JPH1077249A - 重合性化合物、重合性組成物およびそれらを用いた液晶表示素子 - Google Patents

重合性化合物、重合性組成物およびそれらを用いた液晶表示素子

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JPH1077249A
JPH1077249A JP23567196A JP23567196A JPH1077249A JP H1077249 A JPH1077249 A JP H1077249A JP 23567196 A JP23567196 A JP 23567196A JP 23567196 A JP23567196 A JP 23567196A JP H1077249 A JPH1077249 A JP H1077249A
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crystal display
polymerizable
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Application number
JP23567196A
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English (en)
Inventor
Fumi Miyazaki
文 宮▲崎▼
Akira Sakaigawa
亮 境川
Sadahiro Sakou
禎裕 酒匂
Mitsuhiro Kouden
充浩 向殿
Kazuhiko Tsuchiya
和彦 土屋
Kenji Suzuki
賢治 鈴木
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Kanto Chemical Co Inc
Sharp Corp
Original Assignee
Kanto Chemical Co Inc
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液晶中に樹脂などを混入して階調表示を可能
にする液晶表示素子において、ドメインサイズを画素サ
イズよりもかなり小さくし、かつドメインを広範囲にわ
たって均一に分布させることにより、液晶表示素子の実
用的な階調表示を可能にする物質を提供すること。 【解決手段】 下記一般式(I)で表される重合性化合
物: 【化1】 ここで、mは2〜10の整数であり、nは2〜12の整
数であり、そしてC*は不斉炭素原子を表す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重合性化合物、重
合性組成物およびそれらを用いた液晶表示素子に関し、
詳細には、得られる液晶表示素子が階調表示を実現す
る、重合性化合物、重合性組成物およびそれらを用いた
液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、フラットパネルディスプレイの分
野において、液晶表示素子は広範に使用されるに至って
いる。そのなかで、強誘電性液晶表示素子は、通常キラ
ルスメクティックC相と呼ばれる液晶相が利用されてい
る。この液晶相では、液晶分子は層構造を形成し、そし
て液晶分子はこの層に対して傾いて配向している。液晶
分子は、バルク状態では螺旋構造を有する分子配列を示
すが、螺旋ピッチよりも薄いセル中では、この螺旋がほ
どけ、図1に示すような双安定な分子配列をとる。強誘
電性液晶は層に対して垂直な方向に自発分極(Ps)を有
しており、層法線の方向に電界を印加すると液晶分子は
電界の方向に自発分極を揃えるように再配列する。これ
を一対の偏光板(偏光子と検光子)を組み合わせること
により、明暗の表示が可能となる(N.A.ClarkおよびS.
T.Lagerwall, Appl.Phys.Lett.,36,899(1980))。
【0003】上記強誘電性液晶の再配列は、電界と液晶
分子の自発分極との直接相互作用によって起こるため、
液晶分子のマイクロ秒オーダーの高速応答が可能とな
る。また、液晶分子は、電界を切った後も、電界を切る
前の層法線に対して傾いた状態を保持する性質、いわゆ
るメモリ性がある。また、分子配向が均一であることお
よびパネルのギャップが小さいことにより広視野角が得
られる。高速応答とメモリ性との特徴を利用することに
より、1走査線ごとに情報が高速で表示され得、広視野
角を有することにより、単純マトリクス型の大表示容量
の強誘電性液晶表示の製作が可能となる。
【0004】図2に強誘電性液晶表示素子11の基本構
造を示す。強誘電性液晶表示素子11は、ITO(酸化
インジウムおよび酸化スズ複合物)電極膜2a、絶縁膜
3aおよび配向膜4aを有するガラス基板1aならびに
偏光板12aでなる基板9と、ITO電極膜2b、絶縁
膜3bおよび配向膜4bを有するガラス基板1bならび
に偏光板12bでなる基板10とが、1.5μm前後のセル
厚で、シール部材6を介して貼り合わされた構造を有す
る。基板9と基板10との間には液晶材料7が封入され
ている。配向膜4aおよび4bには、通常ポリイミドな
どの高分子膜が用いられ、その表面はラビングされてい
る。電極膜2aおよび2bには駆動回路が接続されてい
る。
【0005】セル厚が1.5μm程度と薄いことと、液晶が
強誘電性液晶であることとを除けば、強誘電性液晶表示
素子は従来の単純マトリクス型液晶表示素子と同様の構
造を有している。
【0006】しかし、上記強誘電性液晶表示素子は、階
調表示が困難であるという問題を有する。すなわち、キ
ラルスメクティックC相における液晶分子が有する双安
定性を利用するために、基本的には2値しかとれない。
【0007】そこで、このような問題を解決するため
に、面積分割法または高速変調を利用した階調表示方法
を用いることが提案されている。しかし、これらの方法
は、パネル作製工程および駆動を複雑かつ困難とし、コ
ストパフォーマンスなどを考慮すると実用性は低い。
【0008】さらに、液晶中に樹脂などを混入させるこ
とにより、強誘電性表示素子の階調表示を可能にする、
いくつかの方法が提案されている。例えば、特開平6−
194635号公報は、重合物質でなる異方性3次元網
状構造体中に非反応性キラル液晶分子を捕捉した構造体
を形成する方法を開示している。この方法は、強誘電性
液晶表示素子内に形成された網状構造体によって、相互
に反対の分極方向を有する、微少な隣接するドメインを
安定化させ得る。その結果、無電界時においても中間調
状態が維持され得る。
【0009】しかし、この方法では、ドメインサイズに
均一性がなく、電界印加時のドメインの面積を任意に制
御することができない。さらに、そのドメインサイズも
実際の画素の大きさ(通常、約0.3mm角)を大く上回
る。また、さらに強誘電性液晶表示素子内に3次元網状
構造体が存在すると、光散乱を誘発させるだけでなく、
強誘電性液晶分子の均一な配向状態を乱して、表示画素
のコントラストを低下させたり、応答時間を低下させる
などの問題が生じる。よって、この方法を用いて実用化
するのは困難である。
【0010】別の方法として、強誘電性液晶と光重合性
プレポリマーとの混合物に紫外線を照射することによっ
て、光重合により形成された高分子と強誘電性液晶とを
相分離させて階調表示を得る方法が提案されている(藤
掛ら、第41回応用物理学関係連合講演会講演予稿集No.
