【発明の詳細な説明】
CD1分子によるT細胞に対する疎水性抗原の提示
背景技術の説明 免疫系とT細胞
動物は、有害作用を及ぼす可能性のある外来細胞または内因性ではあるが異常
な細胞(たとえば細菌やウイルスなどの病原体およびガン細胞や病原体感染細胞
などでそれぞれ代表される)を認識し、攻撃するが、内因性の正常細胞は許容す
る免疫系と総称される複雑な分子防御機構・細胞防御機構を持っている。外来性
または異常な生体分子の刺激を受けると、この免疫系は、その外来性または異常
生体分子と関連がある病原体やガン細胞や病原体感染細胞を中和し破壊するよう
に仕組まれた一連の作用を受ける。これらの作用は免疫応答と総称され、細胞性
免疫応答、液性(抗体性)免疫応答、または細胞性応答と液性応答の両要素を含
む免疫応答から成る。
液性免疫応答には、特定の外来性または異常な生体分子と結合する抗体が関与
する。抗体とは、鳥類の嚢または哺乳動物の骨髄中で発生して他器官、とくに脾
臓へ移動して成熟するリンパ球としてのB細胞によって産生される免疫グロブリ
ン(Ig)分子である[ロバートソン(Robertson,M.)、Nature 301:114(19
83)]。細胞性免疫応答は、動物の胸腺内で成熟するリンパ球であるT細胞の作
用によって起きる[ティザード(Tizard,I.R.)、Immunology: An Introductio
n,2d Ed.,Saunders,Philadelphia(以下「ティザード」(Tizard)という)
、p.163,1988]。T細胞とB細胞はどちらも動物体内の様々な器官および/ま
たは組織の間を移動する[リドヤードとグロッシ(Lydyard,P.,and Grossi,C
.)、Chapter 3 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Me
dical Publishing,London,New York,1989]。
T細胞は少なくとも2つの一般的なタイプの免疫機能、すなわちエフェクター
機能と調節機能を媒介するが、このことは、同じ動物の体内でもT細胞亜集団が
異なればT細胞作用も大幅に異なるという事実を反映している[ルーク(Rook,G
.)、Chapter 9 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Med
ical Publishing,London,New York,1989]。エフェクター機能としては、遅
延過敏反応、同種移植片拒絶反応、腫瘍免疫、および移植片対宿主反応などが挙
げられる。エフェクター機能は、一部のT細胞がリンホカインと呼ばれるタンパ
ク質を分泌する能力および他のT細胞(「細胞傷害性」または「キラー」T細胞
)が他細胞を殺す能力を反映している。T細胞の調節機能としては、「ヘルパー
」T細胞の能力が代表的である。ヘルパーT細胞は、B細胞と細胞傷害性T細胞
の両者と相互作用して、両者の挙動に影響を及ぼす生体分子を産生することで、
それぞれ抗体産生と細胞傷害性作用を促進、制御する[モシエル(Mosier,D.E.
)、Science 158:1573-1575(1967)]。他にもサプレッサーT細胞やメモリーT
細胞などのT細胞クラスも存在する[ミエデマとメリーフ(Miedema,F.,and M
elief,C.J.M.)、Immunol.Today 6:258-259(1983);ティザード(Tizard)
、pp.225-228]。抗原認識
動物の免疫系のT細胞とB細胞が正しく機能するためには、それらが出くわし
た外来性(「非自己」)または内因性(「自己」)であるが発現が異常な組成物
に由来する無数の分子組成物を正しく確実に同定しなければならない。免疫系に
よる認識と同定は分子レベルで起きる。免疫応答を引き起こす能力を有する分子
組成物である抗原は、エピトープと呼ばれる1つ以上の分子大の同定要素から成
る。たとえば100個のアミノ酸から成るアミノ酸配列を有するポリペプチド抗
原は、それぞれ約3個ないし約25個のアミノ酸から成るポリペプチドの一部分
によって規定される数十個のエピトープから成るかも知れない。ポリペプチドだ
けから誘導できるエピトープの数は、約1千万個と推定される[ティザード(Ti
zard)、p.25]。
動物のT細胞またはB細胞が出くわした抗原は、正常な内因性(すなわち自己
)抗原、すなわちそれに対して免疫応答を示すと動物に傷害を引き起こす抗原か
、外来性または異常な(すなわち非自己)抗原、すなわちそれに対して免疫応答
を示さねばならない抗原のいずれかと関連があるものとして同定される。免疫系
の抗原同定手段の一部として、個々のT細胞とB細胞は、それらの表面上に表出
されて特異的抗原と結合する抗原受容体を産生する[ターナー(Turner,M.)、
Chapter 5 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical
Publishing,London,New York,1989]。B細胞は、Ig重鎖およびIg軽鎖と
呼ばれる2つの抗体サブユニットのそれぞれの可変領域にあるユニークなアミノ
酸配列によるユニークな抗原結合部分を有するIg分子を含む抗原受容体を産生
し、表出する。各B細胞膜は20,000ないし200,000個の同じIg分
子でできている[ティザード(Tizard)、pp.78-80 and 202]。
個々のT細胞によって産生されT細胞上で表出されるT細胞抗原受容体(TC
R)は、T細胞表面上でジスルフィド結合によって結合している重鎖(TCRβ
)と軽鎖(TCRα)(ポリペプチドのサブユニット)を含む。各TCRαサブ
ユニットとTCRβサブユニットは、T細胞ごとの変化がないアミノ酸配列であ
るカルボキシ末端定常領域、およびT細胞ごとに変化するアミノ酸配列であるア
ミノ末端可変領域を有している。TCRαサブユニットとTCRβサブユニット
が会合すると、TCRαポリペプチドサブユニットとTCRβポリペプチドサブ
ユニットの可変領域が一体化して、α:βTCRのユニークな抗原結合部分がで
きる。第2のタイプのTCRヘテロダイマーであるγ:δが記載されているが、
それが何らかの機能を果たしているとしても内容は不明である[デービスとブジ
ョルクマン(Davis,M.M.,and Bjorkman,P.J.)、Nature 334:395-404(1988
)]。機能が不明の少なくとも1つの混合TCRヘテロダイマーすなわちβ:δ
TCRが記載されているが、成熟動物ではα:βTCR分子を有するT細胞が数
的に優勢である[ホッホステンバックとブレナー(Hochstenbach,F.,and Bren
ner,M.B.)、Nature 340:562-565(1989)]。
各T細胞またはB細胞は同じ抗原受容体を表出するが、表出された受容体は細
胞ごとに異なる。したがって、動物体内の抗原受容体の種類は非常に多様である
。この多様性の遺伝的基礎は次のとおりである。Ig重鎖の可変領域またはTC
Rβ鎖の可変領域は、可変セグメント(V)、多様セグメント(D)、および連
結セグメント(J)という3つの遺伝子セグメントによってコードされる。Ig
軽鎖の可変領域またはTCRα鎖の可変領域は、VとJの遺伝子セグメントによ
ってコードされる。多くの異なるV、D、およびJの遺伝子セグメントをコード
する多重DNA配列が、生殖系列DNA中に未発現コピーとして存在し、TCR
サブユニットを構成する類似のしかし異なる可変遺伝子セグメント群も存在する
。動物の発育過程で、VとDとJの遺伝子セグメントまたはVとJの遺伝子セグ
メントの無差別連結によって、多様な可変領域をコードする遺伝子が免疫系の個
々の細胞中に形成される。Ig重鎖サブユニットまたはTCRβサブユニットの
無差別に組み合わされた可変領域ができるDNA転位の過程をV−D−J連結と
呼び、Ig軽鎖サブユニットまたはTCRαサブユニットの転位可変領域ができ
る類似過程をV−J連結と呼ぶ[サカノら(Sakano,H.,et al.)、Nature 280
:288-294(1979);アーリーら(Early,P.,et al.)、Cell 19:981-992(198
0);アルトら(Alt,F.W.,et al.)、Science 238:1079-1087(1987);ハーロ
ーとレーン(Harlow,E.,and Lane,D.)、Antibodies: A Laboratory Manual,
Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,pages 10-18,19
88 ;デービスとブジョルクマン(Davis,M.M.,and Bjorkman,P.J.)、Natur
e 334:395-404(1988)]。
機能的転位を受けたIgまたはTCRサブユニット遺伝子とは、V−D−Jま
たはV−J連結のDNA転位によって、終止コドンまたはフレームシフト突然変
異の導入のために未成熟に終止する読み取り枠を生じてはいないサブユニット遺
伝子である。免疫系の各T細胞またはB細胞は、機能的転位を受けたユニークな
可変領域が存在するそれぞれの抗原受容体をコードする遺伝子を発現するので、
ユニークな抗原認識領域を有するタンパク質をそれぞれが産生する多くの異なる
T細胞またはB細胞ができる[ヘイ(Hay,F.)、Chapter 6 in Immunology,2
d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New Yo
rk,1989]。動物のT細胞上に表出される様々な抗原受容体の完全なリストをそ
の動物のTCRレパートリーと呼ぶ[ベバンら(Bevan,M.J.,et al.)、Scie
nce 264:796-797(1994)]。
成熟したT細胞またはB細胞の場合、抗原が細胞の抗原受容体に結合するとそ
の細胞が活性化される。すなわち、細胞が刺激されて、細胞性または液性免疫応
答の発生に関係する作用を示すようになる。通常、活性化された成熟T細胞また
はB細胞は抗原に応答して増殖する。一方、未成熟のT細胞またはB細胞の場合
は、それぞれ表出されたTCRまたはB細胞抗原受容体に抗原が結合すると、陰
性選択またはクローン欠失と呼ばれる過程によってその細胞が除去される。クロ
ーン欠失は健康な野生動物の正常な発育の過程で起きるが、これが、免疫系がそ
の動物の正常な内因性(自己)抗原を許容すること、すなわちその動物の自己抗
原を非免疫原性抗原として処理することを学ぶ機構である。免疫系が自己抗原許
容性の獲得や維持ができなくなると、ヒトを含む動物の自己免疫疾患にまで達す
る可能性のある自己免疫応答(すなわち自己抗原に対する自己免疫応答)が起き
ることがある。自己免疫疾患は、非自己抗原に対する適当な免疫応答が免疫エフ
ェクター生体分子(たとえば自己抗体)や自己抗原と交差反応を起こす細胞の産
生もたらす場合に起こりうる。ヒトの自己免疫疾患としては、多発性硬化症(M
S)や全身性紅斑性狼痕(SLE)などの肢体不自由障害などが挙げられる[ロ
イット(Roitt,I.)、Chapter 23 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al
.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,1989 :ステインマン
(Steinman,L.)、Sci.American 269:107-114(1993)]。抗原提示
B細胞の抗原受容体は可溶性抗原と直接結合することができるが、T細胞は抗
原提示細胞(APC)と総称される他の特定のクラスの細胞上に表出される場合
に限って抗原に典型的に応答する[フェルドマンとメイル(Feldmann,M.,and
Male,D.)、Chapter 8 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Go
wer Medical Publishing,London,New York,1989]。たとえばマクロファージ
や樹状突起細胞などのAPCは、APCの表面上で表出されるMHC(主要組織
適合性複合体)として知られる糖タンパク質を介してポリペプチド由来の抗原を
提示する[ベバンら(Bevan,M.J.,et al.)、Science 264:796-797(1994)
]。MHC遺伝子産物の命名は種ごとに異なる。たとえば、ヒトMHCタンパク
質はヒトリンパ球抗原(HLA)とも呼ばれ、ネズミMHCタンパク質はH−2
抗原とも呼ばれ、ラットMHCタンパク質はRT1抗原とも呼ばれる[ティザー
ド(Tizard)、p.181]。特定のMHCタンパク質は、限られた特異性を有する
一部クラスの抗原と結合する。たいていの場合、TCR:Ag:MHC複合体中
に存在する特異性決定基は(1)TCRの可変部分のユニークなポリペプチド配
列と(2)抗原のユニークなポリペプチド配列であるが、MHCにより提示され
るオリゴペプチド抗原はある程度はMHC分子内に埋め込まれており、抗原のT
CR認識は適当なクラスのMHC分子が関与している場合に限って起きる[ジャ
ネウエイ(Janeway,C.A.)、Sci.American 269:73-79(1993)]。この現象は
MHC拘束と呼ばれ、T細胞の抗原認識と生理において基本的に重要である[ジ
ンケルナーゲルとドハーティー(Zinkernagel,R.M.,and Doherty,P.C.)、Na
ture 248:701-702(1974)]。
MHCが媒介する抗原提示においては、α:βT細胞抗原受容体がMHC遺伝
子産物と合わせてペプチド抗原を認識する。可溶性抗原の場合、認識はクラスI
Iの分子と合わせて起きる。ウイルス抗原の場合は、認識はクラスIの分子と合
わせて起きる。さらに、大型の可溶性抗原がマクロファージや樹状突起細胞など
の適当な附属細胞によってポリペプチドから処理される。
MHC拘束におけるT細胞によるポリペプチド抗原の認識に関係する一連の事
象は次のとおりである。ポリペプチド抗原が抗原提示細胞による食作用を受け、
内部に取り込まれ、プロセシングされた後、該ポリペプチドに由来するペプチド
が、クラスIまたはクラスIIのMHC分子と共に細胞表面上で表出される。抗
原を提示するためには、MHCクラスI分子はさらに別のタンパク質すなわちβ2
ミクログロブリンを必要とする[ティザード(Tizard)、pp.181-183]。次い
で、T細胞抗原受容体であるα:βヘテロダイマーがペプチド抗原とMHC遺伝
子産物を合わせて認識する。ペプチド抗原だけあるいはMHC遺伝子産物だけが
認識されても、T細胞活性化を引き起こすには不十分である。MHC:Ag複合
体だけがTCR分子によって正しく認識されうる[スチュワード(Steward,M.
)、Chapter 7 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medi
cal Publishing,London,New York,1989]。
MHCタンパク質をコードする遺伝子は多様であるが、同じ動物個体内でも細
胞ごとに異なるIg分子やTCR分子と異なり、MHC抗原は動物個体ごとにあ
るいは近縁動物個体の群ことに異なる。マウスでは近交系マウスで代表されるフ
ァミリー群のメンバーは類似のMHC抗原を共有しているが、他系統のマウスの
個体とはそれを共有しない[スネル(Snell,G.D.)、Science 213:172-178(19
81);オーエン(Owen,M.)、Chapter 4 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,e
t al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,1989]。変異体
MHC分子は異なる様々な抗原と結合する能力を有するであろうから、T細胞が
認識し(すなわちMHC関与状態で特異的に結合する)応答する抗原はマウスの
系統間で異なる[クーケ(Cooke,A.)、Chapter 11 in Immunology,2d Ed.,
Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York,198
9]。ヒトでは、MHC(HLA)分子をコードする特定の対立遺伝子がさらに
高度に自己免疫疾患と関連しているが、これはおそらく、これらのMHC分子が
自己抗原と結合する点(したがってT細胞への提示の時点)でより応答能が高ま
るためであろう[バウグハン(Vaughan)、in Immunological Diseases,3rd Ed
.,Vol.II,Samter,M.,ed.,pp.1029-1037(1978);スタインマン(Steinman
,L.)、Sci.American 269:107-114(1993)]。T細胞亜群
T細胞クラスは、T細胞が異なるとその表面上に表出(display)されるCD
タンパク質も異なるという事実に基づき、ある程度区別される。未成熟T細胞は
CD4タンパク質とCD8タンパク質の両者を表出し(すなわち、未成熟T細胞
はCD4+ 8+ である)、成熟ヘルパーT細胞はCD4+ 8- であり(すなわち
CD4タンパク質を表出し、CD8タンパク質を表出しない)、成熟細胞傷害性
T細胞はCD4- 8+ である(すなわちCD8タンパク質を表出し、CD4タン
パク質を表出しない)[スミス(Smith,L.)、Nature 326:798-800(1987);
ワイスマンとクーパー(Weissman,I.L.,and Cooper,M.D.)、Sci.American 269:
65-71(1993)]。
一般に、CD8+ Tリンパ球はMHCクラスI複合体を認識し、CD4+ 細胞
は抗原提示細胞上のMHCクラスII複合体を認識する。α:βTCRによる抗
原認識にはCD8とCD4の関与が重要である。CD4分子とCD8分子はTC
R相互作用Ag:MHC複合体の親和性を増大させるので、共受容体と呼ばれる
こともある[ビエラーら(Bierer,B.E.,et al.)、Ann.Rev.Immunol. 7:579
-599(1989);スチュワード(Steward,M.)、Chapter 7 in Immunology,2d
Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New York
,1989]。MHCの関与がある場合の抗原認識ではCD4とCD8が重要である
ため、CD4- 8- (二重陰性、DN)のT細胞は古くから未成熟胸腺T細胞前
駆体であると考えられてきた[リドヤードとグロッシ(Lydyard,L.,and Gross
i,C.)、Chapters 2 and 14 in Immunology,2d Ed.,Roitt,I.,et al.,ed
s.,Gower Medical Publishing,London,New York,1989;スミス(Smith,L.
)、Nature 326:798-800(1987);ストロミンジャーら(Strominger,J.L.,et
al.)、Int.J.Cancer Suppl.4:43-47(1989);シライら(Shirai,T.,et al
.)、J.Immunology 144:3756-3761(1990);ワイスマンとクーパー(Weissman,
I.L.and Cooper,M.D.)、Sci.American 269:65-71(1993)]。
DN亜集団のT細胞は、それらが表出するTCRに特徴がある。末梢血から単
離されたヒトDN T細胞の大部分はδ:γTCRを発現する[ポーセリら(Po
rcelli,S.,et al.)、Immunological Reviews 120:137-183(1991)]。ネズミ
DNα:βTCR T細胞は高比率(約60%)でVβ8遺伝子産物を発現する
[フォウルケスら(Fowlkes,B.J.,et al.)、Nature 329:251-254(1987);
ビックスら(Bix,M.,et al.)、J.Exp.Med. 178:901-908(1993)]。マウ
スを使ったいくつかの分析で、連結(V−JまたはV−D−J)の多様性が顕著
に欠落していること、およびとくにTCRαサブユニットの生殖系列VおよびJ
遺伝子要素の利用が制限されていることがわかる[コセキら(Koseki,H.,et a
l.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:5248-5252(1990);クボタら(Kubota,H
.,et al.)、J.Immunol.149:1143-1150(1992)]。ヒトの新鮮DNα:βTC
R T細胞を調べたところ、N領域付加を受けていない非変異体(規定配列)の
Vα24−JaQ転位が顕著に優勢であることがわかった[ポーセリら(Porcel
li,S.,et al.)、J.Exp.Med. 178:1-16(1993)]。これらの知見を総合する
と、DNα:βTCR T細胞は、抗原と抗原提示分子の両方または一方の限ら
れたセットを認識することを反映する限られた受容体レパートリーを有する特徴
的なTリンパ球亜集団に相当するものであることが示唆される。CD1タンパク質
CD1座位の遺伝子によってコードされるポリペプチド分子は、α:βTCR
またはγ:δTCRのいずれかを発現する一部のCD4- 8- T細胞クローンに
よって認識される[ポーセリら(Porcelli,S.,et al.)、Nature 341:447-450
(1989);ファウレら(Faure,F.,et al.)、Eur.J.Immun. 20:703-706(19
90)]。ヒト染色体番号1の上にある遺伝子によってコードされるCD1分子は
ヒト染色体番号6の上にある遺伝子によってコードされるMHC分子と構造的に
似ているため[カラビとミルステイン(Calabi,F.and Milstein,C.)、Natu
re 323:540-543(1986);バルクら(Balk,S.P.,et al.)、Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 86:252-256(1989)]、CD1はMHC遺伝子によってコードされる
ものとは別の抗原提示分子のファミリーに相当することが示唆されている[ポー
セリら(Porcelli,S.,et al.)、Nature 341:447-450(1989);ストロミンジ
ャー(Strominger,J.L.)、Cell 57:895-898(1989);ポーセリら(Porcelli,S
.,et al.)、Immun.Rev.120:137-183(1991)]。
5つのCD1遺伝子はMHCクラスI遺伝子のものと似たエキソン・ドメイン
構造(α1、α2、α3)を持っているが、生じるタンパク質は配列的に遠縁で
あるにすぎない。CD1ファミリーのすべてのメンバーは保存されたα3ドメイ
ンを共有しているが、このドメインですらクラスIのMHCα3ドメインのコン
センサス残基とのアミノ酸配列相同性は32%にすぎず、α1ドメインとは相同
性が認められない。MHC分子とCD1分子の大きな違いは多型性である。ヒト
MHC遺伝子は多型性が非常に高く、多数の対立遺伝子が既知のMHC座位のそ
れぞれに存在することが記載されている。一方、CD1遺伝子は明らかに非多型
性である。これらの違いにも関わらず、CD1タンパク質はMHCクラスI分子
と同様に、β2ミクログロブリンと非共有結合的に結合した大型サブユニット(
重鎖)として発現される[バン・アグトーベンとテルホルスト(Van Agthoven,
A.,and Terhorst,C.)、J.Immunol. 128:426-432(1982);テルホルストら
(Terhorst,C.,et al.)、Cell 23:771-780(1981)]。
これまでにCD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1eという5種類
のCD1遺伝子がヒトで同定されている。これら5つのCD1遺伝子産物のうち
の4つは血清学的に定義されており、CD1a、CD1b、CD1c、およびC
D1dと呼ばれ、それぞれおよそ49kDa、45kDa、43kDa、および
48kDaの分子量を有するユニークな重鎖によって区別される[アミオットら
(Amiot,M.,et al.)、J.Immunol.136:1752-1758(1986);ポーセリら(Por
celli,S.,et al.)、Immunol.Rev.120:137-183(1991);ブレイヒャーら(Bl
eicher,P.A.,et al.)、Scinece 250:679-682(1990)]。CD1タンパク質は
、ランゲルハンス細胞(皮膚における主な樹状突起抗原提示細胞)、活性化B細
胞、リンパ節の樹状突起細胞、および活性化血液単球などの幾つかのAPCの上
に表出される[ポーセリら(Porcelli,S.,et al.)、Nature 360:593-597(19
92);Leukocyte Typing IV,Knapp,W.,ed.,Oxford University Press,Oxfo
rd,U.K.,pp.251-269,1989;Tissue Antigens,Kissmeyer-Nielsen,F.,ed.
