JPH101735A - バルク固溶体およびその製造方法 - Google Patents

バルク固溶体およびその製造方法

Info

Publication number
JPH101735A
JPH101735A JP8355632A JP35563296A JPH101735A JP H101735 A JPH101735 A JP H101735A JP 8355632 A JP8355632 A JP 8355632A JP 35563296 A JP35563296 A JP 35563296A JP H101735 A JPH101735 A JP H101735A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solid solution
powder
tungsten
copper
bulk
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8355632A
Other languages
English (en)
Inventor
Shigeru Mashita
茂 真下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP8355632A priority Critical patent/JPH101735A/ja
Publication of JPH101735A publication Critical patent/JPH101735A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】粉粒体より大きな容積を有するバルク状の固溶
体を主体とする均一なタングステン−銅系バルク固溶体
等を実現するとともに、そのタングステン−銅系バルク
固溶体等を容易に量産することが可能な製造方法を提供
する。 【解決手段】タングステン−銅固溶体、モリブデン−銅
固溶体、タングステン−銀固溶体を主体とすることを特
徴とするバルク固溶体である。このバルク固溶体は、タ
ングステン粉末やモリブデン粉末と銅粉末や銀粉末とか
ら成る原料混合体をメカニカルアロイング処理してタン
グステン−銅固溶体を主体とする粉末等を形成し、得ら
れた固溶体粉末を、固溶体の降伏応力以上の衝撃圧力を
作用させる衝撃圧縮法により固化して製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタングステン−銅系
等のバルク固溶体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】タングステン−銅系焼結体(W−Cu焼
結体),モリブデン−銅系焼結体(Mo−Cu焼結
体),タングステン−銀系焼結体(W−Ag焼結体)
は、他の合金や金属焼結体と比較して、強度,導電性,
硬度,熱伝導性,高温耐性等の諸特性において優れてい
るため、接点材料,アンビルなどの特殊工具材,半導体
装置の放熱板(ヒートシンク)材料,砥石材料として広
く使用されている。
【0003】従来、上記タングステン−銅系焼結体は、
一般にタングステン粉末と銅粉末とから成る原料混合体
を加圧形成し、得られた成形体を所定温度で焼結し、さ
らに得られた焼結体を所定形状に加工するという一般的
な粉末冶金法に準拠して製造されている。
【0004】なお、平衡状態図(相図)からも明らかな
ようにW−Cu系合金,W−Ag系合金は液体状態にお
いても、タングステンと銅または銀とは二相分離し均一
に混合することがなく、固溶体を形成することはない。
また、Mo−Cu系合金,Mo−Ag系合金は液体状態
ではある程度固溶するが、固体状態では固溶しない。し
たがって、通常の溶解法ではW,Mo中にCuやAgを
微細に分散させることは、固体状態では困難である。そ
のため、上記従来の焼結法によるタングステン−銅系合
金またはタングステン−銀系合金においては、タングス
テン粒子の凝集塊と銅粒子または銀粒子の凝集塊とが界
面において相互に融着した不均一な金属組織を有してい
る。このため、W−Cu系合金やW−Ag系合金の強度
等の諸特性が不充分と考えられる。
【0005】そこで、均質な固溶体または固溶体に準じ
た金属組織を有するW−Cu系合金粉末を形成すること
が試行されている。すなわち、W粉末とCu粉末とから
成る原料混合体をメカニカルアロイング(MA)によっ
て処理することにより、W成分とCu成分とが均一に固
溶した非平衡状態のW−Cu系合金の粉末が得られてい
る。ここで、固溶体とは、格子レベルまたはナノレベル
で2種以上の元素または原子が混合した状態をいう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにメカニカルアロイング法によって製造されたW−
Cu固溶体の大きさは粉体に限られており、実際の使用
部品に相当するような充分な容積を有するバルク固溶体
は得られていなかった。
【0007】すなわち、上記メカニカルアロイング法に
よって製造したW−Cu固溶体粉末を焼結してバルク状
の固溶体を形成することを試行しても、上記非平衡状態
のW−Cu固溶体粉末が焼結工程において分解し、W相
とCu相とに二相分離を起こしたり、再結晶が進行して
W成分の凝集塊とCu成分の凝集塊とに分離したりする
ため、いずれにしても、W−Cu固溶体の状態を維持し
たままでバルク固溶体として固化することが実質的に不
可能であった。このように粉末状の非平衡材料であるW
−Cu固溶体を、その特性を変化させずに固化成形して
バルク体とすることが不可能であったため、W−Cu固
溶体の特性を実際の適応部品に使用することができなか
った。
