JPH10213822A - 3次非線形光学材料およびその製造方法 - Google Patents

3次非線形光学材料およびその製造方法

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JPH10213822A
JPH10213822A JP32656997A JP32656997A JPH10213822A JP H10213822 A JPH10213822 A JP H10213822A JP 32656997 A JP32656997 A JP 32656997A JP 32656997 A JP32656997 A JP 32656997A JP H10213822 A JPH10213822 A JP H10213822A
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nonlinear optical
order nonlinear
absorption
thin film
metal oxide
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JP32656997A
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Masanori Andou
昌儀 安藤
Susumu Sakaguchi
享 阪口
Tetsuhiko Kobayashi
哲彦 小林
Seiichi Tejima
成市 手嶋
Yoshinobu Asako
佳延 浅子
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Nippon Shokubai Co Ltd
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
Agency of Industrial Science and Technology
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 (1)3次非線形感受率が大きいこと、
(2)動作波長領域における透明度が高い(吸収が少な
い)こと、および(3)緩和が非常に速い材料であっ
て、酸化分解等の経時劣化に対する耐候性、組成変化等
の熱的劣化などに対する耐熱性、レーザー光に対する化
学的・熱的安定性(耐光性)、人体に対する安全性およ
び製造時の加工性に優れた3次非線形光学材料を提供で
きる。 【解決手段】 金属酸化物を透明高分子中に含有してな
る3次非線形光学材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長変換、光双安
定現象、位相共役波発生などを特徴とする3次非線形光
学特性に優れた3次非線形光学材料およびその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、2次非線形光学材料は、波長変換
素子などの光デバイスとしての用途が考えられている。
これまで、2次非線形光学材料としては、リン酸二水素
カリウムやニオブ酸リチウムなど無機結晶が用いられて
いるが、これらの物質は、単結晶などの状態で用いられ
ていることが多く、加工性に乏しいため素子化が困難で
あった。
【0003】また、3次非線形光学材料は、超高速光ス
イッチ、光双安定素子、位相補正素子および波長変換素
子などの光デバイスとしての用途が考えられている。こ
れまで、金や銀などの金属微粒子、CdSなどの非酸化
物半導体微粒子または3次非線形光学効果を示す有機化
合物を用いた3次非線形光学材料については、より高性
能な、すなわち、(1)3次非線形感受率が大きいこ
と、(2)動作波長領域における透明度が高い(吸収が
少ない)こと、および(3)応答速度が速いこと、を満
たす材料の開発が行われてきた。
【0004】ここでいう応答速度とは、上記光デバイス
を繰り返して動作させる場合に、1回の動作に必要とさ
れる時間を意味する。したがって、応答速度が短い程、
1秒間により多く繰り返し動作できることになる。一般
的に、効果が発現するまでの時間よりも、生じた効果が
完全に(あるいは効果の累積の影響が無視できる程度ま
で)消失するまでにかかる時間の方が長いので、後者の
緩和時間が短い材料の開発が重要になる。
【0005】この分野における従来の技術としては、Ap
plied Physics A, Vol.47, p.347 (1988) に記載されて
いる溶融法による金微粒子分散ガラス、Material Resea
rchSociety Symposium Proceedings, Vol.283, p.903
(1993)に記載されているイオン注入法による金微粒子分
散ガラスがある。溶融法を用いる場合、溶融できる金属
種に制限があり、また、ガラスへの金属の溶解度も制限
される。材料の3次非線形光学特性はガラス中に含有さ
れる金属の濃度に比例するので、溶解度の制限は材料の
3次非線形光学特性の限界を意味する。また、高濃度化
が可能なイオン注入法を用いても、6.3原子%程度以
上の割合で含有させることは困難である。また、Materi
al Research Society Symposium Proceedings, Vol.28
3, p.903(1993)に記載されているように、金微粒子分散
ガラスには3次非線形光学効果に遅い緩和成分が認めら
れ、M.J. Bloemer et al., J. Opt. Soc. Am. B, 7, p.
