JPH11271384A - 非接地系電路の線路定数計測装置及び地絡監視装置 - Google Patents

非接地系電路の線路定数計測装置及び地絡監視装置

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JPH11271384A
JPH11271384A JP10070779A JP7077998A JPH11271384A JP H11271384 A JPH11271384 A JP H11271384A JP 10070779 A JP10070779 A JP 10070779A JP 7077998 A JP7077998 A JP 7077998A JP H11271384 A JPH11271384 A JP H11271384A
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力 八木
Takeshi Fujita
剛 藤田
Yoshikazu Inoue
善和 井上
Susumu Kitamura
進 北村
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 保護範囲外の地絡に影響されないで、微地絡
を含む地絡電流Igを演算により精度高く求める。ま
た、この精密演算に用いる線路定数Y,Yfを活線状態
で求めることにより、演算精度を常に高く保ち、併せ
て、この線路定数から地絡に到る前の状況を把握して、
電気設備の保護・監視を的確に行う。 【構成】 保護範囲に向かって流れる零相電流I0と、
零相電圧V0を検出し、保護範囲の各相の対地アドミタ
ンスの総和Y=Ya+Yb+Ycを第1の線路定数とし、
上記対地アドミタンスの不平衡分によって生じる零相電
流Ifを基準電圧Eで表した式If=Yf・EにおけるYf
を第2の線路定数としたとき、Ig=I0−(Y・V0
f・E)に基づくベクトル演算を行って、地絡電流Ig
を算出する。また、保護範囲外の対地アドミタンスが変
化したとき、その前後に計測された零相電流と零相電圧
の組I01,V01およびI02,V02に基づき、二元連立方
程式Y・V01+Yf・E=I01… Y・V02+Yf・E
=I02…を解いて、第1の線路定数Y及び第2の線路
定数Yfを求める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、線路定数を用いるこ
とにより一線地絡時の地絡電流を精度高く算出できる非
接地系電路の地絡監視装置、及び上記線路定数を活線状
態で計測して、この線路定数から電路の絶縁状態を的確
に把握すると共に、上記地絡監視装置の算出精度を常に
高く保つことができる線路定数計測装置に関する。さら
に、この発明は、雷等によるパルス地絡の検出を、保護
範囲であることを判定しながら行なえる非接地系電路の
地絡監視装置を提供する。
【0002】
【従来の技術】非接地系電路では、地絡継電器または地
絡方向継電器を用い、地絡事故から系統を保護してい
る。地絡継電器は、零相電流I0(ベクトル量を表す。
以下の説明で、電流、電圧、アドミタンス、及び線路定
数に付けられる符号は、全てベクトル量を表わすものと
する。)が設定レベルを超えたとき動作して保護範囲の
電路を系統から切り離す。地絡方向継電器は、零相電流
0が設定レベルを超えると同時に、零相電流I0と零相
電圧V0の位相関係から保護範囲の地絡事故であると判
定したとき、保護範囲の電路を系統から切り離す。
【0003】このように、従来の地絡保護は、零相電流
0の大きさと、零相電流I0と零相電圧V0の位相関係
から、地絡に対する監視と保護を行っていた。
【発明が解決しょうとする課題】
【0004】しかし、実際の電路では、地絡電流Ig
零の場合でも、零相電流I0及び零相電圧V0が存在し、
しかも時々刻々変化している。これは、構内と構外を含
めた電路全体の対地アドミタンスの不平衡によって生じ
るもので、この不平衡は、例えば電路に接続される電気
設備によって生じ、この接続・切り離しによって零相電
流I0及び零相電圧V0が変動する。
【0005】したがって、零相電流I0を算出しても、
地絡電流Ig自体を検出することにはならず、地絡して
いない状態で発生している零相電流I0の大きさだけ誤
差が生じる。このため、地絡保護継電器及び地絡方向継
電器の動作点の決定が困難となり、地絡電流Igが小さ
い微地絡に対して動作させることはできなかった。
【0006】さらに、地絡検出を困難にする他の要因と
して、電路の対地アドミタンスが大きいと地絡事故に対
する零相電圧V0の発生量が小さくなり、電源側に零相
電圧V0を大きく変化させる電圧調整器があると地絡事
故による零相電圧V0の変化を相対的に小さくするとい
う電路の条件もある。
【0007】このため、地絡方向継電器において、零相
電圧V0と零相電流I0との位相関係による地絡方向判定
を確実に行うことは困難で、保護範囲外の地絡事故によ
って地絡方向継電器が誤動作してしまう場合があった。
【0008】また、本出願人は、「電気設備の地絡監視
装置」(特許第2609793号)の請求項3におい
て、雷等によるパルス地絡を検出する装置を公表してい
る。この装置は、雷等によるパルス地絡の検出ができる
が、その発生地点が保護範囲であるか保護範囲外である
かの判定ができない。これは、電路を保護・監視する立
場からは機能が不充分なものであった。
【0009】そこで、本発明は、地絡事故が発生してい
ないとき電路に零相電流I0及び零相電圧V0を生じさせ
る電路の要素を線路定数として把握し、この線路定数に
基づき、算出した零相電流I0から地絡電流Igを精度高
く求めると同時に、保護範囲(構内)の地絡であると判
定できる地絡監視装置を提供する。また、この線路定数
を活線状態で算出し、上記地絡監視装置の算出に利用し
て演算の精度を常に高く保つと共に、この線路定数自体
から、微地絡の発生及び電路の絶縁性能を的確に判定す
る線路定数計測装置を提供する。さらに、この発明は、
雷等によるパルス地絡の検出を、保護範囲であることを
判定しながら行なえる非接地系電路の地絡監視装置を提
供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明が適用される非接
地系電路を、図1に示す。これは、変電所等の三相電源
1から受電側に延びる非接地系の電路2であり、特別高
圧、高圧、低圧の何れをも含む。本発明は三相電源1か
ら電路の末端に至る電路2の中間に境界3を考え、その
上流側または下流側を保護範囲とする。
【0011】例えば、受電する構内設備の電路を保護範
囲と考えたとき、その受電点(電気室)が上記境界とな
り、三相電源1から受電点までの区間の電路(上流側の
分岐路を含む)が保護範囲外の電路となる。
【0012】(a) 保護範囲における地絡電流Ig
検出する本発明の地絡監視装置は、上記境界を保護範囲
に向かって流れる零相電流I0を検出する零相電流検出
手段と、電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検出手
段と、
【0013】保護範囲の各相の対地アドミタンスのベク
トル和Y=Ya+Yb+Ycを第1の線路定数とすると
き、上記零相電流I0と上記零相電圧V0をベクトル量と
して入力し、 Ig=I0−Y・V0 ……(1) に基づくベクトル演算を行って、保護範囲における地絡
電流Igを検出する地絡電流演算手段とを備える。
【0014】上記保護範囲の各相の対地アドミタンスY
a、Yb、Ycは、保護範囲を境界の下流側としたとき、
図1における受電側電路の各相の対地アドミタンス
2a,Y 2b,Y2cが用いられ、保護範囲を境界の上流側
としたとき電源側電路の各相の対地アドミタンスY1a
1b,Y1cが用いられる。
【0015】この地絡電流Igの算出方法は、保護範囲
に向かって流れる零相電流I0から、零相電圧V0によっ
て保護範囲の対地アドミタンスのベクトル和Yに対して
流れる電流を減算して、地絡電流Igを求めるので算出
精度が高くなり、微地絡を含む地絡検出が可能になる。
【0016】また、上記演算は検出した零相電流I0
ら保護範囲の地絡電流Ig以外の成分を差し引くという
計算をするので、この計算結果により、上記Igが存在
するときは保護範囲の地絡と判定できる。保護範囲外で
地絡があっても、上記Igが検出されないので、保護範
囲外の地絡によって誤動作することはない。
【0017】上述した第1の線路定数Yのみを用いる地
絡電流Igの算出方法は、保護範囲の対地静電容量(対
地アドミタンスYa、Yb、Yc)の不平衡分が小さく、
その不平衡分によって生じる零相電流I0を無視できる
場合に、高い算出精度が保てるものである。この高い算
出精度を保てる条件は、具体的には、図2(a)に示す
ように、零相電流検出手段(ZCT)を設置している場
所より電気室までの間に高圧電線路(電力ケーブル、架
空電線路等)を有していない場合、あるいは図2(b)
に示すように、零相電流検出手段(ZCT)を設置して
いる電気室より高圧電線路の引出しがない場合等であ
る。これらの高圧電線路は、一般に、対地静電容量の不
平衡を生じさせる場合が多いからである。
【0018】(b) 上記(a)の地絡監視装置におけ
る地絡電流Igの算出精度を、保護範囲の対地静電容量
の不平衡分が無視できない大きさである場合にも高く維
持するためには、上記(1)式を、各相の対地アドミタ
ンスYa,Yb,Ycの不平衡により生じる零相電流If
考慮して修正する必要がある。
【0019】上記零相電流Ifは、零相分を除いた相電
圧Ea,Eb,Ec(ベクトル量)の各々に上記保護範囲
の各相の対地アドミタンスYa,Yb,Ycを乗じた値の
ベクトル和If=Ya・Ea+Yb・Eb+Yc・Ecとして
求められる。この零相電流Ifは、電路の所定部分の零
相分を除いた電圧(零相電圧の影響を受けない。)を基
準電圧E(ベクトル量)とすると、If=Yf・Eと表わ
せる。そこで、このYfを第2の線路定数として導入
し、上記(1)式を Ig=I0−Y・V0−Yf・E ……(2) のように修
正する。
【0020】そして、予め第1の線路定数Yと第2の線
路定数Yfを求めておき、検出した零相電流I0及び零相
電圧V0と、電路の所定部分の電圧を検出して作成した
基準電圧Eを、この(2)式に代入してベクトル演算を
行うことにより、保護範囲の対地アドミタンスYa
b,Ycの不平衡が大きい場合にも高い演算精度を維持
しながら、地絡電流Igを算出することができる。
【0021】なお、上記零相分を除いた基準電圧Eは、
例えば、零相分を除いたa相の相電圧Ea、又はa相と
b相の線間電圧Eabのように、任意に定めることができ
る。この基準電圧Eを零相分が除かれたものとして電路
から取り出す方法は、例えば、零相電流によって位相が
変動しない線間電圧を測定して得た位相情報と、その電
路の定格電圧から基準電圧Eを作成するという方法があ
る。
【0022】(c) 上記(a)及び(b)の地絡監視
装置は、求めた地絡電流Igが、所定の基準値を超えた
場合に、電路の遮断のための指令信号、警報信号、また
は計測値の記録のための制御信号を出力する第1の地絡
判定手段を設けることができる。この基準値は、各出力
目的に適合するように、個別に設定される。電路の遮断
は系統保護のために行われるもので、この基準値は、他
の基準値に比べ、小さい値に設定される。警報の出力
は、電路を遮断する場合、または電路の遮断には到らな
いが電路の遮断に到る可能性が高く、電路の管理者に注
意を喚起したい場合に行われる。計測値の記録は、地絡
事故の発生原因の究明や、電路の絶縁性能を把握・管理
するために行われる。
【0023】(d) 上記(c)の地絡判定は地絡電流
gに代え、地絡インピ−ダンスZgによって行うことも
できる。これは、上記(a)又は(b)の地絡監視装置
に、地絡相の零相分を除いた相電圧Egを作成する地絡
相電圧作成手段と、地絡電流Igから地絡インピ−ダン
スZgを求める地絡インピ−ダンス演算手段と、求めた
地絡インピ−ダンスZgが所定の基準値より低下したと
き、電路の遮断のための指令信号、警報信号、または計
測値の記録のための制御信号を出力する第2の地絡判定
手段を設けることによって行う。
【0024】上記地絡相電圧作成手段は、前記(1)式
又は(2)式を用いて算出された地絡電流Ig(ベクト
ル量)を、電路の所定部分から検出した電圧と位相比較
して、地絡相を特定し、この地絡相の零相分を除いた電
圧Eg(ベクトル量)を作成するものである。
【0025】地絡インピ−ダンス演算手段は、地絡相電
圧作成手段の出力する電圧Eg、零相電圧検出回路の出
力する零相電圧V0、及び前記(1)式又は(2)式を
用いて算出された地絡電流Igを、 ベクトル式Zg=(Eg+V0)/Ig …… (3)
【0026】に代入して、地絡インピ−ダンスZgを算
出する。なお、求めた地絡インピ−ダンスZgに対する
地絡判定は、例えば地絡インピ−ダンスZgの絶対値、
又はその実数部を、所定の基準値と比較することにより
行う。地絡判定時に出力される電路の遮断のための指令
信号、警報信号、及び計測値の記録のための制御信号の
意義は、先に(c)で説明したものと同様である。
【0027】(e) 上記第1の線路定数Y及び第2の
線路定数Yfは、線路定数計測装置によって活線状態で
電路を直接測定して求めることができる。
【0028】この線路定数計測装置は、保護範囲と保護
範囲外の境界の電路を流れる零相電流I0を検出する零
相電流検出手段と、上記非接地系電路の零相電圧V0
検出する零相電圧検出手段と、
【0029】電路の一部の電圧を検出して基準電圧E
(ベクトル量)を作成する基準電圧作成手段と、
【0030】線路定数計測開始時の零相電流I0と零相
電圧V0を、夫々I01,V01(ベクトル量)として記憶
し、検出している零相電圧V0が、この記憶時点から所
定値以上変動したとき、検出している零相電流I0と零
相電圧V0を、夫々I02,V02(ベクトル量)として記
憶する電路変化検出手段と、
【0031】保護範囲の各相の対地アドミタンスのベク
トル和Y=Ya+Yb+Ycを第1の線路定数とし、保護
範囲の各相の対地アドミタンスYa,Yb,Yc(ベクト
ル量)の不平衡分によって流れる零相電流If=Ya・E
a+Yb・Eb+Yc・Ec(但し、Ea,Eb,Ecは零相分
