JPH1026598A - Cr含有オーステナイト合金の鋭敏化評価方法及びその装置 - Google Patents

Cr含有オーステナイト合金の鋭敏化評価方法及びその装置

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JPH1026598A
JPH1026598A JP8180560A JP18056096A JPH1026598A JP H1026598 A JPH1026598 A JP H1026598A JP 8180560 A JP8180560 A JP 8180560A JP 18056096 A JP18056096 A JP 18056096A JP H1026598 A JPH1026598 A JP H1026598A
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alloy
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aqueous solution
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JP8180560A
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English (en)
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Hideya Anzai
英哉 安斎
Shizuka Shimanuki
静 島貫
Kiyotomo Nakada
清智 仲田
Hiroshi Yamauchi
博史 山内
Jiro Kuniya
治郎 国谷
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Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 応力腐食割れとの相関性が従来のものより高
い、Cr含有オーステナイト合金(単に合金という)の鋭
敏化度評価法を提供する。 【解決手段】 (1)合金を水溶液中に浸漬し、電気化学
的に不動態化させた後、合金の電位を不動態電位から腐
食電位に瞬間的に変化させ、ある時間保持し、不動態電
位に戻すと共に保持時間中に合金に流れる最大電流密度
を測定する操作を、保持時間の長さを各種に変えて、繰
り返す測定ステップと、(2)各種保持時間に対する最大
電流密度のプロットから、最大電流密度が上昇し始める
上昇開始時間を求める算定ステップと、(3)粒界Cr濃
度が既知で濃度が各種異なる合金を用いて予め求めた粒
界Cr濃度と上昇開始保持時間との関係を示すデータを
参照して、算定ステップで求めた上昇始点保持時間から
粒界Cr濃度を推定し、濃度が低くなると合金の鋭敏化
度が進行したとする判定ステップとからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粒界Cr欠乏によ
り鋭敏化するオーステナイト合金材料の鋭敏化度の新し
い評価方法に係わり、特にこのようなCr欠乏現象によ
り腐食して、損傷の可能性のある原子力、化学プラント
等の構造物における耐腐食性を評価するのに好適な方法
及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】機器及び構造物の損傷は、重大な事故を
招く可能性のあることから、その防止技術に関し多くの
検討がなされている。さらに現在の構造物の有効利用を
図るため、その寿命をできるだけ延長させようとする方
向にあり、既存の構造物を損傷させることなく、なるべ
く長く稼働する技術が強く望まれている。特に腐食環境
に接する構造物においては、環境によって比較的低い応
力で亀裂が発生、進展する応力腐食割れ(SCC)が問題
となる。SCCは、外見上ほとんど変化がなく徐々に進
行することから検知が困難であり、また定期的な検査の
際これらの発生の恐れのある個所を一つ一つ調べていた
のでは非能率的である。
【0003】SCCは、材料、環境及び応力の3つの要
因がからんだ現象であり、特に材料因子に関してはCr
