JPH09152729A - 両親媒性会合体膜、その製造方法、及び物理的機能膜又は素子 - Google Patents

両親媒性会合体膜、その製造方法、及び物理的機能膜又は素子

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JPH09152729A
JPH09152729A JP20882996A JP20882996A JPH09152729A JP H09152729 A JPH09152729 A JP H09152729A JP 20882996 A JP20882996 A JP 20882996A JP 20882996 A JP20882996 A JP 20882996A JP H09152729 A JPH09152729 A JP H09152729A
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JP20882996A
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Noritatsu Ri
昇龍 李
Kazunori Fukuda
一徳 福田
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Daikin Industries Ltd
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Daikin Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規で合成容易な分子からなりかつ光導電性
薄膜などとして有用な新規両親媒性会合体膜及び光導電
体などの物理的機能膜又は素子と、この両親媒性会合体
膜を親疎水性バランス良くかつ再現性良く簡便に得るこ
とのできる製造方法を提供すること。 【解決手段】 分子内の周辺部に親水性置換基を有し、
有機溶媒に可溶な置換フタロシアニン類と、分子内の周
辺部に疎水性置換基を有し、有機溶媒に可溶な置換フタ
ロシアニン類との混合物からなる両親媒性会合体膜(L
B膜)。この両親媒性会合体膜を得るために、上記の両
置換フタロシアニン類を混合し、この混合物を液面上に
展開し、両置換フタロシアニン類を会合させる製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、両親媒性会合体膜
(特にフタロシアニン系ラングミュア・ブロジェット
膜)、その製造方法、及び有機光導電体薄膜、ガスセン
サ等の物理的機能膜又は素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、フタロシアニンは溶媒に不溶性
であり、その薄膜を作製するためには通常、蒸着法や微
粒子分散高分子膜が使用されている。
【0003】一方、ラングミュア・ブロジェット法(以
下、LB法と称する。)は、水面上に形成される単分子
膜を基本構成単位とする温和な有機薄膜作製法として注
目されてきており、LB法を用いた溶媒可溶な置換フタ
ロシアニン類の薄膜化も様々に実施されてきている(例
えばThin Solid Films, 99 (1983) 53-59, ibid, 134(1
985) 109-119;J, Chem. Soc., Chem. Commun., (1987)
1148-1150, ibid, (1989) 477-479)。
【0004】こうしたLB法で得られるフタロシアニン
系LB膜は分子集合体薄膜として、蒸着膜とは異なる分
子間パッキング、或いはアモルファス等を与えるものと
期待され、それが示す特性において新規な物性が得られ
る可能性がある。
【0005】従来、フタロシアニン類のLB膜作製のた
めには一般に、クロロホルム、ベンゼン、キシレン等の
有機溶媒に可溶な長鎖アルキル鎖などの疎水性基を導入
した置換体か、又は一分子内に親水性基と疎水性基を非
対称に配置した非対称置換体が用いられてきた。
【0006】しかしながら、疎水性基置換体においては
一般に、水面上での展開性が良好ではなく、高い凝集
性、或いはオリゴメリックな会合体形成性がその過小な
限界分子占有面積などから示唆されており、それらの単
独でのLB膜作製のためには、展開溶媒の選択、用いる
基板の選択、累積手法の選択など、ある種の職人芸的な
技術が要求されることがしばしばである。
【0007】また、その解消のために使用される脂肪酸
類などとの混合系は、特に系が電子物性などを期待され
る場合、結果としてフタロシアニン分子間の相互作用を
阻害し、熱的にも不安定な低融点性絶縁物を混合するこ
ととなり、本来のフタロシアニン類分子集合体薄膜に期
待される物性が発現されない場合がある。
【0008】一方、非対称置換体は、一分子内で親疎水
性バランスが取られた両親媒的性格を有するため、その
水面上での展開性は良好であり、良質な単分子膜が得ら
れ、比較的容易にLB膜とすることが可能であるとされ
ている。しかしながら、一般にその合成は煩雑であり、
使用にあたっては分子レベルからのオーダーメイドな分
子設計が要求され、しばしば合成上の困難さが伴う場合
がある。
【0009】また、導電率変化型ガスセンサ素子として
は従来、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チ
タン等の金属酸化物半導体を使用したものが作製されて
いる。そして、近年、有機化合物半導体のガスドープに
よる導電率変化をガスセンサ素子の作製に使用しようと
する試みもなされてきている。
【0010】フタロシアニン類は発達した共役系を有す
る大環状化合物であり、分子集合状態においてπ電子の
非局在化を起こし、半導体物性を示すようになることが
知られている。従って、これを蒸着法によって薄膜化
し、各種の電子供受容性ガス種に対する導電率変化が測
定されることによって、ガスセンサへの応用が検討され
てきている(J. Electroanal. Chem., 37 (1972) 373.,
Sensors and Actuators, 9 (1986) 27.) 。また、上記
