JPH1079222A - 電子線源 - Google Patents
電子線源Info
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- JPH1079222A JPH1079222A JP23305296A JP23305296A JPH1079222A JP H1079222 A JPH1079222 A JP H1079222A JP 23305296 A JP23305296 A JP 23305296A JP 23305296 A JP23305296 A JP 23305296A JP H1079222 A JPH1079222 A JP H1079222A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】共鳴トンネル効果を用い、高い電流密度の電子
線が得られる電子線源を提供する。 【解決手段】バルク領域11と、バルク領域11に隣接
し、バルク領域11よりもポテンシャルの高い障壁領域
12と、障壁領域12に隣接し、障壁領域よりもポテン
シャルの低い井戸領域13と、井戸領域に隣接する空間
14のポテンシャルを傾斜させるために、空間14に電
場を加えるための電場印加手段とを有する電子線源にお
いて、障壁領域12の厚さおよび井戸領域13の厚さの
うち少なくとも一方を変化させて、バルク領域11の電
子のエネルギーと、その電子が障壁領域12および空間
14を透過する透過率との関係を求め、透過率が最大値
を示す厚さとの組み合わせを選択する。
線が得られる電子線源を提供する。 【解決手段】バルク領域11と、バルク領域11に隣接
し、バルク領域11よりもポテンシャルの高い障壁領域
12と、障壁領域12に隣接し、障壁領域よりもポテン
シャルの低い井戸領域13と、井戸領域に隣接する空間
14のポテンシャルを傾斜させるために、空間14に電
場を加えるための電場印加手段とを有する電子線源にお
いて、障壁領域12の厚さおよび井戸領域13の厚さの
うち少なくとも一方を変化させて、バルク領域11の電
子のエネルギーと、その電子が障壁領域12および空間
14を透過する透過率との関係を求め、透過率が最大値
を示す厚さとの組み合わせを選択する。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子線源に関する
ものである。
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来の電子線源としては大きく分けて、
電界放出型、熱電子型、トンネル電流型とがある。電界
放出型は、金属と真空領域の界面近傍に強電場をかける
ことにより、仕事関数を減少させ(ショットキー効果)
電子を放出させる。熱電子型は、電子源を加熱すること
により、仕事関数を超えるエネルギーを持った電子が真
空中に放出される現象を利用したものである。また、ト
ンネル電流型は、種々の構造が提案されているが、その
うちの1つとしては、真空領域に強電場をかけることに
より、真空準位を傾斜させ、そこを透過するトンネル電
子を真空中に放出させるものがある。また、図14に見
られるようなポテンシャルバリアを半導体中に設けるこ
とにより、共鳴トンネル効果を引き起こさせ、エネルギ
ー分布の小さい電子源を得ることも提案されている。
電界放出型、熱電子型、トンネル電流型とがある。電界
放出型は、金属と真空領域の界面近傍に強電場をかける
ことにより、仕事関数を減少させ(ショットキー効果)
電子を放出させる。熱電子型は、電子源を加熱すること
により、仕事関数を超えるエネルギーを持った電子が真
空中に放出される現象を利用したものである。また、ト
ンネル電流型は、種々の構造が提案されているが、その
うちの1つとしては、真空領域に強電場をかけることに
より、真空準位を傾斜させ、そこを透過するトンネル電
子を真空中に放出させるものがある。また、図14に見
られるようなポテンシャルバリアを半導体中に設けるこ
とにより、共鳴トンネル効果を引き起こさせ、エネルギ
ー分布の小さい電子源を得ることも提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、共鳴ト
ンネル効果を用いた電子源では、トンネル電流を利用し
ていること、および、電子のエネルギー分布が小さいこ
とを反映し、大きな電流密度を得ることは難しい。
ンネル効果を用いた電子源では、トンネル電流を利用し
ていること、および、電子のエネルギー分布が小さいこ
とを反映し、大きな電流密度を得ることは難しい。
【0004】また、従来の電子源では、放出される電子
