【発明の詳細な説明】
電位依存性カリウムチャネル遮断薬としてのシクロヘキサン誘導体
本発明は、シクロヘキサン誘導体に関し、さらに詳しくは、置換されたアミノ
シクロヘキサン、それらを製造する方法、それらを含有する医薬組成物に関する
。これらの化合物は、電位依存性カリウムチャネルを遮断する能力によって医薬
用途が付与され、カリウムチャネル遮断薬である窒素含有複素環式化合物の中間
体としても有用である。
一過性の外方向電流(TOC)を生ずる電位依存性カリウムイオン(K+)チ
ャネルは、ニューロンの細胞膜に存在しており、オープンしてカリウムイオンを
細胞の内側から外側へ流すことによって、脱分極後の細胞を再分極するのに役立
つ。それらは、それゆえ、神経細胞の興奮に対する主要な調節的影響の1つであ
り、これら細胞の終末領域に到達する電流の量を決定する。これは、次いで、神
経終末から放出される神経伝達物質の量を調節する。さらに、それらは、神経細
胞の不応期と、それゆえ、ある時間内に細胞が再び興奮する可能性とを決定する
助けとなる。これは、ニューロンの興奮性と、また細胞が繰り返して興奮を受け
る傾向とを支配する。これらチャネルの機能を化学的手段によって変更する能力
は、治療上有用な薬剤を製造するのに適当であると思われる。これまで、TOC
チャネルを遮断することが知られている薬剤は、ヘビ毒素デンドロトキシンなど
の毒素や、4-アミノピリジンおよびその誘導体である。TOCチャネルの遮断
は、伝達物質の放出パターンに変化をもたらすと共に、影響を受けたニューロン
のパターンおよびタイプに依存して、様々な治療目的に帰着する。例えば、黒質
におけるドーパミン作動性の伝達を増大させるTOC遮断薬は、パーキンソン病
の治療に有用である。同様に、コリン作動性機能の増大は、アルツハイマー病お
よび認知強化に有用である。脳の神経ネットワークが複雑であるので、TOCの
遮断は、一度に1種より多くの伝達物質の増大をもたらすこともあり、これは、
よくあることであるが、疾患状態が1種より多くの伝達物質の欠損に関連してい
る場合には、相乗的に作用することができる。それゆえ、TOC遮断薬が、うつ
病、
疼痛、精神病、認知、記憶および学習、不安、パーキンソン病およびアルツハイ
マー病の領域で有用であり得ることは明らかである。さらに、それらは、多発性
硬化症などの神経伝達の損傷が存在する症状の治療薬として用いることができる
。
チャネル機能を増大させるように作用する化合物は、チャネルオープナーと呼
ばれ、これらは細胞におけるチャネルの抑制作用を増大させるのに役立つ。この
点に関して、それらは、細胞が繰り返し興奮を受ける可能性をも減少させるので
、抗痙攣薬として癲癇の治療に用い得る。また、神経伝達物質の放出を減少させ
る作用は、それらを、麻酔薬、鎮痛薬、鎮静薬および抗不安薬として用い得るこ
とを意味する。
本発明は、一般式(I):
[式中、点線は所望により結合を表し、
R1およびR5の一方は、水素、C1-C6アルキル、C7-C16アラルキル、-(C
HR6)nCHR7CN、-(CHR6)nCHR7CONH2、-(CHR6)nCHR7CO
OR8、-(CHR6)nCHR7CH2OH(ここで、nは0または1、R6およびR7
は、独立して、水素、C1-C6アルキル-またはC7-C16アラルキル-を表し、R7
は、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル-、(C2-C7)アルカノイルオキシ(C1-C6)ア
ルキル-、(C1-C6アルコキシ)カルボニル-をも表し、R8は水素またはC1-C6
アルキル);
R1およびR5の他方は、水素、C1-C6アルキルまたはC7-C16アラルキル;
R3は所望により置換されたC6-C10アリールまたはヘテロアリール基;該ヘ
テロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、該原子の1個またはそれ以上(
例えば、3個まで)は、酸素、窒素および硫黄から選択された同一または異なる
ヘテロ原子であり;該アリールまたはヘテロアリール基は、所望により1個ま
たはそれ以上の同一または異なる置換基、例えば、薬化学で一般的に用いられる
置換基(例えば、C1-C6アルキル;C1-C6アルコキシ、または上記と同意義の
C6-C10アリールもしくはヘテロアリールで置換されたかかる基;ハロゲン;ハ
ロC1-C6アルキル;ハロC1-C6アルコキシ;カルボキシ:ヒドロキシ(C1-C6
)アルキル;(C1-C6アルコキシ)カルボニル;置換アミノ(例えば、モノ-もし
くはジ-(C1-C6アルキル)-アミノ)を包含するアミノ;ニトロ;ヒドロキシ;
メルカプト;C1-C6アルキルチオ;(C1-C6)アルキルカルボニル;(C6-C10
アリール)カルボニル;(C2-C7)アルカノイルオキシ;(C7-C11)アロイルオキ
シ;(C1-C6)アルキルカルボニルアミノ、(C6-C10アリール)カルボニルアミ
ノ;(C2-C7)アルコキシカルボニルアミノ;C6-C10アリール;上記と同意義
のヘテロアリール;またはC1-C2アルキレンジオキシなど)で置換されている
;
R2およびR4は、独立して、水素、または式:-CRaRbRc(ここで、Ra、
RbおよびRcは、独立して、水素、C1-C6アルキル、所望により置換されたC6
-C10アリール、所望により置換されたヘテロアリール、所望により置換された
C6-C10アリールまたはヘテロアリールで置換されたC1-C6アルキル(ここで、
置換基は、例えば、R3に関する上記と同意義))で示される基を表し;R2は、
COR11(ここで、R11は、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシまたは所望に
より置換された(C6-C10アリール)アルキルまたはヘテロアリールアルキル基;
該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、該原子の1個またはそれ以
上(例えば、3個まで)は、酸素、窒素および硫黄から選択された同一または異
なるヘテロ原子であり;該アリールまたはヘテロアリール基は、所望により1個
またはそれ以上の同一または異なる置換基、例えば、薬化学で一般的に用いられ
る置換基(例えば、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、または上記と同意義
のC6-C10アリールもしくはヘテロアリールで置換されたかかる基;ハロゲン;
ハロC1-C6アルキル、ハロC1-C6アルコキシ;カルボキシ;ヒドロキシ(C1-
C6)アルキルC2-C7アルカノイルオキシ(C1-C6)アルキル;(C1-C6アルコキ
シ)カルボニル;置換アミノ(例えば、モノ-もしくはジ-(C1-C6アルキル)-ア
ミノ)を包含するアミノ;ニトロ;ヒドロキシ;メルカプト;C1-C6ア
