JPH11310602A - 新規多糖誘導体、その製造法及びそれを有効成分とする医薬組成物 - Google Patents

新規多糖誘導体、その製造法及びそれを有効成分とする医薬組成物

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JPH11310602A
JPH11310602A JP4933599A JP4933599A JPH11310602A JP H11310602 A JPH11310602 A JP H11310602A JP 4933599 A JP4933599 A JP 4933599A JP 4933599 A JP4933599 A JP 4933599A JP H11310602 A JPH11310602 A JP H11310602A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗血液凝固活性が低く、神経突起伸長促進活
性及びシアリダーゼ阻害活性を有するグリコサミノグリ
カン誘導体、その製造法およびをれを有効成分とする医
薬組成物を提供する。 【解決手段】 ヘキソサミンとヘキスロン酸の二糖の繰
り返し構造を基本骨格として有し、部分的にその構成単
糖であるヘキスロン酸の2位と3位の炭素原子間が開裂
しており、更に開裂していないヘキスロン酸の2位の水
酸基の一部又は全部が硫酸基で置換されていない新規グ
リコサミノグリカン誘導体及びその塩、グリコサミノグ
リカンの2位に硫酸基を有しないヘキスロン酸の2−3
位間の炭素原子結合の開裂処理及びヘキスロン酸の2位
−硫酸基の選択的な脱硫酸化処理からなる該グリコサミ
ノグリカン誘導体の製造法並びに該グリコサミノグリカ
ン誘導体を有効成分とする医薬組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、神経突起伸張活性
及びシアリダーゼ阻害活性を有する新規グリコサミノグ
リカン誘導体又はその塩、その製造法並びに当該グリコ
サミノグリカン誘導体又はその塩を有効成分とする医薬
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】神経疾患は、神経細胞の成長が抑制され
ること、神経細胞が虚血による糖の供給量低下又は細胞
内のエネルギー代謝阻害によって維持されなくなり壊死
を起こすこと、又は神経伝達物質が分解され、神経伝達
が阻害されることに起因する。故にこの疾患の治療とし
ては、神経細胞の成長を維持すること、神経細胞の虚血
を防ぐこと、又は神経細胞内のエネルギー代謝を維持す
ることを目的としてなされてきた。即ち、神経細胞の成
長活性を有する物質である神経栄養因子(神経成長因
子:NGF、脳由来神経栄養因子:BDNF、毛様体神経栄養因
子:CNTF、線維芽細胞増殖因子:FGFなど)を外部から投
与すること又は神経栄養因子の合成を促進すること、ア
ルドース還元酵素阻害剤を適用することによりアルドー
ス還元酵素の活性によって生じるソルビトールの過剰生
成による神経細胞の虚血及び神経細胞内でのエネルギー
代謝の低下を防止すること、及びアセチルコリンエステ
ラーゼ阻害剤を投与することによりアセチルコリンの分
解を防止して神経細胞の伝達を維持することが神経疾患
に対する根本的方策とされている。しかし、投与する物
質の純度に起因する抗原性、酵素活性を阻害することに
よる副作用及び投与する物質そのものが有する毒性など
が問題点となっている。
【0003】ところで、グリコサミノグリカンには神経
突起伸張を促進する活性があることが知られている(J.
Cell Physiol.,135,293-300(1988))。またヘパリン並
びにその誘導体である過ヨウ素酸酸化還元ヘパリン及び
過硫酸化ヘパリンは神経突起伸長活性を持つことが知ら
れており、外傷性、虚血性及び毒性末梢神経障害の治療
に有効であることが知られている(特開平6-157322)
が、医薬品として利用する上での上記疾患を抑制するの
に充分な活性を有する物質は未だ得られていない。
【0004】一方、現在抗ウイルス剤、特にインフルエ
ンザ治療剤としては、例えばGS4104(WO96/26933)やザ
ナミビル(zanamivir:4-guanidino-Neu4Ac2en:特表平
5-507068)等のシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)阻害
剤が有効であることが一般に知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ヘパリン及びその誘導
体は生体物質であるため抗原性が低いが、抗血液凝固活
性が高いため医薬品として使用する際の用途及び濃度が
大幅に限定されていた。一般にヘパリンを体内へ投与す
る場合は、その抗血液凝固活性の高さによる出血活性が
重大な問題点となっている。そこで、抗血液凝固活性が
低く、更に神経障害改善効果が増強された新たな物質が
期待されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題の解決に鑑み、
本発明者らは、血液に対する抗凝固活性が低く、優れた
神経障害改善効果を持つ物質を得ることを目的として鋭
意検討した結果、特定の構造を有するグリコサミノグリ
カン誘導体が高い神経突起伸長活性、すなわち神経障害
改善活性を有することを見い出し、当該物質は抗血液凝
固活性がヘパリンに比して大幅に低下していることを確
認することにより本発明を完成した。すなわち、ヘキソ
サミンとヘキスロン酸の二糖の繰り返し単位構造を基本
骨格として有し、部分的にその構成単糖であるヘキスロ
ン酸の2位と3位の炭素原子間は開裂しており、更に開
裂していないヘキスロン酸の少なくとも一部がその2位
に硫酸基を有しない、新規なグリコサミノグリカン誘導
体が、抗血液凝固活性が低く、しかも優れた神経突起伸
長活性を有することを見い出し、当該性質を利用するこ
とにより神経障害の改善に優れた効果を有する医薬組成
物を提供することを可能とした。また、更に本発明者ら
は、細胞死及び神経突起の退縮に際し、シアリダーゼ活
性が上がり、細胞膜上で神経栄養因子活性の維持、促進
に関わることが知られているガングリオシドが減少する
ことに基づき探索を進めた結果、上記新規なグリコサミ
ノグリカン誘導体が、驚くべきことに強いシアリダーゼ
阻害活性を有することを見出し、上記グリコサミノグリ
カン誘導体の当該阻害活性を利用したシアリダーゼ阻害
剤を提供することを可能とした。
【0007】本発明の第1の要旨は、以下の(a)、
(b)及び(c)の性質を有し、且つ(d)に記載の一
般式(1)で表される構造を、ヘキソサミンとヘキスロ
ン酸の繰り返し単位構造で形成される基本骨格1分子あ
たりに1以上有する新規グリコサミノグリカン誘導体又
はその塩である。 (a)グリコサミノグリカン分解酵素による分解と高速
液体クロマトグラフィーによる分析を組み合わせた二糖
分析により得られる二糖体組成において、2-デオキシ-2
-スルファミノ-4-O-(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-thre
o-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グル
コース(以下ΔDiHS-tri(U,6,N)Sとも記載する)のモル
%が0〜10%、2-デオキシ-2-スルファミノ-4-O-(4-デオ
キシ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-
スルホ-D-グルコース(以下ΔDiHS-di(6,N)Sとも記載す
る)のモル%が95〜70%であり、2-デオキシ-2-スルフ
ァミノ-4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-4-エノピラノ
シルウロン酸)-D-グルコース(以下ΔDiHS-NSとも記載
する)のモル%が5〜20%であること。 (b)標準血漿に最終濃度3μg/mlで添加して測定した
