【発明の詳細な説明】
新規な受容体型ホスホチロシンホスファターゼ−κ
1.序論
本発明は、生化学および細胞分子生物学の分野に属し、RPTPκ(RPTP
アーゼ−κともいう)と命名された、新規な受容体型プロテインチロシンホスフ
ァターゼタンパク質または糖タンパク質、それをコードするDNA、該タンパク
質の生産および同定方法、PTPアーゼ酵素に結合して該酵素活性を阻害または
剌激することができる化合物のスクリーニング方法、RPTPκの同種親和性結
合(homophilic binding)の抑制方法、ならびに同種親和性RPTPκ結合を抑
制することができる化合物の同定方法に関するものである。
2.発明の背景
次第に数が増えつつある細胞シグナリング現象には、タンパク質のチロシンリ
ン酸化が関係している。もともとそれはパラクリン−またはオートクリン−作用
増殖因子およびインスリンのような内分泌ホルモンによるシグナリングに関与し
ていた(Yarden,Y.ら,Annu.Rev.Biochem.57:443-478(1988)を参照のこと)
。この翻訳後修飾は、抗原による免疫系の細胞の活性化(Klausner,R.D.ら,Cel
l 64:875-878)、リンホカインによるシグナリング(Hatakeyama,M.ら,Scienc
e252:1523-1528(1991);Mills,G.B.ら,J.Biol.Chem.265:3561-3567(1990)
)、細胞の分化
および生存(Fu,X.Y.,Cell 70:323-335(1992);Schlessinger,J.ら,Neuron 9
:1-20(1992);Velazquez,L.ら,Cell 70:313-322(1992))などの多岐にわたる
プロセスにも関与していることが今や明らかである。チロシンリン酸化が関係し
ているプロセスの多様性を考慮すると、細胞接着や細胞−細胞接触のプロセスと
の関連が明らかになりつつあることも驚くことではない。
数種の増殖因子受容体およびレトロウイルス癌遺伝子がチロシン特異的プロテ
インキナーゼとして同定されたことにより、チロシン残基でのタンパク質のリン
酸化は細胞増殖を制御する上で重要な役割を果たしていることが示された。最近
、この考えは、シグナル伝達において重要な役割を担っていると考えられる酵素
(例えば、ホスホリパーゼC)のチロシンリン酸化のレベルが増殖因子剌激に対
するその増大した活性と相関しているという観察により支持され、かくして、チ
ロシンリン酸化の機能的役割が確立された(Ullrich,A.ら,Cell 61:203-212(
1990))。
チロシンリン酸化が関係しているプロセスの大半は細胞膜を介してのシグナル
の伝達を含むものである。その最も解明された様式において、それは可溶性リガ
ンドによる受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバーの二量体化媒介活性化
により起こり得る(Ullrich,A.ら,Cell 61:203-212(1990)を参照のこと)。
しかしながら、受容体チロシンキナーゼ活性の変調(modulation)は、セブンレ
ス(sevenless)キナーゼとセブンレスタンパク質のブライド(bride)との相互
作用の場合のように、隣接細胞上の膜結合リガンドによっても起こり得る(Rubi
n,G.M.,Trends inGenetics 7:372-376(1991))。近年、CAMファミリーの細
胞
接着分子の細胞外ドメインに類似した該ドメインを有する受容体様チロシンキナ
ーゼが記述された(例えば、AxlおよびArk(O'Bryan,J.P.ら,1991,Mo
l.Cell.Biol.11:5016-5031;Rescigno,J.ら,1991,Oncogene 6:1909-1913
))。このような観察により、チロシンリン酸化は、正確な細胞−細胞認識およ
びシグナリング現象のための、より広く用いられる直接的下流エフェクター機構
として関与しているらしいことが示された。また、チロシンキナーゼの非受容体
ファミリーのメンバーは膜貫通トポロジーを有する他のタンパク質と結合してい
ることが示され、例えば、LckおよびFynキナーゼはそれぞれCD4タンパ
ク質およびT細胞受容体複合成分と結合している(Haughn,L.ら,Nature 358:3
28-331(1992);Samelson,L.E.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:4358-4362
(1992);Veillette,A.ら,Cell55:301-308(1988))。しかし、これらの場合に
キナーゼ活性が変調される作用機構は解明されていない。
細胞タンパク質のチロシン残基のリン酸化の程度およびパターンは、プロテイ
ン−チロシンキナーゼ(PTKアーゼ;ATP:プロテイン−チロシン O−ホ
スホトランスフェラーゼ、EC 2.7.1.112)とプロテイン−チロシン−ホスファタ
ーゼ(PTPアーゼ;プロテイン−チロシン−ホスフェートホスホヒドロラーゼ
、EC 3.l.3.48)との相反する活性によって調節されている。PTKアーゼの構
造的特徴および進化ならびに細胞増殖の調節におけるその役割が検討されている
(Hunter,T.ら,Annu.Rev.Biochem.54:897-930(1985);Ullrich,A.ら,前
掲)。
2.1. PTKアーゼ類
チロシンキナーゼはセリン/トレオニンに特異的なプロテインキナーゼと共通
の祖先を有するが、それらとは大きく相違する別個の酵素ファミリーを構成して
いる(Hanks,S.K.ら,Science241:42-52(1988))。チロシンキナーゼ活性を変
化させる作用機構は、膜貫通トポロジーを有する受容体型チロシンキナーゼの場
合に最もよく解明されている(Ullrich,A.ら,前掲)。このようなキナーゼの
場合には、これらの酵素の細胞外ドメインに特異的リガンドが結合することによ
り、それらのオリゴマー化が誘導されて、チロシンキナーゼ活性の増加とシグナ
ル伝達経路の活性化が生じると考えられている(Ullrich,A.ら,前掲)。この
活性の重要性は、突然変異または過剰発現によるキナーゼ活性の変調が癌遺伝子
形質転換の作用機構であるという知見により支持されている(Hunter,T.ら,前
掲;Ullrich,A.ら,(1990)前掲)。
2.2. PTPアーゼ類
プロテインホスファターゼ類は少なくとも2つの明らかに異なるファミリーを
構成しており(Hunter,T.,Cell 58:1013-1016(1989))、すなわちプロテイン
セリン/トレオニンホスファターゼとプロテインチロシンホスファターゼである
。これはセリン/トレオニン特異的酵素とチロシン特異的酵素の間で明らかな配
列類似性を示すプロテインキナーゼと対照的である。
PTPアーゼ分子には2つの基本的なタイプがあるようである。第一のグルー
プは単一の保存された触媒ホスファターゼドメインを含む小さな可溶性酵素から
成り、(1)胎盤PTPアーゼ1B
(Charbonneau,H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5252-5256(1989);Che
rnoff,J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2735-2789(1990))、(2)T細
胞PTPアーゼ(Cool,D.E.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:5257-5261(198
9))、および(3)ラット脳PTPアーゼ(Guan,K.ら,Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA 87:1501-1502(1990))が含まれる。
チロシンホスファターゼの相同ドメインの同定は、チロシンリン酸化のモジュ
レーターとして作用するPTPアーゼの能力への新たな興味を起こさせた(Kapl
an,R.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7000-7004(1990);Krueger,N.X.
ら,EMBO J.9:3241-3252(1990);再検討のため、Fischer,E.H.ら,Science 2
53:401-406(1991)を参照のこと)。
PTPアーゼの第二のグループは、RPTPアーゼまたはRPTPと呼ばれる
複雑な高分子量の受容体結合PTPアーゼから成り、56〜57個のアミノ酸に
よって分離された2つのタンデム反復保存ドメインを含んでいる。RPTPはさ
らに、その細胞外セグメント内の構造モチーフに基づいて4つの型に類別される
。
RPTPの一例は白血球共通抗原(LCA)である(Ralph,S.J.,EMBO J.
6:1251-1257(1987);Charbonneau,H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7182
-7186(1988))。LCAはCD45、T200およびLy−5としても知られて
おり(Thomas,M.L.,Ann.Rev.Immunol.7:339-369(1989)参照)、造血細胞(
後期赤血球系を除く)においてもっぱら発現される膜糖タンパク質のグループか
ら成り、これらはタンパク質のアミノ末端に関する異なるスプライシング過程に
よって共通の遺伝子から誘導さ
れるものである。
RPTPの他の例は、LCA関連タンパク質のLAR(Streuli,M.ら,J.E
xp.Med.168:1523-1530(1988))およびLAR関連ショウジョウバエタンパク質
のDLARおよびDPTP(Streuli,M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:
8698-8702(1989))である。Jirikらは、LCAの2つのPTPアーゼドメインを
コードするプローブを用いて(FASEB J.4:A2082(1990),abstr.2253)、ヒト
肝芽細胞腫細胞系HepG2由来のcDNAライブラリーをスクリーニングし、
そしてHe−PTPと名づけた新しいRPTPをコードしているcDNAクロー
ンを発見した。HePTP遺伝子はヒトおよびマウスの種々の細胞系および組織
において発現されると思われた。
II型RPTPと呼ばれるRPTPファミリーの多くのメンバーは、細胞接着分
子(CAM)に一般的に見られる特徴、つまりIgドメインとフィブロネクチン
III型リピート(Fn−III)の組合せを含む細胞外ドメインを提示する(Gebbin
k,M.F.B.G.ら,1991,FEBS Lett.290:123-130;Streuli,M.ら,1988,J.E
xp.Med.168:1523-1530)。発生しつつあるショウジョウバエCNSにおける数
種のR−PTPアーゼの発現パターンの分析は、軸索の誘導と成長の面でのこれ
ら分子の何らかの機能を示唆しており(Tian,S.S.ら,1991,Cell67:675-685;
Yang,X.ら,1991,Cell 67:661-673)、その観察はsrc−ファミリーチロシ
ンキナーゼの活性を制御するR−PTPアーゼの能力に関係があるかもしれない
(Mustelin,T.ら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6302-6306;Osterga
ard,H.L.ら,1989,Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 86:8959-8963;Zheng,X.M.ら,1992,Nature 359:336-339)。
その他の研究は、ある種のR−PTPアーゼが、例えば接触阻害を制御すること
により、腫瘍抑制遺伝子として機能しうるという可能性を生起させた(LaForgia
,S.ら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:5036-5040)。細胞性ホスホチロ
シンの増加はチロシンキナーゼそれ自体の活性化とは別の機構により起こるのか
もしれない。例えば、チロシンキナーゼでないにもかかわらず、v−crk癌遺
伝子の発現はあまり解明されていない作用機構によってチロシン残基のリン酸化
を引き起こす(Mayer,B.J.ら,(1988)Nature 332,272-275)。可能性として
、このような結果は、基質の突然変異から、または、特に細胞チロシン−ホスフ
ェートの代謝回転速度が通常高いことを考慮して、細胞ホスファターゼ活性の全
体的な低下により生じると考えられる(Sefton,B.M.ら,(1980)Cell 20:807-81
6)。後者の可能性は、チロシンホスファターゼ阻害剤が細胞を「可逆的に形質
転換する」ことができるという論証によって示唆される(Klarlund,J.K.,Cell
41:707-717(1985))。従って、PTPアーゼは劣性癌遺伝子として作用しうる
可能性がある。
我々はPTPアーゼの構造および多様性について多くのことを理解し始めてい
るが、それらの細胞機能について学ぶべきことがまだ数多く存在する。それゆえ
、ホスホチロシン代謝をより一層理解し、それを制御できるようになるには、P
TKアーゼ活性の役割ばかりでなくPTPアーゼ酵素の作用を知ることも必要で
ある。当技術分野においては、細胞増殖、分化および発癌のメカニズムの重要な
理解を得るために、これらPTPアーゼおよびRP
TP膜受容体の構造−機能の関係の更なる解明が必要とされていることが明らか
である。
3.発明の概要
本発明者らは、潜在的な抗癌遺伝子としての、さらに膜貫通シグナリングの新
たに発見された機構におけるエフェクターとしての、細胞制御機構でのRPTP
の役割について考えてきた。こうして、このようなプロセスに関与する可能性の
ある哺乳動物(ヒトを含む)の個々のRPTP遺伝子およびタンパク質について
のサーチを行ったところ、マウスとヒトの両方において、膜貫通トポロジーを有
するRPTPファミリーの、広範に発現される新規なメンバーであるRPTPκ
を同定したので、それをここに記述する。ここに開示する新規なヒトRPTPκ
は、その発現が細胞−細胞接触によって変調される2つの結合されたサブユニッ
トから成り、受容体チロシンキナーゼと類似した方法で、その細胞外タンパク質
に結合する細胞外リガンドによる直接的調節を受けている。さらに、以下の第1
5節に示した実施例で検証されるように、RPTPκは他のRPTPκ分子との
同種親和性結合が可能であることが示される。
かくして、本発明は、哺乳動物の、好ましくはヒトの、受容体型プロテインチ
ロシンホスファターゼーκ(RPTPκ)タンパク質または糖タンパク質分子、
RPTPκの機能性誘導体、または別の哺乳動物種のRPTPκ相同体を提供す
る。RPTPκ分子が天然に由来するものである場合、それは自然界でそれに結
合している他のタンパク質または糖タンパク質を実質的に含まない
ものである。RPTPκは自然界では哺乳動物の脳で発現され、発生的におよび
解剖学的に調節される。また、それは他の哺乳動物の組織においても発現される
。本発明のRPTPκ分子は化学合成や組換え手段によっても調製することがで
きる。従って、本発明の実質的に純粋なRPTPκタンパク質または糖タンパク
質は、天然由来のタンパク質または糖タンパク質の生化学的精製によって、また
は化学合成を用いる製造によって、あるいは原核または真核細胞宿主での組換え
発現によって得ることが可能である。
特に、本発明は、図3に示したRPTPκのアミノ酸配列(配列番号1)を有
する哺乳動物RPTPκタンパク質または糖タンパク質に関するものである。他
の実施態様では、その機能性誘導体が提供される。好ましくは、RPTPκはヒ
ト由来のもので、図15A−15Eに示したアミノ酸配列(配列番号2)を有す
るものである。
本発明はさらに、本質的に配列番号3(図1A−1H)のヌクレオチド配列を
有する哺乳動物RPTPκをコードするヌクレオチド配列から成る核酸分子、好
ましくはDNA、に関するものである。好ましくは、核酸分子は本質的に配列番
号4のヌクレオチド配列を有するヒトRPTPκをコードするヌクレオチド配列
から成るか、またはその機能性誘導体をコードするものである。DNA分子はc
DNAまたはゲノムDNAであることが好ましい。さらに、本発明は、発現ベク
ターの形のDNA分子、ならびに該DNA分子で形質転換またはトランスフェク
ションされた原核および真核細胞宿主を提供する。
本発明はまた、RPTPκタンパク質もしくは糖タンパク質、またはその機能
性誘導体を産生する方法を包含し、該方法は、
(a)該タンパク質、糖タンパク質またはその機能性誘導体を発現しうる宿主
を培養条件下で培養し、
(b)該タンパク質、糖タンパク質またはその機能性誘導体を発現させ、そし
て
(c)培養物から該タンパク質、糖タンパク質またはその機能性誘導体を回収
する、
ことを含むものである。
さらに、本発明は、RPTPκタンパク質または糖タンパク質に対して特異的
な、ポリクローナル、モノクローナルまたはキメラでありうる抗体に関する。
本発明はまた、細胞または被験者における正常または変異体RPTPκをコー
ドする核酸の存在を検出する方法に関し、該方法は、
(a)被験者由来の細胞またはその抽出物を、正常または変異体RPTPκの
少なくとも一部をコードするオリゴヌクレオチドプローブと、ハイブリダイゼー
ション条件下で接触させ、そして
(b)細胞の核酸への該プローブのハイブリダイゼーションを測定することに
よって、該核酸(好ましくは、DNA)の存在を検出する、
ことを含むものである。DNAは、アッセイに先立って、ポリメラーゼ連鎖反応
を用いて選択的に増幅させることができる。
本発明は、さらに、1個または複数の細胞中のRPTPκの存在を検出するか
、またはその量を測定する方法に関し、該方法は、
(a)該細胞またはその抽出物を、RPTPκのエピトープに特異的な抗体と
接触させ、そして
(b)該細胞またはその抽出物への該抗体の結合を検出するか、または結合し
た抗体の量を測定し、その結果として、RPTPκの存在を検出するか、または
その量を測定する、
ことを含むものである。
本発明はまた、化学的または生物学的調製物からRPTPκに結合しうる化合
物を同定して単離する方法に関し、該方法は、
(a)RPTPκまたはそのリガンド結合部分を固相マトリックスに付着させ
、
(b)化学的または生物学的調製物を該固相マトリックスと接触させて該化合
物を結合させ、次いで未結合物質を洗い流し、
(c)固相マトリックスに結合した該化合物の存在を検出し、そして、単離目
的のために、
(d)結合した化合物を溶出して該化合物を単離する、
ことを含むものである。
さらに、本発明は、RPTPκのホスファターゼ酵素活性を剌激または阻害し
うる作用剤を同定する方法を包含し、該方法は、
(a)作用剤を、純粋な形の、膜調製物中の、または生存もしくは固定全細胞
中のRPTPκと接触させ、
(b)段階(a)の混合物を十分な時間インキュベートし、
(c)RPTPκの酵素活性を測定し、
(d)その酵素活性を、該作用剤の不在下でインキュベートしたRPTPκの
活性と比較し、その結果として、該作用剤がその酵素活性を剌激するものである
か、阻害するものであるかを判定
する、
ことを含むものである。
さらに、本発明は、II型RPTPの同種親和性結合、好ましくはRPTPκの
同種親和性結合、を抑制する方法を提供し、また、かかるII型RPTP同種親和
性結合を抑制しうる作用剤を同定する方法、および哺乳動物被験者における内因
性II型RPTP同種親和性結合を抑制する方法を提供する。
4.図面の説明
図1A〜1Hは、マウスRPTPκの完全ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を示す。
シグナルペプチド、A5相同領域、トランスメンブランドメイン、及びPTP アーゼ
ドメインを括弧で示した。
図2は、単離された種々のRPTPIccDNAクローン及びRPTPκタンパク質の示唆さ
れたドメイン構造の概略図である。本文中に挙げた翻訳開始及び停止コドン並び
