JPH11146889A - 人工顎関節 - Google Patents

人工顎関節

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JPH11146889A
JPH11146889A JP12160498A JP12160498A JPH11146889A JP H11146889 A JPH11146889 A JP H11146889A JP 12160498 A JP12160498 A JP 12160498A JP 12160498 A JP12160498 A JP 12160498A JP H11146889 A JPH11146889 A JP H11146889A
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Tsunehisa Shimoda
恒久 下田
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    • A61F2/00Filters implantable into blood vessels; Prostheses, i.e. artificial substitutes or replacements for parts of the body; Appliances for connecting them with the body; Devices providing patency to, or preventing collapsing of, tubular structures of the body, e.g. stents
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 中顔面に対する下顎骨の位置を保つととも
に、機能時には円滑な滑りと回転および側方運動が行え
る、人工顎関節を提供する。 【解決手段】 関節窩と関節頭の矢状断面での接触面
は、力学的に凸対凸関係である点接触、前頭断面では線
接触になるように構成され、骨頭およびソケットからな
る。静的な咬頭嵌合位では、下顎骨の後方限界位に位置
付けられた人工顎関節の硬質材骨頭部は、平坦な関節面
以外に軟質材ソケット部の後方ストッパーに接触して安
定し、下顔面形態を維持する。動的・機能時には、硬質
材骨頭は下顎全体の運動のなかで運動量の少ない部位に
近接し、滑走よりも回転運動の比重が大きくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下顎頭欠損、発育
不全、関節リウマチ、外傷、腫瘍やその他の種々の病変
に対する治療のために、関節置換を行うための人工顎関
節(A)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】顎関節の関節全置換を行う人工顎関節
は、満足な臨床応用がなされていない。顎関節の人口材
料による再建は、本邦ではその多くが金属、セラミック
スなど硬質材骨頭の暫間的使用に限られ、国内外を含め
ても永久的および半永久的な人工顎関節の報告は少な
く、また治療成績も悪く、臨床的に認知されていない。
【0003】永久的および半永久的な全置換を行う人工
顎関節は、人工膝関節や人工股関節と同様に、金属やセ
ラミックスなどの硬質材骨頭と硬質材ソケット、硬質材
骨頭と高密度ポリエチレンや超高分子量ポリエチレンな
どの軟質材ソケットによるものがある。しかし、いづれ
も本来の解剖学的位置および形態に酷似させたために、
滑り運動要素が多い顎関節の機能回復はできず、滑り運
動を過剰な回転運動で補償し、顎運動機能の一部を再現
