JPH0875726A - 血液の機能異常部位判定方法及び判定装置 - Google Patents

血液の機能異常部位判定方法及び判定装置

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JPH0875726A
JPH0875726A JP6215883A JP21588394A JPH0875726A JP H0875726 A JPH0875726 A JP H0875726A JP 6215883 A JP6215883 A JP 6215883A JP 21588394 A JP21588394 A JP 21588394A JP H0875726 A JPH0875726 A JP H0875726A
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blood
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JP6215883A
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Keiko Kawakami
桂子 河上
Tadashi Sakon
正 佐近
Yutaka Kishida
豊 岸田
Yasuo Ikeda
康夫 池田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 血液の機能異常部位を高い信頼性をもって簡
便に判定するための方法及び装置を提供する。 【構成】 板状水晶振動子50a〜50cの表面に異な
るタンパク質層を塗布してなる複数の測定素子を組み込
んだフローセルに被検血液を層流として循環させ、前記
複数の測定素子のタンパク質層への血液成分の粘着量を
前記測定素子の共振周波数変化から測定し、前記測定値
を正常な血液を循環させた場合の粘着量に相当する基準
値と比較することによって血液の機能異常部位を判定す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、血液の機能異常部位を
簡便に判定するための方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】出血傾向又は血栓形成等の血液の機能異
常による疾患の治療に当たって、これらの症状を呈する
疾患が血液中のどの部位の異常に原因するものであるの
かを知ることは重要なことである。従来、これらの血液
の機能異常の判定は、血液が静置されている状態で、又
は生体中では起こり得ない乱流状態で血液成分の1つで
ある血小板に対して非生理的又は非生理濃度の薬物によ
り惹起される凝集反応によって行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の判定法は、実際
の生体内環境とは異なる条件で行われており、判定結果
が臨床結果と必ずしも一致しないという不都合があっ
た。また、血小板凝集反応では、異常を生じている機能
部位の特定までには到らない場合が多く、異常を生じて
いる機能部位を特定するためにはウエスタンブロッティ
ング法等、細胞をタンパク質に分画して各々の量を測定
するという非常に煩雑で時間がかかる作業が必要であ
る。そのため、生体内に近い流動条件下で、しかも簡便
に血液機能の異常部位を判定する手法の開発が望まれて
いた。本発明は、この要請に応えるものであり、生体内
に非常に近い流動条件下で血液の機能異常部位を簡便に
判定するための方法及び装置を提供することを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明においては、板状
水晶振動子の表面にタンパク質層を固定した測定素子を
作製する。測定素子をフローセル中に組み込み、層流状
態で流れる血液と接触させ、その共振周波数の変化を測
定することによって、タンパク質層に対する血液成分の
粘着性を測定する。種々のタンパク質層に対して測定さ
れた血液成分の粘着性を比較することにより、血液の機
