JP4097181B2 - 化学センサ、化学センサの作製方法及び検体検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微粒子膜を有する化学センサ、化学センサの作製方法、及び化学センサを用いた検体検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境中の汚染物質に対して関心が高まっており、特定の化学種を検出するためのモニタリング方法及び/又は分析方法の改善が求められている。従来の分析技術は、種々の物質について、ppb若しくはそれ以下の低いレベルで検出することができるものの、このような分析技術では、一般に、現場で試料を採取し、試料を実験室に運び、例えばガスクロマトグラフィや質量分析等によって試料を分析する必要がある。このため、分析には精密機器が必要とされ、また、一般に最終結果が分かるまでに数日かかる。したがって、従来の分析技術では、汚染物質の存在についてリアルタイムの情報を得ることは困難である。
【0003】
このような分析技術の制約を解決するため、より迅速にフィードバック情報が得られる化学センサの研究開発が行われてきた。
【0004】
なお、例えば食品製造における品質管理や医学的な治療に際しても、検体のリアルタイムのモニタリングが必要とされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、有機物質によって被覆されたナノメートルサイズの導電性微粒子を用いた新型のセンサが開発されている。この導電性微粒子は、絶縁体の薄層によって分離されている。このような微粒子膜の電気抵抗は、化学種の存在によって変化する。したがって、このような微粒子膜を一対の接触電極上に付着させることによって、化学抵抗器として用いることができる。
【0006】
例えば、Lonerganらは、化学物質に対して感度のあるカーボンブラック/有機ポリマ抵抗器について報告している(M.C.Lonergan et al, Chem. Mater., 1996, 8, 2298-2312)。この抵抗器に用いられるカーボンブラックと有機ポリマとにより構成される複合物は、蒸気に曝されると可逆的に膨張する性質を有する。
【0007】
化学センサを得るには、カーボンブラック/有機ポリマ複合物の薄膜に2本の金属リード線を取り付ける。検体の蒸気を吸収することによって膜が膨潤すると、膜の抵抗値が変化し、検体の存在が示される。
【0008】
また、上記センサ素子の列(センサ列)を構成することにより、検体蒸気を識別し分類することができる。ここで、各素子は、何れもカーボンブラックからなる導電相を有するが、絶縁相には異なる有機ポリマが用いられる。
【0009】
センサ列に用いられる種々のポリマは、気体/固体分配係数が互いに異なるため、抵抗変化のパターンに違いが生じ、検体蒸気やその混合物を分類する際に用いることができる。この種のセンサ列によれば、例えばトルエン中のベンゼンを検出したり、エタノール中のメタノールを検出する等、特定の種類の有機溶媒を検出できるだけではなく、アルコール中から芳香族を検出する等、異なる種類の分子を含む一般的な有機溶媒をも検出することができる(B.J.Doleman et al., Anal.Chem. 1998, 70, 4177- 4190)。
【0010】
また、Sotzingらは、生物起源のアミンを高感度に検出することができるカーボンブラック/ポリアニリン抵抗器について報告している(G.A.Sotzing et al., Chem. Mater., 2000, 12, 593-595)。ここで、カーボンブラック/ポリアニリン複合物のポリマ相には、導電性ポリアニリンが用いられる。
【0011】
この複合物のポリマ相に臭気剤が吸着すると、抵抗器の直流電気抵抗が大きくなり、これにより検体の存在が示される。なお、臭気剤としてブチルアミンを用いた場合の抵抗器の反応は、水、アセトン、メタノール、エチルアセテート若しくはブタノールを用いた場合の反応と比較して約6倍大きい。
【0012】
また、Evansらは、金微粒子を固定化するのにパラ置換チオフェノール誘導体を用いる手法を提案している(S.D.Evans et al., J.Mater.Chem., 2000, 8, 183-188)。置換基の性質によって粒子/粒子相互作用や粒子/溶媒相互作用の相対強度が変わるため、この性質は、これらのシステムの物理特性や化学特性を決定するのに重要である。
【0013】
この手法では、微小電極の表面に溶媒を蒸着させることにより微粒子薄膜を形成する。なお、この薄膜の室温での導電率は、10−6〜10−2(Ω−1cm−1)である。この薄膜の種々の化合物が曝されると、導電率が変化する。しかし、極性溶媒の蒸気に対する反応は、高い再現性を示すものの、非極性の有機物質を検体として用いた場合の反応は、再現性が低く、時間によって異なる反応を示す。
【0014】
また、ω官能基の性質に応じて、蒸気となっている検体に対して異なる伝導度測定及び楕円偏光解析反応が示される。
【0015】
なお、この手法において、金微粒子は、リンカー分子によって相互結合しているのではない。
【0016】
ここで、WO96/07487号の明細書及び図面には、微粒子薄膜を高精度に製造する技術が記載されている。ここで、その薄膜は、2官能性リンカー分子によって結合された金微粒子からなる。薄膜を構成するには、先ず、基板を2官能性リンカー分子で処理して、リンカー分子の第1の反応基を基板と反応させて基板に結合させる。例えば、ガラス基板を使用する場合には、メルカプトアルキルシランをリンカー分子として用いることができる。これにより、基板の表面がチオール基で覆われる。
【0017】
次に、基板を金微粒子の溶液に浸漬させ、基板表面のチオール基に微粒子を結合させる。これにより、基板表面が金微粒子層で覆われる。その後、基板をアルキルジチオールの溶液に浸漬させる。このアルキルジチオールは、2官能性リンカー分子として働き、チオール基の一方が金粒子の表面に結合する。
【0018】
この金微粒子溶液の浸漬ステップと2官能性リンカー分子溶液の浸漬ステップとを繰り返すことによって、構成要素の自己組織化により薄膜を形成することができる。
【0019】
なお、リンカー分子は、直鎖状又は分岐を有する脂肪族からなる炭化水素骨格を有するものであり、リンカー分子の電子的性質を改良するために、多重結合又は他の基を含むものであってもよい。実施例では、1,9−ノナンジチオールがリンカー分子として用いられている。この薄膜は、例えば塩素又はオゾン等の酸化剤を検出するセンサとしての使用が提案されている。
【0020】
また、Wohltjen及びSnowは、単層固定型金属ナノクラスタ・トランス膜に基づくコロイド状金属−絶縁体−金属の化学センサを提案している(H.Wohltjen and A.W.Snow, Anal.Chem., 1998, 70, 2858-2859)。トランス薄膜は、オクタンチオール単層に封入された2nmの金クラスタからなり、エアブラシ技術により櫛型微小電極上に形成される。有機系の検体蒸気に曝されると、可逆的な反応が見られる。なお、この化学センサは、例えばトルエンやテトラクロロエチレン等の非極性化合物に対しては高感度であるが、1−プロパノールや水に対しては殆ど反応しない。
【0021】
また、WO99/27357号の明細書及び図面には、微粒子膜を堆積させることによる化学センサの製造方法について、さらに詳細に説明されている。
【0022】
この技術では、先ずメルカプトアルキルシランを基板に結合させることによって、微粒子の結合部位を設ける。そして、その基板を、アルキルチオールの薄いシェルによって固定化された金微粒子を含む溶液に浸漬させる。これにより、基板表面のチオール基は、金微粒子表面に結合したアルキルチオールリガンドの一部と置換され、基板表面に微粒子が結合する。続いて、金微粒子とリンカー分子とを交互に堆積させることにより、薄膜を構成する。
【0023】
実施例としては、1,8−オクタンジチオールがリンカー分子として用いられている。しかし、特定の検体と選択的に相互作用させるためにリンカー分子を官能化することについては記載されていない。
【0024】
また、この技術においては、センサの感度を変えるためにリガンドシェルに異なった官能基を導入することが提案されている。これにより、リガンド分子は、2官能性となり、一方の官能基が金属コア表面で結合するとともに、他方の官能基が目標種の吸着に適した相互作用部位となる。なお、種々の官能基を使用することにより、化学センサの選択性を変えることができる。さらに、微粒子の大きさやリガンドシェルの厚さによっても化学感度が変化する。この化学センサは、トルエンに対して最も感度が高く、プロパノールや水等の極性検体に対しては感度が低かった。
【0025】
また、WO00/00808号の明細書及び図面には、流体中の検体を検出するセンサ列について記載されている。これらのセンサ列は、複数の異なる組成のセンサにより構成されている。ここで、センサは、例えば有機ポリマ等の非導電材料の基質に導電材料が埋め込まれたものである。導電材料としては、コアに結合したリガンド分子により任意に固定化される微粒子を用いることができる。また、リガンド分子は、多同質官能化(polyhomofunctionalized)又は多異質官能化(polyheterofunctionalized)されていてもよい。絶縁材料としては、有機ポリマを用いるのが好ましい。さらに、このセンサ列には、単一絶縁基質としてアルキルチオールリガンドを用いることができる。
【0026】
また、仏国特許第2783051号には、さらに別の化学センサについて記載されている。この化学センサは、微粒子膜を有し、少なくとも1つの官能基を用いて微粒子表面に結合するとともに、少なくとも1つの官能基を用いて検体分子と相互作用するようなリガンド分子によって、微粒子が固定化されている。
【0027】
上述した化学センサによって良好な結果が得られているが、検出する検体に対する選択性をさらに改善する必要があるのみならず、例えば信号安定性やベースライン安定性等のセンサ性能の安定性を改善する必要がある。
【0028】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、検体に対して高い選択性を有し、また、高い動作安定性を有する化学センサ、化学センサの作製方法、及び化学センサを用いた検体検出方法を提供することを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明に係る化学センサは、基板と、上記基板上に形成された微粒子膜と、上記微粒子膜の物理特性の変化を検出する検出手段とにより構成され、上記微粒子膜が、微粒子表面に結合できる少なくとも2つのリンカーユニットと、検体分子を可逆的に結合するための結合部位を有し、前記リンカーユニットとは異なる少なくとも1つの選択ユニットとを有するリンカー分子によって相互結合された微粒子により形成された微粒子ネットワークを有することを特徴とするものである。