790 (1990)によると、これは金微粒子の格子振動の遅い
緩和に起因すると考えられている。さらに、ガラス中に
分散された金属イオンを金属微粒子として析出させるた
めには熱処理が必要であり、複雑な工程を必要とするた
め、加工性は良いとはいいがたい。
【0006】このように、導体である金微粒子分散ガラ
スの場合には、金属の高濃度化が困難で、高温での熱処
理が必要であり、さらには、Applied Physics Letter,
Vol.64, No.25, p.20 (1994)に記載されているように、
ガラスマトリックスと金微粒子との熱膨張率が異なるた
め、界面の秩序が乱れるなどの問題がある。
【0007】また、 J. Opt. Soc. Am., 73, p.647 (19
83) に記載されているように、CdSx Se1-x の微粒
子をホウケイ酸ガラスに分散したカットオフフィルター
を3次非線形光学薄膜に用いる提案がされている。この
カットオフフィルターガラスは、ホウケイ酸ガラス原料
とCdSx Se1-x とを白金るつぼに入れ、1000℃
程度の温度で溶融し作製している。この場合、溶融時に
半導体構成成分の一部が蒸発し、組成が変化してしまう
という問題がある。また、Journal of Materials Scien
ce : Materials in Electronics, 4 (1993) p.59-61 に
記載されているように、CdS等の半導体微粒子は、3
次非線形光学効果の低下や黒化現象を起こしやすく、ま
た、酸化分解により硫黄を析出するなど安定性に問題が
ある。さらには、人体に有害なカドミウムを含むため安
全性にも問題があり、高温に加熱溶融する必要があるこ
とからも加工性がいいとは言いがたい。
【0008】一方、高温での熱処理による弊害を避ける
ために、CdS微粒子を高分子中に分散させる技術が特
開平4−189801号、特開平5−184913号公
報に開示されている。光照射しながらCdSの生成反応
を行い、表面が高分子で被覆されたCdS粒子を得、さ
らにはその粒子をフィルム状にする技術が開示されてい
る。
【0009】しかしながら、CdS自身が酸化分解しや
すいため微粒子の安定性が経時的に悪化するという難点
がある。
【0010】これらの微粒子分散体においては、絶縁体
中に分散した金などの導体粒子、またはCdSなどの半
導体粒子は、電子と正孔、あるいは励起子が3次元的に
閉じ込められることにより、大きな3次非線形光学特性
や励起子の超放射、結晶界面反応の特異性が出現するこ
とが期待できる。この量子サイズ効果を十分に引き出す
ためには、分散させる微粒子の大きさが量子サイズ効果
が発現するのに十分小さい、すなわち500nm、好ま
しくは100nm以下であること、粒径分布が狭いこ
と、および粒子の分散状態ができるだけ良好であること
が必要である。
【0011】また、Nature, vol.374, No.6523. pp625-
627 には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Niの
アルキルカルボン酸塩の熱分解により作製した酸化物薄
膜が大きな3次非線形光学効果を示すことが開示されて
いる。
【0012】また、特開平7−284516号公報に記
載されているように、Al2 3 、ZnO、ZrO2
らなる群から選ばれる添加成分を含有し、V、Cr、M
n、Fe、Co、NiおよびCuからなる群から選ばれ
てなる遷移金属酸化物の薄膜が提案されている。しかし
ながら、Al2 3 、ZnO、ZrO2 などを添加した
としても薄膜製造には高温加熱が必要であり、薄膜製造
が容易であるとは言い難い。また、これらの添加成分
は、薄膜の構造安定性や機械的強度を向上させる働きが
あるだけであり、3次非線形光学効果を改善する格別な
効果はない。
【0013】また、Polymer, Vol.34, No.6 (1993) pp.
1174-1178 には、ポリ(p−フェニレンビニレン)(P
PV)/シリカ複合体およびPPV/V2 5 複合体の
構造、特性(3次非線形感受率など)などが開示されて
いる。該文献の「INTRODUCTION」に記載さ
れているように、該文献中には、本来3次非線形光学効
果が発現するPPVにシリカまたはV2 5 を配合する
ことにより、PPVの3次非線形光学効果が改善される
旨の記載がある。しかしながら、シリカあるいはV2
5 自体が3次非線形光学効果を発現することについては
全く記載されていない。また、PPV自体は不溶不融で
あるため製膜は困難である。したがって、その前駆体で
ある水溶性スルホン酸塩を用いて予め製膜しておき、そ
の膜を熱分解してPPVにする必要がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、これらの
従来の技術の有する加工性の問題を解決し、さらには緩
和速度を改善するものである。具体的には、遷移金属酸
化物を透明高分子中に含有させることにより、加工性に
優れ、また、緩和速度が従来の材料に比べ速い材料を提
供するものである。
【0015】したがって、本発明の目的は、新規な3次
非線形光学材料を提供することにある。
【0016】本発明の他の目的は、(1)3次非線形感
受率が大きいこと、(2)動作波長領域における透明度
が高い(吸収が少ない)こと、および(3)緩和速度が
速いことを満たす材料であって、酸化分解等の経時劣化
に対する耐候性、組成変化等の熱的劣化などに対する耐
熱性、レーザー光に対する化学的・熱的安定性(耐光
