【発明の詳細な説明】
熱硬化性塗料組成物
本発明はビニルポリマーの分野に属する。更に詳しくは、本発明は、エナメル
組成物のバインダーとして有用なフェノール官能化ビニルポリマーに関する。
高強度、高モジュラス及び耐薬品性塗膜(又は被膜)についての塗料産業に於
ける要求がある。本発明は上記の要求を満足させる方向に向いており、本明細書
に記載した塗膜は耐酸性、鉛筆硬度、耐溶媒性、光沢等の1つ又はそれ以上の特
別の性質に於ける改良を示す。
EP-A 466,359には、4−アセトキシスチレンの重合及び4−アセトキシスチレ
ンとアクリル酸エステルのような追加のビニルコモノマーとの共重合並びにそれ
に続くアルコールでのエステル交換反応によるフェノール官能化ポリマーの製造
方法が開示されている。このポリマーはUV、X線及びEビーム画像形成システム
と組み合わせて使用するためのフォトレジスト成分として有用であることが教示
されている。同様に、米国特許第4,857,601号には、後で酸又は塩基を含むアル
コール又は水処理して最終フェノール官能化ポリマーを得る4−アセトキシスチ
レンとムコン酸ジアルキル又はソルビン酸アルキルとのコポリマーの製造方法が
開示されている。
米国特許第5,106,651号には、活性水素含有ポリマーとアミノプラスト硬化剤
とを含有するフィルム形成組成物を適用して塗布物品を形成することからなる塗
膜の製造方法が開示されている。フェノール官能化は開示されておらず、脂肪族
ヒドロキシ及びカルボン酸活性水素基のみが記載されている。更に、これらの組
成物では酸腐食及び水斑点発生に対する良好な耐性を有するエナメルを作るため
にUV放射線に追加露光することが必要である。
EP-A 419,088には、非液晶性エステルフェノール末端封鎖ポリマー及びエナメ
ル塗膜を得るためにアミノプラスト硬化剤で架橋したこのようなポリマーが開示
されている。これらの組成物に於いて、フェノール単位は常に脂肪族ヒドロキシ
基を含有するポリマーをヒドロキシ安息香酸と反応させることによって製造され
たエステル基を介してポリマーに結合している。この文献ではこのポリマーがポ
リエステル、アルキド樹脂、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂であってよいことが
教示されている。
追加の線状高分子量フェノール官能化ポリマーは、カチオン性触媒の存在下で
ヒドロキシスチレンを重合させることによって製造されている[Masao Kato,J
.of Polymer Science,Part A-1,7巻、2405-2410頁(1969年)]。また、フ
ェノール官能化ポリマーを製造するために、ヒドロキシスチレンはフリーラジカ
ル開始剤の存在下でアクリル酸エステルのような他のビニルモノマーと共重合さ
れている[Masao Kato,J.of Polymer Science,Part A-1,7巻、2175-2184頁
(1969年)]。更に、フェノール官能化ポリマーが4−(アセトキシメチル)ス
チレンと4−(t−ブチルオキシカルボニルオキシ)スチレンとをラジカル触媒
共重合させ、次いでポリマーからt−ブチルオキシカルボニル基を除去すること
によって製造されている(J.M.J.Frechet,et al.,Macromolecules,1991年
24巻、1746-1754頁)。またポリ(4−ヒドロキシスチレン)がポリ(4−ビニ
ルフェニルベンジルエーテル)からポリマーのベンジルエーテル基を臭化水素酸
によって開裂することによって製造されている(Paolo Ferruti及びAngelino Fe
re,J.of Polymer Science,Part Al,9巻、3671-3673頁(1971年))。
本発明は、フェノール官能化ビニルポリマーとアミノプラスト、
例えばアルキル化メラミン−ホルムアルデヒド縮合物のような架橋剤とからなる
新規なエナメル組成物を提供する。このエナメル組成物から作られたエナメル塗
膜は優れた耐酸腐食性、耐溶媒性、硬度及び光沢を有している。それ故、本発明
の組成物は自動車、電気器具及び機械部品を被覆するために特に有用である。
本発明は、硬化したときに優れた性質を有するエナメル組成物を与える、有機
溶媒又は水性媒体(水性)(water borne)中に含有されたフェノール官能化ビ
ニルポリマー及び架橋剤からなる新規なエナメル組成物を提供する。更に、この
エナメルは室温で改良された安定性を有している。
本発明のフェノール官能化ビニルポリマーは、線状ポリマー鎖中にランダムに
存在するフェノール官能性単位:
の存在によって特徴付けられる。ポリマー主鎖の主要部を作るために、アクリレ
ート、メタクリレート、スチレン等のような他の一般的でもっと経済的なビニル
コモノマーを使用することができる。このフェノール官能化ビニルポリマーはア
ミノプラストのような架橋剤で処理することによって架橋されて、熱硬化性又は
熱硬化したエナメル塗膜(又は被膜)を作る。アミノプラストはメラミンのよう
なアミン又はアミドのホルムアルデヒド縮合生成物である。最も経済的な塗料組
成物を与えるために、アミノプラスト架橋剤の存在下で硬化させたときに適当な
架橋を与えるに十分なフェノール官能性単位のみを使用することが望ましい。
硬化を容易にするために、このエナメル組成物には好ましくはス
ルホン酸類、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸;酸
性リン酸エステル、例えばフェニル酸性リン酸エステルのような酸性触媒が含ま
れている。存在する触媒の量は好ましくはバインダーの全重量、即ち樹脂及び架
橋剤を一緒にした重量基準で約0.05〜5%である。
即ち、本発明は、
(I)成分(I)、(II)及び(III)の全重量基準で約25〜約65重量%の、
約1000〜約50,000の数平均分子量及び約5,000〜約100,000の重量平均分子量を有
するフェノール官能化ビニルポリマーであり、