能異常部位を判定することができる。
【0005】より具体的には、本発明による血液の機能
異常部位判定方法は、板状水晶振動子の表面にタンパク
質層を塗布してなる測定素子を組み込んだフローセルに
被検血液を層流として循環させ、タンパク質層への血液
成分の粘着量又は粘着速度を測定素子の共振周波数変化
から測定し、測定値を正常な血液を循環させた場合の共
振周波数変化に相当する基準値と比較することを特徴と
するものである。
【0006】測定素子は、夫々異なるタンパク質層を塗
布してなる複数の測定素子を用いてもよい。タンパク質
層はヒトフィブリノーゲン、ヒトフォンヴィルブランド
ファクター、コラーゲン等とすることができる。被検血
液としては、全血又は赤血球、白血球、あるいは血小板
のうち少なくとも1種類の血球成分を含む成分血液を用
いることができる。
【0007】また、本発明による血液の機能異常部位判
定装置は、板状水晶振動子の表面にタンパク質層を塗布
してなる測定素子を組み込んだフローセルと、フローセ
ルに被検血液を流通させる手段と、測定素子の共振周波
数変化を測定する手段とを備え、測定された共振周波数
変化の値を予め記憶された基準値と比較する手段と、比
較結果を出力する手段とをさらに備えてもよい。また、
測定された共振周波数変化の信号を微分する手段をさら
に備えてもよい。
【0008】また、本発明による血液の機能異常部位判
定装置は、板状水晶振動子の表面に異なるタンパク質層
を塗布してなる複数の測定素子を組み込んだフローセル
と、フローセルに被検血液を流通させる手段と、複数の
測定素子の共振周波数変化を測定する手段と、測定され
た共振周波数変化の値を基準値と比較する手段とを備え
る。複数の測定素子は、ヒトフィブリノーゲンを塗布し
た板状水晶振動子、ヒトフォンヴィルブランドファクタ
ーを塗布した板状水晶振動子及びコラーゲンを塗布した
板状水晶振動子とすることができる。
【0009】
【作 用】共振回路に組み込まれた板状水晶振動子は、
その厚み方向に垂直に共振周波数(f0 )で振動する。
このとき、水晶振動子の表面に血液中の物質が吸着して
吸着層による質量荷重(ΔW)が生じると、次式のよう
な共振周波数の変化Δfが生じる。従って、この共振周
波数変化Δfから質量荷重ΔWすなわち吸着量を求める
ことができる。 Δf=−f0 2ΔW/NAρ 但し、ΔW:質量変化、A:電極面積、ρ: 水晶の比
重、N:水晶の周波数定数である。
【0010】水晶振動子の表面にコラーゲン、フィブリ
ノーゲン、フォンヴィルブランドファクターなどの種々
のタンパク質材料層を形成することにより、これら各タ
ンパク質に対する血液成分の粘着性を比較することがで
き、その比較結果に基づいて血液の機能異常部位を判定
することができる。
【0011】
【実施例】以下、実施例によって本発明を詳細に説明す
る。 〔実施例1〕図1は、本発明による判定装置に使用され
るフローセルの一例を説明する斜視図、図2はその断面
図、図3は分解組立図である。
【0012】フローセル100は、下部部材10、上部
部材20、外部シール部材30、セル室シール部材40
及び板状水晶振動子50からなり、下部部材10の側面
に設けた突起部92にはめ込んだ固定金具90を上部部
材29の上面に設けた溝部29a,29bに固定するこ
とによって組み立てられる。上部部材20は、例えばシ
リコンコートをした塩化ビニルからなり、裏側から見た
斜視図である図4及び裏側から見た平面図である図5に
よく表されているように、下面中央部分に外周が円形で
内部に四角形の凹部領域を有する枠状凸部21a,21
b,21cが設けられている。また、一方の側面から3
対の孔22,23が部材表面に平行に途中まで設けら
れ、その孔22a〜22c,23a〜23cの側部から
枠状凸部21a,21b,21cで囲まれた領域に向け
てスリット24a,25a,24b,25b,24c,
25cが開口している。上部部材20の側面に設けられ
た孔22,23には、例えばテフロン(登録商標)やシ
リコーンコートした塩化ビニル等、血液中の成分物質が