性)、人体に対する安全性および製造時の加工性に優れ
た3次非線形光学材料を提供するものである。
【0017】本発明のさらに他の目的は、量子サイズ効
果を十分に発揮することのできる3次非線形光学材料を
提供するものである。
【0018】本発明の別の目的は、材料成分として使用
(ないし任意選択)し得る種類が豊富で、製造上の制約
に起因する材料性能への影響を受けず、緩和速度の速い
3次非線形光学材料を提供するものである。
【0019】本発明の他の目的は、上記諸目的を満足す
る3次非線形光学材料の製造方法として、複雑な処理、
操作を要せず、高温加熱や溶融等の熱処理を必要としな
い、加工性に優れた3次非線形光学材料の製造方法を提
供するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記諸目的は、下記
(1)〜(7)により達成される。
【0021】(1) 金属酸化物を透明高分子中に含有
してなる3次非線形光学材料。
【0022】(2) 動作波長における該透明高分子の
吸収が全体の吸収の10%以下である上記(1)に記載
の3次非線形光学材料。
【0023】(3) 該透明高分子の電気伝導度が10
-10 S・cm-1以下の絶縁性高分子である上記(1)ま
たは(2)に記載の3次非線形光学材料。
【0024】(4) 該金属酸化物が248nm以上に
吸収を有するものである上記(1)〜(3)のいずれか
一つに記載の3次非線形光学材料。
【0025】(5) 該金属酸化物が粒径500nm以
下の微粒子である上記(1)〜(4)のいずれか一つに
記載の3次非線形光学材料。
【0026】(6) 透明基板上に、上記(1)〜
(5)のいずれか一つに記載の3次非線形材料の薄膜を
形成してなる3次非線形光学材料。
【0027】(7) 金属酸化物と透明高分子とが溶解
または分散した液から溶媒または分散媒体を200℃以
下で留去することよりなる3次非線形光学材料の製造方
法。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明による3次非線形光学材料
は、金属酸化物を透明高分子中に含有してなるものであ
る。
【0029】本発明で用いられる金属酸化物は、248
nm以上において、好ましくは350nm以上、より好
ましくは500nm以上に吸収を持ち、レーザー光を照
射したときに3次非線形光学効果を発現するものであれ
ばよい。上記波長に吸収を有し、レーザー光を照射した
ときに3次非線形光学効果を発現する金属酸化物では、
バンドギャップ近傍のレーザー光を照射することにより
励起状態のキャリア密度が顕著に増大し、飽和吸収を起
こして屈折率が変化する、いわゆるバンドフィリング現
象によって3次非線形光学効果が発現すると考えられ
る。そのためバンドギャップの大きさに応じてレーザー
波長を選択すればよいので、本発明の金属酸化物として
適用し得る種類は極めて多いといえる。なお、金属酸化
物が248nm未満にしか吸収を持たない場合には、こ
れに対応して3次非線形光学効果を発現させるレーザー
光の動作波長が248nm未満となり、レーザー光が透
明高分子に吸収されるため、好ましくない。また、透明
高分子によるレーザー光の吸収を少なくして透明高分子
に損傷を与えないようにするためにも、金属酸化物は3
50nm以上に吸収を有しかつレーザー光を350nm
以上の波長で動作させることが好ましい。
【0030】よって、上記金属酸化物の種類としては、
248nm以上に吸収を持つものであれば特に制限され
るものではないが、好ましくは、d電子を有する金属の
酸化物、より好ましくは第4から第6周期のIIIa、I
Va、Va、VIa、VIIa、VIII 、IbおよびIIb
族の遷移金属元素を含んでなる金属の酸化物、さらに好
ましくは、大きな3次非線形光学効果を示す第4周期遷
移金属元素であるSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、
Co、NiおよびCuからなる群より選ばれた少なくと
も1種の遷移金属の酸化物である。
【0031】上記金属の酸化物においては、その金属の
酸化状態に特に制限はなく、具体的には、例えば、Cr
2 3 、MnO2 、MnO4 、Fe2 3 、Fe
3 4 、CoO、Co2 3 、Co3 4 、CuO、N
iO、V2 5 およびVO2 などを1種もしくは2種以
上混合して用いることができる。または、これらの複合
酸化物を用いることもできる。複合酸化物としては、V
とNb、Taなどとの類似した結晶構造の酸化物を形成
する同族元素の複合酸化物、VとCo、Cuなどとの大
きな3次非線形光学効果を示すもの同士の複合酸化物、
透明性を改善することを目的としてVとZrのように3
次非線形光学効果を示すものと3次非線形光学効果への
寄与が比較的小さいものとの複合酸化物を用いることが
でき、例えば、MnCo2 4 、NiCo2 4 、Ni
MnCo4 8 、ZrV2 7 、V3 Zr3 7 、V3
Ti6 17およびZn3 3 8 などが例示できる。ま
た、複合酸化物は単独の酸化物同士が分離した部分
(相)を含んでいてもよい。さらに、本発明で用いられ
る金属酸化物の種類としては、例えば、V2 5 ・H2
OおよびVO2 ・H2 Oのような酸化バナジウムの水和
物などを用いることもできる。
【0032】また、本発明で用いられる金属酸化物は、
透明高分子中に微粒子の形態で均一に分散されているこ
とにより、量子サイズ効果が発現し、振動子強度や3次