3,1120(1994))。この方法によれば、強誘電性液晶
が、ネマティック相を示す温度下でプレポリマーを光重
合させることによって強誘電性液晶と樹脂との複合体
(網目状ポリマー)が得られ、これにより筋状の細長い
ドメインが形成される。そして、各ドメインの異なる閾
値特性を利用してスイッチングする領域の面積を制御
し、階調表示が得られる。
【0011】しかし、上記方法で形成される筋状の細長
いドメインの大きさは、100μm程度であり、実際のマト
リクス型表示素子に起用するには余りにも大きい。ま
た、この筋状のドメインが画素内にランダムに存在する
ために、複数の領域において同じ階調性を得ることがで
きないという問題がある。よって、この方法を用いたと
しても、実質的に階調表示を可能にすることは困難であ
る。
【0012】このように、上記の方法はいずれも、スイ
ッチングドメインの面積を広範囲にわたって均一に制御
し得る構造を提供していないので、局所的な階調表示が
可能であっても、広範囲にわたる制御はできない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題の
解決を課題とするものであり、その目的とするところ
は、液晶中に樹脂などを混入して階調表示を可能にする
液晶表示素子において、ドメインサイズを画素サイズよ
りもかなり小さくし、かつドメインを広範囲にわたって
均一に分布させることにより、液晶表示素子の実用的な
階調表示を可能にする物質を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の重合性化合物
は、下記一般式(I)で表される重合性化合物:
【0015】
【化2】
【0016】(ここで、mは2〜10の整数であり、nは
2〜12の整数であり、そしてC*は不斉炭素原子を表
す)であり、そのことにより上記課題が達成される。
【0017】本発明の重合性組成物は、少なくとも1種
の上記重合性化合物を含む重合性樹脂材料と液晶とを含
有する重合性組成物である。
【0018】好適な実施態様では、上記重合性樹脂材料
を0.1重量%から5重量%以下含有する。
【0019】好適な実施態様では、上記液晶は強誘電性
液晶である。
【0020】本発明の液晶組成物は、高分子物質と液晶
とでなる液晶組成物であって、該高分子物質が重合した
少なくとも1種の上記重合性化合物を含有する。
【0021】本発明の液晶表示素子は、少なくとも電極
膜を有し、かつ少なくとも一方が透明な一対の基板間に
高分子物質と液晶とを挟持してなる液晶表示素子であっ
て、該高分子物質が、少なくとも1種の上記重合性化合
物から形成されている。
【0022】好適な実施態様では、上記液晶は強誘電性
液晶である。
【0023】さらに好適な実施態様では、上記基板と上
記強誘電性液晶との界面における強誘電性液晶分子のプ
レティルトの方向は等しく、該強誘電性液晶はシェブロ
ン層構造を有し、そして該界面における強誘電性液晶分
子のプレティルトの方向と該シェブロン層構造の折れ曲
がりの方向とは等しい。
【0024】さらに好適な実施態様では、上記強誘電性
液晶は負の誘電異方性を有し、そして電圧−パルス幅曲
線において極小値を有する。
【0025】好適な実施態様では、上記基板は、有機高
分子でなる配向膜を有し、そしてプレティルト角を有す
る。
【0026】本発明の第1の液晶表示素子の製造方法
は、少なくとも電極膜を有し、かつ少なくとも一方が透
明な一対の基板間に重合性組成物を挟持してなる液晶表
示素子の製造方法であって、一方の該基板と他方の該基
板とを一定の間隔を保って貼り合わせる工程;該基板間
に該重合性組成物を配する工程;および該基板に光照射
を行って、該重合性組成物を重合させる工程;を包含
し、ここで、該重合性組成物は、少なくとも1種の上記
重合性化合物を含む重合性樹脂材料と液晶とを含有す
る。
【0027】好適な実施態様では、上記基板に光照射を
行う工程で設定される温度は、上記重合性組成物の等方
性を示す温度である。
【0028】さらに好適な実施態様では、上記基板に光
照射を行う工程後、上記重合性組成物を冷却する工程を
包含する。
【0029】さらに好適な実施態様では、さらに、上記
重合性組成物が等方性を示す温度まで加熱した後、冷却
する工程を包含する。
【0030】好適な実施態様では、上記液晶は強誘電性
液晶である。
【0031】好適な実施態様では、上記基板は、有機高
分子でなる配向膜を有し、そしてプレティルト角を有す
る。
【0032】本発明の第2の液晶表示素子の製造方法
は、少なくとも電極膜を有し、かつ少なくとも一方が透
明な一対の基板間に液晶組成物を挟持してなる液晶表示
素子の製造方法であって、以下の工程:一方の該基板と
他方の該基板とを一定の間隔を保って貼り合わせる工
程;および該基板間に、液晶組成物を配する工程;を包
含し、ここで、該液晶組成物は、少なくとも1種の上記
重合性化合物を含有する光照射により重合した高分子物
質と液晶とでなる。
【0033】好適な実施態様では、さらに、上記液晶組
成物が等方性を示す温度まで加熱した後、冷却する工程
を包含する。
【0034】好適な実施態様では、上記液晶は強誘電性
液晶である。
【0035】好適な実施態様では、上記基板は、有機高
分子でなる配向膜を有し、そしてプレティルト角を有す
る。
【0036】
【発明の実施の形態】
(重合性化合物)本発明の重合性化合物は以下の一般式
(I):
【0037】
【化3】
【0038】で表され、ここで、mは2〜10の整数、好
ましくは5〜8の整数、最も好ましくは6であり、nは
2〜12、好ましくは5〜10の整数、最も好ましくは8
であり、そしてC*は不斉炭素原子を表す。
【0039】上記重合性化合物の合成において、その合
成方法は特に限定されないが、例えば、以下の化4に示
される合成経路を経て合成される。
【0040】
【化4】
【0041】まず、キラルまたはアキラル2-アルカノー
ル(1)と4-(4'-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチ
ルエステル(2)との光延反応を用いるエーテル化反応
により、化合物(3)が合成される。次いで、この化合
物(3)をアルカリ条件下で加水分解することにより、
化合物(4)が得られる。
【0042】一方、アクリル酸(5)とn-ブロモ-アル
カノール(6)との、ジシクロヘキシルカルボジイミド
を用いるエステル化反応により化合物(7)が得られ
る。最終的に、上記化合物(4)と上記化合物(7)と
のトリメチルアンモニウムハイドロオキサイドを用いた
エステル化反応により、本発明の一般式(I)で表され
る重合性化合物(8)が合成される。
【0043】(重合性組成物)本発明の重合性組成物
は、少なくとも1種の重合性化合物を含む重合性樹脂材
料と液晶とを含有する。
【0044】この重合性組成物に含まれる重合性樹脂材
料は、上記一般式(I)で表される重合性化合物を含有
する。重合性樹脂材料において該重合性化合物は、それ
ぞれ単独で用いられ得るか、もしくはnまたはmの値の
一方あるいは両方の値が異なる化合物を2種以上組み合
わせて用いられ得る。さらに、重合性化合物は、1分子
中に1つの重合部位を有する単官能性アクリレート、メ
タクリレート、またはエポキシ系材料のような他の材料
と組み合わされ得る。この場合、用いられる他の材料
は、光学活性を有していなくてもよい。重合性樹脂材料
における該重合性化合物の含有量は、特に限定されない
が、好ましくは50重量%〜99.9重量%である。重合性樹
脂材料が後述の光重合開始剤を含有するので、重合性化
合物の含有量は、99.9重量%を上回ることはできない。
重合性化合物の含有量が50重量%未満であると、得られ
た液晶表示素子の液晶層において、局所的な閾値特性の
変化が見られない場合がある。
【0045】さらに、本発明の重合性組成物中の後述の
液晶が有する種々の特性に依存して、上記重合性化合物
は、S体、R体、およびラセミ体が適宜使い分けられ得
る。すなわち、重合性組成物および液晶組成物におい
て、重合性化合物の誘発する自発分極の符号と後述の液
晶の自発分極の符号とを一致させる(同符号である)
と、応答時間(τ)と特定のパルス波高値(V)より得
られるτ−V曲線が右下にシフトする。すなわち、応答
時間が速くなり、パルス波高値の極小値(Vmin)が高
電位化する。これに対し、重合性化合物の誘発する自発
分極の符号と液晶の自発分極の符号が一致しない(異符
号である)場合は、τ−V曲線が左上にシフトする。す
なわち、応答速度が遅くなり、Vminが低電位化する。
さらに、ラセミ体を用いた場合では、応答速度のみが遅
くなり、Vminは変化しない。この応答速度は、上記同
符号の場合の応答速度と異符号の場合の応答速度とのほ
ぼ中間の速度となる。
【0046】本発明に用いられる重合性樹脂材料は、さ
らに光重合開始剤を含有する。光重合開始剤の例として
