JPH11103856A - 造血幹細胞の増殖促進剤 - Google Patents

造血幹細胞の増殖促進剤

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JPH11103856A
JPH11103856A JP9290440A JP29044097A JPH11103856A JP H11103856 A JPH11103856 A JP H11103856A JP 9290440 A JP9290440 A JP 9290440A JP 29044097 A JP29044097 A JP 29044097A JP H11103856 A JPH11103856 A JP H11103856A
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osm
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agm
hematopoietic stem
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Atsushi Miyajima
篤 宮島
Takahiko Hara
孝彦 原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 造血幹細胞の発生の開始機構を解明し、造血
幹細胞の増殖促進剤を提供することを課題とする。 【解決手段】 OSMが造血幹細胞の増殖促進作用を有す
ることが見いだされ、血球系の細胞疾患の治療等に新た
な途が開かれた。更に、本発明者らによって、AGM領域
のインビトロ培養物が提供され、造血幹細胞の増殖を促
進する作用を有する化合物をスクリーニングすることが
可能となった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生物工学、特にサ
イトカインによる血液細胞の増殖の分野に関する。
【0002】
【従来の技術】マウスの胚発生の過程において、造血
は、交配後約7.5日目(7.5days post coitum/7.5dpc)
に胚の卵黄嚢中で開始され、12.5日目には、細胞が胎仔
肝臓に移動し、その後、脾臓と骨髄に移動する(Moore,
M. A. S., et al., 1970, Br. J. Haematol. 18, 279-
296.、Johnson, G. R., et al., 1975, Nature 258, 72
6-728.、Dzierzak, E., et al., 1995, Trends Genet.
11, 356-366)。胎仔肝臓の形成前の造血は原始造血と
して知られており、有核赤血球の胚型グロビンの特異的
な発現によって、成熟個体型の成体型造血とは区別され
る(Leder, A., etal., 1992 Development 116, 1041-1
049.)。マウスの発生過程においては、卵黄嚢で、最初
に赤血球の検出が可能になるため、造血幹細胞(hemato
poietic stem cells/HSCs)は、卵黄嚢で発生し、胎仔
肝臓に移動して、成体型造血を開始すると考えられてき
た。ところが、最近、この考えに疑問が投げかけられる
ようになった。それは、ウズラとニワトリの間の胚移植
実験によって、鳥類においては、背部大動脈内皮に結合
した臓側中胚葉領域から造血が開始することが示された
こと(Dieterlen-Lievre, F., et al., 1981, Dev. Bio
l. 88, 180-191.、Cormier, F., et al., 1988, Develo
pment 102, 279-283.)、マウス胚の中では、成体型造
血が起こったことを示すリンパ球前駆細胞が、血液循環
が始まる前の95dpe胚の臓側中胚葉の中に見られたこと
(Godin, I. E., et al., 1993, Nature364, 67-70.、C
umano, A., et al., 1996, Cell 86, 907-916.)、さら
に、10.5dpc胚の大動脈−生殖隆起−中腎領域(AGM領