した気−水界面上に形成される単分子膜を基本構成単位
とする薄膜の形成方法であるLB法をフタロシアニン薄
膜の形成に適用することも、近年では盛んに行われ、こ
うしたフタロシアニン類のLB膜を用いるガスセンサ素
子の作製も試みられてきている。
【0011】LB法により得られるフタロシアニン薄膜
を利用したガスセンサは、蒸着法により得られる薄膜と
は異なり、しばしば常温でのガス暴露に対し迅速な導電
率変化を示す場合が知られている(IEEE Trans. Electr
on Devices., 32 (1985) 1170., Sensors and Actuator
s B, 18 (1994) 411.)。
【0012】しかしながら、ガス種の不可逆吸着による
初期値回復性の不良は、蒸着法による薄膜の場合と同様
に実用上の大きな問題として、しばしば認められること
がある。例えば、一般にフタロシアニン類薄膜に対して
大きな導電率変化を引き起こすことが知られている電子
受容性ガスである二酸化窒素は、不可逆吸着性が強く、
初期値回復性の不良を与える場合が多い。この「大きな
導電率変化を引き起こすガス種」とは、選択応答性の高
いガス種ということであり、従って、フタロシアニンL
B膜を利用して窒素酸化物選択性ガスセンサを得るため
には、不可逆吸着による初期値回復性の不良を改善する
手段の適用が必要となってくる。
【0013】ガス種の不可逆吸着の抑制のためには、加
熱によるガス種の強制排出が有効な手段となる。しかし
ながら、フタロシアニンLB膜を利用するガスセンサ素
子に対して加熱処理が試みられた例は余りない。これ
は、従来、フタロシアニンLB膜が製膜性を高めるため
に低融点性の脂肪酸類と混合することによって作製され
たり、界面活性を与えるために熱相転移を誘起するアル
キル長鎖で置換した置換体を使用して作製されてきたた
めである。即ち、フタロシアニン類をLB法によりLB
膜として得る場合、得られるLB膜は熱安定性に乏し
く、ガスセンサ用感応薄膜として使用するとき、非可逆
吸着ガス種の強制排出などのための加熱処理の適用が困
難なためである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、合成
容易な分子からなり、光導電性薄膜などとして有用な両
親媒性会合体膜及び光導電体、ガスセンサなどの物理的
機能膜又は素子と、この両親媒性会合体膜を親疎水性バ
ランスが良くかつ再現性良く簡便に得ることのできる製
造方法とを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の本発
明の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、従来は一
分子内に上記した非対称置換基として配置されていた疎
水性基と親水性基をそれぞれ別の分子(特にフタロシア
ニン類)に配置し、両者を相互作用させることによって
得られる両親媒性会合体を用いれば、フタロシアニン類
などのLB膜が再現性良く簡便に得られることを見出
し、本発明に到達したものである。
【0016】即ち、本発明は、分子内の周辺部に親水性
基を有する第1の分子(特にフタロシアニン系)と、こ
の第1の分子と基本骨格が同じでありかつ分子内の周辺
部に疎水性基を有する第2の分子(特にフタロシアニン
系)とが会合してなる両親媒性会合体膜(特にLB膜)
に係るものである。
【0017】本発明の両親媒性会合体膜は、この膜を形
成する上記の第1の分子と第2の分子とは基本骨格が同
じであり、それぞれの分子内に親水性基と疎水性基を有
したものであるから、従来のように複雑な非対称置換体
を合成することなく、また、脂肪酸などの混合系を用い
ることもなく、種々のLB膜を再現性良く簡便に得るこ
とができる。
【0018】また、得られたLB膜は基本骨格の同じ分
子の混合物であるため、その相互間の相互作用を有効に
生ぜしめる安定したものであり、近赤外吸収色素薄膜、
有機光導電性薄膜、においやガスセンサ用感応薄膜な
ど、光電子物性などを示す物理的機能膜又は素子とし
て、特にフタロシアニン類分子集合体薄膜に期待される
種々の機能を発現することが可能である。
【0019】本発明の両親媒性会合体膜をガスセンサと
して適用する場合、例えば、上記の第1及び第2の分子
は脂肪酸類と混合せず、かつアルキル長鎖置換体を使用
せずに、それほどかさ高くない熱安定な置換基で置換さ
れたフタロシアニン類を用いることにより、フタロシア
ニン類薄膜として本来期待される熱安定なフタロシアニ
ン類のLB膜を得、これをヒーター等の加熱手段で加熱
することにより、ガス種の不可逆吸着を抑制する手段を
有するガスセンサ素子、特に二酸化窒素等の窒素酸化物
用のガスセンサが得られる。
【0020】本発明の両親媒性会合体膜を製造するに
は、分子内の周辺部に親水性基を有する第1の分子(特
にフタロシアニン系)と、この第1の分子と基本骨格が
同じでありかつ分子内の周辺部に疎水性基を有する第2
の分子(特にフタロシアニン系)とを混合する工程と;
この混合物を水面などの液面上に展開し、前記第1の分
子と前記第2の分子とを会合させて両親媒性会合体膜
(特にLB膜)を得る工程と;を有する両親媒性会合体
膜の製造方法を採用することが望ましい。
【0021】この製造方法によれば、望ましくはベンゼ
ン等の有機溶媒に可溶で周辺部に親水性基を有する置換
フタロシアニン類などの第1の分子と、望ましくはベン
ゼンなどの有機溶媒に可溶で周辺部に疎水性基を有する
置換フタロシアニン類などの第2の分子とを混合し、こ
の混合溶液を水面等の液面上に展開することにより、両
親媒性会合体の形成が促され、液面上での分子の凝集な
どが抑制され、結果として良好な単分子膜を得ることが
可能となる。得られる単分子膜は、系全体として親疎水
性バランスや粘性などが改善されたものとなり、ガラ
ス、石英、金属などの種々の基体上にLB膜として累積
が可能となる。
【0022】図1には、本発明の製造方法に基づいて、
親水性基を有する置換フタロシアニン類と疎水性基を有
する置換フタロシアニン類との混合物をベンゼン等の有
機溶媒に溶解させた溶液を水面上に展開することによっ