【0008】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであり、粉粒体より大きな容積を有する固溶体
を含む均一なバルク状のタングステン−銅系バルク固溶
体等を実現するとともに、そのタングステン−銅系等の
バルク固溶体を容易に量産することが可能な製造方法を
提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本願発明者はタングステン−銅系などの固溶体粉末
を調製する方法および調製した固溶体粉末の非平衡状態
を維持したままで固化する方法を種々検討した。その結
果、まずタングステン粉末と銅粉末とから成る原料混合
体をメカニカルアロイング(MA)処理等で処理するこ
とにより、bcc構造を有するタングステン−銅固溶体
粉末を調製し、しかる後に、得られた固溶体粉末に対し
て合金の降伏応力以上の超高圧力および高剪断力を瞬間
的に付加する衝撃圧縮法を適用して、固溶体粉末を短時
間(例えば数μsec 以下の時間内で)に圧縮することに
よって、固溶体の分解や再結晶を起こすことなく、固溶
体粉末を固化でき、タングステン−銅固溶体を主体とす
るタングステン−銅系などのバルク固溶体を得ることに
初めて成功した。すなわち、バルク体としては従来存在
していなかったタングステン−銅系などのバルク固溶体
を主体とする新規組織の物質の合成に初めて成功したの
である。
【0010】よって、本発明に係るタングステン−銅系
バルク固溶体は、タングステン−銅固溶体を主体とする
ことを特徴とする。また、タングステン−銅固溶体が体
心立方格子(bcc)構造を有することを特徴とする。
さらに、タングステン−銅固溶体の組成が、一般式W
1-x Cux (但し、0.05≦x≦0.5)で表わされ
ることを特徴とする。またタングステン−銅固溶体に存
在するbcc構造の割合が50%以上であることが望ま
しい。さらに、本発明のタングステン−銅固溶体を主体
とするバルク固溶体の特性としてビッカース硬度(荷重
500g値)が3GPa以上であることを特徴とする。
【0011】また、モリブデン−銅固溶体またはタング
ステン−銀固溶体を主体とするバルク固溶体を形成する
ことも可能である。
【0012】また本発明に係るバルク固溶体の製造方法
は、タングステン−銅固溶体を主体とするバルク固溶体
の製造方法において、タングステン粉末と銅粉末とから
成る原料混合体をメカニカルアロイング処理してタング
ステン−銅固溶体を主体とする粉末を形成し、得られた
タングステン−銅固溶体粉末を、固溶体の降伏応力以上
の衝撃圧力を作用させる衝撃圧縮法により固化すること
を特徴とする。
【0013】本発明に係るバルク固溶体を形成するため
の出発原料として使用されるタングステン粉末、モリブ
デン粉末および銅粉末、銀粉末としては、可及的に高純
度で微細な粉末が好ましいが、純度が99.9%以上で
平均粒径が1〜4μmのタングステン粉末やモリブデン
粉末および純度が99.99%以上で粒径が50μm以
下の電解銅粉末や銀粉末などを使用することができる。
【0014】上記タングステン粉末と銅粉末との配合比
は、最終的に得られるW−Cu固溶体の組成がW1-x
x (但し、0.05≦x≦0.5)となるように定め
られる。ここでW粉末に対するCu粉末の配合比がモル
比で0.05未満となる場合には、Cuの固溶体として
の特性が十分に発揮されない。一方、Cu粉末の配合比
が0.5を超える場合には、バルク固溶体中にCuの一
部が析出するため、Cuの均一な分散混合が困難とな
る。なお、W粉末とCu粉末とから成る原料混合体の成
形性を確保するために、バインダ成分を原料混合体に添
加配合してもよい。
【0015】本発明方法で採用するメカニカルアロイン
グ処理は、衝撃力,剪断力,摩擦力,圧縮力やそれらが
複合した機械的エネルギーを異種粉粒体に付加すること
により、固相状態のままで化学反応を進行させたり、ア
モルファス等の均質な組織を形成したり、非平衡固溶体
を合成したりすることが可能な単位操作である。具体的
な処理装置としては、ボールミル型混合粉砕機,らいか
い器型混合機,振動ミル,転動ミル等が使用される。こ
のメカニカルアロイングは、単なる機械的混合法とは異
なり、W粉とCu粉のように比重差が大きい異種粉末の
均一混合法としても有効である。
【0016】例えば、ボールミル型混合粉砕機を使用
し、W粉末とCu粉末とから成る原料混合体を1〜20
時間メカニカルアロイング処理を実施することにより、
粉末粒子間の元素の拡散反応が進行すると同時に、粗粒
粉末のボールミル粉砕時に起こる分散化および破片粒子
間の凝集作用によって、固相状態における均質な固溶化
が進行し、W粒子中にCuが超微細に分散したW−Cu
固溶体粉末が得られる。Mo粉末やAg粉末を使用した
場合においても、上記メカニカルアロイング処理によっ
てMo−Cu固溶体粉末やW−Ag固溶体粉末が得られ
る。
【0017】このようにメカニカルアロイング処理によ
り、常温付近の非加熱雰囲気においてW粉末またはMo
粉末とCu粉末またはAg粉末同士の合金化作用と均一
化作用とが充分に得られ、溶解法では得られない非平衡
均質であるW−Cu固溶体粉末,Mo−Cu固溶体,W
−Ag固溶体粉末が得られる。
【0018】次に得られた固溶体粉末を衝撃圧縮法に従
って固化処理を行なう。
【0019】この衝撃圧縮法については、製造対象物質
が本発明のようなW−Cu系バルク固溶体でなく、B1
型TaN系ではあるが、マツダ財団研究報告,7(19
95)第29頁〜「衝撃圧縮を用いたB1型TaN系超
硬物質の開発」において記載された火薬衝撃銃を用いた
方法と同様な方法を用いることができる。しかしなが
