JPH09292330A - 高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法およびその評価装置 - Google Patents

高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法およびその評価装置

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JPH09292330A
JPH09292330A JP4344097A JP4344097A JPH09292330A JP H09292330 A JPH09292330 A JP H09292330A JP 4344097 A JP4344097 A JP 4344097A JP 4344097 A JP4344097 A JP 4344097A JP H09292330 A JPH09292330 A JP H09292330A
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JP
Japan
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film
steel material
stainless steel
quality
purity gas
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JP4344097A
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Takashi Doi
教史 土井
Kyoji Matsuda
恭司 松田
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高純度ガス用ステンレス鋼材の耐蝕性、非触媒
性および水分放出性を非破壊で迅速に評価でき、また品
質管理に利用可能な高純度ガス用ステンレス鋼材の評価
方法およびその評価装置を提供する。 【解決手段】鋼材表面の皮膜の屈折率n、吸収係数kお
よび厚さtを測定し、その測定値とあらかじめ求めたそ
れらの値の適正範囲とを比較することにより、その皮膜
の良否を判定する高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高純度ガス用ステ
ンレス鋼、特に半導体製造プロセスなどで高純度ガス用
の配管等に使用される高純度ガス用ステンレス鋼材の評
価方法およびその評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体製造分野においては、近年、半導
体素子の高集積化が進み、超LSIと称されるデバイス
では、1μm以下の微細パターンの加工が必要とされて
いる。このような超LSI製造プロセスでは、微小な塵
や微量不純物ガスであっても配線パターンに付着または
吸着すると回路不良等の不良原因となる。そのため、使
用する反応ガスおよびキャリヤガスはともに高純度であ
ること、すなわちガス中の微粒子および不純物ガスの少
ないことが必要とされる。それゆえ、その高純度ガス用
配管および部材においては、内面からの微粒子(パーテ
ィクル)およびガスの放出が極力少ないことが要求され
る。
【0003】また、半導体製造用ガスとして、窒素やア
ルゴン等の不活性ガス以外にいわゆる特殊材料ガスと呼
ばれるものも多数使用される。そのため、高純度ガス用
配管および部材においては、上記の要求に加え、塩素、
塩化水素および臭化水素などの腐食性ガスに対する耐食
性、シランなど化学的に不安定なガスに対する非触媒
性、ならびに水分が吸着しにくく脱離しやすいという水
分放出性などが必要とされる。この耐食性、非触媒性お
よび水分放出性は、ガス配管系のみならず、各種半導体
製造装置の反応容器や内部部品に用いられるステンレス
鋼材においても同様に必要とされる。
【0004】この耐食性、非触媒性および水分放出性
は、酸素分圧を調整した雰囲気中でステンレス鋼を加熱
し、鋼表面にCr酸化物皮膜を生成させることにより向
上することが知られている。
【0005】一方、このようにして得られる高純度ガス
用ステンレス鋼材の評価は、上述した耐蝕性、非触媒性
および水分放出性により行われる。従来、これらの評価
は、以下のようにして行われてきた。
【0006】耐食性の評価は、鋼材として管を選び、管
内に臭化水素(HBr)等を封入し、ある一定時間保持
した後、管内面の発錆状況を走査型電子顕微鏡観察する
方法によっていた。
【0007】非触媒性の評価は、管内に100ppmモ
ノシラン(SiH4 )等を含むアルゴンガスを流して、
管出側でガスクロマトグラフによりモノシランの分解に
よって生ずる水素濃度を測定する方法によっていた。
【0008】また、水分放出性の評価は、管を高相対湿
