JPH10280185A - 鋳物のコーティングの前処理方法およびコーティング処理方法 - Google Patents
鋳物のコーティングの前処理方法およびコーティング処理方法Info
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- JPH10280185A JPH10280185A JP9037397A JP9037397A JPH10280185A JP H10280185 A JPH10280185 A JP H10280185A JP 9037397 A JP9037397 A JP 9037397A JP 9037397 A JP9037397 A JP 9037397A JP H10280185 A JPH10280185 A JP H10280185A
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- processing
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 短い処理時間で、削りくずや廃液等が発生せ
ず、処理時に砥石、砥粉、エッチング液等の消耗品が不
要でコストが安価な鋳物のコーティングの前処理方法お
よびコーティング処理方法を提供する。 【解決手段】 凹凸を有する鋳物表面22に部材16を
圧接して該表面22を塑性変形させることにより上記凹
凸を小さくすることを特徴とする鋳物のコーティングの
前処理方法。
ず、処理時に砥石、砥粉、エッチング液等の消耗品が不
要でコストが安価な鋳物のコーティングの前処理方法お
よびコーティング処理方法を提供する。 【解決手段】 凹凸を有する鋳物表面22に部材16を
圧接して該表面22を塑性変形させることにより上記凹
凸を小さくすることを特徴とする鋳物のコーティングの
前処理方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋳物表面のコーテ
ィングの前処理方法およびコーティング処理方法に関す
る。さらに詳しくは、アルミシリンダ等の円筒鋳物の内
径表面にメッキ等のコーティングを施す前に行う前処理
方法およびコーティング処理方法に関する。
ィングの前処理方法およびコーティング処理方法に関す
る。さらに詳しくは、アルミシリンダ等の円筒鋳物の内
径表面にメッキ等のコーティングを施す前に行う前処理
方法およびコーティング処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、鋳物表面に施すメッキ等のコーテ
ィングにおいては、鋳物表面の鋳造巣などの凹凸に起因
し、コーティング被膜面の凹凸や肌荒れなどの外観品質
上の問題やコーティング被膜のフクレ、ワレなどの機能
上の問題が発生する。この問題を防止する目的で、従来
はエッチング、ボーリングまたはバフ研磨等の化学的ま
たは物理的手法により、上記鋳物表面を溶解したり研磨
したりして表面の凹凸を除去したのち、コーティングを
施している。
ィングにおいては、鋳物表面の鋳造巣などの凹凸に起因
し、コーティング被膜面の凹凸や肌荒れなどの外観品質
上の問題やコーティング被膜のフクレ、ワレなどの機能
上の問題が発生する。この問題を防止する目的で、従来
はエッチング、ボーリングまたはバフ研磨等の化学的ま
たは物理的手法により、上記鋳物表面を溶解したり研磨
したりして表面の凹凸を除去したのち、コーティングを
施している。
【0003】上述したように、従来の鋳物のコーティン
グの前処理方法においては、鋳物表面を溶解処理したり
研磨処理したりして該鋳物表面の凹凸を除去していた
が、凸部の最高部から凹部の最低部まで処理しなければ
ならないため、処理時間が長くかかったり、処理不足に
より凹部が残留することがあったりした。また、溶解処
理の場合は廃液が、研磨処理の場合は削りくずや切りく
ずが発生した。そして、溶解処理の場合はエッチング液
等、研磨処理の場合は砥石や砥粉等、多量の消耗品が必
要であるため、コストが嵩んだり、過度の溶解処理また