ルキルチオ;(C1-C6アルキル)カルボニル:(C6-C10アリール)カルボニル;(
C2-C7)アルカノイルオキシ;(C7-C11)アロイルオキシ;(C1-C6アルキル)
カルボニルアミノ、(C6-C10アリール)カルボニルアミノ;(C2-C7アルコキシ
カルボニル)アミノ;C6-C10アリール;上記と同意義のヘテロアリール;また
はC1-C2アルキレンジオキシなど)で置換されている)をも表し;
YおよびY1の一方は、
[式中、R13は、水素、C1-C6アルキルまたはC7-C16アラルキルを表す];
YおよびY1の他方は、-CHR12-(ここで、R12は、水素、C1-C6アルキル
またはC7-C16アラルキル)である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
ここで用いるように、基として、または、基(例えば、アラルキル、アルカノ
イル)の一部としてのアルキルの例は、炭素数6まで、特に炭素数1〜4の直鎖
または分岐鎖の基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-
ブチルおよびsec-ブチル)である。基として、または、基(例えば、アルコキシ
カルボニル)の一部としての「アルコキシ」の例は、式:アルキル-O-(ここで
、アルキルは上記の意味を有する)で示される基である。基として、または、基
(例えば、アラルキル、アラルカノイル)の一部としての「アリール」の例は、
フェニルおよびナフチル(例えば、1-または2-ナフチル)などの炭素数6〜1
0の単環式または二環式の基である。ヘテロアリール基は、酸素、窒素および/
または硫黄から選択されるヘテロ原子を有する。基として、または、基(例えば
、ヘテロアリールアルキル)の一部としてのヘテロアリールの例は、環原子数5
〜10の単環式または二環式の基(例えば、1個の窒素ヘテロ原子を有するもの
(例えば、2-または3-ピロリル、2-、3-または4-ピリジル、キノリル(例え
ば、2-、3-または6-キノリル)、イソキノリル(例えば、1-、3-または6-イ
ソキノリル));1個の硫黄原子を含有するもの(例えば、2-または3-チエニ
ルまたはベンゾチエニル(例えば、2-、3-または6-ベンゾチエニル));または
、1個の酸素原子を有するもの(例えば、2-または3-フラニルまたはベンゾブ
ラニル(例えば、2-、3-または6-ベンゾフラニル));または、2個またはそれ
以上のヘテロ原子を有するもの(例えば、チアゾリル(例えば、2-チアゾリル)、
イミダゾリル(例えば、2-イミダゾリル);オキサゾリル(例えば、2-オキサゾ
リル)))である。
R3は、例えば、フェニル、または、1個もしくはそれ以上の上記のような置
換基、例えば、メトキシ、エトキシなどのC1-C6アルコキシ;塩素または臭素
などのハロゲン;CF3;CF3O;メチルまたはエチルなどのC1-C6アルキル
;ヒドロキシ;シアノおよびカルボキシから選択された同一または異なる置換基
で置換されたフェニルであり得る。R3の好ましい意義は、メトキシフェニル(
例えば、4-メトキシフェニル)およびヒドロキシフェニル(例えば、4-ヒドロ
キシフェニル)である。
基Y(およびY1)の例は、CH2、COおよびCHOHである。
R4およびR2の意義は、例えば、水素または式:-CRaRbRc(ここで、Ra
およびRbは、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまた
はブチルから選択され、Rcは、水素、メチル、エチル、イソプロピル、プロピ
ル、ブチルまたはC6-C10アリールまたはヘテロアリール基(5〜10個の環原
子を含有するが、該原子の1個またはそれ以上は、酸素、窒素および硫黄から選
択されるヘテロ原子であり、該アリールおよびヘテロアリール部分は、所望によ
り上記のように置換されている)から選択される)で示される基である。
好ましくは、R2は水素であり、R4は-CRaRbRc(ここで、Raは水素、Rb
はメチル、およびRcは所望により置換されたアリール(例えば、フェニルまたは
上記のような置換フェニル))である。R2は、COCH3、COOCH3またはC
OCH2Phであってもよい。
式Iの好ましい化合物は、R3が4-メトキシフェニルを表す。R2がメチルま
たは水素を表す化合物も好ましい。
R1およびR5の例は、水素、Me、Et、nPr、ベンジル、-(CH2)2OH、
-CH2CH2CN、-(CH2)2COOMe、および-(CH2)2COOEtである。
特に好ましいのは、式IA:
[式中、R1は、水素、C1-C6アルキル、またはCH2CH2COOR8;R3は上
記と同意義で、好ましくは無置換または置換フェニル、例えば、ここで置換基は
、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、およびメチレ
ンまたはエチレン-ジオキシから選択され;R4'は、水素、アルキルまたは所望
により置換されたアリール(C1-C6)アルキル(ここで、アルキル基は、それ自体
が所望によりC1-C6アルキルによって置換されている)、R8は水素またはC1-
C6アルキルである]
で示される化合物である。
R4'の例としては、フェニルメチルまたはα-メチルフェニルメチル(ここで
、フェニル基は、所望により上記のような置換基で置換されている)が挙げられ
る。
R4'の好ましい意義は、PhCH(Me)-、PhCH2-およびHである。
式Iの化合物は、1個またはそれ以上の不斉中心を有することができる。した
がって、これらの化合物には、数多くの光学活性な立体異性体が存在し、単離し
得る。幾何異性体(例えば、EおよびZ;シスおよびトランス)は、R3が二重
結合によって結合している場合にも得られる。本発明は、光学活性体もしくは幾
何異性体またはその混合物(例えば、ラセミ体またはジアステレオマー)である
式Iの化合物を包含する。特定のエナンチオマー体およびジアステレオマー体を
単離するのは、標準的な分離法を用いればよい。例えば、ラセミ混合物は、「分
割剤」である単一のエナンチオマーとの反応によって(例えば、ジアステレオマ
ー塩の形成または共有結合の形成によって)、光学活性なジアステレオマーの混
合物に変換し得る。得られた光学活性なジアステレオマーの混合物は、標準的な
方法(例えば、結晶化またはクロマトグラフィー)によって分離し、個々の光学
活性なジアステレオマーは、次いで、「分割剤」を除去し、それによって、本発
明化合物の単一エナンチオマーを放出するように処理し得る。エナンチオマー混
合物を直接分離するには、(キラルな担体、溶離液またはイオン対形成剤を用い
た)キラルクロマトグラフィーを用いればよい。
特定のジアステレオマーまたは特定のエナンチオマーを調製するには、光学活
性な出発物質および/またはキラルな試薬、触媒および/または溶媒を用いた立
体特異的な合成法を用いればよい。