,Munksgard,Copenhagen,Denmark,pp.65-72,1989]。
過去の研究で、CD1タンパク質はSLE患者由来のCD4- 8- T細胞株に
よって認識されることが示されている[ポーセリら(Porcelli,et al.)、Natu
re 341:447-450(1989)]。外来(非自己)抗原が存在しない場合でも、CD1
タンパク質発現白血病細胞はMHC拘束と無関係なT細胞によって溶解される。
DN T細胞は抗原の非存在下でCD1依存的に白血病細胞を溶解した。したが
って、CD1タンパク質は自己免疫疾患に何らかの役目を果たしている可能性が
ある。
免疫系は通常は自己に対して反応しないというのが免疫学のセントラルドグマ
であった。自己免疫とは、自己に対する自然の無応答性すなわち許容性がなくな
る状態と定義される。その結果、抗体または細胞が自己の成分と反応して疾患を
引き起こす。様々な自己免疫障害の起源と病態発生を説明できる統一概念は未確
立である。疾患過程は、様々な原因のなかでもとくに感作Tリンパ球によって引
き起こされるのかもしれない。これらのリンパ球は、破壊的なリンホカインの放
出を伴うかもしれない、あるいは他の炎症細胞を病変部に引きつける未解明の機
構によって組織病変を作り出す。自己免疫については、既報文献[テオフィロポ
ウロス(Theofilopoulos,A.N.)、Chapter 11 in Basic and Clinical Immunol
ogy,6th Ed.,Stites,D.P.,et al.,eds.,Appleton and Lang,1987]を参
照されたい。結核
ミコバクテリアは、宿主に侵入すると単球およびマクロファージのエンドソー
ム画分内で生存するようになる好気性細胞内細菌の1属である。ヒトのミコバク
テリア疾患としては、結核(M.ツベルクロシスによって引き起こされる)、ら
い(M.レプラエによって引き起こされる)、ブルーリ潰瘍(Bairnsdale ulcer
s)(M.ウルセランスによって引き起こされる)、およびM.マリヌム、M.
カンサシイ、M.スクロフラセウム、M.スズルガイ、M.キセノピ、M.フォ
ルツイツム、M.チェロネイ、M.ハエモフィルム、およびM.イントラセルラ
ーレによって引き起こされる様々な感染症などが挙げられる[ウォリンスキー(
Wolinsky,E.)、Chapter 37 in Microbiology: Including Immunology and Mol
ecular Genetics,3rd Ed.,Harper & Row,Philadelphia,1980、これより後「
ウオリンスキー」;ダニエル、ミラーおよびフリードマン(Daniel,T.M.,Mill
er,R.A.and Freedman,S.D.)、それぞれChapters 119,120 and 121,in Ha
rrison's Principles of Internal Medicine,11th Ed.,Braunwald,E.,et al
.,eds.,McGraw-Hill,New York,1987]。
世界人口の3分の1はM.ツベルクロシス(M.tb)を保菌しており、15
〜59歳の成人の死因の18.5%を占める結核(TB)を発症する危険性があ
る[ブルームとムレイ(Bloom,B.R.,and Murray,C.J.L.)、Science 257:10
55-1064(1992)]。公衆衛生と抗生物質療法の進歩により米国におけるTBの発
生率および/またはと重症度は大幅に低下したので、上記の警告的統計値は主に
第3世界諸国から得られたものである。不幸にも、エイズの出現により結核はほ
ぼ対数的に増加しつつあり、多剤抵抗性株が出現しつつあって、現在ではニュー
ヨーク市の全症例の3分の1を占めるに至っている[ブルームとムレイ(Bloom,
B.R.,and Murray,C.J.L.)、Science 257:1055-1064(1992);米国議会技術
評価局(U.S.Congress,Office of Technology Assessment)、The Continuing
Challenge of Tuberculosis,OTA-H-574,U.S.Government Printing Office,W
ashington,D.C.,1993]。かつては病原性を有さない株と考えられていたミコ
バクテリア株(たとえばM.アビウム)が今や免疫が抑制されたエイズ患者を死
に至らしめる大きな原因となっている。さらに、現在のミコバクテリアワクチン
は、M.ツベルクロシスに対するBCGワクチンの場合には不適当であり、M.
レプラエに関しては利用できない[カウフマン(Kaufmann,S.)、Microbiol.S
ci.4:324-328(1987);米国議会技術評価局(U.S.Congress,Office of Techno
logy Assessment)、The Continuing Challenge of Tuberculosis,pp.62-67,OT
A-H-574,U.S.Government Printing Office,Washington,D.C.,1993]。
ミコバクテリアに対する主要応答では、生物の細胞内死および閉じ込め効果ま
たは壁防止効果(肉芽腫形成)に大きな役目を果たしているT細胞やマクロファ
ージとの細胞性遅延過敏反応(DTH)が起きる。主要T細胞応答には、ミコバ
クテリア熱ショックタンパク質(hsp65など)を免疫優性抗原として認識す
るCD4+ リンパ球が関与している[カウフマンら(Kaufmann,S.H.,et al.)
、Eur.J.Immunol.17:351-357(1987)]。らい病
らい病(ハンセン氏病)は表層組織、とりわけ皮膚と末梢神経を攻撃する人間
の慢性の肉芽腫性の感染病である。らい病の記述は、前史学的記録から文化的,
宗教的境界を超えるらい病患者の斑点症の記録までにわたる。ミラー,R.A.(Mill
er,R.A.)Harrison's Principles of Internal Medicineの第120 章,第11版,
ブラウンウォルド,E.(Braunwald,E.)ら編,マックグロー- ヒル(McGraw-Hill)
,ニューヨーク,1987,この後“ミラー”とする。古来、世界の多くにわたって
、らい病は流行したが、16世紀のヨーロッパにおいて理由不明で死に絶えたが、
今では少数の限られた地域でのみ生じる。ウォリンスキー(Wolinsky)p.741。
世界中に,恐らく1から2億人のらい病にかかった人々がいる。この病気は熱
帯の国により共通しており,その多くは流行の割合が人口の1から2%である。
らい病は韓国や中央メキシコのような寒い気候の地域でも起こるため、伝染に暖
かい環境は重要ではない。国々のなかで、感染した個人の分布は大変不均一であ
り、人口の20%が影響を受けた地域を見つけることができる。ミラー,(Miller)p
.63
アメリカにおいて、らい病はとりわけテキサス、カリフォルニア、ルイジアナ
、フロリダ、ニューヨーク市、ハワイで起こり、通常プエルトリコ、フィリピン
、メキシコ、キューバやサモア系の人々に起こる。土着の伝染は主としてハワイ
、太平洋諸島,特に湾沿岸で起こる。数百人の患者がルイジアナ州カービル(Car
ville)の国立らい隔離病院で看護されている。ウォリンスキー(Wolinsky)p.741
。
ミコバクテリウム レプラエ(Mycobacterium leprae)すなわちハンセン病細菌
はらい病の原因因子である。他のミコバクテリアに対する形態学的、生化学的、
抗原性、遺伝学的類似性に基づくミコバクテリウム属ファミリーは抗酸性の桿菌
に帰属される。M. レプラエは結核に良く似た、乾酪化はしないが上皮様の巨大細
胞を有する慢性の肉芽腫性障害を引き起こす。病変中の生体は、細胞間で優勢で
、結核菌のようにマクロファージ中で明らかに増殖可能である。ウォリンスキー
(Wolinsky)p.740。
M. レプラエは人工的な培地や組織培養で培養できないが、マウスの足裏の厚肉
で調和的に増やすことができる。人間の病気の徴候と似た徴候を有する全身感染
を、アルマジロや尾長サルに誘導することができる。細菌は極めて増殖が遅く、
マウスの足裏の厚肉での対数増殖期間で11日から13日が推測される至適ダブリン
グタイムである。マウスモデルは抗らい病薬の研究に広く使われており、アルマ
ジロ由来の高収量の細菌は免疫遺伝学的研究に重要である。ミラー(Miller)p.63
3。
粘膜障害の浸出性と皮膚潰瘍が皮膚表皮剥離になると、癩病は明らかに伝染す
る。それは高い接触感染性はなく、患者は隔離する必要がない。幼児は成人より
短時間の接触でこの病気になるように思える。潜伏期間は数カ月から30年かもっ
と長い期間であると推定される。見たところ、M. レプラエは組織において長期期
間,休止状態にあることができる。ウォリンスキー(Wolinsky)p.741。1才未満
の幼児におけるケースは極めて珍しいが、癩病はどんな年齢でも存在することが
できる。年齢特異的な発生率は殆どの先進国で幼年期の間にピークがあり,20%
までのケースが、10才以下の子供に起こる。癩病は社会的に貧しいグループに最
も流行っており、このことはハイリスク人口の年齢分布に事実上反映しているか
もしない。幼年期のあいだに癩病にかかる性別比は1:1 であるが,しかし成人の
ケースでは2:1 の比率で男性が優位である。ミラー(Miller)p.633。
癩病は慢性の、遅い進行とその断節損傷と醜い損傷により見分けられる。これ
らはあまりにも特有であるため、その診断は一目で明らかであるかもしれない。
あるいは臨床の徴候は疑いの高い指標を頼りとした最も経験を積んだ観察者以外
による発見を逃すほど微妙かもしれない。病原体は皮膚と神経を好む。この病気
の皮膚の様態において、大きく、堅い結節(らい腫)が広く分布し、顔面では,
それらは特徴的な獅子のような外見を形成する。通常の形態では、末梢神経部分
は、幾分ランダムに、知覚麻痺の局在化した斑を導くことに関与する。指と足指
の感覚の欠如は軽症のトラウマの頻度を増やし、二次的感染と不具にする損傷へ
と先導する。両様態は同じ患者において現れるかもしれない。
癩病のそれぞれの様態において、三つの相に区別される。(1)らい腫や進行し
た型では、損傷は多くのらい細胞: 抗酸性細菌がたくさんいる特徴的な空洞の(
泡立つ(foamy))サイトプラズムを有するマクロファージを含む。これらの損傷
が
顕著なとき、レプロミンテストは通常陰性であり、恐らく大量の内因性のレプロ
ミンによると思われるが、特異的および非特異的な刺激に対する細胞性免疫反応
は著しく減少する。この症状は進行した段階でありと予後は悪い。(2)結核また
は症状の治癒段階では、対照的に、損傷はほとんどらい細胞と細菌を含まず、線
維増多が著しい。そしてレポロミンテストは通常陽性である。(3)病気の中間タ
イプでは、細菌は壊死の範囲には見られるが、ほかではまれである。皮膚テスト
は陽性で遠くからの外見はかなりよい。症状の悪化と鎮静を有する1 つの相から
他の相への変化が共通である。
ハンセン氏病細菌は、癩病として人の肝臓と脾臓を含む組織に広く分布する。
それでもなお、破壊的な損傷や機能障害はこれらの器官に観察されない。癩病患
者の死亡のほとんどは、癩病それ自体でなく、他の微生物、結核菌の介入性の感
染による。癩病はそれ自体、腎臓、肝臓、脾臓や他の器官で免疫グロブリン軽鎖
断片の豊富な沈着物を含む大量の蝋状の沈殿物により特徴付けられるアミロイド
症の合併症を通じて死を引き起こす。ウォリンスキー(Wolinsky)pp.740-741。
癩病の細菌学的診断は、潰瘍化した損傷からの切屑、あるいは潰瘍化していな
い損傷の表在性の切片に出ている体液の中の抗酸性細菌の提示により果たされる
。簡便な血清学的テストは利用できない。しかし癩病の患者はしばしば梅毒の血
清学的テストで擬陽性を示す。また結核疹相では、ヒトらい腫組織または感染し
たアルマジロ組織を煮沸することにより調製した160×106抗酸性細菌/mlを含む
ように一般的に標準化された抗原性細菌材料であるレプロミンによる皮膚テスト
が有効である。ウォリンスキー(Wolinsky)pp.740-741。
ダプソーン(4,4'- ジアミノジフェニルスルフォン)または関連した化合物を
用いる治療法により何年にもわたって斬新的な改良が常に生みだされ、明白な臨
床的な鎮静が見られるまでの長期間続けられる。しかしながら、再発を伴うスル
フォン剤への抵抗性は、明らかに成功した治療法の数年後に記録されるかもしれ
ない。リファンピンとクロファジン(B663,フェノジン誘導体)は現在研究
中の、将来有望ならい病治療のための薬剤である。治療結果は一連の生検材料と
皮膚切屑中の抗酸性細菌を数えることにより評価できるであろう。
癩病および関連する諸症状の神経変性の性質のため、癩病の治療は広く多くの
学問領域にわたるアプローチに関わり、整形外科学、眼科学と抗菌化学療法を加
えた物理療法を含む。しかしながら、どの様な場合でも、神経学的傷害の回復は
限られている。ミラー(Miller)pp.635-636。
発明の概要
本発明は、CD1分子がT細胞に対する外来のリポアラビノマンナン(LAM
)抗原をも提示する機能を有するという新規なかつ予想外の観察に基づいている
。本発明はさらに、単離された血液単球がCD1を発現するように誘導され、従
って単球をサイトカインと接触させることによりT細胞に対するLAM抗原を提
示する能力を持つに至るという観察に基づいている。これらの二つの観察に基づ
き、本発明はCD1により提示されるLAM抗原を同定し、単離し、そして精製
するために使用されるCD1+ LAM抗原提示細胞(CD1+ APCs)を単離
する方法、試料が1種以上のCD1により提示されるLAM抗原を含むか否かを
判定する方法、CD1により提示されるLAM抗原を単離しそして精製する方法
、本明細書に開示されている方法によって単離され精製されたCD1により提示
されるLAM抗原、および単離されたCD1により提示されるLAM抗原をワク
チンに使用する方法を開示する。
一つの態様においては、本発明は試料がCD1により提示されるLAM抗原を
含むか否かを判定する方法を提供する。かかる方法の一つでは、試料中にCD1
により提示されるLAM抗原が存在することは、(1)この試料をCD1タンパ
ク質を発現するように誘導された細胞と接触させ、(2)第1のステップで得ら
れる細胞を、CD1により提示されるLAM抗原を特異的に認識するT細胞と接
触させ、そして(3)T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定すること
により判定することができる。ここでそれぞれ、T細胞増殖の増加またはCD1+
標的細胞のT細胞を介する細胞溶解が起これば、CD1により提示されるLA
M抗原の存在と相関する。関連する一つの態様においては、本発明は、試料がC
D1ブロッキング剤、即ちCD1拘束性LAM抗原提示を阻害する組成物を含む
か否かを判定する方法を提供する。この関連態様においては、上述のCD1によ
り提示される抗原の測定は2重に行われ、第1の(対照の)測定は上記のように
行い、そして第2の測定はさらにCD1ブロッキング剤を含むと思われる試料を
加えて行う。試料中にCD1ブロッキング剤が存在すると、第2の測定における
T細胞増殖性応答または細胞溶解性応答が第1の測定で得られたものよりも小さ
いことと相関する。
本発明はさらに、CD1+ LAM抗原提示細胞(APCs)を生成させるため
に、単球のような細胞中でCD1発現を誘導する方法を提供する。一つの方法で
は、1種以上のサイトカインと血液の単球を接触させることにより、単離された
この細胞中でCD1発現が誘導される。CD1誘導のためのサイトカインとして
は、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイ
キン−4と組み合わせたGM−CSF、またはインターロイキン−3が好ましい
。CD1+ APCsは、CD1タンパク質を発現しそして表出する細胞であり、
従ってTCR+ T細胞に対するCD拘束性抗原を提示する能力を有する。CD1+
APCsは本明細書に開示される方法の幾つかで使用されている。
本発明はさらに、CD1により提示されるLAM抗原を試料から単離する方法
を提供する。そのような方法の一つでは、CD1により提示されるLAM抗原を
含む試料をまず通常の技術を用いて分画する。ついで、その結果得られる画分を
本明細書に開示される手順を用いてCD1により提示されるLAM抗原が存在す
るか否かをテストする。ついで、CD1により提示されるLAM抗原を含む画分
はワクチンの開発に用いられるか又はより高純度のCD1により提示されるLA
M抗原を得るためにさらに分画される。
本発明はさらにCD1により提示されるLAM抗原を試料から単離する別の方
法を提供する。この方法は単離されたCD1または細胞表面で発現されたCD1
と結合するCD1により提示されるLAM抗原の能力に依存する。そのような方
法の一つでは、CD1により提示されるLAM抗原を含む試料をCD1+ APC
sまたは精製されたCD1分子のいずれかとインキュベートする。ついで、その
結果生ずる抗原:CD1+ APCs複合体またはLAM抗原:CD1分子複合体
を試料から取り出し、CD1分子が、結合しているCD1により提示されるLA
M抗原を放出する条件の下に置く。ついで、放出されたCD1により提示される
LAM抗原を精製してCD1+ APCまたは精製CD1分子を除き、さらに通常
の免疫学的、生化学的および/または遺伝学的方法を用いて特性を調べる。つい
で、精製されたCD1により提示されるLAM抗原、またはそれらの合成による
もしくは遺伝子工学的に作られた誘導体を本明細書に開示される手順でCD1に
より提示されるLAM抗原の活性を測定し、そして、ワクチンの処方に用いられ
てもよい。
CD1により提示されるLAM抗原を単離する上記の手順を用いて、本発明は
さらに本明細書に開示される方法によって調製された、単離されたCD1により
提示されるLAM抗原を提供する。これらの開示される方法によって調製される
単離されたCD1により提示されるLAM抗原は、CD1により提示されるLA
M抗原の性質の特性を明らかにするために、ワクチンの開発または処方のために
、および治療法のために使用することができる。
図面の簡単な説明
図1A〜Hは、GM−CSFおよびIL−4の存在下で培養した単球によるC
D1a、CD1b、およびCD1cの発現、およびミコバクテリウム ツベルク
ロシスに対して特異的なCD1b拘束性T細胞の表面表現型のデータを示す。G
M−CSFとIL−4を含む培地中で60時間培養したCD1a(図1A)、C
D1b(図1B)、CD1c(図1C)およびHLA(図1D)の発現を示した
末梢血単球のフローサイトメトリー分析。細胞を対照モノクローナル抗体(mA
b)(点線)または各ヒストグラムボックスに示した特異性を有するmAb(実
線)で染色した。サイトカインの非存在下またはインターフェロン−γの存在下
で培養した単球は有意量のCD1a、CD1b、CD1cを発現しなかった(デ
ータは示さない)。α:βTCRの発現(図1E)、CD4の発現がない(図1
F)、CD8の発現がほとんどあるいは全くない(図1G、1H)ことを示すT
細胞株DN1のフローサイトメトリー分析。点線と実線は図1a〜1dと同様に
対照および特異的mAbを示す。
図2A〜Eは、CD4- 8- T細胞株DN1およびそのサブクローンDN1.
C7の増殖性応答の抗原特異性と自己拘束性のデータを示す。図2Aは、M.ツ
ベルクロシス(黒塗り四角)、M.レプラエ(黒塗り丸)、エシェリシア コリ
(白抜き丸)、および破傷風毒素(白抜き丸)に対するDN1の増殖性応答(3
H−チミジン取り込み量の1分あたり計数値(CPM))のデータを示す。抗原
提示細胞は、不均一のGM−CSF処理およびIL−4処理CD1+ 単球であっ
た。抗原濃度(タンパク質含有率換算)はx軸上に示した。図2Bは、M.ツベ
ルクロシス(1μgタンパク質/ml)に対するT細胞株DN1の増殖性応答に
は、CD1+ 抗原提示細胞(CD1+ APC)が必要であるというデータを示す
。APCは次の記号で示した。APCなし、白抜き四角;GM−CSF処理およ
びIL−4処理単球(CD1+APC)、黒塗り丸;IFNγ処理単球(CD1+
)、白抜き丸;新鮮単離単球(CD1+)、白抜き三角。各培養物に添加したA
PCの数をx軸上に示した。図2Cは、調べたすべてのドナーのAPCは、M.
ツベルクロシスに対するT細胞株DN1の増殖性応答を示すデータを示す。白抜
きバー、M.ツベルクロシス非存在下のT細胞とAPC;黒塗りバー、M.ツベ
ルクロシス存在下(1μgタンパク質/ml)のT細胞とAPC。APCは5名
の未処理ドナーのGM−CSF処理およびIL−4処理末梢血単核細胞であっ
た。HLAタイプ分画を行なったところ、5名のドナー全員がHLA−A、−B
、−C、−DR、−DP、または−DQ座位の対立遺伝子を共有していないこと
が判明した(データは示さない)。図2D、2Eは、抗CD1bmAbはM.ツ
ベルクロシス(1μgタンパク質/ml)に対するDN1(図2D)およびDN
1.C7(図2E)の増殖性応答を特異的に阻害したことを示すデータを示す。
APCはGM−CSF処理およびIF−4処理単球であった。黒塗りバー、M.
ツベルクロシス存在下(1μgタンパク質/ml)のAPCに対するT細胞の増
殖性応答;点線、M.ツベルクロシス非存在下のAPCに対する応答;「nd」
、測定していない。使用したモノクローナル抗体は、P3(対照IgG)、OK
T6(抗CD1a)、WM−25[抗CD1b;ファバロロら(Favaloro,E.J.
