JPH09250089A - 除湿特性を有する複層布状物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な構成により低コストで応用範囲が広い
除湿特性を有する複層布状物を提供する。 【解決手段】 着用者の皮膚付近にある湿気を吸い上げ
て、その湿気を皮膚に近い一層から他層へと転送する除
湿特性を有する複層布状物であって、相対的にデニール
数が大きい繊維から構成されて、着用者の身体表面から
汗および、その他の体液を急速に吸い上げる第１親水性
布層と、相対的にデニール数が小さい繊維から構成され
て、第１親水性布層から汗および、その他の体液を吸収
する第２親水性布層とから除湿特性を有する複層布状物
を構成するものである。また、第１親水性布層と第２親
水性布層が編物または織物からなると同時に一体的に形
成され、ポリエステル繊維またはナイロン繊維あるいは
アクリル繊維ないしは類似した繊維からなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、複層布状物に関
し、特に、着用者の皮膚からの湿気を吸い上げるととも
に、湿気を皮膚に近い一層から他層へと転送する複層布
状物に関する。

【０００２】

【従来の技術】汗を吸収できるようにするために、衣服
の生地は、通常、木綿や絹や麻などの天然繊維から布帛
（はく）を作製したり、天然繊維と化学繊維とを混繊し
て布帛を作製したりしてきた。これらの生地は皮膚から
の汗を吸収できるものであったが、湿気を皮膚から離れ
た空間へと短時間で発散できるものではなかった。汗を
吸収した衣服は、湿気を発散させやすい条件があって
も、一定の時間を経なければ湿気を発散させることがで
きず、湿気が皮膚に密着している時間において、皮膚に
寒気を感じさせたり、摩擦やアレルギーを引き起こした
り、細菌やばい菌を繁殖させたりすることがあり、とり
わけスポーツウェアやアンダーウェアにおいては無視で
きない問題を発生させるものとなる。

【０００３】アメリカ・パテントＮｏ．５，２１７，７
８２号（１９９３年６月８日にモレッツＭｏｒｅｔｚな
どに権利付与）は、多層除湿織物を開示しており、この
多層除湿織物の主要な用途は、パッドを織成してショー
ツ等のクラッチ部分を形成し、尿の漏れや衣服の汚れを
防止するもので、尿失禁者や結腸切開手術患者が使用で
きるものとしていた。この多層除湿織物は、皮膚から一
番近い位置に湿気を通過させる比較的厚いインナー疎水
織層を備え、比較的薄い第１の中間親水性織層をインナ
ー疎水性織層の皮膚から遠い側に配置していた。そし
て、比較的厚い第２のアウター親水性織層が、第１の中
間親水性織層に密接されており、インナー疎水性織層か
らは遠い側となっていた。そして、インナー疎水性織層
は、ポリエステル繊維のような吸湿性のない繊維によっ
て構成することが望ましいとされていた。また、第１の
中間親水性織層および第２のアウター親水性織層は、ア
ライド繊維（Ａｌｌｉｅｄ Ｆｉｂｅｒｓ）社が販売し
ているハイドロフィル（Ｈｙｄｒｏｆｉｌ；登録商標）
ブランドのナイロン繊維ような高吸水性繊維によって構
成することが好ましいとされていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】このアメリカ・パテン
トＮｏ．５，２１７，７８２号に開示されているインナ
ー疎水性織層は、疎水性で、しかも非吸水性であるか
ら、着用者の皮膚をさらさらな乾燥状態に保持するもの
であった。第１の中間親水性織層は、主に水分をいわば
「転送」する層であり、インナー疎水性織層およびその
下の皮膚から湿気を吸い上げるものであった。第２のア
ウター親水性織層は主に水分をいわば「保存」する層で
あった。インナー疎水性織層が疎水性および非吸水性と
いう特性であるために、この多層除湿織物は、尿液のよ
うな比較的大量な流体を吸収するのには適したものであ
った。しかしながら、身体表面近くから有効かつ迅速に
汗のような比較的少量の流体を吸い上げる機能面では、
好適なものとは言えなかった。