は研磨処理により前加工の寸法精度が損なわれるおそれ
があった。さらに、鋳造巣を表面層の内部にもつ鋳物の
場合は、上記過度の溶解処理または研磨処理により鋳造
巣を新たな凹部として鋳物表面に表出させてしまう等の
問題があり、コストが嵩むわりには明確な効果が得られ
ないことが多かった。
グの前処理方法においては、鋳物表面を溶解処理したり
研磨処理したりして該鋳物表面の凹凸を除去していた
が、凸部の最高部から凹部の最低部まで処理しなければ
ならないため、処理時間が長くかかったり、処理不足に
より凹部が残留することがあったりした。また、溶解処
理の場合は廃液が、研磨処理の場合は削りくずや切りく
ずが発生した。そして、溶解処理の場合はエッチング液
等、研磨処理の場合は砥石や砥粉等、多量の消耗品が必
要であるため、コストが嵩んだり、過度の溶解処理また
は研磨処理により前加工の寸法精度が損なわれるおそれ
があった。さらに、鋳造巣を表面層の内部にもつ鋳物の
場合は、上記過度の溶解処理または研磨処理により鋳造
巣を新たな凹部として鋳物表面に表出させてしまう等の
問題があり、コストが嵩むわりには明確な効果が得られ
ないことが多かった。
【0004】図9〜図12は、従来の前処理を施した鋳
物表面とその内部の断面を示す模式図である。図9に模
式的に示した加工処理前の鋳物表面26はコーティング
前の鋳物表面26であり、問題となる凹凸がある。図1
0に示す鋳物表面27は加工処理中の鋳物表面27であ
り、加工処理前の鋳物表面26の深さ方向の位置を表す
◆より上記鋳物表面27の位置は深さ方向に後退し始め
ている。図11に示す鋳物表面28は加工処理後の鋳物
表面28であり、この表面の凹凸は、溶解処理または研
磨処理によりかなり消失したが、鋳物表面28自体は、
加工処理前の表面位置を表す◆より深さ方向に後退して
いる。この深さ方向の後退分dが、切りくずや削りくず
またはエッチング液の廃液等の廃棄物となる。また、処
理深さは上記鋳物表面26の凹部を消失させる程度が適
正と考えられるが、予めこの深さを測定するのは困難で
あり、加工処理が不足する場合はその効果を失うため、
過分な処理深さを常に必要とされる。このため、処理時
間も長時間となり、上記廃棄物や砥石やエッチング液等
の消耗量が増大する。さらに、図12は図11の表面層
内部の断面を示す模式図である。この図からわかるよう
に、従来法では鋳物表面を溶解処理または研磨処理によ
り加工処理して除去するだけであるため、内在する鋳造
巣29の処理は不可能であり、むしろ加工処理後に該鋳
造巣29は新たな凹部30となって鋳物表面31に表出
してしまい、明確な効果が得られないことが多い。
物表面とその内部の断面を示す模式図である。図9に模
式的に示した加工処理前の鋳物表面26はコーティング
前の鋳物表面26であり、問題となる凹凸がある。図1
0に示す鋳物表面27は加工処理中の鋳物表面27であ
り、加工処理前の鋳物表面26の深さ方向の位置を表す
◆より上記鋳物表面27の位置は深さ方向に後退し始め
ている。図11に示す鋳物表面28は加工処理後の鋳物
表面28であり、この表面の凹凸は、溶解処理または研
磨処理によりかなり消失したが、鋳物表面28自体は、
加工処理前の表面位置を表す◆より深さ方向に後退して
いる。この深さ方向の後退分dが、切りくずや削りくず
またはエッチング液の廃液等の廃棄物となる。また、処
理深さは上記鋳物表面26の凹部を消失させる程度が適
正と考えられるが、予めこの深さを測定するのは困難で
あり、加工処理が不足する場合はその効果を失うため、
過分な処理深さを常に必要とされる。このため、処理時
間も長時間となり、上記廃棄物や砥石やエッチング液等
の消耗量が増大する。さらに、図12は図11の表面層
内部の断面を示す模式図である。この図からわかるよう
に、従来法では鋳物表面を溶解処理または研磨処理によ
り加工処理して除去するだけであるため、内在する鋳造
巣29の処理は不可能であり、むしろ加工処理後に該鋳
造巣29は新たな凹部30となって鋳物表面31に表出