は、Irgacure 651およびIrgacure 184(チバガイギー社
製)、ならびにDarocure 1137(メルク社製)が挙げら
れる。光重合開始剤は、必要に応じて重合性樹脂材料と
後述の液晶との総重量に対して0.1重量%〜3重量%を
添加することが好ましい。光重合開始剤の添加量が0.1
重量%を下回ると、得られる重合性組成物は、充分な光
重合反応を起こさない場合がある。光重合開始剤の添加
量が3重量%を上回ると、光重合反応によって分解した
光重合開始剤の分解物が不純物として残留する場合があ
る。
【0047】本発明の重合性組成物における、このよう
な重合性樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、重
合性組成物の重量を基準として、好ましくは0.1重量%
〜10.0重量%であり、より好ましくは0.1重量%〜5.0重
量%である。重合性樹脂材料の含有量が0.1重量%を下
回る(あるいは後述の液晶の含有量が99.9重量%を上回
る)と、光重合反応によって重合性化合物の高分子物質
が充分に形成されず、作製された液晶表示素子内に縞状
の組織が観察されない場合がある。ここで、本明細書中
に用いられる用語「高分子物質」とは、本発明の重合性
化合物を重合して得られる化合物をいう。この高分子物
質は等方性の網目状構造を形成すると考えられている。
さらに、この等方性の網目状構造はその内部に液晶を含
有し得る。重合性樹脂材料の含有量が10.0重量%を上回
る(あるいは後述の液晶の含有量が90.0重量%を下回
る)と、得られる液晶表示素子において、縞状の組織が
太くなったり、または多くの液晶を取り込んだ形状が観
察される場合がある。これにより液晶表示素子は、配向
が乱れ、コントラストが低下し、応答速度が遅くなる恐
れがある。
【0048】本発明の重合性組成物に用いられる液晶
は、常温付近で液晶状態を示す任意の有機化合物または
それらの混合物であり、特に限定されない。このような
液晶の例としては、ネマティック液晶(2周波駆動用液
晶、△ε<0の液晶を含む)、コレステリック液晶(特
に、可視光に選択反射特性を有する液晶)、スメクティ
ック液晶、強誘電性液晶、ディスコティック液晶などが
挙げられる。特に、強誘電性液晶が好ましい。強誘電性
液晶の例としては、ZLI-4237-000(メルク社製)、SCE8
(ヘキスト社製)、CS-1014(チッソ社製)などが挙げら
れる。
【0049】(液晶組成物)本発明の液晶組成物は高分
子物質と液晶とでなる。この高分子物質は、上記少なく
とも1種の一般式(I)で表される重合性化合物および
光重合開始剤を含有する重合性樹脂材料を、当業者に公
知の方法で光重合反応させることにより得られ得る。こ
の場合、使用される光重合開始剤の量は、重合性樹脂材
料の総重量に対して、好ましくはおよそ0.1重量%〜3
重量%である。
【0050】本発明の液晶組成物に使用される液晶は、
上記重合性組成物で用いられる液晶と同様であり得る。
【0051】(液晶表示素子)本発明の液晶表示素子
は、少なくとも電極膜を有し、かつ少なくとも一方が透
明な一対の基板間に、高分子物質と液晶とを挟持してな
る。この高分子物質は、少なくとも1種の上記本発明の
重合性化合物から形成されている。
【0052】本発明の液晶表示素子に用いられる好適な
液晶は、上述の強誘電性液晶である。この強誘電性液晶
が好ましい理由を、以下に説明する。
【0053】当初提案された強誘電性液晶表示素子は、
図3の(a)に示されるように、強誘電性液晶相が基板
31a、31bと垂直な方向にブックシェルフ層構造3
2を有すると考えられていた。しかし、その後の研究に
より、強誘電性液晶相は、通常、図3(b)に示すよう
なシェブロン層構造33を有することが見出された。
【0054】本発明者らは、上下基板に同一方向にプレ
ティルト角を付与した強誘電性液晶表示素子において、
シェブロン層構造内の液晶分子の分子配列の差異によ
り、液晶分子が4つの配向状態(C1U、C1T、C2
U、およびC2T)を示し得ることを見出した。C1お
よびC2は、それぞれ、強誘電性液晶分子のプレティル
トの方向とシェブロン層構造の折れ曲がりの方向に基づ
いて定義される。C1とは強誘電性液晶分子のプレティ
ルトの方向とシェブロン層構造の折れ曲がりの方向が反
対の場合をいう。さらに、C2とは強誘電性液晶分子の
プレティルトの方向とシェブロン層構造の折れ曲がりの
方向が同一の場合をいう。この4つの配向状態のうち、
図4に実用的に重要なC1U(C1−ユニフォーム)配
向(図4の(a)と、C2U(C2−ユニフォーム)配
向(図4の(b))との分子配向モデルを示す。
【0055】強誘電性液晶材料の誘電異方性が正または
0付近の場合、C2U配向は、バイアス電圧によって液
晶分子に大きな揺らぎを生じる。従って、この場合、高
コントラストを示す液晶表示素子が得られない。しか
し、強誘電性液晶材料が負の誘電異方性(△ε<0)を
有する場合には、この液晶材料は特定のパルス波高値
(V)に対して応答時間(τ)が極小値(τ−Vmin)
を有する、特異的なτ−Vmin特性を有する(この極小
値を有する曲線を電圧−パルス幅曲線という)。そし
て、このτ−Vmin特性を利用すると、ACスタビライ
ズ効果によって、C2U配向においても高コントラスト
の液晶表示素子を製造することが可能となる。ここで、
ACスタビライズ効果とは、通常の強誘電性液晶では、
パルス波高値(V)を高くしていくと液晶の応答時間
(τ)が単調に短くなっていくのに対して、強誘電性液
晶の誘電異方性が負であり、かつ自発分極があまり大き
くない場合には、特定のパルス波高値(V)に対して応
答時間(τ)が極小値(τ−Vmin)を有する現象をい
う。このACスタビライズ効果は、電圧の実効値が大き
くなると誘電異方性の効果が大きくなるために起こる。
【0056】通常、C1配向は高温下で出現し、温度の
低下とともにC2配向が出現し、かつ安定になる。さら
に、C1U配向は、温度変化または液晶表示素子の駆動
によってC2配向またはC1T配向に変化する傾向があ
る。このようにC1配向は温度に対して不安定であるの
で、C2U配向の方が、液晶表示素子の広い動作温度範
囲を確保するのに有利な配向状態である。また、C2U
配向およびC1U配向の液晶の応答時間を比較した場
合、C2U配向の方が液晶の応答時間が短く、そしてメ
モリ効果が大きい。
【0057】従って、本発明の液晶表示素子に用いられ
る液晶は、負の誘電異方性と、C2U配向を示すτ−V
min特性とを有する強誘電性液晶が、液晶表示素子にお
いて高速で書き込みを行える点、高コントラストを示す
点、および広い動作温度範囲が得られる点から好まし
い。
【0058】さらに、均一なC2U配向を得るために
は、本発明の液晶表示素子は、基板にプレティルト角が
付与されていることが好ましい。このプレティルト角
は、好ましくは、0°〜20°であり、より好ましくは3
°〜8°のいわゆる中程度のプレティルト角である。
【0059】上記プレティルト角は、液晶セルを形成す
る基板に公知の高分子材料または無機材料を塗布した後
に、この塗布した面を布帛などでこするラビング法;表
面張力の低い化合物を基板に塗布する垂直配向法;およ
びSiO2などの斜め蒸着による斜方配向法により基板
に付与され得る。あるいは、ラビングを行わない水平配
向膜または無処理基板(基板に透明電極を設置した基
板)などを使用し得る。本発明においては、ラビング法
により基板にプレティルト角を付与することが好まし
い。特に、中程度のプレティルト角を実現するためにラ
ビングした配向膜をパラレルラビング(ラビング方向が
略平行となるように貼り合わせてセルを作製する方法)
することが、上記液晶のC2配向が生じやすい点で好ま
しい。配向膜は、好ましくは有機高分子膜であり得る。
有機高分子膜を形成する高分子の例としては、ポリイミ
ド、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。例えば、
ポリイミドとして、AL1054、AL3356、AL5357(すべて日
本合成ゴム社製)などを用いることによって上記中程度
のプレティルト角が実現され得る。
【0060】(液晶表示素子の製造方法)以下に本発明
の第1の液晶表示素子の製造方法について説明する。
【0061】上記液晶表示素子は、例えば、以下のよう
にして製造される:まず、少なくとも電極膜(例えば、
ITOなどの透明電極)と、ラビングした上記有機高分
子でなる配向膜とを有する、一対の基板(例えば、ガラ
ス基板)を、ラビング方向が略平行となるように、スペ
ーサーで間隔を保って貼り合わせ、液晶セルを形成す
る。ここで、該基板は上記プレティルト角を有する。次
いで、該基板間に上記少なくとも1種の本発明の重合性
化合物を含む重合性材料と液晶とを含有する重合性組成