していたに過ぎない。
【0004】顎関節は、滑りと回転運動の比重のなかで
滑り運動要素が多いため、置換する顎関節を本来の解剖
学的位置や形態に一致させた場合には、滑り運動量が本
来の顎関節の運動量と同様に多くなってしまう。顎関節
全体の運動の中で最も運動量の少ない点を人工顎関節の
運動中心と仮定すれば、再建される顎関節は結果的に運
動中心から遠く離れた部位に位置付けられることにな
り、滑り運動量の多さが残遺するとともに複雑な関節運
動を再現できない。
【0005】正常顎関節形態に人工顎関節を回復させて
も、本来はソケットである三次元的な凹状の関節窩が負
荷負担面ではない。そのため、顎運動を関節窩の部位だ
けで、しかも回転運動のみで補償しようとすることにな
り、強度の関節運動障害が残遺してしまう。その結果、
過剰な負荷が局所の応力集中を招き、人工材料の緩みや
破綻が起こりやすい。このため、永久的な顎関節置換シ
ステム自体の適用が世界中で懸念されてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヒト顎関節
の解剖学的見地を離れ、生体力学的見地に立ち、人工顎
関節は静的には形態を維持する支持部としてストッパー
の役目を持ち、動的には回転運動中心としてセンターの
役目を合わせ持たせるとともに、回転運動と滑走運動の
移行を円滑にさせる。
【0007】具体的には、関節窩と関節頭の接触面は矢
状断面観で点接触、前頭断面観では線接触するように設
計される。また、関節頭はストッパーによって前方と後
方への過剰な運動を防止し、内外側方向では自由な側方
運動を許容するように摺動する構造を持たせる。このた
め、静的・非機能時において、中顔面に対する下顎骨の
位置は保たれ、人工顎関節に作用する周囲筋肉の応力か
ら下顔面は支持される。また動的・機能時には、顎関節
運動の主体を回転運動とするが、再現できにくい滑り運
動の比重を減少させつつも、滑り運動量が開口量に正比
例しない配慮を加えることで、顎運動機能を改善させ
る。また、関節頭の自由な側方運動を許容する。本発明
は、このような能力を持つ人工顎関節を実現させること
を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に、本発明は次のような構成とした。すなわち、本発明
にかかる人工顎関節Aは、大まかに骨頭Cおよびソケッ
トSに二分される。さらにこの両者は、機能部と骨接合
部にそれぞれ区分できる。この結果、人工顎関節Aの構
成要素は4つに分けられる。
【0009】まず骨頭Cは、下顎切痕RNから下顎枝外
側縁RLにかけて既存の下顎骨Mと骨接合する(1)骨
頭−下顎骨接合部Cmと、機能部であるラグビーフット
ボール形の(2)硬質材骨頭部Ccに分けられる。また
ソケットSは、硬質材骨頭部Ccと接触する機能部の
(3)軟質材ソケット部Fsと、ソケットSを側頭骨の
関節隆起(関節結節)AEの既存骨と骨接合する(4)
ソケット−側頭骨接合部Tsにそれぞれ分けられる。
【0010】本発明の主要をなす軟質材ソケット部Fs
は、矢状面外方観では直線上の機能面でラグビーフット
ボール形の硬質材骨頭部Ccに対して、矢状断面観にお
いて点状に接触し、前頭断面観では曲線状に接触し、ま
た静的な咬頭嵌合位時には水平断面においても曲線状に
接触する。さらに、前方および後方への過剰な移動を防
止する前方ストッパーSa、後方ストッパーSpも備え
る。このため咬頭嵌合位では、下顎骨の後方限界位に位
置付けられた人工顎関節Aの硬質材骨頭部Ccは、軟質
材ソケット部Fsに接触して安定し、下顔面形態を維持
する支持部分として機能する。
【0011】静的な咬頭嵌合位では、歯牙および歯列と