ら、本発明で用いられる衝撃圧縮法は上記方法に限定さ
れず、サブμsec 〜数μsec ,さらには数ミリsec の短
時間に超高圧,超剪断力を付加することができる方法で
あればよい。一般には、固体中に衝撃圧力を生ずる衝撃
波を発生する方法としては衝突法と爆薬直接法があり、
前者方法には衝撃板を加速する方法に銃方法と爆薬方法
が考えられる。また、衝撃圧力の伝播媒質としては、金
属などの固体のほか、水などの液体も使用することがで
きる。
【0020】衝撃波の伝播によって、固体や液体内に発
生する圧力は前者方法の場合は衝突板と駆動板、カプセ
ルおよび試料の衝撃インピーダンス(初期密度×衝撃波
速度)と衝突速度に依存する。
【0021】また、爆薬直接法は爆薬を駆動板、カプセ
ルや試料に直接接触させ、爆轟波を直接伝えるもので、
駆動圧力は爆薬の性能、主に爆轟速度と密度とそれに接
する駆動板、カプセルおよび試料の衝撃インピーダンス
に依存する。
【0022】ここで、衝撃インピーダンスは物質のユゴ
ニオ(衝撃波速度と粒子速度の関係)と呼ばれる物質固
有の状態量の関係によって決まる。同じ衝突板と衝突速
度あるいは爆薬であっても試料内に発生する圧力は試料
の衝撃インピーダンスによって大きく異なり、特に粉体
試料では空隙も含んだ試料全体ではバルク試料に比べて
衝撃インピーダンスが格段に小さくなり、したがって、
発生する圧力も空隙率に従って小さくなり、反面、体積
変化が大きくなり、したがって温度上昇は大きくなる。
【0023】さらに、殆どの粉体試料ではユゴニオが測
定されていないし、真密度のユゴニオから粉体のユゴニ
オを計算し、粉体試料中の圧力を求めることができるが
温度効果などがあるので、誤差は大となる。
【0024】したがって、試料中の圧力で衝撃波の強さ
を表すことは適当でないので、試料の前面にあり、衝突
板と直接衝突したり、爆薬と直接接するカプセルに発生
する圧力で試料を圧縮する衝撃波の強さ(駆動圧力)を
表すことにする。
【0025】この衝撃圧縮法を実施するための具体的な
装置としては、例えば図1に示すような衝撃圧縮装置を
使用することができる。
【0026】図1に示す衝撃圧縮装置は、火薬の爆発力
や高圧ガスの膨張力を利用して飛翔体1を射出する火薬
銃や軽ガス銃などの衝撃銃2と,飛翔体1の先端部に固
着された厚さ1〜2μmのタングステン製の飛翔板3
と,飛翔体1の射出方向に対向して配置された試料容器
4と,試料容器4内に配置された粉体試料5と,カプセ
ルを支えモーメンタムを吸収するカプセル支え6とから
構成される。
【0027】前記メカニカルアロイング処理して調製さ
れたW−Cu固溶体粉末等の原料混合体は、例えば試料
容積が直径12mm×高さ5mmの鋼(SS−41)製カプ
セルまたはステンレス鋼(SUS405)製カプセル中
に充填される。
【0028】上記飛翔体によって粉体試料に付加される
衝撃圧力は、最終的に得られる固溶体の降伏圧力以上に
設定される。具体的には、飛翔板としてCu板やW板を
用い、粉体試料を充填した金属カプセルに対する飛翔体
の衝突速度を0.2〜2.0Km/S程度に設定する。そ
の場合において、衝突時に、例えば鉄製カプセルに付加
される衝撃圧力は、3.3〜63.4GPa程度であ
る。この粉体試料に付加される衝撃圧力は空隙率によっ
て変化する。
【0029】そして、上記衝撃圧縮法に従い、W−Cu
固溶体粉末等に、サブμsec から数μsec 程度の短時間
で超高圧力および高剪断力を付加して瞬間的に圧縮する
ことにより、固溶体粉末の相分離や再結晶を起こすこと
なく、固溶体粉末を固化させることができる。その結
果、粉粒体の径よりもはるかに大きい径および容積を有
するバルク状のW−Cu固溶体を含むW−Cu系バルク
固溶体等を容易に大量生産することができる。
【0030】なお衝撃圧縮工程において、W−Cu固溶
体粉末試料に付加される衝撃圧力の分布によって、一般
的に粉末試料表面部においては緻密なバルク固溶体が形
成される一方で、粉末試料内部においては、一部に割れ
が発生して空孔率が大きなバルク固溶体が形成される場
合がある。特に固溶体粉末試料の厚さの増大に伴ってW
−Cu系バルク固溶体の空隙率が増大する傾向がある。
本発明者が実施した衝撃銃法による実験によれば、本発
明方法に従って均一に製造できる高密度なW−Cu系バ
ルク固溶体は、直径が10mmで厚さが2mm程度の円板状
の寸法範囲以上のものであることが確認されている。ま
た爆薬法等を採用することにより、より大型のバルク固
溶体を得ることができる。
【0031】ここで、例えばW−Cu系バルク固溶体が
均一な固溶体でなく、部分的にCu成分が偏析している
場合(この場合には、通常Cu成分が帯状となり析出さ
れることが多い。)、後処理としてW−Cu系バルク固
溶体に硝酸溶液等の酸処理を施し、Cu偏析部を除去す
ることにより、均一なW−Cu相のみからなる固溶体と
することができる。
【0032】以上の処理工程は、原料粉末としてW粉末
とCu粉末とを使用したW−Cu系バルク固溶体を中心
に説明しているが、原料粉末としてMo粉末とCu粉末
とを使用した場合またはW粉末とAg粉末とを使用した
場合においても、同様に両原料粉末をメカニカルアロイ
ング処理して固溶体粉末とし、その固溶体粉末を衝撃圧
縮法に従って固化処理することにより、それぞれMo−
Cu系バルク固溶体およびW−Ag系バルク固溶体を容
易に製造することができる。
【0033】ここで本発明において使用する衝撃圧縮法
は、衝撃波が原料粉末に伝播することにより、高効率で
粉末の固化合成を行なう方法であり、例えば出発原料粉
末が充填されているカプセルの外側に所要量の爆薬を配