て、両親媒性会合体の単分子膜を形成した状態を示して
いる。
【0023】そして、図2は、例えば垂直上下法によっ
て基板上に上記の両親媒性会合体膜をLB膜として
(I)→(II)、更には(III)の順に付着させる方法を
概略的に示している。このLB膜は基板と共に有機光導
電体膜又は有機感光体などとして有用である。
【0024】本発明の両親媒性会合体膜においては、第
1の分子が分子内の周辺部に親水性置換基を有し、ベン
ゼン等の有機溶媒に可溶な置換フタロシアニン類及び/
又は置換ナフタロシアニン類を主体とし、第2の分子が
分子内の周辺部に疎水性置換基を有し、ベンゼン等の有
機溶媒に可溶な置換フタロシアニン類及び/又は置換ナ
フタロシアニン類を主体とすることが望ましい。ここ
で、上記の「主体とする」とは、 100%であること以外
にも、他の成分が少量含まれていてもよいことを意味す
る。
【0025】また、第1の分子中の親水性基がジアルキ
ルアミノアルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基又はカ
ルボキシ炭化水素オキシ基であり、第2の分子中の疎水
性基がアルキル基又は炭化水素基置換若しくは非置換の
炭化水素オキシ基であるのがよい。
【0026】例えば、親水性基としてジメチルアミノエ
トキシ基、ヒドロキシエトキシ基、カルボキシフェノキ
シ基、カルボキシエトキシ基、アミノエトキシ基、ニト
ロフェノキシ基などが導入された親水性基置換体を第1
の分子とし、疎水性基としてターシャリブチル基、クミ
ルフェノキシ基、ブトキシ基、ドデシル基、フェノキシ
基などが導入された疎水性基置換体を第2の分子として
よい。
【0027】また、両親媒性会合体膜における第1の分
子と第2の分子との混合モル比は、系によって適宜に好
適若しくは最適な範囲を選択できるが、通常は第1の分
子:第2の分子=1: 0.1〜1:10であるのがよい。
【0028】本発明の製造方法においては、上記の親水
性基置換体と疎水性基置換体との混合溶液を水面上に展
開するときに得られる両親媒性会合体から良好な単分子
膜を得、再現性よく簡便にLB膜を得ることができる。
ここで、好適に用いられる疎水性基又は親水性基置換体
としてのフタロシアニン類又はナフタロシアニン類は無
金属体、或いは銅、ニッケル、亜鉛、鉄、バナジウムな
どとの種々の合成可能な金属錯体でもよく、その組み合
わせは無金属体−無金属体、無金属体−金属錯体、同種
金属錯体、異種金属錯体などの種々の組み合わせ(2種
又はそれ以上でもよい。)が可能である。
【0029】この製造方法において、両親媒性会合体膜
を保持するために用いられる基体はガラス、石英、金属
等、種々のものが使用可能であり、その表面は疎水性な
どに化学修飾されていてもよい。また、基体への単分子
膜の累積には、LB法の常法である垂直上下法の他に、
水平付着法など、種々の手法の使用が可能である。
【0030】また、この製造方法においては、上記した
と同様に、第1の分子として、分子内の周辺部に親水性
置換基を有し、ベンゼンなどの有機溶媒に可溶な置換フ
タロシアニン類及び/又は置換ナフタロシアニン類を主
体に使用し、第2の分子として、分子内の周辺部に疎水
性置換基を有し、ベンゼンなどの有機溶媒に可溶な置換
フタロシアニン類及び/又は置換ナフタロシアニン類を
主体に使用することが望ましい。ここで、上記の「主体
に」とは、 100%であること以外にも、他の成分を含ん
でいてもよいことを意味する。
【0031】そして、親水性基として、上記したと同様
のジアルキルアミノアルコキシ基、ヒドロキシアルコキ
シ基又はカルボキシ炭化水素オキシ基を導入し、疎水性
基として、上記したと同様のアルキル基又は炭化水素基
置換もしくは非置換の炭化水素オキシ基を導入すること
ができる。
【0032】また、両親媒性会合体膜における第1の分
子と第2の分子との混合比も通常は、モル比で1: 0.1
〜1:10とするのがよい。
【0033】本発明の両親媒性会合体膜をガスセンサに
用いる場合、例えば、熱的不安定性を誘起しない親水性
基、又は疎水性基で置換された2種以上のフタロシアニ
ン類を混合し、この混合液を水面上に展開するときに得
られる両親媒性会合体を利用することにより気−水界面
上に親疎水バランスが整った単分子膜を得、これを累積
することにより、熱安定なフタロシアニン類LB膜を得
る。
【0034】そして、このようにして得られるフタロシ
アニン類LB膜は、導電率測定のために、くし形に交互
に電極を配した基板上に累積され、電極基板はヒーター
により背面より加熱、温度コントロールされ、素子の窒
素酸化物ガスに対する導電率変化が測定される。素子は
選択的可逆応答が得られる温度まで加熱され、定温制御
されるか、或いはガス暴露後に、上記の加熱によりガス
種の強制排出がなされるように加熱される。
【0035】ここで使用可能なくし形交互電極は金、白
金、カーボン等によって形成されていることが望まし
く、電極パターンを形成する絶縁基板には石英又は耐熱
性ガラス等の使用が望ましい。くし形交互電極の電極間
幅、交差部(電極が交互に配される領域)の長さは適当
に選択することが可能であるが、使用するフタロシアニ
ン類LB膜の導電率が低い場合には、電極間幅は30μm
以下、交差部の長さは5mm以上であることが望ましい。
【0036】そして、上記の熱的不安定性を誘起しない
置換基としては種々のものが使用可能であるが、親水性
基としてはジメチルアミノアルコキシ基(例えばジメチ
ルアミノエトキシ基)、ヒドロキシアルコキシ基(例え
ばヒドロキシエトキシ基)等が、疎水性基としてはアル
キル長鎖の使用は避けるべきであり、ターシャリブチル
基、ブトキシ基等の使用が望ましい。
【0037】また、電極上に累積されるフタロシアニン
類LB膜の初期導電率が比較的高いものを得たい場合に
は、基本分子骨格の共役系が、フタロシアニン分子骨格
よりも拡張されたナフタロシアニン分子骨格を有する置
換体の使用が望ましい。
【0038】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