してしまい、明確な効果が得られないことが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたもので、短い処理時間で、削りくずや廃
液等が発生せず、処理時に砥石、砥粉、エッチング液等
の消耗品が不要な鋳物のコーティングの前処理方法およ
びコーティング処理方法を提供することにある。
鑑みてなされたもので、短い処理時間で、削りくずや廃
液等が発生せず、処理時に砥石、砥粉、エッチング液等
の消耗品が不要な鋳物のコーティングの前処理方法およ
びコーティング処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を解
決するためになされたものであり、その要旨は、鋳物表
面に部材を圧接して該表面を塑性変形させることにより
上記鋳物表面上の凹凸を小さくすることを特徴とする鋳
物のコーティングの前処理方法と、鋳物表面に部材を圧
接して該表面を塑性変形させることにより上記鋳物表面
上の凹凸を小さくし、この表面の上にコーティングを施
すことを特徴とする鋳物のコーティング処理方法と、鋳
物表面に部材を圧接して該表面を塑性変形させることに
より上記鋳物表面上の凹凸を小さくし、この表面に溶解
処理または研磨処理を施し、この表面の上にコーティン
グを施すことを特徴とする鋳物のコーティング処理方法
にある。
決するためになされたものであり、その要旨は、鋳物表
面に部材を圧接して該表面を塑性変形させることにより
上記鋳物表面上の凹凸を小さくすることを特徴とする鋳
物のコーティングの前処理方法と、鋳物表面に部材を圧
接して該表面を塑性変形させることにより上記鋳物表面
上の凹凸を小さくし、この表面の上にコーティングを施
すことを特徴とする鋳物のコーティング処理方法と、鋳
物表面に部材を圧接して該表面を塑性変形させることに
より上記鋳物表面上の凹凸を小さくし、この表面に溶解
処理または研磨処理を施し、この表面の上にコーティン
グを施すことを特徴とする鋳物のコーティング処理方法
にある。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照しながら、本発
明に係る鋳物のコーティングの前処理方法を詳細に説明
する。図1は鋳物表面の凹凸形状を示す概念図であり、
そのうち、 (a)は本発明に係る前処理を施す前の鋳物表
面の凹凸形状、 (b)は本発明に係る前処理を施した後の
鋳物表面の凹凸形状、 (c)は従来の前処理を施した後の
鋳物表面の凹凸形状、(d)は従来の前処理が不足したと
きの鋳物表面の凹凸形状、(e) は従来の前処理が過度の
ときの鋳物表面の凹凸形状を示す。
明に係る鋳物のコーティングの前処理方法を詳細に説明
する。図1は鋳物表面の凹凸形状を示す概念図であり、
そのうち、 (a)は本発明に係る前処理を施す前の鋳物表
面の凹凸形状、 (b)は本発明に係る前処理を施した後の
鋳物表面の凹凸形状、 (c)は従来の前処理を施した後の
鋳物表面の凹凸形状、(d)は従来の前処理が不足したと
きの鋳物表面の凹凸形状、(e) は従来の前処理が過度の
ときの鋳物表面の凹凸形状を示す。
【0008】これらの図において、 (a)については、鋳
物表面1に鋳造巣などによる凹凸があり、この上からコ
ーティングを施すとコーティング被膜の肌荒れによる外
観品質の低下を招いたり、コーティング被膜のフクレや
ワレなどを招いたりして、耐食性や耐摩耗性を必要とす
るものに用いる場合には機能上の問題を引き起こすおそ
れがある。(b) については、破線で示す鋳物表面の凸部
2をローラーによって圧縮、塑性変形させることにより
凹部を盛り上げ、実線3で示すようになだらかな形状に
仕上げている。このときの各部位の形状の変化を細い矢
印4で示す。また、鋳物表面の加工量の大きさを示す右
側の太い矢印5は (c)に示す矢印6よりも短くなる。こ
れは、鋳物表面の凸部2の圧縮によって同時に凹部7の
盛り上がりが起こるため、加工量は凸部2を平坦の状態
にするだけで済むからである。 (c)については、鋳物表
面の凸部の最高部8から凹部の最低部9まで加工処理し
なければならないため、(b) よりも加工量が大きくな