置し、この爆薬の爆発により発生する爆轟波を直接平面
状または円筒状のカプセルを通して出発原料へ伝播させ
る直接法、または出発原料の充填されているカプセルを
反応容器内に設置し、カプセルの一端に圧縮ガス若しく
は火薬類の爆発や燃焼により発生する爆轟波や燃焼ガス
によって金属片や円筒管を高速に加速して、平面試料容
器や円筒容器に衝突させ、その時に発生する衝撃波を出
発原料に伝播させる衝突法があるが、爆薬、火薬の性能
や量、飛翔板、駆動板の材質および寸法を鉄換算のカプ
セル駆動圧力で3〜64GPaの範囲の衝撃圧縮になる
ように適宜、設備に適合させて選定する必要がある。
【0034】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態について以
下の実施例および添付図面を参照して、より具体的に説
明する。
【0035】実施例1 平均粒径が2.5μmであり、純度が99.9%以上で
あるタングステン粉末と、粒径が45μm以下であり、
純度が99.99%以上である銅粉末とをモル比で6
0:40になるように配合して出発材料である原料混合
体を調製した。
【0036】次に上記原料混合体を20g分取し、直径
15mmの窒化珪素製粉砕ボール7個とともに、遊星型ボ
ールミル( Fritsch社製,P−7型)の粉砕カプセル内
に投入した。粉砕カプセルは窒化珪素から成り、その内
径は41mmであり、深さは38mmであった。そして、粉
砕カプセル内をアルゴンガス雰囲気に調整して、360
分間メカニカルアロイング処理を実施した。なおボール
ミルの駆動モータの回転数は2840rpmであり、粉
砕ボールの加速度は約12Gに設定した。また、全メカ
ニカルアロイング処理時間内において、適宜間隔で微量
の粉末試料をサンプリングし、その特性を測定評価し
た。
【0037】次に360分間メカニカルアロイング(M
A)処理して得られた試料粉体を、図1に示す衝撃圧縮
装置を使用して圧縮固化した。すなわち、MA処理した
試料粉体を、内径12mm×内のり高さ3.5mmの鋼(S
S−41)製カプセル内に充填し、試料粉末の空隙率を
49%に調整した。そして、試料粉末を充填した鋼製カ
プセルを衝撃圧縮装置内に配置し、厚さ1mmのW製飛翔
板を固着した飛翔体を、衝突速度:V=0.938Km/
sとなるように鋼製カプセルに衝突せしめた。そして衝
撃圧縮後、鋼製カプセルとともに装置から取り出し、表
面部に固着した鋼製カプセルを旋盤加工によって削り取
ることにより、実施例1に係るW−Cu系バルク固溶体
を調製した。
【0038】上記のような製造工程において、360分
間のメカニカルアロイング処理を実施して得られた粉体
試料の粒径範囲は6〜22μm程度であった。また、衝
撃圧縮工程において鋼製カプセルに作用した衝撃圧力は
24.5GPaであり、粉体試料に作用した初期圧力は
13GPa程度であった。
【0039】図2は実施例1において調製した出発材料
としてのW−Cu原料混合体,360分間に亘るメカニ
カルアロイング処理後における粉体,およびその粉体を
衝撃圧縮して調製したバルク固溶体についての粉末X線
回折結果を併せて示すグラフである。
【0040】図2に示す結果から明らかなように、36
0分間のメカニカルアロイング処理を施した試料粉体に
おいては、fcc構造に起因する銅のピークが殆ど消失
しており、また出発材料と比較してbcc構造を示すピ
ーク位置がややシフトしていることが判明した。このこ
とから、メカニカルアロイング処理によって銅原子はタ
ングステンのbcc構造内に実質的に固溶し、組織的に
も均一なW−Cu固溶体粉末が得られていることが確認
できた。
【0041】また、上記bcc構造を有するW−Cu固
溶体粉末をX線回折分析し、構造解析した結果、その格
子定数(a0 )は0.31624+(5)nmであっ
た。この値は純粋な多結晶タングステンの格子定数(a
0 =0.31650nm)と比較して、僅かに小さい値
となっていた。この差異は、銅の原子半径(0.128
nm)がタングステンの原子半径(0.141nm)と
比較して小さいことに起因して生じるものと考えられ
る。
【0042】さらに、衝撃圧縮後におけるバルク固溶体
についてのX線回折パターンは、メカニカルアロイング
処理後におけるW−Cu固溶体粉末の回折パターンから
変化しておらず、固溶体の分解や再結晶を起こすことな
く、固溶体粉末が非平衡状態を維持したまま固化したこ
とが確認できた。
【0043】また、前記出発材料,メカニカルアロイン
グ(MA)処理後のW−Cu固溶体粉末および衝撃圧縮
後のバルク固溶体のそれぞれについて機器化学分析を実
施し、窒素,酸素,炭素,珪素含有量を測定して、下記
表1に示す結果を得た。
【0044】
【表1】
【0045】表1に示すように、試料中の珪素(Si)
含有量は、メカニカルアロイング処理によって0.00
07重量%から0.03重量%へと大幅に増加した。ま
た窒素(N)含有量も0.007重量%から0.17重
量%と増加した。これらの増加原因は、いずれも窒化珪
素(Si3 4 )で形成されたボールミルの粉砕カプセ
ルや粉砕ボールから混入したものと考えられる。一方、
酸素(O)および炭素(C)の含有量は、メカニカルア
ロイング処理によって、一時は増加するが、衝撃圧縮工
程において若干減少する傾向が観察できた。
【0046】また実施例1に係るW−Cu系バルク固溶
体のビッカース硬度(荷重500g値)は4.0〜5.
9GPaであった。この値は同程度の組成(W:70
%,Cu:30%)を有する従来のW−Cu焼結体のビ
ッカース硬度(1.8〜1.9)と比較して大幅に高
く、また多結晶性タングステンのビッカース硬度(5.
