JPH10500939A - 特定のスルファターゼ酵素類および/または硫酸化阻害剤の投与による炎症の治療 - Google Patents
特定のスルファターゼ酵素類および/または硫酸化阻害剤の投与による炎症の治療Info
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- JPH10500939A JPH10500939A JP7524173A JP52417395A JPH10500939A JP H10500939 A JPH10500939 A JP H10500939A JP 7524173 A JP7524173 A JP 7524173A JP 52417395 A JP52417395 A JP 52417395A JP H10500939 A JPH10500939 A JP H10500939A
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Abstract
(57)【要約】
外傷に伴う炎症、ならびにリウマチ様関節炎、乾せん、インスリン依存性糖尿病、皮膚リンパ腫、十二指腸潰瘍、慢性直腸炎、リンパ球性甲状腺炎、出血性ショック、移植中の再潅流障害および多発性硬化症のようなある種の態様の疾患に伴う炎症を含む各種の症状を治療するため、組成物を患者に(好ましくは、注射で、かつ局所に)投与する。これら組成物は、医薬として許容される担体中に活性成分を含有する医薬として許容される注射用製剤である。その活性成分は、自然の生化学的硫酸化プロセスを阻害する塩素酸塩またはセレン酸塩および/またはL−セレクチンに対する自然リガンドの一部分を構成する糖分子の特定位置から硫酸基を外すスルファターゼ酵素である。リガンドから硫酸基を外すと、そのリガンドがその自然受容体(つまり、L−セレクチン)に結合する性能が妨害されて、炎症をもたらす生化学的連鎖事象が妨害される。
Description
【発明の詳細な説明】特定のスルファターゼ酵素類および/または硫酸化阻害剤の投与による炎症の治 療 相互参照
本願は、本発明の発明者らの先願の出願である1992年9月11日出願の米
国特許出願第07/943,817号および1993年11月19日出願の米国
特許出願第08/155,947号の一部継続出願であり、当該両出願はその全
体を本明細書に援用するところであり、また当該出願について本発明の発明者ら
は米国特許法第120条の規定による優先権を主張するところである。米国政府の権利
米国政府は、米国国立衛生研究所が授与した助成第GM−23547号に従っ
て本願にある種の権利を有しているかも知れない。発明の技術分野
本発明は、概要的には、自然リガンドに対する硫酸基の代謝付加を阻害しおよ
び/または自然リガンドの特定位置から硫酸基部分を除くことにより、リガンド
が受容体に結合するのを妨害して、炎症を治療することに関する。より具体的に
は、本発明は、硫酸基部分がセレクチンリガンドに付加するのを代謝によって阻
害する非毒性塩素酸塩のような化合物を局所投与しおよび/または硫酸基部分を
除去する特定のスルファターゼ化合物を投与して、炎症を軽減する望ましい作用
をもたらすことに関する。発明の背景
生理に関する認識における炭水化物類の役割を研究するいくつもの研究努力が
なされている。(Brandley,B.K.およびSchnaar,R.L.
の論文、J.Leuk.Biol.(1986年)40巻、97頁、およびSh
aron,N.およびLis,H.の論文、Science(1989年)24
6巻、227頁を参照)。オリゴ糖類は、細胞表面に配置されかつ構造が多様で
あることによって、認識分子として作用するようにうまく配置されている。多数
のオリゴ糖構造体は、小数のグリコシルトランスフェラーゼ類の特異的活性によ
って創製することができる。このように、オリゴ糖の多様な構造体は、比較的小
数の遺伝子産物によって生成させることができるので、広範囲の細胞−細胞相互
作用を指示するのに必要な情報を確立するためのもっともらしい機構を提案する
。相互に作用する細胞上での、細胞表面炭水化物類および推定炭水化物結合タン
パク質類(レクチン類)の特異的発現の例がすでに報告されている(Dodd,
J.およびJessel,T.M.の論文、J.Neurosci.(1985
年)5巻、3278頁、Regan,L.J.他の論文、Proc.Natl.
Acad.Sci.USA(1986年)83巻、2248頁、Constan
tine−Paton,M.他の論文、Nature(1986年)324巻、
459頁、およびTiemeyer,M.他の論文、J.Biol.Chem.
(1989年)263巻、1671頁を参照)。
循環白血球が刺激された血管内皮に粘着することが炎症応答の主な事象である
。いくつかの受容体がこの相互作用に関与しており、
その受容体としては、セレクチン類と呼ばれる推定レクチン類のファミリーがあ
り、このファミリーにはL−セレクチン、LAM−1(gp90MEL,Leu8
)、P−セレクチン(GMP−140(PADGEM、CD62)およびE−セ
レクチン(ELAM−1)が含まれる(Gong,J.−G.他の論文、Nat
ure(1990年)343巻、757頁、Johnston.G.I.他の論
文、Cell(1989年)56巻、1033頁、Geoffroy,J.S.
およびRosen,S.D.の論文、J.Cell Biol.(1989年)
109巻、2463頁、Lasky,L.A.他の論文、Cell(1989年
)56巻、1045頁)。現在知られている3種のセレクチン類は、全て、炭水
化物を認識することが報告されている(Laskyの論文、Science、2
58巻、964〜969頁、1992年参照)。これら受容体に対する内因性リ
ガンド類は、同定されつつある。
E−セレクチンすなわちELAM−1は、IL−1またはTNFに応答して内
皮細胞上で一過的に発現するので、興味深い(Bevilacqua,M.P.
他の論文、Science(1989年)243巻、1160頁)。この誘発さ
れる発現の時間経過(2〜8時間)は、この受容体が感染と損傷に応答して、初
期好中性血液溢出に役割を演じていることを示唆している。さらに、Bevil
acqua他(Bevilacqua,M.P.他の論文、Proc.Natl
.Acad.Sci.USA(1987年)84巻、9238頁を参照)は、ヒ
ト好中球またはHL−60細胞がELAMー1受容体をコードするcDNAを含
有するプラスミドでトランスフェクトされたCOS細胞に粘着することを実証し
た。
最近、いくつかの異なるグループが、E−セレクチンリガンドと
呼称される、E−セレクチンすなわちELAM−1のリガンドについて論文を刊
行した。Lowe他(1990年)は、HL−60細胞変異体とトランスフェク
トされた細胞系のE−セレクチン依存性粘着と、これら細胞系の、シアリル L
ewis X(sLex)オリゴ糖すなわちNeu NAc α2−3Gal−
βl−4(Fucα1−3)−GlcNAcそしてより具体的に一般的に示すと
Siaα2−3Galβl−4[Fucα1−3]GlcNAcの発現との間の
正の相関関係を実証した。α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼを
含有するプラスミドで細胞をトランスフェクトすることによって、Loweらは
、非骨髄性COSまたはCHO系を、E−セレクチン依存方式で結合するsLex
陽性細胞(sLex-positive cell)に変換することができた。抗sLex抗体を用い
てE−セレクチン依存性粘着を遮断する試みは、試験細胞が抗体によって凝集す
るため解明できなかった。Loweらは、シアリル化され、フコシル化されたラ
クトサミノグリカン類からなるオリゴ糖のファミリーの1種以上のメンバーは、
E−セレクチンのレクチンドメインに対するリガンドであると結論している。P
hilips他(1990年)は、sLexに対する特異性をもっていることが
報告された抗体を用いて、HL−60細胞またはLEC11 CHO細胞の活性
化内皮細胞へのE−セレクチン依存性粘着を阻害した。sLex末端構造を有す
るジフコシル化糖脂質を含有するリポソームは、粘着を阻害したが、非シアリル
化Lex構造を含有するリポソームは部分的に阻害性であった。Walz他(1
990年)は、E−セレクチン−IgGキメラのHL−60細胞との結合を,s
Lexに対するモノクローナル抗体でまたはsLex構造体を有する糖タンパク質
によって阻害できたが、CD65抗体またはCD15抗体による
阻害を実証できなかった。両グループは、sLex構造体はE−セレクチンに対
するリガンドあると結論した。
内皮細胞−白血球粘着分子をコードするDNA配列に関する情報は、1990
年11月15日に公開されたPCT特許願公開第WO90/13300号に開示
されている。上記PCT公開は、内皮細胞−白血球粘着分子に関する多数の論文
を引用している。このPCT公開は、E−セレクチンリガンドの同定方法および
これらリガンドを用いて白血球と内皮細胞間の粘着を阻害する方法を特許請求し
、特に白血球の内皮細胞に対する粘着に関与する分子として報告されているMI
LAに言及している。
L−セレクチンすなわちLECAM−1は、リンパ球と好中球の流入(influx
)に関与しているので、興味深い(Watson他の論文、Nature、34
9巻、164〜167頁(1991年))。L−セレクチンは、HEVに結合す
る慢性リンパ球白血病細胞に発現された(Spertini他の論文、Natu
re、349巻、691〜694頁(1991年)を参照)。慢性炎症の部位に
おけるHEV様構造体は、リウマチ様関節炎、乾せんおよび多発性硬化症などの
疾患の症状に関連していると考えられている。
広範囲のE−セレクチンリガンドが、WO92/02527号(1992年2
月20日公開)として公開されたBrandley他のPCT/US91/05
416号およびWO90/13300号(1990年11月15日公開)として
公開されたHession他のPCT/US90/02357号に開示されてい
る。なお、これら両刊行物は、全体を本明細書を援用するものであり、特にオリ
ゴ糖構造体が開示され、これらはE−セレクチンリガンドおよびL−セレクチン
リガンドとして作用することが報告されている。
これらのセレクチンは、各種の白血球−内皮の粘着事象を仲介する3種の細胞
−細胞粘着タンパク質のファミリーである(以下の文献で検討されている:La
sky,L.A.、Science、258巻、964〜969頁(1992年
);McEver,R.P.、Curr.Opin.Cell Biol.、4
巻、840〜849頁(1992年);Bevilacqua,M.P.および
Nelson,R.M.、J.Clin.Invest.、91巻、379〜3
87頁(1993年);Rosen,S.D.、Semin.in Immun
ol.、5巻、237〜249頁(1993年)。L−セレクチンは、白血球の
表面に発現され、高内皮小静脈(HEV)の特殊化内皮管壁細胞(Specia
lized endothelial liningcell)への結合を仲介
することによって、血管が運ぶリンパ球の末梢リンパ節へのホーミングに関与し
ている(Gallactin,W.M.、Weissman,I.L.およびB
utcher,E.C.、Nature、303巻、30〜34頁(1983年
);Geoffroy,J.S.およびRosen,S.D.、J.Cell
Biol.、109巻、2463〜2469頁(1989年))。L−セレクチ
ンは、急性炎症の特定部位における好中球と小静脈内皮の旋回相互作用、すなわ
ち白血球の最終溢出の必須ステップ、にも関与している(Lewinsohn他
の論文、J.Immunol.、138巻、4313〜4321頁(1987年
);Ley,K.、Gaehtgens、p.、Fennie,C.、Sing
er,M.S.、Lasky,L.A.およびRosen,S.D.の論文、B
lood、77巻、2553〜2555頁(1991年);Von Adria
n,U.、Chambers,J.D.、McEvo
y,L.M.、Bargatze,R.F.、Arfors,K.E.およびB
utcher,E.C.の論文、Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,88巻、7538〜7542頁(1991年))。残りの2種のセレクチン
であるE−セレクチンとP−セレクチンは、これらセレクチンが、好中球、単球
、およびリンパ球の特定のサブセットへの結合を仲介する内皮細胞上に発現され
る。L−セレクチンは、慢性炎症部位へのリンパ球および単球の浸入に関与して
いる(Dowson他の論文、Eur.J.Immunol.、22巻、164
7〜1650頁(1992年)およびSpertini他の論文、J.Exp.
Med.、175巻、1789〜1792頁(1992年))。これらセレクチ
ン類は、そのアミノ末端におけるC型レクチンドメインによって、その粘着機能
を果たす(Drickamer,K.の論文、J.Biol.Chem.、26
3巻、9557〜9560頁(1988年))。これらドメイン間の配列類似度
が高い(60〜70%)ことを反映して、HEV上のL−セレクチンおよび白血
球上のE−セレクチンとP−セレクチンの生物学的リガンドは、シアル酸に対す
る要求を共有している(Varki,A.の論文、Curr.Opin.Cel
l Biol.、4巻、257〜266頁(1992年)で検討されている)。
さらに、各セレクチンは、シアリルLewis X[sLex、すなわちNeu
5ACα2→3Galβ1→4(Fucα1→3)/GlcNAc]および類縁
構造体を認識できる(Stoolman L.M.の論文、「Cell Sur
face Carbohydrates and Cell Developm
ent」、71〜97頁(1992年)(M.Fukuda編)、フロリダ州ボ
カレートン所在のCRC Press社発行、で検討さ
れている)が、阻害試験の結果は、これら化合物の結合アフィニティが低いこと
を示している。L−セレクチン、すなわちLECAM−1は、カルシウム型ドメ
インを有するレクチン様受容体であるが、これはリンパ球がリンパ節の高内皮小
静脈(HEV)に結合するのを仲介する(Gallatin他の論文、Natu
re、303巻、30〜34頁(1983年);Lasky,L.A.の論文、
Science、258巻、964〜969頁(1992年);およびBevi
lacqua他の論文、J.Clin.Invest.、91巻、370〜38
7頁(1993年))。sLex類縁構造体がこれらセレクチン類の実際の生物
学的リガンド中に存在していることは、炭水化物特異的抗体の使用に基づいた証
拠がある(Phillips,M.L.、Nudelman,E.、Gaeta
,F.、Perez,M.、Singhal,A.K.、Hakomori,S
.およびPaulson,J.C.の論文、Science、250巻、113
0〜1132頁(1990年);Walz,G.、Aruffo,A.、Kol
anus,W.、Bevilacqua,M.およびSeed,B.の論文、S
cience、250巻、1132〜1135頁(1990年);Polley
,M.J.、Phillips,M.L.、Wayner,E.、Nudelm
an,E.、Singhal,A.K.、Hakomori,S.およびPau
lson,J.C.の論文、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、
88巻、6224〜6228頁(1991年);Berg,E.L.、Yosh
ino,T.、Rott,L.S.、Robinson,M.K.、Warno
ck,R.A.、Kishimoto,T.K.、Picker,L.J.およ
びButcher,E.C.の論文、J.Exp.Me
d.、174巻、1461〜1466頁(1991年);Sawada,M.、
Takada,A.、Ohwaki,I.、Takahashi,N.、Tat
eno,H.、Sakamoto,J.およびKannagi,R.の論文、B
iochem.Biophys.Res.Commun.、193巻、337〜
347頁(1993年);Nogard,K.E.、Moore,K.L.、D
iaz,S.、Stults,N.L.、,Ushiyama,S.、McEv
er,R.P.、Cummings,R.D.およびVarki,A.の論文、
J.Biol.Chem.、268巻、12764〜12774頁(1993年
))。それにもかかわらず、各セレクチンは、一組の好ましい生物学的リガンド
を持っている(Larsen,G.R.、Sako,D.、Ahern,T.J
.、Shaffer,M.、Erban,J.、Sajer,S.A.、Gib
son,R.M.、Wagner,D.D.、Furie,B.C.およびFu
rie,B.の論文、J.Biol.Chem.、267巻、11104〜11
110頁(1992年);Berg,E.L.、Magnani,J.、War
nock,R.A.、Robinson,M.K.およびButcher,E.