【0030】
このような化学センサは、リンカー分子のリンカーユニットによって微粒子が相互結合されて微粒子ネットワークが形成されており、選択ユニットによって、検体分子と可逆的に結合する。
【0031】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る化学センサの作製方法は、請求項1〜21のいずれか1項記載の化学センサを作製する化学センサの作製方法であって、基板表面上に結合基を設けるために基板を官能化する工程と、当該官能化された基板表面上に微粒子層を堆積させる工程と、上記微粒子層上に2官能性若しくは多官能性のリンカー分子を堆積させて、当該リンカー分子を微粒子に結合させる工程と、さらに上記微粒子層を堆積させ、それを上記リンカー分子により第1の層の微粒子と結合させる工程と、均質な膜が得られるまで上記微粒子層と上記リンカー分子とを交互に堆積させる工程とを有することを特徴とするものである。
【0032】
このような化学センサの作製方法では、基板状に微粒子層とリンカー分子とを交互に各層毎に堆積させることによって、均質な微粒子膜を形成する。
【0033】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る検体検出方法は、請求項1〜21のいずれか1項記載の化学センサを検体に曝し、検出手段によって微粒子膜の物理特性の変化を測定することを特徴とするものである。
【0034】
ここで、上記物理特性の変化は、伝導度、誘電率、反射率、ルミネセンス、吸光度、質量、体積、密度及び/又は熱容量の変化である。
【0035】
このような検体検出方法では、本発明に係る化学センサを検体に曝して微粒子膜の物理特性の変化を測定することによって、検体の存在が高感度に検出される。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、リンカー分子を介して所定の粒子を相互に結合することによって基板上に形成された微粒子膜を用いて、検体分子を検出する化学センサについて説明するものである。また、その化学センサの作製方法とその化学センサを用いた検体検出方法についても、併せて説明する。
【0037】
ここで、微粒子は、少なくとも1次元方向の最大粒径が0.4nm乃至数100nmである種々の形状の粒子である。
【0038】
従来、空間中の3次元方向全てがほぼ同じ粒径である微粒子のみならず、空間中の1次元方向が特に大きい粒径であるナノワイヤ、ナノファイバ及びナノチューブ、そして空間中の2次元方向が特に大きい粒径であるナノシート等が知られている。本実施の形態では、これらの何れをも化学センサの作製に際して用いることができ、以下では、これらを総称して微粒子と記載する。なお、この微粒子の作製方法については、多数の文献に記載されており、当業者にはよく知られているものである。
【0039】
この微粒子は、リンカー分子により相互結合される。詳しくは後述するが、リンカー分子は、分子骨格鎖を有しており、少なくとも2官能性を有する。すなわち、リンカー分子は、微粒子の表面に結合する少なくとも2つのリンカーユニットを有する。ここで、リンカーユニットと微粒子とは、例えば共有結合、錯体生成、イオン相互作用又は双極子相互作用によって結合される。この結合は、微粒子ネットワークが確実に形成されるように十分な強度が必要とされる。リンカーユニットは、隣接した微粒子の表面に結合し、微粒子が相互結合して微粒子ネットワークが形成される。このような微粒子の相互結合により、化学センサの機械特性が改善され、ベースラインの変動、信号のゆらぎ、或いは例えば液体溶媒中で化学センサを用いる場合等の機械的劣化といった問題が緩和される。
【0040】
先ず、微粒子と相互結合することによって微粒子ネットワークを形成するリンカー分子の一般的な構成を図1に示す。なお、図1では、検体分子との選択的な相互作用を可能にする選択ユニットについては、図示を省略しているが、リンカー分子10は、少なくとも1つの選択ユニットを有するものである。この選択ユニットは、分子構造に基づいて、骨格鎖、接合部及び/又は分岐等の何れかの部分に配置することができる。
【0041】
リンカー分子10の最も単純な概念構成を図1(A)に示す。リンカー分子10は、分子骨格鎖11を有し、この分子骨格鎖11の両端にはリンカーユニット12が配置される。リンカー分子10は、このリンカーユニット12が微粒子30の表面に結合することによって微粒子30と相互結合し、微粒子ネットワークを形成する。なお、図1(A)に示すリンカー分子10は、2官能性である。
【0042】
2官能性に限らず、多官能性のリンカー分子10であっても微粒子30と相互結合することができる。このような多官能性のリンカー分子10の一例を図1(B)に示す。図1(B)に示すように、リンカー分子10の分子骨格鎖11は、分岐13を有し、この分岐13の末端にもリンカーユニット12が配置されている。ここで、分子骨格鎖11は、リンカーユニット12と相互結合した2つの微粒子30間の最も長い構造部分として形成するのが好ましい。このような多官能性のリンカー分子10は、複数のリンカーユニット12によって微粒子30の表面に結合することができるため、微粒子30との結合が強固なものとなる。また、複数の微粒子30と結合することができるため、リンカー分子10の安定性が向上する。
【0043】
また、リンカーユニット12は、末端基に限らず、分子骨格鎖11内に組み込まれていてもよい。この場合、図1(C)に示すように、分子骨格鎖11の分岐の末端には、リンカーユニット12が配置されず、懸垂(dangling)分岐14が形成される。また、全ての分岐の末端にリンカーユニット12が配置される必要はなく、微粒子30を結合していない懸垂分岐15を形成することもできる。
【0044】
続いて、上述した選択ユニット等を含めたリンカー分子10の概念構成について図2(A)〜(D)を用いて説明する。ここで、選択ユニット16は、上述したように、検体分子40と選択的に相互作用するユニットであり、検体分子40に対して可逆的に結合若しくは配位する。つまり、選択ユニット16と検体分子40との間では、共有結合を形成しないことが好ましい。但し、結合は、選択性を十分に高めるのに必要なだけ強くなければならない。
【0045】
検体分子40が選択ユニット16と共有結合を形成した場合、化学センサの感受性膜が不可逆的に変化してしまい、化学センサは、1度しか検体分子40の検出に使用することができない。したがって、より幅広い適用性を得るために、選択ユニット16に対して検体分子40が可逆的に結合することが好ましい。
【0046】
図2(A)では、分子骨格鎖11は、選択ユニット16のみを有し、これに検体分子40が結合している。一方、図2(B)〜(D)では、さらに調整ユニット17を有しており、検体分子40のための第2の相互作用部位を形成することで、検体分子40と選択ユニット16との間の相互作用を調整している。なお、選択ユニット16と調整ユニット17とは、指示ユニット18を介して接続される。
【0047】
リンカー分子10内の選択ユニット16及び調整ユニット17の配置方法は、種々考えられ、例えば図2(B)に示すように、調整ユニット17を分子骨格鎖11の分岐の末端に配置することができる。また、図2(C)に示すように、調整ユニット17を分子骨格鎖11に組み込むことも可能である。さらに、図2(D)に示すように、調整ユニット17を分子骨格鎖11の分岐19に組み込むことも可能である。
【0048】
ここで、本実施の形態におけるリンカー分子10の概念構成の一例を図3(A)に示す。図3(A)に示すように、リンカー分子10は、2つの微粒子30と相互結合するための2つのリンカーユニット12、及び目的の検体分子40と選択的に相互作用するための1つの選択ユニット16を有する。この2つのリンカーユニット12は、分子骨格鎖11の両端に位置する官能基であり、接続ユニット20を介して選択ユニット16と接続されている。
【0049】
この図3(A)に対応するリンカー分子10の具体例を図3(B)に示す。ここで、リンカーユニット12は、チオール基であり、例えばAu、Ag、Pt等の種々の金属微粒子や、CdSe、CdTd等の種々の半導体微粒子に結合することができる。
【0050】
また、選択ユニット16は、2級アミン基であり、このアミン基によって分子構造に永久双極子モーメントが導入される。さらに、このアミン基は、水素結合の際に塩基として作用する。したがって、この選択ユニット16によれば、極性を有する検体分子40、特に水素結合の際に酸として作用できる検体分子40に対して選択性を示すようになる。
【0051】
また、チオール基とアミン基とを結合する接続ユニット20は、−CH2−CH2−のフラグメントによって形成される。
【0052】
次に、1つの選択ユニット16を含むリンカー分子10の概念構成を図4(A)に示す。ここで、選択ユニット16は、上述した図3(A)の構造とは異なり、分子骨格鎖11の一部を形成しておらず、分子骨格鎖11に結合している。
【0053】
この図4(A)に対応するリンカー分子10の具体例を、図4(B)に示す。ここで、選択ユニット16は、ヒドロキシル基によって形成されているため、水素結合を形成できる極性を有する検体分子40に対して選択性を示す。しかし、図3(B)とは対照的に、ヒドロキシル基は、アミン基の塩基性を有しているわけではない。
【0054】
また、図4(B)において分子骨格鎖11は、ペンチレン鎖であり、リンカーユニット12であるチオール基が両端に配置されている。
【0055】
続いて、2つの選択ユニット16が分子骨格鎖11に組み込まれたリンカー分子10の概念構成を図5(A)に示す。図5(A)に示すように、リンカーユニット12は、接続ユニット20を介してリンカー分子10の両端に配置されている。
【0056】
この図5(A)に対応するリンカー分子10の具体例を、図5(B)に示す。分子骨格鎖11は、ブチレン基(−(CH2)4−)で形成されており、選択ユニット16として機能するアミド基の窒素原子にその両端が接続されている。この選択ユニット16は、双極子モーメントを有しており、容易に水素結合を形成する。したがって、この選択ユニット16によれば、極性の親水性物質に対して選択性を示すようになる。
【0057】
また、図5(B)において、選択ユニット16のカルボニル炭素原子は、接続ユニット20として機能するメチレン基(−CH2−)を介してリンカーユニット12に接続されている。
【0058】
続いて、上述の構造を拡張したリンカー分子10の概念構成を図6(A)に示す。図6(A)に示すように、調整ユニット17は、2つの選択ユニット16の間に挿入されている。また、この選択ユニット16は、指示ユニット18を介して調整ユニット17と接続されている。
【0059】