度の雰囲気中に放置した後、管内に乾燥したアルゴンガ
スを流し、管出側ガス中の水分量をAPIMS(大気圧
イオン化質量分析)で測定する方法によっていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高純度
ガス用ステンレス鋼材の評価に用いられる上記の評価方
法は、高純度ガス用ステンレス鋼材を上記の環境下に長
時間さらす必要があるため、評価に多くの時間を必要と
する。また、非破壊検査でないため、製品の検査は抜き
取り検査となり、製品すべてを評価することができな
い。特に、Cr酸化物皮膜を生成する処理にむらがある
場合などには、全数検査ができないため、不良品を検出
することができないという問題がある。
【0010】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、高純度ガス用ステンレス鋼材の耐
蝕性、非触媒性および水分放出性を非破壊で迅速に評価
でき、品質管理にも利用可能な高純度ガス用ステンレス
鋼材の評価方法およびその評価装置を提供することを目
的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、高純度ガス
用ステンレス鋼材の耐蝕性、非触媒性および水分放出性
が、皮膜の組成、皮膜構造および皮膜厚さの皮膜性状に
依存していることに着目した。そして、皮膜の組成およ
び皮膜構造の変化を皮膜の光学定数(屈折率nおよび吸
収係数k)の変化として評価できるのではないかと推測
し、詳細な研究を行った結果を基に本発明を完成させ
た。
【0012】すなわち、本発明の高純度ガス用ステンレ
ス鋼材の評価方法は、鋼材表面の皮膜の屈折率n、吸収
係数kおよび皮膜厚さtを測定し、これらの測定値とあ
らかじめ求めておいたこれらの値の適正範囲とを比較す
ることにより、その皮膜性状の良否を判定することを特
徴としている。
【0013】また、本発明の高純度ガス用フェライト系
ステンレス鋼材の評価方法は、鋼材表面の皮膜の屈折率
n、吸収係数kおよび厚さtが以下の(1)〜(3)式
を満たす範囲内にあるか否かによりその皮膜性状の良否
を判定することを特徴としている。
【0014】 nmin ≦n≦nmax ・・・(1) 但し、 nmin ≦2.0、 2.2≦nmax <2.5 kmin ≦k≦kmax ・・・(2) 但し、 kmin ≦0.09、 0.2≦kmax <0.4 tmin ≦t≦tmax ・・・(3) 但し、 5nm<tmin ≦8nm、 30nm≦tmax
<58nm また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法
は、鋼材表面にレーザー光を入射させたときの、入射光
と反射光の偏光状態の変化から反射比角Ψと位相角Δを
求め、これらの測定値とあらかじめ求めておいたこれら
の値の適正範囲とを比較することにより、その鋼材表面
の皮膜性状の良否を判定することを特徴としている。な
お、この反射比角Ψと位相角Δは、反射により生じるP
波(平行成分)とS波(垂直成分)の位相差の変化Δと
その振幅比tanΨで定義されるものである。
【0015】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼
材の評価装置は、レーザー発振器と、レーザー発振器か
らのレーザー光を偏光させる偏光子および1/4波長板
と、被測定物からの反射光を検出する光検出器と、被測
定物と光検出器との間に設けられる偏光角度可変の検光
子と、検光子の偏光角度を変化させたときの光検出器の
出力結果から、皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび厚さ
tを演算する皮膜性状値演算手段と、得られた皮膜の屈
折率n、吸収係数kおよび厚さtから皮膜性状の良否を
判定する皮膜性状良否判定手段とを備えることを特徴と
している。
【0016】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼
材の評価装置は、レーザー発振器と、レーザー発振器か
らのレーザー光を偏光させる偏光子および1/4波長板
と、被測定物からの反射光を検出する光検出器と、被測
定物と光検出器との間に設けられる偏光角度可変の検光
子と、検光子の偏光角度を変化させたときの光検出器の
出力結果から、反射比角Ψと位相角Δを演算する皮膜性
状値演算手段と、得られた反射比角Ψと位相角Δから皮
膜性状の良否を判定する皮膜性状良否判定手段とを備え
ることを特徴としている。
【0017】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼
材の評価装置は、上記の評価装置であって、鋼材表面へ
レーザー光を入射させる光学系および鋼材表面からの反
射光を検出する光学系のいずれか一方または両方に光フ