含有オーステナイト合金でみられる結晶粒界でのCrの
欠乏による鋭敏化が重要である。
【0004】これまで、鋭敏化を検知する技術としてい
くつかの方法が提案されている。このうち、非破壊で実
機に適用できるものとしては、エッチングしてレプリカ
をとる方法や、オーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化
評価に用いられ、JIS規格(JIS G0580)に
もなっている電気化学的再活性化法(EPR法)があげら
れる。これは、被測定金属を所定の水溶液中に浸漬した
後、電気化学的にその金属の電位を腐食電位から不動態
電位域までもってゆき、その状態で十分不動態化させた
後、その電位を不動態電位から腐食電位側に一定速度で
往復変化させ、往時と復時に不動態皮膜の破壊によって
流れる電流を測定し、各時の最大電流密度ia、irから
再活性化率(ir/ia)を%で求め、再活性化率が大き
いほどその金属の鋭敏化度が大きく、粒界腐食感受性が
高いと評価する方法である。
【0005】一方、同じく鋭敏化を生じる代表的なもの
の一つとして固溶強化型Ni基合金Alloy600
(ニッケルクロム鉄合金 JIS NCF600相当)があ
げられる。これについても、同様にEPRによる評価法
が、提案されている(例えば、松島,清水:防食技術、
Vol.32、p.442(1983))。また、これとは
別に、磁気的に鋭敏化を評価する方法も提案されている
(岡田ほか2名:日本金属学会誌,Vol.45、p49
6(1981))。
【0006】このうち現在、鋭敏化度を定量的に評価で
きかつ、実機適用実績のあるものとして、EPR法は、
最右翼に位置している。さらに最近では、その改良なら
びに拡張も進められている。
【0007】特開平6ー201635号公報では、試験
装置の小型化のため、少ない電解液でも鋭敏化度が測定
できるように、パルス的に繰り返し分極することにより
鋭敏化度を評価する方法が提案されている。しかし、鋭
敏化度の評価のやり方としては従来のJISに規定のも
のとと変わらない。
【0008】一方、中性子照射を受けたステンレス鋼に
おいても粒界にCrの欠乏が生じるが、この場合、熱的
に生じる鋭敏化に比べてきわめて幅が狭いことから、従
来方法ではうまく評価できない。これについては、特開
平6ー201635号と同様にパルス的に照射材を分極
した後、腐食された粒界の深さを測定することにより評
価する方法が、特願平6−39616号で、提案されて
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これらEPRの手法
は、金属の結晶粒界においてあるCr濃度以下の部分が
腐食や磁気的特性に反応するため、粒界でのCr欠乏域
の幅の影響を受けるか、あるいは、幅の狭いものに限ら
れるかである。しかしながら、粒界Cr欠乏による応力
腐食割れや粒界腐食が、Cr欠乏の何に最も支配されて
いるかははっきりしていない。例えば、粒界でのCr欠
乏の体積が影響すると判断できる報告や、粒界での最小
Cr濃度が重要とする考え方も提示されているが、いず
れも実証されたわけではない。従って、現在の鋭敏化評
価手法が真に妥当なものかどうかは明確でない。
【0010】本発明の目的は、応力腐食割れとの相関性
のより高い、Cr含有オーステナイト合金の鋭敏化評価
方法及び装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
には、合金の粒界における最低Cr量を評価すれば良
い。粒界のCr分布を示すCr濃度プロファイルは熱処
理条件等種々の条件に影響を受けるため、これまでの方
法のように被測定金属の電位掃引条件を一定として1条
件のみで試験し、その試験結果の評価で粒界における最
小Cr濃度を推定することは困難である。そこで、電位
の変え方を異にする複数条件でそれぞれ試験を行ない、
複数の試験結果で得られる傾向から最小Cr濃度を推定
する方法が妥当である。近年、GoudetとScullyはこの点
に気付き、測定する試験片を種々の電位に保ち、そこで
腐食されている結晶粒界長さを観察することにより最小