この図6(A)に対応したリンカー分子10の具体例を、図6(B)に示す。ここで、調整ユニット17は、指示ユニット18に組み込まれた窒素原子である。この調整ユニット17(=N−)は、非常に強い塩基性を示し、さらなる双極子モーメントを生じる。したがって、この調整ユニット17によれば、極性検体、酸性検体又はイオン性検体に対して選択性を示すようになる。また、調整ユニット17と指示ユニット18とは、2,6-置換ピリジン環を形成している。
【0060】
図6(B)において、選択ユニット16を形成する置換基は、2つのアミド基である。これらは、カルボニル炭素原子によりピリジン環に接続されている。また、指示ユニット18は、選択ユニット16の近傍に調整ユニット17を有している。これにより、例えば金属カチオンの多座配位結合が可能となる。リンカーユニット12は、接続ユニット20である−CH2−CH2−フラグメントを介して、アミド窒素原子と接続されている。
【0061】
続いて、4つの調整ユニット17が中央の指示ユニット18に接続されているリンカー分子の概念構成を図7(A)に示す。また、この図7(A)に対応したリンカー分子10の具体例を、図7(B)に示す。
【0062】
ここで、図7(B)に示すように、指示ユニット18は、置換ベンゼン環であり、選択ユニット16と調整ユニット17とを接近させる。環構造の1,4−位には、窒素原子を介して選択ユニット16である2つのアミド基が結合されている。また、環構造の2,3−位及び5,6−位には、調整ユニット17を形成する置換基X1〜X4が結合されている。これらの置換基X1〜X4は、例えば水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又は例えば−NH2、−OH等の官能基である。ここで、置換基が例えば分岐アルキル残基のような、かさ高いアルキル基である場合、立体障害により検体分子40が選択ユニット16に近付くことが困難となる。このため、立体障害の少ない小さな検体に対して選択性を示すようになる。また、置換基がアミノ基又はヒドロキシ基等である場合には、リンカー分子10と検体分子40との間の水素結合がさらに強化される。
【0063】
続いて、化学的に異なる基によって形成された4つの選択性強化ユニット16を有するリンカー分子10の概念構成を図8(A)に示す。図8(A)に示すように、リンカー分子10は、化学的に異なる2種の選択ユニット16a及び16bを有する。また、リンカー分子10は、指示ユニット18と調整ユニット17とを有する。
【0064】
この図8(A)に対応したリンカー分子10の具体例を、図8(B)に示す。図8(B)に示すように、この構造は、構成ユニットとして2つのアミノ酸を用いることによって構成することができる。
【0065】
より詳しくは、構造の中心部は、1つのイソロイシン(Ile)ユニット及び1つのアルギニン(Arg)ユニットからなり、これらは、アミド基(ペプチド結合)を形成することによって互いに結合されている。そして、このアミド基によって中心の選択ユニット16aが形成される。
【0066】
アルギニンのカルボン酸基は、さらなるアミド基に変換されて別の選択ユニット16aを形成し、接続ユニット20aであるCH2−CH2−フラグメントを介してリンカーユニット12(チオール基)に接続されている。
【0067】
また、イソロイシンのアミン基は、さらなるアミド基に変換されて別の選択ユニット16aを形成し、別の接続ユニット20aである−CH2−CH2−フラグメントをリンカー分子10に結合させるのに用いられている。なお、この分子の末端は、第2のリンカーユニット12であるチオール基が配置されている。
【0068】
イソロイシンのα炭素原子は、指示ユニット18を形成しており、これに分岐アルキル残基が結合して調整ユニット17を形成している。この調整ユニット17により立体障害が導入され、検体分子40と選択ユニット16との相互作用が調整されている。
【0069】
アルギニン残基は、さらなる選択ユニット16bとして、非常に強い有機塩基であるグアニジン基を含んでいる。このグアニジン基は、容易にプロトン化されてカチオン部分を形成する。したがって、この選択ユニット16bによれば、アニオン若しくはアニオン部分を含む検体分子、又は水素結合を形成できる極性の酸性検体に対して選択性を示すようになる。なお、このグアニジン基は、接続ユニット17bである−(CH2)3−フラグメント及びアルギニンのα炭素原子を介してリンカー分子と結合している。
【0070】
続いて、4つのリンカーユニット12及び6つの選択ユニット16を有するリンカー分子10の概念構成を図9(A)に示す。図9(A)に示すように、リンカー分子10は、対称的な構造を有している。
【0071】
この図9(A)に対応したリンカー分子10の具体例を、図9(B)に示す。図9(B)に示すように、リンカー分子10の中心部は、クラウンエーテル(18−クラウン−8)構造とされており、選択ユニット16である6つのエーテル(−O−)ユニットが金属イオン、特にカリウムイオンと相互作用するように適切に配置されている。なお、接続ユニット20aであるエチレン基によってエーテル酸素原子が相互に結合されている。
【0072】
このクラウンエーテル骨格は、接続ユニット20bである4つのメチレンユニットによって置換されており、メチレンユニットは、リンカーユニット12であるチオール基に接続されている。環状ポリエーテルの例と関連して、別の分子構造ユニット、例えば、−COO−、−(NH−CH2−CH2−NH)−、−(N=CH−CH=N)−、−(S−CH2−CH2−CH2−S)−、−(N=CH−CH=N−CH=CH−N)=、−N(CH2COO−)2、クラウンエーテル、クリプテート、ポルフィリン、フタロシアニン等も金属カチオンを結合するために使用することができる。リンカー分子10に接続された金属カチオンは、それ自体でH2S、NH3、CO、O2、NOx、SOx等の気体のための選択ユニット16として機能することができる。
【0073】
ここで、上述した図3乃至図9では、リンカーユニット12は、全てチオール基であったが、これに限定されないことは勿論である。つまり、リンカーユニット12の機能は、リンカー分子10を少なくとも2つの微粒子30に結合させることによってそれらを相互結合することであるため、各リンカー分子10は、少なくとも2つのリンカーユニット12を含んでいる。そして、これらは、同一の官能基であってもよく、互いに異なる官能基であってもよい。
【0074】
長期間に亘って特性が劣化することなく使用できる化学センサを得るには、微粒子ネットワークが十分な安定性を有している必要がある。このため、リンカーユニット12は、微粒子30の表面に良好に結合するものであることが好ましい。例えば、リンカーユニット12としては、−SR、−SSR、−SO3R、−OSO3R、−NR2、−NHC(NH)−NH2、−NC、−PR2、−P(O)R2、−PO3R2、−OPO3R2、−OH、−COOR、−C(O)H、C(O)NR2、−Si(OR)3、-C(S)SH、及びこれらのイオン形を用いることができる。
【0075】
ここで、Rは、H又は末端若しくは非末端の有機残基である。Rが非末端残基である場合、このRは、接続ユニット20、分子骨格鎖11の部分、又は分子構造の分岐であり、他の官能性ユニット又は構造ユニットに接続できる。なお、官能性ユニット又は構造ユニットが、他の官能性ユニット又は構造ユニットに直接結合している場合、Rは、当該他の官能性ユニット又は構造ユニットを表している。
【0076】
リンカーユニット12のうち、リンカー分子10に結合していない原子価は、水素原子又は例えばメチル基等の1乃至8個の炭素原子を有する小アルキル基を有するようにしてもよい。また、脱プロトン化して、イオンユニットを構成することもできる。また、リンカーユニット12は、アルキレン鎖に組み込むこともできる。
【0077】
また、上述した図3乃至図9では、選択ユニット16として機能する官能性ユニット及び構造ユニットの例を示した。しかし、この例に限定されないことは勿論であり、他の多くの官能性ユニット及び構造ユニットを使用することによっても、リンカー分子10と検体分子40との間の誘引的且つ非共有結合的な相互作用を強化することができる。
【0078】
例えば、選択ユニット16は、荷電されていてもよく、双極子ユニットであってもよい。また、水素結合を形成することができるものであってもよく、分極性の高い電子系を含むものであってもよい。検体分子40と選択ユニット16との間の相互作用は、例えば、2つの荷電基間、荷電基と双極子間、2つの双極子間のクーロン相互作用、又は電荷と誘導双極子間若しくは双極子と誘導双極子間の分極相互作用である。
【0079】
また、誘導双極子/誘導双極子相互作用により、目的の検体分子40と選択ユニット16との間に十分強い相互作用を起こすことができる。但し、本実施の形態の範囲内では、非局在化π電子系を含む分極性の高いユニット以外は、選択ユニット16として使用されない。例えばアルキレン鎖の分極性は非常に弱いため、目的の検体分子40に対する選択性を高めるほどに相互作用が強くない。
【0080】
一例として、荷電ユニット、双極子ユニット、水素結合を形成できるユニット、又は強力な分極性ユニットの例を以下の表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
ここで、表1において、Rは、H又は末端若しくは非末端の有機残基である。Rが、非末端残基である場合、Rは、接続ユニット20、分子骨格鎖11の一部、又は分子構造の分岐であり、他の官能性ユニット又は構造ユニットに接することができる。官能性ユニット又は構造ユニットが他の官能性ユニット又は構造ユニットに直接結合される場合、Rは、当該他の官能性ユニット又は構造ユニットを表す。また、Xは、ハロゲン原子である。
【0083】
また、分極性ユニットとしては、他に、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン等、又は例えば−C=C−C=C−等の共役π−電子系から誘導された芳香族π電子系のユニットを用いることができる。
【0084】
選択ユニット16は、以下に示すユニットから選択されることが好ましい。なお、式中、Xは、ハロゲン原子である。
【0085】
【化3】
【0086】
ここで、例えば −OH、−CN等の1価の基は、リンカー分子10の分子骨格鎖11又は分岐に結合していることが好ましい。
【0087】
また、例えば−S−、−S−S−、−O−、−N=N−等の2価の基は、分子骨格鎖11又は分岐に組み込むこともでき、また、例えば1乃至8個の炭素原子を有する小アルキル基や5乃至10個の炭素原子を有するアリール基が一端に配置されていてもよい。また、水素原子を有することもできる。
【0088】
また、選択ユニット16は、プロトン化又は脱プロトン化して、カチオン基又はアニオン基を形成することができる。その際、選択ユニット16は、直接又は結合ユニット、例えば好ましくは1乃至8個の炭素原子を有するアルキレン基を介して、別の価数を有するリンカーユニット12の分子骨格鎖11に接続される。
【0089】