【0039】疎水性基置換フタロシアニン類としては、
テトラ(クミルフエノキシ)フタロシアニン〔以下、t
cpPcと称する。〕及びその銅錯体〔以下、tcpC
uPcと称する。〕(いずれも東進ケミカル社製)、テ
トラ(ターシャリブチル)フタロシアニン〔以下、tt
bPcと称する。〕及びその銅錯体〔以下、ttbCu
Pcと称する。〕(いずれも和光純薬工業社製)、オク
タ(ブトキシ)フタロシアニン〔以下、obPcと称す
る。〕又はオクタ(ブトキシ)ナフタロシアニン〔以
下、obNcと称する。〕及びそれらの銅錯体〔以下、
obCuPc、obCuNcと称する。〕(いずれもAl
drich Chemical Co.社製)が使用された。
【0040】親水性基置換フタロシアニン類としては、
テトラ(ジメチルアミノエトキシ)フタロシアニン〔以
下、tdaPcと称する。〕及びその銅錯体〔以下、t
daCuPcと称する。〕が合成され、使用された。
【0041】以上の各フタロシアニン類又はナフタロシ
アニン類の構造は、次の通りである。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】次に、上記の親水性基置換フタロシアニン
類の合成方法を説明する。 〔tdaPcの合成〕Sieglの報告(J. Heterocyc
lic Chem., 18(1981)1613)に基づき、4−(2’−ジメ
チルアミノエトキシ)フタロニトリルを得た。得られた
4−(2’−ジメチルアミノエトキシ)フタロニトリル
2gをエタノール50ml中に加え、DBN(1,5−ジア
ゾビシクロ〔4.3.0〕−5−ノネン)1.16g共存
下、24時間、85℃にて攪拌を行った。
【0045】反応終了後、エタノールを減圧留去し、得
られた残渣を水洗後、乾燥し、クロロホルムにて抽出し
た。精製は、塩基性アルミナショートカラム(活性度
1、1×15cm、クロロホルム溶出)にかけた後、シクロ
ヘキサンからの再沈(80℃下)によって行った。
【0046】得られたtdaPcはクロロホルム、ベン
ゼン等の他、エタノール、メタノール等にも易溶であっ
た(収率24.9%)。この生成物の分析データは次の通り
であった。
【0047】MS(FAB): 863(MH+ ) 。1 HNMR(500MHz、CD2 Cl2 ):δ 6.7〜7.8(m,
Aromatic, 12H)、4.0〜4.2(m, CH2, 8H)、3.0〜2.9
(t, CH2, 8H)、2.5(S, CH3, 24H)、1.7(br, NH)。
【0048】IR(KBr):2940、2821、2768(CH3,
CH2)cm-1、1017(無金属フタロシアニン特性吸収)c
m-1。 UV−Vis(benzene、3×10-6M):λmax 704、 6
66、 642、 604nm。
【0049】元素分析値(東レリサーチセンター): 計算値(C4854124(H2 O));C:65.44 、H:
6.18、N:19.08 %。 実測値:C:65.79 %、H:6.50%、N:18.66 %。
【0050】〔tdaCuPcの合成〕上記のtdaP
c 0.2gと無水酢酸銅0.85gをエタノール30ml中に加
え、24時間、85℃にて攪拌を行った。反応終了後、不溶
物を濾過し、エタノールを減圧留去後、残渣を水洗、乾
燥し、クロロホルムにて抽出した。
【0051】精製は、塩基性アルミナショートカラム
(活性度1、1×15cm、クロロホルム/メタノール
(3:1)溶出)にかけた後、シクロヘキサンからの再
沈(80℃下)によって行った(収率72%)。この生成物
の分析データは次の通りであった。
【0052】MS(FAB): 924(MH+ )。 IR(KBr):2941、2821、2770(CH3, CH2)cm-1。 UV−Vis(benzene、3×10-6M):λmax 680、 6
14nm。
【0053】次に、疎水性基置換フタロシアニン類であ
るtcpPc、ttbPc、obPc、obNc又はこ
れらの銅錯体(いずれも市販品)と、親水性基置換フタ
ロシアニン類であるtdaPcまたはこの銅錯体(いず
れも上記方法で合成したもの)とをそれぞれ適切なモル
比で混合し、この混合物のベンゼン溶液(1mg/ml)を
単分子膜の作製に使用した。
【0054】図3には、一例として、tcpCuPcと
tdaCuPcとをモル比1:1で混合し、水面上に展
開した際に得られる、単分子膜形成時の表面圧−面積曲
線を示す。tcpCuPc又はtdaCuPcの単独で
の同様の曲線を併せて示した。なお、単分子膜の形成に
はいずれも純水(17℃)を使用した。
【0055】図3から、以下に述べる事実が分かる。即
ち、通常、混合単分子膜が与える平均限界分子占有面積
は、その混合モル比に応じて各成分の与える固有値の間
に位置するのであるが、tcpCuPc/tdaCuP
c(モル比1:1)混合単分子膜のそれは約75Å2 であ
り、tcpCuPc単独が示す約32Å2 の値とtdaC
uPcが示す約90Å2 の値の中間値ではなく、よりtd
aCuPcの側に寄った値となっている。
【0056】このことから、tcpCuPc単独の示す
限界分子占有面積は明らかに過小であり、オリゴメリッ
クな会合体の形成、或いは局所的な凝集を反映している
と考えられ、一方、tdaCuPc単独のそれはフタロ
シアニン環がほぼパラレルに水面上に配向した単分子膜
状態を反映していると考えられる。
【0057】従って、上記の結果は、混合系において
は、tcpCuPcの高次な会合体形成、或いは凝集が
抑制され、tcpCuPcとtdaCuPcが相互作用
することによって、分子サイズから見てほぼ妥当な限界
分子占有面積を示す両親媒性会合体が得られたためと理
解できる。
【0058】その他、tcpPc、ttbPc、obP
c、obNc又はこれらの銅錯体と、tdaPc又はこ
の銅錯体との混合系においても、図3とほぼ同様な結果
が得られている。
【0059】tcpPc、ttbPc、obPc、ob
Nc又はこれらの銅錯体はtdaPc又はこの銅錯体と
適切なモル比で混合して水面上に展開し、垂直上下法に
より、いずれも20mN/mと一定表面圧下でZ−type的