ァイバを備えることを特徴としている。
【0018】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評
価方法によれば、鋼材表面の皮膜の屈折率n、吸収係数
kおよび厚さtにより、その皮膜の組成、構造および厚
さを評価する。そのため、鋼材表面の皮膜の耐蝕性、非
触媒性および水分放出性によって、ステンレス鋼材の高
純度ガス用としての良否を非破壊で判定できる。非破壊
での評価であるため、迅速な評価が可能であるとともに
全数検査を行うこともできるので、品質管理にも利用で
きる。
【0019】フェライト系ステンレス鋼材に関しては、
鋼材表面の皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび厚さtが
上記の(1)〜(3)式の範囲内にあるかどうかで、鋼
材表面の皮膜の耐蝕性、非触媒性および水分放出性にに
よって高純度ガス用としての良否を非破壊で判定でき
る。
【0020】すなわち、皮膜の屈折率nおよび吸収係数
kがこの範囲外のときは、皮膜のCr濃度は低く、皮膜
の構造はCr23 とスピネル(FeCr24 )から
なり、耐食性および水分放出性が低下する。なお、nmi
nの下限は1.9、kminの下限は0.05程度が妥当で
ある。
【0021】また、皮膜の厚さtがtmin未満では耐食
性が十分ではなく、一方tmaxを超えると、水分放出性
が劣化する。これは、厚さtがtmin未満では皮膜が均
一にステンレス鋼材表面を覆えないことがあり、そのた
めその箇所に欠陥が生じ、この欠陥部から腐食を発生す
るためである。また、厚さtがtmaxを超えると、皮膜
のミクロ的表面積が増加するため、水分の吸着が生じ易
くなるためである。
【0022】また、皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび
皮膜厚さtに代えて、それらの情報が含まれる反射比角
Ψと位相角Δとにより、皮膜の性状、すなわちステンレ
ス鋼材の高純度ガス用としての良否を判定できる。
【0023】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼
材の評価装置は、レーザー発振器からのレーザー光を被
測定物に照射したときの被測定物からの反射光の偏光状
態の変化を測定し、皮膜性状値演算手段において皮膜の
屈折率n、吸収係数kおよび厚さtを演算する。そし
て、皮膜性状良否判定手段において、この皮膜の屈折率
n、吸収係数kおよび厚さtから皮膜性状の良否を判定
することができる。そのため、非破壊で容易に被測定物
の耐蝕性、非触媒性および水分放出性を評価して高純度
ガス用としての良否を判定できる。
【0024】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼
材の評価装置は、皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび厚
さtに代えて、それらの情報が含まれる反射比角Ψと位
相角Δとによって、ステンレス鋼材の高純度ガス用とし
ての良否を判定するものである。すなわち、皮膜性状値
演算手段において、反射比角Ψと位相角Δを求め、皮膜
性状良否判定手段において、これらの値から皮膜性状の
良否を判定するのである。
【0025】また、上記の評価装置であって、鋼材表面
へレーザー光を入射させる光学系および鋼材表面からの
反射光を検出する光学系のいずれか一方または両方に光
ファイバを備えることにより、光学系の配置の自由度を
増すことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の高純度ガス用ステンレス
鋼材の評価方法および評価装置の1例について説明す
る。この例は、エリプソメトリ法を利用して、鋼材表面
の皮膜の光学定数および厚さを測定するものである。
【0027】図1は、本発明の高純度ガス用ステンレス
鋼材の評価装置の1例を示す模式図である。レーザー発
振器10と被測定物Sとの間には偏光子11と1/4波
長板12が配置され、光検出器14と被測定物Sとの間
には検光子13が配置されている。被測定物Sの皮膜の
屈折率n、吸収係数kおよび厚さtを演算する皮膜性状
値演算手段16およびその演算結果に基づき被測定物S
の皮膜性状の良否を判定する皮膜性状良否判定手段17
がマイクロコンピュータ18に設けてある。
【0028】レーザー発振器10から発振されたレーザ
ー光を偏光子11により直線偏光とし、さらに1/4波
長板12により円偏光とし、被測定物Sに照射する。偏
光レーザー光は被測定物Sの表面で反射屈折を生じ、そ
の反射光は検光子13を通過して、光検出器14で検出
される。この検光子13の角位置を変化させて、反射光
を光検出器14で検出する。光検出器14の信号をアン
