JPH11241324A - 防波構造物 - Google Patents

防波構造物

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JPH11241324A
JPH11241324A JP15970798A JP15970798A JPH11241324A JP H11241324 A JPH11241324 A JP H11241324A JP 15970798 A JP15970798 A JP 15970798A JP 15970798 A JP15970798 A JP 15970798A JP H11241324 A JPH11241324 A JP H11241324A
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wave
offshore
height
overtopping
inclined plane
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JP15970798A
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English (en)
Inventor
Isao Irie
功 入江
Keisuke Murakami
啓介 村上
Yasuto Kataoka
保人 片岡
Tomokazu Nakagawa
知和 中川
Takehiro Nakaoka
威博 中岡
Kenichi Sugii
謙一 杉井
Yoshihiro Hamazaki
義弘 濱崎
Naoto Takehana
直人 竹鼻
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低い天端高さでありながら、必要な越波阻止
性能を備えた防波構造物を提供する。 【解決手段】 沖側壁面10の上部に沖側に向かって迫
り出した傾斜平面部11を設け、防波構造物の設置海域
において必要十分な越波阻止性能を備えるように、沖側
壁面10の天端高さhcを、防波構造物の設置水深h、
想定される最大波高Ho、波長Loに対して、理論的に越
波を阻止しうる天端高さhcを示す、次式のパラメータ
Xとの関係において設定する。 【数1】 ただし、Bは沖側壁面の高さ、Dは前記傾斜平面部の水
平方向長さ、Sは沖側壁面と静水面との間で挟まれた領
域を防波構造物の幅方向からみた断面積である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、港湾等に設置され
る防波堤や護岸用の防波構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、港湾等に設置される防波堤や護岸
用の防波構造物としては、図17に示すような直方体形
状の直立型のケーソン50が一般に用いられている。こ
のような防波構造物は、まず防波構造物を設置する海底
を掘り下げて砂41で置換することにより地盤改良し
て、その上に捨石マウンド42を設けることにより基礎
40を形成し、さらにその上に防波構造物本体となる直
立型ケーソン50を載置することによって施工されてい
る。このような基礎40は、直立型ケーソン(防波構造
物本体)50を支えるとともに、直立型ケーソン50底
面における摩擦抵抗を増大させ、波や地震力を受けたと
きに直立型ケーソン50が滑動することを防止するため
に設けられているものである。
【0003】このような防波構造物においては、防波構
造物の陸側に位置する船舶や建築物等を越波(波が防波
構造物本体を越える現象)から守るために、この越波を
防止できる程度まで天端高さ(静水面から防波構造物本
体上面までの高さ)が十分高く設定されている。
【0004】ところが、越波を防止するために防波構造
物の天端高さを高くすると、景観が著しく阻害されてし
まうという問題が生じる。
【0005】さらに、天端高さを高くすると防波構造物
本体の断面積も大きくなって重量が増大するため、これ
を支えるために必要な基礎、特に地盤改良を必要とする
領域が増大して、防波構造物の施工に要するコストおよ
び手間の増大を招くという問題が生じる。
【0006】したがって、防波構造物の天端高さは、で
きる限り低く抑えることが求められている。
【0007】このような要求のもとで、沖側壁面の上部
に、沖側に迫り出すように傾斜する傾斜平面部を設け
て、沖側壁面を遡上する波を沖側にはね返すことで、低
い天端高さで高い越波阻止性能を発揮しうる優れた非越
波特性を備えた防波構造物が提案されている(特開平3
−293415号)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
防波構造物に求められる越波阻止性能は、防波構造物が
設置される海岸域の利用目的によって異なるものであ
る。すなわち、例えば原子力発電所等のように、特に保
安上重要な施設が設けられる海岸域では越波量をできる
だけゼロに近づけるため、非常に高い越波阻止性能が求
められる一方、海浜公園等であれば、高波の生じやすい
台風時などには利用されないものであるから、ある程度
の越波阻止性能を備えていれば十分である。さらに、こ
のような海浜公園等では、できるだけ天端高さを低くし
て、景観を阻害することのない親水性護岸とすることが
求められるため、必要以上の越波阻止性能を備えること
はかえって望ましくない。
【0009】したがって、このような防波構造物は、設
置目的等に応じた必要十分な越波阻止性能を備えなが
ら、できるだけ天端高さを低く抑えることが求められ
る。
【0010】しかし、上述した傾斜平面部を備えた防波
構造物は、従来、一般的に用いられてきた直立型ケーソ
ンからなる防波構造物と比較して、非越波特性に優れて
いることは知られていたが、傾斜平面部の傾斜角度や面
積等の形状条件、さらに、防波構造物が設置される地域
における水深や想定される最大波高等の設置場所の環境
条件等と、越波阻止性能との定量的な関係が明らかでな
