【発明の詳細な説明】
蓄電池または電池の急速充電を行う方法およびその装置
本発明は蓄電池または電池の急速充電法並びにその装置に関する。特に本発明
は電池または蓄電池を強い充電電流で充電を行うことに関し何ら特定の構造を必
要としないで、出来るだけ強い充電電流を使用して電池または蓄電池を充電する
方法に関する。さらに詳細には、本発明は強い充電電流を用いて充電を行う際、
蓄電池または電池の充電の程度を決定し、この決定に基づいて例えばいわゆる細
流充電を行うために急速充電を停止させるようにする方法に関する。本明細書に
おいて蓄電池または電池という言葉は、電気化学的方法により電荷を貯蔵し得る
任意の型の要素、例えばNiCdまたはNiMH電池であると定義されるが、通
常送電に用いられるような電力輸送用の大型蓄電池をも包含するものとする。以
下の説明において、蓄電池という言葉が使用されるが、これは電池の意味でも使
用されることは明らかであろう。
蓄電池を再充電する場合、例えば蓄電池の内部における熱の発生または圧力の
増加のために損傷する危険がある。このような危険は充電電流が大きくなると増
大する。或る期間内で完全にまたは実質的に完全に充電された蓄電池に対し、強
電流を用いて充電を続けるのは特に有害である。他方、強電流を用いた過充電に
対し総称をあまり受けない特殊な蓄電池を用いこの問題を解決しようとすること
も試みられて来たが、このような方法には非常にコストがかかる。また一方では
、通常の廉価な蓄電池に対しては弱い許容充電電流が規定されているが、その結
果として
充電時間を例えば1時間以内に制限することは出来なくなる。他方、充電電流を
出来るだけ大きくした場合、即ち充電時間を出来るだけ短縮した場合に起きる蓄
電池の損傷の危険を出来るだけ抑制するための種々の充電方法が開発されて来た
。1989年12月7日のEDN、180〜186頁に記載された論文、「急速
充電電池、携帯用の装置に役立てるための調節回路をもった装置系」にはこの点
に関する総説が述べられている。実際には主としていわゆるΔU法が使用されて
いる。この目的に対しては、充電中において蓄電池の電圧を監視する。蓄電池が
完全に充電された最高の値に達するためには徐々に電圧は増加するが、その後充
電を継続すると電圧は低下する。ドイツ特許A−3 334 851号において
は、時系列における種々の時点において充電電流を短時間遮断することにより、
強電流を用いる急速充電を終わらせる時点を決定する方法および装置が記載され
ている。この方法はパルス充電法として知られており、該時系列における或る時
点において蓄電池の電圧を測定し、しかる後二つの測定値の比較し、後で測定し
た蓄電池の電圧が最初に測定した値より低くなるか、または蓄電池の電圧の二つ
の測定値の差が予め決定された電圧差の閾値よりも低く成った場合、出来るだけ
速やかに強電流の切り換えを行う方法である。ヨーロッパ特許明細書0 522
691号にも、ΔU法に基づいた方法が記載されており、その前書きにおいて
(特に1〜4欄において)電気化学的な蓄電池を充電する際考慮しなければなら
ない問題のさらに詳細な説明がなされている。
従って、可能な最短の時間で蓄電池を完全に充電し、他方過充電による蓄電池
の損傷の危険を起こさせずに使用寿命を出来るだけ長くする、即ち実際上蓄電池
を再充電し得る回数を多くする信頼すべき方法が既に
長い間に亙って望まれて来た。しかし現在までこれらの方法は上記の願望を適切
に充たすものではないことが判っている。
本発明においては、従来法に比べ、任意の型の蓄電池、特に通常の使用寿命に
関し標準型の蓄電池を、出来るだけ短時間で、即ち出来るだけ強い充電電流を用
い、且つ損傷の危険を伴わないで充電しようとする要望を出来るだけ充たし得る
方法および装置が提供される。
添付特許請求の範囲の請求項1に従えば、本発明においてはこの目的のために
、いわゆる移動分割点法(shifting segment method)
を使用し、充電電流、またはその電圧表現、或いは蓄電池の電圧の変化に基づき
、蓄電池が完全にまたは実質的に完全に充電された時点を決定し、その時点にお
いてかけられた比較的強い一定のまたはパルス化された電流を流すのを止め、例
えば細流充電に切り換えるか、または比較的低い充電電流で充電を続けるように
する方法が提案される。この点に関し充電電流の「電圧表現」という言葉は、例
えば充電電流の大きさが蓄電池と直列に配置された短絡抵抗の両端における電圧