非線形感受率が増大する。また、量子サイズ効果が発現
することにより吸収の立上がりが急峻になり、吸収スペ
クトルがブルーシフトする。さらに、吸収端近傍のレー
ザー光を用いることにより最小限の光吸収により3次非
線形光学効果を発現できるので、緩和速度が速くなると
考えられる。以上の理由から、金属酸化物の形態として
は、大きさが小さい方が好ましいと考えられ、好ましく
は粒径1μm以下の微粒子、より好ましくは、500n
m以下、さらに好ましくは100nm以下の微粒子であ
ることが望ましい。
【0033】本発明の3次非線形光学材料では、従来の
技術のように、その製造過程で、例えば、1000℃以
上に加熱し溶融する必要がないため、材料の組成が変化
することなく金属酸化物微粒子と透明高分子の界面の秩
序が保たれ、また、透明高分子中に含有させた金属酸化
物に欠陥が生じにくいという利点を有する。また、化学
的に安定な金属酸化物を用いるのでレーザー光に対して
も安定である。
【0034】3次非線形光学材料中の金属酸化物粒子の
観察、同定には、通常知られている手法、例えば、X線
回折による分析や、材料の薄膜切片の透過電子顕微鏡に
よる観察、また、薄膜表面の走査プローブ顕微鏡による
観察などを用いることができる。また、本発明に係る3
次非線形光学材料では、可視−紫外吸収スペクトルか
ら、微粒子分布に関して以下の情報を得ることができ
る。一般に、粒子径が小さくなることにより電子と正
孔、あるいは励起子の量子サイズ効果が出現する。この
結果、粒子径が小さくなるにつれて粒子の光吸収の開始
波長が短波長側へ移動し、それに伴い電子遷移に対応し
た吸収スペクトル帯は波長に対して鋭いピーク形状にな
って来ることが知られている。
【0035】例えば、NEW GLASS. Vol.4, No.2, p.18
(1989) に記載されているように、量子サイズ効果が発
現する場合、下記数式(1)
【0036】
【数1】
【0037】だけ最低状態のエネルギーが高くなり、そ
れに伴い吸収の開始波長がブルーシフトする。したがっ
て、吸収スペクトルの開始波長のシフトより、上記数式
(1)を用いて粒子径の大きさを見積もることができ
る。
【0038】本発明の透明高分子とは、動作波長から、
少なくとも100nm、好ましくは200nm短波長側
までの範囲に、実質的に吸収が認められない高分子をい
う。ここで、実質的な吸収とは、単位厚みあたりの吸収
の大きさで比較した時に、高分子の吸収が金属酸化物の
吸収の10%以下であることをいう。本発明の透明高分
子中に、金属酸化物を含有させることにより、効率よく
量子サイズ効果が発現し、3次非線形感受率が増大し、
緩和速度が速くなる。
【0039】動作波長において、透明高分子が吸収を有
する場合には、3次非線形光学効果を発現させるための
光が透明高分子に吸収されて減衰するなどの悪影響があ
り、また、動作波長の近辺(200nm短波側までの範
囲)に吸収を有する場合には、量子サイズ効果の効率が
低下するなどの不具合が生じる。
【0040】したがって、本発明の透明高分子は、動作
波長から、少なくとも100nm、好ましくは、200
nm短波長側までの領域に、実質的に吸収が認められな
いことが必要である。
【0041】次に、本発明で使用される透明高分子に関
しては、電気伝導度が高いと材料の共役電子の励起に基
づく着色が強くなり、光学的透明性に劣る場合が多い。
また、動作波長において透明高分子が強い吸収を有する
場合には、高分子のエネルギーギャップが小さく、金属
酸化物の光吸収により生じた電子と正孔、あるいは励起
子の量子サイズ効果が発現しにくく、量子サイズ効果に
よる3次非線形光学効果の増大が期待できない。また、
同様の理由で、3次非線形光学効果の緩和が遅くなる。
また、光吸収により生じた電子と正孔が透明高分子へ移
動し透明高分子が分解あるいは酸化される可能性がある
ため好ましくない。
【0042】したがって、本発明で用いる透明高分子と
しては、電気伝導度が10-10 S・cm-1以下、より好
ましくは10-12 S・cm-1以下であることが望まし
い。電気伝導度の測定は、圧縮ペレット試料またはフィ
ルム試料に直流4端子法を用いて行うことができる。ま
た、本発明で使用される透明高分子は、動作波長におい
て透明であり、金属酸化物との相溶性が良いものが好ま
しいが、高分子の動作波長における吸収が全吸収の動作
波長における吸収の10%以下であることがより好まし
い。金属酸化物の分散性が悪い場合、金属酸化物が透明
高分子中で凝集し光散乱が大きくなり光学材料としての
性能が低下する恐れがあるためである。さらに、透明高
分子中に含有されてなる金属酸化物が長期にわたって安
定に分散された状態を保つためには、透明高分子のガラ
ス転移温度は高い方が好ましい。
【0043】したがって、本発明に用いることのできる
透明高分子としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチ
レン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ポリプロ
ピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネー
ト、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポ
リビニルメチルエーテル、ポリエチレンテレフタレート
若しくはポリ塩化ビニルなど透明性に優れているものが
好ましく、なかでも、ガラス転移点が比較的高く耐熱性