3価又はそれ以上の価数を有する選択ユニット16は、分子骨格鎖11内の分岐又はリンカー分子10の分岐を形成することもでき、また、例えばメチル基等の1乃至8個の炭素原子を有する小アルキル基や5乃至10個の炭素原子を有するアリール基が一端に配置されていてもよい。また、水素原子を有することもできる。そして、これらの基は、1価及び2価の基と同様に分子骨格鎖11に接続される。
【0090】
なお、上述した基の組合せも可能である。また、選択ユニット16は、複素環基の一部分を構成することもできる。このような基は、例えばピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、フラン、チアゾール等から誘導することができる。また、選択ユニット16は、アミド基であることが好ましい。
【0091】
ところで、選択ユニット16の構造及び化学特性によって、検出する検体分子40の構造及び化学特性が変わる。例えば、目的の検体分子40がカチオン若しくはカチオンユニットを含む場合、選択ユニット16は、電荷−電荷相互作用又は電荷−双極子相互作用が可能な少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。具体的には、選択ユニット16は、アニオンユニット及び/又は双極子ユニットを含むことが好ましい。
【0092】
また、検体が金属イオンである場合には、選択ユニット16は、2座配位性若しくは多座配位性のドナーリガンドとして作用できるユニットであることが特に好ましい。
【0093】
目的の検体分子40がアニオン若しくはアニオンユニットを含む場合、選択ユニット16は、少なくとも1つのカチオンユニット及び/又は双極子ユニットを含むことが好ましい。また、選択ユニット16は、少なくとも1つのドナーリガンドによりリンカー分子10に結合する金属カチオンを含むこともできる。また、選択ユニット16は、金属イオンを結合するための2座配位性又は多座配位性(キレート性)リガンドを含むことが好適である。金属カチオンを含む選択ユニット16は、アニオン検体との相互作用を強化するためだけに有用なわけではない。キレート化金属イオンは、例えばH2S、NH3、CO、O2、NOx、SOx等の気体と強く相互作用するので、このような気体に適したセンサの選択性の強化に特に適している。
【0094】
検体が極性を有する場合、すなわち永久双極子モーメントを有する場合、選択ユニット16は、双極子/双極子相互作用が可能な少なくとも1つの永久双極子モーメント、及び/又は双極子/電荷相互作用が可能な1つの荷電ユニットを含むことが好ましい。
【0095】
また、目的の検体分子40が水素結合を形成するための水素供与基として作用できる場合、選択ユニット16は、水素受容基として作用できる少なくとも1つの双極子ユニットを含むことが好ましい。反対に、目的の検体分子40が水素結合を形成するための水素受容基として作用できる場合、選択ユニット16は、水素供与基として作用できる少なくとも1つのユニットを含むことが好ましい。
【0096】
また、目的の検体分子40が、本質的には非極性であるが、例えば非局在化π電子系等の分極性の構造単位を含んでいる場合、選択ユニット16は、本質的に非極性であり分極性の非局在化π電子系を含むものであることが好ましい。
【0097】
なお、上述の例と同様に、原則として、それらのユニットを互いに接続する、又はそれらのユニットをリンカー分子10に接続する若しくは組み込むには、それらのユニットを、例えば−CR2−、=CR−等の小さな接続ユニット20と組合わせる必要がある。勿論、それらのユニットは、互いに直接接続することもできる。
【0098】
また、例えば金属カチオンが選択ユニット16の一部である場合、イオンは、少なくとも1つのドナーリガンドを介してリンカー分子10と結合される。上述した表1に示した幾つかの官能性ユニット、例えば −S−、−O−、−NR、=N−等は、環状ユニット及び可能であれば芳香族構造ユニットに組み込むことができる。
【0099】
また、上述した図6乃至図8では、調整ユニット17として機能する官能性ユニット及び構造ユニットの例を示したが、この例に限定されないことは勿論である。つまり、調整ユニット17の一般的な機能は、選択ユニット16と検体分子40との間の相互作用を調整、すなわち強化又は緩和することである。これは、検体分子40とリンカー分子10との間にさらなる相互作用、例えば電荷及び永久双極子を含めたクーロン相互作用及び/又は分極相互作用を取り入れることで達成できる。
【0100】
したがって、調整ユニット17は、上述した表1に示す選択ユニット16と同じ官能性ユニット又は構造ユニットによって構成することも可能である。
【0101】
調整ユニット17は、検体分子40と相互作用し、可逆的に結合する。したがって、調整ユニット17と検体分子40との間には、非共有結合的な結合も生じる。
【0102】
なお、調整ユニット17の結合は、選択ユニット16ほど強くなくてもよい。このため、アルキル基間で生じるファンデルワールス力のような弱い相互作用によっても化学センサの選択性を調整することができる。また、その場合、調整ユニット17は、1乃至10個の炭素原子を有するアルキル基であることが好ましい。また、そのアルキル基は、直鎖状であっても分岐していてもよく、置換基を有していてもよい。
【0103】
さらに、調整ユニット17は、立体障害を取り入れることでも調整効果を得ることができる。例えば、非常に小さな検体分子40のみ選択ユニット16と相互作用させる場合、調整ユニット17は、かさ高い有機残基によって立体障害を導入することができる。有機残基としては、例えば分岐アルキル基、ベンジル基若しくは置換ベンジル基等が挙げられ、選択ユニット16の近傍に配置される。しかし、サイズによる排除効果が適切である場合には、この調整ユニット17のサイズを小さくするか、又は選択ユニット16と調整ユニット17との間の距離を長くすることができる。
【0104】
調整ユニット17は、検体分子40と相互作用するためのリンカー分子10の第2の相互作用部位を形成する。ここで、検体分子40とリンカー分子10との間の相互作用は、主として選択ユニット16で起こる。しかし、その近傍において、調整ユニット17は、検体分子40との相互作用を調整する官能性ユニット又は構造ユニットとして機能することができる。このため、リンカー分子10は、第1の相互作用部位である選択ユニット16及び第2の相互作用部位である調整ユニット17が協調して検体分子40と相互作用できるように設計することが好ましい。
【0105】
例えば、立体的相互作用による化学選択性の調整が必要な場合、分岐アルキル残基等のかさ高い基を調整ユニット17として第1の相互作用部位の近傍に配置することができる。
【0106】
また、付加的に電子的相互作用が必要な場合、調整ユニット17は、水素結合を形成できる少なくとも1つの官能基又はハロゲン原子とすることができる。
【0107】
また、調整ユニット17が適当な配置を有する場合、調整ユニット17としてキラル基を導入することでキラル選択性を与えることができる。
【0108】
調整ユニット17は、非常に多様な構造を有することができ、その構造は検出する検体分子40によって左右される。検体分子40と調整ユニット17との相互作用を水素結合又は双極子相互作用によって安定させるには、選択ユニット16として上述したような極性基を用いることができる。
【0109】
調整ユニット17は、高度に分極したπ電子系を用いることができ、例えば、いくつかのフェニル環を有する芳香族系は、縮合してさらに拡張されたπ電子系を形成することができる。
【0110】
また、幾つかの2重結合又は3重結合を含む共役π電子系を用いて、大きな永久双極子モーメントを有する検体分子40と非共有結合的に相互作用する、又は荷電することができる分極性ユニットを形成することができる。
【0111】
また、弱い分極性基も用いることができる。例としては、直鎖状若しくは分岐したアルキル又はシクロアルキル基であり、好ましくはそれぞれ1乃至20個又は5乃至20個の炭素原子を有する。これらの基は、選択ユニット16をより大きい分子から保護する、かさ高い基として好適である。
【0112】
目的の検体分子40に対するリンカー分子10の選択性を調節するには、リンカー分子10の分子構造が検体分子40と協調して相互作用できるように、第1の相互作用部位(選択ユニット16)と第2の相互作用部位(調整ユニット17)とを互いに十分に接近させておくとよい。
【0113】
なお、複数の第1及び/又は第2の相互作用部位を同じリンカー分子10内に配置することができることは勿論である。それらは、同一の検体分子40又は複数の異なる検体分子40と相互作用することができる。
【0114】
また、上述した図6乃至図8では、指示ユニット18の例を示したが、この例に限定されないことは勿論である。ここで、指示ユニット18の機能は、選択ユニット16と調整ユニット17とを相互に接続し、密接な空間関係を確保することである。この際、指示ユニット18は、調整ユニット17が選択ユニット16と検体分子40との間の相互作用を調整できるように、選択ユニット16及び調整ユニット17を空間的に配置することが好ましい。
【0115】
また、指示ユニット18は、飽和又は少なくとも一部が不飽和である炭化水素骨格であることが好ましい。より好ましくは、指示ユニット18は、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン等から誘導される少なくとも1つの環状ユニット、又は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン等から誘導される芳香族ユニットを含む比較的リジッドな部分である。
【0116】
また、指示ユニット18は、例えばO、S及びN原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。これらのヘテロ原子は、図6(A)の例で示したように、選択ユニット16及び/又は調整ユニット17として機能することができる。このような指示ユニット18は、例えばチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フラン、ピラン−2H、ピラン−4H、イソベンゾフラン、ベンゾフラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インダゾール、インドール、イソインドール、インドリジン、フタラジン、キノリン、プリン、キノリジン−4H、フェナジン、アクリジン、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピペリジン、ピペラジンから誘導することができる。
【0117】
また、指示ユニット18は、最も簡単には、選択ユニット16と調整ユニット17とを相互に接続している単結合として構成される。
【0118】