を測定することにより決定されることを示している。しかしこの方法が充電電流
を決定し得る唯一の方法ではない。例えばいわゆるホール効果に基づいた非接触
型の電流測定法も可能である。
本発明においては驚くべきことに、蓄電池が完全に充電された時点を特に正確
に且つ高信頼性をもって決定することができることが見出された。特にこの場合
本発明方法の信頼性は重要である。何故なら蓄電池は平均して数十回ないし数百
回、或いは数千回以上も再充電され、従ってどの蓄電池に対しても正しい時点に
おいて直ちに比較的強い電流を除去しなければならないからである。正確さおよ
び信頼性のために、本発明
においては比較的強い一定のまたはパルス化された電流を出来るだけ長く保つこ
とができ、従って最高の程度の充電を得るためその後低充電電流を用いて行う充
電が不必要になるか、または極めて短時間しか必要とせず、その結果充電工程の
期間をさらに短縮することができる。
本発明に従えば、少なくとも3Cの一定のまたはパルス化された充電電流を用
いる。このことはいわゆるペン・ライト型の蓄電池を約10〜20分以内で充電
できることを意味する。この充電電流はまた、かなり弱い充電電流に対してだけ
しか製造業者による保証がなく、その結果充電時間が少なくとも2〜3時間、通
常は約14時間であるいわゆるアルカリ型の蓄電池、例えばNiCd電池にも使
用できる。
本発明方法はパルス化されたまたは一定の充電電流を用いて充電する両方の場
合に適している。パルス化された電流を用いて充電する方法自身は公知である。
この点に関して蓄電池の電圧は充電電流のパルスが存在しない時点で測定される
。パルス化された充電電流を用いる適切な充電法を選ぶことにより蓄電池の使用
寿命を最適化しようとする試みに関しては種々の試行が行われて来た。この点に
関しては、ITE/JEC Press Inc.およびIBA Inc.発行
、Progress in Batteries & Battery Mat
erials誌第12巻(1993年)88〜93頁記載のH.Min、S.B
ang、Y.KimおよびH.Kangの論文「再生の際の急速充電Ni/Cd
電池におけるニッケル電極の老化」を参照されたい。
しかし本発明においては驚くべきことに、実質的に一定の充電電流を用いて充
電を行うと、充電にパルス化された充電電流を使用した場合に比べ、蓄電池の使
用寿命回数、即ち合理的に蓄電池を充電できる回数が
(著しく)増加することが見出された。これは本発明方法による移動分割点法に
より蓄電池が完全に充填された時点を決定する特殊な方法と一定充電電流を用い
る方法が組み合わされた結果であると推定される。
ヨーロッパ特許明細書0 522 691号には、一定充電電流を用いるが特
に強い電流は用いない充電法が示唆されているが、この提案された方法を用いた
場合、充電時間が著しく短縮される程度、並びに使用寿命回数の維持または改善
の程度については記載されていない。
さらに本発明に従えば、好適具体化例においては、蓄電池の充電電流または充
電電圧の変化と共に蓄電池の温度の変化を監視し、例えば充電電流または充電電
圧によって追跡できない環境による蓄電池の損傷を防ぐことができる。充電電流
の切り換えを行う基準として充電電圧の変化と蓄電池の温度とを組み合わせて使
用すること自身は公知であり、例えばELECTRONICS WORLD +
WIRELESS WORLD誌、1990年6月号532〜534頁記載の
論文「超急速NiCd充電器」を参照されたい。
さらに、蓄電池が予め定められた許容残留電荷量よりも高い残留電荷量ををも
っている場合、本発明による充電を行う前に、通常の方法で蓄電池を放電させる
ことができる。この方法でいわゆる記憶効果の発生を防ぐことができる。
唯一の添付図面はN個の電池を同時に充電するための超急速充電器の模式図で
ある。各蓄電池5に対し充電および放電回路2、3、Nが示されている。該回路
2、3、Nはコントロール装置4の種々の入力および出力端に連結されている。
ダイオード6、抵抗7、温度センサー8、A/D変換器9、コントロール装置4
を始動させるスイッチ10、および
一定充電電流を与える電源11が各回路に備えられている。スイッチ10の所で
連続線は放電中のスイッチ10の位置を示し、破線は充電中のスイッチ10の位
置を示す。電池5はそれ自身は公知の容易に取り外し得る方法で回路2、3、N
の中に挿入されている。時系列の各時点においてA/D変換器9により蓄電池5
の電池の電圧を測定し、下記の式に基づいて強充電電流を切り換える時点を決定
