JPH11279694A - 疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法Info
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- JPH11279694A JPH11279694A JP8657498A JP8657498A JPH11279694A JP H11279694 A JPH11279694 A JP H11279694A JP 8657498 A JP8657498 A JP 8657498A JP 8657498 A JP8657498 A JP 8657498A JP H11279694 A JPH11279694 A JP H11279694A
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Abstract
製造方法を提供する。 【解決手段】 C:0.05〜0.30%、Cu:0.
2〜2.0%、B:2〜20ppmを含むミクロ組織
が、体積率が5%以上、25%以下の残留オーステナイ
ト、及びフェライト、ベイナイトで構成される鋼板であ
り、フェライト相でのCuの存在状態は、Cu単独で構
成される粒子の大きさが2nm以下の固溶状態及び/又
は析出状態であることを特徴とする疲労特性に優れた加
工用熱延鋼板、及び上記成分の鋼を、Ar3 変態点以上
の温度域で熱間仕上圧延を終了し、Ar1 〜Ar3 の温
度域で1〜10秒間空冷し、その後、20℃/s以上の
冷却速度で冷却して、350℃超、450℃未満の温度
域で巻き取り、さらに、200℃まで30℃/hr以上
で冷却することを特徴とする上記鋼板の製造方法。
Description
加工用熱延鋼板およびその製造方法に関するものであ
り、特に、自動車の足廻り部品やロードホィール等の耐
久性と加工性の両立が求められる素材として好適な疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法に関す
るものである。
量化を目的として、Al合金等の軽金属や高強度鋼板の
自動車部材への適用が進められている。ただ、Al合金
等の軽金属は、比強度が高いという利点があるものの、
鋼に比較して著しく高価であるため、その適用は特殊な
用途に限られてきた。より広い範囲で自動車の軽量化を
推進するためには、安価な高強度鋼板の適用が強く求め
られている。一般に、材料は、高強度になるほど延性が
低下して加工性(成形性)が悪くなるばかりでなく、切
り欠き感受性も高くなる。そのため、複雑な形状をして
いる自動車の足廻り部品等への高強度鋼板の適用にあた
っては、その成形性だけでなく、疲労耐久性も重要な検
討課題となる。
に、低降伏比でかつ延性の優れた高強度鋼板を、フェラ
イトとマルテンサイトを主体とするミクロ組織で得る発
明が、例えば、特開昭58−6937号公報や特開昭6
0−121225号公報等で開示されている。また、特
に、伸びフランジ性(穴拡げ性)の優れた高強度鋼板
を、フェライトとベイナイトを主体とするミクロ組織で
得る発明が、例えば、特開昭57−145965号公報
や特開昭61−96057号公報等で開示されている。
さらにまた、これらの特性を兼ね備えた高強度鋼板を、
フェライト、ベイナイトとマルテンサイトを主体とする
ミクロ組織で得る発明が、例えば、特開平3−2646
46号公報や特開平3−277740号公報等で開示さ
れている。
しては、特開平4−337026号公報、特開平6−1
45792号公報、特開平8−60240号公報等で、
疲労特性を向上させるために特定の添加元素に注目し
て、Pの固溶強化および/またはCuの析出強化を利用
する発明が開示されている。すなわち、上記の特開平4
−337026号公報には、フェライト結晶粒のサイズ
を最適化し、第二相であるマルテンサイト、ベイナイト
およびオーステナイトの体積分率を最適化して下限界応
力拡大係数範囲を高め、Pの固溶強化とCuの析出強化
によって疲労限度比を向上させる技術が開示されてい
る。また、特開平6−145792号公報では、ミクロ
組織をフェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの
三相とし、それぞれの相の体積分率を規定して強度と伸
びフランジ性を確保するとともに、Cuの析出強化によ
って疲労特性を向上させる技術が開示されている。
は、ミクロ組織をフェライト、ベイナイトおよびマルテ