(累積比:上昇時 1.2〜0.9、下降時 0.4〜0.1)に、洗
浄されたパイレックスガラス基板や石英基板上に累積す
ることが可能であった。
【0060】なお、tcpPc、ttbPc、obP
c、obNc又はこれらの銅錯体は、これら単独でのベ
ンゼン溶液(1mg/ml)からの垂直上下法によるLB膜
の作製が困難であり、また、tdaPc又はこの銅錯体
は数層以上の累積において上昇時に約1.0 の正の累積
比、下降時に約1.0 の負の累積比を与え、基板上から水
面上への脱離のためにその多層膜化は困難であった。
【0061】このことは、tcpPc、ttbPc、o
bPc、obNc又はこれらの銅錯体は、単独では疎水
的傾向が強すぎ、凝集、或いはオリゴメリックな会合の
ために良質な単分子膜が得られず、LB膜としての累積
が困難であり、逆に、tdaPc又はこの銅錯体は、過
度に与えられた極性のために水面上への脱離傾向を示
し、累積が困難になるためと考えられる。
【0062】図4には、tcpCuPc、obCuPc
又はobCuNcとtdaCuPcとを混合することに
よりパイレックスガラス基板上に作製された各21層
(基板両面では42層)のLB膜の透過吸収スペクトル
を示す。併せて、図5には、tcpCuPc、obCu
Pc、obCuNc、tdaCuPcのそれぞれ単独の
溶液(ベンゼン、3×10-6M)の透過吸収スペクトルを
示す。
【0063】これによれば、tcpCuPc/tdaC
uPc(モル比1:1)、obCuPc/tdaCuP
c(モル比7:3)、obCuNc/tdaCuPc
(モル比7:3)の混合によるLB膜のそれぞれが示す
透過吸収スペクトルは、膜中での分子間相互作用を反映
してそれぞれブロードなものとなっている。
【0064】また、tcpCuPc/tdaCuPc
(モル比1:1)のLB膜が示すスペクトルの形は、t
cpCuPc、tdaCuPcそれぞれの溶液が示すス
ペクトルの形と比べ、短波長側吸収が増大されており、
膜中での共役環のface to faceなパッキングを反映して
いると考えられる。
【0065】一方、obCuPc/tdaCuPc(モ
ル比7:3)、obCuNc/tdaCuPc(モル比
7:3)の混合LB膜が示すスペクトルの形は、obC
uPcとtdaCuPc、又はobCuNcとtdaC
uPcの溶液中スペクトルが重ね合わされたものに近い
ものとなっている。
【0066】これは、obCuPc/tdaCuPc
(モル比7:3)、またはobCuNc/tdaCuP
c(モル比7:3)の混合LB膜中では、フタロシアニ
ン類の共役環が若干ずれた形でスタックし、また、その
パッキングも幾分緩いためであると考えられる。
【0067】いずれにせよ、本発明に基づいて、近赤外
域に吸収を有するフタロシアニン類をLB膜化する時、
容易に近赤外吸収色素薄膜を得ることが可能である。
【0068】また、各フタロシアニン系LB膜(obC
uNc/tdaCuPcのモル比7:3の混合LB膜)
の累積層数と吸光度との関係には直線性があり(図
6)、累積過程が良好であることも証明された。従っ
て、累積層数による膜厚の調整もまた容易である。
【0069】本発明に基づく方法によって作製されるフ
タロシアニン系LB膜はフタロシアニン類分子集合体薄
膜として期待される種々の物性を示すことが可能であ
る。例えば図7に示すように、ttbCuPc/tda
CuPc(モル比1:1)の混合LB膜を、石英基板上
のくし形に交互に配された一対の金電極(電極交差部8
mm、電極本数 100×2本、電極幅20μm、電極間ギャッ
プ20μm)上に11層累積するとき、乾燥空気中、1V
バイアス下で得られるその電流値はキセノンランプ光か
らフィルターによって取り出された 500〜800nm 波長域
の光に感応してその値を増大させ、光電流が得られる。
【0070】また、obCuPc/tdaCuPc(モ
ル比7:3)、obCuNc/tdaCuPc(モル比
7:3)の各11層のLB膜を同様に累積するとき、やは
り同様に光電流が得られるが、特にobCuNc/td
aCuPc(モル比7:3)LB膜の場合、その吸収帯
域(図4参照)を反映して 800nm以上の波長域に対して
も増大された相対感度を有することが認められた。
【0071】これらは、光励起によって膜中に生成する
Frenkel励起子が内因的若しくは外因的過程を経てキャ
リアを発生させるためと考えられ、本発明に基づく方法
により作製されるフタロシアニン系LB膜が有機光導電
体薄膜として機能しうることを示唆している。
【0072】また、obCuNc/tdaCuPc(モ
ル比7:3)の混合LB膜を11層累積した、くし形に
交互に配された一対の金電極からの50℃下、乾燥空気
中、1Vバイアス下で得られる暗電流値は、二酸化窒素
(1ppm)との接触によってその値を増大させ(図8
(a))、本発明に基づくフタロシアニン系LB膜がガ
スセンサ用感応膜として使用可能であることを示唆して
いる。
【0073】更に、本発明の方法に基づけば、低融点性
の脂肪酸等を混合することなく、長鎖アルキル基を有し
ないフタロシアニン類をLB膜化することが可能であ
り、従って、系の熱安定性を期待することが可能であ
る。例えば、obCuNc/tdaCuPc(モル比
7:3)の混合LB膜において見られるような、二酸化
窒素の強吸着による暗電流値の回復性の不良は、加熱処
理による強制脱着である程度克服することが可能であ
る。
【0074】例えば図8(b)に見られるように乾燥空
気中、 120℃下、10分程度の加熱処理によっても、ガス
の脱着は加速され、また、加熱処理後もフタロシアニン
LB膜は変性することなく、二酸化窒素(1ppm)との接
触によってその暗電流値は再び増大することが可能であ
った。
【0075】上記のガスセンサは具体的には、図9に示
すように、石英基板4上に、くし形に交互に金電極2と
3が電極間幅d:20μm、電極交差部長さL:8mmに設
けられ、電流計5によってガス吸着による電極間の暗電
流値が測定可能となっている。電極2及び3上には、上
述した方法によってフタロシアニン類LB膜1が累積さ
れている。このセンサは、熱電対7を有するブロックヒ