吸着しにくい材料で作られたチューブ61a,62a,
61b,62b,61c,62cが接続される。
【0013】図6に平面図を示す下部部材10は、例え
ばテフロンからなり、円形の凹所11a,11b,11
cを備える。下部部材には、また、図示しない発振器、
周波数カウンター等に接続されたケーブル71a,71
b,71cが水密に固定されており、ケーブル71a〜
71cの導体に接続された電気接点72,73が凹所1
1の表面に露出している。下部部材10の凹所11a〜
11cには、電気接点72,73に電極51a〜51c
が接触するようにして、板状水晶振動子50a,50
b,50cが着脱自在に配置される。
【0014】上部部材20下面の枠状凸部21a,21
b,21cの枠内部に沿ってセル室シール部材40a,
40b,40cを装着し、枠状凸部21a,21b,2
1cの外側に外部シール部材30を装着した後、枠状凸
部21a,21b,21cを下部部材10の凹所11
a,11b,11cに挿入し、上下部材10,20を固
定金具90で締め付けることによってフローセルが組み
立てられる。このとき、板状水晶振動子50a〜50c
と上部部材20の枠状凸部21a〜21cで囲まれた領
域がセル室となる。図示しないポンプによってチューブ
61a〜61cを通して各セル室内に導入される血液
は、上部部材20に設けられた孔22a〜22cにつな
がるスリット24a〜24cからセル室内に入り、水晶
振動子50a〜50cの表面を層流となって流れ、セル
室の他端に位置する他のスリット25a〜25cから孔
23a〜23cに流れ込み、チューブ62a〜62cを
経て排出される。
【0015】血液を層流状態として流すために、セル室
の流路断面積は50mm2 以下とする必要がある。本実
施例の場合、セル室の寸法は0.3mm×15mm×1
5mm(流路断面積4.5mm2 )とした。フローセル
は、37℃に保った恒温槽中に浸漬した状態で流体が流
通され、吸着量の連続測定が行われる。水晶振動子50
a〜50cは、取扱い易さと測定感度の点から基本共振
周波数5〜10MHzで発振するものが好ましい。セル
室に流体を層流として導入、排出する幅1mm、長さ1
5mmのスリット24a〜24c,25a〜25cは、
板状水晶振動子50a〜50cに対して図7に示すよう
な位置関係にあり、セル室は板状水晶振動子50a〜5
0cの上に形成される。セル室シール部材40a〜40
cは、厚さ1mmのシリコーン樹脂シートとし、外部シ
ール部材30は厚さ0.3mmのシリコーン樹脂シート
とした。
【0016】測定素子は、以下のようにして作製した。
直径2.5cmの基本共振周波数5MHzのATカット
された水晶振動子(板厚350μm)50a〜50cを
アルカリ系洗剤(MERCK社、エキストランMAO
1)2%水溶液に浸漬し、3分間超音波洗浄した後、エ
タノールに浸漬し、布で払拭した。市販のポリカーボネ
イトビーズ(三菱化成、ノバレックス)をアルカリ系洗
剤(MERCK社、エキストランMAO1)2%水溶液
で洗浄し、100℃にて1時間以上乾燥させた後、テト
ラクロロエタンを溶媒として6重量%の濃度に溶解し
た。この溶液を、先に表面を洗浄した板状水晶振動子
に、1000rpmで10秒、さらに2000rpmで
10秒の条件でスピンコーティングし、75℃にて1時
間、続いて150℃にて1時間乾燥させた。こうして形
成されたポリカーボネイトの膜厚をエリプソメータで測
定したところ、10nmであった。
【0017】次に、20μg/ml程度の濃度に調整し
たコラーゲン、ヒトフィブリノーゲン、ヒトフォンヴィ
ルブランドファクターの溶液中に、前記ポリカーボネイ
ト層を形成した板状水晶振動子を8時間以上浸漬して、
図8に断面構造を略示するように、ポリカーボネイト層
82上に前記タンパク質84が夫々固定された3種類の
測定素子を作製した。ポリカーボネイト上に固定された
タンパク質の膜厚は150nm程度であった。この測定
素子は、1Hzの共振周波数変化が18ng/cm2
質量変化に相当する。
【0018】4種類のサンプル血液A,B,C,Dを用