ンサイトの三相とし、それぞれの相の体積分率を規定し
て強度延性バランスを確保し、巻取温度を400℃以上
としてCuの析出強化によって疲労特性を向上させる技
術が開示されている。一方、特開平2―149646号
公報には、残留オーステナイト相の変態誘起塑性を活用
して加工性を向上させた鋼板の発明が開示されている。
また、特開平2―38523号公報には、Cuの析出強
化による高強度化と残留オーステナイトによる延性の向
上に関する発明が開示されている。
ホィールのディスク等の一部の部品においては、強度−
延性バランス等の加工性とともに疲労耐久性が大変に重
要であり、上記従来技術では、満足する特性が得られな
いといわざるを得ない。すなわち、上記特開平4−33
7026号公報に記載の発明では、結晶粒界に偏析し粒
界脆化を引き起こすPが0.03〜0.15%添加され
ることが必須であるため、疲労破壊の起点となる粒界破
壊が起こった場合、疲労特性が著しく劣化する可能性が
ある。さらに、同文献には、Pによる粒界脆化等を抑制
するBの添加については何も記載されていない。
に記載の発明では、0.5%〜1.5%のCrの添加量
が必須であるため合金コストが上昇してしまう。さら
に、上記特開平8−60240号公報に記載の発明で
は、巻取温度を400℃以上と規定しているため、強度
−延性バランスを向上させるのに十分な量の残留オース
テナイトが得られないばかりか、静的強度は上昇させる
が疲労限はあまり上昇させないサイズのCuの析出物を
生じる恐れがあるため、強度−延性バランスと疲労限度
比が十分に得られない。
に記載の発明では、疲労特性の向上に効果のあるCuと
Bの複合添加については全く触れられていない。また、
上記特開平2―38523号公報に記載の発明では、巻
き取り終了後の冷却速度については定義されておらず、
そのために、巻き取り後にCuの析出が促進されて静的
強度が著しく上昇するものの、疲労特性が改善されない
サイズのCuの析出物が増大してしまい、疲労限度比が
低下してしまう可能性がある。そこで、本発明は、疲労
特性と加工性を両立させるための鋼板特性とその製造方
法を明らかにして、上記従来技術の課題を有利に解決で
きる、疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造
方法を提供することを目的とするものである。
に採用されている連続熱間圧延設備により工業的規模で
生産されている熱延鋼板の製造プロセスを念頭におい
て、熱延鋼板の疲労特性と加工性の両立を達成すべく鋭
意研究を重ねた。その結果、固溶しているCuもしくは
Cu単独で構成される粒子サイズが2nm以下のCu析
出物が疲労特性向上に非常に有効であり、かつ加工性も
損なわないことを見出し、本発明をなしたものである。
いて説明する。まず、フェライト相におけるCu単独で
構成される粒子サイズの疲労特性に及ぼす効果について
の調査を行った。そのための供試材は、次のようにして
準備した。すなわち、0.12%C−1.35%Si−
1.40%Mn−1.0%Cu−0.5%Ni−0.0
003%Bに成分調整し溶製した鋳片を850℃で圧延
を終了して、730℃まで5秒間空冷した後、380℃
まで水冷した後で巻き取った鋼板を100〜600℃で
1時間、等温保持した後、炉冷する熱処理を施し、ミク
ロ組織が、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイ
トを主要構成組織とし、さらに、マルテンサイトを含む
複合組織であり、前記残留オーステナイトの体積率は、
5%以上、25%以下であり、前記フェライト相におけ
るCuの存在状態は、Cu単独で構成される粒子の大き
さが2nm以下の固溶状態および/または析出状態であ
る鋼板を得た。
果を、図1に示す。この結果より、残留オーステナイト
の体積率が5%以上、25%以下であって、残部がフェ
ライト、ベイナイト、マルテンサイト相である鋼板にお
いて、そのフェライト相におけるCu単独で構成される
粒子の平均サイズと疲労限度比には強い相関があり、フ
ェライト相におけるCu単独で構成される粒子の平均サ
イズが2nm以下で疲労限度比が著しく向上することを
新規に知見した。また、熱間圧延条件等を制限すること
によって、フェライト相におけるCu単独で構成される
粒子の平均サイズが2nm以下という鋼板を製造できる
ことも新たに知見した。
いての調査を行った。そのための供試材は、次のように