る。
物表面1に鋳造巣などによる凹凸があり、この上からコ
ーティングを施すとコーティング被膜の肌荒れによる外
観品質の低下を招いたり、コーティング被膜のフクレや
ワレなどを招いたりして、耐食性や耐摩耗性を必要とす
るものに用いる場合には機能上の問題を引き起こすおそ
れがある。(b) については、破線で示す鋳物表面の凸部
2をローラーによって圧縮、塑性変形させることにより
凹部を盛り上げ、実線3で示すようになだらかな形状に
仕上げている。このときの各部位の形状の変化を細い矢
印4で示す。また、鋳物表面の加工量の大きさを示す右
側の太い矢印5は (c)に示す矢印6よりも短くなる。こ
れは、鋳物表面の凸部2の圧縮によって同時に凹部7の
盛り上がりが起こるため、加工量は凸部2を平坦の状態
にするだけで済むからである。 (c)については、鋳物表
面の凸部の最高部8から凹部の最低部9まで加工処理し
なければならないため、(b) よりも加工量が大きくな
る。
【0009】また、従来は処理時間を調整することによ
り加工量を変化させるが、砥石やエッチング液等が磨耗
したり劣化したりすると、同じ処理時間でも (d)の実線
10に示すように凹部11が残留してしまう場合があ
る。これは、鋳物表面の凸部と凹部の処理断面形状が異
なり、処理深さに比例して処理難度が増すので、従来の
方法では凹部の処理が困難となるためである。この場
合、従来法では (e)に示すように、適正よりもやや過度
の加工処理を行って過分な加工量12を維持しなければ
ならず、前加工の寸法精度を損なうおそれがあるほか、
砥石やエッチング液等の過度の磨耗や劣化が起こる。
り加工量を変化させるが、砥石やエッチング液等が磨耗
したり劣化したりすると、同じ処理時間でも (d)の実線
10に示すように凹部11が残留してしまう場合があ
る。これは、鋳物表面の凸部と凹部の処理断面形状が異
なり、処理深さに比例して処理難度が増すので、従来の
方法では凹部の処理が困難となるためである。この場
合、従来法では (e)に示すように、適正よりもやや過度
の加工処理を行って過分な加工量12を維持しなければ
ならず、前加工の寸法精度を損なうおそれがあるほか、
砥石やエッチング液等の過度の磨耗や劣化が起こる。
【0010】一方、本発明では前処理が不足した場合で
も、上記図1 (b)における一点鎖線13に示すように凸
部を低くなだらかに、凹部を浅く滑らかな波形状に仕上
げることができるため、処理前の凹部がそのまま残留す
ることがなく、外観品質上および機能上においても効果
的である。また、前処理が過度な場合でも、従来法の溶
解処理、研磨処理と異なり、本発明に係る前処理方法は
鋳物表面に圧縮による塑性変形を与えるだけなので、過
分な前処理によって前加工の寸法精度を損なうおそれが
少ない。
も、上記図1 (b)における一点鎖線13に示すように凸
部を低くなだらかに、凹部を浅く滑らかな波形状に仕上
げることができるため、処理前の凹部がそのまま残留す
ることがなく、外観品質上および機能上においても効果
的である。また、前処理が過度な場合でも、従来法の溶
解処理、研磨処理と異なり、本発明に係る前処理方法は
鋳物表面に圧縮による塑性変形を与えるだけなので、過
分な前処理によって前加工の寸法精度を損なうおそれが
少ない。
【0011】図2および図3は、本発明に係る前処理装
置、つまりアルミシリンダ14のボア内径表面に本発明
の前処理を施す装置を示す。図2はこの前処理装置の平
面図、図3はその正面図である。図中、15は処理ツー
ル、16はローラーを示し、アルミシリンダ14のボア
内径表面17にローラー16を圧接するように処理ツー
ル15を設置し、該処理ツール15を矢印18のように
回転させながら軸心方向19に送って処理する。ローラ
ー16は処理ツール15の回転に伴ってボア内径表面1
7を圧縮しながらこの表面上を転動するため、このボア
内径表面17の上の凹凸は、図1(b) の実線3に示すよ
うな滑らかな波形状に仕上がる。
置、つまりアルミシリンダ14のボア内径表面に本発明