のエネルギー幅が広いため、電子波干渉等に応用される
わずかにエネルギーの異なる複数の電子線を得ることは
困難である。
のエネルギー幅が広いため、電子波干渉等に応用される
わずかにエネルギーの異なる複数の電子線を得ることは
困難である。
【0005】本発明は、共鳴トンネル効果を用い、高い
電流密度の電子線が得られる電子線源を提供することを
目的とする。
電流密度の電子線が得られる電子線源を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、バルク領域と、前記バルク領域に
隣接し、前記バルク領域よりもポテンシャルの高い障壁
領域と、前記障壁領域に隣接し、前記障壁領域よりもポ
テンシャルの低い井戸領域と、前記井戸領域に隣接する
真空準位を傾斜させるために、前記空間に電場を加える
電場印加手段とを有し、前記障壁領域および井戸領域
は、前記バルク領域の電子が前記障壁領域および前記空
間を透過する透過率のピークが100%となる厚さにそ
れぞれ形成されていることを特徴とする電子線源が提供
される。
に、本発明によれば、バルク領域と、前記バルク領域に
隣接し、前記バルク領域よりもポテンシャルの高い障壁
領域と、前記障壁領域に隣接し、前記障壁領域よりもポ
テンシャルの低い井戸領域と、前記井戸領域に隣接する
真空準位を傾斜させるために、前記空間に電場を加える
電場印加手段とを有し、前記障壁領域および井戸領域
は、前記バルク領域の電子が前記障壁領域および前記空
間を透過する透過率のピークが100%となる厚さにそ
れぞれ形成されていることを特徴とする電子線源が提供
される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態について、
図面を用いて説明する。
図面を用いて説明する。
【0008】本実施の形態の電子線源は、図1に示すよ
うに、伝導帯のポテンシャルが低いバルク領域11と、
ポテンシャルが高い障壁層12と、ポテンシャルが低い
井戸層13と、電圧印加によりポテンシャルが傾斜して
いる真空領域14とを順に備えている。この構造では、
バルク領域11の電子を、共鳴トンネル現象によって障
壁層12および真空領域14を透過させることにより、
電子を真空領域14の外側の真空領域に放出させ、電子
線を得るものである。
うに、伝導帯のポテンシャルが低いバルク領域11と、
ポテンシャルが高い障壁層12と、ポテンシャルが低い
井戸層13と、電圧印加によりポテンシャルが傾斜して
いる真空領域14とを順に備えている。この構造では、
バルク領域11の電子を、共鳴トンネル現象によって障
壁層12および真空領域14を透過させることにより、
電子を真空領域14の外側の真空領域に放出させ、電子
線を得るものである。
【0009】このようなポテンシャル構造を形成するた
めに、本実施の形態では、電子線源の素子構造として図
15に示す構造を用いている。すなわち、バルク領域1
1として、n型GaAs基板を用い、この上に、スペー
サ15としてSiO2層を形成している。スペーサ15
には、複数箇所に矩形の貫通孔18が形成されている。
貫通孔18により露出されたバルク領域11上に、障壁
層12として、n型AlGaAs層、井戸層13として
n型GaAs層が順に積層されている。また、スペーサ
15の上面には、Al層からなる電極16が配置されて
いる。バルク領域11のn型GaAs基板の裏面には、
AuGe層からなる電極17が配置されている。
めに、本実施の形態では、電子線源の素子構造として図
15に示す構造を用いている。すなわち、バルク領域1
1として、n型GaAs基板を用い、この上に、スペー
サ15としてSiO2層を形成している。スペーサ15
には、複数箇所に矩形の貫通孔18が形成されている。
貫通孔18により露出されたバルク領域11上に、障壁
層12として、n型AlGaAs層、井戸層13として
n型GaAs層が順に積層されている。また、スペーサ
15の上面には、Al層からなる電極16が配置されて
いる。バルク領域11のn型GaAs基板の裏面には、
AuGe層からなる電極17が配置されている。
【0010】図15の電子線源を不図示の真空容器中の
真空空間に配置し、電極16、17間に電圧を印加する
と、貫通孔18内の真空領域に電場が加わり、図1のよ
うにポテンシャルが傾斜し、真空領域14を形成するこ
とができる。
真空空間に配置し、電極16、17間に電圧を印加する
と、貫通孔18内の真空領域に電場が加わり、図1のよ
うにポテンシャルが傾斜し、真空領域14を形成するこ
とができる。