際の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が50秒
以下であること。 (c)重量平均分子量が9,000〜13,000 Da(ダルトン)
であること。 (d)一般式(1)
【0008】
【化5】
【0009】(但し、R1はH又はSO3Hであり、R2はCOCH3
又はSO3Hを示す。)
【0010】本発明の第2の要旨は、下記工程及び
を含む、上記(a)、(b)及び(c)の性質を有し、
且つ(d)に規定する特定構造を有する新規グリコサミ
ノグリカン誘導体の製造方法であり、第3の要旨は、該
グリコサミノグリカン誘導体を有効成分とする医薬組成
物及びシアリダーゼ阻害剤である。 ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し単位構造を
基本骨格とする硫酸化グリコサミノグリカンを開裂処理
して、その骨格中に存在する2位に硫酸基を有しないヘ
キスロン酸の少なくとも一部の2位と3位の炭素原子間
のみを開裂する工程、 ヘキスロン酸の2位の硫酸基を特異的に除去しうる
脱硫酸化手段により工程の生成物を脱硫酸化処理し
て、2位に硫酸基を有する全ヘキスロン酸の90%以上の
当該硫酸基を脱硫酸化する工程。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明を更に詳説する。 本発明物質 本発明物質は上述の如く、(a)、(b)及び(c)の
性質を有し、且つ(d)に規定する特定構造を有する新
規グリコサミノグリカン誘導体である。
【0012】本明細書中における「ヘキソサミン」と
は、ヘキソース(六単糖)の2位炭素原子にアミノ基、
アセチルアミノ基又はスルホアミノ基を有し、6位ヒド
ロキシル基が硫酸化されていることもある単糖を指称
し、「ヘキスロン酸」とは、ヘキソースの6位炭素原子
がカルボキシル基を形成し、2位ヒドロキシル基が硫酸
化されていることもある単糖を指称し、「グリコサミノ
グリカン」とは、上記ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰
り返し単位で形成される構造を基本骨格とする多糖を指
称し、「硫酸化グリコサミノグリカン」とは、特に上記
グリコサミノグリカンのうち、硫酸基を有するヘキソサ
ミン又はヘキスロン酸を構成単糖として1以上有するグ
リコサミノグリカンであって、2位に硫酸基を有しない
ヘキスロン酸を少なくとも1以上構成単糖として有して
いる多糖を指称する。
【0013】なお、本発明における上記(a)のグリコ
サミノグリカン誘導体の二糖体組成は、後述する実施例
の試験法1に記載の二糖分析法による測定値から算出し
たものであり、また(c)の重量平均分子量は実施例の
試験法2に記載の分子量測定法による測定値である。更
に(b)のAPTTは実施例の試験法4に記載のAPTT測定法
による測定値である。
【0014】(a)に規定する二糖体組成は、試験法1
に記載の酵素消化と高速液体クロマトグラフィーを組み
合わせた二糖分析により特定が可能な下記一般式(7)
で示される不飽和二糖の総量[2-アセトアミド-2-デオ
キシ-4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-エノピラノシル
ウロン酸)-D-グルコース(以下ΔDiHS-0Sと記載す
る)、2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(4-デオキシ-α
-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-
D-グルコース(以下ΔDiHS-6Sと記載する)、2-デオキ
シ-2-スルファミノ-4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-4
-エノピラノシルウロン酸)-D-グルコース(ΔDiHS-N
S)、2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(4-デオキシ-2-O
-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-D
-グルコース(以下ΔDiHS-USと記載する)、2-デオキシ
-2-スルファミノ-4-O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-4-
エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコース
(ΔDiHS-di(6,N)S)、2-デオキシ-2-スルファミノ-4-O
-(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラ
ノシルウロン酸)-D-グルコース(以下ΔDiHS-di(U,N)S
と記載する)、2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(4-デ
オキシ-2-O-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシル
ウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコース(以下ΔDiHS-di
(U,6)Sと記載する)、2-デオキシ-2-スルファミノ-4-O-
(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-threo-hex-4-エノピラノ
シルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコース(ΔDiHS-tri
(U,6,N)S)のモル%の合計]を100%として、上記特定
の構造を持つ各不飽和二糖の割合を示したものであり、
当該数値は酵素消化前のグリコサミノグリカン誘導体の
硫酸基の位置及び数を反映するものである。
【0015】
【化6】
【0016】
【表1】 不飽和二糖 構造式の置換基 R1 R2 R3 ΔDiHS-0S H COCH3 H ΔDiHS-6S SO3H COCH3 H ΔDiHS-NS H SO3H H ΔDiHS-US H COCH3 SO3H ΔDiHS-di(6,N)S SO3H SO3H H ΔDiHS-di(U,N)S H SO3H SO3H ΔDiHS-di(U,6)S SO3H COCH3 SO3H ΔDiHS-tri(U,6,N)S SO3H SO3H SO3H
【0017】また、上記略号の示す構造は以下の通り表
記されることもある。 ΔDiHS-0S:ΔHexA1→4GlcNAc、ΔDiHS-6S:ΔHexA1→4
GlcNAc(6S)、ΔDiHS-NS:ΔHexA1→4GlcNS、ΔDiHS-U
S:ΔHexA(2S)1→4GlcNAc、ΔDiHS-di(6,N)S:ΔHexA1
→4GlcNS(6S)、ΔDiHS-di(U,N)S:ΔHexA(2S)1→4GlcN
S、ΔDiHS-di(U,6)S:ΔHexA(2S)1→4GlcNAc(6S)、ΔDi
HS-tri(U,6,N)S:ΔHexA(2S)1→4GlcNS(6S)。 上記式中、ΔHexAは不飽和ヘキスロン酸、GlcNAcはN-ア
セチルグルコサミン、GlcNSはN-硫酸化グルコサミン、
カッコ内は硫酸基の結合位置を示す。上記二糖分析法に
おいて生成する一般式(7)の構造を有する不飽和二糖
は、分析対象となるグリコサミノグリカンの基本骨格を
構成する一般式(3)及び(4)のヘキスロン酸残基と
一般式(6)のヘキソサミン残基が結合した一般式
(2)中の(A)−(B)の構造より生ずる。
【0018】本発明のグリコサミノグリカン誘導体は、
グリコサミノグリカンより誘導された特定の物性を有す
る新規多糖類であるが、便宜上グリコサミノグリカン誘
導体として本明細書中で記載する。本発明のグリコサミ
ノグリカン誘導体は、試験法1に記載の二糖分析法によ
る測定値から算出した二糖体組成のうちΔDiHS-tri(U,