の前処理を施す装置を示す。図2はこの前処理装置の平
面図、図3はその正面図である。図中、15は処理ツー
ル、16はローラーを示し、アルミシリンダ14のボア
内径表面17にローラー16を圧接するように処理ツー
ル15を設置し、該処理ツール15を矢印18のように
回転させながら軸心方向19に送って処理する。ローラ
ー16は処理ツール15の回転に伴ってボア内径表面1
7を圧縮しながらこの表面上を転動するため、このボア
内径表面17の上の凹凸は、図1(b) の実線3に示すよ
うな滑らかな波形状に仕上がる。
【0012】図4は、図2のA−A線による縦断面図で
ある。処理ツール15のローラー16はアルミシリンダ
14のボア内径表面17に図のように圧接しており、処
理ツール15の回転に伴い、ローラー16は自転しなが
ら処理ツール15とともに回転する。この状態で、処理
ツール15を軸心方向19に送って、ボア内径表面17
の全面を加工処理する。
ある。処理ツール15のローラー16はアルミシリンダ
14のボア内径表面17に図のように圧接しており、処
理ツール15の回転に伴い、ローラー16は自転しなが
ら処理ツール15とともに回転する。この状態で、処理
ツール15を軸心方向19に送って、ボア内径表面17
の全面を加工処理する。
【0013】図5〜図8は、図4のボア内径表面17と
その内部の断面を示す模式図である。図5におけるボア
内径表面20は、本発明に係る前処理を施す前の表面で
あり、上述したように問題となる凹凸21がある。図6
におけるボア内径表面22は加工処理中の表面であり、
ローラー16による圧接、塑性変形により、アルミシリ
ンダ14の上部におけるボア内径表面23では凸部が消
失し、中央部でも塑性変形による表面の盛り上がりによ
って凹部も消失を始めている。このように、凸部の圧縮
と同時に凹部の処理も行えるため、加工処理時間は短
い。図7におけるボア内径表面24は加工処理後の表面
であり、表面の凹凸は消失し、凸部が低くなだらかに、
凹部が浅く滑らかな波形状に仕上がっている。また、加
工処理を施す前のボア内径表面20の深さ方向の位置を
表す◆近傍にボア内径表面24があり、加工処理前の寸
法精度を損なわないばかりか、切りくずや削りくず、廃
液等を発生しない。図8は図7のボア内径表面24の表
面層内部を示すが、アルミ鋳物の場合はコーティング前
の表面層およびその内部には鋳造巣25が存在すること
が多く、本発明の前処理では、圧接による表面の塑性変
形時にこの鋳造巣25が微小化または消失する。
その内部の断面を示す模式図である。図5におけるボア
内径表面20は、本発明に係る前処理を施す前の表面で
あり、上述したように問題となる凹凸21がある。図6
におけるボア内径表面22は加工処理中の表面であり、
ローラー16による圧接、塑性変形により、アルミシリ
ンダ14の上部におけるボア内径表面23では凸部が消
失し、中央部でも塑性変形による表面の盛り上がりによ
って凹部も消失を始めている。このように、凸部の圧縮
と同時に凹部の処理も行えるため、加工処理時間は短
い。図7におけるボア内径表面24は加工処理後の表面
であり、表面の凹凸は消失し、凸部が低くなだらかに、
凹部が浅く滑らかな波形状に仕上がっている。また、加
工処理を施す前のボア内径表面20の深さ方向の位置を
表す◆近傍にボア内径表面24があり、加工処理前の寸
法精度を損なわないばかりか、切りくずや削りくず、廃
液等を発生しない。図8は図7のボア内径表面24の表
面層内部を示すが、アルミ鋳物の場合はコーティング前
の表面層およびその内部には鋳造巣25が存在すること
が多く、本発明の前処理では、圧接による表面の塑性変
形時にこの鋳造巣25が微小化または消失する。
【0014】
【実施例】次いで、本発明を実施例に基づいて更に詳細
に説明する。 [実施例1]表1は、ボア径φ76.5mmの2ストロー
クアルミシリンダの内径表面に本発明と従来法の前処理
を施して、該表面の表面形状を比較したものである。こ
の表において、実施例1は、直径φ14mm、長さ36mm
のローラー8本を有する処理ツールを回転数200r.p.