【０００５】そこで、本発明の第１の目的は、身体表面
の近くから迅速に湿気を吸い上げることができ、たとえ
相当に少量の流体であっても急速に吸収できるような除
湿特性を有する複層布状物を提供することである。

【０００６】本発明の第２の目的は、アンダーウェア、
スポーツウェア、カジュアルウェアならびに類似した衣
服を製作できる除湿特性を有する複層布状物を提供する
ことである。

【０００７】本発明の第３の目的は、防水コートならび
に類似した衣服の裏地を製作できる除湿特性を有する複
層布状物を提供することである。

【０００８】本発明の第４の目的は、湿度を制御できる
特性を備えた複層布状物によって作製され、しかも従来
の衣服と外観がほぼ同じであるアンダーウェア、スポー
ツウェア、カジュアルウェアならびに類似した衣服を提
供することである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明にかかわる以上の
目的ならびに、その他の目的は、下記する好適な実施例
に開示した除湿特性を有する複層布状物によって達成さ
れるものであり、この複層布状物によって衣服を作製す
ることができる。そのためには、この除湿特性を有する
複層布状物を、相対的にデニール数が大きい繊維から構
成されて、着用者の身体表面から汗および、その他の体
液を急速に吸い上げる第１親水性布層と、相対的にデニ
ール数が小さい繊維から構成されて、第１親水性布層か
ら汗および、その他の体液を吸収する第２親水性布層と
を備えたものとすることができる。

【００１０】本発明の好適な実施の形態によれば、第１
親水性布層および第２親水性布層が、編物または織物か
らなると同時に一体形成されたものであると好都合であ
る。

【００１１】本発明の好適な実施の形態によれば、第１
親水性布層および第２親水性布層が、ポリエステル繊維
またはナイロン繊維あるいはアクリル繊維（実用的には
アクリルステープル）ないしは類似した繊維から形成さ
れることが好ましい。

【００１２】本発明の好適な実施の形態によれば、第１
親水性布層を構成する繊維が、その相対的に大きいデニ
ール数を６デニール（６Ｄ）以下とすることが望まし
く、第２親水性布層を構成する繊維が、その相対的に小
さいデニール数を３デニール（３Ｄ）以下とすることが
望ましい。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明にかかわる以上の目
的ならびに、その他の目的と、特徴および利点とを完全
に理解できるように、ここに好適な実施の形態を開示す
るとともに、図面に基づいて詳細な説明を行うものであ
る。

【００１４】図１から図３において、本発明にかかわる
実施の形態の除湿特性を有する複層布状物３０は、第１
親水性布層１２と第２親水性布層２２とを備えるもので
あり、第２親水性布層２２が第１親水性布層１２のすぐ
隣に設けられている。これらの第１親水性布層１２およ
び第２親水性布層２２は、公知技術による適当な方法を
適宜利用して、親水性を付与したものとする。

【００１５】第１親水性布層１２は、着用者（図示せ
ず。以下、同じ）の皮膚（図示せず。以下、同じ）と接
触、あるいは第２親水性布層２２と比べて着用者の皮膚
により接近したものとする。第１親水性布層１２は、図
２に図示したように、糸条１０を編成または織成して布
状物品とするが、糸条１０は、化学繊維からなるものが
好ましく、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、
アクリル繊維（ステープル）あるいは類似した繊維とす
ることができる。第１親水性布層１２は親水性を備えて
いるために、皮膚に近いところにある湿気（例えば、汗
および尿または他の流体物。図示せず。以下、同じ）を
吸い上げる機能が大幅に向上されたものとなる。