いう運動終末があるために、顎関節部は強い負荷を負担
していないと現在では考えられている。そのため、静的
状態での人工顎関節Aは、下顔面形態を維持するためだ
けの周囲筋肉の応力への反力として具備できる力学的強
度を有しているだけでよい。この点では、膝関節や股関
節など人体他部関節が、常に体重という負荷に晒されて
いることよりは構造学的に人工顎関節Aは有利である。
また、ソケットSが設置される側頭骨の関節隆起(関節
結節)AEの骨梁は、関節窩部分の骨梁と比較して厚
く、より多くの負荷に耐えられると考えられる。
【0012】動的、つまり機能時では、顎運動に伴い人
工顎関節Aの硬質材骨頭部Ccは滑りと転がり運動を行
うが、本発明の人工顎関節Aの骨頭Cは顎関節全体の運
動の中で最も運動量の少ない点と近接するために、滑走
運動よりも回転運動の比重が大きくなる。人工顎関節A
と運動終末である歯牙、歯列とは近くなり、回転運動量
は増す可能性があるが、逆に運動中心とのズレが少な
く、滑走を回転運動で補償しやすい。
【0013】平面状の軟質材ソケット部Fsの硬質材骨
頭部Ccとの接触面は、滑り運動量が開口量に正比例し
ないように、上顎歯列および上顎の歯槽に対して一定の
角度Fを持つ。そしてラグビーフットボール形の硬質材
骨頭部Ccは、後方ストッパーSpから離れる機能運動
時には、矢状断面で直線状のソケットと点接触する。硬
質材骨頭部Ccが一定量の回転運動後に滑走を行った場
合に、上顎歯列に対して一定の角度Fを持つ軟質材ソケ
ット部Fs上を滑るために、従来の人工顎関節Bのよう
に下顎に付着する周囲筋の応力に反して下前方へ滑走し
ながら、前歯部の開口距離を開大させることがない。こ
れは、本発明の人工顎関節Aでは滑走運動のみでは前歯
部での開口量は基本的に増加しないことを示しており、
転がり運動から滑り運動への移行がスムーズであるこ
と、転がり運動が限界量に達しても十分な滑り運動を行
える構造を与えられていることに起因する。
【0014】対側咀嚼に代表される突発的な前方および
側方運動に対しては、硬質材骨頭部Ccが軟質材ソケッ
ト部Fsから逸脱も可能なように設計され、また硬質材
骨頭部Ccの側方運動を補償するために、軟質材ソケッ
ト部Fsはソケット−側頭骨接合部Tsに対して内外側
に摺動できる。さらに、置換側(手術側)咀嚼の際に
は、上下顎の歯牙の咬合関係から運動終末と人工顎関節
の静的位置のズレがない。上記三点から、本発明の人工
顎関節Aは、従来の人工顎関節Bに比較して再現の困難
な咀嚼運動に関して余分な負荷がかかりにくい。さら
に、本発明の人工顎関節Aは、その形態が兎や犬、猿と
同様に、矢状断面観では凸対凸、前頭断面観では凹対凸
の関節面間の対向関係を示し、ヒト顎関節より機能圧を
負担する角度が広く、機能圧の方向に拘束を受けにく
い。
【0015】
【実施例】以下、図面に表された本発明の実施例につい
て具体的に説明する。具体例として、凸状の側頭骨の関
節隆起(関節結節)AF最下点に位置付けられ、ソケッ
トSの接触面形態が曲面状、骨頭Cの形態がラグビーフ
ットボール形で、断面の機能面が矢状断面観で点接触、
前頭断面観で線接触になるように構成された、本発明の
人工顎関節Aについて解説する。
【0016】図1に本発明の人工顎関節Aの矢状面組立
図を示す。人工顎関節AはソケットSと骨頭Cに大まか
に分けられ、ソケットSは軟質材ソケット部Fsとソケ
ット−側頭骨接合部Tsに、骨頭Cは骨頭−下顎骨接合
部Cmと硬質材骨頭部Ccにそれぞれ分けられる。ソケ
ットSおよび骨頭Cは、それぞれ骨接合用の固定用スク
リューScを持つ。図2は人工顎関節Aの前頭面組立図
を、また図3は人工顎関節Aの水平面上方からの組立図