C.の論文、Biochem.Biophys.Res.Commun.、18
4巻、1048〜1055頁(1992年)が、何が一つのセレクチンのリガン
ドを別のセレクチンのリガンドから識別するのかについての情報を欠いている。
現在のところ、最高に特性が解析されているリガンドは、L−セレクチンに対
するHEV関連リガンドであり、GlyCAM−1(以前は、Sgp50と呼称
)とSgp90として知られている(Imai,Y.、Singer,M.S.
、Fennie,C.、L
asky,L.A.およびRosen,S.D.の論文、J.Cell Bio
l.、113巻、1213〜1221頁(1991年))。これら内皮関連リガ
ンドは、硫酸化、シアリル化およびフコシル化されたO−結合オリゴ糖連鎖を有
するムチン様糖タンパク質である。これら糖タンパク質は、当初、代謝で35SO4
で標識を付けたリンパ節抽出物を、可溶性のL−セレクチン/免疫グロブリン
キメラで沈降させることによって検出された。上記キメラによって沈降させるこ
とはできないが、細胞−細胞結合事象の前後において機能的に重要な相互作用に
それでもなお関与している他の低アフィニティのリガンドが存在するかも知れな
い(Berg,E.L.、Robinson,M.K.、Warnock,R.
A.およびButcher,E.C.の論文、J.Cell Biol.、11
4巻、343〜349頁(1991年))。GlyCAM−1は、培養リンパ節
の調整培地中に、無傷の分子として放出される(Lasky,L.A.、Sin
ger,M.S.、Dowbenko,D.、Imai,Y.、Henzel,
W.J.、Grimley,C.、Fennie,C.、Gillett,N.
、Watson,S.R.およびRosen,S.D.の論文、Cell、69
巻、927〜938頁(1992年);Brustein,M.、Kraal,
G.、Mebius,R.E.およびWatson,S.R.の論文、J.Ex
p.Med.、176巻、1415〜1419頁(1992年))が、このこと
はGlyCAM−1が分泌産物および/またはゆるやかに結合した末梢膜の成分
であることを示唆している。これとは対照的に、Sgp90は、膜内在性タンパ
ク質であり、抽出するとき界面活性剤が必要である(S.Hemmerichお
よびS.Rosenの未発表の試験結果)。分子分析を
行った結果、GlyCAM−1は、新規なムチン様糖タンパク質であることが明
らかになり、そしてさらに最近にSgp90もHEV特異的な糖型のムチンCD
34であることが分かった、Baumhueter,S.、Singer,M.
S.、Henzel,W.、Hemmerich,S.、Renz,M.、Ro
sen,S.D.およびLasky.L.A.の論文、Science、262
巻、436〜438頁(1993年)。GlyCAM−1のO−連結連鎖は、大
きさと電荷において不均一であることが報告されている(Imai,Y.および
Rosen,S.D.の論文、Glycoconjugate J.、10巻、
34〜39頁(1993年))。いくつかのこれら連鎖は、多重電荷(multiple
charges)を有しており、主に寄与しているのはシアリル化より硫酸化であるよ
うである。GlyCAM−1およびSgp90の両者とL−セレクチンとの相互
作用は、それらのシアリル化に依存しているが、このことは、リンパ節HEVの
シアリダーゼ処理によってリンパ球の付着とリンパ球の流通(trafficking)が
損なわれるという以前の知見を確認している(Rosen,S.D.、Sing
er,M.S.,Yednock,T.A.およびStoolman,L.M.
の論文、Science、228巻、1005〜1007頁(1985年);R
osen,S.D.、Chi,S.I.、True,D.D.、Singer,
M.S.およびYednock,T.A.の論文、J.Immunol.、14
2巻、1895〜1902頁(1989年))。しかし、完全に脱シリアル化を
行っても、GlyCAM−1のリガンド活性を完全には喪失しない。これは、シ
アル酸非依存モードの認識も存在することを示唆している(Imai,Y.、L
asky,L.A.およびRosen,S.D.の論文
、Glycobiology、4巻、373〜381頁)。GlyCAM−1の
リガンド結合部位の一部を形成するシアル酸は、α2→3結合にあるようである
。というのは、ニューカッスル病ウイルス由来の連鎖特異的シアリダーゼは、G
lyCAM−1を部分的にリガンドとして不活性化するからである。さらに、競
合阻害試験と直接結合試験の両者において、sLex型のオリゴ糖は、L−セレ
クチンに対するリガンド活性を明確に示すが、α2→6結合のNeu5Acを有
するLewis X型構造体は、不活性である(Foxall,C.、Wats
on,S.R.、Dowbenko,D.、Fennie,C.、Lasky,
L.A.、Kiso,M.、Hasegawa,A.、Asa,D.およびBr
andley,B.K.の論文、J.Cell Biol.、117巻、895
〜902頁(1992年))。フコースからの必須の寄与が考えられる。なぜな
らば、シアリルラクトース(すなわちNeu5Acα2→3Galβ1→4Gl
c)は、sLexと比べて、L−セレクチンとの結合の競合体として比較的不活
性であるからである。さらに、フコースは、P−セレクチンとE−セレクチンの
好中球リガンドに対する重要な決定因子であることが分かっている(Larse
n,G.R.、Sako,D.、Ahern,T.J.、Shaffer,M.
、Erban,J.、Sajer,S.A.、Gibson,R.M.、Wag
ner,D.D.、Furie,B.C.およびFurie,B.の論文、J.
Biol.Chem.、267巻、11104〜11110頁(1992年))
ので、これらセレクチン類のレクチンドメイン間の配列類似性から見ると、L−
セレクチンのリガンドに対して同様に重要な決定因子と考えられる。
早期の研究は、大部分が、どのオリゴ糖化合物がリガンドとして
作用するかに集中していた。本発明の発明者らは、硫酸基部分のGlyCAM−
1への結合が上記糖タンパク質のリガンドとして作用する性能に大きな効果をも
っていることを確認して(Imai他の論文、Nature、361巻、555
〜557頁(1993年))、1992年9月11日出願の同時係属中の米国特
許出願第07/943,817号(本明細書に援用)の根拠になっている発明を
開発した(Imai,Y.およびRosen,S.D.の論文、Glycoco
njugate J.、10巻、34〜39頁(1993年);Imai,Y.
、Lasky,L.A.およびRosen,S.D.の論文、Nature、3
61巻、555〜557頁も参照)。
シアリルLewis X類縁オリゴ糖、すなわち
Siaα2−3Galβ1−4[Fucα1−3〕GlcNAcが、非常に弱
いとはいえ、L−セレクチンに対してリガンド活性をもっている証拠が提供され
ている(Foxall他の論文、J.Cell Biol.、117巻、895
〜902頁(1992年);Berg他の論文、Biochem.Biophy
s.Res.Comm.、184巻、1048〜1055頁(1992年)およ
びImai他の論文、Glycobiology)。炭水化物特異的抗体による
試験に基いた、内在性HEVリガンドが実際にシアリルLewis X類縁構造
体をもっている証拠もある(Sawada,M.の論文、Biochem.Bi
ophys.Res.Comm.、193巻、337〜347頁(1993年)
)。スルファチド、フコイジン(Imai他の論文、J.Cell Biol.
、111巻、1225〜1232頁(1990年)、類縁糖脂質類(Suzuk
i他の論文、Biochem.Biophys.Re
s.Comm.、190巻、426〜434頁(1993年)、および硫酸化型
のLewis X/a、すなわち SO4−3Galβ1−4/3[Fucα1
−3/4]GlcNAc(Green他の論文、Biochem.Biophy
s.Res.Comm.、188巻、244〜251頁(1992年))を含め
て、各種の硫酸化炭水化物類は、すべて、L−セレクチンに対してリガンド活性
を有していることが報告されている。これら炭水化物の活性は、その硫酸化に依
存している。
上記に見てきた情報およびその他の情報によって、本発明の発明者らは、以下
に考案する諸出願をなすに至り、硫酸化の重要性を認識し始めて、硫酸化に影響
する方法の研究を開始した。
他の研究者らが、硫酸基部分を粘液糖タンパク質から取り外すグリコスルファ
ターゼを単離し、同定している(Robertson他の論文、Biochem
.J.、293巻、683〜689頁(1993年)を参照)。さらに、他の研
究者らは、ヒトグルコサミン−6−スルファターゼを単離し、具体的に同定し、
これをコードするcDNAを得た(Robertson他の論文、Bioche
m.Biophys.Res.Commun.、157巻、218〜224頁(
1988年)を参照)。最後に、他の研究者らは、N−アセチルガラクトース−
6−サルフェートスルファターゼを単離し、具体的に同定することができた(T
omatsu他の論文、Biochem.Biophys.Res.Commu
n.、181巻、677〜683頁(1991年)を参照)。
本発明の発明者らの先願の米国特許出願第07/943,817号(1992
年9月11日出願)と同第08/155,947号(1993年11月9日出願
)は、一般にセレクチン類の、特にL−
セレクチンのリガンドである硫酸化炭水化物の構造体の詳細についてさらに詳し
く述べている。本発明は、炎症を治療および/または軽減する具体的な方法を提
供するために本発明の発明者らの先の研究で得られた具体的な情報に乗じたもの
である。発明の概要
外傷に伴う炎症、ならびにリウマチ様関節炎、乾せん、インスリン依存性糖尿
病、皮膚リンパ腫、十二指腸潰瘍、慢性直腸炎、リンパ球性甲状腺炎、出血性シ
ョック、移植中の再潅流損傷(reperfusion injury)および多発性硬化症のよう
なある種の態様の疾患に伴う炎症を含む各種の症状を治療するため、組成物を患
者に(好ましくは、注射で、かつ局所に)投与する。これら組成物は、医薬とし
て許容される担体中に活性成分を含有する医薬として許容される注射用製剤であ
る。その活性成分は、自然の生化学的硫酸化プロセスを阻害する塩素酸塩または
セレン酸塩および/または自然リガンドの一部分を構成する糖分子の特定位置か
ら硫酸基を外すスルファターゼ酵素である。リガンドから硫酸基を外すと、その
リガンドがその自然受容体に結合する性能が妨害されて、炎症をもたらす生化学
的連鎖事象が妨害される。
本発明の目的は、自然リガンドの一部を構成する糖部分(ガラクトースまたは
N−アセチルグルコサミン)の6位から硫酸基部分を外すスルファターゼ酵素を
含有する医薬として許容される担体を含んでなる医薬製剤を提供することである
。
他の目的は、スルファターゼ酵素がガラクトース−6−サルフェートスルファ
ターゼまたはN−アセチルグルコサミン−6−サルフェートスルファターゼであ
るような製剤を提供することである。
他の目的は、自然の生化学的硫酸化のプロセスを阻害する塩素酸塩またはセレ
ン酸塩の化合物を含有する医薬として許容される担体を含んでなる医薬製剤を提
供することである。
他の目的は、塩素酸塩/セレン酸塩および/または特定のスルファターゼを含
有する医薬として許容される担体を含んでなる製剤を、炎症を予防および/また
は軽減するため部位に局所注射するかまたは静脈注射を行うことからなる炎症の
治療方法を提供することである。
本発明の特徴は、使用されるスルファターゼ酵素が、L−セレクチンの特定の
リガンドの特定位置からの硫酸基部分の除去、すなわちN−アセチルグルコサミ
ンの6位および/またはガラクトースの6位からの硫酸基の除去に対して高度に
特異的であるということである。
本発明の利点は、炎症を低下させる併用効果を、(1)自然のセレクチンリガ
ンドに硫酸基部分が付加するのを代謝で阻害する化合物および(2)自然のリガ
ンドから硫酸基部分を特異的に除去する酵素を組み合わせて投与することによっ
て、得ることができることである。
本発明の重要な一面は、循環している好中球、リンパ球、単球、好酸球および
好塩基球と内皮細胞との相互作用によってもたらされる望ましくない作用を治療
し、予防しおよび/または軽減するのに有用な医薬組成物である。そのような組
成物は、オリゴ糖の特定の位置から硫酸基部分を除くため、塩素酸塩および/ま
たはスルファターゼ酵素を含有する医薬として許容される賦形剤の形態の不活性
成分を含有している。
本発明のこれらのおよび他の目的、利点および特徴は、本明細書
の一部を形成する添付図面と一般構造式(全体を通じて同じ記号は同じ分子部分
を示す)を参照して、以下に一層充分に記載する構造体、製剤および使用の詳細
を読めば、当該技術分野の当業者にとって明らかになるであろう。図面の簡単な説明