6,N)Sのモル%が0〜10%、好ましくは0〜5%、より好ま
しくは2〜4%であり、ΔDiHS-di(6,N)Sのモル%が95〜7
0%、好ましくは90〜80%、より好ましくは82〜87%で
あり、更にΔDiHS-NSのモル%が5〜20%、好ましくは10
〜15%、より好ましくは11〜14%である硫酸化多糖であ
り、且つその重量平均分子量は試験法2に記載の分子量
の測定法による測定値が9,000〜13,000Da、より好まし
くは10,000〜12,000Daである。
【0019】また、本発明のグリコサミノグリカン誘導
体はヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し単位で形成
される構造を基本骨格とするグリコサミノグリカン誘導
体である。前記ヘキソサミンとしてはグルコサミン、ガ
ラクトサミン、マンノサミンなどが挙げられるが、D-グ
ルコサミンが好ましい。ヘキソサミンはアミノ基又は6
位ヒドロキシル基のうちの一方あるいは両方が硫酸化さ
れている、すなわちN−硫酸化及び/又は6−O−硫酸
化されていることが好ましいが、硫酸基を持たないヘキ
ソサミンであっても何ら支障はない。ヘキスロン酸とし
てはD-グルクロン酸、L-イズロン酸などが挙げられる。
ヘキスロン酸の一部はその2位と3位の炭素原子間で開裂
し、好ましくは酸化的開裂反応後、該開裂部位が還元さ
れており、開裂していないヘキスロン酸は、その2位の
ヒドロキシル基の一部又は全部が硫酸基で置換されてい
ないことが好ましい。そして基本骨格中の繰り返し単位
の中に上記開裂されたヘキスロン酸とヘキソサミンが結
合した前記一般式(1)で表される構造単位がグリコサ
ミノグリカン誘導体1分子あたり1以上存在する。
【0020】また、本発明グリコサミノグリカン誘導体
は、標準血漿に最終濃度3μg/mlで添加して測定した際
の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が50秒以
下である特性を有する。このような特性を有する本発明
グリコサミノグリカン誘導体は下記の一般式(2)で示
すことができる。
【0021】
【化7】 HO−[(A)−(B)]n-H (2)
【0022】ただし、(A)は下記一般式(3)で示さ
れるグルクロン酸残基、下記一般式(4)で示されるイ
ズロン酸残基、又は下記一般式(5)で示される開裂さ
れたヘキスロン酸残基であり、
【0023】
【化8】
【0024】(B)は下記一般式(6)で示されるヘキ
ソサミン残基をそれぞれ示す。
【0025】
【化9】
【0026】ただし、一般式(3)〜(6)においてR1
及びR3はそれぞれ独立にH又はSO3Hであり、R2はそれぞ
れ独立にCOCH3又はSO3Hを示す。また、一般式(2)に
おいて、nは15≦n≦40、好ましくは20≦n≦30を充たす
整数であり、(A)の少なくとも一つは一般式(5)の
残基であり、(B)の少なくとも一つは一般式(6)に
おいてR1及びR2の少なくとも一方がSO3Hで示され
るヘキソサミン残基である。
【0027】上記本発明のグリコサミノグリカン誘導体
(以下、本発明物質と称することもある)は、ヘキソサ
ミンとヘキスロン酸を基本骨格とし、硫酸基を有する糖
鎖の誘導体であれば、前記(a)〜(d)の特性を充足
する限り特に限定はされないが、ヘパラン硫酸又はヘパ
リンの誘導体が好ましく、特にヘパリンの誘導体が好ま
しい。本発明物質は、一部のヘキスロン酸が2位と3位の
炭素原子間で開裂した構造である。また、本発明物質を
構成する開裂していないヘキスロン酸の2位のヒドロキ
シル基の硫酸化率は10%未満であり、5%未満であるこ
とが好ましい。本発明グリコサミノグリカン誘導体は上
記一般式(2)で示すことができ、式中nは15≦n≦4
0、好ましくは20≦n≦30、すなわち30〜80糖残基、好ま
しくは40〜60糖残基を有する多糖である。また、本発明
物質の抗血液凝固活性は低く、健常人から採取した標準
血漿に最終濃度3μg/mlで添加して測定した際の活性化
部分トロンボプラスチン時間(APTT)が、特に50秒以下
であることが好ましい。
【0028】本発明物質のグリコサミノグリカン誘導体
は、実施例中のWistar系ラット大脳皮質神経細胞の初代
培養細胞を使用した神経突起伸張活性試験において、本
発明物質を培地中の最終濃度1μg/ml〜10μg/mlの濃度
範囲で添加、培養を行った場合に、標準ヘパリンと比し
て1.5倍以上の活性を有することが好ましい。また、本
発明物質は実施例に記載の方法で測定したシアリダーゼ
阻害活性、特にインフルエンザウイルスのシアリダーゼ
阻害活性が、公知のシアリダーゼ阻害剤や標準ヘパリン
に比し著しく強いものが好ましい。
【0029】本発明製造方法 本発明製造方法は、ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り
返し単位構造を基本骨格とし、ヘキスロン酸の一部はそ
の2位と3位の炭素原子間で開裂、好ましくは酸化的開裂
反応による開裂後、更に該開裂部位が還元され、未開裂
のヘキスロン酸の2位の硫酸基の大部分が脱硫酸化され
ているグリコサミノグリカン誘導体を製造するもので、
下記の及びの工程を含むことよりなる製造方法であ
る。 ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し単位構造を
基本骨格とする硫酸化グリコサミノグリカンを開裂処理
し、その2位に硫酸基を有しないヘキスロン酸の少なく
ともその一部を2位と3位の炭素原子間のみを開裂する工
程、 ヘキスロン酸の2位の硫酸基を特異的に除去しうる
脱硫酸化手段により工程の生成物を脱硫酸化処理し、
2位に硫酸基を有するヘキスロン酸の2位の硫酸基の90
%以上を脱硫酸化する工程。
【0030】1.硫酸化グリコサミノグリカン(原料) 本発明方法の硫酸化グリコサミノグリカンは、ヘキソサ
ミンとヘキスロン酸の繰り返し単位構造を基本骨格と
し、2位に硫酸基を有しないヘキスロン酸を少なくとも
1以上構成単糖として有している多糖である。前記硫酸
化グリコサミノグリカンとしては、例えばヘパリン、ヘ
パラン硫酸などが挙げられ、好ましいが、特に上記ヘキ
スロン酸の2位ヒドロキシル基の硫酸化率が高く、下記
工程によるヘキスロン酸の開裂が適度に抑えられるこ
とからヘパリンが好ましい。
【0031】2.工程:ヘキスロン酸の開裂処理 本発明方法における工程に記載の「開裂処理」とは、
硫酸化グリコサミノグリカンの構成単糖中、2位に硫酸
基を有しないヘキスロン酸の2位と3位の炭素原子間のみ
を特異的に開裂させる処理であれば特に限定はされない
が、具体的には酸化・還元反応処理が挙げられる。当該
酸化・還元反応処理は、酸化剤を用いた酸化反応により
上記特定のヘキスロン酸の2位と3位の炭素原子間を開
裂して酸化的開裂反応生成物を得た後、ヘキスロン酸の
開裂部に生じたアルデヒド基を還元反応処理により還元
する方法によって行われる。上記酸化剤としては本反応
の目的を達成することが可能な物質であれば特に限定は
されないが、過ヨウ素酸塩や過酸化水素などが挙げら
れ、その中でも特に過ヨウ素酸塩が好ましい。過ヨウ素
酸塩としては過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウ
ム等の過ヨウ素酸アルカリ金属塩が挙げられるが、過ヨ
ウ素酸ナトリウムが好ましい。
【0032】上記開裂処理として酸化・還元反応処理を
行う場合は、例えば過ヨウ素酸ナトリウムを0.01〜0.3
M、好ましくは0.05〜0.2Mの濃度で含有し、上記硫酸化
グリコサミノグリカンを0.5〜10%、好ましくは1〜7%
の濃度で含有する溶液中において、pHは3〜7、好ましく
は4〜5、処理温度は0〜37℃、好ましくは0〜10℃、さら
に好ましくは4℃の条件下、1日以上、好ましくは3日間
酸化反応を行う。酸化反応後、過剰の過ヨウ素酸ナトリ
ウムを、100〜500mMのエチレングリコールあるいはグリ
セリンなどを添加することによって還元反応により分解
する。その後、必要に応じて、蒸留水による透析を行っ