域)には、脾臓コロニー形成単位(CFU-S)と長期定着H
SCs(long term repopulating HSCs/LTR-HSCs)が含ま
れていること(Medvinsky, A. L., et al., 1993, Natu
re 364, 64-67.、Muller,A. M., et al., 1994, Immuni
ty 1 , 291-301.、Medvinsky, A., et al., 1996,Cell
86, 897-906.)などが判明してきたからである。また、
LTR-HSCsは、血液循環が始まる前の卵黄嚢で発生するの
ではなく、AGM領域に出現し、胎仔肝臓の中で増幅され
ることが判明した(Cumano, A., et al.,1996, Cell 8
6, 907-917、Medvinsky, A., et al., 1996, Cell 86,
897-906.)。
【0003】過去十年の間、成熟個体の骨髄における、
造血幹細胞のさまざまな細胞系列のサイトカイン要求性
が広範に研究されてきたため、適当なサイトカインと間
質細胞とが存在すれば、特定の系列に方向づけられた胚
器官の中の造血前駆細胞を、インビトロで増幅すること
ができる。しかし、造血がいかにして開始されるか、特
に、AGMにおけるLTR-HSCsの成長因子が何であるかとい
う点については、未だ明らかにされていない。
【0004】オンコスタチンM(OSM)は、gp130を共通
のシグナル伝達因子として利用するサイトカンであり、
インターロイキン6(IL-6)ファミリーの一員である。
OSMはこのファミリーの中では、白血病阻害因子(LIF)
と、機能的、構造的、また、遺伝的に最も密接に関連し
ている(Rose, T. M., et al., 1991, Proc. Natl.Aca
d. Sci. USA. 88, 8641-8645.、Bruce, A. G., et al.,
1992, J. Immunol.149, 1271-1275.、Jeffery, E., et
al., 1993, Cytokine 5, 107-11.、Rose,T. M., et a
l., 1994, Cytokine 6, 48-54.)。実際、ヒトOSM(hOS
M)とLIFは、gp130とLIFレセプターβ鎖(LIFRβ)から
できている同じレセプターを共有している(Gearing,
D. P., et al., 1992, Science 255, 1434-1437 .、Tho
ma, B., et al., 1994, J. Biol. Chem. 269, 6215-2
2.)。また、この同じレセプターは、線毛様神経栄養因
子(CNTF)(Davis, S., et al., 1993, Science 260,1
805-8.)とカルディオトロフィン-1(cardiotrophin-1
/CT-1)(Pennica et al., 1995)によっても利用され
ている。さらに、ヒトOSM(hOSM)は、gp130とOSMレセ
プターβ鎖(OSMRβ)からなる、別の機能的レセプター
にも作用する(Mosley, B., et al., 1996, J. Biol. C
hem. 271, 32635-32643.)。
【0005】gp130ノックアウトマウスにおける造血障
害(Yoshida, K., et al., 1996, Proc. Natl. Acad. S
ci. USA 93, 407-411.)、IL-6と可溶性IL-6レセプター
α鎖(sIL-6Rα)およびSCFとの組み合わせによる、ヒ
ト臍帯血造血前駆細胞のインビトロでの増殖(Sui, X.,
et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 2859
-2863.)、および、IL-6/sIL-6Rα二重遺伝子導入マウ
スにおける骨髄球の前駆細胞の増加(Peters, M., et a
l., 1997, J. Exp. Med. 185, 755-766.)などの最近の
報告から、造血幹細胞の発生過程に、IL-6/LIFサイトカ
インファミリーが関与していることが示されている。一