し得るようにコントロール装置4をどのようにプログラムしたら良いかは当業界
の専門家にとっては明らかである。
ここでVmはN個の分割時点(ポイント・セグメント:point segme
nt)に対する測定された電池の電圧であり、予め定められた閾値よりもRが低
下したら直ぐに切り換えが行われる。個の配置を用いると、強充電電流が遮断さ
れた後電源11によってかなり弱い電流、例えば0.1Cの電流が流し続けられ
るか、またはいわゆる細流充電へと切り換えを行うことができる。さらに超急速
充電器1を一定の電圧を用いる充電に適応させる方法は当業界の専門家には明ら
かであろう。一定電圧を用いる充電(いわゆるCV充電)によれば、或る与えら
れた充電電圧における充電電流は蓄電池によって決定される。従って充電電流は
過充電を起こすこのない許容される最大充電電流に等しい。一定電圧を用いて蓄
電池の充電を行う際、充電電流に対しては下降する曲線が測定される。しかし蓄
電池が完全に充電されると直ぐに、充電電流の低下は上昇へと変化する。本発明
に従えば、一定電圧を用いて充電を行う際の充電電流に対する下降部分と上昇部
分との間の移り変わりは移動分割点
法によって決定され、従って急速充電を止めるべき時点が決定される。一定電圧
を用いて充電を行う場合、充電電流を可能な最大値に制限するように随時選択を
行うことができる。この方法によれば、特に高い(高すぎる)初期充電電流が防
止され、一方充電電流を最大値に制限しても時間の関数としての通常の充電電流
の下降曲線には何の影響もなく、最終的には充電電流は上昇曲線へと転移する。
下記6個の実施例により本発明をさらに詳細に例示する。
実施例 1
容量が600mA時で通常の急速充電時間が4時間以上のAAサイズのニッケ
ル−カドミウム蓄電池を、充電電流3.0Aに対応する一定充電電流5Cを用い
て充電した。充電時間は12分であった。充電容量は600mA時であり、1.
2Aに対応する2Cで放電を行って際の測定した放電容量は530mA時であっ
た。従って充電効率、即ち放電容量対充電容量の比は88%である。充電中ニッ
ケル−カドミウム蓄電池の外壁で測定した最高温度は31℃に達した。従って4
0℃に設定されていた温度に対する安全遮断装置は始動しなかった。
実施例 2
容量が600mA時で通常の急速充電時間が4時間以上のAAサイズのニッケ
ル−カドミウム蓄電池に対し使用寿命回数試験を行った。この試験では、1回毎
に一定充電電流2.4Aに対応する4Cで充電を行い、放電電流1.2Aに対応
する2Cで放電を行った。この試験によれば、466回後、放電容量は602.
3mA時から594.7mA時に低下した。これは1.3%の容量低下に相当す
る。従って放電容量がもとの容量の80%になる回数として定義される使用寿命
回数は、C/10ま
たはそれ以下の低いパルス電流を用いて通常の充電法を行った場合よりも大きか
った。
実施例 3
容量が600mA時で通常の急速充電時間が4時間以上のAAサイズのニッケ
ル−カドミウム蓄電池に対し使用寿命回数試験を行った。この試験では、1回毎
に一定充電電流3.0Aに対応する5Cで充電を行い、放電電流1.2Aに対応
する2Cで放電を行った(放電電圧が0.5Vになるまで(100%の放電が行
われるまで))。充電中蓄電池の外壁で測定した最高温度は温度に対する安全遮
断装置の設定温度40℃を越えることはなかった。この試験によれば、1037
回後、放電容量は540mA時から432mA時に低下した。従って使用寿命回
数はC/10以下で充電を行った場合と同等である。
実施例 4
容量が600mA時で通常の急速充電時間が4時間以上のAAサイズのニッケ
ル−カドミウム蓄電池に対し使用寿命回数試験を行った。この試験では、1回毎
にパルス充電電流2.4Aに対応する4Cで充電を行い(充電パルス持続時間1
.4秒の後で充電電流が存在しない時間0.088秒が続く繰り返し)、放電電
流1.2Aに対応する2Cで放電を行った。
この試験によれば、399回後に放電容量は590mA時から546mA時に
低下することが示された。従って1回当たりの低下率(平均)は0.02%であ
り、これは実施例2の場合の放電容量の低下率0.003%よりかなり大きい。
実施例 5
通常の容量が600mA時で通常の充電時間が16時間のAAサイズの充電可
能なNiCd電池を、製造業者の指示に従って最初充電し、通常の方法で3回1
6時間放電した後、一定電圧1.85Vで充電(CV充電)する。初期値約9.