プ15で増幅し、この検光子13の角位置の信号と合わ
せて、皮膜性状値演算手段16に取り込み、反射光の偏
光状態から、この被測定物Sの表面の皮膜の屈折率n、
吸収係数kおよび厚さtを演算する。皮膜性状良否判定
手段19において、このn、k、tの演算結果があらか
じめ求めておいたn、k、tの適正範囲内にあるか否か
により、被測定物Sの皮膜性状の良否を判定し、高純度
ガス用ステンレス鋼材としての良否を判定する。
【0029】皮膜性状値演算手段16においては、入射
レーザー光と反射光との偏光状態の変化から反射比角Ψ
と位相角Δとを求め、この反射比角Ψと位相角Δとを用
いて被測定物Sの皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび皮
膜厚さtを、(a1)式〜(a10)式を満足するよう
にシンプレックス法により最適化処理を行って演算する
のである。
【0030】
【数1】
【0031】添え字のpとsは、入射レーザー光の垂直
な2つの成分であるp−成分とs−成分とを表してい
る。Rp とRs は、それぞれの成分に対する反射係数を
表している。ΨとΔは、前述の反射比角と位相角であ
る。Na 、Nf 、Ns は、それぞれ、雰囲気、皮膜、皮
膜生成前の被測定物Sの複素屈折率である。すなわち、
Na =1、Nf =n−ik、Ns =n0 −ik0 であ
る。ψ1 は、入射レーザー光の皮膜への入射角度であ
り、皮膜表面に対する垂線からの角度である。λは、入
射レーザー光の自由空間波長である。
【0032】高純度ガス用ステンレス鋼材の評価に用い
る皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび厚さtの適正範囲
は、あらかじめ、従来の評価方法を用いて、皮膜の耐蝕
性、非触媒性および水分放出性に関して皮膜の良否を判
定したものについて、n、k、tを測定して作成すれば
良い。
【0033】例えば、n、k、tに対して、以下の
(1)〜(3)式をすべて満たす範囲を適正範囲とする
とすれば良い。
【0034】 nmin≦n≦nmax ・・・(1) 但し、 nmin ≦2.0、 2.2≦nmax <2.5 kmin ≦k≦kmax ・・・(2) 但し、 kmin ≦0.09、 0.2≦kmax <0.4 tmin ≦t≦tmax ・・・(3) 但し、 5nm<tmin ≦8nm、 30nm≦tmax
<58nm なお、nminの下限は1.9、kminの下限は0.05程
度が妥当である。
【0035】また、反射比角Ψと位相角Δを高純度ガス
用ステンレス鋼材の良否判定に用いる場合には、同様に
して、反射比角Ψと位相角Δに関する適正範囲を、従来
の評価方法を用いて皮膜の良否を判定したものについて
の測定結果から作成しておけば良い。
【0036】この場合、皮膜性状値演算手段16におい
て、反射光の偏光状態から反射比角Ψと位相角Δを求
め、皮膜性状良否判定手段19において、このΨ、Δが
あらかじめ求めておいたΨ、Δの適正範囲内にあるか否
かにより、皮膜性状の良否を判定させるようにすれば良
い。
【0037】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の良
否の判定方法は、光学的な方法であり測定対象の形状に
対する制限が少ないため、パイプの内側でも評価でき
る。
【0038】図2は、本発明の高純度ガス用ステンレス
鋼材の評価装置の他の例を示す模式図である。
【0039】この例では、鋼材表面へレーザー光を入射
させる部分に光ファイバ21を、鋼材表面からの反射光
を検出する部分に光ファイバ22を備え、また光ファイ
バ21および光ファイバ22の先端の傾き角を一定とす
る光ファイバ固定治具23を備えている。
【0040】光ファイバ21および22が取り付けられ
た光ファイバ固定治具23をパイプの中に挿入すること
により、パイプの内側を評価することができる。光ファ
イバを用いる構成とすることにより、光学系の配置の自
由度を増すことができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明に係る実施例について図1に基
づいて具体的に説明する。
【0042】レーザー発振器10としてHe−Neレー
ザー(波長:632.8nm、パワー:5mW)を用い
た。良否の判定対象の高純度ガス用ステンレス鋼材は外
径6.4mm、肉厚1mm、長さ4mのフェライト系ス
テンレス鋼のシームレス鋼管とした。
【0043】フェライト系ステンレス鋼材の皮膜性状の
良否判定基準の作成について説明する。
【0044】表1に示す化学組成を有する上記シームレ
ス鋼管の内面を、電解研磨によって表面粗さRmax が
0.5μmになるように平滑化して、高純度水によって
洗浄後、純度99.999%のArガスを通じながら2
00℃に加熱して乾燥した。
【0045】
【表1】