【００１６】第２親水性布層２２は、図３に図示したよ
うに、糸条２０を編成または織成して布状物品とする
が、糸条２０は、化学繊維からなるものが好ましく、例
えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維
（ステープル）あるいは類似した繊維とすることができ
る。本実施の形態によれば、第１親水性布層１２および
第２親水性布層２２は、リヤス編または織物して織成す
ると同時に、一体的に形成したものである。各層に区分
できるものであるが、一体的に整合されているので、こ
の複層布状物３０は、単一層の布帛（はく）と同様に取
り扱うことができる。

【００１７】図２と図３とにおいて、糸条１０は複数の
フィラメント１００から構成され、糸条２０は複数のフ
ィラメント２００から構成される。好ましくは、第２親
水性布層２２のフィラメント２００が、第１親水性布層
１２のフィラメント１００よりも細いもの、すなわち比
較的小さいデニール数であると良い。このような特徴に
よって、第２親水性布層２２が第１親水性布層１２より
も更に強い湿気吸上能力を具備することになる。従っ
て、第１親水性布層１２によって皮膚の表面から急速に
吸い上げられた湿気が、第２親水性布層２２により第１
親水性布層１２から吸収抽出されてしまう。このように
して、第１親水性布層１２の皮膚に近い側が乾燥した状
態を保持するので、衣服の着用者は衣服が乾燥して気持
がよいと感じられるものとなる。

【００１８】また、第２親水性布層２２が、親水性であ
り比較的強い湿気吸上能力を備えていることから、第２
親水性布層２２に吸収された汗が相当に大きい面積へと
拡散されることとなる。従って、第２親水性布層２２が
含有する汗の水分は、大きな面積から外部空気中へ発散
できる状態となるので、この複層布状物３０は、従来の
織物よりも更に短い時間で乾燥状態に復帰することがで
きるものとなる。

【００１９】各層の繊維デニール数の選択は、エンドユ
ーザーにおける湿気コントロールのニーズによって決定
される。また、各層の重量は、以下の要素によって決定
される。つまり、この複層布状物３０の重量ニーズ、最
終的な使用目的、第１親水性布層１２から第２親水性布
層２２への汗および他の体液の転送ニーズである。

【００２０】本発明にかかわる好適な実施の形態によれ
ば、フィラメント２００のデニール数は、３デニール
（３Ｄ）以下であることが望ましく、かつフィラメント
１００のデニール数はフィラメント２００のデニール数
より大きいものであって、６デニール（６Ｄ）以下であ
ることが望ましい。

【００２１】図２および図３に示したフィラメント１０
０とフィラメント２００とは、円形断面となっている
が、当業者であれば分かるように、ポリエステル繊維、
ナイロン繊維またはアクリル繊維（ステープル）は、円
形断面だけでなく装飾形状の異形断面とすることもでき
るし、短繊維（ステープル）あるいは長繊維（フィラメ
ント）とすることもできる。

【００２２】本実施の形態にかかわる除湿特性を有する
複層布状物３０は、アンダーウェア、ワイシャツ、スカ
ート、ズボン、スポーツウェア、カジュアルウェアおよ
び類似物品を作製することができ、基本的に従来の衣服
と外観上はほぼ同一である。この複層布状物３０は、ま
た、衣服の裏地にも最適で、例えば防水コートおよび類
似物品の裏地とすることができる。もし防水コートの裏
地にする場合には、この複層布状物３０の着用者の皮膚
から遠い表面に透湿防水層（ｂｒｅａｔｈａｂｌｅ ｂ
ａｒｒｉｅｒ ｌａｙｅｒ 図示せず。以下、同じ）を
設けたものとすることができる。透湿防水層は、従来技
術の薄膜貼付（ｍｅｍｂｒａｎｃｅ−ｆｉｌｍ ｌａｍ
ｉｎａｔｉｏｎ）またはトランスファーコーティング
（ｔｒａｎｓｆｅｒ ｃｏａｔｉｎｇ）を用いて第２親
水性布層２２上に接合することができる。透湿防水層
は、微孔性で（ｍｉｃｒｏｐｏｒｏｕｓ）かつ親水性で
あるもの、または好ましくは無孔性で（ｎｏｎ−ｐｏｒ
ｏｕｓ）かつ親水性であるものが良い。本実施の形態の
複層布状物３０と透湿防水層とを一体形成した裏地は、
従来の防水コートの裏地よりも汗を吸収しやすいととも
に、より強力な水蒸気転送率を発揮するものとなる。