かった。
【0011】したがって、このような傾斜平面部を備え
た防波構造物においては、求められる越波阻止性能を得
るために必要な天端高さが明確でないため、求められる
越波阻止性能を確実に得るために、必要以上に高い天端
高さを備えざるを得ず、結果として、このような傾斜平
面部を備えた防波構造物の優れた非越波特性を生かすこ
とができず、天端高さを十分に低く抑えることができな
かった。
【0012】本発明は、上記のような課題に鑑みてなさ
れたものであり、防波構造物の設置水深や想定される最
大波高に対して必要十分な越波阻止性能が得られる沖側
壁面の形状条件を定量的に明らかにすることにより、低
い天端高さでありながら、必要な越波阻止性能を備えた
防波構造物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、沖に面して立設される防波構造物におい
て、沖側壁面の少なくとも上部に、沖に向かって迫り出
すように傾斜する傾斜平面部を設けるとともに、前記傾
斜平面部の天端高さhcの適正な範囲を、次式で定義さ
れるパラメータXを用いて設定するものである。
【0014】
【数2】
【0015】ただし、Hoは最大沖波波高、Loは沖波波
長、hは構造物の設置水深、Bは沖側壁面の高さ、Dは
前記傾斜平面部の水平方向長さ、Sは沖側壁面と静水面
との間で挟まれた領域を防波構造物の幅方向からみた断
面積である。
【0016】なお、最大沖波波高Hoとは、防波構造物
等を設計する際、この防波構造物に至る最大の波を想定
するために設定するものであり、一般的には、防波構造
物の耐用年数等を考慮して、この耐用年数の間に発生す
ることが予想される波の最大波高をいう。
【0017】ここに、沖波とは、波が海底の影響を受け
ない、防波構造物が設置される海岸域に至る波が通過す
る、水深が波長の1/2より深い領域における波をいう
(椹木亨・出口一郎著「新編 海洋工学」共立出版19
96年発行、第14頁)。
【0018】また、このような防波構造物の耐用年数
は、土木施設においては50年とされる場合が多い
(「港湾・海洋構造物の設計計算例」土木施工 臨時増
刊,1987・1,VOL.28,NO.2,第5頁
等)。
【0019】そこで、この発明においては、以上の事情
を考慮して、この最大沖波波高Hoは、防波構造物を設
置する海域において、施工時から過去50年間に発生し
た波の最大波高をいうものとする。
【0020】ただし、施工時から過去50年間の調査資
料がない場合には、前記文献「港湾・海洋構造物の設計
計算例」第54頁の「3.1.4 設計波高の算定」に
記載されている確率波高の推定方法に基づき、得られる
調査資料から再現期間を50年として確率計算を行い、
算定される最大波高を最大沖波波高Hoとする。
【0021】また、沖波波長Loとは、この最大沖波波
高Hoを有する波の波長をいうものとする。
【0022】また、構造物の設置水深hとは、海底面か
ら静水面までの高さとする。
【0023】さらに、この静水面とは、新月(朔)およ
び満月(望)の日から5日以内に観測された各月の最高
満潮面および最低干潮面の1年にわたって平均した高さ
の海面である朔望平均満潮面(H.W.L)とし、防波
構造物の施工時より1年以内の日を基準日として、この
基準日から過去1年間に行われた観測資料に基づいて設
定されるものとする。
【0024】以上のようにしてそれぞれ定義された緒言
に基づいて算出される上記パラメータXは、後に詳述す
るように、このような沖側に向かって迫り出すように傾
斜する傾斜平面部を備えた防波構造物において、理論的
に越波量が0となる防波構造物の天端高さhc(正確に
は、天端高さhcを最大沖波波高Hoで無次元化した量)
の指標となる値である。
【0025】したがって、このパラメータXに対して、
傾斜平面部の天端高さhcを設定すれば、求められる越
波阻止性能を得ることができるとともに、求められる越
波阻止性能を得ながらできるだけ低い天端高さhcが実
現される。
【0026】具体的には、この発明は、前記傾斜平面部
の天端高さhcを最大沖波波高Hoによって無次元化した
量hc/Hoを、このパラメータXに対して、0.5X以
上、かつ、1.5X以下の範囲内に設定したものである
(請求項1)。
【0027】この天端高さの無次元化量hc/Hoが0.
5Xに設定された場合、高波時等においても、人家や一
般道路等の密集地から離れた海岸域において求められる
越波阻止性能に相当する中程度の越波量に抑えられる。
したがって、天端高さの無次元化量hc/Hoを0.5X
以上に設定することにより、この中程度の越波が許容さ
れる海岸域における越波阻止性能を満足することができ
る。
【0028】一方、後述するように、直立型の防波構造
物において越波量をゼロとするためには、この発明にか
かる傾斜平面部を備えた防波構造物と比較して、少なく
とも1.5倍を越える天端高さが必要である。したがっ
て、天端高さの無次元化量hc/Hoを1.5X以下に設
定することにより、従来の直立型の防波構造物より低い
天端高さを実現することができる。
【0029】さらに、この天端高さの無次元化量hc/
Hoを1.2X以下に設定すれば(請求項2)、従来の
直立型の防波構造物と比較して、十分に低い天端高さを
実現することができる。
【0030】また、この天端高さの無次元化量hc/Ho
が0.8Xに設定された場合、高波時等においても、暴
風時等には使用されない沿岸域の空港等に隣接する海岸
域において求められる越波阻止性能に相当する少量の越
波に抑えられる。したがって、天端高さの無次元化量h
c/Hoを0.8X以上に設定すれば(請求項3)、この
少量の越波が許容される海岸域における越波阻止性能を
満足することができる。
【0031】また、この天端高さの無次元化量hc/Ho
が1.0Xに設定された場合、上述したように、高波時
等においても、実験モデルから推測される理論値に基づ
く限り越波が生じない。ただし、実際には、理論値算出