を除いた相電圧)を、前記基準電圧Eによって表した式
f=Yf・EにおけるYf(ベクトル量)を第2の線路
定数とするとき
【0032】上記電路変化検出手段によって記憶された
零相電圧V01,V02(ベクトル量)および零相電流
01,I02(ベクトル量)に基づき、二元連立ベクトル
方程式 Y・V01+Yf・E=I01 ……(4) Y・V02+Yf・E=I02 ……(5) を解いて、第1の線路定数Y及び第2の線路定数Yf
検出する線路定数演算手段とを備えたものである。
【0033】上記(4)(5)式は、保護範囲の対地ア
ドミタンスに変動がない(例えば、対地静電容量が一
定、かつ地絡電流Ig=0)と仮定したとき成立する式
で、このとき保護範囲外の対地アドミタンスが変化する
と、前記(2)式におけるI0とV0が、図3に示すよう
に変化するので、電路変化検出手段によって、その変化
の前後のI0およびV0を、夫々、I01,I02および
01,V02として検出・記憶して用いる。
【0034】上記電路変化検出手段において、I01とV
01を記憶した後に行うI02およびV 02の検出記憶は、記
憶したV01に対するV0の差分ΔV0が、所定値(例えば
10V)以上に大きくなったときに行い、上記(4)
(5)式による演算に必要な精度を確保している。
【0035】このようなV0の変動は、線路定数の計測
開始後に、保護範囲外の電路における電気設備の接続・
切り離し等による対地アドミタンスの変化を待って行う
ことができる。なお、保護範囲の対地アドミタンスの変
動によって、V0が変動したときは、この期間における
零相電流の変動分ΔI0と零相電圧の変動分ΔV0の位相
関係から、これを識別できる。このときは、I01とV01
を記憶する線路定数の計測を始めからやり直す。
【0036】上記V0の変動は、電路の通常の稼動状態
において自然に生じる保護範囲外の対地アドミタンスの
変化を利用していたが、このV0の変動は、計測用アド
ミタンスYTを保護範囲外の電路に接続することにより
強制的に行なってもよい。
【0037】(f) 上記(e)の線路定数計測装置で
求めた第1の線路定数である保護範囲の対地アドミタン
スYからは、tanδに基づく電路の絶縁性能の評価を
行うことができる。すなわち、保護範囲の対地アドミタ
ンスYの虚数部に対する実数部の比率(tanδ)が所
定の基準値より増加したとき、電路の遮断のための指令
信号、警報信号、または計測値の記録のための制御信号
を出力する第3の地絡判定手段を、上記(e)で述べた
線路定数計測装置に付加し、活線状態で微地絡等の検出
と電路の絶縁性能の評価を行う。なお、上記基準値及び
電路の遮断のための指令信号の意義は、前記同様であ
る。
【0038】(g) 上記(e)で述べた線路定数計測
装置で求めた第1の線路定数Yと第2の線路定数Yf
用いると、各相の対地アドミタンスの虚数項に対する実
数項の比率(tanδ)を同じとすることにより、保護
範囲の相別の対地アドミタンスYa,Yb,Ycを求める
ことができる。
【0039】これは、上記(e)の線路定数計測装置
に、次の相別対地アドミタンス演算手段と相別対地アド
ミタンス出力手段を加えることによって行なう。
【0040】相別対地アドミタンス演算手段は、上記基
準電圧Eと、前記(4)(5)式で求めた第1の線路定
数Y及び第2の線路定数Yfと、零相分を除いた相電圧
a、Eb、Ec(ベクトル量)を、 Y =Ya+Yb+Yc …… (6) Yf・E=Ya・Ea+Yb・Eb+Yc・Ec …… (7) に代入し、
【0041】さらに、各相の対地アドミタンスYa
b,Ycの虚数部に対する実数部の比が等しいとの前提
に基づき、(7)式を実数部と虚数部に分解して2つの
式とすることにより3元連立ベクトル方程式とし、この
解より保護範囲の相別対地アドミタンスYa,Yb,Yc
を求めるものである。この分解の具体的方法は、発明の
実施の形態の項で述べる。
【0042】相別対地アドミタンス出力手段は、保護範
囲の相別対地アドミタンスYa,Yb,Ycをディスプレ
イ表示し、必要に応じ紙面又は電気信号で出力する。こ
のように、相別の対地アドミタンス検出表示すると、電
路の地絡監視・保護を、さらに適切に行なえる。
【0043】(h) 上記(e)の線路定数計測装置で
求めた第1の線路定数Yと第2の線路定数Yfは、上記
(a)〜(d)に述べた地絡監視装置で利用することが
できる。これにより、活線状態を維持しながら、その演
算精度を常に高く維持することができる。
【0044】(i) 上記(a)〜(h)の地絡監視装
置及び線路定数計測装置は、零相電圧V0及び零相電流
0を、絶対値と位相角で表わされるベクトルとして演
算するので、地絡電流I0と地絡電圧V0が正弦波である
ことが前提となっている。このため、雷によるアーク地
絡や電力ケーブルの間欠地絡が発生したときの地絡パル
スの検出には、全く対応できない。
【0045】電路の保護・監視をする立場から、雷によ
るアーク地絡や電力ケーブルの間欠地絡が発生したと
き、それが保護範囲のものであるか否かを判別し、発生
地点を推定することが必要不可欠になる。そこで、雷等
によるパルス地絡が保護範囲であることを確実に判定で
きる地絡監視装置として次の構成のものを提供する。
【0046】すなわち、パルス地絡が保護範囲であるこ
とを判定できる地絡監視装置は、非接地系電路を上流側
と下流側に二分し、その一方を保護範囲、他方を保護範
囲外としたとき、その境界を保護範囲に向かって流れる
零相電流I0を検出する零相電流検出手段と、上記非接
地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検出手段
と、
【0047】上記零相電圧V0の瞬時値が、地絡パルス
電圧の検出レベルを、正方向又は負方向に超えて変化し
たタイミングを検出する地絡パルス電圧検出回路と、
【0048】上記零相電流I0の瞬時値が、地絡パルス
電流の検出レベルを、正方向又は負方向に超えている期
間を検出し、正及び負のパルス電流発生信号を出力する
地絡パルス電流検出回路と、
【0049】地絡パルス電圧検出回路が正の電圧変化タ
イミングを検出したとき、地絡パルス電流検出回路から
正のパルス電流発生信号が出力されているとき、保護範
囲のパルス地絡と判定する正方向のパルス地絡判定回路
と、
【0050】地絡パルス電圧検出回路が負の電圧変化タ
イミングを検出したとき、地絡パルス電流検出回路から
負のパルス電流発生信号が出力されているとき、保護範
囲のパルス地絡と判定する負方向のパルス地絡判定回路
とを備えたものである。
【0051】この地絡監視装置は、パルス地絡が保護範
囲であるか否かの判定を、地絡電圧パルスが発生したと
き、零相電流I0が同方向に所定の大きさを超えている
か否かによって行う。
【0052】(j) 上記(i)の地絡監視装置は、雷
撃によるアーク地絡及び電力ケーブルの間欠地絡の双方
を検出するものであるが、電力ケーブルの間欠地絡であ
ることの判定はできない。そこで、電力ケーブルの間欠
地絡が商用周波数に同期して発生するという性質に基づ
いて、電力ケーブルの間欠地絡を検出する地絡監視装置
として、次の構成を提供する。
【0053】電力ケーブルの間欠地絡のみを検出する地
絡検出装置は、上記(i)の地絡検出装置において、地
絡パルス電圧検出回路を、零相電圧V0の瞬時値が、地
絡パルス電圧の検出レベルを正方向又は負方向に超えて
いる期間を検出し、正及び負のパルス電圧発生信号を出
力するものとして使用し、正方向と負方向のパルス地絡
判定回路に代え、
【0054】商用周波数の1サイクル間隔でクリアさ
れ、地絡パルス電圧検出回路が、正のパルス電圧発生信
号を出力しているとき、地絡パルス電流検出回路から正
のパルス電流発生信号が出力される毎に一発のカウント
を行う正パルスカウンタと、
【0055】商用周波の1サイクル間隔でクリアされ、
地絡パルス電圧検出回路が、負のパルス電圧発生信号を
出力しているとき、地絡パルス電流検出回路から負のパ
ルス電流発生信号が出力される毎に、一発のカウントを
行う負パルスカウンタと、
【0056】上記正パルスカウンタのカウント値と、負
パルスカウンタのカウント値が、夫々所定数ずつ発生
し、かつその数が略同一であるとき、保護範囲の電力ケ
ーブルにおける間欠地絡の検出信号を出力する間欠地絡
判定回路とを備えたものである。
【0057】
【発明の実施の形態】図1の非接地系電路に設置された
本発明の地絡監視装置Aを図4に示す。この実施形態は
受電点を境界とする構内設備の電路を保護範囲とする。
【0058】図4において、4は零相電流検出手段であ
る零相変流器で、保護範囲(構内)と保護範囲外(構
外)の境界である受電点に配置されている。5は零相電
圧検出手段で、図示例は各相の電線にスター接続された
3つのコンデンサの中心接続点とアース間に分圧コンデ
ンサを接続し、この分圧コンデンサの両端電圧を変成器
を介して取り出す構成のものである。
【0059】6は基準電圧作成手段で、電路の所定部分
の電圧を検出して基準電圧E(ベクトル量)を作成す
る。この基準電圧Eは、本発明において、第2の線路定
数Yfを用いる計算をするとき用いられるもので、例え
ば、零相分を除いたa相の相電圧Ea、又はa相とb相
の線間電圧Eabのように、電路の任意部分の電圧を用い
ることができるが、零相電流によって大きさと位相が変
動しないことが必要になる。
【0060】図示例の基準電圧作成手段6は、電圧検出
回路6aとして、2個の電圧変成器VT1,VT2の1次
側を電路にV結線し、その2次側に3個の抵抗器Ra
b,Rcをスター結線し、各抵抗器Ra,Rb,Rcの両
端から相電圧を取り出すものを用いている。そして、こ
の相電圧Eaの位相を持ち、大きさを電路の定格電圧に
一致させた基準電圧Eを作成して出力している。この電
圧検出回路6aでは、零相電圧V0が中性点Enに現わ
れ、検出された相電圧の位相は、零相電流I0に全く影
響されない。
【0061】7は地絡電流演算手段で、別に設定入力さ
れる第1の線路定数Yと第2の線路定数Yfから、 Ig=I0−Y・V0 ……(1) または、Ig=I0−Y・V0−Yf・E ……(2) の式によるベクトル演算を行って地絡電流Igを算出す
る。
【0062】なお、上記(1)式を用いる場合は、既に
図2によって説明したように、保護範囲の対地静電容量
の不平衡が小さく、不平衡分によって生じる零相電流I
fを無視できる場合である。
【0063】8は第1の地絡判定手段で、地絡電流Ig
が、所定の基準値を超えたとき、電路の遮断のための指
令信号、警報信号、または計測値の記録の為の制御信号
を出力する。この基準値及び電路の遮断のための指令信
号等の意義は既に述べた通りである。なお、計測値の記
録の内容は、例えば、零相電圧V0、零相電流I0、零相
電圧V0−零相電流I0の位相差、地絡電流Ig、If
流、地絡抵抗Rg、対地アドミタンスY、電路−対地間
tanδ等である。記録は、デジタル記憶装置に対して
行う他、ペンレコーダ等のアナログ装置への出力も可能
である。
【0064】9は地絡相電圧作成手段で、前記(1)式
又は(2)式を用いて算出された地絡電流Ig(ベクト
ル量)を、電路の所定部分から検出した電圧と位相比較
して、地絡相を特定し、この地絡相の零相分を除いた電
圧Eg(ベクトル量)を作成する。
【0065】この地絡相電圧作成手段9は、例えば地絡
相の判定を、前記基準電圧Eと地絡電流Igの位相比較
により行い、地絡相の零相分を除いた相電圧Egとし
て、この基準電圧Eそのものを出力するか、又はこの基
準電圧Eを所定の位相角(±120°)だけ移相した電
圧を作成して出力する。
【0066】10は地絡インピ−ダンス演算手段で、地
絡相電圧作成手段9の出力する電圧Eg、零相電圧検出
手段5の出力する零相電圧V0、及び前記(1)式、又
は(2)式を用いて算出された地絡電流Igを、 ベクトル式Zg=(Eg+V0)/Ig …… (3) に代入して、地絡インピ−ダンスZgを算出する。
【0067】11は第2の地絡判定手段で、算出した地
絡インピ−ダンスZgが所定の基準値より低下したと
き、電路の遮断のための指令信号の出力、警報信号の出
力、または計測値の記録の為の制御信号の出力を行う。
この基準値との比較は、例えば地絡インピ−ダンスZg
の絶対値、または、地絡インピ−ダンスZgの実数部で
ある地絡抵抗Rgによって行われる。
【0068】上記基準電圧作成手段6、地絡電流演算手
段7、第1の地絡判定手段8、地絡相電圧作成手段9、
地絡インピ−ダンス演算手段10、第2の地絡判定手段
11は、例えばマイクロコンピュータによって構成され
る。この場合、零相電流I0、零相電圧V0等の各電圧
は、図示しないA/D変換器とサンプリング回路を通し
て入力され、ベクトル量として処理される。これらの演
算手段は、加算、減算、乗算または除算を行うアナログ
回路を必要個数組み合わせて構成することもできる。
【0069】ここで、上記(1)(2)式が成立するこ
とを説明する。図4に示すように、非接地系電路の保護
範囲である受電側において、a相が一線地絡した場合を
考える。零相変流器4において検出される零相電流I0
は、 I0=Ig+I2a+I2b+I2c であるから、 I0=(Ea+V0)/Rg+ Y2a・(Ea+V0)+Y2b・(Eb+V0)+Y2c・(Ec+V0) I0=(Ea+V0)/Rg+(Y2a+Y2b+Y2c)V0 +(Y2a・Ea+Y2b・Eb+Y2c・Ec) ここで、地絡電流Igは、Ig=(Ea+V0)/Rgであるので、 ∴ I0=Ig+(Y2a+Y2b+Y2c)・V0 +(Y2a・Ea+Y2b・Eb+Y2c・Ec) ……(8) 但し、V0 :零相電圧 Ea :a相の電圧(零相分を除く) Eb :b相の電圧(零相分を除く) Ec :c相の電圧(零相分を除く) I0 :保護範囲に向かって流れる零相電流 I2a:保護範囲のa相において対地アドミタンスに流れ
る電流 I2b:保護範囲のb相において対地アドミタンスに流れ
る電流 I2c:保護範囲のc相において対地アドミタンスに流れ
る電流 Y2a:構内のa相の対地アドミタンス Y2b:構内のb相の対地アドミタンス Y2c:構内のc相の対地アドミタンス である。
【0070】この(8)式は、構外と構内の境界の電路
に設置された零相変流器4で算出される零相電流I
0は、地絡抵抗Rgを通って流れる地絡電流Igと、零相
