【発明の詳細な説明】
ヒト免疫不全ウイルス感染に対する防御用合成ワクチン
本出願は、1992年3月27日出願の出願番号第07/858,361号の
一部継続(CIP)であり、それは1992年2月10日出願の出願番号第07
/832,849号のCIPであり、それは1990年10月1日出願の出願番
号第07/591,109号のCIPであり、それは1987年9月8日出願の
出願番号第07/093,854号のCIPである。
発明の背景
技術的分野
本発明は、概して、免疫製剤、そして特に、中和抗体が生産されるヒト免疫不
全ウイルス(HIV)エンベロープ蛋白質の部分に対応するアミノ酸配列を含む
ペプチドに関する。本発明は、更に、担体分子に対して直接的にかまたはスペー
サー分子を介して結合したペプチドを含む、ヒトのワクチン接種に適したワクチ
ンに関する。
背景情報
ヒトレトロウイルスHIVは、現在のところ治療法のない疾患である後天性免
疫不全症候群(AIDS)の原因物質であると実証されている。AIDS関連症
状の中での疫学的パターンは、それが伝播性疾患であることを示している。ウイ
ルスは、しばしば、男性同性愛者、静脈注射用薬物使用者、血液製剤受容患者を
含む高危険率部類の個体並びにハイチおよび中央アフリカ出身の個体からの唾液
、精液、全血および血漿中で見出される。高危険率部類の個体の中での血清陽性
の急速な上昇、疾患の病原性およびその世界中に広がりつつある分布は、未感染
個体において完全な防御免疫を引き起こすことができるワクチンに対して圧倒的
に強い且つ緊急な要求を強くしている。生物試料中のHIVに対する抗体の存在
について検査するのに用いるための診断用試薬に対する要求もまた明らかである
。
従来の研究は、HIVが、その外側エンベロープ糖蛋白質(gp120)をT
リンパ球の表面上のCD4(T4)分子に対して付着させ、それによってCD4
(T4)分子を受容体として用いてT細胞に入り且つ感染することによって免疫
系のTリンパ球に感染することを実証してきた。細胞に感染後、ウイルスは、ウ
イルスに抵抗するT細胞の能力を破壊する。
レトロウイルスエンベロープ糖蛋白質は、インビトロでHIV感染を阻止する
抗エンベロープ抗体含有血清の能力によって決定されるように、ウイルス中和抗
体反応を引き起こすのに重要であることが分かっている。具体的に、HIV外側
エンベロープ糖蛋白質gp120は、ヤギおよびヒトにおいて中和抗体を誘導し
うることが分かっている(ロビー(Robey)ら、Proc.Nat′l.A cad.Sci.(USA)
83:7023,1986年)。HIV感染患者
において免疫原性であるかまたは中和抗体を生じるgp120上のエピトープの
正確な位置はほとんど知られていない。しかしながら、gp120分子全体の約
3分の1をコードする組換え体蛋白質PBI(プトニー(Putney)ら、S cience
,234:1392,1986年)は、中和抗体の生成を引き起こ
すエンベロープ蛋白質の部分を包含することが分かった。
これまでに蓄積されたデータは、PBIも自然のままのgp120も、HIV
感染に対するワクチンとして用いるには不適当であることを示唆している。ヤギ
およびチンパンジーの使用を含む研究は、どちらの分子にも中和抗体の高力価の
産生を引き起こす能力がないことを実証している。更に、自然のままのgp12
0分子は正常なT細胞のT4分子に対して結合し且つ正常な免疫機能を破壊しう
ることが分かった。具体的には、gp120エンベロープ分子全体が、正常なC
D4(T4)機能を妨げ且つインビトロでのT細胞活性化を抑制する(マン(M
ann)ら、J.Immunol.138:2640,1987年)。したがっ
て、外側エンベロープ糖蛋白質の大部分を含むワクチンの投与は、実際に、正常
な免疫系に対して有害でありうる。
gp120の本質的中和ドメイン(V3gp120エンベロープループ部分)
のHIV配列多様性および急速なV3ループ配列突然変異率は、ワクチン開発の
ために克服すべき主な障害であることが明らかになった(マイアーズ(Myer
s)ら、Human Retroviruses and AIDS 1991
;ラ・ロサ(La Rosa)ら、Science,249:932〜935,
1990年;およびホリー(Holley)ら、PNAS(USA),88:6
800〜6804,1991年)。それにもかかわらず、gp120 V3部分
が抗HIV中和抗体の生成において決定的な役割を果たしていることを示すため
に研究が続けられている(ジャン(Jiang)ら、J.Exp.Med.17
4:1557〜1593,1990年)。更に、最近になって、現在のHIV単
離物の約50%が、HIV MN単離物に似ているV3配列の一致を共有してい
ること、および米国でのHIV単離物の約80%が4種類の最も一般的なHIV
配列の一つを共有していることが分かった(マイアーズら、Human Ret roviruses and AIDS 1991
;ラ・ロサら、Scienc e
,249:932〜935,1990年;およびホリーら、PNAS(USA )
,88:6800〜6804,1991年)。更に、これらの配列の内の二つ
、GPGRAFおよびIHIGPGRAは、動物において広範囲に交差反応性の
HIV中和抗体を生じた(ジャハベリアン(Jahaverian)ら、Sci ence
,250:1590〜1593,1990年およびヘインズ(Hayn
es)ら、AIDS Res.Humans.Retroviral,6:38
〜39,1990年)。
したがって、HIVに対するワクチンの開発にとって重要なのは、CD4(T
4)分子とのgp120相互作用を妨げるが、正常なT細胞応答の極めて多数の
段階が仲介するCD4(T4)分子の主要な正常機能であるクラスII主要組織
適合性分子との正常なCD4(T4)相互作用を妨げないgp120に対する抗
体反応を生じさせることである。更に、HIVに対する有効なワクチンは、霊長
類およびヒトにおいて防御免疫応答を引き起こす、すなわち、後にHIV感染が
起こるのを防止する。
HIV株の約80%に対して健全な(防御的)抗HIV免疫応答を引き起こし
た免疫原は、少なくとも3種類の状況において大きな臨床的用途を有するであろ
う。第一に、高危険率でHIVに感染すると考えられるHIV陰性IV薬物使用
者、在監者および同性愛者の免疫感作に成功すれば、AIDS蔓延の進行を有意
に遅らせるであろう。第二に、妊娠3か月までのHIVに感染した母親の免疫感
作が健全な抗HIVウイルス応答を引き起こし且つHIVの伝播を80%まで減
少させることができた場合、母体−胎児HIV伝播は、HIVに感染した母親に
対して生まれた子供の30%から6%に減少するであろう。第三に、健全な且つ
病原性でない抗HIV応答を引き起こしたHIVに対する免疫原は、HIVに感
染した無症候性個体を免疫感作して抗HIV免疫応答を引き起こし、且つ無症候
性HIV感染状態の持続を促すのに有用であろう。
発明の目的
本発明の目的は、担体分子に対して結合したおよび/または重合して分子凝集
体を生成した場合に、哺乳動物中においてHIVに対する中和抗体の高力価の生
産を引き起こすことができるペプチドであって、正常な免疫機能を妨げない上記
ペプチドを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、哺乳動物中においてHIVに対する防御免疫を引
き起こすことができるHIVエンベロープ蛋白質の抗原決定基に対応するアミノ
酸配列を有するペプチドを含む合成ワクチンを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、哺乳動物中において種々の型のHIVに対する防
御免疫を引き起こすことができるワクチンを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、生物試験試料中の抗gp120抗体の存在を検出
する方法を提供することである。
発明の概要
本発明は、免疫原性製剤およびそれから製造されたワクチンに関する。HIV
のエンベロープ蛋白質の抗原決定基に対応するアミノ酸配列を有するペプチドは
、適当な担体分子に対して直接的にかまたはスペーサー分子を介して共有結合し
ている。1種類またはそれ以上のこのようなペプチドを含む合成ワクチンを開示
する。
一つの実施態様において、本発明は、HIVのエンベロープ糖蛋白質の抗原決
定基に対応するアミノ酸配列を有する本質的に純粋な形のペプチドであって、担
体分子に対して共有結合した場合に、哺乳動物中において高力価のHIVに対す
る防御抗体を生じることができる上記ペプチドを包含する。ペプチドは、例えば
、HTLV−IIIB単離物のエンベロープ糖蛋白質のアミノ酸303〜321
に対応する配列CTRPNNNTRKSIRIQRGPG(ラトナー(Ratn
e
r)ら、Nature 313:277,1985年)またはその任意の部分を
有することができる。
もう一つの実施態様において、本発明は、哺乳動物中において高力価のHIV
に対する防御抗体を生じることができる免疫原性複合体であって、(i)担体分
子を、(ii)HIVのエンベロープ糖蛋白質の抗原決定基に対応するアミノ酸
配列を含むペプチドに対して共有結合したものを含む上記複合体を包含する。更
にもう一つの実施態様において、本発明は、HIVに対する免疫を引き起こす方
法であって、哺乳動物に対して上記複合体を投与することを含む上記方法を包含
する。
もう一つの実施態様において、本発明は、生物試験試料中の抗gp120抗体
の存在を検出する方法を包含する。
図面の簡単な説明
図1。組換え体蛋白質および合成ペプチドとの関係。
図2。合成ペプチドに対するAIDS患者抗体の反応性。
図3。合成ペプチドアフィニティーカラムで精製されたHIV+患者からの抗
体へのgp120の反応性。
図4。ヤギ抗SP−10抗血清によるHTLV−IIIBの中和。
図5。HIVの単離物特異的中和。
図6。ヤギ抗SP−10抗血清はHTLV−IIIB感染H9 T細胞に対し
て結合するが、HTLV−IIIRF感染H9 T細胞に対しては結合しない。
図7。Balb/cマウスにおいて抗T1−SP10MNペプチド抗体を生じ
る、HIV MNのエンベロープからの種々のT1−SP10ペプチドの能力の
比較。各点は、96ウェルプレート中においてプレート上の抗原としてペプチド
T1−SP10 MNを用いるELISA検定によって決定される4〜5匹のマ
ウスでの抗T1−SP10血清抗体の平均濃度水準を表わす。データは、免疫感
作後採血(E)光学濃度(OD)対前採血(対照)ODの比率(E/C)として
表わされる。データは、2回の免疫感作後のT1−SP10MN(A)、F−T
1−SP10MNおよびF−T1−SP10MN(A)ペプチドが、T1−SP
10MNそれ自体よりも高水準の抗T1−SP10MN抗体を生じることを示す
。
図8。インビトロのシンシチウム阻害検定においてHIV MNを中和する抗
体をBalb/cマウスにおいて生じるHIV MNのエンベロープからの種々
のT1−SP10ペプチドの能力の比較。各棒は、指定された形のT1−SP1
0によって免疫感作されたマウス1匹からの採血3による血清の結果を示す。棒
の高さは、1:10希釈での前採血血清と比較した同一の希釈の血清によって阻
害されたシンシチウム生成の百分率を示す。
図9は、HIV env合成ペプチドによって免疫感作されたチンパンジーに
おけるELISA検定での経過時間にわたる免疫感作用ペプチドに対する抗体力
価を示す。
図10は、7日目トリチウム化チミジン取込み検定におけるT1−SP10I
IIB(A)ペプチドに対する末梢血単核細胞増殖応答を示す。
図11は、T1−SP10ペプチドおよびF−T1−SP10ペプチドによっ
て免疫感作されたチンパンジーのPHAに対するPBMC増殖応答を示す。
図12は、チンパンジー884、1028、1045および1070を免疫感
作するのに用いられた同一バッチのペプチドによって免疫感作されたヤギを示す
。ペプチドはヤギにおいて免疫原性であり且つ高力価の抗HIVIIIB中和抗
体を生じた。
図13は、T1−SP10MNペプチドによって免疫感作されたアカゲザルに
おける抗HIVMN中和抗体を示す。データは、シンシチウム阻害検定における
90%中和力価を示す。
図14は、T1−SP10MN(A)ペプチドによって免疫感作されたアカゲ
ザルにおける免疫感作用ペプチドに対する抗体を示す。
図15は、F−T1−SP10MN(A)ペプチドによって免疫感作されたア
カゲザルの血清中のシンシチウム阻害検定における中和抗体水準を示す。
図16は、F−T1−SP10MN(A)ペプチドによって免疫感作されたア
カゲザルにおける免疫感作用ペプチドに対する血清抗体力価を示す。
図17は、アカゲザル18987においてT1−SP10MN(A)ペプチド
によって誘導された交差中和抗体の、GPGRAF配列含有ペプチドによる吸収
を示す。示されたように、T1含有ペプチドは中和抗体を吸収せず、またT1−
SP10MN(A)中でない配列を有するペプチドも吸収しなかった。GPGR
AFを含むペプチドのみが中和活性を吸収し、このことは、この動物がV3 H
IV gp120ループのGPGRAF部分を免疫原性として選択的に認識し且
つこの部分に対する交差反応性抗体を生成したことを実証する。
図18。T1−SP10IIIBまたはF−T1−SP10IIIB(A)ペ
プチドによって免疫感作された後にT1−SP10MN(A)ペプチドによって
免疫感作された4頭のチンパンジーの血清中の、HIV IIIB/LAI(実
線)およびHIV MN(点線)に対する中和抗体力価。中和抗体力価はシンシ
チウム阻害検定で測定された。
図19。詳細については図9の説明を参照されたい。実線はT1−SP10I
IIBペプチドに対する抗体力価を示し;点線はT1−SP10MN(A)ペプ
チドに対する抗体反応を示す。
図20。HIV MN単離物に対するチンパンジー1070血清中和抗体のS
P10MN(A)ペプチドによる吸収およびDP2ペプチドによる部分吸収。
図21。アカゲザルにおけるT1−SP10MN(A)ペプチドによる高水準
のHIV MNに対する中和抗体の誘導。
図22。アカゲザルにおけるT1−SP10MN(A)ペプチドによる抗T1
−SP10MN(A)ペプチド抗体の誘導。
図23。T1−SP10MN(A)ペプチドによる高水準の抗HIV MN中
和抗体の誘導。