,et al.)、Disease Markers 4:261-270(1986))]、10C3(抗CD1c)
、W6/32(抗MHCクラスI)、およびIVA12[抗MHCクラスII;
ショー(Shaw,S.)、Hum.Immun.12:191-211(1985)]であった。
図3は、抗原提示細胞株CR1およびサイトカイン刺激単球が、T細胞株DN
1から得られたクローンであるT細胞株2.13DN1およびG7の成長を刺激
する能力の比較のデータを示す。白抜きバー、M.ツベルクロシス非存在下のT
細胞とAPC;黒塗りバー、M.ツベルクロシスの存在下(1μgタンパク質/
ml)のT細胞とAPC。
図4A〜Dは、リンパ芽球様細胞株C1RのCD1トランスフェクタントによ
るM.ツベクロシスの提示のデータを示す。ベクターpSRα−NEO DNA
(モック)または示したCD1分子をコードするcDNAを含むpSRα−NE
Oの構築物(CD1a、CD1b、CD1c)で安定的にトランスフェクトされ
たC1R細胞を培地のみ(白抜きバー)またはM.ツベルクロシスを含む培地(
25μgタンパク質/ml、黒塗りバー)中で12時間培養し、51Crで標識し
、様々なエフェクターT細胞の存在下で細胞溶解性測定の標的細胞として使用し
た。標的細胞に対するエフェクターT細胞の比率は50:1であった。図4Aは
、M.tbCD1bにより提示されるAg特異的T細胞株DN1を示す。図4B
は、DN1サブクローンDN1.C7を示す。図4Cは、CD1a自己反応性ク
ローンBK6を示す。図4Dは、CD1c自己反応性クローン3C8を示す。
図5A〜Cは、M.ツベルクロシス抗原のCD1b拘束性提示はMHCクラス
II領域によってコードされた分子を必要としないが、クロロキン感受性経路に
よる抗原プロセシングが関与していることを示すデータを示す。図5Aは、T細
胞株DN1によるCD1T2トランスフェクタントの溶解のデータを示す。ベク
ターDNAのみでトランスフェクトされたT2細胞(モックトランスフェクタン
ト)を丸で示し、CD1bでトランスフェクトされたT2細胞を三角で示した。
白抜き記号はM.ツベルクロシスの存在下で前培養しなかった標的細胞を示し、
黒塗り記号はM.ツベルクロシス(10μgタンパク質/ml)の存在下で12
時間の前培養を行なった標的細胞を示す。フローサイトメトリー分析で、CD1
bでトランスフェクトされたT2細胞をM.ツベルクロシスの存在下で培養して
もCD1b発現に影響を及ぼさないことが示された(データは示さない)。図5
Bは、CD1b+ APCをグルタールアルデヒドで固定すると、細胞株DN1に
対するM.ツベルクロシスの提示が防止されることを示唆するデータを示す。C
D1b+ APC(GM−CSF処理およびIF−4処理末梢血単核細胞、PBM
C)をM.ツベルクロシスの存在下(1μgタンパク質/ml、「パルス化AP
C」)または培地のみ(「非パルス化APC」)中で12時間培養し、集菌し、
各細胞懸濁液の一定量を0.0125%グルタールアルデヒドで30秒間固定し
た。生じたAPC調製物が、可溶性M.ツベルクロシス抗原(1μgタンパク質
/ml)の非存在下(白抜きバー)または存在下(黒塗りバー)で細胞株DN1
の増殖を刺激する能力があるかどうかを調べた。図5Cは、クロロキンによるM
.ツベルクロシスのCD1b拘束性提示の阻害のデータを示す。HLA−DR7+
の個体から得たCD1b+APCを図に示した濃度のクロロキンの存在下37℃
で60分間M.ツベルクロシス抗原でパルス化し、グルタールアルデヒドで固
定し、細胞株DN1(黒塗り丸)またはM.ツベルクロシス特異的HLA−DR
7+ 拘束性CD4+ T細胞株DG.1(白抜き三角)の存在下での増殖測定にA
PCとして使用した。結果は、クロロキン非存在下でM.ツベルクロシスでパル
ス化した固定APCに対する応答阻害率で表わしたが、同様の3つの実験の代表
値である。
図6は、図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.ツベルクロシス抗原に
対するT細胞株DG.1の増殖性応答に及ぼす影響のデータを示す。
図7は、図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.ツベルクロシス抗原に
対するT細胞株DN1の増殖性応答に及ぼす影響のデータを示す。
図8は、図に示したプロテアーゼによる抗原消化がM.フォルツイツム抗原に
対するT細胞株DN1の増殖性応答に及ぼす影響のデータを示す。
図9A〜Cは、DNα:βTCR+ T細胞株によって認識されるミコバクテリ
ア抗原が有機溶媒による抽出後に有機相中に定量的に分配され、CD1b拘束を
受けることを示すデータを示す。有機溶媒による抽出を行なうと、CD1B拘束
性ミコバクテリア抗原が、従来のMHCクラスII拘束性CD4+ α:βTCR+
T細胞株によって認識されるミコバクテリア抗原およびDNγ:δ(Vγ2V
δ2)TCR+ T細胞によって認識される小型の非タンパク質性ミコバクテリア
リガンドと区別される。プフェッファーら(Pfeffer,K.,et al.)、J.Immun
ology 148:575-583(1992)。全ミコバクテリア超音波処理物をクロロホルム/メ
タノール/H2Oで抽出し、生じた3相を、CD1+ 単球および図に示した希釈
率で希釈した様々な抗原調製物の存在下でT細胞を培養することによって測定し
た。図9Aは、全ミコバクテリア超音波処理物(■、破線)、有機相(□、実線
)、水相(○、実線)、またはインターフェース(■、実線)に対するCD1b
拘束性DN T細胞株DN1の増殖性応答のデータを示す。x軸上の抗原濃度は
全超音波処理物標品に対して標準化させた1/希釈率で示したデータを示す。図
9Bは、有機溶媒抽出後のミコバクテリア画分に対するHLA−DR7(MHC
)拘束性ミコバクテリア特異的CD4+ T細胞株DG.1の増殖性応答のデータ
を示す。図9Cは、有機溶媒抽出後のミコバクテリア画分に対するVγ2Vδ2
T細胞クローンDG.SF68の増殖性応答のデータを示す。
図10は、ミコバクテリア抗原調製物でパルス化したC1R細胞のCD1トラ
ンスフェクタントに対するDN1細胞株の細胞溶解性応答のデータを示す。C1
Rリンパ芽球様細胞のCD1bまたはCD1cトランスフェクタント[ポーセリ
ら(Porcelli,S.,et al.)、Nature 341:447-450(1989)]を、有機溶媒(+
)で抽出した後のミコバクテリア抗原調製物または培地単独(−)のいずれかで
パルス化した標準細胞溶解性測定の標的として使用した。CD1bでトランスフ
ェクトしたC1R細胞のT細胞株DN1による認識は抗原でパルス化した場合に
限って起きる。CD1c+ 標的に対しては抗原特異的認識は起きない。
図11は、6,6−トレハロースジミコレート(コードファクター)の化学構
造を示す。
図12A〜Eは、CD1b拘束性T細胞株DN1によって認識されるミコバク
テリア抗原はミコール酸であることを示すデータを示す。図12A、12Bは、
CD1b拘束性T細胞株DN1の増殖性応答は逆相C18HPLC上のミコール
酸ピークと相関することを示すデータを示す。CD1b拘束性抗原をすべて含ん
でいる精製ミコバクテリアアシル鎖画分を逆相HPLCを用いるクロマトグラフ
ィーに付し、生じた画分がT細胞株DN1による増殖性応答を刺激する能力を測
定した。図12Aは、溶出物の254オングストロームにおける吸光度スペクト
ル(光学密度単位OD、x10-4で表わす)(実線)ならびに対応する溶出勾配
の塩化メチレン濃度(破線)を示す。2分と6分の間に溶出する大きな吸光度ピ
ークは誘導剤として使用した遊離の臭化ブロモフェナシルである。図12Bは、
それぞれの1分間画分に対するT細胞株DN1の増殖性応答を示す。CD1b拘
束性抗原応答はミコール酸と相関する広いピークとして見られる。図12Cは、
鹸化6,6−トレハロースジミコレート(コードファクター)はCD1b拘束性
T細胞株DN1による増殖性応答を刺激するが、鹸化トレハロースジベヘネート
は刺激しない。M.ツベルクロシス(H37Ra)またはM.カンサシイのいず
れかから精製されたトレハロースジミコレートの鹸化によってミコール酸ができ
た。トレハロースジベヘネート(合成コードファクター)も同じやり方で処理し
た。抗原濃度はx軸上にコードファクター1mlあたりのμgで示した。図12
D、図12Eは、M.ツベルクロシス(H37Ra)から精製したトレハロース
ジミコレート(H37Ra)を逆相HPLCで分析すると、ミコール酸ピークに
対応する画分によるCD1b拘束性T細胞株DN1の刺激が起きることを示すデ
ータを示す。M.ツベルクロシスの鹸化トレハロースジミコレートを図12A(
図12D)に示した実験と同様のクロマトグラフィーに付し、画分が細胞株DN
1による増殖性応答を誘導する能力があるかどうか調べた(図12E)。図12
Aからわかるように、生理活性は早期ミコール酸ピークと相関する。
図13は、M.ツベルクロシスのコードファクター(Sigma 社)から鹸化によ
って調製したミコール酸でパルス化したC1R細胞のCDトランスフェクタント
に対するDN1T細胞株の細胞溶解性応答のデータを示す。C1Rリンパ芽球様
細胞のCD1a、CD1b、CD1c、またはモックトランスフェクタントを、
トレハロースジミコレート(+)から調製したミコール酸または培地のみ(−)
でパルス化したものを細胞溶解性測定の標的として使用した。結果は特異的溶解
率(%)で示した。
図14A〜Cは、ミコール酸は分裂促進性はないが、CD1bによって拘束さ
れT細胞株DN1によって認識される特異的抗原であることを示すデータを示す
。ミコバクテリアに対して特異的な4つのT細胞株と別の2つのT細胞株につい
て、全M.ツベルクロシス超音波処理物、精製コードファクターから調製したミ
コール酸調製物、またはM.tb超音波処理物かコードファクターからHPLC
精製したミコール酸のいずれかに対する応答能力があるかどうかを調べた。3つ
の代表的なミコバクテリア特異的T細胞株の応答を次のように示した。DN1(
■)(DN、CD1b拘束、α:βTCR+)、DG.1(□)(CD4+、HL
A−DR7拘束、α:βTCR+)およびDN6(○)(DN、CD1c拘束、
α:βTCR+)。調べた6つのT細胞株のすべてについて、HLA−DR7陽
性個体のGM−CSF処理およびIL−4処理(CD1+)PBMCがAPCで
あった。図14Aは、M.tb(H37Ra、Sigma 社)の全超音波処理物に対
する3つのミコバクテリア特異的T細胞株の増殖性応答のデータを示す。抗原濃
度はx軸上にcpm x 10-3で示した。図に示した3つのT細胞株はいずれ
も全ミコバクテリア超音波処理物に応答する。図14Bは、M.tb超音波処理
物から単離したHPLC精製ミコール酸に対する増殖性応答。CD1b拘束性T
細胞株DN1だけが精製ミコール酸に応答するデータを示す。図14Cは、精製
M.tbコードファクター(Sigma 社)から作成したHPLC精製ミコール酸に
対する増殖性応答のデータを示す。CD1b拘束性T細胞株DN1だけが、コー
ドファクターミコール酸に応答して増殖する。同じ実験で調べた他の3つのT細
胞株すなわちSP−F3[ロンカルロら(Roncarlo,M.G.,et al.)、J.Exp.
Medicine 168:2139-2152(1988)](CD4+ α:βTCR+、DR拘束、破傷
風毒素特異的)、CP.1.15[モリタら(Morita,C.T.,et al.)、Eur.J
.Immunol. 21:2999-3007(1991)](DN、Vγ2Vδ2TCR+、ミコバクテリ
ア特異的)、およびBK6[ポーセリ(Porcelli,S.)、Nature 341:447-450(
1989)](DN、α:βTCR+、CD1aに対して自己反応性)はここでは示
さない。3つの株すべてが精製ミコール酸に応答したわけではなく、2つが特異
的抗原(破傷風毒素−SP−F3、<1kDaM.ツベルクロシス調製物−CP
.1.15)に対して応答して増殖した。BK6はCD1aに対して細胞溶解活
性を示すが、調べたどのタイプのCD1a+ APCに対しても応答して増殖する
ことができない[ポーセリ(Porcelli,S.)、Nature 341:447-450(1989)]。
図15A〜Bは、図に示したモノクローナル抗体がT細胞株2.13.DN1
(図15A)および8.23.DN1(図15B)の増殖性応答に及ぼす影響の
データを示す。
図16A〜Dは、T細胞株DN2に対するM.ツベルクロシス抗原のCD1c
拘束性提示のデータを示す。ベクター(モック、図16A)および図に示したC
D1タンパク質をコードするDNA分子(CD1a、CD1b、およびCD1c
)(それぞれ、図16B、16C、16D)でトランスフェクトしたCR1細胞
の細胞溶解測定の結果。トランスフェクトされた細胞はM.ツベルクロシスの存
在下(黒塗り丸)または非存在下(白抜き丸)で前培養した。
図17A〜Dは、T細胞株DN6に対するM.ツベルクロシス抗原のCD1c
拘束性提示。ベクター(モック、図17A)および図に示したCD1タンパク質
をコードするDNA分子(CD1a、CD1b、およびCD1c)(それぞれ、
図17B、17C、17D)でトランスフェクトしたCR1細胞の細胞溶解測定
の結果。トランスフェクトされた細胞はM.ツベルクロシスの存在下(黒塗り丸
)または非存在下(白抜き丸)で前培養した。
図18は、有機溶媒による抗原抽出後の超音波処理物中のM.ツベルクロシス
抗原に対するCD1c拘束性細胞株DN6の増殖性応答のデータを示す。増殖は
y軸上にcpm(3 Hチミジン取り込み量)単位で示した。APCはCD1発現
単球であった。6つの対数点における抗原力価を求め、代表的な対数点(抗原の
1:3,750希釈物)の結果を示した。バックグランドcpm(培地のみ対照
から求めた)をすべての値から差し引いた。
図19は、:抗原の鹸化前後の超音波処理物中のM.tb抗原に対するCD1
c拘束性細胞株DN6の増殖性応答のデータを示す。増殖性応答をy軸上にcp
m単位で示し、抗原濃度(希釈倍率の逆数で示す)をx軸上に示した。M.tb
(H37Ra株、Difco 社)の10mg相当量をPBS中で超音波処理し、その
まままたは鹸化してから使用した。すべての抗原希釈液は5ml中の200mg
凍結乾燥菌体の標準初期濃度に対して標準化した。
図20A−Bは、癩病患者皮膚病変由来のDNα:βTCR+ T細胞株がCD
1拘束性であることを示すデータを示す。図20A(上パネル)は抗CD1cm
AbがM.レプラエに対するT細胞株LDN1の増殖応答を特異的に阻害したこ
とを示すデータを表している。図20B(下パネル)は抗CD1b mAbがM
.レプラエに対するT細胞株LDN4の増殖応答を特異的に阻害したことを示す
データを示す。
図21は、M.レプラエの示された細胞画分に対するT細胞株LDN4の増殖
応答についてのデータを示す。
図22は、リポアラビノマンナン(LAM)の化学構造を示す。略語:Man
p=マンノピラノース;Araf=アラビノフルナオース。
図23は、CD1b拘束法でT細胞株LDN4がLAMに対して応答すること
を示すデータを示す。
図24は、LAM誘導体に対するT細胞株LDN4の応答についてのデータを
示す。略語:dLAM=ダシレイテッド(dacylated)LAM;PIM
=ホスファチヂルイノシトールマンノシド。
図25は、M.レプラエ由来のLAM(Lep LAM)ならびに治療学的に
単離されたM.ツベルクロシス(TBE LAM)および悪性実験株M.ツベル
クロシス(Rv LAM)由来のLAMに対してT細胞株BDN2が応答するこ
とを示すデータを示す。
図26A−Bは、T細胞株OGD1およびOAB8のフローサイトメトリー解
析についてのデータを示す。OGD1T細胞をビオチン結合抗γδTCRモノク
ローナル抗体TCRδ1あるいは抗Vδ1モノクローナル抗体δTCS1(PE
−ストレプトアビジンで検出される)により染色した(図26A)。OAB8T
細胞を抗αβTCRモノクローナル抗体BMA031(続いてPEストレプトア
ビジン)、抗CD4−FITCモノクローナル抗体OKT4、抗CD8−α鎖−
FITCモノクローナル抗体OKT8あるいは抗CD8−β鎖−FITC2ST
8−5H7によりラベルした(図26B)。
図27は、TCRγδ+ T細胞株OGD1がクロロホルム/メタノール抽出液
の有機相中に分配するミコバクテリア抗原に応答することを示すデータを示す。
有機画分について、ミコバクテリア ツベルクロシス(DIFCO,Detro
it,MI)の全PBS超音波処理物(200mg細菌/5mL PBS)をク
ロロホルム:メタノール(2:1,v/v)で抽出した(有機相対水相 4:1
,v/v)。コードファクターはSIGMA chemicals(St.Lo
uis,MO)から入手した。遊離ミコール酸を調製するため、コードファクタ
ーをけん化し(25%KOHを含むメタノール:H2O 1:1溶液、121℃
、1時間)、ミコール酸をヘキサン中に抽出した。調製物を二酸化窒素で乾燥し
、培地/子牛胎児血清に再懸濁し、標準増殖分析(3日間の測定で50000個
のT細胞と活性化された50,000個の単球)で異なる希釈についてテストし
た。
図28は、抗原をパルスした活性化単球に対するTCRγδ+ T細胞株の細胞
毒性分析で示されるように、TCRγδ+ T細胞株OGD1がCD1bで拘束さ
れることを示すデータを示す。標的細胞を調製するために、単球を抗原のない(
白ぬきのボックス)あるいは有機画分(黒塗りのボックス)と共に一晩インキュ
ベーションした。続いて標的細胞を51Crでラベルし、T細胞を標的細胞に対し
て10:1の割合で、種類の異なるブロッキング抗体(非モノクローナル抗体、
抗MHCI(BB7.7))、全抗CD1モノクローナル抗体の混合物、抗CD
1a(OKT6)、抗CD1b(WM25)、あるいは抗CD1c(10C3)
)に加えた。細胞毒性の測定を標準細胞毒性分析と同様に計算した。すなわち、
特異的細胞融解=(実験による−自発性/最大−自発性)×100。
図29は、CD8+ αβ+ T細胞株OAB8がミコバクテリアのミコール酸に
応答することを示すデータを示す。ミコール酸をHPLCによりM.tb.(実
験例4で述べられているように調製した)から精製し、1μg/mLで使用した
。コントロール抗原をジフテリア毒素(ダナファーバーがん研究所(Dana
Farber Cancer Instistute、Boston)のフィン
バーグ博士(Dr.R.Finberg)より入手、10μg/mLで使用)お
よびM.tb.LAM(実験例8中のように;1μg/mL)である。画分を培
地/子牛胎児血清に再懸濁し、図27に述べるようにテストした。
図30は、図27と同様に行った増殖分析により示されるように、CD8+ α
β+ T細胞株OAB8がCD1cによって拘束されることを示すデータを示す。
モノクローナル抗体を最終希釈1/200の腹水で培地に加えた。抗原は図29
に述べられているものと同様で、抗体は図28と同じものである。
好適な態様の説明 用語
抗原:(1)単独またはアジュバントと組み合わせて、動物における免疫応答
を誘導するとともに、(2)その動物の免疫系の1つ以上の抗原認識成分と特異
的に相互作用を示す分子、化合物または組成物。
外来抗原:正常健康動物にとって内因性でない抗原。
自己免疫抗原:自己免疫疾患における抗原からなる、動物体内の内因性分子、
化合物または組成物である抗原。「自己抗原」および「自家抗原」と同義。
CD1により提示される抗原:CD1ファミリーのタンパク質の1メンバーに
よって結合され、CD1+APCの表面上に表出される抗原。CD1により提示
される抗原はその起源およびそれらを認識するCD1ファミリーのメンバーによ
ってサイズと組成が異なる。本明細書で使用する場合、「CD1により提示され
る抗原」という用語は、本明細書中で同定される抗原および/または公知の方法
または本明細書に開示される手順を用いて単離される抗原を含む。「CD1拘束
性抗原」と同義。「CD1結合抗原」とは、適当なCD1分子に結合しているC
D1により提示される抗原をいう。
LAM抗原は、少なくとも1個のリポアラビノマンナン(LAM)またはその
誘導体からなる抗原をいう。
CD1ファミリーのタンパク質:構造、免疫学的交差反応性、および/または
分布に基づき既知のCD1分子と関連していることが同定されているタンパク質
の1群。ある特定のCD1タンパク質を、CD1ファミリーのタンパク質のメン
バーということもできる。CD1ファミリーのタンパク質のメンバーとしては、
CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、およびCD1eなどが挙げられるが
、これらに限定されない[ポーセリら(Porcelli,S.,et al.)、Immun.Rev.
120:137-183(1991)参照]。
CD1陽性細胞:CD1ファミリーのタンパク質の1つ以上のメンバーを発現
し、表出する細胞。「CD1+ 細胞」と同義。当該分野に熟練せる者であれば、
本明細書で説明する手順または当該分野において既知の手順を用いて、ある細胞
がCD1ファミリーのタンパク質の1つ以上のメンバーを発現しているかどうか
を判定することができる[実施例1およびポーセリら(Porcelli,S.,et al.)