に優れたポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン
などが好ましく、これらの透明高分子を任意の割合で混
合して用いることもできる。
【0044】また、上記透明高分子を溶媒中において金
属酸化物と混合する場合には、溶媒可溶性の高分子が好
ましく、架橋により不溶化できることがさらに好まし
い。
【0045】さらに、透明高分子を含有させた本発明の
3次非線形光学材料では、その製造過程において、金属
酸化物の透明高分子に対する分散性を向上させるため
に、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性などの各種界
面活性剤を添加することができる。
【0046】さらにまた、透明高分子を含有する本発明
の3次非線形光学材料を用いて光導波路などのデバイス
化を行おうとする場合には、高分子としては感光性樹
脂、熱硬化性樹脂が特に好適である。具体的には、感光
性樹脂としては、例えば、PVA、ノボラック樹脂、ア
クリル酸系樹脂、エポキシ樹脂等に、ケイ皮酸残基、
カルコン残基、アクリル酸残基、ジアゾニウム塩
残基、フェニルアジド残基、o−キノンアジド残基
のような感光基を、、では光二量化により、では
光重合により、、では光分解によりそれぞれ導入す
ることで得られる、分子間架橋による光不溶化型(ネガ
型)の感光性高分子、およびでは光分解により導入す
ることで得られる、アルカリ水溶液に可溶な光可溶型
(ポジ型)の感光性高分子などが挙げられる。また、熱
硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン
樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホル
ムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アニリン
樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキ
シ樹脂のほかに、ジエチレングリコールビスアリルカー
ボネートなどが挙げられる。
【0047】上記透明高分子に金属酸化物を含有、好ま
しくは均一に分散された状態で含有させるには、溶媒中
で金属酸化物と高分子を混合してもよいし、または高分
子が溶融する温度で金属酸化物を含有させる方法を用い
てもよい。溶媒中で金属酸化物を混合する場合、金属酸
化物の種類は、酸化物の水和物であることが好ましい。
また、透明高分子が溶融する温度において金属酸化物を
分散状態で含有させる場合においても、透明高分子をガ
ラスの場合のように高温で加熱溶融する必要がないた
め、金属酸化物に欠陥が生じたり、界面の秩序が乱され
る心配もない。
【0048】本発明に係る3次非線形光学材料中の金属
酸化物と透明高分子との割合には特に制限はないが、透
明高分子は金属酸化物を含有、好ましくは均一に分散さ
せた状態で含有させるためのマトリックスであり、3次
非線形光学効果の発現には寄与しないため、金属酸化物
の割合は高いほどよい。しかしながら、金属酸化物の分
散状態を向上させるためには、最低限量の透明高分子が
必要であるため、金属酸化物の割合は、材料全体の1〜
99重量%、好ましくは5〜80重量%、さらに好まし
くは10〜70重量%である。また、透明高分子の割合
は、材料全体の1〜50重量%が、さらには5〜30重
量%が好ましい。
【0049】また、本発明に係る3次非線形光学材料の
形態は、その使用用途に応じて、任意の形状に加工する
ことができるものであり、金属酸化物の微粒子を分散状
態で含有してなる透明高分子を、例えば、機械的にカッ
トしたり、圧延や延伸、溶融、射出成形したりしてレン
ズ、ファイバーなどに加工された形態、ガラス基板上に
スピンコート、ディップコーティングなどの方法で薄膜
を形成した形態、反応性エッチング、フォトリソグラフ
ィなどの方法を用いて素子に加工した形態で用いること
ができるが、もちろんこれらの形態に限定されるもので
はない。
【0050】また、光素子化を行う場合の好ましい形態
としては、透明基板上に形成された薄膜の形態が挙げら
れるが、この場合の好ましい膜厚としては、10nm〜
20μm、好ましくは100nm〜10μmである。
【0051】上記透明基板としては、動作波長における
基板の吸収が、全体の吸収の5%以下、好ましくは3%
以下である。上記透明基板の種類としては、溶融石英基
板や合成石英ガラス基板、アルミノケイ酸ガラス基板な
どのシリカガラス系基板、MgO、α−Al2 3 、S
rTiO3 などの単結晶基板などが挙げられ、また、透
明基板の大きさには特に制限なく用いることができ、透
明基板の厚みは10μm〜1mmのものを用いることが
できる。
【0052】次に、本発明の3次非線形光学材料の製造
方法としては、特に制限されるものでなく、例えば、溶
媒中で金属酸化物と透明高分子を混合してもよいし、透
明高分子が溶融する温度で金属酸化物を分散させる方法
を用いてもよいが、好ましいのは、金属酸化物と透明高
分子とが溶解または分散した液から溶媒または分散媒体
を200℃以下で留去して製造する方法である。これに
より、高分子マトリックスに金属酸化物を均一に分散し
た状態で含有させることができ、さらに複雑な処理、操
作を要せず、また従来の技術のように、例えば、100
0℃以上に高温加熱や溶融などの熱処理をする必要がな
いため、その加工性に優れ、また得られる材料中の金属
酸化物と透明高分子の界面の秩序が保たれ、材料に欠陥