電圧V0によって、各対地静電容量Y2a+Y2b+Y2c
流れる電流、及び各相電圧Ea,Eb,Ecの不平衡分に
よって各静電容量に流れる電流If=Y2a・Ea+Y2b
b+Y2c・Ecの総和となっていることを表している。
【0071】そこで、Y2a+Y2b+Y2cを第1の線路定
数Yとし、Ifを前記基準電圧Eと第2の線路定数Yf
よりIf=Yf・Eとして表わし、求めようとする地絡電
流Igについて整理すると、次の(2)式が得られる。 Ig=I0−V0・Y−Yf・E ……(2)
【0072】この式は、零相変流器4の設置点におい
て、零相電流I0の流れ方向を保護範囲である構内側に
向かって取った場合について考えたものであるが、零相
電流I 0の流れ方向を保護範囲外である構外側に取り、
各相の対地アドミタンスYa,Y b,Ycを保護範囲外の
ものY1a,Y1b,Y1cとすれば、構外の地絡電流Ig
演算する式として成立する。
【0073】上記Ig=I0−V0・Y ……(1)式
は、保護範囲の対地静電容量の不平衡分が小さく、
(2)式のYf・Eが無視できる場合に成立する。上記
(2)式に基づいて行われるIgベクトル量の算出例
を、ベクトル図で示すと図5のようになる。
【0074】零相電圧V0の実測値が、16.5V(位
相角353°)、零相電流I0の実測値が1.9mA
(位相角53°)であるとき、第1の線路定数が、|Y
|=271.4μΩ-1(保護範囲の電路の一相当りの対
地静電容量Cを0.24μFとして計算したので位相角
は−90°)、第2の線路定数と基準電圧Eの積If
f・Eが4.6mA(位相角12°)であったとす
る。
【0075】V0・Yは、Y(静電容量)によりV0ベク
トル量より90°遅れ、V0・Y=4.6mA(位相角
266°)となり、Igベクトル量は、I0,Y・V0
f・Eの各ベクトル量の合成値として、Ig=5.9m
A(位相角121°)として求められる。
【0076】保護範囲外で地絡が生じた場合は、I0
流ベクトル量と、ベクトル量(Y・V0+Yf・E)が等
しくなり、(2)式によって、差分を計算すれば、Ig
ベクトル量の電流値は0mAになる。これは、実験デー
タによっても確認されている。
【0077】すなわち、(2)式による演算をしてIg
電流ベクトル量値が存在すれば、地絡事故点が保護範囲
であると判定でき、地絡電流Igの算出と同時に、地絡
事故が保護範囲で発生したか否かの判定ができることに
なる。
【0078】上記地絡電流演算手段7で使用される第1
の線路定数Yは、例えば保護範囲の電線の亘長から計算
したものを用い、第2の線路定数Yfを0として扱うこ
ともできる。
【0079】しかし、上記第1及び第2の線路定数Y,
fは、電路への機器の接続の有無及び経時変化等によ
って変動し、Yfも無視できない大きさになることが多
いので、厳密には実測することが好ましい。次に、上記
第1の線路定数Yと第2の線路定数Yfを、活線状態で
計測する線路定数計測装置Bの具体例について説明す
る。図6において、4は前記零相電流検出手段である零
相変流器、5は零相電圧検出手段である。
【0080】12は電路変化検出手段で、図3に示すよ
うに、線路定数計測開始時の零相電流I0と零相電圧V0
を、夫々I01,V01(ベクトル量)として記憶し、検出
している零相電圧V0が、この記憶値V01から所定値以
上変動したとき、検出している零相電流I0と零相電圧
0を、夫々I02,V02(ベクトル量)として記憶す
る。
【0081】この電路変化検出手段12によるV0の変
動検出は、電路の通常の稼動状態において自然に生じる
保護範囲外の対地アドミタンスの変化を待って行なって
もよいが、計測用アドミタンスYTを保護範囲外の電路
に接続する強制変化手段12aを設けることによって行
なうこともできる。この強制変化手段12aは、計測用
アドミタンスYTとして、図6に示すように単に抵抗器
を開閉器を通して接続するものの他に、図7(a)
(b)(c)に示すようにコンデンサを用いたり、変圧
器を介して接続される抵抗器等を用いることができる。
【0082】13は線路定数演算手段で、電路変化検出
手段12によって記憶された電路変化の前後の零相電流
01,I02と零相電圧V01,V02、及び基準電圧Eか
ら、前記(4)(5)式に基づいて第1の線路定数Yと
第2の線路定数Yfを算出する。
【0083】14はtanδに基づく微地絡検出及び電
路の絶縁性能の評価を行う第3の地絡判定手段で、第1
の線路定数(保護範囲の対地アドミタンス)Yの虚数部
に対する実数部の比率(tanδ)が所定の基準値より
増加したとき、電路の遮断のための指令信号、警報信
号、または記録のための制御信号を出力する。
【0084】15は相別アドミタンス演算手段で、算出
された第1の線路定数Yと第2の線路定数Yfを用い、
電路の零相分を除いた相電圧Ea,Eb,Ecから保護範
囲の各相の対地アドミタンスYa,Yb,Ycを算出す
る。
【0085】15aは相別アドミタンス算出手段15に
よって算出された相別アドミタンスを出力する相別アド
ミタンス出力手段で、この出力は、画像表示装置への表
示、プリンター等の紙出力、及び記録装置等への電気信
号出力によって行われる。
【0086】上記線路定数演算手段13において行われ
る演算内容について説明する。図6において、構内が健
全な場合(Rg=∞)の時の零相電圧V0及び零相電流I
0について考える。Rg=∞であるから、前記(2)式に
おいてIg=0とおくことができる。この時のV0,I0
をV00,I00とすると Y・V00+Yf・E=I00 …………(9) となる。
【0087】(9)式においてV00、I00は系統の構内
外の状態によっても変化するので、V00の異なる2個の
値と、それに対応するI00の値をそれぞれ(V01
01),(V02、I02)とすると、(9)式は、次の
(10)(11)式となる。 Y・V01+Yf・E=I01 …………(10) Y・V02+Yf・E=I02 …………(11) (10)−(11)式より Y(V01−V02)=I01−I02 …………(12) ∴ Y=(I01−I02)/(V01−V02)…………(13) この(13)式により、第1の線路定数Y(保護範囲の
対地アドミタンスの総和)が算出できる。また、(1
0)式を変形すると、次の(14)式となる。 Yf・E=I01−Y・V01 …………(14) この(14)式により第2の線路定数Yfを求めること
ができる。
【0088】また、上記相別対地アドミタンス演算手段
15は、上記(4)(5)式を用い、線路定数演算手段
13で求めた第1の線路定数Y及び第2の線路定数Yf
と、電路の零相分を除いた相電圧Ea,Eb,Ecを(ベ
クトル量)を、 Y =Ya+Yb+Yc …… (6) Yf・E=Ya・Ea+Yb・Eb+Yc・Ec …… (7) に代入し、
【0089】さらに、各相の対地アドミタンスYa
b,Yc(ベクトル量)の虚数部に対する実数部の比が
等しいとの前提に基づき、(7)式を実数部と虚数部に
分解して2つの式とすることにより3元連立ベクトル方
程式とし、この解より保護範囲の相別対地アドミタンス
a,Yb,Yc(ベクトル量)を求める。この計算式の
例を、次に説明する。a相の相電圧Eaを基準ベクトル
Eに取り、各相の相電圧Ea,Eb,Ecを、
【0090】
【数1】 とする。
【0091】一般に各相の対地アドミタンスは、静電容
量が大きく抵抗分(漏れ抵抗)が少ない。そこで、この
例では、各相の対地アドミタンスを静電容量分のみとし
て扱う。このとき、第1の線路定数Y(保護範囲の対地
アドミタンスの総和)を表わす(6)式は、 jωC=jω(Ca+Cb+Cc)……(6)′ とな
る。但し、Ya=jωCa,Yb=jωCb,Yc=jωCc
次に、第2の線路定数Yfを表わす上記(7)式を実数
部と虚数部に分解する。If=jωCa・Ea+jωCb
b+jωCc・Ec から、
【0092】
【数2】 が導かれる。
【0093】この(7)′式の左辺を実数部と虚数部に
分解するためPとjQを導入し、Yf = P+jQとす
ると、
【0094】
【数3】 となる。(7−1)式の両辺をj倍し、上記(6)′式
及び(7−2)式と共に並べると次の3元連立方程式と
なる。
【0095】
【数4】
【0096】この3元連立方程式において、jωCは第
1の線路定数Yとして求められた値であり、P,Qは第
2の線路定数Yfとして求められた値の実数部及び虚数
部を、相電圧(定格電圧)で除した値である。そこで、
未知数であるCa、Cb、Ccについて整理すると、次式
(18),(19),(20)が得られる。
【0097】
【数5】 これら(18),(19),(20)式によって各相の
対地アドミタンスを求めることができる。
【0098】この計算の具体例を説明する。線路定数演
算手段13で求めた第1の線路定数YからωC=66×
10-3[Ω-1]、第2の線路定数と基準電圧Eの積Yf
・EからP=−√3×10-3[Ω-1]、Q=−3×10
-3[Ω-1]が得られたとする。これらの値を上記(1
8)(19)(20)式に代入すると、各相の対地アド
ミタンスが、jωCa=j20×10-3[Ω-1]、jω
b=j22×10-3[Ω -1]、jωCc=j22×10
-3[Ω-1]として求められる。
【0099】上記具体例をベクトル図で示す。図8は相
電圧と、対地アドミタンスによって流れる零相電流との
関係を表した図、図9は各相の零相電流と第2の線路定
数Y fと相電圧Eによって求めたIf電流との関係を表し
た図である。
【0100】算出された保護範囲の各相の対地アドミタ
ンスYa,Yb,Ycは、相別対地アドミタンス出力手段
15によって、画像表示装置への表示、プリンター等の
紙出力、及び記録装置等への電気信号によって出力され
る。
【0101】前記(18)(19)(20)の計算式
は、対地アドミタンスが静電容量分のみの電路を対象と
していた。対地アドミタンスが静電容量分の他に漏れ抵
抗分を含む場合も、各相の対地アドミタンスの位相角が
同じであるとの仮定の下に、相別の対地アドミタンスを
計算できる。この計算は、例えば、漏れ抵抗分を含む場
合は対地アドミタンスの位相角が90°より遅れるの
で、この遅れ角に等しい角度だけ、(15)(16)
(17)式の基準ベクトルEの角度を遅らせて前記同様
に行なう。
【0102】上記線路定数計測装置Bで求めた第1の線
路定数Yと第2の線路定数Yfは、上記地絡監視装置A
で利用することができる。これらを組み合わせた地絡監
視装置Cは図10に示すような構成となる。この地絡監
視装置Cは、上記線路定数計測装置Bの機能を全て備え
ると共に、定期的に自動計算した第1の線路定数Yと第
2の線路定数Yfを、地絡電流演算手段7に入力して地
絡電流Igの算出を行うので、常に精度の高い地絡監視
が行なえる。
【0103】前記(1)〜(20)式は、例えば、相電
圧の代わりに線間電圧で表現する等により、異なる形式
によって表現することができる。また、これらの式は、
一般式として表現しているが、実際の計算は、例えば、
相電圧の対称性を利用すること等により、これらの式よ
りも簡単な形で計算できる。上記(1)〜(20)式
は、その内容として、これらと実質的に同等な式を包含
するものである。
【0104】非接地系電路では、雷撃を受けた場所(例
えば碍子や電力ケーブル)に生じるアーク地絡や、雷撃
を原因としない電力ケーブルの間欠地絡も発生する。こ
れらのパルス地絡を放置すると完全地絡となり危険であ
るので、地絡電流が微小である内に、保護範囲の地絡に
ついて早期に検出して補修する必要がある。なお、第1
の線路定数Yと第2の線路定数Yfを用いる前記地絡電
流Igの算出方法は、地絡電流が正弦波であることを前
提にしているので、これらのパルス地絡の検出には利用
できないものである。
【0105】これらのパルス地絡には、次のような性質
がある。保護範囲において雷によるアーク地絡が発生す
ると、零相電流I0と零相電圧V0は、例えば、図11
(a)のような振動波形を示す。この地絡開始時の波形
を拡大して図11(b)に示す(時間軸の1目盛で商用
周波の0.125波長を表わす。)。この拡大図からわ
かるように、零相電圧V0のパルス波形の立下り及び立
上りに対して、零相電流I0は零相電圧V0に追従し同方
向に変化している。一方、保護範囲外に発生した雷によ
るアーク地絡波形は、図12(a),(b)のようにな
り、零相電流I0は、零相電圧V0の変化方向と逆向きに
変化する。この変化方向の関係は、電力ケーブルにおけ
る間欠地絡の場合も同様に成立するものである。
【0106】上記パルス地絡の性質に基づき、保護範囲
のパルス地絡を検出するには、零相電圧V0が正又は負
の方向に所定レベルを超えて大きく変化したとき、その
変化方向を零相電流I0の変化方向と比較し、零相電流
0が零相電圧V0と同一方向に変化しているか又は同一
方向に変化を終えた状態であるとき、保護範囲のパルス
地絡と判定すればよい。
【0107】この判定を行う地絡監視装置Dの具体例を
図13に示す。図13において、4は零相電流検出手段
である零相変流器で、非接地系電路2の境界を保護範囲
に向かって流れる零相電流I0を検出する。5は零相電
圧検出手段で、分圧コンデンサに接続された電圧変成器
の2次出力から、非接地系電路2の零相電圧V0を検出
する。
【0108】16は地絡パルス電圧検出回路で、零相電
圧検出手段5の電圧変成器17の2次出力を、V0電圧
検出抵抗18で受け、検出レベルの調整抵抗19を介し
て、正方向電圧検出用のフォトカプラ20及び負方向電
圧用のフォトカプラ21に与え、零相電圧V0の瞬時値
が、地絡パルス電圧の検出レベルを正方向又は負方向に
超えているとき、フォトカプラ20,21を導通させ
る。フォトカプラ20,21の出力(正及び負のパルス
電圧発生信号)は、夫々シュミット回路付きインバータ
22,23を通して出力される。これらのインバータの
出力信号は、その立ち上がりが、正方向又は負方向の地
絡パルス電圧の立ち上がりタイミングを表す正又は負の
電圧変化タイミング信号として用いられる。
【0109】24は地絡パルス電流検出回路で、零相変
流器4の出力を、I0電流検出抵抗25で受け、検出レ
ベルの調整抵抗26を介して、正方向電流検出用のフォ
トカプラ27及び負方向電流用のフォトカプラ28に与
え、零相電流I0の瞬時値が、地絡パルス電流の検出レ