物を注入する。そして基板の少なくとも片面(透明な
面)に、例えば、高圧水銀ランプを用いて光照射を行
う。この光照射における露光照度、露光時間などの照射
条件は、使用される上記重合性化合物を含有する重合性
樹脂材料および液晶によって異なるので特に限定されな
い。この光照射により、重合性組成物中の重合性樹脂材
料が光重合反応を起こして高分子物質を形成し、この高
分子物質が液晶セル内で縞状に分布する。高分子物質
は、液晶に局所的な閾値特性を付与し得、その結果、ド
メインサイズの均一性が制御され得、かつパルス電圧の
印加時にドメイン面積が任意に制御され得る。
【0062】さらに、この光照射を行う際の温度を、当
業者に公知の手段を用いて上記重合性組成物が等方相ま
たはネマティック相を示す温度に設定することが好まし
い。この理由を以下に示す:重合性組成物が等方相また
はネマティック相を示す状態では、液晶分子の秩序が低
く、移動が容易である。そのため、このような状態を示
す温度領域で光照射を行うと、重合性組成物中の重合性
化合物および光重合開始剤が互いに容易に移動して重合
し得る。さらに、この重合により生成した高分子物質
は、後述の冷却工程によって液晶内に均一に分散して縞
状の組織を形成し、そして液晶分子は、この冷却工程に
よって徐々に秩序のより高い、良好な配向状態をとり得
る。
【0063】しかし、これがSmA相またはSmC相を
示す状態では、液晶分子の秩序が高く、移動が困難であ
るので、液晶内に均一に分散した重合性樹脂材料同士の
充分な重合が達成されず、そして生成した高分子物質も
自由に移動できず、縞状の組織を形成し得ない。
【0064】本発明の第1の液晶表示素子の製造方法に
おいて、上記重合性樹脂材料が低濃度の重合性化合物を
含有する場合には、重合性組成物は、等方相またはネマ
ティック相を示す温度で光照射し、その後冷却しただけ
では縞状の高分子物質が充分に形成されない恐れがあ
る。このような場合においては、光照射後に冷却し、さ
らに、光照射により重合した上記重合性組成物が等方相
を示す温度まで基板を再加熱し、次いで、冷却すること
により、生成した高分子物質を縞状に分布させることが
可能となる。したがって、このような高分子物質によ
り、低濃度の重合性化合物を含有する重合性組成物を用
いたとしても、製造された液晶表示素子は、ドメインサ
イズを均一に制御し得、かつパルス電圧の印加時にドメ
インの面積を任意に制御し得る。
【0065】このようにして上記液晶表示素子が製造さ
れる。この液晶表示素子の電極膜にはさらに駆動回路が
接続される。
【0066】以下に本発明の第2の液晶表示素子の製造
方法について説明する。
【0067】上記本発明の液晶表示素子は、例えば、以
下のようにして製造され得る:まず、上記と同様にし
て、少なくとも電極膜(例えば、ITOなどの透明電
極)と、ラビングした上記有機高分子でなる配向膜とを
有する、一対の基板(例えば、ガラス基板)を、ラビン
グ方向が略平行となるようにスペーサーで間隔を保って
貼り合わせ、液晶セルを形成する。ここで、該基板は上
記プレティルト角を有する。
【0068】次いで、該基板間に上記少なくとも1種の
本発明の重合性化合物を含有する光照射により重合した
高分子物質と液晶とでなる液晶組成物を注入する。ここ
で、高分子物質は、少なくとも1種の本発明の重合性化
合物を含有する重合性樹脂材料に、例えば、高圧水銀ラ
ンプを用いて光照射を行い、光重合反応を起こすことに
より形成される。この光照射における露光照度、露光時
間などの照射条件は、使用される上記重合性化合物を含
有する重合性樹脂材料および液晶によって異なるので特
に限定されない。さらに、この光照射によって高分子物
質を形成する際の温度には、重合性樹脂材料が等方性を
示す温度が用いられる。
【0069】このように液晶組成物を用いて液晶表示素
子を製造する場合においては、予め光照射により形成し
た高分子物質と液晶とでなる混合物が基板間に注入され
得るので、液晶が直接光照射されることがない。したが
って、光照射により液晶が悪影響を受けず、配向状態が
損なわれない。さらに、光照射によって分解する恐れの
ある液晶も使用し得る。あるいは光により液晶が分解す
る可能性を考慮する必要がない。
【0070】本発明の第2の液晶表示素子の製造方法に
おいて、上記重合性樹脂材料が低濃度の重合性化合物を
含有する場合には、重合性組成物は、等方相またはネマ
ティック相を示す温度で光照射し、その後冷却しただけ
では縞状の高分子物質が充分に形成されない恐れがあ
る。このような場合においては、基板間に液晶組成物を
注入した後、さらに、高分子物質が等方相を示す温度ま
で基板を再加熱し、次いで、冷却することにより、高分
子物質を縞状に分布させることが可能となる。したがっ
て、このような高分子物質により、低濃度の重合性化合
物を含有する重合性組成物を用いたとしても、製造され
た液晶表示素子は、ドメインサイズを均一に制御し得、
かつパルス電圧の印加時にドメインの面積を任意に制御
し得る。
【0071】このようにして上記液晶表示素子が製造さ
れる。この液晶表示素子の電極膜にはさらに駆動回路が
接続される。
【0072】
【実施例】本発明を実施例により具体的に説明するが、
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施
例に記載の略号は、以下: TLC :薄層クロマトグラフィー GC :ガスクロマトグラフィー HPLC:高速液体クロマトグラフィー IR :赤外吸収スペクトル Mass:質量スペクトル m.p.:融点 を意味する。
【0073】<実施例1>下記化5で表される重合性化
合物を合成した。
【0074】
【化5】
【0075】以下に合成手順を示す。
【0076】(1−a)下記化6で表される化合物の合
成:
【0077】
【化6】
【0078】4-(4'-ヒドロキシフェニル)安息香酸メ
チルエステル8.0g(35ミリモル)、トリフェニルホス
フィン11.0g(42ミリモル)、(S)-2-オクタノール5.46
g(42ミリモル)、およびテトラヒドロフラン140mlで
なる溶液に、氷冷下でアゾジカルボン酸ジエチル7.3g
(42ミリモル)を滴下し、TLCにて原料が消失したこ
とを確認するまで6日間室温で撹絆した。反応終了後、
この溶液を留去し、へキサン−トルエン(1:1〜1:1.
5)を溶出液として用い、残留分をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィーにて精製し、(R)-4-[4'-(1-メチル
ヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸メチルエステル11.
0g(収率92.0%;GC99.7%;およびIR(KBr)17
10cm-1)を得た。
【0079】(1−b)下記化7で表される化合物の合
成:
【0080】
【化7】
【0081】上記(1−a)で得られた(R)-4-[4'-(1-
メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸メチルエス
テル5.0g(14.7ミリモル)、メタノール50ml、および
テトラヒドロフラン30mlでなる溶液に、5N水酸化ナト
リウム水溶液5mlを加え、還流下にて2時間撹拌した。
反応終了後、反応液に希塩酸を加え、遊離した有機層を
トルエンにて抽出した。トルエン層を水洗し、硫酸ナト
リウム(無水)にて乾燥した後、溶媒を留去して、(R)-
4-[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸
4.1g(収率95.9%;IR(KBr)1680cm-1;および
Mass 326(M+))を得た。
【0082】(1−c)下記化8で表される化合物の合
成:
【0083】
【化8】
【0084】アクリル酸3.45g(47.9ミリモル)、8-ブ
ロモ-1-オクタノール10.0g(47.8ミリモル)、ジシク
ロヘキシルカルボジイミド12.7g(60.2ミリモル)、4-
ピロリジノピリジン0.2g(1.4ミリモル)、および塩化
メチレン100mlでなる混合液を室温にて2日間撹枠し
た。反応終了後、沈殿物を吸引濾過により除去した後、
濾液を濃縮し、トルエンを溶出液としたシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィーにて残留分を精製し、1-(8-ブロ
モ)オクチル アクリレート5.6g(収率44.5%;GC9
4.0%;およびIR(KBr)1720cm-1)を得た。
【0085】(1−d)下記化9で表される化合物の合
成:
【0086】
【化9】
【0087】上記(1−b)で得られた(R)-4-[4'-(1-
メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸4.1g(12.