1〜5.3GPa)とほぼ同等以上であり、軟質な銅成
分を含有しているにも拘らず純粋なタングステン材と比
較してもほぼ同等以上の高い硬度および強度が得られ
た。これはバルク固溶体の格子ひずみの増大によって高
硬度化が進行したものと推定される。
【0047】比較例 実施例1に係るW−Cu系バルク固溶体の製造工程にお
いて、衝撃圧縮時の飛翔体の衝突速度Vを0.5km/sと
した点以外は実施例1と同様にして原料粉末をメカニカ
ルアロイング処理し、さらに得られた固溶体粉末を衝撃
圧縮法によって固化することにより、比較例に係るW−
Cu系バルク固溶体を調製した。
【0048】実施例1において調製したW−Cu系バル
ク固溶体は、直径12mm,厚さ2mmの円板状の合金試料
である。この実施例1の合金試料においては割れの発生
が少ない均一なバルク固溶体が得られている一方、比較
例の合金試料では固溶状態が確保されていながら、割れ
(クラック)が部分的に発生した不均一な金属組織が観
察された。以下の図面代用写真によって、その金属組織
を説明する。
【0049】図3は、実施例1に係る合金試料の研磨面
の金属組織を面分析(日本電子製JCXA−733によ
り加速電圧20KV,照射電流5×10-8,1.5×1
-9Amp,ビーム径:スポット)して得た二次電子像
写真(倍率:2000倍)であり、図4は、図3に示す
部位における金属組織の反射電子像写真(倍率:200
0倍)であり、図5は、図3に示す部位における金属組
織のWのX線像写真(倍率:2000倍)であり、図6
は、図3に示す部位における金属組織のCuのX線像写
真(倍率:2000倍)である。
【0050】一方、図7は、比較例に係る合金試料の研
磨面の金属組織を面分析して得た二次電子像写真(倍
率:2000倍)であり、図8は、図7に示す部位にお
ける金属組織の反射電子像写真(倍率:2000倍)で
あり、図9は、図7に示す部位における金属組織のWの
X線像写真(倍率:2000倍)であり、図10は、図
7に示す部位における金属組織のCuのX線像写真(倍
率:2000倍)である。
【0051】図3および図4に示す金属組織の二次電子
像および反射電子像から明らかなように、実施例1に係
るW−Cu系バルク固溶体試料においては、組織表面に
おいてW成分およびCu成分の凝集による凹凸が少なく
Cu成分が均一に分散混合した組織が得られていること
が確認できた。
【0052】また図5に示すW成分についてのX線回折
像および図6に示すCu成分についてのX線像から明ら
かなように、実施例1のバルク固溶体試料の同一領域に
おいて、W成分とCu成分とが均一かつ微細に分散混合
しており、W−Cu固溶体がバルク状に生成しているこ
とが確認できた。
【0053】一方、図7および図8に示す金属組織の二
次電子像および反射電子像から明らかなように、比較例
に係るW−Cu系バルク固溶体試料においては、黒色部
で示される帯状部が縦横に発生している部分が多い。し
かしながら、この帯状部を除いた他の領域においては、
W成分およびCu成分の凝集による凹凸が少なくCu成
分が均一に分散混合した組織が得られていることが確認
できた。
【0054】また図9に示すW成分についてのX線像お
よび図10に示すCu成分についてのX線像から明らか
なように、比較例のバルク固溶体試料においては、帯状
部に相当する領域が存在し、部分的に不均一な組織が形
成されている。しかしながら、この帯状部を除いた他の
領域においては、同一領域にW成分とCu成分とが均一
かつ微細に分散混合しており、W−Cu固溶体が生成し
ていることが確認できた。また図9および図10を対比
して観察することにより、帯状部にはCu成分が偏析し
ていることが判明した。このように、Cu成分が偏析し
た帯状部が形成されていても、他の領域においてはタン
グステン−銅固溶体が存在し、より具体的には、本発明
のW−Cu固溶体は、bcc構造の割合が少なくとも5
0%であることとする。
【0055】図11および図12はそれぞれ実施例1お
よび比較例に係るW−Cu系バルク固溶体の研磨面の金
属組織を線分析して得たX線写真である。各写真の中央
水平方向に延びる走査線に沿って存在するW元素および
Cu元素の割合をX線強度から測定したグラフを併せて
明示している。
【0056】図11に示す線分析結果から明らかなよう
に、実施例1に係るW−Cu系バルク固溶体において
は、全組織領域でWおよびCuの存在割合を示すグラフ
がほぼ直線状となっており、WとCuとが均一に分布し
ていることが確認できる。
【0057】一方、図12に示す線分析結果から明らか
なように、比較例に係るW−Cu系バルク固溶体におい
ては、WおよびCuの分布が不均一であり、均一性に欠
けており、特に帯状部にはCu成分が偏析していること
が判明した。
【0058】実施例2 平均粒径が2.5μmであり、純度が99.9%以上で
あるタングステン粉末と、粒径が45μm以下であり、
純度が99.99%以上である銅粉末とをモル比で8
0:20、70:30、60:40および40:60に
なるように配合して出発材料である原料混合体をそれぞ
れ調製した。
【0059】次に上記各原料混合体をそれぞれ20g分
取し、直径5mmのジルコニア製粉砕ボール200個とと
もに、遊星型ボールミル( Fritsch社製,P−7型)の
粉砕カプセル内に投入した。粉砕カプセルは窒化珪素か
ら成り、その内径は41mmであり、深さは38mmであっ
た。そして、粉砕カプセル内をアルゴンガス雰囲気に調
整して、21時間メカニカルアロイング処理を実施し
た。このMA処理の途中で3時間毎に粉体試料を1gず
つサンプリングし、X線回折により、その組織構造およ
び格子定数を調査した。なおボールミルの駆動モータの
回転数は2840rpmであり、粉砕ボールの加速度は
約12Gに設定した。また、全メカニカルアロイング処
理時間内において、適宜間隔で微量の粉末試料をサンプ
リングし、その特性を測定評価した。
【0060】次に21時間メカニカルアロイング(M
A)処理して得られた試料粉体を、図1に示す衝撃圧縮
装置を使用して圧縮固化した。すなわち、MA処理した
試料粉体を、内径12mm×内のり高さ3.5mmの鋼(S
S−41)製カプセル内に充填し、試料粉末の空隙率を
50%に調整した。そして、試料粉末を充填した鋼製カ
プセルを衝撃圧縮装置内に配置し、厚さ1mmのW製飛翔
板を固着した飛翔体を、衝突速度:V=0.833Km/
sとなるように鋼製カプセルに衝突せしめた。この時、
油回転ポンプによってカプセル内を減圧した。そして衝
撃圧縮後、鋼製カプセルとともに装置から取り出し、表
面部に固着した鋼製カプセルを旋盤加工によって削り取
ることにより、実施例2に係るW−Cu系バルク固溶体
を調製した。
【0061】上記のような製造工程において、21時間
のメカニカルアロイング処理を実施して得られた粉体試
料の粒径範囲は6〜22μmであった。また、衝撃圧縮
工程において鋼製カプセルに作用した衝撃圧力は21.