、Immun.Rev.120:137-183(1991)参照]。
抗原提示細胞(APC):タンパク質担体を介して表面上に抗原分子を表出し
、T細胞に対して抗原を提示する細胞。抗原結合タンパク質担体としては、MH
CクラスI分子、MHCクラスII分子、およびCD1分子などが挙げられ、対
応するAPCはMHCI+ APC、MHCII+ APC、およびCD1+ APC
と呼ばれる。
CD1拘束性T細胞:CD1に結合したCD1により提示される抗原を認識し
うる成熟TCR陽性(TCR+)T細胞。CD1拘束性T細胞は、CD1に結合
したCD1により提示される抗原と相互作用を示すT細胞亜群を含んでいる。
CD4- 8- T細胞:CD4とCD8を発現しない成熟TCR+ T細胞。「二
重陰性T細胞」および「DN T細胞」と同義。CD4- 8- T細胞を同定する
技術は当該分野において既知であり、たとえば実施例1および/または既報[パ
ンチョムーシーら(Panchomoorthy,G.,et al.)、J.Immumo. 147:3360-3369
(1991)]に記載されているようにしてフローサイトメトリーを用いて本発明に
容易に使用することができる。このような手順を用いて、DN1、DN2、およ
びDN6という3つのCD4- 8- T細胞株が単離されているが、これらについ
ても本明細書で説明する。。
アジュバント:抗原とともに動物に導入されるとその抗原に対する1以上の免
疫応答を強化する分子、化合物または組成物。
遺伝子操作を受ける:この用語は、遺伝子変化を導入する目的で人為的操作に
付すことを示す。
試料:公知の手順または本明細書に開示する手順を用いて試験することができ
る溶液、乳剤、懸濁液、または抽出物。試料は可溶性抽出物または有機抽出物で
あってもよいが、これらに限定されない。実施例1と2にミコバクテリウム ツ
ベルクロシスから得られる様々なタイプの試料を示す。
接触:ある対象物を別の対象物とインキュベートするまたは近接して置く過程
。例えば、ある細胞を試料と接触させる場合、その細胞をその試料とともにイン
キュベートするということである。
分画:試料を、限定されないが、サイズ、電荷、溶解度、組成などの物理的ま
たは化学的性質に基づき、試料成分を分離する条件または手順に付すこと。分画
手順の例としては、選択的沈殿、有機抽出、サイズ排除透析またはクロマトグラ
フィー、およびイオン交換クロマトグラフィーなどが挙げられるが、これらに限
定されない。
発現:DNA分子の転写によって対応するmRNA分子ができ、それがリボソ
ームおよび関連細胞性因子によって任意にポリペプチドへと翻訳されることによ
って産物を生成させる過程。
表出(Displaying):タンパク質またはタンパク質:抗原複合体が第2の細胞
または第2の細胞によって表出される分子にアクセスできる場である細胞最外面
にタンパク質またはタンパク質:抗原複合体が局在化される過程。タンパク質ま
たはタンパク質:抗原複合体は、細胞の最外面に存在し、従って、第2の細胞お
よび/または第2の細胞によって表出される分子にアクセスできる場合にその細
胞によって表出されるという。
抗原のプロセシング:表出能を示すようにするために細胞性因子によって抗原
が処理される過程。
CD1ブロッキング剤:CD1により提示される抗原とCD1の相互作用をブ
ロックする能力またはCD1:抗原複合体とそれらのコグネートT細胞受容体の
相互作用をブロックする能力を有する組成物または化合物。ブロッキング剤とし
ては、(1)CD1と結合する薬剤、(2)CD1により提示される抗原と結合
する薬剤、(3)CD1:抗原複合体と結合する薬剤、(4)CD1:抗原複合
体を認識するT細胞受容体と結合する薬剤、および(5)CD1により提示され
る抗原のプロセシングを防止する薬剤などが挙げられる。
本発明
本発明は、CD1分子がT細胞に対するLAM抗原を提示する機能を果たすと
いう予想外の新知見に基づくものである。本発明はさらに、細胞がCD1を発現
するように誘導することができ、従って、T細胞に対する抗原を提示する能力を
有することができるという知見に基づくものである。かかる提示は、顆粒球/マ
クロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)やインターロイキン−4(IL
−4)などの、しかしこれらに限定されないサイトカインと細胞を接触させるこ
とを含むことができる。
これら2つの知見に基づき、本発明は、
−試料中にCD1により提示されるLAM抗原の存在を検出する方法;
−該CD1により提示される抗原を単離する方法および単離された抗原;
−CD1により提示される抗原を含むワクチンおよび予防接種の方法;
−CD1抗原提示をブロックする方法;
−CD1ブロッキング剤を同定および/または単離する方法ならびに単離された
CD1ブロッキング剤;
−CD1発現を誘導する方法;および
−本明細書に開示された方法に使用するためのT細胞からなる。
1つの態様においては、本発明は、試料がCD1により提示される抗原を含ん
でいるかどうかを判定する方法を提供する。1つのそのような方法においては、
試料中のCD1により提示される抗原の存在は、第1に試料をCD1陽性細胞と
接触させ、第2にその第1段階の細胞をT細胞と接触させ、第3にT細胞の増殖
を測定することによって判定することができる。
T細胞のクラスをキャラクタライゼーションする方法およびT細胞の亜集団を
単離する方法が知られている[ワイソッキとサトー(Wysocki,L.J.,and Sato,
V.L.)、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 75:2844:2848(1978);ワシクとモリモ
ト(Wasik,M.A.,and Morimoto,C.)J.Immunol. 144:3334-3340(1990);ハリ
マンら(Harriman,G.R.,et al.)、J.Immunol.145:4206-2414(1990):コウ
ロバら(Koulova,L.,et al.)、J.Immunol.145:2035-2043(1990);スチュ
ワードとメイル(Steward,M.,and Male,D.)、Chapter 25 in Immunology,
2d Ed.,Roitt,I.,et al.,eds.,Gower Medical Publishing,London,New Y
ork,1989]。
イン・ビトロでT細胞を培養する方法、およびT細胞をミエローマなどの非生
育制限細胞と融合させて不死化させる方法が知られている[パウルら(Paul,W.
E.,et al.)、Nature 294:697-699(1981);ウイリアムス(Williams,N.)、
Nature 296:605-606(1982)]。
CD1により提示される抗原と反応するT細胞亜群を同定する技術は、当該分
野において公知であり、たとえば実施例および/または既報[パンチョムーシー
ら(Panchomoorthy,G.,et al.)、J.Immuno. 147:3360-3369(1991)]に記
載されているような公知の技術により、フローサイトメトリーを利用して、本発
明に使用することができる。本発明は、T細胞集団を強化することでCD1によ
り提示される抗原に対して反応性を示す単離T細胞クローンを得る方法を提供す
ることによって、これらの技術をさらに進歩せしめるものである。例えば、T細
胞の集団を細胞分裂させ、CD1+ APCおよびCD1により提示される抗原の
存在下の増殖に基づき、またはCD1により提示される抗原の存在下でのCD1
分子を発現するトランスフェクト細胞に対する細胞溶解性活性に基づき、混合T
細胞亜集団を単離する。このような手順を用いて、例えば、CD4- 8- T細胞
株、CD8+ TCRαβ+ T細胞株およびγδ+ T細胞株を含むかかるCD1と
反応性を示すT細胞亜群を同定したが、これらに限定されない。
本発明はさらに、細胞上にCD1発現を誘導する方法を提供する。1つのその
ような方法においては、当該分野において公知のように、細胞を1つ以上のサイ
トカインと接触させることによって、細胞をCD1が発現するように誘導するこ
とができる。好ましいCD1誘導用サイトカインとしては、顆粒球/マクロファ
ージコロニー刺激因子(GM−CSF)、GM−CSFとインターロイキン−4
(IL−4)を組み合わせたもの、またはやインターロイキン−3(IL−3)
が挙げられる。実施例1は、10%ウシ胎仔血清を加えたRPMI−1640培
地中で単球をそれぞれ100単位のGM−CSFとIL−4に60時間接触させ
ることによって、単球をCD1ファミリーの様々なメンバーを発現するよう誘導
することができることを開示している。当該分野に熟練せる者であれば、本明細
書で開示する方法と材料を用いて、接触工程がCD1発現の誘導に十分である場
合に、接触時間、サイトカインのタイプと濃度、および接触条件を変更して同様
の結果を容易に得ることができる。
当該分野においてはT細胞増殖を判定するいくつかの手順が既知であり、上記
方法に使用することができる。当該分野に熟練せる者であれば、このような手順
を本発明における使用に適応させることが容易に可能である。実施例1で説明す
る1つのそのような手順では、液体シンチレーションおよび既報[モリタら(Mo
rita,C.T.,et al.)、Eur.J.Immunol. 21:2999-3007(1991)]に記載の方法
によって3 H−チミジンの取り込み率を測定する。
本発明はさらに、試料からCD1により提示される抗原を単離する方法を提供
する。1つのそのような方法においては、試料をまず常法を用いて分画する。次
いで、上記で概説したようにして、試料の画分にCD1により提示される抗原が
含まれているかどうかを調べる。実施例2と3は、クロロホルム:メタノールに
よる有機抽出とケイ酸クロマトグラフィーを用いてM.ツベルクロシス抽出物含
有試料を分画することでCD1により提示される抗原を精製する分画手順につい
て説明している。
本発明はさらに、CD1により提示される抗原へのCD1結合の特異性に基づ
きCD1により提示される抗原を単離する方法を提供する。1つのそのような方
法においては、まずCD1により提示される抗原を含有する試料を精製CD1ま
たはCD1を発現し表出する細胞(「CD1+ 細胞」)と接触させる。次いで、
生じた抗原:CD1複合体または抗原:CD1+ 細胞複合体を試料から分離する
。この手順を用いて、精製された抗原:CD1複合体または抗原:CD1+ 細胞
複合体が得られる。CD1により提示される抗原をさらに精製するためには、い
ずれかのタイプの複合体をCD1結合抗原のCD1分子からの遊離に適した条件
下で処理する。
当該分野の熟練者であれば、上記2つの単離方法を組み合わせてCD1により
提示される抗原の別の単離方法を確立することができる。1つのそのような組み
合わせにおいては、CD1に対するCD1により提示される抗原の結合に基づく
精製方法を実施する前に、上記のようにして試料を分画する。
本発明はさらに、公知の手順または本明細書に開示する手順を用いて同定また
は単離されるCD1により提示される抗原を提供する。MHCにより提示される
抗原とは異なり、CD1により提示される抗原はポリペプチドに限定されない。
実施例2〜4で詳細に説明している1つのCD1により提示される非ペプチド抗
原は、M.ツベルクロシスから単離されたミコール酸を含んで成るリピド抗原で
ある。実施例5と6で説明している別のCD1により提示される抗原はさらに複
雑なリピドである。実施例7〜9に記載のように、M.レプラエ由来のCD1に
より提示される抗原は、リポアラビノマンナン(LAM)である。CD1により
提示される抗原は疎水性であり、ワクチンの処方と開発に用途がある。
本発明のCD1により提示されるLAM抗原は、すなわち、公知の手順または
本明細書に開示する手順を用いて同定または単離されたものであり、ワクチンと
して容易に使用できる。当該分野の熟練者であれば、通常の処方方法を用いてワ
クチン用単離CD1により提示される抗原を処方することができる。かかるワク
チンのCD1により提示される抗原に加えて、ワクチンは、少なくとも1種の追
加のCD1分子または少なくとも1種のMHC−IもしくはMHC−IIにより提
示される抗原をさらに含むことができる。[Remington's Pharmaceutical Scien
ces,18th Ed.,Gennaro,A.R.,ed.,Mack,Easton,1990;The Pharmacologis
t Basis of Therapeutics,7th Ed.,Gilman,A.G.,et al.,eds.,MacMillan
,New York,1985;Avery's Drug Treatment: Ptinciples and Practice of Cli
nical Pharmacology and Therapeutics,3rd edition,ADIS Press,Ltd.,Will
iams and Wilkins,Baltimore,MD(1987)参照]。
本発明のCD1により提示される抗原は、本明細書に開示するようにして広範
囲の純度に精製することができる。当該分野の熟練者にとっては、様々な精製方
法を用いて、目的に必要な程度まで精製されたCD1により提示される抗原を得
る手段が公知である。
本発明のワクチンは、精製されたCD1により提示される抗原を用いて処方す
ることができる。また、CD1結合抗原を用いて処方することもできる。CD1
拘束性抗原は抗原とCD1の複合体としてT細胞に提示されるので、場合によっ
ては抗原:CD1複合体の使用によってさらに優れた免疫特性を得ることができ
る。
本発明のCD1により提示される抗原は哺乳類を含む、脊椎動物に投与できる
。本発明のワクチンは予防用および治療用ワクチンとして、人間と動物両方に適
用するであろう。さらに、治療に用いられる際、これらのワクチンは化学療法と
組み合わせることができ、多くの病気に対するより効果的な治療をすることが可
能である。
抗原材料は通常の賦形剤すなわち、免疫学的活性構成成分に有害に反応せず、
非経口、粘膜、あるいは局所的にも使用できるような、医薬的に許容され得る有
機または無機担体に混ぜて使用できる。そのような担体は生理食塩水、生理食塩
水緩衝液、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、油、およびこれら
を組み合わせたものを含むが、これらに限定されない。担体と組成物は滅菌する
ことができる。調剤は投与の形式に合わせる。非経口投与は、静脈、皮下、筋内
法により移植組織を含む生物体への物質の導入を含むことができる。粘膜投与は
肺、鼻腔内、口腔内、膣、直腸投与を含んでいる。
担体を都合のよい時間でワクチンに加えることができる。凍結乾燥したワクチ
ンの場合、例えば担体を投与直前に加えることができる。または、担体を有する
最終産物を製造できる。
本発明は様々な医薬組成物を提供する。そのような組成物は治療上(あるいは
予防上)有効量の抗原またはCD1:抗原複合体、および担体を含んでいる。ま
た、その組成物は、もし望むなら、少量の湿潤剤あるいは乳化剤、pH緩衝剤、
あるいも防腐剤も含むことができる。典型的な防腐剤はソルビン酸カリウム、メ
タ重亜硫酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール等を
含むことができる。
その組成物は液状溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル、持続放出処
方、あるいは、粉末にできる。投与方法によって組成物を調剤する方法を指示で
きる。例えば、組成物を従来的なバインダーとトリグリセリドのような担体とと
もに坐薬として調剤できる。経口処方は植物成分を含めることができ、〔ハック
ら(Haq,T.A.,et al.),Science 268;714−7
16(1995)〕、あるいは医薬等級の、マンニトール、ラクトース、デンプ
ン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグ
ネシウム等の標準担体を含めることができる。
また、様々なアジュバントをCD1により提示される抗原と混合させると、細
胞性および液性応答を増幅するのに使用できる。人間への投与に選択されるアジ
ュバントは、ミョウバン、水酸化アルミニウム、あるいはリン酸アルミニウムの
ような、アルミニウム塩である。他のアジュバント、例えば、生物分解性物質を
含んでいる油ベースのエマルジョンを、抗原と組み合わせてテストして、有効か
つ安全であることが分かる。油ベースのエマルジョンであるアジュバントはシン
テックス製(Syntex formulation)SAF−1、チバーガイ
ジー製(Ciba−Geigy formulation)、リビ製(Ribi
formulation)を含んでいる。〔ラビノビッチら(Rabinov
ich,N.R.et al)、Science 265:1401−1404
(1994)〕を参照。フロイントの不完全または完全なアジュバントも効果的
でありえる。
投与方法は制御されるあるいは根絶させる予定の病気や微生物のタイプに合わ
せて変える。ワクチンの投与量は抗原の量、その抗原性のレベル、および投与経
路に依存する。当該分野に熟練せる者であれば各抗原に対する免疫応答について
の投与量や投与法を容易にたやすく滴定できる。
非経口利用、特に注射に合うものについては、滅菌溶液、好ましくは油性また
は水性の溶液、ならびに懸濁液、エマルジョン、または坐薬を含むインプラント
がある。腸あるいは粘膜への適用(口腔および鼻腔粘膜経由を含む)に対して錠
剤、液体、点滴剤、坐薬、あるいはカプセル状が特に有用である。甘い賦形剤が
使用されているシロップ、エリキシルや同様の薬剤を用いることができる。また
、局所利用は、例えば眼内投与に使用できる。投与の別法としては、米国特許第
4,900,549号明細書(あるいは欧州特許出願公開第0 604 727
A1号明細書(1994年7月6日公開日)記載の免疫刺激複合体(ISCOM
)を含むことができる。さらに、ウイルスベクター、リポソームおよびミクロス
フェア、ならびに小カプセルは有用で利用できる。ラビノビッチ(上述)を参照
。
結核のような肺病について、肺への投与は予防目的に、あるいは迅速かつ特異
的に局在した治療法のために好ましい。肺への投与は例えば様々な当該分野にお
いて公知の送達装置を用いて完成することができる。〔ニューマン(Newma
n,S.P.)(1984)、Aerosols and lung、クラーク
とデイビア編、Butterworths,London,England,1
97−224ページ;国際公開第92/16192号パンフレット;国際公開第
91/08760号パンフレット;NTIS特許出願第7,504,047号明
細書(1990)〕を参照すると、噴霧器、計測器付投与吸入器、および粉末吸
入器を含むがこれらに限定されない。様々な送達装置は工業的に利用でき、使用
可能である。例えばUltravent吸入器(Mallinckrodt,i
nc.,St.Louis,Missouri);AcornII吸入器(Mar
quest Medical Products,Engelwood,CO)
がある。そのような装置は通常そのような装置から分散するのに適合する調剤の
使用を含んでおり、その中に推進用物質が存在する。
LAMあるいはその誘導体がT細胞増殖を引き出すことを発見したことは、C
D1分子により提示される抗原のスペクトラムを広げ、全てのグラム陰性細菌や
ほとんどのグラム陽性細菌(ストレプトコッカス種とスタフィロコッカス種を含
む)や様々な寄生性原生動物に対して効果があるCD1により提示される細胞か
ら成るワクチンに機会を与える。全てのグラム陰性細菌はリポマンノースに構造
が似ているリポポリサッカリド(LPS)を含んでいる。ほとんどのグラム陽性
の細菌はリポタイコ酸のような構造的に関連のあるグリコリピドを含んでいる。
さらに、多くの病原性原生動物の化学組成物はリーシュマニアのリポホスホグリ
カンのようなLAM様グリコリピドを含んでいる。〔オーランディとツルコ(O
rlandi,P.A.and S.J.Turco),J.Biol.Che
m.262:10384−10391〕。糸状菌の細胞壁と他の細胞成分はリポ
グリカンも含んでいるようである;したがって、CD1により提示される抗原か
らなるワクチンは脊椎動物への糸状菌の感染を予防しあるいは治療するために使
用できる。これらの抗原は、現存の原核生物や真核生物に区別なく、LAM、そ
の誘導体、あるいは微生物中の機能的同等物を含んでいる。
現在、原生動物の寄生に対するワクチンは存在しないし、マスインジェクショ
ンも可能ではない。例えば、〔ヌッセンヅベイグとロング(Nussenzwe
ig,R.S.and C.A.Long)Science 265:1381
−1383(1994)〕参照。原生動物が原因の病気の例にはマラリア、旋毛
虫症、フィラリア症、トリパノゾーマ症、住血吸虫症、トキソプラズマ症、リー
シュマニア症があるがこれらに限定されない。原生動物感染は細菌感染よりも制
御することや根絶するのが難しいのは、原生動物を殺す化合物がしばしば宿主に
対して毒性を示すからである。例えば、トリパノゾーマ種が原因である病気を取
り扱うのに用いられるほとんどの薬品は、深刻な副作用やさらに死の原因ともな
りえる。さらに、多くの原生動物種の薬抵抗性はだんだん世界中のほとんどの地
域で共通になっている。
原生動物中におけるグリコリピドの存在は、CD1により提示される疎水性抗
原に対するT細胞増殖に基づく全く新しいクラスのワクチンへの扉を開く。それ
自体または抗原タンパク質と組み合わせてグリコリピドあるいはグリコリピド誘
導体を取り込んだワクチンは、効き目があり費用の点でも効率のよい原生動物寄
生用治療剤であることを証明できる。そのようなワクチンの利点は毒薬を投与し
なくてもよくなり、あるいはより少ない投与量でCD1により提示される抗原に
結合して投与させ、感染を制御することができる点である。
本発明はさらに、T細胞に対するCD1拘束性抗原提示の阻害物質すなわちC
D1ブロッキング剤の測定方法を提供する。1つのそのような方法においては、
CD1ブロッキング剤を用いてCD1拘束性抗原がCD1に結合する能力をブロ
ックすることによってCD1抗原提示を阻害する。本明細書で使用する場合、(
1)CD1分子に対するCD1により提示される抗原の結合または(2)コグネ
ートT細胞受容体へのCD1:CD1により提示される抗原複合体の結合を低下
させる場合に、CD1ブロッキング剤が「CD1拘束性抗原提示を阻害する」と
いう。そのような結合を検出不可能なレベルまでブロックしうるCD1ブロッキ
ング剤もあれば、そのような結合をわずかしか低下させないCD1ブロッキング
剤もある。CD1ブロッキング剤としては、(1)CD1と結合する薬剤、(2
)CD1により提示される抗原と結合する薬剤、(3)CD1:抗原複合体と結
合する薬剤、および(4)CD1:抗原複合体を認識するT細胞受容体と結合す
る薬剤などが挙げられる。それぞれのブロッキング剤の具体例としては、(1)
CD1により提示される抗原と結合するCD1分子の一部分に結合してそれをブ
ロックするポリクローナルまたはモノクローナル抗体、(2)CD1と結合する
CD1により提示される抗原の一部分に結合してそれをブロックするポリクロー
ナルまたはモノクローナル抗体、(3)T細胞受容体のCD1:抗原結合部分に
由来する合成オリゴペプチドであって、無傷のT細胞受容体によって結合されて
いるCD1:抗原複合体の一部分に結合してそれをブロックするもの、および(
4)精製CD1分子またはその合成誘導体に化学的に結合させたCD1により提
示される抗原から成る合成化合物などが挙げられる。
CD1拘束性抗原の抗原提示を阻害する別の方法においては、抗原:CD1複
合体とT細胞上のTCR分子との相互作用をブロックするCD1ブロッキング剤
を用いることができる。提示段階を阻害することによって、特定のT細胞亜群の
活性化を阻害することができる。
TCR分子由来ペプチドを用いて自己免疫疾患患者を治療するパイロット試験
が進行中である[オクセンベルグら(Osenberg,J.R.,et al.)、J.Neurol.