を、図4は人工顎関節Aの水平面下方からの組立図を示
す。
【0017】図1乃至図4において、4つの人工顎関節
Aの構成要素(骨頭−下顎骨接合部Cm、硬質材骨頭部
Cc、軟質材ソケット部Fs、ソケット−側頭骨接合部
Ts)とともに、後方ストッパーSp、前方ストッパー
Sa、側頭骨ガイドTgおよび側頭骨ストッパーLsの
位置関係を、また骨接合用の固定用スクリューScの位
置関係も示す。
【0018】図5は、従来の人工顎関節Bとして用いら
れてきた装置を人体に装着した矢状面の模式図を表すも
ので、図6には同じく前頭面の模式図、図7には同じく
水平面の模式図を示す。さらに、図8に従来の人工顎関
節Bとして用いられてきた装置の開口時の矢状面模式図
を示す。図5乃至図8で示すように、人工顎関節は本来
の顎関節の位置である窩状の側頭骨の関節窩F最深点
に、解剖学的・形態学的に模した部位に置かれる。従来
の人工顎関節Bと脳頭蓋Br、眼窩Or、上顎骨Ma
x、下顎骨Man、耳孔E、正常顎関節NJ、側頭下窩
LF、下顎枝前縁RA、下顎枝後縁RP、下顎枝外側縁
RL、下顎切痕RNとの位置関係を示す。
【0019】図8の開口運動時の人工顎関節Bに示すよ
うに、本来の解剖学的位置や形態に一致させた結果、顎
関節を運動中心から離れた部位に位置付けることにな
り、従来の硬質材骨頭Cc’の滑走運動量が多くなって
しまう。また、前歯部の開口距離を開大させるために
は、下顎に付着する周囲筋の応力に反して従来の硬質材
骨頭Cc’が下前方へ滑走しなければならない。限界に
近づいた開口距離をさらに拡大しようと従来の硬質材骨
頭Cc’を下前方へ滑走させることは困難である。硬質
材骨頭Cc’が滑走運動を行うためには、人工顎関節B
における回転運動のみ行った際の前歯部での開口距離R
OM1より、回転から滑走運動へ移行した際の前歯部で
の開口距離ROM2が大きくなってしまう。従来の人工
顎関節Bは、顎関節の形態を正常顎関節形態に回復させ
た結果、顎運動を関節窩Fの部位のみで補償しようと
し、強度の関節運動障害が残遺し、過剰な負荷が応力集
中を招き、ソケットSの緩みや破綻が起こりやすい。
【0020】図9乃至図11は、本発明の1実施例とし
ての人工顎関節Aを人体に装着時の模式図を表すもの
で、図9は矢状面観、図10は前頭面観、図11は水平
面観を示す。本発明の人工顎関節Aと、脳頭蓋Br、眼
窩Or、上顎骨Max、下顎骨Man、耳孔E、正常顎
関節NJ、側頭下窩LF、下顎枝前縁RA、下顎枝後縁
RP、下顎枝外側縁RL、下顎切痕RNとの位置関係を
図9乃至図11に示す。また、図12には開口時の本発
明の人工顎関節Aの矢状面模式図を示す。図9乃至図1
2で示すように、人工顎関節の位置は本来の顎関節OC
H(左側)の位置より前方および下方で、凸状の側頭骨
の関節隆起(関節結節)AE最下点に位置付けられる。
また、下顎骨Manに対しては下顎切痕RNの直上に位
置する。
【0021】図9乃至図12で示すように、ソケット
(窩)Sは側頭骨の関節隆起AE部にネジScで固定さ
れ、軟質材ソケット部Fsとソケット−側頭骨接合部T
sからなる。骨頭Cは同じく下顎骨Mの下顎枝外側面R
Lにネジで固定され、骨頭−下顎骨接合部Cmと硬質材
骨頭部Ccに分けられる。超高分子量ポリエチレン製の
軟質材ソケット部Fsは、図9の矢状面観に示すように
咬合平面OPに対して一定の角度Fを持った平面が与え
られ、コバルトクロム合金の硬質材骨頭部Ccと矢状断
面では点状に接触するが、ストッパーSpによって後方
への過剰な移動が、ストッパーSaによって前方への過
剰な移動が防止される。図10の前頭面観、図11の水
