JPH10161043A - 可変波長光フィルター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 特性の揃った高反射膜の付いた低価格な干渉
フィルターおよび波長選択のために必要となる高精度で
かつ低価格な干渉フィルター移動手段をもつ可変波長光
フィルターを提供する。 【解決手段】 一方の主面にミラー膜１３、１４が形成
された一対のガラス板１１、１２が、前記ミラー膜１
３、１４が対向し間隙がテーパー状になるように配置さ
れてなる干渉フィルター１０を備え、前記干渉フィルタ
ー１０を貫き、前記一対のガラス板１１、１２を面対称
にする基準の対称面に、垂直に立つ軸を中心として、前
記干渉フィルター１０を回転する時、前記干渉フィルタ
ー１０へ入力する光の光軸を、前記軸に平行であって重
ならないように設定するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、波長多重された光
信号の中から任意の波長の光信号のみを通過させるため
に用いる可変波長光フィルターに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図８は、従来のこの種の光フィルターの
基本構成を示す平面図である。図中１、２は、一対のコ
リメートレンズであって、一定の間隔をもって同一光軸
上で互いに対向する位置に配置され、かつそれぞれに光
ファイバー３、４が接続されている。５は、二つ面を挟
む角度がαのテーパー状の厚さをもつ１枚のガラス板
で、該それぞれの面にはミラー膜６、７が施されてい
る。このガラス板５は、前記一対のコリメートレンズ
１、２の間隙に光軸を横切るように配置されている。

【０００３】この様な構成よりなる光フィルターにおい
ては、ガラス板５がミラー膜６、７によって、ファブリ
ペロー共振器型の干渉計フィルターとして機能するた
め、ガラス板５を図８に示した矢印のように直線的に移
動させることによって、共振器長が変えられ、これによ
って波長選択が行われる。例えば、光ファイバー３に異
なった波長の光が多重化された光信号が入射された場
合、ガラス板５を移動させると、選択すべき波長に一致
した共振器長となる板厚ｄとなった場合にのみ、その波
長の光がガラス板５を通過し、光ファイバー４から出射
される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、図８に示し
た構成の光フィルターを実際に作製する場合、通信用波
長帯の１５５０ｎｍ近傍の光信号用のガラス板５として
は、厚さｄは１０μｍ程度の極薄で、またαは０．００
５度程度の非常にわずかのテーパーが必要となる。さら
に、ガラス板５のミラー膜６、７を施す面の面精度はλ
／２０（λは光の波長）以上の高精度の研磨面でなけれ
ばならない。このような要求を満たすガラス板を作製す
ることは非常に困難であり、そのため非常に高価格とな
る。さらに、このように薄いガラス板を直線的に位置の
再現性を高度に保持したまま微動させる機構は複雑でか
つ使用する機構部品はかなり高精度の加工が必要となる
ため、移動機構装置も高価格となる。また、ミラー膜
６、７は優れたフィルター特性を得るために出来るだけ
特性が同一である必要があるが、通常行われる蒸着或い
はスパッタ技術では片面づつしかミラー付けを行えない
ので、特性の不一致が発生しフィルター特性が劣化する
等の欠点があった。

【０００５】本発明の目的は、特性の揃った高反射膜の
付いた低価格な透明な基板製干渉フィルターおよび波長
選択のために必要となる高精度でかつ低価格な干渉フィ
ルター移動手段をもつ可変波長光フィルターを提供する
ことにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明では、前記課題を
解決するため、一方の主面に高反射率膜が形成された一
対の透明な基板が、前記高反射膜が対向し間隙がテーパ
ー状になるように配置されてなる干渉フィルターと、前
記干渉フィルターを貫き、前記一対の透明な基板を面対
称にする基準の対称面に、垂直に立つ軸を中心として、
前記干渉フィルターを回転する手段と、前記干渉フィル
ターへ入力する光の光軸を、前記軸に平行であって重な
らないように設定する手段とを備えるようにした。

【０００７】本発明によれば、例えば間隙ｄが約１０μ
ｍ、テーパー角αが約０．００５度となる一対のミラー
膜で形成する干渉フィルターを、２枚の厚板状ガラス板
とスペーサとを使用して作れるため、極くわずかのテー
パー状の間隙が容易に得られる。また、ミラー付けをそ
れぞれのガラス板の片面に同一条件で同時に行えるの
で、特性の不一致の発生がなく、フィルター特性の劣化
を防止できる。また、間隙の異なる位置に光ビームが通
るようにすることが、干渉フィルターを回転する時の回
転中心を光ビーム通過位置と異なる位置に設定するだけ
で行うことができる。さらに、干渉フィルターの回転
を、例えばウォームギアを使用して行うことにより、高
精度の微動を容易に行うことができる。

