を
示す。
【図9】(C−N)膜RFスパッタ処理した面の摩擦痕
形状を示す写真である。
【図10】複合処理した面の摩擦痕形状を示す写真であ
る。
【図11】スクラッチ試験の結果を示すグラフであり、
(C−N)膜RFスパッタ処理及び複合処理において、
RFバイアス電力を印加しない場合を示す。
【図12】スクラッチ試験時に測定したAE波形であ
り、(a)は窒素プラズマ処理前の磁性膜表面の結果
を、(b)は基板側RF電力=25Wで窒素プラズマ処
理した面の結果を、(c)RFバイアス電力を印加せず
に、窒素とヘリウムの混合ガスを用いて(C−N)膜R
Fスパッタ処理した面の結果を、(d)はRFバイアス
電力を印加せずに、窒素とヘリウムの混合ガスを用いて
複合処理した面の結果を示す。
【図13】スクラッチ試験の結果を示すグラフであり、
(C−N)膜RFスパッタ処理及び複合処理において、
RFバイアス電力を25W印加した場合を示す。
【図14】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価した
マイクロ磨耗形状であり、(a)は窒素プラズマ処理前
の磁性膜表面の結果を、(b)は複合処理した面の結果
を示す。
【図15】各処理後の面に対して、荷重を変えてマイク
ロ磨耗深さを測定した結果を示すグラフである。
【図16】極薄化した保護膜に対するマイクロ磨耗試験
の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
100 真空容器、 101 (C−N)膜作製用ターゲット、 102 RF電極、 103 冷却水管、 104 高周波電源、 105 基板、 106 基板ホルダ、 107 RF電極、 108 冷却水管、 109 高周波電源、 110 シャッター、 111 駆動軸、 112 真空計、 113 2系統のガス導入管、 114 リークバルブ、 115 真空排気装置。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒素プラズマ処理された傾斜層を表面に
    有する磁性膜と、該磁性膜の表面上に設けた窒化含有カ
    ーボンからなる保護膜とを具備することを特徴とする磁
    気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記保護膜の厚さが、数nmオーダーで
    あることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記磁性膜が、CoCrTa合金である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒
    体。
  4. 【請求項4】 磁性膜の表面を少なくとも窒素を含むガ
    スを用いてプラズマ処理した後、該磁性膜の表面上に窒
    化含有カーボンからなる保護膜をスパッタ成膜すること
    を特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記保護膜を形成する際、スパッタリン
    グガスとして窒素ガス又は窒素とヘリウムを混合したガ
    スを用いることを特徴とする請求項4に記載の磁気記録
    媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記保護膜を形成する際、前記磁性膜に
    高周波電力を印加することを特徴とする請求項4又は5
    に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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