JPH10162307A - 磁気ディスク装置及び同装置に適用するデータ再生システム - Google Patents

磁気ディスク装置及び同装置に適用するデータ再生システム

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JPH10162307A
JPH10162307A JP32411396A JP32411396A JPH10162307A JP H10162307 A JPH10162307 A JP H10162307A JP 32411396 A JP32411396 A JP 32411396A JP 32411396 A JP32411396 A JP 32411396A JP H10162307 A JPH10162307 A JP H10162307A
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JP32411396A
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Inventor
Kazuto Shimomura
和人 下村
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】非線形記録歪みの要因となるPE現象の発生を
推定し、データ再生動作時の再生補償を効果的に実行さ
せて、結果的にデータ再生動作時の復号化率を向上して
再生エラーを減少させることにある。 【解決手段】特に高記録密度の磁気ディスクドライブに
適用し、データ再生動作時に、PEノイズテーブル44
に保存されたPEノイズ情報に基づいて、データ再生手
段から得られた再生信号波形にPE(パーシャルイレー
ジャ)現象によるPEノイズが含まれていることを推定
するPE判定回路41を備えた装置である。PE補償回
路48はPE判定回路41の推定結果により、復号回路
36から出力された復号化データ列に対して再生エラー
を抑制するための再生補償処理を実行する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばハードディ
スクドライブに適用し、特にパーシャルイレージャ(P
E)現象を要因とする再生エラーの発生を防止するため
の機能を備えた磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、特にパーソナルコンピュータなど
に内蔵される小型のハードディスクドライブ(HDD)
は、図9に示すように、金属製の筐体93の中にディス
クドライブ機構が組み込まれている。筐体93は、同図
(B)に示すように、トップカバー90により密閉され
た状態でパーソナルコンピュータなどに組み込まれる。
【0003】ディスクドライブ機構は大別して、スピン
ドルモータ2によりディスク1を回転させるディスク回
転機構、ヘッド3をディスク1上の半径方向に移動させ
るヘッド駆動機構、およびデータ記録再生処理回路を有
する。ヘッド駆動機構は、ヘッド3を搭載しているヘッ
ドサスペンション91を保持して、ボイスコイルモータ
94により駆動するアクチュエータアーム92を有す
る。このヘッド駆動機構により、ヘッド3はディスク1
上のアクセス対象の位置(トラック)に位置決めされ
る。なお。ヘッドの位置決め制御は、ディスク1上に記
録されたサーボ情報に基づいて、ドライブのメイン制御
装置を構成するCPUにより実行される。
【0004】近年、ヘッド3としては、MR(magn
etoresistive)ヘッドを再生専用のリード
ヘッドとして使用し、記録用のライトヘッドとして誘導
型ヘッドを使用した記録再生分離型ヘッドが注目されて
いる。記録再生分離型ヘッドは、同一スライダにリード
ヘッドとライトヘッドとが一体的に組み込まれた構造で
ある。
【0005】データ記録再生処理回路は、ディスク1か
らヘッド3により読出されたリード信号からデータを再
生するデータ再生系と、ホストコンピュータから転送さ
れたライトデータを記録電流に変換してヘッド3に出力
するデータ記録系とからなる。ヘッドアンプ回路12は
再生用アンプと記録用アンプとを有し、ヘッド3からの
リード信号を増幅し、またヘッド3への記録電流を出力
する。リードデータとライトデータは、フレキシブルケ
ーブル95を介してホストコンピュータとの間で交換さ
れる。ドライブとホストコンピュータ間のデータ転送
は、ドライブの内部に配置されているホストインターフ
ェース(ディスクコントローラ)により実行される。
【0006】HDDは、図8に示すように、データ記録
再生処理回路からなる記録再生処理系により、ディスク
1にデータを記録する記録動作およびディスク1からデ
ータを再生する再生動作を実行する。まず、データ記録
動作では、ホストコンピュータから転送されたライトデ
ータ(記録情報)WDはホストインターフェース39を
介して入力される。ライトデータWDは前処理回路38
を経てスクランブラ7に入力される。スクランブラ7は
ランダマイザ(randomizer)とも呼ばれてお
り、ライトデータのデータパターンに対して疑似乱数化
のコード処理を実行する。即ち、スクランブラ7は、デ
ータ再生動作時の復号化処理時に、復号特性による復合
誤りに偏りが発生しないように、データパターンのラン
ダム化に相当する処理を実行する。符号回路6は、記録
再生の対象とする伝送路特性に応じた記録符号情報(例
えばRLL符号化による8−9変換符号)に符号化し、
記録データパターンP1を出力する。
【0007】ここで、HDDでは、ディスク1とライト
ヘッド20との相互特性により、データ記録時に非線形
性の記録歪みが発生することが知られている。このた
め、データ記録時にその記録歪みを補償するための記録
用の歪み補償回路5が設けられている。歪み補償回路5
は、符号化された記録データパターンP1を非線形性の
歪み補償処理した記録電圧パターンP2に変換する。記
録電圧パターンP2は、ヘッドアンプ回路12の記録用
アンプ(電圧/電流変換アンプ)14により記録電流パ
ターンに変換されて、ライトヘッド20に出力される。
このライトヘッド20から記録電流パターンに応じた記
録磁界が発生して、ディスク1の指定位置(アクセス対
象のセクタ)に磁気飽和状態で記録される。
【0008】次に、データ再生動作では、リードヘッド
21がディスク1上から記録情報を検出して、電気信号
であるリード信号に変換して出力する。前述したよう