が生じにくいという利点を有するものである。
【0053】本発明の製造方法に使用できる溶媒ないし
分散媒体としては、金属酸化物と透明高分子を所望の割
合で溶解ないし分解できるものであればよい。このよう
な溶媒ないし分散媒体としては、溶解極性パラメーター
40以上の比較的極性が大きく水混和性である溶媒が好
ましい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プ
ロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、ア
セトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、アセトニ
トリル、プロピルニトリルなどのニトリル類、ジオキサ
ンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチル
スルフォキシドなどが挙げられ、これらを任意の比率で
混合して用いることができる。なかでも、常圧における
沸点が250℃以下、好ましくは200℃以下であるこ
とが好ましい。
【0054】また、3次非線形光学材料を製造する際に
は、金属酸化物と透明高分子とが溶解または分散した液
から溶媒または分散媒を留去すればよく、(減圧)蒸留
など公知の方法を用いることができる。
【0055】溶媒または分散媒を留去するには、その気
圧における媒体の沸点以上に加熱する必要があるが、必
要に応じて減圧下で加熱することにより比較的低温で3
次非線形光学材料を製造することができ、好ましくは溶
媒または分散媒を留去する温度は200℃以下、圧力は
760mmHg〜10mmHgである。
【0056】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的
に説明する。本発明で用いた測定法は下記の通りであ
る。
【0057】(1) 3次非線形感受率の測定 位相共役光型縮退4光波混合法を用いた。測定には、N
d:YAGレーザーの第2高調波(波長:532nm、
パルス幅:40psec)を用いた。試料の3次非線形
感受率χ(3) は同一光学系における基準物質(CS2
に対する反射率Rの比から下記数式(2)を用いて算出
した。
【0058】
【数2】
【0059】ここで、Lは3次非線形光学材料の厚さ、
nは屈折率、下付きSは試料、下付きCS2 は二硫化炭
素、Qは下記数式(3)で定義される補正係数である。
【0060】
【数3】
【0061】ここで、Tは試料の透過率である。
【0062】(2) 位相共役光強度の測定(応答の緩
和速度の算出) Materials Research Society Symposium Proceeding, V
ol.283, p903-908 (1993) に記載されているように、縮
退4光波混合法においてバックワードポンプ光の入射時
間を遅延させて位相共役光強度を測定し、応答の緩和速
度を求めた。
【0063】(3) 薄膜中の微粒子(分散体)の粒子
径の測定 走査型プローブ顕微鏡(SPM:ナノスコープ、デジタ
ルインスツルメンツ社)で薄膜表面を観察し、薄膜中の
微粒子(分散体)の粒子径を測定した。
【0064】(4) 吸光度の測定 下記の機器および条件により行った。
【0065】 ・測定機器:島津分光光度計 UV−3100(島津製
作所株式会社製) ・測定条件:室温、波長送り速度 200nm/mi
n、スリット幅 5.0nmで吸光度の測定を行った。
【0066】(5) 高分子(ポリマー)の吸収算出 下記の手順に従って行った。
【0067】動作波長(532nm)において、あら
かじめ、高分子(ポリマー)の単位厚みあたりの吸収を
求める(A1)。
【0068】次に、材料全体の吸収を測定し、同様に
単位厚みあたりの材料の吸収を求める(A2)。
【0069】ここで、A1の吸収がA2の吸収の10%
以下である場合、高分子(ポリマー)の吸収が材料全体
の吸収の10%以下となる。
【0070】参考例1 イオン交換樹脂(ダウエックス50W−8)をカラムに
充填し、4M塩酸で洗浄することによりH+ 置換型イオ
ン交換樹脂を得た。バナジン酸アンモニウム17.5g
(0.15モル)を蒸留水1000gに溶解した後、こ
の溶液をH+ 置換型イオン交換樹脂に通し、流出液を得
た。カラム流出液を室温で24時間以上放置してポリバ
ナジン酸を含んでなる溶液(1)を得た。
【0071】参考例2 溶液(1)をガラス基板上にスピンコートして、比較薄
膜(1)を得た。SPMで比較薄膜(1)の表面を観察
することで、粒子径約400nmの微粒子からなる薄膜
であることがわかった。また、図1に示す様に、比較薄
膜(1)は、350nm以上に吸収を有していた。
【0072】参考例3 バナジン酸アンモニウムの代わりにタングステン酸アン
モニウム5水和物を用いる以外は参考例1と同様にして
溶液(2)を得た。溶液(2)をガラス基板上にスピン
コートして、比較薄膜(2)を得た。SPMで比較薄膜
(2)の表面を観察することで、粒子径約30nmの微
粒子からなる薄膜であることがわかった。
【0073】参考例4 2−エチルヘキサン酸亜鉛(亜鉛8重量%)1.0gに
n−ブタノール7.0gを添加混合した。この溶液を用
いてガラス基板上にスピンコート膜を形成し、室温で1
時間放置した後、380℃で2時間焼成して比較薄膜
(3)を得た。SPMの表面観察およびX線回折分析に
より、比較薄膜(3)は、粒子径5nmの酸化亜鉛微粒
子からなる薄膜であることがわかった。