して準備した。すなわち、0.12%C−1.35%S
i−1.40%Mn−0.5%Ni鋼をベースにして、
1.0%のCuを添加した鋼とCuを添加しない鋼に、
さらに、B含有濃度を変化させた鋼を成分調整し溶製し
た鋳片を850℃で圧延を終了して、730℃まで5秒
間空冷した後、380℃まで水冷した後で巻き取り、ミ
クロ組織が、フェライト、ベイナイト、残留オーステナ
イトを主要構成組織とし、さらに、マルテンサイトを含
む複合組織であり、前記残留オーステナイトの体積率
は、5%以上、25%以下であり、前記フェライト相に
おけるCuの存在状態は、Cu単独で構成される粒子の
大きさが2nm以下の固溶状態および/または析出状態
である鋼板を得た。
果を、図2に示す。この結果より、1.0%のCuを添
加した鋼に限り、B含有濃度と疲労限度比に強い相関が
あり、さらに、Bの含有濃度が2ppm以上で疲労限度
比が著しく向上することを新規に知見した。なお、引張
試験による機械的性質については、JIS Z 220
1記載の5号試験片にて、JIS Z 2241記載の
試験方法で測定した。また、鋼板の疲労特性は、図3に
示すような板厚3.0mm、長さ98mm、幅38m
m、最小断面部の幅が20mm、切り欠きの曲率半径が
30mmである疲労試験片を用い、完全両振りの平面曲
げ疲労試験によって得られた2×106 回での疲労強度
σWを鋼板の引張り強さσBで除した値(疲労限度比σ
W/σB)で評価した。
成される粒子は、供試鋼の1/4厚のところから透過型
電子顕微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分
光(Energy Dispersive X−ray
Spectroscope:EDS)や電子エネルギ
ー損失分光(Electron Energy Los
s Spectroscope:EELS)の組成分析
機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子
銃(Field Emission Gun:FEG)
を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察した。観察さ
れる粒子の組成は上記EDSおよびEELSによりCu
単独であることを確認した。また、本発明で規定するフ
ェライト相におけるCu単独で構成される粒子のサイズ
は、観察される粒子のサイズをそれぞれ測定したものの
その一視野での平均の値である。
で、その要旨は、以下の通りである。 (1)質量%にて、C:0.05〜0.30%、Si:
0.1〜2.0%、Mn:0.5〜2.5%、P:≦
0.02%、S:≦0.01%、Al:0.005〜
0.1%、Cu:0.2〜2.0%、B:0.0002
〜0.0020%、を含み、残部がFe及び不可避的不
純物からなる鋼であって、そのミクロ組織が、フェライ
ト、ベイナイト、残留オーステナイトを主要構成組織と
し、さらに、マルテンサイトを含むこともある複合組織
であり、前記残留オーステナイトの体積率は、5%以
上、25%以下であり、前記フェライト相におけるCu
の存在状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2
nm以下の固溶状態および/または析出状態であること
を特徴とする、疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。
i:0.1〜1.0%を含有することを特徴とする、上
記(1)に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 (3)前記鋼が、さらに、質量%にて、Ca:0.00
5〜0.02%、REM:0.005〜0.2%の一種
または二種を含有することを特徴とする、上記(1)ま
たは(2)に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 (4)前記鋼が、さらに、質量%にて、Mo:0.05
〜0.2%、V:0.02〜0.2%、Ti:0.01
〜0.2%、Nb:0.01〜0.1%、Cr:0.0
1〜0.3%、Zr:0.02〜0.2%の一種または
二種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ない
し(3)のいずれか1項に記載の疲労特性に優れた加工
用熱延鋼板。
1項に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar
3 変態点以上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar3 変態
点からAr1 変態点までの温度域で1〜10秒間空冷
し、その後、20℃/s以上の冷却速度で冷却して、3
50℃超、450℃未満の温度範囲で巻き取り、その
後、200℃までの冷却速度を30℃/hr以上とする
ことを特徴とする、そのミクロ組織が、フェライト、ベ
イナイト、残留オーステナイトを主要構成組織とし、さ
らに、マルテンサイトを含むこともある複合組織であ
り、前記残留オーステナイトの体積率は、5%以上、2
5%以下であり、前記フェライト相におけるCuの存在
状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以
下の固溶状態および/または析出状態である疲労特性に
優れた加工用熱延鋼板の製造方法にある。
まず、本発明の鋼板のミクロ組織およびCuの存在状態
について説明する。本発明の鋼板のミクロ組織は、フェ
ライト、ベイナイト、残留オーステナイトを主要構成組
織とし、さらに、マルテンサイトを含むこともある複合
組織であり、前記残留オーステナイトの体積率は、5%
以上、25%以下であり、前記フェライト相におけるC
uの存在状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが
2nm以下の固溶状態および/または析出状態である。
イトが応力誘起マルテンサイト変態による変態誘起塑性
(TRansformation Induced P
lasticity:以下TRIP)を起こすことによ
って優れた加工性を発現する。残留オーステナイトの体
積率が5%未満では、TRIPが起こったとしてもその
絶対量が少ないので優れた加工性を得られず、25%超
では残留オーステナイト相のC濃度が低く不安定で変態
しやすく、加工性に有効なTRIPが起きない。そのた
め、残留オーステナイトの体積率は、5%以上、25%
以下とする必要がある。ただし、ここで言う残留オース
テナイトの体積率とは、鋼板のある断面で観察されたミ
クロ組織中の残留オーステナイトの面積率で定義されて
いる。
は、フェライト相中で固溶および/または析出状態の2
nm以下のCu単独で構成される粒子サイズの析出物
が、加工性の劣化につながる静的強度の上昇をおさえて
疲労限のみを上昇させる。ただし、フェライト相におけ
るCu単独で構成される粒子の大きさが2nm超である
と静的強度はCuの析出強化で著しく上昇しかつ、加工
性が劣化するばかりでなく、Cuの析出強化では疲労限
が静的強度ほど上昇しないので疲労限度比が低下する。
そのためフェライト相におけるCu単独で構成される粒
子の大きさは、2nm以下とする必要がある。なお、本
発明の鋼板が良好な伸びを有するためには、フェライト
の体積率は40%以上が好ましく、マルテンサイトの体
積率は5%未満が好ましい。
て説明する。Cは、0.05%未満であると良好な延性
を付与するための十分な残留オーステナイト量を得るこ
とができないので0.05%以上とする。また、0.3
0%超含有していると加工性及び溶接性が著しく劣化す
るので、0.30%以下とする。なお、Cが0.20%
超含有していると溶接性が劣化し易いので、0.20%
以下が好ましい。
イトの析出抑制による未変態オーステナイト中のC濃度
の上昇を促進し残留オーステナイトを得やすくする効果
がある。ただし、0.1%未満では、上記のような効果
が失われるので、0.1%以上とする。また、2.0%
超添加するとその効果が飽和するので、2.0%以下と
する。なお、1.5%以上添加するとスケールにより表
面性状が劣化して圧延ままでの疲労特性が低下する恐れ
があるので、1.5%未満が好ましい。
り目的とする残留オーステナイトを得やすくする効果が
ある。ただし、その効果を得るためには、0.5%以上
必要である。また、2.5%超添加すると上記効果が飽
和するだけでなく、溶接性も劣化させるため、2.5%
以下とする。Pは、0.02%超添加すると加工性や溶
接性に悪影響を及ぼすだけでなく、粒界に偏析して粒界
強度を低下させ粒界脆化を起こすので、0.02%以下
とする。
起こすので極力低減させるべきであるが、0.01%以
下ならば許容できる範囲である。Alは、溶鋼脱酸のた
めに0.005%以上添加する必要があるが、あまり多
量に添加すると、非金属介在物を増大させ伸びを劣化さ