に、リードヘッド21はMRヘッドであり、ディスク1
上の磁化の存在状態を検出し電気信号に変換する。ヘッ
ドアンプ回路12の再生用アンプ13は、リードヘッド
21からのリード信号を増幅して自動利得調整機能を備
えたアンプ(AGCアンプ)30に出力する。AGCア
ンプ30は、スピンドルモータ2の回転変動、ヘッド3
の浮上高変動、記録半径位置等により生じる振幅変動を
吸収し、リード信号の振幅値を一定に設定する。イコラ
イザ(等化器)31は、磁気記録の特徴を反映する伝送
路特性に合致するように、リード信号である再生信号波
形を波形整形する。
【0009】サンプラ32はクロック抽出回路35から
出力されたチャネルクロックに同期して、リード信号の
レベルをサンプリングしてホールドする。なお、データ
再生系がアナログ系であれば、サンプラ32はサンプル
・ホールド回路である。また、データ再生系がディジタ
ル系であれば、サンプラ32はA/D変換回路である。
【0010】再生信号は通常では、波形整形の確度を向
上させるため適応型イコライザ33により等化(誤差吸
収)されて、復号回路36に送られる。復号回路36
は、符号化前の情報であるライトデータWDに復号化す
る。ここで、データ再生系がPRML(Partial
Response Maximum Likelih
ood)方式であれば、復号回路36はビタビ(vit
erbi)復号回路および記録復号化回路(通常ではN
RZ復号化)を含む。復号化された再生データは、同期
合わせ等のポスト処理回路37を介してホストインター
フェース39に転送される。ホストインターフェース3
9は再生データをバッファメモリに保存し、ホストコン
ピュータに転送する。
【0011】ところで、従来の磁気ディスク装置では磁
気記録の伝送路特性を線形と仮定し、再生処理系は線形
過程の下で構成されている。しかしながら、磁気記録系
では、データ記録過程で非線形性が含まれている。この
ため、再生系のデータ再生過程において、データ記録過
程で発生する非線形性が非線形歪ノイズとして、再生信
号波形に再生エラーの要因となる悪影響を及ぼすことが
知られている。
【0012】データ記録過程で発生する非線形歪ノイズ
の要因としては、非線形ビットシフト現象とパーシャル
イレージャ(partial erasure、PEと
称する)現象とが確認されている。これらの非線形性要
因は、ディスク1の磁気記録媒体特性、ヘッド3の磁気
特性、さらに記録周波数などの各種の記録条件の組み合
わせにより変化する。一般に、ディスク1に対してライ
トヘッド20の記録磁界によるデータ記録動作が実行さ
れると、ディスク1上には磁化の向きが変化する磁化転
移と呼ばれる領域が形成される。即ち、ディスク1上の
記録位置に急峻な磁化の遷移が発生するような磁化転移
が形成される。データ再生動作では、リードヘッド21
により記録位置から磁化転移状態をピックアップし、そ
の磁気情報を電気信号に変換して元のデータを復元す
る。
【0013】このような磁気記録再生の基本原理におい
て、前述したように、データ記録過程時に非線形ビット
シフト現象が発生すると、本来磁化転移を形成すべき位
置からずれた位置に磁化転移が形成される。通常では、
非線形ビットシフト現象の影響を受けた磁化転移は本来
の記録位置より手前に記録される。この非線形ビットシ
フト現象は、前述したように、磁気記録媒体特性、ヘッ
ド3の磁気特性、さらに記録周波数などの各種の記録条
件の組み合わせにより変化する。そこで、従来では、デ
ータ記録再生系の設計時に、ディスク1のデータ記録密
度の最高記録密度(記録周波数)を規定し、採用するデ
ィスク1の媒体特性、ヘッド3の磁気特性やその他の記
録条件を決定した後に、非線形ビットシフト現象による
磁化転移の位置ずれ量を予め予測することが行なわれて
いる。この予測に基づいて、最大の非線形ビットシフト
量に対応する記録密度でデータを記録するときに、電気
的に記録位置を一定量遅延させることにより、本来の磁
化転移が形成されるべき記録位置に修正する処理が実行
されている。また、記録すべき連続したデータの前後の
関係から、非線形ビットシフトの補正量を決定する方法
もある。いずれにしても、非線形ビットシフト現象につ
いては、データ記録動作時に前置の記録補償処理により
抑制することが可能である。具体的には、図8に示すよ
うに、データ記録系の歪み補償回路5により記録補償処
理が実行される。
【0014】一方、前述のPE現象については、非線形
ビットシフト現象の場合と比較して、効果的な抑制方法
が開発されていない。PE現象とは、近接する磁化転移
間の一部分が磁気的に干渉を及ぼすことにより、急峻な
磁化転移の状態から崩れた形になってしまう現象であ
る。データ再生動作時に、リードヘッド21により崩れ
た磁化転移からピックアップされた再生信号波形は、理
想的な磁化転移からの再生信号波形と比較して振幅値が
劣化したものになる。この結果、線形過程下でのデータ
再生系に対して、非線形歪みとして影響を及ぼすことに
なり、データエラーの発生要因となる。ところで、PE
現象は、隣接する磁化転移の距離に大きく依存してお
り、ディスク媒体の磁性粒子の大きさや同一磁性を有す
る磁性粒子群の磁気特性によってもその影響度合いが異
なる。このようなPE現象については前記のように効果
的な抑制方法がなく、このためデータの記録再生動作時
での効果的な補償処理方法が開発されていない。
【0015】このため、従来では、PE現象が発生しな
いような特性を備えたディスク媒体やヘッドを開発し、
それらを組み合わせた最適な記録条件を求めて、この記
録条件をさらにディスク媒体やヘッドの開発にフィード
バックするという開発方式が採用されている。要する
に、PE現象を抑制するためには、ドライブに要求され
るデータ記録密度に対してPE現象が発生しないような
ディスク媒体やヘッドなどの磁気記録再生系の要素を開
発する必要がある。
【0016】ところで、近年では、パーソナルコンピュ
ータの高性能化に伴って、HDDに対する記憶容量の増
大化の要求が高まっているため、ディスク1枚当たりの
記録密度の高密度化が推進されている。このような要求
に対して、前述したように、再生効率の優れたMRヘッ
ドを使用した記録再生分離型ヘッドや、強力な記録磁界
の発生が可能なライトヘッドの採用が検討されている。
さらに、リードヘッドとしては、従来のMRヘッドより
も再生感度の優れた巨大磁気抵抗効果型ヘッド(GMR