Cr濃度分布を求める方法を考案している(Metallurgic
al and Materials Transactions A,vol.25A p775(199
4))。しかし、この方法では粒界長さ測定が必要である
ため、簡便な方法とは言い難い。
【0012】Cr含有オーステナイト合金を不動態化し
た後の電位変化による不動態破壊すなわち再活性化挙動
は、該合金のCr濃度によって異なる。従って、電位変
化の条件を変えて再活性化挙動を評価することでも、粒
界Cr濃度に関する情報を得ることができる。
【0013】条件の変え方には、いくつかの方法が考え
られるが、電位をパルス的に変化させて一定時間その応
答を見る方法が最も効果的であると考えられる。すなわ
ち、一度不動態化した状態からある電位にパルス的に移
動させ、その電位に保持したときの合金の再活性化挙動
は、そのCr濃度に依存する。従って、不動態化した状
態からパルス的に活性態域に電位を移動させ、その保持
時間を変えて、合金の再活性化挙動を調べることによ
り、該合金の結晶粒界における最小Cr濃度を推定する
ことができる。ただし、粒界での最小Cr濃度が既知で
該濃度が各種の材料を用いて、保持時間における再活性
挙動と粒界の最小Cr濃度との関係を予め調べておくこ
とが必要である。このように最小Cr濃度を推定する方
法は、特開平6−201635号公報に示す方法と一見
類似しているが、いわゆる鋭敏化度ではなく、最小Cr
濃度が出力として求まる点で大きく異なっている。
【0014】別の方法としては、合金を不動態化した後
にある掃引速度で腐食電位側に戻したときの再活性化が
現れるCr濃度は、電位掃引速度に依存することを利用
することも考えられる。電位掃引速度とそれによって再
活性化する最大のCr濃度の関係を予め調べておくこと
により、鋭敏化度を調査したい金属について掃引速度を
変え、その応答から、粒界の最小Cr濃度を推定するこ
とが可能である。
【0015】また、本発明の鋭敏化度評価装置は、上記
鋭敏化度評価手法のそれぞれを用いて、自動的に粒界で
の最小Cr濃度を推定するものである。
【0016】本発明の最小Cr濃度を使った評価の方
が、従来型EPR法での鋭敏化度による評価に較べてS
CC感受性を調べる上で精度が向上することを示すため
に、以下の実験を行った。
【0017】実験に用いた材料は炭素量が0.06wt%
のSUS304ステンレス鋼である。この材料を105
0℃で溶体化処理した後、次の2種類の熱処理を行っ
た。 a)621℃×24h b)650℃×24h+950℃×25h+500℃×
xh ここで、x:2および4 a)の熱処理条件はよく用いられる鋭敏化熱処理条件で
ある。一方、b)の熱処理条件は、粒界に極めて幅の狭
いCr欠乏層を生じる熱処理条件である。電界放出型透
過電子顕微鏡(FE−TEM)を用いたエネルギー分散式
X線分析(EDX分析)の結果によれば、a)の熱処理条
件によって、幅約120nm,最小Cr濃度約10wt
%の鋭敏化を生じているのに対し、b)の条件では、幅
約30nm,最小Cr濃度が、xが2hで、約11wt
%の、xが4hで、約9wt%の鋭敏化を生じている。
また、JIS G0580に準じたEPR試験の結果、
各熱処理条件での再活性化率はa)の熱処理条件で、約
20%、b)の条件ではxが2hで約2%、xが4hで
約4%であった。
【0018】これら熱処理材を用いてSCC試験を行っ
た。試験は、予き裂を設けたコンパクトテンション(C
T)試験片を用い、温度288℃、500ppbDO(溶存
酸素)水中で、き裂の開き方向に試験片に荷重をかけ
て、き裂進展速度を測定する方法で行った。なお、き裂
進展速度は直流電位差法でオンラインモニターしたき裂
長さと、時間の関係より平均き裂進展速度として求め
た。
【0019】図1はこのようにして求めたき裂進展速度
と再活性化率(EPR%)との関係を、図2は同様にして
求めたき裂進展速度と粒界最小Cr濃度との関係を示
す。図1では、再活性化率5%の試験片が再活性化率2
0%のそれよりき裂進展速度が高く、粒界腐食感受性の
低い方(再活性化率5%)が高い方(再活性化率20%)よ
り亀裂が進展しやすいという非合理性を示しており、き