せるだけでなく、コストの上昇を招くため、その上限を
0.1%とする。
あり、固溶もしくは2nm以下の粒子サイズに析出させ
ることにより疲労特性を改善する効果がある。ただし、
0.2%未満では、その効果は少なく、2.0%を超え
て添加しても効果が飽和するので、0.2〜2.0%と
添加範囲を限定する。Bは、本発明の最も重要な元素の
一つであり、Cuと複合添加されることによって疲労限
を上昇させる効果がある。ただし0.0002%未満で
はその効果を得るために不十分であり、0.0020%
超添加するとスラブ割れが起こる。よってBの添加量
は、0.0002%以上0.0020%以下とする。
であると共に、Cu含有による熱間脆性を防止するため
に添加する。ただし、0.1未満ではその効果が少な
く、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和するの
で、0.1〜1.0%とする。CaおよびREMは、破
壊の起点となったり、加工性を劣化させる非金属介在物
の形態を変化させて無害化する元素である。ただし、
0.005%未満添加してもその効果がなく、Caなら
ば0.02%超、REMならば0.2%超添加してもそ
の効果が飽和するのでCa:0.005〜0.02%、
REM:0.005〜0.2%とする。
ために、以下のMo、V、Ti、Nb、Cr、Zrの析
出強化もしくは固溶強化元素の一種または二種以上を添
加しても良い。ただし、それぞれ、0.05%、0.0
2%、0.01%、0.01%、0.01%、0.02
%未満ではその効果を得ることができない。またそれぞ
れ、0.2%、0.2%、0.2%、0.1%、0.3
%、0.2%を超え添加してもその効果は飽和する。
いて、以下に詳細に述べる本発明は、所定の成分含有量
になるように成分調整した溶鋼を鋳込むことによって得
たスラブを、高温鋳片のまま熱間圧延機に直送してもよ
いし、室温まで冷却後に加熱炉にて再加熱した後に熱間
圧延してもよい。再加熱温度については特に制限はない
が、1350℃以上であると、スケールオフ量が多量に
なり歩留まりが低下するので、再加熱温度は1350℃
未満が望ましい。熱間圧延工程は、仕上げ圧延終了温度
(FT)がAr3 点以上の温度域である必要がある。こ
れは、熱間圧延中に圧延温度がAr3 点を切るとフェラ
イト粒にひずみが残留して延性が低下するためである。
Ar3 点未満、Ar1 点以上の温度域(フェライトとオ
ーステナイトの二相域)で1〜10秒間空冷する。ここ
での空冷は、二相域でフェライト変態を促進させるため
に行うが、1秒未満では、二相域におけるフェライト変
態が不十分で未変態オーステナイト中へのCの濃化が十
分でないため、巻き取り後のミクロ組織において十分な
残留オーステナイトが得られない。また、10秒超で
は、圧延速度が低下し、操業上の支障をきたす。
では20℃/s以上の冷却速度で冷却するが、20℃/
s未満の冷却速度では、パーライトが生成してしまい目
的とするミクロ組織が得られない。巻取温度は、450
℃以上では、ベイナイト変態が進行しすぎて目的とする
量の残留オーステナイトが得られないばかりか、フェラ
イト相におけるCu単独で構成される粒子の大きさが2
nm超の大きさに成長するために静的強度はCuの析出
強化で著しく上昇して加工性が劣化するばかりでなく、
Cuの析出強化では疲労限が静的強度ほど上昇しないの
で疲労限度比が低下してしまう可能性がある。また、巻
取温度が350℃未満では、マルテンサイトが多量に生
成して目的とする量の残留オーステナイトが得られない
ため延性が劣化する。そのため、巻取温度の範囲は、3
50℃超、450℃未満とする。
℃までを30℃/hr以上とする必要がある。これは、
巻き取り後の冷却速度が30℃/hr未満であるとフェ
ライト相におけるCu単独で構成される粒子の大きさが
2nm超の大きさに成長するために静的強度はCuの析
出強化で著しく上昇して加工性が劣化するばかりでな
く、Cuの析出強化では疲労限が静的強度ほど上昇しな
いので疲労限度比が低下してしまう可能性があるためで
ある。ただし、200℃未満ではCuの拡散がほとんど
起こらないため、フェライト相におけるCu単独で構成
される粒子の成長が起こらないので、200℃未満の温
度域での冷却速度は限定しない。以上の理由で、本発明
では、巻き取り後の冷却速度は、200℃までを30℃
/hr以上とする。
る。表1に示す化学成分を有するA〜Xの鋼は、転炉に
て溶製して、連続鋳造後、表2に示す加熱温度(SR
