JPH10212545A - 疲労強度に優れたブレーキディスク材 - Google Patents

疲労強度に優れたブレーキディスク材

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JPH10212545A
JPH10212545A JP9032625A JP3262597A JPH10212545A JP H10212545 A JPH10212545 A JP H10212545A JP 9032625 A JP9032625 A JP 9032625A JP 3262597 A JP3262597 A JP 3262597A JP H10212545 A JPH10212545 A JP H10212545A
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Rikiya Inoue
力弥 井上
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    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
    • F16D65/00Parts or details
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の高速化などと共にブレーキディスク材
の疲労強度の向上が要求される。 【解決手段】 従来、ブレーキディスク材として定評の
固定したNi,Cr,Mo添加の低合金の片状黒鉛系鋳
鉄材(NCM鋳鉄)に、Sn+Sb+Cuの合計を0.
01〜0.50,Al:0.01〜0.10をさらに添
加して微細層の基地を形成し、かつ、C重量%+[4.
23−(Si重量%/3.2)]で算出される炭素飽和
度(Sc値)を0.82〜0.91の範囲とした。第三
の指標として管理の媒体に選んだSc値については、耐
熱亀裂性において少なくともNCM鋳鉄の水準またはそ
れ以上を維持できることと、引張り・圧縮疲労限におい
てNCM鋳鉄を凌駕できることが両立する範囲から限定
し、複雑に錯綜した耐熱亀裂性、引張り強さ、引張り・
圧縮疲労限の各要素間の理想的な平衡関係を特定した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鉄道車両用などとし
て適用され、特に疲労強度のレベルアップが求められる
ブレーキディスク材に係る。
【0002】
【従来の技術】鉄道車両用などのディスクブレーキ方式
に適用されるブレーキディスク材としては、瞬間的に相
手材であるブレーキシュー(たとえばCu系焼結合金材
或はレジン系ライニング材)との高圧下の摺動作用によ
って急熱急冷を繰り返すというきわめて異常な使用条件
に耐え得ることが最も重要な要件であり、繰り返し熱負
荷を受けることによって摺動面の材質的な耐性を超えて
微細な熱亀裂が発生する。この熱亀裂は通常、ブレーキ
ディスク材が円板状に成形されていることから、車軸が
挿通する中央を中心とした円周方向に対して放射状に漸
次伸張していくのが一般的な傾向であり、亀裂の長さと
深さが限度を越せばブレーキディスク自体を分断する虞
れが否定できないから、定期的な検査において亀裂の深
さと長さと本数とを測定し、あらかじめ設定された検査
基準値に達すると廃棄処分にして新品と交換するように
定めている。
【0003】一方ブレーキディスク材は実車の各車輪を
両側から挾圧する形で装着されているから、ブレーキ操
作を行なう度に繰り返し熱応力が集中する箇所が特定す
るという形状的な特徴もある。この場合、たとえばボル
ト締結部などの固定部分に応力が集中することは物理的
に避けられず、熱応力の集中が繰り返されるとその部分
を中心とした金属疲労が蓄積して疲労割れなどの欠陥と
して顕われることも金属学の原則として常に警告される
ケースに相当する。
【0004】一方、ブレーキディスク材としては、耐熱
歪み性も具えていることも必要条件の一つであり、繰り
返し急熱、急冷によって永久変形が現われ本来平滑な円
盤状に加工した摺動面に反りが生じると、均一な面接触
を妨げブレーキ特性に著しい低下が始まるから、この点