図24。アカゲザルにおいて免疫原としてF−T1−SP10MN(A)ペプ
チドを用いるF−T1−SP10MN(A)ペプチドに対する抗体の誘導。図2
2、24で用いられた検定は、免疫感作用ペプチドに対する終末点ELISAで
あった(2.9を越えるE/C)。
図25。HIV IIIB単離物に対する血清中和抗体のSP10MN(A)
およびDP2ペプチドによる吸収。
図26。パネルAは、HIV単離物MNからのT1−SP10(A)と称する
C4−V3ペプチドの全体の原型設計図であり、ハイブリッドペプチド中に2個
のTヘルパー決定基、B7拘束性(restricted)の1個のMHCクラ
スI CTLエピトープおよびHLA−A2拘束性の第二CTLエピトープがあ
る。パネルBは、サル免疫不全ウイルスエンベロープおよびサル免疫不全ウイル
スgag蛋白質から設計されたTh−CTLペプチドを示す。このペプチドを用
いて、ヤストミ(Yasutomi)ら(J.Immunol.151:509
6(1993))に記載されたように、霊長類においてクラスI拘束性抗SIV
CTLを生成するペプチドの能力を示した。
図27。ヒト免疫感作用T1−SP10(A) Th−B−Tcペプチドの配
列。
図28。単クローン性抗体48dはC4−V3ペプチドT1−SP10CAN
O(A)に対して結合するが、単クローン性抗体17bは結合しない。増加量の
単クローン性抗体を、ヘインズら(J.Immunol.151:1646(1
993),J.Exp.Med.177:717(1993))に詳細に記載の
ようにT1−SP10CANO(A) C4−V3ペプチドで被覆された(2μ
g/ウェル)ELISAプレートに加えた。図28は、単クローン性抗体48d
はT1−SP10CANO(A)ペプチドに対して結合したが、17b抗体は結
合しなかったことを示す。このプレートは8モル尿素によって剥され(プレート
上のペプチドの直鎖状V3決定基に対する抗体結合に影響を与えないことが予め
分かった処理)、ペプチドの8モル尿素処理がペプチドおよびペプチドに対する
予防の引き続きの48d結合を変性したことを実証した。これらのデータは、4
8d抗体がC4−V3ペプチドT1−SP10CANO(A)上の立体配座決定
基に対して結合したことを強く示唆した。
図29。単クローン性抗体48dに対する最大限のペプチド結合には、全部の
T1−SP10CANO(A)ペプチドが必要とされる。T1ペプチド(C4部
分のみ)か、V3ペプチド[SP10CANO(A)]か、C4−V3ペプチド
[T1−SP10CANO(A)]かまたは等量のC4(T1)+V3[SP1
0CANO(A)]ペプチドの混合物を、ELISAプレート上において全濃度
2μg/ウェルでインキュベートした。図29において、対照単クローン性抗体
DU.HP20はこれらのペプチドのいずれに対しても結合しなかったが、48
d単クローン性抗体はSP10CANO(A)ペプチドに対して結合し且つT1
−SP10CANO(A)ペプチドのC4−V3タイプに対して有意によく結合
したことが分かる。T1+SP10CANO(A)ペプチドの混合は48d結合
を増加させなかった。
図30。AIDS用のHLA系ワクチンの全体図。
発明の詳細な説明
本発明は、HIVの免疫原性エピトープに対応するペプチドおよびそれから製
造された合成ワクチンに関する。これらの新規の免疫原性剤は、HIVのエンベ
ロープ蛋白質と抗原決定基を共有するペプチドを化学的に合成することによって
製造される。ペプチドは、それらをワクチンとして適当にする担体分子に対して
結合している(および/または重合している)。これらのワクチンは、例えば、
非経口経路によって哺乳動物に対して投与された場合、AIDSに対する免疫感
作に有用である。
免疫原としての可能性について研究されるべきペプチドは、HIVエンベロー
プ糖蛋白質の親水性荷電部分に対応するペプチドを包含することが確認された。
更に、このようなペプチドの内、予測されるβターンを含むものは特に重要であ
るらしいということが確認された。ペプチド内ジスルフィド結合の生成は、自然
の立体配座決定基を確定するのに有用であろうということが確認された。更に、
鎖間ジスルフィド結合の生成は、更に大きい、更に免疫原性のペプチド凝集体を
生成するようにペプチド分子を重合させるのに有用であろうということが確認さ
れた。
HIVのHTLV−IIIBおよびARV−2単離物のエンベロープ蛋白質の
予想のアミノ酸配列のコンピュータ分析は、親水性部分の二次構造および位置を
決定した。二次構造は、チョウ(Chou)およびファスマン(Fasman)
(Biochemistry 13:211および13:222,1974年;Advances in Enzymology
47:45,1978年)の
方法を用いてコンピュータ分析から決定された。βターンの可能性のある部分は
、ローズ(Rose)(Nature 272:586,1978年)の方法を
用いて位置決定された。エンベロープ蛋白質の親水性部分は、ローズおよびロイ
(Roy)(Proc.Nat′l.Acad.Sci.USA 77:464
3,1980年)の技法によって同定された。
本発明のペプチドは、HIV単離物HTLV−IIIBエンベロープ蛋白質ま
たは関連HIV単離物のエンベロープ蛋白質の中心部分中に存在するB細胞エピ
トープに対応するまたはこれと相同である。本発明のペプチドは、長さが約35
アミノ酸(単位)またはそれ未満であり、親水性であり、そして適当な担体分子
とコンジュゲートさせた場合、哺乳動物中においてHIVに対する種類(または
単離物)特異的中和抗体の高力価(すなわち、好都合には、100感染単位の感
染力が1:600希釈の血清においてインビトロで約80%減少)の生産を引き
起こす。自然のままのgp120分子とは異なり、ペプチド自体は、Tリンパ球
の表面上のCD4(T4)分子と、マクロファージHLAクラスII分子との間
の相互作用を阻害することができないし、したがって正常な免疫機能を妨げない
。すなわち、抗HIV中和抗体を誘導しうる本発明のペプチドは、インビトロで
抗原特異的正常T細胞増殖応答を阻害しない。
本発明のペプチドは、例えば、HTLV−IIIBエンベロープ糖蛋白質gp
120のアミノ酸303〜321に対応する配列CTRPNNNTRKSIRI
QRGPG(SP−10と称する)(ラトナーら、Nature 313:27
7,1985年)またはその配列のある部分を有することができる。本発明のペ
プチドはまた、HTLV−IIIB以外のHIV単離物の類似のSP−10部分
に対応する配列またはそれらの部分を有することができ、これらの配列を「SP
−10様」と称する(例えば、表Iの配列を参照されたい)。
「SP−10様」という表現は、その意味の中にSP−10配列自体を包含する
。
本発明のペプチドが共有結合(コンジュゲート)している担体分子は、好都合
に、無毒性で、薬学的に許容しうる、しかも哺乳動物において免疫応答を引き起
こすのに十分な大きさである。適当な担体分子の例としては、破傷風トキソイド
、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、および非AIDSウイルス由来担体分
子に代わりうるgp120エンベロープ糖蛋白質のT細胞エピトープ(すなわち
、T1およびT2)に対応するペプチド(シース(Cease)、Proc.N at′1.Acad.Sci.(USA)
84:4249,1987年;ケネ
ディー(Kennedy)ら、J.Biol.Chem.262:5769,1
987年)がある。ペプチドはまた、薬学的に許容しうるアジュバント、例えば
、ミョウバンと一緒に投与することができるし、または破傷風トキソイドよりも
免疫原性の他の担体分子とコンジュケートさせることができる。
本発明の担体分子の結合は、直接的でもよいしまたはスペーサー分子を介して
もよい。スペーサー分子は、無毒性および反応性であるのが好都合である。ペプ
チドのアミノ末端に加えられる2個のグリシン残基は、SP−10様配列または
それらの部分を担体分子に結合するのに適当なスペーサー分子を与えることがで
きるし;或いは、SP−10様配列またはそれらの部分を、例えば、別の免疫原
性HIVエンベロープ配列、例えば、T1またはT2などに直接隣接して合成す
ることができる。システインは、担体分子と結合するためにSP−10様ペプチ
ドのN若しくはC末端かまたは両末端に加えられて、更に大きい分子凝集体を生
成するようにジスルフィド結合生成による鎖間重合を促進することができる。
ペプチドに対する担体分子の結合は、カップリング剤を用いて達成される。好
都合に、異機能性カップリング剤M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシス
クシンイミドエステル(MES)または水溶性化合物m−マレイミドベンゾイル
スルホスクシンイミドエステル(スルホ−MES)を、グリーン(Green)
ら(Cell,28:477;1982年)およびパルカー(Palker)ら
(Proc.Nat′l.Acad.Sci.(USA) 84:2479,1
987年)によって記載のように用いる。
本発明のワクチンは、1種類またはそれ以上のSP−10様ペプチドまたはそ
れらの部分を含み、それぞれのSP−10様ペプチドは異なるHIV株に由来し
、該ペプチドは担体分子に結合している。表Iで示された単離物などに対して配
列が対応する合成ペプチドの、好都合には約2〜約10種類の混合物を含む多価
ワクチンは、ヒトにおいて種々の型のHIVに対する免疫を与えるのに用いるこ
とができる。
好都合に、HTLV−IIIBのSP−10配列(表Iを参照されたい)は、
HTLV−IIIB gp120エンベロープT細胞エピトープT1(gp120
のアミノ酸428〜443)KQIINMWQEVGKAMYAまたはT2エピ
トープ(HTLV−IIIB gp120のアミノ酸112〜124)HEDII
SLWNQSLK(シースら、Proc.Nat′l.Acad.Sci.(U SA)
84:4249,1987年)と結合させるか若しくはこれと一緒に合
成して、単一ポリペプチドを生成することができる(HIVのHTLV−IIIB
単離物からのT1−SP−10の場合、KQIINMWQEVGKAMYAC
TRPNNNTRKSIRIQRGPG)。同様に、他のHIV単離物からのT
1またはT2配列を、対応する単離物のSP−10部分に由来する合成ペプチド
(表Iを参照されたい)に対して、好都合にはSP−10様ペプチドのN末端で
結合して、特定のHIV株に対する中和抗体力価を誘導しうるT1(またはT2
)−SP−10様ペプチドを生成することができる。SP−10様ペプチドのC
末端での結合もまた可能である。
SP−10様ペプチドの更に小さい部分、例えば、SP−10 RF(A)お
よびSP−10 C(表II)もまた、gp120 T細胞エピトープを含む担
体分子に対して共有結合することができるし且つワクチン中で用いることができ
る。
本発明は、更に、SP−10様配列および1種類または複数の適当な担体分子
の他にgp120エンベロープ分子からの追加の配列を含む、HIV株に対する
有効な防御ワクチンに関する。表IでSP−10様と示されたペプチドに対して
カルボキシ末端である主な超可変領域が存在するので(エンベロープアミノ酸3
23〜333、ラトナーら、Nature 313:277,1985年)、お
よび該超可変領域は、種特異的中和抗体を生じさせるSP−10様ペプチドの能
力を増大させるのにある役割を果たしうるので、HIV単離物の超可変領域に対
応するアミノ酸配列(およそアミノ酸322〜333)は、他のSP−10様ペ
プチド(例えば、表IIの配列を参照されたい)について記載のように、ワクチ
ン成分として一部分または全部包含されうる。超可変配列は、好都合には、SP
−10様ペプチドのC末端に結合させる。SP−10様ペプチドのN末端への結
合もまた可能である。
本発明は、更に、SP−10様配列および担体分子の他に、ウイルス誘導細胞
融合に関与しているHIV gp41貫膜部分に対応するペプチド、FLGFL
Gを含む、HIV株に対する有効な防御ワクチンに関する(ガラガー(Gall
agher)、Cell 50:327,1987年)。配列FLGFLGは、
SP−10様ペプチドのC末端に加えられるのが好都合である。SP−10様ペ
プチドのN末端での付加もまた可能である。
本発明は、更に、システイン−T1−(またはT2−)SP−10様、システ
イン−T1−(またはT2−)SP−10様−超可変領域若しくはシステイン−
T1−(またはT2−)SP−10様−FLGFLGポリペプチド;および/ま
たはSP−10様システイン若しくはSP−10様−超可変領域−システインポ
リペプチドから生成される、HIVに対する有効なワクチンに関する。ポリペプ
チドを酸化剤によって処理してポリペプチド鎖システイン間にジスルフィド結合
を生じさせて、重合し且つそれによって極めて免疫原性の抗原を生じることがで
きる。このようにして生成された分子凝集体は、好都合に、少なくとも2種類の
HIV単離物に由来する(に対応する)SP−10様ペプチドを含む。
本発明の多価HIVワクチンは、好都合に、2種類若しくはそれ以上のHIV
単離物に由来するSP−10様配列若しくはその部分(例えば、表1の配列を参
照されたい)および破傷風トキソイドなどの担体分子を含む2種類若しくはそれ
以上の複合体、またはT1(若しくはT2)およびSP−10様配列が特定のH
IV単離物中に存在する配列に対応している2種類若しくはそれ以上のT1−若
しくはT2−SP−10様ペプチド複合体を含む。
ヘルパーT細胞によって認識されるgp120分子の部分を反映した合成ペプ
チドを担体分子として用いる利点は、破傷風トキソイドなどの他の担体分子を必
要としないであろうし且つHIVに対するBおよびT細胞応答が特異的であろう
ということである。種々の単離物のSP−10部分からの配列を反映したいくつ
かのペプチド、およびおそらくはgp120エンベロープのT細胞認識部分を多
価ワクチン中に組合わせることは、単離物特異的中和の問題を克服する。
本発明は、更に、上記の超可変配列に対して結合したSP−10様ペプチド(
例えば、表IIを参照されたい)を含む多価ワクチンに関する。適当な担体分子
に結合したおよび/またはジスルフィド結合生成によって重合したこのようなポ
リペプチドの混合物(ハリントン(Harington),C.R.ら、Bio chem.J.