意した。Aは健常人の正常な血液、BはAnti−血小
板膜糖タンパク(GP)IIb/III aモノクローナル抗
体(医学生物研究所)によりGPIIb/III a機能を阻
害した血液、CはAnti−GPIbモノクローナル抗
体(宝酒造)によりGPIb機能を阻害した血液、Dは
Anti−GPIa/IIaモノクローナル抗体(イムノ
テック)によりGPIa/IIa機能を阻害した血液であ
る。
【0019】P−PACK採血した血液より血小板およ
び白血球を取り除いた成分血液を、前記3種類のタンパ
ク質をコーティングした測定素子を組み込んだフローセ
ル100に、ずり速度2400/秒の速度で約10分間
循環し、タンパク質吸着飽和を待った。フローセル10
0は37℃に保った恒温槽中に浸漬して一定温度に維持
した。次に、サンプル血液A及びBの全血を各セル室に
循環させたところ、図10〜図12に示すように、サン
プル血液Aではどれも共振周波数変化が起こったが、サ
ンプル血液Bはヒトフィブリノーゲンおよびフォンヴィ
ルブランドファクターに対しては共振周波数は変化せ
ず、コラーゲンに対してはサンプル血液Aより変化量が
大きかった。サンプル血液A及びBの全血を用い、ずり
速度を310/秒に設定して同様の測定を行ったとこ
ろ、図10〜図12に示すように、ずり速度2400/
秒の場合と同様の傾向を示した。
【0020】同様の測定をサンプル血液C〜Dについて
も行った。各測定に際しては、測定のたびに固定金具9
0を外してフローセルを分解し、生理食塩水で洗浄する
と共に、測定素子を新しいものに交換した。なお、使用
後の測定素子の板状水晶振動子50a,50b,50c
は、使用後の測定素子をテトラクロロエタン溶液に1〜
2分間浸漬した後、布で払拭してポリカーボネイト層、
タンパク質材料層及びその上の吸着物質を除去すること
により、再使用することができる。
【0021】測定結果は次のようにして評価した。正常
なサンプル血液Aを流したときの共振周波数の変化値Δ
0 と、サンプル血液B〜Dを流したときの共振周波数
の変化値Δfの比(Δf/Δf0 )をとり、比の値が
0.5未満のときを(−−)、0.5以上0.8未満の
ときを(−)、0.8以上1.2未満のときを(±)、
1.2以上1.5未満のときを(+)、1.5以上のと
きを(++)とした。評価は、測定を開始してから10
00秒後に行った。
【0022】また、全血の他に、赤血球及び血小板を取
り出し、バッファソリューションに再浮遊した洗浄血を
用いて、同様の測定を行った。結果を、まとめて次の表
1に示す。表中では、ヒトフィブリノーゲンをF、ヒト
フォンヴィルブランドファクターをV、コラーゲンをC
と略記し、ずり速度2400/秒をhigh、310/秒を
low と略記する。
【0023】
【表1】
【0024】表1から明らかなように、GPIIb/III
a欠損は、全血による測定で、ヒトフィブリノーゲン及
びヒトフォンヴィルブランドファクターへの吸着が無又
は少なく、コラーゲンへの吸着が多いことで判定するこ
とができる。また、GPIb欠損は、全血による測定で
high 、low ともにヒトフォンヴィルブランドファクタ
ー、コラーゲンへの粘着は健常人と同じであるが、洗浄
血による測定では high の粘着のみが著しく減少するこ
とで判定することができる。さらに、GPIa/IIa欠
損は、ヒトフィブリノーゲン及びヒトフォンヴィルブラ
ンドファクターへの吸着が健常人と同じであり、コラー
ゲンへの吸着が少ないことで判定することができる。
【0025】GPIIb/III a欠損は血小板無力症と、
GPIb欠損はバーナードスーリエ症候群と、GPIa
/IIa欠損はGPIa/IIa欠損症とそれぞれ関連を有
するため、本発明の判定方法を用いると血液疾患の判定
を簡便に行うことが可能となる。本実施例では、フロー
セル100中の3個のセル室にチューブ61a〜cを介
して被検血液を並列的に供給した。図9に示すように、
出口孔23aと入口孔22bをチューブ63で接続し、
出口孔23bと入口孔22cをチューブ64で接続する