もまたブレーキディスク材として選択の条件を限定する
一つの要素に挙げられる。ブレーキディスク材として要
求される性質はこのように複雑に関連し合っているか
ら、単一の条件で整理することは難しいが、これらの要
素を中軸に据えて最良のブレーキディスク材を模索すれ
ば、結局、現在実用化されているブレーキディスク材と
して鋳鉄材を主体に採用され、その鋳鉄材をベースとし
て短所を矯め、長所を伸すために数々の開発と実験が繰
り返し継続されてきた経緯が窺える。
【0005】最も代表的なブレーキディスク材として旧
国鉄の在来線および新幹線の車両に適用されてきた材質
は、旧国鉄規格・JRS番号12209号−1に基づく
普通鋳鉄(以下「FC280」という)と、同・JRS
番号12209−2に基づくNi,Cr,Moを適量添
加した低合金鋳鉄(以下「NCM鋳鉄」という)とが挙
げられる。何れも片状黒鉛系鋳鉄に分類され、制動時に
適切、かつ、安定した摩擦係数と低摩耗特性を示し、鋳
鉄系であるから経済的にも有利であり、主としてFC2
80は在来線に、また、NCM鋳鉄は新幹線の開通当初
から独占的に適用され材質的な要因に基づく事故を招く
ことなく高い信頼性の元に長期間専用的に使用されてき
た。
【0006】ブレーキディスクとして実用化されている
片状黒鉛系鋳鉄の中でも現時点において最も評価の高い
ブレーキ特性を具えているのがNCM鋳鉄である。NC
M鋳鉄の材料的な特徴から優れたブレーキ特性を関連付
けてみると、この材料の組織中の片状黒鉛の形状は意図
的に大きく成長させているので、制動時の熱応力を吸収
しまたは緩衝する作用が優れ、一方、黒鉛成長に伴う機
械的性質の低下をNi,Cr,Moの添加によって強化
させ、耐熱亀裂性と機械的性質の両機能を他の片状黒鉛
系鋳鉄よりも優越させて、従来の在来線がFC280材
を主体としていた実態から一歩進めて、車両高速化に伴
うブレーキディスク材として相応しい材質に改変した点
に画期的な進展があったと認められる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】今日の鉄道事業の趨勢
を見ると明らかに長距離の列車運行については航空機と
の激しい競合に曝され、一層の高速化、一層の快適性、
一層の安全性が生残るための唯一の手段となり、さらに
車両各部材の消耗更新に伴う運転経費の優劣もJR民営
化への移行と共に重要なキーポイントとなっている。ブ
レーキ操作についても非常停止ブレーキ速度の高速化、
走行性安定化のためのブレーキ操作の多用が進むから使
用条件が苛酷となる上、経済性を重視して取り替え期間
の延長が求められて、苛酷な条件下における耐用期間の
延長という二重の技術的課題に直面した状態にある。
【0008】このようなブレーキ操作はブレーキディス
ク材を直撃する熱負荷を増大して摺動面に発生する熱亀
裂の増加に拍車をかけると共に、ブレーキディスクの形
状因子から熱応力が繰り返し集中する部位、すなわち、
取り付け箇所であるボルト締結部などの疲労割れも問題
視されるようになった。このようにブレーキディスク材
のブレーキディスク特性の向上、具体的にはより苛酷な
条件に曝されたブレーキディスクの耐熱亀裂性を向上
し、疲労破壊を抑止して経済的にも競合に耐え得る材質
の開発が急務とされ、既に以前から試みられたNCM鋳
鉄をベースとしてさらに向上したブレーキディスク材の
開発を目的とした従来技術も含めると、かなりの改善策
が提示され公開されているのは事実である。
【0009】片状黒鉛系鋳鉄材に属するブレーキディス
ク材のブレーキ特性の向上としては、基地の強化と黒鉛
形状の変更の二つの流れが従来技術の主体となっている
ように解釈される。たとえば特公昭47−1872号公
報はNCM鋳鉄と総称される低合金鋳鉄の先鞭を付けた
原点となる公開技術と解されるが、片状黒鉛鋳鉄材とし
ての成分範囲へ重量%にしてNi:1.0〜2.0,C
r:0.3〜0.6,Mo:0.3〜0.5を添加し、
溶湯を1500〜1600℃まで昇温して黒鉛核をほぼ
消失した白銑状とした上で、出湯時にCa−Si,Fe
−Siを溶湯に添加(接種)して擬片状黒鉛組織とする
ことを示している。しかし、ブレーキディスク材の耐熱