ヘッド)の採用も検討されている。また、前述したよう
なPRML方式のデータ記録再生系や、磁気記録特性の
優れたディスク媒体の開発が推進されている。しかしな
がら、ディスク媒体やヘッドのような磁気記録再生要素
を構成するデバイスの開発だけでは、近年の小型HDD
に対する超大容量化の要求に対処することは困難であ
る。そこで、磁気記録特性である非線形性の取扱いが重
要な課題となり、デバイスの開発と併せて、そのデバイ
スの弱点をカバーするようないわばシステム側からのア
プローチも検討する必要がある。
【0017】ところで、一般的にHDDの開発では、各
構成要素が相互に絡み合っているため、全てのフォーム
ファクタの比率を一定にする設計方針が採用されてい
る。このとき、過去に開発されたHDDの設計を基本と
して、最適設計の規範モデルが存在するという仮定の元
に、各種のHDDの開発が行なわれてきた。HDDの小
型化を図る場合には、その対象とする個々の要素に対し
て一方のサイズを縮小し、それに付随する他のサイズも
縮小するという設計方針で推進されている。この結果、
ディスクの一面当たりに記憶できる容量を拡大するた
め、面記録密度を向上させる場合においても、ディスク
の半径方向の記録密度であるトラックピッチと周方向の
記録密度であるビット密度との比は常に同程の割合で増
加することになる。また、個々の増加に付随する開発要
素のサイズも同程度の割合で変化してきた。これによ
り、トラックピッチの狭小化に伴うヘッド幅の狭小化
や、書き滲みに対する記録フリンジの低減対策などが行
なわれて、トラックピッチが狭まっていない時と同様の
状況が作り出されている。また、ビット密度向上に伴う
再生感度の優れたリードヘッドの採用や、シャープな記
録磁化転移が形成できるようにするための強い記録磁界
を発生できるライトヘッドの採用、ヘッドスライダの浮
上高の低減化、さらに個々の磁化転移同士の間隔が狭ま
ることによる磁化転移同士の干渉がなくなるように、デ
ィスク媒体の磁性粒子の大きさをコントロールするよう
な対策がなされている。このようにして設計されてきた
HDDは細部に至っては若干の違いはあるものの、結果
としてその設計値の比が最適設計の規範モデルに近い形
になっている。
【0018】ところが、HDDが開発され始めた当初は
製造技術の面、材料の面、コストの面など種々の設計マ
ージンが多分に含まれており、さらに、ヘッドやディス
ク媒体等の磁気特性の面においても余裕を持って設計さ
れていた。このため、従来の設計方針に基づいて開発さ
れるHDDでは上記の点の他にも様々な要因に基づいて
設計マージンがなくなりつつあり、同一設計方針では性
能の向上に限界が見え始めており、設計方針を徐々に変
更する必要がある。このような背景において、最近では
前述したように、再生感度の優れた磁気抵抗効果型素子
を用いたMRヘッドをリードヘッドとしての採用や、再
生波形の干渉具合を有効利用するPRML方式の信号処
理方式の採用により、記録ビット密度を飛躍的に向上さ
せることが可能になりつつある。
【0019】しかしながら、前記のMRヘッドやPRM
L方式などの新技術の採用にも関わらず、システム側の
記録密度向上に対する要求はますます高まっており、ト
ラックピッチとビット密度の縮小化が推進されている。
さらに、前述したように、通常ではHDDは、信号処理
系の回路量の増大化を抑制したり、また実際的であるな
どの理由により、線形系を仮定して設計されている。一
方、磁気記録系の記録過程は元来、非線形系であるた
め、その扱いが非常に複雑になる。このため、できる限
り、記録時に非線形系を含まないような記録過程を実現
するのが磁気記録システムの理想である。また、非線形
ビットシフト現象のように、ある程度対処可能な非線形
要因に関しては記録時に補償を行なうことにより、線形
系で構成されている再生処理過程に影響が及ばないよう
にしている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、デー
タ記録過程の非線形要因としては、非線形ビットシフト
現象の他にPE現象がある。このPE現象が発生する
と、ディスク上の磁気記録状態に伴う磁化転移は本来あ
るべき正常な形状から崩れた形状になるため、再生時の
データ系列に誤りが発生する要因となる。PE現象は隣
接磁化転移間の距離が狭まる高密度記録時に顕著となる
ため、高記憶容量化に伴って記録ビット密度を向上させ
る場合の大きな阻害要因となる。
【0021】現状では、PE現象に対して効果的な記録
補償方法は確認されておらず、ヘッドやディスク媒体、
または記録条件等の改善という方向から、高密度記録時
にPE現象の発生を可能な限り抑制するような対策が取
られている。このため、個々の要素開発にかなりの負担
が掛り、特にディスク媒体に対する磁性粒子の微細化や
ディスク全面に渡って均一な磁気特性を持たせるのよう
な高度な要求が強まっている。また、記録ビット密度が
高密度化してくると、PE現象の影響をますます受けや
すくなるため、磁性粒子の大きさ、あるいは同一磁気特
性を持つ磁性粒子群の大きさをこれまで以上に小さくす
る必要がある。
【0022】さらに、磁性粒子の大きさを前述した設計
方針に従って比率一定のもとで小さくしていくと、磁気
特性の経時変化による劣化という新たな問題も発生して
くる。このため、PE現象が確認されなかったような領
域において、時間の経過と共に、PE現象が発生し、再
生エラーレートの劣化するような事態となる。このた
め、ディスク媒体の開発は非常に困難なものとなり、こ
れに加えて、開発されたディスク媒体の特性を最大限に
発揮させるためのヘッドの開発も必要となるため、開発
全体に要する時間が多大となる。要するに、データ記録
過程の非線形要因であるPE現象を抑制することは困難
であり、さらに、ディスク上の記録場所により異なる磁
気特性に依存して発生するPE現象は磁気特性の経時変
化の影響を受け易いという問題がある。従って、特に高
密度記録のHDDを開発する上で、非線形歪みの要因と
なるPE現象を効率的に抑制する技術と共に、結果とし
てPE現象による非線形歪みを要因とする再生エラーを
減少させる再生系の改善が重要である。
【0023】そこで、本発明の目的は、第1に非線形記
録歪みの要因となるPE現象の発生を推定し、データ再
生動作時の再生補償を効果的に実行させて、結果的にデ
ータ再生動作時の復号化率を向上して再生エラーを減少