6ミリモル)、上記(1−c)で得られた1-(8-ブロモ)
オクチル アクリレート3.76g(13.9ミリモル)、およ
びジメチルホルムアミド40mlでなる溶液に、氷冷下にて
トリメチルアンモニウムハイドロオキサイド・5水和物
2.52g(13.9ミリモル)を加え、室温にて3日間撹拌し
た。反応終了後、反応液に水を添加し、有機層をベンゼ
ンにて抽出した。ベンゼン層を水洗し、硫酸ナトリウム
(無水)にて乾燥した後、溶媒を留去し、へキサン−ベ
ンゼン(1:1〜1:2)を溶出液としたシリカゲルカラム
クロマトグラフィーにて残留分を精製し、8-アクリロイ
ルオキシオクチル (R)-4-(1'-メチルヘプチルオキシ)
ビフェニル-4"-カルボキシレート4.0g(収率62.6%)
を得た。
【0088】この化合物は、室温にて無色の液体であ
り、HPLCで99.8%の純度を示し、そしてTLCで1
スポットを示した。さらに、IR測定の結果で2920cm-1
〜2850cm-1、1720cm-1、1600cm-1、1270cm-1、および11
80cm-1に吸収帯を有すること、Mass分析で508に分
子イオンピークが認められたこと、および用いた原料と
の関係から得られた物質が上記化5で表される化合物で
あることを確認した。
【0089】<実施例2>下記化10で表される重合性
化合物を合成した。
【0090】
【化10】
【0091】以下に合成手順を示す。
【0092】(2−a)下記化11で表される化合物の
合成:
【0093】
【化11】
【0094】実施例1の(1−a)における、(S)-2-オ
クタノール5.46gの代わりに、(R)-2-オクタノール5.46
g(42ミリモル)を用いたこと以外は、実施例1の(1
−a)と同様にして、(S)-4-[4'-(1-メチルヘプチル
オキシ)フェニル]安息香酸メチルエステル10.6g(収
率71.1%;m.p.69℃〜70℃;GC98.4%;およびI
R(KBr)1720cm-1)を得た。
【0095】(2−b)下記化12で表される化合物の
合成:
【0096】
【化12】
【0097】実施例1の(1−b)における、(R)−4
-[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸
メチルエステル5.0gの代わりに、上記(2−a)で得ら
れた(S)-4-[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニ
ル]安息香酸メチルエステル5.0g(14.7ミリモル)を
用いたこと以外は、実施例1の(1−b)と同様にし
て、(S)-4-[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニ
ル]安息香酸3.7g(収率77.2%;GC95.7%;および
IR(KBr)1680cm-1)を得た。
【0098】(2−c)下記化13で表される化合物の
合成:
【0099】
【化13】
【0100】実施例1の(1−d)における、(R)-4-
[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸
4.1gの代わりに、上記(2−b)で得られた(S)-4-[4'-
(1-メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸4.1g
(12.6ミリモル)を用いたこと以外は、実施例1の(1
−d)と同様にして、8-アクリロイルオキシオクチル
(S)-4-(1'-メチルヘプチルオキシ)ビフェニル-4"-カ
ルボキシレート2.7g(収率42.5%)を得た。
【0101】この化合物は室温にて無色の液体であり、
HPLCで99.3%の純度を示し、そしてTLCで1スポ
ットを示した。さらに、IR測定の結果で2930cm-1〜28
50cm-1、1710cm-1、1600cm-1、1270cm-1、および1190cm
-1に吸収帯を有すること、Mass分析で508に分子イ
オンピークが認められたこと、および用いた原料との関
係から得られた物質が上記化10で表される化合物であ
ることを確認した。
【0102】<実施例3>下記化14で表される重合性
化合物を合成した。
【0103】
【化14】
【0104】以下に合成手順を示す。
【0105】(3−a)下記化15で表される化合物の
合成:
【0106】
【化15】
【0107】実施例1の(1−a)における、(S)-2-オ
クタノール5.46gの代わりに、(±)-2-オクタノール5.4
6g(42ミリモル)を用いたこと以外は、実施例1の
(1−a)と同様にして、(±)-4-[4'-(1-メチルヘプ
チルオキシ)フェニル]安息香酸メチルエステル10.7g
(収率89.7%;GC99.0%;およびIR(KBr)1720c
m-1)を得た。
【0108】(3−b)下記化16で表される化合物の合
成:
【0109】
【化16】
【0110】実施例1の(1−b)における、(R)-4-
[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸
メチルエステル5.0gの代わりに、上記(3−a)で得ら
れた(±)-4-[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニ
ル]安息香酸メチルエステル5.0g(14.7ミリモル)を
用いたこと以外は、実施例1の(1−b)と同様にし
て、(±)-4-[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニ
ル]安息香酸4.6g(収率96.0%;IR(KBr)1680cm
-1;Mass326(M+))を得た。
【0111】(3−c)下記化17で表される化合物の合
成:
【0112】
【化17】
【0113】実施例1の(1−d)における、(R)-4-
[4'-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸
4.1gの代わりに、上記(3−b)で得られた(±)-4-[4'
-(1-メチルヘプチルオキシ)フェニル]安息香酸4.1g
(12.6ミリモル)を用いたこと以外は、実施例1の(1
−d)と同様にして、8-アクリロイルオキシオクチル
(±)-4-(1'-メチルヘプチルオキシ)ビフェニル-4"-カ
ルボキシレート4.6g(収率72.0%)を得た。
【0114】この化合物は室温にて無色の液体であり、
HPLCで99.8%の純度を示し、そしてTLCで1スポ
ットを示した。さらに、IR測定の結果で2910cm-1〜28
40cm-1、1730cm-1、1595cm-1、1270cm-1、および1180cm
-1に吸収帯を有すること、Mass分析で508に分子イ
オンピークが認められたこと、および用いた原料との関
係から得られた物質が上記化14で表される化合物であ
ることを確認した。
【0115】<実施例4>本発明の重合性化合物を用い
た液晶表示素子を製造した。図2を参照にして、以下に
その製造方法を説明する。
【0116】まず、ガラス基板1aおよび1b上に、そ
れぞれITO電極膜2aおよび2bを作製した。これら
の電極膜2aおよび2bをフォトリソグラフィーなどの
公知の手法によりストライプ状にパターニングし、さら
にこれらの上に、それぞれSiO2絶縁膜3aおよび3
bを積層した。次いで、このSiO2絶縁層3aおよび
3b上に、ポリイミド配向膜4aおよび4bを塗布(プ
レティルト角は5°であった)し、ラビングした。次
に、一方の基板9と他方の基板10とのラビング方向が
平行となるように、配向膜4aおよび4bにスペーサー
を散布して対向させ、基板9および10の周辺部をシー
ル剤6を用いて、セル厚を1.5μmに保持して貼り合わ
せ、液晶セルを作製した。
【0117】さらに、表1に示されるように、98.5重量
%の強誘電性液晶SCE8(ヘキスト社製:この強誘電性液
晶は負の誘電異方性を示す)と、1.5重量%の重合性樹
脂材料(これは、重合性化合物として98.0重量%の8-ア
クリロイルオキシオクチル (S)-4-(1'-メチルヘプチル
オキシ)ビフェニル-4"-カルボキシレートおよび光重合
開始剤として2.0重量%のIrgacure651(チバガイギー社
製)を含有する)とでなる均一な組成物Aを、上記貼り
合わせた基板9および10間に100℃(該組成物Aが等
方相を示す温度である)で注入した。なお、上記重合性
化合物は強誘電性液晶SCE8とは異なる負の自発分極を誘
起する。
【0118】
【表1】
【0119】次いで、この液晶セルに、90℃(該組成物
Aがネマティック相を示す温度である)にて、波長356n
m、および露光強度35mW/cm2の紫外線を3分間照射した
後、2.0℃/分の速度で室温まで徐冷し、エポキシ系接
着剤(ボンドクィック5;コニシ(株)製)で封止し
た。
【0120】次いで、上記液晶セルを100℃まで再び加
熱し、1分間その温度に保持した後、2.0℃/分の速度
で室温まで徐冷して再配向させた。
【0121】上記のようにして作製した液晶表示素子を
偏光顕微鏡で観察したところ、良好なC2配向を示し、
さらに層法線に対して垂直な方向に、細かな縞状の組織
が形成されていた。また、モノパルス電圧を印加しなが
ら、この液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、
パルス波高値の増加または減少に従って、縞状のスイッ
チング領域が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サ