【0011】本実施の形態では、バルク領域11の電子
が、共鳴トンネル現象により、障壁層12および真空領
域14を透過して真空領域14の外側の領域に取り出さ
れる確率を大きくするために、共鳴トンネル現象により
障壁層12および真空領域14を透過する電子の透過率
のピークが100%となるように、電子線源の構造を設
計した。具体的には、障壁層12および井戸層13の厚
さと、透過率との関係を求めることにより、障壁層12
および井戸層13の厚さを最適化した。これについて以
下さらに詳しく説明する。
が、共鳴トンネル現象により、障壁層12および真空領
域14を透過して真空領域14の外側の領域に取り出さ
れる確率を大きくするために、共鳴トンネル現象により
障壁層12および真空領域14を透過する電子の透過率
のピークが100%となるように、電子線源の構造を設
計した。具体的には、障壁層12および井戸層13の厚
さと、透過率との関係を求めることにより、障壁層12
および井戸層13の厚さを最適化した。これについて以
下さらに詳しく説明する。
【0012】まず、井戸層13の厚さWを固定して、障
壁層12の厚さBを変化させたときの、透過率のエネル
ギー依存性を後述する計算方法により求めた。この時、
共鳴効果によって最も低エネルギー側に出現するピーク
の極大値を求めた。障壁層12の厚さBに対して、この
ピークの極大値をプロットすると、この透過率の極大値
は、ある障壁層12の厚さBにおいて、最大値1(すな
わち、透過率100%)を持つ。この透過率のピークが
1となる条件を最適条件とし、その時の障壁層12の厚
さBを求める。このようにして、ある井戸層13の厚さ
Wに関する障壁層12の厚さBの最適値を決定すること
ができる。これをWの値を変化させながら繰り返し行う
ことにより、最適条件をもたらすWとBとの関係を求め
た。これを図2に示した。なお、真空領域14に加わる
電場の強さは、あらかじめ定めた一定値(本実施の形態
では、5V/nm)とすることにより、真空領域14の
傾斜は一定として計算している。
壁層12の厚さBを変化させたときの、透過率のエネル
ギー依存性を後述する計算方法により求めた。この時、
共鳴効果によって最も低エネルギー側に出現するピーク
の極大値を求めた。障壁層12の厚さBに対して、この
ピークの極大値をプロットすると、この透過率の極大値
は、ある障壁層12の厚さBにおいて、最大値1(すな
わち、透過率100%)を持つ。この透過率のピークが
1となる条件を最適条件とし、その時の障壁層12の厚
さBを求める。このようにして、ある井戸層13の厚さ
Wに関する障壁層12の厚さBの最適値を決定すること
ができる。これをWの値を変化させながら繰り返し行う
ことにより、最適条件をもたらすWとBとの関係を求め
た。これを図2に示した。なお、真空領域14に加わる
電場の強さは、あらかじめ定めた一定値(本実施の形態
では、5V/nm)とすることにより、真空領域14の
傾斜は一定として計算している。
【0013】よって、必要とされる電子線の電子のエネ
ルギーに合わせて、図2の曲線上のWとBとの組み合わ
せを選択することにより、必要とされるエネルギーの電
子が、2つの障壁、すなわち、井戸層12と真空領域1
4とを透過する透過率のピークを100%にする電子線
源の素子構造を設計することができる。例えば、電子の
エネルギーが0.344(eV)の電子線が必要な場合
には、図2の曲線上の W=2.00 (nm)、 B=2.48 (nm) を選択することにより、エネルギーが0.344(e
V)の電子を100%の透過率で井戸層12と真空領域
14とを透過させることができる。このときの、透過率
の電子のエネルギー依存性は、図3のようになる。透過
率のピークの半値幅は、3.55×10-5 (eV)と
なる。
ルギーに合わせて、図2の曲線上のWとBとの組み合わ
せを選択することにより、必要とされるエネルギーの電
子が、2つの障壁、すなわち、井戸層12と真空領域1
4とを透過する透過率のピークを100%にする電子線
源の素子構造を設計することができる。例えば、電子の
エネルギーが0.344(eV)の電子線が必要な場合
には、図2の曲線上の W=2.00 (nm)、 B=2.48 (nm) を選択することにより、エネルギーが0.344(e
V)の電子を100%の透過率で井戸層12と真空領域
14とを透過させることができる。このときの、透過率
の電子のエネルギー依存性は、図3のようになる。透過
率のピークの半値幅は、3.55×10-5 (eV)と
なる。
【0014】最適化を行っていない従来の素子において
は、100%の透過率を得ることができないため、本発