m.、送り速度100mm/minの条件で、上記アルミシリン
ダを深さ45μmまで圧接したのち、その表面の凹凸状
態を触針式表面粗さ計にてカットオフ0.8mm、測定長
さ2.4mm、測定速度0.3mm/s の条件の下で測定し
た。次いで、上記シリンダを円筒長手方向に縦割りし、
浸透式カラーチェッカーにて凹部の数を測定した。実施
例1では、最高部と最低部の高さの差を表すRmaxは
0.24μmであり、滑らかな波形状に仕上がってい
る。
に説明する。 [実施例1]表1は、ボア径φ76.5mmの2ストロー
クアルミシリンダの内径表面に本発明と従来法の前処理
を施して、該表面の表面形状を比較したものである。こ
の表において、実施例1は、直径φ14mm、長さ36mm
のローラー8本を有する処理ツールを回転数200r.p.
m.、送り速度100mm/minの条件で、上記アルミシリン
ダを深さ45μmまで圧接したのち、その表面の凹凸状
態を触針式表面粗さ計にてカットオフ0.8mm、測定長
さ2.4mm、測定速度0.3mm/s の条件の下で測定し
た。次いで、上記シリンダを円筒長手方向に縦割りし、
浸透式カラーチェッカーにて凹部の数を測定した。実施
例1では、最高部と最低部の高さの差を表すRmaxは
0.24μmであり、滑らかな波形状に仕上がってい
る。
【0015】続いて、従来法を比較例1としてボーラー
によって回転数800r.p.m.、送り速度100mm/minの
条件で、深さ700μmまで処理し、その表面の凹凸状
態を実施例1と同様に測定した。比較例1ではRmax
が6.52μmであり、表面に凹凸がまだ若干残ってお
り、ボーラーの送り速度をさらに遅くするか、1回の処
理量を減らして繰り返し処理するなど、処理時間の長く
なる方法によってのみ改善が期待できる。また、浸透式
カラーチェッカーによる凹部の数のチェックにより、実
施例1ではアルミシリンダーのスカート部に2個、比較
例1ではウォール部に44個の凹部が確認された。従来
法においては更に深さ方向に処理量を増やさなければこ
の凹部の除去は不可能であり、処理時間の長時間化とと
もに、廃棄物、砥石やエッチング液等の多量消耗を招い
てコストが高くなるばかりでなく、前加工の寸法精度を
損なうおそれがある。
によって回転数800r.p.m.、送り速度100mm/minの
条件で、深さ700μmまで処理し、その表面の凹凸状
態を実施例1と同様に測定した。比較例1ではRmax
が6.52μmであり、表面に凹凸がまだ若干残ってお
り、ボーラーの送り速度をさらに遅くするか、1回の処
理量を減らして繰り返し処理するなど、処理時間の長く
なる方法によってのみ改善が期待できる。また、浸透式
カラーチェッカーによる凹部の数のチェックにより、実
施例1ではアルミシリンダーのスカート部に2個、比較
例1ではウォール部に44個の凹部が確認された。従来
法においては更に深さ方向に処理量を増やさなければこ
の凹部の除去は不可能であり、処理時間の長時間化とと
もに、廃棄物、砥石やエッチング液等の多量消耗を招い
てコストが高くなるばかりでなく、前加工の寸法精度を
損なうおそれがある。
【0016】
【表1】
【0017】[実施例2]さらに、実施例2は、実施例
1と同じローラー加工処理を施したアルミシリンダに厚
さ約100μmのニッケルメッキとホーニング仕上げを
行ったものであり、あわせて表面の処理状態も測定し
た。続いて、比較例2として、比較例1と同じボーラー
加工処理を施したアルミシリンダに厚さ約100μmの
ニッケルメッキとホーニング仕上げを施し、測定を行っ
た。これらの結果を表2に示す。実施例2のローラー加
工処理後の結果(Rmax)は実施例1と同等であり、
比較例2のボーラー加工処理後の結果(Rmax)も比
較例1とそれぞれ同等であった。さらにメッキとホーニ
ング仕上げを施した後の結果(Rmax)は、実施例2
が比較例2をやや上回る程度であった。しかし、実施例
2と比較例2で用いられたアルミシリンダを、325℃
で1H保持したのち水冷を施す熱衝撃試験によって、ア
ルミシリンダ表面とメッキ被膜の密着性を確認したとこ
ろ、実施例2ではメッキ被膜にフクレ、ワレとも発生し
なかった。しかし、比較例2ではシリンダウォール部に
3個のフクレと9個のワレが発生し、従来法に比較して
本発明による効果の大きさが確認できた。
1と同じローラー加工処理を施したアルミシリンダに厚