方、IL-6(Kopf, M., et al., 1994, Nature 368, 339-
42.)、LIF(Stewart, C. L., et al., 1992, Nature 3
59, 76-9.、Escary, J.-L., et al., 1993, Nature 36
3, 361-364.)、CNTF(Masu, Y.,et al., 1993, Nature
365, 27-32.)などの遺伝子を不活化しても、正常な造
血がもたらされるので、IL-6、LIF、CNTFは、造血幹細
胞の発生過程に必須ではないと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、造血幹細胞
の発生の開始機構を解明し、造血幹細胞の増殖促進剤を
提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前述のように、造血前駆
細胞の発生過程に、IL-6/LIFサイトカインファミリーが
関与していることが示されているが、該ファミリーに属
する、IL-6、LIF、CNTFは、造血幹細胞の発生過程に必
須ではないと考えられている。そこで、本発明者らは、
同じくIL-6/LIFサイトカインファミリーに属するサイト
カインであるOSMが、造血前駆細胞の発生を誘導するか
どうか調べた。具体的には、マウス11.5dpc胎仔から切
り出したAGM領域をトリプシン処理して単細胞の懸濁液
にしてから、OSMをはじめとするさまざまなサイトカイ
ンを組み合わせて入れて培養し、細胞の増殖を観察し
た。その結果、本発明者らは、OSMが、SCF、および、塩
基性線維芽細胞成長因子(bFGF)と共同して、インビト
ロAGM培養系で、HSCsや多様な造血細胞系列の発生を刺
激することを見いだした。また、マウスAGM領域でOSMが
発現していることを確認した。マウス胚における成体型
造血の開始に関し、既知のサイトカインの中でOSMと同
等の働きをするサイトカインは見つかっていない。
【0008】即ち、本発明は以下のものに関する。 (1) オンコスタチンMを有効成分として含有する、
造血幹細胞の増殖促進剤。 (2) オンコスタチンM、SCF、bFGFを少なく
とも含む培地で、哺乳動物胚の大動脈−生殖隆起−中腎
領域(AGM領域)由来の細胞を培養する工程を含む、AGM
領域由来の細胞をインビトロ培養する方法。 (3) AGM領域由来のインビトロ培養細胞および培養
上清。 (4) オンコスタチンMを含むことを特徴とする、哺
乳動物胎仔の大動脈−生殖隆起−中腎領域(AGM領域)
細胞をインビトロ培養するための培地。 (5) AGM領域由来の細胞のインビトロ培養細胞に被
験化合物を作用させる工程を含む、造血幹細胞の増殖を
促進または阻害する作用を有する化合物をスクリーニン
グする方法。
【0009】なお、本発明における「造血幹細胞」と
は、AGM領域に存在している血液系の細胞の起源となる
細胞のことを指し、HSCsの他、HSCsの起源となる細胞で
あると考えられている血球・血管前駆細胞(Hemangiobl
ast)等を含む(Eickmann, A.,et al., 1997, PNAS 94,
5141-5146)。また、本明細書において、インビトロ培
養物とは、インビトロ培養で増殖した細胞自体または培
養上清、またはその両方を指す。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、マウス胚における成体
型造血の開始に関し、オンコスタチンM(OSM)が必須
のサイトカインであるとの本発明者らによる知見に基づ
く。より具体的には、OSMが、SCF、および塩基性線維芽
細胞成長因子(bFGF)の存在下で、哺乳動物胎仔の大動
脈−生殖隆起−中腎領域(AGM)領域由来の細胞の、HSC
sや多様な造血細胞系列への発生を刺激するという知見
に基づく。従って、本発明は、第一に、OSM、SCF、bFGF
を少なくとも含む培地を含む培地で、AGM領域由来の細
胞を培養する工程を含む、AGM領域由来の細胞をインビ
トロ培養する方法に関する。
【0011】本発明のインビトロ培養法に用いられるAG