,30:1598,1930年;ハリントン,C.R.ら、Bi ochem.J.
,38:417,1944年;ウェーガン(Weygand)
ら、Z.Naturforsch.,176:807,1962年)は、ワクチ
ンとして用いてHIVの多数の単離物に対して防御抗体反応を引き起こすことが
できる。
SP−10様ペプチドは、固相ラジオイムノアッセイ(パルカーら、J.Im munol
136:2393,1986年;同書中、Proc.Nat′l. Acad.Sci.(USA)
84:2479,1987年)において用いて
、(i)HIVの中和抗体の存在および力価を検出し;そして(ii)患者が感
染しているHIV株を決定することができる。したがって、SP−10様ペプチ
ドをワクチンまたはワクチンの成分として用いることに加えて、上記のように、
ペプチドを診断目的に用いることができる。本発明のペプチドはまた、標準的な
酵
素結合イムノソルベント検定法で用いて、HIV抗体の存在を検出することがで
きる。
前述の具体的な態様を要約し且つ補足すると、本発明は、少なくとも一部分は
、HIV蛋白質の少なくとも二つの部分、すなわち、B細胞(パルカーら、J. Immunol.
142:3612,1989年)およびヘルパーT細胞(カー
サ(Caasa)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 8
4:4249,1987年)の両方によって認識されると報告されたT1 gp
120 env部分と、ヘルパーT細胞によってもB細胞によっても認識され且
つヒト免疫不全ウイルス(HIV)を中和することができる抗体を誘導するSP
−10様gp120 env部分(すぐ上で引用されたパルカーらの参考文献;
パルカーら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 85:19
32,1988年;そして更に、ラシュ(Rusch)ら、Proc.Natl .Acad.Sci.(USA)
85:3198〜3202,1988年およ
びゴーズミット(Goudsmit)ら、Proc.Natl.Acad.Sc i.(USA)
85:4478,1988年を参照されたい)(表IIIおよ
びIVを参照されたい)とを含む合成ペプチドに関する。
マイアーズら、Human Retroviruses and AIDS,1
988年,ロス・アラモス・ナショナル・ラボラトリー(Los Alamos
National Laboratory),ロス・アラモス,ニューメキシ
コ,11 68〜92頁からの配列。
ラトナーら、Nature 313:277,1985年からの配列。
T1−SP10様ペプチドによって生産された中和抗体は、HIV HTLV
IIIB(IIIB)単離物に対して生じた抗体がHIV HTLVIIIMN
(MN)またはHTLVIIIRF(RF)HIV単離物を中和しないという点
で種特異的である(パルカーら、J.Immunol.142:3612,19
89年)。同様に、MNまたはRF HIV単離物からの配列を含むT1−SP
10様ペプチドに対して生じた中和抗体は、相同の単離物を中和するが、他の2
種類のHIV単離物のいずれも中和しない。しかしながら、ヤギ抗T1−SP1
0様抗血清をノース・カロライナでの9種類のHIV現場単離物に対して試験し
た場合、抗T1−SP10IIIB血清は、9種類のHIV単離物の内1種類を
中和することが観察され、抗T1−SP10RF血清は9種類のHIV単離物の
内3種類を中和し、そして抗T1−SP10MN血清は9種類のHIV単離物の
内6種類を中和した(ヘインズら、AIDS Res.Retrol.6:38
,1990年)(表Vを参照されたい)。
ラ・ロサら(Science 249:932,1990年)は、ヘインズら
によってAIDS Res.Retrol.(上記)に記載されたHIV MN
モチーフが、米国じゅうのAIDS患者から培養されたHIV単離物の顕著なモ
チーフの一つであることを示した。
パルカーら(J.Immunol.142:3612,1989年)は、種々
の単離物からのペプチドを混合する計画が、HIVエンベロープの303〜33
7部分に異なるアミノ酸配列を有する多数のHIV株に対して抗体を生じる問題
への成功したアプローチでありうるということを最初に報告した。更に、パルカ
ーらは、T1−SP10様ペプチドが、KLHまたは破傷風トキソイドなどの担
体分子に結合した合成ペプチドより有利であることを報告した。担体に結合した
ペプチドは、単にペプチドの多価混合物中の担体に対する多量の抗体を生じるだ
けであるが、HIVIIIB envのT1配列(アミノ酸429〜443)を
SP10配列(アミノ酸303〜321)に対してN末端に共有結合した場合、
この無担体免疫原は、T1−SP10ペプチド中に配列が存在する3種類のHI
V単離物全部に対して高力価の中和抗体を生じた。更に、ハート(Hart)ら
(J.Immunol.1990年)は、最近になって、T1−SP10ペプチ
ドが、アカゲザルの免疫細胞に対して無毒性であり且つこれらの霊長類において
インビボで高力価の中和抗体およびヘルパーT細胞を生じることができることを
示した。したがって、T1−SP10様合成ペプチド構築物は、ヤギおよび霊長
類において高力価の抗HIV中和抗体反応およびTヘルパー細胞応答を引き起こ
すための簡単な、無毒性の且つ極めて有効な分子である。
AIDS用のワクチンを開発する場合の主要な問題の一つは、抗体反応だけが
無細胞HIVおよびHIV感染細胞両方に対して個体を防御することができるの
かどうか、または細胞性免疫応答(抗原特異的細胞障害性T細胞)も同様に必要
とされるのかどうかという疑問であった。明らかに、多数の他のウイルス感染は
、防御免疫を生じるために抗体も細胞性抗ウイルス免疫応答も必要とする(ロン
グ(Long)ら、Immunol.Today 10:45,1989年)。
更に、IgGおよびIgA抗体反応並びに粘膜表面に関係した細胞障害性T細胞
活性から成る粘膜表面の局所免疫は、性的接触によるまたは粘膜表面が感染血液
に
さらされることによるHIVの伝播に対して防御するのに必要とされうる。した
がって、中和抗体およびTヘルパー細胞応答を引き起こすことに加えてHIVに
対する細胞障害性T細胞(CTL)応答を引き起こした合成ペプチド免疫原は望
ましいと考えられる。上記に開示され且つ要約された実施態様に加えて、本発明
はこのような免疫原に関する。
F部分(例えば、BH10/IIIB HIV単離物のアミノ酸519〜53
0並びに他のHIV−1、HIV−2およびサル免疫不全ウイルス(SIV)単
離物の相同部分)は、パラミクソウイルスのF1(融合)ペプチドに対して配列
相同性を有する(ガラハ(Gallaher)、Cell 50:327,19
87年)。F部分は、細胞膜の脂質二重層中に挿入することができるし且つ細胞
融合を引き起こすことができる疎水性らせん構造を生成すると仮定された。ボッ
シュ(Bosch)ら(Science 244:694,1989年)は、S
IV中のF部分(すなわち、BH10/IIIB HIV単離物の519〜53
0 env gp41部分に対して相同な部分)が、SIVに感染した細胞の細
胞融合を実際に媒介することを実証した。
F誘導体ペプチドは、多数のウイルス感染の制御に必要な同様の種類の細胞障
害性T細胞応答、すなわち、HLA拘束性CD8+細胞障害性T細胞の生成を引
き起こすような方法で免疫細胞中に取り込まれることが確認された。F誘導体ペ
プチドは、哺乳動物に注射された場合、それらが抗HIV記憶Tヘルパー細胞活
性、抗HIV中和抗体、および記憶抗HIV CD8+、HLAクラスI拘束性
細胞障害性T細胞応答を引き起こすように免疫系の細胞と相互作用する。
したがって、本発明は、好ましい実施態様において、一般式
F−Th−SP10(X)
Th−SP10(X)
Th−SP10
および
F(X)
[式中、配列Fは、HIV env gp41の推定上の融合誘導ドメイン(例
えば、HIV単離物BH10/IIIB中のアミノ酸519〜530または他の
HIV−1、HIV−2若しくはSIV単離物中の相同部分、或いはそれらと機
能的に同等の配列)に由来し;
配列Thは、T1またはT2 Tヘルパーエピトープであるか、或いは、表X
(下記)に挙げられたTヘルパー細胞エピトープのいずれかまたは挙げられてい
ないがTヘルパーエピトープとして機能するHIV蛋白質の他の部分からのアミ
ノ酸配列であり;
SP10様配列は、表IまたはII(下記の表VIIIも参照されたい)によ
るまたはHIV現場単離物からの任意のSP−10様配列(例えば、ラ・ロサら
、Science 249:932,1990年を参照されたい)により;そし
て
配列(X)は、MHCクラスIまたはクラスII拘束性細胞障害性T細胞によ
って認識されるHIV蛋白質配列である]
を有するペプチドに関する。(X)部分の配列の例は、下記の表VIIIおよび
IXに記載されている。
或いは、配列Fは、例えば、配列Th−SP10(X)に対してC末端であり
うる。更に、配列Th、SP10および(X)は、ペプチド構築物中においてい
すれの順序でも配列されうる。
本発明のこの実施態様の合成ペプチド免疫原は、抗HIV中和抗体、抗HIV
ヘルパーT細胞および抗HIV細胞障害性(キラー)T細胞を生じることができ
る。当業者は、この(融合蛋白質である)免疫原を化学的にかまたは当該技術分
野において知られている組換え手段によって合成することができることを理解す
るであろう。
免疫原は、例えば、構造:F−T1−SP10−(A)を有することができる
。このような免疫原の例は表IIIおよびIVで与えられるが、当業者は、現場
または実験室HIV単離物からの任意のSP10様配列(例えば、ラ・ロサら、Science
249:932,1990年)を表IIIおよびIVで示され
たSP10配列に置き換えうることを理解するであろう(表IおよびIIIも参
照されたい)。
T1様配列は、表VIで示されたものを含めた任意の配列決定されたHIV単
離物からのT1に相同な配列から選択することができる。
BH10の配列は、ラトナー,L.ら、Nature 313:277〜284
,1985年からのアミノ酸428〜443である。HIV−1およびHIV−
2単離物の残りの配列は、マイアーズら、Human Retroviruse s and AIDS
,1988年,ロス・アラモス・ナショナル・ラボラトリ
ー,ロス・アラモス,ニューメキシコ,II−89頁による。
:=アミノ酸なし。
F様配列は、表VIIで示されたものを含めた任意の配列決定されたHIV単
離物からのFに相同な配列から選択することができる。
BH10の配列は、ラトナー,L.ら、Nature 313:277〜284
,1985年からのアミノ酸519〜530である。HIV−1およびHIV−
2単離物の残りの配列は、マイアーズら、Human Retroviruse s and AIDS
,1988年,ロス・アラモス・ナショナル・ラボラトリ
ー,ロス・アラモス,ニューメキシコ,II−90頁による。配列WMJ1は、
ブラスー(Brasseur)ら、AIDS Res.Hum.Retrovi ro
l.4:83〜90,1988年による。
:=アミノ酸なし。
(A)部分様配列は、表IIおよびVIIIで示されたものを含めた任意のH
IV単離物からの(A)に相同な配列から選択することができる。
BH10の配列(IIIB)は、ラトナーら、Nature 313:270〜
284,1985年による。
本発明は、更に、得られた構築物がHIVに対して中和抗体および細胞障害性
T細胞を生じることができるような、現場単離物からの任意のHIV配列(例え
ば、表IIを参照されたい)からのSP10またはSP10様部分に対してN末
端に位置した(共有結合した)HIV gp41からのF部分配列(すなわち、
例えば、BH10/IIIB単離物のアミノ酸519〜530または他のHIV
−1、HIV−2若しくはSIV単離物中の他の相同部分)を含むペプチドに関
する。
当業者は、本開示を読むことにより、一例として、長さが例えば3〜50アミ
ノ酸である任意の他のペプチドに対して共有結合した、12アミノ酸:AVGI
GALFLGFL(F)から成るHIV gp41の519〜530アミノ酸部
分または単離物BH10/IIIBの519〜530アミノ酸配列(表VII)
に対して相同な他のHIV−1、HIV−2若しくはSIV単離物のF部分配列
(例えば、表VIIを参照されたい)をインビボ投与することによって、Fに対
して共有結合している合成ペプチドのプロセッシングおよび提示が行われるよう
な方法でF結合ペプチドが抗原提示細胞と連結した結果としてペプチドがMHC
クラスI分子の状況においてT細胞に対して提示され且つインビボでCD8+細
胞障害性T細胞を生じるように、MHCクラスI拘束性細胞障害性T細胞を誘導
しうるということを理解するであろう。有効なAIDSワクチンの状況において
、いくつかのF誘導体ハイブリッドHIVペプチドは、インビボで細胞障害性T
細胞を誘導しうるHIV蛋白質のアミノ酸配列に対してNまたはC末端に結合し
たFアミノ酸配列(例えば、表VIIを参照されたい)を含むように構築されう
る。HLAクラスI細胞障害性T細胞によって認識されうる記載のHIVペプチ
ドの例を表IXに示す。
この後者の計画は、細胞障害性T細胞エピトープが特定の多形性HLAクラス
IまたはクラスII分子によって認識されるという点で重要である。ワクチン中
にこのような[(A)ペプチドのように、ペプチドの1本の直鎖状配列によって
示される]エピトープが1種類だけ存在する場合、細胞障害性T細胞に対して提
示されるように(A)ペプチドが用いろ特定のHLA抗原を有する個体だけがH
IVに対して細胞障害性T細胞を生じるであろう。しかしながら、異なるHLA
クラスIまたはクラスII分子の状況において細胞障害性T細胞によって認識さ
れうるペプチドをそれぞれが含んでいる多数のF誘導体ペプチドが免疫原中に含
まれている場合、広範囲のHLA種を有する個体は、HIVに対して細胞障害性
T細胞を生じるであろう。
したがって、集団の中の大多数のヒトにおいて抗HIV細胞障害性T細胞を生
じることができる免疫原は、好都合に、異なるHLAクラスI型(例えば)によ
ってそれぞれ認識されるペプチドの混合物を含み、同時に、該混合物は、免疫原
性であり且つ総合すれば、ある与えられた集団の中の大多数の個体によって発現
されるクラスI型の分子によって認識されるペプチドを含む。表IXは、F配列
によって誘導体化することができ且つF−T1−SP10(A)ペプチドとの混
合物として用いることができるペプチドの種類である記載された細胞障害性T細
胞エピトープおよび知られている場合はそれらのHLA拘束性要素の例を示す。
或いは、表IXの配列は、配列(A)の代わりにF−T1−SP10ペプチド中
のSP10配列に対してC末端に共有結合し、F−T1−SP10(X)ペプチ
ドの混合物(式F−T1−SP10(X)中において、Xは配列(A)(表II
およびVIIIを参照されたい)かまたは表IXに挙げられているような他の細
胞障害性T細胞誘導配列である)をAIDSワクチンとして用いることができる
。
細胞障害性エピトープに対して適合するMHC拘束性の同様の考察は、Tヘル
パーエピトープに対しても適合する。すなわち、Tヘルパー細胞による抗原の認
識はHLA拘束性であり、そして集団の大多数のメンバーが免疫原に対して応答
し且つ免疫原に対するTヘルパー細胞応答を生じるためには、Tヘルパーエピト
ープの利用可能な十分な変異型を有して、その中にそれぞれの患者のT細胞が患
者自身のHLAクラスII分子の状況においてプロセッシングされた抗原を見つ
けることができるように十分なTヘルパー細胞エピトープが提示される必要があ
る。表Xは、F−Th−SP10(X)構築物中のT1またはT2配列に代わっ
て該構築物中に代わりのTヘルパー細胞エピトープを提供することができるHI
V蛋白質のTヘルパー細胞エピトープを示す。
上記の初めの20種類のペプチドの配列は、シュリアー(Schrier)ら(J.Immunol.