ベルを正方向又は負方向に超えているときフォトカプラ
27,28を導通させる。フォトカプラ27,28の出
力は、夫々シュミット回路付きインバータ29,30を
通して出力される。これらの出力信号は、零相電流I0
の瞬時値が、地絡パルス電流の検出レベルを、正方向又
は負方向に超えている期間を表わす正負のパルス電流発
生信号となる。
【0110】31は正方向のパルス地絡判定回路で、D
フリップフロップから構成される。このDフリップフロ
ップは、零相電圧の1サイクル毎に消去信号を入力され
て、Q1端子出力をLレベルにされている。CK1端子に
入力される地絡パルス電圧検出回路16の出力の立ち上
がりが判定タイミングとなり、このとき、D1端子に入
力されている地絡パルス電流検出回路24の出力が、正
のパルス電圧発生信号であるとき正方向のパルス地絡の
判定信号を出力する。
【0111】32は負方向のパルス地絡判定回路で、D
フリップフロップから構成される。このDフリップフロ
ップは、地絡パルス電圧検出回路16の出力と地絡パル
ス電流検出回路24の出力を受け、地絡パルス電圧検出
回路16が負の電圧変化タイミングを検出したとき、地
絡パルス電流検出回路24から負のパルス電流発生信号
を出力しているとき、保護範囲のパルス地絡と判定す
る。
【0112】上記地絡監視装置Dの動作を図14のタイ
ミング図に従って説明する。Dフリップフロップ31,
32には、零相電圧の1サイクル周期毎に、Lレベルの
消去信号CLRが入力されて、その出力端子Q1,Q2
Lレベルにしている。地絡パルス電圧検出回路16は、
零相電圧V0が正又は負の地絡検出レベルを超えている
ときHレベル出力をする。地絡パルス電流検出回路24
は零相電流I0が所定の地絡検出レベルを超えていると
きHレベル出力(D1,D2)をする。Dフリップフロッ
プ31,32は、零相電圧V0が所定の地絡検出レベル
を超えて立ち上がり、上記D1,D2の立ち上がりのタイ
ミングで、D入力端子に加えられている地絡パルス電流
検出回路24の出力がHレベルのとき、出力端子Q1
2をHレベルにし、保護範囲地絡の検出信号として出
力する。
【0113】上記地絡監視装置Dは、アーク地絡と電力
ケーブルの間欠地絡の双方の検出ができるものである
が、電力ケーブルの間欠地絡であることの判定ができな
い。電力ケーブルの間欠地絡が発生したことの検出は、
間欠地絡の次に述べる性質に基づいて行うことができ
る。
【0114】上記図11及び図12に示すアーク地絡の
波形は、地絡発生時に、大きな零相電圧と零相電流が生
じ、これが徐々に減衰する波形となっている。これに対
して、絶縁体の劣化等によって生じる電力ケーブルの間
欠地絡の場合の波形は、図15に示すように、零相電流
0と零相電圧V0が、商用周波数に同期して、1サイク
ル間隔で正側と負側で、略同一回数づつ繰返して発生す
るものとなっている。
【0115】電力ケーブルの間欠地絡がアーク地絡と異
なり周期性を持つのは、次の理由による。電力ケーブル
の間欠地絡は、絶縁被覆の劣化等の原因により水トリー
や電気トリーを起点として、絶縁被覆である架橋ポリエ
チレンを挟んで、内部の導線と外部の導体との間で発生
する。これは、電路の供給電圧である正弦波電圧が一定
レベルを超えたとき、絶縁被覆を貫通する放電路が形成
されて生じる。この放電が起きると、絶縁体である架橋
ポリエチレンが気化して消弧性ガスが生じ、放電路の内
圧を上昇させるので放電は瞬時に停止する。そして、消
弧性ガスが放出されると再び放電するというサイクルを
繰返す。このため、上記間欠地絡は、商用周波電圧が正
と負の所定の大きさを超える期間に複数回ずつ発生する
ことになる。このときの地絡パルス電流の幅は、放電初
期は短いが、繰り返しにより徐々に大きくなり、最終的
に完全地絡に到る。この間欠地絡は、何等かの原因によ
り、一時停止することもあるが、一旦発生した場合に
は、数時間乃至数日後には必ず完全地絡に到るものであ
る。
【0116】したがって、パルス地絡の内で保護範囲の
電力ケーブルにおける間欠地絡のみを検出するには、上
記地絡監視装置Dにおけるパルス地絡の判定において、
正方向のパルス地絡と判定された回数と、負方向のパル
ス地絡と判定された回数が略同一数であるとき、保護範
囲の電力ケーブルにおけるパルス地絡と判定すればよ
い。
【0117】このための地絡監視装置Eの構成を図1
6、その動作タイミング図を図17に示す。これは図1
3の地絡監視装置Dにおいて用いた、正方向と負方向の
パルス地絡判定回路31,32に代え、ANDゲート3
3,34、正パルスカウンタ35、負パルスカウンタ3
6、及び間欠地絡判定回路37を組み入れたものであ
る。
【0118】ANDゲート33,34は、地絡パルス電
圧検出回路16と地絡パルス電流検出回路24の出力の
一致検出を、正方向と負方向の夫々について行う。AN
Dゲート33は正方向用、ANDゲート34は負方向用
である。これらの一致検出信号は、夫々、正パルスカウ
ンタ35及び負パルスカウンタ36のCK端子に入力さ
れる。すなわち、地絡パルス電圧検出回路16が所定レ
ベルを超える地絡パルス電圧を検出し、正又は負のパル
ス電圧発生信号を出力しているとき、地絡パルス電流検
出回路24が、同方向のパルス電流発生信号を出力する
毎に、各カウンタは一発のカウントを行う。これらのパ
ルスカウンタ35,36は、商用周波数の1サイクル間
隔でクリアされているので、間欠地絡パルスのカウント
は、この1サイクル期間毎に行われることになる。
【0119】間欠地絡判定回路37は両カウンタ35,
36のカウント数を比較し、正パルスカウンタ35と負
パルスカウンタ36のカウント値が、夫々所定数ずつ発
生し、かつ、その数が略同一であるとき、電力ケーブル
の間欠地絡であると判定して出力する。これは、さらに
具体的には、例えば両カウンタのカウント値の夫々が、
零相電圧の1サイクル期間内に3パルス以上あり、か
つ、そのカウント差が1発以内のとき、電力ケーブルの
間欠地絡と判定するものである。
【0120】
【発明の効果】本発明は、地絡事故が発生していないと
き零相電流I0及び零相電圧V0を発生させる電路の要素
を第1の線路定数Y及び第2の線路定数Yfとして把握
し、この線路定数を用いて演算を行うから、保護範囲外
の地絡に全く影響されないで、保護範囲の地絡電流Ig
を精度高く求めることができる。したがって、電路の切
り離しが必要な地絡事故から微地絡までの検出を信頼性
高く行なえる。
【0121】また、本発明は、上記線路定数Y,Yf
活線状態で測定する装置を提供したから、上記地絡電流
gの検出精度を常に高く保つことができると共に、こ
の線路定数から、保護範囲の微地絡の早期検出及び電路
の絶縁性能の評価を的確に行なえ、電路監視の信頼性を
向上できる。
【0122】さらに、本発明は、上記線路定数を用いて
行う地絡監視装置で検出できないアーク地絡や電力ケー
ブルの間欠地絡を、保護範囲外の地絡に全く影響されな
いで高感度に検出できる地絡監視装置を提供したから、
上記線路定数を用いた地絡監視装置と組み合わせること
により、地絡の監視・保護体制を万全なものにすること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置が設置される非接地系電路を示す
【図2】 本発明の地絡監視装置の地絡電流演算に、簡
略式(1)を使える条件を説明する電気室周辺の系統配
線図
【図3】 電路の対地アドミタンスの変動によって零相
電流i0及び零相電圧v0が変化する状態を示す図
【図4】 図1に示す非接地系電路に設置された本発明
の地絡監視装置Aを示す図
【図5】 図4の地絡監視装置において行われる地絡電
流Igの演算の具体例を示すベクトル図
【図6】 図1に示す非接地系電路に設置した本発明の
線路定数計測装置Bをを示す図
【図7】 図6の線路定数計測装置Bにおいて用いる電
路アドミタンスの強制変化手段の異なる構成例(a)
(b)(c)を示す図
【図8】 対地アドミタンスによって流れる各相の零相
電流と、相電圧との関係を表したベクトル図
【図9】 各相の零相電流と第2の線路定数Yfと相電
圧Eにより算出されるIf電流との関係を表したベクト
ル図
【図10】 本発明の地絡監視装置A及び線路定数計測
装置Dを組み合わせて、図1に示す非接地系電路に設置
した地絡監視装置を示す図
【図11】 保護範囲でアーク地絡が発生した場合の零
相電圧波形と、零相電流波形を比較して示す図で、その
(a)は時間軸の1目盛りを商用周波の4波長時間に取
って表した波形、その(b)は、(a)の波形の始まり
部分を1目盛りを商用周波の0.125波長時間に取っ
て表した波形
【図12】 保護範囲外内でアーク地絡が発生した場合
の零相電圧波形と、零相電流波形を比較して示す図で、
その(a)は時間軸の1目盛りを商用周波の4波長時間
に取って表した波形、その(b)は、(a)の波形の始
まり部分を1目盛りを商用周波の0.125波長時間に
取って表した波形
【図13】 パルス地絡(アーク地絡及び電力ケーブル
の間欠地絡)を検出する地絡検出装置の構成例Dを示す
【図14】 図13の回路における動作タイミングを示
す図
【図15】 保護範囲で電力ケーブルの間欠地絡が発生
した場合の零相電圧波形と、零相電流波形を比較して示
す図
【図16】 電力ケーブルの間欠地絡を検出する地絡検
出装置の構成例Eを示す図
【図17】 図16の回路における動作タイミングを示
す図
【符号の説明】
1 三相電源 2 非接地系の電路 3 保護範囲と保護範囲外の境界 4 零相電流検出手段 5 零相電圧検出手段 6 基準電圧作成手段 7 地絡電流演算手段 8 第1の地絡判定手段 9 地絡相電圧作成手段 10 地絡インピ−ダンス演算手段 11 第2の地絡判定手段 12 電路変化検出手段 12a 電路変化検出手段の強制変化手段 13 線路定数演算手段 14 第3の地絡判定手段 15 相別対地アドミタンス演算手段 15a 相別対地アドミタンス出力手段 16 地絡パルス電圧検出回路 24 地絡パルス電流検出回路 31 正方向のパルス地絡判定回路(Dフリップフロッ
プ) 32 負方向のパルス地絡判定回路(Dフリップフロッ
プ) 35 正パルスカウンタ 36 負パルスカウンタ 37 間欠地絡判定回路 A,C,D,E 地絡監視装置 B 線路定数計測装置
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年4月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 非接地系電路の線路定数計測装置及び
地絡監視装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、非接地系電路の線路
定数を活線状態で計測すると共に、この線路定数から電
路の絶縁状態を的確に把握する線路定数計測装置、及び
これによって計測された線路定数を用いることにより、
一線地絡時の地絡電流を精度高く算出できる非接地系電
路の地絡監視装置に関する。さらに、この発明は、雷等
によるパルス地絡の検出を、保護範囲であることを判定
しながら行なえる非接地系電路の地絡監視装置を提供す
る。
【0002】
【従来の技術】非接地系電路では、地絡継電器または地
絡方向継電器を用い、地絡事故から系統を保護してい
る。地絡継電器は、零相電流I0(ベクトル量を表す。
以下の説明で、電流、電圧、アドミタンス、及び線路定
数に付けられる符号は、全てベクトル量を表わすものと
する。)が設定レベルを超えたとき動作して保護範囲の
電路を系統から切り離す。地絡方向継電器は、零相電流
0が設定レベルを超えると同時に、零相電流I0と零相
電圧V0の位相関係から保護範囲の地絡事故であると判
定したとき、保護範囲の電路を系統から切り離す。
【0003】このように、従来の地絡保護は、零相電流
0の大きさと、零相電流I0と零相電圧V0の位相関係
から、地絡に対する監視と保護を行っていた。
【発明が解決しょうとする課題】
【0004】しかし、実際の電路では、地絡電流Ig
零の場合でも、零相電流I0及び零相電圧V0が存在し、
しかも時々刻々変化している。これは、構内と構外を含
めた電路全体の対地アドミタンスの不平衡によって生じ
るもので、この不平衡は、例えば電路に接続される電気
設備によって生じ、この接続・切り離しによって零相電
流I0及び零相電圧V0が変動する。
【0005】したがって、零相電流I0を算出しても、
地絡電流Ig自体を検出することにはならず、地絡して
いない状態で発生している零相電流I0の大きさだけ誤
差が生じる。このため、地絡保護継電器及び地絡方向継
電器の動作点の決定が困難となり、地絡電流Igが小さ
い微地絡に対して動作させることはできなかった。
【0006】さらに、地絡検出を困難にする他の要因と
して、電路の対地アドミタンスが大きいと地絡事故に対
する零相電圧V0の発生量が小さくなり、電源側に零相
電圧V0を大きく変化させる電圧調整器があると地絡事
故による零相電圧V0の変化を相対的に小さくするとい
う電路の条件もある。
【0007】このため、地絡方向継電器において、零相
電圧V0と零相電流I0との位相関係による地絡方向判定
を確実に行うことは困難で、保護範囲外の地絡事故によ
って地絡方向継電器が誤動作してしまう場合があった。
【0008】また、本出願人は、「電気設備の地絡監視
装置」(特許第2609793号)の請求項3におい
て、雷等によるパルス地絡を検出する装置を公表してい
る。この装置は、雷等によるパルス地絡の検出ができる
が、その発生地点が保護範囲であるか保護範囲外である
かの判定ができない。これは、電路を保護・監視する立
場からは機能が不充分なものであった。
【0009】そこで、本発明は、地絡事故が発生してい
ないとき電路に零相電流I0及び零相電圧V0を生じさせ
る電路の要素を線路定数として把握し、この線路定数を
活線状態で算出すると共に、この線路定数自体から、微
地絡の発生及び電路の絶縁性能を的確に判定する線路定
数計測装置を提供する。また、この線路定数に基づいて
算出した零相電流I0から地絡電流Igを精度高く求める
と同時に、保護範囲(構内)の地絡であると判定できる
地絡監視装置を提供する。さらに、この発明は、雷等に
よるパルス地絡の検出を、保護範囲であることを判定し
ながら行なえる非接地系電路の地絡監視装置を提供す