させることにある。さらに第2に、磁気特性の経時変化
の影響によるPE現象の発生を推定することにより、結
果的に経時変化による再生エラー特性の劣化をチェック
し、常に確実なデータ再生を実現することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、特に高
記録密度の磁気ディスクドライブに適用し、データ再生
動作時に、PE情報記憶手段に保存されたPEノイズ情
報に基づいて、データ再生手段から得られた再生信号波
形にPE(パーシャルイレージャ)現象によるPEノイ
ズが含まれていることを推定する推定手段を備えた装置
である。推定手段は、再生位置(データ記録位置単位で
あるセクタ)毎に再生信号波形の振幅異常値に基づいて
PE現象の発生を推定する。PE情報記憶手段は、デー
タ記録過程で発生するPE現象を要因とする振幅異常値
を検出するためのPEノイズ情報を予め保存している。
【0025】PE現象とは、ディスク媒体の磁性粒子等
の場所による不均一性、記録磁化転移間隔や磁気特性の
経時変化等によって発生する非線形性歪みの要因となる
現象である。本発明の推定手段は、再生信号波形の振幅
異常を検出することにより、個々のデータ領域に対して
データ記録状態の磁化転移の不完全性を検出し、PE現
象の発生を推定する。この推定結果により、PE現象が
発生していると推定されたデータ再生結果である復号化
データに対して所定の再生補償処理を実行する。
【0026】このような構成により、データ記録位置毎
にPE現象の発生を推定するため、PE現象の発生確率
の高い記録位置に対応する再生信号波形に対して効果的
な再生補償を行なうことが可能となる。具体的には、再
生信号波形の振幅異常値からPE現象の発生を推定した
ときに、復号化データ列に対して再生エラーを抑制する
ための再生補償を効果的に実行することができる。換言
すれば、ディスク上にPE現象が発生するような領域が
点在する場合でも、効果的な再生補償を利用することに
より、再生復号効率の劣化を抑制して再生エラーを現象
させることが可能となる。
【0027】さらに、本発明の第2として、データ記録
位置毎にPE現象の発生を推定するために使用するPE
ノイズ量を測定し、PE情報記憶手段に保存するPE測
定手段を備えた装置である。このPE測定手段は、PE
ノイズ量を測定するための測定用データを前記ディスク
上に記録するための測定用データ記録手段と、測定用デ
ータに対応する再生信号波形情報を記録位置毎に記憶す
る測定用データ再生手段と、PEノイズ量を算出するノ
イズ算出手段とを有する。
【0028】このような構成により、所定の時間経過毎
にPE測定手段を実行させるPE測定管理手段を設ける
ことにより、定期的にPEノイズ量を測定してPE情報
記憶手段に保存した情報を更新することができる。従っ
て、ディスクの経時変化に影響して以前ではPE現象が
発生しない領域であっても、磁気特性の経時変化により
PE現象が発生したことを確実に検出し、結果的に経時
変化に伴う再生エラーレートの劣化を補償することがで
きる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施
の形態を説明する。図1は第1の実施形態に関係するH
DDのデータ再生システムの要部を示すブロック図であ
り、図2は本実施形態の動作を説明するためのフローチ
ャートである。 (システム構成)本実施形態のHDDは、ヘッド3とし
てMRヘッドを使用したリードヘッド21とライトヘッ
ド20とが同一スライダに組み込まれた記録再生分離型
ヘッドを採用し、さらにPRML方式の記録再生信号処
理系を採用したディスクドライブを想定している。
【0030】さらに、本実施形態のHDDに採用したデ
ータ再生システムは、図1に示すように、通常のデータ
再生回路系にPE現象の推定・補償回路40が付加され
た構成である。PE現象の推定・補償回路40はディジ
タル処理系からなり、主構成要素としてPE判定回路
(磁気記録の不完全磁化転移推定手段)41とPE補償
回路(再生補償手段)48とを有する。
【0031】これ以外の構成要素として、推定・補償回
路40は、A/D変換回路47と、同期コントローラ4
6と、ノイズ設定回路42と、PEノイズ参照回路43
と、PEノイズテーブル44と、通常ノイズテーブル4
5とを有する。A/D変換回路47は、適応型イコライ
ザ33から出力された再生信号波形を、クロック抽出回
路35からのサンプリング・クロックに同期して量子化
(サンプリング周期によね波形の離散化)し、ディジタ
ル値の再生波形情報をPE判定回路41に出力する。な
お、通常のデータ再生回路系がディジタル系であれば、
データ再生回路系に含まれるA/D変換回路からの出力
をPE判定回路41に供給する構成でもよい。
【0032】PE判定回路41は、A/D変換回路47
からの再生波形情報をノイズ設定回路42により設定さ
れる判定条件に基づいて判定し、再生波形情報にPEノ
イズまたは通常ノイズが含まれている否かを推定する。
ノイズ設定回路42は、PEノイズ参照回路43を経由
してPEノイズテーブル44からPEノイズ情報または
通常ノイズテーブル45に保存されている通常ノイズ情
報(いわゆるシステムノイズ量)を判定条件としてPE
判定回路41に送出する。PEノイズテーブル44は、
予め測定されたPEノイズ量(PE現象の発生に伴う再
生信号波形の振幅異常値)を、記録密度とセクタ情報と
共に保存しているPE情報記憶手段である。PEノイズ
量は、具体的には後述する本発明の第2の実施形態に示
す測定方式により測定されて、PEノイズテーブル44
に保存されたものである。
【0033】PE補償回路48はPE判定回路41によ
りPE現象の発生が推定されると起動し、同期コントロ
ーラ46による同期により復号回路36からの復号化デ
ータ列を入力して、所定の再生補償処理(PE判定結果
の反映)を実行する。また、PE現象ではなく通常のシ
ステムノイズの場合でも、PE補償回路48は所定の再
生補償処理であるエラー訂正処理を実行する機能を含
む。なお、PE判定回路41によりPEノイズまたは通
常ノイズも含まれていないと判定された場合には、PE
補償回路48は復号回路36からの復号化データ列をそ
のまま通過させて、ポスト処理回路37に出力する。
【0034】なお、通常のデータ再生系とヘッド駆動系
は、図8を参照して説明した従来のHDDに実装されて
いるのと同様である。即ち、ヘッドアンプ回路12の再