【０００８】

【発明の実施の形態】図１は本発明の可変波長光フィル
ターの一実施の形態を示すもので、同図（ａ）は平面図
を、同図（ｂ）は側面図をそれぞれ示す。図中、１０は
２枚のガラス板で構成された干渉フィルターで、後に詳
述する。２０は円筒状の回転支持具であって、その軸方
向の一部には外周に歯車２０ａを形成した大径部２０ｂ
が形成されている。回転支持具２０の小径部２０ｃは、
軸受２１によって回転自在に支持されている。軸受２１
には、回転支持具２０の歯車２０ａに噛み合い、これを
回転させるウォームギア２２と、このウォームギア２２
を回転駆動させる駆動部２２ａとが取り付けられてい
る。２３は回転支持具２０の抜け止め用のビス、２４は
回転支持具２０の歯車２０ａとの間に生ずるバッククラ
ッシュを吸収するためのコイルバネで、それぞれ軸受２
１に取り付けられている。３０は軸受２１が固定された
支持台である。該支持台３０の両端には、一対のコリメ
ートレンズ１、２がそれぞれ固定具３１、３２によって
位置調整可能に固定され、互いの光軸を一致させたてい
る。さらに、コリメートレンズ１から出射された光が干
渉フィルター１０を通過し、さらに回転支持具２０の円
筒内部の空間を通過してコリメートレンズ２に入射する
ように、コリメートレンズ１および２、干渉フィルター
１０、並びに回転支持具２０は、それぞれの位置が設定
されて、支持台３０に取り付けられている。

【０００９】図２（ａ）（ｂ）（ｃ）は、本発明の主要
構成部品である干渉フィルター１０の詳細を示すもの
で、同図（ａ）は干渉フィルターを構成する２枚のガラ
ス板の展開図、同図（ｂ）は干渉フィルターの正面図、
同図（ｃ）は干渉フィルターの一方の内面を示す図であ
る。１１、１２は１５ｍｍ角で、厚さが３ｍｍの石英製
の平行平板状のガラス板であり、各ガラス板１１、１２
の両側面はλ／２０の面精度に研磨してある。ガラス板
１１、１２のそれぞれの一面には、波長１５５０ｎｍの
光に対して９５％の反射率をもつ誘電体ミラー膜１３、
１４が図に向かって上下両端の一部を残して蒸着されて
いる。この蒸着は、両端部をマスクしたそれぞれのガラ
ス板を蒸着装置内の蒸着源から等距離の位置に並べ、特
性が揃うようにして行った。なお、ガラス板１１、１２
の他の面には、波長１５５０ｎｍ用の無反射コートを施
した。干渉フィルター１０は、これら一対のガラス板１
１、１２をそれぞれのミラー膜１３、１４が向かい合う
ように重ねて貼り合わせて形成される。この際、ミラー
膜１３、１４の対向面の間にテーパー状の間隙を設ける
ため、貼り合わせ面側のミラー膜１３、１４が付いてい
ない両端部に図２（ｂ）（ｃ）に示すように、一端には
直径１２μｍのガラス球１５の入った接着剤を、他端に
は直径１０μｍのガラス球１６入りの接着剤を付けて貼
り合わせた。

【００１０】図３（ａ）（ｂ）は、干渉フィルター１０
の回転支持具２０への取り付け状態を示すもので、同図
（ａ）は正面図を、同図（ｂ）は側面図を示す。干渉フ
ィルター１０は、次の条件を満足するような位置に設定
されて、回転支持具２０に取り付けられる。すなわち、
コリメートレンズ１、２の光軸が図３の（ａ）（ｂ）に
示す干渉フィルター１０のＡ点を通過するように、回転
支持具２０の端面に直径１１μｍのガラス球１７の入っ
た接着剤で干渉フィルター１０が回転支持具２０に固定
される。このため、干渉フィルター１０は回転支持具２
０の回転軸に対して垂直に回転するとともに、Ａ点は回
転中心からずれているため、Ａ点を通過する光ビームか
ら見ると、回転につれてミラー膜１３、１４の対向面の
間隙寸法が変化する。

【００１１】図４（ａ）（ｂ）は回転機構部の詳細を示
すもので、同図（ａ）は側面図を、同図（ｂ）は正面図
をそれぞれ示す。図において軸受２１に挿入されている
回転支持具２０の小径部２０ｃには、その一部にキー溝
２５が形成されている。このキー溝２５には前記の抜け
止めビス２３の先端部が嵌合し、回転支持具２０の軸方
向の移動が制限されている。また、コイルバネ２４の一
端は回転支持具２０に固定されている。回転支持具２０
の回転は、図４（ｂ）に示すようにウォームギア２２の
回転で減速比１２０分の１で微動できるようになってお
り、ウォームギア２２の回転方向を変えた時に発生する
バックラッシュは、コイルバネ２４で制限されている。

【００１２】干渉フィルター１０が回転した時の傾斜し
たガラス板１１、１２への光ビームの入射および出射に
伴う光軸のずれについては、図５に示すように、光ビー
ムのコリメートレンズ１の出射点Ｂの位置とコリメート
レンズ２の入射点Ｃの位置は変わらず、例えば（ａ）の
場合のＢ、Ｃの位置と（ｂ）の場合のＢ’、Ｃ’の位置
は同一であり、ずれは無い。このため、干渉フィルター
１０の回転角の違いによる透過損失の変化は無い。