本発明は、以下の添付図面を参照することによって、当該技術分野の当業者で
あれば、一層よく理解されかつその多くの目的、利点および特徴が明らかになる
であろう。
図1は、白血球と活性化された内皮細胞との間の相互作用を示す模型的断面図
である。
図2は、本発明のスルファターゼ酵素を用いてどのようにして自然リガンドか
ら硫酸基部分を外すことができるかを示す模型的断面図である。発明の実施態様
本発明の塩素酸塩およびスルファターゼ酵素を含有する組成物およびかかる組
成物の使用方法を説明する前に、記載された特別の組成物、方法またはプロセス
は、勿論変えることができるので、本発明は、これら特別の組成物、方法または
プロセスに限定されないということを理解ておくべきである。また、本明細書に
用いられる用語は、特定の実施態様だけを説明するのを目的とするものであり、
そして本発明の範囲は添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限
定を意図するものではないと解すべきである。
本明細書および付属の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「a
n」および「the」は、明確にことわらない限り、
複数の指称対象を含む。したがって、例えば、「a sulfated lig
and」との指称は、そのようなリガンド複数の混合物を含み、そして「the
formulation」または「the method」との指称は、本明
細書に記載されておりおよび/または本明細書の開示などを読めば当該技術分野
の当業者にとって明らかになるであろうタイプの一種または複数種の製剤、方法
および/またはステップを含んでいる。
本明細書に引用されたすべての刊行物は、本明細書に援用するものであり、こ
れら刊行物が関連して引用されている主題を記述するものである。
本発明に関連して用いられるいくつかの標準の略語には、次のものがある。す
なわち、BSA:ウシ血清アルブミン;DEAE:ジエチルアミノエチル;DM
SO:ジメチルスルホキシド;ELAM−1:内皮/白血球粘着分子−1(E−
セレクチンとも呼称);HPTLC:高性能薄層クロマトグラフィー;LECA
M−1:白血球/内皮細胞粘着分子−1(L−セレクチンとも呼称);MOPS
:3−[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸;NANA:N−アセチルノイラ
ミン酸;PVC:ポリ塩化ビニル;TLC:薄層クロマトグラフィー;TFA:
トリフルオロ酢酸;Tris:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;C−
タイプ:カルシウムタイプ;Fuc:フコース;Gal:ガラクトース;Glc
N:グルコサミン;GalN:ガラクトサミン;GlcNAc:N−アセチルグ
ルコサミン;GalNAc:N−アセチルガラクトサミン;Gal−6S:ガラ
クトース−6−サルフェート;GlcNAc−6S:N−アセチルグルコサミン
−6−サルフェート;GlcU−S:グルクロン酸−モノサルフェート;HEV
:高内皮小静脈;HPAE
C:高pHアニオン交換クロマトグラフィー;LacNAcまたはN−アセチル
ラクトサミン:Galβ1→4GlcNAc;Man:マンノース;Neu5A
c:N−アセチルノイラミン酸;シアリルLewis XまたはsLex;Ne
u5Acα2→3Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc;Lewis
XまたはLex:Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc;Lewi
saすなわちLea:Galβ1→3(Fucα1→4)GlcNAc;SGN
L:3−スルホグルクロニルネオラクト糖脂質;SDS−PAGE:ドデシル硫
酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動;Sgp50:50kDaの硫
酸化糖タンパク質;Sgp90:90kDaの硫酸化糖タンパク質である。一般概要
血液中の白血球が、血管内面を覆う内皮細胞に結合する性能は、公知である。
セレクチン受容体に結合して白血球細胞を内皮細胞に結合できるようにするリガ
ンドを単離して特性解析を行う実質的な研究を行った。本発明の発明者らの先の
研究によって、L−セレクチンの自然リガンドは、硫酸基部分を含有しているこ
とが実証された。また、本発明の発明者らは、その硫酸基は、一般にリガンドを
含有するオリゴ糖分子の特定の位置に存在し、硫酸基を除くとリガンドがセレク
チン受容体に結合する性能を激しく損傷することも見出した。そのような結合性
を損傷すると、過剰な場合に炎症を起こす生化学的連鎖事象が遮断される。この
ような事実を相互に関係づけることによって、本発明の発明者らは、二つの方法
で炎症を軽減しおよび/または予防することが可能であると推定した。第一に、
本発明の発明者らは、硫酸化を阻害してすなわち自然のセレクチン
リガンドに硫酸基部分が付加するのを阻害してリガンドの完全な形成を防止する
化合物を発見すべく努力した。本発明の発明者らは、塩素酸塩類が作用し、Gl
yCAM−1およびCD34/Sgp90の生化学的硫酸化を阻害して、これら
がL−セレクチンに結合する性能を阻害することを見出した。第二に、本発明の
発明者らは、L−セレクチンに対する自然のリガンド(すなわちGlyCAM−
1)の炭水化物の正確な硫酸基の置換部分を確認すべく努力した。本発明の発明
者らは、ガラクトース−6−硫酸(サルフェート)とN−アセチルグルコサミン
−6−硫酸(サルフェート)が等しくGlyCAM−1中に存在することを示し
た。したがって、L−セレクチンのリガンドからこれらの硫酸基修飾部分を除去
する特定のスルファターゼ類は、これらリガンドを不活性化して、L−セレクチ
ンに対する結合性を著しく損う。本発明に関連して用いられる塩素酸塩化合物類
やスルファターゼ酵素のような硫酸化阻害剤を説明する前に、リガンドが生体内
でどのように作動するか説明する。リガンド類の生体内での機能
図1は、血管1の断面図を示す。血管壁2は、内側が内皮細胞3で覆われてい
る。白血球6は、図2に表面受容体7として示すL−セレクチンを合成し発現す
る。赤血球5と白血球6の両者が血管1内を流動している。白血球6は、受容体
7を示し、その受容体7には内皮細胞3上のリガンド4に結合する化学的特性と
物理的特性がある。受容体7が一旦リガンド4に結合すると、その白血球6は、
白血球細胞6Aで示すように血管壁2を通過する。周囲の組織8中に入った白血
球6Bは、感染と戦うなどの正の作用および炎症のような負の作用をもっている
。炎症は、著しく多数の白血球6Bが所
定単位の時間内に組織8に入ることによって起こる。
本発明の発明者らは、自然のリガンド4が特定の位置に硫酸基を含有すること
、そして(1)硫酸化を阻害する塩素酸塩のような競合部分を導入することによ
って自然のリガンドの硫酸化を阻害することができかつ(2)特定のスルファタ
ーゼ酵素によって硫酸基を特定の位置から取り除いて(外して)、天然リガンド
と受容体の結合を左右することができることを発見した。
図2は、硫酸基4Bを取り除くと、硫酸化されていないリガンド4Aの受容体
7に結合する機能がどのように阻害されるかを示す。したがって、図2は、硫酸
化を阻害するかまたは硫酸基を除去する化合物が、投与されたとき、受容体7(
白血球6に接続されている)が内皮細胞3上の自然リガンド4に粘着するのをど
のように阻害するかを示す。硫酸化を阻害するため医薬として有効量の塩素酸塩
/セレン酸塩を投与しおよび/または特定位置の硫酸基部分を除くため医薬とし
て有効量のスルファターゼ酵素を投与すると、すべてではないがかなりの白血球
が周囲の組織8に到達しない。白血球が周囲の組織に到達する速度を低下させる
ことによって、炎症を予防および/または軽減することができる。
上記説明と図1と2に示す模型図に従って、内皮リガンドの硫酸化を妨害する
化合物を添加することにより、リガンド4は硫酸化されず、したがってリガンド
4Aのような形態になる。このような形態は、受容体7に対して充分に粘着しな
い(粘着することはできるが)ので、白血球が内皮細胞に粘着して組織8に入る
速度を低下させ、もって炎症を予防または軽減する。いずれの阻害剤も硫酸化全
体を遮断できないので、阻害剤は、硫酸基を除いて硫酸化されていないリガンド
4Aを創製して同じ効果を起こさせるため、すなわち
リガンド/受容体の結合を妨害するため、スルファターゼとともに使用すること
ができる。したがって、塩素酸塩類またはセレン酸ナトリウムなどの阻害剤をス
ルファターゼ類と組み合わせることによって、白血球と内皮細胞間のくっ付き防
止について併用効果が得られ、炎症を予防および/または軽減することができる
。硫酸化の重要性
HEVリガンドが実際に硫酸化されていることが発見される前に、本発明の発
明者らは、HEVリガンドの作用のために硫酸化が潜在的に重要性であることを
、いくつかの他の硫酸化炭水化物類(例えば、フコイジンすなわちウニのエッグ
ゼリーのフカンおよびスルファチド)のL−セレクチンに対する強力なリガンド
活性から、気付いていた(Stoolman,L.M.およびRosen,S.
D.の論文、J.Cell Biol.、96巻、722〜729頁(1983
年);Stoolman,L.M.、Yednock,T.A.およびRose
n,S.D.の論文、Blood、70巻、1842〜1850頁(1987年
);Imai,Y.、True,D.D.、Singer,M.S.およびRo
sen,S.D.の論文、J.Cell Biol.、111巻、1225〜1
232頁(1970年);True D.D.、Singer,M.S.、La
sky,L.A.およびRosen,S.D.の論文、J.Cell Biol
.、111巻、2757〜2764頁(1990年))。その後、硫酸化の重要
性は知られていなかったが、3−硫酸化Lex/Lea(すなわち、ガラクトース
の3位が硫酸化されている)、SGNL、およびその他の硫酸化構造体も、見た
ところL−セレクチンのCタイプレクチンドメインとの特異的相互
作用によってL−セレクチンに結合できることが実証された(Green,P.
J.、Tamatani,T.、,Watanabe,T.、Miyasaka
,M.、Hasegawa,A.、Kiso,M.、Yuen,C.T.、St
oll,M.S.およびFeizi,T.の論文、Biochem.Bioph
ys.Res.Commun.、188巻、244〜251頁(1992年);
Suzuki,Y.、Toda,Y.、Tamatani,T.、Watana
be,T.、Suzuki,T.、Nakao,T.、Murase,K.、K
iso,M.、Hasegawa,A.、Tadano−Aritomi,K.
、Ishizuka,I.およびMiyasaka,M.の論文、Bioche
m.Biophys.Res.Commun.、190巻、426〜434頁(
1993年);Needham,L.K.およびSchnaar,R.L.の論
文、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、1359〜13
63頁(1993年))。
これらの各種炭水化物の活性(はたらき)における硫酸化の本質的な役割に基
づいて、本発明の発明者らは、GlyCAM−1リガンドの活性に対する硫酸化
の寄与に対して注意を集中した。本発明の発明者らは、(硫酸化の代謝阻害剤と
して塩素酸塩を用いて)GlyCAM−1の硫酸化が(その全体のシアリル化と
フコシル化とは独立して)L−セレクチンに対するリガンド活性に本質的な役割
を果たしていることを実証した(Imai,Y.、Lasky,L.A.および
Rosen,S.D.の論文、Nature、361巻、555〜557頁(1
993年))。硫酸化の重要性は、Sgp90/CD34にも当てはまる。他に
も、炭水化物の硫酸基による修飾によって定義される生物学的に重要な認識決定
因子の例があ
る(Glabe,C.G.、Grabel,L.B.、Vacquier,V.
D.およびRosen,S.D.の論文、J.Cell Biol.、94巻、
123〜128頁(1982年);Kjellen,L.およびLindahl
,U.の論文、Ann.Rev.Biochem.、60巻、443〜475頁
(1991年);Rapraeger,A.C.、Krufka,A.およびO
lwin,B.B.の論文、Science、252巻、1705〜1708頁
(1991年);Roche,P.、Debelle,F.、Maillet,
F.、Lerouge,P.、Faucher,C.、Truchet,G.,
Denarie,J.およびPromem,J.C.の論文、Cell、67巻
、1131〜1143頁(1991年);Fiete,D.、Strivast
ava,V.、Hindsgaul,O.およびBaenziger,J.U.