たり、さらに凍結乾燥あるいはエタノール沈澱法などの
方法を用いてヘキスロン酸の酸化的開裂反応生成物を得
ることができる。
【0033】その後、更に過ヨウ素酸酸化によってヘキ
スロン酸の開裂部に生成したアルデヒド基を還元してヘ
キスロン酸の酸化・還元反応処理を完了する。前記アル
デヒド基の還元は、還元剤として水素化ホウ素アルカリ
金属塩又は水素化アルミニウムリチウム等を使用して行
うことができるが、還元剤は特に水素化ホウ素アルカリ
金属塩が好ましく、水素化ホウ素ナトリウムが最も好ま
しい。還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場
合、例えば0.1〜0.5M、好ましくは0.2Mの水素化ホウ素
ナトリウムを含むpH8.5〜9.5の1〜20%、好ましくは5〜
10%の上記酸化的開裂反応生成物(w/v)を含む溶液を4
℃、3時間反応させることによって実施することが好ま
しい。更に、過剰の水素化ホウ素ナトリウムを反応液の
pHを4〜5に調節することによって分解し、蒸留水に対す
る透析によって還元反応を停止して過ヨウ素酸酸化・還
元反応生成物のナトリウム塩を得ることが好ましい。
【0034】特に原料としてヘパリンを使用した場合
は、過ヨウ素酸塩と水素化ホウ素アルカリ金属塩を使用
する酸化・還元反応処理による開裂処理を行うことが好
ましく、当該処理によりヘパリンの過ヨウ素酸化還元生
成物である過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリンが得られる。
上記硫酸化グリコサミノグリカンの構成単糖中のヘキス
ロン酸を特異的に開裂させる処理によって得られる硫酸
化グリコサミノグリカンのヘキスロン酸開裂物は、次工
程において少なくとも一部のヘキスロン酸の2位の硫
酸基が脱硫酸化される。
【0035】3.工程:脱硫酸化処理 本発明方法における工程に記載の「脱硫酸化処理」と
は、工程で生じた「硫酸化グリコサミノグリカンのヘ
キスロン酸開裂物」を構成する2位に硫酸基を有するヘ
キスロン酸において、当該2位の硫酸基を選択的に脱硫
酸化する処理(選択的脱硫酸化処理)であれば特に限定
されず実施されるが、完全に脱硫酸化することを目的と
する場合にはアルカリ性条件下で行う方法、すなわち、
アルカリを使用する加水分解反応による方法で、特に水
酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水
酸化物水溶液又は水酸化マグネシウム、水酸化カルシウ
ムなどのアルカリ土類金属水酸化物水溶液、好ましくは
アルカリ金属水酸化物水溶液、特に好ましくは水酸化ナ
トリウム水溶液に上記工程で得られた硫酸化グリコサ
ミノグリカンのヘキスロン酸開裂物を溶解して溶液とし
た後、ただちに凍結して凍結乾燥を行う工程を含む方法
が好ましい。
【0036】具体的には硫酸化グリコサミノグリカンの
ヘキスロン酸開裂物の溶液を、好ましくは氷冷(0℃)
〜室温(24℃)において0.0125〜0.2Nのアルカリ金属水
酸化物水溶液又はアルカリ土類金属水酸化物水溶液にグ
リコサミノグリカンのヘキスロン酸開裂物を溶解して調
製した溶液を、凍結乾燥する。その後更に、この凍結乾
燥物が1〜2.5M、好ましくは2Mとなるように、再度アル
カリ金属水酸化物水溶液又はアルカリ土類金属水酸化物
水溶液(0.0125〜0.2N)へ溶解し、その後、酸、好まし
くは弱酸、さらに好ましくは酢酸などのカルボン酸によ
ってpHを8〜10に調整した後、ただちに蒸留水に対して1
日以上、好ましくは2日間透析を行い、凍結乾燥あるい
はエタノール沈澱法を行うことが好ましい。硫酸化グリ
コサミノグリカンのヘキスロン酸開裂物の脱硫酸化は、
通常、開裂していないヘキスロン酸の2位の硫酸基の70
%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上
が除去されるように行う。
【0037】本発明方法において原料の硫酸化グリコサ
ミノグリカンとしてヘパリンを使用し、工程で得られ
る過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリンを用いて、上記選択的
脱硫酸化処理を行った場合、本発明の選択的2-O-脱硫酸
化過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリンが得られる。出発原料
としてのヘパリンから、上記工程の開裂処理及びの
脱硫酸化処理により本発明のグリコサミノグリカン誘導
体を製造する反応工程の概略図を図1に示す。図中、
(a)はヘパリンの模式図、(b)はヘキスロン酸の酸化的開
裂反応によりアルデヒド基が生成した反応生成物、(c)
は(b)のアルデヒド基を還元反応処理した還元反応処理
物、(d)は2-O-硫酸基を選択的に脱硫酸化した本発明の
グリコサミノグリカン誘導体を意味する。
【0038】本発明組成物1 本発明組成物1は本発明物質であるグリコサミノグリカ
ン誘導体又はその薬理学的に許容しうる塩を有効成分と
して含有する神経疾患治療剤である。神経突起伸張活性
を有するグリコサミノグリカン誘導体は、その活性を利
用する医薬組成物、例えば中枢神経の障害(例えばアル
ツハイマー症及び虚血性痴呆症など)又は末梢神経の障
害(例えば糖尿病性神経障害、アルコール性神経障害、
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、外傷又は医薬品の副作用
による末梢神経損傷、及びギランバレー症候群など)に
対する神経疾患治療剤として有用である。また、本発明
組成物1の有効成分である本発明グリコサミノグリカン
誘導体は、神経細胞の生存維持、シナプス機能の維持、
軸索機能の維持に関与する細胞膜上のガングリオシドの
シアリダーゼによる分解を抑制し、神経変性に伴う神経
機能の低下を防止することからも、神経機能低下抑制剤
として治療剤及び予防剤に利用可能である。
【0039】本発明組成物2 本発明組成物2は本発明物質であるグリコサミノグリカ
ン誘導体又はその薬理学的に許容しうる塩を有効成分と
して含有するシアリダーゼ阻害剤である。
【0040】シアリダーゼ阻害活性を有する本発明物質
のグリコサミノグリカン誘導体は、その活性を利用する
シアリダーゼ阻害剤として利用することが可能である。
特にウイルスのシアリダーゼを阻害することによってウ
イルスの増殖を阻害することができ、抗ウイルス剤、特
に抗インフルエンザ治療薬として使用しうる。特に、シ
アリダーゼ阻害活性を有し、インフルエンザ治療薬とし
て使用されている公知のシアル酸誘導体と比較して、本
発明物質は格段に優れたシアリダーゼ阻害活性を示す。
【0041】本明細書中において、「治療薬」とは、患
者の状態を健常な状態へ改善する薬剤や、疾病を緩和す
るための薬剤のみならず、疾病への感染、罹患を防ぐ
「予防のための薬剤」の概念をも包含する。
【0042】本発明組成物1及び2の有効成分として利
用されるグリコサミノグリカン誘導体の薬理学的に許容
されうる塩としては、アミン塩、第四級アンモニウム
塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち薬理
学的に許容されるものが挙げられ、具体的には例えば、
ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウ
ム塩等を例示することができるが、特にアルカリ金属塩
であるナトリウム塩及びカリウム塩などが好ましく、そ
の中でも生体への親和性などの面からナトリウム塩が最
も好ましい。
【0043】本発明のグリコサミノグリカン誘導体は、
標準ヘパリンに比して抗血液凝固活性が低い特性を呈す
るものである。特に好ましいグリコサミノグリカン誘導
体は、後記試験法4に記載の方法に従い、測定溶液中で
の濃度(最終濃度)を3μg/mlとしてAPTTを測定する
と、測定値が50秒以下となることが最も好ましい。ま
た、医薬組成物としての本発明組成物に使用するグリコ