5A(これは16Cで充電することに相当)で開始された充電電流は低下し、6
分後に最低値に達した後上昇した。充電時間5分間に亙って充電電流を積分し、
充電容量として630mA時を得た。放電容量は560mA時であり、従って放
電効率(放電容量対充電容量の比)は88.9%であった。
実施例 6
通常の容量が600mA時で通常の充電時間が16時間のAAサイズの充電可
能なNiCd電池を、製造業者の指示に従って最初充電し、通常の方法で3回1
6時間放電した後、一定電圧1.70Vで充電(CV充電)する。初期値約7A
(これは12Cで充電することに相当)で開始された充電電流は低下し、6分後
に最低値に達した後上昇した。充電時間5分間に亙って充電電流を積分し、充電
容量として600mA時を得た。放電容量は560mA時であり、従って放電効
率は96.7%であった。
実施例5および6の方法で充電を行った使用寿命回数の実験によれば、14〜
16時間に亙り通常の方法で充電を行った場合に比べ、使用寿命回数の低下は認
められなかった。
従って実施例5および6によれば、本発明によるCV充電の場合、急速充電を
適応できない蓄電池に対しても5〜6分の非常に短い充電時間が得られ、しかも
蓄電池の使用寿命に悪影響を及ぼすことはない。
本発明方法によれば電池は僅かしか加熱されない。従って温度は熱的
安全遮断装置の設定温度(45℃)よりも十分に低い値に留まっている。
高い充電効率と、極めて短い充電時間および低い発熱量とが組み合わされ、本
発明のCV充電法を驚異的なものにしている。
実施例1〜4において、電圧の上昇Rは常に等しい時間間隔で逐次的に測定さ
れた7個の蓄電池の電圧から計算された。移動分割点法を使用すれば、電圧の上
昇は次式で計算することができる。
R=−3V1−2V2−V3+V5+2V6+3V7
実施例5および6に対しては、それぞれの場合電流の低下Rは等しい時間間隔
で逐次的に測定された7つの逐次的な充電電流から計算される。移動分割点法を
使用すれば、電圧の上昇は次式で計算することができる。
R=−3V1−2V2−V3+V5+2V6+3V7
実施例1〜6のすべてに対し下記の条件が適用される。
Rが0以下の値に達したら、急速充電を直ちに止め、充電時間および充電効率
を決定した。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年10月18日
【補正内容】
8.− 連結端子を有し、蓄電池または電池に連結し得る充電装置(11)
、
− 該充電装置(11)の第1の出力部と連結されたコントロール装置(4)
、
− 該連結端子と充電装置との間にある測定点に入力部が連結され、蓄電池の
電圧、充電電流または該充電電流の電圧表現を測定し、且つ該コントロール装置
(4)の第2の出力部に連結されたコントロール入力部を含んでいる測定装置(
9)、
− 入力部が該測定装置の出力部に連結された記憶装置、および
− 該記憶装置に連結された演算装置から成り、
蓄電池の充電の際、逐次的な測定が行われるように該コントロール装置が該測
定装置を作動させ、該測定値は記憶装置に格納され、少なくとも3個の最後のN
個の測定値から演算装置がRの計算を行い、コントロール装置がRを予め決めら
れた閾値と比較して充電装置を制御しRの値が該閾値より低下した場合充電電流
を減少させるか停止させることを特徴とする請求項1〜7記載の方法により蓄電
池または電池を充電する装置。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B
Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES
,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,
KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
TJ,TM,TT,UA,UG,US,UZ,VN