に伴う誤差のために、高波時等にはごく少量の越波が生
じる。このごく少量の越波とは、護岸に隣接して人家、
公共施設、一般道路等が密集している場合であっても、
台風時等であれば、住民は避難するために許容される越
波量である。したがって、天端高さの無次元化量hc/
Hoを1.0X以上に設定すれば(請求項4)、このご
く少量の越波であれば許容される海岸域における越波阻
止性能を満足することができる。
【0032】また、この天端高さの無次元化量hc/Ho
が1.1Xに設定された場合、高波時等においても、理
論的には越波が生じることがなく、さらに、この理論値
算出に伴う誤差を考慮しても完全に越波を防止すること
ができる。したがって、天端高さの無次元化量hc/Ho
を1.1X以上に設定すれば(請求項5)、原子力発電
所等の特に保安上重要な施設が設置された海岸域におい
て求められる極めて高い越波阻止性能をも満足すること
ができる。
【0033】また、沖から至る波のできるだけ多くを傾
斜平面部で受けて、沖側の上方に向かってはね返すこと
により、越波阻止作用をさらに十分に発揮するために
は、傾斜平面部は静水面高さ位置を含む領域に設けるこ
とが望ましい(請求項6)。
【0034】また、傾斜平面部は、沖側壁面の全域にわ
たる一平面としてもよいが、防波構造物本体の接地面積
を大きくして、その安定性を高める観点から、傾斜平面
部の沖側に迫り出す傾斜角度を、沖側壁面の下部の傾斜
角度よりも大きく構成することが好ましい(請求項
7)。
【0035】さらに、このように沖側壁面の上部(傾斜
平面部)の傾斜角度を下部(傾斜平面部より下の部分)
より大きくする場合であれば、単純で施工しやすいこと
から、沖側壁面の下部を、略鉛直面とする構成(請求項
8)や、下側が沖側に向かって迫り出すように傾斜する
平面部とする構成(請求項9)を好適な構成として挙げ
ることができる。
【0036】特に、沖側壁面の下部に下側が沖側に向か
って迫り出すように傾斜する平面部を設ける構成とすれ
ば、この沖側壁面の下側に作用する波圧が下向きの分力
成分を有することとなるため、この沖側壁面に作用する
波圧を防波構造物本体を下向きに押しつける力として作
用させることができ、これによって、防波構造物本体下
面の摩擦力を増大させ、防波構造物本体の滑動の防止に
寄与することができる。
【0037】また、このような防波構造物においては、
傾斜平面部に沿って遡上する水塊を沖側の海面にはね返
して、さらに高い越波阻止性能を得るために、傾斜平面
部の上方に、沖側に向かって略水平方向に張り出す天端
板を設けることが好ましい(請求項10)。
【0038】また、このような防波構造物においては、
傾斜平面部によって沖側にはね返された波の主流から剥
がれて天端面上に流れ落ちてくる少量の水が防波構造物
の陸側に至ることを防止して、さらに高い越波阻止性能
を得るために、天端面上に、この天端面上へ流れ至る水
をせき止める波返し工を設けることが好ましい(請求項
11)。
【0039】
【発明の実施の形態】図1は、この発明にかかる防波構
造物の第1実施形態を示す断面構成図である。この防波
構造物は、図17に示す従来の防波構造物と同様に、海
底を掘り下げて砂で置換することにより地盤改良し、そ
の上に捨石マウンドを設けて基礎40が形成され、この
基礎40の上部に防波構造物本体50が設置されること
によって構成されている。
【0040】この防波構造物は、図1に示すように、沖
側壁面10の下部が略垂直面12として形成され、沖側
壁面10の上部には、沖側に迫り出すように約45度の
角度で傾斜した一平面からなる傾斜平面部11が形成さ
れている。
【0041】この傾斜平面部11は、沖側から到来する
波を受けて越波を抑制するものであることから、到来す
る波をこの傾斜平面部11によって受けることができる
ように、海岸に設置される場合であれば干潮時および満
潮時を含めて、常に水面高さ位置91を含む領域に形成
されている。さらに、傾斜平面部11は、最大沖波波高
を有する波Wが防波構造物に至ったときの引き波時の水
面高さ位置92より下側から、沖側壁面10の最上部
(天端高さ位置)にわたって形成されている。
【0042】したがって、この防波構造物に至る最大沖
波波高を有する波Wより波高の低いほとんどの波は、水
塊として沖側から傾斜平面部11に衝突することとな
る。こうして、この防波構造物は、傾斜平面部11に衝
突する水塊の運動方向を沖側の斜め上方向(傾斜平面部
11の傾斜方向)に変えて、沖側にはね返すことにより
越波を防止するようになっている。
【0043】この防波構造物は、上部の傾斜平面部11
および下部の略鉛直面12の2つの平面部によって沖側
壁面10が形成されているために、製作が容易であり、
製作、施工コストの低減を図ることができるものとなっ
ている。
【0044】図2は、この発明にかかる防波構造物の第
2実施形態を示す断面構成図である。なお、以下の各実
施形態を示す図2〜図11においては、図1と同様の構
成部分には図1と同一の符号を付して、その重複説明を
省略する。
【0045】この第2実施形態にかかる防波構造物の傾
斜平面部11は、上記第1実施形態の防波構造物のもの
より小さいが、この傾斜平面部11は、静水面Lの高さ
位置91をその下限位置に含む領域にとられていること
から、上記第1実施形態の防波構造物と同様に、波を沖
側にはね返すことにより越波を防止する越波防止作用を
備えている。
【0046】図3は、この発明にかかる防波構造物の第
3実施形態を示す断面構成図である。この第3実施形態
にかかる防波構造物の傾斜平面部11の傾斜角度は、約
30度であり、上記第1実施形態にかかる防波構造物の
傾斜平面部11の傾斜角度より小さいが、上記第1実施
形態にかかる防波構造物と同様に、傾斜平面部11に衝
突した水塊は、この傾斜平面部11に沿って沖側の斜め
上方にはね返されるため、第1実施形態の防波構造物と
同様の越波防止作用を備えている。
【0047】以上のように、この発明にかかる防波構造