142:1166〜1176,1989年)により、配列
T1、T2、Th4およびp18は、クレリシ(Clerici)ら(Natu re
339:383〜385,1989年)による。
研究は、同一のTヘルパー細胞エピトープが多数のHLAクラスII特異性の
状況においてT細胞によって認識されることができ、したがって、有効な合成ペ
プチド系AIDSワクチンを処方するためにはいくつかのTヘルパーエピトーブ
だけが必要とされることを示している。クレリシら(Nature 339:3
83〜385,1989年)は、研究された集団の85%のT細胞がT2かまた
はT1 Tヘルパー細胞エピトープを認識できたというデータを提供した(表X
を参照されたい)。シュリアーら(J.Immunol.142:1166〜1
176,1989年)は、HIV蛋白質中の多数のヘルパーT細胞エピトープを
同定し、そして研究された集団の93%のT細胞が4種類のTヘルパー細胞エピ
トープ(表Xを参照されたい)の内の少なくとも一つに対して応答したことを実
証した。
したがって、好ましい実施態様において、本発明のAIDSワクチンは、式
F−Th−SP10(X)
Th−SP10(X)
Th−SP10
および
F(X)
[式中、上記のように、配列Fは、HIV env gp41の推定上の融合誘
導ドメイン(例えば、HIV単離物BH10/IIIB中のアミノ酸519〜5
30または他のHIV−1、HIV−2若しくはSIV単離物中の相同部分、或
いはそれらと機能的に同等の配列)に由来し(例えば、表VIIを参照されたい
);配列Thは、T1またはT2 Tヘルパーエピトープであるか、或いは、表
Xに挙げられたTヘルパー細胞エピトープのいずれかまたは挙げられていないが
Tヘルパーエピトープとして機能するHIV蛋白質の他の部分からのアミノ酸配
列であり;SP10様配列は、表I、II若しくはVIIIによるかまたはHI
V現場単離物からの任意のSP−10様配列(例えば、ラ・ロサ,G.ら、Sc ience
249:932,1990年を参照されたい)に由来し;そして配
列(X)は、MHCクラスIまたはクラスII拘束性細胞障害性T細胞によって
認識されるHIV蛋白質配列である]
を有する一般的な構造およびペプチドの混合物の組成物を有する。(X)部分の
配列の例は表VIIIおよびIXに与えられる。
F−Th−SP10(X)、Th−SP10(X)、Th−SP10およびF
(X)ペプチド中に含まれるべき正確な配列並びに本発明のAIDSワクチンを
含む別個のペプチドの数は、ある与えられた集団の大多数の被験者において細胞
障害性T細胞およびTヘルパー細胞応答を生じるのに必要な細胞障害性T細胞(
X)およびThエピトープの数によって決定される。当業者は、F、Th、SP
10および(X)の順序が、それぞれの上記機能が維持される限りは変更しうろ
ということを理解するであろう。防御的抗HIV中和抗体の誘導に対して、F−
Th−SP10(X)ペプチド中に存在する必要がある具体的なSP10様配列
は、ある与えられた集団における一定の時点のHIV単離物の変異数に依るであ
ろう。当業者は、この情報が集団において積極的に且つ連続的に監視されなけれ
ばならないこと、およびAIDSワクチンの処方が上記変数の変化に応じて時と
ともに変更されることを理解するであろう。
多数の異なるHIV単離物を含む集団における防御的抗HIV中和抗体の誘導
は、上記のワクチン計画を用いておよび/またはgp120の保存立体配座決定
基を模擬することによって広く交差反応性の抗HIV抗体を生じることができる
少なくとも1種類のペプチド構築物を用いることによって行うことができる。一
つのこのような構築物は、自然のままのHIV gp120 C4−V3部分の
立体配座決定基のミメオトープの形をとり、T1−SP10CANO(A)によ
って例示される(表XXIIIを参照されたい)。CANOエンベロープの一次
V3配列は他のHIVエンベロープV3配列(再度表XXIIIを参照されたい
)と広範囲にわたって異なるが、T1−SP10CANO(A)ペプチドは、様
々なHIV V3モチーフに対して交差反応性抗V3抗体を生じる(実施例11
を参照されたい)。この交差反応性の誘導は、HIV gp120の広い中和決
定基を反映したT1−SP10CANO(A) C4−V3ハイブリッドを生じ
るHIV CANO単離物のV3ループの二次および高次構造に依る。これは、
ヒト抗gp120単クローン性抗体48d(gp120に対するCD4結合を妨
げるマウス単クローン性抗体を阻止するが、それ自体gp120−CD4結合を
阻止しない(タリ(Thali)ら、J.Virol.67:3978〜398
8(1993))がT1−SP10CANO(A)を結合するという事実によっ
て実証される。
別の実施態様(計画)として、有効なワクチンは、特定の個体のためのHLA
クラスIおよびクラスII型を、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応分析によってか
または慣用的なHLA組織型決定分析によって決定することにより配合すること
ができる。その情報に基いて、式F−Th−SP10(X)、Th−SP10(
X)、Th−SP10およびF(X)中に含まれるべき具体的な免疫原を決定す
ることができる。したがって、この後者の実施態様において、被験者に与えられ
るペプチドは、所望の抗HIV BおよびT細胞応答を引き起こすのに必要なも
のである。
前述の解釈により、当業者は、これが何等かの感染症に対するワクチンの開発
のための一般的な計画であることを理解するであろう。更に、HIV g41エ
ンベロープ蛋白質からのF部分を細胞障害性T細胞によって認識されうる任意の
配列に結合する(それによって、注射に適した且つMHCクラスI分子の状況に
おいて細胞障害性T細胞によって認識されうる直鎖状ペプチドを生成する)能力
は、MHCクラスI拘束性細胞障害性T細胞を細胞障害性T細胞エピトープを含
有する任意のペプチドに対して誘導する簡単で且つ有効な方法を提供する。これ
は、細胞障害性T細胞エピトープの配列が侵入した生物中の蛋白質に由来するの
かどうか、または細胞障害性T細胞エピトープ配列が宿主蛋白質に由来するのか
どうかにかかわらず当てはまる。
宿主蛋白質からの配列を含むF誘導体ペプチドの使用の例として、MHCクラ
スIまたはクラスIIの状況において細胞障害性T細胞によって認識されうるペ
プチドのN−かまたはC末端に結合したHIV gp41 F配列(例えば、B
H10/IIIB HIV−1単離物からまたは他のHIV−1、HIV−2若
しくはSIV単離物の相同部分からのアミノ酸519〜530、或いはそれと機
能的に同等の配列)を含むF誘導体ペプチドを用いることができると考えられる
が、このようなペプチドの配列は、種々の自己免疫疾患、感染症においておよび
臓器移植の状態において宿主組織破壊を媒介する自己反応性T細胞の表面上で発
現される抗原分子のT細胞受容体(TCR)の可変領域に由来する。 サン(S
un)ら(Nature 332:843,1988年;Eur.J.Immu nol.