生用アンプ13は、リードヘッド21からのリード信号
を増幅して自動利得調整機能を備えたアンプ(AGCア
ンプ)30に出力する。AGCアンプ30はリード信号
の振幅値を一定に設定するためのアンプであり、ゲイン
コントローラ34によりゲインを制御される。イコライ
ザ(等化器)31は、磁気記録の特徴を反映する伝送路
特性に合致するように、リード信号である再生信号波形
を波形整形する。サンプラ32はクロック抽出回路35
から出力されたチャネルクロックに同期して、リード信
号のレベルをサンプリングしてホールドするサンプル・
ホールド回路である。なお、データ再生系がディジタル
系であれば、サンプラ32はA/D変換回路である。さ
らに、復号回路36は、適応型イコライザ33により波
形整形された再生信号を符号化前の情報であるライトデ
ータWDに復号化する。ここで、データ再生系がPRM
L(Partial Response Maximu
m Likelihood)方式であれば、復号回路3
6はビタビ(viterbi)復号回路および記録復号
化回路(通常ではNRZ復号化)を含む。 (本実施形態のデータ再生動作)以下、図2のフローチ
ャートを参照して、本実施形態のデータ再生動作を説明
する。
【0035】まず、ホストインターフェース39を介し
てホストコンピュータからリードコマンドが転送される
と、図示しないHDDのCPU(ドライブの制御装置)
はVCM94を駆動制御して、リードヘッド21を目標
位置(アクセス対象のセクタを含むトラック)までシー
クさせて位置決めする(ステップS1,S2)。リード
ヘッド21は位置決めされたディスク1上の目標位置
(データ記録位置である指定セクタ)から磁気記録デー
タを読出し、電気信号であるリード信号(再生信号波
形)に変換してデータ再生系に出力する(ステップS
3)。
【0036】従来では、通常のデータ再生回路系によ
り、リードヘッド21により読出されたリード信号は所
定の再生処理が実行されて、最終的に復号回路36によ
り復号化データ列に変換される(ステップS4,S
5)。さらに、ポスト処理回路37により所定の処理が
なされた後に、ホストインターフェース39を介してホ
ストコンピュータに転送される。 (PE推定動作)ここで、本実施形態では、PE現象の
推定・補償回路40により、PE現象の発生に伴うPE
ノイズが再生信号波形に含まれている場合には、復号回
路36からの復号化データ列にはエラーが発生している
と推定し、PE補償回路48による再生補償処理(換言
すればエラー訂正処理)が実行される。
【0037】以下、本実施形態のPE判定回路41を主
構成要素とするPE推定方式の動作について、図3と図
4を参照して説明する。リードヘッド21の読出し動作
に伴って、データ再生回路系のイコライザ33から、図
3(A)に示すような再生信号波形が得られたと想定す
る。図3(A)において、黒点は適切なサンプリング周
波数でサンプリングされる再生信号波形のポイントを示
す。この再生信号波形が復号回路36により復号される
場合、図中のダイビットパターンA,Bの近傍では「0
0011000」の復号化データ列が得られる。この再
生信号波形にはPE現象による非線形歪みが含まれてい
ないため、波形A,Bのサンプル点では正確にデータを
復元することができる。なお、「±P」は論理レベル
「0/1」の判定基準レベルである。このような再生信
号波形に対しては、結果的にPE判定回路41によりP
E現象(PEノイズ)が発生していないと判定されるた
め、PE補償回路48は動作せずに、復号回路36から
の復号化データ列「00011000」をそのままポス
ト処理回路37に送出する(ステップS6,S7,S
9)。
【0038】一方、図3(B)に示すように、再生信号
波形のダイビットパターンA,Bの近傍において、サン
プル点bでPE現象が発生し、振幅異常が生じていると
想定する。このような再生信号波形では、復号回路36
により復号される場合、復号化データ列は「0001x
000」となり、サンプル点bに相当するデータ(x)
がノイズ状況(確率過程に依存)に伴ってエラーとなる
可能性がある。
【0039】以上のようなPE現象の発生を、PE判定
回路41は以下のような推定過程により判定する。即
ち、PE判定回路41は、図4に示すように、再生信号
波形の振幅値範囲に対して、負波形側にPE判定基準と
して使用する基準レベル「−Pe」によりPE現象が発
生しているか否かを判定する。通常では、負波形側の判
定基準は「−P」であるが、本実施形態ではPE判定基
準「−Pe」を含む新たな判定範囲「−P±Pn」を設
定する。ここで、「±Pn」の範囲(図中の斜線領域)
とは、PE現象とは異なる通常ノイズ(HDDのシステ
ムノイズ)による通常ノイズ量である。
【0040】PE判定回路41は、通常ノイズテーブル
45からの通常ノイズ情報(判定範囲「−P±Pn」に
相当する判定情報)に基づいて、再生信号波形のサンプ
ル点bのデータが不定であることを判定する。ノイズ設
定回路42は、通常ノイズ情報と共に、PEノイズ参照
回路43によりPEノイズテーブル44から読出したP
Eノイズ情報(PE判定基準「−Pe」)をPE判定回
路41に送出する。PE判定回路41は、再生信号波形
のサンプル点bが判定範囲「−P±Pn」に存在し、か
つPE判定基準「−Pe」に基づいてPE現象による非
線形歪みが発生して磁化転移が崩れていると推定する。
なお、ここでは再生信号波形の振幅値範囲に対して負波
形側に判定範囲を設定した場合について述べたが、当然
ながら正波形側にも設定し、同様の推定過程によりPE
現象の発生を判定する。
【0041】以上のような推定過程により、PE判定回
路41は、A/D変換回路47により得られた再生信号
波形情報の振幅値とPEノイズテーブル44に保存され
たPEノイズ情報(予め測定されたPE現象による振幅
異常値)とを比較して、PE現象の発生を判定する(ス
テップS6)。PE判定回路41は、PE現象の発生に
より再生信号波形を復号回路36により復号化したとき
に、不定なデータが含まれていることをPE補償回路4
8に通知する(ステップS8)。PE補償回路48はP
E判定回路41からの通知により起動し、復号回路36
からの復号化データ列に対する再生補償処理(エラー訂
正処理)を実行する。具体的には、復号化データ列「0
001x000」において、サンプル点bに相当するデ
ータ(x)を正常なデータ(ここでは1)に訂正する。