3GPaであった。
【0062】図13は実施例2において調製した出発材
料としてのW−Cu原料混合体,21時間に亘るメカニ
カルアロイング処理後における粉体,およびその粉体を
衝撃圧縮して調製したバルク固溶体についての粉末X線
回折結果を併せて示すグラフである。
【0063】図13に示す結果から明らかなように、2
1時間のメカニカルアロイング処理を施した試料粉体に
おいては、fcc構造に起因する銅のピークが殆ど消失
しており、また出発材料と比較してbcc構造を示すピ
ーク位置がシフトしていることが判明した。このことか
ら、メカニカルアロイング処理によって銅原子はタング
ステンのbcc構造内に実質的に固溶し、組織的にも均
一なW−Cu固溶体粉末が得られていることが確認でき
た。
【0064】図14は、各MA処理条件における格子定
数とMA処理時間との関係を示すグラフである。図14
から明らかなようにW−Cu固溶体の格子定数は、MA
処理時間の増加とともに減少し、特にW:Cu比が8
0:20および70:30で著しく減少した。また、
W:Cu比が80:20の場合においては、窒化けい素
製ボールを用いて360分間MA処理した固溶体(W:
Cu=60:40、a0 =0.31650)と比較して
格子定数が格段に小さくなった。また、密度が大きく、
径が小さいジルコニア製ボール200個を使用してMA
処理を行った方がMA効果が大きくなることが判明し
た。
【0065】さらに、衝撃圧縮後におけるバルク固溶体
についてのX線回折パターンは、メカニカルアロイング
処理後におけるW−Cu固溶体粉末の回折パターンから
ほとんど変化しておらず、固溶体の分解や再結晶を起こ
すことなく、固溶体粉末が非平衡状態を維持したまま固
化したことが確認できた。
【0066】また実施例2に係るW−Cu系バルク固溶
体のビッカース硬度(荷重500g値)は3.8〜5.
7GPaであった。この値は、実施例1に係るW−Cu
系バルク固溶体の硬度と比較して若干小さくなってい
る。これは、実施例2においては実施例1と比較して衝
撃速度がやや小さく衝撃圧力が低いためと考えられる。
また、これらの硬度値は同程度の組成(W:70%,C
u:30%)を有する従来のW−Cu焼結体のビッカー
ス硬度(1.8〜1.9)と比較して大幅に高く、また
多結晶性タングステンのビッカース硬度(5.1〜5.
3GPa)とほぼ同等以上であり、軟質な銅成分を含有
しているにも拘らず純粋なタングステン材と比較して
も、ほぼ同等以上の高い硬度および強度が得られた。こ
れはバルク固溶体の格子ひずみの増大によって高硬度化
が進行したものと推定される。
【0067】実施例3 実施例2において使用したタングステン粉末と銅粉末と
の混合比をモル%比で70:30になるように配合して
出発材料としての原料混合体を調製した点、ジルコニア
ボール100個を用いてメカニカルアロイング処理を実
施した点、メカニカルアロイング処理時間を10時間と
した点、およびメカニカルアロイング処理後の粉体試料
を希塩酸中に36時間浸漬処理して金属銅成分を除いた
点以外は実施例2と同様な処理条件でメカニカルアロイ
ング処理および衝撃圧縮処理を実施して、実施例3に係
るW−Cu系バルク固溶体を調製した。
【0068】上記出発原料としての原料混合体,10時
間のメカニカルアロイング(MA)処理後の粉体,およ
びMA処理後にさらに酸処理した粉体についての粉末X
線回折結果を図15に併せて示す。
【0069】図15に示す結果から明らかなように、1
0時間のメカニカルアロイング処理を施した試料粉体に
おいては、fcc構造に起因する銅のピークが殆ど消失
しており、また出発材料と比較してbcc構造を示すピ
ーク位置がややシフトしていることが判明した。このこ
とから、メカニカルアロイング処理によってかなりの量
の銅原子がタングステンのbcc構造内に実質的に固溶
し、組織的にも均一なW−Cu固溶体粉末が得られてい
ることが確認できた。
【0070】特にMA処理して得られたW−Cu固溶体
粉末にマクロ的に付着した未反応の金属銅を希塩酸によ
る酸処理によって除去しているため、酸処理後の粉体試
料のX線回折パターンにおいては、fcc構造に起因す
る銅のピークがほぼ完全に消失することが判明した。ま
た、格子定数は、酸処理前において3.1640オング
ストロームであり、酸処理後において3.1641オン
グストロームとなり、ほとんど変化がなかった。
【0071】そして、酸処理を実施して高純度化したW
−Cu固溶体粉末を衝撃圧縮法によって固化して調製し
た場合においても、実施例1と同様にW成分とCu成分
とが均一に分散した固溶体を含むW−Cu系バルク固溶
体が得られた。
【0072】実施例4 実施例2において使用したタングステン粉末と銅粉末と
の混合比をモル%比で60:40になるように配合して
出発材料としての原料混合体を調製した点、メカニカル
アロイング処理時間を21時間とした点、およびメカニ
カルアロイング処理後の粉体試料を希塩酸中に10時間
浸漬処理して金属銅成分を除いた点以外は実施例2と同
様な処理条件でメカニカルアロイング処理および衝撃圧
縮処理を実施して、実施例4に係るW−Cu系バルク固
溶体を調製した。
【0073】上記出発原料としての原料混合体,21時
間のメカニカルアロイング(MA)処理後の粉体,およ
びMA処理後にさらに酸処理した粉体についての粉末X
線回折結果を図13に併せて示す。
【0074】図13に示す結果から明らかなように、2
1時間のメカニカルアロイング処理を施した試料粉体に
おいては、fcc構造に起因する銅のピークが殆ど消失
しており、また出発材料と比較してbcc構造を示すピ
ーク位置がややシフトしていることが判明した。このこ
とから、メカニカルアロイング処理によって銅原子はタ
ングステンのbcc構造内に実質的に固溶し、組織的に
も均一なW−Cu固溶体粉末が得られていることが確認
できた。
【0075】特にMA処理して得られたW−Cu固溶体
粉末にマクロ的に付着した未反応の金属銅を希塩酸によ
る酸処理によって除去しているため、酸処理後の粉体試
料のX線回折パターンにおいては、fcc構造に起因す
る銅のピークがほぼ完全に消失することが判明した。ま
た、格子定数は、酸処理前において3.1528オング
ストロームであり、酸処理後において3.1537オン
グストロームとなり、やや大きくなるが、純粋なWの格
子定数(3.1650オンドストローム)と比較して、
かなり小さい。
【0076】そして、酸処理を実施して高純度化したW
−Cu固溶体粉末を、実施例2と同様に空隙率が59%
で衝突速度が0.821Km/sの衝撃圧縮法によって固
化して調製した場合においても、実施例1と同様にW成
分とCu成分とが均一に分散した固溶体を含むW−Cu
系バルク固溶体が得られた。得られたバルク固溶体の表
面のX線回折パターンを図13中に併せて示す。