T)、仕上温度(FT)で1.2〜5.4mmの板厚に
圧延した後、同じく表2に示す空冷時間、冷却速度(C
R)、巻取温度(CT)で巻き取った。なお、表中の化
学組成についての表示は質量%である。このようにして
得られた熱延板の引張試験は、供試材を、まず、JIS
Z2201記載の5号試験片に加工し、JIS Z
2241記載の試験方法に従って行った。表2にその試
験結果を示す。
mm、長さ98mm、幅38mm、最小断面部の幅が2
0mm、切り欠きの曲率半径が30mmである平面曲げ
疲労試験片にて、完全両振りの平面曲げ疲労試験を行っ
た。鋼板の疲労特性は、2×106 回での疲労強度σW
を鋼板の引っ張り強さσBで除した値(疲労限度比σW
/σB)で評価した。
る粒子は、供試鋼の1/4厚のところから透過型電子顕
微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分光(E
DS)や電子エネルギー損失分光(EELS)の組成分
析機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電
子銃(FEG)を搭載した透過型電子顕微鏡によって観
察した。観察される粒子の組成は、上記EDSおよびE
ELSによりCu単独であることを確認した。また、本
発明で規定するフェライト相におけるCu単独で構成さ
れる粒子のサイズは、観察される粒子のサイズをそれぞ
れ測定したもののその一視野での平均の値である。
C−1、E−1、G−1、H−1、I−1、J−1、L
−1、N−1,P−1、R−1、S−1、U−1、V−
1、W−1、X−1の17鋼であり、残留オーステナイ
トの体積率(SγR)が5%以上で強度−延性バランス
(σB×El)に優れ、且つフェライト相におけるCu
単独で構成される粒子の大きさ(dCu)が2nm以下
である疲労限度比が高い、疲労特性に優れた加工用熱延
鋼板が得られている。
明の範囲外である。鋼A−2は、熱間圧延後の巻取温度
(CT)が本発明範囲より低く、従って、微細な炭化物
が析出してしまい目的とする量の残留オーステナイトが
得られないため、残留オーステナイトの体積率(Sγ
R)が本発明の範囲外であるので、加工性の指標である
強度−延性バランス(σB×El)が十分ではない。鋼
A−3は、熱間圧延後の巻取温度(CT)が本発明範囲
より高いので、残留したオーステナイトがパーライトに
分解してしまうばかりか、フェライト相におけるCuの
析出物の大きさが2nm超の大きさに成長するために静
的強度がCuの析出強化で著しく上昇して加工性が劣化
するばかりでなく、Cuの析出強化では疲労限が静的強
度ほど上昇しない。従って、加工性の指標である強度−
延性バランス(σB×El)が十分ではなく、また、十
分な疲労限度比(σW/σB)が得られていない。
り多いので、スケールにより表面性状が劣化して十分な
疲労限度比(σW/σB)が得られていない。鋼F−1
は、疲労特性を改善する効果があるCuの含有量が本発
明範囲より少ないので十分な疲労限度比(σW/σB)
が得られていない。鋼J−2は、仕上温度(FT)が本
発明範囲より低いので、フェライト粒にひずみが残留し
て延性が低下する。従って、優れた強度−延性バランス
(σB×El)を有していない。
いので、フェライト変態が不十分で未変態オーステナイ
ト中へのCの濃化が十分でないため、巻き取り後のミク
ロ組織において十分な残留オーステナイトが得られず残
留オーステナイトの体積率(SγR)が本発明の範囲外
であるので、加工性の指標である強度−延性バランス
(σB×El)が十分ではない。鋼J−4は、空冷後の
冷却速度(CR)が本発明範囲より遅いので、パーライ
ト変態のノーズにかかりミクロ組織中にパーライトが混
入する。従って、残留オーステナイトの体積率(Sγ
R)が本発明の範囲外であるため加工性の指標である強
度−延性バランス(σB×El)が十分ではない。
分な残留オーステナイト量を得るのに不可欠な元素であ
るCの含有量が本発明範囲より少ないため、残留オース
テナイトの体積率(SγR)が本発明の範囲外であるの
で、加工性の指標である強度−延性バランス(σB×E
l)が十分ではない。鋼M−1は、フェライト変態の促
進とセメンタイトの析出抑制による未変態オーステナイ
ト中のC濃度上昇の促進の効果があるSiの含有量が本
発明範囲より少ないので、残留オーステナイトの体積率
(SγR)が本発明の範囲外であるため加工性の指標で
ある強度−延性バランス(σB×El)が十分ではな