M領域は、哺乳動物由来の胎仔から切除して入手するこ
とができる。AGM領域の切除に用いられる哺乳動物の胎
仔としては、通常、交配後10.5日目乃至11.5日目の胚が
用いられる。また、AGM領域の培養に用いられる培地と
しては、例えば、ダルベッコ修飾基本最小培地(DMEM)
が用いられる。培地に添加されるOSM、SCF、bFGFは、市
販のものを用いることができる。培地への添加量は、通
常、OSMは10ng/ml程度、SCFは100ng/ml程度、bFGFは1ng
/ml程度である。培養は、通常、37℃程度で、5%程度の
CO2の存在下において、8乃至10日程度行う。これにより
AGM領域に含まれる造血前駆細胞の増殖を促進すること
ができる。
【0012】本発明のインビトロ培養系は、造血細胞の
増殖/分化に関与する因子の探索、同定に利用すること
ができる。即ち、本発明はまた、AGM領域由来の細胞の
インビトロ培養物に被験化合物を作用させる工程を含
む、造血幹細胞の増殖を促進または阻害する作用を有す
る化合物をスクリーニングする方法に関する。用いられ
る被検化合物としては、特に制限はなく、天然の、また
合成された所望の化合物が利用できる。スクリーニング
においては、被検化合物の添加をOSMの存在下または非
存在下で行い、造血幹細胞の増殖活性を検出する。これ
により、OSMに結合してその活性を促進または阻害する
化合物、OSMの受容体に結合してOSM同様の活性を有する
化合物、およびOSMの受容体に結合してOSMとその受容体
との作用を阻害する化合物などを単離することが可能で
ある。
【0013】また、本発明者らが提供したインビトロAG
M培養系は、ノックアウトマウスを利用した特定の遺伝
子の造血系への影響を調べるためにも有用である。造血
に重大な関与をする遺伝子は多数あり、それらの遺伝子
をノックアウトすると、しばしば胚致死をもたらすた
め、それらの遺伝子のインビボでの機能解析は困難であ
る。本発明者らのインビトロ系は、11.5 dpcの胚を用い
ることができるため、仮に、マウスが12 dpcまで生き延
び、AGM領域を発生させることができれば、インビトロ
で造血を解析することができる。成体型造血に欠陥があ
る突然変異マウスにおける造血障害の分子的原理を明ら
かにすれば、胚発生過程での造血の理解が一層進むと考
えられる。
【0014】また、OSMが成体型造血の開始に関し必須
のサイトカインであるという知見に基づき、OSMは造血
幹細胞の増殖に利用することが考えられる。即ち、本発
明はまた、OSMを有効成分として含有する、造血幹細胞
の増殖促進剤に関する。このような特性からOSMには、
例えば、造血幹細胞の増殖に関与する疾患(再生不良性
貧血、白血病、免疫不全症など)の患者に対する骨髄移
植に際して、例えばインビトロでドナー細胞を増殖させ
るための医薬としての応用的利用が考えられ、これによ
りドナーの負担を軽減することが可能である。また、こ
れら疾患の遺伝子治療の標的細胞としての造血幹細胞を
増殖させるための医薬としての応用的利用も考えられ
る。また、患者に直接投与して生体内の造血幹細胞を増
殖させるための医薬としての利用も考えられる。OSMを
患者に投与する場合には、OSMを直接投与することもで
きるが、有効成分としてOSMを含有していれば、公知の
製剤学的製造法により他の成分を添加し製剤化して投与
することも可能である。
【0015】また、本発明は、OSMの受容体を指標とし
た造血前駆細胞の分離方法に関する。この分離方法は、
OSMがAGM領域で造血を刺激する一方、LIFがAGM領域で造
血を刺激しないという、本発明者等による発見に基づ
く。OSMは、2つの異なったレセプターによって機能す
ることが知られている。一つは、本来のレセプターで、
OSM特異的なサブユニット(OSMRβ)とgp130から構成さ
れており、他の一つは、LIFレセプターβサブユニット
(LIFRβ)とgp130からなるLIFレセプターである(Mosle
y et al., 1996))。本発明者等は、LIFがAGM領域にお
ける造血を刺激できないのは、AGM領域においてOSMのレ
セプターの一方であるLIFRβが発現していないことに起