【0046】これらの鋼管を表2に示す種々の条件で加
熱処理(酸化処理)して酸化皮膜(以下、皮膜と呼
ぶ。)を生成させた後、図1の装置を用いて、皮膜の屈
折率n、吸収係数kおよび厚さtを測定した。測定に
は、これらの鋼管の長さ方向中央部から切り出したサン
プル(長さ1cm)を用いた。また、レーザー光の入射
角度は70゜とした。測定に先だって、あらかじめ酸化
皮膜生成前の鋼管について屈折率n0 と吸収係数k0 を
測定した。鋼Aのこれらの値は、屈折率n0 が2.6
6、吸収係数k0 が4.05であった。
【0047】
【表2】
【0048】一方、酸化皮膜の厚さと皮膜中のCr濃度
は、同じく鋼管の長さ方向中央部から切り出したサンプ
ルを縦半割りし、二次イオン質量分析法(SIMS)に
より鋼管内表面から深さ方向に元素分析を行う方法によ
って測定した。皮膜厚さはその酸素濃化層の厚さを、ま
たCr濃度は皮膜中の酸素を除く、全金属元素に対する
Cr濃度の最高値をとることによって求めた。皮膜の結
晶構造は、ラマン散乱分光法により求めた。
【0049】耐食性は、鋼管に臭化水素ガスを5気圧の
圧力で封入し、温度80℃で100時間保持した後、管
内面の発錆状況を走査型電子顕微鏡観察する方法で評価
した。
【0050】非触媒性は、管内に100ppmモノシラ
ンを含むArガスを通じて、管出側でガスクロマトグラ
フによりモノシランの分解によって生ずるH2 濃度を種
々の温度で測定し、モノシランの分解する最低の温度に
より評価した。
【0051】水分放出性は、酸化処理後の鋼管を20
℃、相対湿度50%の雰囲気中に24時間放置した後、
管内に乾燥したArガス(水分1ppb)を1l/mi
nで流し、管出側ガス中の水分量を大気圧イオン化質量
分析法で測定し、測定開始から出側での水分量が1pp
b以下に低下するまでの所要時間(脱離時間)によって
評価した。なお、この所要時間が短いほど水分放出特性
に優れる。
【0052】位相角Δ、反射比角Ψ、皮膜の屈折率n、
吸収係数kおよび厚さt、Cr濃度、皮膜の厚さおよび
結晶構造、ならびに耐食性、触媒性および水分放出性の
調査結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】図3は、表3の総合評価の結果を皮膜の屈
折率nおよび吸収係数kについて示す図である。総合評
価が◎および○のものは○で、総合評価が×のものは×
で示した。
【0055】この表3および図3から、皮膜の屈折率
n、吸収係数kおよび厚さtについて、総合評価が○以
上の範囲を求めた。その範囲は以下の範囲である。
【0056】 nmin≦n≦nmax ・・・(1) 但し、 nmin ≦2.0、 2.2≦nmax <2.5 kmin ≦k≦kmax ・・・(2) 但し、 kmin ≦0.09、 0.2≦kmax <0.4 tmin ≦t≦tmax ・・・(3) 但し、 5nm<tmin ≦8nm、 30nm≦tmax
<58nm nminの下限は1.9、kminの下限は0.05程度が妥
当であると推定されるため、nmin =1.95、nmax
=2.3、kmin =0.08、kmax =0.25、tmi
n =7nm、tmax =50nmを選択した。そして、こ
の範囲を総合評価が○以上の範囲、すなわち適正範囲と
して皮膜性状良否判定手段17(マイクロコンピュータ
18)に記憶させた。屈折率nおよび吸収係数kに関す
る範囲は図3中に実線の範囲で示す。
【0057】そして、この装置を用いて、エリプソメト
リ法により皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび厚さtを
演算し、これらが適正範囲に入っているかどうかを判定
させることにより、非破壊で被測定物の高純度ガス用ス
テンレス鋼材としての良否を判定できた。
【0058】図4は、表3の総合評価の結果を位相角Δ
および反射比角Ψについて示す図である。総合評価が◎
および○のものを○で、総合評価が×のものを×で示し
ている。位相角Δと反射比角Ψの所定の領域を適正範囲
として選択すれば、高純度ガス用ステンレス鋼材として
の良否を判定することができる。
【0059】なお、本発明は、フェライト系ステンレス
鋼材のみならずオーステナイト系ステンレス鋼材などに
ついても適用可能である。その場合、その鋼材表面の皮
膜の屈折率n、吸収係数kおよび厚さtの適正範囲をあ
らかじめ求めておき、フェライト系ステンレス鋼材の場
合と同様な方法で判定すれば良い。
【0060】
【発明の効果】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の
評価方法によれば、被測定物を実環境下にさらすことな
く、被測定物の特性を非破壊で簡単に短時間で評価する
ことができる。その際、対象鋼材ごとにその皮膜の屈折
率n、吸収係数kおよび皮膜厚さtに対する適正範囲を