ことによって、各セル室を直列に接続して使用すること
もできる。この場合には、被検血液をフローセル100
に送液するポンプが1台ですむ利点がある。
【0026】〔実施例2〕サンプル血液A及びサンプル
血液Eを用意し、実施例1と同じ装置を用いて測定を行
った。サンプル血液Aは健常人の正常な血液であり、サ
ンプル血液Eは血小板内の濃染顆粒が欠損している血液
である。すなわち、サンプル血液Eは、血小板内から濃
染顆粒が放出されず、初期活性化に引き続いて2次的凝
集反応を引き起こせない、又は非常に引き起こしにく
い。
【0027】P−PACK採血した血液より血小板およ
び白血球を取り除いた成分血液を、前記ヒトフィブリノ
ーゲン、コラーゲン、及びヒトフォンヴィルブランドフ
ァクターを各々コーティングした3種類の測定素子を組
み込んだフローセルにずり速度2400/秒の速度で約
10分間循環し、タンパク質吸着飽和を待った。フロー
セルは37℃に保った恒温槽中に浸漬して一定温度に維
持した。次に、サンプル血液Eの全血を循環させたとこ
ろ、サンプル血液Eに対していずれのタンパク質に対し
てもサンプル血液Aに対するのと同程度の周波数変化が
起こった。
【0028】しかし、図13のグラフに示されているよ
うに、サンプル血液Eでは立ち上がりの吸着速度が低下
していた。これは、図14のように、共振周波数の変化
を微分演算回路に通して微分することにより、明瞭に検
出することができる。すなわち、共振周波数変化の微分
波形を正常な血液の場合と比較することにより、2次凝
集の機能障害を検出することができる。血液成分初期結
合後に引き続いて起こる2次凝集は濃染顆粒欠損症(ハ
マンスキーパドラック)と密接な関連性を有し、本実施
例の方法によると、濃染顆粒欠損症の判定を簡便に行う
ことができる。
【0029】〔実施例3〕サンプル血液F及びサンプル
血液Gを用意し、実施例1と同じ装置を用いて測定を行
った。ただし、測定素子としては、ヒト−Pセレクチン
をコーティングしたものを1個だけ用いた。サンプル血
液Fは、健常人よりP−PACK採血した血液から白血
球を取り出した成分血液であり、サンプル血液Gは、白
血球のP−セレクチンへの粘着機能障害を有する先天性
免疫不全症候群患者よりP−PACK採血した血液から
白血球を取り出した成分血液である。
【0030】前記ヒト−Pセレクチンをコーティングし
た測定素子を組み込んだフローセルにずり速度2400
/秒の速度で、前記F成分血液より赤血球及び白血球を
除いたバッファーソルーションを約10分間循環し、温
度の定常待ちを行った。次にサンプル血液Fを循環させ
たところ、15分間で800Hzの周波数変化が起き
た。一方、サンプル血液Gを同様の手法で循環させたと
ころ15分間で20Hz程度の周波数変化であった。本
実施例によると、ヒト−Pセレクチンをコーティングし
た測定素子を用い白血球成分血液を循環させることによ
り、白血球のP−セレクチンへの粘着機能障害を判定す
ることができる。
【0031】〔実施例4〕サンプル血液H及びサンプル
血液Iを用意し、実施例1と同じ装置を用いて測定を行
った。ただし、測定素子としては、ヒトフィブリノーゲ
ンをコーティングしたものを1個だけ用いた。サンプル
血液Hは、健常人よりP−PACK採血した血液から赤
血球及び血小板を取り出した成分血液であり、サンプル
血液Iは、赤血球の変形能の低下しているカマ状赤血球
症患者よりP−PACK採血した血液から赤血球及び血
小板を取り出した成分血液である。
【0032】前記ヒトフィブリノーゲンをコーティング
した測定素子を組み込んだフローセルにずり速度310
/秒の速度で、前記F成分血液より赤血球及び白血球を
除いたバッファーソルーションを約10分間循環し、温
度の定常待ちを行った。次にサンプル血液Fを循環させ
たところ、15分間で800Hzの周波数変化が起き
た。一方、サンプル血液Gを同様の手法で循環させたと
ころ、15分間で2000Hz程度の周波数変化が生じ
た。すなわち、サンプル血液Gにおいては、血小板機能