平面観では、軟質材ソケット部Fsは硬質材骨頭部Cc
と接触するが、軟質材ソケット部Fsはソケット−側頭
骨接合部Tsに対して内外側的に摺動するために、硬質
材骨頭部Ccの自由な側方運動を支持する。骨との接合
面にあたるソケット−側頭骨接合部Tsと骨頭−下顎骨
接合部Cmは、純チタンやチタン合金が使用される。
【0022】図12で示すように、開口時では顎運動に
伴い人工顎関節Aの硬質材骨頭部Ccは滑りと転がり運
動を行うが、本発明の人工顎関節Aの硬質材骨頭部Cc
は運動中心と近接するために滑走運動よりも回転運動の
比重が大きい。硬質材骨頭部Ccの回転運動量は増す
が、運動中心とのズレが少なくなり、滑走運動を回転運
動で補償しやすい。
【0023】本発明の人工顎関節Aの硬質材骨頭部Cc
は、矢状断面観において咬合平面OPに対して一定の角
度Fを持つ軟質材ソケット部Fs面上を滑るために、図
11で示すように従来の人工顎関節Bのように下顎に付
着する周囲筋の応力に反して下前方へ滑走する必要がな
い。人工顎関節Aにおける回転から滑走運動へ移行した
際の前歯部での開口距離ROM2’は、回転運動のみ行
った際の前歯部での開口距離ROM1’より小さい。そ
のため、滑走運動へ移行した際に前歯部の開口距離が減
少し、転がり運動から滑り運動への移行がスムーズにな
り、回転運動が限界量に達しても滑走運動を行えやすい
構造になっている。
【0024】硬質材骨頭部Ccは、突発的な前方および
側方運動に対して軟質材ソケット部Fsの側方への滑走
が可能で、硬質材骨頭部Ccの逸脱も可能なように設計
されているため、安定した軟質材ソケット部Fsと硬質
材骨頭部Ccの接触と支持を提供できる。また、上下顎
の歯牙の咬合位である運動終末と人工顎関節の静的位置
がストッパーSpによってズレがないように設計されて
いる。上記の点から、従来の人工顎関節Bに比較して、
再現の困難な咀嚼運動に関して本発明の人工顎関節Aに
は余分な負荷がかかりにくく、力学的に機能圧を負担す
る角度が広いため機能圧の方向に拘束を受けにくい。
【0025】図13乃至図15は、ソケットSの分解図
をそれぞれ示したもので、図13は矢状面観、図14は
前頭面観、図15は水平面観を示す。前方Anおよび後
方P、上方U、下方Lo、内方M,外方Lなどに示す方
向とソケットSの矢状面観、前頭面観、水平面観から位
置関係が把握できる。同じく図13乃至図15に、後方
ストッパーSp,前方ストッパーSaおよび骨接合用の
固定用スクリューScの位置関係を表す。
【0026】図16乃至図18は、骨頭Cの分解図をそ
れぞれ示す。図16は矢状面観の骨頭Cの分解図、図1
7は前頭面観の骨頭Cの分解図、図18は水平面観の骨
頭Cの分解図を示したものである。ソケットSの分解図
と同様に、方向を示す前方Anおよび後方P、上方U、
下方Lo、内方M,外方Lと骨頭Cの矢状面観(図1
6)、前頭面観(図17)、水平面観(図18)から、
各々の位置関係が把握できる。
【0027】本発明の人工顎関節Aは、本来の顎関節の
位置に比べ前方および下方に位置するために、骨との接
合面にあたるソケット−側頭骨接合部Tsと骨頭−下顎
骨接合部Cmと既存骨との界面で、固定に十分な骨接触
面積や骨梁の質が得られやすい。さらに、人工顎関節シ
ステムAの位置は従来の人工顎関節Bと違い、危険な脳
頭蓋との距離があるために、頭蓋底への沈下を憂慮する
必要がない。図9乃至図11で示すように、骨頭−下顎
骨接合部Cmは下顎枝前縁RAと下顎枝外側縁RL、下
顎切痕RNに三面で固定できるために、容易に硬質材骨
頭部Ccを強固に下顎骨Manに固定できる。また、ソ
ケット−側頭骨接合部Tsも側頭骨の関節隆起AEの厚
い骨梁に強固に固定できる。