【0074】参考例5 ポリ(ビニルメチルエーテル)メタノール溶液(P10
07:東京化成工業株式会社製,固形分50重量%)を
さらにメタノールで固形分5重量%にまで希釈し、該希
釈液をガラス基板上にスピンコートし、80℃で30分
間乾燥させて、比較薄膜(4)を得た。比較薄膜(4)
の紫外−可視吸収スペクトルを測定したところ、330
nm以上に吸収は認められなかった。すなわち、動作波
長である532nmより200nm短波長側まで実質的
な吸収は認められなかった。
【0075】参考例6 ポリ(ビニルメチルエーテル)の圧縮ペレット試料を作
成し、直流4端子を用いて電気伝導度を測定したところ、
4×10-12 S・cm-1であった。
【0076】実施例1 参考例1で調製した溶液(1)を固形分5重量%まで濃
縮した溶液20gとポリ(ビニルメチルエーテル)メタ
ノール溶液(P1007:東京化成工業株式会社製,固
形分50重量%)をさらにメタノールで固形分5重量%
にまで希釈したもの20gとを混合し、室温で1時間攪
拌し、ポリマー混合液(1)を得た。ポリマー混合液
(1)をガラス基板上にスピンコートし、80℃で30
分間乾燥させて、金属酸化物である酸化バナジウム水和
物(V2 5 ・nH2 O)を透明高分子であるポリビニ
ルメチルエーテルに含有させてなる3次非線形光学材料
の薄膜(1)を得た。なお、薄膜(1)は、高温加熱す
る必要がなく、非常に容易に作成することができた。
【0077】薄膜(1)の表面をSPMにより観察する
ことにより、薄膜(1)では、ポリビニルメチルエーテ
ル中に粒子径約400nmの微粒子が分散状態で含まれ
ていることがわかった。
【0078】薄膜(1)および参考例2で得られた比較
薄膜(1)の吸収スペクトルを図1に示す。薄膜(1)
は比較薄膜(1)と比較すると吸収の立ち上がりが急峻
になり、吸収開始波長がブルーシフトしていることがわ
かった。
【0079】また、薄膜(1)の動作波長(532n
m)において、透明高分子の吸収は実質0であり、薄膜
(1)全体の吸収の10%以下であった。また、薄膜
(1)は350nmにおいては、図1に示すように吸収
を有していた。
【0080】さらに、薄膜(1)と比較薄膜(1)の3
次非線形感受率を測定し、性能指数(χ(3) /α(αは
吸収係数を表す))を算出した。表1より、薄膜(1)
の性能指数(χ(3) /α)は4.4×10-13 esu・
cmであり、比較薄膜(1)とほぼ同じであり、吸収が
少なく大きな3次非線形光学効果を示すことがわかっ
た。
【0081】薄膜(1)と比較薄膜(1)につき、サン
プルに到達するレーザーパルスを遅延させて位相共役光
強度を測定し、緩和速度を求めた。表1より、薄膜
(1)は比較薄膜(1)に比べて大幅に速い緩和を示す
ことがわかった。
【0082】
【表1】
【0083】以上の結果より、酸化バナジウム水和物を
透明高分子に分散状態で含有させることによって、吸収
の立ち上がりが急峻になり吸収端がブルーシフトした。
3次非線形感受率の測定により、薄膜(1)は大きな3
次非線形光学効果を示すと共に効果が消失するまでの緩
和時間が大幅に速くなることがわかった。
【0084】実施例2 イオン交換樹脂を通して5時間後に得られた溶液を用い
ること以外は実施例1と同様にして、金属酸化物である
酸化バナジウム水和物を透明高分子であるポリビニルメ
チルエーテルに含有させてなる3次非線形光学材料の薄
膜(2)を得た。なお、薄膜(2)は、高温加熱する必
要がなく、非常に容易に作成することができた。
【0085】薄膜(2)の表面をSPMにより観察する
ことにより、薄膜(2)では、ポリビニルメチルエーテ
ル中に粒子径約200nmの微粒子が分散状態で含まれ
ていることがわかった。
【0086】薄膜(2)の吸収スペクトルは、薄膜
(1)と同様に吸収の立ち上がりが急峻になっており、
吸収端は薄膜(1)よりもブルーシフトしていた。
【0087】また、薄膜(2)の動作波長(532n
m)において、透明高分子の吸収は実質0であり、薄膜
(2)全体の吸収の10%以下であった。また、薄膜
(2)は350nmにおいては吸収を有していた。
【0088】実施例3 タングステン酸アンモニウム5水和物を用いる以外は実
施例1と同様にして、金属酸化物である酸化タングステ
ン水和物(WO3 ・nH2 O)をポリビニルメチルエー
テルの透明高分子に含有させてなる3次非線形光学材料
の薄膜(3)を得た。なお、薄膜(3)は、高温加熱す
る必要がなく、非常に容易に作成することができた。
【0089】薄膜(3)の表面をSPMにより観察する
ことにより、薄膜(3)では、ポリビニルメチルエーテ
ル中に粒子径約30nmの微粒子が分散状態で含まれて
いることがわかった。
【0090】薄膜(3)の吸収スペクトルは、参考例3
で調製した比較薄膜(2)の吸収スペクトルと比較して
吸収端がブルーシフトしていた。
【0091】また、薄膜(3)の動作波長(532n
m)において、透明高分子の吸収は実質0であり、薄膜
(3)全体の吸収の10%以下であった。また、薄膜
(3)は、350nmにおいては吸収を有していた。
【0092】実施例4 撹拌機、滴下口、温度計、還流冷却器を備えた500m
lのガラス製反応器中で、酢酸80g、イオン交換水8
0gの混合溶媒に酸化亜鉛粉末15gを添加した後、撹
拌しながら100℃まで昇温することにより、亜鉛含有
溶液を得た。
【0093】次に、撹拌機、滴下口、温度計、留出ガス
出口を備えた1リットルのガラス製反応器に2−ブトキ
シエタノール700gを仕込み、内温を153℃まで加