物の傾斜平面部11は、一平面から構成する単純な形態
(図1〜図3)であっても、その大きさ(面積)および
傾斜角度を種々設定することができ、どのような設定と
しても定性的には、到来する波を傾斜平面部11に沿っ
て沖側にはね返すことによる越波阻止作用を備えてい
る。
【0048】そこで、次に、このような防波構造物が設
置される海域における種々の水深や波浪条件等の外的条
件に対する、防波構造物の傾斜平面部11の形状条件
と、防波構造物が備える越波阻止性能との定量的関係に
ついて考察し、このような防波構造物に求められる越波
阻止性能を満足するために、このような防波構造物が備
えるべき形状条件、特に、天端高さについて検討する。
【0049】この考察のため、種々の形状に構成された
防波構造物本体の縮尺モデルと、2次元造波水槽とを用
いて一連の実験を行い、この実験結果に基づいて数値解
析を行うことによって、このような防波構造物の形状条
件および外的条件と、越波阻止性能との定量的関係を示
す理論式を導いた。なお、以下の説明においては、本実
施形態にかかる防波構造物を「ナブラ型」と呼ぶことと
する。
【0050】図12に、この一連の実験に用いた2次元
造波水槽を示す。この実験は、この2次元造波水槽(長
さ30m、高さ1.2m、幅0.6m)の中に、海底勾
配を模擬した勾配1/20の不透過斜面を設置して、こ
の不透過斜面上に防波構造物の縮尺モデルを設置し、造
波機によって発生させた種々の波をこの縮尺モデルに衝
突させることによって行った。なお、沖側水平床部の水
深は、常にho=85cmとした。
【0051】図13に、この実験に用いた5つの縮尺モ
デルI〜Vの形状および寸法を示す。これらのモデル高
は、全てB=36.2cmとした。
【0052】表1〜表3に、この一連の実験結果を示
す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】これら表1〜表3は、各行が1つの実験条
件およびその結果を示しており、各実験は、各行の第2
列に示すモデルを、不透過斜面上で、第4列に示す水深
hの位置に設置して、波形勾配Ho/Loを第8列に示す
形状に固定しながら、沖波波高Hoを様々に変化させ
て、越波の生じることのない最大の沖波波高Hoを測定
した。この越波の生じることのない最大の沖波波高Ho
は、第5列に示している。
【0057】具体的に、表1の最上段に示す実験番号1
の実験を例とすると、この実験は、図13(a)のN
o.Iのモデルを水深h=22.5cmの位置に設置
し、このモデルに対して、波形勾配Ho/Loは0.03
6に固定しながら、様々な沖波波高Hoの波を衝突させ
て越波の有無を調べたもので、実験結果としては、第5
列に示されている沖波波高Ho=18cmの波に対して
は越波を生じなかったが、この18cmを越える波に対
しては越波を生じたことが示されている。
【0058】この越波の有無は、防波構造物の単位幅あ
たりの越波流量q(cm3/cm・sec)を測定し、
この越波流量qを無次元化した値q/√(2・g・H
o3)が0.0001以下の場合を越波がない場合とし
た。gは重力加速度である。
【0059】なお、表1〜表3は、それぞれ波形勾配H
o/Loを、0.036とした場合0.012とした場
合、0.045とした場合がまとめられている。
【0060】また、これら表1〜表3の第10列に示す
「断面積S/波の体積HoLo」における「断面積S」と
は、図13(a)〜(e)に斜線で示すように、沖側壁
面と静水面との間で挟まれた領域を防波構造物の幅方向
からみた断面積である。
【0061】次に、この表1〜表3に示した実験結果に
基づいて、防波構造物の形状条件および波浪条件のう
ち、防波構造物の越波阻止性能に大きな影響を及ぼす因
子について考察する。
【0062】図14に、ナブラ型の各モデル形状におい
て、越波を阻止できる天端高さhcの違いを示す。
【0063】この図において、横軸は設置水深hを沖波
波高Hoで無次元化した相対設置水深h/Hoであり、こ
の横軸方向は様々な水深条件を示している。
【0064】縦軸は、天端高さhcを沖波波高Hoで無次
元化した相対天端高さhc/Hoである。この相対天端高
さhc/Hoは、越波を阻止するために必要な最低限の天
端高さを示すものであり、この値が小さいほど、すなわ
ち図の下側ほど越波阻止性能が高いことを示している。
【0065】また、この図中には、ナブラ型の防波構造
物に加えて、直立型の防波構造物における相対天端高さ
hc/Hoも示している。この直立型の防波構造物は、沖
側壁面の前面に海底から天端高さまでテトラポッドを積
層して構成された、従来から実際の護岸として広く用い
られている直立消波護岸であり、同図には、この直立消
波護岸についての公知の越波量推定図から抽出した相対
天端高さhc/Hoを示している。
【0066】この直立型の防波構造物のデータと比較す
れば、ナブラ型の防波構造物のデータは、すべて同図の
下側に位置しており、このナブラ型の防波構造物は、非
常に越波が生じにくい形状であることがわかる。具体的
には、ナブラ型の防波構造物は、従来公知の直立型の防
波構造物の約1/2〜2/3程度の相対天端高さhc/
Hoで越波を阻止することが可能であることがわかる。
言い換えれば、直立型の防波構造物は、ナブラ型と同等
の越波阻止性能を得るためには、ナブラ型の約1.5〜
2倍の天端高さhcを必要とすることがわかる。
【0067】また、この図から、ナブラ型の防波構造物
の各種形状のうち、最も越波阻止性能が高いのは、形状
I,IIIであり、形状IIがそれに続き、形状IV、
Vが最も劣っていることがわかる。
【0068】この結果に基づいて、図13の(a)〜
(e)に示した各ナブラ型形状をみれば、沖側壁面と静
水面との間に挟まれた領域、すなわち、上記断面積Sの
大きさ(静水面上の構造物のふところの大きさ)が、越
波阻止性能に大きな影響をもつことが推測される。
【0069】次に、波浪条件を示す波形勾配Ho/Loと
相対天端高さhc/Hoの関係について考察する。