に制限部位を示した。縦の矢印はフリン切断部位を示す。TM:トランスメンブラ
ンセグメント。
図3は、RPTPκ前駆体タンパク質の予測アミノ酸配列を示す。推定のシグナル
ペプチド及びトランスメンブラン(TM)セグメントに下線を付した。2つのタン
デムなホスファターゼドメインを枠で囲んだ(PTP-1、PTP-2)。タンパク質分解
切断部位(RTKR 640-643)を太字で示し、Ig様ドメイン(Ig,214-270)を太字
のイタリック体で示した。A5:A5表面タンパク質に対する相同性(Takagi,S.e
t al.,1991 Neuron 7:295-307);FN-III:フィブロネクチンタイプIII反復。
前記cDNA配列のGenbank受託番号はL10106である。
図4は、4つのRPTPκのFN-III反復及びヒトフィブロネクチンのドメイン7(
Kornblihtt,A.R.et al.,1985 EMBO J.4:1755-1759)の示唆される整列であ
る。FN-III反復中の最も典型的な保存残基を太字で強調した。5つの整列した配
列のうち3つ以上が同一の残基をアスタリスクで示した。前記タンパク質のこの
領域は、全てFN-III反復を含むことが報告されている、LAR、ショウジョウバエP
TPアーゼ10D及びショウジョウバエ神経膠(neuroglian)に対する明確に検出可
能な相同性を有している。
図5は、RPTPκ及びmRPTPμのN-末端ドメインと細胞表面タンパク質A5(Takag
i et al.,上出)との整列を示す。数字は整列内に示されたそれぞれのタンパク
質の第1の残基を示す。コンセンサスとして示した残基は、A5及びRPTPκ、ある
いはA5及びmRPTPμの間で同一のものである。保存的置換は存在するが示してい
ない。太字の残基(C,W)は可能なIg様ドメイン構造を規定している。
図6は、種々のマウス組織からのポリ(A)+RNAのノーザンブロット分析を使
用した、成体組織中におけるRPTPκmRNAの発現を示す。クローンλ-604からの全
cDNA断片をプローブとして使用した。λ-50 cDNAクローン及びλ-35 cDNAクロー
ンのN-末端の半分をプローブとして使用して同様なハイブリダイゼーションパタ
ーンが見られた。kbで表したRNA分子量マーカーの位置を左側に示す。
図7は、RPTPκタンパク質の免疫沈降を示すゲルパターンである。リン酸カル
シウム法によりRPTP-ic発現ベクター(+)または空の発現ベクター(-)により
一時的にトランスフェクトしたヒーラ細胞を、細胞外ドメイン中の残基60〜76に
対応する合成ペプチドに対する抗血清116を使用して放射活性免疫沈降により分
析した。免疫沈降は、20μgの免疫原性ペプチドの不在下(-)又は存在下(+)
に行った(α−κ:抗RPTPκ抗血清116;pre:免疫前血清に対応する)。タンパ
ク質分子量標準(kDaで表した)の位置をオートラジオグラムの左側に示す。
図8は、抗RPTPκ免疫沈降物のタンパク質チロシンホスファターゼ活性を示す
。抗N-末端抗体116または対応する免疫前血清を使用して、一時的にトランスフ
ェクトされたCOS細胞からRPTPκタンパク質を免疫沈降させた。免疫複合体中のP
TPアーゼ活性を、
バナジウム酸塩の不存在下(-)または存在下(+)において分析した。無機リン
酸として放出された放射活性の量は、合計インプット放射活性のパーセンテージ
で表す。いくつかの実験の代表例を示す。
図9は、COS細胞中のRPTPκ免疫反応性種及びEndo F処理のSDS-PAGE移動に対
する効果を示す。偽トランスフェクト又はRPTPκトランスフェクトCOS細胞から
の全溶解物をEndo Fにより処理するか又はしないでおいた。溶解物をSDS-PAGEで
分離し、抗N-末端抗体116(左パネル)又は抗細胞質抗体122(右パネル)により
免疫ブロットした。偽トランスフェクト細胞中にも見られたパネルBの95 kDaバ
ンドはおそらく抗血清122の偶発的な反応性によるものであり、分析には直接関
係ない。異なるウサギの同じ抗原に対して生成された抗血清を使用しても、その
ようなタンパク質種は検出できなかった。
図10:RPTPκプロセシングのパルス追跡分析。偽トランスフェクト細胞(レー
ン1-2)及び野性型RPTPκ発現ベクターによりトランスフェクトされた細胞(レ
ーン3-6)を[35S]-メチオニン(200[μCi/ml)で15分間(「パルス」)代謝によ
り標識し、示した時間追跡した。抗血清116を使用して免疫沈降を行った。矢印
は210kDa RPTPκ前駆体及び110 kDa N-末端切断生成物の位置を示す。
図11は、フリン切断モチーフRTKRの突然変異生成のRPTPκプロセシングに対す
る影響を示す。偽トランスフェクトCOS細胞、wtRPTPκ、又はフリン切断モチー
フRTKR(CMκ)に変異を有するRPTP(κ)を発現する細胞からの全溶解物をSDS-
PAGEにより分離した。抗N-末端抗血清116(左パネル)又は抗細胞質抗血清122(
右パ
ネル)を使用して免疫ブロットを行った。
図12は、RPTPκプロセシング産物の同時免疫沈降を示す。偽トランスフェクト
COS細胞または野性型RPTPκトランスフェクトCOS細胞からの全溶解物を、抗N-末
端抗血清116を使用した免疫沈降にかけ、沈降物を抗細胞質抗血清122で免疫ブロ
ットした。対照として、RPTPκトランスフェクト細胞からの全溶解物を免疫ブロ
ットの右レーンに入れた。
図13A-Bは、発生中及び成体CNSにおけるRPTPκ発現のin situハイブリダイゼ
ーション分析を示す一連の顕微鏡写真である。13Aのパネルは、胎児18日におけ
るラット中でのRPTPκmRNAの位置を示す。CTX;大脳皮質、SC:脊髄、L;肝臓、
K;腎臓、I;腸。13Bパネルは、出産後6日におけるラット脳の頭蓋部分のRPTP
κmRNAの位置を示す。CTX;大脳皮質、CB;小脳、DG;歯状回。大脳皮質、特に
後頭部領域においては、全ての皮質細胞層において標識化は均一でない。海馬状
隆起形成においては、標識化は歯状回及びCA3においてより強い。小脳において
は、最も強い標識化は外部顆粒細胞層中に見られた。
図14は、R-PTP-κ前駆体タンパク質のプロセシングを示す分子モデルである。
フリン様エンドプロテアーゼが210kDa前駆体タンパク質を切断した後も、切断産
物の両方(110及び100 kDa)は結合したままである。結合のメカニズムについて
なんらかの提案をしようとするものではない。116及び122の数字は、本文中に記
載した抗血清により認識されるエピトープの部位を示す。
図15A-15Eは、MCP7と指称されるヒトRPTPκのヌクレオチド配列(配列番号4
)、及びそれから誘導されたアミノ酸配列(配列番
号2)を示す。
図16A-B:RPTPK κのアミノ酸配列(MCP7配列)とhRPTPμのアミノ酸配列との
比較。hRPTPμにおけるアミノ酸の記載の欠落はMCP7配列と同一であることを示
す。推定シグナルペプチド及びトランスメンブラン領域には上部の線とアスタリ
スク、切断部位には下線を付し、FN-III反復には上部に括弧を付し、Igドメイン
には上部に斜線を付し、A5及び2つのPTPアーゼドメインは枠で囲んだ。
図17は、ヒト組織からのMCP7 mRNAのノーザンブロット分析を示す。示した組
織から調製したポリ(A)+RNA(レーンあたり4μg)をMCP7の細胞外ドメインに
対応する32P-標識断片で釣り上げた。強化スクリーンを使用してブロットを5日
間の露出にかけた。
図18は、いくつかの異なるヒト乳癌細胞系からのMCP7 mRNAのノーザンブロッ
ト分析を示す。示した細胞系から調製したポリ(A)+RNA(レーンあたり4μg)
を図15のように釣り上げ、ブロットを同様に露出した。
図19A-Bは、トランスフェクト細胞におけるMCP7 mRNAの一時的な発現を示すゲ
ルパターンである。293系の細胞は、MCP7発現ベクター(又は対照として空のベ
クター)でトランスフェクトし、[35S]-メチオニンで24時間代謝により標識し、
抗N-末端抗血清116とインキュベートした。細胞を洗浄し、溶解し、タンパク質
A-セファロースによりタンパク質−抗体複合体を除去した。19Aパネルは免疫沈
降物のSDS-PAGEゲルを示す。19Bパネルは、MCP7-CMV(レーン1)又は「空の」C
MV(レーン2)によりトランスフェクトされ、抗N-末端抗血清116により免疫ブ
ロットされた細胞の溶解
物のSDS-PAGEゲルのウェスタンブロットを示す。
図20A-Bは、種々のRTKとのMCP7の同時発現を示すウェスタンブロットパターン
を示す。ややコンフルエント(semiconfluent)な293細胞を、等量のMCP7発現ベ
クターまたは対照プラスミドとともに、示したRTKをコードする発現プラスミド
でトランスフェクトした。適当なリガンド、p145c-kitRTKについての幹細胞因子
(SCF);その他の全てのRTKについての表皮成長因子;I-Rについてのインシュ
リンによる剌激の後、細胞を溶解し、アリコートをSDS-PAGE上に流し、ニトロセ
ルロースに移した。タンパク質を抗ホスホチロシン抗体5E.2により免疫ブロット
した。分子量マーカーを示す。
図21A-Bは、MCP7 mRNAレベルと、培養におけるSK-BR-3細胞(21A)及びHT-29
細胞(21B)における細胞のコンフルエントな状態との間の関係を表すノーザン
ブロットを示す。異なるコンフルエントレベル(レーン1及び4:40%、レーン
2及び5:70%、レーン3及び6:100%)において得た細胞からポリ(A)+RNA(
レーンあたり4μg)を調製し、MCP7の細胞外ドメインに対応する32P-標識DNAプ
ローブ(上部ブロット)、及びGAPDHをコードする断片(下部ブロット)で釣り
上げた。
図22A:トランスフェクトされたS2細胞におけるR-PTPκタンパク質の発現。ト
ランスフェクト細胞から洗剤溶解物を調製し、SDS-PAGEで分離し、R-PTP κタン
パク質の細胞外ドメインに対する抗血清により免疫ブロットした(Y.-P.Jiang
et al.Mol.Cell.Biol.13,2942(1993))。レーン1:熱ショックを与えられ
たものではない、R-PTP κアンチセンストランスフェクト細胞、2:熱
ショック後にアンチセンストランスフェクトされたもの、3:熱ショックを与え
られたものではない、センストランスフェクトされたもの、4:熱ショック後に
センストランスフェクトされたもの、5:R-PTPκ発現ベクターにより一時的にト
ランスフェクトされたCOS細胞からの溶解物(Y.-P.Jiang et al.Mol.Cell.B
iol.13,2942(1993))。分子量標準はキロダルトンで示す。
RPTPκccDNAの全体を、hsp70プロモーターを含むpCasper発現ベクターの誘導
体のHpal部位に、Hpal/EcoRV断片として両方向に導入し、得られた構築物を、リ
ン酸カルシウム沈降を使用してS2細胞中にpPC4プラスミド(α−アマニチン耐性
を与える)と同時トランスフェクトした。安定にトランスフェクトされた細胞の
プールを、3週間にわたって5μg/mlのα−アマニチンの存在下に選択した。ト
ランスフェクト細胞に37℃で30分間熱ショックを与え、2時間回復させた。接着
細胞を回収し、BSS中で2回洗浄した(Kramer,H.etal.,1991,Nature 352:20
7;Snow,P.etal.,1989,Cell59:313)。
図22B-C:熱ショック誘導及び2時間の凝集の後のトランスフェクト細胞集団の
写真。22Bパネル:対照(アンチセンスにトランスフェクトされた)細胞、22Cパ
ネル:R-PTPκcDNAを有する発現ベクターによりセンス方向にトランスフェクトさ
れた細胞、挿入した写真:典型的な凝集のより高い倍率のもの。
図22D:時間の経過と上部閾値粒子のコールターカウンターでの計数による凝集
の定量。白抜き四角:アンチセンスベクタートランスフェクト細胞、非誘導、黒
四角:同上、誘導、白抜き丸:R-PTPκccDNAを含む発現ベクターによりセンス方
向にトランスフェ
クトされた細胞、非誘導、黒丸:センス、誘導。標準誤差は誤差バーにより示し
た。
接着性のトランスフェクト細胞を回収し、BSSで2回洗浄し、BSS中に4×106
細胞/mlの濃度で再懸濁し、回転振盪器上100rpmで2時間、コールターカウンタ
ーバイアル中で室温でインキュベートした。各時点で、以下のセッティングでコ
ールターカウンターを使用して1mlを計数した。1/増幅=4、閾値=10、1/開口
電流=32。
図22E:R-PTPκタンパク質の細胞内ドメインの欠失、及びフリン切断部位の変
異の影響。S2親細胞を、フリン切断部位が変異されたR-PTP κcDNAをコードする
発現ベクター(CM)(Y.-P.Jiang et al.Mol.Cell.Biol.13,2942(1993))
、細胞内(PTPアーゼ)ドメイン(Δ-PTP)の殆どを欠くR-PTP κの触媒的に不活
性な欠失変異体をコードするcDNA、又はwt R-PTPκcDNA(wt)により一時的にト
ランスフェクトした。欠失変異体については、RPTPκの切断され、触媒的に不活
性な形態(Δκ)をコードするcDNAを、野性型cDNAのBspEIによる制限消化とク
レノウ充填により構築した。これにより、アミノ酸残基1083の後に停止コドンが
導入され、RPTPκの2つの細胞内触媒相同ドメインにおける触媒作用に必須のシ
ステイン残基を欠くタンパク質が生成した。トランスフェクトの72時間後、細胞
を熱誘導し、2時間凝集条件にかけ、上部閾値凝集物をコールターカウンターで
計数した。誤差バーは標準誤差を示している。トランスフェクトしたが熱ショッ
ク誘導していない細胞は、トランスフェクトされていない親細胞のように挙動し
た。R-PTP κの異なる形態間では、凝集の強度の見かけ
上の差異はタンパク質発現のレベルを反映し得る。コールターカウンター計数に
より得られた数値は、実際、視覚的観察と凝集物の計数により測定した凝集の量
を下回る。これは、一定の閾値サイズを上回る大きい粒子のみがコールターカウ
ンターによりカウントされるからである。
図23A-C:凝集物は、R-PTP κタンパク質を発現する細胞のみからなる。一方が
蛍光染料diIで標識された(J.Schlessinger et al.Science 195,307(1977))
2種の異なる細胞集団を同時に凝集させ、得られた凝集物を視覚的に、及び蛍光
顕微鏡により観察した。diI-蛍光は写真において白くみえる。
23A:diI−染色R-PTP κ−陰性細胞の等しい数の存在下で、R-PTP κ発現細胞の
プールを凝集させた。
23B:R-PTPκ発現細胞をdiIで染色し、非染色RPTPκ−陰性細胞の存在下で凝集
させた。
23C:染色及び非染色R-PTPκ−陽性細胞の混合物。
それぞれの場合、10個の凝集物をランダムに可視光のみの下に位置させた。その
後のUV光による観察により、矛盾することなく写真に例示した染色パターンが示
された。熱ショックの間、diI染料(Molecu1ar Probes,Inc.)を3.2μMの濃度
で増殖培地に加え、回収とアッセイの前に洗浄除去した。各集団の2×106細胞
を混合し、1mlの全容量中で同時に凝集させた。
図24A-D:R-PTPκトランスフェクト細胞の組換え体精製R-PTPκ細胞外ドメイン
タンパク質で被覆された表面への接着。R-PTP κ−陰性、24A、若しくは陽性、2
4B、S2細胞、又はR-PTP κ−陰性、24C、及び陽性、24D、L6細胞を、K2APタンパ
ク質により
部分的に被覆された表面(円形)とインキュベートし、接着した細胞を固定し染
色した。RPTPκプロタンパク質のアミノ酸1-639を、一連の適当なクローン化段
階により、ベクターpBacblue III(Invitrogen)中でヒト胎盤アルカリホスファ
ターゼとフレーム内融合させた。組換え体ウィルスを生成し、これを使用して標
準的な方法を使用したK2AP融合タンパク質の製造のためにHigh-Five細胞に感染
させた。APのシグナルペプチドとの融合タンパク質をコードするAP-TAGベクター
の改変バージョンによる安定なトランスフェクションにより、分泌されたアルカ
リホスファターゼ(AP)対照タンパク質がL6筋原細胞中に生成した。両方のタン
パク質を、100 mMジエタノールアミンpH 11.5、又は50%エチレングリコールを使
用する抗アルカリホスファターゼモノクローナル抗体(Medix Biotech)カラム
からの溶出によりアフィニティ精製し、PBSに対して透析し、4℃で貯蔵した。
銀染色により測定して、K2AP及びAPタンパク質はそれぞれ約90%及び50%の純度で
あった。RPTPκタンパク質を発現する哺乳類細胞系を生成するため、MJ30をベー
スとするRPTPκ発現ベクターをpSVneoとともにL6細胞中に同時にトランスフェク
トし、G418選択に生存する個々のクローンを免疫ブロットを使用して発現につい
てスクリーニングした。この手順では、L6親細胞中に内因的なRPTPκタンパク質
は検出されなかった。発現されたタンパク質は、これまでに記載されたようにし
て適当なフリン切断にかけた(Jiang,Y.-P.,et al.,1993,Mol.Cell.Biol
.13,2942)。
接着アッセイについては、タンパク質試料の4μlのアリコート(20 μg/ml
)を細菌学で使用される35 mmペトリ皿上にスポッ
トし、室温で30分間インキュベートした。溶液を吸引して除去し、全体のプレー
トの表面を1%熱不活性化BSAで60〜90分ブロックした。プレートを振盪しながら
(50 rpm)、1時間室温で、BSS中のS2細胞の懸濁液(4×106/ml)とともにイ
ンキュベートするか、又はS-MEM中のL6細胞(2×106/ml)とともに37℃で振盪す
ることなくインキュベートし、PBSで3回洗浄し、固定し、染色した。
5.発明の詳細な説明
組換えDNA方法の使用により、本発明者らは新規な哺乳類受容体型(トランス
メンブラン)タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPase;EC 3.1.3.48)を同
定した。その受容体様構造、およびそれがファミリーの一部であるという可能性
に鑑みて、本発明者らはこのタンパク質をRPTPκ(受容体タンパク質チロシンホ
スファターゼーκ)と称した。そのファミリーが以下“RPTP”と称される。ヒト
RPTPκは1444アミノ酸を有する(配列番号2)。
ヒトRPTPκ(またMCP7と称される)は一つの“MAM”ドメインを含む細胞外ド
メインを有し、これは約170のアミノ酸残基をスパンする配列モチーフであり、
これが最近幾つかの機能上異なる受容体(RPTPμおよびA5タンパク質を含む)の
比較により証明され、そして細胞付着に役割を果たすと考えられている(Beckma
nn & Bork,1993,TIBS 18:40-41)。細胞外ドメインは一つのIg様セグメント
および4つのFNIII型様セグメントを更に含む。それ故、それは幾つかの細胞付
着分子と構造上の特徴を共有し、II型PTPaseクラスへのRPTPκの分類を許す。
ヒトRPTPκのcDNAクローニング並びにヒトRPTPκおよびそのマウス同族体の完
全DNA配列およびアミノ酸配列が本明細書に記載される。ノーザン分析が種々の
細胞および組織中のタンパク質の自然発現を同定するのに使用されていた。RPTP
κ/HPTPκの触媒ドメインの部分cDNAクローンが先に記載されていた(共有して
譲渡されている米国特許出願第07/654,188号(これから本件出願が優先権を主張
している);Kaplanら,Proc.Natl.Acad.Sci.87:7000-7004(1990);Kruegerら,
EMBO J.9:3241-3252(1990))。
RPTPκはラットの脳の解剖学上異なる領域中で発現されることが示され、そし
てその発現が発達調節されることがわかった。
注目すべきことに、酵素活性を有する細胞内ドメインを含むことに加えて、RP
TPが属する受容体ファミリーはチロシンキナーゼ酵素ファミリーに類似するN末
端細胞外ドメインを有するトランスメンブランタンパク質を含む(Tonks,N.K.