熱昇温し保持した。これに、100℃に保持された上記
亜鉛含有溶液を、定量ポンプにより30分かけて滴下し
た。滴下終了後、内温を168℃まで昇温し、5時間加
熱保持することにより、白色の分散液を得、エバポレー
タで不揮発分10重量%まで濃縮して分散体を得た。こ
の分散体5gにアクリル系樹脂溶液(アロセット521
0:株式会社日本触媒製,固形分45重量%)1gを添
加し、室温で1時間攪拌して、ポリマー混合液を得た。
この溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、金属酸
化物である酸化亜鉛微粒子を透明高分子であるアクリル
系ポリマーに含有させてなる3次非線形光学材料の薄膜
(4)を得た。なお、薄膜(4)は、高温加熱する必要
がなく、非常に容易に作成することができた。
【0094】SPMで薄膜(4)の表面を観察すること
により、薄膜(4)では、アクリル系ポリマー中に粒子
径5nmの酸化亜鉛微粒子が分散状態で含まれているこ
とがわかった。
【0095】また、薄膜(4)の吸収スペクトルは、参
考例4で得られた比較薄膜(3)の吸収スペクトルと比
較すると吸収の立ち上がりが急峻になり、吸収開始波長
がブルーシフトしていることがわかった。
【0096】さらに、薄膜(4)の動作波長(532n
m)において、透明高分子の吸収は実質0であり、薄膜
(4)全体の吸収の10%以下であった。また、薄膜
(4)は、350nmにおいては吸収を有していた。
【0097】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の3次非線
形光学材料は、金属酸化物を透明高分子中に含有してな
ることを特徴とするものである。したがって、本発明の
3次非線形光学材料によれば、(1)3次非線形感受率
が大きいこと、(2)動作波長領域における透明度が高
い(吸収が少ない)こと、および(3)緩和が非常に速
い材料であって、酸化分解等の経時劣化に対する耐候
性、組成変化等の熱的劣化などに対する耐熱性、レーザ
ー光に対する化学的・熱的安定性(耐光性)、人体に対
する安全性および製造時の加工性に優れた3次非線形光
学材料を提供できるため、3次非線形光学材料として、
超高速光スイッチ、光双安定素子、位相補正素子および
波長変換素子などの光デバイスに幅広く利用できるもの
である。
【0098】本発明の3次非線形光学材料の製造方法で
は、金属酸化物と透明高分子とが溶解または分散した液
から溶媒または分散媒体を200℃以下で留去して製造
するため、高分子マトリックスに金属酸化物を均一に分
散した状態で含有させることができ、さらに複雑な処
理、操作を要せず、また従来の技術のように高温加熱や
溶融などの熱処理をする必要がないため、その加工性に
優れ、また得られる材料中の金属酸化物と透明高分子の
界面の秩序が保たれ、材料に欠陥が生じにくいという利
点を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における3次非線形光学材
料である薄膜(1)および参考例2における比較薄膜
(1)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阪口 享 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 工業技 術院大阪工業技術研究所内 (72)発明者 小林 哲彦 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 工業技 術院大阪工業技術研究所内 (72)発明者 手嶋 成市 茨城県つくば市観音台1丁目25番地12 株 式会社日本触媒内 (72)発明者 浅子 佳延 茨城県つくば市観音台1丁目25番地12 株 式会社日本触媒内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属酸化物を透明高分子中に含有してな
    る3次非線形光学材料。
  2. 【請求項2】 動作波長における該透明高分子の吸収が
    全体の吸収の10%以下である請求項1に記載の3次非
    線形光学材料。
  3. 【請求項3】 該透明高分子の電気伝導度が10-10
    ・cm-1以下の絶縁性高分子である請求項1または2に
    記載の3次非線形光学材料。
  4. 【請求項4】 該金属酸化物が248nm以上に吸収を
    有するものである請求項1〜3のいずれか一つに記載の
    3次非線形光学材料。
  5. 【請求項5】 該金属酸化物が粒径500nm以下の微
    粒子である請求項1〜4のいずれか一つに記載の3次非
    線形光学材料。
  6. 【請求項6】 透明基板上に、請求項1〜5のいずれか
    一つに記載の3次非線形材料の薄膜を形成してなる3次
    非線形光学材料。
  7. 【請求項7】 金属酸化物と透明高分子とが溶解または
    分散した液から溶媒または分散媒体を200℃以下で留
    去することよりなる3次非線形光学材料の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010138793A3 (en) * 2009-05-29 2011-03-03 Corning Incorporated Irradiation treatment of glass

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