Sci.115(Suppl.):S29-S37(1993)]。
本発明のCD1により提示される抗原を認識するT細胞によって表出されるT
CRポリペプチドをコードするDNA分子は当該分野において既知の方法によっ
て単離される[オクセンベルグら(Oksenberg,J.R.,et al.)、Proc.Natl.
Acad.Sci.(USA) 86:988-992(1989);オクセンベルグら(Oksenberg,J.R.,et
al.)、Nature 345:344-346(1990)および正誤表、Nature 353:94(1991);ウ
エマツら(Uematsu,Y.,et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 88:534-53
8(1991);パンザラら(Panzara,M.A.,et al.)、Biotechniques 12:728-735
(1992);ウエマツ(Uematsu,Y.)、Immunogenet. 34:174-178(1991)]。
DNA配列をポリペプチド配列に変換し、TCRポリペプチドの抗原結合可変
領域に対応するポリペプチド配列の一部を用いて、APC上のCD1:抗原複合
体と結合し、それにより抗原提示を阻害する合成オリゴペプチドを設計する。
オリゴペプチドは常法[スチュワードとヤング(Steward and Young)、Solid
Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.,Rockland,Illinois,1985
]に従い化学的に合成し、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によっ
て反応混合物から精製する。
付加的にあるいは代替的に、抗TCR抗体および抗TCR結合ペプチドを作成
する方法もMHC提示に関しては当該分野において公知であり、本明細書に開示
するCD1提示方式に容易に適応させることができる[ストロミンジャー(Stro
minger,J.L.)、Cell 57:895-898(1989);デービスとブジョルクマン(Davis,
M.M.,and Bjorkman,P.J.)、Nature 334:395-404(1989)]。
当該分野の熟練者であれば、公知の抗体作成方法ならびに妥当なブロッキング
剤デザインを利用して、本発明のブロッキング剤を得ることができる[ハーロー
とレーン(Harlow,E.,and Lane,D.)、Antibodies: A Laboratory Manual,C
old Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,1988 ;Synhtetic Peptides:An
swers Guide,Freeman,W.H.,New York,1991;カスプルザク(Kasprzak,A.A.
)、Biochemistry 28:9230-9238(1989)]。付加的にあるいは代替的に、分子量
的に多様な分子のライブラリーをスクリーニングして、CD1ブロッキング剤で
ある個々のメンバーの分子を検出することができる。CD1介在T細胞増殖性応
答および/または細胞溶解性応答を阻害する能力に基づき、本明細書に説明する
材料と方法を用いて、有効なCD1ブロッキング剤を同定することができる。
上記本発明の態様は、単独で、または互いに組み合わせるか、他の補足的方法
および/または組成物と組み合わせて、目的の用途に使用することができる。
当該分野に熟練せる者であれば、以下の実施例を参照することによって本発明
の実施手順と方法をさらに詳細に理解できるが、これらの実施例は本発明の範囲
および本発明に係る請求の範囲を制限するものではない。
実施例1:CD1bによる抗原提示 方法
フローサイトメトリーは、下記のモノクロナール抗体(mAbs)を用いて既報に
記載されているような(パンチャモオルシィー(Panchamoorthy,G.)ら、J.Immu
nology 147:3360-3369(1991))方法で実施された:P3(IgG1 コントロール; パン
チャモオルシィー(Panchamoorthy,G.)ら、J.Immunology 147:3360-3369(1991
))、OKT6(anti-CD1a;ラインハーツ(Reinherz,E.)ら、Proc.Natl.Acad.Sc
i.(USA) 77:1588-1592(1980)),4A7.6(anti-CD1b;オリーブ(Olive,D.)ら、I
mmunogenetics 20:253-264(1984)),10C3(anti-CD1c;マーチン(Martin,L.H)
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 84:9189-9193(1987)),W6/32(anti-HLA-A,B
,C; ブロドスキー(Brodsky,F.M.)およびパーハム(Parham,P.P.)J.
Immunology 128:129-135(1982)),BMA031(anti-α: βTCR;ラニエル(Lanier,L.L
.)ら、in Leukocyte Typing III,McMichael,A.J.,ed.,pp.175-178、Oxford
University Press,1987),OKT4(anti-CD4; ラインハーツ(Reinherz,E.)ら
、Proc.Natl.Acad Sci.(USA)77 :1588-1592(1980)),OKT8(anti-CD8α:ラ
インハーツ(Reinherz,E.)ら、Proc.Natl.Acad,Sci.(USA) 77:1588-1592(
1980))および 2ST8-5H7(anti-CD8β; シューエ(Shiue,L.)ら、J.Exp.Me
d. 168:1993-2005(1988))。
単球を正常なドナーの濃縮白血球からプラスティック接着により単離した(ア
ネゴン(Anegon,I.)ら、J.Immunology 147:3973-3980(1991),そして 0.53 mM
EDTA を含む燐酸緩衝食塩水(PBS)(PBS/EDTA)の中で 37℃下でインキュベー
トすることにより分離した。接着細胞は通常>90% CD14+ および MHC classII+
であり、又表面染色により CD1a,CD1b および CD1c に対して陰性であることが
判った(データは示されていない)。CD1 発現を誘発する為に、単球を1ml当
たり 100単位の GM-CSF および IL-4(Genetics Research Institute)をそれぞれ
含む10%仔牛胎児血清(FCS,Hyclone)を含む RPMI-1640(Gibco)の中で60
時間培養した。細胞は上記のように PBS/EDTA を用いて採取した。
T細胞株 DN1は、無作為に選ばれた正常ドナーの末梢血液から確立した。非接
着性の単核球細胞を mAbs OKT4および OKT8 およびうさぎの補体を用いて処理し
、そして残りの生存細胞をOKT4 mAb(anti-CD4)、OKT8 mAb(anti-CD8α)および
anti-TCRδ1 mAb(ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Immun.Rev.120:137-183(1991))
の混合物の中に1時間懸濁し、洗浄し、そしてやぎの抗マウス免疫グロブリンと
結合した磁気ビーズ(Dynal)を用い4℃で30分間インキュベートした。CD4+
および/又は CD8+ および/又はδ -TCR 細胞の磁気分離および除去の後に、残
りのCD4- 8- α: βTCR+細胞を1ml当たり 100単位のGM-CSFおよびIL-4をそ
れぞれ含む完全培地(10% FCS およびモリタ(Morita,C.T.)ら、により以前に
記載された追加の添加物(Eur.J.Immun. 21:2999-3007(1991)を含む RPM-1
640)の中の同数の自己由来単球と共に培養された。脱湿された桿菌(H37Ra 株(Di
fco))をPBS の中で超音波処理し、ついで超音波被処理物を透明化する(即ち、
不溶物質を除去する)為に 100,000g で遠心分離することにより作られたM.ツ
ベルクロシス可溶性抽出物が加えられて10μg/mlのバクテリアタンパク質濃度
にされた。超音波処理のプロセス中にCHAPS 又はオクチルグルコシドのような界
面活性剤を加えることにより、M.tb.の可溶水性超音波被処理体から可溶性の更
に高い抗原性(即ちT細胞増殖性の)活性が得られる;上記の界面活性剤を加え
ることがなければ超音波処理後の上清中に抗原性の活性の 90 から95% が失われ
る。培養物は、10日から14日毎に完全媒地中のM.ツベルクロシスおよび異
種CD1+ 単球(上述のように CD1を発現するように誘発された)を用いて改めて
刺載を与え、そして3日から4日毎に 1nM組換えインターロイキン-2(IL-2)を
含む新鮮な媒地を補給した。
T細胞増殖応答測定はそれぞれ 5×104のT細胞および 96 ウエルの平底マイ
クロタイタープレート(Linbro)の中の完全培地 200μlの中の照射された(5,0
00 Rad)APCs を用いて3重に実施された。M.ツベルクロシスに関して記載さ
れたと同様に、M.レプラエ(leprae)およびエシェリシア・コリ(Escherichia
coli)可溶性抽出物が作られた。モノクロナール抗体を精製免疫グロブリンとし
て25 μg/mlの最終濃度で加えた。培養物を、1μCi3H−チミジン(6.7Ci/mmo
l,New England Nuclear)による6時間のパルスの後5日目(mAb ブロッキング
の場合には3日目)に採取し、そして3H の取り込みを液体シンチレーションカ
ウンティングにより測定した。結果は、3つの培養物の3H −チミジン取り込み
の1分当たりの平均カウント(CPM)として表した。取り出された単球又は全末梢
血液の単核球細胞(PBMCs)は、上述のように組換え GM-CSF および組換え IL-4
により或は IFNγ 100単位/mlを用いて60時間処理した後、それらをT細胞
と組み合わせて増殖測定に使用された。T細胞クローン DN1.C7 は、限界希釈培
養する際にフィトヘマグルチニン(PHA)刺激によりDN1 から誘導され、そ
して上述のように PHA刺激および IL-2 を用いて増殖せしめられた4つの広汎に
特性化されたサブクローンの代表である。(Morita,C.T.)ら、Eur.J.Immun. 21:
2999-3007(1991)。DN1株から誘導されたすべてのクローンは、図 1b に示さ
れたもの、即ち、α: βTCR 発現、CD4 の発現不能および CD8の最小発現又は発
現不能とは識別出来ぬ表面表現型を持っていた。
T細胞の細胞溶解性応答測定は下記のように行われた。C1R 細胞のトランスフ
ェクションの方法および51Cr 放出による特異的細胞溶解活性の測定方法は既に
報告されている。それぞれ、バルク(Balk,S.P.)ら、Science 253:1411-1415(
1991)およびモリタ(Morita,C.T.)ら、Eur.J.Immun. 21:2999-3007(1991)。
CD1aを示す細胞を溶解させるα: β TCR細胞障害性T細胞クローンである BK6は
上述のような SLEを持つ患者の血液から単離され(ポルセリー(Porcelli,S.)ら
、Nature 341:447-450(1989))、そしてCD1cを示す細胞を溶解させるα: β TCR
を細胞障害性T細胞クローンであるクローン 3C8は同じ方法を用いて正常なドナ
ーの血液から単離された。トランスフェクトされた細胞は、51Cr で標識されそ
して約 50:1 のエフエクター(T細胞)対ターゲット(トランスフェクトされた
細胞)比で細胞溶解測定にターゲット細胞として用いられた。51Cr放出の測定法
および比溶解パーセンテージを計算する方法は記載されている。ブレンネル(Bre
nner,M.B.)ら、Nature 325:689-694(1987)。
T2細胞の安定なトランスフェクタントを、C1R細胞に対して記載された方法
を用いて作られた。バルク(Balk,S.P.)ら、Science 253:1411-1415(1991)。グ
ルタルアルデヒド固定およびクロロキン実験の為の APCs は、上述のようにGM-C
SF 処理された PBMCsおよび IL-4 処理された PBMCsであり、そして APCs のグ
ルタルアデヒド固定およびクロロキン処理は公表された方法によって行った。チ
ェスナット(Chesnut,R.W.)ら、J.Immun.129:2382-2388(1982); ロンカルオ
ロ(Roncarolo,M.G.)ら、J.Immunol.147:781-787(1991)。CD4 + T 細胞株
DG.1 は、滑液リンパ球を自己由来の EBV- 形質転換された B 細胞および
M.ツベルクロシスの精製タンパク質誘導体(PPD,Statens Serum Institute;
データは示されていない)で反復刺激された HLA-DR7+ リューマチ性間節炎患者
由来のものであった。増殖性応答測定は上述のように行われたが、但しこの場合
にはウエル毎に 2×105のAPCsが加えられ、そして3H−チミジンの取り込みは3
日後に測定された。結果
CD1分子による抗原提示を検出するために、通常は有意なレベルのこれらの分
子を発現せぬ末梢血液単球について CD1a,CD1b および CD1c の発現を誘発する
各種の組替えサイトカインの能力を評価した。Leukocyte Typing IV,Knapp,W.
,ed.,Oxford University Press,Oxford,U.K.,pp.251-269,1989。CD1a,C
D1bおよび CD1c の高レベルが、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)とイ
ンターロイキン-4(IL-4)を組合わせて培養された際の単球において一貫して観
察された(図 1a)。上記の代わりに、GM-CSF を単独で使用することが出来るが、
この場合には GM-CSF と IL-4 の組合わせの場合と比較してCD1 発現の得られた
レベルは幾らか低い。インターロイキン-3(IL-3)も又単独又は他のサイトカイ
ンとの組合わせで用いることが出来る。サイトカインなしで培養された単球又は
インターフェロン- γと共に培養された単球は、有意のレベルでは CD1a,CD1b
又は CD1c を発現しなかった(データは示されない)。
単球は有効な抗原提示細胞(APCs)であるから、我々は CD1+ 単球は、外因性
抗原に対する CD1拘束性T細胞応答を刺激するのではないかと考えた。今日まで
同定された大抵のCD1特異的T細胞はダブルネガティブ(DN;CD4 -8 -)表現
型(ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Nature 341:447-450(1989);ファウレ(Faur
e,F.)ら、Eur.J.Immun.20:703-706(1990))であるから、我々はこの細胞の
集合に注目し、そしてα: βTCR + CD4- 8- T細胞の末梢血液をM.ツベルク
ロシスの可溶性抽出物および異種CD1+ 単球の可溶性抽出物で反復刺激する
ことによりT細胞株を作り出した(図1b)。
得られたT細胞株(DN1 と称される)の機能を調べると、これらのT細胞はM
.ツベルクロシスからおよび密接に関連を持つ M.レプラエ桿菌由来の抗原に対
しては特異的増殖性応答を示したが、しかし E.coli由来の抗原や破傷風毒素の
ような関係のない細菌性抗原には該応答を示さなかった(図 2a)。これらの応答
はGM-CSFおよび IL-4(図 2b)により予め処理されている単球に依存しており、そ
して多形性 MHC決定基により拘束されることはなかった(図 2c)。この MHC拘束
性の欠如は、非 MHC分子による抗原提示上の拘束性と一致した。CD1 分子がM.
ツベルクロシス抗原提示に必要であるか否かを決定する為に、CD1分子又は MHC
分子に特異的なモノクロナール抗体(mAbs)のM.ツベルクロシスにより誘発され
るT細胞株 DN1および代表的なサブクローン、DN1.C7 の増殖に対する効果を測
定した。anti-CD1b mAb はM.ツベルクロシスにより誘発される増殖性応答の有
意な遮断を示すに過ぎず、又 anti-CD1a mAb又は CD1c mAb 又は MHCクラスI又
はクラスII分子の単形性決定基に対する mAbを使用しては一貫性のある効果は認
められなかった(図 2d)。
B細胞トランスフェクタントは α: β TCR CD4- 8 - 細胞溶解性T細胞活性
に対する有効なターゲットである。Bリンパ芽球様細胞株 C1R(ゼンモール(Zen
mour,J.)ら、J.Immun.148:1941-1948(1992))を用いることにより、同等のレ
ベルで CD1a,CD1b 又は CD1c を発現し機能する安定なトランスフェクタントが
作り出され、そして細胞溶解性測定に於いてM.ツベルクロシスを提示するそれ
らの能力がテストされた。CD1bをコードする DNA配列を用いてトランスフェクト
され、かつ側定前にM.ツベルクロシスと共にインキュベートされた C1R細胞の
みが、α: β TCR DN T細胞株DN1 およびそのサブクローン DN1.C7により溶解
された(図 4a および b)。このCD1b拘束性応答の特異性はM.ツベルクロシス
抗原に暴露されることなく分裂誘発因子刺激により誘導された2つのコントロー
ル CD4- 8 - α: β TCR+ T細胞クローン、BK6 および 3C8を用いて確認さ
れた。既報の報告は BK6および 3C8はそれぞれ CD1a および CD1c を発現するタ
ーゲット細胞株を溶解することを実証している(データは示されない)。この開
示の行われる以前に記載されているすべての他の CD1反応性T細胞クローンに関
しては(ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Nature 341:447-450(1989); ファウ
レ(Faure,F.)ら、Eur.J.Immun. 20:703-706(1990); バルク(Balk,S.P.)ら
、Science 253:1411-1415(1991))、これらのクローンは自己反応的であると考
えられ、外因性の抗原の存在せぬ場合には自己の非多形性CD1 リガンドを認識す
る。予想される通り、クローン BK6および 3C8はそれぞれ CD1a 又は CD1c を発
現する C1Rトランスフェクタントのみを溶解した。そしてこの溶解は、ターゲッ
ト細胞をM.ツベルクロシスと予めインキュベートすることによって有意な影響
を受けなかった(図 4c および d)。
既報の実験により実証された MHC拘束性の欠如から、MHCにコードされた抗原
提示分子は、DN1株に対するM.ツベルクロシス抗原の CD1b 拘束性提示には
関与していないと主張された。この仮説を更に厳密に裏付けるものとして、両 M
HC位置に広汎な染色体の欠失を与えた結果、MHCクラスII分子の発現が完全に欠
如しているT2細胞株のCD1bトランスフェクタントが形成された。サルター(Sal
ter,R.D.)ら、Immunogenetics 21:235:246(1985); エルリッヒ(Erlich,H.)
ら、Hum.Immun.16:205-219(1986)。MHC によりリンクされたトランスポータ
遺伝子TAP-1 および TAP-2(パーハム(Parham,P.)Nature 357:193-194(1992
)の中でレビューされている)も又T2から欠落することにより、MHCクラスI
分子の発現と機能に欠陥をもたらす。ホスケン(Hosken,N.A.)およびビーバン
(Bevan,M.)Science 248:367-370(1990); ウェイ(Wei,M.)およびクレスウエ
ル(Cresswell,P.)Nature 356:443-446(1992)。ところが CD1b がT2にトラ
ンスフェクトされると、細胞表面上に他のトランスフェクトされたB細胞株に見
られるレベルと類似のレベルで CD1b を発現させ(データは示さない)、そして
M.ツベルクロシスを DN1株に提示するターゲット細胞を生成させた(図5a
)。
T細胞に対する外因性抗原の提示には一般に抗原提示細胞による複合タンパク
質抗原分子の取り込みおよび処理を必要とするが、この処理は APC表面のアルデ
ハイド固定によりおよびクロロキンのような好リソソームアミンによりブロック
される。ツェグラー(Ziegler,H.K.)およびウナニュエ(Unanue,E.R.)Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 79:175-179(1982);チェスナット(Chesnut,R.W.)ら、J
.Immun.129:2382-2388(1982)。これらの基準により、M.ツベルクロシスのCD
1b拘束性提示も又抗原の取り込みおよび処理を必要としていることが明らかとな
った。グルタルアルデヒドによる CD1b + APCsのゆるやかな固定は、それらのM
.ツベルクロシス溶解性抗原の存在下での DN1株を刺激する能力を完全に消滅さ
せたが、固定前にM.ツベルクロシスによりパルス処理された同じ APCs は、増
殖性の応答を刺激する能力を保持していた(図 5b)。更に DN1株に対するM.ツ
ベルクロシス抗原の提示は、クロロキンによりミコバクテリウム抗原の MHCクラ
スIIにより媒介される提示の阻害の場合と事実上同一の投与量依存性を以って強
く阻害され(図 5c)、CD1b および MHCクラスII拘束性応答のための抗原の処理
には同様の経路又は細胞内器官が関与することがあり、或は経路は一つ以上のク
ロロキン感受性の細胞因子を共有することを示している。T2細胞は最近、それ
が DMAおよびDMB 遺伝子を欠いている故に、MHC クラスII分子により提示される
抗原の処理には欠陥を持つことが実証された(リバディー(Riberdy,J.M.)およ
びクレスウェル(Cresswell,P.)J.Immun. 148:2586-2590(1992))ことは興味
のあることである。モーリス(Morris,P.)ら、Nature 368:551-554(1994); フ
ライング(Fling,S.P.)ら、Nature 368:554-558(1994)。この様に、CD1bをト
ランスフェクトされたT2細胞は、DN1にM.ツベルクロシスを提示し得るとい
う我々の実験結果は、抗原処理におけるCD1bおよびMHC クラスII分子の必要性は
クロロキン感受性に関して類似しているものの、同じではないことを示唆する。
幾人かの研究者達は、CD4 および CD8分子の両者の発現を欠くT細胞が古典的
な MHCクラスIおよびIIの位置によりコードされるもの以外の細胞表面分子によ
り提示される抗原を認識することが出来るのではと考えた。ポルセリー(Porcel
li,S.)ら、Immun.Rev.120:137-183(1991); ジャンウエイ(Janeway,C.A.J
r.)ら、Immun.Today 6:73-76(1988);ブルーストーン(Bluestone,J.A.)およ
びマチス(Matis,L.A.)J.Immun. 142:1785-1788(1989)。上記の結果は、CD
1 ファミリの一つのメンバーである CD1b が MHC非拘束性 CD4- 8 - T細胞の外
因性異種抗原に対する特異的応答を拘束することができることを実証するもので
ある。他の CD1タンパク質と同様に、CD1bの重鎖はβ2-ミクログロブリンに非共
有的に結合し(オリーブ(Olive,D.)ら、Immunogenetics 20:253-264(1984))
そして両 MHCクラスIおよびII分子に対して限定されているが、しかし有意な配
列の相同性を示す。カラビィ(Calabi,F.)およびミルステーン(Milstein,C.