ーター6上に設置されている。
【0076】このガスセンサにおいて、フタロシアニン
類LB膜1を構成する分子中、疎水性基置換体としては
テトラ(ターシャリブチル)フタロシアニン(ttbP
c)又はその銅錯体(ttbCuPc)(和光純薬工業
社製)、或いはオクタ(ブトキシ)ナフタロシアニン
(obNc)又はその銅錯体(obCuNc)(Aldric
h Chemical Co.社製)が使用された。また、親水性基置
換体としてはテトラ(ジメチルアミノエトキシ)フタロ
シアニン(tdaPc)又はその銅錯体(tdaCuP
c)が合成され、使用された。
【0077】これらのttbPc、obNcおよびその
銅錯体は、tdaPcおよびその銅錯体と各々適切なモ
ル比(0.1〜10)で混合され、その混合ベンゼン溶液(1
mg/ml)が単分子膜の形成に使用された。純水上(17℃)
に形成された各単分子膜は、石英基板4上に形成された
くし形交互金電極2、3上にいずれも20mN/mと一定表面
圧下で垂直上下法によりZ−type的(累積比:上昇
時 1.2〜0.9 、下降時0.4〜0.1)に累積することが可能
であった。なお、obNcおよびその銅錯体は単独では
展開性が不良であり、単分子膜を形成することは極めて
困難であり、ttbPcおよびその銅錯体も上記混合法
により、単独展開よりも著しく改善された単分子膜のL
B膜形成能が付与された。一方、tdaPcおよびその
銅錯体単独では、過度に与えられた極性のために水面上
への脱離傾向を示し、1層以上の多層膜化は困難となる
ことがあった。
【0078】こうして作製されたガスセンサを用いて、
温度制御下にその暗電流値が測定された。用いた印加電
圧は1Vであり、系は2l/min の乾燥空気を基準ガスと
した流通系によって各種濃度の被験ガスに暴露された。
【0079】図10には、乾燥空気雰囲気下におけるtt
bCuPc/tdaCuPc(モル比1:1)混合LB
膜(21層)の加熱時の導電率変化を示す。
【0080】これによれば、1℃/minの速度での加熱試
験(25℃〜100 ℃)において、温度上昇に伴って暗電流
値は増大し、薄膜の半導体性が示唆される結果となって
いる。また、温度上昇時の暗電流値変化には変異点的な
ものは認められず、加熱時に系内での熱分解、あるいは
相転移的な現象が生じないことも示唆される。
【0081】一方、比較のために測定されたテトラ(ク
ミルフェノキシ)銅フタロシアニン(tcpCuPc)
/ステアリルアルコール(StOH)(モル比1:1)
混合LB膜(21層)(IEEE Trans. Electron Devices.,
32 (1985) 1170.に基づいて製膜)は、温度上昇に伴っ
て、暗電流値の増大傾向は同様であったが、約53℃付近
に、製膜のために混合された脂肪酸類であるステアリル
アルコールの融解に由来する変異点が認められる。これ
は明らかに、加熱処理による膜構造破壊の結果であり、
系に熱的不安定要素を含む脂肪酸類混合フタロシアニン
類LB膜等は非可逆吸着ガス種に対する加熱強制排出処
理の適用が不適当な熱不安定フタロシアニン類LB膜で
あることがわかる。
【0082】なお、tcpCuPc/StOH混合LB
膜は一度の加熱処理に対してその導電性を著しく減少さ
せ、加熱処理前には存在した二酸化窒素に対する応答性
も消失させたが、ttbCuPc/tdaCuPc混合
LB膜は繰り返しの加熱に対してもその導電性、ガス応
答性に変化はなく、また、一定高温下での放置に対して
も安定性を示した。
【0083】次に、obCuNc/tdaCuPc(モ
ル比7:3)混合LB膜(5層)の25℃、および 150℃
下での二酸化窒素(0.5ppm)暴露に対する暗電流値変化
のプロファイルを図11に示す。
【0084】これによれば、系に熱不安定要素を有さな
いobCuNc/tdaCuPc混合LB膜もまた熱安
定なLB膜であり、高温下においても安定性を示すこと
が可能であった。常温下(25℃)での薄膜から得られる
暗電流値は二酸化窒素暴露によって増大し、p性である
フタロシアニン系有機半導体薄膜に電子受容性ガスであ
る二酸化窒素が吸着、電荷分離したことによるキャリア
としてのホールの増大が示唆される結果となっている。
【0085】但し、基準ガスである乾燥空気により置換
を行っても、常温におけるその初期暗電流値への回復性
は遅く、常温においては二酸化窒素の不可逆吸着性が大
きいことが分かる。一方、 150℃下では、熱励起のため
初期暗電流値そのものが25℃以下のそれよりも約100 倍
程度増大されており、より測定容易な系を与えると共
に、そのガス応答は維持され続け、常温よりも変化率は
小さくなるものの二酸化窒素暴露に対してその暗電流値
は増大し、また、乾燥空気置換による初期値回復性は、
不可逆吸着ガス種が加熱強制排出されるため、常温下の
それよりも明らかに改善された結果となっている。
【0086】フタロシアニン分子骨格よりも共役系が延
長されたナフタロシアニン分子骨格を含むobNc又は
obCuNcを構成分子とする混合LB膜は、ttbP
c又はttbCuPcを構成分子とする混合LB膜より
も導電性が高く、より薄い膜厚(層数)でガスセンサ素
子を作製することが可能であった。
【0087】一方、同一層数での初期値回復性はttb
Pc又はttbCuPcを構成分子とする混合LB膜の
方が優れていた。これは、ブトキシ基よりもかさ高いタ
ーシャリブチル基で置換されたttbPc又はttbC
uPcがガス透過性を高め、ガス種の脱離をより容易に
しているためと考えられる。従って、ttbPc又はt
tbCuPcを用いることにより、よりわずかな加熱で
可逆性のあるガスセンサ素子を作製することが可能であ
った。
【0088】図12には、75℃下でのttbPc/tda
Pc(モル比1:1)混合LB膜(11層)の各種濃度の
二酸化窒素に対する暗電流値変化のプロファイルを示
す。
【0089】加熱下において素子は、図11に示したob
CuNc/tdaCuPc混合LB膜と同様に改善され
た初期値回復性を示すことが可能であり、そのための加
熱温度はobNc又はobCuNcを構成分子とする混
合LB膜の場合よりも低温とすることができた。