明による最適化を行うことにより、透過する電子の数を
増加させることができる。これにより、電子線の電流密
度を向上させることができる。
は、100%の透過率を得ることができないため、本発
明による最適化を行うことにより、透過する電子の数を
増加させることができる。これにより、電子線の電流密
度を向上させることができる。
【0015】ここで、上述の最適化に用いた電子のトン
ネル確率の計算方法について説明する。
ネル確率の計算方法について説明する。
【0016】ここでは、図13のようにポテンシャルの
異なる層がz方向にn層積み重なった構造におけるz方
向の電子の透過率を、1次元のシュレディンガー方程式
を転送行列法により解くことにより求める。
異なる層がz方向にn層積み重なった構造におけるz方
向の電子の透過率を、1次元のシュレディンガー方程式
を転送行列法により解くことにより求める。
【0017】電子に関するz方向の有効ハミルトニアン
は、有効質量近似を用い、
は、有効質量近似を用い、
【0018】
【数1】
【0019】と書くことができる。 ただし、m*は有効
質量、 hは(プランク定数)を2πで割ったもの、Uはポ
テンシャルを表す。シュレディンガー方程式は、
質量、 hは(プランク定数)を2πで割ったもの、Uはポ
テンシャルを表す。シュレディンガー方程式は、
【0020】
【数2】
【0021】で表される。図13 のような、ポテンシ
ャルを仮定した場合 i 番目の層における数2の解は、
ャルを仮定した場合 i 番目の層における数2の解は、
【0022】
【数3】
【0023】で表され、その z による一階微分は、
【0024】
【数4】
【0025】となる。ここで、
【0026】
【数5】
【0027】である。ヘテロ界面 z=zi において、波
動関数が連続、確率の流れの密度が連続という条件から
得られる、
動関数が連続、確率の流れの密度が連続という条件から
得られる、
【0028】
【数6】
【0029】
【数7】
【0030】という境界条件により、波動関数の振幅
(Al, Bl)を決定する条件として
(Al, Bl)を決定する条件として
【0031】
【数8】
【0032】を得る。ただし
【0033】
【数9】
【0034】である。なお、wlは、l 番目の層の厚さを
表す。
表す。
【0035】ここで、入射波の振幅を1(A0=1)とし
て、所望のEに関して、系の右端において反射波が存在
しないという境界条件(Bn+1=0 )から、B0を決定する
ことにより、連続準位のシュレディンガー方程式の解が
得られる。
て、所望のEに関して、系の右端において反射波が存在
しないという境界条件(Bn+1=0 )から、B0を決定する
ことにより、連続準位のシュレディンガー方程式の解が
得られる。
【0036】次に透過率及び反射率について考える。こ
こで、透過率、及び反射率を入射波に対する透過波、反
射波の確率の流れの密度(すなわち、単位時間当たりに
単位断面積を流れる電子)の比で表すことができる。
こで、透過率、及び反射率を入射波に対する透過波、反
射波の確率の流れの密度(すなわち、単位時間当たりに
単位断面積を流れる電子)の比で表すことができる。
【0037】図13における左端および右端の確率の流
れの密度は、それぞれ、
れの密度は、それぞれ、
【0038】
【数10】
【0039】
【数11】
【0040】となる。ただしkl = al/ i である。入
射波の振幅を1とすると(A0=1)、数10、数11よ
り、透過率は、
射波の振幅を1とすると(A0=1)、数10、数11よ
り、透過率は、
【0041】
【数12】
【0042】反射率は、
【0043】
【数13】
【0044】となる。
【0045】したがって、上述の数12を図1のポテン
シャル構造に適用することにより、透過率を求めること
ができる。なお、本実施の形態では、真空領域14の傾
斜ポテンシャルを、少しずつポテンシャルの異なる非常
に薄い複数の層が階段状に積層されたものと近似して透
過率をもとめた。
シャル構造に適用することにより、透過率を求めること
ができる。なお、本実施の形態では、真空領域14の傾
斜ポテンシャルを、少しずつポテンシャルの異なる非常
に薄い複数の層が階段状に積層されたものと近似して透
過率をもとめた。
【0046】つぎに、本発明の別の実施の形態について
説明する。ここでは、上述の実施の形態のような透過率
のピークを100%にする素子構造の最適化を考えた上
で、さらに電流密度を稼ぐ素子構造について説明する。
説明する。ここでは、上述の実施の形態のような透過率