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明が適用される非接
地系電路を、図1に示す。これは、変電所等の三相電源
1から受電側に延びる非接地系の電路2であり、特別高
圧、高圧、低圧の何れをも含む。本発明は三相電源1か
ら電路の末端に至る電路2の中間に境界3を考え、その
上流側または下流側を保護範囲とする。
【0011】例えば、受電する構内設備の電路を保護範
囲と考えたとき、その受電点(電気室)が上記境界とな
り、三相電源1から受電点までの区間の電路(上流側の
分岐路を含む)が保護範囲外の電路となる。
【0012】(a) 本発明の請求項1に記載した発明
は、非接地系電路の線路定数を活線状態で測定する線路
定数計測装置である。
【0013】この線路定数計測装置は、保護範囲と保護
範囲外の電路の境界を保護範囲に向かって流れる零相電
流I0を検出する零相電流検出手段と、上記非接地系電
路の零相電圧V0を検出する零相電圧検出手段と、
【0014】電路の一部の電圧を検出して零相分を除い
た基準電圧E(ベクトル量)を作成する基準電圧作成手
段と、
【0015】線路定数計測開始時の零相電流I0と零相
電圧V0を、夫々I01,V01(ベクトル量)として記憶
し、検出している零相電圧V0が、この記憶時点から所
定値以上変動したとき、検出している零相電流I0と零
相電圧V0を、夫々I02,V02(ベクトル量)として記
憶する電路変化検出手段と、
【0016】保護範囲の各相の対地アドミタンスのベク
トル和Y=Ya+Yb+Ycを第1の線路定数とし、保護
範囲の各相の対地アドミタンスYa,Yb,Yc(ベクト
ル量)の不平衡分によって流れる零相電流If=Ya・E
a+Yb・Eb+Yc・Ec(但し、Ea,Eb,Ecは零相分
を除いた相電圧)を、前記基準電圧Eによって表した式
f=Yf・EにおけるYf(ベクトル量)を第2の線路
定数とするとき
【0017】上記電路変化検出手段によって記憶された
零相電圧V01,V02(ベクトル量)および零相電流
01,I02(ベクトル量)に基づき、二元連立ベクトル
方程式 Y・V01+Yf・E=I01 ……(1) Y・V02+Yf・E=I02 ……(2) を解いて、第1の線路定数Y及び第2の線路定数Yf
検出する線路定数演算手段とを備えたものである。な
お、上記保護範囲の各相の対地アドミタンスYa、Yb
cは、保護範囲を境界の下流側としたとき、図1にお
ける受電側電路の各相の対地アドミタンスY 2a,Y2b
2cが用いられ、保護範囲を境界の上流側としたとき電
源側電路の各相の対地アドミタンスY1a,Y1b,Y1c
用いられる。また、上記零相分を除いた基準電圧Eは、
例えば、零相分を除いたa相の相電圧Ea、又はa相と
b相の線間電圧Eabのように、任意に定めることができ
る。この基準電圧Eを零相分が除かれたものとして電路
から取り出す方法は、例えば、零相電流によって位相が
変動しない線間電圧を測定して得た位相情報と、その電
路の定格電圧から基準電圧Eを作成するという方法があ
る。
【0018】上記(1)(2)式は、保護範囲の対地ア
ドミタンスに変動がない(例えば、対地静電容量が一
定、かつ地絡電流Ig=0)と仮定したとき成立する式
で、このとき保護範囲外の対地アドミタンスが変化する
と、前記I0とV0が、図3に示すように変化するので、
電路変化検出手段によって、その変化の前後のI0およ
びV0を、夫々、I01,I02およびV01,V02として検
出・記憶して用いる。
【0019】上記電路変化検出手段において、I01とV
01を記憶した後に行うI02およびV 02の検出記憶は、記
憶したV01に対するV0の差分ΔV0が、所定値(例えば
10V)以上に大きくなったときに行い、上記(1)
(2)式による演算に必要な精度を確保している。
【0020】このようなV0の変動は、線路定数の計測
開始後に、保護範囲外の電路における電気設備の接続・
切り離し等による対地アドミタンスの変化を待って行う
ことができる。なお、保護範囲の対地アドミタンスの変
動によって、V0が変動したときは、この期間における
零相電流の変動分ΔI0と零相電圧の変動分ΔV0の位相
関係から、これを識別できる。このときは、I01とV01
を記憶する線路定数の計測を始めからやり直す。
【0021】上記V0の変動は、電路の通常の稼動状態
において自然に生じる保護範囲外の対地アドミタンスの
変化を利用していたが、このV0の変動は、計測用アド
ミタンスYTを保護範囲外の電路に接続することにより
強制的に行なってもよい。
【0022】(b) 上記(a)の線路定数計測装置で
求めた第1の線路定数である保護範囲の対地アドミタン
スYからは、tanδに基づく電路の絶縁性能の評価を
行うことができる。すなわち、保護範囲の対地アドミタ
ンスYの虚数部に対する実数部の比率(tanδ)が所
定の基準値より増加したとき、電路の遮断のための指令
信号、警報信号、または計測値の記録のための制御信号
を出力する第3の地絡判定手段を、上記(a)で述べた
線路定数計測装置に付加し、活線状態で微地絡等の検出
と電路の絶縁性能の評価を行う。なお、上記基準値及び
電路の遮断のための指令信号の意義は、前記同様であ
る。
【0023】(c) 上記(a)で述べた線路定数計測
装置で求めた第1の線路定数Yと第2の線路定数Yf
用いると、各相の対地アドミタンスの虚数項に対する実
数項の比率(tanδ)を同じとすることにより、保護
範囲の相別の対地アドミタンスYa,Yb,Ycを求める
ことができる。
【0024】これは、上記(a)の線路定数計測装置
に、次の相別対地アドミタンス演算手段と相別対地アド
ミタンス出力手段を加えることによって行なう。
【0025】相別対地アドミタンス演算手段は、上記基
準電圧Eと、前記(1)(2)式で求めた第1の線路定
数Y及び第2の線路定数Yfと、零相分を除いた相電圧
a、Eb、Ec(ベクトル量)を、 Y =Ya+Yb+Yc …… (3) Yf・E=Ya・Ea+Yb・Eb+Yc・Ec …… (4) に代入し、
【0026】さらに、各相の対地アドミタンスYa
b,Ycの虚数部に対する実数部の比が等しいとの前提
に基づき、(4)式を実数部と虚数部に分解して2つの
式とすることにより3元連立ベクトル方程式とし、この
解より保護範囲の相別対地アドミタンスYa,Yb,Yc
を求めるものである。この分解の具体的方法は、発明の
実施の形態の項で述べる。
【0027】相別対地アドミタンス出力手段は、保護範
囲の相別対地アドミタンスYa,Yb,Ycをディスプレ
イ表示し、必要に応じ紙面又は電気信号で出力する。こ
のように、相別の対地アドミタンス検出表示すると、電
路の地絡監視・保護を、さらに適切に行なえる。
【0028】(d) 次に、上記(a)の線路定数計測
装置で求めた第1の線路定数Yと第2の線路定数Yf
用いて、保護範囲における地絡電流Igを検出する非接
地系電路の地絡監視装置について述べる。
【0029】この地絡監視装置は、上記(a)の線路定
数計測装置を有し、この装置によって算出した第1の線
路定数Yと第2の線路定数Yfを用い、上記零相電流
0、零相電圧V0、基準電圧Eをベクトル量として入力
し、 Ig=I0−Y・V0−Yf・E ……(5) に基づくベクトル演算を行って、保護範囲における地絡
電流Igを算出する地絡電流演算手段を備えたものであ
る。
【0030】この地絡電流Igの算出方法は、保護範囲
に向かって流れる零相電流I0から、零相電圧V0によっ
て保護範囲の対地アドミタンスのベクトル和Yに対して
流れる電流Y・V0と、保護範囲の各相の対地アドミタ
ンスYa,Yb,Ycの不平衡により生じる零相電流If
f・Eを減算して、地絡電流Igを求めるので算出精度
が高くなり、微地絡を含む地絡検出が可能になる。
【0031】また、この計算の結果、上記Igが存在す
るときは保護範囲の地絡と判定できる。保護範囲外で地
絡があっても、上記Igが検出されないので、保護範囲
外の地絡によって誤動作することはない。
【0032】特に、この演算方法は、第1の線路定数Y
に加え、第2の線路定数Yfを用いるので、対地静電容
量の不平衡が大きくなる場合、例えば、図2(a)に示
すように零相電流検出手段(ZCT)を設置している場
所より電気室までの間に高圧電線路(電力ケーブル、架
空電線路等)を有する場合、あるいは図2(b)に示す
ように、零相電流検出手段(ZCT)を設置している電
気室より高圧電線路の引出しがある場合にも、高い算出
精度が保つことができる。
【0033】(e)上記(d)の線路定数計測装置を有
する地絡監視装置は、求めた地絡電流Igが、所定の基
準値を超えた場合に、電路の遮断のための指令信号、警
報信号、または計測値の記録のための制御信号を出力す
る第1の地絡判定手段を設けることができる。
【0034】この基準値は、各出力目的に適合するよう
に、個別に設定される。電路の遮断は系統保護のために
行われるもので、この基準値は、他の基準値に比べ、小
さい値に設定される。警報の出力は、電路を遮断する場
合、または電路の遮断には到らないが電路の遮断に到る
可能性が高く、電路の管理者に注意を喚起したい場合に
行われる。計測値の記録は、地絡事故の発生原因の究明
や、電路の絶縁性能を把握・管理するために行われる。
【0035】(f)上記(e)の装置の地絡判定は地絡
電流Igに代え、地絡インピ−ダンスZgによって行うこ
ともできる。
【0036】これは、上記(d)の線路定数計測装置を
備えた地絡監視装置に、算出された地絡電流Ig(ベク
トル量)を、電路の所定部分から検出した電圧と位相比
較して、地絡相を特定し、この地絡相の零相分を除いた
電圧Eg(ベクトル量)を作成する地絡相電圧作成手段
と、
【0037】ベクトル式Zg=(Eg+V0)/Ig ……
(6)により、地絡インピ−ダンスZg(ベクトル
量)を算出する地絡インピ−ダンス演算手段と、
【0038】求めた地絡インピ−ダンスZgが所定の基
準値より低下したとき、電路の遮断のための指令信号、
警報信号、または計測値の記録のための制御信号を出力
する第2の地絡判定手段を設けることによって行う。
【0039】上記地絡相電圧作成手段は、前記(1)式
又は(2)式を用いて算出された地絡電流Ig(ベクト
ル量)を、電路の所定部分から検出した電圧と位相比較
して、地絡相を特定し、この地絡相の零相分を除いた電
圧Eg(ベクトル量)を作成するものである。
【0040】地絡インピ−ダンス演算手段は、地絡相電
圧作成手段の出力する電圧Eg、零相電圧検出回路の出
力する零相電圧V0、及び前記(5)式を用いて算出さ
れた地絡電流Igを、
【0041】 ベクトル式Zg=(Eg+V0)/Ig …… (6) に代入して、地絡インピ−ダンスZgを算出する。な
お、求めた地絡インピ−ダンスZgに対する地絡判定
は、例えば地絡インピ−ダンスZgの絶対値、又はその
実数部を、所定の基準値と比較することにより行う。地
絡判定時に出力される電路の遮断のための指令信号、警
報信号、及び計測値の記録のための制御信号の意義は、
先に(c)で説明したものと同様である。
【0044】(i) 上記(a)〜(h)の線路定数計
測装置及び地絡監視装置は、零相電圧V0及び零相電流
0を、絶対値と位相角で表わされるベクトルとして演
算するので、地絡電流I0と地絡電圧V0が正弦波である
ことが前提となっている。このため、雷によるアーク地
絡や電力ケーブルの間欠地絡が発生したときの地絡パル
スの検出には、全く対応できない。
【0045】電路の保護・監視をする立場から、雷によ
るアーク地絡や電力ケーブルの間欠地絡が発生したと
き、それが保護範囲のものであるか否かを判別し、発生
地点を推定することが必要不可欠になる。そこで、雷等
によるパルス地絡が保護範囲であることを確実に判定で
きる地絡監視装置として次の構成のものを提供する。
【0046】すなわち、パルス地絡が保護範囲であるこ
とを判定できる地絡監視装置は、非接地系電路を上流側
と下流側に二分し、その一方を保護範囲、他方を保護範
囲外としたとき、その境界を保護範囲に向かって流れる
零相電流I0を検出する零相電流検出手段と、上記非接
地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検出手段
と、
【0047】上記零相電圧V0の瞬時値が、地絡パルス
電圧の検出レベルを、正方向又は負方向に超えて変化し
たタイミングを検出する地絡パルス電圧検出回路と、
【0048】上記零相電流I0の瞬時値が、地絡パルス
電流の検出レベルを、正方向又は負方向に超えている期
間を検出し、正及び負のパルス電流発生信号を出力する
地絡パルス電流検出回路と、
【0049】地絡パルス電圧検出回路が正の電圧変化タ
イミングを検出したとき、地絡パルス電流検出回路から
正のパルス電流発生信号が出力されているとき、保護範
囲のパルス地絡と判定する正方向のパルス地絡判定回路
と、
【0050】地絡パルス電圧検出回路が負の電圧変化タ
イミングを検出したとき、地絡パルス電流検出回路から
負のパルス電流発生信号が出力されているとき、保護範
囲のパルス地絡と判定する負方向のパルス地絡判定回路
とを備えたものである。
【0051】この地絡監視装置は、パルス地絡が保護範
囲であるか否かの判定を、地絡電圧パルスが発生したと
き、零相電流I0が同方向に所定の大きさを超えている
か否かによって行う。
【0052】(j) 上記(i)の地絡監視装置は、雷
撃によるアーク地絡及び電力ケーブルの間欠地絡の双方
を検出するものであるが、電力ケーブルの間欠地絡であ
ることの判定はできない。そこで、電力ケーブルの間欠
地絡が商用周波数に同期して発生するという性質に基づ
いて、電力ケーブルの間欠地絡を検出する地絡監視装置
として、次の構成を提供する。
【0053】電力ケーブルの間欠地絡のみを検出する地
絡検出装置は、上記(i)の地絡検出装置において、地
絡パルス電圧検出回路を、零相電圧V0の瞬時値が、地
絡パルス電圧の検出レベルを正方向又は負方向に超えて
いる期間を検出し、正及び負のパルス電圧発生信号を出
力するものとして使用し、正方向と負方向のパルス地絡
判定回路に代え、
【0054】商用周波数の1サイクル間隔でクリアさ
れ、地絡パルス電圧検出回路が、正のパルス電圧発生信
号を出力しているとき、地絡パルス電流検出回路から正
のパルス電流発生信号が出力される毎に一発のカウント