また、指示ユニット18は、1乃至10個の炭素原子を有するアルキレン基であってもよい。ここで、少なくとも1つのCH2基がエテニル基及び/又はエチニル基によって置換されていてもよく、さらに少なくとも2つのエテニル及び/又はエチニル基が共役結合系を構成していてもよい。
【0119】
また、指示ユニット18は、5乃至10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基及び/又は6乃至18個の炭素原子を有する芳香族基であってもよい。ここで、一部のフェニル環は縮合されていてもよく、さらに、芳香族基が少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはN、O、S若しくはSi原子を含んでいてもよい。
【0120】
なお、上述した基において、少なくとも1つの水素原子が直鎖状又は分岐した1乃至6個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい。
【0121】
なお、調整ユニット17は、微粒子膜の化学選択性を調整する際に、必ずしも選択ユニット16の近傍にある必要はないが、このような配置が好ましい。
【0122】
また、調整ユニット17によれば、微粒子膜の総合的な化学的性質を調整することが可能である。例えば、調整ユニット17が、例えばアルキル又はアリール残基等の非極性疎水性残基を含む場合、微粒子膜は、より疎水性になり、疎水性検体に対して選択性を示すようになる。これに対して、調整ユニット17が極性の官能性ユニットを含む場合、微粒子膜はより親水性になり、親水性検体に対して選択性を示すようになる。
【0123】
また、リンカーユニット12、選択ユニット16及び調整ユニット17は、接続ユニット18を介して接続される。この接続ユニット18は、アルキレン基、アルケニレン基及び/又はアルキニレン基で構成することができる。
【0124】
以上説明した種々の構造ユニットを組み合わせることにより、それぞれの分析上の問題や検出する検体に応じてリンカー分子10を設計することができる。
【0125】
リンカー分子10をいくつかの異なるユニットに分割して、検体に合わせた構造をもったモデルとして機能させることは、当業者にとって自明のことである。実際には、ユニットの官能基が幾つか重複することがある。例えば、指示ユニット18の一部は、調整ユニット17として又は選択ユニット16として作用することもでき、その逆もあり得る。
【0126】
但し、リンカー分子10が大きすぎると、微粒子を各層毎に堆積させて均質な膜を確実に形成することができず、膜厚を正確に制御することができない。このため、リンカー分子10は、好ましくは100乃至2000g/mol、より好ましくは100乃至1000g/mol、最も好ましくは100乃至600g/molの分子量を有する。
【0127】
また、化学センサは、指示ユニット18が、4乃至18個の炭素原子を含む環構造であり、少なくとも1つの選択性強化ユニットがカルボニル炭素原子、窒素原子又は酸素原子を通して環構造に付くアミド基及び/又はエステル基であり、そして少なくとも1つの調整ユニット17が、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アミン基、ヒドロキシ基、及びカルボニル酸素原子からなるグループから選択される環構造の置換基であるリンカー分子10を有することが好ましい。
【0128】
ここで、指示ユニット18の環構造は、芳香族又は非芳香族であり、環構造の4個までの炭素原子を、O、N、Sといったヘテロ原子によって置換することもできる。
【0129】
また、化学センサは、選択ユニット16がアミド基であり、指示ユニット18がフェニレン環及び/又はシクロヘキシレン環であり、調整ユニット17が水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、1乃至6個の炭素原子を有するアルコキシ基、及び/又は1乃至6個の炭素原子を有するアルキル基であるリンカー分子10を有することが、より好ましい。
【0130】
さらに、リンカー分子10は、リンカーユニット12として、微粒子30の表面に結合したチオール基を含むことができる。リンカーユニット12は、1乃至6個の炭素原子を有するアルキレン基によって選択ユニット16と結合することができる。
【0131】
また、リンカー分子10は、少なくとも1つのアミノ酸若しくはアミノ酸誘導体を含むことが好ましい。なお、リンカー分子10は、同一又は異なる少なくとも2つのアミノ酸若しくはアミノ酸誘導体を含み、これらは、アミド結合によって互いに結合されていることが好ましい。
【0132】
選択ユニット16を有するリンカー分子10は、構造ユニットとしてアミノ酸を用いることにより都合よく構成することができる。リンカー分子10の作製にαアミノ酸を用いることの利点の1つは、多くの異なったアミノ酸が容易に入手できることである。さらに、リンカー分子10を合成する際には、本来ペプチド合成用に開発されたプロトコルを用いることができる。
【0133】
リンカー分子10は、同一又は異なる残基を有することができる1以上のアミノ酸構造を含むことができる。リンカー分子10の形成に複数のアミノ酸を用いる場合、それらはアミド(ペプチド)結合により相互に結合されていてもよい。
【0134】
なお、異なるアミノ酸構造を組合せることにより、化学選択性の異なる幅広い多様なリンカー分子10を作製することができる。好ましくは、1つのリンカー分子10に含まれるアミノ酸構造の数は、10以下、より好ましくは5以下である。
【0135】
好ましくは、以下に示すαアミノ酸を用いることができる。
グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、システイン(Cys)、チロシン(Tyr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、リジン(lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)
また、これらのアミノ酸は、検体との相互作用をさらに調整するため誘導体化することができる。例えば、リンカー分子10を作製した後に官能基を保護したままにしておくことができる。
【0136】
さらに、α−アミノ酸、β−、γ−、・・・、ω−アミノ酸、又は対応するD−異性体も、原則としてL-異性体と同様に用いることができる。
【0137】
また、リンカー分子10が少なくとも1つの篭状化合物、シクロデキストリン、クラウンエーテル、クリプテートポルフィリン、フタロシアニン及び/又はシクラムを含む場合、微粒子膜の選択性をさらに調節することができる。
【0138】
リンカー分子10は、さらにアゾベンゼン、ロタキサン及び/又はビフェニル基を含むことができる。
【0139】
また、リンカー分子10は、金属及び/又は金属カチオンを含むことが好ましい。
【0140】
ここで、リンカー分子10と相互作用する検体分子40の配置について、図10乃至図12を用いて説明する。ここで、リンカー分子10の構造は、図7(B)に示したものに対応している。リンカー分子10は、指示ユニット18を有し、これは、置換基X1、X2、X3、X4によって置換できるフェニレン環により形成されている。フェニレン環に結合しているのは、選択ユニット16である2つのアミド基(第1の相互作用基)である。リンカー分子10のリンカーユニット12は、チオール基によって形成されており、これは接続ユニット20のメチレン基によりアミド基に結合されている。チオール基は、チオレートリンカー基として作用し、微粒子30の表面に結合する。
【0141】
図10に示すように、ヒドロキシル基を有する検体分子40とアミド官能化されたリンカー分子10のカルボニル基との間で水素結合が形成される。
【0142】
また、図11に示すように、ヒドロキシ酸素原子のアミド結合への接近が、立体障害によって妨げられない場合、アミドプロトンも水素結合に関与することができる。
また、図12に示すように、立体障害があまり厳しくない場合、アセトン等の極性非プロトン性検体分子は、アミドプロトンを介することによってもリンカー分子10と相互作用することができる。
【0143】
続いて、調整ユニット17(第2の相互作用部位)と検体分子40との相互作用について、図13を用いて詳細に説明する。図13(A)に示すように、調整ユニット17を形成しているベンゼン環の置換基Xは、選択ユニット16(第1の相互作用部位)の原子Z(例えば、アミド基のカルボニル−O)に結合している検体分子40の近傍にある。
【0144】
ここで、調整ユニット17である置換基Xがアルキル基の場合、検体分子40に対する立体的な相互作用が生じ、検体分子40と原子Zとの相互作用が弱まることがある。一方、置換基Xがヒドロキシ又はアミノ基である場合、置換基Xは、検体分子40との間で水素結合を形成することができ、検体分子40は、リンカー分子10にさらに強固に結合するようになる。
【0145】
調整ユニット17が適当な配置を有する場合、図13(B)に示すように、キラル選択性を得ることも可能である。
【0146】
また、置換基Xを第1の相互作用部位である選択ユニット16の近傍に位置させるために、ベンゼン環の代わりに、他の構造ユニットを用いることもできる。例えば、第1の相互作用部位に結合したシクロヘキサン環を用いることができる。このシクロヘキサン環は、ベンゼン環と同様に、置換基Xで置換することができる。
【0147】
ところで、化学センサの化学選択性を試験するために、幾つかのリンカー分子10を合成した。分子の構造を以下に示す。
【0148】
【化4】
【0149】
これらのリンカー分子A及びBは、微粒子30の表面に結合できる2つのチオール基を有する。さらに、各リンカー分子は、極性検体に対する選択性を高めることができる2つのアミド結合(−C(O)NH−)を有する。分子の中心部分は、シクロヘキシレン環(分子A)又はフェニレン環(分子B)の何れかである。これらの中心部分は、置換基X1〜X4を有しており、これらが検体分子40とリンカー分子10との間の相互作用を調整することで、化学センサの選択性も調整されている。
【0150】
リンカー分子A及びBを修飾するために用いた置換基と、その置換基を有する分子の略称を以下の表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
ここで、DMAA−CHは、1,4−ジ−(メルカプトアセトアミド)−シクロヘキサンの略称であり、DMAA−DEBは、1,4−ジ−(メルカプトアセトアミド)−2,5−ジクロロベンゼンの略称である。また、DMAA−Bは、1,4−ジ−(メルカプトアセトアミド)−ベンゼンの略称であり、DMAA−DMBは、1,4−ジ−(メルカプトアセトアミド)−2,5−ジメチルベンゼンの略称である。
【0153】
これらのリンカー分子を用いて、微粒子30が相互結合され、化学センサの基板上に微粒子膜が形成される。
【0154】