18:1993,1988年)は、起脳炎(encephalitog
enic)T細胞上のイディオタイプ決定基に特異的である細胞障害性T細胞ク
ローンの単離を報告したが、それらは実験的自己免疫脳脊髄炎に対する抵抗性を
選択的に伝達する。T細胞の自己免疫クローンに対して免疫応答を引き起こすと
考えられる免疫原による自己免疫疾患を有する被験者の免疫感作の概念は、最近
、重要な実験的アプローチとして認識されてきている(コーヘン(Cohen)
ら、Immunol.Today 332,1988年;ハウエル(Howel
l)ら、Science 246:668,1989年;ラルス(Wralth
)ら、Cell 57:709,1989年において論評された)。したがって
、本発明は、宿主抗原のペプチドに対してMHC拘束性クラスIまたはクラスI
I細胞障害性T細胞を生じるための簡単で且つ有効な方法を提供し、それによっ
て自己免疫疾患に対するワクチンの開発を大きく進歩させる。
標準的な組換えDNA技術並びにTCR分子抗原結合部分に対する既存のプロ
ーブおよび配列を用いて、TCR分子の独特の部分からの配列を得ることができ
る(バーンズ(Barns)ら、J.Exp.Med.169:27,1989
年)。F誘導体ペプチドは、上記疾患種類における抗原特異的T細胞に媒介され
た宿主組織損傷に関与するTCRを有するT細胞の特定のクローンを標的とした
細胞障害性T細胞免疫応答を引き起こすのに用いることができる。いったん引き
起こされると、このようなF−ペプチドに誘導された抗TCR標的化細胞障害性
T細胞応答は自己反応性クローンまたはT細胞を排除し、それによって、T細胞
に媒介された組織破壊を制御するための新規の極めて特異的な方法を提供するこ
とができる。
F誘導体宿主ペプチドの使用の第二の例は、自己免疫疾患、感染症の状況にお
いておよび臓器移植の状態において起こる抗体に媒介された組織損傷を同様に制
御することである。抗原に対するB細胞表面受容体(表面免疫グロブリン)もま
た、抗体を産生するB細胞のクローンに特異的な部分を有する。上記疾患種類の
状態において組織特異的損傷に関与する抗体を産生するB細胞のクローンを同定
することにより、抗原を結合するB細胞免疫グロブリン分子の部分からのペプチ
ド配列を、例えば、組換えDNA技術を用いて同定することができる。更に、M
HCクラスIまたはクラスII細胞障害性T細胞応答を引き起こすことができる
配列を同定することができる。このような免疫グロブリン抗原結合部分ペプチド
をF配列で誘導体化し、且つ自己抗体を生産する被験者にそのF誘導体化ペプチ
ドを注射することにより、自己抗体生産性B細胞に対する細胞障害性T細胞応答
を引き起こすことができ、それによって、上記疾患種類の状況において起こる組
織損傷性自己抗体反応を排除することができる。
F誘導体化非HIV蛋白質の使用の第三の例は、クローン性免疫グロブリンま
たはTCR分子が細胞表面上で発現されるクローン性BおよびT細胞悪性疾患の
治療に対して自己反応性TおよびB細胞種を特異的に排除するために上記の理論
を使用することである。B細胞表面免疫グロブリン分子の可変領域に対する抗体
(ハンブリン(Hamblin)ら、Brit.J.Cancer 42:49
5,1980年;ミラー(Miller)ら、N.Eng.J.Med.306
:517,1982年)かまたはT細胞腫瘍を治療する場合には可変TCR領域
に対する抗体(カナガワ(Kanagawa),O.、J.Exp.Med.1
70:1513〜1519,1989年)を用いる抗腫瘍治療計画が記載されて
いる。したがって、TまたはB細胞悪性細胞の表面上でそれぞれ発現されるTC
Rまたは免疫グロブリン分子の可変領域の配列を含むF誘導体化合成ペプチドを
腫瘍を有する宿主に注射して、腫瘍細胞を死滅させる抗TCRまたは抗免疫グロ
ブリン特異的細胞障害性T細胞応答を引き起こすことができる。
F誘導体化非HIV蛋白質の使用の第四の例は、病原体に感染した細胞を死滅
させ、そして病原体に感染した細胞を宿主から排除する免疫原の生成である。例
えば、C型肝炎(非A非B型肝炎)は、細胞中または血清中のウイルス粒子が個
体から個体へと伝播することによって引き起こされる疾患である。C型肝炎ウイ
ルス蛋白質の細胞障害性T細胞エピトープ配列をF誘導体化し且つこのような配
列を個体に注射することにより、生C型肝炎ウイルスによる感染から個体を防御
する記憶抗C型肝炎特異的細胞障害性T細胞応答を引き起こすことができる。す
なわち、新規のC型肝炎ワクチンを与えることができる。このような計画はまた
、他の伝染性病原体に対するワクチンを生成するのに用いることができる。
以下の非制限実施例は、本発明を更に詳細に例証する。
実施例1
ペプチドの合成およびコンジュゲートの調製
HTLV−IIIBエンベロープ糖蛋白質gp120由来の親水性アミノ酸配
列(Ratnerら,Nature,313:277,1985)を含む本質的
に純粋な合成ペプチドを、アプライド・バイオシステムズ430Aペプチド合成
装置により、製造業者が提供する化学物質およびプログラムサイクルを用いて合
成した。合成ペプチドの配列を表XIに挙げる。
合成ペプチドと既知の組換え蛋白質PE3、PBIおよびPENV9の関係を
図1に示す(Putneyら,Science,234:1392,1986;
Pettewayら,Viruses and Human Cancer:U CLA Symposia on Molecular and Cellul ar Biology
1987)。
ペプチドをキャリヤー分子、たとえばウシ血清アルブミン(BSA)または破
傷風トキソイド(TT)およびMBSにより、Greenら(Cell,28:
477,1982;Palkerら,Proc.Natl.Acad.Sci. (USA)
84:2479,1987)の記載に従って結合させた。結合処理の
ために、0.5mlのリン酸塩緩衝食塩液(pH7.2)中における24mgの
破傷風トキソイド(一例)を、100μlのジメチルホルムアミドに溶解した1
mgのMBSと共に23℃で1時間インキュベートした。MBS処理した破傷風
トキソイド(TT−MBS)を、次いでPD−10(ファルマシア)カラム上で
ふるい分けクロマトグラフィー処理して未反応MBSをTT−MBSから分離し
、280nmの光学濃度で分光光度法により測定してカラムの空隙内にTT−M
BSを回収した。次いで、TT−MBSをカルボキシル末端またはアミノ末端に
還元システインを含む6−9mgの合成ペプチド(ペプチドとキャリヤー蛋白質
のモル比30:1)と共に、PBS中で揺動しながら23℃で3時間インキュベ
ートした。TT−ペプチドコンジュゲートを4℃で一夜、PBSに対して透析し
、または再びPD−10カラム上で脱塩し、免疫原として用いた。
BSAまたは破傷風トキソイドへのペプチドの結合は、コンジュゲートを非還
元性条件下でドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SD
S−PAGE)処理し、MBS処理BSAおよびTTの場合より見掛け分子量が
増大するのを測定することにより監視された。ペプチドの追跡ヨウ素化により同
様に監視した結合効率は、ペプチドに応じて10%から30%まで変動した。
実施例2
合成ペプチドに対するエイズ患者抗体の反応性
BSAに結合したgp120の親水性領域由来の合成ペプチドを、HIV+患
者血清(N=12)および正常血清対照(N=4)についてのラジオイムノアッ
セイ(RIA)における抗原として用いて、gp120上のエピトープに対する
エイズ患者抗体の応答を評価した(図2)(Palkerら,J.Immuno l.
136:2393,1986;同,Proc.Natl.Acad.Sci .(USA)
84:2479,1987)。大部分のHIV+患者血清が2種類
の合成ペプチド、SP−10(9/12,75%)およびSP−22(8/12
,67%)と反応した。
結果は、被験(E)エイズ血清および対照(C)血清試料について得た二重試
験のcpm値の比率(E/C)として表わされる。E/C>3.0=陽性。
実施例3
合成ペプチドアフィニティカラム上で精製したHIV+患者由来の抗体
に対するgp120の反応性
アフィニティカラムを調製するために、HTLV−IIIB gp120由来
のアミノ酸配列を含む合成ペプチド(SP−10、10A、11、14、15、
22、図1参照)をBSAに結合させ、次いでCNBr活性化セファロースに共
有結合させた。次いでHIV血清学的陽性患者に由来する血清のアリコート(2
ml)を各カラムに導通し、次いでアフィニティカラムに結合した抗体を、精製
した129I-標識HTLV−IIIB gp120に対する反応性につきRIPア
ッセイ法により(図3A)、またHTLV−IIIBに感染したH−9細胞の表
面に対する反応性につき間接免疫蛍光アッセイ法により(図3B)試験した。
A)RIPアッセイ(Palkerら,Proc.Natl.Acad.Sc i.(USA)
84:2479,1987;同,J.Immunol.136:
2393,1986)の場合、SP−10(列1)、SP−10A(列2)、S
P−11(列3)、およびSP−22(列6)アフィニティカラムからの結合抗
体がRIPアッセイにおいてgp120−IIIBと反応し、その際SP−10
カラムからの抗体がgp120−IIIBに対して最大の反応性を示した。
B)FACS分析(Shapiro,Practiced Flow Cyt ometry
,Alan R.Liss出版社、ニューヨーク州ニューヨーク,
1985)で試験した場合、合成ペプチドSP−10と反応性である抗体はHI
V感染細胞表面に結合したが、SP−14、またはSP−10A、11、15も
しくは22へのアフィニティ精製抗体の結合は検出されなかった(図示せず)。
これらのデータは、SP−10が決定する抗原性部位(1または2以上)はgp
120がHIV+細胞の表面に存在する場合に抗体の結合が可能であることを示
唆する。
実施例4
ヤギ抗SP−10抗血清によるHIVの中和
ヤギを、28mgの破傷風トキソイド−SP−10コンジュゲート(SP−1
0−TT)を完全フロイントアジュバント中において皮下投与し(0日目)、次
いで2週目毎に不完全フロイントアジュバント中において接種する(14および
28日目)ことにより免疫化した。2回目の免疫化後に血清を採取し、細胞培養
上清中の逆転写酵素(RT)の存在により測定したインビトロでのH−9 T細
胞のHIV感染阻止(すなわち中和)能につき試験した(図4)。RTアッセイ
において得られるcpm値の低下は、ウイルスと細胞を10日間同時培養したの
ちHIV水準が低下したことを反映する。
100感染単位のHTLV−IIIBと共にプレインキュベートした場合、ヤ
ギ抗SP−10抗血清はHIV単離体HTLV−IIIBがH−9 T細胞に感
染する能力を中和した(●−●、50%中和力価=1/145)。これに対し、
同じヤギから免疫化前に採取した血清は評価しうるほどにはHTLV−IIIB
を中和しなかった(○−○、50%中和力価=1/16)。
SP−10−TTを注射した元の動物(その血清は逆転写酵素アッセイにおい
てHTLV−IIIBを中和した)に、次いで追加量のSP−10−TTを注射
した(0.5mg/kg体重)。2回の注射後に、50%中和力価は1:160
0に上昇した。SP−10様ペプチドを用いたこれらおよび他の実験で得た中和
データを、表XIIにHIVの50%中和ではなく80%中和を生じる血清希釈
度として示す。
さらに、2匹目のヤギに0.5mg/kg量のSP−10−TTを2回注射し
た。2匹目のヤギから得た血清は、1:100の力価でHTLV−IIIBを中
和した。重要なことは、ヤギにおいてSP−10−TTに対して産生された血清
は両方とも、シンシチウム阻害アッセイにおいてもT細胞のHTLV−IIIB
感染性を阻害したということである(表XII)。
シンシチウム阻害アッセイ(Lifsonら,Nature 323:725
,1986)は、細胞表面にHIV gp120エンベロープ蛋白質を発現して
いるHIV感染T細胞とCD4(T4)+非感染T細胞との融合を抗体が阻害す
る能力を測定するものである。CD4(T4)分子はエイズウイルスに対する受
容体として作用する(Maddonら,Cell 47:333,1986)。
こ
れら2細胞タイプの融合の結果、HIVに感染した巨細胞が形成される。多くの
場合、細胞のHIV感染および巨細胞形成の結果、感染細胞は死滅する(Zag
aryら,Science 231:850,1986)。
したがって、上記のようにヤギの抗SP−10血清がシンシチウム阻害アッセ
イおよび逆転写酵素アッセイにおいてHTLV−IIIB感染性を阻害しうるこ
とは、抗SP−10抗体はT細胞CD4(T4)分子へのHIV gp120蛋
白質の結合を遮断しうることを意味する。さらに、HIV単離体HTLV−II
IRF由来のSP−10様配列を含むペプチド[SP−10RF(A)]に対して
産生されたヤギ抗血清はHTLV−IIIRFによるシンシチウム形成を阻害した
が、HTLV−IIIBによろシンシチウム形成は阻害しなかった。これはSP
−10RF(A)に含まれるタイプ特異性抗原は、HTLV−IIIRF gp1
20とT細胞CD4(T4)分子の相互作用を阻害する抗体を産生するワクチン
成分として適切であることを示す。
実施例5
HIV gp120−CD4(T4)相互作用を阻害しうる抗体の誘導
下記の点を判定するために一連の研究を行った:1)ウシアルブミンまたは破
傷風トキソイドに結合したSP−10ペプチドがインビトロで抗原特異性、CD
4(T4)依存性のT細胞応答に対して何らかの阻害作用を及ぼすか否か;およ
び2)抗SP−10抗血清(実施例4に記載)がHIVに感染していないヒト白