裂進展速度とEPR%との相関性は高いとはいえない。
一方、図2に示すように、き裂進展速度と粒界最小Cr
濃度(wt%)の間には、最小Cr濃度が低くなるにつれ
てき裂進展速度が増大するというよい相関性が認められ
る。この結果より、SCC感受性を評価するパラメータ
としては、従来型EPR法での鋭敏化度による評価に較
べて最小Cr濃度の方が精度が向上することが実験的に
示された。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明のCr含有オーステ
ナイト合金の鋭敏化評価方法の実施の形態について詳細
に説明する。 〔実施の形態1〕オーステナイト系Cr−Ni鋼におい
て、Cr濃度の低下につれて再活性化のための時間がよ
り短くなることが知られている。即ちSUS304ステ
ンレス鋼の化学組成をベースにCr濃度を変えた合金を
溶解し、各合金についてJISG0580に示された溶
液中に浸漬して、30℃にて不動態域(560mV S
CE)まで電位をかけて不動態化させたのち、電位−1
40mV SCEまで瞬間的に電位を下げて再活性化す
るまでの時間を調べると、Cr濃度の低下に伴って再活
性化に要する時間が短くなる(H.Yamauchi,Paper presen
ted in International Symposium on Plan Aging and L
ife Prediction of Corrodible Structures,Sapporo,19
95)。したがって、被測定金属を十分不動態化させた
後、その金属の電位を不動態化電位以下に瞬間的に移動
させ、ある時間保持した後もとの電位にもどす操作を2
またはそれ以上繰返し、各操作において保持する時間を
それぞれ変えて不動態破壊過程の変化を測定することに
より、当該金属粒界における最小Cr濃度を推定するこ
とが可能となる。なお、鋭敏化している材料では、粒界
域のみで変化が起こるため、電流感度は、Cr濃度を低
減させた結晶粒界模擬合金の測定感度を基準にして、2
桁以上上げて測定する必要がある。
【0021】図3にその一例を示す。測定に用いた材料
及び熱処理条件は、前項で示したのと同じである。すな
わち、C:0.06%の304ステンレス鋼を1050
℃で溶体化処理(SHT:Solution Heat Treatment)し
た後、 a)621℃×24h、 b)650℃×24h+950℃×25h+500℃×
xh(x:2)、 c)650℃×24h+950℃×25h+500℃×
xh(x:4) の各種熱処理を施したものである。本供試材を、JIS
G0580に規定する溶液(0.5 mol 硫酸+0.01
mol チオシアン酸カリウム)中に浸漬して、不動態域ま
で電位をかけて不動態化させたのち、電位−140mV
SCEまで瞬間的に電位を下げ、その保持時間(パルス
保持時間ともいう)を各種レベルに変えて試験を行っ
た。各供試材は一度不動態化した後、パルス保持時間を
各種異なるレベルに変えて電流密度を測定する一連の試
験に供する。溶液は、電流密度を測定した後にはその都
度新しいものに交換した。なお、試験の繰り返しの回数
およびパルス保持時間は各熱処理条件によって異なって
おり、それぞれ図3に示されたデータ点の数および横軸
の位置に対応している。例えば、黒丸印は熱処理cを施
した試験片を用いて、パルス保持時間が0.1、0.3、
0.6、1、3、6秒である6回の試験で測定した再活
性化電流密度の最大値を示す。このデータでは、電流密
度の最大値が上昇し始める上昇開始保持時間は0.4秒
であり、このパルス保持時間0.4秒より長くなると、
パルス保持時間が長くなるにつれて再活性化電流密度の
最大値が大きくなることが分かる。なお、同一電位、材
料でも電流応答は保持時間依存性があるため、電流密度
は同一材を溶体化して行ったものをバックグラウンドと
してそれを引いた値としている。再活性化電流密度の最
大値が上昇し始める保持時間は、熱処理条件に依存する
ことがわかる。表1にこの立上り点における保持時間か
ら推定される最小Cr濃度と分析による値とを比較して
示す。
【0022】
【表1】
【0023】立上り点におけるパルス時間が概略0.