ら(1988)Bi-ochemistry 27:8695-8701;Charbonneau,H.ら(1988)Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA 85:7182-7186;Streuli,M.ら(1988)J.Exp.Med.168:1523-2530;
Streuli,M.ら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8698-8702)。それ故、本発明
者らは、細胞外環境中のリガンドがPTPaseのこの膜関連サブクラスの活性を調節
し得るものと結論した。
更に、本発明において示された結果は、II型RPTPが同種親和性結合を行い、即
ち、II型RPTP受容体分子が互いに結合する能力を有することを実証する。ここに
定義されたような同種親和性結合は、細胞内結合および/または同細胞の表面に
存在する少なくとも2つのII型RPTP受容体タンパク質の結合を含んでもよい。加
えて、同種親和性結合は互いに同一のII型RPTP分子の結合、例えば、少なくとも
二つのRPTPκ分子の互いの結合を含んでもよいだけでなく、互いにいずれか2つ
のII型RPTP分子の結合、例えば、別のII型RPTP分子へのRPTPκの結合を含んでも
よい。下記の項目15に示された実施例において実証されるように、RPTPκはその
他のRPTPκ分子への細胞内の同種親和性結合を行う。この結果は分子のRPTPファ
ミリー内で観察されたこのような同種親和性結合機構の最初の例に相当し、そし
て細胞間接触とチロシンホ
スホリル化を伴う細胞シグナリングイベントとの関連を与える。
RPTPκは、PTPアーゼ酵素活性を活性化または抑制でき、それにより細胞代謝
の重要な経路に影響することができる薬剤およびその他の作用剤のスクリーニン
グに有益である。無傷のRPTPκ、またはそのリガンド結合部分を固相マトリック
スに結合することにより、生物産物または化学作用剤をそれらの結合アッセイに
基いて受容体と相互作用するそれらの能力につきスクリーニングするのに使用し
得るアフィニティープローブがつくられる。次に結合物質が精製形態でアフィニ
ティープローブから溶離し得る。
RPTPκはまた、II型RPTP同種親和性結合を抑制でき、こうして、細胞間相互作
用および/または細胞-ECM(細胞外マトリックス)相互作用を伴うが、これらに
限定されない重要なプロセスに影響することができる薬剤およびその他の作用剤
のスクリーニングに有益である。無傷のII型RPTP、例えば、RPTPκ、またはその
細胞外ドメインを固体マトリックスに結合することにより、薬剤またはその他の
作用剤がRPTPを結合するそれらの能力につきスクリーニングし得る。RPTPを特異
的に結合する作用剤が精製形態で固相マトリックスから溶離され、そしてRPTP同
種親和性結合を抑制するそれらの能力につき更に試験し得る。本明細書に記載さ
れたRPTP同種親和性結合の抑制は少なくとも二つの同じII型RPTP分子、例えば、
少なくとも二つのRPTPκの互いの結合を表すだけでなく、分子のいずれかのII型
RPTPクラスの互いの結合、例えば、別のII型RPTP分子へのRPTPκの結合を表すこ
とが本発明の範囲内で意図されていることに注目されたい。このようなII型RPTP
結合を抑制し得る潜在的な作用剤として、II型RPTP細胞
外ドメインの可溶性部分、II型RPTP細胞外ドメインエピトープに対し誘導される
抗体、または小さい合成分子が挙げられるが、これらに限定されない。RPTP細胞
外ドメインは、MAM、Ig、および/またはフィブロネクチンIII型(FN-III)ドメ
インの全ての、またはいずれかの抑制部分、並びに下記のHAV、および/またはR
XR/LRコンセンサス配列を含むペプチドを含んでいてもよい。同種親和性RPTP結
合を抑制する抑制性化合物のいずれかが、結合能が影響されるRPTP分子のホスフ
ァターゼ活性を調節するのに必要とされなくてもよい。
更に、II型RPTPκ同種親和性結合を抑制する化合物の能力が種々の方法で試験
し得る。RPTPκは例として使用されるが、このような技術はあらゆるII型RPTP分
子に使用し得ることが明らかに保たれるべきである。RPTPκ、またはその細胞外
ドメインが最初に当業者に公知の技術を使用して固体マトリックスへの結合によ
り固定化されてもよい。このような固体マトリックスとして、ペトリ皿、ミクロ
タイターウェル、またはガラス、プラスチックもしくはアガロースビーズが挙げ
られるが、これらに限定されない。第二に、精製タンパク質形態のRPTPκ、また
は細胞膜調製物中に存在し、もしくは無傷細胞の表面に存在するRPTPκが、関係
する化合物と一緒に固体マトリックスの存在下でインキュベートされてもよい。
次に固体マトリックスへのRPTPκ同種親和性結合を抑制する化合物の能力は、RP
TPκ分子が固定化された分子を結合するかどうかを測定することにより分析し得
る。このような測定は当業者に公知の種々の技術を使用して行われてもよく、精
製形態、細胞膜調製物中、または無傷細胞中に存在するRPTPκの標
識が挙げられるが、これらに限定されない。また、関係する化合物は、RPTPκ発
現細胞を関係する化合物の存在下でインキュベートし、続いて凝集を行う細胞の
能力を分析することにより試験し得る。凝集アッセイとして、顕微鏡の助けを使
用する凝集物の直接のカウンティング、および/またはコウルター−カウンター
による過閾値粒子の測定が挙げられるが、これらに限定されない。
タンパク質およびペプチドを固相のマトリックスまたは担体にカップリングす
る方法、これらの方法に有益な固相マトリックス材料、並びに溶離のための手段
が、当業者に公知である。
酵素活性を有するRPTPκタンパク質、またはその誘導体が、ホスファターゼ活
性を増進または抑制できる作用剤または化合物を試験するのに使用し得る。試験
下でホスファターゼ活性を改質する化合物の能力が試験管内の系で試験でき、こ
の系において、その試験化合物が精製RPTPκタンパク質、またはその酵素活性誘
導体に添加され、そして酵素活性に関する効果が当業者に公知の通常の酵素学的
方法を使用して測定される。
また、RPTPκ酵素活性に対する化合物の作用が、生細胞もしくは固定細胞、ま
たは生細胞もしくは固定細胞に由来の膜フラクションを使用して全細胞調製物中
で測定し得る。この方法は、タンパク質の細胞外受容体部分により作用する化合
物だけでなく、タンパク質の酵素部分に直接作用する化合物をスクリーニングす
るのに有益である。試験化合物が細胞と共に、または多量のRPTPκを発現するそ
れに由来する膜調製物、例えば、トランスフェクトされたCOS細胞もしくはNIH-3
T3細胞と共にインキュベートされる。次に細胞ホスホチロシンの量が当業界で公
知の方法(Honegg
er,A.M.ら,Cell 51:199-209(1987);Margolis,B.ら,Cell 57:1101-1107(198
9))を使用して測定される。これらの結果が試験化合物の不在下で、またはRPTP
κ酵素活性の既知アクチベーターの不在下もしくは存在下で得られた結果と比較
される。このような研究において、チロシンキナーゼのアクチベーターの存在下
における試験化合物の作用がまた測定し得る。RPTPκ酵素活性を剌激する化合物
はホスホチロシンの量の正味の減少をもたらし、一方、RPTPκ酵素活性を抑制す
る化合物はホスホチロシンの量の正味の増加をもたらすであろう。また、同種親
和性II型RPTP結合を抑制する化合物は、RPTPのホスファターゼ活性を増大または
低下することにより、それらが影響するRPTP分子の酵素活性を調節し得る。
チロシンキナーゼである成長因子受容体、例えば、上皮成長因子(EGF)の受
容体および血小板由来成長因子(PDGF)の受容体の場合、チロシンホスホリル化
が細胞増殖および癌遺伝子形質転換に関連している。脱ホスホリル化をもたらす
PTPaseの活性化は増殖を阻止または抑制するための逆抑制機構として利用でき、
また癌に対する内因性調節機構として利用できるかもしれない。こうして、この
受容体/酵素系の突然変異または調節不全(dysregulation)が癌に対する感受
性を促進するかもしれない。
II型RPTP同種親和性結合を抑制できることが知られている抑制性化合物は、細
胞間相互作用および/または細胞-ECM相互作用を伴う細胞プロセスを含むが、こ
れらに限定されない種々の細胞プロセスを調節するのに使用し得る。このような
プロセスとして、正常な細胞機能、例えば、分化および細胞サイクルの調節;運
動
性、接触抑制、細胞付着、およびシグナル変換を含むが、これらに限定されない
正常な細胞挙動;並びに異常または潜在的に有害なプロセス、例えば、癌状態へ
の細胞の形質転換が挙げられるが、これらに限定されない。
II型RPTP同種親和性結合を抑制する抑制性化合物が、当業者に公知の技術を使
用して、哺乳類への有効濃度の抑制性化合物の投与により哺乳類のこのようなプ
ロセスを調節するのに使用し得る。抑制性化合物として、可溶性RPTP II型細胞
外ドメイン、例えば、可溶性RPTPκ細胞外ドメインを含む化合物が挙げられるが
、これらに限定されない。
治療される症状に応じて、作用剤が製剤化され、そして全身または局所投与さ
れてもよい。製剤化および投与に関する技術が“レミントンの医薬科学”、マッ
ク・パブリッシング社、イーストン、PA、最新編に見られる。適当な経路として
、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、または腸投与;筋肉内注射、皮下注射、髄
内注射を含む非経口の送出、並びに、二三の名を挙げれば、髄腔内注射、直接心
室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射、または眼内注射が挙げられる。
注射につき、本発明の作用剤は水溶液、好ましくは生理適合性緩衝液、例えば、
ハンク液、リンゲル液、または生理食塩緩衝液中で製剤化し得る。このような経
粘膜投与につき、透過されるバリヤーに適した浸透剤が製剤化に使用される。こ
のような浸透剤が当業界で一般に知られている。
インスリン受容体がまたチロシンキナーゼであり、そしてインスリン受容体を
有する細胞中のチロシンのホスホリル化が正常な生理機能と関連しているであろ
う。細胞増殖および癌の場合と対
照的に、RPTPの活性化はインスリン効果に逆作用するであろう。正常以下のRPTP
レベルまたは酵素活性が正常な逆調節機構を除去するように作用するであろう。
RPTP、例えば、RPTPκのおそらく更に重要であるが、過剰の活性、または不適当
な活性化が細胞に対するインスリンの作用を部分的または完全に抑制して糖尿病
(インスリン耐性変種の)をもたらすものと予想されるであろう。こうして、糖
尿病に対する感受性はRPTPκ調節不全と関連しているかもしれない。
それ故、RPTPκをコードする正常な遺伝子または突然変異遺伝子を同定し、ま
たは細胞もしくは組織と関連したRPTPκの量もしくは活性を測定する本発明の方
法は、癌、糖尿病、または細胞ホスホチロシン代謝の変化と関連するその他の疾
患に対する感受性を同定する方法として利用できる。
本発明は、細胞または被験者中の正常なRPTPκまたは突然変異RPTPκの存在、
およびそのレベルを評価する方法を提供する。個人中のRPTPκの不在、または典
型的には低い発現、または突然変異RPTPκの存在は、癌遺伝子形質転換に対する
感受性および癌の発生の重要な予測として利用し得る。また、おそらく負の調節
に不感受性の変異体受容体/酵素系のため、または生体中の剌激性リガンドの過
剰発生量のためのRPTPκの過剰発現が、糖尿病に対する感受性の重要な予測とし
て利用し得る。
RPTPκの一部をコードするDNA配列に相当するオリゴヌクレオチドプローブ(
以下を参照のこと)が、RPTPκをコードするDNA配列またはRNA配列の存在につき
被験者からの細胞を試験するのに使用される。好ましいプローブは、RPTPκの少
なくとも4のア
ミノ酸残基、好ましくは少なくとも5のアミノ酸残基をコードする核酸配列に関
するプローブであろう。定性アッセイまたは定量アッセイが、このようなプロー
ブを使用して行い得る。例えば、ノーザン分析(下記の項目7を参照のこと)が
、細胞または組織調製物中のRPTPκ mRNAの発現を測定するのに使用される。
このような方法は、選択的増幅技術の使用後に、個人から得られた非常に少量
のDNAを用いてさえも使用し得る。精製核酸フラグメントを増幅できる組換えDNA
方法が長い間認められていた。典型的には、このような方法はDNAまたはRNAベク
ターへの核酸フラグメントの導入、そのベクターのクローン増幅、および増幅さ
れた核酸フラグメントの回収を伴う。このような方法の例がCohenら(米国特許
第4,237,224号明細書)、Sambrookら,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUA
L,Second Edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(198
9)により提供され、これらの文献が参考として本明細書に含まれる。
このような所望の核酸分子の濃度を増大できる試験管内酵素方法が“ポリメラ
ーゼ連鎖反応”または“PCR”と称される(Mullis,K.ら, Cold Spring Harbo
r Symp.Quant.Biol.51:263-273(1986);Erlich,H.ら,欧州特許第50424号、
同第84796号、同第258017号、同第237362号;Mullis,K.,欧州特許第201184号
;Mullis,K.ら,米国特許第4,683,202号;Erlich,H.,米国特許第4,582,788号
;およびSaiki,R.ら,米国特許第4,683,194号)。
PCRは、特定の核酸配列が既に精製されておらず、そして特定の試料中に単一
コピーでのみ存在する場合でさえも、その配列の濃度を選択的に増大する方法を
与える。その方法は一本鎖または
二本鎖DNAを増幅するのに使用し得る。その方法は所望の核酸分子の鋳型依存性
ポリメラーゼ介在性複製のプライマーとして利用できる二つのオリゴヌクレオチ
ドプローブを使用する。
PCR法の二つのオリゴヌクレオチドプローブの正確な性質がその方法の成功に
重要である。核酸分子のポリメラーゼ依存性増幅は、核酸分子の3’ヒドロキシ
ル末端への5’ヌクレオチドトリホスフェートの付加により進行する。こうして
、ポリメラーゼの作用は核酸分子の3’末端を延長する。これらの固有の性質がP
CRのオリゴヌクレオチドプローブの選択において説明される。プローブのオリゴ
ヌクレオチド配列は、それらが増幅が所望される特定の核酸配列に隣接する配列
と同一または相補性の配列を含むように選ばれる。更に詳しくは、“第一”プロ
ーブのオリゴヌクレオチド配列は、それが所望の配列に3’に配置されたオリゴ
ヌクレオチド配列にハイブリッドを形成できるように選ばれ、一方、“第二”プ
ローブのオリゴヌクレオチド配列は、それが所望の領域に5’に存在するオリゴ
ヌクレオチド配列と同一のオリゴヌクレオチド配列を含むように選ばれる。両方
のプローブは3’ヒドロキシ基を有し、それ故、核酸合成のプライマーとして利
用できる。
PCR反応条件は、(a)ハイブリダイゼーションおよび核酸重合を誘導する条件
と、(b)二重鎖分子の変性を生じる条件の間でサイクルされる。その反応の第
一工程において、二本鎖分子を変性するために、試料の核酸が一時的に加熱され
、次に冷却される。次に“第一”プローブおよび“第二”プローブが、所望の核
酸分子の濃度を大幅に越える濃度で試料に添加される。ハイブリダイゼーション
および重合を誘導する条件下のインキュベーションの
際に、“第一”プローブは増幅すべき配列に3’の位置で試料核酸分子にハイブ
リッドを形成するであろう。試料の核酸分子が初期に二本鎖であった場合、“第
二”プローブは増幅が所望される配列の補体である配列に3’の位置で試料核酸
分子の相補鎖にハイブリッドを形成するであろう。ポリメラーゼの添加の際に、
“第一”プローブおよび(試料の核酸分子が二本鎖であった場合の)“第二”プ
ローブの3’末端が延長されるであろう。“第一”プローブの延長は所望の核酸
の正確な配列を有するオリゴヌクレオチドの合成をもたらすであろう。“第二”
プローブの延長は所望の核酸の補体の正確な配列を有するオリゴヌクレオチドの
合成をもたらすであろう。
PCR反応は特定の核酸配列を指数増幅することができる。何となれば、必要な
“第一”プローブの延長産物が“第二”プローブの配列に相補性である配列を含
み、こうして“第二”プローブの延長産物の製造のための鋳型として利用できる
からである。同様に、必要な“第二”プローブの延長産物は“第一”プローブの
配列に相補性である配列を含み、こうして“第一”プローブの延長産物の製造の
ための鋳型として利用できる。こうして、重合、および変性のサイクルを可能に
することにより、所望の核酸分子の濃度の幾何学的増大が達成し得る。PCRの総
説につき、Mullis,K.B.ら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263-27
3(1986);Saiki,R.K.ら,BioTecnology 3:1008-1012(1985);Mullis,K.B.ら
,Meth.Enzymol.155:335-350(1987)を参照のこと。
一実施態様において、本発明は天然産哺乳類RPTPκに関する。
別の実施態様において、本発明は組換え哺乳類RPTPκに関する。本発明の好まし
い哺乳類RPTPκはヒト起源のものである。本発明は、それが自然に混在するその
他のタンパク質を実質的に含まない天然産分子を提供する。“その他のタンパク
質または糖タンパク質を実質的に含まない”は、そのタンパク質がそれが自然に
混在するその他のタンパク質および糖タンパク質の少なくとも90%(重量基準で
)、更に所望される場合には少なくとも99%を精製して除かれており、それ故、
それらを実質的に含まないことを示す。それは、RPTPκを含む細胞、組織または
液体を通常のタンパク質精製技術、例えば、タンパク質に特異的な抗体を有する
免疫吸着カラムにかけることにより達成し得る。アフィニティー精製のその他の
形態は、RPTPの酵素ドメインを結合する固相基質、またはその受容体ドメインに
結合するリガンドを使用する。また、精製は通常の方法の組み合わせ、例えば、
硫酸アンモニウム沈殿、モレキュラーシーブクロマトグラフィー、およびイオン
交換クロマトグラフィーにより行い得る。
本発明のRPTPκは種々の細胞源または組織源から生化学的に精製し得ることが
理解されるであろう。天然産RPTPκの調製につき、特にヒト起源の哺乳類の脳の
如き組織が好ましい。
また、RPTPκの遺伝子が単離または合成し得るので、ポリペプチドは原核生物
または所望により非哺乳類の真核生物中でその他の哺乳類のタンパク質または糖
タンパク質を実質的に含まないで合成し得る。本発明により意図されるように、
哺乳類細胞、例えば、トランスフェクトされたCOS細胞、NIH-3T3細胞、またはCH
O細胞中で産生された組換えRPTPκ分子は、天然産アミノ酸配
列を有するタンパク質であり、またはその機能性誘導体である。天然産タンパク
質または糖タンパク質が組換え手段により製造される場合、それはそれが自然に
混在するその他のタンパク質および糖タンパク質を実質的に含まないで提供され
る。
また、固相担体における所望の配列のポリペプチドの合成そしてその後の担体
からのそれらの分離のための方法は公知である。
本発明はRPTPκの幾つかの“機能性誘導体”のいずれかを提供する。“機能性
誘導体”はRPTPκの“フラグメント”、“変異体”、“類縁体”、または“化学
誘導体”を意味し、これらの用語が以下に定義される。機能性誘導体はRPTPκの
機能の一部、例えば、(a)特定の抗体への結合、(b)ホスファターゼ酵素活性
、または(c)リガンドへの細胞外“受容体”ドメインの結合(これは本発明に
従ってその実用性を可能にする)を少なくとも保持する。
RPTPκの“フラグメント”は、その分子のあらゆるサブセット、即ち、短いペ
プチドを表す。
RPTPκの“変異体”は全ペプチドまたはそのフラグメントに実質的に類似する
分子を表す。変異体ペプチドは、当業界で公知の方法を使用して、変異体ペプチ
ドの直接化学合成により都合よく調製し得る。
また、ペプチドのアミノ酸配列変異体は、合成ペプチドをコードするDNA中の
突然変異により調製し得る。このような変異体として、例えば、アミノ酸配列か
らの欠失、またはアミノ酸配列内の残基の挿入もしくは置換が挙げられる。また
、欠失、挿入、および置換のあらゆる組み合わせは、最終構築物が所望の活性を
有
することを条件として、最終構築物に到達するようになされてもよい。明らかに
、変異体ペプチドをコードするDNA中でなされる突然変異は読み取り枠を変化し
てはならず、好ましくは二次mRNA構造を生じ得る相補性領域を生じないであろう
(欧州特許公告第75444号明細書を参照のこと)。
遺伝子レベルで、これらの変異体は、通常、タンパク質またはペプチド分子を
コードするDNA中のヌクレオチドに部位誘導突然変異誘発(Adelmanら,DNA 2:18
3(1983)により例示される)させ、それにより変異体をコードするDNAを生産し、
その後組換え細胞培養物中でそのDNAを発現することにより調製される。変異体
は典型的には非変異体タンパク質またはペプチドと同じ定性的な生物活性を示す
。
RPTPκの“類縁体”は全分子またはそのフラグメントに実質的に類似する非天
然分子を表す。
RPTPκの“化学誘導体”は、通常、そのペプチドの一部ではない付加的な化学
部分を含む。RPTPκタンパク質またはそれから誘導されたペプチドの共有結合修
飾が本発明の範囲内に含まれる。このような修飾は、ペプチドの標的アミノ酸残
基を、選択された側鎖または末端残基と反応できる有機の誘導体化剤と反応させ
ることによりその分子に導入し得る。
システイニル残基は最も普通にはα−ハロアセテート(および相当するアミン
)、例えば、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドと反応させられてカルボキシ
メチル誘導体またはカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。また、システイニ
ル残基はブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)
プ
ロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニト
ロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロ
水銀ベンゾエート、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7
−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応により誘導体化され
る。
ヒスチジル残基はpH5.5-7.0でジエチルプロカーボネートとの反応により誘導
体化される。何となれば、この作用剤はヒスチジル側鎖に対し比較的特異的であ
るからである。また、パラ−ブロモフェナシルブロミドが有益である。その反応
はpH6.0で0.1Mのナトリウムカコジレート中で行われることが好ましい。
リジニル残基およびアミノ末端残基は無水コハク酸またはその他の無水カルボ
ン酸と反応させられる。これらの作用剤による誘導体化はリジニル残基の電荷を
反転する効果を有する。α−アミノを含む残基を誘導体化するのに適したその他
の試薬として、イミドエステル、例えば、メチルピコリンイミデート;ピリドキ
サルホスフェート;ピリドキサル;クロロホウ水素化物;トリニトロベンゼンス
ルホン酸;O−メチルイソ尿素;2,4−ペンタンジオン;およびグリオキシレ
ートとのトランスアミナーゼ触媒反応物が挙げられる。
アルギニル残基は、一種または数種の通常の試薬、それらの中でもフェニルグ
リオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、および
ニンヒドリンとの反応により修飾される。アルギニン残基の誘導体化は、その反
応がグアニジン官能基の高Kaのためにアルカリ条件で行われることを必要とする
。更に、これらの試薬はリジンの基並びにアルギニンε−アミノ基
と反応し得る。
チロシル残基の特定の修飾それ自体は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテト
ラニトロメタンとの反応によりスペクトル標識をチロシル残基に導入することに
特別な関心をもって徹底的に研究された。最も普通には、N−アセチルイミジゾ
ールおよびテトラニトロメタンが、それぞれO−アセチルチロシル種および3−