い。
下させるPの含有量が本発明範囲より多いので、十分な
疲労限度比(σW/σB)が得られていない。鋼Q−1
は、オーステナイトの安定化元素であり目的とする残留
オーステナイトを得やすくする効果があるMnの含有量
が本発明範囲より少ないので、残留オーステナイトの体
積率(SγR)が本発明の範囲外となり加工性の指標で
ある強度−延性バランス(σB×El)が十分ではな
い。鋼T−1は、Cuと複合添加されることによって疲
労限を上昇させる効果があるBの含有量が本発明範囲よ
り少ないので十分な疲労限度比(σW/σB)が得られ
ていない。
性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法を提供す
るものであり、これらの熱延鋼板を用いることにより、
強度−延性バランスを十分に確保しつつ疲労特性の大幅
な改善が期待できるため、本発明は、工業的価値が高い
発明であると言える。
成される粒子の大きさと疲労限度比の関係で示す図であ
る。
疲労限度比の関係で示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 質量%にて、 C:0.05〜0.30%、 Si:0.1〜2.0%、 Mn:0.5〜2.5%、 P:≦0.02%、 S:≦0.01%、 Al:0.005〜0.1%、 Cu:0.2〜2.0%、 B:0.0002〜0.0020%、 を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であ
って、そのミクロ組織が、フェライト、ベイナイト、残
留オーステナイトを主要構成組織とし、さらに、マルテ
ンサイトを含むこともある複合組織であり、前記残留オ
ーステナイトの体積率は、5%以上、25%以下であ
り、前記フェライト相におけるCuの存在状態は、Cu
単独で構成される粒子の大きさが2nm以下の固溶状態
および/または析出状態であることを特徴とする、疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板。 - 【請求項2】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ni:0.1〜1.0% を含有することを特徴とする、請求項1に記載の疲労特
性に優れた加工用熱延鋼板。 - 【請求項3】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ca:0.005〜0.02%、 REM:0.005〜0.2% の一種または二種を含有することを特徴とする、請求項
1または請求項2に記載の疲労特性に優れた加工用熱延
鋼板。 - 【請求項4】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Mo:0.05〜0.2%、 V:0.02〜0.2%、 Ti:0.01〜0.2%、 Nb:0.01〜0.1%、 Cr:0.01〜0.3%、 Zr:0.02〜0.2% の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請
求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の疲労特性
に優れた加工用熱延鋼板。 - 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar3 変
態点以上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar3 変態点か
らAr1 変態点までの温度域で1〜10秒間空冷し、そ
の後、20℃/s以上の冷却速度で冷却して、350℃
超、450℃未満の温度範囲で巻き取り、その後、20
0℃までの冷却速度を30℃/hr以上とすることを特
徴とする、そのミクロ組織が、フェライト、ベイナイ
ト、残留オーステナイトを主要構成組織とし、さらに、
マルテンサイトを含むこともある複合組織であり、前記
残留オーステナイトの体積率は、5%以上、25%以下
であり、前記フェライト相におけるCuの存在状態は、
Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以下の固溶
状態および/または析出状態である疲労特性に優れた加
工用熱延鋼板の製造方法。
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