【0077】実施例5 実施例1において使用したタングステン粉末に代えて平
均粒径が2〜3μmで純度が99.9%以上のモリブデ
ン(Mo)粉末を使用し、このモリブデン粉末と銅粉末
との混合比をモル%比で60:40になるように配合し
て出発材料としての原料混合体を調製した点以外は実施
例1と同様な処理条件でメカニカルアロイング処理およ
び衝撃圧縮処理を実施して、実施例5に係るMo−Cu
系バルク固溶体を調製した。
【0078】上記出発原料としての原料混合体および6
時間のメカニカルアロイング(MA)処理後の粉体につ
いての粉末X線回折結果を図16に併せて示す。
【0079】図16に示す結果から明らかなように、6
時間のメカニカルアロイング処理を施した試料粉体にお
いては、fcc構造に起因する銅のピークが殆ど消失し
ており、また出発材料と比較してbcc構造を示すピー
ク位置がややシフトしていることが判明した。このこと
から、メカニカルアロイング処理によって銅原子はモリ
ブデンのbcc構造内に実質的に固溶し、組織的にも均
一なMo−Cu固溶体粉末が得られていることが確認で
きた。
【0080】そして、上記のように調製したMo−Cu
固溶体粉末を衝撃圧縮法によって固化して調製した場合
においても、実施例1と同様にMo成分とCu成分とが
均一に分散した固溶体を主体とするMo−Cu系バルク
固溶体が得られた。すなわち、衝撃圧縮後におけるバル
ク固溶体についてのX線回折パターンは、図16に示す
メカニカルアロイング処理後におけるMo−Cu固溶体
粉末の回折パターンから変化しておらず、固溶体の分解
や再結晶を起こすことなく、固溶体粉末が非平衡状態を
維持したまま固化したことが確認できた。
【0081】実施例6 実施例1において使用した銅粉末に代えて、粒径が1〜
2μmであり、純度が99.9%以上の銀粉末を使用
し、タングステン粉末と銀粉末との混合比をモル%比で
60:40になるように配合して出発材料としての原料
混合体を調製した点以外は実施例1と同様な処理条件で
メカニカルアロイング処理および衝撃圧縮処理を実施し
て、実施例6に係るW−Ag系バルク固溶体を調製し
た。
【0082】上記出発原料としての原料混合体および6
時間のメカニカルアロイング(MA)処理後の粉体につ
いての粉末X線回折結果を図17に併せて示す。
【0083】図17に示す結果から明らかなように、6
時間のメカニカルアロイング処理を施した試料粉体にお
いては、銀のピークが殆ど消失しており、また出発材料
と比較してbcc構造を示すピーク位置がややシフトし
ていることが判明した。このことから、メカニカルアロ
イング処理によって銀原子はタングステンのbcc構造
内に実質的に固溶し、組織的にも均一なW−Ag固溶体
粉末が得られていることが確認できた。
【0084】そして、上記のようにMA処理して得られ
たW−Ag固溶体粉末を衝撃圧縮法によって固化して調
製した場合においても、実施例1と同様にW成分とAg
成分とが均一に分散した固溶体を含むW−Ag系バルク
固溶体が得られた。すなわち、衝撃圧縮後におけるバル
ク固溶体についてのX線回折パターンは、図17に示す
メカニカルアロイング処理後におけるW−Ag固溶体粉
末の回折パターンから変化しておらず、固溶体の分解や
再結晶を起こすことなく、固溶体粉末が非平衡状態を維
持したまま固化したことが確認できた。
【0085】
【発明の効果】以上説明の通り、本発明によれば、従来
の焼結法では得られなかった非平衡状態のW−Cu固溶
体を主体とするW−Cu系バルク固溶体等を大量に、し
かも安価に提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で使用する衝撃圧縮装置の構成例を
示す断面図。
【図2】実施例1用の出発材料,MA処理後の粉体,衝
撃圧縮後のバルク合金のそれぞれについてのX線回折結
果を併せて示すグラフ。
【図3】実施例1に係るバルク固溶体試料の研磨面の金
属組織を面分析して得た二次電子像写真。
【図4】図3に示す部位における金属組織の反射電子像
写真。
【図5】図3に示す部位における金属組織のWのX線像
写真。
【図6】図3に示す部位における金属組織のCuのX線
像写真。
【図7】比較例に係るバルク固溶体試料の研磨面の金属
組織を面分析して得た二次電子像写真。
【図8】図7に示す部位における金属組織の反射電子像
写真。
【図9】図7に示す部位における金属組織のWのX線像
写真。
【図10】図7に示す部位における金属組織のCuのX
線像写真。
【図11】実施例1に係るバルク固溶体の研磨面の金属
組織を線分析して得たX線写真。
【図12】比較例に係るバルク固溶体の研磨面の金属組
織を線分析して得たX線写真。
【図13】実施例2,4用の出発材料,MA処理後の粉
体,その衝撃処理後のバルク体,MA処理後に酸処理し
た粉体,その衝撃処理後のバルク体のX線回折結果を併
せて示すグラフ。
【図14】実施例2,4においてMA処理後のX線回折
実験で得られたbcc固溶体の格子定数とMA処理時間
との関係を示すグラフ。
【図15】実施例3用の出発材料,MA処理後の粉体,
酸処理後の粉体のそれぞれについてのX線回折結果を併
せて示すグラフ。
【図16】実施例5用の出発材料およびMA処理後の粉
体のそれぞれについてのX線回折結果を併せて示すグラ
フ。
【図17】実施例6用の出発材料およびMA処理後の粉
体のそれぞれについてのX線回折結果を併せて示すグラ
フ。
【符号の説明】
1 飛翔体 2 衝撃銃(火薬銃,軽ガス銃) 3 飛翔板 4 試料容器 5 粉体試料 6 カプセル支え

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タングステン−銅固溶体を主体とするこ
    とを特徴とするバルク固溶体。
  2. 【請求項2】 タングステン−銅固溶体が体心立方格子
    (bcc)構造を有することを特徴とする請求項1記載
    のバルク固溶体。
  3. 【請求項3】 タングステン−銅固溶体の組成が、一般
    式W1-x Cux (但し、0.05≦x≦0.5)で表わ
    されることを特徴とする請求項1記載のバルク固溶体。
  4. 【請求項4】 タングステン−銅固溶体に存在するbc
    c構造の割合が50%以上であることを特徴とする請求
    項2記載のバルク固溶体。
  5. 【請求項5】 ビッカース硬度(荷重500g値)が3
    GPa以上であることを特徴とする請求項1記載のバル
    ク固溶体。
  6. 【請求項6】 モリブデン−銅固溶体を主体とすること
    を特徴とするバルク固溶体。
  7. 【請求項7】 タングステン−銀固溶体を主体とするこ
    とを特徴とするバルク固溶体。
  8. 【請求項8】 タングステン−銅固溶体を主体とするバ