亀裂性として擬片状黒鉛形状、たとえば芋虫状のバーミ
キュラー鋳鉄が片状黒鉛よりも優れているという見解に
対しては最近の研究や実績から見ても必ずしも同意でき
ない。
【0010】一方、鋳鉄基地の強度や靱性を高めて耐熱
亀裂性の向上に結び付けようとする開発はブレーキディ
スク材改善の主流を占め、前記のNCM鋳鉄をベースと
した多数の手段が開示されている。たとえば、特開平7
−127675号公報の従来技術では、Ni:1.50
〜3.00,Mo:1.0〜2.5,Ce:0.01〜
0.03,V:0.2〜0.30(各重量%)の成分に
よってベイナイト基地に多量の片状黒鉛を析出したブレ
ーキディスク材を提案し、高強度の基地と片状黒鉛の析
出によって耐熱亀裂性を向上したと謳っている。
【0011】一方、特開昭59−133347号公報で
はNi:2.0〜4.0,Mo:1.0〜3.0,V:
0.35以下,Ce:0.04以下(各重量%)の成分
によって基地組織の微細化などの強化を図り耐熱亀裂性
の向上を図ったとある。その他、片状黒鉛鋳鉄にNi,
Moを添加し冷却能の高い鋳型に注湯しさらに高温で型
ばらしをするか、冷却能の低いの鋳型に注湯して常温で
型ばらしをするなど鋳込みや型ばらしの条件を変えて基
地組織を自由に制御しようとする特開平6−65673
号公報、早ばらしによるマルテンサイト+ベイナイト組
織の基地とする特公昭59−22780号公報、または
オーステナイト+ベイナイト組織とする特開昭60−1
57528号公報、オーステンパー処理によってベイナ
イト組織とする特開昭64−62412号公報など多岐
に亘る。
【0012】しかしながら、このように単に鋳鉄基地の
強度の向上によって結果的に耐熱亀裂性に直接結び付く
のであれば、基地の強化に焦点を絞ってより有効な技術
的手段を試みればよい筈であるが、事実は必ずしもその
ような短絡的な関係になく、基地強化によって、確実に
耐熱亀裂性の向上に直結するという保証はない。前記の
従来技術の一部には、材料の疲労限の向上が耐熱亀裂性
の向上と完全に整合するという前提に立って実験を進め
た例もあるが、鋳鉄材は一方で熱衝撃を吸収する片状黒
鉛の存在が不可欠であり、他方で黒鉛が一種の減摩材の
働きを果たして耐摩耗性も優れ、その代りに基地を強化
するほど高硬度となって耐衝撃性が劣化して脆性が増大
し亀裂の進行を促進するという背反する両面を併せ具え
ているから、単なる基地の強化が直ちに耐熱亀裂性の向
上に直結するとは限らない。より慎重に第三の変数を媒
体としてその引張り強さ、引張り・圧縮疲労限および耐
熱亀裂性間の複雑な規範を律することが課題解決の要件
となる。
【0013】材力の強化だけで課題が解決するのであれ
ば、近年試行されている鍛鋼製のブレーキディスクが最
も他に優越するという推理も成り立つ。しかしながら、
この場合には疲労強度と耐熱亀裂性については明らかに
鋳鉄系よりも優位に立つことが予想できる反面、ブレー
キ作用中の摩擦係数の不安定さや使用の繰り返しと共に
顕著な累積永久変形が避けられないことも容易に推定で
きるから、ますます高速化する車両のブレーキディスク
として一概に高い評価は下し難く、片状黒鉛の存在が熱
衝撃を緩衝し、一種の減摩材の働きも具える特性を根拠
とする原理原則から照合すれば、俄かには推奨し難い重
要な難点を潜在する可能性も払拭し切れない。
【0014】本発明は以上の観点に立ったブレーキディ
スク材の開発の歴史から、従来技術として最も安定した
評価を得ているNCM鋳鉄を原点におき、すべての従来
技術とは異なる媒体を介して複雑な相関を平衡させた理
想的な材料成分の誘導によって課題を解決する新規なブ
レーキディスク材の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明に係る疲労強度に
優れたブレーキディスク材は、重量%にしてC:3.1
0〜3.45,Si:1.10〜1.50,Mn:0.
60〜1.00,Ni:1.00〜2.00,Cr:
0.30〜0.60,Mo:0.30〜0.50,P:
0.16以下,S:0.12以下の他、Sn+Sb+C
uの合計を0.01〜0.50,Al:0.01〜0.