のピークを100%にする素子構造の最適化を考えた上
で、さらに電流密度を稼ぐ素子構造について説明する。
【0047】まず、第2の実施の形態として、図4に示
したように、井戸層43の部分のポテンシャルをバルク
領域41のポテンシャルより低くした素子をすることを
特徴とした素子について説明する。素子全体の構成は、
図15と同じである。この構造を谷型構造素子と呼ぶ。
ここでは、バルク領域41をAlGaAs、障壁層42
はAlAs、井戸層43はGaAsにより形成した。こ
のような構造において、前述と同様電子の透過率の極大
値が1すなわち100%となる井戸層43の厚さと障壁
層42の厚さとの関係を第1の実施の形態と同様にもと
めた。これを図5に示す。
したように、井戸層43の部分のポテンシャルをバルク
領域41のポテンシャルより低くした素子をすることを
特徴とした素子について説明する。素子全体の構成は、
図15と同じである。この構造を谷型構造素子と呼ぶ。
ここでは、バルク領域41をAlGaAs、障壁層42
はAlAs、井戸層43はGaAsにより形成した。こ
のような構造において、前述と同様電子の透過率の極大
値が1すなわち100%となる井戸層43の厚さと障壁
層42の厚さとの関係を第1の実施の形態と同様にもと
めた。これを図5に示す。
【0048】図4の谷型構造素子では、透過率のピーク
をもたらす電子のエネルギーが、0.344(eV)で
ある場合には、 W=1.59 (nm) B=2.53 (nm) の時に透過率のピークが100%となる。このときの透
過率のエネルギー依存性を図6に示す。図6のように、
ピークの半値幅が6.47×10-5 (eV)であ
り、図1の標準型の素子の場合の半値幅よりも大きくな
っている。また、透過率の極大値は1、すなわち100
%であるため、半値幅が広がった分だけ、透過する電子
の数が多くなり、得られる電子線の電流密度が増大す
る。
をもたらす電子のエネルギーが、0.344(eV)で
ある場合には、 W=1.59 (nm) B=2.53 (nm) の時に透過率のピークが100%となる。このときの透
過率のエネルギー依存性を図6に示す。図6のように、
ピークの半値幅が6.47×10-5 (eV)であ
り、図1の標準型の素子の場合の半値幅よりも大きくな
っている。また、透過率の極大値は1、すなわち100
%であるため、半値幅が広がった分だけ、透過する電子
の数が多くなり、得られる電子線の電流密度が増大す
る。
【0049】さらに第3の実施の形態として、図7のよ
うに、井戸層73の部分のポテンシャルをバルク領域7
1のポテンシャルより高くした構造について説明する。
素子全体の構造は、図15と同じである。この構造を山
型とする。
うに、井戸層73の部分のポテンシャルをバルク領域7
1のポテンシャルより高くした構造について説明する。
素子全体の構造は、図15と同じである。この構造を山
型とする。
【0050】図7の構成についても同様に、電子の透過
率の極大値が1となる井戸層73の厚さと障壁層72の
厚さとの関係を求めた。これを図8に示す。
率の極大値が1となる井戸層73の厚さと障壁層72の
厚さとの関係を求めた。これを図8に示す。
【0051】図7の山型構造素子では、透過率のピーク
をもたらす電子のエネルギーが、0.344(eV)で
ある場合には、 W=2.60 (nm) B=2.65 (nm) のときに、透過率のピークが100%となる。このとき
の透過率のエネルギー依存性を図9に示す。図9のよう
に、透過率のピークの半値幅は、2.40×10-5
(eV)であり、図1の標準型の素子と比べると、半値
幅が狭くなっている。よって、単色性の強い電子源を提
供することができる。また、透過率の極大値は1、すな
わち100%のままであるため、従来の最適化していな
い透過率のピークが100%に達しない電子線源より
も、高い電流密度をえることができる。
をもたらす電子のエネルギーが、0.344(eV)で
ある場合には、 W=2.60 (nm) B=2.65 (nm) のときに、透過率のピークが100%となる。このとき
の透過率のエネルギー依存性を図9に示す。図9のよう
に、透過率のピークの半値幅は、2.40×10-5
(eV)であり、図1の標準型の素子と比べると、半値
幅が狭くなっている。よって、単色性の強い電子源を提
供することができる。また、透過率の極大値は1、すな
わち100%のままであるため、従来の最適化していな
い透過率のピークが100%に達しない電子線源より
も、高い電流密度をえることができる。
【0052】第2及び第3の実施の形態のように、井戸
層のポテンシャルをバルク領域のポテンシャルに対して