サミノグリカン誘導体(本発明物質)は後述のトロンビ
ン時間(以下「TT」と記載する)測定法により算出した
TT活性と、APTT測定法により算出したAPTT活性の少なく
とも一方が、標準ヘパリンと比較して5%以下となるこ
とが好ましい。さらにより好ましいものは、TT活性、AP
TT活性が共に標準ヘパリンと比較して3%以下であり、
両活性の関係が0≦TT活性/APTT活性≦0.5であるところ
の、相対的にTT活性が低いものは、医薬組成物に用いた
場合、出血活性が低いことが期待され有用である。本明
細書中における標準ヘパリンとは、実施例に記載された
標準ヘパリンと同一の物質である。
【0044】本発明物質を有効成分として含有する医薬
組成物を、生体内に投与する際の剤形及び投与経路とし
ては、対照となる疾患の性質や重篤度に応じて適宜選択
することができる。例えば、それらをそのまま、又は他
の薬理学的に許容されうる担体、賦形剤、希釈剤等と共
に医薬組成物製剤(例えば、注射剤、坐剤、錠剤、カプ
セル剤、液剤、軟膏、ゲル剤)として、温血動物(例え
ば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イ
ヌ、ネコ、ウマ等)に対して、非経口的又は経口的に安
全に投与することができる。
【0045】上記神経疾患治療剤の投与形態としては非
経口的投与が好ましく、前記投与形態に適した形態とし
ては注射剤が挙げられ、その投与方法は注射あるいは点
滴などによる静注が好ましい態様として挙げられるが、
これに限定されるものではない。
【0046】インフルエンザ治療薬の投与形態としては
経口投与及び非経口投与いずれの投与形態も適宜選択す
ることが可能である。経口投与に適した剤形としては例
えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、エアゾール剤及
びスプレー(噴霧)剤等が挙げられ、また非経口投与に
適した剤形としては液剤が挙げられる。更に、特にイン
フルエンザ治療薬を予防のために使用する形態としては
経口投与により投与される液剤も好ましく、該液剤をス
プレー等の手段を用いて投与する形態が好ましい形態と
して挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】上述の医薬組成物の有効成分であるグリコ
サミノグリカン誘導体の配合量並びに投与量は、その製
剤の投与方法、投与形態、使用目的、患者の具体的症
状、患者の体重等に応じて個別的に決定されるべき事項
であり、特に限定はされないが、患者に投与されるグリ
コサミノグリカン誘導体量は静注では1日当たり概ね100
μg/kg〜100mg/kg程度を例示することができる。また、
上記製剤の投与回数は1日1回程度でも可能であり、1日2
〜4回、又はそれ以上の回数に分けて投与することもで
きる。また、例えば点滴などにより連続的に投与するこ
とも可能である。
【0048】なお、上述した医薬組成物の有効成分であ
るグリコサミノグリカン誘導体は、後述する実施例にお
いて細胞に対する毒性は見られなかった。ヘパリンのマ
ウス(雄、雌)における急性毒性試験によるLD50は、経
口投与で5,000mg/kg以上、皮下又は腹腔内投与で、2,50
0mg/kg以上、静注で1,000mg/kg程度であることが知られ
ている。本発明の医薬組成物の有効成分であるグリコサ
ミノグリカン誘導体は、APTT活性、TT活性が標準ヘパリ
ンと比して共に3%未満と極めて低いため、このことか
らも医薬組成物の有効成分であるグリコサミノグリカン
誘導体(本発明物質)の安全性の高さが裏付けられる。
【0049】
【実施例】本発明を実施例により更に具体的に説明する
が、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限
定されるものではない。なお、実施例における試験法は
以下の通りである。
【0050】試験法1 [酵素消化による二糖分析]本発明物質及び標準ヘパリ
ンの硫酸基の位置の分析は、次のようにして行った。す
なわち、それぞれのグリコサミノグリカンを酵素消化
し、生成した不飽和二糖(前記一般式(7))を高速液体
クロマトグラフィー(HPLC)で分析した[新生化学実験
講座3、糖質II(東京化学同人刊、1991)p49−62に記
載の「2・8グリコサミノグリカン分解酵素とHPLCを組み
合わせた構造解析」参照]。各不飽和二糖のピーク面積
を計算して、全面積に対するピーク面積をパーセントと
して表した。
【0051】(1)標準ヘパリン及び本発明物質の分解
酵素による消化 新生化学実験講座3、糖質II p.53−59に記載の方法に
より消化酵素で分解した。標準ヘパリン及び本発明物質
各1.0mgを2mM酢酸カルシウムを含む20mM酢酸ナトリウム
(pH7.0)220μlに溶解して、20mUのヘパリチナーゼ、2
0mUのヘパリチナーゼI及びIIを加えて、37℃で2時間反
応させた。
【0052】(2)HPLCによる分析 標準ヘパリン又は本発明物質の分解酵素による消化を行
った後の溶液50μlを、HPLC(医理化、モデル852型)を
用いて分析した。イオン交換カラム(Dionex社、CarboP
ac PA-1カラム4.0mm×250mm)を使用し、232nmでの吸
光度を測定した。不飽和二糖スタンダード(生化学工業
(株)製)を基準とし(Yamada, et al., J. Biol. Che
m., 270, 8696-8706, (1995))、流速1ml/分で、塩化
リチウムを用いたグラジエント系(50mM→2.5M)を用い
る方法に準拠した(Kariya, etal., Comp. Biochem. Ph
ysiol., 103B, 473,(1992))。
【0053】試験法2 [分子量測定]標準ヘパリン又は本発明物質の1%溶液5
μlをHPLCによるゲルろ過で分析した。カラムはTSKgel
−(G4000+G3000+G2500)PWX(東ソー、7.8mm×30c
m)を用い、0.2N塩化ナトリウムで、40℃、0.6ml/分の
流速で展開した。検出には示差屈折計(島津製作所、AI
D-2A)を用いた。表−1における重量平均分子量はヘパ
リンの分子量標準品を対照として求めた(Kaneda et a
l., Biochem. Biophys. Res. Comm., 220, 108-112(199
6))。
【0054】試験法3 [神経突起伸張活性の測定]妊娠17日のWistar系ラット
(日本SLC社)より胎児を無菌的に取り出した。さら
に、胎児より脳を取り出し、無硫酸化DMEM培地(無水Ca
Cl2 500mg、Fe(NO)3/9H2O 0.25mg、KCl 1000mg、Mg
Cl2 193.3mg、NaHCO3 9250mg、NaH2PO4/H2O 312.5mg、
フェノールレッド 37.5mg、ピルビン酸ナトリウム 27
5mg、MEMアミノ酸 100ml(ギブコ No.11130-051)、L
-グリシン 75mg、L-グルタミン 1460mg、L-セリン 1
05mg、MEMビタミン溶液 100ml(ギブコ No.11120-05
2)、NaCl15150mg、D-グルコース 11250mgに滅菌蒸留
水を加えて2.5LとしてpHを7.2に調整)中で小脳、中
脳、間脳及び髄膜を取り除き大脳皮質を得た。
【0055】10匹分の大脳皮質を60mmのディッシュ上で
安全かみそりで縦横各々100回細切し、10mlリン酸緩衝
生理食塩液(PBS)を2回加えて大脳皮質接片を50mlのフ
ァルコンチューブに分注し、11mlの無硫酸化DMEM培地を
加えた。軽く振盪することにより均一に懸濁しながら、
0.5mlずつ0.1%ポリエチレンイミンコートした24穴プレ
ート(底面積2cm2)にまいた。培養開始2時間後に100μ
lを抜き取り、培地中の最終濃度の10倍の濃度で被検物
質を含む50μlのPBS、50μlの400μMの塩素酸/無硫酸
化DMEM培地を添加した。2日間37℃5%CO2条件下で培養
した後、1%グルタルアルデヒド/PBS 500μlをゆっく
り重層して室温で20分間固定した。サクションで上清を