4、0.9、1.1秒の試験片は、それぞれ最小Cr濃度
の推定値が重量で7.8%、10.5%、10.7%であ
り、最小Cr濃度の実測値は8.8%、10.3%、1
1.0%であった。この方法で、比較的よく最小Cr濃
度を推定できることがわかる。最小Cr濃度の推定値
は、粒界の最小Cr濃度が既知で濃度が異なる各種材料
を用いて予め各種長さのパルス保持時間と最大電流密度
を求め、そして最大電流密度の立上り点となるパルス保
持時間を求めた実験データを基に、算出する。
【0024】ここでは、再活性化電流密度の最大値をも
って比較したが、このほか、再活性化電流密度の積分値
でも、評価可能である。
【0025】〔実施の形態2〕再活性化挙動は、一度不
動態化させたあと、活性態域に電位を下げていく速度を
変えることによっても変化する。図4は、304ステン
レス鋼の化学組成をベースにCr濃度を変えた合金を溶
解し、各合金についてJIS G0580に示す溶液中
に浸漬して、不動態域まで電位をかけて不動態化させた
のち、掃引速度を5条件変えて自然電位まで戻したとき
の再活性化電流密度のピーク値が10mA/cm2以上
になる最大のCr濃度を示したものである。掃引速度条
件は、図4に示すように、100、200、300、4
00、500mV/minの5条件である。Cr濃度の低
下に伴って再活性化電流密度のピーク値が上昇し始める
掃引速度が速くなることがわかる。
【0026】図5にその一例を示す。測定に用いた材料
は、実施の形態1におけると同じく、C:0.06%の
304ステンレス鋼を1050℃で溶体化処理した後、
熱処理a、b、cを施した3種類である。本供試材を、
JIS G0580に示された溶液中に浸漬して、不動
態域(300mV SCE)まで電位をかけて不動態化
させたのち、自然電位まで電位を下げ、その掃引速度レ
ベルを変えて繰返し試験を行ったものである。溶液は、
各種電位掃引速度で電流密度を測定した後、その都度新
しいものに交換した。ここでは、粒界近傍だけでCrが
欠乏していることを考慮し、電流密度が0.1mA/c
2をしきい値としている。なお、試験の繰り返しの回
数および掃引速度は各熱処理条件によって異なってお
り、それぞれ図5に示されたデータ点の数および横軸の
位置に対応している。例えば黒丸印は、熱処理cを施し
た試験片を用いて、電位掃引速度を450、400、3
50、300、250mV/minの5レベルの試験で測
定した再活性化電流密度の最大値を示す。電流密度の最
大値が上昇し始める上昇開始掃引速度は400mV/mi
nであって、電位掃引速度が400mV/minより小さく
なるにつれて再活性化電流密度の最大値が大きくなる。
そして再活性化電流密度の最大値がこのしきい値より上
昇し始める掃引速度は、熱処理条件に依存することがわ
かる。表2にこの立上り点における掃引速度から推定さ
れる最小Cr濃度と分析による値とを比較して示す。
【0027】
【表2】
【0028】電位掃引速度レベルを順次低下させて再活
性化電流密度の最大値を測定した時、再活性化電流密度
の最大値の立上り点となる電位掃引速度が400、35
0、350となる試験片は、それぞれ最小Cr濃度の推
定値が重量で8.2%、9.6%、10.5%であり、最
小Cr濃度の実測値は表1でも示したように、8.8
%、10.3%、11.0%であった。推定値はやや高め
の値を与えるが、この方法で、比較的よく最小Cr濃度
を推定できることがわかる。最小Cr濃度の推定値は、
粒界の最小Cr濃度が既知で濃度が異なる各種材料を用
いて予め各種掃引速度と再度活性化電流密度の最大値を
求め、そして立上り点となる掃引速度を求めた実験デー
タを基に、算出する。
【0029】ここでは、再活性化電流密度の最大値をも
って比較したが、このほか、再活性化電流密度の積分値
でも、評価可能である。
【0030】実施の形態1および2にのべた方法は、N
i基合金についても適用可能である。ただし、試験液に
ついては0.1〜0.25 mol H2SO4+0.001 mol
KSCN溶液が適当とされている(松島、清水:防食
技術,Vol.32,p.442,1983)。
【0031】〔実施の形態3〕図6は、本発明による鋭