を行う正パルスカウンタと、
【0055】商用周波の1サイクル間隔でクリアされ、
地絡パルス電圧検出回路が、負のパルス電圧発生信号を
出力しているとき、地絡パルス電流検出回路から負のパ
ルス電流発生信号が出力される毎に、一発のカウントを
行う負パルスカウンタと、
【0056】上記正パルスカウンタのカウント値と、負
パルスカウンタのカウント値が、夫々所定数ずつ発生
し、かつその数が略同一であるとき、保護範囲の電力ケ
ーブルにおける間欠地絡の検出信号を出力する間欠地絡
判定回路とを備えたものである。
【0057】
【発明の実施の形態】本発明の線路定数計測装置を説明
する前提として、この装置によって計測される第1及び
第2の線路定数を用いて保護範囲の地絡電流Igを検出
する地絡監視装置Aを図4に示す。この装置は、後述す
る線路定数計測装置と組み合わせて用いることを必須条
件とするものである。
【0058】図4において、4は零相電流検出手段であ
る零相変流器で、保護範囲(構内設備の電路)と保護範
囲外(構外の電路)の境界である受電点に配置されてい
る。5は零相電圧検出手段で、図示例は各相の電線にス
ター接続された3つのコンデンサの中心接続点とアース
間に分圧コンデンサを接続し、この分圧コンデンサの両
端電圧を変成器を介して取り出す構成のものである。
【0059】6は基準電圧作成手段で、電路の所定部分
の電圧を検出して基準電圧E(ベクトル量)を作成す
る。この基準電圧Eは、本発明において、第2の線路定
数Yfを用いる計算をするために用いられるもので、例
えば、零相分を除いたa相の相電圧Ea、又はa相とb
相の線間電圧Eabのように、電路の任意部分の電圧を用
いることができるが、零相電流によって大きさと位相が
変動しないことが必要になる。
【0060】図示例の基準電圧作成手段6は、電圧検出
回路6aとして、2個の電圧変成器VT1,VT2の1次
側を電路にV結線し、その2次側に3個の抵抗器Ra
b,Rcをスター結線し、各抵抗器Ra,Rb,Rcの両
端から相電圧を取り出すものを用いている。そして、こ
の相電圧Eaの位相を持ち、大きさを電路の定格電圧に
一致させた基準電圧Eを作成して出力している。この電
圧検出回路6aでは、零相電圧V0が中性点Enに現わ
れ、検出された相電圧の位相は、零相電流I0に全く影
響されない。
【0061】7は地絡電流演算手段で、別に設定入力さ
れる第1の線路定数Yと第2の線路定数Yfから、 Ig=I0−Y・V0−Yf・E ……(5) の式によるベクトル演算を行って地絡電流Igを算出す
る。
【0063】8は第1の地絡判定手段で、地絡電流Ig
が、所定の基準値を超えたとき、電路の遮断のための指
令信号、警報信号、または計測値の記録の為の制御信号
を出力する。この基準値及び電路の遮断のための指令信
号等の意義は既に述べた通りである。なお、計測値の記
録の内容は、例えば、零相電圧V0、零相電流I0、零相
電圧V0−零相電流I0の位相差、地絡電流Ig、If
流、地絡抵抗Rg、対地アドミタンスY、電路−対地間
tanδ等である。記録は、デジタル記憶装置に対して
行う他、ペンレコーダ等のアナログ装置への出力も可能
である。
【0064】9は地絡相電圧作成手段で、前記(5)式
を用いて算出された地絡電流Ig(ベクトル量)を、電
路の所定部分から検出した電圧と位相比較して、地絡相
を特定し、この地絡相の零相分を除いた電圧Eg(ベク
トル量)を作成する。
【0065】この地絡相電圧作成手段9は、例えば地絡
相の判定を、前記基準電圧Eと地絡電流Igの位相比較
により行い、地絡相の零相分を除いた相電圧Egとし
て、この基準電圧Eそのものを出力するか、又はこの基
準電圧Eを所定の位相角(±120°)だけ移相した電
圧を作成して出力する。
【0066】10は地絡インピ−ダンス演算手段で、地
絡相電圧作成手段9の出力する電圧Eg、零相電圧検出
手段5の出力する零相電圧V0、及び前記(5)式を用
いて算出された地絡電流Igを、 ベクトル式Zg=(Eg+V0)/Ig …… (6) に代入して、地絡インピ−ダンスZgを算出する。
【0067】11は第2の地絡判定手段で、算出した地
絡インピ−ダンスZgが所定の基準値より低下したと
き、電路の遮断のための指令信号の出力、警報信号の出
力、または計測値の記録の為の制御信号の出力を行う。
この基準値との比較は、例えば地絡インピ−ダンスZg
の絶対値、または、地絡インピ−ダンスZgの実数部で
ある地絡抵抗Rgによって行われる。
【0068】上記基準電圧作成手段6、地絡電流演算手
段7、第1の地絡判定手段8、地絡相電圧作成手段9、
地絡インピ−ダンス演算手段10、第2の地絡判定手段
11は、例えばマイクロコンピュータによって構成され
る。この場合、零相電流I0、零相電圧V0等の各電圧
は、図示しないA/D変換器とサンプリング回路を通し
て入力され、ベクトル量として処理される。これらの演
算手段は、加算、減算、乗算または除算を行うアナログ
回路を必要個数組み合わせて構成することもできる。
【0069】ここで、上記(5)式が成立することを説
明する。図4に示すように、非接地系電路の保護範囲で
ある受電側において、a相が一線地絡した場合を考え
る。零相変流器4において検出される零相電流I0は、
0=Ig+I2a+I2b+I2c であるから、 I0=(Ea+V0)/Rg+ Y2a・(Ea+V0)+Y2b・(Eb+V0)+Y2c・(Ec+V0) I0=(Ea+V0)/Rg+(Y2a+Y2b+Y2c)V0 +(Y2a・Ea+Y2b・Eb+Y2c・Ec) ここで、地絡電流Igは、Ig=(Ea+V0)/Rgであるので、 ∴ I0=Ig+(Y2a+Y2b+Y2c)・V0 +(Y2a・Ea+Y2b・Eb+Y2c・Ec) ……(7) 但し、V0 :零相電圧 Ea :a相の電圧(零相分を除く) Eb :b相の電圧(零相分を除く) Ec :c相の電圧(零相分を除く) I0 :保護範囲に向かって流れる零相電流 I2a:保護範囲のa相において対地アドミタンスに流れ
る電流 I2b:保護範囲のb相において対地アドミタンスに流れ
る電流 I2c:保護範囲のc相において対地アドミタンスに流れ
る電流 Y2a:構内のa相の対地アドミタンス Y2b:構内のb相の対地アドミタンス Y2c:構内のc相の対地アドミタンス である。
【0070】この(8)式は、構外と構内の境界の電路
に設置された零相変流器4で算出される零相電流I
0は、地絡抵抗Rgを通って流れる地絡電流Igと、零相
電圧V0によって、各対地静電容量Y2a+Y2b+Y2c
流れる電流、及び各相電圧Ea,Eb,Ecの不平衡分に
よって各静電容量に流れる電流If=Y2a・Ea+Y2b
b+Y2c・Ecの総和となっていることを表している。
【0071】そこで、Y2a+Y2b+Y2cを第1の線路定
数Yとし、Ifを前記基準電圧Eと第2の線路定数Yf
よりIf=Yf・Eとして表わし、求めようとする地絡電
流Igについて整理すると、次の(5)式が得られる。 Ig=I0−V0・Y−Yf・E ……(5)
【0072】この式は、零相変流器4の設置点におい
て、零相電流I0の流れ方向を保護範囲である構内側に
向かって取った場合について考えたものであるが、零相
電流I 0の流れ方向を保護範囲外である構外側に取り、
各相の対地アドミタンスYa,Y b,Ycを保護範囲外の
ものY1a,Y1b,Y1cとすれば、構外の地絡電流Ig
演算する式として成立する。
【0073】上記(5)式に基づいて行われるIgベク
トル量の算出例を、ベクトル図で示すと図5のようにな
る。
【0074】零相電圧V0の実測値が、16.5V(位
相角353°)、零相電流I0の実測値が1.9mA
(位相角53°)であるとき、第1の線路定数が、|Y
|=271.4μΩ-1(保護範囲の電路の一相当りの対
地静電容量Cを0.24μFとして計算したので位相角
は−90°)、第2の線路定数と基準電圧Eの積If
f・Eが4.6mA(位相角12°)であったとす
る。
【0075】V0・Yは、Y(静電容量)によりV0ベク
トル量より90°遅れ、V0・Y=4.6mA(位相角
266°)となり、Igベクトル量は、I0,Y・V0
f・Eの各ベクトル量の合成値として、Ig=5.9m
A(位相角121°)として求められる。
【0076】保護範囲外で地絡が生じた場合は、I0
流ベクトル量と、ベクトル量(Y・V0+Yf・E)が等
しくなり、(5)式によって、差分を計算すれば、Ig
ベクトル量の電流値は0mAになる。これは、実験デー
タによっても確認されている。
【0077】すなわち、(2)式による演算をしてIg
電流ベクトル量値が存在すれば、地絡事故点が保護範囲
であると判定でき、地絡電流Igの算出と同時に、地絡
事故が保護範囲で発生したか否かの判定ができることに
なる。
【0079】上記第1及び第2の線路定数Y,Yfは、
電路への機器の接続の有無及び経時変化等によって変動
し、Yfも無視できない大きさになることが多いので、
本発明の線路定数計測装置によって、活線状態で計測す
る。この線路定数計測装置Bの具体例を示す図6におい
て、4は前記零相電流検出手段である零相変流器、5は
零相電圧検出手段である。
【0080】12は電路変化検出手段で、図3に示すよ
うに、線路定数計測開始時の零相電流I0と零相電圧V0
を、夫々I01,V01(ベクトル量)として記憶し、検出
している零相電圧V0が、この記憶値V01から所定値以
上変動したとき、検出している零相電流I0と零相電圧
0を、夫々I02,V02(ベクトル量)として記憶す
る。
【0081】この電路変化検出手段12によるV0の変
動検出は、電路の通常の稼動状態において自然に生じる
保護範囲外の対地アドミタンスの変化を待って行なって
もよいが、計測用アドミタンスYTを保護範囲外の電路
に接続する強制変化手段12aを設けることによって行
なうこともできる。この強制変化手段12aは、計測用
アドミタンスYTとして、図6に示すように単に抵抗器
を開閉器を通して接続するものの他に、図7(a)
(b)(c)に示すようにコンデンサを用いたり、変圧
器を介して接続される抵抗器等を用いることができる。
【0082】13は線路定数演算手段で、電路変化検出
手段12によって記憶された電路変化の前後の零相電流
01,I02と零相電圧V01,V02、及び基準電圧Eか
ら、前記(1)(2)式に基づいて第1の線路定数Yと
第2の線路定数Yfを算出する。
【0083】14はtanδに基づく微地絡検出及び電
路の絶縁性能の評価を行う第3の地絡判定手段で、第1
の線路定数(保護範囲の対地アドミタンス)Yの虚数部
に対する実数部の比率(tanδ)が所定の基準値より
増加したとき、電路の遮断のための指令信号、警報信
号、または記録のための制御信号を出力する。
【0084】15は相別アドミタンス演算手段で、算出
された第1の線路定数Yと第2の線路定数Yfを用い、
電路の零相分を除いた相電圧Ea,Eb,Ecから保護範
囲の各相の対地アドミタンスYa,Yb,Ycを算出す
る。
【0085】15aは相別アドミタンス算出手段15に
よって算出された相別アドミタンスを出力する相別アド
ミタンス出力手段で、この出力は、画像表示装置への表
示、プリンター等の紙出力、及び記録装置等への電気信
号出力によって行われる。
【0086】上記線路定数演算手段13において行われ
る演算内容について説明する。図6において、構内が健
全な場合(Rg=∞)の時の零相電圧V0及び零相電流I
0について考える。Rg=∞であるから、前記(5)式に
おいてIg=0とおくことができる。この時のV0,I0
をV00,I00とすると Y・V00+Yf・E=I00 …………(8) となる。
【0087】(8)式においてV00、I00は系統の構内
外の状態によっても変化するので、V00の異なる2個の
値と、それに対応するI00の値をそれぞれ(V01
01),(V02、I02)とすると、(8)式は、次の
(9)(10)式となる。 Y・V01+Yf・E=I01 …………(9) Y・V02+Yf・E=I02 …………(10) (9)−(10)式より Y(V01−V02)=I01−I02 …………(11) ∴ Y=(I01−I02)/(V01−V02)…………(12) この(12)式により、第1の線路定数Y(保護範囲の
対地アドミタンスの総和)が算出できる。また、(9)
式を変形すると、次の(13)式となる。 Yf・E=I01−Y・V01 …………(13) この(13)式により第2の線路定数Yfを求めること
ができる。
【0088】また、上記相別対地アドミタンス演算手段
15は、上記(1)(2)式を用い、線路定数演算手段
13で求めた第1の線路定数Y及び第2の線路定数Yf
と、電路の零相分を除いた相電圧Ea,Eb,Ecを(ベ
クトル量)を、 Y =Ya+Yb+Yc …… (3) Yf・E=Ya・Ea+Yb・Eb+Yc・Ec …… (4) に代入し、
【0089】さらに、各相の対地アドミタンスYa
b,Yc(ベクトル量)の虚数部に対する実数部の比が
等しいとの前提に基づき、(4)式を実数部と虚数部に
分解して2つの式とすることにより3元連立ベクトル方
程式とし、この解より保護範囲の相別対地アドミタンス
a,Yb,Yc(ベクトル量)を求める。この計算式の
例を、次に説明する。a相の相電圧Eaを基準ベクトル
Eに取り、各相の相電圧Ea,Eb,Ecを、
【0090】
【数1】 とする。
【0091】一般に各相の対地アドミタンスは、静電容
量が大きく抵抗分(漏れ抵抗)が少ない。そこで、この
例では、各相の対地アドミタンスを静電容量分のみとし
て扱う。このとき、第1の線路定数Y(保護範囲の対地
アドミタンスの総和)を表わす(3)式は、 jωC=jω(Ca+Cb+Cc)……(3)′ とな
る。但し、Ya=jωCa,Yb=jωCb,Yc=jωCc
次に、第2の線路定数Yfを表わす上記(4)式を実数
部と虚数部に分解する。If=jωCa・Ea+jωCb
b+jωCc・Ec から、
【0092】
【数2】 が導かれる。
【0093】この(4)′式の左辺を実数部と虚数部に
分解するためPとjQを導入し、Yf = P+jQとす
ると、
【0094】
【数3】 となる。(4−1)式の両辺をj倍し、上記(3)′式
及び(4−2)式と共に並べると次の3元連立方程式と
なる。
【0095】
【数4】
【0096】この3元連立方程式において、jωCは第