10を含んで残部がFeからなり、かつ、炭素飽和度
(Sc値)=C重量%+[4.23−(Si重量%/
3.2)]で算出される炭素飽和度が0.82〜0.9
1の範囲に限られることによって前記の課題を解決し
た。
【0016】前記各構成元素のブレーキディスク材とし
て具備すべき機能との関連から含有量の上限、下限の限
定理由を説明する。 C:3.1重量%以下の場合には黒鉛化促進元素であ
るAlを添加しているもののブレーキディスク材のフィ
ン部(ブレーキディスクは放熱性を高めるために摺動面
の反対側に多数の放射状フィンを設ける)などの薄肉部
がチル化し易く、変形抵抗の低下や耐熱亀裂性が劣化
し、逆に3.45重量%を越えると炭素飽和度(以下単
に「Sc値」という)のバランスが後に具体的に述べる
ように崩れて黒鉛量が過大に失し、材料の引張り強さが
明確に低下して引張り・圧縮疲労限の改善に逆行する原
因を形成する。 Si:Sc値との関連でCと同様の挙動を示し、含有
量が1.0重量%未満のときはチル化し易く、変形抵抗
の低下や耐熱亀裂性の劣化を誘発する。逆に1.50重
量%を越えると、黒鉛量が過大となって引張り強さが低
下して引張り・圧縮疲労限の改善が不可能となる。 Mn:0.60重量%未満のときは溶湯の脱硫、脱酸
が不十分となり、1.00重量%を越えるとチル化の傾
向を示しブレーキディスク材としての耐熱亀裂性、耐熱
歪み性が劣化する。 P:0.16重量%を越えるとリンの共晶物を生成し
て脆化を生じるので同値を上限に定める。 S:0.12重量%を越えると結晶粒界にSが偏析し
て脆化の原因となるので同値を上限に定める。
【0017】本発明に係るブレーキディスク材の原点は
NCM鋳鉄を出発点とする。よってNCM鋳鉄と同様の
合金成分の添加は基本的な前提である。 Ni:1.00重量%未満のときは基地組織のパーラ
イトが粗大化して引張り強さの低下を来し、逆に2.0
0重量%を越えると基地組織がマルテンサイトし易くな
りNCM鋳鉄の特徴である耐熱亀裂性に悪影響が及ぶ。 Cr:パーライトを微細化し高温強度の維持に効果が
あるが、炭化物形成能が高いため0.60重量%を越え
ると炭化物が析出して引張り・圧縮疲労限が低下する。 Mo:パーライト組織の微細化による高温強度の向上
の他に、少量添加でも熱伝導性を増大して熱応力抑制に
有効であるが、0.50重量%を越えると黒鉛化を阻害
し、かつ、炭化物を形成して耐熱亀裂性を劣化させる原
因となるので同値を以て上限と定める。
【0018】本発明の技術的特徴の一つは従来技術のブ
レーキディスク材のレベルを凌駕するブレーキ特性を得
る点にあり、具体的には少なくとも従来のNCM鋳鉄の
保有する卓抜した耐熱亀裂性は維持したままでさらに引
張り強さと引張り・圧縮疲労限とがバランスよく向上し
て鉄道車両の高速化とブレーキディスク制動の頻発化に
対応しようとする点にある。そのために従来技術には認
められない新しい添加成分と、新しい指標による要素間
の相対的な管理手法を導入したことを特徴とするが、ま
ず、添加成分から説明する。 Sn,Sb,Cuの中から選ばれた1種または2種以
上の成分であって、その合計量が0.01から0.50
重量%を含むことを特徴とする。Sb,Snは0.01
%程度の単独添加でも微細層状パーライトの安定化に著
しい効果を示すことが既に知られている。また、Cuは
黒鉛化促進元素であることはよく知られているが、さら
にMnと共存させた場合には、パーライトの安定化元素
として作用することも知られている。しかし、これらの
成分を多量に添加したときには、脆性のある化合物が形
成され、衝撃値など靱性の低下を来すので複合添加の上
限を0.50重量%に限定した。 Al:この元素は黒鉛化促進元素として顕著な作用を
示すことが周知であるが、他の成分、とくにC,Siお
よびその含有量によって決定されるSc値との関連性を
十分に考慮しなければならない。すなわち、比較的Sc
値を低いレベルに抑制した上でなお、所望の片状黒鉛の
形状を維持するためには0.01%以上の添加を要件と