除去した後、0.5ml PBSをゆっくり重層しすぐにサクシ
ョンで除去した。20%ギムザ液/リン酸カリウム緩衝液
を重層して室温に2時間放置した。サクションで上清を
除去した後、0.5mlのPBSを加えた。光学顕微鏡下40倍で
ウェル全視野に存在する50〜200μmの大脳皮質神経細胞
集塊100個のうち突起伸張が観察されたものを計数して
割合(%)を算出した。
【0056】試験法4 [APTT及びTTの測定]APTTの測定のため、ラットの下大
動脈より3.2%クエン酸1/10容量で採取し、血液を1,000
×g、10分間遠心分離して得た血漿100μlと様々な濃度
の各サンプル100μlとを測定用カップに入れ、37℃で1
分間保温した。その後、あらかじめ37℃に保温しておい
たアクチン(商品名:吉富製薬(株))100μlを添加
し、さらに2分間保温した。次いで、37℃に保温してお
いた0.02M CaCl2溶液100μlを添加し、この時より凝固
が起こるまでの時間を血液凝固自働測定装置(KC-10A:
アメルング社製)で測定した。また表−2において、本
発明物質及び標準ヘパリンのAPTTが100秒となる培地中
の最終濃度を求め、標準ヘパリンの前記濃度を本発明物
質の前記濃度を基準として百分率で算出し、この数値
(%)を本発明物質のAPTT活性とした。
【0057】TTの測定のため、上記ラット血漿100μlと
様々な濃度の各サンプル100μlとを測定用カップに入
れ、37℃で1分間保温した。その後、37℃に保温したト
ロンビン(10 U/ml)100μlを添加し、この時より凝固
が起こるまでの時間を上記血液凝固自働測定装置で測定
した。表−2において、本発明物質及び標準ヘパリンの
TTが100秒となる培地中の最終濃度を求め、標準ヘパリ
ンの前記濃度を本発明物質の前記濃度を基準として百分
率で算出し、この数値(%)を本発明物質のTT活性とし
た。
【0058】[本明細書における標準ヘパリン] 以下に示す物性のヘパリンを標準ヘパリンとした。
(1)上記試験法1に記載の二糖分析法による測定値か
ら算出した標準ヘパリンの二糖体組成は表−3に記載の
とおり、ΔDiHS-0S:4.1%、ΔDiHS-NS:3.4%、ΔDiHS
-6S:3.7%、ΔDiHS-US:2.6%、ΔDiHS-di(6,N)S:12.
7%、ΔDiHS-di(U,N)S:7.6%、ΔDiHS-di(U,6)S:1.7
%、ΔDiHS-tri(U,6,N)S:64.2%であり、この結果から
23.9%のウロン酸の2位には硫酸基が存在しないことが
示されている(%は全てモル%比を表す)。 (2)抗血液凝固活性が160 IU/mgである。 (3)重量平均分子量が11,000〜14,000 Daである。
【0059】実施例1(製造例) 1.標準ヘパリンの過ヨウ素酸酸化・還元によるヘキス
ロン酸の部分開裂処理 ヘパリンナトリウム塩(重量平均分子量:13,700 Da、S
yntex社製Lot No.40210910:標準ヘパリン)1.3gを、過
ヨウ素酸ナトリウムの存在下で酸化した。すなわちこの
酸化反応は、50mlの0.05Nの過ヨウ素酸ナトリウム、50m
Mの酢酸ナトリウムを含んだpH5の溶液中で、ヘパリンナ
トリウム塩を4℃、3日間酸化処理して行った。酸化処理
後、過剰の過ヨウ素酸を最終濃度250mMのグリセリンを
加えることで還元分解し、蒸留水に対して2日間透析
し、その後凍結乾燥することにより1.2gの過ヨウ素酸酸
化ヘパリンを得た。この過ヨウ素酸酸化ヘパリンの生成
時に生じたアルデヒド基を、30mlの0.2N水素化ホウ素ナ
トリウム、0.25N炭酸水素ナトリウムを含んだpH9の該酸
化ヘパリン1.2gを含む溶液を4℃、3時間反応させること
でこの過ヨウ素酸酸化ヘパリンのアルデヒド基を還元し
た。過剰の水素化ホウ素ナトリウムは、氷酢酸で反応液
のpHを5に調節し、30分間室温で放置することで分解
し、ふたたび5Nの水酸化ナトリウムでpHを9に調節した
後、蒸留水への2日間の透析と凍結乾燥により、1.1gの
過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリンのナトリウム塩を得た。
【0060】2.過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリンの部分
的2-O-脱硫酸化 上記1で得た1.1gの過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリンのナ
トリウム塩を、20mlの0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液
に溶解し、室温にて20分間放置した。この溶液を凍結乾
燥して選択的に2位の硫酸基を脱硫酸化し、凍結乾燥パ
ウダーを10mlの1N水酸化ナトリウム溶液で溶解し、20%
酢酸溶液でpH9に調節し、30分間室温に放置した。その
後、蒸留水に対して2日間透析し、再び凍結乾燥し、脱
硫酸化された過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリン(選択的2-
O-脱硫酸化過ヨウ素酸酸化・還元ヘパリン)のナトリウ
ム塩0.8gを得た。上記試験法2に従い、HPLCにより本発
明物質の重量平均分子量を測定し、その結果を図2及び
表−1に示した。
【0061】
【表2】
【0062】3.神経突起伸長活性、APTT、TTの測定 表−1に記載の標準ヘパリン及び上記2により得られた
本発明物質、更に上記1により得られた過ヨウ素酸酸化
・還元ヘパリンのそれぞれについて、上記試験法3によ
りその神経突起伸張活性を調べ図3に示した。その結
果、本発明物質を10μg/mlで加えた際に大幅な神経突起
伸長活性が見られた。さらに、上記標準ヘパリン及び本
発明物質について、試験法4によりAPTT及びTTを調べ、
その結果を図4に示した。また、試験法4に則りAPTT活
性及びTT活性を算出し、TT活性/APTT活性を算出した。
更に、標準ヘパリン及び本発明物質の最終濃度を3μg/m
lに調整して試験法4に則りAPTTを測定した。これら各
種測定の結果を標準ヘパリン及び本発明物質について表
−2に記載した。
【0063】
【表3】
【0064】APTT活性と比較してTT活性が低い物質は、
医薬品として投与した際に抗血液凝固活性が低く、安全
性が高いことが知られており、本発明物質がそのような
物質であることが明らかとなった。
【0065】更に、得られた本発明物質について、上記
試験法1による二糖分析を行い、その結果を図4に示し
又その測定値から二糖体組成を算出して結果を表−3に
記載した。
【0066】
【表4】
【0067】4.神経細胞死抑制活性の測定 本発明物質の運動神経細胞に対する細胞死抑制活性を測
定した。すなわち、予め0.1%ポリエチレンイミンで処理
した96穴マルチプレートにNSC-34細胞(Cashman氏(トロ
ント大学)より恵与:マウスの運動神経由来培養細胞
株)1×105個/mlを含む無血清のDMEM培地0.09mlを添加
して培養を行う。2時間の培養後、本発明物質の100、10
00、10000μg/mlの水溶液10μlを添加した(それぞれの
培地中の最終濃度は10、100、1000μg/ml)。その後、4
6時間培養を継続し、MTT法を用いて生存細胞数を血球計
数板を用いて測定した。2時間の培養後の生存細胞数と
比較して、本発明物質を添加しなかった対照の48時間培
養後の死細胞数を100%として、本発明物質を添加した際
の死細胞数との差(細胞死から救済された細胞数)の割
合を百分率として算出した(図6)。
【0068】その結果、本発明物質の100及び1000μg/m
lの水溶液を添加した系(培地中の最終濃度は10及び100
μg/ml)において、顕著に細胞死を抑制し細胞を救済す
る活性が観察された。100μg/mlの水溶液を添加した際
の細胞死を起こした細胞数は、標準ヘパリンと比較し
て、約半数であり、約半数の細胞が細胞死から救済され
ることが明らかとなった。また、生存した細胞において