高くしたり低くしたりすることにより、用途に応じて単
色性、高電流密度のどちらかを優先させた構造を得るこ
とができる。
層のポテンシャルをバルク領域のポテンシャルに対して
高くしたり低くしたりすることにより、用途に応じて単
色性、高電流密度のどちらかを優先させた構造を得るこ
とができる。
【0053】さらに別の実施の形態として、図1の構成
において、障壁層を1以上設けた場合の電子線源の透過
率のエネルギー依存性を、図3よりも広いエネルギー範
囲について求めたものを図10〜図12に示す。図10
は、図1と同じく障壁層が1つの素子の場合であり、図
11は、障壁層を2重に備える素子の場合であり、図1
2は、障壁層を3重に備える場合である。図10〜図1
2よりわかるように、障壁層の数が増加するにつれて電
子の透過率のピークの数が増加することがわかる。これ
により、障壁層の数を1以上にすることにより、障壁層
の数に応じて、エネルギーのわずかに異なる複数の電子
線を照射することのできる電子線源を構成することがで
きる。
において、障壁層を1以上設けた場合の電子線源の透過
率のエネルギー依存性を、図3よりも広いエネルギー範
囲について求めたものを図10〜図12に示す。図10
は、図1と同じく障壁層が1つの素子の場合であり、図
11は、障壁層を2重に備える素子の場合であり、図1
2は、障壁層を3重に備える場合である。図10〜図1
2よりわかるように、障壁層の数が増加するにつれて電
子の透過率のピークの数が増加することがわかる。これ
により、障壁層の数を1以上にすることにより、障壁層
の数に応じて、エネルギーのわずかに異なる複数の電子
線を照射することのできる電子線源を構成することがで
きる。
【0054】図11では、もっともエネルギーの小さい
ピークが透過率100%を示すように、井戸層、障壁層
の厚さを設計した構成の透過率を示し、図10および図
12では、透過率のピークがいずれも透過率100%を
示さない構成の透過率を示したが、第1の実施の形態で
説明した方法と同様の方法を用いて、図10および図1
2の透過率のピークのいずれかが透過率100%となる
ように、井戸層、障壁層の厚さを設計することも可能で
ある。また、井戸層、障壁層の厚さを変化させながら、
透過率の各ピークの高さをもとめることにより、複数の
ピークの高さの比を所望の高さの比にするための井戸
層、障壁層の厚さを求めることができる。これにより、
例えば、2つのエネルギーの電子線を1対1の強度で出
力する電子線源を構成することができる。
ピークが透過率100%を示すように、井戸層、障壁層
の厚さを設計した構成の透過率を示し、図10および図
12では、透過率のピークがいずれも透過率100%を
示さない構成の透過率を示したが、第1の実施の形態で
説明した方法と同様の方法を用いて、図10および図1
2の透過率のピークのいずれかが透過率100%となる
ように、井戸層、障壁層の厚さを設計することも可能で
ある。また、井戸層、障壁層の厚さを変化させながら、
透過率の各ピークの高さをもとめることにより、複数の
ピークの高さの比を所望の高さの比にするための井戸
層、障壁層の厚さを求めることができる。これにより、
例えば、2つのエネルギーの電子線を1対1の強度で出
力する電子線源を構成することができる。
【0055】このように、エネルギーの異なる複数の電
子線を照射することのできる電子線源を用いることによ
り、例えば、電子のエネルギーの異なる2つの電子線を
用いる超高分解能の干渉計を1つの電子線源により構成
することが可能である。
子線を照射することのできる電子線源を用いることによ
り、例えば、電子のエネルギーの異なる2つの電子線を
用いる超高分解能の干渉計を1つの電子線源により構成
することが可能である。
【0056】上述の実施の形態では、GaAs/AlA
s系の材料を用いて電子線源の素子を構成したが、他の
化合物半導体を用いることももちろん可能である。また
Si/SiO2やSi/Al2O3等の半導体/絶縁体系
の材料を用いることもできる。また、金属/絶縁体系の
材料を用いることもできる。
s系の材料を用いて電子線源の素子を構成したが、他の
化合物半導体を用いることももちろん可能である。また
Si/SiO2やSi/Al2O3等の半導体/絶縁体系
の材料を用いることもできる。また、金属/絶縁体系の
材料を用いることもできる。
【0057】また、上述の実施の形態では、真空領域1
4を構成するために、スペーサ15と電極16、17と
を備えた薄膜積層型の素子を示したが、素子の形状はこ
の形に限定されるものではない。例えば、真空領域に電