に異常がないにもかかわらず、赤血球の変形能が低下す
ることにより、血小板の粘着が明らかに増強された。こ
のように、ヒトフィブリノーゲンをコーティングした測
定素子を用い、赤血球及び白血球を含む成分血液を循環
させることにより、赤血球の変形能の低下を判定するこ
とができる。
【0033】〔実施例5〕サンプル血液J及びサンプル
血液Kを用意し、実施例1と同じ装置を用いて測定を行
った。サンプル血液Jは、血液中に存在するタンパク質
であるフィブリノーゲンが欠損している先天性フィブリ
ノーゲン欠損症患者よりP−PACK採血した血液であ
り、サンプル血液Kは、血液中に存在するタンパク質フ
ォンヴィルブランドファクターが欠損している先天性フ
ォンヴィルブランドファクター欠損症患者よりP−PA
CK採血した血液である。サンプル血液J及びサンプル
血液Kの全血をずり速度2400/秒(high)と310
/秒(low )でフローセル中に循環させて実施例1と同
様の基準で評価した結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】表2より明らかなように、血液中のフィブ
リノーゲンの欠損は、low でフォンヴィルブランドファ
クターへの粘着が少ないことで判定できる。一方、血液
中のフォンヴィルブランドファクターの欠損は、highで
フィブリノーゲン及びコラーゲンへの粘着が少ないこと
で判定することができる。
【0036】
【発明の効果】本発明によると、簡便な方法により短時
間で高い信頼性をもって、血液の機能異常部位を検出す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フローセルの外観図。
【図2】フローセルの断面図。
【図3】フローセルの分解組立図。
【図4】上部部材の下面斜視図。
【図5】上部部材の下面図。
【図6】下部部材の平面図。
【図7】板状水晶振動子とセル室の位置関係を説明する
図。
【図8】測定素子の断面模式図。
【図9】フローセルへのチューブの他の接続方法を説明
する図。
【図10】コラーゲンによる測定例を示すグラフ。
【図11】フォンヴィルブランドファクターによる測定
例を示すグラフ。
【図12】フィブリノーゲンによる測定例を示すグラ
フ。
【図13】コラーゲンによる他の測定例を示すグラフ。
【図14】図13の微分波形図。
【符号の説明】
10…下部部材、11a〜11c…凹所、20…上部部
材、21a〜21c…枠状凸部、22a〜22c,23
a〜23c…孔、24a〜24c,25a〜25c…ス
リット、30…外部シール部材、40a〜40c…セル
室シール部材、50a〜50c…板状水晶振動子、51
a〜51c…電極、61a〜61c,62a〜62c,
63,64…チューブ、71a〜71c…ケーブル、7
2,73…電気接点、80…材料層、82…下地層、8
4…タンパク質材料層、100…フローセル
フロントページの続き (72)発明者 岸田 豊 神奈川県川崎市中原区井田1618番地 新日 本製鐵株式会社先端技術研究所未来領域研 究部内 (72)発明者 池田 康夫 東京都新宿区信濃町35 慶応大学医学部内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定のタンパク質への血液成分の粘着性
    を正常な血液における粘着性と比較することを特徴とす
    る血液の機能異常部位判定方法。
  2. 【請求項2】 複数のタンパク質への血液成分の粘着性
    を正常な血液における粘着性と比較することを特徴とす
    る血液の機能異常部位判定方法。
  3. 【請求項3】 板状水晶振動子の表面にタンパク質層を
    塗布してなる測定素子を組み込んだフローセルに被検血
    液を層流として循環させ、前記タンパク質層への血液成
    分の粘着量を前記測定素子の共振周波数変化から測定
    し、前記測定値を正常な血液を循環させた場合の粘着量
    に相当する基準値と比較することを特徴とする血液の機
    能異常部位判定方法。
  4. 【請求項4】 前記タンパク質層はヒトフィブリノーゲ