【0042】以上のように本実施形態によれば、PE現
象の推定・補償回路40により、予め用意されたPEノ
イズテーブル44に保存されたPEノイズ情報に基づい
て再生信号波形情報からPE現象の発生を推定して、そ
の復号化データ列(ここではセクタ単位)に対する再生
補償処理を実行する。従って、ディスク1上の再生位置
であるセクタにPE現象による非線形歪みが発生してい
る場合でも、その影響を受けたデータを特定することに
より、再生補償することが可能である。即ち、PE現象
により復号化データ列にエラーが発生している場合で
も、そのエラーを推定することにより、エラー訂正処理
を実行して結果的に復号化率を向上させることができ
る。
【0043】これにより、PE現象は磁気記録系におい
て、特に隣接記録磁化転移の間隔が狭くなった時に不完
全磁化転移の形成として発生しやすいため、本実施形態
を適用することにより、特に高密度記録のデータ再生動
作における再生エラーレートを向上することができる。
従って、PE現象の発生に伴う非線形歪みの起因を抑制
するための特別の開発技術を要することなく、PE現象
による非線形歪みに対する効果的な再生補償を実現し
て、高密度記録での確実なデータ再生動作を実現するこ
とができる。 (第2の実施形態)第2の実施形態は、内部にPEノイ
ズ情報測定装置を設けて、特にディスク1の経時的変化
に伴ってPEノイズテーブル44のPEノイズ情報を更
新する機能を備えたHDDである。以下、図5、図6、
図7を参照して説明する。
【0044】本実施形態のPEノイズ情報測定装置は、
図5に示すように、測定パターンを記録するための測定
用記録系および測定パターンを再生してPEノイズ量を
測定してPEノイズテーブル44に保存する測定用再生
系からなる。測定用記録系は、ライトヘッド20と、記
録アンプ14と、記録パターン発生回路58と、ライト
ゲート発生回路57と、記録密度設定回路56とを有す
る。
【0045】本実施形態では、HDDのCPUが所定の
時間経過毎に、PEノイズ量を測定する測定動作を実行
し、PEノイズ情報を更新する処理を実行することを想
定する(PE測定管理手段)。CPUは測定動作を開始
すると、ライトヘッド20をディスク上の指定位置にシ
ークさせて、測定の記録パターンを書込む動作を実行さ
せる(ステップS10,S11)。具体的には、記録密
度設定回路56とライトゲート発生回路57には、シス
テム仕様の基準クロック(システムクロック)と指定し
た位置を示すセクタ情報がCPUの制御により供給され
る。本実施形態では、セクタ単位でPEノイズ量の測定
を行なうことを前提としている。
【0046】記録パターン発生回路58は、記録密度設
定回路56により設定される記録周波数及びライトゲー
ト発生回路57からのライトゲート(記録タイミング)
に従って、測定用の記録パターンを記録アンプ14を介
してライトヘッド20に供給する。ライトヘッド20は
指定されたセクタ領域に、測定用記録パターンを書込
む。この測定用記録パターンは、PE現象の測定に適し
た繰り返しパターンからなる。
【0047】次に、CPUはリードヘッド21を指定位
置にシークさせて、記録した測定用記録パターンの読出
し動作を実行させる(ステップS12,S13)。測定
用再生系では、リードヘッド21により読出されたリー
ド信号は、再生アンプ13とAGCアンプ30を経て帯
域制限フィルタ(BPF)54に入力される。BPF5
4は、PE現象による磁化転移状態を忠実に再生波形に
反映させるためフィルタであり、記録密度設定回路56
によりBPF定数設定部55を介してカットオフ周波数
のフィルタパラメータが設定される。A/D変換回路5
0は、サンプルホールド回路(サンプラ)32によりサ
ンプルホールドされた再生信号波形をディジタル値の再
生信号波形情報に変換してメモリ51に保存する(ステ
ップS14,S15)。
【0048】以上のような測定用記録パターンの書込み
動作と読出し動作とからなる処理過程を、記録密度を変
化させて、かつ指定したセクタ単位の全記録領域(例え
ば1トラック分)に対して繰り返し実行し、各記録密度
と各セクタ毎の再生信号波形情報をメモリ51に保存す
る(ステップS16)。
【0049】次に、CPUの制御によりノイズ算出回路
52は、メモリ51から取り出した再生信号波形情報
と、振幅値テーブル53に予め保存された理想再生波形
情報とを比較する(ステップS17,S18)。振幅値
テーブル53には、ディスク媒体の特性、ヘッド3の特
性および各種の記録条件に基づいて設定された理想再生
波形に対する振幅特性情報が記録密度毎に保存されてい
る。ノイズ算出回路52は、振幅値テーブル53の振幅
特性情報を使用して、PE測定用に記録した記録周波数
に相当する記録密度の理想再生波形情報(基準再生波形
情報)を演算により求める。そして、ノイズ算出回路5
2はメモリ51から取り出した再生信号波形情報と理想
再生波形情報とを比較して、両者の誤差量(振幅特性誤
差量)を算出する。この算出した誤差量に基づいて、理
想再生波形に対する波形の崩れ度合いを計算する。即
ち、ノイズ算出回路52は、算出した誤差量に基づいて
PE現象によるPEノイズ量を測定し、PE現象の発生
を推定する(ステップS19)。測定したPEノイズ量
をPEノイズ情報として、PEノイズテーブル44に保
存する(ステップS20)。PEノイズ情報にはPE現
象の発生した記録位置(セクタ)および記録周波数(記
録密度)の各情報が含まれる。また、通常ノイズテーブ
ル45には、従来のPE現象に依存しないシステムノイ
ズによる通常ノイズ量が記録位置(セクタ)および記録
周波数(記録密度)と共に保存される。
【0050】ここで、PE現象が発生しない場合の誤差
量は、確率過程に従ったノイズ量とディスク媒体から発
生するメディアノイズ量との合計値となり、図4に示す
ように、判定範囲「±Pn」となる。また、PE現象の
発生している部分ではノイズ誤差量の増加としてその発
生を推定することが可能となり、この誤差量を本来ある
べき振幅値から取り除いた量が図4に示す「−Pe」に
相当する量となる。前記の絶対値「Pe、Pn」は実デ
ータから適切な分散値に換算した結果を用いることも可
能である。
【0051】このような測定処理により、PE現象が発
生しやすい領域(セクタ)とPE現象が発生したときの
PEノイズ量(ノイズの増加量)を測定することができ
る。即ち、通常では記録周波数が高い領域ほど、PE現