場を加えるための構成を、バルク領域11、障壁層1
2、井戸層13とは別体として備える素子構成にするこ
とも可能である。
4を構成するために、スペーサ15と電極16、17と
を備えた薄膜積層型の素子を示したが、素子の形状はこ
の形に限定されるものではない。例えば、真空領域に電
場を加えるための構成を、バルク領域11、障壁層1
2、井戸層13とは別体として備える素子構成にするこ
とも可能である。
【0058】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、高い電
流密度の電子線が得られる電子線源を提供することがで
きる。
流密度の電子線が得られる電子線源を提供することがで
きる。
【図1】本発明の第1の実施の形態の電子線源の伝導帯
のポテンシャル構造を示す説明図。
のポテンシャル構造を示す説明図。
【図2】図1の構造において、透過率ピーク100%が
得られる障壁層の厚さと井戸層の厚さとの関係を示すグ
ラフ。
得られる障壁層の厚さと井戸層の厚さとの関係を示すグ
ラフ。
【図3】図2の曲線上のある点の構造の電子線源の透過
率と電子のエネルギーとの関係を示すグラフ。
率と電子のエネルギーとの関係を示すグラフ。
【図4】本発明の第2の実施の形態の電子線源の伝導帯
のポテンシャル構造を示す説明図。
のポテンシャル構造を示す説明図。
【図5】図4の構造において、透過率ピーク100%が
得られる障壁層の厚さと井戸層の厚さとの関係を示すグ
ラフ。
得られる障壁層の厚さと井戸層の厚さとの関係を示すグ
ラフ。
【図6】図5の曲線上のある点の構造の電子線源の透過
率と電子のエネルギーとの関係を示すグラフ。
率と電子のエネルギーとの関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第3の実施の形態の電子線源の伝導帯
のポテンシャル構造を示す説明図。
のポテンシャル構造を示す説明図。
【図8】図7の構造において、透過率ピーク100%が
得られる障壁層の厚さと井戸層の厚さとの関係を示すグ
ラフ。
得られる障壁層の厚さと井戸層の厚さとの関係を示すグ
ラフ。
【図9】図8の曲線上のある点の構造の電子線源の透過
率と電子のエネルギーとの関係を示すグラフ。
率と電子のエネルギーとの関係を示すグラフ。
【図10】電子線源の障壁層の数と透過率のピークとの
関係を示すために、障壁層が1つの場合の透過率のピー
クを示すグラフ。
関係を示すために、障壁層が1つの場合の透過率のピー
クを示すグラフ。
【図11】電子線源の障壁層の数と透過率のピークとの
関係を示すために、障壁層が2つの場合の透過率のピー
クを示すグラフ。
関係を示すために、障壁層が2つの場合の透過率のピー
クを示すグラフ。
【図12】電子線源の障壁層の数と透過率のピークとの
関係を示すために、障壁層が3つの場合の透過率のピー
クを示すグラフ。
関係を示すために、障壁層が3つの場合の透過率のピー
クを示すグラフ。
【図13】本発明の実施の形態において電子の透過率を
求める計算に用いた、ポテンシャルの異なる層がz方向
に積み重なった構造を示す説明図。
求める計算に用いた、ポテンシャルの異なる層がz方向
に積み重なった構造を示す説明図。
【図14】従来の最適化されていない共鳴トンネル電子
源のポテンシャル構造。
源のポテンシャル構造。
【図15】本発明の実施の形態の電子線源の形状を示す
ための断面の斜視図。
ための断面の斜視図。
11、41、71・・・バルク領域、12、42、72
・・・障壁層、13、43、73・・・井戸層、14、
44、74・・・真空領域、15・・・スペーサ、1
6、17・・・電極。
・・・障壁層、13、43、73・・・井戸層、14、
44、74・・・真空領域、15・・・スペーサ、1
6、17・・・電極。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池田 順司 東京都千代田区丸の内3丁目2番3号 株 式会社ニコン内
Claims (7)
- 【請求項1】バルク領域と、前記バルク領域に隣接し、
前記バルク領域よりもポテンシャルの高い障壁領域と、
前記障壁領域に隣接し、前記障壁領域よりもポテンシャ
ルの低い井戸領域と、前記井戸領域に隣接する空間のポ
テンシャルを傾斜させるために、前記空間に電場を加え
る電場印加手段とを有し、 前記障壁領域および井戸領域は、前記バルク領域の電子
が、前記障壁領域および前記空間を透過する透過率のピ
ークが100%となる厚さにそれぞれ形成されているこ
とを特徴とする電子線源。 - 【請求項2】請求項1において、前記井戸領域のポテン