【0070】図15にモデルIおよびVを例として、各
種の波形勾配Ho/Loに対する相対天端高さhc/Hoを
示す。
【0071】この図においても、横軸は様々の水深条件
を表す相対設置水深h/Hoであり、縦軸は越波阻止性
能を表す相対天端高さhc/Hoである。したがって、同
図の下側ほど越波阻止性能が高いことを示している。
【0072】この図をみれば、防波構造物の設置海域で
の波形勾配Ho/Loが大きい場合の相対天端高さhc/
Hoは小さく、すなわち低い天端高さで越波を阻止でき
る傾向が表れており、このことからから、越波を阻止す
るために必要な天端高さhcは、波形勾配Ho/Loにも
依存するものと推察される。
【0073】さらに、表1〜表3の結果を考察すれば、
越波を阻止するために必要な天端高さhcは、沖波波高
Hoそのものの大きさや、水深h、沖側壁面高さと傾斜
平面部の水平方向長さDの比D/Bにも依存しているも
のと推察される。
【0074】以上のように、沖側壁面の天端高さhc
は、最大沖波波高Ho、沖波波長Lo、設置水深h、沖側
壁面高さB、傾斜平面部水平長さD、沖側壁面と静水面
との間の領域の幅方向の断面積S等に依存し、変化して
いるものと推察される。
【0075】そこで、表1〜3に示した全データに基づ
いて、相対天端高さhc/Hoを目的変数とし、壁面高さ
に対する設置水深の比h/B、波形勾配Ho/Lo、沖側
壁面高さと波高の比Ho/B、波の面積に対する沖側壁
面と静水面との間の領域の断面積の比S/(HoLo)、
壁面高さに対する迫り出し傾斜面の水平方向長さの比D
/Bの5つを説明変数として、重回帰分析を行い、前記
5つの説明変数から、目的変数である相対天端高さhc
/Hoを推定する推定式を得た。この推定式(1)は以
下の通りである。
【0076】
【数3】
【0077】この推定式(1)によれば、防波構造部
が、上記5つの説明変数から同式右辺によって算出され
る値に相当する相対天端高さhc/Hoを備えていれば、
理論上、越波を防止できるといえる。以下、この推定式
(1)によって算出される、越波を防止するために必要
な相対天端高さhc/Hoの理論値をパラメータXで表
す。
【0078】次に、この推定式(1)の精度を検証す
る。
【0079】図16に、この推定式(1)から算出され
る相対天端高さ(パラメータX)と、水槽実験によって
実際に検出された相対天端高さhc/Hoとの関係を示
す。すなわち、この図において、横軸は推定式(1)に
よって算出されるパラメータXを表し、縦軸は水槽実験
によって実際に検出された相対天端高さhc/Hoを表し
ている。
【0080】この図によれば、各プロットは、ほぼ原点
を通る傾き1の直線上に載っており、推定式(1)によ
るパラメータXと、実験結果である相対天端高さhc/
Hoがほぼ一致し、推定式(1)の精度が高いことがわ
かる。また、この図15のプロットデータから両者の相
関係数を求めれば、相関係数は0.987と非常に高
く、この点からも推定式(1)が非常によい精度である
ことがわかる。
【0081】しかしながら、パラメータXとして理論式
から算出した相対天端高さhc/Hoと、実験から得ら
れた相対天端高さhc/Hoとの間には、幾分かのばら
つきが存在する。そこで、この理論値と実験結果とのば
らつきに基づいて、完全に越波量をゼロとすることがで
きる相対天端高さhc/Hoを求める。
【0082】そこで、同図において、すべてのプロット
を左側にみる直線を考えると、hc/Ho=1.1Xの直
線をひくことができる。
【0083】このことから、任意の最大沖波波高Ho等
の波浪条件等のもとで、この1.1Xに相当する相対天
端高さhc/Hoを備えた沖波壁面を設定すれば、この条
件のもとで越波を防止するために必要な相対天端高さh
c/Hoは、実験結果によれば、この1.1Xの直線より
同図左側、すなわちこの1.1Xに相当する相対天端高
さhc/Hoより低いため、確実に越波を阻止できること
がわかる。
【0084】一方、実際の護岸においては、その海岸域
の利用目的等によって、求められる越波阻止性能は異な
るものであり、常に、確実に越波を阻止することが求め
られるものではない。
【0085】例えば、人家や一般道路等の密集地から離
れた海岸域において設置された海浜公園等に隣接する護
岸であれば、台風時など、大波が発生することが想定さ
れるときには、原則として利用されないものであるか
ら、台風時などに生じうる上記最大沖波波高を有する波
に対して越波を阻止できることよりも、このような大き
な波に対しては中程度の越波を許容しながら、できる限
り天端高さhcを低くして、景観が阻害されることを防
止した親水性護岸とすることが求められる。
【0086】また、海岸域に設置された空港等に隣接す
る護岸であっても、空港等は台風時等には閉鎖されるた
め、最大沖波波高Hoを有する波に対して越波を完全に
阻止できることは求められておらず、このような波に対
しては少量の越波を許容する代わりに、パイロットの視
界を妨げることのないようにできるだけ天端高さhcを
低くすることが求められる。
【0087】また、人家、公共施設、一般道路等が密集
している地域に隣接する護岸であれば、わずかな越波は
許容することができるため、最大沖波波高Hoを有する
波に対して完全に越波を阻止する高い天端高さの護岸よ
りも、ごく少量の越波が生じるが景観を阻害しない低い
天端高さの護岸が求められる。
【0088】また、原子力発電所等の保安上最重要施設
が設置された海岸域の護岸であれば、想定される最大沖
波波高Hoに対しても、確実に越波を防止することが求
められる。
【0089】そこで、このような防波構造物が設置され
る海岸域においてそれぞれ異なる越波阻止性能に対し
て、この越波阻止性能を満足する相対天端高さhc/Ho
を求めるため、上記水槽実験において、理論上、越波を
阻止しうる相対天端高さに相当するパラメータXに対し
て、このパラメータX以下の相対天端高さhc/Hoにお
ける越波量を測定した。