は、中枢神経由来の細胞と同様に神経突起の伸長促進活
性が観察された。
【0069】5.シアリダーゼ阻害活性の測定 標準ヘパリン、本発明物質、及び公知のシアリダーゼ阻
害剤であるNeuAc2en(2-デオキシ-2,3-デヒドロ-N-アセ
チルノイラミン酸)につき、シアリダーゼ阻害活性を測
定した。
【0070】5.1基質の調製 GM2ガングリオシド(ヤトロン社製)1mgを15mlのガラス
チューブへ入れ、0.8mlの蒸留水を添加してソニケーシ
ョンにより溶解させた。そして、この溶液に0.1mlPdCl2
溶液(PdCl2を25mg/mlで蒸留水に添加した後、30分間ソ
ニケーションを行い、これを2000×gで遠心分離して得
られる上清画分)を添加して撹拌した。この溶液に0.1m
lの1N NaOH、40μlのNaB3H4(NEN社製:100mCi/mmol、1M
NaOH)を添加して撹拌した後、窒素ガスでチューブ内
を置換した後、室温で24時間撹拌し、ミクロスパーテル
に一掻きのNaBH4を添加して更に3時間室温で撹拌した。
その後、1M酢酸約0.6mlを徐々に加えて反応を終了さ
せ、この反応液をAG50W-X8(バイオラッド社製:樹脂量
3ml、メタノールにより膨潤)のミニカラムに通塔し、1
0mlのメタノールにより完全に溶出させる。この溶出し
た基質を窒素ガスで乾固させ、基質の[3H]GM2を調製し
た。
【0071】5.2シアリダーゼ活性の測定 上記5.1で調製した基質[3H]GM2(15nmol)、1% Triton X-
100(10μl)、0.1M酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液(40μl)、
NSC-34細胞(シアリダーゼを発現している運動神経由来
培養細胞株)のホモジナイズ液(10μl、100μgタンパ
ク)、蒸留水10μl、ならびに本発明物質又は標準ヘパ
リンの水溶液(10μg/ml)を10μl添加して、37℃で1時
間インキュベートした。インキュベート後、5mlの蒸留
水を添加し、Sep-pak C18カートリッジカラム(Waters
社製)に通塔し、メタノール(3ml)、その後クロロホ
ルム:メタノール混合液(1:1(v/v)、3ml)により溶出
した。溶出液を、DEAE-セファデックスA-25カラム(フ
ァルマシア社製:樹脂1ml、メタノールにより膨潤)に
通塔し、クロロホルム:メタノール混合液(1:1(v/v)、
3ml)により溶出させ、溶出液を乾固させた後、液体シ
ンチレーションカウンターで放射能の量を測定して比較
した。標準ヘパリン又は本発明物質の代わりに10μlの
蒸留水を添加した対照の放射能の量を100%とした(図
7)。その結果、本発明物質は、標準ヘパリンと比較し
て、よりガングリオシドを分解するシアリダーゼ阻害活
性が強いことが明かとなり、シアリダーゼ活性の上昇及
び/又はガングリオシドの減少を伴う疾病に適用できる
ことが示された。
【0072】更に、上記測定において、10μg/mlの本発
明物質及び標準ヘパリンの10μlの代わりに、本発明物
質(10、100、1000μg/ml)又はNeuAc2en(10、100、10
00μg/ml)の水溶液10μlを用いて同様にシアリダーゼ
活性を測定した(図8)。その結果、本発明物質は、Ne
uAc2enと比較して、よりシアリダーゼ阻害活性が強いこ
とが明らかになった。
【0073】実施例2(製剤例) (1)注射剤 前記実施例1において製造した本発明物質(30mg/ml)
を、終濃度5mg/mlとなるよう5%マンニトール水溶液に
溶解し、これを無菌濾過した後、2mlずつアンプルに分
注して注射剤を製造した。
【0074】(2)スプレー剤 前記実施例1において製造した本発明物質(30mg/ml)
を、終濃度1mg/mlとなるようPBSに溶解し、これを無菌
濾過した後、20mlずつ、滅菌したスプレー容器に充填し
て、スプレー剤を製造した。
【0075】(3)錠剤 前記の本発明物質の凍結乾燥物100mg、乳糖670mg、バレ
イショデンプン150mg、結晶セルロース60mg及び軽質無
水ケイ酸50mgを混合し、これにヒドロキシプロピルセル
ロース30mgをメタノールに溶解した溶液(ヒドロキシプ
ロピルセルロース10重量%)を添加して練合造粒した。
次にこれを径0.8mmのスクリーンで押し出して顆粒状に
し、乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム15mgを添加
して圧縮成型し、200mgの錠剤を製造した。
【0076】(4)カプセル剤 前記の本発明物質の凍結乾燥物100mg、バレイショデン
プン150mg、軽質無水ケイ酸50mg、ステアリン酸マグネ
シウム10mg及び乳糖765mgを均一に混合し、この混合物
を200mgずつ分取して硬カプセルに充填してカプセル剤
を製造した。
【0077】(5)軟膏剤 前記の本発明物質の凍結乾燥物100mg、鉱油4g、石油ゼ
リー8g、混合メチル/プロピルパラバン60mg、非イオン
性界面活性剤1g及び精製水30gを均一に混合し、この混
合物を容器に充填して軟膏剤を製造した。
【0078】
【発明の効果】本発明の新規グリコサミノグリカン誘導
体は、抗血液凝固活性が低く、優れた神経突起伸張活性
を有するので、当該物質を有効成分として含有する中枢
神経或いは末梢神経などの神経疾患に対する有用な医薬
組成物を提供することができる。また、本発明の新規グ
リコサミノグリカン誘導体は、強力なシアリダーゼ阻害
活性を有するため、当該物質を有効成分として含有する
抗ウイルス剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明グリコサミノグリカン誘導体の
製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】図2は標準ヘパリン(a)及び本発明物質
(b)のHPLCによる溶出チャート図である。
【図3】 図3は標準ヘパリン、本発明物質及び過ヨウ
素酸酸化・還元ヘパリンの培地中の濃度による神経突起
伸張活性の変化を示す図である。図中、縦軸は神経突起
伸長活性(%)、横軸は培地中の濃度(μg/ml)を示
す。
【図4】 図4は標準ヘパリン及び本発明物質の濃度変
化によるAPTT及びTTの変化を示す図である。図中、縦軸
は凝固時間(秒)、横軸は最終濃度(μg/ml)を示す。
【図5】 図5は不飽和二糖標準品(a)、標準ヘパリ
ン(b)、及び本発明物質(c)の二糖体分析における
HPLCによる溶出チャート図である。
【図6】 図6は本発明物質の神経細胞死抑制活性への
影響を示す図である。図中、縦軸は救済された細胞割合
(%)、横軸は培地中の最終濃度(μg/ml)を示す。
【図7】 図7は標準ヘパリン及び本発明物質のシアリ
ダーゼ活性への影響を示す図である。図中、縦軸はシア
リダーゼ活性(%)を表す。
【図8】 図8は本発明物質及びNeuAc2enの濃度変化に
よるシアリダーゼ活性への影響を示す図である。図中、
縦軸はシアリダーゼ活性(%)、横軸は溶液濃度(μg/
ml)を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08B 37/10 C08B 37/10

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の(a)、(b)及び(c)の性質
    を有し、且つ(d)に記載の一般式(1)で表される構
    造を、ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し単位構造
    で形成される基本骨格1分子あたりに1以上有すること
    を特徴とするグリコサミノグリカン誘導体又はその塩。 (a)グリコサミノグリカン分解酵素による分解と高速
    液体クロマトグラフィーによる分析を組み合わせた二糖
    分析により得られる二糖体組成において2-デオキシ-2-
    スルファミノ-4-O-(4-デオキシ-2-O-スルホ-α-L-threo