ここで、金属、半導体又は絶縁体から作製される微粒子30は、2つの異なる機能を有する。第1に、微粒子30によって、化学センサの動作時に測定される複合膜材料の物理特性が大きく左右される。センサの電気伝導度を用いて検知を行う場合、材料の電気伝導度を大幅に高めることから金属微粒子を用いることが好ましい。これにより、例えば電気伝導度の変化をセンサ信号として測定することができる。なお、一般的に、大きい微粒子を使用する場合の方が、小さい微粒子を使用する場合よりも導電性の高い膜が得られる。また、多くの金属及び半導体微粒子が、吸光及びルミネセンスといった光学特性を示し、この光学特性は、検体と膜材料との相互作用によって変化する。
【0155】
第2に、微粒子は、2官能性若しくは多官能性リンカー分子を結合するための微小基板として機能する。この点で、微粒子は、微粒子とリンカー分子とからなるネットワークの接合部として捉えることができる。この微粒子ネットワークでは、微粒子の間に空隙を有し、これにより、膜材料中への検体分子の拡散が促進される。
【0156】
ここで、化学抵抗器として微粒子膜を使用する際に、微粒子の重要な機能の1つは、十分な導電性を与えることである。したがって、微粒子は、金属微粒子であることが好ましい。微粒子膜の作製に適した金属は、好ましくはAu、Ag、Pt、Pd、Cu、Ni、Cr、Mo、Zr、Nb及びFeから選択される。また、微粒子の作製には、これらの金属を組み合わせた合金を使用することもできる。
【0157】
また、半導体微粒子(例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe等のII/VI半導体、GaAs、InP等のIII/V半導体、PbS、Cd3P2、TiO2及び他の遷移金属酸化物等の半導体、又はコア/シェル構造を含むこれらの材料の組合せ)を使用することも可能である。半導体微粒子の導電性を高めるため、これらに例えばAs、Sb、Al、B、P、In、Ln又は遷移金属等のドープ処理を施してもよい。
【0158】
さらに、金属、半導体及び/又は絶縁体の組合せを微粒子として使用することもできる。
【0159】
また、導電性ポリマ等の導電性有機材料から導電性又は半電導性微粒子を得ることも可能である。検知材料の作製には、ここで説明した微粒子を何れの組合せで使用することもできる。
【0160】
好ましくは、化学センサは、化学抵抗器として形成され、その際、微粒子膜は、一対の接触電極上に形成されるか、又はその逆も可能である。そして、検体が存在すると、微粒子膜の電気抵抗が変化する。
【0161】
そこで、以下では、上述した4種のリンカー分子(DMAA−CH、DMAA−DEB、DMAA−B、DMAA−DMB)を用いて化学抵抗センサを作製した。また、比較のため、選択ユニット16を含まない1,9−ノナンジチオール(NDT)を2官能性のリンカー分子として用いた。
【0162】
また、スピン−コーティングにより、ドデシルチオール(DT)固定化金微粒子を櫛型電極上に堆積させることによって化学センサを作製した。
【0163】
以下、具体的な実施例について説明する。先ず、ドデシルアミン固定化金微粒子及びドデシルチオール固定型金微粒子の2種類の金属微粒子を作製した。
【0164】
始めに、ドデシルアミン固定化金微粒子は、Leffらによる最近の報告に基づいて作製した(D.V.Leff, L.Brandi, J.R.Heath, Langmuir. 1996, 12, 4723)。
【0165】
具体的には、水20mlに160mgのAuCl3を入れて急速に撹拌した溶液に対して、トルエン20mlに638mgのテトラオクチルアンモニウムブロマイドを入れた溶液を加えた。そして、有機相が橙色に変化するとともに水相が無色に変化するまで撹拌した。
【0166】
この混合溶液に、1178mgのドデシルアミンとトルエン10mlとを加えると、有機相が橙色から赤色に変化した。その後、勢いよく撹拌しながら、水15mlに221mgのNaBH4を入れて新たに作製した溶液を加えると、溶液の色が直ちに濃紫色に変化した。
【0167】
環境条件下で一晩撹拌した後、有機相を分離し、エタノール80mlを加え、混合溶液を−18℃の冷凍庫で一晩保存した。
【0168】
この混合溶液をナイロン膜(孔径0.45μm)を用いて濾過することにより、析出物を溶液から分離し、トルエン17.5mlに再度溶解した。この溶液に対して、1)エタノール(5〜20ml)を添加し、2)冷凍庫で一晩保存し、3)遠心分離によって析出物を分離する、という3ステップを繰り返すことにより分別析出を行った。
【0169】
このようにして、4つのフラクションを得て、これらを化学センサの作製に用いた。なお、TEM(Transverse ElectroMagnetic)分析の結果、金微粒子は結晶質であり、直径は、2〜20nmであった。
【0170】
一方、ドデシルチオール固定型金微粒子は、Brustらの手法を用いて作製した(Brust et al. J.Chem.Soc., Chem.Commun. 1994, 801-802)。
【0171】
具体的には、水20mlに206mgのAuCl3を入れて急速に撹拌した溶液に対して、トルエン20mlに840mgのテトラオクチルアンモニウムブロマイドを入れた溶液を加えた。そして、有機相が橙色に変化するとともに水相が無色に変化するまで撹拌した。
【0172】
この混合溶液に、トルエン20ml及びドデシルチオール33mlを加えると、有機相が橙色から赤色に変化した。その後、勢いよく撹拌しながら、水20mlに257mgのNaBH4を入れて新たに調製した溶液を加えると、溶液の色が直ちに黒色に変化した。
【0173】
環境条件下で一晩撹拌した後、有機相を分離し、エタノール40mlを加え、混合溶液を−33℃の冷凍庫で7時間保存した。
【0174】
この混合溶液をナイロン膜(孔径0.45μm)を用いて濾過することにより、析出物を溶液から分離し、トルエン数mlに再度溶解して第1のフラクションを得た。そして、この濾液にエタノール40mlを加え、混合溶液を一晩冷凍庫に保存した。同様に第2のフラクションを分離した後に、エタノール40mlを加え、冷凍庫に一晩保存し、第3のフラクションを分離した。このように分別析出を数回続け、ドデシルチオール固定型金微粒子の6つのフラクションを得た。なお、第3のフラクションについてのTEM分析の結果、金微粒子の金属コアの直径は、約3〜6nmであった。
【0175】
続いて、この金属微粒子を基板上に堆積させて微粒子膜を形成し、化学抵抗センサを作製した。
【0176】
ここで、微粒子膜は、Leibowitzらの方法に従って、一括法により形成することもできる(Leibowitz et al., Anal. Chem. 199. 71, 5076-5083)。しかし、高精度で安定な微粒子膜を得るには、微粒子を各層毎に堆積させることにより微粒子膜を作製するのが好ましい。
【0177】
微粒子膜は、微粒子30とリンカー分子10との自己組織化により形成され、これにより、制御された再現可能な条件下で微粒子膜を形成できる。
【0178】
本実施の形態では、以下のa)〜e)のステップにより、各層毎に微粒子膜が形成される。
a)基板を官能基化して基板表面上にリンカーユニットを設ける。
b)官能基化された基板表面上に微粒子層を堆積させる。
c)微粒子層上に2官能性又は多官能性リンカー分子を堆積させ、2官能性又は多官能性リンカー分子を微粒子に結合させる。
d)さらなる微粒子層を堆積させ、その層を2官能性又は多官能性リンカー分子により第1の微粒子層と結合させる。
e)微粒子の均質な膜が得られるまでステップc)及びステップd)を繰り返す。
【0179】
このように微粒子と相互結合できるリンカー分子により、各層毎に形成することで、再現性のある均質な微粒子膜が作製できる。この各層毎に形成された微粒子膜は、約5乃至500nmと非常に薄く、高い精度で形成することができる。このような微粒子膜は、比較的機械的強度が強く、例えば液体に浸されたときにも剥離しない。このため、化学センサは、気体状の検体分子だけでなく、液体状の検体分子の検出にも使用することができる。
【0180】
以下、詳細に説明する。先ず、基板を洗浄し、アミノ官能化した。具体的には、リソグラフィ技術により作製されたそれぞれ3つの櫛型電極構造を有するBK7−ガラス基板上へ金属微粒子膜が形成させた。ここで、電極構造は、95nmの金層が形成された5nmのチタン接着層により構成されている。これらの電極構造は、幅10μm、間隔10μm、オーバラップ1800μmである50組の線状電極からなる。また、基板上に微粒子を組み込む前に、アセトンとイソプロパノールとで基板を洗浄し、酸素プラズマを30W、0.5mbarで約4分間照射した。
【0181】
トルエン5ml中に3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン50μlを入れた溶液に、洗浄した基板を浸漬させ、60℃で30分間加熱した。この処理により、ガラス基板は、アミノ基によって官能化される。なお、このアミノ基は、後に微粒子を堆積させる際にリンカーユニット12として機能する。
【0182】
続いて、金微粒子を各層毎に堆積させて化学センサを作製した。具体的には、官能化された基板をトルエンで洗浄した後、基板は、ドデシルアミン安定型金微粒子を含むトルエン溶液に15分間浸漬された。
【0183】
次に、基板を溶媒で洗浄した後、基板は、リンカー溶液に浸漬された。詳しくは、表2に示したアミド官能化リンカー分子を用いた場合、基板は、トルエンとDMFとによって洗浄され、DMF5ml中に1乃至5mg入れたリンカー分子の溶液に浸漬された。
【0184】
一方、1,9−ノナンジチオールリンカー分子を用いた場合、DMFの代わりに2−プロパノールを用い、リンカー分子約160μlを2−プロパノール4mlに溶解してリンカー溶液を作製した。そして、基板をリンカー溶液中に5分間浸漬後、DMF(又は2-プロパノール)とトルエンとで洗浄した。
【0185】
その後、堆積した膜の抵抗が十分に低くなるまで、好ましくは1MΩ以下になるまで、微粒子溶液とリンカー溶液とに基板を浸漬する処理を繰り返した。
【0186】
次に、スピンコーティングによって化学センサを作製した。具体的には、ドデシルチオール固定型金微粒子の溶液を1滴、アミノ官能化基板の電極構造上に滴下した。数秒後、基板にスピンをかけて相互結合してない金微粒子の膜を作成した。
【0187】
以上のようにして作製された化学抵抗器について、化学選択性の試験を行った。先ず、Teflon(登録商標)製の試験セルにセンサチップを取り付けた。センサは、電極構造の接点パッドに押圧された金メッキの施されたポーゴーピンにより測定装置に接続されている。
【0188】
通常、Keithleyソース測定装置236を用いて一定の直流電流を流し、Keithley2002マルチメータを用いて電極間の電圧変化を測定するとともに、検体蒸気を曝すことによって、化学センサを動作させた。なお、センサ電極の電圧が約0.1Vとなるように、各センサの電流を0.3乃至150μAの範囲に調節した。したがって、消費電力は、0.03乃至15μWの範囲であった。