【0028】図19は、本発明の人工顎関節Aのなかで
下顎枝後縁に固定するように設計された、後縁用骨頭
C’を人体に装着時の模式図を表したものである。後縁
用骨頭−下顎骨接合部Cm’は下顎枝後縁RPと下顎枝
外側縁RL、下顎切痕RNに三面で固定される。図20
乃至図22は、後縁用骨頭C’の分解図をそれぞれ示し
たものである。図20は矢状面観の後縁用骨頭C’の分
解図、図21は前頭面観の後縁用骨頭C’の分解図、図
22は水平面観の後縁用骨頭C’の分解図を示したもの
である。
【0029】図23は、図9乃至図12、および図19
と異なり、下顎枝外側縁RLにソケットSを装着し、関
節窩Fおよび関節隆起AEに骨頭Cを装着した人工顎関
節Dを示す。また、図24にその開口時の模式図を示し
たものである。本発明の人工顎関節Aは、図23乃至図
24に示す人工顎関節DのようにソケットS、骨頭Cを
逆に装着することも想定し、各々の患者にあった人工顎
関節が装着できる。
【0030】実施例では、軟質材ソケット部Fsの素材
を超高分子量ポリエチレン製として、硬質材骨頭部Cc
の素材をコバルトクロム合金として、骨との接合部であ
る骨頭−下顎骨接合部とソケット−側頭骨接合部の素材
をチタンとして記載したが、本発明では他の公知の金属
および樹脂を材料に作製することができる。
【発明の効果】以上に説明した如く、本発明にかかる人
工顎関節は、静的・非機能時は下顎骨の偏位を防止して
下顔面の形態を保持し、また、動的・機能時には再現で
きにくい滑走運動の比重を減少させ、回転運動によって
滑走運動を補償できる。構造的に、矢状面での回転運動
量が限界に近づいても、周囲筋肉の力に反して骨頭が下
前方に滑走する必要がなく、滑走運動量と開口距離が比
例せずに回転と滑走運動の移行がスムーズである。また
生体力学的には、機能面の接触状態が矢状断面観で点接
触、前頭断面観で線接触で、矢状面での関節面での機能
圧の方向に拘束を受けにくい。同時に、再現困難な骨頭
の側方運動を許容できる。さらに、骨頭とソケットを固
定する部位が広く、固定が強固で操作も容易となった。
このため、運動制限の残遺や人工顎関節の緩みや磨耗、
脳頭蓋への沈下などを苦慮する必要がない。本発明のよ
うに、関節の位置を従来と異なる部位に設定し、形態的
な模倣を行わずに機能の向上を計る本発明は、従来の公
知の人工顎関節とは発想の異なる画期的なものといえ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人工顎関節Aの矢状面外方観からの組
立図
【図2】本発明の人工顎関節Aの前頭面前方観からの組
立図
【図3】本発明の人工顎関節Aの水平面上方観からの組
立図
【図4】本発明の人工顎関節Aの水平面下方観からの組
立図
【図5】従来の人工顎関節Bの矢状面模式図
【図6】従来の人工顎関節Bの前頭面模式図
【図7】従来の人工顎関節Bの水平面模式図
【図8】従来の開口時の人工顎関節Bの矢状面模式図
【図9】本発明の人工顎関節Aの矢状面模式図
【図10】本発明の人工顎関節Aの前頭面模式図
【図11】本発明の人工顎関節Aの水平面模式図
【図12】開口時の本発明の人工顎関節Aの矢状面模式
【図13】ソケットSの矢状面外方観からの模式図
【図14】ソケットSの前頭面前方観からの模式図
【図15】ソケットSの水平面下方観からの模式図
【図16】骨頭Cの矢状面外方観からの模式図
【図17】骨頭Cの前頭面前方観からの模式図
【図18】骨頭Cの水平面下方観からの模式図
【図19】閉口時の後縁用骨頭C’を固定した矢状面模
式図の人工顎関節A
【図20】後縁用骨頭C’の矢状面外方観からの模式図
【図21】後縁用骨頭C’の前頭面前方観からの模式図