式Iの化合物は、薬理学的活性を有する。特に、それらは、電位依存性カリウ
ムチャネルを遮断する。それらは、それゆえ、うつ病、疼痛、精神病、不安、運
動障害(例えば、パーキンソン病)および多発性硬化症などの上記CNS疾患を
治療したり、認知、記憶および学習を強化するのに用いてもよい。それらは、以
下の標準的な試験法によって、後根神経節細胞における電位依存性カリウムチャ
ネルを遮断する能力を示す。
方法1 後根神経節(DRG)細胞における電位活性化K+電流の変調:
後根神経節細胞の培養に用いる方法は、ウッド(Wood)らによって報告された
方法[培養中の後根神経節細胞におけるカプサイシン誘導イオンフラックス、ジ
ャーナル・オブ・ニューロサイエンス(J.Neuroscience),8,3208-3220(1988)
]と同様である。後根神経節は、主として、腰椎および胸椎周辺から切除し、ハ
ム(Ham)のF14栄養混合物(F14:インペリアル・ラボラトリーズ(Imperi
al Laboratories))およびウマ血清(HS:ギブコ(GIBCO)またはフロー(Flow
))を含有する円錐形の遠心分離チューブに入れる。すべての神経節(例えば、
約14個)を採取したら、過剰の媒体を除去し、これらの神経節を、0.1%コ
ラゲナーゼ1A-S型(シグマ(Sigma))を含有する「F14+HS」中で、30
分間インキュベートする。過剰の媒体を除去し、神経節を4mlのF14(HS
を含まず)で洗浄し、再懸濁し、900gで10秒間遠心する。上澄を再び除去
し、最終濃度0.25%で、1.8mlのF14(HSを含まず)および0.2m
lのトリプシン(ギブコ(GIBCO))により置換する。次いで、これらの神経節を
、硬
化するのを防ぐために10分毎に撹拌しながら、37℃で30分間インキュベー
トする。6mlの「F14+HS」を添加することによってトリプシン化を阻害
し、細胞を再懸濁し、以前のように遠心分離する。媒体を除去し、0.4%DN
Aase1(シグマ(Sigma))を含有する「F14+HS」を2ml添加する。次い
で、シリコン処理パスツールピペットを用いて、神経節を穏やかに15〜20回
すりつぶし、90mmナイロンメッシュフィルターを通して濾過し、遠心分離チ
ューブに採取する。このフィルターをさらに2mlの「F14+HS」で洗浄し
、同じチューブに採取する。この懸濁液を900gで3分間遠心し、上澄を除去
し、細胞を、HAMS F14栄養混合物(40%、v/v)、HS(10%、v/
v)、C6調整培地(50%、v/v)、ペニシリン/ストレプトマイシン(10
0U/ml;100μg/ml)およびNGF(30μg/ml)からなるDR
G成長培地(DRG−GM)に再懸濁する。次いで、細胞を、5個の60mmポ
リ-L-リシン被覆組織培養ペトリ皿上にプレートする(下記参照)。
再プレート
数日間(通常、3〜7日間)培養した後、F14中におけるトリプシンの0.
25%溶液を用いて、細胞を60mmペトリ皿から再懸濁する。トリプシンを阻
害するために等量のDRG-GMを添加し、これらの細胞を900gで5分間遠
心し、0.25〜0.5mlのDRG-GMに再懸濁する。21g注射針を通して
穏やかにすりつぶす(15〜20ストローク)ことによって、栄養物を除去し、
次いで、一滴の細胞懸濁液を5〜6個のポリ-D-リシン-およびラミニン被覆し
た35mmペトリ皿の各々にプレートする(下記参照)。37℃で30分間インキ
ュベートした後、各プレートを約1.5mlのDRG-GMで満たし、約1時間イ
ンキュベートした後、細胞を電気生理学的な記録のために準備する。この最終段
階は、特に、これら細胞の良好な電位クランプを妨害する栄養物を除去するため
に実施する。
プレートの被覆:
100μg/mlとなるように蒸留水中に再構築したポリ-D-リシン(シグマ(
Sigma))2mlを、各プレートに添加し、1〜2時間放置する。次いで、プレ
ートを水で洗浄し、放置乾燥する。(予めポリ-D-Lysで被覆した)プレートの
中心にラミニン(5μg/ml)を一滴ずつ添加し、過剰分の除去およびプレー
トの使用前に45分間放置する。
電気生理学:
アキソクランプ(AxoClamp)-2A(アキソン・インスツルメンツ・インク(Axon
Instruments Inc))、および、ホウケイ酸ガラス製キャピラリーチューブ(GC150
TF-10、クラーク・エレクトロメディカル(Clark Electromedical))から作製さ
れ、火炎研磨されたパッチ電極(4〜8MΩ)を用いたスイッチングクランプ増
幅器を用いて、記録を行う。電極は、以下のもの(単位はmM)で満たす:14
0 グルコン酸カリウム、2 MgCl2、1.1 EGTA/KOH、5 HEPE
S、20 スクロース、2 MgATP、0.2 GTT;pHはKOHで7.2に
設定し、浸透圧濃度はスクロースで310mOsmに調節する。次いで、漂遊キャ
パシタンスを減少させるために、これらの電極を、記録前に、シグマコート(Sig
macote)(シグマ(Sigma))に浸漬する。細胞を(記録の間に)連続的に灌流する
浸漬溶液は、以下のもの(単位はmM)からなる:124 NaCl、2.5 K
Cl、4 MgCl2、5 HEPES、10 グルコース、1μM TTX、20
スクロース;pHはNaOHで7.4に設定し、浸透圧濃度はスクロースで32
0mOsmに調節する。Ca2+は、電位活性化Ca2+電流およびCa2+活性化K+電
流を最小にするために、浸漬媒体からCa2+を省略する。いくつかの記録におい
て、残留TTX-抵抗性Na+電流が明白であるが、TTXは電位活性型Na+電
流を遮断するために含有される。記録は、以下からなる電圧ステッププロトコル
を用いて、電圧クランプモードで行う。
i)保持電位(Vh)=−30mV(一過性の外方向電流を不活性化するため)
ii)−100mVへの1秒間の前パルス
iii)全部の外方向電流を活性化するための+60mVへの1秒間の前パルス
iv)−30mVへの復帰
いくつかの場合、−30mVまたは−100mVのいずれかの保持電位から膜
電位の範囲(−100mV〜+60mV)にわたって電圧ステップ群を構築する
ことによって、試験化合物の存在下および非存在下で電流-電圧(I-V)関係が
得られる。電圧ステップおよびデータ収集(電流応答)は、ITC-16 ADC
/DAC(インスツルテック・コーポレーション(Instrutech Corp.))を介して
電圧クランプに接続したアタリ(Atari)のMegaSTEコンピューターによって
制御し、その後の解析はレビュー(REVIEW)(インスツルテック・コーポレーショ
ン(Instrutech Corp.))を用いて実施する。局所的な微小灌流システムを用いて
、試験化合物を、最初は10μM(溶解度−許容)の試験濃度で、個々のニュー
ロンに作用させる。
計算:
レビュー(REVIEW)(インスツルテック・コーポレーション(Instrutech Corp.)