【００１３】以上説明したような機構であるため、図６
（ａ）（ｂ）に示すように、コリメートレンズ１から出
射された光ビームが、干渉フィルター１０の回転中心か
らｒだけ離れた位置を通過するとき、回転角φの時の共
振器長Ｚ（φ）は、回転中心における間隙をｄとした場
合、（ｂ）に示す式とグラフで示される結果となる。共
振波長ｗと共振器長Ｚ（φ）の関係は、ｗ＝２ｎＺ
（φ）／ｍ（ｎは間隙部の屈折率：今回は空気であるた
め、ｎはほぼ１に等しい、ｍは整数）で表されるため、
共振器長ｗは回転角φの変化とともに（ｂ）に示したグ
ラフと同様に変化を示すこととなる。

【００１４】実際に作製した干渉フィルター１０につい
てｄを測定すると、１０．９μｍ、ｔａｎ（α／２）は
０．００００７であった。光ビームの入射位置を回転中
心から４ｍｍ（ｒ＝４ｍｍ）として本発明のフィルター
装置を組立て、１５５０ｎｍ帯のＳＬＤ（スーパールミ
ネッセンスレーザダイオード）光を入射して光スペクト
ラムアナライザを用いて出射光の共振波長を測定した結
果（黒丸）を計算値（実線）とともに図７に示す。計算
値はｍ＝１４の時の値である。計算値とほぼ同一の測定
結果となり、また可変幅も従来装置では１０ｎｍ程度で
あったのに対し１５０ｎｍと大きくすることができ、ま
た、共振波長が最も大きく変化する位置でも、０．２ｎ
ｍ程度の調整はウォームギア２２の回転を手で行っても
容易にでき、また逆回転させても再現性は０．１ｎｍ以
下と、従来の装置の調整精度および再現性０．５ｎｍよ
りも優れた性能が得られるという改善があった。

【００１５】なお、入力光の偏波依存性に関しては、わ
ずかに傾斜したガラス板への入射の際に原理的には発生
するが、傾斜角が極くわずかなため、従来技術と同様に
検出不能に近く、実用には全く無依存であった。

【００１６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
一方の主面に高反射率膜が形成された一対の透明な基板
が、前記高反射膜が対向し間隙がテーパー状になるよう
に配置されてなる干渉フィルターと、前記干渉フィルタ
ーを貫き、前記一対の透明な基板を面対称にする基準の
対称面に、垂直に立つ軸を中心として、前記干渉フィル
ターを回転する手段と、前記干渉フィルターへ入力する
光の光軸を、前記軸に平行であって重ならないように設
定する手段とを備えるようにしたので、例えば間隙ｄが
約１０μｍ、テーパー角αが約０．００５度となる一対
の高反射膜で形成する干渉フィルターを、２枚の厚板状
ガラス板とスペーサとを使用して作れるため、極くわず
かのテーパー状の間隙が容易に得られる。また、高反射
膜付けをそれぞれのガラス板の片面に同一条件で同時に
行えるので、特性の不一致の発生がなく、フィルター特
性の劣化を防止できる。また、間隙の異なる位置に光ビ
ームが通るようにすることが、干渉フィルターを回転す
る時の回転中心を光ビーム通過位置と異なる位置に設定
するだけで行うことができる。さらに、干渉フィルター
の回転を、例えばウォームギアを使用して行うことによ
り、高精度の微動を容易に行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の可変波長光フィルターの一実施の形態
を示す構成図

【図２】本発明の主要構成部品である干渉フィルターを
示す構成図

【図３】干渉フィルターの回転支持具への取り付け状態
を示す構成図

【図４】回転機構部の詳細を示す構成図

【図５】光ビームの入射および出射に伴う光軸のずれに
ついての説明図

【図６】本発明の光フィルターの動作特性の説明図

【図７】本発明の光フィルターの動作特性の説明図

【図８】従来の光フィルターの構成図

【符号の説明】

１、２…コリメートレンズ、３、４…光ファイバー、１
０…干渉フィルター、１１、１２…ガラス板、１３、１
４…ミラー膜、２０…回転支持具、２１…軸受、３０…
支持台。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一方の主面に高反射率膜が形成された一
   対の透明な基板が、前記高反射膜が対向し間隙がテーパ
   ー状になるように配置されてなる干渉フィルターと、 前記干渉フィルターを貫き、前記一対の透明な基板を面
   対称にする基準の対称面に、垂直に立つ軸を中心とし
   て、前記干渉フィルターを回転する手段と、 前記干渉フィルターへ入力する光の光軸を、前記軸に平
   行であって重ならないように設定する手段とを備えた、 ことを特徴とする可変波長光フィルター。