の論文、Cell、67巻、1103〜1110頁(1991年);Ceram
i,C.、Frevert,U.、Sinnis,P.、Takacs,B.、
Clavijo,P.、Santos,M.J.およびNussenzweig
,V.の論文、Cell、70巻、1021〜1033頁(1992年);Pa
ncake,S.J.、Holt,G.D.、Mellouk,S.およびHo
ffman,S.L.の論文、J.Cell Biol、117巻、1351〜
1357頁(1992年);Guo,N.H.、Krutzsch,H.C.、
Negre,E.、Vogel,T.、Blake,D.A.およびRober
ts,D.D.の論文、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89
巻、3040〜3044頁(1992年);Needham,L.K.およびS
chnaar,R.L.の論文、J.Cell Bi
ol.、121巻、397〜408頁(1993年))。これらの刊行物は、本
発明の裏にある基本理論を支えるものである。硫酸化の阻害剤
塩素酸塩は、炭水化物硫酸化の代謝阻害剤である(BaeuerleおよびH
uttnerの論文、Biochem.Biophys.Res.Comm.、
141巻、870頁(1986年))。したがって、塩素酸塩を使用して、硫酸
化がGlyCAMのリガンド結合活性を得るのに必要かどうか試験した。試験を
行ったところ、リンパ節の臓器培養物中に塩素酸塩(10mM)が存在すると、
GlyCAMとCD34への35S−SO4の取込みが著しく減少し(約90%)
、L−セレクチンに対する結合性が完全になくなった。シアル酸特異的レクチン
(ライマックス凝集素(Limax agglutinin))またはフコース
特異的レクチン(アリューリアオーランティア凝集素(Aleuria aur
antia agglutinin)に対するGlyCAMの結合性は、変化し
なかった。これは、その分子のシアリル化とフコシル化が塩素酸塩の存在で変化
しなかったことを示す。
GlyCAM中への[3H]−フコースの取込みを直接測定することによって
、フコシル化のレベルが塩素酸塩によって影響されないことを直接確認した。ま
た、塩素酸塩がGlyCAMまたはCD34のタンパク質コアの合成速度に影響
しないことも実証した。要約すると、これらの試験結果によって、GlyCAM
およびCD34とL−セレクチンとの相互作用に対して硫酸基が非常に重要であ
ることが確かめられた。シアリル−Lewis X(すなわち、sLex)がL−
セレクチンに対してリガンド活性を有しているので、本
発明の発明者らは、GlyCAMの主要炭水化物連鎖がsLex様オリゴ糖の硫
酸基修飾部を含有していると推論できた。
硫酸化阻害剤としては、塩素酸ナトリウム(Baenerle他の論文、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA、141巻、2号、870〜877
頁(1986年))およびセレン酸ナトリウム(Hilz & Lipmann
の論文、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、880〜890頁(
1955年)がある。これら阻害剤は、両方とも硫酸化分子の生合成を行うのに
必須である3′−ホスホアデノシン5′−ホスホ硫酸(PAPS)の生成を遮断
することによって作用する。
L−セレクチンに対する内皮リガンドは、非常に限られた量で入手できる。脱
硫酸化によって、これらリガンドのL−セレクチンに対するアフィニティーが低
下して、白血球の粘着が遮断される。L−セレクチンの代謝硫酸化の阻害
マウスのリンパ節のスライスを、10mM塩素酸ナトリウムの存在下および非
存在下で35S−硫酸イオン(35S−sulfate)とともに培養した。デター
ジェントライセート(detergent lysate)を調製し、次いでGlyCAM−1を
認識するいくつかの試薬で沈降させた。GlyCAM−1のポリペプチドコアに
結合するペプチド抗体によって、塩素酸塩で処理した上記培養物から免疫沈降さ
せた標識GlyCAMの量は、対照の培養物と比べてかなり減少した。直接シン
チレーションカウンティングによって測定したところ、塩素酸塩による処理によ
って、ペプチド抗体で免疫沈降された放射能は対照のレベルの12%まで減少し
た。塩素酸塩中での培養によって、ライマックス凝集素およびアリューリアオー
レンティアレ
クチンそれぞれで沈降した35S−硫酸イオンの量が同様に減少し、その沈降量は
それぞれ対照の11.4%と13.7%であった。なお、これらレクチンは、そ
れぞれシアル酸およびフコースと反応する。SDS−PAGE分析によって、こ
の減少は、GlyCAM−1の同等に減少したオートラジオグラフィー強度に反
映されていることが実証された。これらの知見とは対照的に、LEC−IgGす
なわちL−セレクチンの免疫グロブリンキメラ(Watson,S.R.、Im
ai,Y.、Fennie,C.、,Geoffroy,J.S.、Rosen
,S.D.およびLasky,L.A.の論文、J.Cell Biol.、1
10巻、2221〜2229頁(1990年))は、塩素酸塩が処理した培養物
から検出可能なGlyCAM−1バンドを沈降できなかったが、対照には強いバ
ンドが見られた。塩素酸塩で処理した培養物からの沈降物には、放射能のバッグ
ランドレベル(対照の0.9%)しか測定されなかった。
これらの知見は、塩素酸塩は、硫酸化を全般的に阻害する結果、ペプチド抗体
で沈降されたカウントの比率から推定して、GlyCAM−1への硫酸基の取込
みを対照の約10〜15%まで減少させたことを示している。その分子の全体の
シアリル化またはフコシル化に対する塩素酸塩の明らかな影響は、全くなかった
。というのは、アリユーリアとライマックスで沈降した35S−SO4のカウント
の減少は、硫酸イオン取込みの減少と密接に一致していたからである。しかし、
LEC−IgGのGlyCAMとの結合は、問題の機能相互作用を表すものであ
るが、塩素酸塩中での培養によって完全に排除された。
塩素酸ナトリウムおよび塩素酸カリウムを含む塩素酸塩のような
阻害剤並びにセレン酸塩のような阻害剤は、硫酸化された生物学的分子を生合成
する場合の硫酸基の一般的ドナーであるPAPSの生成を阻害することによって
、硫酸化の代謝阻害剤として作用する。したがって、このような阻害剤を使用す
ると、硫酸化されなければならない分子の硫酸化を阻害するという点で、他の望
ましくない作用があり得る。したがって、例えば、このような糖タンパク質類の
特定の炭化水素連鎖の硫酸化を阻害する阻害剤を用いることによって、L−セレ
クチンリガンドの硫酸化だけを阻害する硫酸化阻害剤を提供することが望ましい
。具体的に述べると、阻害剤は、L−セレクチンの内皮リガンド中に存在するガ
ラクトースの6位(または、N−アセチルグルコサミンの6位)に硫酸基が付加
するのを阻害することによって阻害しなければならない。L−セレクチンに対する塩素酸塩の他の作用
GlyCAM−1のフコシル化が塩素酸塩で影響されるかどうかを直接確認す
るため、3H−フコースを代謝前駆物質として利用した。上記ペプチド抗体は、
塩素酸塩と対照培養物から得たデタージェントライセートからほぼ同じcpm数
を沈降させた。さらに、GlyCAM−1成分のオートラジオグラフィの強度は
、両条件で同等であった。しかし、LEC−IgGは対照培養物中のGlyCA
M−1を沈降させたが、LEC−IgGは塩素酸塩で処理された培養物からはバ
ックグランドレベルのカウント(対照の7%)しか沈降させず、検出可能なGl
yCAM−1は全く存在しなかった。
GlyCAM−1のタンパク質コアの合成に対して塩素酸塩がどのように作用
するかを確認するため、本発明の発明者らは、代謝標識として3H−トレオニン
を利用した。調製培地を分析したところ、
LEC−IgGは、対照培養物から著しくGlyCAM−1成分を沈降させたが
、塩素酸塩が培養物中に存在していた場合はどの成分とも反応しなかった。塩素
酸塩による処理のありまたはなしで、GlyCAM−1のコアタンパク質に対す
る2種の抗体は、約50Kで走行する広いバンドを沈降させた。
以上をまとめると、これらの試験結果は、塩素酸塩は、GlyCAM−1の硫
酸化を実質的に阻害するが、GlyCAM−1の炭水化物連鎖のシアリル化とフ
コシル化に加えて、タンパク質コアの生合成を正常に進行させることを示してい
る。LEC−IgGとの反応性が完全に失われたことは、結合するのに硫酸化が
重要であることを立証している。GlyCAM−1のO−結合炭水化物連鎖が硫
酸化されていることが分かり、そしてポリペプチドが硫酸基付加のための潜在的
チロシン残基を1個だけもっているので、本発明の発明者らは、重要な硫酸基は
炭水化物連鎖上にあるに違いないと結論した。CD34/Sgp90もL−セレ
クチンの硫酸化リガンドである。この分子の硫酸化が塩素酸塩処理によって阻害
されたとき、この分子がL−セレクチンと相互に作用する性能も激しく阻害され
た。GlyCAM−1の硫酸化オリゴ糖の確認
上述したように、GlyCAM−1とCD34/Sgp90(2種の内皮関連
リガンド)の硫酸化は、これらリガンドがL−セレクチンと相互作用を行うのに
必要である。スルファターゼは特異的である(すなわち、特定の位置から硫酸化
を取り除く)ので、これら自然リガンドの炭水化物の正確な硫酸化修飾部分を定
義することが最も重要であった。GlyCAM−1を、35SO4とトリチウム化
炭
水化物前駆物質のパネルとでリンパ節器官培養において代謝で標識を付けた。硫
酸エステルを分解することなく硫酸化オリゴ糖を放出するゆるやかな加水分解条
件を確立した。ゲル濾過とアニオン交換クロマトグラフィを組み合わせることに
よって得られた低分子量で単一電荷のフラグメントを分析した。このフラグメン
トの構造同定は、放射能標識を付けた各種の糖前駆物質を用い、次に化学的およ
び酵素による加水分解を行い、そして高pHアニオン交換クロマトグラフィー分
析を行うことによって実施した。GlyCAM−1の硫酸化成分は、Gal−6
−SO4、GlcNAc−6−SO4、(SO4−6)Galβ1→4GlcNA
cおよびGalβ1→4(SO4−6)GlcNAcであると同定された。
シアル酸とフコースもGlyCAM−1とCD34/Sgp90の活性にとっ
て不可欠である(Imai,Y.、Lasky,L.A.およびRosen,S
.D.の論文、Glycobiology、2巻、373〜381頁(1992
年))。GlyCAM−1の硫酸化された単糖と二糖に対するシアル酸とフコー
スの関係を定義するため、本発明の発明者らは、特異性が定義されているレクチ
ンを特定のエキソ−グリコシダーゼとともに用いて、三つの重要要素をすべて含
有する主要キャッピング構造(major capping structure)を同定した。マーキ
ア・アムレンシス(Maackia amurensis)凝集素(Knibbs,R.N.、G
oldstein,I.J.、Ratcliffe,R.M.およびShibu
ya,N.の論文、J.Biol.Chem.、266巻、83〜88頁(19
91年))と、充分にシアリル化された低硫酸化度のGlyCAM−1との相補
反応性、並びにサンブクス・ニグラ(Sambucus nigra)凝集素/トリコサンテス
・ジャポニカ(Trichosanthes japonica)
凝集素(Yamashita,K.、Umetsu,K.、Suzuki,T.
およびOhkura,T.の論文、Biochemistry、31巻、116
47〜50頁(1992年))と、脱シリアル化されているが正常に硫酸化され
たGlyCAM−1との相補反応性は、末端の6′硫酸化シアリルラクトサミン
、すなわち Siaα2→3(SO4−6)Galβ1→4GlcNAcが存在
していることを示している。
フコースの置換を確認するため、本発明の発明者らは、ストレプトマイセスα
(1→3/4)フコシターゼ(Maemura,K.およびFukuda,M.
の論文、J.Biol.Chem.、267巻、24379〜24386頁(1
992年))を利用した。この酵素は、アシアロ−GlyCAM−1からフコー
スをほとんど定量的に除去し(取り外し)、一方リコペルシカン・エスクレンタ
ム(Lycopersican esculentum)凝集素、すなわちβ1→4結合GlcNAcに
対して特異性を有するレクチンに対するフコースの結合を実質的に強化する(M
erkle,R.K.およびCummings,R.D.の論文、J.Biol
.Chem.、262巻、8179〜8189頁(1987年))。これらの試
験結果は、GlcNAcに対するα1→3結合中にFucが存在していることを
示す。GlyCAM−1の脱フコシル化を達成するために脱シアリル化が厳密に
必要であるという知見は、Fucが末端のシアル酸の近くに位置していることを
示す。上記キャッピング基の性質は、さらに、エキソ−β(1→4)ガラクトシ
ダーゼ(Maemure,K.およびFukuda,M.の論文、J.Biol
.Chem.、267巻、24379〜24386頁(1992年))がGly
CAM−1から[3H−Gal]を放出する性能に対する硫酸化、シア
リル化およびフコシル化の作用を試験することによって定義した。これらの試験
結果は、上記の加水分解の分析結果とともに、6′−硫酸化シアリルLewis
x、すなわち
Siaα2→3(SO4−6)Galβ1→4(Fucαl→3)GlcN
Ac
がGlyCAM−1の主要キャッピング基であることを示している。この構造は
、シアリルLewis xの修飾部分であり、L−セレクチンに対して弱いリガ
ンド活性を有することが分かっている(Imai,Y.、Lasky,L.A.
およびRosen,S.D.の論文、Glyco−biology、2巻,37
3〜381頁(1992年))。上記キャッピング構造体中のGlcNAcが6
硫酸化で修飾されているのかどうか、またはα(1→3)フコシル化と6−硫酸
化がGlcNAc残基に対する排他的な置換を相互に示すのかどうかは現在のと
ころ分かっていない。可能性がある構造体のリストは、本発明の発明者らの米国
特許出願第08/155,947号(1993年11月19日出願)に記載され
ている。
したがって、本発明の発明者らは、下記の二つの構造が、GlyCAM−1内
の単糖の主要硫酸化修飾部分を表していると決定した。
(SO4−6)Galおよび
(SO4−6)GlcNAc
硫酸化は、GlyCAM−1のリガンド活性のためには不可欠であるから、生
体内でこれら硫酸基を取り除くため特定のスルファターゼを使用することは、炎
症部位への白血球の侵入を大きく減少させるのに有用である。スルファターゼ酵素類
スルファターゼ酵素類は、公知である。さらに、スルファターゼ酵素類が、天
然起源から抽出するかまたは遺伝子組換え法によって産生させることができるこ
とは、公知である。本発明の製剤と方法に用いられるスルファターゼ酵素類は、
天然起源から抽出して精製するかまたは遺伝子組換え法で産生させることができ
る。一般に、スルファターゼ酵素の抽出および/または組換え法による産生に続
いて、当該技術分野の当業者にとって公知の方法を用いて精製が行われる。これ
らスルファターゼ酵素は、次のような起源から抽出することができる。すなわち
、細菌、真菌、植物、無脊椎動物、哺乳類の起源例えば肝臓、腎臓、胎盤、脳、
白血球または内皮細胞などである。抽出と精製は可能であるが、いくぶん厄介で
ある。したがって、組み換法を用いて本発明のスルファターゼ酵素を得ることが
好ましい。
スルファターゼ酵素類は、非常に特異的に作用する。いずれの既知のスルファ
ターゼ酵素も、一般に、特定の分子の特定の位置から硫酸基部分を取り除くこと
だけに有用である。本発明の発明者らは、硫酸基部分がリガンドの特定の糖分子
の特定の位置に存在していることを確認した(以下参照)ので、本発明を実施す