するが、多量の添加は脆化の原因となるので0.10%
を上限に定めた。
【0019】既に述べたように高速車両に使用するブレ
ーキディスク材のブレーキ特性の開発は、単に各成分元
素の上限、下限を提示しただけで決められるものではな
い。ブレーキ特性は引張り強さと引張り・圧縮疲労限と
耐熱亀裂性との複雑な相関性から誘導すべきであり、単
純な成分限定と、単純な物理的試験によってだけ評価す
ると、必ず実車に使用したテストとの乖離に苦しむこと
は必定である。出願人は豊富なブレーキディスク材の開
発と実地テストとの関連性を知り尽くした長い経験を活
かして、第三の指標として鋳物材の原点にあるSc値に
着目し、後述する多くの模擬的な確性テストを繰り返し
た後、驚くべき傾向を見出したが、この認識は未だかっ
て何人によっても予想されなかった全く新規な技術的所
見である。課題解決の手段としてきわめて独創的な試験
結果を纏めた原則は次の通りである。なお、かかる原則
に到達する根拠となったデータは、次項の実施形態にお
いて明示する。
【0020】本発明の基本的な目標はあくまで従来技術
として最も安定した評価のあるNCM鋳鉄を上回るブレ
ーキ特性を具えた新材質の開発である。すなわち、新材
質の評価はすべてSc値との比較に基づいて行なうこと
を基準とする。図2は横軸にSc値、縦軸に引張り強さ
をプロットした関係図であり、本発明材は何れのSc値
においても従来技術の代表であるNCM鋳鉄を凌駕する
こと、並びにその中でもSc値の増加と共にほぼ直線的
に比例して引張り強さが低下し続けることが確認され
る。
【0021】図1では横軸に引張り強さ、縦軸に引張り
・圧縮疲労限をプロットした関係図であり、本発明は何
れの引張り強さにおいてもNCM鋳鉄を凌駕し、同一値
の引張り強さであっても引張り・圧縮疲労限が優れてい
ることを明示している。このことから三段論法的に言え
ば本発明品は限定成分の範囲内であれば必ずNCM鋳鉄
を凌ぐが、その中にあっても特にSc値が低いほど引張
り・圧縮疲労限が向上するという相関を誘導することが
できる。
【0022】一方図3は横軸に熱衝撃繰り返し数、縦軸
に熱亀裂長さをプロットした関係図であり、耐熱亀裂性
をSc値の範囲との関連において示したものである。こ
の図によれば本発明品はNCM鋳鉄と耐熱亀裂性そのも
のについてはほとんど変りなく、しかもその間において
さらに詳細に分析すれば、Sc値の高いほど耐熱亀裂性
に優れて従来技術のNCM鋳鉄を凌ぐ試料も認められる
が、Sc値の低下と共にこの優位性が失われ、ある範囲
を越えると優劣が逆転することが把握された。
【0023】すなわち、前記の限定成分の範疇に属して
も、Sc値が大きいほど、換言すればC,Siが高いほ
ど引張り強さは低下するが、絶対値においてNCM鋳鉄
を大きく凌駕し低下する勾配もNCM鋳鉄のそれよりも
大きい。一方、引張り強さの高いほど引張り・圧縮疲労
限が高く、これも絶対値においてNCM鋳鉄を凌駕す
る。ところが耐熱亀裂性については逆にSc値の高いほ
ど耐性が高く、Sc値の低いある限度においてはNCM
鋳鉄が逆転する。このことは耐熱亀裂性はブレーキディ
スクの摺動面全面にほぼ均一に分散して負荷する熱応力
によって支配され漸次進行していくのに対し、引張り・
圧縮疲労限は耐熱亀裂性の原因の一部にはなり得るにし
ても、むしろブレーキディスクの取り付け部など熱衝撃
の繰り返し集中する箇所に蓄積して遂に破断など視認で
きる現象となって初めて顕われると見るのが妥当ではな
いかと解される。したがって引張り・圧縮疲労限と耐熱
亀裂性、または引張り強さと耐熱亀裂性とを単純に短絡
して取り合せ改良する従来の手法には、実車の運転時に
作用する外力を分析する上でなお、不十分であったので
はないかと言わざるを得ない。この因果関係を整理した
結果、本発明ではSc値の範囲を 耐熱亀裂性において少なくともNCM鋳鉄の水準また
はそれ以上を維持できる範囲であること。 引張り・圧縮疲労限においてNCM鋳鉄を凌駕できる