ニトロ誘導体を生成するのに使用される。
カルボキシル側鎖基(アスパルチルまたはグルタミル)はカルボジイミド(R
’-N-C-N-R’)、例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−(4
−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジ
メチルペンチル)カルボジイミドとの反応により選択的に修飾される。更に、ア
スパルチル残基およびグルタミル残基はアンモニウムイオンとの反応によりアス
パラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、温和な酸性条件下で相当する
グルタミル残基およびアスパルチル残基に脱アミド化されてもよい。これらの残
基の両方の形態が本発明の範囲内に入る。
二官能性作用剤による誘導体化がタンパク質またはペプチドを水不溶性担体マ
トリックスまたはその他の巨大分子キャリヤーに架橋するのに有益である。普通
使用される架橋剤として、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェ
ニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例
えば、4−アジドサリチル酸とのエステル、ジスクシンイミジルエステル、例え
ば、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジル−プロピ
オネート)を含むホモ二官能性イミドエステル、および二官能性マレイミド、例
えば、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンが挙げられる。メチル−3−[
(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートの如き誘導体化剤は、光の
存在下で架橋を形成できる光活性化可能な中間体を生じる。また、反応性の水不
溶性マトリックス、例えば、臭化シアン活性化炭水化物および米国特許第3,969,
287号;同第3,691,016号;同第4,195,128号;同第4,247,642号;同第4,229,537号
;および同第4,330,440号明細書に記載された反応性基質がタンパク質固定化に
使用される。
その他の修飾として、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基ま
たはスレオニル残基のヒドロキシル基のホスホリル化、リシン側鎖、アルギニン
側鎖、およびヒスチジン側鎖のX−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,PROTE
INS:STRUCTURE AND MOLECULE PROPERTIES,W.H.Freeman & Co.,San Francis
co,PP.79-86(1983))、N末端アミンのアセチル化、並びに、或る場合には、
C末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
このような誘導体化部分は、溶解性、吸収、生物半減期、等を改良し得る。そ
の部分はまたタンパク質の望ましくない副作用等を排除し、または弱め得る。こ
のような作用を媒介できる部分が、例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICALSCIENC
ES,16th ed.,Mack Publishing CO.,Easton,PA(1980)に開示されている。
また、本発明はRPTPκ、好ましくは、ヒトRPTPκのエピトープに特異的な抗体
、および細胞、細胞抽出物もしくは組織抽出物、または生体液中のRPTPκの存在
を検出し、またはその量もしくは濃度を測定するためのこのような抗体の使用に
関する。
“抗体”という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、
キメラ抗体、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体を含むことを意味する。
ポリクローナル抗体は、抗原、好ましくはRPTPκタンパク質もしくは糖タンパ
ク質、それらに由来するペプチドまたはそれらのエピトープで免疫された動物の
血清に由来する抗体分子の異種集団である。
モノクローナル抗体は、特定の抗原の抗体の実質的に同種の集団である。mAb
は当業者に知られている方法により得られてもよい。例えば、KohlerおよびMils
tein,Nature 256:495-497(1975)および米国特許第4,376,110号明細書を参照の
こと。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、およびこれらのあらゆるサブク
ラスを含むあらゆる免疫グロブリンクラスのものであってもよい。本発明のmAb
を産生するハイブリドーマはin vitroまたはin vivoで培養し得る。in vivo産生
の高力価のmAbの産生は、これを産生の現在好ましい方法にする。簡単に言えば
、個々のハイブリドーマからの細胞がプリスタン感作されたBALB/cマウスに腹腔
内注射されて高濃度の所望のmAbを含む腹水を生じる。イソタイプIgMまたはIgG
のmAbは、当業者に公知のカラムクロマトグラフィー方法を使用して、このよう
な腹水、または培養上澄みから精製されてもよい。
キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例えば、マウスmA
bに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である。
キメラ抗体およびそれらの産生方法が当業界で公知である(Cabillyら,Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA
81:3273-3277(1984);Morrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984
);Boulianneら,Nature 312:643-646(1984);Neubergerら,Nature 314:268-27
0(1985);Taniguchiら,欧州特許公告第171496号(1985年2月19日);Morrisonら
,欧州特許公告第173494号(1986年3月5日);Neubergerら,PCT国際公開WO 86/
01533号(1986年3月13日);Kudoら,欧州特許公告第184187号(1986年6月11日)
;Sahaganら,J.Immunol.137:1066-1074(1986);Robinsonら,国際特許公開#PC
T/US86/02269(1987年5月7日);Lieら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-34
43(1987);Sunら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214-218(1987);Betterら,Scie
nce 240:1041-1043(1988))。これらの文献が参考として本明細書に含まれる。
抗イディオタイプ(抗Id)抗体は、抗体の抗原結合部位に一般に関連する特異
な決定基を認識する抗体である。抗Id抗体は、mAbの起源と同じ種および遺伝子
型の動物(例えば、マウス系統)を抗Idが調製されているmAbで免疫することに
より調製し得る。免疫された動物は、これらのイディオタイプ決定基に対する抗
体(抗Id抗体)を産生することにより免疫抗体のイディオタイプ決定基を認識し
、応答するであろう。抗Id抗体はまた“免疫原”として使用されて別の動物中で
免疫応答を誘導し、所謂抗抗Id抗体を産生し得る。抗抗Idは抗Idを誘導した最初
のmAbとエピトープ的に同一であってもよい。こうして、mAbのイディオタイプ決
定基の抗体を使用することにより、同一の特異的な抗体を発現するその他のハイ
ブリッドクローンを同定することが可能である。
それ故、RPTPκに対し産生されたmAbは適当な動物、例えば、BALB/cマウス中
で抗Id抗体を誘導するのに使用し得る。このような免疫されたマウスからの牌臓
細胞が抗Id mAbを分泌する抗Idハイブリドーマを産生するのに使用される。更に
、抗Id mAbはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の如きキャリヤーにカ
ップリングされて、更に別のBALB/cマウスを免疫するのに使用し得る。これらの
マウスからの血清は、RPTPκエピトープに特異的な最初のmAbの結合特性を有す
る抗抗Id抗体を含むであろう。こうして、抗Id mAbはそれら自体のイディオタイ
プエピトープ、または評価されるエピトープ、例えば、RPTPκのエピトープに構
造上類似する“イディオトープ”を有する。
また、“抗体”という用語は、無傷分子並びにこれらのフラグメント、例えば
、FabおよびF(ab’)2(これらは抗原を結合できる)の両方を含むことを意味す
る。FabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメントは、無傷抗体のFcフラグメン
トを欠いており、循環から更に迅速に浄化し、そして無傷抗体よりも少ない非特
異的組織結合を有し得る(Wahlら,J.Nucl.Med.24:316-325(1983))。
本発明に有益な抗体のFabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメント並びにそ
の他のフラグメントは無傷抗体分子につき本明細書に開示された方法に従ってRP
TPκの検出および定量化に使用し得ることが理解されるであろう。このようなフ
ラグメントは、典型的にはパパイン(Fabフラグメントを産生するため)または
ペプシン(F(ab’)2フラグメントを産生するため)の如き酵素を使用して、タン
パク質分解開裂により産生される。
抗体は、それが分子と特異的に反応し、それによりその分子を
抗体に結合することができる場合に分子を“結合できる”と言われる。“エピト
ープ”という用語は、またその抗体により認識し得る抗体により結合し得るあら
ゆる分子のその部分を表すことを意味する。エピトープまたは“抗原決定基”は
、通常、分子の化学的に活性な表面グルーピング、例えば、アミノ酸または糖側
鎖からなり、そして特定の三次元構造特性並びに特定の電荷特性を有する。“抗
原”は、更に動物をその抗原のエピトープに結合できる抗体を産生するように誘
導できる抗体により結合し得る分子または分子の部分である。抗原は一つまたは
一つより多いエピトープを有していてもよい。
抗体は抗原に対し特異的であると言われる。何となれば、それは高度に選択的
な様式でその抗原と反応し、また構造上異なる多数のその他の抗原と反応しない
からである。
本発明の抗体または抗体フラグメントは、RPTPκタンパク質を発現する細胞の
存在を定量的または定性的に検出するのに使用し得る。これは光学顕微鏡検出、
フローサイトメトリー検出、または蛍光測定検出と対にされた蛍光標識抗体(以
下を参照のこと)を使用して免疫蛍光技術により行い得る。このような方法につ
き、抗体はRPTPκの細胞外エピトープに特異的であることが好ましい。
本発明に有益な抗体(またはそのフラグメント)は、RPTPκのin situ検出に
つき、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡の場合のように、組織学的に使用し得る。
in situ検出は、被験者から組織標本を取り出し、そして本発明の標識された抗
体または抗体フラグメントをこのような標本に与えることにより、好ましくは抗
体を標本に適用し、またはオーバーレイすることにより行い得る。
このような操作の使用により、RPTPκの存在を測定するだけでなく、試験される
組織中のその分布を測定することが可能である。本発明を使用して、当業者は多
種の組織学的方法(例えば、染色操作)のいずれもがこのようなin situ検出を
達成するために改良し得ることを容易に理解するであろう。RPTPκのこのような
アッセイは、典型的には、RPTPκに特異的な検出可能に標識された抗体の存在下
で、生物試料、例えば、生体液、組織抽出物、新たに回収された細胞、または組
織培養液中でインキュベートされた細胞をインキュベートし、そして当業界で公
知の幾つかの技術のいずれかにより抗体を検出することを含む。
生物試料は、固相担体またはキャリヤー、例えば、ニトロセルロース、または
細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定化できるその他の固体担体と共
にインキュベートされてもよい。次に担体は適当な緩衝液で洗浄され、続いて検
出可能に標識されたRPTPκ特異的抗体で処理されてもよい。次に固相担体は2回
目に緩衝液で洗浄されて未結合の抗体を除去してもよい。次に前記固体担体上の
結合標識の量が通常の手段により検出されてもよい。
“固相担体”は、抗原または抗体を結合できるあらゆる担体を意図している。
公知の担体またはキャリヤーとして、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、
ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修
飾セルロース、ポリアクリルアミド、並びにマグネタイトが挙げられる。好まし
いキャリヤーは、本発明のアッセイが行われる溶液に完全に不溶性である。また
、当業界で公知の部分可溶性キャリヤーが使用されてもよい。担体材料は、担体
にカップリングされた分子が抗原ま
たは抗体に結合できる限り、実際にあらゆる可能な構造形態を有していてもよい
。こうして、担体形態はビーズの場合のように球形であってもよく、または試験
管の内表面、もしくは棒の外表面の場合のように円筒形であってもよい。また、
その表面はシート、試験ストリップ、等の如く平らであってもよい。好ましい担
体として、ポリスチレンビーズが挙げられる。当業者は抗体または抗原を結合す
るのに適した多くのその他のキャリヤーを知っているであろうし、または常套的
な実験の使用によりそれを確かめることができるであろう。
抗RPTPκ抗体の所定のロットの結合活性は公知の方法により測定し得る。当業
者は、常套的な実験を使用することによりそれぞれの測定につき操作条件および
最適のアッセイ条件を決定することができるであろう。
RPTPκ特異的抗体が検出可能に標識し得る方法の一つは、抗体、または抗RPTP
κ抗体に結合する二次抗体を酵素に結合することそして酵素イムノアッセイ(EI
A)における使用によるものである。順に、この酵素は、適当な基質にその後暴
露された時に、例えば、分光光度計、蛍光光度計、または視覚化装置により検出
し得る化学部分を生じるような方法で基質と反応するであろう。抗体を検出可能
に標識するのに使用し得る酵素として、マレートデヒドロゲナーゼ、スタフィロ
コッカルヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール
デヒドロゲナーゼ、α−グリセロホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホ
スフェートイソメラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホス
ファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、
β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコー
ス−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリ
ンエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。検出は酵素の色素産生
基質を使用する比色方法により行い得る。また、検出は同様に調製された標準物
質と比較して基質の酵素反応の程度の視覚比較により行い得る。
検出は種々のその他のイムノアッセイのいずれかを使用して行われてもよい。
例えば、抗体または抗体フラグメントを放射能標識することにより、RPTPκをラ
ジオイムノアッセイ(RIA)(例えば、Work,T.S.ら,LABORATORY TECHNIQUES A
ND BIOCHEMISTRY IN MOLECULAR BIOLOGY,North Holland Publishing Company,
New York 1978(これは参考として本明細書に含まれる)を参照のこと)の使用
により検出することが可能である。放射性同位元素がγカウンターもしくはシン
チレーションカウンターの使用の如き手段により、またはオートラジオグラフィ
ーにより検出し得る。
また、抗体を蛍光化合物で標識することが可能である。蛍光標識抗体が適当な
波長の光に暴露される場合、その存在が蛍光のために検出し得る。最も普通に使
用される蛍光標識化合物の中に、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミ
ン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒ
ドおよびフルオレスカミンがある。
また、抗体は蛍光放出金属、例えば、”152Eu、またはその他のランタニド系
列を使用して検出可能に標識し得る。これらの金属は、金属キレート基、例えば
、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸
(EDTA)を使用して抗体
に結合し得る。
また、抗体は、それをケミルミネセンス化合物にカップリングすることにより
検出可能に標識し得る。次にケミルミネセンス標識抗体の存在が、化学反応の過
程中に生じるルミネセンスの存在を検出することにより測定される。特に有益な
ケミルミネセンス標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマチッ
ク(thromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩お
よびシュウ酸エステルである。
同様に、バイオルミネセンス化合物が本発明の抗体を標識するのに使用されて
もよい。バイオルミネセンスは、触媒のタンパク質がケミルミネセンス反応の効
率を増大する生物系に見られるケミルミネセンスの型である。バイオルミネセン
スタンパク質の存在は、ルミネセンスの存在を検出することにより測定される。
標識の目的に重要なバイオルミネセンス化合物はルシフェリン、ルシフェラーゼ
およびエクオリンである。
本発明の抗体分子は、“2部位”アッセイまたは“サンドイッチ”アッセイと
しても知られているイムノメトリックアッセイにおける利用に適しているかもし
れない。典型的なイムノメトリックアッセイにおいて、或る量の未標識抗体(ま
たは抗体のフラグメント)が固体担体に結合され、そして或る量の検出可能に標
識された可溶性抗体が添加されて固相抗体、抗原、および標識抗体の間で生成さ
れた3成分複合体の検出および/または定量化を可能にする。
典型的で、好ましいイムノメトリックアッセイとして、固相に結合された抗体
が最初に試験される試料と接触されて2成分固相
抗体−抗原複合体の生成により抗原を試料から抽出する“フォワード”アッセイ
が挙げられる。適当なインキュベーション期間後に、固体担体が洗浄されて、存
在する場合の未反応の抗原を含む液体試料の残渣を除去し、次に標識二次抗体(
これは“リポーター分子”として機能する)を含む溶液と接触される。標識抗体
を未標識抗体により固体担体に結合された抗原と複合体形成させる第二インキュ
ベーション期間後に、固体担体が2回目に洗浄されて未反応の標識抗体を除去す
る。
“サンドイッチ”アッセイの別の型(これはまた本発明の抗原と共に有益であ
り得る)において、所謂“同時”アッセイおよび“リバース”アッセイが使用さ
れる。同時アッセイは、固体担体に結合された抗体および標識抗体が試験される
試料に同時に両方添加される際に単一インキュベーション工程を伴う。インキュ
ベーションが完結された後、固体担体が洗浄されて液体試料の残渣および複合体
形成されなかった標識抗体を除去する。次に固体担体と会合された標識抗体の存
在は、それが通常の“フォワード”サンドイッチアッセイの場合であるかのよう
に測定される。
“リバース”アッセイにおいて、最初に液体試料への標識抗体の溶液の段階的
添加、続いて適当なインキュベーション期間後の固体担体に結合された未標識抗
体の添加が使用される。第二インキュベーション後に、固相が通常の様式で洗浄
されて、試験される試料の残渣および未反応の標識抗体の溶液がそれから除去さ
れる。次に固体担体と会合された標識抗体の測定が“同時”アッセイおよび“フ
ォワード”アッセイの場合のように測定される。
また、被験者中の正常に機能するRPTPκの存在が、チロシンホ
スファターゼ活性につき、直接酵素アッセイを使用して試験し得る。このような
生化学測定が、酵素活性の正確な測定を可能にする精製酵素を使用して、または
膜調製物、もしくは全細胞(この場合、正味のホスホチロシンレベルが測定され
る)を用いて、試験管内で行い得る。
本発明の更に別の実施態様において、RPTPκタンパク質をコードする配列を含
む核酸分子、好ましくはDNA、およびそのDNA分子を発現する方法が提供される。
当業者は、無用の実験を使用しないで本発明の遺伝子配列およびオリゴヌクレオ
チドを使用してヒトまたはその他の哺乳類種の更に別のRPTPκ分子(これらは本
明細書に記載されたRPTPκ分子に相同の配列を有する)を同定しクローン化する
方法を知るであろう。更に、本発明の遺伝子構築物の操作は、トランスメンブラ
ンおよびRPTPκの触媒部分への特別なリガンド結合受容体ドメインのグラフト化
を可能にし、キメラ分子を生じる。このようなキメラ分子の非限定の例として、
受容体部分が上皮成長因子受容体、繊維芽細胞成長因子受容体、等であるRPTPκ
が挙げられる。遺伝子操作されたキメラ受容体が当業界で知られている(例えば
、Riedel,H.ら,Nature 324:628-670(1986)を参照のこと)。
RPTPκ、その機能性誘導体、およびキメラ分子、例えば、上記のキメラ分子を
コードする遺伝子構築物が遺伝子治療に使用し得る。異常または機能不全のRPTP
κ(これは疾患を生じる)が、正常なRPTPκをコードするDNAでトランスフェク
トされた所望の系列の細胞(例えば、造血細胞、神経細胞、等)の注入または移
植により置換し得る。別途に、または更に、特別のリガンド(例え
ば、EGF)を結合する受容体部分を有するキメラRPTPκを有する細胞が、このよ
うな遺伝子治療に使用し得る。
本発明の組換えDNA分子は、種々の手段のいずれか、例えば、DNA合成もしくは
RNA合成により、または更に好ましくは、組換えDNA技術の適用により製造し得る
。このような分子を合成する技術が、例えば、Wu,R.ら(Prog.Nucl.Acid.Res.M
olec.Biol.21:101-141(1978))により開示されており、また組換え分子を構
築する方法がSambrookら(上記文献)に見られる。
RPTPκの一部に相当するオリゴヌクレオチドが、このようなタンパク質をコー
ドする遺伝子の存在につきスクリーニングするのに有益であり、またRPTPκ遺伝
子のクローニングに有益である。このようなオリゴヌクレオチドを合成する技術
が、例えば、Wu,R.ら(上記文献)により開示されている。
タンパク質分子は臭化シアン、またはパパイン、キモトリプシン、トリプシン
、等の如きプロテアーゼによるようにフラグメント化される(Oike,Y.ら,J.B
iol.Chem.257:9751-9758(1982);Liu,C.ら,Int.J.Pept.Protein Res.21:2
09-215(1983))。遺伝子コードが縮重するので、一つより多いコドンが特定のア
ミノ酸をコードするのに使用し得る(Watson,J.D.,MOLECULAR BIOLOGY OF THE
GENE,4th Ed.,Benjamin/Cummings Publishing Co.,Inc.,Menlo Park,CA(
1987))。遺伝子コードを使用して、一種以上の異なるオリゴヌクレオチドが同
定でき、これらのそれぞれがそのアミノ酸をコードできるであろう。特別なオリ
ゴヌクレオチドが実際に実際のXXXをコードする配列を構成するという可能性が
、異常な塩基対関係および特別なコドンが真核細胞中で
(特定のアミノ酸をコードするために)実際に使用される頻度を考えることによ
り推定し得る。このような“コドン使用ルール”がLathe,R.ら,J.Mol.Biol.