血球集団に結合するか否か。
SP−10ペプチドを破傷風トキソイドで刺激した非感染ヒト末梢血リンパ球
培養物にインビトロで直接に添加した場合、破傷風トキソイドに対する正常なT
細胞応答の阻害は見られなかった(表XIII)。
表XIIIに見られるように、SP−10−TT単独はTT単独と同様に良好
な抗原特異性T細胞活性化物質であった。さらに、SP−10−TTおよびSP
−10−BSAをTT単独に添加した場合、正常T細胞によるTT誘導増殖を阻
害しなかった。さらに、抗SP−10ヤギ血清はフローサイトメトリーによる間
接的免疫蛍光アッセイにおいて末梢血リンパ球または単球に結合しなかった。
これらのデータは、SP−10ペプチドが機能性CD4(T4)分子依存性の
正常なヒトT細胞の機能は混乱させないが、HIV gp120−CD4(T4
)相互作用を阻害する、かつ逆転写酵素阻害アッセイにおいてHIVを中和する
抗体を誘導することを示す。
このように、小型の合成SP−10様ペプチド(長さ約35アミノ酸以下)を
含むワクチンが、組換えgp120またはその大型サブユニットを含むHIVワ
クチンにまさる利点をもつ。後者は正常な免疫機能を阻害する可能性があるから
である。
実施例6
HIVの単離体特異性中和
合成ペプチドSP−10は、HIV単離体HTLV−IIIBおよびLAVの
gp120エンベロープ蛋白質に由来し、これにユニークなアミノ酸配列をもち
、一方、他のHIV単離体はそのSP−10様gp120エンベロープ蛋白質中
に種々の程度の異なるアミノ酸配列をもつ。HIVのHTLV−IIIB単離体
に由来する合成ペプチドSP−10(すなわちSP−10−IIIB)を破傷風
トキソイドに結合させ、これをPalkerら(Proc.Natl.Acad .Sci.(USA)
84:2479,1987)の記載に従って用いてヤギに
抗体を産生させた(コンジュゲート0.5mg/kgヤギ)。合成ペプチドSP
−10に対して産生されたヤギ抗体を、4種類のHIV単離体(図5A:HTL
V−IIIB、図5B:HTLV−1IIRF、図5C:HTLV−I1IMN、図
5D:HTLV−IIIsc)の中和能につき試験した。ヤギ抗SP−10抗血清
(●)、免疫前ヤギ血清(○)およびエイズ患者血清(■)(すべて1/10希
釈)をまず各ウイルス単離体の希釈液(10-1、10-2、10-3)と共にインキ
ュベートした。次いでこれらのウイルス単離体を、H−9 T細胞感染能につき
、ウイルスと細胞をインビトロで10日間同時培養することにより試験した。1
0日間の培養後に細胞培養上清中に存在するHIVの水準を、上清のRT活性測
定により
推定し、結果をRTアッセイで得たcpm値として表す、。RTアッセイにおい
てcpm値の増大は培養におけるHIV水準の増大を反映する。
図5Aに示すように、ヤギ抗SP−10抗血清はH−9細胞のHTLV−IIIB
感染をウイルス希釈度10-2で阻害した(すなわち中和した)。免疫前ヤギ血清
は同じウイルス希釈度でHTLV−IIIB感染を阻害しなかった。これに対し
ヤギ抗SP−10抗血清は他のHIV単離体を中和しなかった(図5B−D)。
エイズ患者抗体は4種類すべてのHIV単離体を中和した(図5A−D)。これ
らのデータは、合成ペプチドSP−10に対するヤギ抗血清が、そのgp120
エンベロープ蛋白質中にSP−10中に存在するアミノ酸配列を含むHTLV−
IIIB単離体を中和することを示す。これらのデータは表XIIのデータと共
に、種々のHIV単離体由来のSP−10様アミノ酸配列を含むワクチンが広域
のHIV単離体に対して有効であろうということを示す。
実施例7
HTLV−IIIB感染したH9 T細胞には結合するが、 HTLV−IIIRF感染したH−9細胞には結合しないヤギ抗SP−10抗血清
ヤギ抗SP−10抗血清および前採血(prebleed)した自己対照血清
を、非感染H9 T細胞、HIV単離体HTLV−IIIBに感染したH9 T
細胞、またはHIV単離体HTLV−IIIRFに感染したH9 T細胞につき、
フローサイトフルオロメトリーおよびコールター(Coulter)EPICS
Vサイトフルオログラフにより比較した(Haynes,Immunol.R ev
.57:127,1981;Haynesら,New Eng.J.Med
.304:319,1981)。
ヤギ抗SP−10抗血清(1:200)は、対照(前採血)ヤギ血清(1:2
00)とともにインキュベートしたHTLV−IIIB感染H9 T細胞と比較
して、40%のHTLV−IIIB感染H9 T細胞と反応した(図6A)。ヤ
ギ抗SP−10抗血清も対照(前採血)血清(1:50)も、非感染H9 T細
胞とは反応しなかった(図6B)。対照(前採血)血清も抗SP−10抗血清(
1:50)も、HIVのHTLV−IIIRF単離体に感染したH9 T細胞とは
結合しなかった(図6C)。
実施例8
インビボでTヘルパー細胞、CD8+細胞傷害性T細胞
およびB細胞による中和応答を誘導する、
ヒト免疫不全ウイルスエンベロープの複数領域を含む合成免疫原の開発
中和抗体およびTヘルパー細胞応答を誘導するほかにHIVに対する細胞傷害
性T細胞応答を誘導する合成ペプチド免疫原を開発するために、特定の細胞傷害
性T細胞エピトープを含むHIV MN単離体領域を反映する一連のペプチドを
調製した(表III参照)。これらの研究をMN HIV単離体を用いて行った
のは、現在これが米国で最も一般的な基本型ウイルスであると思われるからであ
る(La Rosaら,Science 249:932,1990)。
Takahashiら(Science 246:118,1989)は、M
N HIV単離体由来のアミノ酸322−326(FYTTK)を含み、かつH
IVIIIB単離体由来のアミノ酸323−329を含む細胞傷害性T細胞(C
TL)エピトープ(表IV参照)を決定した(Takahashiら,J.Ex p.Med
.170:2023,1989)。たとえば調製された1つのT1−
SP10変異体ペプチドはT1−SP10MN(A)ペプチドであり、ここで(
A)はアミノ酸322−326を既存のMN SP10領域のアミノ酸303−
321に付加したことを意味する(表III参照)。次いで、抗原提示細胞の細
胞膜内へ侵入することができ、したがってMHCクラスI分子によりプロセシン
グおよび発現され、したがってCD8+CTLにより認識される可能性のある合
成ペプチドを形成するために、gp41 HIVエンベロープ蛋白質の最初の1
2アミノ酸(HIV単離体BH10/IIIB中のアミノ酸519−530 A
VGIGALFLGFL)をT1−SP10ペプチドのN−末端に共有結合させ
た。HIV gp41のこれらのアミノ酸(519−530)は疎水性が高い。
それらは脂質膜内へ侵入して、HIVが細胞融合を誘導する能力に役割を果たし
うる一次アミノ酸であると仮定されている(Brasseurら AIDS R es.Hum,Retrovirol
.4:83,1988)。この12アミノ
酸gp41配列を含むペプチドはペプチドの名称の前に接頭辞F−をもつ(融合
誘導領域、[usogenic regionのF)(表IIIおよびIV参
照)。Boschら(Science 244:694,1989)は、HIV
のF領域(AVGIGALFLGFL)に相同なSIVの領域(GVFVLGF
LGFLATAG)が実際にSIV融合エンベロープペプチドであることを証明
した。したがってF−誘導体化ペプチドにより免疫化したのちには、F−誘導体
化ペプチドも抗原提示細胞の細胞膜内へ侵入することができ、F−誘導体化ペプ
チドは取り込まれ、そしてCD8+MHCクラスI拘束性CTLがインビボで産
生されると仮定された。Deresら(Nature 342:561,198
9)は、合成ペプチドへの脂肪酸トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニ
ルセリル−セリン部分の結合によりインビボで合成ペプチドのMHCクラスI分
子に関するプロセシングおよび提示が促進され、したがってCD8+CTLが産
生されることを示した。
Balb/cマウスにおいてMN系列のT1−SP10ペプチド(表III)
を用いて一連の研究を行い、インビボでマウスに注射した場合にそれらが抗ペプ
チド抗体を誘導する能力を比較し(図7参照)、それらが抗HIV中和抗体を誘
導する能力を比較し(図8参照)、かつこれらのペプチドのうちいずれかがMH
CクラスI拘束性CD8 CTLを誘導しうるか否かを判定した(表XIVおよ
びXV)。
PBS中の可溶性F-T1-SP10MN(A)ペプチド(10μg)をBalb/cマウスに完全フロイント
アジュバント中において注射し(1回目の注射)、次いで不完全フロイントアジュ
バント中において注射した(2-5回目の注射)。
エフェクター細胞は、インビトロで完全T細胞培地中において25μg/mlのF-T1-S
P10MN(A)ペプチドと共に7日間増殖させた免疫化動物脾細胞であった(Takahashi
ら,J.Exp.Med.170:2023,1989)。培養3日目に10%v/v ConA上清を添加した。ConA
上清は完全T細胞培地中において10μg/mlのコンカナバリンAで4日間刺激したBa
lb/c脾細胞由来のものであり(Takahashiら,J.Exp.Med.170:2023,1989)、上清を
取り出して脾臓の細胞傷害性T細胞の活性化に用いた。*
捕体(C)を含む実験は、F-T1-SP10MN(A)で免疫化した3匹のマウス由来のプール
した脾細胞から得た結果を表す。
リポソームは、7%(0.7g/10ml PBS)L-αジオレオイルレシチンオクチルグルコシ
ド、20mg/ml T1-SP10MN(A)ペプチドおよびコレステロール3.1mg/mlを用いて、標準
法により調製された(Mimmsら,Biochemistry 20:833,1981;Liposome Technology
Vol.III,G.Gregoriadis編,14章,205-224頁,1984)。
T1-SP10MN(A)ペプチドを含有するリポソームをBalb/cマウスに、リポソーム中の
T1-SP10MN(A)ペプチドの全投与量10μgで皮下2カ所に、完全フロイントアジュバ
ント中において注射し(1回目の投与)、次いで不完全フロイントアジュバント中
において投与した(2-5回目の投与)。エフェクター細胞は表XIVに提示および
記載したと同様に調製した免疫化動物脾細胞であった。*
実験1はRL-12標的細胞を使用し、実験2はEL4標的細胞を使用した。種々のT1−SP10ペプチドがBalb/cマウスにおいて抗ペプチド抗体を 誘導する能力の比較:
図7は、種々のペプチド10μ/mlで1、2および3回免疫化した後のBa
lb/cマウスの血清中に産生された抗ペプチド抗体の水準の比較を示す。図7
は、(A)領域またはF領域の付加によって2回目の免疫化後にELISAアッ
セイにおいてT1−SP10MNペプチドに対する抗ペプチド抗体の水準が上昇
したことを示す。種々のT1−SP10ペプチドがBalb/cマウスにおいて抗HIV中和抗体 を誘導する能力の比較:
図8は、ブリード3からの抗血清をHIVシンシチウム阻害アッセイに添加し
た場合の、インビトロでのHIVシンシチウム形成阻害率%を示す。シンシチウ
ム形成を50%以上阻害する血清抗体をもっていたのはT1−SP10注射群で
は1匹だけ、F−T1−SP10群およびT1−SP10(A)群では0匹であ
ったのに対し、F−T1−SP10MN(A)を注射した動物群では5匹中3匹
がシンシチウム形成を50%以上中和する抗体水準をもっていた(図8)。種々のT1−SP10ペプチドがインビボでCD8+CTLを誘導する能力:
Balb/cマウスに注射した場合、T1−SP10MNペプチドもF−T1
−SP10MNペプチドもBalb/cマウスにおいて測定可能なCTLを誘導
しなかった。しかし可溶性F−T1−SP10MN(A)ペプチド(表XIV)
およびリポソーム中のT1−SP10MN(A)ペプチド(表XV)は、インビ
ボで注射した場合に、T1−SP10MN(A)コーティングしたD′標的細胞
をインビボで殺す抗−HIV CTLを誘導することができた。表XIVは、B
alb/cマウスにおいてインビボで可溶性F−T1−SP10MN(A)ペプ
チドにより誘導された細胞傷害性T細胞はThyl+、Ly2(CD8)+であ
ったことを示す。CD8+抗T1−SP10(A)細胞傷害性T細胞はH2′標
的のみを殺し、H2′標的を殺さなかった。表XVは、リポソーム中のT1−S
P10(A)ペプチドにより誘導された抗−T1−SP10(A)細胞傷害性T
細胞はCD8+およびMHCクラスI拘束性であったことを示す。
このようにT1−SP10MN配列にF配列および(A)配列(表III)を
付加することにより、中和抗体およびヘルパーT細胞応答だけでなくCD8+抗
HIV MHCクラスI拘束性細胞傷害性T細胞をも誘導しうろ52アミノ酸ペ
プチド[F−T1−SP10MN(A)]を構築することができた。さらに、M
HCクラスI拘束性−抗HIV細胞傷害性T細胞は、リポソームに取り込まれた
40アミノ酸ペプチドであるT1−SP10MN(A)によりインビボで誘導さ
れた。
実施例9
以上に示したように、HIV gp120 V3ループのアミノ酸303−3
27[SP10(A)]およびHIV gp120のアミノ酸428−43(T
1)を含む合成ペプチドT1−SP10(A)の構築体は、インビボで抗HIV
メモリーTヘルパー細胞の活性化を誘導するのに有効なT細胞免疫原、および抗
HIV中和抗体を得るためのB細胞免疫原として作用する(Parkerら,P NAS(USA)
,85:1932−1936,1988;Parkerら,J .Immunol.
,142:3612−3619,1989;Hartら,J .lmmunol.