【0090】ガス暴露に対する電流変化率には濃度依存
性があり、高濃度側で飽和傾向を示すものの、図13に示
すように検量線を作製することも可能であり、熱安定フ
タロシアニン類LB膜を適当な温度に加熱するとき、可
逆性のある二酸化窒素ガスセンサが得られることが示唆
された。
【0091】なお、使用されたフタロシアニン類から得
られるLB膜はいずれも、窒素酸化物に高選択性であ
り、例えば75℃下においてttbPc/tdaPc(モ
ル比1:1)混合LB膜(11層)は、濃度1ppm の二酸
化窒素に対してその暗電流値を約4000倍も増大させる
が、同濃度の硫化水素、メタン、アンモニアガス等に対
してはせいぜい数パーセントの変化しか示さない。
【0092】なお、用いるフタロシアニンLB膜のガス
種に対する応答性は膜厚に依存し、累積層数を変化させ
ることによって良好な応答特性を持つガスセンサ素子を
得ることが可能である。また、使用するフタロシアニン
類の置換基等の変化によってもその応答性は改善されう
る。
【0093】また、ガス接触後に、上記した加熱強制排
出処理に代えて、紫外光(例えば波長域 320〜395nm)を
照射すると、図14に示すように急激な導電率の回復がみ
られる。これは、素子クリーニングとして十分満足でき
る結果である。
【0094】但し、紫外光(例えば波長域 320〜395nm)
は高いエネルギーを持つ光であるため、この光を照射す
ることにより、膜を形成する分子の分解や膜構造(及び
この構造に由来する特性)の破壊を引き起こさないこと
を要するが、フタロシアニン自体は耐光性に優れた塗料
として使用されるなど、一般に光によって劣化しにくい
ことが知られており、この薄膜素子も光によって劣化し
ない(劣化しにくい)。従って、紫外光を用いたクリー
ニングは有効であり、かつガスセンサとして反復利用も
可能にできる手段であると考える。
【0095】以上に述べたように、本発明に基づくLB
膜を用いれば、加熱下においても十分安定なフタロシア
ニン類又はナフタロシアニン類LB膜を得ることが可能
であり、ガス種の不可逆吸着を抑制し、初期値回復性が
良好な、窒素酸化物に選択的高感度であるガスセンサ素
子を作製することが可能である。
【0096】
【発明の作用効果】本発明は、上述した如く、分子内の
周辺部に親水性基を有する第1の分子(特にフタロシア
ニン系)と、この第1の分子と基本骨格が同じでありか
つ分子内の周辺部に疎水性基を有する第2の分子(特に
フタロシアニン系)とが会合してなる両親媒性会合体膜
(特にLB膜)に係るものであるから、この両親媒性会
合体膜は、この膜を形成する上記の第1の分子と第2の
分子とは基本骨格が同じであり、それぞれの分子内に親
水性基と疎水性基を有したものであり、従来のように複
雑な非対称置換体を合成することなく、また、脂肪酸等
の混合系を用いることもなく、種々のLB膜を再現性よ
く簡便に得ることができる。
【0097】また、得られたLB膜は基本骨格の同じ分
子の混合物であるため、その相互間の相互作用を有効に
生ぜしめる安定したものであり、近赤外吸収色素薄膜、
有機光導電性薄膜、においやガスセンサ用感応薄膜な
ど、光電子物性等を示す物理的機能膜又は素子として、
特にフタロシアニン類分子集合体薄膜に期待される種々
の機能を発現することが可能である。
【0098】また、本発明は、上記の両親媒性会合体膜
を製造するために、上記の第1の分子と第2の分子とを
混合し、この混合物を水面等の液面上に展開し、前記第
1の分子と前記第2の分子とを会合させて両親媒性会合
体膜(特にLB膜)を得るようにしているので、両親媒
性会合体の形成が促され、液面上での分子の凝集などが
抑制され、結果として良好な単分子膜を得ることが可能
となる。得られる単分子膜は、系全体として親疎水性バ
ランスや粘性等が改善されたものとなり、ガラス、石
英、金属等の種々の基体上にLB膜として累積が可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に基づいて親水性基及び疎水性基
をそれぞれ有する2種類の置換フタロシアニン類の溶液
を水面上に展開して両親媒性会合体の単分子膜を形成し
た状態を示す概略図である。
【図2】同両親媒性会合体を基板上に膜状に付着させる
ときの操作を順次示す概略図である。
【図3】tcpCuPc、tdaCuPcの各単独の単
分子膜、及びこれら両者のモル比1:1の混合単分子膜
がそれぞれ与える表面圧−面積曲線図である。
【図4】tcpCuPc、obCuPc、obCuNc
それぞれとtdaCuPcとの混合LB膜(各21層)
が示す透過吸収スペクトル図である。
【図5】tcpCuPc、obCuPc、obCuN
c、tdaCuPcそれぞれのベンゼン溶液(3×10-6
M)が示す透過吸収スペクトル図である。
【図6】obCuNc/tdaCuPc(モル比7:
3)の混合LB膜が示すλmax(872nm)における吸光度と
累積層数との関係を示す特性図である。
【図7】ttbCuPc/tdaCuPc(モル比1:
1)の混合LB膜(11層)が示す光電流の特性図であ
る。
【図8】(a)はobCuNc/tdaCuPc(モル
比7:3)の混合LB膜(11層)が示す二酸化窒素
(1ppm)接触時の50℃下での暗電流変化特性図、(b)
は加熱処理後(120℃、10分間)の(a)のLB膜が再び
示す二酸化窒素(1ppm)接触時の50℃下での暗電流変化
特性図である。
【図9】本発明に基づく両親媒性会合体を使用したガス
センサの概略平面図とそのB−B線概略断面図である。
【図10】ttbCuPc/tdaCuPc(モル比1:
1)混合LB膜(21層)、およびtcpCuPc/St
OH(モル比1:1)混合LB膜(21層)の各々が示す
暗電流値と温度の関係を示す特性図である。
【図11】obCuPc/tdaCuPc(モル比7:
3)混合LB膜(5層)の25℃、150℃下での二酸化窒
素暴露に対する暗電流値変化のプロファイルをそれぞれ
示す特性図である。
【図12】ttbPc/tdaPc(モル比1:1)混合
LB膜(11層)の75℃下での二酸化窒素(0.1、0.5 、1.