イズよりも充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画
素中のスイッチング領域が変化する様子がわかり、良好
な色調表示が可能であることがわかった。
【0122】次いで、上記液晶表示素子に、パルス波高
値Vとパルス幅τの異なるパルス電圧を印加し、双安定
スイッチングする最少パルス幅(応答速度に対応する)
についてのτ−V測定を行った。この結果を、図5にお
いて電圧−パルス幅曲線として示す。図5は、本実施例
で製造された液晶表示素子において、電圧−パルス幅曲
線が極小値(τ−Vmin)を有し、双安定スイッチング
が良好であることを示す。
【0123】さらに、上記液晶表示素子の入力のモノパ
ルス電圧に対する出力の透過光強度を測定した。図6
に、使用したモノパルス電圧の入力波形(図6の
(a))と、透過光強度を示す測定電圧の出力波形(図
6の(b))とを示す。入力のパルス幅は80μsecで一
定とし、パルス波高値を変化させた。測定値は透過光強
度であり、検出のオシロスコープをACカップリングに
し、パルス電圧を印加して一定時間経過した時の値を読
みとることにより、片安定およびオーバーシュートの影
響を除去した。この測定結果を図7に示す。このような
パルス波高値に対する透過光強度の変化を測定すること
により、実際のスイッチング面積の変化が示され、立ち
上がりがやや緩やかになっていることから、本実施例で
製造された液晶表示素子が良好な階調表示を有すること
がわかる。
【0124】<実施例5>実施例4の組成物Aの代わり
に、表1に示される98.5重量%の強誘電性液晶SCE8(ヘ
キスト社製;この強誘電性液晶材料は負の誘電異方性を
示す)と、1.5重量%の重合性樹脂材料(これは、重合
性化合物として98.0重量%の8-アクリロイルオキシオク
チル (R)-4-(1'-メチルヘプチルオキシ)ビフェニル-
4"-カルボキシレートおよび光重合開始剤として2.0重量
%のIrgacure651(チバガイギー社製)を含有する)で
なる均一な組成物Bを用いたこと以外は、実施例4と同
様にして液晶表示素子を製造した。なお、上記重合性化
合物は強誘電性液晶SCE8と同様の正の自発分極を有す
る。
【0125】上記のようにして作製した液晶表示素子を
偏光顕微鏡で観察したところ、良好なC2配向を示し、
層法線に対して垂直な方向に細かな縞状の組織が形成さ
れていた。また、モノパルス電圧を印加しながら、この
液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、パルス波
高値の増加または減少に従って、縞状のスイッチング領
域が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サイズより
も充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画素中のス
イッチング領域が変化する様子がわかり、良好な色調表
示が可能であることがわかった。さらに、実施例4と同
様にしてτ−V測定を行った。その結果を図5に示す。
図5は、本実施例で製造された液晶表示素子が、電圧−
パルス幅曲線において極小値(τ−Vmin)を有し、双
安定スイッチングが良好であることを示す。
【0126】<実施例6>実施例4の組成物Aの代わり
に、表lに示される98.5重量%の強誘電性液晶SCE8(ヘ
キスト社製;この強誘電性液晶材料は負の誘電異方性を
示す)と、1.5重量%の重合性樹脂材料(これは、重合
性化合物として98.0重量%の8-アクリロイルオキシオク
チル (±)-4-(1'-メチルヘプチルオキシ)ビフェニル-
4"-カルボキシレートおよび光重合開始剤として2.0重量
%のIrgacure651(チバガイギー社製)を含有する)と
でなる均一な組成物Cを用いたこと以外は、実施例4と
同様に操作して液晶セルを作製した。
【0127】上記のようにして作製した液晶表示素子を
偏光顕微鏡で観察したところ、良好なC2配向を示し、
層法線に対して垂直な方向に細かな縞状の組織が形成さ
れていた。また、モノパルス電圧を印加しながら、この
液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、パルス波
高値の増加または減少に従って、縞状のスイッチング領
域が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サイズより
も充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画素中のス
イッチング領域が変化する様子がわかり、良好な色調表
示が可能であることがわかった。さらに、実施例4と同
様にしてτ−V測定を行った。その結果を図5に示す。
図5は、本実施例で製造された液晶表示素子において、
電圧−パルス幅曲線が極小値(τ−Vmin)を有し、双
安定スイッチングが良好であることを示す。
【0128】<実施例7>まず、重合性化合物として9
8.0重量%の8-アクリロイルオキシオクチル (S)-4-(1'
-メチルヘプチルオキシ)ビフェニル-4"-カルボキシレ
ートと、光重合開始剤として2.0重量%のIrgacure651
(チバガイキー社製)とを含有する重合性樹脂材料に、
100℃にて波長356nmおよび露光強度35mW/cm2の紫外線を
3分間照射して、これを重合し、高分子物質を形成し
た。次いで、この高分子物質1.5重量%と、98.5重量%
の強誘電性液晶SCE8(ヘキスト社製;この強誘電性液晶
材料は負の誘電異方性を示す)とでなる液晶組成物を調
製し、これを実施例4と同様にして、作製した液晶セル
の貼り合わせた基板9および10間に、100℃(該液晶
組成物が等方相を示す温度である)で注入し、2.0℃/
分の速度で室温まで徐冷し、エポキシ系接着剤(ボンド
クィック5;コニシ(株)製)で封止した。なお、上記
重合性化合物は強誘電性液晶SCE8とは異なる負の自発分
極を誘起する。
【0129】上記のようにして作製された液晶表示素子
を偏光顕微鏡で観察したところ、良好なC2配向を示
し、層法線に対して垂直な方向に細かな縞状の組織が形
成されていた。また、モノパルス電圧を印加しながら、
この液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、パル
ス波高値の増加または減少に従って、縞状のスイッチン
グ領域が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サイズ
よりも充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画素中
のスイッチング領域が変化する様子がわかり、良好な色
調表示が可能であることがわかった。
【0130】次いで、実施例4と同様にして、この液晶
表示素子についてのτ−V測定を行った。この結果を図
8に示す。図8は、本実施例で製造された液晶表示素子
において、電圧−パルス幅曲線が極小値(τ−Vmin)
を有し、双安定スイッチングが良好であることを示す。
【0131】さらに、上記液晶表示素子を用い、実施例
4と同様にして、入力のモノパルスの電圧に対する出力
の透過光強度を測定した。この測定結果を図7に示す。
このようなパルス波高値に対する透過光強度の変化を測
定することにより、実際のスイッチング面積の変化が示
される。図7によれば、本実施例で得られたパルス波高
値−スイッチング面積曲線は、立ち上がりおよび立ち上
がりの角度がかなり緩やかになっていることから、本実
施例で製造された液晶表示素子が良好な階調表示を有す
ることがわかる。
【0132】<実施例8>実施例7と同様にして作製し
た液晶表示素子を、100℃まで再び加熱し、1分間その
温度に保持した後、2.0℃/分の速度で室温まで冷却し
て再配向させた。
【0133】この再配向した液晶表示素子を偏光顕微鏡
で観察したところ、良好なC2配向を示し、さらに層法
線に対して垂直な方向に、細かな縞状の組織が形成され
ていた。また、モノパルス電圧を印加しながら、この液
晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、パルス波高
値の増加または減少に従って、縞状のスイッチング領域
が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サイズよりも
充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画素中のスイ
ッチング領域が変化する様子がわかり、良好な色調表示
が可能であることがわかった。
【0134】次いで、実施例4と同様にして、この液晶
表示素子についてのτ−V測定を行った。この結果を図
9に示す。図9は、本実施例で作製された液晶表示素子
において、電圧−パルス幅曲線が極小値を有し、双安定
スイッチングが良好であることを示す。
【0135】<実施例9>実施例7で用いた重合性樹脂
材料の代わりに、重合性化合物として98.0重量%の8-ア
クリロイルオキシオクチル (R)-4-(1'-メチルへプチル
オキシ)ビフェニル-4"-カルボキシレートと、光重合開
始剤として2.0重量%のIrgacure651(チバガイギー社
製)とを含有する重合性樹脂材料を用いたこと以外は、
実施例7と同様にして液晶表示素子を作製した。なお、
上記重合性化合物は強誘電性液晶SCE8と同様の正の自発
分極を誘起する。
【0136】上記のようにして作製された液晶表示素子
を偏光顕微鏡で観察したところ、良好なC2配向を示