象が発生しやすい。従って、記録周波数の高い領域を特
定することにより、PE現象の発生位置や発生頻度の測
定を効率的に行なうことができる。逆に、記録周波数の
低い領域では、PE現象よりも、回路系などの確率過程
に従ったシステムノイズなどのPE現象に起因しない通
常ノイズ量として測定することが可能である。
【0052】図6は前述の測定過程における再生信号波
形情報を示すものである。同図(A)は通常ノイズ量を
測定するための孤立波形の波形情報である。同図(B)
は同図(A)の孤立波形から理想孤立波形を取り除いた
場合のノイズ量を示す。同様に、同図(C)は高記録密
度で記録した際にPE現象が発生した場合の再生波形S
pと理想再生波形Sを示している。同図(D)は同図
(C)のSからSpを取り除いたノイズ量を示してい
る。同図(B)と同図(C)のノイズ量からPE現象に
よる劣化ノイズ量Npeが測定できる。また、1−Np
e量が図4のPeに相当する量である。
【0053】以上のように本実施形態によれば、PEノ
イズ情報を測定するためのPEノイズ情報測定機能を有
するHDDを構成することができるため、定期的にディ
スク1上のPE現象が発生した領域を検出し、そのPE
ノイズ量を測定してPEノイズテーブル44に保存する
ことができる。従って、ディスク1の経時変化により、
以前は発生していなかった領域にPE現象が発生してい
た場合に、それを検出してPEノイズテーブル44に保
存されているPEノイズ情報を更新することができる。
これにより、長期間に渡って磁気記録特性の経時変化に
よるPE現象の発生を監視し、常に更新されたPEノイ
ズ情報を利用して、データ再生動作時にPEノイズに対
する再生補償処理を実行することができる。また、定期
的なPE情報の測定処理により、PE現象の発生頻度の
著しく高い領域(セクタ)を特定することが可能であ
る。このような領域に対しては、例えばディフェクト領
域として設定し、代替セクタを割り当てるような処理を
行なうようにすれば、再生エラーレートを向上させるこ
とができる。
【0054】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、第
1に非線形記録歪みの要因となるPE現象の発生を推定
することにより、PE現象の発生に伴う再生エラーを抑
制するようにデータ再生動作時の再生補償を効果的に実
行させることが可能となる。従って、特に高記録密度の
データ再生動作時の復号化率を向上して、再生エラーレ
ートを向上させることができる。さらに、例えばセクタ
単位などの所定の領域毎にPE現象の発生を推定して再
生補償処理を実行できるため、必ずしもPE現象の発生
を抑制するためにディスク媒体の磁気特性を均一化する
などの特別の処理を必要としない。また、PE現象の発
生に伴って再生エラーが発生する領域を使用不可として
ディフェクト処理することなく、再生補償による復号化
率を向上させることができるため、ディスク上の記録有
効領域を増大化させることができる。本発明を特に高記
録密度のディスクドライブに適用することにより、従来
ではPE現象の発生による非線形歪み要因を抑制するた
めに、多大な開発コストを要するディスクやヘッドの構
成要素の開発などを緩和することができる。即ち、本発
明によればPE現象の発生による非線形歪み要因を抑制
することなく、結果的にデータ再生動作での復号化率を
向上させることにより、高記録密度のHDDの開発コス
トを大幅に節約することが可能である。
【0055】さらに第2として、本発明のPEノイズ測
定機能をHDDに組み込み、定期的な測定処理を実行す
ることにより、磁気特性の経時変化の影響によるPE現
象の発生を推定することができる。従って、ディスクの
経時変化による再生エラー特性の劣化を監視し、常に確
実なデータ再生を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に関係するHDDのデ
ータ再生システムの要部を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態の動作を説明するためのフロー
チャート。
【図3】第1の実施形態の動作を説明するための再生信
号波形図。
【図4】第1の実施形態の動作を説明するための再生信
号波形図。
【図5】第2の実施形態に関係するHDDの要部を示す
ブロック図。
【図6】第2の実施形態の動作を説明するための再生信
号波形図。
【図7】第2の実施形態の動作を説明するためのフロー
チャート。
【図8】従来のHDDの記録再生系の要部を示すブロッ
ク図。
【図9】従来のHDDの構造を示す斜視図。
【符号の説明】 1…ディスク 2…スピンドルモータ 3…ヘッド(記録再生分離型ヘッド) 5…歪み補償回路 6…符号回路 7…スクランブラ 12…ヘッドアンプ回路 13…再生用アンプ 14…記録用アンプ 20…ライトヘッド 21…リードヘッド 30…AGCアンプ 31…イコライザ(等化器) 32…サンプラ 33…適応型イコライザ 34…ゲインコントローラ 35…クロック抽出回路 36…復号回路 37…ポスト処理回路 38…前処理回路 39…ホストインターフェース 40…推定・補償回路 41…PE判定回路(推定手段) 42…ノイズ設定回路 43…PEノイズ参照回路 44…PEノイズテーブル(PE情報記憶手段) 45…通常ノイズテーブル 46…同期コントローラ 47…A/D変換回路 48…PE補償回路(再生補償手段) 50…A/D変換回路 51…メモリ 52…ノイズ算出回路 53…振幅値テーブル 54…帯域制限フィルタ(BPF) 55…BPF定数設定部 56…記録密度設定回路 57…ライトゲート発生回路 58…記録パターン発生回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G11B 20/18 572 G11B 20/18 572B 572F 576 576Z

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヘッドによりディスク上にデータを磁気
    的に記録及び再生する磁気ディスク装置であって、 前記ディスク上にデータを記録するときのデータ記録過
    程で発生するパーシャルイレージャ(PE)現象を要因
    とする再生信号波形の振幅異常値を検出するためのPE
    ノイズ情報を予め保存しているPE情報記憶手段と、 前記ディスクから前記ヘッドにより読出された再生信号