183:1-12(1985)により開示されている。このような“コドン使用ルール”を使用
して、RPTPκをコードできる理論的な“最も可能性のある”ヌクレオチド配列を
含む単一オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの組が同定される。
時折、アミノ酸配列は単一オリゴヌクレオチドのみによりコードし得るが、頻
繁にそのアミノ酸配列は類似のオリゴヌクレオチドの組のいずれかによりコード
し得る。重要なことに、この組の員の全てがペプチドフラグメントをコードでき
るオリゴヌクレオチドを含み、こうして、ペプチドフラグメントをコードする遺
伝子と同じオリゴヌクレオチド配列を潜在的に含むが、その組の一つの員のみが
遺伝子のヌクレオチド配列と同一であるヌクレオチド配列を含む。この員がその
組中に存在し、その組のその他の員の存在下でさえもDNAにハイブリッドを形成
できるので、単一オリゴヌクレオチドを使用してRPTPκをコードする遺伝子をク
ローン化するのと同じようにオリゴヌクレオチドの分別されていない組を使用す
ることが可能である。
RPTPκフラグメントをコードできる理論的な“最も可能性のある”配列を含む
ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの組が“最も可能性のある”配列、ま
たは配列の組にハイブリッドを形成できる相補性オリゴヌクレオチドまたはオリ
ゴヌクレオチドの組の配列を同定するのに使用される。このような相補性配列を
含むオリゴヌクレオチドがプローブとして使用されてRPTPκ遺伝子
を同定し、そして単離し得る(Sambrookらの上記文献)。
RPTPκ遺伝子のフラグメントをコードできる好適なオリゴヌクレオチド、また
はオリゴヌクレオチドの組(またはこのようなオリゴヌクレオチドに相補性のも
の)が上記のように同定され、そして当業界で公知の操作を使用して合成される
(Belagaje,R.ら,J.Biol.Chem.254:5765-5780(1979);Maniatis,T.ら,MO
LECULAR MECHANISMS IN THE CONTROL OF GENE EXPRESSION,,Nierlich,D.P.ら
編集,Acad Press,NY(1976);Wu,R.ら,Prog.Nucl.Acid Res.Molec.Biol.21:
101-141 (1978);Khorana,R.G.,Science 203:614-625(1979))。DNA合成は、
自動化合成装置を使用して行い得る。オリゴヌクレオチドプローブまたは組が、
当業界で公知の手段により、DNAまたは、更に好ましくは、RPTPκ遺伝子を発現
できる細胞に由来するcDNA調製物に対しハイブリッドを形成される。核酸ハイブ
リダイゼーションの技術がSambrookら(上記文献)により、またHaymes,B.D.ら
(NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION,A PRACTICAL APPROACH,IRL PRESS,Washingto
n,DC(1985))により開示されており、これらの文献が参考として本明細書に含
まれる。上記の技術の如き技術、または同様の技術がヒトアルデヒドデヒドロゲ
ナーゼの遺伝子(Hsu,L.C.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3771-3775(1985)
)、フィブロネクチン(Suzuki,S.ら,EMBO J.4:2519- 2524(1985))、ヒ
トエストロゲン受容体遺伝子(Walt-er,P.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:78
89-7893(1985))、組織型プラスミノーゲンアクチベーター(Pennica,D.ら,Na
ture 301:214-221(1983))およびヒト末端胎盤アルカリホスファターゼ相補性D
NA(Kam,W.ら,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 82:(715-8719(1985))のクローニングを可能にするのに成功した。
RPTPκ遺伝子の別のクローニング方法において、発現ベクターのライブラリー
は、DNAまたは、更に好ましくは、cDNA(RPTPκを発現できる細胞からのもの)
を発現ベクターにクローン化することにより調製される。次にライブラリーは、
抗RPTPκ抗体に結合し、かつRPTPκの全部または一部と同じアミノ酸配列を有す
るポリペプチドをコードできるヌクレオチド配列を有するタンパク質を発現でき
る員につきスクリーニングされる。この実施態様において、DNA、または更に好
ましくはcDNAが、RPTPκタンパク質を発現できる細胞から抽出され、精製される
。精製cDNAがフラグメント化されて(剪断、エンドヌクレアーゼ消化、等により
)DNAフラグメントまたはcDNAフラグメントのプールを生成する。次にこのプー
ルからのDNAフラグメントまたはcDNAフラグメントは、それぞれの員が特異なク
ローン化されたDNAフラグメントまたはcDNAフラグメントを含む発現ベクターの
ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーを生成するために、発現ベクターに
クローン化される。
“発現ベクター”は、(適当な転写調節配列および/または翻訳調節配列の存
在のために)そのベクターにクローン化されたDNA分子を発現でき、それにより
ペプチドまたはタンパク質を産生できるベクターである。クローン化配列の発現
は、発現ベクターが適当な宿主細胞に導入される時に起こる。原核生物発現ベク
ターが使用される場合、適当な宿主細胞はクローン化配列を発現できるあらゆる
原核細胞であろう。真核生物発現ベクターが使用
される場合、適当な宿主細胞はクローン化配列を発現できるあらゆる原核細胞で
あろう。重要なことに、真核生物DNAは介在配列を含んでもよいので、またこの
ような配列は原核細胞中で正確にプロセシングできないので、原核生物ゲノム発
現ベクターライブラリーを生成するためにRPTPκを発現できる細胞からのcDNAを
使用することが好ましい。cDNAを調製し、ゲノムライブラリーを生成する方法が
Sambrookら(上記文献)により開示されている。
本発明のRPTPκをコードし、またはその機能性誘導体をコードするDNA配列が
、ライゲーションのための平滑末端または付着末端、適当な末端を得るための制
限酵素消化、望ましくない接合を避けるための適当なアルカリ性ホスファターゼ
処理としての付着末端のフィリング イン(filling in)、および適当なリガー
ゼによる連結反応を含む通常の技術に従ってベクターDNAで組換えられてもよい
。このような操作に関する技術がSambrookらの上記文献により開示されており、
また当業界で公知である。
DNAの如き核酸分子は、それが転写調節情報および翻訳調節情報を含むヌクレ
オチド配列を含み、そしてこのような配列がポリペプチドコード配列に“操作可
能に結合”されている場合にポリペプチドを“発現できる”。操作可能な結合は
、調節DNA配列およびコード配列が遺伝子発現を可能にするような方法で連結さ
れる結合である。遺伝子発現に必要とされる調節領域の正確な性質は生物により
変化し得るが、一般には、原核生物中で、プロモーター(これはRNA転写の開始
を誘導する)並びにRNAに転写された時に、タンパク質合成の開始を信号するDNA
配列の両方を含むプロモーター領域を含むべきである。このような領域は転写お
よ
び翻訳の開始に関与する5’非コード配列、例えば、TATAボックス、キャップ形
成配列、CAAT配列、等を通常含むであろう。
所望により、そのコード配列に3’の非コード配列が上記の方法により得られ
てもよい。この領域がその転写終結調節配列、例えば、終結およびポリアデニル
化のために保持されてもよい。こうして、DNAコード配列に自然に隣接する3’領
域を保持することにより、転写終結シグナルが用意されてもよい。転写終結シグ
ナルがタンパク質を発現するのに使用された宿主細胞中で充分に機能性ではない
場合、宿主細胞中で機能性の3’領域が置換し得る。
2種のDNA配列(例えば、プロモーター領域配列およびRPTPκコード配列)は
、2種のDNA配列の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入を生じず、
(2)RPTPκコード配列の転写を調節するプロモーターの能力に干渉しない場合
に操作により結合されると言われる。プロモーター領域は、そのプロモーターが
コード配列の転写を行うことができる場合にDNAコード配列に操作可能に結合さ
れる。こうして、タンパク質を発現するために、適当な宿主により認識された転
写シグナルおよび翻訳シグナルが必要である。“操作可能に結合”されるために
、2種の配列が互いに直ぐに隣接することは必要ではない。
プロモーターは、RNAポリメラーゼに結合でき、そして“操作可能に結合され
た”核酸コード配列の転写を促進できる二本鎖DNA(またはRNA)分子である。本
明細書で使用される“プロモーター配列”は、RNAポリメラーゼにより転写され
るDNA(またはRNA)のそのストランドで見られるプロモーターの配列である。“
プロモーター配列補体”は、“プロモーター配列”の補体である配列
を有する。それ故、一本鎖“プロモーター配列補体”に隣接するプライマーDNA
もしくはRNA、または“プロモーター配列”延長後に、その延長が“プロモータ
ー配列”または“プロモーター配列補体”に向かって進行する場合に、機能性プ
ロモーターを含む二本鎖分子がつくられる。この機能性プロモーターは、“プロ
モーター配列”を含む二本鎖分子のそのストランド(“プロモーター配列補体”
を含む分子のそのストランドではない)に操作により結合される核酸分子の転写
を誘導するであろう。
或るRNAポリメラーゼは、このようなプロモーターに対し高い特異性を示す。
バクテリオファージT7、T3、およびSP-6のRNAポリメラーゼが特に良く特性決定
されており、高いプロモーター特異性を示す。また、これらのRNAポリメラーゼ
のそれぞれに対し特異的であるプロモーター配列がポリメラーゼを二重鎖DNA鋳
型の一つのストランドのみから転写するように誘導する。ストランド選択はプロ
モーター配列の配向により決定され、そして転写の方向を決める。何となれば、
RNAが3’ヒドロキシル末端へのヌクレオチド5’ホスフェートの添加により酵素
により重合されるからである。
本発明のプロモーター配列は原核生物、真核生物またはウイルスのものであっ
てもよい。好適なプロモーターは抑制性であり、または更に好ましくは、構成性
である。好適な原核生物プロモーターの例として、T4(Malik,S.ら,J.Biol.Ch
em.263:1174-1181(1984);Rosenberg,A.H.ら,Gene 59:191-200(1987);Shine
-dling,S.ら,J.Molec.Biol.195:471-480(1987);Hu,M.ら,Gene 42:21-30(
1986))、T3、Sp6、およびT7(Chamberlin,M.
ら,Nature 228:227-231(1970);Bailey,J.N.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
80:2814-2818(1983);Davanloo,P.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:2035-20
39(1984))ポリメラーゼを認識できるプロモーター;バクテリオファージλのPR
プロモーターおよびPLプロモーター(バクテリオファージλ,Hershey,A.D.
編集,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1973);ラムダII,
Hendrix,R.W.編集,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(198
0);E.coliのtrpプロモーター、recAプロモーター、熱ショックプロモーター、
およびlacZプロモーター;α−アミラーゼ(Ulmanen,I.ら,J.Bacteriol.162:
176-182(1985))およびB.スブチリスのδ-28-特異的プロモーター(Gilman,M.Z
.ら,Gene 32:11-20(1984));バチルスのバクテリオファージのプロモーター
(Gryczan,T.J.,バチルスの分子生物学,Academic Press,Inc.,NY(1982);
ストレプトミセスプロモーター(Ward,J.M.ら,Mol.Gen.Genet.203:468-478(
1986));バクテリオファージλのintプロモーター;pBR322のβ−ラクタマーゼ
遺伝子のblaプロモーター、およびpPR325のクロラムフェニコールアセチルトラ
ンスフェラーゼ遺伝子のCATプロモーター、等が挙げられる。原核生物プロモー
ターがGlick,B.R.,J.Ind.Microbiol.1:277-282(1987));Cenatiempo,Y.(
B-iochimie 68:505-516(1986));Watson,J.D.ら(上記文献);およびGottes
man,S.Ann.Rev.Genet.18:415-442(1984))により概説されている。
好ましい真核生物プロモーターとして、マウスメタロチオネインI遺伝子のプ
ロモーター(Hamer,D.ら,J.Mol.Appl.Gen.1:
273-288(1982));ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight,S.,Cell 31
:355-365(1982));SV40初期プロモーター(Benoist,C.ら,Nature 290:304-31
0(1981));および酵母ga14遺伝子プロモーター(Johnston,S.A.ら,Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 79:6971-6975(1982);Silver,P.A.ら,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA81:5951-5955(1984))が挙げられる。上記の文献の全てが参考として本明
細書に含まれる。
強力なプロモーターが好ましい。このような好ましいプロモーターの例は、T3
ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼおよびT7ポリメラーゼを認識するプロモーター
、バクテリオファージのPLプロモーター、recAプロモーターおよびマウスメタ
ロチオネインI遺伝子のプロモーターである。RPTPκの真核生物発現に最も好ま
しいプロモーターは、SV4Oプロモーター、例えば、pLSVベクター中で転写を誘導
するプロモーター(Livneh,E.ら,(1986)J.Biol.Chem.261:12490-12497)で
ある。このようなポリメラーゼ認識部位の配列がWatson,J.D.ら(上記文献)に
より開示されている。
今、本発明を全般に説明したが、本発明が下記の実施例を参考にすることによ
り更に容易に理解され、この実施例は説明のために示されるのであり、特にこと
わらない限り、本発明を限定することを目的とするものではない。
6.実施例:マウスRPTPκ cDNAクローンの単離および分析
新規なPTPアーゼを特定するために、λgtll中のマウス脳cDNAライ
ブラリーを、ヒトCD45の細胞内の2つの直列に並んだPTPアーゼホモロジ
ードメインに対応するオリゴヌクレオチドをプローブとして使用することによっ
て、緩いストリンジェンシー条件下でスクリーニングした(Sap et al.、上掲)
。単離されたクローンの特徴をまず調べ、分類してから、その後数回にわたって
マウス脳ライブラリーを高ストリンジェンシー下でスクリーニングしたところ、
RPTPκのコード配列の全体を網羅する一群のcDNA断片が得られた。単離
された各種のRPTPκ cDNAクローンの間の関係性を、ノーザン及び逆転
写酵素/PCR分析によって確認した(詳細に就いては、材料および方法の項、
ならびに図2を参照されたい)。
6.1.ライブラリースクリーニング
もとのRPTPκ cDNAクローンは、λgtllマウス脳cDNAライブ
ラリーを、ヒトCD45の2つのタンデムなPTPアーゼドメインを含む細胞内
ドメインからなるプローブを用いて、低ストリンジェンシー条件下でスクリーニ
ングすることによって単離した(詳細については、Sap,J.et al.,1990 Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 87:6112-6116を参照されたい)。まず特徴を調べてか
ら、単離されたクローンの1つ(λ50、PTPアーゼファミリー群の構成メン
バーと特徴的なホモロジーを有する935ヌクレオチドの断片を含む)を使用し
て、同じライブラリーを再度スクリーニングし、λ−602及びλ−604を得
た。
配列を解析したところ、λ−602は、λ−604と両端の配列が同一であった
ものの、停止コドンを3つのリーディングフレームのすべてに存在している配列
が中途に存在していることが示された。したがって、λ−602は不完全にスプ
ライシングされたRNAの種である可能性が高いので、配列の解析を中止した。
これとは対照的に、λ−604は、PTPアーゼホモロジードメイン1つと、そ
の上流側の2042ヌクレオチドのコード配列とを含んでおり、この上流側コー
ド配列は、膜貫通領域らしい領域を含んでいるようであった。
全長のRPTPκ cDNAを得るために、クローン604の挿入断片全体を
使用して、また別の(ランダムプライミングした)マウス脳cDNAライブラリ
ー(クロンテック(Clontech))をスクリーニングしたところ、2つのハイブリ
ダイズクローンであるλ−35とλ−37が単離された。クローン35は、クロ
ーン604のN末端と重複し、RPTPκ前駆体タンパク質の転写開始コドンも
含んでいるようであった(結果の項を参照のこと)。クローン37の配列をまず
解析したところ、クローン604のプローブとの重複は認められなかったものの
、さらに別の明瞭なPTPアーゼホロモジー領域が含まれており、停止コドンが
、RPTPアーゼの第2PTPアーゼドメインに特徴的な位置にさらに位置して
いた。いくつかの対照を用いて、クローン37が、RPTPκの本当のC末端に
対応することが示された。ノーザン分析では、クローン37と604は、調べた
マウスの組織のすべてで、同一のmRNAの種を認識する。
クローン604と37に対応するプライマーを使用して、マウ
ス肝臓ポリ(A)+RNAの逆転写酵素/PCR分析を行い、さらにクローニン
グ及び配列決定を行ったところ、単離された各cDNAクローンが終端する同一
のEcoRI部位で、双方のクローンをちょうど結合している期待したサイズの
断片が得られた。
このように、クローン604の断片を用いたスクリーニングで拾い出された可
能性が最も高いのは、クローン37であり、これは、もともとのλ−37ファー
ジ単離物中にサイズが小さいために検出されることのなかった短いcDNA断片
がさらに存在していたり、RPTPκの2つのPTPアーゼホモロジー領域同士
の交差ハイブリダイゼーションが偶発的に生じたりしたためである。図2に、上
述の各種のcDNAクローンについての概括が示してある。
6.2.ヌクレオチド配列の決定
cDNA断片をファージクローンから単離し、ブルースクリプトクローニング
ベクターにサブクローニングし、合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用した
ジデオキシヌクレオチド連鎖停止法(シークエナーゼ(Sequenase)、ユナイテ
ッド・ステーツ・バイオケミカル(United States Biochemical))によって配
列解析をおこなった。いずれの配列も、双方の鎖について決定した。GCG7ソ
フトウェアパッケージを使用して、配列を組みたて、解析した(Devereux,J.e
t al.,1984 Nuc.Acids Res.12:387-395)。組みたてたRPTPK cDN
Aのヌクレオチド配列は、ジェンバンク(Genbank)に登録してある(受託番号
L10106)。
6.3.配列の配置
DNA及びタンパク質のデータベースの検索は、いずれも、ジェネティック・
コンピュータ・グループ(Genetic Computer Group)の配列解析用ソフトウェア
パッケージを用いて行った(Devereux,J.et al.,1984 Nuc.Acids Res.12:
387-396)。スイスプロット(SwissProt)およびジーンバンク/ヨーロピアン・
モレキュラー・バイオロジー・ラボラトリー(Gene Bank/European Molecular B
iology Laboratory)のデータベースを、FASTA及びTFASTAでそれぞれ検索した(
Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444-2448(1988))。タンパ
ク質は、ジェネティック・コンピュータ・グループのプログラムであるLINEUP、
PILEUP、PRETTY、およびBESTFITで配列した。
6.4.結果および考察
6.4.1 マウスRPTPκをコードするcDNAクローンの単離及び配列解 析
マウスRPTPκ(配列番号3)のヌクレオチド配列を、図1A−1Hに示す
。RPTPκの完全なアミノ酸配列(配列番号1)を、図1A−1H及び図3に
示す。
組み立てたRPTPκ cDNAの配列は、1072塩基対の5’未翻訳領域
、4374塩基対の単一のオープンリーディングフレーム、及び388塩基対の
3’未翻訳領域に分けることができる。RPTPκ前駆体タンパク質の推定アミ