0 、5.0ppm)暴露に対する暗電流値変化のプロファイル
をそれぞれ示す特性図である。
【図13】ttbPc/tdaPc(モル比1:1)混合
LB膜(11層)の75℃下での暗電流変化率と二酸化窒素
濃度との関係を示す特性図である。
【図14】光照射によるLB膜の導電率の回復を示す特性
図である。
【符号の説明】
1・・・フタロシアニン類LB膜 2、3・・・電極 4・・・絶縁基板 5・・・電流計 6・・・ヒーター 7・・・熱電対
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09K 3/00 105 C09K 3/00 105 G03G 5/00 101 G03G 5/00 101

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子内の周辺部に親水性基を有する第1
    の分子と、この第1の分子と基本骨格が同じでありかつ
    分子内の周辺部に疎水性基を有する第2の分子とが会合
    してなる両親媒性会合体膜。
  2. 【請求項2】 第1の分子が分子内の周辺部に親水性置
    換基を有し、有機溶媒に可溶な置換フタロシアニン類及
    び/又は置換ナフタロシアニン類を主体とし、第2の分
    子が分子内の周辺部に疎水性置換基を有し、有機溶媒に
    可溶な置換フタロシアニン類及び/又は置換ナフタロシ
    アニン類を主体とする、請求項1に記載した両親媒性会
    合体膜。
  3. 【請求項3】 親水性基がジアルキルアミノアルコキシ
    基、ヒドロキシアルコキシ基又はカルボキシ炭化水素オ
    キシ基であり、疎水性基がアルキル基又は炭化水素基置
    換若しくは非置換の炭化水素オキシ基である、請求項1
    又は2に記載した両親媒性会合体膜。
  4. 【請求項4】 両親媒性会合体膜における第1の分子と
    第2の分子との混合比がモル比で1: 0.1〜1:10であ
    る、請求項1〜3のいずれか1項に記載した両親媒性会
    合体膜。
  5. 【請求項5】 第1の分子と第2の分子とがラングミュ
    ア・ブロジェット膜を形成している、請求項1〜4のい
    ずれか1項に記載した両親媒性会合体膜。
  6. 【請求項6】 分子内の周辺部に親水性基を有する第1
    の分子と、この第1の分子と基本骨格が同じでありかつ
    分子内の周辺部に疎水性基を有する第2の分子とを混合
    する工程と;この混合物を液面上に展開し、前記第1の
    分子と前記第2の分子とを会合させて両親媒性会合体を
    得る工程と;を有する両親媒性会合体膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 第1の分子と第2の分子との混合物を水
    面上に展開する、請求項6に記載した製造方法。
  8. 【請求項8】 液面上に生成した両親媒性会合体を垂直
    上下法又は水平付着法によって基体上にラングミュア・
    ブロジェット膜として付着させ、両親媒性会合体膜を得
    る、請求項6又は7に記載した製造方法。
  9. 【請求項9】 第1の分子として、分子内の周辺部に親
    水性置換基を有し、有機溶媒に可溶な置換フタロシアニ
    ン類及び/又は置換ナフタロシアニン類を主体に使用
    し、第2の分子として、分子内の周辺部に疎水性置換基
    を有し、有機溶媒に可溶な置換フタロシアニン類及び/
    又は置換ナフタロシアニン類を主体に使用する、請求項
    6〜8のいずれか1項に記載した製造方法。
  10. 【請求項10】 親水性基として、ジアルキルアミノアル
    コキシ基、ヒドロキシアルコキシ基又はカルボキシ炭化
    水素オキシ基を導入し、疎水性基として、アルキル基又
    は炭化水素基置換若しくは非置換の炭化水素オキシ基を
    導入する、請求項6〜9のいずれか1項に記載した製造
    方法。
  11. 【請求項11】 両親媒性会合体膜における第1の分子と
    第2の分子との混合比をモル比で1: 0.1〜1:10とす
    る、請求項6〜10のいずれか1項に記載した製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜5のいずれか1項に記載した
    両親媒性会合体膜を主体とする物理的機能膜又は素子。
  13. 【請求項13】 両親媒性会合体膜が有機光導電性薄膜、
    近赤外吸収色素薄膜又はガス若しくはにおいセンサ用感
    応薄膜として機能する、請求項12に記載した物理的機能
    膜又は素子。
  14. 【請求項14】 窒素酸化物に選択的に高感度を示すガス
    センサ素子として機能する、請求項13に記載した物理的
    機能膜又は素子。
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