,145:2677−2685,1990、およびHart
ら,PNAS(USA),88:9448−9452,1991)。T1−SP
10(A)ペプチドは、マウス、ヤギおよびアカゲザルにおいて抗HIV中和抗
体を誘導し(Parkerら,PNAS(USA),85:1932−1936
,1988;Parkerら,J.Immunol.,142:3612−36
19,1989;Hartら,J.Immunol.,145:2677−26
85,1990、およびHartら,PNAS(USA),88:9448−9
452,1991)、マウスにおいて抗HIV MHCクラスI拘束性CTLを
誘導し(Hartら,PNAS(USA),88:9448−9452,199
1)、かつマウス、ヤギ、アカゲザルおよびチンパンジーにおいて抗HIV T
ヘルパー細胞応答を誘導する(Parkerら,PNAS(USA),85:1
932−1936,1988;Parkerら,J.Immunol.,142
:3612−3619,1989;Hartら,J.Immunol.,145
:2677−2685,1990、およびHartら,PNAS(USA),8
8:9448−9452,1991)。マウスにおいて最近完成した研究では、
C57
BL/6およびBalb/cマウスはT1SP10IIIBペプチドに対して高
力価の抗ペプチド抗体を産生するが、これらのマウス系統は中和決定基HIVI
IIB V3ループに対しては中和抗体を産生しないことが見出された。これに
対しC57BL/6およびBalb/cマウスは、HIVMN V3ループ由来
の配列を含むT1SP10ペプチドで免疫化した場合には良好な抗HIV中和抗
体を産生する。
合成ペプチドを試験するために、チンパンジーにおいて免疫化実験を行った。
以下に述べる結果は、ニューメキシコHolloman AFTのチンパンジー
がT1SP10IIIB(A)ペプチドに対して良好な抗体およびヘルパーT細
胞応答を形成したが、Balb/cマウスと同様に、HIVIIIB V3ルー
プ上の中和抗体決定基に対しては中和抗体を産生しないことを示す。
図9においては、チンパンジーを合成HIVエンベロープペプチドで免疫化し
、それらの抗体力価をELISAアッセイ法により試験した。動物884および
1028をペプチドT1−SP10IIIBで免疫化し、ELISAアッセイに
も用いた。動物1045および1070については、ペプチドF−T1−SP1
0IIIB(A)を免疫化およびELISAアッセイに用いた。免疫化はすべて
IPA+PBS(1:1)中で行われた。ただし動物1028は3回目の免疫化
後にIM膿瘍を発生し、1回の免疫化をやめた。その後の免疫化はPBS単独の
中で行われた。
分かるように、T1−SP10ペプチドは動物884および1028において
は優れた免疫原であったが、T1−SP10ペプチドのN−末端に合成されたH
IV gp41融合(F)ドメインを含むT1−SP10ペプチドは、Fドメイ
ンを含まないペプチドの場合ほど高い、またはそれほど長期持続性の抗体を誘導
しなかった。
以下の点に注目すべきである:動物884および1028において良好な抗体
力価を誘導した免疫原T1SP10IIIB(A)で、動物1045および10
70を16カ月目に攻撃した。動物1045および1028はIFA中のT1S
P10IIIB(A)に応答しなかった。したがってこれは、それらがF−T1
−SP10IIIB(A)ペプチドでの以前の免疫化からT1−SP10(A)
ペプチドに対して寛容であることを証明する。動物884を14週目に追加免疫
化した場合にはT1−SP10IIIB(A)ペプチドに対する力価が上昇した
が、同時に動物1028を追加免疫化しても力価は上昇しなかった点に注目する
ことも重要である。動物884はIFAで追加免疫化されたが、動物1028の
追加免疫化はアジュバントなしにPBSのみで行われた。
免疫作用ペプチドに対する末梢血単核細胞(PBMC)増殖応答についても研
究を行った(図10参照)。ペプチドT1−SP10IIIBおよびT1−SP
10IIIB(A)は、動物884および1028において高水準の循環PBM
C増殖を誘導した。動物884および1028においてこれらの水準は6カ月後
(14月目)には検出不可能な水準にまで低下したが再上昇した。動物1028
の増殖応答は、免疫化がアジュバントなしにPBSのみで行われたにもかかわら
ず、6カ月の休止後の各追加免疫化に伴って上昇した。
B細胞応答については、F−T1−SP10IIIB(A)ペプチドで免疫化
した動物1045および1070はT1−SP10IIIB(A)ペプチドに対
して増殖応答しなかった。これら後2者の動物を、動物884および1028に
おいて良好な抗原であったT1−SP10IIIB(A)ペプチドで免疫化した
場合、動物1045および1070のいずれもT1−SP10IIIB(A)ペ
プチドに対して増殖応答を発現しなかった。これは、T1−SP10ペプチドの
N−末端にFドメインを付加すると寛容原が形成され、これが動物1045およ
び1070をgp120のT1およびSP10領域に対して寛容化したことを証
明する。表XVIに示すように、動物884および1028は両者とも天然gp
120に対する増殖アッセイに応答したが、動物1045および1070は天然
gp120ならびに免疫作用ペプチドに対して寛容であった。
合成ペプチドで免疫化したチンパンジーのPHAに対するPBMC増殖応答に
ついても研究した(図11参照)。これらのデータは、動物1045および10
70はHIV gp120のT1およびSP10領域に対して寛容ではあるが、
これらの動物のPBMC PHA応答は免疫化期間中正常であったことを示す。
チンパンジーの研究に用いたものと同一のT1−SP10IIIBペプチドバ
ッチを同様にヤギにおいて免疫原として用い、ヤギにおいて良好な抗HIV中和
力価を得た(図12参照)。T1−SP10ペプチドはチンパンジーにおいてI
FAと共に用いた場合に優れた免疫原であり、>1:102,400という顕著
な抗ペプチド血清抗体力価(図9参照)、ならびにT1−SP10および天然H
IV gp120に対するT細胞応答の誘導(図10および下記の表XVI参照
)を生じた。
チンパンジーに用いたものと同一のT1−SP10ペプチドバッチに対してヤ
ギが高い中和抗体応答を示したことは、チンパンジーは選択的に中和V3配列を
免疫原として認識せず、一方、他の非中和T1−SP10IIIBペプチド配列
はチンパンジーにおいて免疫原であったことを証明する。したがってHIVII
IB V3ループの選択的蛋白質分解がインビボでチンパンジーおよびマウスの
単核細胞において起こる可能性があるか、またはより可能性が高いのはV3ルー
プの中和決定基に対する抗体応答の遺伝子限定がチンパンジーおよびマウスに存
在することである。
アカゲザルにおいては、500μgの精製T1SP10MN(A)ペプチドの
注射により4/4の動物に著しく高い水準の抗HIVMN中和抗体が産生される
ことが示された(図13−15参照)。さらに、4匹のサルのうち1匹において
免疫化によりHIVIIIBおよびHIVMNウイルスを中和する交差反応性抗
HIV中和抗体が産生した(前記の表XVIII参照)。したがって25%のチ
ンパンジーおよびヒトがT1−SP10MN(A)ペプチドに応答して交差中和
性抗HIVエンベロープ抗体を形成した場合、非MN様HIV単離体で攻撃され
た被験体のさらに5%をHIV攻撃から防御することができる。サルのデータに
ついてはさらに図16および17を参照されたい。
T1−SP10IIIB(A)ペプチドは動物884および1028において
抗HIVIIIB中和抗体を誘導しなかったので、またF−T1−SP10II
IB(A)ペプチドは動物1045および1070において寛容を誘導したので
、すべてのチンパンジーは、16カ月目(動物884、1028)または17カ
月目(動物1045、1070)にT1−SP10MN(A)ペプチドで免疫化
された。この場合妥当なことは、A)T1−SP10MN(A)ペプチドが動物
1045および1070における寛容を破壊しうるか否か、およびB)いずれの
動物もT1−SP10IIIBペプチドにより提示されたHIV IIIBの決
定基を認識し得ないように思われたので、いずれかの動物がHIV MN V3
ループの中和決定基V3を遺伝的に認識しうるか否かを判定することであった。
図18は、4匹すべてのチンパンジーを0.1mg/kgのT1−SP10MN
(A)ペプチドで免疫化したのち、4匹中3匹(884、1028および104
5)が弱い血清抗HIV MN中和抗体の出現を示し(点線)、一方動物107
0は1:20で>80%の中和率に及ぶ高い水準の抗HIV MN中和抗体を発
現し、かつHIV IIIBを交差中和したことを示す(表XIX、図18実線
)。この寛容の破壊は、動物884、1045および1070の血清中のT1−
SP10MN(A)ペプチドに対する力価の上昇にも見られる(図19)。動物
1028は免疫化に伴って初期膿瘍を発生し、4カ月間の研究後にはIFAを受
容せず、IFAによるペプチドの初期免疫化後にHIVのペプチドに対する抗体
の上昇を示さなかった。
チンパンジー1070の中和抗体がHIV MNおよびIIIB両方の単離体
を中和したという所見は、HIV MNおよびHIV IIIB両ペプチドによ
り誘導されたタイプ特異性中和抗体の存在に起因する(Ruscheら,Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 95:3198(1988))か、
またはT1−SP10MN(A)ペプチドによる交差中和性−抗GPGRA抗体
の誘導に起因すると思われる。トランケートしたSP10IIIBペプチドであ
るSP10D(IRIQRGPGR)に対する抗体力価をチンパンジー1070
から得た血清と共にELISAアッセイに用いた。このペプチドに対する終末点
ELISA力価は1990年10月23日から1991年12月3日までは(研
究3カ月目から17カ月目まで)1:800以下であった。動物1070をT1
−SP10MN(A)で1992年12月3日に1回目の免疫化したのち、SP
10Dペプチドに対する抗体の力価は1992年1月7日には1:800から1
:3200に、そして1992年2月4日には1:12,800に上昇した。同
一期間で、T1−SP10MN(A)ペプチドに対する1070の抗体力価は1
:12,800から1:102,400に上昇し、一方T1−SP10IIIB
ペプチドに対する力価は1:3200から1:25,600に上昇した。動物1
070の血清中の中和抗体を吸収する吸収研究により、すべての抗HIV MN
中和抗体活性をSP10MN(A)ペプチドで吸収することができ、HIV M
NおよびHIV IIIBの両方に共通であるV3ループ先端由来の配列のみを
含む配列IGPGRAIGPGRAIGPGRAC(DP2)(Jahaver
ianら,Science,250:1590(1990))をもつペプチドで
HIV MN中和活性の一部を吸収することができた(図20)。したがってT
1−SP10MN(A)ペプチドにより誘導されたチンパンジー抗体応答の一部
はHIV MNおよびHIV IIIBを交差中和し、HIV gp120 V
3ループ先端の保存配列に対して産生されたものである。
重要なことは、アカゲザルに500μgの精製T1SP10MN(A)ペプチ
ドを注射したところ、4匹中4匹が極めて高い水準の抗HIVMN中和抗体を産
生し(図20−24)、4匹中1匹のアカゲザルがHIVIIIBおよびHIV
MNウイルスを中和する交差反応性の抗HIV中和抗体を産生した(表XVII
I−XX)ことである。図25は、DP2(IGPGRAIGPGRAIGPG
RAC)ペプチドがアカゲザル18987から得た血清中の抗HIVIIIB中
和活性を吸収することを示す。表XXIは、本明細書に記載するチンパンジーお
よびアカゲザルの研究に用いたペプチドの配列を示す。
実施例10
以下は、ヒト患者免疫化のためのブロトコールである。HIV血清陰性被験者
を、米国内で現在流行しているHIVの単離体のうち約80%に対して中和抗体
を産生するように設計されたT1SP10(A)ペプチドの多価混合物(表XX
IIおよびXXIII)で免疫化する。
実験プロトコール
HLA 2A+およびHLA 2A−両方のヒト患者につき最高2年間研究す
る。処置期間中、HIVMNおよび他のHIV単離体に対する中和抗体の産生、
ならびにTヘルパーおよび/またはクラスI拘束性−抗HIV CTLの産生を
測定する。
使用する免疫原はロス・アラモス・データ・セット(Los Alamos
Data Set)(Myersら,Human Retroviruses and AIDS
1991)中のHIV単離体のうち80%に対して抗体を産
生すると予想されるT1SP10(A)ペプチドである。ある患者には表XXの
免疫原を投与し、ある患者には表XIXの免疫原を投与する。
各患者に免疫原として約0.05mg/kgのペプチド、または各1mgの用
量のペプチドを投与する。当初の投与計画に対して応答が得られない場合、3カ
月の休止後に用量を倍増してこの投与方式を反復する。
不完全フロイントアジュバント(IFA)を免疫原と1:1(v/v)混合物
として混合する(Hartら,J.Immunol.,145:2677−26
85,1990)。各免疫化のための全容量は2ccとすべきである。
免疫原を筋肉内投与する。免疫原を全容量2ccに混合し、1ccずつ2カ所
に筋肉内投与する(右または左上腕、右または左大腿)。
免疫化は0カ月、1カ月および3カ月目に行う。患者を各免疫化後4週間監視
する。3回目の免疫化後に、HIVに対する応答の力価を試験し、より大量のペ
プチドによる免疫化を3カ月の休止後に行うか否かを決定する。
患者につきルーティンな血液および尿試験を実施する。以下の血液試料が必要
である。
血清(10ml)(血液約20cc)を、RIAにおけるT1SP10および
SP10ペプチドの結合およびRIP/ウェスタンブロットアッセイにおけるH
IV gp120結合の研究に用いる。血清は、逆転写酵素および/またはシン
シチウム阻害アッセイにおけるHTLV−IIIB、HTLV−IIMNおよび
現場HIV単離体の中和力価の測定にも用いられる。毒性に関するルーティンの
血清化学的試験(肝機能検査、腎機能およびchem 18パネル)、および全
血計数(10ccのヘパリン添加血)を行う。
末梢血球(血液60ml)を、PHA、TT結合T1SP10およびSP10
ペプチド、gp120およびOKT3に対するT細胞増殖応答の研究に用いる(
約30mlのヘパリン添加血)。T細胞、B細胞、NK細胞、CD4およびCD
8の細胞数も測定する(約5mlのヘパリン添加血)。最後に、CTLアッセイ
を、自己もしくはHLA同一のEBVトランスフォームB細胞系、または自己E
BVトランスフォームB細胞系につき、ワクシニアgp160感染した標的お
よびペプチドコーティングした標的を用いて行う。
実施例11
HIV天然蛋白質またはHIV蛋白質発現標的細胞に対するTヘルパー(Th
)細胞、中和抗体、およびMHCクラスI拘束性−細胞傷害性Tリンパ球(CT
L)を誘導するための実験的合成ペプチド免疫原を設計する方法は開発されてい
る(Palkerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:
1932(1988)、Palkerら,J.Immunol.,142:36
12(1989)、Hartら,J.Immunol.,145:2677(1
990)、Hartら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88
:9448(1991)、Haynesら,AIDS Res.& Human
Retroviruses 6:38(1990)、Haynesら,J.I
mmunol.,151:1646(1993)、Haynesら,J.Exp.