敏化度評価法測定装置の構成例を示す。本装置は、測定
金属部材6を底蓋にして内部に電解液を満たす分極セル
3、分極セル3内の電解液の温度を測定する温度計4、
底蓋の金属部材6と分極セル3の接触面に設けたパッキ
ン5、電解液中に挿入されて基準電位を規定する照合電
極1、電解液中で測定金属部材6とともに分極回路を形
成する対極2、測定金属部材6に電位を印加するポテン
ショスタット12、分極セル3に供給する電解液を貯え
るタンク10、タンク10中の電解液を分極セル3に送
るポンプ9、分極セル3から排出される電解液を受け入
れる廃液タンク11、照合電極1に対して測定金属部材
6の電位を測定する電位計E、対極2及び測定金属部材
6を含む分極回路に流れる電流を測定する電流計A、上
記各機器の制御および最小Cr濃度を演算するコンピュ
ータ13より構成される。コンピュータ13は、ポテン
ショスタット12を実施の形態1のようにパルス保持時
間を各種レベルに変えるプロセス、あるいは実施の形態
2のように電位掃引速度を各種レベルに変えるプロセス
に従い制御すると共に、測定金属部材6に印加するパル
ス時間それぞれまたは掃引速度それぞれでの分極で得ら
れた電流等のデータから最小Cr濃度を推定する演算機
能を有する。測定部の構造は、基本的には既に実用化さ
れているフィールドEPR測定装置と同様である。使用
するポテンショスタット12の性能は市販されているも
ので十分である。
【0032】図7は本装置のコンピュータ13の画面イ
メージを示す。測定時の情報及び測定方法を選択すると
測定結果及び推定される最小Cr濃度が画面上に表示さ
れる。画面左上部には鋭敏化評価の対象となる材料、選
択した測定方法等を示し、画面左下部には各パルス保持
時間における電流密度の過渡応答を示すイメージを示
す。画面右下部には、各パルス時間における過渡応答か
ら求まる最大電流密度をパルス保持時間に対してプロッ
トしたイメージを示し、この電流の立上り点のパルス時
間を基にあらかじめコンピューター内部に蓄えてあるデ
ータベースから、そのパルス時間で立ち上がるCr濃度
を参照して求めた最小Cr濃度の推定値を画面右上に表
示するようにした例である。
【0033】
【発明の効果】本発明により、これまでその物理的意味
があいまいであったEPR法においてより物理的且つ実
際のSCC挙動により密接に関連したパラメータを導く
ことができ、耐食性評価の精度が向上する効果が期待で
きる。すなわち、Cr含有オーステナイト合金の鋭敏化
度を、パラメータとして該合金の粒界における最小Cr
濃度を用いて評価し、この最小Cr濃度は、合金の電位
を不動態電位から腐食電位に瞬間的に変化させて該腐食
電位に保持する各種長さの保持時間と各種保持時間中に
合金に流れる最大電流密度とのプロットから求めるの
で、あるいは合金の電位を不動態電位から腐食電位に掃
引する速度を各種レベルに変化させて各種掃引速度と各
種掃引速度で合金に流れる最大電流密度とのプロットか
ら求めるので、精度の高い値を得ることができ、Cr含
有オーステナイト合金の鋭敏化度の評価をより精度良く
行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SUS304ステンレス鋼のEPR%とSCC
試験における該鋼のき裂進展速度との関係を示す図であ
る。
【図2】SUS304ステンレス鋼の粒界最小Cr濃度
とSCC試験における該鋼のき裂進展速度との関係を示
す図である。
【図3】SUS304ステンレス鋼の鋭敏化材の電気化
学的活性化におけるパルス保持時間と該鋼に流れる最大
電流密度との関係を示す図である。
【図4】SUS304ステンレス鋼の鋭敏化材の電気化
学的活性化における電位掃引速度と該電位掃引速度で検
出可能な該鋼のCr濃度の関係を示す図である。
【図5】SUS304ステンレス鋼の鋭敏化材の電気化
学的活性化における電位掃引速度と該鋼に流れる最大電
流密度との関係を示す図である。
【図6】本発明による鋭敏化度評価法測定装置のシステ
ム構成例を示す図である。
【図7】本発明による鋭敏化度評価法測定装置のコンピ
ュータ画面イメージを示す図である。
【符号の説明】