    -hex-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-グルコ
    ースのモル%が0〜10%、2-デオキシ-2-スルファミノ-4
    -O-(4-デオキシ-α-L-threo-hex-4-エノピラノシルウロ
    ン酸)-6-O-スルホ-D-グルコースのモル%が95〜70%で
    あり、2-デオキシ-2-スルファミノ-4-O-(4-デオキシ-α
    -L-threo-hex-4-エノピラノシルウロン酸)-D-グルコー
    スのモル%が5〜20%であること。 (b)標準血漿に最終濃度3μg/mlで添加して測定した
    際の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が50秒
    以下であること。 (c)重量平均分子量が9,000〜13,000 Da(ダルトン)
    であること。 (d)一般式(1) 【化1】 (但し、R1はH又はSO3Hであり、R2はCOCH3又はSO3Hを示
    す。)
  2. 【請求項2】 下記一般式(2)の構造を有するグリコ
    サミノグリカン誘導体であって、標準血漿に最終濃度3
    μg/mlで添加して測定した際の活性化部分トロンボプラ
    スチン時間(APTT)が50秒以下であることを特徴とする
    グリコサミノグリカン誘導体又はその塩。 【化2】 HO−[(A)−(B)]n-H (2) ただし、(A)は下記一般式(3)で示されるグルクロ
    ン酸残基、下記一般式(4)で示されるイズロン酸残基
    又は下記一般式(5)で示される開裂されたヘキスロン
    酸残基のいずれかであり、 【化3】 (B)は下記一般式(6)で示されるヘキソサミン残基
    をそれぞれ示す。 【化4】 ただし、一般式(3)〜(6)においてR1及びR3はそれ
    ぞれ独立にH又はSO3Hであり、R2はCOCH3又はSO3Hを示
    す。また、一般式(2)において、nは15≦n≦40を充た
    す整数であり、(A)の少なくとも一つは一般式(5)
    の残基である。
  3. 【請求項3】 下記の工程及びを含む方法により得
    られ、少なくとも前記一般式(5)で示される開裂され
    たヘキスロン酸残基を有するグリコサミノグリカン誘導
    体又はその塩。 ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し単位構造を
    基本骨格とする硫酸化グリコサミノグリカンを開裂処理
    して、その骨格中に存在する2位に硫酸基を有しないヘ
    キスロン酸の少なくとも一部の2位と3位の炭素原子間
    のみを開裂する工程、 ヘキスロン酸の2位の硫酸基を特異的に除去しうる
    脱硫酸化手段により工程の生成物を脱硫酸化処理し、
    2位に硫酸基を有する全ヘキスロン酸の90%以上の当該
    硫酸基を脱硫酸化する工程。
  4. 【請求項4】 ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し
    単位構造を基本骨格とする硫酸化グリコサミノグリカン
    がヘパリンであることを特徴とする請求項3記載のグリ
    コサミノグリカン誘導体又はその塩。
  5. 【請求項5】 工程の開裂処理が、過ヨウ素酸塩を使
    用する酸化的開裂反応を含むことを特徴とする請求項3
    又は4記載のグリコサミノグリカン誘導体又はその塩。
  6. 【請求項6】 工程において、更に酸化的開裂反応生
    成物を還元することを特徴とする請求項5記載のグリコ
    サミノグリカン誘導体又はその塩。
  7. 【請求項7】 請求項3の工程におけるヘキスロン酸
    の2位の硫酸基の脱硫酸化手段が、アルカリ金属水酸化
    物又はアルカリ土類金属水酸化物を使用する加水分解反
    応であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項
    記載のグリコサミノグリカン誘導体又はその塩。
  8. 【請求項8】 培地中の最終濃度1μg/ml〜10μg/mlの
    グリコサミノグリカン誘導体をWistar系ラット大脳皮質
    の初代培養細胞に接触させた際の該細胞の神経突起伸張
    活性が、同濃度範囲内の標準ヘパリンと比して1.5倍以
    上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項
    記載のグリコサミノグリカン誘導体又はその塩。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか一項に記載のグ
    リコサミノグリカン誘導体又はその薬理学的に許容し得
    る塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組
    成物。
  10. 【請求項10】 医薬組成物が神経疾患治療剤であるこ
    とを特徴とする請求項9記載の医薬組成物。
  11. 【請求項11】 神経疾患治療剤が中枢神経疾患治療剤
    であることを特徴とする請求項10記載の医薬組成物。
  12. 【請求項12】 神経疾患治療剤が末梢神経疾患治療剤
    であることを特徴とする請求項10記載の医薬組成物。
  13. 【請求項13】 請求項1〜8のいずれか一項に記載の
    グリコサミノグリカン誘導体又はその薬理学的に許容し
    得る塩を有効成分として含有することを特徴とするシア
    リダーゼ阻害剤。
  14. 【請求項14】 インフルエンザウイルスのシアリダー
    ゼを阻害する阻害剤であることを特徴とする請求項13
    記載のシアリダーゼ阻害剤。
  15. 【請求項15】 インフルエンザ治療剤であることを特
    徴とする請求項13又は14記載のシアリダーゼ阻害
    剤。
  16. 【請求項16】 下記の工程及びを含む、ヘキソサ
    ミンとヘキスロン酸の繰り返し単位構造を基本骨格と
    し、該ヘキスロン酸はその一部が2位と3位の炭素原子
    間で開裂されているグリコサミノグリカン誘導体の製造
    法。 ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返し単位構造を
    基本骨格とする硫酸化グリコサミノグリカンを開裂処理
    して、その骨格中に存在する2位に硫酸基を有しないヘ
    キスロン酸の少なくともその一部を2位と3位の炭素原
    子間において選択的に開裂する工程、 ヘキスロン酸の2位の硫酸基を特異的に除去しうる
    脱硫酸化手段により工程の生成物を脱硫酸化処理し
    て、2位に硫酸基を有する全ヘキスロン酸の90%以上の
    当該硫酸基を脱硫酸化する工程。
  17. 【請求項17】 ヘキソサミンとヘキスロン酸の繰り返
    し単位構造を基本骨格とする硫酸化グリコサミノグリカ
    ンがヘパリンであることを特徴とする請求項16記載の
    グリコサミノグリカン誘導体の製造法。
  18. 【請求項18】 工程の開裂処理が、過ヨウ素酸塩を
    使用する酸化的開裂反応を含むことを特徴とする請求項
    16又は17記載のグリコサミノグリカン誘導体の製造
    法。
  19. 【請求項19】 工程において、更に酸化的開裂反応
    生成物を還元することを特徴とする請求項18記載のグ
    リコサミノグリカン誘導体の製造法。
  20. 【請求項20】 工程の脱硫酸化手段が、アルカリ金
    属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を使用する加
    水分解反応であることを特徴とする請求項16〜19の
    いずれか一項記載のグリコサミノグリカン誘導体の製造
    法。
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