)を用いて、+60mVへの試験電圧ステップ(上記)の間の電流応答をオフラ
インで測定する。以下の測定を実施する。
ピーク(約50ミリ秒)およびQ積分(t=1秒)外方向電流を+60mVで
測定:
i)条件設定を行った後、−100mVへの前パルス(一過性の外方向電流(
TOC)だけでなく、非不活性化電流を含む)、
ii)条件設定を行わずに、前パルス(主として、非不活性化電流)
iii)上記電流の差異(デジタル的に減算)はTOCに対応する
電流振幅は、全部の外方向電流(K-100)、非不活性化電流(K-30)およびT
OCについて求める。試験化合物の存在下で記録したピーク電流振幅は、対応す
る対照値の百分率(%)として表す。
標準的な化合物:
4-アミノピリジン(1mMでTOCを100%遮断)
トキシンI(100mMでTOCを50%遮断)
(トキシンIは、デンドロトキシン同族体である。)
方法2:
本発明の化合物を、以下の標準的な試験法に従って、MK-1電位活性化K+チ
ャネルに対する遮断活性について試験した。
MK-1に対するcDNA(ビー・テンペル(B Tempel)博士ら、ワシントン
大学、ネイチャー(Nature),332巻,837-839(1988年))で安定にトランスフェク
トしたCHO細胞を、この細胞系に対する標準的な方法および培地を用いて、組
織培養で維持した。細胞を35mmプラスチック皿にプレートし、3日以内に、
引き続いて電気生理学に用いた。
電流は、アキソパッチ(Axopatch)1C増幅器(アキソン・インスツルメンツ
(Axon Instruments))を用いるパッチ・クランプ法の全細胞電圧クランプ配置を
用いて、記録した。パッチ電極は、アルミノシリケートガラス管から作製し、使
用前に加熱研磨した。全細胞記録には、電極被覆は必要でなかった。信号収集お
よび解析は、ピークランプ(pClamp)ソフトウェア(アキソン・インスツルメン
ツ(Axon Instruments))を用いて実施した。p/4減算法を用いて、漏洩電流お
よび容量電流をオンラインで除去した。−100mVの保持電位を慣例的に用い
た。
2つの主要なプロトコルを試験薬物に用いた。1)10または20mVのいず
れかの増大ステップを用いて、電流-電圧(I-V)曲線を採取した。全I-V曲
線は、対照および薬物溶液の両方について得た。2)−100mV〜+60mV
の単一電圧ステップを含む「薬理学」プログラムを適用し、20秒間隔で採取し
た。調査中の化合物は、「U」チューブ迅速灌流システムによって、記録チャン
バーの小領域に適用した。薬物の適用は、可逆性を保証するために、常に、対照
溶液と一緒に扱われた。記録チャンバーは、3ml/分で連続的に灌流した。結
果は、(+60mVにおける)対照ピーク電流の百分率(%)として表す。しか
し、薬物がMK-1に対して時間依存性の効果(すなわち、減衰の加速)を有す
る場合には、結果は、電圧ステップの期間内に転移した全電荷の百分率(%)と
しても表す。
標準的な細胞外溶液は、以下のもの(単位はmM)を含有した:NaCl 1
35、KCl 5、MaCl2 4、EGTA 1、HEPES 10およびグルコ
ース 25;pHはNaOHで7.4に設定。細胞内(ピペット)溶液は、以下の
ものを含有した:アルパラギン酸カリウム/グルコン酸カリウム120、KC
l 20、MaCl2、MgATP 2、EGTA 10、HEPES 10;pH
はNaOHで7.4に設定。この溶液は、1mlアリコットずつ−4℃で保存し
、0.2mmで濾過した。MK-1電流は、徐々に増大する非常にゆっくり不活性
化する電流であり、+60mVにおける振幅で数nAに達しうる。
標準的な化合物:
結果:
上記の2つの試験における本発明の代表的な化合物の結果を以下の表に示す。
これらの結果は、細胞の電位依存性カリウムチャネルを遮断する本発明化合物
の能力を表し、これは上記のような医薬用途を示す。
本発明は、式IおよびIAで示される化合物を製造する方法をも提供する。
ここで用いる多くの出発物質は、置換されたカテコールから誘導し、還元して
、次のタイプ:
[式中、Rは、R1、R5、R12、R13、またはそれらに変換し得る基、R3は上
記と同意義]
で示される化合物を与えるように適当に保護された多くの公知のシクロヘキサン
-1,3-または-1,4-ジオンを与えるか、または、形成することができる。
基Rは、アルキル化法(例えば、リチウムと、ハロゲン化アルキルなどのハロ
ゲン化物とを用いた処理)によって、環に導入すればよい。
式Iの化合物は、以下の方法の1つによって調製すればよい(ここで、必要に
応じて、反応性置換基は反応前に保護し、その後に除去する)。該方法は、
(A)式:
[式中、R1、R2、R4、R5およびR12は、上記と同意義]
で示される化合物を、式:R3CHOで示されるアルデヒドと、塩基の存在下で
反応させ、3位にオキソ基を有し、所望により4位に結合が存在する式Iの対応
化合物を得ること、または、
(B)式:
[式中、R1、R2、R4、R12、R13およびR5は上記と同意義]
で示される化合物を、式:
R3CH2 Θ
[式中、R3は上記と同意義]
で示されるアニオンと、例えば、グリニャール試薬を用いて反応させ、4-ヒド
ロキシ基を有する式Iの対応化合物を得ること(脱水して、所望により4位に結
合が存在する式Iの化合物を得てもよい)、または、
(C)上記定義の式(III)で示される化合物を、式:
(Ph)3P=CHR3
[式中、R3は上記と同意義]
で示されるヴィッティヒ試薬と反応させ、所望により4位に結合が存在する式I
の対応化合物を得ること、または、
(D)式(IV):
[式中、R1、R2、R4、R5、R12およびR13は上記と同意義、(R18)3は、ア
ルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリールまたは電子供与置換基(例えば
、アルコキシ、シクロアルコキシ、アラルコキシ、アリールオキシ、アルキルチ
オ、シクロアルキルチオ、アラルキルチオまたはアリールチオなど)、基RdRe
N-(ここで、RdおよびReは、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびア
ラルキルから選択されるか、または、RdおよびReは、一緒になって、それらが
結合する窒素原子と共にヘテロ環式環(例えば、ピペリジニル、ピロリジニルで
あって、例えば、アルキルによって置換されていてもよい)を形成する)から選
択される同一または異なる3個のR18基として定義され、X1は、ナトリウム、
カリウムまたはリチウムである]
で示される化合物を、式:
R3CHO
[式中、R3は式Iに関する上記と同意義]
で示される化合物と反応させた後、酸性または塩基性条件下で処理し、所望によ
り4位に結合が存在する式Iの化合物を得ること、または、
(E)上記と同意義の式(III)で示される化合物を、式:
[式中、R3、R18およびX1は上記と同意義]
で示される化合物と反応させた後、酸性または塩基性条件下で処理すること、ま
たは、
(F)少なくとも1個の反応性部位または置換基を有する式Iの化合物を変換
し、式Iの異なる化合物を得ること、または、
(G)式(VI):
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は上記と同意義]
で示される化合物を、例えば、5%Pd/Cおよび水素を用いて触媒還元し、式
Iの飽和化合物を得ること;または、
(H)式Iの塩基性化合物をその酸付加塩または四級アンモニウム塩に変換す
ること、もしくは、その逆、
(I)式Iの異性体化合物の混合物を分割し、実質的に他の異性体を含有しな
い特定のエナンチオマー体を単離すること、または、
(J)式:
[式中、R1、R3、R5、R12およびR13は上記と同意義]
で示される化合物を、式:R4NH2(ここで、R4は上記と同意義)で示される
化合物(例えば、アミン、または酢酸アンモニウムなどのアンモニア源)と反応
させて還元し、R2が水素である式Iの化合物を得ること、または、
(K)R4が式:-CRaRbRc(ここで、Ra、RbおよびRcの少なくとも1つ
は、所望により置換されたアリール)で示される基である式Iの化合物を水素化
し、R4が水素である式Iの化合物を得ること、または、
(L)R2が水素である式Iの化合物を、式:hal-CRaRbRc(ここで、hal
はハロゲン、例えば、臭素)で示されるハロゲン化物でアルキル化し、式Iの対
応化合物を得ること;または、
(M)式:
で示される化合物を、式:R13Mg hal(ここで、R13はC1-C6アルキルまたは
C7-C16アラルキルおよびhalはハロゲン)で示されるグリニャール試薬と反応
させ、その生成物を還元して、Yが-CHR13-である式Iの対応化合物を得るこ
と、
からなる。
方法(A)〜(M)を実施する方法は、文献に公知であり、標準的な方法によ
って実施すればよい。必要なら、分子中の他の部位を公知の方法によって保護し
、副反応を回避することができる。
方法(A)は、少量の有機塩基(例えば、ピペリジン)の存在下で加熱するこ
とによって、都合よく実施される。-NR2R4がNH2または第2級アミンを表す
とき、それは、好ましくはアセチル誘導体の形で保護され、該誘導体は反応後に
塩基性加水分解を用いて除去することができる。
方法(B)および(M)は、式:R3CH2Mg hal(ここで、halはハロゲン(
例えば、臭素))で示されるグリニャール試薬を用いて実施すればよい。
方法(C)は、所望の置換トリフェニルホスホニウムハライドを用いて、ヴィ
ッティヒ反応条件下で実施すればよい。ヴィッティヒ反応を実施する方法は、広
く文献に記載されている。例えば、オーガニック・リアクションズ(Org.React
.)14,270(1965)およびオーガニック・シンセシス・コレクティブ(Org.Syn
.Coll.)Vol.5,751(1973)を参照されたい。
方法(D)は、ピーターソン反応条件下で実施すればよい。この方法では、X1
がR3CH(OX)-(XはLi、NaまたはK)である式IVの中間体が形成され
、この化合物をアルコールに加水分解し、酸または塩基処理によって脱水し、
必要に応じて保護基を除去する。方法(E)は、方法(D)と類似しており、同
一条件下で実施すればよい。
方法(F)に関して、変換は公知の手段によって実施すればよい。例えば、ア
ルコールは、エステル置換基から、不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)
の存在下、必要に応じて加熱しながら、ホウ水素化リチウムを用いた還元によっ
て形成すればよい。方法(F)は、各置換基が芳香族基を表すとき、R4および
/またはR3上における置換基の変換をも含む。このような方法は、当該分野で
公知である。例えば、アルコキシ置換基は、三臭化ホウ素を用いて、ヒドロキシ
に変換することができる。アリールメトキシ置換基は、水素化してヒドロキシを
与えることができる。ニトロ置換基は、アミノ置換基に還元することができる。
アミノ置換基は、例えば、ハロゲン化アシルでアシル化してアシルアミノを与え
るか、または、スルホニル化してスルホンアミドを与えるか、または、(例えば
、R1が水素のとき、還元的アルキル化によって)アルキル化してアルキルアミ
ノを与えることができる。R1が-CHR6CHR7CN、-CHR6CHR7COO
R8または-CHR6CHR7CONH2である式Iの化合物を調製するには、マイ
ケル付加を用いればよい。
方法(G)は、トリフルオロ酢酸などの酸性条件下、還元剤(例えば、トリア
ルキルシラン)を用いて、都合よく実施すればよい。副生成物として、ヒドロキ
シ置換が起きて、R5が4位のヒドロキシである式Iの化合物を与えることもで
きる。
方法(J)は、上記の化合物(VII)を式:R4NH2のアミンと反応させてイ
ミンを与え、このイミンを還元することによって、実施すればよい。イミンを還
元する適当な方法は、接触還元(例えば、ラネーニッケルおよび水素を用いる)
か、または、アルカリ金属ホウ水素化物(例えば、ホウ水素化ナトリウムまたは
シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム)などの還元剤を用いる。後者の還元剤の場
合、還元は、正味の効果が還元的アミノ化であるように、イミン生成と同時に実
施すればよい。ラネーニッケルによる2-置換シクロヘキシルイミンの水素化は
、一般的には、シス-還元化物(すなわち、1位または2位の水素が、いずれも
シス
立体配置である)を与える。他方、ホウ水素化物による還元は、1位および2位
の水素がシスおよびトランス立体配置である混合物を与える。
方法(K)は、接触還元によって、例えば、氷酢酸などの酸性条件下、炭素上
のパラジウム触媒を用いて、実施すればよい。
方法(L)は、第3級アミン(例えば、Et3N)の存在下、不活性溶媒中で
実施すればよい。
上記のように、標準的な分割法を方法(I)に用いて、式Iの化合物のエナン
チオマー体を単離することができる。このような方法は、当該分野で公知である
。
ここに記載した反応に必要な場合には、保護基を用いて、反応の間に反応性部
位を保護し、その後に除去すればよい。