)Nature 323:540-543(1986);バルク(Balk,S.P.)ら、Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 86:252-256(1989)。CD1b のこれらの構造的な特徴は、抗原の認識におけ
る重要なその役割と共に、CD1bが MHCにリンクされていない遺伝子上の位置によ
りコードされている非多形性抗原提示分子であるという結論を支持する。
これらの結果は、正常な宿主を細菌性疾患から守る際のCD1 拘束性T細胞の役
割の可能性を示す。上記の結果は、CD1 と MHCクラスII分子との間の機能的平行
性を示唆する。何故ならば両者ともクロロキン感受性の経路を通じて処理された
外因性抗原の提示を両者は媒介し、又両者は自己反応性T細胞のTCRsに対するリ
ガンドとして作用することも出来るからである。ポルセリー(Porcelli,S.)ら
、Nature 341:447 -450(1989);グリムチャー(Glimcher,L.H.)およびシーバック
(Shevach,E.M.)J.Exp.Med. 156:640-645(1982)。in vivo でのCD1 分子の
限定された組織分布は更に MHCクラスIIファミリーとの類似性を明らかにする、
何故ならばランゲルハンス細胞、リンパ様のおよび多くの他の組織の中の樹状細
胞、8細胞および多分サイトカインにより活性化された単球を含むT細胞に対す
る抗原提示に関与する細胞タイプ上で両ファミリーのメンバーの発現が顕著に認
められるからである。ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Immun.Rev.120:137-183(
1991)。上記と異なり、本明細書の記載のCD1 分子の構造的多形性欠如、それら
の単球に於けるユニークなサイトカイン調整および CD1拘束性T細胞の CD4- 8 -
表現型は、CD1とMHC の抗原提示システムを識別する為の重要な差異である。
これらの差異は細胞を媒介させた免疫性に於ける CD1拘束性T細胞の明確な役割
を指し示す。
実施例2:非ペプチド抗原は CD1b により提示される 方法
CD1bにより提示された抗原は透析不能の巨大分子である(データは示さない)
。抗原性の高い(すなわちT細胞増殖性の)活性は、M.tb.の可溶性水性超音波
処理物から、超音波処理中にCHAPS 又はオクチルグルコシドのような界面活性剤
を加えることにより、得ることが出来た(上記参照)。この結果はこの抗原が疎
水性であることを示唆する。
CD1 により提示された抗原の化学的性質を明らかにする為に、ミコバクテリウ
ム抗原を非病原性のM.tb.株 H37Ra(Difco)およびM.フォルツイツム(fortuitum
)(同様に抗原活性を含む急速に成長する株)から精製した。細菌は市販のもの(
M.tb.H37Ra,Difco)か又は培養され採取されたもの(M.フォルツイツム)で
あり、超音波処理を行い逐次分画プロトコールを施し、そして生物学的活性を分
析した。得られたすべての画分について、照射し、GM-CSF- 処理および IL-4-処
理した単球を APCs として用い、かつ6時間のパルス処理での3H-チミジンの取
り込みを測定することにより5日間の増殖測定中にDNT細胞株DN1 を刺激するそ
れら画分の能力をテストした(ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Nature 360:593
-597(1992))。細胞壁、細胞膜並びに細胞原形質部分を公表されたプロトコ
ールから採用された方法を用いて M.tb.又は M.フォルツイツムの何れかから
調製した。ハンター(Hunter,S.W.)ら、Journal of Biological Chemistry 26 5:
14065-14068(1990)。簡略に述べれば、細胞を凍結乾燥し、PBS/オクチルグル
コシドの中に再懸濁し、20分間超音波処理を行い、そして分画超遠心分離を施
すことにより細胞ゾル、細胞膜および細胞壁の各画分を調製した。細胞壁ペレッ
トは分画スクロース勾配により更に精製した。3つの画分の特徴的な構造上の特
性は電子顕微鏡を用いてネガティブ染色により確認された。DN1細胞株に対する
生物的活性の大部分は細胞壁画分内に存在した(データは示さない)。
CD1b拘束性抗原がタンパク質であるか否かを直接評価する為に、抗原の一連の
プロテアーゼ消化を実施した。限定されたアミノ酸特異性(キモトリプシン(疎
水性残基)、トリプシン(lys,arg)および V-8(酸性))、又は広汎なアミノ酸
認識(ズブチリシン、プロテイナーゼ K、プロナーゼ)を持つ各種のエンドペプチ
ダーゼを用い、M.tb.又はM.フォルツイツムの超音波処理物を消化し、ついで
T細胞増殖性応答を誘発する能力を測定した。コントロールとして、この研究室
で誘導されたミコバクテリウム PPD(精製されたタンパク質誘導体)の決定基を
認識する DR7 拘束性の、CD4 + T細胞クローン DG.1 もテストした。SDS-PAGE
による分析およびその後の銀染色はV8プロテアーゼ、プロテイナーゼ K、プロナ
ーゼ E 又はズブチリシンによる消化がミコバクテリウム抗原標品に含まれるタ
ンパク質を分解することを実証した(データは示さない)。結果
代表的な CD4+ MHC クラスII拘束性T細胞株である DG.1 により認識されるM
.ツベルクロシス抗原は、V8 プロテアーゼ、プロテイナーゼ K、又はトリプシ
ンによる処理により効力を失わされる(図 6)。図 6 に示すように、DG.1細胞
はミコバクテリウムの超音波処理物の偽消化物に応じて強力に増殖したが、キモ
トリプシンを除き他のすべてのプロテアーゼ処理は増殖性応答を完全に停止した
。
上記に反し、CD1bにより株 DN1に提示されたM.ツベルクロシスおよびM.フォ
ルツイツム抗原はこれらの広域反応性プロテアーゼによって影響されることはな
い(それぞれ図7 および図8)。CD1b により提示されたミコバクテリウム抗原
はMHC クラスIおよびII抗原提示分子により提示されるものとは基本的に異なる
。MHC 分子はクラスIに対して約 8-9アミノ酸の又クラスIIに対して 13-25アミ
ノ酸のペプチド抗原と結合し、かつ提示することが充分確認されている。この C
D1b により提示された抗原はプロテアーゼに対し耐性を持つ巨大分子である為に
ペプチドであるとは考えられない。この様にして CD1システムはペプチド以外の
外来性物質をα: βTCR + T細胞に提示する最初の知られた抗原提示システムで
ある。
実施例3:CD1b により提示される M.ツベルクロシス由来抗原の精製 方法
M.フォルツイツムバクテリアを液体培養で定常期まで増殖させ、遠心分離によ
り集菌し、スチーム(stream)オートクレーブ(250℃,18 psi)により滅菌し
、そして凍結乾燥した。脱湿された M.tb.(H37Ra株、Difco)又は M.フ
ォルツイツムバクテリアを燐酸緩衝食塩水の中に懸濁し(5 mLPBS 当たり 200
mg バクテリア)、そしてバクテリア懸濁液をプローブソニケータで超音波処理
することにより細胞を破砕した。得られた超音波処理物は、ミコバクテリウムの
リピドを定量的に有機相に抽出するFolch の2相抽出系(クロロフォルム/メタ
ノール/水)の有機溶媒で抽出した。ゴレン(Goren,M.B.)およびブレンナン(
Brennan,P.J.)ミコバクテリアリピド:Tuberculosis における化学および生物
学的活性、1979。この超音波処理物をガラス容器の中で3倍容量のクロロフォル
ム:メタノール(2:1 v/v)溶液と混合し、この混合物を室温で24時間激しく撹
拌した。混合物を800gの遠心分離により相分離し、そして有機相を集めてガラス
沸騰フラスコに移した。各画分を次にロータリーエバポレーターにより乾燥
し(有機相)或は凍結乾燥した(水性相および界面相)。蒸発後、有機相はフラ
スコの表面上に蝋性の物質の薄膜を残した。T細胞増殖測定においてテストされ
る材料を作る為に、各画分の分別部分に水を加え(最初の超音波処理物中のバク
テリアの200 mg当たり 20 mL)続いて水浴ソニケータでの超音波処理により各
画分をリポソームとして再構成した。得られた粗懸濁液を次に 0.1 nm フィルタ
メンブランを反復して強制的に通すことにより均一なサイズのリポソーム懸濁液
を作成した。あるいは、10%仔牛胎児血清を含むT細胞培地を乾燥画分に加え
、追加的な処理を伴うことなく超音波処理を施した。
上述のM.ツベルクロシスから抽出された物質をさらに精製するために、ヘキ
サンに溶かして珪酸のカラムにかけた。シリカカラム上で極性を増大させながら
有機溶剤で溶出することにより、リピドがその極性に基づいて分離された。燐脂
質のような極性の最も高いリピドはシリカカラムに最も強く結合する為に最後に
溶出したのに対し、グリコリピドは一般に結合が強くなく早い時点で溶出する。
トリグリセライド又はステロールのような中性脂質は結合が最も弱く、従って最
初に溶出する。
固相抽出(SPE)小型開放カラム(BakerBond,JT Baker)は多くのサンプルを同
時に処理することが出来る為に好まれた。シアン(CN)官能基と(共有的に)”
結合”されたシリカをベースとするカラムがM.tb.の有機抽出物の分別に用いら
れた。バクテリアのクロロフォルム/メタノール抽出物の有機相を乾燥して、ヘ
キサン中に再懸濁した。200 μL ヘキサン中の脱湿バクテリアの 5.3 mg 当量を
0.5 グラム CN SPE カラムに負荷した。カラムをヘキサンにより、ついでヘキサ
ン中に25%(v/v)クロロフォルムを混入して洗浄した。次に生物活性画分をヘキ
サン中の 85%(v/v)クロロフォルムで溶出させ、生物活性を 100% 以上で回収
した。クプケ及びツォイグナー(Kupke and Zeugner)の方法により(クリステ
ィエ(Christie,W.W.)Lipid Analysis,117 頁、Pergamon Press,Oxford,U.
K.,(1982))、シリカをベースとした TLC プレート上での活性画分の分析に
よれば、リピドの2つの主要な種類のみが酢酸銅により可視化した(データは示
されていない)。これは遊離脂肪酸およびミコール酸に相当する。この結果は出
発有機物質からの顕著な精製の反映である。
増殖測定は2日目(DG.SF68)、3日目(DG.1)又は5日目(DN1)に採取され
た。DG.SF68はこの研究室において作り出された Vγ2Vδ2 T細胞クローンであ
る(PNAS 印刷中、CM)。APCsはGM-CSFにより処理された単球および IL-4 により
処理された単球(DN1)又は PBMC(DR7+)(DG.1)であるか又は処理されぬ PBMC(DG
.SF68)であった。細胞溶解測定は比溶解%として表され、そして上述のように
実施された。ポルセリー(Porcelli,S.)ら、Nature 341:447-450(1989)。示
されたデータ(図 9)は 50:1 のターゲットに対するエフェクタ比および 1:20
の希釈でのM.ツベルクロシス抗原を用いている。結果
M.ツベルクロシスの関連の抗原は H37Ra株(Difco)の市販製剤から上述のよ
うなクロロフォルムおよびメタノールの混合物中に抽出することにより単離され
る。界面相は95% 以上のタンパク質を含んでいるが、ミコバクテリウム抽出物の
CD1b拘束性抗原活性(即ちα:β TCR DN T細胞増殖性応答を誘導する能力)の
100%が有機相中に含まれている(図 9a)。この事は関連バクテリア抗原の性質が
非ペプチド性であるという当初の結論を強く支持するものである。これとは逆に
、DNγ:δ TCR+T細胞により認識される従来の MHCクラスIIに拘束性抗原は、
水性相と有機相の界面の相中に存在した(図 9b)。しかし上記に反し、4つの独
立した抗原製剤では CD1b 拘束性抗原は定量的に有機相の中に分配された。これ
らの相のトランスフェクタント細胞溶解測定の結果により、CD1b により提示さ
れた抗原が有機相に存在することが確認された(図 10)。
これらの条件下では、ミコバクテリウムの CD1により提示される抗原の活性の
100%がCN SPEクロマトグラフィーの後に定量的に回収された。更に有機相抽出は
優れた精製ステップとして役立ち、そして有機相はその後のクロマトグラフィー
の為の出発物質として用いられた。上記と別の幾らかより一般的な後続のクロマ
トグラフィーのための抗原精製手順は、バクテリア全体又は超音波処理されたバ
クテリアを鹸化し、そしてヘキサンの酸性溶液で抽出することである。抗原を更
に精製することは上述のような珪酸クロマトグラフィーを用いて達成される。実施例4:ミコール酸はミコバクテリアの CD1b により提示される抗原である
上記の結果、およびT細胞刺激活性が CN 修飾されたシリカ HPLC カラム上で
遊離脂肪酸アシル鎖標品と共クロマトグラフされたことを示唆する予備データ(
データは示されていない)から見れば、このCD1bにより提示される抗原はユニー
クなミコバクテリウムリピド、多分ミコール酸であると考えるのが妥当であろう
。
ミコバクテリアは、バチルスの乾燥重量の40%および細胞壁の60%という
量の異常な割合のリピッドを含んでいる;ミコール酸は大部分の多様なミコバク
テリアのリピッドである。〔ゴレンとブレナン(Goren,M.B.,and
Brennan,P.J.)、Mycobacterial Lipids:
Chemistry and Biologic Activities in
Tuberculosis,1979〕。ミコール酸は、ミコバクテリアと関
連した細菌種中に見られる独特の一対の構造を形成する、α位分岐した、βヒド
ロキシ脂肪酸である。〔ウォリンスキー(Wolinsky,E.)、”Myc
obacteria”,37章 微生物学:Including Immuno
logy and Molecular Genetics,第3版、デービス
編(Davis,B.H.,ed.)、Harper & Row,Phila
delphia,1980〕。
ミコール酸は基本的に細胞壁にみられ、エステル化してコアのペプチドグリカ
ンに結合したアラビノガラクタンポリマーになる〔マクネイルとブレナン(Mc
Neil,M.R.and Brennan,P.J.)、Res.Micro
biol.142:451−563(1991);ベスラ(Besra,G.S
.),Biochemistry 30:7772−7777(1991);マ
クネイルら(McNeil,M.,et al.),Journal of B
iological Chemistry 266:13217−13223(
1991)〕、アルカリ加水分解または酸加水分解(けん化)により遊離するこ
とができる。〔ミンニキン(Minnikin,D.E.)、”Mycolic
acids”CRCクロマトグラフィーハンドブック:Analysis o
f Lipids,マーヘルギーとウェーバー(Murhergee,K.D.
.and Weber,N.)編、CRC Press、1993〕。ミコール
酸は生体を覆うリピドコートの主要構成物であり、生体にその疎水性表面と特徴
的抗酸性染色を付与する。〔ゴレンとブレナン(Goren,M.B..,an
d Brennan,P.J.),Mycobacterial Lipids
:Chemistry and Activities in Tubercu
losis,1979〕。
C12−C24の大きさにわたる真核生物や細菌の脂肪酸とは異なり、ミコバクテ
リアのミコール酸はC80−C90のサイズにわたる。〔ミンニキン(Minnik
in,D.E.),”Lipids:Complex Lipids,the
ir Chemistry, Biosynthesis and Roles
” in The Biology of Mycobacteria, Vo
l.1,ラトレッジとスタンフォード編( Ratledge,C.,and
Stanford,J., eds.),Academic Press,Lo
ndon,1982〕。ミコール酸は直鎖脂肪酸に比べ、α位の炭素原子に分岐
したアルキル基をもち、β位の炭素原子にヒドロキシル基をもつ。〔ゴーレンと
ブレンナン(Goren,M.B..,and Brennan,P.J.),
Mycobacterial Lipids:Chemistry and B
iologic Activities in Tuberculosis,1
979;ミンニキン(Minnikin,D.E.),”Lipids:Com
plex Lipids, their Chemistry, Biosyn
thesis and Roles” in The Biology of
Mycobacteria, Vol. 1,ラトレッジとスタンフォード編(
Ratledge,C.,and Stanford,J., eds.),A
cademic Press,London,1982;タカヤマとクレシ(T
akayama,K.,and Qureshi,N.),”Structur
e and Synthesis of Lipids” in The My
cobacteria:原典、パートA、クビカとウェイン編(Kubica,
G.P., and Wayne, L.G.),Marcel Dekker
, New York&Basel,1984〕。ミコール酸の主な長鎖アルキ
ル鎖(メロ基と呼ばれる)は、長さと結合している官能基の両方が不均一である
。アルケン基(二重結合)に加えて、ミコール酸の官能基はメトキシル基、ケト
基、孤立メチルバランス(lone metyl barances)、エチレ
ン基、およびシクロプロパノイド基を含んでいる。〔ミンニキン(Minnik
in,D.E.),”Lipids:Complex Lipids, the
ir Chemistry, Biosynthesis and Roles
” in The Biology of Mycobacteria, Vo
l.1,ラトレッジとスタンフォード編( Ratledge,C.,and
Stanford,J., eds.),Academic Press,Lo
ndon,1982〕。ミコール酸に利用できる大配列の官能基、それらの様々
な鎖の長さ、および株間の不均一性によって、ミコール酸は、側鎖アミノ酸間の
不均一なペプチドで与えられるのと同様な強力な大きな範囲にわたる抗原のバリ
エーションを持つことを可能になる。したがって、これらのリピド分子は以前に
は認識されていない免疫学的探究性をもつことができる。各ミコバクテリア種に
関して区別可能なフィンガープリントがミコール酸分子の存在パターンに基づい
てある。そのようなパターンは薄層クロマトグラフィー(TLC)によって個々
の種に対して決定されている。〔ミンニキン(Minnikin,D.E.),
”Lipids:Complex Lipids, their Chemis
try, Biosynthesis and Roles” in The
Biology of Mycobacteria, Vol.1,ラトレッジ
とスタンフォード編( Ratledge,C.,and Stanford,
J., eds.),Academic Press,London,1982
;ドブソンら(Dobson,G.,et al.),Chemical Me
thods in Bacterial Systematics,Acade
mic Press,1985;ヴァレロギィレンら(Valero−Guil
len,p.L.,et al.),Journal of Applied
Bacteriology 59:113−126(1985)〕,ガスクロマ
トグラフィー(GS)〔ヴァレロギィレンら(Valero−Guillen,
P.L.,et al.),Journal of Applied Bact
eriology 59:113−126(1985);アタリーら(Atha
lye,M.,et al.),Journal of Applied Ba
cteriology 58:507−512(1985);リクインら(Li
quin,M.,et al.),Journal of Clinical
Microbiology 29:120−130(1991)〕と高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)による。〔クレシら(Qureshi,N.,e
t al.),Journal of Biological Chemist
ry 253:5411−5417(1978);クレシら(Qureshi,
N.,et al.),Journal of Biological Che
mistry 255:182−189(1980);ブトラーら(Butle
r,W.R.,et el.),Journal of Clinical M
icrobiology 29:2468−2472(1991);ブトラーと
キルバーン(Butler,W.R.,and Kilburn,J.O.),
Journal of Clinical Microbiology 28:
2094−2098(1990)〕。方法
前記CD1により提示される抗原がミコール酸であるかどうかを決定する為に
、C18逆相カラムクロマトグラフィー上でミコール酸を分離するHPLC法を使用し
て、ミコール酸が作られた。バッテラー(Butler,W.R.)ら、Journal of Clini
cal Microbiology 23:182-185(1986); バッテラー(Butler,W.R.)ら、Journal o
f Clinical Microbiology26:50-53(1988);フロイド(Floyd,M.M.)ら、Journal o
f Clinical Microbiology 30:1327-1330(1992)。逆相クロマトグラフィーは主と
してアシル鎖の長さ又は”炭素数”に基づいてアシル鎖を分離する。従って遊離
脂肪酸と遥かに大きいミコール酸とを確実に分離することは比較的容易である。
このHPLC法では先ずサンプルの鹸化が必要であり、続いてアシル鎖のカルボキ
シル末端に結合する紫外線(OD254)吸収性化合物であるp−ブロモフェナシルブ
ロミドで脂肪酸又はミコール酸の誘導体化を行う。予備実験においては我々はp
−フェナシルブロミドでバクテリアの画分を誘導体化するプロセスが生物活性を
破壊することを認めた。しかし CD1b 拘束性抗原性活性は、その後メタノール性
KOH による鹸化により回復することが可能であった。このプロセスは、フェナシ
ルブロミド基を切り離すことにより、アシル鎖のカルボキシル末端をフリーにす
るものである(HPLC 上でOD254により測定されるように)。この結果は、CD1ポジ
ティブ APCs により提示することの出来る形を実現するにはアシル鎖が切断され
ねばならぬこと、および/又は遊離のカルボキシル基が CD1b 拘束性抗原の提示
の為に不可欠であることを示すものである。これは抗原がアシル鎖を含むこと
の別の証拠である。
SPE CNカラムで精製された標品(実施例3)は C18クロマトグラフィーの為の
出発物質として用いられた。試料をメタノール性 KOHで鹸化し、そして紫外線吸
収基であるブロモフェナシルブロミドを用いて誘導体化した。活性画分を C18カ
ラム(Alltech Nucleosil C18 5 μm,25 cm ×4.6 mm)上、メタノール中メチレ
ンクロライドの30〜90%の直線濃度勾配を用い 50 分間にわたり 1mL/分
の割合で流した。コントロールとしてC90内部標準(Ribi)を用いて得られたク
ロマトグラム(図12、パネルa、上部)は公表された結果と同等のパターンを示
す。フロイド(Floyd,M.M.)ら、Journal of Clinical Microbiology 30:1327-13
30(1992)。画分は10% FCSを含む完全培地中に再懸濁化し、そして最初の超音波
処理物容量に対する 1:17 希釈でテストした。結果
T細胞増殖性応答測定により測定された生物活性はミコール酸の領域内の早期
ピークと共に移行することが見い出された(図 12a)。ミコール酸が CD1b によ
り提示されることを確認する為に、ミコール酸の別の供給源である精製されたコ
ードファクタ(トレハロースジミコレート、図11)をテストした。鹸化すると
M.tb.(Sigma から)又は M.kansasii(Patrick Brennan から供与)から得
られた精製されたトレハロースジミコレートはT細胞株 DN1の増殖を刺激した(
図 12b)。しかし鹸化により遊離されるミコール酸を含まず、2つのC22脂肪酸
鎖を含むコードファクタの合成誘導体である鹸化されたトレハロースジミコレー
トから作られた物質によっては刺激は達成できなかった。このことはトレハロー
ス(サンプルの各々に存在する)でも脂肪酸でもなく、ミコール酸がダブルネガ
ティブα: β TCRT細胞株 DN1に対してCD1bにより提示された抗原であることを
充分に想定させる。次に鹸化されたSigma コードファクタの HPLC 分析を実施し
、再び生物活性が早期のミコール酸ピークに対応する画分に見出された(図 12c
)。合わせると、上記のデータは、T細胞株 DN1 により認識される CD1b 拘束
性ミコバクテリウム抗原はミコール酸の一つの種類であることを示す。
ミコバクテリウムは極めて有効なアジュバントであることが知られている。ア
ルドビニィ(Aldovini,A.)およびヤング(Young,R.A.)Nature 351:479-482(199
1)。この場合に使用されている CD1b により提示される抗原の一つ給源であるミ
コール酸はトレハロースジミコレート(即ちミコバクテリウムのコードファクタ
)であり、これは抗体形成を増大せしめ(ベカイエルカンスト(Bekierkunst,A.)