1の線路定数Yとして求められた値であり、P,Qは第
2の線路定数Yfとして求められた値の実数部及び虚数
部を、相電圧(定格電圧)で除した値である。そこで、
未知数であるCa、Cb、Ccについて整理すると、次式
(17),(18),(19)が得られる。
【0097】
【数5】 これら(17),(18),(19)式によって各相の
対地アドミタンスを求めることができる。
【0098】この計算の具体例を説明する。線路定数演
算手段13で求めた第1の線路定数YからωC=66×
10-3[Ω-1]、第2の線路定数と基準電圧Eの積Yf
・EからP=−√3×10-3[Ω-1]、Q=−3×10
-3[Ω-1]が得られたとする。これらの値を上記(1
8)(19)(20)式に代入すると、各相の対地アド
ミタンスが、jωCa=j20×10-3[Ω-1]、jω
b=j22×10-3[Ω -1]、jωCc=j22×10
-3[Ω-1]として求められる。
【0099】上記具体例をベクトル図で示す。図8は相
電圧と、対地アドミタンスによって流れる零相電流との
関係を表した図、図9は各相の零相電流と第2の線路定
数Y fと相電圧Eによって求めたIf電流との関係を表し
た図である。
【0100】算出された保護範囲の各相の対地アドミタ
ンスYa,Yb,Ycは、相別対地アドミタンス出力手段
15によって、画像表示装置への表示、プリンター等の
紙出力、及び記録装置等への電気信号によって出力され
る。
【0101】前記(17)(18)(19)の計算式
は、対地アドミタンスが静電容量分のみの電路を対象と
していた。対地アドミタンスが静電容量分の他に漏れ抵
抗分を含む場合も、各相の対地アドミタンスの位相角が
同じであるとの仮定の下に、相別の対地アドミタンスを
計算できる。この計算は、例えば、漏れ抵抗分を含む場
合は対地アドミタンスの位相角が90°より遅れるの
で、この遅れ角に等しい角度だけ、(14)(15)
(16)式の基準ベクトルEの角度を遅らせて前記同様
に行なう。
【0102】上記線路定数計測装置Bで求めた第1の線
路定数Yと第2の線路定数Yfは、上記地絡監視装置A
で利用することができる。これらを組み合わせた地絡監
視装置Cは図10に示すような構成となる。この地絡監
視装置Cは、上記線路定数計測装置Bの機能を全て備え
ると共に、定期的に自動計算した第1の線路定数Yと第
2の線路定数Yfを、地絡電流演算手段7に入力して地
絡電流Igの算出を行うので、常に精度の高い地絡監視
が行なえる。
【0103】前記(1)〜(19)式は、例えば、相電
圧の代わりに線間電圧で表現する等により、異なる形式
によって表現することができる。また、これらの式は、
一般式として表現しているが、実際の計算は、例えば、
相電圧の対称性を利用すること等により、これらの式よ
りも簡単な形で計算できる。上記(1)〜(19)式
は、その内容として、これらと実質的に同等な式を包含
するものである。
【0104】非接地系電路では、雷撃を受けた場所(例
えば碍子や電力ケーブル)に生じるアーク地絡や、雷撃
を原因としない電力ケーブルの間欠地絡も発生する。こ
れらのパルス地絡を放置すると完全地絡となり危険であ
るので、地絡電流が微小である内に、保護範囲の地絡に
ついて早期に検出して補修する必要がある。なお、第1
の線路定数Yと第2の線路定数Yfを用いる前記地絡電
流Igの算出方法は、地絡電流が正弦波であることを前
提にしているので、これらのパルス地絡の検出には利用
できないものである。
【0105】これらのパルス地絡には、次のような性質
がある。保護範囲において雷によるアーク地絡が発生す
ると、零相電流I0と零相電圧V0は、例えば、図11
(a)のような振動波形を示す。この地絡開始時の波形
を拡大して図11(b)に示す(時間軸の1目盛で商用
周波の0.125波長を表わす。)。この拡大図からわ
かるように、零相電圧V0のパルス波形の立下り及び立
上りに対して、零相電流I0は零相電圧V0に追従し同方
向に変化している。一方、保護範囲外に発生した雷によ
るアーク地絡波形は、図12(a),(b)のようにな
り、零相電流I0は、零相電圧V0の変化方向と逆向きに
変化する。この変化方向の関係は、電力ケーブルにおけ
る間欠地絡の場合も同様に成立するものである。
【0106】上記パルス地絡の性質に基づき、保護範囲
のパルス地絡を検出するには、零相電圧V0が正又は負
の方向に所定レベルを超えて大きく変化したとき、その
変化方向を零相電流I0の変化方向と比較し、零相電流
0が零相電圧V0と同一方向に変化しているか又は同一
方向に変化を終えた状態であるとき、保護範囲のパルス
地絡と判定すればよい。
【0107】この判定を行う地絡監視装置Dの具体例を
図13に示す。図13において、4は零相電流検出手段
である零相変流器で、非接地系電路2の境界を保護範囲
に向かって流れる零相電流I0を検出する。5は零相電
圧検出手段で、分圧コンデンサに接続された電圧変成器
の2次出力から、非接地系電路2の零相電圧V0を検出
する。
【0108】16は地絡パルス電圧検出回路で、零相電
圧検出手段5の電圧変成器17の2次出力を、V0電圧
検出抵抗18で受け、検出レベルの調整抵抗19を介し
て、正方向電圧検出用のフォトカプラ20及び負方向電
圧用のフォトカプラ21に与え、零相電圧V0の瞬時値
が、地絡パルス電圧の検出レベルを正方向又は負方向に
超えているとき、フォトカプラ20,21を導通させ
る。フォトカプラ20,21の出力(正及び負のパルス
電圧発生信号)は、夫々シュミット回路付きインバータ
22,23を通して出力される。これらのインバータの
出力信号は、その立ち上がりが、正方向又は負方向の地
絡パルス電圧の立ち上がりタイミングを表す正又は負の
電圧変化タイミング信号として用いられる。
【0109】24は地絡パルス電流検出回路で、零相変
流器4の出力を、I0電流検出抵抗25で受け、検出レ
ベルの調整抵抗26を介して、正方向電流検出用のフォ
トカプラ27及び負方向電流用のフォトカプラ28に与
え、零相電流I0の瞬時値が、地絡パルス電流の検出レ
ベルを正方向又は負方向に超えているときフォトカプラ
27,28を導通させる。フォトカプラ27,28の出
力は、夫々シュミット回路付きインバータ29,30を
通して出力される。これらの出力信号は、零相電流I0
の瞬時値が、地絡パルス電流の検出レベルを、正方向又
は負方向に超えている期間を表わす正負のパルス電流発
生信号となる。
【0110】31は正方向のパルス地絡判定回路で、D
フリップフロップから構成される。このDフリップフロ
ップは、零相電圧の1サイクル毎に消去信号を入力され
て、Q1端子出力をLレベルにされている。CK1端子に
入力される地絡パルス電圧検出回路16の出力の立ち上
がりが判定タイミングとなり、このとき、D1端子に入
力されている地絡パルス電流検出回路24の出力が、正
のパルス電圧発生信号であるとき正方向のパルス地絡の
判定信号を出力する。
【0111】32は負方向のパルス地絡判定回路で、D
フリップフロップから構成される。このDフリップフロ
ップは、地絡パルス電圧検出回路16の出力と地絡パル
ス電流検出回路24の出力を受け、地絡パルス電圧検出
回路16が負の電圧変化タイミングを検出したとき、地
絡パルス電流検出回路24から負のパルス電流発生信号
を出力しているとき、保護範囲のパルス地絡と判定す
る。
【0112】上記地絡監視装置Dの動作を図14のタイ
ミング図に従って説明する。Dフリップフロップ31,
32には、零相電圧の1サイクル周期毎に、Lレベルの
消去信号CLRが入力されて、その出力端子Q1,Q2
Lレベルにしている。地絡パルス電圧検出回路16は、
零相電圧V0が正又は負の地絡検出レベルを超えている
ときHレベル出力をする。地絡パルス電流検出回路24
は零相電流I0が所定の地絡検出レベルを超えていると
きHレベル出力(D1,D2)をする。Dフリップフロッ
プ31,32は、零相電圧V0が所定の地絡検出レベル
を超えて立ち上がり、上記D1,D2の立ち上がりのタイ
ミングで、D入力端子に加えられている地絡パルス電流
検出回路24の出力がHレベルのとき、出力端子Q1
2をHレベルにし、保護範囲地絡の検出信号として出
力する。
【0113】上記地絡監視装置Dは、アーク地絡と電力
ケーブルの間欠地絡の双方の検出ができるものである
が、電力ケーブルの間欠地絡であることの判定ができな
い。電力ケーブルの間欠地絡が発生したことの検出は、
間欠地絡の次に述べる性質に基づいて行うことができ
る。
【0114】上記図11及び図12に示すアーク地絡の
波形は、地絡発生時に、大きな零相電圧と零相電流が生
じ、これが徐々に減衰する波形となっている。これに対
して、絶縁体の劣化等によって生じる電力ケーブルの間
欠地絡の場合の波形は、図15に示すように、零相電流
0と零相電圧V0が、商用周波数に同期して、1サイク
ル間隔で正側と負側で、略同一回数づつ繰返して発生す
るものとなっている。
【0115】電力ケーブルの間欠地絡がアーク地絡と異
なり周期性を持つのは、次の理由による。電力ケーブル
の間欠地絡は、絶縁被覆の劣化等の原因により水トリー
や電気トリーを起点として、絶縁被覆である架橋ポリエ
チレンを挟んで、内部の導線と外部の導体との間で発生
する。これは、電路の供給電圧である正弦波電圧が一定
レベルを超えたとき、絶縁被覆を貫通する放電路が形成
されて生じる。この放電が起きると、絶縁体である架橋
ポリエチレンが気化して消弧性ガスが生じ、放電路の内
圧を上昇させるので放電は瞬時に停止する。そして、消
弧性ガスが放出されると再び放電するというサイクルを
繰返す。このため、上記間欠地絡は、商用周波電圧が正
と負の所定の大きさを超える期間に複数回ずつ発生する
ことになる。このときの地絡パルス電流の幅は、放電初
期は短いが、繰り返しにより徐々に大きくなり、最終的
に完全地絡に到る。この間欠地絡は、何等かの原因によ
り、一時停止することもあるが、一旦発生した場合に
は、数時間乃至数日後には必ず完全地絡に到るものであ
る。
【0116】したがって、パルス地絡の内で保護範囲の
電力ケーブルにおける間欠地絡のみを検出するには、上
記地絡監視装置Dにおけるパルス地絡の判定において、
正方向のパルス地絡と判定された回数と、負方向のパル
ス地絡と判定された回数が略同一数であるとき、保護範
囲の電力ケーブルにおけるパルス地絡と判定すればよ
い。
【0117】このための地絡監視装置Eの構成を図1
6、その動作タイミング図を図17に示す。これは図1
3の地絡監視装置Dにおいて用いた、正方向と負方向の
パルス地絡判定回路31,32に代え、ANDゲート3
3,34、正パルスカウンタ35、負パルスカウンタ3
6、及び間欠地絡判定回路37を組み入れたものであ
る。
【0118】ANDゲート33,34は、地絡パルス電
圧検出回路16と地絡パルス電流検出回路24の出力の
一致検出を、正方向と負方向の夫々について行う。AN
Dゲート33は正方向用、ANDゲート34は負方向用
である。これらの一致検出信号は、夫々、正パルスカウ
ンタ35及び負パルスカウンタ36のCK端子に入力さ
れる。すなわち、地絡パルス電圧検出回路16が所定レ
ベルを超える地絡パルス電圧を検出し、正又は負のパル
ス電圧発生信号を出力しているとき、地絡パルス電流検
出回路24が、同方向のパルス電流発生信号を出力する
毎に、各カウンタは一発のカウントを行う。これらのパ
ルスカウンタ35,36は、商用周波数の1サイクル間
隔でクリアされているので、間欠地絡パルスのカウント
は、この1サイクル期間毎に行われることになる。
【0119】間欠地絡判定回路37は両カウンタ35,
36のカウント数を比較し、正パルスカウンタ35と負
パルスカウンタ36のカウント値が、夫々所定数ずつ発
生し、かつ、その数が略同一であるとき、電力ケーブル
の間欠地絡であると判定して出力する。これは、さらに
具体的には、例えば両カウンタのカウント値の夫々が、
零相電圧の1サイクル期間内に3パルス以上あり、か
つ、そのカウント差が1発以内のとき、電力ケーブルの
間欠地絡と判定するものである。
【0120】
【発明の効果】本発明は、地絡事故が発生していないと
き零相電流I0及び零相電圧V0を発生させる電路の要素
を第1の線路定数Y及び第2の線路定数Yfとして把握
し、この線路定数を活線状態で測定する線路定数計測装
置を提供したから、この線路定数から、保護範囲の微地
絡の早期検出及び電路の絶縁性能の評価を的確に行な
え、電路監視の信頼性を向上できる。
【0121】また、本発明は、上記線路定数計測装置に
よって計測された線路定数Y,Yfを用いて演算を行
い、保護範囲外の地絡に全く影響されないで、保護範囲
の地絡電流Igを常に精度高く求めることができる。し
たがって、電路の切り離しが必要な地絡事故から微地絡
までの検出を信頼性高く行なえる。
【0122】さらに、本発明は、上記線路定数を用いて
行う地絡監視装置で検出できないアーク地絡や電力ケー
ブルの間欠地絡を、保護範囲外の地絡に全く影響されな
いで高感度に検出できる地絡監視装置を提供したから、
上記線路定数を用いた地絡監視装置と組み合わせること
により、地絡の監視・保護体制を万全なものにすること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置が設置される非接地系電路を示す
【図2】 本発明の線路定数計測装置を備える地絡監視
装置において、第2の線路定数Yfを使用しなければな
らない理由を説明する電気室周辺の系統配線図
【図3】 電路の対地アドミタンスの変動によって零相
電流i0及び零相電圧v0が変化する状態を示す図
【図4】 図1に示す非接地系電路に設置された本発明
の地絡監視装置Aを、併設される線路定数計測装置Bを
省略して示した図
【図5】 図4の地絡監視装置において行われる地絡電
流Igの演算の具体例を示すベクトル図
【図6】 図1に示す非接地系電路に設置した本発明の
線路定数計測装置Bをを示す図
【図7】 図6の線路定数計測装置Bにおいて用いる電
路アドミタンスの強制変化手段の異なる構成例(a)
(b)(c)を示す図
【図8】 対地アドミタンスによって流れる各相の零相
電流と、相電圧との関係を表したベクトル図
【図9】 各相の零相電流と第2の線路定数Yfと相電
圧Eにより算出されるIf電流との関係を表したベクト
ル図
【図10】 図6の線路定数計測装置Bを有する地絡監