るため、硫酸基部分を除去する特定のスルファターゼ酵素を得ることが必要であ
る。抽出されるかまたは組換え法で産生される酵素の機能性は、当該技術分野の
当業者であれば容易に確認することができる。この確認は、酵素を、適当な条件
下で硫酸化セレクチンリガンドと接触させ、次に硫酸基部分のリガンドからの除
去の程度を測定して行った。本明細書の開示にしたがって、硫酸基部分の除去は
、リガンドがセレクチン受容体に結合する性能を実質的に阻害されることに関連
するので、その除去に注目することによって確認することができる。
GlyCAMとCD34/Sgp90の硫酸化修飾部分に関連する特定のスル
ファターゼ酵素は、Robertson他の論文、Biochem.J.、29
3巻、683〜689頁(1993年);Robertson他の論文、Bio
chem.Biophys.Res.Commun.、157巻、218〜22
4頁(1988年)、およびTomatsu他の論文、Biochem.Bio
phys.Res.Commun.、181巻、677〜683頁(1991年
)に開示されている。これらの各刊行物は、スルファターゼ酵素類、これら酵素
類のアミノ酸配列、これらスルファターゼ酵素類をコード化するDNA配列、お
よびこれら酵素類を組換え法で産生させ次いで精製する方法を開示し説明するた
め、本明細書に援用するものである。
本発明に用いるのに有用な好ましいスルファターゼ酵素としては、N−アセチ
ルガラクトサミン−6−サルフェート/ガラクトース−6−サルフェートスルフ
ァターゼ、N−アセチルグルコサミン−6−サルフェートスルファターゼがある
。本発明の発明者らは、硫酸基部分がセレクチンリガンドのガラクトース分子と
N−アセチルグルコサミン分子の6位に存在していることを見出したので、本発
明に用いて有用なスルファターゼとしては、これらの硫酸基部分を除去できるも
のが好ましい。使用と投与
(1)各種塩素酸塩、(2)スルファターゼ類、および(3)その組合せなど
の化合物を配合して医薬製剤とし、これを必要とする
対象に投与して患者を治療することができる。これら製剤は、炎症を予防するた
め予防的に投与するか、または炎症が始まった後で炎症を軽減するために投与す
る。上記スルファターゼ類と、塩素酸ナトリウムもしくは塩素酸カリウムおよび
セレン酸ナトリウムなどの硫酸化の代謝阻害剤とは、医薬として許容される担体
とともに投与することが好ましく、担体の種類は投与法によって異なり、例えば
経口投与では通常固体の担体を用い、そしてI.V.投与では液体の食塩水の担
体を用いる。製剤および/または投与手段は、塩素酸塩またはスルファターゼが
投与されているかどうかによっても変わる。スルファターゼは、一般に経口では
投与されずI.V.によって投与される酵素である。
所望の製剤は、各種の賦形剤を用いて製造することができ、賦形剤としては、
それぞれ医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マ
グネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウムなどがある。
経口用組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持効性製剤または散
剤の形態で摂取できる。DMSOのような透過促進剤を含有する経皮製剤で塩素
酸塩またはセレン酸塩を直接投与することが特に有効である。他の局所製剤は、
皮膚の炎症を治療するのに投与することができる。
治療上有効な量は、かなりな比率の数のリガンドの硫酸化を阻害しまたは該リ
ガンドから硫酸基部分を除いて炎症を予防または軽減できるのに充分な量である
。したがって、「治療する」という用語は、本明細書で用いる場合、炎症および
/または炎症に関連する症状を予防または軽減することを意味するものとする。
典型的には、本発明の組成物は、1%未満〜約95%好ましくは約10%〜約5
0%の活性成分を含有している。好ましくは、約100mg〜500
mgを小児に投与し、約500mg〜5gを成人に投与する。投与は、注射によるこ
とが好ましく、局在領域に注射することがさらに好ましい。投与頻度は、患者の
反応性に基づいて与えられる治療によって決定される。他の有効な投与量は、用
量−反応曲線を確立するルーチン試験によって当該技術分野の当業者によって容
易に決定することができる。
スルファターゼ酵素の量を算出するため、当該技術分野の当業者であれば、与
えられた量のスルファターゼを放出するのに必要な酵素の量について容易に入手
できる情報を利用できよう。例えば、与えられた酵素が、1単位の該酵素が生理
的pH下で1マイクロモル/分のSO4をL−セレクチンリガンドから除くよう
な活性を有している場合、治療目的のために、70kgのヒトに1〜10単位を
静脈から投与する。硫酸化を阻害するのに必要な塩素酸塩その他の阻害剤の量も
、生体外の実験に基づいて算出することができる。例えば、与えられた量のL−
セレクチンリガンドの硫酸化を阻害するのに必要な塩素酸塩の量を算出し、次い
で治療すべき領域内のかようなリガンドの量を推定することによって、投与すべ
き塩素酸塩の量を決定することができる。阻害剤の量は、勿論、使用される特定
の阻害剤によって変わる。
投与すべきスルファターゼまたは塩素酸塩(もしくはセレン酸塩)の投与量を
決定する場合、硫酸化を完全に阻害することや全ての硫酸基を取り除くことを望
んでいるのではないことに留意しなければならない。正常な治療過程が進行する
には、少なくともいくらかの白血球または好中球が、創傷、感染または疾病状態
が起こっている領域の組織中に入っていかなければならない。投与されるスルフ
ァターゼまたは塩素酸塩/セレン酸塩の量は、治療中の疾患のタイ
プなどの各種の要因を考慮しながら、患者特有の必要に基づいて調節される。
スルファターゼ類および/または塩素酸塩類/セレン酸塩類は、広範囲の疾患
を治療するのに用いることができる。その疾患としては、リウマチ様関節炎、喘
息、成人型呼吸窮迫症候群、サルコイドーシス、過敏症性肺炎、多発性硬化症お
よび皮膚部位へのリンパ腫の拡延などがある。本発明の組成物は、免疫系が身体
に敵対して、白血球を、組織の損傷、腫脹、炎症および/または痛みを起こす程
度まで組織中に蓄積する病状を治療するのに適用できなければならない。例えば
、リウマチ様関節炎の炎症は、大量の白血球が疾患の領域の関節に迅速に浸入し
て周囲の組織を攻撃するときに起こる。
また、スルファターゼ類および/または塩素酸塩類/セレン酸塩の製剤は、心
臓発作からもたらされる組織損傷の望ましくない後遺症を予防するために投与す
ることができる。心臓発作が起こり、次いで、例えば抗凝固薬または血栓溶解薬
(例えば、tpA)を適用することによって患者が回復した場合、血餅が形成さ
れた内皮被膜は、損傷を受けていることが多い。抗血栓症薬が血餅を除いた場合
、血餅の下側の損傷組織その他の酸素を与えられなかった内皮被膜中の損傷組織
が活性化される。白血球は、L−セレクチンを持っている。その受容体は、活性
化された内皮細胞の表面のリガンド分子に粘着する。そのリガンド分子は、活性
化によって内皮細胞の表面に誘発される。多数の白血球が迅速に捕捉されて冒さ
れた領域を囲む組織中に入り、炎症、腫脹および患者の生存の可能性を低下させ
る壊死を起こす。
心臓発作から起こる外傷を受けている患者を治療することに加えて、実際の身
体外傷がみられる患者は、身体の部分が重篤な外傷を
受けたのち通常起こる炎症と腫脹の量を軽減するため本発明の製剤で治療できる
。この治療は、外傷を受けた領域に、スルファターゼおよび/または塩素酸塩/
セレン酸塩を局所注射することによって実施することが最も好ましい。また、出
血性ショックがみられる患者は、治療して、回復血液流に伴う炎症を軽減するこ
とができる。本発明の製剤を用いて治療することができる他の病状としては、各
種のタイプの関節炎、皮膚の各種慢性炎症状態、インスリン依存性糖尿病および
成人型呼吸窮迫症候群がある。本明細書の開示を読めば、当該技術分野の当業者
は、本発明の製剤の投与により治療および/または軽減できるかも知れない他の
病状および/または症状を認識するであろう。
他の投与方法も本発明に利用することができる。例えば、本発明のスルファタ
ーゼおよび/または塩素酸塩/セレン酸塩は、坐薬として配合してもよく、場合
によってはエアゾル組成物および鼻腔内用組成物として配合してもよい。坐薬の
場合、賦形剤組成物としては、ポリアルキレングリコール類またはトリグリセリ
ド類のような伝統的な結合剤や担体がある。このような坐薬は、活性成分を約0
.5%〜約10%(w/w)の範囲内、好ましくは約1%〜約2%(w/w)の
範囲内で含有する混合物から製造することができる。
鼻腔内製剤は、通常、鼻粘膜の刺激を起こさず毛様体の機能を大きく損なうこ
ともない賦形剤を含有している。水、食塩水その他の公知の物質のような希釈剤
を本発明に用いることができる。また鼻腔内製剤は、限定されないが、例えばク
ロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムのような保存剤を含有していてもよ
い。鼻粘膜による対象のタンパク質の吸収を促進するため、界面活性剤を添加し
てもよい。
各種の異なる呼吸器疾患が炎症により悪化する症状を呈するが、本発明の全て
の面が、そのような症状の悪化を緩和しおよび/または予防するためにそのよう
な疾患の治療に使用され得る。この治療は、本発明のスルファターゼおよび/ま
たは塩素酸塩/セレン酸塩の局所肺投与によって実施することが好ましい。その
ような化合物は、肺表面の通路に局所的に送達させることができる。エアゾル製
剤は、通常の投与量計量式吸入器(metered dose inhaler)(MDI)を用いて
送達させることができる。スルファターゼまたは塩素酸塩/セレン酸塩のいずれ
かまたはすべてを適切な噴射剤とともに配合し、その製剤をMDIで送達させる
ことによって、肺の炎症を非常に短期間に軽減することができる。
本発明のスルファターゼおよび/または塩素酸塩/セレン酸塩は、注入可能医
薬として投与することが好ましい。典型的に、注射用組成物は、液状の液剤また
は懸濁剤として調製されるが、注射する前に液状賦形剤で溶液または懸濁剤にす
るのに適した固体形態のものを用意してもよい。製剤は、乳化してもよく、また
は活性成分をリボゾーム賦形剤で被包してもよい。
適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノ
ールなど、およびそれらの組合せである。さらに、所望により、賦形剤は、湿潤
剤、乳化剤またはpH緩衝剤のような補助物質を少量含有していてもよい。この
ような剤形の実際の製造方法は、当該技術分野の当業者にとって公知であるかま
たは明らかであろう。例えば、Remington′s Pharmaceut
ical Sciences、Mack Publishing Compan
y、米国ペンシルベニア州イーストン所在、第17版、1985年を参照。投与
される組成物または製剤は、いずれにし
ろ、治療されている対象箇所に所望の状態を得るのに充分な量の塩素酸塩/セレ
ン酸塩および/またはスルファターゼを含有する。
上記に指摘したように、スルファターゼ酵素と硫酸基阻害剤の主な適応は、炎
症を予防または緩和することである。しかし、L−セレクチンは、リンパ腫の皮
膚部位への拡延に関与している(Michie,S.A.他の論文、Ameri
can Journal of Pathology、143巻、1688〜1
698頁(1993年)を参照)。スルファターゼと硫酸基阻害剤を使用すると
、リンパ腫または他の造血性新生物の皮膚部位への血行性拡延の予防を助長する
。各種の形態の癌が人体内で拡延するには、その癌性細胞はその元の腫瘍を離れ
、次いで別の部位に取り付き、その部位で癌性成長が続く。本明細書に記載され
ているようにスルファターゼ酵素および/または硫酸基阻害剤を投与することに
よって、他の部位への癌性細胞の再付着が妨害または阻害される。
本発明の各種スルファターゼ類と塩素酸塩類/セレン酸塩類は、それら自体で
、または互いに一緒に、または上記のような医薬として許容される賦形剤と組み
合わせて使用することができる。
実施例
以下の実施例は、L−セレクチンリガンドの、L−セレクチンとの相互作用お
よび/または結合に対して、L−セレクチンリガンド上に存在する硫酸基が重要
であることを示すために実施された方法を、当該技術分野の当業者に完全に開示
し説明するのを目的として示した。これらの実施例は、本発明の発明者らが自分
たちの発明とみなしているものの範囲を限定するものではない。利用した数値(
例えば量、温度など)の正確さを保証するために努力したが、いく
つかの実験誤差やズレもあり得る。特に断らない限り、量部は重量部であり、分
子量は重量平均分子量であり、温度は℃であり、そして圧力は大気圧かまたはそ
の近傍である。
特に断らない限り、本明細書で用いられる技術用語と科学用語は、全て、本発
明が属している技術分野の当業者が普通に理解しているのと同じ意味をもってい
る。本明細書に記載されているのと類似のまたは等価の方法と材料が本発明の実
施または試験に使用できるが、ここでは好ましい方法と材料を記載する。本明細
書に挙げた刊行物は、全て本明細書に援用するものである。
実施例1
GlyCAM−1の硫酸化を阻害すると、GlyCAM−1のL−セレクチン
との相互作用および/または結合がなくなる。リンパ節に、塩素酸塩の存在下ま
たは非存在下で、(a)[35−S]−サルフェート(硫酸塩)または(b)〔3
−H〕フコースで臓器培養中に代謝で標識が付けられ、そしてデタージェントラ
イセートがL−セレクチンキメラ(LEC−IgG)、ウサギ抗Sgp50ペプ
チド抗体(抗ペプチド2)、ウサギ前免疫血清(preimmune serum)、ライマッ
クス・フラブス(Limax flavus)凝集素(シアル酸特異性)、またはアリューリ
ア・アウランティア凝集素(AAA;フコース特異性)によって沈降したときに
、上記結論に到達した。[3−H]−フコースで標識を付けたGlyCAM−1
の見掛けの分子量は、塩素酸塩が存在する場合僅かに大きかった。というのは、
恐らく、硫酸化が低下したことによって電気泳動の移動度が小さくなったためで
あろう。
ICRマウス由来の腸間膜リンパ節と末梢リンパ節を集めて(1
条件あたり80mgの湿潤重量)、25mM HEPES含有RPMI−164
0の0.5ml中、10mMの塩素酸ナトリウム(Aldrich社)の存在下
または非存在下(1/10硫酸塩濃度)で、(a)250μCiの[35−S]−
硫酸ナトリウム(ICN)または(b)250μCiの[5,6−3H]−L−
フコース(ICN)とともに、37℃で4時間インキュベートした。組織は、1
mMのPMSF(Sigma社)、1%(v/v)のアプロチニン(Sigma
社)、10μg/mlのペプスタチン(Boehringer Mannhei
m社)および0.02%のNaN3を含有するダルベッコのPBS(溶解緩衝液
(lysis buffer))中に2%のトリトンX−100(Boehringer M
annheim社)を含有する液1.2mlでさきに記載したようにして抽出し
た11。ライセート(lysate)を3分間沸騰させ、上澄み液をプロテインAセファ
ロース(Zymed社)100μlで一夜、前洗浄を行った。その前洗浄済み上
澄み液の一部を、以下のビーズすなわちIEC−IgG−プロテインAセファロ
ースビーズ(30μgLEC−IgG/10μlビーズ)、ウサギ抗ペプチド2
−プロテインAビーズ(10μl血清/10μlビーズ)、ウサギ前免疫血清プ
ロテインAビーズ(10μl血清/10μlビーズ)、ライマックス・フラブス
凝集素−セファロースビーズ(20μgタンパク質/10μlビーズ)、または
アリューリア、アウランティア凝集素−セファロースビーズ(10μgタンパク