ノ酸配列を、図3に示す。翻訳開始コドンは、翻訳開始の標準的環境(Kozak,上
掲)、及び上流側にイン・フレームの停止コドン(位置、−252)が存在する
ことによって特定し、翻訳開始コドンには、シグ
ナルペプチドの役目を果たす疎水性領域が続いている。2つめの疎水性領域は、
アミノ酸残基753と774との間に見いだされ、転移停止配列に特徴的な一連
の主に塩基性の残基が続いている。こうした特徴から、752アミノ酸残基(シ
グナル配列を含む)の推定細胞外領域と、683アミノ酸の細胞内部分の存在が
示唆される。後者の部分は、これまで単離されてきたRPTPアーゼの大半で典
型的にみられた2つのPTPアーゼホモロジー配列のタンデムリピートを含んで
いる(Fischer,E.H.et al.,1991 Science 253:401-406)。
RPTPκの重要な特徴は、膜貫通領域と、1つ目のホスファターゼホモロジ
ードメインの開始部位との間の距離が長いことである。この領域は、これまでに
記載されているmRPTPμ(Gebbink et al.,上掲)以外の他のRPTPアー
ゼのいずれよりも、約70残基長い。
興味深いことに、本発明者の実験室では、RPTPκの変種が、類似したサイ
ズの挿入断片を同一個所に含んでいることを見いだした。別のスプライシングに
よって生じたこうした挿入断片が、RPTPアーゼで別個の機能単位を構成して
いることも十分考えられる。
RPTPκの最初の約170個のアミノ酸は、Ig様ドメインの特徴を有する
アフリカツメガエルの細胞表面タンパク質A5のある領域と類似性(全部で26
%の同一性)示す。A5タンパク質は、視覚系で、入力ニューロンと標的ニュー
ロンとの間での認識に際して機能するものと考えられている(Takagi,S.et al
.,1991 Neuron7:295-307)。
この1つ目のドメインには、Ig様リピート1つ(ほぼ、残基210−270
)と、推定フィブロネクチンIII型様(FN−III)リピート4つ(残基2
96−681)が続いている。データベースを検索したところ、こうしたFN−
IIIドメインと、チロシンホスファターゼR−PTPμおよびLAR、ショウ
ジョウバエR−PTPアーゼDLARおよびDPTPI0D、ならびにショウジ
ョウバエの神経膠の類似ドメインとの間に、はっきりした類似性があることが示
された(Bieber,A.J.et al.1989.Cell 59:447-460;Gebbinket al.,上掲;S
treuli,M.et al.,1988,上掲;Streuli,M.et al.,1989,上掲;Tianet al
.supra;Yanget al.,上掲)。
RPTPκの細胞外ドメインの特徴としては、他にも特筆すベきものがある。
まず、RPTPκの細胞外ドメインは、カドヘリン分子群の構成メンバーであり
、細胞−細胞接触に関与していると考えられているHAV配列(アミノ酸340
−342、1つ目のFN−IIIリピート内)を含んでいる(Blaschuk,O.W.e
tal.,1990 J.Mol.Biol.211:679-682)。第二に、細胞外ドメイン(640−
643)は、プロセシングエンドプロテアーゼのフリンのコンセンサス切断部位
であるRTKR配列を含んでいる(Hosaka,M.et al.,1991 J.Biol.Chem.2
66:12127-12130)。翻訳後修飾部位となる可能性がある他の部位としては、1
2ポテンシャルN−結合グリコシレーション部位、及びコンドロイチン硫酸結合
のSG−モチーフ(残基172、176、277、333、662)がある(Kj
ellen,L.et al.1991 Annu.Rev.Biochem.60:443-470)。
全体として、RPTPκの配列は、mRPTPμとの配列類似性が高い(アミ
ノ酸レベルで全体として77%の類似性)(Gebbink et al.,上掲)。互いに関
連したR−PTPアーゼであるこの配列同士の同一性は、1つ目のPTPアーゼ
ホモロジードメインが最も高い(80%。これに対して2つ目のPTPアーゼド
メインは74%)。このことは、互いに密接に関連したR−PTPアーゼ同士で
あるLARとHPTPδとの関係、そしてRPTPβ/HPTPζとRPTPγ
との関係性について観察されてきた状況と対照的である(Kaplan,R.et al.19
90 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7000-7004;Krueger,N.X.et al.,1990
EMBO J.9:3241-3252;Streuli,M.et al.,1988,上掲)。後者の関連R−P
TPアーゼ同士の場合、2つ目のPTPアーゼホモロジードメインの方が関連性
が高い。RPTPκの配列は、Nishi,M.et al.,1990 FEBS Lett.271:178-1
80に記載されたPCR断片であるPTP191−33の配列とも類似性が高い。
7.実施例:RPTPκの発現および組織分布
7.1.組織発現およびノーザン分析
以前に記載されたように(Vennstrom,B.ら,1982 Cell 28:135-143)、オリゴ
(dT)選択により、成熟マウス組織からポリ(A)+RNAを分離した。1レ
ーン当たり5μgのポリ(A)+RNAをホルムアルデヒド含有1%アガロース
ゲル上に分画し、それをNytran膜に移し、高ストリンジェントな条件下でRPT
Pκ cDNAの種々領域で釣り上げた。RNA負荷量および質を臭化エチジウム染
色により確認した。
7.1.1.RPTPκタンパク質の発現
種々の単離断片から完全な長さのRPTPκ cDNAを組み立てるために、
末端を含む都合のよい断片を生じさせた。この操作は、すべての5’非翻訳配列
も除去するが、翻訳開始のための最適化したKozak共通配列は保持する(Kozak,M
.1983 Microbiol.REV.47:1-45)。
増幅した470ヌクレオチド産物をSac IIおよびPpuM 1で消化し、クローン604
のSac IIおよびPpuM 1部位間でクローン化して、プラスミドpK0(Bluescriptク
ローニングベクターのポリリンカー領域にあるSac II部位)を得た。クローン37
(コーディング配列のC末端を含有する)から1.1KbのEco RI断片を、適切な配
向でpK0のユニークな対応するEco RI部位内にクローン化し
て、5’非翻訳配列のない、完全に組み立てられたコーディング配列を含有する
構築物pK1を得た。Hpa I(N末端)およびXho I(C末端)を使用して1断片
として修飾cDNAを放出させて、CMVエンハンサー/プロモーター駆動真核発
現ベクターのSma IとSal I部位間でクローン化した。
7.1.2.RPTPκのエピトープに特異的な抗血清の生成
RPTPκタンパク質に含まれるペプチド類の抗原性を、GCG7ペプチド構造
プログラムに含まれるJameson-Wolfアルゴリズム(Devereux,J.ら,1984 Nucl
.Acids Res.12:387-395)を使用して予測した。2つのペプチドを合成した。
このペプチドを、グルタルアルデヒド架橋形成により、タンパク質鍵穴吸着物で
あるヘモシアニンに結合させて、2週間間隔でウサギに注入した(1注入当たり
100 pg)。
第1のペプチドは、RPTPκタンパク質(配列番号1)の予測したN末端付
近の部位とくに残基60-76に相当し、SAQEPHYLPPEMPQGSTの配列を持っていた。こ
のペプチドで免疫感作して抗血清116が得られた。
第2のペプチドは、RPTPκタンパク質(配列番号1)の細胞内領域におけ
る第1のPTPase相同のN末端にある領域とくに残基910-929に相当し、SASWDVAKK
DQNRAKの配列を有していた。このペプチドで免疫感作して抗血清122が得られた
(図14)。
7.1.3.トランスフェクション、標識、およひ免疫沈降
直径10cmの皿におけるCOSまたはHela細胞の亜集密的培養物(上記)を、それ
ぞれDEAE-デキストランまたはリン酸カルシウム法により、トランスフェクショ
ンした。トランスフェクション後
48時間〜72時間で、50μCi/mlの[35S]-メチオニン(ICN)を含有するメチオ
ニン不含培地において、細胞を2時間代謝的に標識した。パルス−チェイス分析
では、図10に示したように、細胞を200μCi/mLの同位体で標識した。標識後、細
胞をPBSで洗浄して、4℃でTriton-X-100溶解バッファー(50 mM Hepes pH7.5,
150μM NaCl,1.5mM MgCl2,1mM EGTA,10%グリセロール,1%Triton-X-100,
200μg/mL PMSF,10μg/mL Aprotinin,10μg/mlロイペプチン)に溶解した。
細胞溶解物を、それぞれの抗−RPTPκ抗体と予めプレインキュベートした
プロテイン−A−セファロースと一緒に4℃で2時間インキュベートした。指示
された場合には、特異性に関する対照として免疫沈降反応に20μgの抗原ペプ
チドが含まれた。免疫沈降物を高、中および低塩バッファー(Lev,S.ら,1991
EMBO J.10:647-654)で洗浄した。但し、図12に示した実験では、HNTG−バッ
ファー(20mM Hepes pH7.5,150mM NaCl,10%グリセロール,0.1%Triton-X-10
0)で洗浄した。標準的方法を使用して、免疫ブロッティング分析を行った。
7.1.4 プロテイン・チロシン・ホスファターゼ酵素アッセイ
一時的にトランスフェクションされたCOS細胞から抗血清116(細胞外ドメイン
に特異的である)により免疫沈降されたRPTPκタンパク質を使用して、ホス
ファターゼ酵素アッセイを行った。プロテイン−A−セファロース/RPTPκ
免疫沈降複合体を、HNTGで4回洗浄して、M7.6バッファー(60mトリス,pH 7.6
,5mM EDTA,10mM DTT,50mM NaCl,50μg/mL BSA)で1回洗浄
した。
酵素アッセイを、本質的に記載にしたがって(Streuli,Mら,1989 Proc.N
atl.Acad.Sci.USA 86:8698-8702)、行った。この免疫複合体を、10μl[32
P]チロシン燐酸化ミエリン塩基性タンパク質(約12μM)を加えたM17.6バッ
ファー(指示された場合には1mMバナジウム酸塩を含有する)50 μlに、再懸濁
した。[32P]チロシン燐酸化ミエリン塩基性タンパク質は、A431細胞から免
疫沈降したEGF-受容体を使用したin vitro燐酸化により、生産した。この反応物
を振とうしながら37℃で15分間インキュベートし、活性炭を含有する酸性停止混
合液750 μlで反応を停止し、放出された遊離[32P]-リン酸の量を測定した。
7.1.5.エンドグリコシダーゼ F処理
RPTPκ cDNAでトランスフェクションされた細胞の培養物を1%SD
Sに100℃で3分間溶解させた。全細胞溶解物を全速力で3回超音波処理してか
ら、蒸留水で希釈し、SDS濃度を0.1%まで低下させた。この細胞溶解物を、0.
2単位のエンドグリコシダーゼF(Boehringer-Mannheim)、0.25M 酢酸ナトリウ
ム,pH5.2,20mM EDTA,10mMβ−メルカプトエタノールおよび0.6%NP-40の存在下
で、37℃で18時間インキュベートした。全酵素溶解物をSDS−PAGEゲルに
直接のせ、流して、ニトロセルロースに移し、指示されたように、抗血清116ま
たは122によりブロットした。
7.1.6.部位特異的突然変異誘発
市販のClontech製キットを使用して、使用説明書にしたがって、in vitro部位
特異的突然変異誘発を行った。切断部位におけるア
ミノ酸配列RTKRを配列LTNRに改変するために、
を持つオリゴヌクレオチドを使用した。直接DNA配列決定により、突然変異誘
発を確認した。
7.1.7.RPTPκ cDNAのラット組織へのin situハイブリッド形成
Sprague-Dawley系ラットを断頭により屠殺し、脳を取り出して、低温保持装置
中で20μm切片に切った。この切片を0.1M リン酸ナトリウム、pH7.4中4%パラホ
ルムアルデヒドに20分間後固定した(postfix)。
単離したRPTPκ cDNA配列(配列番号3)の残基149311-1543に相補
的である50塩基オリゴヌクレオチドをプローブとして使用した。このオリゴヌク
レオチドを、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Boehringer Man
nheim)を使用して[α-35S]dATP(NEN,DuPont)で標識し、Sephadex G25
quick spinカラム(Boehringer Mannheim)を使用して精製した。標識プローブ
の比活性は、2×108から5×108cpm/μg DNAであった。50%脱イオン化ホル
ムアミド、4×SCC,1×Denhardt液、500 μg/ml変性サケ精子DNA、250 μg
/ml酵母tRNAおよび10%硫酸デキストランを含有するバッファーにおいて、プ
レハイブリッド形成およびハイブリッド形成を実施した。
標識プローブと10mMジチオトレイトールを含有するハイブリッド形成溶液中で
、42-46℃で14-18時間、給湿環境中で、組織片をインキュベートした。標識オリ
ゴヌクレオチドに100倍過剰の非標識オリゴヌクレオチドを加えることにより、
隣接切片に対す
る特異性コントロールを実施した。インキュベーション後、切片を、2回交換の
2×SSC中で、室温で1時間洗浄してから、1×SCC中で、50℃で30分間、0.5×S
CC中で50℃で30分間、そして0.5×SCC中で室温で10分間洗浄した。切片を脱水し
て、X-Omatフィルムに3週間晒した。
7.2.結果および考察
7.2.1.成熟組織におけるRPTPκ発現
成熟マウス組織におけるノーザンブロット法(図.6)により、RPTPκ発
現は広範にわたることが示された。5.3および7.0Kbの2つの主要転写物が、牌臓
および精巣を除き実験した全組織において種々のレベルで検出できた。特に高レ
ベルの5.3Kb転写物が肝および腎組織において認められた。プローブとしてこの
cDNAのN末端および中心部分を用いて、同一パターンが検出された。この5.
3Kbの大きさはmRPTPに関して記載した5.7Kb(Gebbinkら,前述した)と類似して
いるが、RPTPκはmRPTPμよりも非常に広範囲に発現しているようである。m
RPTPμの発現は事実上肺に限られており、脳および心臓では低レベルで発現する
。
7.2.2.RPTPκの一過性発現および酵素活性
上述したように、RPTPκコーディング配列は、非翻訳リーダー配列を除去
する操作後に、CMVエンハンサーおよびプロモーターのコントロール下で、発
現ベクター内にクローニングされた。この構築物を、代謝的に[35S]メチオニ
ンで標識したHela細胞内に一過性にトランスフェクションし、溶解して、標識免
疫沈降アッセイを行った。抗体プローブはこのタンパク質のN末端
(残基60-76)に位置するペプチドに対して生じる抗血清であった。この抗血清
はRPTPκトランスフェクション細胞からの約210 kDaのタンパク質を沈降さ
せたが、偽トランスフェクション細胞(「空の」発現ベクターによりトランスフ
ェクションされた)からのタンパク質は沈降させなかった(図7)。この免疫沈
降は、免疫沈降反応に抗原ペプチドを包含させることにより遮断された(レーン
3と6、ここではレーン1が最も左側のレーンである)が、RPTPκの第一の
触媒ホモロジードメインに相当する異種ペプチドを包含させても遮断されなかっ
た。
RPTPκ cDNAによりコード化したタンパク質が、PTPase酵素活性を持
つことを確認するために、トランスフェクション細胞からの免疫複合体を、適切
なバッファー中で基質としての[32P]チロシン燐酸化ミエリン塩基性タンパク
質と一緒にインキュベートした。図8に示したように、対照細胞と比較して、R
PTPκトランスフェクション細胞からの免疫複合体では、約3倍高いPTPase活
性が検出できた。このPTPase活性は、バナジウム酸塩により有意に阻害されるで
あろう。
7.2.3.発育途上の中枢神経系および成熟中枢神経系におけるRPTPκ発 現のin situハイブリッド形成分析
RPTPκ mRNAの発現レベルは、一般に、成熟中枢神経系(CNS)よ
りも発育途上の中枢神経系の方が高かった。胎齢18日(E18)およびE20では、R
PTP(k)mRNAレベルは大脳皮質および海馬形成において最も高く、次に
小脳、脳幹および脊髄であった。胎児の残りの部分では、肝、腎および腸におい
て最高レベルが確認された(図13A)。生後6日(P6)およびP
8では、発現は皮質、嗅球および海馬形成、特に歯状回およびCA3において最大で
あった。小脳では、発現はこの発育段階において小脳の最も外側の細胞層を占め
ている顆粒細胞層において最高であった(図13B)。
成熟ラットでは、発現はより低かったが、嗅球において、また、梨状および帯
状皮質を含む皮質全体において、肉眼的にはっきりと認められた。RPTPκ
mRNAの発現は、海馬形成においても観察された。興味深いことに、小脳での
発現は、成熟ラットではかろうじて検出できた。これは、活発な小脳発育期間で
あるP6およびP8において、明瞭な発現パターンと高レベルの発現が観察されたの
とは非常に対照的であった。
in situハイブリッド形成試験により、幾つかの臓器においてRPTPκ発現
が確認された。さらに、これらの試験により、CNSでは、RPTPκは特異的
領域において発育調整様式で発現していることが示された。RPTPκ発現のレ
ベルは、活発な発育領域の方が高いが、成熟ラットでは、皮質のある領域および
海馬形成において発現が持続する。これらの所見は、CNS RPTPaseが発育およ
び形成性に活発に関与するという考えと一致する。ショウジョウバエ属(Drosop
hila)におけるRPTPs発現に関する試験により、類似した提案が得られてい
る(Tianら,上記を参照;Yangら,上記を参照)。
8.実施例:マウスRPTPκ遺伝子の染色体の位置
方法は、本質的に過去の記載に従った(Sap,J.ら,1990 Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 87:6112-6116;Silver,J.,1985 J.Hered.76:436-440;Taylor,B.,1978,
In:H.C.Morse,III(ed.),ORIGINS OF INBRED MICE,Academic Press,New Y
ork,pp.423-438;Taylor,B.A.,1989 In:M.F.Lyonら,eds,GENETIC VARIANTS
AND STRAINS OF THE LABORATORY MOUSE.Oxford University Press,New York
,pp.773-796)。604RPTPκプローブを使用した、Taq-Iで消化したマウスゲ
ノムDNAのサザンブロット分析により、調査した近交系間で不変と思われた12
断片の配列、およびこの遺伝子の2つの対立遺伝子型を定義するために使用した
少ない組の可変帯が示された。
(1) aは、1.9,3.5および3.8Kb断片の存在により定義され、近交マウス系AK
R/J,C3H/HeJ,SM/Jに存在し、並びに
(2) bは、4.1kb断片;の存在により定義され、近交マウス系C57BL/6J,020/
A,C57L/J,SWR/J,SJL/J,BALB/cJ,STS/A,NZB/BlNJに存在した。
組換え近交マウス系間のこの変異の遺伝パターンの分析(表1)、およびこう
して得られた系の分布パターンと他の遺伝マーカーについて過去に得られた系の
分布パターンとの比較により、RPTPκと、近位染色体10の2つのマーカー、
すなわち、DlOMit3(分類した22細胞株間における2つの不一致があり、遺伝
子座間に2.6cMの距離があることを示唆している(0.3-13.0cMが95%信頼限界を表
した))、およびLy-41(分類した30系統間に不一致がなく、95%信頼で、遺伝
子座間に<3.5cMの距離のあるこ
とを示唆している)との間に密接な関係のあることが示された。遺伝子記号PtDk
は、発明者により提唱されており、既にRPTPαに与えた遺伝子記号Ptpa(Sa
pら,上記参照)と一致している。
マウス染色体10のこの領域には、染色体6qに位置するヒト相同物を有する多数
の遺伝子を含む。同一の染色分体に数個の遺伝子がのっていることに基づくと、
これは、ヒトRPTPκに関する18pter-qllとは対照的に、ヒトRPTPκ相同
物が6qに位置することが推定される(Gebbinkら,上記参照)。
9.実施例:RPTPκの翻訳後のタンパク分解過程
3T3細胞においてRPTPκの安定な発現を得るために計画した実験中に、
本発明者は、COS細胞の一過性トランスフェクション中における異常サイズの産
物の産生のみならず、予想外に小さいサイズの産物の産生を観察した。
本発明者は、RPTPκの細胞外ドメイン(PTKR,残基640-643,4回のF
N-III反復において,図3)にタンパク質分解性開裂シグナルが存在することを
示し、これらの観察に照らしてその有意性を検討したいと考えた。したがって、
DEAEデキストラン法によりトランスフェクトされたCOS細胞において、追加実験
を
行った。
蓄積した開裂産物を検出するために、全細胞溶解物をSDS−PAGEゲル上
に直接のせて電気泳動にかけ、ニトロセルロースに移し、N末端、又は細胞内部
分における一次PTPアーゼ相同ドメイン付近のエピトープのいずれかに特異的な
2つの異なる抗RPTPκペプチド抗血清(上述)を用いてイムノブロッティン
グした。
トランスフェクト細胞からの溶解物では、両抗血清は上述した同一の210 kDa
タンパク質を認識したが、偽トランスフェクト細胞からの溶解物では認識しなか
った。N末端に特異的な抗血清は低分子量の110kDaタンパク質も認識した。細胞
質領域に特異的な抗血清は低分子量の110kDaタンパク質を認識した(図9)。