さ約100μmのニッケルメッキとホーニング仕上げを
行ったものであり、あわせて表面の処理状態も測定し
た。続いて、比較例2として、比較例1と同じボーラー
加工処理を施したアルミシリンダに厚さ約100μmの
ニッケルメッキとホーニング仕上げを施し、測定を行っ
た。これらの結果を表2に示す。実施例2のローラー加
工処理後の結果(Rmax)は実施例1と同等であり、
比較例2のボーラー加工処理後の結果(Rmax)も比
較例1とそれぞれ同等であった。さらにメッキとホーニ
ング仕上げを施した後の結果(Rmax)は、実施例2
が比較例2をやや上回る程度であった。しかし、実施例
2と比較例2で用いられたアルミシリンダを、325℃
で1H保持したのち水冷を施す熱衝撃試験によって、ア
ルミシリンダ表面とメッキ被膜の密着性を確認したとこ
ろ、実施例2ではメッキ被膜にフクレ、ワレとも発生し
なかった。しかし、比較例2ではシリンダウォール部に
3個のフクレと9個のワレが発生し、従来法に比較して
本発明による効果の大きさが確認できた。
【0018】
【表2】
【0019】以上、本実施例においてはアルミ鋳物につ
いて説明したが、アルミ以外の材質でも同様の効果があ
ることは明白であり、形状もシリンダ等の円筒体に限定
されず、メッキや塗装などのコーティングを施す前の前
処理を必要とする全てのものに利用が可能である。ま
た、実施例で使用した処理ツールのローラーの大きさや
数もこの限りではない。
いて説明したが、アルミ以外の材質でも同様の効果があ
ることは明白であり、形状もシリンダ等の円筒体に限定
されず、メッキや塗装などのコーティングを施す前の前
処理を必要とする全てのものに利用が可能である。ま
た、実施例で使用した処理ツールのローラーの大きさや
数もこの限りではない。
【0020】
【発明の効果】上述したように、本発明に係る鋳物及び
そのコーティングの前処理方法によれば、 (1) 加工処理量が少ないため、短時間で処理できる。 (2) 削りくずや切りくず等の廃棄物が発生しないため、
加工処理後の清掃が少なくてすみ、衛生的である。 (3) 従来用いていた砥石やエッチング液等の消耗品が不
要になるため、コスト削減になる。 (4) 鋳物表面を滑らかな波形状に仕上げることができ
る。 (5) 鋳物表面を圧接して塑性変形させるのみの加工であ
るため、前加工の寸法精度を損なうおそれが少ない。 (6) 従来の溶解処理や研磨処理と合わせて行うと、鋳物
の表面層内部の鋳造巣などの空隙を微小化または消失さ
せることができる。
そのコーティングの前処理方法によれば、 (1) 加工処理量が少ないため、短時間で処理できる。 (2) 削りくずや切りくず等の廃棄物が発生しないため、
加工処理後の清掃が少なくてすみ、衛生的である。 (3) 従来用いていた砥石やエッチング液等の消耗品が不
要になるため、コスト削減になる。 (4) 鋳物表面を滑らかな波形状に仕上げることができ
る。 (5) 鋳物表面を圧接して塑性変形させるのみの加工であ
るため、前加工の寸法精度を損なうおそれが少ない。 (6) 従来の溶解処理や研磨処理と合わせて行うと、鋳物
の表面層内部の鋳造巣などの空隙を微小化または消失さ
せることができる。
【図1】本図のうち、(a) は本発明に係る前処理を施す
前の鋳物表面の凹凸形状を示す概念図、(b) は本発明に
係る前処理を施した後の鋳物表面の凹凸形状を示す概念
図、(c) は従来の加工処理を施した後の鋳物表面の凹凸
形状を示す概念図、(d)は従来の加工処理が不足した場
合の鋳物表面の凹凸形状を示す概念図、(e) は従来の加
工処理が過度の場合の鋳物表面の凹凸形状を示す概念図
である。
前の鋳物表面の凹凸形状を示す概念図、(b) は本発明に
係る前処理を施した後の鋳物表面の凹凸形状を示す概念
図、(c) は従来の加工処理を施した後の鋳物表面の凹凸
形状を示す概念図、(d)は従来の加工処理が不足した場
合の鋳物表面の凹凸形状を示す概念図、(e) は従来の加
工処理が過度の場合の鋳物表面の凹凸形状を示す概念図
である。
【図2】本発明に係る前処理装置の平面図である。
【図3】本発明に係る前処理装置の正面図である。
【図4】図2のA−A線による縦断面図である。
【図5】本発明に係る前処理を施す前の鋳物表面近傍の
断面を示す模式図である。
断面を示す模式図である。
【図6】本発明に係る前処理を施している鋳物表面近傍