シャルを前記バルク領域のポテンシャルよりも高くした
ことを特徴とする電子線源。 - 【請求項3】請求項2において、前記井戸領域のポテン
シャルを前記バルク領域のポテンシャルよりも低くした
ことを特徴とする電子線源。 - 【請求項4】バルク領域と、前記バルク領域に隣接し、
前記バルク領域よりもポテンシャルの高い障壁領域と、
前記障壁領域に隣接し、前記障壁領域よりもポテンシャ
ルの低い井戸領域と、前記井戸領域に隣接する空間のポ
テンシャルを傾斜させるために、前記空間に電場を加え
る電場印加手段とを有する電子線源の設計方法におい
て、 前記電場印加手段の印加する電圧をあらかじめ定めた一
定値にし、前記障壁領域の厚さおよび前記井戸領域の厚
さのうち少なくとも一方を変化させて、前記バルク領域
の電子のエネルギーと、その電子が前記障壁領域および
前記空間を透過する透過率との関係を求め、 前記透過率が最大値を示す前記障壁領域の厚さと前記井
戸領域の厚さとの組み合わせを選択し、この値に前記障
壁領域の厚さと前記井戸領域の厚さとを設計することを
特徴とする電子線源の設計方法。 - 【請求項5】請求項4において、前記透過率のピークが
100%を示す前記障壁領域の厚さと前記井戸領域の厚
さとの組み合わせを選択することを特徴とする電子線源
の設計方法。 - 【請求項6】請求項5において、必要とされる電子線の
電子のエネルギーに基づいて、前記障壁領域の厚さと前
記井戸領域の厚さとの組み合わせを選択することを特徴
とする電子線源の設計方法。 - 【請求項7】バルク領域と、前記バルク領域に隣接し、
前記バルク領域よりもポテンシャルの高い障壁領域と、
前記障壁領域に隣接し、前記障壁領域よりもポテンシャ
ルの低い井戸領域と、前記井戸領域に隣接する空間のポ
テンシャルを傾斜させるために、前記空間に電場を加え
る電場印加手段とを有し、 前記障壁領域および井戸領域がそれぞれ複数配置されて
いることを特徴とする電子線源。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23305296A JPH1079222A (ja) | 1996-09-03 | 1996-09-03 | 電子線源 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23305296A JPH1079222A (ja) | 1996-09-03 | 1996-09-03 | 電子線源 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1079222A true JPH1079222A (ja) | 1998-03-24 |
Family
ID=16949050
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23305296A Pending JPH1079222A (ja) | 1996-09-03 | 1996-09-03 | 電子線源 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1079222A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008133275A1 (ja) | 2007-04-25 | 2008-11-06 | Crestec Corporation | 面放出型電子源および描画装置 |
-
1996
- 1996-09-03 JP JP23305296A patent/JPH1079222A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008133275A1 (ja) | 2007-04-25 | 2008-11-06 | Crestec Corporation | 面放出型電子源および描画装置 |
US8232711B2 (en) | 2007-04-25 | 2012-07-31 | Crestec Corporation | Surface emission type electron source and drawing device |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040412 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040506 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20050906 |