因すると考えた。即ち、造血前駆細胞上には、OSMRβと
gp130が提示されている一方、LIFRβは提示されていな
いと考えた。かかる考えに基づけば、従来用いられてい
る幹細胞マーカーに加えて、「OSMRβ+gp130+LIFRβ-
を指標として、AGM領域の細胞から造血前駆細胞を分離
することが可能である。
【0016】なお、本発明においては、ヒト由来のOSM
が特に好適に用いられる。また、本発明のOSMとして
は、天然のものの他、組換えタンパク質を用いることも
可能である。また、OSMの活性や安定性を高めるなどの
目的で、天然型タンパク質の一部のアミノ酸の置換や、
アミノ酸の付加、欠失などを行って調製した改変タンパ
ク質を用いることも可能である。
【0017】以下、本発明を実施例によりさらに具体的
に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるもの
ではない。
【0018】
【実施例】
[実施例1] インビトロAGM培養系による造血細胞の
産生 臓側中胚葉とAGM領域におけるHSCsの自律発生を明らか
にするために、これらの領域の器官培養が用いられてい
る(Cumano, A., et al., 1996, Cell 86, 907-916.、M
edvinsky, A., et al., 1996, Cell 86, 897-906.)。
従って、これらの領域には、HSCsが発生するのに必要な
サイトカインと環境が存在しているはずである。造血の
開始メカニズムをさらに詳細に解析するため、本発明者
らは、AGMに由来する細胞のインビトロ培養系を確立す
ることを試みた。
【0019】11.5 dpcのC57BL/6マウス胎仔(Nihon SL
C)またはop/op突然変異胎仔からAGM領域を切り出し、
常法(Donovan, P. J., et al., 1986, Cell 44, 831-
8.)の通りトリプシン処理した。この細胞を、15%ウシ
胎児血清(FCS)を添加したダルベッコの修正イーグル
培地で、例えば、100 ng/mlのマウスSCF、1 ng/ml ヒト
bFGF(GIBCO BRL社)、10 ng/ml マウスLIF(R&Dシステ
ムズ社)、および、10 ng/ml マウスOSM(R&Dシステム
ズ社)などのさまざまなサイトカインを含む培地に再懸
濁した。37℃、5%CO2で、10日間インキュベートした
後、細胞を解析した。
【0020】10日間培養すると、付着線維芽細胞と、い
くらかの球状の非付着細胞とが、SCFとbFGFを含む基本
培養培地SF中に見られた(図1)。基本SF培地にLIFを
添加したところ、細胞の形態も、球状細胞の数も、10日
間培養液に出現したものから変化しなかった(図2)。
これに対して、SF培地にOSMを添加すると、培養10日目
以後、球状の非付着性造血細胞の増殖が著しく促進され
た(図3)。さらに、OSMは、内皮様付着細胞の増殖も
刺激した(図3)。このことは、OSMがHSCsと内皮性付
着細胞の両者を刺激しているか、あるいはそれらの共通
の起源である血球・血液前駆細胞の増殖を促進している
ことを示している。OSMとLIFとを共にSF培地に添加して
も、非付着細胞も、内皮様付着細胞も、OSMを単独で添
加した培養に較べて、さらに増殖を促進されることはな
かった。
【0021】更に、メイ-グリュンヴァルト-ギムザ染色
によって、インビトロAGM培養系の中で発生した球状の
非付着細胞を解析した。細胞をサイトスピン(Cytospi
n)(Shandon社)で800 rpmで5分間遠心分離しスライ
ドに載せた。メイ-グリュンヴァルト-ギムザ染色は、通
常の方法(Nakahata, T., et al., 1982, J. Cell. Phy
siol. 111, 239-246.)で行った。SF培地で発生した球
状の非付着細胞(図4)、または、LIF入りのSF培地で
発生した球状の非付着細胞細胞(図5)は、ほとんど
が、細胞質に多数の液胞と顆粒をもつ、マクロファージ
様の形態を示した。これに対して、OSM存在下では、造
血細胞の総数が増加しただけでなく、大きな核をもつ小