視装置Cを、図1に示す非接地系電路に設置した状態を
示す図
【図11】 保護範囲でアーク地絡が発生した場合の零
相電圧波形と、零相電流波形を比較して示す図で、その
(a)は時間軸の1目盛りを商用周波の4波長時間に取
って表した波形、その(b)は、(a)の波形の始まり
部分を1目盛りを商用周波の0.125波長時間に取っ
て表した波形
【図12】 保護範囲外内でアーク地絡が発生した場合
の零相電圧波形と、零相電流波形を比較して示す図で、
その(a)は時間軸の1目盛りを商用周波の4波長時間
に取って表した波形、その(b)は、(a)の波形の始
まり部分を1目盛りを商用周波の0.125波長時間に
取って表した波形
【図13】 パルス地絡(アーク地絡及び電力ケーブル
の間欠地絡)を検出する地絡検出装置の構成例Dを示す
【図14】 図13の回路における動作タイミングを示
す図
【図15】 保護範囲で電力ケーブルの間欠地絡が発生
した場合の零相電圧波形と、零相電流波形を比較して示
す図
【図16】 電力ケーブルの間欠地絡を検出する地絡検
出装置の構成例Eを示す図
【図17】 図16の回路における動作タイミングを示
す図
【符号の説明】 1 三相電源 2 非接地系の電路 3 保護範囲と保護範囲外の境界 4 零相電流検出手段 5 零相電圧検出手段 6 基準電圧作成手段 7 地絡電流演算手段 8 第1の地絡判定手段 9 地絡相電圧作成手段 10 地絡インピ−ダンス演算手段 11 第2の地絡判定手段 12 電路変化検出手段 12a 電路変化検出手段の強制変化手段 13 線路定数演算手段 14 第3の地絡判定手段 15 相別対地アドミタンス演算手段 15a 相別対地アドミタンス出力手段 16 地絡パルス電圧検出回路 24 地絡パルス電流検出回路 31 正方向のパルス地絡判定回路(Dフリップフロッ
プ) 32 負方向のパルス地絡判定回路(Dフリップフロッ
プ) 35 正パルスカウンタ 36 負パルスカウンタ 37 間欠地絡判定回路 A,C,D,E 地絡監視装置 B 線路定数計測装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 善和 大阪府大阪市北区曾根崎1丁目2番6号 新宇治電ビル8階 財団法人 関西電気保 安協会内 (72)発明者 北村 進 大阪府大阪市北区曾根崎1丁目2番6号 新宇治電ビル8階 財団法人 関西電気保 安協会内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非接地系電路を上流側と下流側に二分
    し、その一方を保護範囲、他方を保護範囲外としたと
    き、その境界を保護範囲に向かって流れる零相電流I0
    を検出する零相電流検出手段と、 上記非接地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検
    出手段と、 保護範囲の各相の対地アドミタンスのベクトル和Y=Y
    a+Yb+Ycを第1の線路定数とするとき、 上記零相電流I0と上記零相電圧V0をベクトル量として
    入力し、 Ig=I0−Y・V0 ……(1) に基づくベクトル演算を行って、保護範囲における地絡
    電流Igを算出する地絡電流演算手段とを備えたことを
    特徴とする非接地系電路の地絡監視装置。
  2. 【請求項2】 非接地系電路を上流側と下流側に二分
    し、その一方を保護範囲、他方を保護範囲外としたと
    き、その境界を保護範囲に向かって流れる零相電流I0
    を検出する零相電流検出手段と、 上記非接地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検
    出手段と、 電路の所定部分の電圧を検出して基準電圧E(ベクトル
    量)を作成する基準電圧作成手段と、 保護範囲の各相の対地アドミタンスのベクトル和Y=Y
    a+Yb+Ycを第1の線路定数とし、保護範囲の各相の
    対地アドミタンスYa、Yb、Yc(ベクトル量)の不平
    衡分によって生じる零相電流If=Ya・Ea+Yb・Eb
    +Yc・Ec(但し、Ea,Eb,Ecは零相分を除いた相
    電圧)を、前記基準電圧Eによって表した式If=Yf
    EにおけるYf(ベクトル量)を第2の線路定数とする
    とき 上記零相電流I0、零相電圧V0を、基準電圧Eをベクト
    ル量として入力し、 Ig=I0−Y・V0−Yf・E ……(2) に基づくベクトル演算を行って、保護範囲における地絡
    電流Igを算出する地絡電流演算手段とを備えたことを
    特徴とする非接地系電路の地絡監視装置。
  3. 【請求項3】 算出した地絡電流Igが所定の基準値を
    超えたとき、電路の遮断のための指令信号、警報信号、
    または計測値の記録のための制御信号を出力する第1の
    地絡判定手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2
    に記載した非接地系電路の地絡監視装置。
  4. 【請求項4】 算出された地絡電流Ig(ベクトル量)
    を、電路の所定部分から検出した電圧と位相比較して、
    地絡相を特定し、この地絡相の零相分を除いた電圧Eg
    (ベクトル量)を作成する地絡相電圧作成手段と、 ベクトル式Zg=(Eg+V0)/Ig …… (3)によ
    り、地絡インピ−ダンスZg(ベクトル量)を算出する
    地絡インピ−ダンス演算手段と、 求めた地絡インピ−ダンスZgが所定の基準値より低下
    したとき、電路の遮断のための指令信号、警報信号、ま
    たは計測値の記録のための制御信号を出力する第2の地
    絡判定手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2
    に記載した非接地系電路の地絡監視装置。
  5. 【請求項5】 非接地系電路を上流側と下流側に二分
    し、その一方を保護範囲、他方を保護範囲外としたと
    き、その境界を保護範囲に向かって流れる零相電流I0
    を検出する零相電流検出手段と、 上記非接地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検
    出手段と、 電路の一部の電圧を検出して基準電圧E(ベクトル量)
    を作成する基準電圧作成手段と、 線路定数計測開始時の零相電流I0と零相電圧V0を、夫
    々I01,V01(ベクトル量)として記憶し、検出してい
    る零相電圧V0が、この記憶値V01から所定値以上変動
    したとき、検出している零相電流I0と零相電圧V0を、
    夫々I02,V02(ベクトル量)として記憶する電路変化
    検出手段と、 保護範囲の各相の対地アドミタンスのベクトル和Y=Y
    a+Yb+Ycを第1の線路定数とし、保護範囲の各相の
    対地アドミタンスYa、Yb、Yc(ベクトル量)の不平
    衡分によって流れる零相電流If=Ya・Ea+Yb・Eb
    +Yc・Ec(但し、Ea,Eb,Ecは零相分を除いた相
    電圧)を、前記基準電圧Eによって表した式If=Yf
    EにおけるYf(ベクトル量)を第2の線路定数とする
    とき上記電路変化検出手段によって記憶された零相電圧
    01,V02(ベクトル量)および零相電流I01,I
    02(ベクトル量)に基づき、二元連立ベクトル方程式 Y・V01+Yf・E=I01 ……(4) Y・V02+Yf・E=I02 ……(5) を解いて、第1の線路定数Y及び第2の線路定数Yf
    算出する線路定数演算手段とを備えたことを特徴とする
    線路定数計測装置。
  6. 【請求項6】算出した保護範囲の対地アドミタンスYの
    虚数部に対する実数部の比率(tanδ)が所定の基準
    値より増加したとき、電路の遮断のための指令信号、警
    報信号または計測値の記録のための制御信号を出力する
    第3の地絡判定手段を備えたことを特徴とする請求項5
    に記載した線路定数計測装置。
  7. 【請求項7】 前記基準電圧E(ベクトル量)と、前記
    (4)(5)式で求めた第1の線路定数Y及び第2の線
    路定数Yfと、零相分を除いた相電圧Ea、E b、Ec(ベ
    クトル量)を、ベクトル式 Y =Ya+Yb+Yc …… (6) Yf・E=Ya・Ea+Yb・Eb+Yc・Ec …… (7) に代入し、さらに、各相の対地アドミタンスYa,Yb
    c(ベクトル量)の虚数部に対する実数部の比が等し
    いとの前提に基づき、(7)式を実数部と虚数部に分解
    して2つの式とすることにより3元連立ベクトル方程式
    とし、この解より保護範囲の相別対地アドミタンス
    a,Yb,Yc(ベクトル量)を求める相別対地アドミ
    タンス演算手段と、 この相別対地アドミタンスの出力手段を備えたことを特
    徴とする請求項5又は6に記載した線路定数計測装置。
  8. 【請求項8】 非接地系電路を上流側と下流側に二分
    し、その一方を保護範囲、他方を保護範囲外としたと
    き、その境界を保護範囲に向かって流れる零相電流I0
    を検出する零相電流検出手段と、 上記非接地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検
    出手段と、 電路の一部の電圧を検出して基準電圧E(ベクトル量)
    を作成する基準電圧作成手段と、 線路定数計測開始時の零相電流I0と零相電圧V0を、夫
    々I01,V01(ベクトル量)として記憶し、検出してい
    る零相電圧V0が、この記憶時点から所定値以上変動し
    たとき、検出している零相電流I0と零相電圧V0を、夫
    々I02,V02(ベクトル量)として記憶する電路変化検
    出手段と、 保護範囲の各相の対地アドミタンスのベクトル和Y=Y
    a+Yb+Ycを第1の線路定数とし、保護範囲の各相の
    対地アドミタンスYa、Yb、Yc(ベクトル量)の不平
    衡分によって流れる零相電流If=Ya・Ea+Yb・Eb
    +Yc・Ec(但し、Ea,Eb,Ecは零相分を除いた相
    電圧)を、前記基準電圧Eによって表した式If=Yf
    EにおけるYf(ベクトル量)を第2の線路定数とする
    とき上記電路変化検出手段によって記憶された零相電圧
    01,V02(ベクトル量)および零相電流I01,I
    02(ベクトル量)に基づき、二元連立ベクトル方程式 Y・V01+Yf・E=I01 ……(4) Y・V02+Yf・E=I02 ……(5) を解いて、第1の線路定数Y及び第2の線路定数If
    算出する線路定数演算手段とを備えた線路定数計測装置
    を備え、この線路定数計測装置によって算出した第1の
    線路定数Yと第2の線路定数Yfの双方または一方を用
    いて演算を行なうことを特徴とする請求項1〜4のいず
    れか1項に記載した非接地系電路の地絡監視装置。
  9. 【請求項9】 非接地系電路を上流側と下流側に二分
    し、その一方を保護範囲、他方を保護範囲外としたと
    き、その境界を保護範囲に向かって流れる零相電流I0
    を検出する零相電流検出手段と、 上記非接地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検
    出手段と、 上記零相電圧V0の瞬時値が、地絡パルス電圧の検出レ
    ベルを、正方向又は負方向に超えて変化したタイミング
    を検出する地絡パルス電圧検出回路と、 上記零相電流I0の瞬時値が、地絡パルス電流の検出レ
    ベルを、正方向又は負方向に超えている期間を検出し、
    正及び負のパルス電流発生信号を出力する地絡パルス電
    流検出回路と、 地絡パルス電圧検出回路が正方向の電圧変化タイミング
    を検出したとき、地絡パルス電流検出回路から正のパル
    ス電流発生信号が出力されているとき、保護範囲のパル
    ス地絡と判定する正方向のパルス地絡判定回路と、 地絡パルス電圧検出回路が負方向の電圧変化タイミング
    を検出したとき、地絡パルス電流検出回路から負方向の
    パルス電流発生信号が出力されているとき、保護範囲の
    パルス地絡と判定する負方向のパルス地絡判定回路とを
    具備したことを特徴とする非接地系電路の地絡監視装
    置。
  10. 【請求項10】 非接地系電路を上流側と下流側に二分
    し、その一方を保護範囲、他方を保護範囲外としたと
    き、その境界を保護範囲に向かって流れる零相電流I0
    を検出する零相電流検出手段と、 上記非接地系電路の零相電圧V0を検出する零相電圧検
    出手段と、 上記零相電圧V0の瞬時値が、地絡パルス電圧の検出レ
    ベルを、正方向又は負方向に超えている期間を検出し、
    正及び負のパルス電圧発生信号を出力する地絡パルス電
    圧検出回路と、 上記零相電流I0の瞬時値が、地絡パルス電流の検出レ
    ベルを、正方向又は負方向に超えている期間を検出し、
    正及び負のパルス電流発生信号を出力する地絡パルス電
    流検出回路と、 商用周波数の1サイクル間隔でクリアされ、地絡パルス
    電圧検出回路が正のパルス電圧発生信号を出力している
    とき、地絡パルス電流検出回路から正のパルス電流発生
    信号が出力される毎に一発のカウントを行う正パルスカ
    ウンタと、 商用周波の1サイクル間隔でクリアされ、地絡パルス電
    圧検出回路が負のパルス電圧発生信号を出力していると
    き、地絡パルス電流検出回路から負のパルス電流発生信
    号が出力される毎に、一発のカウントを行う負パルスカ
    ウンタと、 上記正パルスカウンタのカウント値と、負パルスカウン
    タのカウント値が、夫々所定数ずつ発生し、かつその数
    が略同一であるとき、保護範囲の電力ケーブルにおける
    間欠地絡の検出信号を出力する間欠地絡判定回路とを具
    備したことを特徴とする非接地系電路の地絡監視装置。
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