【0090】この実験によれば、パラメータXの約半分
(1/2X)の天端高さを設定した場合に、上記海浜公
園等において許容される中程度の越波量が測定され、パ
ラメータXの約0.8倍(0.8X)の天端高さを設定
した場合に、上記空港等において許容される少量の越波
量が測定された。
【0091】したがって、理論式(1)の精度が十分に
高いことを踏まえれば、パラメータXに対して、0.5
X以上の相対天端高さhc/Hoを備えれば越波量を中程
度以下に抑えることができ、0.8X以上の相対天端高
さhc/Hoを備えれば越波量を少量に抑えることができ
ることが推測される。
【0092】すなわち、上述した防波構造物が設置され
る海岸域において求められる越波阻止性能に応じて、最
大沖波波高Hoを有する波に対し、中程度の越波量を許
容する海岸域であれば、防波構造物の相対天端高さhc
/Hoを上記パラメータXに対して0.5X以上に設定
し、少量の越波量を許容する海岸域であれば、防波構造
物の相対天端高さhc/Hoを0.8X以上に設定すれ
ば、求められる越波阻止性能を満足することができ、さ
らに、景観等の観点から求められるできるだけ低い天端
高さを実現することができる。
【0093】以上、図1〜図3に示した、沖側壁面10
の上部に一平面からなる傾斜平面部11を形成し、沖側
壁面10の下部を略鉛直面として構成した最も単純な形
態となるナブラ型防波構造物について説明したが、本発
明にかかる防波構造物は、このような形態に限定され
ず、例えば、以下に説明する第4〜第11実施形態(図
4〜図11)のように構成してもよく、このような形態
の防波構造物についても、上記理論式(1)を適用し
て、防波構造物に求められる越波阻止性能を必要十分に
満足しながら、低い天端高さを得ることができる。
【0094】第4実施形態(図4) この実施形態は、傾斜平面部11を傾斜角度の異なる複
数の平面111,112を組み合わせることによって構
成したものである。
【0095】このように構成しても、沖側壁面10は平
面の組み合わせであることから、容易に製作することが
できるが、さらにこれに加えて、傾斜平面部11を構成
する平面111,112の傾斜角度を適当に組み合わせ
ることができることから、設計の自由度が高まり、求め
られる越波阻止性能に応じて防波構造物を構成すること
ができる。
【0096】なお、このような傾斜角度の異なる複数の
平面による傾斜平面部11は、3以上の傾斜角度の異な
る平面によって構成してもよい。
【0097】第5実施形態(図5) この実施形態は、防波構造物の沖側壁面10下部を、略
鉛直面12でなく、下側が沖側に向かって迫り出すよう
に傾斜する平面部121として構成したものである。
【0098】このように構成すれば、この平面部121
にかかる波圧が防波構造物本体50を下向きに押しつけ
る分力成分(下向きの鉛直波力)を有することなること
から、この沖側壁面10下部にかかる波圧を防波構造物
本体50下面の摩擦力を増大させる下向きの力として作
用させることができる。
【0099】また、沖側壁面10の下部を略鉛直面12
として構成した場合(第1〜第3実施形態)と比較し
て、防波構造物本体50下面の接地面積をさらに大きく
することができるため、特に安定性に優れたものとする
ことができる。
【0100】なお、この構成も、沖側壁面10は平面の
組み合わせにより構成されているため、製作は容易であ
る。
【0101】第6実施形態(図6) この実施形態は、防波構造物の沖側壁面10の下部を、
略鉛直面12と、下側が沖側に向かって迫り出すように
傾斜する平面部121とで構成したものである。
【0102】このように構成すれば、第5実施形態(図
5)と比較して、各平面11,12,121の接合部分
における開き角度を大きくすることができるため、これ
ら接合部分において、沖側壁面10の傾斜角度が変化す
るために生じやすい応力集中を小さくすることができ
る。
【0103】また、このように構成すれば、この平面部
12にかかる波圧が防波構造物本体50を下向きに押し
つける分力成分(下向きの鉛直波力)を有することか
ら、この沖側壁面10の下部にかかる波圧を防波構造物
本体50下面の摩擦力を増大させる下向きの力として作
用させることができる。
【0104】さらに、沖側壁面10の下部を略垂直面1
2のみで構成した場合(第1実施形態等)と比較して、
防波構造物本体50の下面の接地面積をさらに大きくす
ることができるため、特に安定性に優れたものとするこ
とができる。
【0105】なお、この構成でも、沖側壁面10は、平
面の組み合わせにより構成されているため、製作は容易
である。
【0106】また、沖側壁面10の下部を略鉛直面、あ
るいは、沖側に向かって迫り出した構成としても、上部
の傾斜平面部11による非越波特性には、大きな影響を
及ぼさないことを別途水槽実験で確認している。
【0107】第7実施形態(図7) この実施形態は、傾斜平面部11の上方、天端面20上
に沖側に向かって略水平方向に張り出した天端板21を
設けたものである。この天端板21は、例えば、鋼板
や、鋼/コンクリート合成構造等によって形成された板
状部材を、天端面20上に取り付けられることによって
構成されている。
【0108】このような天端板21は、単純な板状部材
によって形成することが可能であることから、大幅なコ
ストの増加を招くことなく、容易に製作、施工すること
ができる。なお、このような天端板21は、沖側壁面1
0が形成される防波構造物本体50の一部として一体的
に形成してもよい。
【0109】この実施形態によれば、傾斜平面部11に
衝突する水塊は、その運動エネルギーの大半を傾斜平面
部11の傾斜に沿って上方に持ち上げられる際に位置エ
ネルギーとして消費し、こうして運動エネルギーの多く
を失った勢いの弱い水塊が天端板21に衝突する。この
ため、この天端板21に作用する波圧は小さなものとな
る。そして、この天端板21に衝突した水塊は、この天
端板21によって沖側の海面にはね返されるため、この