【００２３】本実施の形態にかかわる除湿特性を有する
複層布状物３０は、衣服用の布帛（はく）とすることが
できるが、また、他の目的にも使用することができるも
のであり、例えば、スエットバンド、除湿ソックス、ブ
ラジャーの裏地、手袋とその裏地、あるいは生理用ナプ
キン、おしめ、おむつの裏地に使用することもできる。
編物または織物とする時に、弾性力のある糸条を加え
て、本発明の複層布状物（図示せず）を形成すれば布帛
に弾性力を付加することもできる。

【００２４】本発明にかかわる除湿特性を有する複層布
状物を、好適な実施の形態によって上記したように開示
されたが、本発明はこれに限定されるものではなく、本
発明の思想および範囲において、いくらかの変更ならび
に修正を加えることは当業者であれば当然できることで
あるから、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に記載
したものを基準とするものでなければならない。

【００２５】

【発明の効果】上述したように、本発明にかかわる除湿
特性を有する複層布状物によれば、簡単な構成により着
用者の皮膚からの湿気を吸い上げて、湿気を皮膚に近い
一層から他層へと転送できるので、身体表面近くからの
汗のような比較的少量の流体を効率的に吸収することが
可能となり、着心地の良い複層布状物を提供することが
できる。また、本発明によれば２層構造で所望の機能を
達成できるので低コストを実現できるとともに、応用範
囲が極めて広範なものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかわる除湿特性を有する複層布状物
の実施の形態を示す概略断面図である。

【図２】本発明にかかわる第１親水性布層の実施の形態
を示す糸条概略断面図である。

【図３】本発明にかかわる第２親水性布層の実施の形態
を示す糸条概略断面図である。

【符号の説明】

１０，２０ 糸条 １２ 第１親水性布層 ２２ 第２親水性布層 ３０ 複層布状物 １００，２００ フィラメント

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 相対的にデニール数が大きい繊維から構
   成されて、着用者の身体表面から汗および、その他の体
   液を急速に吸い上げる第１親水性布層と、 相対的にデニール数が小さい繊維から構成されて、前記
   第１親水性布層から汗および、その他の体液を吸収する
   第２親水性布層とを備えたことを特徴とする除湿特性を
   有する複層布状物。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の複層布状物において、
   前記第１親水性布層および第２親水性布層が、編物また
   は織物からなるとともに一体的に形成されたものである
   ことを特徴とする除湿特性を有する複層布状物。
3. 【請求項３】 請求項２に記載の複層布状物において、
   前記第１親水性布層が、ポリエステル繊維、ナイロン繊
   維、アクリル繊維によって構成されるグループから選択
   されたものであることを特徴とする除湿特性を有する複
   層布状物。
4. 【請求項４】 請求項２に記載の複層布状物において、
   前記第２親水性布層が、ポリエステル繊維、ナイロン繊
   維、アクリル繊維によって構成されるグループから選択
   されたものであることを特徴とする除湿特性を有する複
   層布状物。
5. 【請求項５】 請求項１に記載の複層布状物において、
   前記相対的に大きいデニール数が、好ましくは６デニー
   ル（６Ｄ）以下であることを特徴とする除湿特性を有す
   る複層布状物。
6. 【請求項６】 請求項１に記載の複層布状物において、
   前記相対的に小さいデニール数が、好ましくは３デニー
   ル（３Ｄ）以下であることを特徴とする除湿特性を有す
   る複層布状物。