1 照合電極 2 対極 3 試験液保持容器 4 温度計 5 液漏れ防止パッキン 6 被測定構造物 7 試験液導入パイプ 8 使用済試験液排出パイプ 9 試験液供給ポンプ 10 試験液タンク 11 使用済試験液タンク 12 ポテンショスタット 13 御コンピューター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山内 博史 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 国谷 治郎 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr含有オーステナイト合金を該合金の
    粒界を腐食させる水溶液中に浸漬し、電気化学的に該合
    金の電位を腐食電位から不動態電位域までもってゆき不
    動態化させた後に、該合金の電位を不動態電位から粒界
    が腐食する電位域に瞬間的に変化させてある時間だけ保
    持し再び不動態電位に戻すと共に該保持時間中に該合金
    に流れる最大電流密度を測定する操作を、保持時間の長
    さレベルを各種に変えながら、繰り返す測定ステップ
    と、各種保持時間に対する最大電流密度のプロットか
    ら、該最大電流密度が上昇し始める上昇開始保持時間を
    求める算定ステップと、粒界Cr濃度が既知で該濃度が
    各種異なるオーステナイト合金を用いて予め求めた粒界
    Cr濃度と上昇開始保持時間との関係を示すデータを参
    照して、算定ステップで求めた上昇始点保持時間から粒
    界Cr濃度を推定し、該粒界Cr濃度から該合金の鋭敏
    化度を判定する判定ステップとからなり、かつ最大電流
    密度の測定後に水溶液を新しく交換して次の測定を行う
    ことを特徴とするCr含有オーステナイト合金の鋭敏化
    評価方法。
  2. 【請求項2】 測定ステップで保持時間を短いレベルか
    ら長いレベルに順次変える請求項1記載のCr含有オー
    ステナイト合金の鋭敏化評価方法。
  3. 【請求項3】 Cr含有オーステナイト合金を該合金の
    粒界を腐食させる水溶液中に浸漬し、電気化学的に該合
    金の電位を腐食電位から不動態電位域までもってゆき不
    動態化させた後に、該合金の電位を不動態電位から腐食
    電位近傍まである速度で掃引し再び不動態電位に戻すと
    共に該掃引中に該合金に流れる最大電流密度を測定する
    操作を、掃引速度を各種に変えて繰り返す測定ステップ
    と、各種掃引速度に対する最大電流密度のプロットか
    ら、該最大電流密度が上昇し始める上昇開始掃引速度を
    求める算定ステップと、粒界Cr濃度が既知で該濃度が
    各種異なるオーステナイト合金を用いて予め求めた、粒
    界Cr濃度と上昇開始掃引速度との関係を示すデータを
    参照して、算定ステップで求めた上昇開始掃引速度から
    粒界Cr濃度を推定し、該粒界Cr濃度から該合金の鋭
    敏化度を判定するステップとからなり、かつ最大電流密
    度の測定後に水溶液を新しく交換して次の測定を行うこ
    とを特徴とするCr含有オーステナイト合金の鋭敏化評
    価方法。
  4. 【請求項4】 測定ステップで掃引速度を高いレベルか
    ら低いレベルに順次変える請求項3記載のCr含有オー
    ステナイト合金の鋭敏化評価方法。
  5. 【請求項5】 Cr含有オーステナイト合金の粒界を腐
    食する水溶液を満たす分極セルと、水溶液に接するCr
    含有オーステナイト合金部材と、水溶液の温度を測定す
    る温度計と、水溶液中でCr含有オーステナイト合金部
    材とともに分極回路を形成する対極と、Cr含有オース
    テナイト合金部材に電位を印加するポテンショスタット
    と、水溶液中にあって基準電位を規定する照合電極と、
    分極セルに供給する水溶液を貯えるタンクと、タンク中
    の電解液を分極セルに送るポンプと、照合電極に対して
    Cr含有オーステナイト合金部材の電位を測定する電位
    計と、分極回路に流れる電流を測定する電流計と、ポテ