水塊が天端面20を越えることが防止され、優れた非越
波特性が得られる。
【0110】第8〜11実施形態(図8〜11) 第8実施形態は、図8に示すように、天端面20上に沖
側に向かって傾斜する波返し面221を有する波返し工
22を設けたものである。
【0111】このような波返し工22を設ければ、沖側
壁面10のみによっては、越波を生じてしまう場合であ
っても、天端面20上に流れる水をこの波返し工22が
せき止めることができるため、防波構造物としての非越
波特性をさらに優れたものとすることができる。
【0112】これは、上述の各モデル実験において少量
の越波が生じた場合を詳細に観察すれば、少量の越波を
生じた場合に防波構造物本体50を越えた水は、沖側壁
面10によってはね返された波の主流から剥がれたと考
えられるごく少量の水が天端面20上に流れ落ちていた
ものであることから、波返し工22がこの水をせき止
め、天端面20の陸側に至らせなければ、防波構造物と
して越波を防止できることとなるからである。
【0113】したがって、波返し工22は、沖合から到
来する波の波圧を直接に受け止めるのではなく、はね返
される波の主流から剥がれ、天端面20に流れ落ちてく
る水勢の弱い水を防波構造物の陸側に至らないようにせ
き止めればよいだけであるから、強固な構造を必要とせ
ず、沖側壁面10と比べて簡易な構造として構成するこ
とができる。また、この波返し工22は、天端面20に
流れ落ちてくる少量の水をせき止めればよいため、高さ
方向に大きなものとする必要がなく、この波返し工22
を含めても、従来の直立型の防波構造物(図17)等と
比べて天端高さは十分に低く構成することができる。
【0114】また、上記理論式(1)に基づいて設定さ
れた天端高さhcを備えた防波構造物にこのような波返
し工22を設ければ、相対天端高さhc/Hoをさらに小
さくでき、特に優れた非越波特性を備えることができ
る。
【0115】なお、この波返し工22は、防波構造物本
体50と別個に形成して天端面20に取り付けても、あ
るいは防波構造物本体50と一体的に構成してもよい。
【0116】また、このような波返し工22と同様の作
用効果を奏する構造として、図9に示すように、天端面
20上に鉛直面の波返し面231を有する波返し工23
を設けた構成(第9実施形態)としてもよい。さらに
は、波返し面が上側が陸側に傾斜するように形成した波
返し工を設けた構成としてもよい。
【0117】さらに、図10に示すように、このような
波返し面を天端面20の最前部に、すなわち、沖側壁面
10の最上部に傾斜平面部11と連続する鉛直面241
として形成した構成(第10実施形態)としてもよい。
なお、このように構成しても、この鉛直面241は、波
をはね返す傾斜平面部11の一部としてではなく、はね
返された波の主流から剥がれた少量の水を天端面20上
に至らせないための波返し面として作用するものである
から、高さ方向に大きなものとする必要はなく、従来の
直立型の防波構造物(図17)と比べて、天端高さを十
分低くできることに変わりはない。
【0118】また、図11に示すように、沖側壁面10
の海底高さ位置から天端高さにわたる傾斜平面部11を
形成した防波構造物本体50に、上述のような波返し面
251を有する波返し工25を取り付けた構成(第11
実施形態)とてもよい。
【0119】このような構成によっても、防波構造物本
体50の沖側壁面10に形成された傾斜平面部11のみ
では少量の越波を生じてしまう場合であっても、波返し
工25が天端面20上に流れる水をせき止めることがで
きるため、防波構造物としての非越波特性をさらに優れ
たものとすることができる。
【0120】あるいはまた、上述のようにして天端面2
0上に流れ至る水を防波構造物本体50の陸側に至らせ
ないために、天端面20上に排水手段を設けた構成とし
てもよい。
【0121】このような構成によっても、沖側壁面10
のみによっては、少量の越波を生じてしまう場合であっ
ても、排水手段によって天端面20の陸側に水を至らせ
ないことができるため、非越波特性をさらに優れたもの
とすることができる。
【0122】このような排水手段は、天端面20上に形
成される溝によって構成したり、あるいは、天端面20
を沖側に向かって傾斜するように形成することにより構
成することができる。
【0123】また、前述の各実施形態にかかる防波構造
物の沖側壁面の前方に消波工を設けてもよく、この消波
工によれば防波構造物の沖側壁面に至る波の勢いを弱め
ることができるため、さらに越波阻止性能を高め、天端
高さを低くすることができる。
【0124】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、沖側壁
面の少なくとも上部に傾斜平面部を設けたため、優れた
非越波特性を得ることができるとともに、沖側壁面の形
状条件や沖波波高等の外的条件と、防波構造物が備える
越波阻止性能との定量的関係を明らかにし、この関係に
基づいて、防波構造物の沖側壁面の構造、特に天端高さ
を、防波構造物の設置海域において求められる越波阻止
性能を必要十分に満たすように設定したため、求められ
る越波阻止性能を満たして越波量を所望の範囲内に抑え
ながら、低い天端高さの防波構造物を提供することがで
きる。
【0125】したがって、防波構造物が設置される海岸
域の景観を守りながら、防波構造物本体を軽量化し、こ
れによって必要な基礎を小さくして地盤改良に要するコ
スト・手間を軽減することができる。
【0126】また、沖側壁面を平面の組み合わせによっ
て構成したため、防波構造物本体を容易に製作すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる防波構造物の第1実施形態を示
す断面構成図である。
【図2】本発明にかかる防波構造物の第2実施形態を示
す断面構成図である。
【図3】本発明にかかる防波構造物の第3実施形態を示
す断面構成図である。
【図4】本発明にかかる防波構造物の第4実施形態を示