【0189】
また、検体蒸気は、市販のガス較正システム(Kalibriersystem MK15/MK5 又は MK15/DDS-RL/MK5, Umwelttechnik MCZ GmbH, Obermorlen. Germany)により発生させた。これらのシステムは、15〜50℃の温度範囲で飽和検体蒸気を作るバブラーと凝縮器とにより構成されている。
【0190】
また、幾つかのマスフローコントローラを使用して、飽和蒸気をゼロガスで0.5〜6000ppmの濃度範囲に希釈した。ゼロガスとしては、市販のゼロガス発生器(Nullgasanlage MD2000-25, Umwelt-technik MCZ)により得られる、清浄及び乾燥を行った空気(露点−70℃)を用いた。このマスフローシステムは、センサセル内を流れるガスをゼロガスと検体ガスとで切り換えるためのコンピュータ制御弁を具備している。
【0191】
また、検体蒸気としては、トルエン、1−プロパノール、アセトンを用いた。セル内における実際の濃度は、アントワーヌ式を用いて算出し、マスフローシステムにより希釈比を調節した。
【0192】
また、全ての実験について、テストチャンバ内のマスフローを2l/minに調整し、一定に保った。
【0193】
センサを3つの異なる溶媒蒸気に2400ppmvの濃度で300秒間曝して得た実験結果を以下の表3及び図14に示す。
【0194】
【表3】
【0195】
なお、この実験では、典型的な無極性溶媒としてトルエンを用い、典型的なヒドロキシル溶媒として1−プロパノールを用い、典型的な極性非プロトン溶媒としてアセトンを用いた。
【0196】
図14に示すように、1,9−ノナンジチオール(NDT)で作製されたセンサS1は、非極性のトルエン蒸気に対して顕著な選択性を有することが分かる。この結果は、用いたリンカー分子が、微粒子を結合する2つのチオール基を除いて、全く極性官能基を含まなかったためである。
【0197】
また、ドデシルチオール(DT)固定型金微粒子で作製したセンサS6も、トルエン蒸気に対して選択性を示した。この結果は、ドデシル残基で囲まれた粒子の特性が非極性であることによっても説明される。このセンサで得られた結果は、Wohltjon及びSnow (loc. cit.)によって以前に報告された結果と一致している。
【0198】
これに対して、アミド官能化リンカー分子で作製したセンサS2〜S4は、極性溶媒のアセトン、特にヒドロキシル溶媒の1-プロパノールに対して顕著な選択性を示した。また、センサS5は、1-プロパノールに対して選択性があったが、非極性溶媒のトルエンや非プロトン性溶媒のアセトンに対する応答は、同様であった。図14に示されたような同じ選択性のパターンは、60〜2400ppmvの全濃度範囲で定性的に認められた。
【0199】
ここで、リンカー分子のアミド官能化は、化学センサの特性に強い影響を与える。図15(A)は、アミド官能化リンカー分子(例えばDMAA−CH)で作製された化学センサの典型的な応答線を示している。なお、図15において、上向きの矢印は、空気の注入を示し、下向きの矢印は、検体蒸気の注入を示している。
【0200】
図15(A)に示すように、1−プロパノール蒸気に5分曝した後でも、センサ信号はまだ上昇していることがわかる。
【0201】
比較のため、1,9−ノナンジチオールで作製されたセンサS1の応答曲線を図15(B)に示す。図15(B)に示すように、化学センサは、非常に迅速に応答し、数秒後には安定な信号に到達している。なお、アミド官能化リンカー分子を含んでいないセンサS6であっても、センサS1と同様に迅速に応答した。
【0202】
アミド官能化センサで見られるやや遅い応答は、極性検体分子とアミド基との相互作用に伴う構造変化によるものである。アミド官能化リンカー分子は、非常にリジッドな分子であるため、構造変化が妨害され、検体分子がセンサS1やS6に吸着されてアルキレン鎖が配座変化するほど、構造変化が速くないにと考えられる。
【0203】
以上の結果から、化学抵抗器の化学的選択性は、アミド官能基の近傍の分子の構造を変化させることによって調整できることが分かった。したがって、分子の中心部分にシクロヘキシル又はベンゼン環を用いることにより、及び/又は置換基X1〜X3を変化させることにより、各センサ(S2〜S5)の信号比は、明らかに変化する。
【0204】
検知素子として微粒子膜を有する化学抵抗器の一例を図16に示す。櫛型電極60は、ガラス基板50の上に形成されている。基板上に微粒子膜70が堆積して、電極構造を覆っている。電極のリード線80に電流を流して、検出器(図示せず)により電流の変化を検出することができる。図の拡大部分は、微粒子30がリンカー分子10により相互結合して形成された微粒子ネットワークを示している。
【0205】
以上説明した化学センサは、物理特性の変化を用いて検体を検出する種々の化学センサに用いることができる。ここで、物理特性の変化とは、例えば、導電率、誘電率、反射率、ルミネセンス、吸光度、質量、体積、密度及び/又は熱容量の変化のことをいう。
【0206】
なお、微粒子膜の物理特性が検体分子の存在下で変化するメカニズムは、まだ十分に理解されているわけではない。
【0207】
しかし、微粒子膜の導電率に検体分子が影響する理由の1つとしては、リンカー分子の双極子モーメントの変化が考えられる。検体分子が少なくとも1つの選択ユニットに結合することにより、電子的な相互作用が起こり、検体分子40と選択ユニットの双極子モーメントが変化する。選択ユニットが、例えば膜を通して電流が流れている間、電荷キャリア輸送を行う場合、双極子モーメントが変化することにより、センサ材料の輸送物性に強い影響を与えて装置の抵抗値を変化させている可能性がある。
【0208】
また、別の理由としては、隣接したリンカー分子間の相互作用が検体分子の存在下で妨害されるということが考えられる。微粒子ネットワークの隣接したリンカー分子は、選択ユニット及び/又は他の基(例えば、調整ユニット)により互いに相互作用することができる。このような相互作用は、双極子相互作用(ファンデルワールス相互作用を含む)及び/又は水素結合による。
【0209】
有機分子間の水素結合による相互作用は、分子が集合することで電子的結合を強化することができることが示されている(s. Sek et al., J. Phys. Chem. B 2000, 104, 5399 - 5402) 。
【0210】
検体分子が微粒子膜中に拡散して選択ユニット及び他の基と相互作用する場合、リンカー分子間の相互作用が妨害され、微粒子膜の電子輸送特性に影響が及ぼされる。この影響は、例えば化学抵抗器に微粒子膜を用いた場合に、センサ信号にも及ぼされる。
【0211】
選択ユニットは、さらにリンカー分子内で他の基と分子内相互作用することができる。これは、水素結合又は双極子相互作用によるものである。しかし、検体分子が選択ユニットと配位結合すると、例えば微粒子膜の電子輸送特性に影響を及ぼすこれらの分子内相互作用が妨害される。
【0212】
上述した化学センサは、例えば化学抵抗器又は化学コンデンサとして動作させることができ、微粒子膜の導電率又は静電容量の変化を測定することができる。
【0213】
したがって、化学ダイオードや化学トランジスタ(例えば、化学FET)等の多端子装置の構成に、この微粒子膜を利用することができる。
【0214】
また、この化学センサを感質量センサとして使用してもよい。この場合、微粒子膜は、化学検知性の表面弾性波(SAW)装置又は水晶結晶板微量天秤(QCM)を形成する圧電性材料上の被膜として用いられる。
【0215】
また、化学センサは、光学センサとして用いることもでき、センサ信号は、反射率、蛍光、吸光度又は散乱の変化として測定される。例えば、検体と選択性強化ユニットとの間で電荷移動錯体が形成され、センサの光学特性(UV/可視、及び/又はIR)が変化する。
【0216】
好適な材料としては、例えばエレクトロルミネセンス及び/又はフォトルミネセンスを示す半導体微粒子が挙げられる。
【0217】
このような化学センサでは、検体分子がリンカー分子に結合すると、ルミネセンス特性が変化する。この変化は、リンカー分子が微粒子の電子構造に対して電子的に結合しており、検体分子−リンカー分子相互作用によってリンカー分子の電子構造(エネルギーレベル)に変化が生じると、微粒子の電子構造が影響を受けるためである。
【0218】
微粒子膜を、光ファイバ用の化学感受性被膜(例えばオプトード、干渉計装置)として利用することもできる。
【0219】
また、化学センサは、熱や温度の変化に使用できるため、サーミスタや他の熱電式デバイスとして利用される。
【0220】
また、微粒子膜は、例えばリトグラフ技術等によって不活性基板上に形成された例えばAu等からなる櫛型電極上に形成されてもよく、或いは、両電極が膜上に形成されてもよい。また、他の構成も可能である。例えば、一方の電極を微粒子膜の下に配置し、もう一方を微粒子膜上に形成することができる。この場合、選択ユニットに検体分子が結合することによって、センサの電子特性が影響を受け、微粒子膜の導電率が変化する。
【0221】
また、上述した不活性基板は、化学センサがIC装置に組み込まれている場合、例えばSi/SiO2により作製される。さらに好ましい基板としては、ガラス及び/又はセラミックが挙げられる。
【0222】
また、微粒子膜に複数の化学センサを配置してセンサ列を構成することもできる。
【0223】
また、化学センサは、少なくとも1つの微粒子及び少なくとも2つのリンカー分子、又は少なくとも2つの微粒子及び少なくとも1つのリンカー分子で構成することができる。
【0224】
このように、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0225】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る化学センサは、基板と、上記基板上に形成された微粒子膜と、上記微粒子膜の物理特性の変化を検出する検出手段とにより構成され、上記微粒子膜が、微粒子表面に結合できる少なくとも2つのリンカーユニットと、検体分子を可逆的に結合するための結合部位を有する少なくとも1つの選択ユニットとを有するリンカー分子によって相互結合された微粒子により形成された微粒子ネットワークを有することを特徴とするものである。
【0226】
このような化学センサは、リンカー分子のリンカーユニットによって微粒子が相互結合されて微粒子ネットワークが形成されており、選択ユニットによって、検体分子と可逆的に結合する。これにより、化学センサは、検体分子を選択的且つ高精度に検出することができる。
【0227】