反応性置換基もしくは部位(例えば、アルカロイルオキシ置換基)、または酸性
プロトンを含有する式Iの化合物をいったん調製すれば、かかる化合物を、式I
の異なる化合物に変換、例えば、加水分解し、式Iの対応ヒドロキシ化合物を与
え得る。同様に、ヒドロキシ基を含有する式Iの化合物は、例えば、ハロゲン化
アルカノイルを用いてアシル化し、式Iの対応アルカノイル化合物を与え得る。
同様に、アルコキシ置換基が存在する場合には、かかる化合物を、標準的な方法
を用いて脱アルキル化し、式Iの対応ヒドロキシ化合物を与え得る。したがって
、式Iの化合物は、式Iで示される他の化合物の中間体でもあり得る。
上で考察したように、ここに記載の方法の出発物質は、公知の化合物であるか
、または、公知の化合物に対する類似の方法によって製造することができる。
例えば、R1が-CHR6CHR7CNである式(VIII)の化合物は、以下の反応
スキームIに示すように、(環状ケトンから形成した)エナミンへのマイケル付
加によって調製することができる。
[式中、R1はCHR6CHR7CN]
同様に、R1が-CHR6CHR7COOR8である式(VIII)の化合物は、アクリ
ロニトリルの代わりに、式:
で示されるアクリル酸エステルを用いること以外は、上記の反応によって調製す
ることができる。
これら2つの反応において、YおよびY1は、それぞれ、-CHR13-およびC
HR12-を表す。
式Iの化合物は、少なくとも2つの不斉中心を有しており、それゆえ、異性体
、エナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびにその混合物が得られる。同
様に、XがR3CH=Cのとき、EおよびZ異性体が得られる。このような異性
体は、すべて本発明の範囲内にある。
式(I)で示される化合物の例は、
(1'R,1S,2R,5R)-5-((4-メトキシフェニル)メチル-2-(1'-フェニ
ルエチルアミノ)シクロヘキサンプロピオン酸メチル(実施例1);ならびに
(1'R,1S,2R,5S)-5-((4-メトキシフェニル)メチル-2-(1'-フェニ
ルエチルアミノ)シクロヘキサンプロピオン酸メチル(実施例2)およびその一
塩酸塩である。
本発明の化合物は、遊離塩基の形で得てもよいし、所望に応じて、酸付加塩と
して得てもよい。このような塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸
、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、マロン
酸、ギ酸、マレイン酸または有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸または
p-トルエンスルホン酸)などの医薬上許容される有機酸または無機酸との塩が
挙げられる。
酸性置換基が存在する場合には、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)ま
たはアンモニウム塩を与える塩基で処理することによって、塩を形成することも
できる。式Iで示される化合物のこのような塩は、本発明の範囲内に含まれる。
塩基性置換基が存在する場合には、ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アラ
ルキルなどのアルキル化剤で四級化することによって、第四アンモニウム塩を形
成してもよい。
本発明は、式Iの化合物またはその医薬上許容される塩と、医薬上許容される
担体とからなる医薬組成物をも提供する。
医薬組成物に関して、当該分野で公知の適当な担体を用いることができる。こ
のような組成物では、担体は、固体、液体、または、固体および液体の混合物で
あってもよい。固形の組成物としては、散剤、錠剤およびカプセル剤が挙げられ
る。固形の担体は、香味剤、滑剤、可溶化剤、懸濁剤、結合剤、または錠剤崩壊
剤としても作用しうる1種またはそれ以上の物質とすることができる。それは、
カプセル化材料とすることもできる。散剤の場合、担体は、細かく粉砕された固
体であって、やはり細かく粉砕された有効成分と混合されている。錠剤の場合、
有効成分は、必要な結合特性を有する担体と適当な割合で混合され、所望の形状
および寸法に成形される。散剤および錠剤は、好ましくは、5〜99、好ましく
は10〜80%の有効成分を含有する。適当な固形担体は、ステアリン酸マグネ
シウム、タルク、砂糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、
トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低
融点ワックスおよびカカオバターである。用語「組成物」は、有効成分が(必要
に応じて他の担体と共に)担体に取り囲まれ、かくして、それに関連しているカ
プセル剤を与えるような、カプセル化材料を担体として用いた有効成分の製剤を
含むことを意図する。同様に、薬袋が含まれる。無菌の液状組成物としては、無
菌液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。有効成分
は、滅菌水、滅菌した有機溶媒または両方の混合物などの医薬上許容される担体
に溶解または懸濁することができる。
有効成分は、しばしば、適当な有機溶媒に溶解することができる。例えば、1
0〜75重量%のグリコールを含有する水性プロピレングリコールが、一般的に
適当である。他の組成物は、細かく粉砕した有効成分を、デンプンまたはカルボ
キシメチルセルロースナトリウム水溶液に、または、適当な油(例えば、落花生
油)に分散させることによって製造することができる。組成物は、経口的、鼻腔
的、直腸内または非経口的に投与すればよい。
好ましくは、医薬組成物は単位剤形である。かかる組成物は、適当量の有効成
分を含有する単位投与量に細分される;単位剤形は、包装された組成物、すなわ
ち、特定量の組成物を含有するパッケージ、例えば、分包散剤またはバイアルま
たはアンプルとすることができる。単位剤形は、カプセル剤、薬袋または錠剤そ
れ自体としたり、これらを適当数だけ包装した形態とすることもできる。単位投
与量の組成物における有効成分の量は、特定の必要性および有効成分の活性によ
って変化するが、1〜500mgまたはそれ以上、例えば、25mg〜250m
gに調節すればよい。本発明は、担体を含まない化合物(ここで、化合物は単位
剤形である)をも包含する。動物研究の結果に基づいて、式Iの化合物を用いた
ヒトの治療に対する用量範囲は、化合物の活性および治療すべき疾患によって、