範囲であること。 の2点から0.82〜0.91に限定したが、その根拠
は次項で述べる。
【0024】
【発明の実施の形態】表1は本発明の実施形態と比較の
ために数値限界の根拠とした比較例の成分およびSc値
の一覧表である。
【0025】
【表1】
【0026】表1において比較材1はSc値が0.79
8であり、図3で示すように従来技術のNCM鋳鉄材よ
り若干低い。従来材と少なくとも同等またはそれ以上を
維持するにはSc値が0.82以上を要しこの値がSc
値の下限となる。一方、比較材2はSc値が0.917
であり、Sc値を高めると耐熱亀裂性は向上するが疲労
強度に係わる引張り強さは、図2で示すようにJRS番
号12209−1で要求される引張り強さ28Kgf/
mm2≒275N/mm2以上を満足しなくなるため上限値を
0.91とし、結局Sc値の範囲を0.82≦Sc値≦
0.91に限定することとした。
【0027】従来技術の典型であるNCM鋳鉄や、既に
述べた主な公開技術と本発明材との主要な成分範囲に限
った比較を纏めたものが図4および図5である。図にお
いては特公昭47−1872号公報に係るNCM鋳鉄
の原形となる従来技術であり、は特開平6−6567
3号公報、は特開平7−127675号公報、は特
開昭59−133347号公報をそれぞれ示し、本発明
の限定成分と共に各成分毎に列挙した。
【0028】図からも顕著な傾向として認められるよう
に、C,Siは他の従来技術に比べると低位にあり、S
c値の低下に基づく黒鉛形状の悪化をAlの添加によっ
て補う一方、引張り・圧縮疲労限の向上という本発明の
主目的の達成に有効な成分としている。添加する合金元
素については原形であるNCM鋳鉄の範疇を特に変え
ず、過去の卓抜した実績をそのまま踏襲持続する姿勢で
終始しているが、、、で盛んに意図されたVの添
加については全く考慮外としている。本来鋳鉄のように
C量のきわめて高い材質にあっては、強力な炭化物形成
元素であるVの添加は、一般的な耐摩耗性の向上には最
も有効であるが、繰り返し熱衝撃による金属疲労の改善
に対してはきわめて慎重であるべきであり、耐熱亀裂性
の向上についても疑問がないわけではない。
【0029】引張り強さやそれに関連する疲労破壊テス
トについて論ずるには、フィールドで実走行しているブ
レーキディスクの実体強度を再現できる試験片によって
効果を確認しなければ意図した材料開発から縁遠いもの
になり兼ねない。通常、鉄道車両に使用するブレーキデ
ィスクは左右両面に相対する約20mm厚さの摺動面地板
部を、構造体としての強度保持および摺動面への冷却効
果を持たせる目的から放射状に並べたフィンを多数凸設
した構造からなる。そこで実体品のモジュラスを算定、
あるいは凝固時近傍の冷却速度を実測し、これら凝固組
織を律則する因子が実体品に類似する供試材の形状を引
張り強さと顕微鏡組織の確認により実験的に求めて供試
材の形状を決定した。
【0030】供試材の成分は表1に掲げた通りであり、
まず、図2のように引張り強さとSc値との関係をNC
M鋳鉄との比較において確認し、次に図1に結果を示す
ように引張り強さの異なる試料(すなわちSc値の異な
る試料)毎に両振り引張り−圧縮疲労試験を行なった。
試験条件は 試験機 :油圧サーボ疲労試験機 テストピース形状 :10mmφ円柱形試験片 制御方式 :荷重制御−両振引張り・圧縮 繰り返し速度 :20Hz であり引張り強さで整理できる相関が得られ、引張り強
さと同様にNCM鋳鉄に優越する疲労強度の改善された
新素材の確認が実現した。耐熱亀裂性については図3の
ように出願人保有の円柱試験片による繰り返し熱衝撃試
験で熱疲労をシュミレートして評価した。試験条件は テストピース形状 :25φmm×25Hの円柱試験片 熱衝撃方法 :高周波誘導加熱によって最高加熱温度に急熱し、到達 後、直ちに水シャワーで急冷する。昇温15秒、最高 加熱温度780℃、繰り返し数300回。 判定法 :最も急水冷される円柱上面に生じた熱亀裂を集計して (長い亀裂から10本)、発生状況を累積検討。 であり、その結果は既に述べた通り限定した成分範囲の