質/10μlビーズ)の10μlずつに添加し、ロッカー上で4℃で4時間イン
キュベートした。これらビーズを前記溶解緩衝液で(6回)洗浄し、上記ビーズ
の1/14ずつを、シンチレーションカウンティングで直接カウンティングを行
うために採取し、残りのレムリ(Laemmli)試料緩衝液(β
−メルカプトエタノールなし)で可溶化し、次いでENHANCE(New E
ngland Nuclear社)を利用するフルオログラフィーにより10%
アクリルアミドゲル(非還元条件)上を泳動させた。分子量マーカー(BioR
ad社)は、ホスホリラーゼB(97.4K)、BSA(66.2K)、オボア
ルブミン(45K)、カルボニックアンヒドラーゼ(31K)、ダイズトリプシ
ンインヒビター(21.5K)であった。4℃で一夜ロッキング(揺動)するこ
とによって、LEC−IgGと抗血清をプロテインA−セファロースビーズにコ
ートした。ライマックス凝集素(Calbiochem社)とAAA(Boeh
ringer Mannheim社)をCNBr活性化セファロース4B(Si
gman社)にカップリングさせることによってレクチンビーズを調製した。M
iller,R.の論文、Meth.Enzymol.、138巻、527〜5
36頁(1987年)。
実施例2
GlyCAM−1の硫酸化を阻害すると、GlyCAM−1の、L−セレクチ
ンとの相互作用および/または結合がなくなる。塩素酸塩の存在下(黒色バー)
または非存在下(網線バー)で、(a)[35−S]硫酸塩または(b)[3−H
]−フコースで標識をつけた、実施例1の同じ沈降物の部分のシンチレーション
カウンティングを行ったときに、上記結論に到達した。与えられたパネル(a)
(記載せず)に示した百分率は、塩素酸塩の存在下、塩素酸塩の非存在下に比べ
て得られたカウントの百分率を示す。抗ペプチド2、ライマックスおよびAAA
に対する値は、硫酸化が全般的に低下していることを反映してほぼ同じであった
。独立した実験において、対
応する値は、6%(LEC−TgGの場合)、35.6%(抗ペプチドの場合)
、35.3%(ライマックスの場合)であった。
実施例3
GlyCAM−1の硫酸化を阻害すると、GlyCAM−1の、L−セレクチ
ンとの相互作用および/または結合がなくなる。塩素酸塩の存在下または非存在
下でリンパ節にL−[3−3H]−トレオニンで標識をつけたとき、上記結論に
到達した。調製培地(a)またはデタージェント抽出物(b)を、LEC−Ig
G、ウサギ抗Sgp50抗ペプチド抗体類(抗ペプチド1、2、3)またはウサ
ギ前免疫血清で沈降させた。
10mMの塩素酸ナトリウムの非存在下または存在下で、トレオニンなしで1
/10の硫酸塩濃度のRPMI1640(25mMのHEPES含有)0.5m
l中で、750μCiのL−[3−3H]トレオニン(Amersham社)に
より、37℃で4時間かけて、マウスリンパ節に標識をつけた。デタージェント
ライセートを沸騰させ、前洗浄し、次いで実施例1に記載したようにして指定の
試薬で沈降させた。調製培地を平行して前洗浄して沈降させた。ビーズに結合し
た物質を、フルオログラフィーを用い還元条件下SDS−PAGEで分析した。
抗ペプチド抗体のレーンで約50Kの成分が免疫グロブリンの重鎖によって圧縮
(compress)された。
実施例4 マウスリンパ節の代謝標識化
代謝標識化を行う(Imai,Y.、Lasty,L.A.およびRosen
,S.D.の論文、Nature、361巻、555
〜557頁(1993年))ため、腋窩、上腕、頚部および腸間膜それぞれのリ
ンパ節を5頭のICRマウスから切り取り、かみそりの刃でさいの目に切り、次
いでペニシリン(100単位/ml)およびストレプトマイシン(0.1mg/
ml)を補充した1mlのRPMI−1640中でインキュベートした。上記組
織は、D−[6− 3 H]−ガラクトース、D−[6−3H]−グルコサミン、D−
[2−3H]−マンノース(0.5mCi/ml、全て米国マサチューセッツ州
ボストン所在のDu Pont New England Nuclear社か
ら入手)、L−[5,6−3H]−フコース、またはNa2 35SO4(1mCi/
ml、両者とも米国カリフォルニア州コスタメーサ所在のICN社から入手)の
存在下で、4時間(37℃)培養した。35SO4による標識化は、90%の硫酸
塩なしRPMI−1640と10%の標準RPMI−1640の混合物中で行っ
た。調製培地を培養物から収集し、10,000×gで5分間遠心分離にかける
ことによって透明にした。GlyCAM−1の免疫沈降
全ステップを4℃で実施した。推論GlyCAM−1タンパク質コア由来のペ
プチド:CKEPSIFREELISKD(pep2)に対するウサギポリクロ
ーナル抗体で誘導体化したプロテインA−セファロース4B(米国カリフォルニ
ア州サンフランシスコZymed社、2.5mg組換えプロテインA/mlゲル
)を20μl添加することによって、GlyCAM−1を調製培地から免疫沈降
させた(Lasky,L.A.、Singer,M.S.、Dowbenko,
D.、Imai,y.、Henzel,W.J.、Grimley,C.、Fe
nnie,C.、Gillet,N.、
Watson,S.R.およびRosen,S.D.の論文、Cell、69巻
、927〜938頁(1992年))。得られたマトリックスをトリス緩衝食塩
水(TBS:10mMトリス−HClpH7.4、150mMのNaCl)で5
回洗浄し、次に遊離pep2(1mg/ml)を含有するTBSの200μlを
添加することによって、結合リガンドを該マトリックスから溶出させた。調製物
の1/10(20μl)を、レムリ法(Laemmli,U.K.の論文、Na
ture、227巻、680〜685頁(1970年))に従って10%ポリア
クリルアミドゲル上でSDSゲル電気泳動に付し、続いてEnhance(Ne
w England Nuclear社)を使用してフルオログラフィ解析した
。GlyCAM−1のゆるやかな酸加水分解
上記リガンド生成物を、0.2MのH2SO4で処理し(最終容積250μl)
、透明な鉱油(Sigma社)で液面を覆い、次いで100℃で30分間インキ
ュベートした。薄層クロマトグラフィー
上記加水分解物を50μlの2NのNH4OHで中和した後、その1μlずつ
2個の試料を100mm×50mmシリカゲルコートガラス板(60 F254
、ドイツダルムシュタット所在のMerck社)につけた。1mMのNa35SO4
溶液0.5μlずつ二つ(各々5000cpm)を同じガラス板につけた。一
方の溶液は、加水分解物に重ね、第二の溶液は別のレーンにつけた。そのガラス
板を、n−BuOH/N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)/1Mホウ酸ナ
トリウムpH9、50:20:25、で展開し、続いてE
nhanceのスプレイ(New England Nuclear社)でフル
オログラフィーに付した。ゆるやかな酸加水分解物のゲル濾過による初期分画
上記中和された加水分解物を、Mピリジン酢酸pH5.4中2.5%ヘモグロ
ビン(Sigma社)の50μlと混合し、ピリジン酢酸(0.1M、pH5.
4)中のBiogel P4カラム(200〜400メッシュ、米国カリフォル
ニア州リッチモンド所在のBio−Rad Laboratories社、11
2cm×1cm、ベッド容積=88ml)中に注入した。そのカラムを、同じピ
リジン酢酸緩衝液で5ml/hの流速で22℃で溶出させて、30個の画分(0
.83〜0.87ml)を収集した。各画分の試料40μlずつを、Ultim
a Goldシンチレーションカクテル(米国イリノイ州ダウナーズグローブ所
在のPackard社)5mlと混合し、Beckman LS−8000液体
シンチレーションカウンタで計数した。溶出容積は、28.4mlで起こったヘ
モグロビンの最初の出現(空隙容量)に対して表す。ゲル瀘過分析に用いた炭水化物の標準
P4カラムは、以下のようにして得た炭水化物の標準で校正した。代謝により
[3H]−グルコサミンで標識化したGlyCAM−1をシアリダーゼで処理す
る(アルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)、米
国カリフォルニア州ラホーヤ所在のCalbiochem社、0.3単位/ml
、pH5.5、30分、37℃)ことによって、[3H]−シアリル酸を得た。
N−アセチルグルコサミン−3−サルフェート(GlcNAc−3S、
ナトリウム塩)とガラクトース−6−サルフェート(Gal−6S、ナトリウム
塩)は、Sigma社製であった。グルクロン酸モノサルフェート(GluU−
SN異性体の混合物)は、グルクロン酸を無水DMF中2モル当量のSO3−ト
リメチルアミンで不活性雰囲化下で(4時間、25℃)処理して、調製した(W
esterdurin,P.、Willems,H.A.およびvan Boe
kel,C.A.A.の論文、Tetrahedron Lett.、31巻、
6915〜6918頁(1990年))。反応を飽和NaHCO3で中和し、生
成物を、0.2Mピリジン酢酸(pH5.4)の直線勾配液で溶離するDEAE
−Sephadex(Aldrich社)のクロマトグラフィーで精製した。得
られたピリジウム塩を、Bio−Rad社の50W−X4樹脂(Na+型)を通
過させることによって、ナトリウム塩に変換した。ガラクトース−ジサルフェー
トとガラクトース−トリサルフェート(異性体の混合物)は、ガラクトースを、
無水DMF中5モル当量のSO3−トリメチルアミンで処理し(40℃で6時間
)、次に飽和NaHCO3で中和することによって、調製した。生成物をアニオ
ン交換クロマトグラフィーで精製し、得られたピリジニウム塩を上記のようにし
て対応するナトリウム塩に変換した。3種の合成誘導体は、全て、負の高速原子
衝撃(FAB)質量分析法で、特性を解析した。P4カラムから溶出した画分中
のGlcNAc−3Sを、エルソン−モルガン反応で検出した(Reissig
,J.L.、Strominger,,J.L.およびLeloir,L.F.
の論文、J.Biol.Chem.、217巻、959〜966頁(1955年
))。生成したガラクトースーサルフェート類は、フェノール−硫酸検定法(D
ubois,M.、Gilles,K.A.、Hamilton
,J.K.、Rebers,P.A.およびSmith,F.の論文、Anal
.Chem.、28巻、350〜356頁(1956年))で検出した。Glc
U−Sは、カルバゾール反応で検出した(Bitter,T.およびMuir,
H.M.の論文、Anal.Biochem.、4巻、330〜334頁(19
56年))。ゆるやかな酸加水分解物のP4含有画分のアニオン交換クロマトグラフィー
42ml以後にP4カラムから溶出する画分(([3H]−GlcN)標識化
GlyCAM−1)の35ml以後)をプールして凍結乾燥した。その残留物を
水200μlに溶解し、2mMピリジン酢酸(pH5.0)で平衡化させたDE
AE−Sepharoseカラム(Sigma社、アセテート型、80mm×5
0mm)ベッド容積=1.6ml)中に注入した。そのカラムを、2mMピリジ
ン酢酸8.5mlと、続いてピリジン酢酸の2〜1000mM直線勾配液(pH
5.0)8.5mlとで溶離した。これら画分(30個、約0.85mlずつ)
を収集し、次いで各画分の30μlの試料を上記のようにしてカウントした。そ
のカラムは、指定の標準物によって較正した。50〜150mMのピリジン酢酸
によってDEAE−Sepharoseカラムから溶出する画分(単一電荷の物
質)をプールして凍結乾燥した。単一電荷画分のゲル濾過
上記のようにして得られた単一電荷のフラグメントの生成物を、水200μl
に再度溶解し、P4カラムによるゲル濾過で分画した。画分を、以下のようにプ
ールした。ピークI(55〜60ml)
、ピークII(49〜54ml)、ピークIII(43〜48ml)、およピー
クIV(36〜42ml)である。プールした画分を凍結乾燥し、残留物を水2
0μlに再び溶解し、その後分析するまで−80℃で貯蔵した。硫酸化炭水化物の全加水分解
脱硫酸化および脱アセチル化した単糖単位を得るため、ピークI、IIおよび
IIIの試料を6MのHCl中で(4時間、100℃)加熱することによって、
硫酸化炭水化物の加水分解を行った。加水分解を行った後、試料は水を繰返し蒸
発させ、高pHアニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)によって単糖の
組成分析を行うため、水に再度溶解した。脱硫酸化
ピークIIとIIIを、50mMのメタノール性HCl/5%H2O中でイン
キュベートして、(同時に脱アセチル化を行うことなく)脱硫酸化を行った(2
4時間、36℃)。脱硫酸化を行った後、残留物を濃縮し、水に再溶解し、次い
で2mMピリジン酢酸(pH5.0)で平衡化したDEAE−Sepharos
eカラム(80mm×5mm、ベッド容積=1.6ml)中に注入した。そのカ
ラムを2mMピリジン酢酸(pH5.0)で溶離して、非荷電物質を通過(flow
-through)画分として回収した。その非結合(unbound)生成物を凍結乾燥し、
その後の分析に使うために水に再溶解した。β−ガラクトシダーゼによる消化
放射能標識オリゴ糖フラグメントを、最終容積50μlの20mMのNaH2
PO4(酢酸によってpH3.5に緩衝)中で、タチナタマメのエキソ−β−ガ
ラクトシダーゼ(0.25単位/ml、Sigma社)と、37℃で18時間反
応させた。得られた消化物をHPAECによって分析した。[35SO4]−標識付けのピークIIIの部分加水分解
35SO4標識付けピークIII由来の物質を、最終容積10μlで(鉱油で液
面を覆った)0.1MのH2SO4と100℃で1h反応させた。2NのNH4O
Hで中和した後、その加水分解物をHPAECで分析した。高pHアニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)
ピークI、IIおよびIII並びにこれらピークそれぞれの脱硫酸化生成物、
酵素消化生成物および加水分解生成物を、Carbopac PA1カラム(D
ionex社、米国カリフォルニア州サニーベール所在、250mm×4mm)
を用いHPAECで分析した。各試料を水25μlに入れて注入した。溶離条件
(流量:1ml/min)は、以下のとおりであった。すなわち、全加水分解物
と脱硫酸化ピークIIの分析には20mMのNaOH無勾配液を用い、脱硫酸化
ピークIIIとそのβ−ガラクトシダーゼによる消化物に対しては100mMの
NaOH無勾配液を用い、硫酸化ピークIIに対しては150mMのNaOHを
4分間とそれに続いて150mMのNaOH中0〜250mMのNaOAcの直
線勾配液を20分間用い(プログラム1)、硫酸化ピークI、ピークIII、ピ
ークIIIのβ−ガラクトシダーゼによる消化物と部分加水分解物
に対しては150mMのNaOH中50mMのNaOAcを5分間とそれに続い
て150mMのNaOH中50〜850mMのNaOAcの直線勾配液を30分
間用いた(プログラム2)。標準物は、0.4mMで用い、脈動電流検出法(pu
lsed amperometric detection)で分析した。放射能標識生成物を、30秒間の
画分を収集し、続いて上記のような液体シンチレーション分析法で検出した。HPLC分析に使用した炭水化物の標準
Gal−6S、GlcNAc−3S、GlcNAc、Galβ1→3GlcN
Ac、Galβ1→4GlcNAc(N−アセチルラクトサミン、LacNAc
)およびGalβ1−6GlcNAcは、Sigma社製であった。Gal−4
SとGlcNAc−6Sは、V−Labs社(米国ルイジアナ州カビントン所在
)製であった。Gal−3Sは、ウシスルファチド(Matreya Inc.