SDS-PAGEおよびイムノブロッティング前に、全細胞溶解物に対してエンドグリ
コシドF消化を実施することにより、さらにこの3つのポリペプチド(210,110
および100kDa)の特徴づけを行った。このような処置は、主に、グリコシル化細
胞外ドメインを含有するタンパク質の移動度に影響を及ぼすと予想される。エン
ドグリコシダーゼF処理後、210kDaおよび110kDaタンパク質の移動度がそれぞれ
160kDaおよび89kDaに有意に低下した。これとは対照的に、細胞内ドメインにお
けるエピトープに特異的な抗血清122により検出された100kDaバンドの移動度は
、軽度に影響されたのみであり、100kDaペプチドには少量のグリコシル化成分が
含まれることが示唆された(図9)。
上記の結果,および図10に示したパルス追跡分析は、210kDaRPTPκ前駆
体タンパク質が開裂して、細胞外ドメインの大部
分を取り巻くN末端110kDa産物、並びに細胞内部分を含有する100kDa部分および
細胞外配列の約100の残基が得られることと一致する(図14)。プロセシング
エンドペプチターゼであるフリンによる開裂に関するコンセンサス部位(Hosaka
ら、上記参照)は、実際、C末端開裂産物中にNグリコシル化部位を残すであろ
うトランスメンブランセグメントの開始の上流にある113アミノ酸(RTKR,残基6
40-643)である。
タンパク質溶解性開裂がRTKR(フリン認識)部位で生じたことを直接確認
するために、部位特異的突然変異誘発を使用して、この部位をLTNRに突然変異さ
せ、この突然変異のRPTPκ前駆体プロセシングに対する効果を検討した。図
12に示したように、突然変異体cDNAは210 kDa産物のみを生じさせた。こ
れらの結果から、RTKR領域は恐らくRPTPκプロタンパク質のタンパク質溶解
性開裂シグナルおよびプロセシングのための部位である。
本発明者は、次に開裂産物が関与するかどうかを検討した。これは、野性型(
wt)RPTPκ cDNAでトランスフェクトされた細胞の溶解物に対して、細
胞外110kDa産物に特異的な抗血清116を用いて免疫沈降を行うことにより達成さ
れた。細胞内RPTPκエピトープに特異的である抗血清122によるこの沈降物
の免疫ブロッティングにより、沈降物中に100 kDaのC末端開裂産物の存在が検
出された(図12)。この所見により、開裂後に2つのRPTPκ開裂産物の少
なくとも一部はまだ会合したままであること、並びに100kDaおよび110kDa種は単
一の複合体のサブユニットであると考えられることが強力に示唆された(図14
)。RPTPκの細胞外ドメインの分泌型を使用した実験により、こ
の会合がジスルフィド連鎖により媒介されないことが示唆された。なぜなら、非
還元条件下でSDS−PAGEを使用しても、会合が検出できなかったためであ
る。
類似した翻訳後プロセシング過程が、RPTPアーゼLARに関して、及びNg-CAMタ
ンパク質に関して報告されている(Burgoon,M.ら,1992.J.CellBiol.112:10
17-1029;Streuli,M.ら,1992EMBO J.11:897-907;Yu,Q.ら,1992 Oncogene 7
:1051-1057)。さらに、潜在開裂部位が、mRPTP μに相当する部位に存在する(
Gebbinkら,上記参照)。したがって、RPTPsタンパク質溶解プロセシング
は、より一般的な現象であるようである。
上述したように、この種の開裂は、N末端110 kDaサブユニットの制御された
放出を可能にするかもしれない。したがって、細胞環境内タンパク質の結合によ
る変調に対して感受性をもたないRPTPκの膜結合100 kDaの型を生じさせる
かもしれない。あるいは、放出は推定RPTPκ リガンドに対する結合活性を
保持する可溶性種を分泌する可能性がある。興味深いことに、細胞外ドメインの
分泌された可溶性の型は、FGF-受容体などのチロシンキナーゼ受容体に関して報
告されている(Johnson,D.E.ら,Molec.Cell.Biol.11:4627-4634(1991))。
しかし、これらの分泌型は、別のスプライシング機構により生じた。
10.実施例:ヒトRPTPκ(MCP7)cDNAクローンの分離および分析
10.1.PCRおよびcDNAのクローニング法
ポリ(A)+RNAを、SK-BR-3細胞(ATCC HTB30)から分離
し、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素を使用してcDNAを記載さ
れたように合成した(Sambrook,J.ら,Molecular Cloning:A Laboratory Manua
l,第二版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989))。PTP
アーゼドメインの2つの高度に保持された領域に基づく縮重オリゴヌクレオチド
プールを使用したポリメラーゼ鎖反応(Vogel,W.ら,Science259:1611-1614(199
3))を標準的条件下で実施し、BluescriptKS+ベクター(Stratagene)中にPCR
産物をサブクローニングした。Sequenase(United States Biochemical)を使用
したジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sangerら,1977)に
より、配列分析を行った。SK-BR-3ポリ(A)+RNAからのラムダZAP 11 LIBRA
RY(Stratagene)を、高ストリンジェンシー下においてPCR断片プローブにより
スクリーニングした(Ullrich,A.ら,1985,Nature 313:756-711)。
10.2.結果
PCR分析を実施することににより、ヒト乳癌細胞系SK-BR-3に発現したPTPアー
ゼの複雑性を検討した。プライマーは、全ての同定PTPアーゼに共通に使用でき
、PTP触媒ドメイン内の保存配列に相当する縮重配列であった(Vogel,W.ら,
1993,Science259:1611-1614)。クローン化したPCR産物の配列分析により、PTP
アーゼファミリーの新規メンバーのみならず、PTPIB,LAR,TC-PTP,PTPδ,PTP
ε,PTPγ,およびPTPHlなどの幾つかの既知PTPアーゼの存在が示された。
MC7(哺乳類癌由来PTPアーゼ,クローン7)と呼ばれる新規配列の1つが、試
験した121のクローンにおいて高度に示された
(18%)。2066 bpのMCP7 PCR断片を使用して、高ストリンジェンシーで、λZAP
IISK-BR-3 cDNAライブラリーをスクリーニングした。約6.1Kbの全領域に広
がっている11の部分重複クローンを分析し、1444のアミノ酸をコードするオープ
ンリーディングフレーム及びそれに続く1.8kbの3’非翻訳領域が示された。
ヒトRPTPκ(配列番号4)のヌクレオチド配列は図15A-Eに示してある。M
CP7(配列番号2)の推理アミノ酸配列も図15A-Eに示してあり、II型トランスメ
ンブランPTPアーゼの構造組成を表示している(Fischerら,1991,Charbonneau
,H.ら,Annu.Rev.Cell Biol.8:463-493(1992)。20-26アミノ酸のN末端疏水
性の範囲がシグナルペプチド類の典型である(Von Heijne,G.,J.Mol.Biol.184:
99-105(1985))。疏水性残基から成る第二の領域が、位置755と774との間で見ら
れ、単一のαらせん形のトランスメンブランドメインであると予想される。それ
には、主に転写終止配列に特有な塩基性残基の短領域が伴う(Wickner,W.T.ら,
Science 230:400-406(1985))。推定細胞外ドメインのアミノ末端部には、約170
残基の領域にわたって、いわゆるMAMドメインと呼ばれる配列モチーフが含まれ
る。MAM構造モチーフは、幾つかの機能的に異なる受容体(RPTPμおよびA5
タンパク質を含む)の比較により最近確立され、細胞接着にある役割を果たすと
考えられる(Beckmann,上記を参照)。このモチーフには1つの可能性のあるIg
-様ドメイン(残基207-277)が伴う。残りの細胞外部分には、保存配列モチーフ
が含まれ、これは、LAR、PTPβおよびRPTPμのFN-III様ドメインに相当する4つ
のFN-III関連ドメインからなることを示唆する。この細胞外ドメイン
には、12の潜在的Nグリコシル化部位が含まれ、MCP7が高度にグリコシル化され
ていることが示唆される。興味深いことに、MCP7は、第4のFN-IIIドメイン内に
RXR/LRモチーフ(残基640-643)を含んでいる。このモチーフは、サブチリシン
様エンドプロテアーゼであるフリンに対する開裂部位として記載されている(Ba
rr,P.J.,Cell 66:1-3(1991);Hosakaら,上述した)。
MCP7の細胞質部分は、全ての既知PTPアーゼに典型的な保存アミノ酸配列を含
有している2つのPTPアーゼドメインから成る(Saito,H.ら,Cell Growth Diff
.2:59-65(1991))。特に興味深い特徴は、トランスメンブランドメインをアミ
ノ末端PTPアーゼドメインに連結している領域であり、その部分の大きさはほと
んどの他の受容体様PTPアーゼのほぼ2倍である。同様の拡張距離は、相同PTPア
ーゼすなわちhRPTPμによってのみ共通する(図16A-B、下のライン)。MCP7とhR
PTPμとの間の全体的相同性は77%であり、それらに対してN末端とC末端のPTP
アーゼドメインの相同性は、それぞれ91%および86%関与している(図16)。
10.3.考察
MCP7の細胞外ドメインは、約170の残基に及ぶ配列モチーフである1つのMAMド
メインから成っており、それは幾つかの機能的に異なる受容体(RPTPμおよびA5
タンパク質を含む)の比較により最近確立され、細胞接着に役割を果たすと考え
られる(Beckmann & Bork,1993,TIBS 18:40)。MCP7の細胞外ドメインには、
さらに、1つのIg様断片と4つのFN-III型様断片が含まれる。したがって、それ
は幾つかの細胞接着分子により構造的特徴を共
通にするため、MCP7がII型PTPアーゼの部類に分類することが可能となる。
MCP7は、肺、脳および心臓においてより限られた発現パターンを示すmRPTPμ
に高度に相同である(Gebbinkら,上述した)。MCP7は、LARについて既に示され
た構造的特徴である2つの非共有結合サブユニットから成る分子として発現して
いる。同様のプロセシングモチーフも、mRPTPμの細胞外ドメイン内(RPKR残基6
32-635)で決定され、この構造組成はII型ホスファターゼファミリーに典型的で
あることが示唆される。二塩基性プロセシングモチーフを含有する領域の細胞接
着分子Ng-CAMの細胞外ドメインにおいて、タンパク質溶解性開裂も生じる(Burg
oon,M.P.ら,J.Cell.Biol.112:1017-1029(1991))。この構造の機能的有意
性はまだ明らかでない。LARに関しては、細胞外E-サブユニットの放出が密度依
存的に観察された(Streuliら,上述した)。この放出は、非共有結合的に結合
したサブユニット間の相互作用を弱める近隣細胞表面上の分子間において、同種
親和性または親水性の相互作用によって生じる細胞外ドメインのコンホメーショ
ンが変化するからのようである。細胞内のPTPアーゼドメイン活性に対するこの
放出の効果はまだ明らかでないが、ホスファターゼ活性の改変又はプロセスを改
変するための感受性の変化は可能である。
11. 実施例:ヒトRPTPκの組織分布
11.1. RNA抽出およびノーザンブロット解析
全RNAをイソチオシアン酸グアニジニウム法(Chirgwinら,1979,Biochemi
stry 18:5294-5299)によってヒト組織およびコンフルエントに達するまで増殖
させた培養細胞から単離した。ポリ(A)+RNAはオリゴ(dT)カラム(Av
iv & Leder,1972,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:1408-1412)上で調製した。
4μgのポリ(A)+RNAを1.2%ホルムアルデヒドアガロースゲル上で分画
化し、引き続いてニトロセルロース・フィルター(Schleicher & Schuell)へ移
行させた。ハイブリダイゼーションは、1-3×106 cpm/mlの32P−標識ランダム
プライムDNA(United States Biochemical)を用いて、50%ホルムアミド、
5×SSC、50mM NaH2PO4、pH6.8、0.5%SDS、0.1mg/ml超音波処理
サケ精子DNA、および5×Denhardt溶液中において42℃で一晩かけて実施した
。フィルターを2×SSC、0.1%SDSおよび0.2×SSC、0.1%SDSを用
いて45℃で洗浄し、−80℃で増感板を用いて5日間感光させた。
11.2. 結果
ノーザンブロット解析によってMCP7の広範な組織分布が明らかになった(
図17)。6.7kbの転写物が肺および結腸組織中で上昇したレベルで観察され、肝
臓、膵臓、胃、腎臓および胎盤においてはそれより少ない程度で観察された。牌
臓組織中では転写物は検出されなかった。
種々の乳癌由来細胞系におけるMCP7の発現パターンは図18
に示されている。MCP7発現は試験した細胞系全部において観察されたが、転
写物の量は有意に相違していた。4.9kbのサイズを有する第2の転写物もまた強
いシグナルを示して全細胞系において検出された。さらにその上、MDA−MB
-435細胞はMCP7プローブとハイブリダイズした特異的1.4kbmRNAを含有し
ていた。図18に示したノーザン・ハイブリダイゼーション・シグナルの強度がE
GF−RおよびHER2/neuRTKの異常な過剰発現と相関していることに注目
すると興味深い。MCP7の発現は、ヒト黒色腫細胞系および一部の結腸癌由来
細胞系においても検出された。
12. 実施例:ヒトRPTPκの一時的発現
12.1. 方法
MCP7cDNAをサイトメガロウイルス初期プロモーターをベースとした発
現プラスミド(pCMV)内へクローン化した。使用したRTK発現プラスミド
については以前に報告されている(Vogel,W.ら,1993 Science 259:1611-1614
)。トランスフェクションの30時間前に、4500mg/lグルコース、9%ウシ胎仔血
清および2mMグルタミンを含有するDulbeccoの修正イーグル培地(DMEM)に
おいて増殖させた3×105細胞のヒト胎児腎線維芽細胞系293(ATCC CRL
1573)を6ウェル培養皿のウェルにまいた。
その後、Chen and Okayama(Chen,C.and Okayama,H.1987,Mol.Cell.Bi
ol.7:2745-2752)のプロトコールに従うリン酸カルシウム共沈降法を使用して
、0.2μgの発現プラスミドを含
むが空ベクターDNA(Gorman,C.M.ら,1989,Virology 171:377-385;Lammer
s,R.ら,1989,J.Biol.Chem.265:16886-16890)を補足した総量4μgを用
いて、CsCl精製プラスミドDNAによるトランスフェクションを実施した。
トランスフェクションの16時間後、細胞を1回洗浄し、0.5%ウシ胎仔血清を含
有する培地を用いて飢餓状態にした。
代謝標識のためには、DMEMの代わりに、Earle's塩を含むがL−メチオニ
ンを含んでいないMEMを使用した。40μCi/ml(1,000 Ci/mmol)の[35S]
メチオニンを添加した。
細胞を適切なリガンドを用いて10分間剌激した。EGF−R、HER1/2、E
K−RあるいはEP−Rを用いてトランスフェクトした細胞を剌激するために、
上皮細胞増殖因子(EGF)を100ng/mlで使用した。IRを用いてトランスフェ
クトした細胞を刺激するためにはインスリンを1μg/mlで使用した。p145c-kπ
を用いてトランスフェクトした細胞を剌激するためにはSCFを100ng/mlで使用
した。剌激後、細胞を200 μl溶解緩衝液(50mM HEPES、pH7.5;150mM
NaCl、1.5mM MgCl2、1mM EGTA、10%グリセロール、1%トリト
ンX-100、2mMフェニルメチルスルホニルフルオライド、10μg/mlアプロチニン
、1mMオルトバナジン酸ナトリウム)中で溶解させた。溶解産物は125,000×g
、4℃で10分間遠心分離することによって予備清澄化し、上清の容量の1/10をS
DSサンプル緩衝液と混合した。
タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜へ移行さ
せた。イムノブロット上のホスホチロシンおよびタンパク質抗原を検出するため
には、西洋ワサビペルオキシダー
ゼに結合させたヤギ抗マウス抗体あるいはヤギ抗ウサギ抗体(Biorad)とともに
ECL系(Amersham)を使用した。他の抗体を用いて再精査するために、ブロッ
トを50℃で67mMトリス−HCl(pH6.8)、2%SDSおよび0.1%β−メルカ
プトエタノール中で1時間インキュベートした。
免疫沈降反応のために、放射標識細胞を抗血清と一緒に4℃で2時間インキュ
ベートし、未結合抗体を取り除くためにPBS(15mM NaCl、3mM KCl
、80mM Na2HPO4・H2O、1.5mM KH2PO4、pH7.4)を用いて3回洗浄し
、溶解させ、遠心分離によって予備清澄化した。20μlの量でプロテインA−セ
ファロース(Pharmacia)を添加し、4℃で回転ホイール上で2時間インキュベ
ートした。沈降物をHNTG緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、150mM Na
Cl、0.1%トリトンX-100、10%グリセリン)を用いて4回洗浄し、SDSサ
ンプル緩衝液を添加し、SDS−PAGEを実施した。その後乾燥ゲルに対して
X線フィルムを2日間感光させた。
マウスRPTPκの細胞外ドメインに対して特異的であるポリクローナル抗血
清Ab 116は、MCP7のマウス相同体の細胞外ドメイン内のペプチド配列(残
基60-76)に対して誘導され、この配列は第10節に上述したようにヒト配列中に
完全に保存されていた。ホスホチロシンに対して特異的なモノクローナル抗体5
E.2については以前に述べられている(Fendly,B.M.ら,1990,Canc.Res.50
:1550-1558)。
12.2. 結果
293胎児腎細胞内へサイトメガロウイルス・プロモーターをベースとした発現
ベクターを用いてMCP7cDNAをトランスフェクションした48時間後、放射
標識した細胞をAb 116と一緒にインキュベートした。細胞を洗浄し、溶解させ
、抗体結合物質を免疫沈降させた。
MCP7発現は細胞表面においてのみ観察され、見かけの分子量185kDaを有
するバンドとして現れた。計算で得た分子量163kDaより大きなサイズは、おそ
らく細胞外ドメインの広範なグリコシル化によるものであった。
97kDaおよび116kDaの2つの追加のバンドが免疫沈降された(図19A、レ
ーン1)。これらのバンドは対照ベクターを用いてトランスフェクトした細胞に
おいては検出できなかった。このような分子量が少ない産物は分解産物であると
思われた。なぜならば、細胞外ドメインがエンドプロテアーゼ・フリンによるプ
ロセッシングのための共通の切断モチーフ(RXR/LR;残基640-643、図15
A−E)を含んでいるからである。これらの産物はマウスRPTPκについて上
述した分解産物に類似している。さらに、LARの細胞外ドメインの類似のプロ
セッシングが報告されている(Streuliら,前掲)。
116kDaフラグメントのαサブユニットは、細胞外ドメインの大部分を提示し
、ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析に基づくバンドの幅広さおよび残基20お
よび639の間の配列に基づく計算値47kDaを越えていた見かけ分子量によって明
らかなように、高度にグリコシル化されている。97kDaフラグメントのβサブ
ユニットは細胞内および膜貫通ドメインに対応し、さらにαサブ
ユニットと相互作用すると思われる短い細胞外セグメントを含んでいる。βサブ
ユニットの観察された97kDaという分子量のサイズと計算された91.4kDaとい
う分子量との比較的小さな差異は唯一の潜在的N−グリコシル化部位の存在によ
って説明することができる。
αおよびβサブユニットは安定な複合体を形成すると考えられ、従って細胞外
ドメインに対して特異的な抗体による免疫沈降反応によって両方のサブユニット
が検出されるだろう。116kDaバンドがαサブユニット分解産物に対応するが、
単に非特異的交差反応種には対応しないことを確認するために、MCP7 cD
NAでトランスフェクトした293細胞からの溶解産物を、N−末端エピトープに
特異的な抗血清116を用いてウエスタンブロットにかけた。このアプローチを用
いると約116kDaのバンド並びにプロセッシングされていない前駆体が観察され
たが(図19B、レーン1)、対照ベクターでトランスフェクトした匹敵するレベ
ルの293細胞においてはどちらも検出されなかった(図19B、レーン2)。
13. 実施例:ヒトRPTPκのPTPアーゼ酵素活性の試験
MCP7と称するRPTPκが実際にPTPアーゼ酵素であることを証明する
ために、293細胞における上述の一時的発現系を使用した。
様々な構造的サブクラスを提示する様々なRTKのパネルを用いてのMCP7
の共発現によって、一般に使用されるものよりも脱リン酸化のターゲットとして
のPTPアーゼのより生理学的な
基質の試験が可能になった。
タンパク質が主として膜に局在することを確かめるため、そして細胞輸送系の
過負荷を避けるために、これらのトランスフェクション実験は最初のプロトコー
ル(Gorman,C.M.et al.,Virology 171:377-385(1989);Lammers,R.et al.