中の限定したSc値において耐熱亀裂性がNCM鋳鉄と
少なくとも同等または優越し、引張り強さと引張り・圧
縮疲労限において大幅に凌駕することを確定したもので
ある。
【0031】実際のブレーキ特性を確認するために重量
%としてC:3.3,Si:1.3,Mn0.6,N
i:1.5,Cr:0.4,Mo:0.4,(Sn+S
b+Cu):0.40の成分で在来線で現に使用されて
いるブレーキディスクを溶製し、実走行を想定した厚肉
(20mm)と限界肉厚(10mm)におけるベンチテスト
(17回ランダム試験、試験最高初速度135km/h
r)を実施してブレーキ特性の変化を確認した。その結
果、現用ノンアスベスト系ライニング材2種に対し、平
均摩擦係数fms,fmtの何れも低速から高速まで現
用NCM鋳鉄と同等であり、制動性について変らない保
証を認定された。
【0032】
【発明の効果】本発明は以上に述べた通り在来線、新幹
線共に航空機などとの競合に対応して一層の高速性、快
適性の向上が生残りの条件として課せられ、結果的にブ
レーキディスク材に従来以上の苛酷な使用条件下で従来
以上の耐用期間を求められる二重の課題を解決する効果
が著しい。その開発の原則は飽くまで従来から定評が固
定し、とくに安全運転の模範的な部材とされてきたNC
M鋳鉄をベースに据え、従来は誰しもが思い至らなかっ
た独創的な添加元素を添加して有効成分を限定すると同
時に、第三の指標としてSc値を管理の媒体に選んで複
雑に錯綜した耐熱亀裂性、引張り強さ、引張り・圧縮疲
労限の各要素間の理想的な平衡関係を確立した点にあ
り、とくに評価の高いNCM鋳鉄の耐熱亀裂性と同等以
上を確保しつつ引張り・圧縮疲労限を大幅に向上して苛
酷化する一方のブレーキディスク材としての資質を実現
した効果が抜群である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明と比較材の引張り・圧縮疲労限を示す図
表である。
【図2】本発明と比較材の引張り強さを示す図表であ
る。
【図3】本発明と比較材の耐熱亀裂性を示す図表であ
る。
【図4】本発明と代表的な従来技術の成分範囲(C,S
i,Mn)の比較図である。
【図5】本発明と代表的な従来技術の成分範囲(Ni,
Mo,Cr,V)の比較図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にしてC:3.10〜3.45,
    Si:1.10〜1.50,Mn:0.60〜1.0
    0,Ni:1.00〜2.00,Cr:0.30〜0.
    60,Mo:0.30〜0.50,P:0.16以下,
    S:0.12以下の他、Sn+Sb+Cuの合計を0.
    01〜0.50,Al:0.01〜0.10を含んで残
    部がFeからなり、かつ、炭素飽和度(Sc値)=C重
    量%+[4.23−(Si重量%/3.2)]で算出さ
    れる炭素飽和度が0.82〜0.91の範囲に限られる
    ことを特徴とする疲労強度に優れたブレーキディスク
    材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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RU2605008C1 (ru) * 2015-09-21 2016-12-20 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
ES2774624A1 (es) * 2019-09-20 2020-07-21 Cofren Srl Par de fricción disco/freno para vehículos ferroviarios

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