ら、J.Bacteriol.100:95-102(1969);ベカイエルカンストら、Infection and I
mmunity 4:245-255(1971);ベカイエルカンストら、Infection and Immunity 4:2
56-263(1971))そして細菌感染(パラント(Parant,M.)ら、Infect.Immun.20:
12-19(1978))および腫瘍(ベカイエルカンストら、Infection and Immunity 10 :
1044-1050(1974))に対する非特異的免疫を刺激することが実証された。
精製された抗原活性が真実の抗原を含み不特定の分裂誘発因子を含まぬことを
確かめる為に、我々は粗 M.tb.標品並びに M.tb.および鹸化されたコードフ
ァクタからの HPLC により精製されたミコール酸に対するT細胞増殖性応答の特
異性を調べた。M.tb.の超音波処理物の全体(図 14、上部パネル)は MHCクラ
スII拘束性 CD4+ α: β TCR+ T細胞株 DG.1 により認識される抗原、並びに C
D1b 拘束性T細胞株 DN1および CD1c 拘束性T細胞株 DN6により認識される抗原
を含む(下の実施例5を参照のこと)。しかしM.tb.(図 14、中部パネル)か
ら又は鹸化されたコードファクタ(図 14、下部パネル)からの HPLC により精
製されたミコール酸(図14、下部パネル)は CD1b 拘束性 DN1T細胞によっての
み認識される抗原を含む。この特異性も又トランスフェクタントの細胞溶解測定
において実証されている(図 13)。DN1のCD1b拘束性応答は抗-CD1b 抗体により
ブロックされたが、しかし MHCクラスI又はIIに対する抗体によっては影響を蒙
らなかった(図 15、上部パネル)。
実施例5:CD1c による抗原提示
実施例1に於いて開示された CD1b による抗原の提示に加え CD1c 分子も又抗
原を提示する。GM-CSFおよび IL-4(CD1発現を誘発する為に)およびM.ツベル
クロシス抗原により処理された単球による反復刺激により誘導された別個の CD4
- 8 -α: β TCR+ T細胞株を単離し、そして DN2(8.23.DN1 とも呼ばれる)
と命名された。DN2 の増殖は CD1c に対する mAbs を与えることにより完全に阻
害されるが、しかし CD1b に対する mAbs によっては影響を受けない(図15、
下部パネル)。細胞溶解測定によりこの結果は裏付けられる:ベクターのみ又は
CD1a、CD1b又は CD1c をコードするベクターでトランスフェクトされた C1R細胞
をM.ツベルクロシス超音波処理物の存在下または非存在下に予めインキュベー
トし、ついで細胞溶解測定のターゲットとして用いた。CD1c+ C1R 細胞のみが認
識される(図16);認識は超音波処理物との予備インキュベーションにより高
められる。従って CD1c 分子はM.ツベルクロシス抗原を DN2 T細胞に提示す
る。
GM-CSF および IL-4(CD1発現を誘発する為)およびM.ツベルクロシス抗原
により処理された単球による反復刺激により誘発された第2 CD1c 拘束性CD4 -
8 - α: β TCR+ T細胞株を単離し、DN6と名付けた。細胞溶解測定(図 17)によ
れば、DN6は M.tb.抗原の存在下で CD1c+ 細胞を溶解することが示される。
実施例6:CD1c により提示される M.ツベルクロシス由来抗原の特性化
CD1cにより DN6T細胞に提示される抗原はミコール酸ではない(図 14、中央
パネル)。しかし DN6により認識される抗原の化学的性質によれば、抗原は複合
リピドであることが判る。M.tb.の超音波処理物をクロロフォルム:メタノール
により抽出する時(実施例3に記載のように)抗原活性は実質的に界面相と有機
相の両者に見出される(図 18)。有機相から回収される抗原は CN SPE カラムに
結合することができ、そして溶出される(実施例3に記載された如く)。これら
の実験により抗原は疎水性であり又クロマトグラフィーではリピドの性質を持つ
ことが実証される。
しかし CD1b 拘束性ミコバクテリウム抗原と異なり、追加実験の結果は、DN6
により認識されCD1cにより提示される抗原が複合リピドであり、遊離アシル鎖で
はないことを示す。M.tb.の超音波処理物を鹸化すると、DN6の増殖性応答は消
失する(図 20)。鹸化はアシル鎖を炭水化物バックボーンに接続するエステル結
合を切断するから、この結果はDN6 T細胞により認識される抗原が遊離アシル鎖
以外の或る部分であるか又は追加的な部分であることを示唆している。鹸化は多
分例えばポリサッカライドバックボーン又は分岐点であるかもしれない追加的部
分を破壊し、又は除去するのであろう。従って DN1T細胞株による遊離ミコール
酸の認識とは異なり、DN6 T細胞株はより複合的なリピド構造を認識する。
T細胞株 DN1 および DN6 により認識される CD1により提示される抗原は、
M.ツベルクロシスにユニークではないことは特筆に値する。寧ろDN1 およびDN
6 により認識される CD1により提示される抗原は、今日テストされている多くの
ミコバクテリウムの種に見られる抗原に対して交叉反応性を示す(M.フォルツイ
ツム、M.アビウム(avium))、M.ボービス(bovis)(BCG)およびM.レプラエ(lepra
e))。DN6 T細胞による CD1c 拘束性の場合には、別の属であるがミコール酸を
産生する近縁の属の細菌であるコリネバクテリウム(Corynebacteria)において一
つの抗原が認識される(データは示されず)。タカヤマ(Takayama,K.)およびク
レシ(Qureshi,N.)”Structure and Synthesis of Lipids”in The Mycobacte
ria:A Sourcebook,Part A,キュービカ(Kubica,G.P.)およびウエイン(Wayne
,L.G.)編、Marcel Dekker,New York & Basel,1984。この様に CD1により提示
された抗原は少なくとも幾つかの細菌リピド抗原を含む;自己免疫の場合には C
D1により提示される抗原は内因性リピド抗原を含む。
実施例7:M.レプラエ由来のCD1により提示される抗原
癩病変からDN α:β TCR+ T細胞株を得るために、そのような病変ま
たはPBMCのT細胞をCD1+ APCおよびM.レプラエと共に培養すること
により刺激した。イミュノマグネチックデプレションによってCD4+、CD8+
およびγ:δ−TCR+ T細胞を除いた。残存するCD4- 8- α:β TC
R+ T細胞のM.レプラエ抗原に対する能力を同種異系CD1+単球をAPCと
して用いた3Hチミヂンの取込みによって調べた。
上記の方法で単離した6つのDN α:β TCR+ T細胞株のうちの4つは
、M.レプラエおよび同種異系CD1+APCの存在下で猛烈に増殖したが、同
種異系CD1+APCのみの存在下では成長の刺激はほとんど、あるいは全く検
出されず、また、CD1を発現しないAPCの存在下ではM.レプラエに応答す
る増殖は全く検出されなかった。このように、4つのDN α:β TCR+ T
細胞株は、M.レプラエ由来のCD1により提示される抗原に応答し、これの存
在下で増殖する。
癩病変から単離し、LDN1とLDN4と名付けた2つのDN α:β TC
R+ T細胞株をさらなる分析に付した。どのCD1分子(つまり、CD1a、C
D1b、CD1c、等)がM.レプラエ抗原提示に特異的に応答するかを決定す
るために、2組の実験を行った。まず、増殖実験を行った。ここではCD1+ A
PCをCD1a、CD1b、または、CD1cに対する抗体とインキュベートす
る。次に、C1R細胞を異なるCD1分子をコードする遺伝子で形質転換し、細
胞溶解アッセイの標的細胞として使った。
LDN1 T細胞株のM.レプラエにより誘導される増殖は抗CD1c抗体に
よって63%以上阻害されたが、抗CD1a、抗CD1bそしてイソ型が適合す
る非CD1反応性抗体は、M.レプラエに対する増殖応答に対してほとんど効果
がなかった(図20、上部パネル)。同様に、LND1細胞はM.レプラエ抗原
特異的方法によりCD1cで形質転換したC1R細胞を溶解したが、CD1aま
たはCD1b、あるいはmockトランスフェクトした細胞は溶解しなかった。
2番目の癩病変から得たM.レプラエ抗原反応性DN α:β TCR+ T細
胞株、LND4は、Cd1bに拘束されることが分かった。このT細胞株がM.
レプラエの存在下で増殖する能力は、抗CD1bモノクローナル抗体(MAb)
の付加により完全に阻害した(図20、下方パネル)。同様に、LND4は抗原
特異的方法によりCD1bをトランスフェクトしたC1R細胞を溶解したが、C
D1aまたはCD1c形質転換体は溶解しなかった。さらに、LND4が抗原を
パルスしたCD1b標的を溶解する能力は抗CD1b MAbによりブロックさ
れた。試験した全てのDN α:β TCR+ T細胞株で、MHCクラスIとク
ラスII分子に対する抗体はM.レプラエに応答する増殖に対して効果がなかった
。
癩病変にCD1を産生する細胞が存在することは、CD1に対するMAbを用
いた組織切片の免疫組織学上の実験によって調べられた(データは示されていな
い)。これらの分析から、CD1a+、CD1b+、およびCD1c+細胞は、
癩病肉芽腫よりも類結核肉芽腫にはるかに広範囲に現れることが示された。CD
1aは類結核癩病変の表皮並びに真皮の肉芽腫で発現するにもかかわらず、CD
1bおよびCD1cは真皮の肉芽腫で発現する。さらに、癩病肉芽腫で強く発現
する11−10〔ヤマムラら(Yamamura,M.,et al.)、Science 254:277-299(19
91)〕は、単球でのCD1の発現を阻害可能であった(データは示されていない
)。CD1の発現と癩病に対する抵抗性の相関は細胞性免疫の開始でのCD1に
より媒介される拘束での役割を示している。
DN α:β TCR+ T細胞の機能的な役割は、それらのサイトカイン分泌
パターンを研究することで調べられた。DN α:β TCR+ T細胞の抗CD
3刺激した結果、五つのDN α:β TCR+ T細胞株のうち4つでインター
フェロン−γ(IFN−γ)が放出されたが(中央値=647pg/ml)、し
かし、ほとんどわずかしか、あるいは全くIL4を産生しなかった(中央値<2
0pg/ml)。しかし、1つのT細胞株ではIL4を産生したが(99pg/
ml)、IFN−γは検出されなかった(<20pg/ml)。IL−5、IL
−6およびIL−10は、抗CD3刺激を受けたDN T細胞の上清(superant
ant)で検出されなかった。これらのデータは、M.レプラエに反応するDN
α:β TCR+ T細胞の 大部分がタイプ1のサイトカインパターンを分泌す
ることを示している。
実施例8:LAMはM.レプラエ由来のCD1により提示される抗原である
CD1拘束性T細胞により認識される抗原の生化学的性質を解明するため、精
製したM.レプラエの細胞壁の構成成分を調製し、生物学的な活性を調べた。C
D1発現抗原提示細胞の存在下で、LDN4は、細胞壁から得られたリピドを含
む画分(SolPCW)に応答して増殖したが、リピドを除いた膜やサイトゾル
由来のタンパク質に富む画分(SP−)には応答して増殖しなかった(図21)
。細胞壁の不溶性画分(CWC)や、ミコール酸−アラビノガラクタン−ペプチ
ドグリカン(mAGP)に対する応答は観察されなかった。これらのデータは、
DN αβ T細胞はCD1拘束性態様では、M.レプラエの非ペプチド抗原を
認識することを示している。
LDN4の反応性はリポアラビノマンナン(LAM;図22)と相関し、我々
は結果として、この株が精製したLAMに対して増殖することを見い出した。L
DN4がLAMに応答する能力は抗CD1b抗体によりブロックされた(図23
)。CD1c拘束性態様で、M.レプラエに応答するα:β二重陰性T細胞株で
あるBDN2もLAMに応答するBDN2のLAMに応答する能力は、抗CD1
c抗体によりブロックされる(データは示されていない)。
実施例9:LAMの誘導体および類似体並びにそれらのCD1依存性使用
LAMは非タンパク質分子で、疎水的な成分と親水的な成分の両方を持つ“両
親媒性化合物”として知られるクラスの1つである(図22)。ハンターら(Hu
nter,S.W.,et al.)、J.Biol.Chem.261:12345-12531(1986);ハンターら(Hunt
er,S.W.,et al.)、J.Biol.Chem.265:9272-9279(1990)。疎水的な領域は、マン
ナンの核と短いマンノースのオリゴサッカリドの“キャップ(cap)”を持つ
分岐したアラビナン側鎖から成る親水的なヘテロポリサッカリドに結合したフォ
スファチジルイノシトールである。チャタジーら(Chatterjee,D.,et al.)、J.
Biol.Chem.267:6228-6233(1992);チャタジーら(Chatterjee,D.,et al.)、J.
Biol.Chem.267:6234-6239(1992)。LAMの精製のプロトコールは既に述べてあ
る。ハンターら(Hunter,S.W.,et al.)、J.Biol.Chem.261:12345-12531(1986)
。高速原子衝突質量分析の解析により、M.レプラエのLAMの実際の完全な純
度を示す(>99.9%)。
以前に、M.レプラエとM.ツベルクロシスのLAMが異なる構造を持ち、そ
の結果B細胞エピトープが違うことが示されている。プリンジスら(Prinzis,S.
,et al.)、J.Gen.Microbiol.139:2649-2658(1993)。それゆえ、異なるミコバ
クテリウム種由来のLAMが異なるT細胞エピトープを持つ可能性は考えられる
。また、グラム陽性のバクテリアはリポタイコ酸等の構造的に関連したグリコリ
ピドを含み、そのため、T細胞によるこれらの分子の認識が一般にバクテリアの
病原体へと導く免疫応答の一部を成すかもしれないということも注目すべきであ
る。
DN α:β T細胞の刺激に応答可能なLAMの領域を決定するために、L
AMの化学的な誘導体がDN α:β T細胞を刺激することができるかどうか
を試験した。穏やかなアルカリ加水分解によりLAMの脂肪酸の一部分は解離す
るが、炭水化物は無傷のままである。この脱アシル化LAM(dLAM)は、天
然のLAMが著しくT細胞の増殖を起こさせる濃度ではLDN4を刺激する能力
を失っていた(図24)。脱アシル化LAMとは対照的に、フォスファチヂルイ
ノシトールマンノシド(PIM)は、培地だけのときに比べ10倍以上LDN4
を刺激した(図24)。これらのデータは、LAMの脂質領域はT細胞の刺激に
必要だが、しかし、LAMのマンナン−アラビナンバックボーンの繰り返しは必
要でないことを示している。
最後に、他のミコバクテリウム由来のLAMの交差認識を、2つのDN α:
β T細胞株に関して調べた(図25)。癩病由来のT細胞株LDN4はM.レ
プラエのLAM(Lep LAM)により刺激されたが、臨床において単離した
M.ツベルクロシス由来のLAM(TBE−LAM)、あるいはM.ツベルクロ
シスの有毒な実験室の株由来のLAM(Rv LAM)によっては刺激されなか
った。これらの結果によりM.レプラエのLAMに対するLDN4の種特異性の
証拠になっている。対照的にT細胞株BDN2はM.ツベルクロシスのLAM(
TBE LAMとRv LAM)並びにM.レプラエのLAM(Lep LAM
)に応答する。まとめると、これらの結果によりLAMの種特異性決定基と交差
反応決定基は両方ともDN α:β T細胞により認識されることが示唆される
。
実施例10:CD1により提示される抗原を含むワクチン
本開示以前には、リピドまたはグリコリピドが潜在的に強力な特異的T細胞媒
介免疫原性を持つことは知られていなかった。本明細書に記載のCD1 により提示
されるリピド抗原およびグリコリピド抗原またはそれらの機能的同等物は、細菌
、菌類または原生動物病原体に対するワクチンとして機能するようにデザインさ
れる組成物の必須成分として用いることが出来る。CD1 により提示される抗原を
含むワクチンは非経口、粘膜または局所的手段により直接投与することが出来る
。例えば、胃腸管の上皮に見られる細胞上の CD1の存在(ブレイチャー(Bleich
er,P.A.)ら、Science 250:679-682(1990))の故に、CD1により提示される抗
原を含むワクチンの経口投与により、CD1により提示される抗原を含むワクチン
を必要とする動物にかかるワクチンを投与することが出来る。CD1により提示さ
れる抗原は、より有効な予防ワクチンまたは治療ワクチンを製造するために、他
の CD1により提示された抗原またはMHCクラスIもしくはMHCクラスIIによ
り提示された抗原のいずれかの他の抗原と組み合わせることができる。
本発明の CD1により提示される抗原を含むワクチンは、既知の方法に従って処
方される。Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版、ゲンナロ(Gennaro
,A.R.)編、Mack,Easton,1990; The Pharmacologist Basis of Therapeutics,
第7版、ギルマン(Gilman,A.G.)ら編、MacMillian,New York,1985.この分野
の熟練者に知られている薬学的に許容されるリピド安定剤およびリピド可溶化剤
はその有効性を高める為に CD1により提示される抗原を含むワクチンに加えるこ
とが出来る。テング(Teng,N.)ら、国際公開第91/01750号パンフレット(1991
年 2月 21 日)。ナンバーグ(Nunberg,J.H.)米国特許第 4,789,702号明細書(1
988年 12 月 6日)。
実施例11:CD1拘束性抗原提示を阻止する為の手段と方法
CD1 抗原提示システムの開示は、CD1 拘束性抗原提示を阻害する為の各種の手
段と方法を可能にする。CD1 により提示される抗原の処理を阻害し、抗原の CD1
分子への結合を妨害し又は CD1: 抗原複合体のTCR 分子への結合を妨害する組成
物があれば、抗原の CD1拘束性提示を阻害するであろう。かかる組成物は、CD1
ブロッキング剤と呼ばれるが、例えば自己免疫疾患において生じる好ましくない
T細胞媒介免疫をコントロールする為に有用である。オクセンバーグ(Oksenberg
,J.R.)ら、J.Neurol.Sci.115(Suppl.):S29-S37(1993)。
CD1 ブロッキング剤は下記に限定されることはないが、(1)精製されたCD1 分
子、又はその合成誘導体であってCD1 により提示される抗原を結合し、かつ APC
s 上で表出され、CD1 と抗原との相互作用を防止することの出来るもの;(2)精
製されたTCR ポリペプチド又はその合成誘導体であってCD1 + APC 上でCD1−抗
原複合体に結合することが可能であり、かつ複合体とT細胞受容体との相互作用
を防止することの出来るもの;(3)化学的に修飾された CD1により提示される抗
原を含む抗原拮抗体又はCD1 により提示される抗原の合成誘導体;(4)精製され
た CD1−抗原複合体又はその合成誘導体であって CD1+ APC 上で CD1−抗原複合
体を認識するT細胞受容体に結合し、かつT細胞受容体と CD1−抗原複合体との
相互作用を阻止することの出来るもの;(5)CD1 分子と結合し、こうして CD1分
子と CD1により提示される抗原との相互作用を阻止する抗体;(6)CD1:抗原複合
体と結合し、これにより CD1:抗原複合体とそのコグネート(cognate)TCR との相
互作用を阻止するポリクロナール抗体又はモノクロナール抗体;(7)CD1 により
提示される抗原を認識するTCR と結合し、これによりTCR とそのコグネートCD1:
抗原複合体との相互作用を阻止するポリクロナール抗体又はモノクロナール抗体
;および(8)CD1 により提示される抗原が表出される前に処理される経路中の不
可欠なステップをブロックする組成物を含む。
上記の実施例は下記の如き CD1 ブロッキング剤の類例を含む。
タイプ(5)の CD1ブロッキング剤は、CD1b拘束性抗原提示を特異的に阻害する
、CD1bに対するモノクロナール抗体WM25(図 15、上部パネル)およびCD1c拘束
性抗原提示を特異的に阻害する、CD1cに対するモノクロナール抗体 10C3(図 15
、下部パネル)をその代表とする。タイプ(6)又は(7)のCD1 ブロッキング剤とし
て作用する抗体を単離する為の本明細書に記載の方法を熟練者は使用することが
可能であり、又この分野の熟練者は治療の目的で抗体を処方する方法を知ってい
る。A Critical Analysis of Antibody Therapy in Transplantation,バーリン
トン(Burlington,W.J.)編、CRCPress,Boca Raton,1992。
タイプ(8)のCD1 ブロッキング剤の代表的なものはクロロキン(図 5c)であり、
これは CD1b 拘束性抗原の処理の中の或るステップを阻害する。クロロキンの処
方および投与の方法はこの分野の熟練者には既知である。ウエブスター(Webs
ter,L.T.)”Drugs Used in the Chemotherapy of Protozoal Infections,”in
Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 41章及
び42章、第8版、ギルマン(Gilman,A.G.)ら編、Pergamon Press,New York
,1990。クロロキンも MHC拘束性抗原提示を阻害するが、この分野の熟練者は本
明細書中に開示されている方法を用いてCD1 拘束性抗原の処理を特異的に阻害す
る組成物を特定しおよび/または単離することが出来る。
タイプ(3)のブロッキング剤、即ち抗原拮抗物質は本発明の方法により単離さ
れるCD1 拘束性抗原から誘導することが出来る。オリジナルペプチド抗原よりも
低い親和性で結合するMHC拘束性ペプチド抗原の変種は、MHC拘束性抗原提示に於
ける成熟T細胞に対する拮抗物質として作用する。ライス(Wraith,D.C.)ら、
Cell 59:247-255(1989); スミイレク(Smilek,D.E.)ら、Proc.Natl.Acad.S
ci.(USA) 88:9633-9637(1991)。同様にCD1 により提示される抗原は本発明の方
法により単離され、かつ標準技法により化学的に修飾することにより非抗原性又
は弱抗原性のCD1 により提示される抗原誘導体を作り出すことが出来る。例えば
p−ブロモフェナシルブロミドにより誘導体化されたミコール酸は非抗原性であ
る(実施例 4)。抗原拮抗物質はCD1 により提示される抗原誘導体として同定さ
れる。これはオリジナルの、非修飾CD1 により提示される抗原の存在する時にの
み起きるT細胞増殖性応答又はCD1 トランスフェクタント細胞溶解性応答を阻害
又は防止する(実施例1)。
タイプ(2)のブロッキング剤、即ち抗原:CD1 複合体とT細胞上のTCR 分子と
の相互作用をブロックする TCR 誘導体はこの分野の熟練者により本開示に基づ
いて作ることが出来る。CD1 により提示される本発明の抗原を認識するT細胞株
により表出されるTCR ポリペプチドをコードするDNA 分子は、この分野における
既知の方法に基づいて単離される。オスケンバーグ(Oskenberg,J.R.)ら、Proc
.Natl.Acad.Sci.(USA) 86:988-992(1989); オクセンバーグ(Oksenberg,J.R.)