す断面構成図である。
【図5】本発明にかかる防波構造物の第5実施形態を示
す断面構成図である。
【図6】本発明にかかる防波構造物の第6実施形態を示
す断面構成図である。
【図7】本発明にかかる防波構造物の第7実施形態を示
す断面構成図である。
【図8】本発明にかかる防波構造物の第8実施形態を示
す断面構成図である。
【図9】本発明にかかる防波構造物の第9実施形態を示
す断面構成図である。
【図10】本発明にかかる防波構造物の第10実施形態
を示す断面構成図である。
【図11】本発明にかかる防波構造物の第11実施形態
を示す断面構成図である。
【図12】一連の水槽実験に用いた2次元造波水槽を示
す断面図である。
【図13】水槽実験に用いた縮尺モデルI〜Vを示す断
面図である。
【図14】ナブラ型の各縮尺モデルにおける、越波を阻
止できる天端高さhcの違いを示すグラフである。
【図15】モデルIおよびVについて、各種の波形勾配
Ho/Loに対する相対天端高さhc/Hoを示すグラフで
ある。
【図16】推定式(1)から算出される相対天端高さ
(パラメータX)と、水槽実験によって実際に検出され
た相対天端高さhc/Hoとの関係を示すグラフである。
【図17】従来の直立型ケーソンによる防波構造物を示
す断面構成図である。
【符号の説明】
10 沖側壁面 11 傾斜平面部 12 略鉛直面 20 天端面 21 天端板 22,23,25 波返し工 40 基礎
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川 知和 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 中岡 威博 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 杉井 謙一 神戸市中央区脇浜町1丁目3番18号 株式 会社神戸製鋼所神戸本社内 (72)発明者 濱崎 義弘 神戸市中央区脇浜町1丁目3番18号 株式 会社神戸製鋼所神戸本社内 (72)発明者 竹鼻 直人 神戸市中央区脇浜町1丁目3番18号 株式 会社神戸製鋼所神戸本社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 沖に面して立設される防波構造物におい
    て、沖側壁面の少なくとも上部に、沖に向かって迫り出
    すように傾斜する傾斜平面部を設けるとともに、 前記傾斜平面部の天端高さhcを最大沖波波高Hoによっ
    て無次元化した量hc/Hoが、次式で定義されるパラメ
    ータXに対して、0.5X以上、かつ、1.5X以下の
    範囲内に設定されたことを特徴とする防波構造物。 【数1】 ただし、Hoは最大沖波波高、Loは沖波波長、hは構造
    物の設置水深、Bは沖側壁面の高さ、Dは前記傾斜平面
    部の水平方向長さ、Sは沖側壁面と静水面との間で挟ま
    れた領域を防波構造物の幅方向からみた断面積である。
  2. 【請求項2】 前記傾斜平面部の天端高さhcの無次元
    化量hc/Hoが、前記パラメータXに対して、1.2X
    以下に設定された請求項1記載の防波構造物。
  3. 【請求項3】 前記傾斜平面部の天端高さhcの無次元
    化量hc/Hoが、前記パラメータXに対して、0.8X
    以上に設定された請求項1または2記載の防波構造物。
  4. 【請求項4】 前記傾斜平面部の天端高さhcの無次元
    化量hc/Hoが、前記パラメータXに対して、1.0X
    以上に設定された請求項1または2記載の防波構造物。
  5. 【請求項5】 前記傾斜平面部の天端高さhcの無次元
    化量hc/Hoが、前記パラメータXに対して、1.1X
    以上に設定された請求項1または2記載の防波構造物。
  6. 【請求項6】 前記防波構造物において、前記傾斜平面
    部が静水面高さ位置を含む領域に設けられたことを特徴
    とする請求項1〜5のうちいずれかに記載の防波構造
    物。
  7. 【請求項7】 前記傾斜平面部の傾斜角度が、前記沖側
    壁面の下部の傾斜角度よりも大きくなるように構成され
    たことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれかに記載
    の防波構造物。
  8. 【請求項8】 前記沖側壁面の下部が、略鉛直面として
    構成されたことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれ
    かに記載の防波構造物。
  9. 【請求項9】 前記沖側壁面の下部が、下側が沖側に向
    かって迫り出すように傾斜する平面部として構成された
    ことを特徴とする請求項1〜8のうちいずれかに記載の
    防波構造物。
  10. 【請求項10】 前記傾斜平面部の上方に、沖側に向か
    って略水平方向に張り出した天端板が設けられたことを
    特徴とする請求項1〜9のうちいずれかに記載の防波構
    造物。
  11. 【請求項11】 前記沖側壁面の天端面上に、この天端
    面上へ流れ至る水をせき止める波返し工が設けられたこ
    とを特徴とする請求項1〜10のうちいずれかに記載の
    防波構造物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007120211A (ja) * 2005-10-31 2007-05-17 Ozawa Kogyo Kk 水勢抑制装置及び水勢抑制装置の使用方法並びに水勢抑制体
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JP2015036477A (ja) * 2013-08-12 2015-02-23 株式会社日本パーツセンター 漂流物捕捉機能付き防波柵
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