し、層法線に対して垂直な方向に、細かな縞状の組織が
形成されていた。また、モノパルス電圧を印加しなが
ら、この液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、
パルス波高値の増加または減少に従って、縞状のスイッ
チング領域が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サ
イズよりも充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画
素中のスイッチング領域が変化する様子がわかり、良好
な色調表示が可能であることがわかった。さらに、実施
例4と同様にしてτ−V測定を行った。その結果を図8
に示す。図8は、本実施例で製造された液晶表示素子に
おいて、電圧−パルス幅曲線が極小値(τ−Vmin)を
有し、双安定スイッチングが良好であることを示す。
【0137】<実施例10>実施例9と同様にして作製
した液晶表示素子を、100℃まで再び加熱し、1分間そ
の温度に保持した後、2.0℃/分の速度で室温まで冷却
して再配向させた。
【0138】この再配向した液晶表示素子を偏光顕微鏡
で観察したところ、良好なC2配向を示し、さらに層法
線に対して垂直な方向に、細かな縞状の組織が形成され
ていた。また、モノパルス電圧を印加しながら、この液
晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、パルス波高
値の増加または減少に従って、縞状のスイッチング領域
が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サイズよりも
充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画素中のスイ
ッチング領域が変化する様子がわかり、良好な色調表示
が可能であることがわかった。
【0139】次いで、実施例4と同様にして、この液晶
表示素子についてのτ−V測定を行った。この結果を図
9に示す。図9は、本実施例で作製された液晶表示素子
において、電圧−パルス幅曲線が極小値を有し、双安定
スイッチングが良好であることを示す。
【0140】<実施例11>実施例7で用いた重合性樹
脂材料の代わりに、重合性化合物として98.0重量%の8-
アクリロイルオキシオクチル (±)-4-(1'-メチルへプ
チルオキシ)ビフェニル-4"-カルボキシレートと、光重
合開始剤として2.0重量%のIrgacure651(チバガイギー
社製)とを含有する重合性樹脂材料を用いたこと以外
は、実施例7と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0141】上記のようにして作製された液晶表示素子
を偏光顕微鏡で観察したところ、良好なC2配向を示
し、層法線に対して垂直な方向に、細かな縞状の組織が
形成されていた。また、モノパルス電圧を印加しなが
ら、この液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、
パルス波高値の増加または減少に従って、縞状のスイッ
チング領域が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サ
イズよりも充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画
素中のスイッチング領域が変化する様子がわかり、良好
な色調表示が可能であることがわかった。さらに、実施
例4と同様にしてτ−V測定を行った。その結果を図8
に示す。図8は、本実施例で製造された液晶表示素子に
おいて、電圧−パルス幅曲線が極小値(τ−Vmin)を
有し、双安定スイッチングが良好であることを示す。
【0142】<実施例12>実施例11と同様にして作
製した液晶表示素子を、100℃まで再び加熱し、1分間
その温度に保持した後、2.0℃/分の速度で室温まで冷
却して再配向させた。
【0143】この再配向した液晶表示素子を偏光顕微鏡
で観察したところ、良好なC2配向を示し、さらに層法
線に対して垂直な方向に、細かな縞状の組織が形成され
ていた。また、モノパルス電圧を印加しながら、この液
晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、パルス波高
値の増加または減少に従って、縞状のスイッチング領域
が層法線と垂直に出現し、その間隔が画素サイズよりも
充分小さく、さらにパルス波高値に応じて画素中のスイ
ッチング領域が変化する様子がわかり、良好な色調表示
が可能であることがわかった。
【0144】次いで、実施例4と同様にして、この液晶
表示素子についてのτ−V測定を行った。この結果を図
9に示す。図9は、本実施例で作製された液晶表示素子
において、電圧−パルス幅曲線が極小値を有し、双安定
スイッチングが良好であることを示す。
【0145】<比較例1>実施例4で作製した液晶セル
の基板9および10間に強誘電性液晶SCE8(ヘキスト社
製)を100℃(この強誘電性液晶が等方相を示す温度で
ある)にて注入し、2.0℃/分の速度で室温まで徐冷
し、エポキシ系接着剤(ボンドクィック5;コニシ
(株)製)で封止し、液晶表示素子を得た。ここで、使
用した強誘電性液晶SCE8の相系列は以下の通りであり、
自発分極の符号は正である: I相(98℃)N*相(78℃)SmA相(58℃)SmC
*相。 この液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したところ、良好
なC2配向を示していた。また、モノパルス電圧を印加
しながら、この液晶表示素子を偏光顕微鏡で観察したと
ころ、パルス波高値に応じて画素中のスイッチング領域
がランダムに変化する様子がわかり、ドメインの制御が
できず、階調表示ができていないことがわかった。
【0146】次いで、実施例4と同様にして、この液晶
表示素子についてのτ−V測定を行った。この結果を図
8に示す。図8は、本比較例の液晶表示素子が、電圧−
パルス幅曲線において極小値を示し、そして双安定スィ
ッチングが良好であることを示す。
【0147】さらに、この液晶表示素子を用いて、実施
例4と同様にして入力のモノパルス電圧に対する出力の
透過光強度を測定した。この測定結果を図7に示す。こ
のようなパルス波高値に対する透過光強度の変化を測定
することにより、本比較例の液晶表示素子においては、
実際のスイッチング面積の変化が急峻であり、良好な階
調が得られていないことがわかる。
【0148】以上のように、本発明においては、重合性
組成物を強誘電性液晶SCE8に添加しても、液晶分子の配
向を損なうことなく、良好なC2配向を維持したまま、
階調表示が可能となる。同様の結果は、再配向を行った
後においても得られている。
【0149】図5から、実施例4で得られる電圧−パル
ス幅曲線が、比較例1の曲線に比べて左上にシフトして
おり、そして実施例5で得られる電圧−パルス幅曲線
が、比較例1の曲線に比べて右下にシフトしていること
がわかる。ここで、実施例4では、強誘電性液晶SCE8と
は異なる負の自発分極を誘起する重合性化合物が使用さ
れており、そして実施例5では、強誘電性液晶SCE8と同
様の正の自発分極を誘起する重合性化合物が使用されて
いる。これらのシフトは、ベースとなる液晶の応答速度
またはτ−V特性に応じて、用いる重合性化合物の自発
分極の符号(すなわち、キラリティー)を選択すること
により、所望の応答速度およびVminが得られ得ること
を示す。つまり、ベースとなる液晶と反対の自発分極を
示す重合性化合物を用いれば、低電圧化する(Vminを
低下させる)ことが可能である。また、ラセミ体を用い
ると、Vminの位置を変えることなく応答速度を若干遅
くすることが可能である。これは、ラセミ体自体は自発
分極を誘起しないので、Vminの位置を変えることはな
いが、若干粘性を増加させるので、応答速度が若干遅く
なるためである。
【0150】図5および図8から、本発明の重合性化合
物を重合する前に液晶に添加する場合と、重合後に添加
する場合との効果の差異がわかる。つまり、強誘電性液
晶SCE8単独の場合と比較して、重合性化合物を重合させ
る前に液晶に添加すると、τ−V曲線が大きく変化する
が、重合させた後に添加するとその変化は小さくなる。
これは、後者で添加されるのが重合性化合物を重合した
高分子物質であるのに対し、前者で添加されるのが重合
性化合物自体だからである。すなわち、前者は、添加後
の重合工程が液晶と重合性化合物とが混在した状態で行
われるために、生成される高分子物質の重合度が低く、
ある程度の重合度分布を有する重合度の異なる数種類の
高分子物質が混在した状態にあると考えられ、このた
め、再配向して高分子物質を凝集させても未反応の重合
性化合物または重合度の低い高分子物質が液晶中に溶け
込むなどして液晶に及ぼす影響が後者よりも大きくなる
場合があると考えられる。
【0151】図8および図9から、再配向の効果、つま
り再配向によって、上記強誘電性液晶SCE8の特性により
近づいていることがわかる。これは、再配向によって、
つまり一旦等方相にした後、冷却することによって、相
溶性に差が生じて液晶と高分子物質とが相分離し、高分
子物質が凝集するので、高分子物質の液晶への影響が小
さくなったためである。
【0152】図7より、ベースとなる強誘電性液晶SCE8
を用いた場合に比べて、実施例4で作製した液晶表示素
子は、低電位側または高電位側の電圧−パルス幅曲線の