1日あたり約1mg〜2gの範囲内にある。
上記の症状については、確かに、本発明化合物を急性症候の軽減だけでなく予
防的に用いてもよいことは明らかである。ここで「治療」等に言及することは、
急性症状の治療だけでなく、かかる予防的処置を包含するものと理解すべきであ
る。
R1およびR5の一方が-(CHR6)nCHR7CNまたは-(CHR6)nCHR7CO
OR8(ここで、nは1、R6、R7およびR8は上記と同意義)を表す式Iの化合
物は、式:
[式中、Y1、Y、R3、R4、R5、R6、R7およびCOOR8は上記と同意義]
で示される化合物を環化することによって、式:
[式中、R3、R4、R6、R5、R7、YおよびY1、点線は上記と同意義]
で示される医薬上活性な化合物となる直接的な中間体である。
以下の実施例は、本発明および本発明の化合物を調製する方法を例示する。こ
れらの実施例では、光学中心の相対的な立体配置は、R,S表記法を用いて表示
する。
実施例1
(1'R,1S,2R,5S)-5-((4−メトキシフェニル)メチル)-2-
(1'-フェニルエチルアミノ)シクロヘキサンプロピオン酸メチル
2-(メトキシカルボニルエチル)-4-(4-メトキシベンジル)シクロヘキサノン
(118g、0.399モル)を、R-(+)-α-メチルベンジルアミン(52g、
0.43モル)およびp-トルエンスルホン酸(0.2g)と共に、トルエン(1
リットル)に溶解した。反応混合物をディーンスターク装置で24時間加熱還流
した。溶媒を真空下で除去し、残渣を、室温、50psiの水素下、エタノール(
8
00ml)中のラネーニッケルで4日間水素化した。触媒を濾別した後、濾液の
溶媒を真空下でエバポレートした。次いで、得られた油状物をジイソプロピルエ
ーテル/ヘキサン溶媒系(比率1:1)によるシリカゲルのクロマトグラフィー
に付した。第1の画分が表題化合物(50.5g、収率32%)を与えた。これ
は純度98%であった。
表題化合物の一部(14.98g)を塩酸塩に変換した。これは、最少量のジ
エチルエーテルに溶解した後、ヘキサンで希釈することによって達成された。析
出が終了するまで、エーテル性塩酸を滴下した。固形物を濾過し、ヘキサンで洗
浄した後、乾燥させた。(13.45g)、融点96〜98℃。[α]D 25=+8°(
1%MeOH)。
元素分析:C26H35NO3.HClとして、C,70.01;H,8.14;N,
3.14
実測値:C,69.72;H,8.49;N,3.0%
実施例2
(−)-(1'S,1R,2S,5R)-5-((4-メトキシフェニル)メチル)-2-
(1'-フェニルエチルアミノ)シクロヘキサンプロピオン酸メチル
5-(4'-メトキシフェニルメチル)-2-オキソ-シクロヘキサンプロピオン酸メ
チル(98.5g)およびR-(−)-α-メチルベンジルアミンを、p-トルエンス
ルホン酸(0.2g)を含むトルエン(500ml)中で還流し、ディーンスタ
ーク装置で水を採取した。24時間後、溶媒を減圧下で除去した。イミン生成物
を、4回に分けて、エタノール(150ml)中のラネーニッケル(1.2g)
で還元し、50psiおよび50℃で水素化した。触媒を濾別し、試料を合わせ、
ジイソプロピルエーテルを溶離液として用いたシリカのクロマトグラフィーで精
製し、(41.91g)の表題化合物を得た。
試料(20.1g)をエーテルに溶解し、エーテル性HClで処理した。ガム
質が生成し、エーテルを傾瀉した。このガム質をn-ヘキサン中ですり砕き、白
色の固形物(19.5g)を得た。融点110〜112℃、[α]D 26=−8°(1
%MeOH)
元素分析:C26H35NO3.HCl.0.5H2Oとして、C,68.6;H,8.
2;N,3.1%
実測値:C,68.7;H,8.4;N,3.0%
実施例3
(1'R,1S,2R,5R)-5-((4-メトキシフェニル)-2- (1'-フェニルエチルアミノ)エチルアミノ)シクロヘキサンプロピオン酸メチル
A.4-メトキシベンジルシクロヘキサノン(43.68g、0.2モル)をト
ルエン(250ml)に溶解した。この溶液に、ピロリドン(25ml、0.3
モル)を触媒量のトルエン-4-スルホン酸と共に添加した。反応混合物をディー
ンスターク装置で20時間還流した。所定量の水を採取したら、溶媒を真空下で
除去した。少量のトルエンを添加し、減圧下でエバポレートすることによって、
過剰のピロリドンを除去した。
得られた液体をメタノール(200ml)に溶解し、得られた撹拌溶液に、メ
タノール(50ml)に溶解したアクリル酸メチル(18ml、0.2モル)を
滴下した。これを室温で20時間撹拌した。
得られた液体を重炭酸ナトリウムで中和し、生成物をジクロロメタンで抽出し
た。次いで、この溶液をフロラジル(Florasil)のベッドに通過させた。溶媒を
エバポレートすると、油状物が残った。この物質を蒸留によって精製した。15
5℃、0.05mmHgで、2-(2-メトキシカルボニルエチル)-4-(4-メトキ
シベンジル)シクロヘキサノンが留出した。
B.工程Aによって調製したケトン(50g、0.122モル)をトルエン(
500ml)に溶解し、R(+)-α-メチルベンジルアミン(18.8g、0.15
5モル)を添加した。反応混合物をディーンスターク装置で24時間加熱還流し
た。溶媒を真空下で除去し、残渣をエタノール(400ml)中のラネーニッケ
ル(5g)で水素化した。触媒を濾別し、溶媒を真空下でエバポレートした。次
いで、得られた油状物を、ジイソプロピルエーテル溶媒系によるシリカのクロマ
トグラフィーに付した。採取した第1の画分は、(1'R,1S,2R,5R)-5-((
4-メトキシフェニル)メチル)-2-(1'-フェニルエチルアミノ)シクロヘキサ
ンプロピオン酸メチル(13.56g)と同定された。採取した第2の画分は、
出発物質(5.02g)であることが判明した。採取した第3の画分(8.73g
)は、表題化合物と同定されたが、さらに精製する必要があった。これは、ジイ
ソプロピルエーテルによる塩基性アルミナの第2カラムを用いて達成された。ガ
ム質として回収された試料は純度98%であった。次いで、これは、このガム質
を最少量のジエチルエーテルに溶解し、それをヘキサン(100ml)で希釈し
た後、析出が止むまでエーテル性HClを添加することによって、HCl塩に変
換した。一塩酸塩としての表題化合物を濾過し、乾燥させ、真空下で保持した(
18.5g、融点105〜6℃)。[α]D 25=+87(1%MeOH)。
元素分析:C26H35NO3.HClとして、C,70.0;H,8.1;N,3.