    ンショスタットを介してCr含有オーステナイト合金部
    材の電位を電気化学的に不動態電位までもってゆき不動
    態化させた後に、該合金の電位を不動態電位から粒界が
    腐食する電位域に瞬間的に変化させてある時間だけ保持
    し再び不動態電位に戻すと共に、該保持時間中に該合金
    に流れる最大電流を電流計により測定する操作を、保持
    時間の長さレベルを各種に変えながら繰り返し、各保持
    時間後にポンプを駆動して分極セル中の水溶液をタンク
    からの水溶液で新しく入れ替えるよう制御する制御装置
    と、各保持時間中に電流計で測定した最大値とCr含有
    オーステナイト合金部材が水溶液に接する面積から最大
    電流密度を計算し、各保持時間に対する最大電流密度を
    プロットし、最大電流密度が上昇し始める上昇開始保持
    時間を算出すると共に、内部に記憶したデータ、すなわ
    ち粒界Cr濃度が既知で該濃度が各種異なるオーステナ
    イト合金を用いて予め求めた粒界Cr濃度と上昇開始保
    持時間との関係を示すデータを参照して、算定した上昇
    始点保持時間から粒界Cr濃度を推定し、該粒界Cr濃
    度からCr含有オーステナイト合金部材の鋭敏化度を判
    定するコンピュータと、を備えたCr含有オーステナイ
    ト合金の鋭敏化評価装置。
  6. 【請求項6】 Cr含有オーステナイト合金の粒界を腐
    食する水溶液を満たす分極セルと、水溶液に接するCr
    含有オーステナイト合金部材と、水溶液の温度を測定す
    る温度計と、水溶液中でCr含有オーステナイト合金部
    材とともに分極回路を形成する対極と、Cr含有オース
    テナイト合金部材に電位を印加するポテンショスタット
    と、水溶液中にあって基準電位を規定する照合電極と、
    分極セルに供給する水溶液を貯えるタンクと、タンク中
    の電解液を分極セルに送るポンプと、照合電極に対して
    Cr含有オーステナイト合金部材の電位を測定する電位
    計と、分極回路に流れる電流を測定する電流計と、ポテ
    ンショスタットを介してCr含有オーステナイト合金部
    材の電位を電気化学的に不動態電位までもってゆき不動
    態化させた後に、該合金の電位を不動態電位から腐食電
    位近傍にある速度で掃引し再び不動態電位に戻すと共に
    該掃引中に該合金に流れる最大電流を電流計により測定
    する操作を、掃引速度のレベルを各種に変えながら繰り
    返し、各掃引後にポンプを駆動して分極セル中の水溶液
    をタンクからの水溶液で新しく入れ替えるよう制御する
    制御装置と、各掃引中に電流計で測定した最大値とCr
    含有オーステナイト合金部材が水溶液に接する面積から
    最大電流密度を計算し、各掃引速度に対する最大電流密
    度をプロットし、最大電流密度が上昇し始める上昇開始
    掃引速度を算出すると共に、内部に記憶したデータ、す
    なわち粒界Cr濃度が既知で該濃度が各種異なるオース
    テナイト合金を用いて予め求めた粒界Cr濃度と上昇開
    始掃引速度との関係を示すデータを参照して、算定した
    上昇開始掃引速度から粒界Cr濃度を推定し、該粒界C
    r濃度から該合金の鋭敏化度を判定するコンピュータ
    と、から構成したCr含有オーステナイト合金の鋭敏化
    評価装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105973970A (zh) * 2016-04-29 2016-09-28 河海大学常州校区 一种检测奥氏体不锈钢腐蚀敏感性的方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105973970A (zh) * 2016-04-29 2016-09-28 河海大学常州校区 一种检测奥氏体不锈钢腐蚀敏感性的方法
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