    ルク固溶体の製造方法において、タングステン粉末と銅
    粉末とから成る原料混合体をメカニカルアロイング処理
    してタングステン−銅固溶体を主体とする粉末を形成
    し、得られたタングステン−銅固溶体粉末を、固溶体の
    降伏応力以上の衝撃圧力を作用させる衝撃圧縮法により
    固化することを特徴とするバルク固溶体の製造方法。
JP8355632A 1996-04-16 1996-12-24 バルク固溶体およびその製造方法 Pending JPH101735A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8355632A JPH101735A (ja) 1996-04-16 1996-12-24 バルク固溶体およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8-117125 1996-04-16
JP11712596 1996-04-16
JP8355632A JPH101735A (ja) 1996-04-16 1996-12-24 バルク固溶体およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH101735A true JPH101735A (ja) 1998-01-06

Family

ID=26455305

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8355632A Pending JPH101735A (ja) 1996-04-16 1996-12-24 バルク固溶体およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH101735A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20030006564A (ko) * 2001-07-13 2003-01-23 (주)나인디지트 텅스텐-구리 분말합금 제조방법
JP2011112462A (ja) * 2009-11-25 2011-06-09 Seiko Epson Corp 装飾品の製造方法、装飾品および時計

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20030006564A (ko) * 2001-07-13 2003-01-23 (주)나인디지트 텅스텐-구리 분말합금 제조방법
JP2011112462A (ja) * 2009-11-25 2011-06-09 Seiko Epson Corp 装飾品の製造方法、装飾品および時計

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gaffet et al. Some recent developments in mechanical activation and mechanosynthesis
JP5520727B2 (ja) 多孔質金属及びその製造方法
US3660049A (en) Dispersion strengthened electrical heating alloys by powder metallurgy
US5330701A (en) Process for making finely divided intermetallic
Minamino et al. Microstructures and mechanical properties of bulk nanocrystalline Fe–Al–C alloys made by mechanically alloying with subsequent spark plasma sintering
JP5850372B2 (ja) 鋳造用結晶粒微細化剤およびその製造方法
US3778249A (en) Dispersion strengthened electrical heating alloys by powder metallurgy
Zhou et al. Nanostructure in an Al-Mg-Sc alloy processed by low-energy ball milling at cryogenic temperature
Casati Aluminum matrix composites reinforced with alumina nanoparticles
US20130068353A1 (en) Thermite compositions from low temperature impact milling
JPH08109422A (ja) アルミナ分散強化銅の製造方法
JP6342916B2 (ja) Al/TiCナノコンポジット材料を製造する方法
JPH101735A (ja) バルク固溶体およびその製造方法
Benghalem et al. Milling and mechanical alloying of copper and some solution alloys seen as a thermomechanical process
Schurack et al. Al-Mn-Ce quasicrystalline composites: Phase formation and mechanical properties
US7217386B2 (en) Preparation of nanocomposites of alumina and titania
JP4117926B2 (ja) 非平衡固溶体バルク材の製造方法
JPH09209001A (ja) 機械的合金化法における高効率な合金粉末合成方法
Enayati Formation of nanoscale layered structures and subsequent transformations during mechanical alloying of Ni60Nb40 powder mixture in a low energy ball mill
De Barbadillo Rebirth of mechanical alloying
JP2757928B2 (ja) 金属粉末成形材の製造方法
Kuskov et al. Study of structure of copper-based composite materials during the spark plasma sintering
JP2905878B1 (ja) 複合熱電材料の作製方法
Lu et al. Influence of kinetic energy on the formation of Mg2Si
JPH0610282B2 (ja) アモルフアス金属成形体の製造方法