社、米国ペンシルバニア州プレザントギャップ所在)を0.1MのH2SO4中で
(30分間、100℃)加水分解することによって得た。Gal−2Sは、Pe
at他の方法(Peat,S.、Bowker,D.M.およびTurvey,
J.R.の論文、Carbohydr.Res.、7巻、225〜231頁(1
968年))に基づいた方法を用い、12,3,4,6−ラトラ−0−アセチル
−α−D−がラクトロピラノース(Helferich,B.およびZimer
,J.の論文、Ber.、2604〜2611頁(1962年))から合成した
。生成物の特性解析を1H NMR分光法とFAB質量分析法で行った。中性の
単糖の標準物(Fuc、GalN、GlcN、Gal,GlcおよびManの当
モル混合物)は、Dionex社製であった。
上記実施例1〜3は、GlyCAM−1に硫酸基が存在していることがGly
CAM−1のL−セレクチンとの激しい相互作用には不可欠であることを示して
いる。実施例4は、特にGlyCAM−1の硫酸基修飾部を同定している。Gl
yCAM−1炭水化物の通常の分析は、入手可能なリガンドの量が限られていた
ので今まで妨げられていたから、本発明の発明者らは、糖タンパク質オリゴ糖類
の配列決定に広く使用されている放射能トレーサー法を利用した(Varki,
A.の論文、FASEB J.、5巻、226〜235頁(1991年);Cu
mmings,R.D.、Merkle,R.K.およびStultS,N.L
.の論文、Meth.Cell Biol.、32巻、141〜183頁(19
89年);Shilatifard,A.、Merkle,R.K.、Hell
ard,D.E.、Welles,J.L.、Haseltine,W.A.お
よびCummings,R.D.の論文、J.Virol.、67巻、943〜
952頁(1993年);Maemura,K.およびFukuda,M.の論
文、J.Biol.Chem.、267巻、24379〜24386頁(199
2年))。GlyCAM−1のオリゴ糖を、臓器培養で、35SO4とトリチウム
化炭水化物前駆物質のパネルで代謝標識化を行い、所定の単糖単位に標識を特異
的に導入させた。上記分析は、硫酸化オリゴ糖を、硫酸エステルを著しく開裂す
ることなしに放出する加水分解条件を使用して行った。
すでに実証された、フコイジンと卵ゼリーコートフカン(フコース−4−サル
フェートリッチの多糖)のL−セレクチンに対するリガンド活性(Stoolm
an,L.M.およびRosen,S.D.の論文、J.Cell.Biol.
、96巻、722〜729
頁(1983年);Imai,Y.、True,D.D.、Singer,M.
S.およびRosen,S.D.の論文、J.Cell.Biol.、111巻
、1225〜1232頁(1990年))からみて、本発明の発明者らは、当初
、硫酸化フコースがGlyCAM−1中に存在しているのかと考えてみた。以前
の研究によって、ゆるやかな酸加水分解(0.15MのH2SO4、30分間、1
00℃)によってナマコのコンドロイチンサルフェートから硫酸化フコース(フ
コース−3−サルフェートとフコース−3,4−ジサルフェート)が放出される
ことが分かっている(Viera,R.P.、Mulloy,B.およびMou
rao,P.A.S.の論文、J.Biol.Chem.、266巻、1353
0〜13536頁(1991年))。しかし、GlyCAM−1をこれらの条件
で加水分解すると、中和フコースとしてすべての[3H]−Manまたは[3H]
−Fucで標識化されたカウントが放出された。このことは、このリガンド中の
フコース残基が硫酸化しているのとは反対の結論を示している。[2−3H]−
マンノース前駆物質は、マンノース単位およびフコース単位の両者として糖タン
パク質に組み込まれていることが知られている(Varki,A.の論文、FA
SEB J.、5巻、226〜235頁(1991年))。全マンノースの標識
がGlyCAM−1中にフコースとして排他的に組込まれていることは、Gly
CAM−1炭水化物中にマンノースが全く存在しないことを示している。この試
験結果は、さらに、GlyCAM−1のオリゴ糖連鎖が、このリガンドがN−グ
リカナーゼの消化に対して完全な抵抗性を有していることによって先に示したよ
うに、すべてO−結合であることを立証している(Imai,Y.、Singe
r,M.S.、Fennie,C.、Lasky,L.A
.およびRosen,S.D.の論文、J.Cell Biol.、113巻、
1213〜1221頁(1991年))。
(35SO4)−標識GlyCAM−1をゆるやかに酸加水分解したところ、不
均一な範囲の大きさと電荷を有するフラグメントが得られた。本発明の発明者ら
は、自分たちの分析を単一電荷を有するP4含有画分(P4-included fractions
)の分析に集中した。
上記単一電荷の加水分解生成物の構造同定を以下のようにして行った。35SO4
と3H−糖で標識化したフラグメントを、さらに加水分解、脱硫酸化および酵素
消化して、単糖成分の特性解析を行った。硫酸エステル結合の位置を、真正標準
を用いHPAEC分析によって特定した。実施例4の試験結果により、GlyC
AM−1の成分として、−O3SO−6−Gal、GlcNAc−6−OSO3−
、Galβ1→4GlcNAc−6−OSO3−および−O3SO−6−Galβ
1→4GlcNAcが確認された。上記試験結果は、GlyCAM−1にガラク
トース−3−サルフェートが存在する証拠を提供していないが、各種のGal−
3S含有炭水化物は、L−セレクチンに対してリガンド活性を有している(Gr
een,P.J.、Tamatani,T.、Watanabe,T.、Miy
asaka,M.、Hasegawa,A.、Kiso,M.、Yuen,C.
T.、Stoll,M.S.およびFeizi,T.の論文、Biochem.
Biophys.Res.Commun.、188巻、244〜251頁(19
92年);Suzuki,Y.、Toda,Y.、Tamatani,T.、W
atanabe,T.、,Suzuki,T.、Nakao,T.、Muras
e,K.、Kiso,M.、Hasegawa,A.、Tadano−Arit
omi,K.、Ishizuka,I.およびMiy
asaka,M.の論文、Biochem.Biophys.Res.Comm
un.、190巻、426〜434頁(1993年))。GlcNAc−6Sは
、広い範囲の分類の複合糖質中に確認されており、その複合糖質としては、ケラ
タン硫酸(サルフェート)のグリコサミノグリカン連鎖(Roden,L.の論
文、In The Biochemistry of Glycoprotei
ns and Proteoglycans、267〜372頁(1980年)
(W.J.Lennarz編集)ニューヨークPlenum Press社発行
)、I型ヒト免疫不全ウイルスのウイルス外膜糖タンパク質類(Shilati
fard,A.、Merkle,R.K.、Helland,D.E.、Wel
les,J.L.、Haseltine,W.A.およびCummings,R
.D.の論文、J.Virol.、67巻943〜952頁(1993年))、
ニワトリ脂肪リポタンパク質、ウシ大血管の内皮細胞の糖タンパク質類(Rou
x,L.、Holojda,S.、Sundblad,G.、Freeze,H
.H.およびVarki,A.の論文、J.Biol.Chem.、263巻、
8879〜8889頁(1988年))、ウシとヒトのチログロブリン(Spi
ro,R.G.およびBhoyroo,V.D.の論文、J.Biol.Che
m.、263巻、14351〜14358頁(1988年))並びに根粒菌の根
粒形成因子(Roche,D.、Debelle,F.、Maillet,F.
、Lerouge,P.、Faucher,C.、Truchet,G.、De
narie,J.およびProme,J.C.の論文、Cell、67巻、11
31〜1143頁(1991年)がある。Gal−6Sは、以下の物質中に発見
されている。すなわち、ケラタン硫酸類(Roden
,L.の論文、In The Biochemistry of Glycop
roteins and Proteoglycans、267〜372頁(W
.J.Lennarz編集)ニューヨークPlenum Press社発行(1
980年))、ヒトの気管気管支ムチン類(Mawhinney,T.P.、A
delstein,E.、Morris,D.A.、Mawhinney,A.
M.およびBarbero,G.J.の論文、J.Biol.Chem.、26
7巻、2994〜3001頁(1986年))、GlcNAc−6Sをともに含
有するラットの唾液ムチン類(Slomiany,B.L.、Piotrows
ki,J.、Nishikawa,H.およびSlomiany,A.の論文、
Biochem.Biophys.Res.Commun.、157巻、61〜
67頁(1988年))、並びに組換えヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(
Pfeiffer,G.、Stirm,S.、Geyer,G.、Strube
,K.−H.、Bergwerff,A.A.、Kamerling,J.P.
およびVliegenthart,J.F.P.の論文、Glycobiolo
gy、2巻、411〜418頁(1992年))中に発見されている。ケラタン
硫酸とプラスミノーゲン活性化因子には、Gal−6Sが、実施例4で確認され
た構造体の場合と同様に、N−アセチルラクトサミン単位上に存在している。
シアル酸、硫酸基および恐らくフコースに対する機能の必要条件は、GlyC
AM−1の認識決定基のいずれのモデルにも含まれていなければならない。可能
性の一つは、個々のO結合連鎖がシアル酸ベースまたは硫酸基ベースの決定基を
含んでいることである。これら個々の連鎖は、オリゴマーのL−セレクチンの別
々のレクチン
ドメインによって認識されるかまたは単一のレクチンドメインに対する複合エピ
トープ(combined epitope)を形成することもある(Norgard,K.E.
、Moore,K.L.、Diaz,S.、Stults,N.L.、Ushi
yama,S.、McEver,R.P.、Cummings,R.D.および
Varki,A.の論文、J.Biol.Chem.、268巻、12764〜
12774頁(1993年))。シアル酸または硫酸基を除くと、リガンドとL
−セレクチン間の相互作用の全体の親和力が大きく減少する。
好ましいリガンドは、例えば硫酸化sLex様構造体と同じの、L−セレクチ
ン認識部位を形成するO結合連鎖が硫酸化およびシアリル化されている。先に、
本発明の発明者らは、β−脱離によってGlyCAM−1から放出される(35S
O4)−標識されたO−結合連鎖は、すべてシアル酸特異的レクチン(ライマッ
クス凝集素)に結合できることを観察した(Imai,Y.およびRosen,
S.D.の論文、Glycoconjugate J.、10巻、34〜39頁
(1993年))。したがって、硫酸化は、個々の連鎖のシアリル化なしでは起
こらない。
実施例5 代謝標識GlyCAM−1の加水分解フラグメントの分析
GlyCAM−1を、上記実施例1に記載したようにして、リンパ節臓器培養
にて、35SO4とトリチウム化炭水化物前駆物質のパネルで代謝標識化を行った
。ゆるやかな加水分解条件を用いて、遊離の硫酸イオンを生成することなく硫酸
化オリゴ糖を放出させた。ゲル濾過とアニオン交換クロマトグラフィーを組み合
わせて得られた
低分子量で単一電荷のフラグメントを分析した。これらフラグメントの同定は、
各種の放射能標識糖前駆物質を用いて行い(R.D.Cummings、R.K
.MerkleおよびN.L.Stultsの論文、Methods in C
ell Biology(Academic Press社 1989年)、3
2巻に掲載、並びにA.Varkiの論文、FASEB J.、5巻、226〜
235頁(1991年))、単一電荷の画分は、さらに化学的および酵素による
加水分解を行って、真正標準(基準物質)を用い高pHアニオン交換クロマトグ
ラフィー分析により構造の最終の特定を行った。GlyCAM−1の硫酸化成分
は、-O3SO−6−Gal、GlcNAc−6−OSO3 -、Galβ1→4Gl
cNAc−6−OSO3 -および-O3SO−6−Galβ1→4GlcNAcと同
定された。
実施例6 GlyCAM−1のレクチン類との反応性
以前の研究によって、硫酸基(Y.Imai、L.A.LaskyおよびS.
D.Rosenの論文、Nature、361巻555〜557頁(1993年
))およびシアル酸と恐らくフコース(Y.Imai、L.A.Laskyおよ
びS.D.Rosenの論文、Glycobiology、4巻、373〜38
1頁(1992年))は、GlyCAM−1のL−セレクチンとの激しい相互反
応にとって不可欠のものであることが立証されている。GlyCAM−1を加水
分解して得られた硫酸化構造体のシアル酸とフコースの置換部分について分析し
た(上記実施例5参照)。この目的のため、明確な炭水化物特異性を有する一群
のレクチンを用いて、これ
らレクチンのGlyCAM−1に対する結合性を試験した。正常GlyCAM−
1および低硫酸化(undersulfated)GlyCAM−1の両者を、酵素で脱シア
リル化および/または脱フコシル化したかまたはしなかったものを試験した。
(3H−Gal)標識GlyCAM−1を上記実施例1〜4に記載されている
ようにして、マウスリンパ節の臓器培養で製造した。低硫酸化GlyCAMは、
10mMの塩素酸ナトリウム(公知の硫酸化阻害剤)を含有する培地内でマウス
リンパ節の臓器培養を行うことによって調製した。上記実施例1〜4に記載した
ようにして、GlyCAM−1のコアタンパク質のペプチド配列に対する抗体(
CAM02 Ab)によって免疫沈降させることによって、GlyCAM−1を
調製培地から単離した。GlyCAMは、塩素酸塩の存在下または非存在下でほ
ぼ同じ[3H]−ガラクトース活性を取り込んだが(0.25mCiのインプッ
トから2×106cpmの取込み)、[35S]−硫酸基の取込みは、塩素酸塩の
存在下、対照の10%まで抑制された(0.5mCiのインプットからの取込み
:0.16×106対1.75×106cpm)。GlyCAM−1の脱シアリル
化は、すべての場合、120mMの酢酸ナトリウムpH5.5中、アルスロバク
ター・ウレアフアシエンスシアリダーゼ(1.75単位/ml)で処理(18時
間、37℃)することによって行った。
この分析に使用したレクチン類は、以下のとおりであった。
WGA:小麦胚芽凝集素(H.LisおよびN.Sharon、Ann Re
v Biochem.、55巻、35〜67頁(1986年))。これは、シア
ル酸(Sia)と末端のGlcNAc*を認識する。溶離剤:GlcNAc。
AAA:アリューリア・アウランティア凝集素(H.DebrayおよびJ.
Montreuil..Carbo.Res.、185巻、15〜20頁(19
89年))。これは、αl−2、αl−3およびαl−6結合フコースを認識す
る。溶離剤:フコース。
TJA−1:トリコサンセス・ジャポニカ凝集素(K.Yamashita、
K.Umetsu、T.SuzukiおよびT.Ohkura、Biochem
istry、31巻、11647〜11650頁(1992年))。これは、S
iaα2−6Galβ1−4GlcNAcまたはSO4−6−Galβ1−4G
lcNAcを認識する。溶離剤:ラクトース。
SNA:サンブクス・ニグラ(Sambucus nigra)(アメリカニワトコの樹皮)
凝集素(K.Yamashita,.K.Umetsu、T.Suzukiおよ
びT.Ohkura、Biochemistry、31巻11647〜1165
0頁(1992年)並びにN.Shibuya他,J.Biol.Chem.、
262巻、1569〜1601頁(1987年))。これは、Siaα2−6G
lcNAc、Siaα2−6−Galβ1−4GlcNAcおよびSO4−6−
Galβ1−4GlcNAcを認識する。溶離剤:ラクトース。
MAA:マックキア・アムレンシス(Macckia amurensis)凝集素(R.N.