さな幼若細胞芽球が多数を占める集団となった(図
6)。
【0022】さまざまな細胞表面マーカーに対するモノ
クローナル抗体を用いたフローサイトメトリーによっ
て、造血細胞をさらに解析した。フローサイトメトリー
には、抗Mac-1(M1/70)、抗Gr-1(RB6-8C5)、抗Thy-
1.2(30-H12)、抗B220(RA3-6B2)、抗Ter-119(Ter-1
19)、抗CD34(RAM34)、ビオチン化抗c-Kit(3C1)、
および、FITC結合抗Sca-1(E13-161.7)モノクローナル
抗体(Pharmingen社)を用いた。c-KitとSca-1以外の抗
体はすべて、FITC結合抗ラットIgG(Pierce)を用い、
またc-kit抗体はFITC結合ストレプトアビジンを用いて
解析に供した。培養液から細胞を回収した後、細胞をPB
Sに再懸濁して、細胞残渣を取り除くために、70μmのナ
イロンメッシュ(Cell Strainer; FALCON)に通して濾
過した。この後、細胞をモノクローナル抗体とともに、
30分間氷上でインキュベートし、FACScan(Becton Dick
inson社)によって解析した。細胞の主要分画(50〜70
%)は、mOSMの有無に関わらず、Mac-1+、Gr-1+、Thy-
1.2+、Ter119+、c-Kit+であり、OSM存在下で産生される
細胞とOSM不在下で産生される細胞との間で、これらの
表面マーカーの発現パターンに有意な違いは見られなか
った。しかし、成熟した骨髄におけるHSCsの指標である
c-Kit+/Sca-1+をもつ細胞集団が、OSMで成長させた造血
細胞の中で、有意に増加した(図7)。なお図中「SF」
はSF培地で培養した細胞のパターンを、「SFL」はLIFを
添加したSF培地で培養した細胞のパターンを、「SFO」
はOSMを添加したSF培地で培養した細胞のパターンを、
「SFLO」はLIF及びOSMを添加したSF培地で培養した細胞
のパターンをそれぞれ示す。
【0023】[実施例2] インビトロAGM培養におけ
る、OSMによる造血前駆細胞の増殖 IL-3、IL-6およびEPOを含むメチルセルロース培養によ
って、AGM領域のインビトロ培養で産生される造血細胞
のコロニー形成活性を調べた。なお、CFU-Cの数は、以
下のようにして調べた。10,000個の造血細胞、または、
1,000個のMac-1-/Gr-1-造血細胞を、α-MEM、0.8%メチ
ルセルロース、30%FCS、1%脱イオン化ウシ血清アル
ブミン、100 μM 2-メルカプトエタノール、10 ng/ml I
L-6、2 U/ml EPOを含む培養培地1mlに入れてインキュ
ベートした。なお、IL-3、IL-6、EPOは、通常の方法で
精製されたものを用いた。コロニータイプは、インキュ
ベートして14日目に、文献(Nakahata, T., et al., 19
82, J. Cell. Physiol. 111, 239-246.)記載の方法に
よって判定した。また、CFU-Sの数は、8週令のメスのC
57BL/6マウスを受容体として、60Co線源によって放射線
を照射し(9.5 Gy)、106個の投与細胞を静脈注射し、
注射後8日目か12日目に、受容マウスの脾臓の中のコロ
ニー数を計測することによって調べた。結果を表1に示
す。
【0024】
【表1】 なお、表1において、結果は3試料の平均値±標準偏差
で示されている。コロニータイプの略号として、「G」
は顆粒球、「M」はマクロファージ、「GM」は顆粒球お
よびマクロファージ、「GEMM」は顆粒球、赤血球、マク
ロファージおよび巨核球を示す。示された培養条件で増
殖させた造血細胞を、IL-3、IL-6、およびEPOを含むメ
チルセルロース培地に接種した。
【0025】AGM培養中にOSMを添加すると、コロニー総
数、顆粒球(CFU-G)の数、マクロファージ(CFU-M)の
数、および、顆粒球/マクロファージ(CFU-GM)の数が
顕著に増加した。混合コロニー形成細胞(GEMMまたはCF
U-Mix)は、OSM入りの培養中にのみ出現した。これらの
結果は、OSMが、多能性造血前駆細胞の増殖を刺激する
ことを示している。