【図22】後縁用骨頭C’の水平面下方観からの模式図
【図23】閉口時の骨頭CとソケットSを逆に固定した
矢状面模式図の人工顎関節D
【図24】開口時の骨頭CとソケットSを逆に固定した
矢状面模式図の人工顎関節D
【符号の説明】
A 本発明の人工顎関節 B 従来の人工顎関節 D 本発明の人工顎関節のソケットと骨
頭を逆に装着したもの NJ 正常顎関節 OCH 従来の顎関節 An 前方 P 後方 Lo 下方 U 上方 L 外方 M 内方 Right 右側 Left 左側 F 関節窩 AE 関節隆起(関節結節) Br 脳頭蓋 Or 眼窩 Max 上顎骨 Man 下顎骨 E 耳孔 LF 側頭下窩 RA 下顎枝前縁 RP 下顎枝後縁 RL 下顎枝外側縁 RN 下顎切痕 S ソケット(窩) C 骨頭 C’ 後縁用骨頭 Fs 軟質材ソケット部 Ts ソケット−側頭骨接合部 Cm 骨頭−下顎骨接合部 Cc 硬質材骨頭部 Cc’ 後縁用硬質材骨頭部 Cm’ 後縁用骨頭−下顎骨接合部 OP 咬合平面 Sp 後方ストッパー Sa 前方ストッパー Sc 固定用スクリュー Tg 側頭骨ガイド Ls 側頭骨ストッパー F 軟質材ソケットと咬合平面の一定の
角度 ROM1 従来の人工顎関節Bにおいて、回転
運動のみ行った際の前歯部での開口距離 ROM2 従来の人工顎関節Bにおいて、回転
から滑走運動へ移行した際の前歯部での開口距離 ROM1’ 本発明の人工顎関節AおよびDにお
いて、回転運動のみ行った際の前歯部での開口距離 ROM2’ 本発明の人工顎関節AおよびDにお
いて、回転から滑走運動へ移行した際の前歯部での開口
距離

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 顎関節が人体の解剖学的位置に設定さ
    れておらず、本来の顎関節の位置に対して前下方で、顎
    関節前方脱臼を起こした際の位置に合致し、凸状の側頭
    骨の関節隆起(関節結節)最下点に位置付けられた、人
    工顎関節(A)。
  2. 【請求項2】 動的・機能時に、関節頭の滑走運動量
    が前歯部での開口量の増大に比例せず、関節頭の前方へ
    の滑り運動量が増加しても、前歯部での開口量が減少す
    る、請求項1に記載の人工顎関節(A)。
  3. 【請求項3】 本来の顎関節は、凹状の関節窩と凸状
    の関節頭からなる形状を示し、負荷を凹凸面で負担しつ
    つ滑りと転がり運動を補償するが、本発明は矢状断面観
    で、窩と頭の形状が人体の解剖学的形態と異なり、点対
    点の接触関係を示す、請求項1に記載の人工顎関節
    (A)。
  4. 【請求項4】 本発明は、前頭断面観で窩と頭の形状
    が人体の解剖学的形態と異なり、線対線の接触関係を示
    す、請求項1に記載の人工顎関節(A)。
  5. 【請求項5】 関節窩にあたるソケット(窩)の機能
    部である軟質材ソケット部(Fs)が、前後的に固定さ
    れるが内外側方向に摺動できる、請求項1に記載の人工
    顎関節(A)。
  6. 【請求項6】 関節頭にあたる骨頭の機能部である硬
    質材骨頭部(Cc)が、運動時に軟質材ソケット部(F
    s)の形態に沿って回転し、関節窩内で離開を許容する
    とともに、前後的および内外側的に滑走できる、請求項
    1に記載の人工顎関節(A)。
JP12160498A 1997-09-10 1998-03-25 人工顎関節 Pending JPH11146889A (ja)

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