Knibbs、I.J.Goldstein、R.M.Ratcliffeおよ
びN.Shibuya、J.Biol.Chem.、266巻、83〜88頁(
1991年))。これは、Siaα2−3Galβ1−4GlcNAcを認識す
る。溶離剤:ラクトース。
PNA:ラッカセイ凝集素(H.LisおよびN.Sharon
、Ann Rev Biochem.、55巻、35〜67頁(1986年))
。これは、Galβ1−3GalNAcを認識する。溶離剤:ラクトース。
LEA:リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)凝集
素(トマトレクチン)(R.D.Cummings、R.K.Merkleおよ
びN.L.Stultsの論文、Methods in Cell Biolo
gy(Academic Press社、1989年発行)、32巻に掲載)。
これは、GlcNAcが順次つながっているという要件なしで(β1−4Glc
NAc)オリゴマーに結合する。溶離剤:N−アセチルグルコサミン。
上記の糖の略号*は、次のとおりである。Fuc:フコース;Gal:ガラク
トース;GalNAc:N−アセチルガラクトサミン;GlcNAc:N−アセ
チルグルコサミン;Sia:シアル酸(この糖のすべての天然に存在する変異体
を含む)。
追加の沈降剤として、GlyCAM−1のC末端ペプチドに対する抗体(CA
M05 Ab)も使用した。CAM05 Abの溶離剤は、0.1Mのグリシン
−HCl、0.2MのNaCl、0.25%のトリトンX−100、pH30で
あった。結合性は、全cpmインプットに対する%で表した。
GlyCAM−1生成物を、0.1%BSA、0.1%NaN3を含有するリ
ン酸緩衝食塩水(PBS)中の固定化レクチン(0.2mlマトリックス ゲル
/ml、誘導体化:1〜2mgレクチン/mlゲル)とともに4℃にて2h撹拝
し、次にマトリックスを遠心分離にかけ、0.25%のトリトンX−100を含
有するPBSで4回洗浄し、次に0.25%のトリトンX−100を含有するP
B
S中 100mMの特定の溶離剤で溶離した。溶出液の活性を液体シンチレーシ
ョンカウンティングで測定した。
レクチン沈降分析の試験結果を以下の表Iに示す。
レクチンの沈降に関する上記試験の結果は次のことを実証している。
(a)アルスロバクターシアリダーゼによる脱シアリル化によって、TJA
−1およびSNAの両者に対する潜在結合部位(cryptic binding site)が暴露
された。脱シアリル化された低硫酸化物質がこれら2種のレクチンに結合できな
かったので、上記部位は、硫酸化に依存していた。
(b)GlyCAM−1の硫酸化が低下すると、潜在MAA結合活性が暴露
され、その活性は、シアリル化に依存していた。
(c)脱シアリル化によって潜在PNA結合活性が暴露された。PNAに対
する結合性は、硫酸基の存在または非存在によって大きくは影響されなかった。
代謝標識GlyCAM−1の加水分解による分析結果は、レクチン沈降による
分析結果とともに、
Siaα2−3(SO4−6)Galβ1−4GlcNACがGlyCAM−
1炭水化物連鎖の主キャッピング構造体内に存在していることに強力な裏付けを
与えた。PNAによる試験結果は、GlyCAM−1炭水化物がシアリル化T抗
原様構造体(すなわち、Siaα2−3Galβ1−3GalNAc)を含有し
ていることを示唆した。
実施例7 エキソグリコシダーゼによるGlyCAM−1の逐次消化
[3H]−Galによって標識化された正常GlyCAM−1または低硫酸化
GlyCAM−1を、上記のようにプロテインA−アガロースに接合したCAM
02 Abによる免疫沈降法によって、リンパ節の調整培地から単離した。単離
されたリガンドを、予め脱シアリル化するかまたはしないで下記の酵素で消化し
た。
(1)50mMのカコジル酸ナトリウムPH6.0中0.1単位/mlのエ
キソ−β1−4ガラクトシダーゼ(ディプロコッカス(Diplococcus)由来、B
oehringer Mannheim社、#1088718)を用い、37℃
で48h消化、または
(2)50mMのカコジル酸ナトリウムPH6.0中0.1ミリ単位/ml
のエキソ−β1−4 ガラクトシダーゼ(ディプロコッカス由来、Boehri
nger Mannheim社、#1088718) + α1−3/4フコシ
ダーゼ(Takara Biochemicals、Tokyo所在)(K.M
aemuraおよびM.Fukudaの論文、J.Biol.Chem.、26
7巻、24379〜24386頁(1992年))を用い、37℃で48h消化
。
得られた消化物をセファデックスG−25ゲル濾過カラム(PBS中270m
m×8mm、0.25%トリトンX−100)に注入した。カラムをPBS、0
.25%トリトン−100で溶離し、0.5mlずつの画分を収集した。全画分
を[3H]−放射線についてカウントした。未消化物質は、空隙容量(4〜5m
l)で溶出したが、放出された[3H]−Galは、カラム中に含有され、空隙
容量の後2.5〜4mlで溶出した。
[3H]−Galについて得られた結果は、以下の表IIに示すとおりであっ
た。
[3H]−フコースで代謝標識化した正常GlyCAM−1または低硫酸化G
lyCAM−1を、脱シアリル化を行うかまたは行わずに、50mMカコジル酸
ナトリウム中0.1ミリ単位/mlのα1
−3/4フコシダーゼ(Takara Biochemicals、Tokyo
)を用いて消化した。放出された[3H]−Fucを、ガラクトースについて先
に述べたようにして、ゲル濾過分析法によって測定した。[3H]−Fucにつ
いての試験結果は、下記表IIIに示すとおりであった。
[3H]−Galで標識化された低硫酸化GlyCAM−1または正常Gly
CAM−1を脱シアリル化し、それをα1−3/4フコシダーゼで処理するかま
たは処理しなかったものの、AAAまたはLEA(トマトレクチン)に結合する
性能を測定した。AAAとLEAの結合特異性と検定条件については、上記実施
例6を参照。
その分析試験の結果は下記表IVに示すとおりであった。
表II、IIIおよびIVに示す実験結果は、下記のことを実証している。
1.GlyCAM−1中の全ガラクトースの約35%がシアル酸に対して
末端前(末端から2番目)の位置に位置し、GlcNAcにβ1→4結合をして
いた。この結果は、低硫酸化で脱シアリル化されかつ脱フコシル化された物質は
、β1−4エキソーガラクトシダーゼで処理したところ、その[3H]−Gal
カウントの35%を放出したという事実(表II)から得られた。リガンドが脱
シアリル化されていなければ、β1−4エキソーガラクトシダーゼのGlyCA
M−1に対する活性が完全に欠除していることから判断して、このガラクトース
はすべて正常にシアリル化されていた。このことは、分子の硫酸化が低いかどう
かにもあてはまる。
2.フコースは、GlcNAcに対してα1→3結合している。この結果
は、以下のα1−3/4フコシダーゼの作用から得られた。すなわち、α1−3
/4フコシダーゼは、(1)β1−4エキソーガラクトシダーゼによる、Gly
CAM−1からの[3H]−
Galカウントの放出を強めた(表II)、(2)GlyCAM−1から[3H
]−Fucカウントを直接放出した(表III)、および(3)β1−4結合G
lcNAcに結合することが知られているLEAに対するGlyCAM−1の結
合性を増大させた(表IV)。GlcNAcの4位はGalへの結合に関与して
いるので(すなわちGalβ1−4GlcNAc)、フコースは、GlcNAc
に対しα1−3結合で結合している筈である。表IIのデータから、第一のGl
cNAcの約70%がフコースで置換されていると推定した。
3.硫酸化されていると、β1−4エキソーガラクトシダーゼで処理した
場合、GlyCAM−1からの[3H]−Galのカウントの放出が大きく阻害
された(表II)。この結果は、β1−4結合ガラクトース残基が恐らく6位を
硫酸基で置換されているという別の証拠を提供した。脱フコシル化された硫酸化
GlyCAM−1と脱フコシル化された低硫酸化GlyCAM−1からの[3H
]−Galカウントの放出に対するエキソ−β−ガラクトシダーゼの作用から、
末端のβ1−4ガラクトース残基の約60%が硫酸基で置換されていると推定し
た。GlyCAM−1炭水化物のキャッピング基の提案される構造
代謝で標識化されたGlyCAM−1の加水分解生成物の分析、明確な炭水化
物特異性を有するレクチン類に対するGlyCAM−1の結合性、およびGly
CAM−1のオリゴ糖連鎖を分解するためのグリコシダーゼ類の使用について先
に提供されたデータは、GlyCAM−1の典型的な炭水化物連鎖が、以下式I
Iで表されるシリアル化T抗原、すなわちSiaα2−3Galβ1−3Gal
NAc−O−Ser/Thrからなることを示し、このシリアル化T抗原は、S
er/Thr結合GalNAcの6位に未知の数のN−アセチルラクトサミン単
位で延出し、そのN−アセチルラクトサミン単位は、6−硫酸化シアリルLew
isX構造体(すなわちα2−3結合のシアル酸と6位の硫酸化の両者によって
置換された末端ガラクトース)によって、非還元性末端でキャップされていた。
実施例8
抗体MECA−79 m Abに対するGlyCAMとCD34の結合性を測
定する実験が行われた。Streeter,P.R.、Rouse,B.T.N
.およびButcher,E.C.の論文、J.Cell Biol.、107
巻、1853〜1862頁(1988年);Michie,S.A.、Stre
eter,P.R.、Bolt,P.A.、Butcher,B.C.およびP
icker,L.J.の論文、Amer.J.Path.、143巻、1688
〜1698頁(1993年)。これらの実験の結果は、GlyCAMとCD34
のMECA−79 m Abに対する結合性は、これらリガンドの硫酸化に依存
していることを実証している。
上記実験は、糖分子の特定位置の硫酸化が、セレクチンリガンドのセレクチン
受容体に対する結合性にとって重要であることを示している。具体的に述べると
、上記試験結果は、硫酸基部分が、自然に存在するセレクチンリガンド内に存在
する糖分子の6位に存在していることを示している。具体的に述べれば、硫酸基
は、N−アセチルグルコサミンの6位とガラクトースの6位に存在している。し
たがって、上記実験は、硫酸化を阻害することによって、許容し難
い高速度で起こると炎症に寄与する生化学的プロセスを遮断することができるこ
とを示している。さらに、硫酸基部分を除去することによって、類似の方式で、
炎症に至ることが多い生化学的プロセスを阻害することができる。
本発明の各種の面を、最も実際的でかつ好ましい実施態様であるとみなされる
ものについて本明細書に示し説明してきた。しかしながら、本発明の範囲内で、
変更が可能であり、かつ本明細書を読めば、当該技術分野の当業者には自明の変
形が思いうかぶことが認識されよう。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 38/46 ACJ A61K 37/54 ABA
ADA ADA
ADP ADP
C12N 9/14 ACD
9/24 ACJ
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,GE
,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,
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O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SI
,SK,TJ,TT,UA,UZ,VN
(72)発明者 ヘマリッチ ステファン
アメリカ合衆国 94103 カリフォルニア
州 サンフランシスコ フィフティーンス
ストリート 1410
(72)発明者 イマイ ヤスユキ
日本東京都 文京区 本郷 7−3−1
東京大学生体異物免疫化学教室
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1. 医薬として許容される担体と、 スルファターゼ酵素とを含んでなり、 該酵素は、自然出現セレクチンリガンドの糖分子から硫酸基部分を外すもので あり、その硫酸基部分を外すのが糖分子の6位置からである ことを特徴とする組成物。 2. 請求項1に記載の組成物であって、 該スルファターゼ酵素は、ガラクトース−6−サルフェートスルファターゼお よびN−アセチルグルコサミン−6−サルフェートスルファターゼからなる群か ら選択される ことを特徴とするもの。 3. 医薬として許容される担体と、 L−セレクチンリガンドの硫酸化の阻害剤とを含んでなり、 該阻害剤は、自然出現セレクチンリガンド内のガラクトースまたはN−アセチ ルグルコースまたはN−アセチルグルコサミンの6位置への硫酸基の付加を特異 的に阻害する ことを特徴とする組成物。 4. 請求項3に記載の組成物であって、 該阻害剤は、塩素酸阻害剤であり、3′−ホスホアデノシン−5′−ホスホサ ルフェート(PAPS)の形成を遮断することにより硫酸化を阻害する ことを特徴とするもの。 5. 必要とする患者に治療的に有効な分量のスルファターゼ酵素を医薬として 許容される担体に入れて投与することと、 該スルファターゼ酵素に、自然出現セレクチンリガンドの糖分子から硫酸基部 分を外させ、該スルファターゼ酵素は、ガラクトース−6−サルフェートスルフ ァターゼおよびN−アセチルグルコサミン−6−サルフェートスルファターゼか らなる群から選択され、当該投与は人体の局所領域への注射によるものであるこ とと を含んでなる炎症の治療方法。 6. 患者に治療的に有効な分量の硫酸化阻害剤を投与することと、 該阻害剤に、自然出現セレクチンリガンド内の糖分子の硫酸化を阻害させ、該 阻害剤は、セレン酸ナトリウムであり、それは3′−ホスホアデノシン−5′− ホスホサルフェート(PAPS)の形成を遮断することにより硫酸化を阻害する ものであることと を含んでなる炎症の治療方法。 7. 医薬として許容される担体と、 自然出現セレクチンリガンドの糖分子から硫酸基部分を外すスルファターゼ酵 素と、そして 自然出現セレクチンリガンドの硫酸化を阻害する阻害剤と を含んでなる組成物。 8. 請求項7に記載の組成物であって、 該阻害剤は、セレン酸ナトリウムであり、3′−ホスホアデノシン−5′−ホ スホサルフェート(PAPS)の形成を遮断することにより硫酸化を阻害する ことを特徴とするもの。 9. 請求項7に記載の組成物であって、 該スルファターゼ酵素は、ガラクトース−6−サルフェートスルファターゼお よびN−アセチルグルコサミン−6−サルフェートス ルファターゼからなる群から選択される ことを特徴とするもの。 10. ガラクトース−6−サルフェートスルファターゼおよびN−アセチルグ ルコサミン−6−サルフェートスルファターゼからなる群から選択されるスルフ ァターゼ酵素を中に有する医薬的に許容される担体と、 自然出現セレクチンリガンドの硫酸化を阻害する塩素酸塩またはセレン酸塩な どの代謝による硫酸化阻害剤と を含んでなる組成物を、治療的に有効な分量でもって患者に投与することを含ん でなり、 該組成物は、患者身体の外傷を受けているまたは受けようとしている領域に局 所的に注射することにより患者に投与される ことを特徴とする炎症の治療方法。
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