ら、Nature 345:344-346(1990)及び修正版(and erratum)、Nature 353:
94(1991);ウエマツ(Uematsu Y.)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 88:534-5
38(1991); パンザラ(Panzara,M.A.)ら、Biotechniques 12:728-735(1992); ウ
エマツ、Immunogenet.34:174-178(1991)。このDNA 配列はポリペプチド配列
に変換され、そしてTCR ポリペプチドの抗原結合可変領域に該当するポリペプチ
ド配列の一部は、APCs 上で CD1: 抗原複合体と結合しこれにより抗原提示を阻
害する合成オリゴペプチドをデザインするのに用いられる。オリゴペプチドは標
準的手法に従って化学的に合成され(ステバルト及びヤン(Stewart and Young)
,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.,Rockland,Illinois
,1985)そして逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により反応混合物から
精製される。自己免疫疾患、MS,を持つヒトの治療の最初の試みが、MHC 拘束性
α: βTCR 分子から誘導されたペプチドを用いて現在進行中である。オクセンバ
ーグ(Oksenberg,J.R.)ら、J.Neurol.Sci.115(Suppl.): S29-S37(1993)。CD1
ブロッキング剤として機能する TCR−誘導ペプチドは、CD1 により提示される
抗原の存在下で起きるT細胞増殖性応答又は CD1トランスフェクタント細胞溶解
性応答を阻害又は防止する TCR誘導ペプチドとして同定される(実施例1)。
本明細書に記載されたCD1 により提示される抗原の測定は、分子ライブラリー
からCD1 ブロッキング剤をスクリーニングするために用いることが出来る。分子
的に種々な組成を持つライブラリーは、化学的、生化学的および/又はバイオテ
クノロジー的な手段により作られる。この様なライブラリーの中には、合成ペプ
チドの組合わせライブラリー(combinatorial libraries)(ホウテン(Houghten,R
.A.)ら、BioTechniques 13:412-421(1992))および組換え DNAテクノロジーに
より作られる融合タンパク質、例えばファージ表出ライブラリーが含まれる。コ
イバンネン(Koivunen,E.)ら、J.Biol.Chem. 268:20205-20210(1993)。こ
れらのライブラリーは、本明細書に記載のDNT細胞増殖性応答および/又は CD1
細胞溶解性応答を阻害又は防止するメンバーの有無についてスクリーニングさ
れる。CD1 ブロッキングメンバーは、この分野での既知でしかも用いられたライ
ブラリーのタイプに適合した技法に基づいてライブラリーから単離される。ロー
マン(Lowman,H.B.)ら、Biochemistry 30:10832-10838(1991); ヘリシイア(Fe
licia,F.)ら、J.Mol.Biol.22:301-310(1991);ダンデカル(Dandekar,T.)
ら、Neurochem.Int.7:247-253(1985); オーウェン(Owens,R.A.)ら、Biophys
.Res.Commun.181:402-408(1991)。
試料中からCD1 ブロッキング剤を検出する為には、CD1により提示される抗原
に対する測定を2重に実施する。第1の(コントロール)測定は、実施例1に記
載の方法と実質的に同様に行われるT細胞増殖性又は細胞溶解性測定である。第
2の測定は次の点を除きあらゆる点で第1の測定と同一である:すなわち第2の
測定はCD1 ブロッキング剤を含む可能性のあるサンプルを追加的に含む。サンプ
ル中の CD1ブロッキング剤の存在と第1の測定で測定されたよりも有意に少ない
第2の測定におけるT細胞増殖性応答又は細胞溶解性応答との間に相関関係が認
められる。
実施例12:CD1により提示される抗原に対するT細胞の反応性
実施例1に記載のようにCD1拘束性抗原に対するT細胞の反応性は初めT細
胞の亜群、つまり、CD4- 8- TCR αβ+ T細胞の間で見つけられた。し
かしながら、新たに追加された微生物の抗原のCD1拘束性外因性の抗原の認識
の例が、CD8+ TCR αβ+ T細胞並びにTCR γδ+ T細胞で見つかっ
ている。CD1はTCR γδ+ T細胞の抗原に対する応答を拘束する
ヒト末梢血単核細胞はleukopakから得られた。プラスティックに付着
させることによる単球数の減少の後、TCR γδ+ T細胞を既報に従ってマグ
ネティックセルソーティング(MACS)を使って単離した(シテックとラジュ
ースキー(Schittek,B.and Rajewsky,K.)、Nature 346:749-751(1990)。簡単に
言えば、PBMCをビオチン化した抗γδTCRモノクローナル抗体(TCRδ
1)で標識し、その後FITC−Avidin(CALTAG)とビオチン化さ
れたビーズ(Miltenyi Biotec,Sunnyvale,CA)で
染色した。それから、細胞を大容量(3×107細胞)のカラム(Milten
yi Biotec,Sunnyvale,CA)を通して強い磁場で陽性選択
した。細胞の純度は、精製後直ちにFACSにより査定した。この処理では、2
×109のPBMCから始めて、通常98%以上の純度の2×107のTCR γ
δ+ T細胞を得ることができる。
特別な刺激無しにin vitroで3日間置いたのち、精製したTCR γ
δ+ T細胞を自己のGM−CSFとIL−4で処理したCD1+ 単球と1:1の
割合で、24ウェルのプレート(Costar,Cambridge,MA)で
培養した(1つのウェルあたり、2×106個のT細胞をプレーティングした)
。細胞を刺激するのに使った抗原は、(実施例2と実施例3に記載したように)
ミコバクテリウム・ツベルクロシスの有機相の抽出物を1/3,750倍に希釈
したものであった。簡単に述べると、ほとんどの脂質を有機相に、そしてタンパ
ク質を水相と界面に分配するフォルク(Folch)の方法に基づいたクロロフ
ォルム/メタノール抽出を使った。4日間培養した後組み換えインターロイキン
−2(rIL−2)を加えて(0.3nM)、12日毎に細胞を抗原で再刺激し
た。
3回の刺激により、OGD1と名付けたCD1b拘束性TCR γδ+ T細胞
株を単離した。このT細胞株が単離された精製したTCR γδ+ T細胞群は優
先的にVδ2遺伝子産物を発現したにもかかわらず(90%)、モノクローナル
抗体TCR δ1(γδTCR)、δTCS1(Vδ1遺伝子産物)とBB3(
Vδ2遺伝子産物)(T Cell Diagnostics,Cambrid
ge,MAから入手できる)を用いるOGD1のFACS分析により、単離した
T細胞がVδ1遺伝子産物を優先的に発現していることが示唆された(図26A
)。この結果から、このCD1により媒介される刺激は、Vγ2Vδ2 T細胞
の拡張を常に伴う、バクテリアの抗原によるTCR γδ+ T細胞の刺激の既に
立証された全ての例と違っていることが示唆される。
CD1bによるOGD1細胞の拘束は、CD1+ 単球にパルスした抗原の細胞
毒性をブロックし(図27)、またクロロフォルム/メタノール抽出したミコバ
クテリアの有機相に存在するミコバクテリア抗原に対するOGD1細胞株の特異
的な増殖もブロックする(図28)抗CD1bモノクローナル抗体を用いて確認
した。この細胞株の高特異性のさらなる分析により、OGD1がけん化したコー
ドファクター(cord factor)(SIGMA,St.Louis,M
O)(つまり、ミコール酸、ミコバクテリア細胞壁の脂質成分)を認識するとい
う証拠が得られた(図28)CD8+ TCR αβ+ T細胞はCD1分子により提示される抗原を認識する
CD1分子がCD8+ TCR αβ+ 産生T細胞に対する抗原提示分子として
の役割を担うかどうかを決定するため、上記と類似した実験を、精製した末梢血
CD8+ T細胞をTCR γδ+ T細胞の代わりに用いて行った。T細胞は抗C
D8モノクローナル抗体(Miltenyi Biotec,Sunnyval
e,CA)に結合させた磁気ビーズで精製し、そして、純度をFITC結合モノ
クローナル抗体OKT8(抗CD8α)による染色後のFACSにより評価した
。培養のプロトコールはTCR γδ+ T細胞のときと同様であった。ミコバク
テリウム・ツベルクロシスの有機相抽出物でパルスしたCD1+ 単球でこれらの
CD8+ T細胞を3回刺激した後、細胞株を得、OAB8と名付けた。FITC
結合抗CD8 α鎖(OKT8)と抗CD8 β鎖(2ST8−5H7)モノク
ローナル抗体でのFACS分析により、細胞株がCD8 αβヘテロ二量体の発
現に対して均一に陽性であることが示された。TCR αβ特異的モノクローナ
ル抗体BMA031による染色により、細胞株OAB8がTCR αβに対し均
一に陽性であることが示された。増殖アッセイによりミコバクテリアの有機相抽
出物に対するOAB8細胞株の特異性が確認され、そして、OAB8が精製した
ミコバクテリアのミコール酸を認識することが示された(図29)。さらに、抗
体によるブロッキングの実験により、OAB8細胞株がCD1c分子拘束性であ
り(図30)、抗体CD1cモノクローナル抗体としてその応答をブロックする
が、しかし一方でCD1a、CD1bそしてMHCクラスI分子に対する抗体は
全く効果を持たないことが示された。
これらのデータは、CD4- 8- TCR αβ+ 産生T細胞のCD1拘束性微
生物抗原に対する反応性に加え、他の主なT細胞集団はCD1拘束性であること
を示している。CD8+ TCR αβ+ 産生T細胞は循環している全てのT細胞
の約35%を占め、TCR γδ産生T細胞は全てのT細胞の別の5%を占める
ので、CD1拘束性免疫応答の潜在的な重要性は、様々な免疫学上の応答や症候
群に意味がある。さらに、これらのT細胞集団はサイトカインの招集を分泌し、
また、細胞溶解性活性を媒介することが知られているので、非ペプチド抗原に特
異的なCD1拘束性CD8+ TCR αβ+とTCR γδ+ T細胞のエフェク
ターとしての能力は宿主の防御において決定的な役割を果たしているのであろう
。
参照による挿入
本明細書中に引用されたすべての刊行物は、参照の形でその全文が本明細書の
中に挿入されている。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年11月4日
【補正内容】
請求の範囲
1.CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコ
リピド抗原を含むワクチンを製造する方法であって、下記の工程からなる方法:
a)CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグ
リコリピド抗原を含む試料を、CD1陽性細胞とインキュベートする工程;
b)該試料からCD1結合リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリ
コリピド抗原を表出する該CD1陽性細胞を分離する工程;
c)該抗原を表出する該CD1陽性細胞から、CD1により提示されるリポ
アラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原を分離する工程;およ
び
d)分離した該CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上
関連したグリコリピド抗原を処方して、ワクチンを生成する工程。
2.CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコ
リピド抗原を含むワクチンを製造する方法であって、下記の工程からなる方法:
(a)CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグ
リコリピド抗原を含む試料を、2以上の画分に分画する工程;
(b)CD1により提示される抗原の存在について、該画分を試験する工程;
および
(c)該CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連した
グリコリピド抗原を含む1以上の画分を処方して、ワクチンを生成する工程。
3.(a)該CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連し
たグリコリピド抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1
eからなる群より選ばれたCD1分子により提示される;または
(b)該CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連し
たグリコリピド抗原が、M.ツベルクロシス(M.tuberculosis)、M.ボービス(
M.bovis)、M.レプラエ(M.leprae)、M.フォルツイツム(M.fortuitum)およ
びM.アビウム(M.avium)からなる群より選ばれたミコバクテリウム種から単離
されるものである、請求項1または2記載の方法。
4.請求項1〜3いずれか記載の方法により製造可能な、CD1により提示され
るリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原を含むワクチン
。
5.特異的T細胞応答を誘導する、ワクチン接種に用いる医薬の製造のためのC
D1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド
抗原の使用。
6.脊椎動物に投与すると、該脊椎動物に特異的T細胞応答を誘導するワクチン
であって、下記からなるワクチン:
(a)CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグ
リコリピド抗原または機能的断片またはそれらの類似体の特異的T細胞応答を誘
導する有効量、および薬学的に許容され得る担体;または
(b)CD1+ 分子と複合体を形成したCD1により提示されるリポアラビノ
マンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原または機能的断片またはそれら
の類似体の特異的T細胞応答を誘導する有効量、および薬学的に許容され得る担
体。
7.さらに下記を含んでなる請求項6記載のワクチン:
(a)抗原提示細胞にCD1発現を誘導する1以上のサイトカインまたは他の
分子;または
(b)1以上の異なる抗原;または
(c)CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群よ
り選ばれたCD1分子、この場合、該ワクチンは抗原:CD1複合体からなる。
8.少なくとも1種の異なる抗原が、MHC−Iにより提示される抗原またはM
HC−IIにより提示される抗原から選ばれた非CD1提示抗原である、請求項7
記載のワクチン。
9.鳥類または哺乳動物に、該リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリ
コリピド抗原に対する免疫応答を付与する有効量で、請求項6、7または8記載
のワクチンを投与する工程からなるワクチン接種の方法。
10.該ワクチンが、経口または非経口投与されるものである、請求項9記載の
方法。
11.特異的T細胞応答を誘導することにより脊椎動物の免疫性を増強する医薬
の製造のための、CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関
連したグリコリピド抗原(またはその機能的同等物)の使用。
12.(a)CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連し
たグリコリピド抗原(またはその機能的同等物)および(b)特異的T細胞応答
および非特異的応答を誘導することにより脊椎動物の免疫性を増強する医薬の製
造のための1以上の追加の非特異的応答誘導成分の使用。
13.リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原が、(a)
生体の細胞成分;または(b)細菌、菌類または原生動物細胞由来である、請求
項6記載のワクチン。
14.CD1により提示される疎水性抗原またはその機能的同等物からなるワク
チンの免疫有効量を、脊椎動物に投与することからなる、脊椎動物の免疫性を増
強または促進する方法。
15.抗体、合成ペプチド、CD1拘束性リポアラビノマンナンまたは構造上関
連したグリコリピド抗原提示の阻害剤およびCD1により提示される抗原由来の
リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原拮抗物質からなる
群より選ばれたCD1拘束性リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコ
リピド抗原提示を阻害する、治療に使用するCD1ブロッキング剤。
16.CD1分子を表出する細胞を、請求項15記載のCD1ブロッキング剤と
接触させる工程からなる、CD1陽性細胞によりCD1拘束性リポアラビノマン
ナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原提示を阻害する方法。
17.試料中のCD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連
したグリコリピド抗原を検出する方法であって、下記の工程からなる方法:
(a)該試料をCD1陽性細胞と接触させる工程、
(b)該CD1陽性細胞をT細胞と接触させる工程、および
(c)該T細胞の増殖性応答または細胞溶解性応答を測定する工程。
18.試料からCD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連
したグリコリピド抗原を単離する方法であって、下記の工程からなる方法:
(a)CD1結合リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗
原を表出するCD1陽性細胞を産生させるために、該CD1により提示されるリ
ポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原と結合するCD1陽
性細胞と、該試料をインキュベートする工程、
(b)該試料からCD1結合リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリ
コリピド抗原を表出する該CD1陽性細胞を分離する工程、および
(c)該リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原を表出
する該CD1陽性細胞から、CD1により提示されるリポアラビノマンナンまた
は構造上関連したグリコリピド抗原を分離する工程。
19.下記の工程からなる方法により製造可能な単離されたCD1により提示さ
れるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原:
(a)CD1結合リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗
原を表出するCD1陽性細胞を産生させるために、該CD1により提示されるリ
ポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原と結合するCD1陽
性細胞と、該試料をインキュベートする工程、
(b)該試料からCD1結合リポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリ
コリピド抗原を表出する該CD1陽性細胞を分離する工程、および
(c)該抗原を表出する該CD1陽性細胞から、CD1により提示されるリポ
アラビノマンナンまたは構造上関連したグリコリピド抗原を分離する工程。
20.CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグリ
コリピド抗原を認識する単離されたT細胞。
21.該CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連したグ
リコリピド抗原が、
(a)CD1a、CD1b、CD1c、CD1dおよびCD1eからなる群よ
り選ばれたCD1分子により提示される;
(b)M.ツベルクロシス(M.tuberculosis)、M.ボービス(M.bovis)、M
.レプラエ(M.leprae)、M.フォルツイツム(M.fortuitum)およびM.アビウ
ム(M.avium)からなる群より選ばれたミコバクテリウム種から単離されるもので
ある、請求項20記載のT細胞。
22.請求項20記載のT細胞を提供する方法であって、下記の工程からなる方
法、
(a)T細胞を含む試料からCD1により提示されるリポアラビノマンナン
または構造上関連したグリコリピド抗原と結合可能なT細胞を精製する工程、
(b)ミコバクテリウムを該CD1により提示されるリポアラビノマンナン
または構造上関連したグリコリピド抗原と結合するCD1+ 細胞とインキュベー
トして、該CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造上関連した
グリコリピド抗原を表出するCD1+ 細胞を生成する工程、
(c)(b)の該CD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造
上関連したグリコリピド抗原を表出するCD1+ 細胞と、(a)のT細胞とを接
触させる工程、および
(d)単離されたCD1により提示されるリポアラビノマンナンまたは構造
上関連したグリコリピド抗原を認識し、工程(c)の間、増殖性応答を付与する
T細胞を単離する工程、
該増殖性応答は、CD1に対する抗体の存在下では起こらない。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
G01N 33/53 G01N 33/566
33/566 C12N 5/00 B
(31)優先権主張番号 08/501,491
(32)優先日 1995年7月12日
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/501,600
(32)優先日 1995年7月12日
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,C
A,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI
,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,
KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,M
G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT
,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,
TM,TT,UA,UG,US,UZ,VN
(71)出願人 ザ コロラド ステイト ユニバーシティ
ー リサーチ ファンデーション
アメリカ合衆国 コロラド 80521 フォ
ート コリンズ,サウス ハウズ 601,
ルーム 502
(72)発明者 モドゥリン,ロバート エル.
アメリカ合衆国 カリフォルニア 91423
シャーマン オークス,ベネディクト
キャニオン ドライブ 4034
(72)発明者 シーリング,ピーター エイ.
アメリカ合衆国 カリフォルニア 90265
マリブ,バスチ ドライブ 6245
(72)発明者 ブレンナー,マイケル ビー.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02146 ブルックライン,ガードナー ロ
ード 11
(72)発明者 ブレンナン,パトリック ジェイ.
アメリカ合衆国 コロラド 80525 フォ
ート コリンズ,ブレイクウォーター ド
ライブ 930
(72)発明者 ポーセリ,スティーブン エイ.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02135 ブライトン,ハンネウェル アベ
ニュー 77
(72)発明者 ファーロング,ステファン ティー.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02368 ランドルフ,レジナ ロード 13
エイ