の断面を示す模式図である。
の断面を示す模式図である。
【図7】本発明に係る前処理を施した後の鋳物表面の断
面を示す模式図である。
面を示す模式図である。
【図8】本発明に係る前処理を施した後の鋳物表面およ
び内部の断面を示す模式図である。
び内部の断面を示す模式図である。
【図9】従来の加工処理を施す前の鋳物表面の断面を示
す模式図である。
す模式図である。
【図10】従来の加工処理を施している鋳物表面の断面
を示す模式図である。
を示す模式図である。
【図11】従来の加工処理を施した後の鋳物表面近傍の
断面を示す模式図である。
断面を示す模式図である。
【図12】従来の加工処理を施した後の鋳物表面および
内部の断面を示す模式図である。
内部の断面を示す模式図である。
1 鋳物表面 2 凸部 3 実線 4 細矢印 5 太矢印(加工量) 6 太矢印(加工量) 7 凹部 8 最高部 9 最低部 10 実線 11 凹部 12 加工量 13 一点鎖線 14 アルミシリンダ 15 処理ツール 16 ローラー 17 鋳物表面 18 矢印 19 軸心方向 20 鋳物表面 21 凹凸 22 鋳物表面 23 鋳物表面 24 鋳物表面 25 鋳造巣
Claims (3)
- 【請求項1】 鋳物表面に部材を圧接して該表面を塑性
変形させることにより上記鋳物表面上の凹凸を小さくす
ることを特徴とする鋳物のコーティングの前処理方法。 - 【請求項2】 鋳物表面に部材を圧接して該表面を塑性
変形させることにより上記鋳物表面上の凹凸を小さく
し、この表面の上にコーティングを施すことを特徴とす
る鋳物のコーティング処理方法。 - 【請求項3】 鋳物表面に部材を圧接して該表面を塑性
変形させることにより上記鋳物表面上の凹凸を小さく
し、この表面に溶解処理または研磨処理を施し、この表
面の上にコーティングを施すことを特徴とする鋳物のコ
ーティング処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9037397A JPH10280185A (ja) | 1997-04-09 | 1997-04-09 | 鋳物のコーティングの前処理方法およびコーティング処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9037397A JPH10280185A (ja) | 1997-04-09 | 1997-04-09 | 鋳物のコーティングの前処理方法およびコーティング処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10280185A true JPH10280185A (ja) | 1998-10-20 |
Family
ID=13996771
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9037397A Pending JPH10280185A (ja) | 1997-04-09 | 1997-04-09 | 鋳物のコーティングの前処理方法およびコーティング処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10280185A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7614272B2 (en) * | 2004-09-17 | 2009-11-10 | Nissan Motor Co., Ltd. | Prespray processing method and prespray processed engine cylinder block |
-
1997
- 1997-04-09 JP JP9037397A patent/JPH10280185A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7614272B2 (en) * | 2004-09-17 | 2009-11-10 | Nissan Motor Co., Ltd. | Prespray processing method and prespray processed engine cylinder block |
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