立ち上がりおよび立ち下がりが緩やかであり、実施例7
で作製したものは、それが全体的にかなり緩やかになっ
ていることがわかる。これは、本発明において作製され
た液晶表示素子が良好な中間階調表示を可能にすること
を示すだけでなく、セル厚の不均一さおよび温度変化に
伴うτ−V特性の変化にも非常に有効であることを示
す。
【0153】
【発明の効果】本発明によれば、液晶表示素子の階調表
示を可能にするための、液晶と共に液晶セル内に混入さ
れる重合性化合物が提供される。本発明の重合性化合物
を用いて製造した液晶表示素子は、ドメインサイズを画
素サイズよりもかなり小さくし、かつドメインを広範囲
にわたって均一に分散させることによりドメインの広範
囲にわたる制御が可能ある。さらに、本発明において
は、該重合性化合物の光照射による重合が液晶セル内へ
の注入前に行われてもよいので、光に弱い液晶も該液晶
表示素子の製造時に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】強誘電性液晶の動作原理を示すスイッチング模
式図である。
【図2】強誘電性液晶表示素子の断面の構造を示す概略
図である。
【図3】強誘電性液晶表示素子内の液晶の層構造を示す
概略図であって、(a)はブックシェルフ層構造を示
し、そして(b)はシェブロン層構造を示す。
【図4】液晶分子の配向状態を示す概略図であって、
(a)はC1U(C1−ユニフォーム)配向を示し、そ
して(b)はC2U(C2−ユニフォーム)配向を示
す。
【図5】本発明の実施例4、5、および6、ならびに比
較例1で製造した液晶表示素子の電圧−パルス幅曲線で
ある。
【図6】本発明の実施例4および7、ならびに比較例1
で製造した液晶表示素子において、入力のモノパルス電
圧に対する出力の透過光強度を測定する際に使用したモ
ノパルス電圧の入力波形(a)と、透過光強度を示す測
定電圧の出力波形(b)とを示す。
【図7】本発明の実施例4および7、ならびに比較例1
で製造した液晶表示素子のパルス波高値−スイッチング
面積曲線である。
【図8】本発明の実施例7、9、および11、ならびに
比較例1で製造した液晶表示素子の電圧−パルス幅曲線
である。
【図9】本発明の実施例8、10、および12、ならび
に比較例1で製造した液晶表示素子の電圧−パルス幅曲
線である。
【符号の説明】
1a、1b ガラス基板 2a、2b 電極膜 3a、3b 絶縁膜 4a、4b 配向膜 6 シール部材 7 液晶材料 9、10 基板 12a、12b 偏光板
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年10月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】本発明の実施例4および7、ならびに比較例1
で製造した液晶表示素子において、入力のモノパルス電
圧に対する出力の透過光強度を測定する際に使用したモ
ノパルス電圧の入力波形と、透過光強度を示す測定電圧
の出力波形とを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G02F 1/141 G02F 1/137 510 (72)発明者 酒匂 禎裕 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 向殿 充浩 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 土屋 和彦 埼玉県草加市稲荷1丁目7番1号 関東化 学株式会社中央研究所内 (72)発明者 鈴木 賢治 埼玉県草加市稲荷1丁目7番1号 関東化 学株式会社中央研究所内

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I)で表される重合性化合
    物: 【化1】 ここで、mは2〜10の整数であり、nは2〜12の整数で
    あり、そしてC*は不斉炭素原子を表す。
  2. 【請求項2】 少なくとも1種の請求項1に記載の重合
    性化合物を含む重合性樹脂材料と、液晶とを含有する、
    重合性組成物。
  3. 【請求項3】 前記重合性樹脂材料を0.1重量%から5
    重量%含有する、請求項2に記載の重合性組成物。
  4. 【請求項4】 前記液晶が強誘電性液晶である、請求項
    2に記載の重合性組成物。
  5. 【請求項5】 高分子物質と液晶とを含有する液晶組成
    物であって、該高分子物質が、重合した少なくとも1種
    の請求項1に記載の重合性化合物を含有する、液晶組成
    物。
  6. 【請求項6】 少なくとも電極膜を有し、かつ少なくと
    も一方が透明な一対の基板間に高分子物質と液晶とを挟
    持してなる液晶表示素子であって、該高分子物質が、少
    なくとも1種の請求項1に記載の重合性化合物から形成
    されている、液晶表示素子。
  7. 【請求項7】 前記液晶が強誘電性液晶である、請求項
    6に記載の液晶表示素子。
  8. 【請求項8】 前記基板と前記強誘電性液晶との界面に
    おける強誘電性液晶分子のプレティルトの方向が等し
    く、該強誘電性液晶がシェブロン層構造を有し、そして
    該界面における強誘電性液晶分子のプレティルトの方向
    と該シェブロン層構造の折れ曲がりの方向とが等しい、
    請求項7に記載の液晶表示素子。
  9. 【請求項9】 前記強誘電性液晶が負の誘電異方性を有
    し、そして電圧−パルス幅曲線において極小値を有す
    る、請求項7または8に記載の液晶表示素子。
  10. 【請求項10】 前記基板が、有機高分子でなる配向膜
    を有し、そしてプレティルト角を有する、請求項6に記
    載の液晶表示素子。
  11. 【請求項11】 少なくとも電極膜を有し、かつ少なく
    とも一方が透明な一対の基板間に重合性組成物を挟持し
    てなる液晶表示素子の製造方法であって、以下の工程:
    一方の該基板と他方の該基板とを一定の間隔を保って貼
    り合わせる工程;該基板間に該重合性組成物を配する工
    程;および該基板に光照射を行って、該重合性組成物を
    重合させる工程;を包含し、ここで、該重合性組成物
    は、少なくとも1種の請求項1に記載の重合性化合物を
    含む重合性樹脂材料と液晶とを含有する、製造方法。
  12. 【請求項12】 前記基板に光照射を行う工程で設定さ
    れる温度が、前記重合性組成物の等方性を示す温度であ
    る、請求項11に記載の液晶表示素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記基板に光照射を行う工程後、前記
    重合性組成物を冷却する工程を包含する、請求項11ま
    たは12に記載の液晶表示素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 さらに、前記重合性組成物が等方性を
    示す温度まで加熱した後、冷却する工程を包含する、請
    求項11から13のいずれかに記載の液晶表示素子の製
    造方法。
  15. 【請求項15】 前記液晶が強誘電性液晶である、請求
    項11に記載の液晶表示素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記基板が、有機高分子でなる配向膜
    を有し、そしてプレティルト角を有する、請求項11に
    記載の液晶表示素子の製造方法。
  17. 【請求項17】 少なくとも電極膜を有し、かつ少なく
    とも一方が透明な一対の基板間に液晶組成物を挟持して
    なる液晶表示素子の製造方法であって、以下の工程:一
    方の該基板と他方の該基板とを一定の間隔を保って貼り
    合わせる工程;および該基板間に、液晶組成物を配する
    工程;を包含し、ここで、該液晶組成物は、少なくとも
    1種の請求項1に記載の重合性化合物を含有する光照射
    により重合した高分子物質と液晶とを含有する、製造方
    法。
  18. 【請求項18】 さらに、前記液晶組成物が等方性を示
    す温度まで加熱した後、冷却する工程を包含する、請求
    項17に記載の液晶表示素子の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記液晶が強誘電性液晶である、請求
    項17に記載の液晶表示素子の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記基板が、有機高分子でなる配向膜
    を有し、そしてプレティルト角を有する、請求項17に
    記載の液晶表示素子の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002012580A (ja) * 2000-04-28 2002-01-15 Seimi Chem Co Ltd 光学活性化合物、その製造方法、それを含有する液晶組成物および液晶素子

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JP2002012580A (ja) * 2000-04-28 2002-01-15 Seimi Chem Co Ltd 光学活性化合物、その製造方法、それを含有する液晶組成物および液晶素子

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