【0026】実施例2で示したように、AGM培養系にお
ける造血細胞の約50%は、Mac-1+かつGr-1+の細胞であ
ったため、マグネチックビーズによって、Mac-1-かつGr
-1-の集団を分離して、コロニー形成能力を調べた(表
2)。
【0027】
【表2】 なお、表2において、結果は3試料の平均値±標準偏差
で示されている。コロニータイプの略号として、「G」
は顆粒球、「M」はマクロファージ、「GM」は顆粒球お
よびマクロファージ、「GEMM」は顆粒球、赤血球、マク
ロファージおよび巨核球を示す。示された培養条件で増
殖させた造血細胞をIL-3、IL-6、およびEPOを含むメチ
ルセルロース培地に接種した。
【0028】Mac-1-かつGr-1-の集団の中で混合コロニ
ーを形成する細胞の頻度は、未分画細胞におけるよりも
約10倍高かった。これは、OSMによって増殖が促進され
た、AGM由来の造血細胞のMac-1-かつGr-1-集団の中に、
CFU-Mixが存在することを示している。
【0029】さらに、培養8日目と12日目の脾臓コロニ
ー形成単位(CFU-S)の形成(造血前駆細胞の初期段
階)を調べた(表3)。
【0030】
【表3】 この実験においては、表1または2に示した造血細胞と
同じものを、60Co照射したC57BL/6マウスへと注射し
た。注射後8日目または12日目に、受容マウスを屠殺
し、脾臓内のコロニー数を計数した。
【0031】CFU-SはOSMを含む培養の中で増殖した細胞
集団の中でのみ検出され、LIFは、CFU-Sを誘導する活性
を示さなかった。
【0032】以上の結果から、OSMが、AGM領域に由来す
る多能性造血前駆細胞の増殖を刺激することが明らかに
なった。
【0033】[実施例3] OSMによる敷石状領域と内
皮様集塊の形成 インビトロAGM培養の過程で、本発明者らは、OSMが、内
皮様細胞集塊を形成すること(図3)、また、線維芽単
層の下に敷石状領域を形成する細胞の形成を促進するこ
とを見いだした。敷石状領域の形成は、間質細胞と共培
養したHSCsに独特な特徴であるが(Ploemacher et al.,
1989)、本発明者らは更に、AGM培養中にOSMが存在し
ているときにのみ敷石状領域が形成されることを見いだ
した。このことによって、AGM領域で、OSMがHSCsの増殖
を促進することが確認された。
【0034】[実施例4] OSMのAGM領域における発現 OSMのAGM領域における発現をRT-PCR法で調べた。OSMの
「Quick Prep mRNA精製キット(Quick Prep mRNA purif
ication kit)」(Pharmacia社)を用いて、11.5 dpcか
ら13.5 dpcのAGMからRNAを抽出し、「一次鎖cDNA合成キ
ット(1st strand cDNA synthesis kit)」(Pharmacia
社)を用いて、逆転写させた。OSMに特異的なプライマ
ー対(センス・プライマー:5'-TCCGCCTCCAAAACCTGAACA
C-3'、および、アンチセンス・プライマー:5'-TCTGTGT
GGGCTCAGGTATCT-3')と、内部対照であるアクチンに特
異的なプライマー対(センス・プライマー:5'-ACCTTCT
ACAATGAGCTGCGT-3'、および、アンチセンス・プライマ
ー:5'-TAGAAGCACTTGCGGTGCACG-3')を用いて、それぞ
れ、40サイクル(94℃で1分間、45℃で2分間、72℃で
3分間)、Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造製)によっ
て、このcDNAを増幅した。増幅されたPCR産物のサイズ
は、295 bp(mOSM)と862 bp(アクチン)であった。こ
の産物を、1.5%アガロースゲルで分離し、臭化エチジ
ウムで染色してから写真を撮った。その結果、オス、メ
ス両方において、12.5〜13.5 dpcの性腺の中と同様に、
11.5 dpcのAGM領域の中におけるOSMの発現が確認され
た。
【0035】本発明者らは、さらに、in situハイブリ
ダイゼーションによって、11.5 dpcの胚におけるOSM mR