Med.,177:717(1993)、Haynesら,Trans.Ame
r.Assoc.Physician 106:31(1993)、Yasut
omiら,J.Immunol.,151:5096(1993))。(エイズに
対するHLA系ワクチンに関する一般経路を図30に示す。Th1---n−B1---n
には構築体Th−SP10、およびたとえばC4−V3が含まれる。Th1---n
−Tc1---nはTh−CTL(CTL=X)に等しい。)
中和抗体を誘導するための一般的免疫原の設計には、gp120エンベロープ
V3ループ中和ドメインに対してN−末端にある、HIV蛋白質のThエピトー
プ(Th−B、図26)1または2以上の合成が必要である。MHCクラスI拘束
性−抗HIVまたは抗SIV CTL誘導のために、Th−B−CTLおよびT
h−CTLペプチドの設計に共に成功した(図26)(Hartら,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 88:9448(1991)、Yasu
tomiら,J.Immunol.,151:5096(1993))。HIV
IIIB、MNまたはRFエンベロープgp120のTh−B−CTLエピト
ープからなる基本型の合成ペプチド免疫原は以下のものを誘導した:a)マウス
、ヤギ、アカゲザルおよびチンパンジーにおいて天然gp120に対するTh応
答(Palkerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:
1
932(1988)、Palkerら,J.Immunol.,142:361
2(1989)、Hartら,J.Immunol.,145:2677(19
90)、Haynesら,J.Exp.Med.,177:717(1993)
)、b)ヤギ、アカゲザルおよびチンパンジーにおいて、実験室HIV単離体を
タイプ特異的様式で中和するB細胞中和抗体応答(Palkerら,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 85:1932(1988)、Palk
erら,J.Immunol.,142:3612(1989)、Hartら,
J.Immunol.,145:2677(1990)、Haynesら,J.
Immunol.,151:1646(1993)、Haynesら,J.Ex
p.Med.,177:717(1993)、Haynesら,Trans.A
mer.Assoc.Physician 106:31(1993))、なら
びにc)マウスおよびアカゲザルにおいて、HIVまたはSIV蛋白質を発現し
ている標的細胞を殺す抗HIVまたは抗SIV MHCクラスI拘束性−CTL
(Hartら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:944
8(1991)、Yasutomiら,J.Immunol.,151:509
6(1993))。アカゲザルにおいては、T1−SP10MN(A)ペプチド
が特定の動物にV3ループの先端にあるIGPGRAF配列と主に反応する抗体
を誘導し、かつHIVIIIB、HIVMN、HIVRFならびにCEM細胞中
で増殖させたHIV−次単離体をも交差中和することが示されている(Hayn
esら,J.Immunol.,151:1646(1993))。基本型多価HIV免疫原の設計
地域的にも患者間でもHIV単離体中には著しい変異性があるので、効果的な
予防用免疫原および治療用HIV免疫原には、特定の地域のHIV単離体に合わ
せた多価HIV免疫原の設計が必要であると思われる(Palkerら,J.I
mmunol.,142:3612(1989)、Haynesら,Trans
.Amer.Assoc.Physician 106:31(1993))。
このために、Clave E、HIVMN、HIVRF、HIVEV91および
HIVCANO中の4つの共通HIV単離体モチーフを反映するTh−B−CT
Lエピトープを含む基本型の多価HIV免疫原を設計した(図26および27)
。
これらの基本型ペプチドそれぞれには少なくとも以下のものが存在する:2つの
Th決定基;2つのクラスI拘束性CTL決定基、すなわち、一方はHLA A
2およびA3拘束性(Clericiら,Nature 339:383(19
89))であり、他方はB7拘束性(Safritら,急性セロンバージョン(
seronversion)中の2患者から単離した第3可変領域HIV gp
120に特異的なHLA−B7拘束性−細胞傷害性Tリンパ球クローンの解明。
1993年10月30日−11月4日の第6回NCVDG会合で発表)である;
ならびに抗HIV中和抗体により認識される3つ以上のエピトープ(Palke
rら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:1932(19
88)、Ruscheら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8
5:3198(1988)、Jahavarianら,Science,250
:1590(1990)(図26および27)。この基本型ペプチド混合物をマ
ウスにおいて前臨床試験することにより、2成分[T1−SP10RF(A)お
よびT1−SP10EV91(A)]がタイプ特異的な抗−V3ペプチド[抗S
P10(A)]応答を誘導し(表XXIV)、一方、2成分[T1−SP10M
N(A)およびT1−SP10CANO(A)]が広範に交差反応性の抗−V3
ペプチド抗体応答を誘導することが示された(表XXIV)。
Balb/cマウスをIFA(Seppic ISA 51)中において50μ
gの1価ペプチドで3回皮下に免疫化した。動物を免疫化の2週間後に採血し、
終末点ELISAアッセイにより抗体力価を測定した(E/C 3.0)。デー
タは各点につき3匹のマウスの血清抗体の算術平均力価を表す。
ELISA法はHaynesら,J.Immunol.,151:1646(1
993)、Haynesら,J.Exp.Med.,177:717(1993
)、Haynesら,Trans.Amer.Assoc.Physician
106:31(1993)に記載されている。HIVエンベロープペプチドがアフリカ(Clave A)およびタイ(Cla ve E)HIV単離体V3ループペプチドに対する交差反応性ペプチド応答を 誘導する能力
さらに、4種類のペプチド(表XXV)すべての混合物で免疫化したヤギおよ
びマウスから得た血清は、T1−SP10(A)A.con.ペプチド(アフリ
カのClave Aの共通V3ループ配列を反映したTh−B−CTLペプチド
)とも交差反応し、かつより低い程度にT1−SP10(A)E.con.ペプ
チド(タイのClave Eの共通V3ループ配列を反映したTh−B−CTL
ペプチド)とも交差反応する抗体を含有していた(表XXV)。多価混合物の4
成分それぞれ1種類のみを用いて免疫化したマウスから得た血清を、それらがア
フリカT1−SP10(A)A.con.ペプチドに結合する能力につき試験し
た場合、T1−SP10CANO(A)ペプチドがアフリカClave A共通
配列に対するすべての交差反応性抗体の産生に関与することが見出された。した
がって、CANOエンベロープの一次V3配列は他のHIVエンベロープV3配
列と大幅に異なる(図27)が、HIVCANO単離体のV3ループの二次また
は恐らくそれより高い次数の構造が多様なHIV V3モチーフに対する交差反
応性抗V3抗体を誘導する能力をもつと思われる。
データは、多価Th−B HIVエンベロープペプチド混合物を注射したマウス
3匹またはヤギ2匹の算術平均力価を表す。
用いた方法はHaynesら,J.Immunol.,151:1646(1993)、Haynesら,J.Exp.Med.,177:
717(1993)、Haynesら,Trans.Amer.Assoc.Physician 106:31(1993)に記載される。
アフリカ(A.CON)および東南アジア(E.CON)HIV単離体
に対するT1−SP10(A)配列
Human Retroviruses and AIDS 1993
G.Myers,J.A.Berzofsky,B.Korber,R.F.Smith,およびG.N.Pavlakis編
Theoretical Biology and Biophysics Group T-10発行
Mail Stop K710,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,NM 87545
多価HIVエンベロープ免疫原により生じた中和抗体応答
中和抗体応答につき、多価免疫原(図27)で免疫化した動物から得た血清は
放射免疫沈降アッセイまたはELISAアッセイにおいてHIV gp120I
IIBおよびgp120SF2と結合する。これらの動物から得た血清は、シン
シチウム阻害アッセイにおいてHIVMNおよびRF単離体を中和した。HIV gp120の中和CD4−V3配座決定基の証明
17bおよび48dヒト抗gp120モノクローナル抗体を、HIV感染患者
由来のヒトPBMC B細胞から単離した(Thaliら,J.Virol.6
7:3978−3988(1993);Mooreら,AIDS Res.Hu
man Retroviral.9:1185(1993))。17bおよび4
8dモノクローナル抗体は、gp120へのCD4結合を遮断するマウス−モノ
クローナル抗体を交差遮断し、異なるHIV単離体を広範に中和するが、基本的
にそれ自体はgp120−CD4結合を遮断しない(Mooreら,私的報告,
1994;Thaliら,J.Virol.67:3978(1993))。む
しろ天然gp120への48dモノクローナル抗体の結合が、gp120へのC
D4の連結後にアップレギュレーションされる。1つのペプチド、すなわちT1
−SP10CANO(A)が48dモノクローナル抗体に結合し(図28)、H
IVエンベロープハイブリッドペプチドT1−SP10CANO(A)へのモノ
クローナル抗体 48dの最適結合はSP10CANO(A)に対してN−末端
にあるCD4ペプチドであるT1の存在に依存することが見出された(図29)
。したがってT1−SP10CANO(A)ハイブリッドC4−V3ペプチドは
、有効かつ広範な中和作用をもつヒト−モノクローナル抗体により認識されるH
IV gp120の配座決定基を反映している。Wyattら,J.Virol
.66:6997(1992)およびMooreら,J.Virol.67:4
785(1993)がV3ループ[SP10(A)]とC4であるT1領域とが
天然gp120において互いに物理的に近接することを示唆しているのは興味深
い。したがってこのデータは、T1−SP10CANO(A)合成ペプチドが広
範な中和作用をもつ天然gp120のC4−V3配座決定基を模倣しうることを
直接に示す。他のHIV単離体のC4−V3配座決定基を反映する多数のCD4−V3[T1 −SP10(A)]ペプチドを同定するための一般法
HIV V3ループ自体は主としてタイプ特異性の抗HIV中和抗体を誘導す
るが、T1−SP10CANO(A)ペプチドにより規定されるC4−V3決定
基はより広範に交差反応性の中和抗体を誘導するであろう。これは、HIV血清
陽性患者から得た48dヒト−モノクローナル抗体がgp120の表面にある複
雑な配座決定基に結合し、広範なHIV単離体に結合し、かつ異なるHIV単離
体、たとえばHIVIIIBおよびHIVMNを中和するという事実から分かる
(Thaliら,J.Virol.67:3978(1993);Moore
J.ら,私的報告(1994))。したがって多数のC4−V3ペプチドを同定
するための一般法は以下の方法であろう:SP10またはSP10(A)領域の
N−末端(たとえばHIVMNのアミノ酸301−327、および他のHIV単
離体中の相同な領域に由来するもの)に結合したC4配列(たとえばHIVMN
由来のアミノ酸419−428、および他のHIV単離体中の相同な領域に由来
するもの)に由来する多数のC4−V3ペプチドを、ロス・アラモス・データベ
ースに挙げられた配列(Human Retroviruses and AI
DS 1991,1992,1993,G.Myers,J.A.Berzof
sky,B.Korber,R.F.Smith,およびG.N.Pavlak
is編,Theoretical Biology and Biophysi
c Group T−10発行,Mail Stop K710,Los Al
amos National Laboratory,Los Alamos,
NM 87545)から構築する(他の例については表XXVIを参照されたい
)。次いでこれら種々のC4−V3ペプチド約40−100を、ファージ表面に
発現したH鎖およびL鎖免疫グロブリン可変遺伝子の組合わせライブラリーに対
してスクリーニングする(Borbasら,Proc.Natl.Acad.S
ci.USA 88:7978(1991))。Borbasらの研究は、HIV感
染患者から得た多数の(107−108)ヒト−モノクローナル抗体をスクリーニ
ングする方法を提供し、gp120上の複雑な配座決定基に対する抗体種を探査
するための広域抗体応答のスクリーニングを可能にする。この方法で、組合わ
せライブラリー中のファージ表面に発現したH鎖およびL鎖ヘテロ二量体の可変
領域のFabノッチ内へ適合する配座であるC4−V3ペプチドを同定すること
ができる。これらのFabモノクローナル抗体を単離し、クローン化することが
できる(Borbasら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8
8:7978(1991))。極めて重要なことは、多様なHIV系統の天然g
p120 C4−V3配座決定基を反映するC4−V3ペプチドのデザインを同
定しうることである。蛋白質に基づくこの種類の選択を世界中の種々のHIV感
染地域の多数のHIV感染個体に由来する組合わせライブラリーにつき実施する
と、天然gp120のC4−V3領域に由来する広範に反応性の中和性決定基を
模倣するC4−V3ペプチドを広範に選択し、そしてたとえばT1−SP10C
ANO(A)の基本型C4−V3ペプチドと組み合わせて、多数のHIV系統の
C4−V3配座決定基に対して交差反応性の高い広域中和抗体を誘導するための
多価C4−V3ペプチド免疫原となすことができる。
配列は下記に由来する配列より得た:ロス・アラモス・データベース,Human Re
troviruses and AIDS 1991,G.Myers,J.A.Berzofsky,B.Korber.R.F.Smith.および
G.N.Paviakis編,Theoretical Biology and Biophysic Group T-10発行,Mail Sto
p K710,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,NM 87545。
引用した文献はすべてそれらの全体が本明細書に参考として含まれる。
以上、本発明を明確にし、理解するために、例を用いて詳細に記載した。この
記載を読むことにより、本発明の合成ペプチドはそのアミノ酸配列が個々のHI
V単離体のSP−10領域の配列とわずかに異なっても本発明の範囲から逸脱し
ないことが当業者には自明であろう。