また、本発明に係る化学センサの作製方法は、請求項1乃至請求項21のいずれか1項記載の化学センサを作製する化学センサの作製方法であって、基板表面上に結合基を設けるために基板を官能化する工程と、当該官能化された基板表面上に微粒子層を堆積させる工程と、上記微粒子層上に2官能性若しくは多官能性のリンカー分子を堆積させて、当該リンカー分子を微粒子に結合させる工程と、さらに上記微粒子層を堆積させ、それを上記リンカー分子により第1の層の微粒子と結合させる工程と、均質な膜が得られるまで上記微粒子層と上記リンカー分子とを交互に堆積させる工程とを有することを特徴とするものである。
【0228】
このような化学センサの作製方法では、基板状に微粒子層とリンカー分子とを交互に各層毎に堆積させることによって、均質な微粒子膜を形成する。この方法によって作製された化学センサは、検体分子を選択的且つ高精度に検出することができる。
【0229】
また、本発明に係る検体検出方法は、請求項1乃至請求項21のいずれか1項記載の化学センサを検体に曝し、検出手段によって微粒子膜の物理特性の変化を測定することを特徴とするものである。
【0230】
ここで、上記物理特性の変化は、伝導度、誘電率、反射率、ルミネセンス、吸光度、質量、体積、密度及び/又は熱容量の変化である。
【0231】
このような検体検出方法では、本発明に係る化学センサを検体に曝して微粒子膜の物理特性の変化を測定することによって、検体の存在が高感度に検出される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるリンカー分子10の概念構成を説明する図であり、同図(A)は、リンカーユニットを両端に有する2置換性のリンカー分子を示し、同図(B)は、多置換性のリンカー分子を示し、同図(C)は、リンカーユニットが分子骨格基に組み込まれたリンカー分子を示す。
【図2】選択ユニット等を有するリンカー分子の概念構成を説明する図であり、同図(A)は、選択ユニットのみを有するリンカー分子を示し、同図(B)は、調整ユニットが分子骨格鎖の分岐の末端に配置されるリンカー分子を示し、同図(C)は、調整ユニットが分子骨格鎖に組み込まれたリンカー分子を示し、同図(D)は、調整ユニットが分子骨格鎖の分岐に組み込まれたリンカー分子を示す。
【図3】同リンカー分子について説明する図であり、同図(A)は、リンカー分子の概念構成を示し、同図(B)は、対応するリンカー分子の具体例を示す。
【図4】同リンカー分子について説明する図であり、同図(A)は、リンカー分子の概念構成を示し、同図(B)は、対応するリンカー分子の具体例を示す。
【図5】同リンカー分子について説明する図であり、同図(A)は、リンカー分子の概念構成を示し、同図(B)は、対応するリンカー分子の具体例を示す。
【図6】同リンカー分子について説明する図であり、同図(A)は、リンカー分子の概念構成を示し、同図(B)は、対応するリンカー分子の具体例を示す。
【図7】同リンカー分子について説明する図であり、同図(A)は、リンカー分子の概念構成を示し、同図(B)は、対応するリンカー分子の具体例を示す。
【図8】同リンカー分子について説明する図であり、同図(A)は、リンカー分子の概念構成を示し、同図(B)は、対応するリンカー分子の具体例を示す。
【図9】同リンカー分子について説明する図であり、同図(A)は、リンカー分子の概念構成を示し、同図(B)は、対応するリンカー分子の具体例を示す。
【図10】同リンカー分子と相互作用する検体分子の配置を説明する図である。
【図11】同リンカー分子と相互作用する検体分子の配置を説明する図である。
【図12】同リンカー分子と相互作用する検体分子の配置を説明する図である。
【図13】調整ユニットと検体分子との相互作用を説明する図であり、同図(A)は、調整ユニット及び検体分子の配置を示し、同図(B)は、調整ユニットがキラル選択性を有する例を示す。
【図14】種々のリンカー分子を用いた化学センサに3つの異なる溶媒蒸気を曝した際の抵抗値変化を説明する図である。
【図15】化学センサの応答線を説明する図であり、同図(A)は、アミド官能化リンカー分子を用いた例を示し、同図(B)は、1,9−ノナンジチオールを用いた例を示す。
【図16】検知素子として微粒子膜を有する化学抵抗器の一例を説明する図である。
【符号の説明】
10 リンカー分子、11 分子骨格鎖、12 リンカーユニット、13 分岐、14,15 懸垂分岐、16,16a,16b 選択ユニット、17 調整ユニット、18 指示ユニット、19 分岐、20,20a,20b 接続ユニット、30 微粒子、40 検体分子、50 ガラス基板、60 櫛型電極、70 微粒子膜、80 リード線
Claims (24)
- 基板と、
上記基板上に形成された微粒子膜と、
上記微粒子膜の物理特性の変化を検出する検出手段とにより構成され、
上記微粒子膜が、微粒子表面に結合できる少なくとも2つのリンカーユニットと、検体分子と可逆的に結合するための結合部位を有し、前記リンカーユニットとは異なる少なくとも1つの選択ユニットとを有するリンカー分子によって相互結合された微粒子により形成された微粒子ネットワークを有すること
を特徴とする化学センサ。 - 上記選択ユニットは、上記検体分子と可逆的に結合できることを特徴とする請求項1記載の化学センサ。
- 上記選択ユニットの結合部位は、クーロン相互作用及び/又は分極相互作用により上記検体分子と結合することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の化学センサ。
- 上記選択ユニットの結合部位は、上記検体分子に対して水素結合を形成できる水素結合供与基又は水素結合受容基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記選択ユニットは、アミド基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記リンカーユニットは、末端基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記リンカー分子は、上記選択ユニットに結合した上記検体分子と相互作用するように上記選択ユニットの近傍に配置された少なくとも1つの調整ユニットを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記リンカー分子は、上記選択ユニットと上記調整ユニットとを接続する少なくとも1つの指示ユニットを有し、
上記調整ユニットは、上記指示ユニットによって上記選択ユニットに結合した上記検体分子と相互作用するように上記選択ユニットの近傍に配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の化学センサ。 - 上記指示ユニットは、単結合、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び/又は6〜18個の炭素原子を有する芳香族基のうちの少なくとも1つであり、
上記アルキレン基の少なくとも1つのCH2基は、エテニル基及び/又はエチニル基によって置換されていてもよく、
少なくとも2つの上記エテニル及び/又はエチニル基は、共役結合系を構成することができ、
上記芳香族基のフェニル環は、縮合されていてもよく、N、O、S又はSi原子を含む少なくとも1つのヘテロ原子を含むことができ、
上記基は、少なくとも1つの水素原子が、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐したアルキル基によって置換されていてもよい
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の化学センサ。 - 上記選択ユニットは、アミド基であり、
上記調整ユニットは、水素原子、ハロゲン原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシ基、アミン基及び/又は1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、
上記接続ユニットは、フェニレン基及び/又はシクロヘキシレン基であること
を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の化学センサ。 - 上記リンカー分子は、少なくとも1つのアミノ酸若しくはアミノ酸誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記リンカー分子は、篭状化合物、シクロデキストリン、クラウンエーテル、クリプテート、ポルフィリン、フタロシアニン又はシクラムのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記リンカー分子は、金属及び/又は金属カチオンを含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記微粒子は、金属微粒子であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記金属微粒子は、Au、Ag、Pt、Pd、Cu、Ni、Cr、Mo、Zr、Nb、Fe又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項16記載の化学センサ。
- 上記微粒子は、半導体微粒子であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項記載の化学センサ。
- 上記半導体微粒子は、II/VI半導体又はIII/V半導体を含むことを特徴とする請求項18記載の化学センサ。
- 上記微粒子は、絶縁体微粒子であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項記載の化学センサ。
- 少なくとも1つの微粒子及び少なくとも2つのリンカー分子、又は少なくとも2つの微粒子及び少なくとも1つのリンカー分子からなることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項記載の化学センサ。
- 請求項1〜21のいずれか1項記載の化学センサを作製する化学センサの作製方法であって、
基板表面上に結合基を設けるために基板を官能化する工程と、
当該官能化された基板表面上に微粒子層を堆積させる工程と、
上記微粒子層上に2官能性若しくは多官能性のリンカー分子を堆積させて、当該リンカー分子を微粒子に結合させる工程と、
さらに上記微粒子層を堆積させ、それを上記リンカー分子により第1の層の微粒子と結合させる工程と、
均質な膜が得られるまで上記微粒子層と上記リンカー分子とを交互に堆積させる工程と
を有することを特徴とする化学センサの作製方法。 - 請求項1〜21のいずれか1項記載の化学センサを検体に曝し、検出手段によって微粒子膜の物理特性の変化を測定することを特徴とする検体検出方法。
- 上記物理特性の変化は、伝導度、誘電率、反射率、ルミネセンス、吸光度、質量、体積、密度及び/又は熱容量の変化であることを特徴とする請求項23記載の検体検出方法。
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