NAの発現を解析した。C57BL/6マウスから採取した11.5
dpcの胚を、0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.45)に溶解
した4%パラホルムアルデヒドに入れて、4℃に一晩置
いて直接固定してから、50 mMリン酸バッファーに入れ
たショ糖の連続溶液(10〜30%)で透析後、OTC化合物
(Miles社)に包埋した。ミクロトームで15ミクロンの
厚さの切片を切り出し、ポリ-L-リシンでコートした顕
微鏡用スライドにマウントした。切片は、マウントして
すぐに乾燥し、使用するまで-20℃に放置した。pCRIIベ
クター(インビトロジェン社)の中のmOSMcDNA断片(塩
基211-507)と、「RNA転写キット(RNA transcription k
it)」(ストラタジーン社)を用いて、ジゴキシゲニン
標識したアンチセンス・リボプローブとセンス・プロー
ブを調製した。常法(Imakawa, K., et al., 1995, End
ocrine 3, 511-517.)に従って、湿式オーブンの中で42
℃で18時間、ハイブリダイゼーションを行なった。アル
カリホスファターゼを結合した抗ジゴキシゲニン抗体
と、基質として、ニトロ・ブルー・テトラゾリウムと5-
ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェートを用いて、
結合プローブを可視化した。アンチセンスOSM cRNAプロ
ーブは、生殖隆起周縁部性腺と脊椎に特異的に結合した
が、センス鎖cRNAプローブは、これらの領域にハイブリ
ダイズしなかった。これらのことから、発生の初期段階
において、OSMは、生殖隆起の中で発現されていること
が確認された。
【0036】
【発明の効果】本発明者らによって、OSMが造血幹細胞
の増殖促進作用を有することが見いだされ、血球系の細
胞疾患の治療等に新たな途が開かれた。更に、本発明者
らによって、AGM領域のインビトロ培養物が提供され、
造血幹細胞の増殖を促進する作用を有する化合物をスク
リーニングすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】基本培養培地SFで10日間AGM領域を培養した
細胞を示す顕微鏡写真である。
【図2】基本培養培地SFにLIFを添加した培地で10日
間AGM領域を培養した細胞を示す顕微鏡写真である。
【図3】基本培養培地SFにOSMを添加した培地で10日
間AGM領域を培養した細胞を示す顕微鏡写真である。
【図4】基本培養培地SFで10日間AGM領域を培養した
非付着細胞を示す顕微鏡写真である。
【図5】基本培養培地SFにLIFを添加した培地で10日
間AGM領域を培養した非付着細胞を示す顕微鏡写真であ
る。
【図6】基本培養培地SFにOSMを添加した培地で10日
間AGM領域を培養した非付着細胞を示す顕微鏡写真であ
る。
【図7】各種培地で培養したAGM領域の細胞の表面マー
カーのパターンを示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オンコスタチンMを有効成分として含有
    する、造血幹細胞の増殖促進剤。
  2. 【請求項2】 オンコスタチンM、SCF、bFGFを
    少なくとも含む培地で、哺乳動物胎仔の大動脈−生殖隆
    起−中腎領域(AGM領域)由来の細胞を培養する工程を
    含む、AGM領域由来の細胞をインビトロ培養する方法。
  3. 【請求項3】 AGM領域由来細胞のインビトロ培養物。
  4. 【請求項4】 オンコスタチンMを含むことを特徴とす
    る、哺乳動物胎仔の大動脈−生殖隆起−中腎領域(AGM
    領域)細胞をインビトロ培養するための培地。
  5. 【請求項5】 AGM領域由来のインビトロ培養細胞に被
    験化合物を作用させる工程を含む、造血幹細胞の増殖を
    促進または阻害する作用を有する化合物をスクリーニン
    グする方法。
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