1%
実測値:C,69.7;H,8.2;N,3.0%
実施例4Aおよび4B
A)シス-(S)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-(1'-フェニルエチル)シ クロヘキシルアミン
B)トランス-(S)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-(1'-フェニルエチ ル)シクロヘキシルアミン
4-メトキシベンジルシクロヘキサノン(5g、0.023モル)をトルエンに
溶解し、(S)-(−)-フェニルエチルアミン(2.9ml、0.023モル)および
触媒量(2mg)のp-トルエンスルホン酸と共に還流した。20時間後、ディ
ーンスターク装置で0.4mlの水を採取したとき、溶媒を真空下でエバポレー
トした。
生成したイミンをメタノール(150ml)に溶解し、−15℃に冷却した。
ホウ水素化ナトリウムを撹拌溶液(0.88g、0.023モル)に添加した。2
時間後、反応物を室温に加温した。2N HCl(5ml)を滴下したところ、
白色懸濁液が形成した。この溶液をさらに2時間撹拌し、ボラン錯体を分解した
。次いで、アンモニアを添加し、溶液を中和した。生成物をエーテル中に抽出し
、乾燥させた後、溶媒をエバポレートした。TLCは、2つの主要なスポットが
存
在することを示した。これらを5%酢酸エチル/ヘキサン溶媒系によるアルミナ
カラムで分離した後、それらの対応する塩酸塩に変換した。
画分1は、1.5gのシス-(S)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-(1'-フ ェニルエチル)シクロヘキシルアミン
を与えた。融点=223〜225℃、[α]D 25
=−44°(c=1、MeOH)
元素分析:C22H29NO.HClとして、C,73.4;H,8.4;N,3.9
%
実測値:C,73.5;H,8.5;N,3.7%
画分2は、2.12gのトランス-(S)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-( 1'-フェニルエチルメチル)シクロヘキシルアミン
を与えた。融点=275〜2
77℃、[α]D 25=−47°(c=1、MeOH)
元素分析:C22H29NO.HClとして、C,73.4;H,8.4;N,3.9
%
実測値:C,73.5;H,8.6;N,3.9%
実施例5Aおよび5B
A)トランス-(R)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-(1'-フェニルエチ ルメチル)シクロヘキシルアミン
B)シス-(R)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-(1'-フェニルエチルメ チル)シクロヘキシルアミン
4-メトキシベンジルシクロヘキサノン(5g、0.023モル)をトルエン(
150ml)および触媒量(2mg)のp-トルエンスルホン酸に溶解した。2
0時間後、溶媒を真空下でエバポレートした。生成したイミンをメタノール(5
0ml)に溶解し、−15℃に冷却した。ホウ水素化ナトリウム(0.88g、
0.023モル)を撹拌溶液に添加し、2時間後、反応物を室温に加温した。1
N HCl(5ml)を滴下したところ、懸濁液が形成した。この溶液をさらに
2時間撹拌した後、アンモニアを添加し、溶液を中和した。生成物をジエチルエ
ーテル中に抽出し、乾燥させた後、溶媒をエバポレートした。TLCは、2つの
主要なスポットが存在することを示した。これらを5%酢酸エチル/ヘキサン
溶媒系による塩基性アルミナカラムで分離し、ジエチルエーテルに溶解し、ヘキ
サンで希釈し、エーテル性HClを添加することによって、それらの対応する塩
酸塩に変換した。
画分1:1.1gのトランス-(R)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-(1'-
77℃、[α]D 27=40°(MeOH中に1%)
元素分析:C22H29NO.HCl.0.25H2Oとして、C,72.5;H,8.
4;N,3.8%
実測値:C,72.8;H,8.4;N,3.8%
画分2:1.4gのシス-(R)-4-(4-メトキシフェニルメチル)-N-(1'-フェ ニルエチルメチル)シクロヘキシルアミン
塩酸塩、融点223〜225℃、[α]D 27
=34°(MeOH中に1%)
元素分析:C22H29NO.HClとして、C,73.4;H,8.4;N,3.9
%
実測値:C,7.32;H,8.2;N,3.8%
実施例6(1'S,1R,2S,5S)-5-(4-メトキシフェニル)メチル)-2-(1'-フェニル
エチルアミノ)シクロヘキサンプロピオン酸メチル
2-(2-メトキシカルボニルエチル)-4-(4-メトキシベンジル)シクロヘキサ
ノン(15g、0.049モル)を、S(−)-α-メチルベンジルアミン(5.97
g、0.49モル)と共に、トルエン(100ml)に溶解した。反応混合物を
ディーンスターク装置で24時間加熱還流した。溶媒を真空下でエバポレートし
、得られた油状物を、室温、50psi下、エタノール(100ml)中のラネ
ーニッケル(5g)で4日間水素化した。触媒を濾別した後、溶媒を真空下でエ
バポレートした。次いで、得られた油状物を、ジイソプロピルエーテルを溶媒と
するシリカゲルのクロマトグラフィーに付した。第1の画分は、(−)-(1'S,1
R,2S,5R)-5-(4-メトキシフェニル)メチル)-2-(1'-フェニルエチルアミ
ノ)シクロヘキサンプロピオン酸メチルであることが判明した。第2の画分は、
表題
化合物7.74gであることが判明した。この試料は、10%ヘキサン/酢酸エ
チルによる塩基性アルミナのカラムで精製した。主要な画分を採取し、表題化合
物のHCl塩(7.95g)に変換した。融点=102〜3℃、[α]D 27=−92
°(1%メタノール)。
元素分析:C26H35NO3.HCl.0.5H2Oとして、C,68.6;H,8.
2;N,3.1%
実測値:C,68.9;H,8.2;N,3.1%
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 31/215 AAH A61K 31/215 AAH
AAK 9455−4C AAK
C07C 211/44 8828−4H C07C 211/44
211/54 8828−4H 211/54
211/57 8828−4H 211/57
215/42 7457−4H 215/42
217/52 7457−4H 217/52
225/20 7457−4H 225/20
227/16 9450−4H 227/16
229/46 9450−4H 229/46
C07D 521/00 C07D 521/00
// C07M 7:00
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CN,C
Z,EE,FI,GB,GE,HU,JP,KG,KP
,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,MG,
MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,SI,S
K,TJ,TT,UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 オパルコ・アルバート
イギリス、バークシャー・エスエル6・0
ピイエイチ、メイドンヘッド、タプロウ、
ハンターコンブ・レイン・サウス、ワイ
ス・ラボラトリーズ(番地の表示なし)