    波形からデータを再生するデータ再生手段と、 データ再生動作時に、前記PE情報記憶手段に保存され
    た前記PEノイズ情報に基づいて、前記データ再生手段
    から得られた再生信号波形にPE現象によるPEノイズ
    が含まれていることを推定する推定手段とを具備したこ
    とを特徴とする磁気ディスク装置。
  2. 【請求項2】 前記PE情報記憶手段には、前記ディス
    ク上のセクタ単位毎に、記録周波数および振幅異常値に
    関係するPEノイズ量を含むPEノイズ情報が保存され
    ており、 前記推定手段は前記データ再生手段から得られたセクタ
    単位の再生信号波形のディジタル値に、前記PEノイズ
    情報に基づいて前記PE現象によるデータエラーが発生
    していることを推定することを特徴とする請求項1記載
    の磁気ディスク装置。
  3. 【請求項3】 前記データ再生手段に含まれる復号化手
    段により復号化された再生データに対して再生補償処理
    を実行する再生補償手段を有し、 前記再生補償手段は前記推定手段の推定結果に基づい
    て、前記復号化手段から出力された再生データに対する
    エラー訂正処理を実行する機能を備えたことを特徴とす
    る請求項1記載の磁気ディスク装置。
  4. 【請求項4】 前記PEノイズ情報以外の通常ノイズ情
    報を予め保存した通常ノイズ情報記憶手段を有し、 前記推定手段は前記PEノイズ情報及び前記通常ノイズ
    情報の両者を参照して、前記データ再生手段から得られ
    た再生信号波形に含まれる振幅異常値に関係するノイズ
    がPEノイズまたは通常ノイズのいずれに相当するかを
    判定する機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の
    磁気ディスク装置。
  5. 【請求項5】 ヘッドによりディスク上にデータを磁気
    的に記録及び再生する磁気ディスク装置に適用し、前記
    ディスクから前記ヘッドにより読出されたリード信号を
    再生処理して再生データを出力するデータ再生システム
    であって、 前記ディスク上にデータを記録するときのデータ記録過
    程で発生するパーシャルイレージャ(PE)現象を要因
    とする再生信号波形の振幅異常値を検出するためのPE
    ノイズ情報を予め保存しているPE情報記憶手段と、 前記リード信号の再生処理により得られた再生信号波形
    から再生データに復号化する復号化手段と、 データ再生動作時に、前記PE情報記憶手段に保存され
    た前記PEノイズ情報に基づいて、前記リード信号の再
    生処理により得られた再生信号波形に前記PE現象によ
    るPEノイズが含まれているか否かを判定する判定手段
    と、 前記判定手段の判定結果に基づいて前記PEノイズが含
    まれているときに動作し、前記復号化手段により得られ
    た再生データにエラー訂正処理を含む再生補償処理を行
    なうためのデータ再生補償手段とを具備したことを特徴
    とするデータ再生システム。
  6. 【請求項6】 ヘッドによりディスク上にデータを磁気
    的に記録及び再生する磁気ディスク装置であって、 前記ディスク上の所定の記録位置毎にパーシャルイレー
    ジャ(PE)現象を要因とする再生信号波形の振幅異常
    値に関係するPEノイズ量を測定するための測定用デー
    タを前記ディスク上に記録するための測定用データ記録
    手段と、 前記ディスク上から前記測定用データを再生し、前記測
    定用データに対応する再生信号波形情報を記録位置毎に
    記憶する測定用データ再生手段と、 予め記録位置毎に記録周波数に基づいた理想の再生信号
    波形の振幅特性を示す基準波形情報を保存した基準情報
    記憶手段と、 前記測定用データ再生手段により記憶された記録位置毎
    の再生信号波形情報と前記基準情報記憶手段に保存され
    た基準波形情報とを比較し、両者の振幅特性の誤差情報
    に基づいて記録位置および記録周波数毎のPEノイズ量
    を算出するノイズ算出手段と、 前記ノイズ算出手段により算出されたPEノイズ量を記
    録位置および記録周波数毎に設定したPEノイズ情報テ
    ーブルを保存するためのPE情報記憶手段とを具備した
    ことを特徴とする磁気ディスク装置。
  7. 【請求項7】 所定の時間経過毎に前記PEノイズ量の
    測定動作を実行するためのPE測定管理手段を有し、 前記PE測定管理手段は前記ノイズ算出手段により前記
    ディスクの経時変化を考慮したPEノイズ量を算出し
    て、前記PE情報記憶手段に保存された前記PEノイズ
    情報テーブルを更新する機能を備えたことを特徴とする
    請求項6記載の磁気ディスク装置。
  8. 【請求項8】 データ再生動作時に、前記PE情報記憶
    手段に保存された前記PEノイズ情報に基づいて、再生
    信号波形にPE現象によるPEノイズが含まれているこ
    とを推定する推定手段と、 前記推定手段の推定結果に基づいて、復号化手段により
    前記再生信号波形を復号化して得られた再生データに対
    してエラー訂正処理を含む再生補償処理を実行する再生
    補償手段とを具備したことを特徴とする請求項6記載の
    磁気ディスク装置。
  9. 【請求項9】 前記ノイズ算出手段は前記測定用データ
    再生手段により記憶された記録位置毎の再生信号波形情
    報と前記基準情報記憶手段に保存された基準波形情報と
    を比較し、両者の振幅特性の誤差情報に基づいて記録位
    置および記録周波数毎のPEノイズ量または通常ノイズ
    量を算出し、 前記ノイズ算出手段により算出されたPEノイズ量を記
    録位置および記録周波数毎に設定したPEノイズ情報テ
    ーブルを保存するためのPE情報記憶手段と、 前記ノイズ算出手段により算出された通常ノイズ量を記
    録位置および記録周波数毎に設定した通常ノイズ情報テ
    ーブルを保存するための通常ノイズ情報記憶手段とを具
    備したことを特徴とする請求項6記載の磁気ディスク装
    置。
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