    ン、ヒトフォンヴィルブランドファクター、コラーゲ
    ン、ヒトP−セレクチンからなることを特徴とする請求
    項1〜3のいずれか1項記載の血液の機能異常部位判定
    方法。
  5. 【請求項5】 板状水晶振動子の表面に異なるタンパク
    質層を塗布してなる複数の測定素子を組み込んだフロー
    セルに被検血液を層流として循環させ、前記複数の測定
    素子のタンパク質層への血液成分の粘着量を前記測定素
    子の共振周波数変化から測定し、前記測定値を正常な血
    液を循環させた場合の粘着量に相当する基準値と比較す
    ることを特徴とする血液の機能異常部位判定方法。
  6. 【請求項6】 前記タンパク質層はヒトフィブリノーゲ
    ン、ヒトフォンヴィルブランドファクター及びコラーゲ
    ンからなることを特徴とする請求項5項記載の血液の機
    能異常部位判定方法。
  7. 【請求項7】 板状水晶振動子の表面にタンパク質層を
    塗布してなる測定素子を組み込んだフローセルに被検血
    液を層流として循環させ、前記タンパク質層への血液成
    分の粘着速度を前記測定素子の共振周波数変化を微分す
    ることにより測定し、前記測定値を正常な血液を循環さ
    せた場合の粘着速度に相当する基準値と比較することを
    特徴とする血液の機能異常部位判定方法。
  8. 【請求項8】 被検血液として全血を用いることを特徴
    とする請求項1〜7のいずれか1項記載の血液の機能異
    常部位判定方法。
  9. 【請求項9】 被検血液として赤血球、白血球、あるい
    は血小板のうち少なくとも1種類の血球成分を含む成分
    血液を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか
    1項記載の血液の機能異常部位判定方法。
  10. 【請求項10】 板状水晶振動子の表面にタンパク質層
    を塗布してなる測定素子を組み込んだフローセルと、前
    記フローセルに被検血液を流通させる手段と、前記測定
    素子の共振周波数変化を測定する手段とを含むことを特
    徴とする血液の機能異常部位判定装置。
  11. 【請求項11】 測定された共振周波数変化の値を予め
    記憶された基準値と比較する手段と、比較結果を出力す
    る手段とをさらに含むことを特徴とする請求項10記載
    の血液の機能異常部位判定装置。
  12. 【請求項12】 測定された共振周波数変化の信号を微
    分する手段をさらに含むことを特徴とする請求項10記
    載の血液の機能異常部位判定装置。
  13. 【請求項13】 板状水晶振動子の表面に異なるタンパ
    ク質層を塗布してなる複数の測定素子を組み込んだフロ
    ーセルと、前記フローセルに被検血液を流通させる手段
    と、前記複数の測定素子の共振周波数変化を測定する手
    段と、測定された共振周波数変化の値を基準値と比較す
    る手段とを含むことを特徴とする血液の機能異常部位判
    定装置。
  14. 【請求項14】 前記複数の測定素子は、ヒトフィブリ
    ノーゲンを塗布した板状水晶振動子、ヒトフォンヴィル
    ブランドファクターを塗布した板状水晶振動子及びコラ
    ーゲンを塗布した板状水晶振動子であることを特徴とす
    る請求項13項記載の血液の機能異常部位判定装置。
JP6215883A 1993-11-11 1994-09-09 血液の機能異常部位判定方法及び判定装置 Withdrawn JPH0875726A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002365181A (ja) * 2001-06-07 2002-12-18 Sysmex Corp 液体加温器およびそれを備えた分析装置

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