設定すれば良いので、高純度ガス用のあらゆるステンレ
ス鋼材に適用することができる。また、非破壊で評価で
きるため、全数検査が可能であり厳密な品質管理にも適
用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の良否の
判定装置の1例を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の良否の
判定装置の他の例を示す概略ブロック図である。
【図3】表3の総合評価の結果を屈折率nおよび吸収係
数kについて示す図である。
【図4】表3の総合評価の結果を位相角Δおよび反射比
角Ψについて示す図である。
【符号の説明】
10 レーザー発振器 11 偏光子 12 1/4波長板 13 検光子 14 光検出器 15 アンプ 16 皮膜性状値演算手段 17 皮膜性状良否判定手段 18 マイクロコンピュータ 21 光ファイバ 22 光ファイバ 23 光ファイバ固定治具 S 被測定物

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼材表面の皮膜の屈折率n、吸収係数kお
    よび厚さtを測定し、これらの測定値とあらかじめ求め
    ておいたこれらの値の適正範囲とを比較することによ
    り、その皮膜性状の良否を判定することを特徴とする高
    純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法。
  2. 【請求項2】フェライト系ステンレス鋼材の評価方法で
    あって、鋼材表面の皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび
    厚さtが以下の(1)〜(3)式を満たす範囲内にある
    か否かにより、その皮膜性状の良否を判定することを特
    徴とする請求項1記載の高純度ガス用ステンレス鋼材の
    評価方法。 nmin ≦n≦nmax ・・・(1) 但し、 nmin ≦2.0、 2.2≦nmax <2.5 kmin ≦k≦kmax ・・・(2) 但し、 kmin ≦0.09、 0.2≦kmax <0.4 tmin ≦t≦tmax ・・・(3) 但し、 5nm<tmin ≦8nm、 30nm≦tmax
    <58nm
  3. 【請求項3】鋼材表面にレーザー光を入射させたとき
    の、入射光と反射光の偏光状態の変化から反射比角Ψと
    位相角Δを求め、これらの測定値とあらかじめ求めてお
    いたこれらの値の適正範囲とを比較することにより、そ
    の鋼材表面の皮膜性状の良否を判定することを特徴とす
    る高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法。
  4. 【請求項4】レーザー発振器と、レーザー発振器からの
    レーザー光を偏光させる偏光子および1/4波長板と、
    被測定物からの反射光を検出する光検出器と、被測定物
    と光検出器との間に設けられる偏光角度可変の検光子
    と、検光子の偏光角度を変化させたときの光検出器の出
    力結果から、皮膜の屈折率n、吸収係数kおよび厚さt
    を演算する皮膜性状値演算手段と、得られた皮膜の屈折
    率n、吸収係数kおよび厚さtから皮膜性状の良否を判
    定する皮膜性状良否判定手段とを備えることを特徴とす
    る高純度ガス用ステンレス鋼材の評価装置。
  5. 【請求項5】レーザー発振器と、レーザー発振器からの
    レーザー光を偏光させる偏光子および1/4波長板と、
    被測定物からの反射光を検出する光検出器と、被測定物
    と光検出器との間に設けられる偏光角度可変の検光子
    と、検光子の偏光角度を変化させたときの光検出器の出
    力結果から、反射比角Ψと位相角Δを演算する皮膜性状
    値演算手段と、得られた反射比角Ψと位相角Δから皮膜
    性状の良否を判定する皮膜性状良否判定手段とを備える
    ことを特徴とする高純度ガス用ステンレス鋼材の評価装
    置。
  6. 【請求項6】鋼材表面へレーザー光を入射させる光学系
    および鋼材表面からの反射光を検出する光学系のいずれ
    か一方または両方に光ファイバを備えることを特徴とす
    る請求項4または請求項5記載の高純度ガス用ステンレ
    ス鋼材の評価装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016217752A (ja) * 2015-05-15 2016-12-22 日新製鋼株式会社 分光エリプソメトリーを用いたステンレス鋼の非破壊耐食性評価方法

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