,J.Biol.Chem.265:16886-16890(1998))に比較してほんの少量のプラスミド
を用いて実施した。試験した受容体は主としてキメラ受容体であり、それぞれの
キナーゼ機能はEGF−R細胞外ドメインの制御下にあった(Lee,J.ら,EMBO
J.8:167-183(1989);Herbst,R.ら,J.Biol.Chem.266:19908-19916(1991)
;Seedorf,K.ら,J.Biol.Chem.266:12424-12431(1991))。ヒト293線維芽
細胞は、等量の、RTKおよびMCP7をコードする発現プラスミドまたは対照
ベクターのいずれかを用いてトランスフェクトした。RTKの適切なリガンドを
用いて剌激した後、細胞を溶解させ、等量のアリコートをSDS PAGEによ
って分離し、抗ホスホチロシン抗体5E2を用いてイムノブロットすることによ
って受容体のホスホチロシンレベルを試験した(Fendly,G.M.ら,Canc.Res.5
0:1550-1558(1990))。
MCP7とI−R、EGF−R、EP−R、EK−R、およびSCF−R/c
−kitとの共発現は、MCP7発現プラスミドが省かれていた対照トランスフ
ェクションと比較して、リガンド誘導受容体ホスホチロシン含量の顕著な低下を
もたらした(図20A、レーン1および9;図20B、レーン1、5および9)。こ
れとは対照的に、HER1-2はMCP7の不良基質であると思われたが、それは
このキメラのリガンド誘導リン酸化状態の弱い減少
しか観察されなかったためである(図20A、レーン5)。興味深いことに、I−
R、EGF−RおよびEP−Rの細胞内に局在化された、不完全にプロッセシン
グされた前駆体形態(図20A、レーン2、4および10、12;20B)レーン2、4
)並びにHERl−2の前駆体形態(図20A、レーン6、8)は効率的に脱リン
酸化されており、これは細胞表面に達する前に共発現されたRTKと同一の細胞
内分画にMCP7が存在して活性を示すことを示唆している。
上述の成果を検証するため、そしてRTK発現レベルの差異を除外するために
、上述のブロットをRTK特異的およびRPTPκ特異的抗体を用いて再精査し
た。結果は、種々のRTKの発現レベルが等しいことを示した。
14.実施例:ヒトRPTPκ発現と細胞密度との相関関係
細胞−細胞および細胞−細胞外マトリックスの相互作用に関与するタンパク質
において見いだされたモチーフに似ているヒトRPTPκの細胞外ドメインにお
けるモチーフの存在は、培養中の細胞密度が発現レベルに及ぼす影響についての
研究を促した。
同数のSK−BR−3細胞を1、2または4枚の15cm培養皿のいずれかに分配
し、標準増殖条件下で2日間インキュベートした。2日後に採取したとき、種々
の出発密度でまいた細胞は各々100%、70%、および40%のコンフルエント(集
密度)に達していることが観察された。ポリ(A)+RNAを調製し、第11.1
節に上述したようにMCP7の細胞外ドメインに相当するプローブを用いてノー
ザンブロット分析を実施した。結果は、MCP7転写
物のレベルは細胞密度の増加に伴って上昇することを示した(図21A)。
この作用がSK−BR−3細胞に特有の作用であるかどうかを調査するために
、結腸癌由来細胞系HT29を用いて同一の実験を実施した。これらの細胞に関し
てもMCP7mRNAの発現が密度依存性であることが判明した(図19B)。
対照として、酵素GAPDHをコードするmRNAの発現を、種々の密度の上
記細胞において試験した。これらの転写物の発現に密度依存性は観察されなかっ
た。
上述の結果は、RPTPκ、およびII型およびIII型ファミリーの他のRPT
Pが細胞接着現象に関与し、それによって変調されるという仮説を支持している
(Charbonneauら、前掲)。PTPアーゼは細胞−細胞接触により増殖停止へ導
く現象に関与していると思われる(Klarlund、前掲)。ホスファターゼ活性の強
力な阻害剤であるオルトバナデートの存在は3T3細胞の正常な接触阻害を減少
させる。さらに、3T3細胞の膜画分に関連したPTPアーゼ活性は、細胞をよ
り高密度へ増殖させたときには8倍に増加した(Pallen,C.J.ら,Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 88:6996-7000(1991))。
細胞外ドメインまたはRPTPκ中のCAMモチーフと細胞内PTPアーゼ活
性との組合せは、RPTPκが細胞増殖の停止と関連する現象の重要なメディエ
ーターとして作用する可能性を示している。上述のヒトRPTPκの構造的特徴
、密度依存的なアップレギュレーションまたはその発現、およびRTKを脱リン
酸化する際のその強力な活性は、接触阻害を介しての増殖停止にお
けるRPTPκの中枢的役割、並びに腫瘍抑制遺伝子としての役割の新たな概念
を支持している。
15.実施例:受容体チロシンホスファターゼによる
同種親和性結合
本研究では、CAMファミリーの「古典的」メンバーに類似して、RPTPア
ーゼが同種親和性細胞内相互作用の能力があるかどうかを調べる(Q.Yu,T.Le
nardo,R.A.Weinberg,Oncogene 7,1051 (1992))。RPTPアーゼRPTP
κによる細胞接着の分析がおそらく哺乳類RPTPアーゼのための保存リガンド
を欠失している細胞系におけるその異所性発現によって促進されるであろうと推
論して、我々はRPTPκcDNAをショウジョウバエS2細胞内へ安定に導入
した。これらの細胞は自然凝集または接着に対する能力が極めて低いので、この
ような研究にとっては理想的な確立された系である(H.Kramer,R.L.Cagan,S
.L.Zipursky,Nature 352,207)。ベクターの熱ショックタンパク質70(hsp
70)プロモーターに関してセンス方向でRPTPκcDNAを含有するベクター
を用いてトランスフェクトされ、さらに短時間の熱処理によって誘導された細胞
は、抗RPTPκ抗血清によるイムノブロッティングによって検出可能な210kD
のタンパク質を発現した(図22A)。このタンパク質は哺乳類細胞に見られたR
PTPκのプロセッシングされていない形態に一致する(Y.P.Jiangら.Mol.C
ell.Biol.13,2942(1993))。さらに、より長時間の発現後に110kDのタンパ
ク質種も発現されたが、これはRPTPκタンパク質が少なくとも、一部は、哺
乳類細胞
においてプロセッシングされる方法に類似する方法で、即ちフリン型エンドプロ
テアーゼによるタンパク質分解切断により、ショウジョウバエ細胞系において部
分的にプロセッシングされうることを示唆している(図22A)(Y.P.Jiangら.
Mol.Cell.Biol.13,2942(1993))。ショウジョウバエのフリン相同体につい
ては最近記述されている(A.J.M.Roebroekら,EMBO J.12,1853(1993))。
RPTPκ発現が細胞−細胞凝集を媒介しうるかどうかを試験するために、セ
ンス方向(センスcDNA)またはアンチセンス方向(アンチセンスcDNA)
のいずれかでRPTPκ cDNAを用いて安定にトランスフェクトされた細胞
を凝集アッセイにおいて試験した。非誘導および熱ショック誘導細胞を再懸濁し
、確実に混合して容器への接着を回避するために回転振とうに付し、その後に凝
集物形成についてアッセイした。10細胞以上で約100細胞までの細胞から構成さ
れる多数の凝集物の形成は熱ショック誘導されたセンスcDNA発現細胞におい
てのみ観察され、一方対照細胞(即ち、アンチセンスcDNAトランスフェクト
細胞または非熱ショック誘導細胞)は本質的に単一細胞の懸濁体のままであった
(図22B、C)。2通りの定量方法、つまり顕微鏡下での凝集物の計数およびCo
ulterカウンターによる超閾値粒子の測定(図22D)はこの結論を証明した。大
きな割合のRPTPκトランスフェクト細胞がアッセイ期間を通して単一細胞の
ままであるため凝集が不完全であったという事実は、おそらく、トランスフェク
トされた細胞集団がRPTPκ発現のレベルにおいて相違する細胞の非クローン
化プールから構成されているという事実に
起因するようである。特に、アッセイの条件(即ち、培地、時間の尺度、および
振とう速度)は多数の明確に確立された接着分子の接着特性を証明するために使
用された条件に類似している(H.Kramer,R.L.Cagan,S.L.Zipursky,Nature
352,207(1989))。それゆえ、協同性に帰せられる多数の細胞接着分子の結合
親和性を測定することの困難性を考慮すると、RPTPκの発現により付与され
る細胞−細胞相互作用の強度は、確定されている「古典的」な細胞接着分子のそ
れに匹敵すると思われる。
上述の実験は全長のRPTPκ cDNAを用いて実施されたので、接着特性
を付与するのに細胞内ドメインのホスファターゼ活性が必要とされるかどうかは
不明のままとされた。幾つかの例においては、細胞接着分子の無傷の細胞内ドメ
インは実際に細胞−細胞相互作用のある面のために必要とされることが証明され
ている(A.Nafaguchi and M.Takeichi,EMBO,J.7,3679(1988);S.H.Jaffeら
,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,3589(1990);R.O.Hynes,Cell 69,111 (19
92))。この問題を試験するために、RPTPκのほとんどの細胞内触媒ドメイ
ンを欠失している変異タンパク質をコードしているcDNAを構築した。図22E
は、このような切断(truncation)がこの種のアッセイにおいて測定される細胞
凝集をネガティブに妨害しなかったことを示している。RPTPκの細胞外ドメ
イン中のフリン切断部位が果たす役割についても試験した。この部位の突然変異
もまた接着挙動を無傷のままで残したことから、RPTPκプロタンパク質(Y.
P.Jiangら.Mol.Cell.Biol.13,2942(1993))の切断が細胞凝集を誘導する
のに必要でないことが示唆された。
細胞接着分子は、Ca++の存在を必要とするもの(例:カドヘリンファミリー
のメンバーおよびインテグリン)と、必要としないもの(例:N−CAM、Ng-
CAM)の両方が報告されている(G.M.Edelman,Immun.Rev.100,11(1987)
;A.F.Williams and A.N.Barclay,Annu.Rev.Immunol.6,381 (1988);M.
Grumet,Curr.Opin.Neurobiol.1,370(1991),R.O.Hynes,Cell 69,111(19
92),B.Geiger and O.Ayalon,Annu.Rev.Cell Biol.8(1992))。図22に示
した実験は、凝集細胞懸濁体中に10mMのCa++を存在させて実施した。カルシウ
ムイオンの不在下および1mMのEGTAの存在下で同様の実験を実施しても、ア
ッセイ条件下でのRPTPκ媒介細胞凝集のためのカルシウムの必要性は明らか
にならなかった。
観察されたRPTPκの発現に相関する凝集は、細胞−細胞結合が凝集物内の
個々の細胞上のRPTPκタンパク質間の相互作用によって媒介される同種親和
性結合機構、あるいは親トランスフェクト細胞に固有の第2の細胞表面リガンド
へのRPTPκタンパク質の結合のいずれかによって説明することができるであ
ろう。これら2つの仮説は、種々の細胞集団を蛍光親油性色素である1,1'-ジオ
クタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドカルボシアニンパークロレート(di
I)を用いて標識し(J.Schlessingerら,Science 195,307(1977))、その後
それらの共凝集能について試験することによって識別することが可能であった。
これらの実験において、RPTPκ発現細胞および非発現細胞をdiIを用いて標
識し、RPTPκ発現型または非発現型のいずれかの非標識細胞と混合し、形成
された凝集物中のいずれかの型の細
胞の存在を蛍光顕微鏡によって検査した。その結果を図23に示してある。注目す
べきこととして、非標識のRPTPκ陽性細胞と標識したRPTPκ陰性細胞と
の混合は専ら非標識細胞だけからなる凝集物の形成をもたらした。これとは逆に
、RPTPκ発現細胞を標識して、非標識対照細胞と凝集させたところ、凝集物
は完全に標識細胞から構成され、このことはdiI標識がトランスフェクト細胞の
凝集能を妨害しないことを証明している。どちらもRPTPκを発現している標
識および非標識細胞の混合は、両方の染色タイプの細胞から構成される混合凝集
物の形成をもたらしたので、これによってdiI染色細胞と非染色細胞の両方が共
凝集能をもっていることが確証された。これらの結果は、RPTPκトランスフ
ェクト細胞の凝集には、凝集物内の全細胞上に該タンパク質の存在することが必
要であることを示唆しており、同種親和性結合機構を暗示している。
次に、RPTPκの細胞外ドメインが、接着プロセスにおいて支援するために
他の因子とは独立してRPTPκタンパク質を発現する細胞の付着のための基質
としてそれ自体で機能することができるかどうかを調べた。精製および検出のた
めの標識として機能する胎盤アルカリホスファターゼへ融合された、RPTPκ
タンパク質の細胞外ドメインから構成される可溶性組換えタンパク質を作り出す
ために、バキュロウイルス発現系を使用した(J.G.Flanahan and P.Leder,Ce
ll63,185(1990))。これら2種のタンパク質成分の融合は、RPTPκ中の第
4フィブロネクチンIII型リピートのフリンタンパク質分解性切断シグナルの前
で正確に起こるように設計された(Y.-P.Jiangら.Mol.Cell.B
iol.13,2942(1993))。精製した組換えタンパク質(K2AP)を用いて細菌
学的ペトリ皿に塗布し、RPTPκ発現S2細胞の付着を可能にさせるその能力
について検査した。誘導されたRPTPκ発現細胞だけがK2AP塗布表面への
接着挙動を示した(図24A−D;下記の表II)。
アルカリホスファターゼまたはバキュロウイルス発現系からアフィニティーク
ロマトグラフィーによって精製したヒトEGF−受容体の組換え細胞外ドメイン
(I.Laxら,J.Biol.Chem.266,13828(1991))を含んでいた対照の塗布表面
への付着は起こらなかった。上述の実験は昆虫細胞を用いて実施されたが、類似
の細胞−基質接着アッセイでの哺乳類細胞におけるRPTPκタンパク質発現の
効果もまた試験した。親ショウジョウバエS2細胞とは対照的に、RPTPκ過
剰発現のための宿主として使用した哺乳類細胞系であるラットL6筋原細胞は、
既にK2APタンパク質塗布表面への低レベルの自然接着を示す。しかし、これ
らの細胞におけるRPTPκ cDNAの安定な過剰発現は、RPTPκタンパ
ク質の組換え可溶性細胞外ドメインを塗布した表面への接着能の有意な(2.7倍+
/-1.0;n=3)増加をもたらした(図24
A−D)。
15.1. 考察
細胞−細胞接触は、一般に悪性腫瘍の様々な面において決定的に重要な役割を
果たすと考えられている。例えば、接触阻害からの逃避は形質転換の古典的なパ
ラメーターであり、さらに細胞−細胞相互作用と腫瘍の侵入および転移のような
現象との間に数多くの関連があることは明らかである(F.Van Roy and M.Mare
el,TICB 2,163(1992))。上述のデータは、(IgとフィブロネクチンIII型ド
メインとの組合せを含む)LAR様サブファミリーのRPTPアーゼが、隣接細
胞間の同種親和性結合を生じさせる能力があることを明らかに実証しており、こ
のような分子の細胞外ドメインの機能の同定をもたらす。これは、このRPTP
アーゼサブファミリーの他のメンバーがおそらく類似の方法で挙動しうることを
本当らしくさせ、細胞の接着特性と、チロシンリン酸化を含むシグナル伝達経路
との間に最近出現した一連の関連を拡大する。例えば、アドヘリン接合部は増加
したチロシンリン酸化部位に一致し、そのコントロールを受けると思われ、イン
テグリンまたは確定されたCAMの細胞外ドメインに向けられた試薬類は細胞チ
ロシンリン酸化における変化を引き出すことが証明されている(J.R.Atashiら
,Neuron 8,831(1992);T.Volbergら,EMBO J.11,1733(1992);R.L.Julian
o and S.Haskill,J.Cell Biol.120,577(1993))。さらに、細胞接着分子へ
向けられた試薬類は多数の第2メッセンジャーシグナルを活性化させることが知
られている(Schuch,U.Lohse,M.Schachner,Neuron
3,13−20(1989);P.Doherty,S.V.Ashton,S.E.Moore,F.Walsh,Cell 67,
21(1991))。上述の観察は、このようなシグナルを発生させる機構を示唆してい
る。例えば、隣接細胞上のRPTPアーゼ間の直接の細胞−細胞接触は、RPT
Pアーゼの触媒活性または局在化のいずれかに影響を及ぼす局所RPTPアーゼ
オリゴマー化現象を導くであろうが、これはさらにsrc-ファミリー・チロシンキ
ナーゼの活性を調節することが示唆されている(H.L.Ostergaardら,Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 86,8959(1989);T.Mustelin and A.Altman,Oncogene 5
,809(1989);X.M.Zheng,Y.Wang,C.Pallen,Nature 359,336(1992))。そ
の上、RPTPアーゼおよびCAMの細胞外ドメインの類似の構造的および機能
的特性は、RPTPアーゼが、自己相互作用に加えて、in cisであろうとin tra
nsであろうと、細胞接着に関与する他の分子と異種親和相互作用しうる可能性が
あることを推測させる(G.M.Edelman,Immun.Rev.100,11 (1987);A.F.Wil
liams and A.N.Barclay,Annu.Rev.Immunol.6,381(1988);M.Grumet,Cur
r.Opin.Neurobiol.1,370(1991),R.O.Hynes,Cell69,111(1992);B.Geig
er and O.Ayalon,Annu.Rev.Cell Biol.8(1992);M.Grumet and G.M.Edel
man,J.CellBiol.106,487-503(1988);G.A.Kadmon,A.Kowitz,P.Altevog
t,M.Schachner,J.Cell Buiol.110,193(1990);A.A.Reyes,R.Akeson,L
.Brezina,G.J.Cole,CellReg.1,567(1990);P.Sondergger and F.G.Rath
jen,J.Cell Biol.119,1387(1992);M.G.Grumet,A.Flaccus,R.U.Margol
is,J.Cell Biol.120,815(1993))。
上述の参考文献は、明確に組み込まれるかどうかにかかわりなく、参考として
ここに組み入れることにする。
本発明を十分に説明してきたので、当業者はには、本発明の精神および範囲か
ら逸脱することなく、そして過度の実験作業を行うことなく、広範な等価のパラ
メーター、濃度および条件の範囲内で本発明を実施できることが認められるであ
ろう。本発明は本発明の特定の実施態様と関連して記載してきたが、その他の変
更態様が可能なことは理解されるであろう。本出願は、一般に本発明の原理に従
った、そして本発明が関係する当技術分野の既知あるいは慣習的プラクティスに
入るような、そして添付の特許請求の範囲内に記載されている本質的特徴に適用
できるような本発明の開示からの逸脱を含む、本発明のあらゆる変更、使用また
は改良をカバーすることが意図されている。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12N 9/16 9358−4B C12P 21/08
15/02 9453−4B C12Q 1/68 A
C12P 21/08 8310−2J G01N 33/50 P
C12Q 1/68 9284−4C A61K 39/395 D
G01N 33/50 9284−4C N
// A61K 39/395 9162−4B C12N 15/00 C
9281−4B 5/00 B
(C12N 5/10
C12R 1:91)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AU,BB,BG,BR,BY,CA,
CN,CZ,FI,GE,HU,JP,KG,KR,K
Z,LK,LV,MD,MG,MN,MW,NO,NZ
,PL,RO,RU,SD,SI,SK,TJ,UA,
UZ
(72)発明者 シュレシンガー,ジョセフ
アメリカ合衆国 10011 ニューヨーク州
ニューヨーク,ワシントン スクエア
ウエスト 37番地
(72)発明者 サップ,ジャン エム.
アメリカ合衆国 10016 ニューヨーク州
ニューヨーク,ファースト アベニュー
545番地,アパートメント 7ビー
(72)発明者 ウルリッヒ,アクセル
ドイツ連邦共和国 ディー―8033 マルテ
ィンスリード ベイ ミューニック,アム
クロップファースピッツ 18エイ番地
(72)発明者 フォーゲル,ヴォルフガング
ドイツ連邦共和国 ディー―8034 ゲルメ
リング,イム タン 17番地
(72)発明者 フッフス,ミリアム
ドイツ連邦共和国 ディー―82319 スタ
ーンバーク,プリンツェンヴェーク 1番
地