(a)約5〜約80重量%の、式A:
[式中、Rは水素、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、C5〜C7−
シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、C1〜C6−アルキルアミノ及びア
リールアミノから選択され、R1は水素、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アル
コキシ及びハロゲンから選択され、R2は水素又はメチルであり、そしてR3は共
有結合であるか又は式-(CHR′)n−、−O−、−S−、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O
-、-C(O)-O(CH2)n-O-C(O)-及び-NH-C(O)-(式中、R′は水素又は式R-C(O)O-フ
ェニル−若しくはR-C(O)O-ナフチル−の基である)の基から選択され、各R″は
水素であるか又は両方のR″が一緒になって式
の基を形成し、そしてnは1〜10の整数である]
の4−アシルオキシスチレン化合物、
(b)約0〜約50重量%の、式Bのスチレン化合物及び/又は式Cのアシル化
ビニルアルコール、
(式中、R、R1及びR2は上記定義の通りである)
(c)約20〜約90重量%の、式D
(式中、R2は上記定義の通りであり、R4はC1〜C12−アルキル;C5〜C7−
シクロアルキル;C1〜C6−アルコキシ、C5〜C7−シクロアルキル、ヒドロキ
シ、アセトアセトキシ、アリール、フリル、テトラヒドロフリル及び−N(R5)R6
(式中、R5及びR6は独立にC1〜C6−アルキル又は水素から選択される)から
選択される1個又はそれ以上の基によって置換されたC1〜C12−アルキルから
選択される)
のアクリレートモノマー並びに
(d)約0〜約20重量%のアクリル酸及び/又はメタクリル酸(但し、(a)
、(b)、(c)及び(d)の合計は100%である)
のビニル成分を重合し、そして該重合の後でアルコールでエステル交換してポリ
マーのアシルオキシフェニル基を転化して得られるフェノール官能化ビニルポリ
マー、
(II)(I)、(II)及び(III)の全重量基準で約5〜約20重量%のアミノ架
橋剤並びに
(III)(I)、(II)及び(III)の全重量基準で約20〜約70重量%の有機溶媒
(但し、(I)、(II)及び(III)の合計は100%である)
からなるエナメル組成物を提供する。
本発明の別の面として、
(I)成分(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の全重量基準で約25
〜約65重量%の、約1000〜約50,000の数平均分子量及び約5,000〜約100,000の重
量平均分子量を有するフェノール官能化ビニルポリマーであり、
(a)約5〜約80重量%の、式A:
[式中、Rは水素、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、C5〜C7−
シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、C1〜C6−アルキルアミノ及びア
リールアミノから選択され、R1は水素、C1〜C6−アルキル、C1〜C5−アル
コキシ及びハロゲンから選択され、R2は水素又はメチルであり、そしてR3は共
有結合であるか又は式-(CHR′)n−、−O−、−S−、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O
-、-C(O)-O(CH2)n-O-C(O)-及び-NHC(O)-(式中、R′は水素又は式R-C(O)O-フェ
ニル−若しくはR-C(O)O-ナフチル−の基である)の基から選択され、各R″は水
素であるか又は両方のR″が一緒になって式
の基を形成し、そしてnは1〜10の整数である]
の4−アシルオキシスチレン化合物、
(b)約0〜約50重量%の、式Bのスチレン化合物及び/又は式Cのアシル化
ビニルアルコール、
(式中、R、R1及びR2は上記定義の通りである)
(c)約20〜約90重量%の、式D
(式中、R2は上記定義の通りであり、R4はC1〜C12−アルキル;C5〜C7−
シクロアルキル;C1〜C6−アルコキシ、C5〜C7−シクロアルキル、ヒドロキ
シ、アセトアセトキシ、アリール、フリル、テトラヒドロフリル及び-N(R5)R6(
式中、R5及びR6は独立にC1〜C6−アルキル又は水素から選択される)から選
択される1個又はそれ以上の基によって置換されたC1〜C12−アルキルから選
択される)
のアクリレートモノマー並びに
(d)約0〜約20重量%のアクリル酸及び/又はメタクリル酸、のビニル成分
を重合し、該重合の後でアルコールでエステル交換してポリマーのアシルオキシ
フェニル基を転化して得られるフェノール官能化ビニルポリマー(I)、
(II)(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の全重量基準で約0〜約30
重量%の水混和性有機溶媒、
(III)(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の全重量基準で約30〜約70
重量%の水、
(IV)(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の全重量基準で約5〜約20
重量%の架橋剤並びに
(V)(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の全重量基準で約0.5〜約3
重量%のアミン(但し、該アミンは該ビニルポリマー(I)と直接反応させる)
、
からなる水性エナメル組成物が提供される。
本発明の特に好ましい態様に於いて、式(A)に於いて、R3は共有結合であ
るか又は式-(CHR′)n-、−O−、−S−、-C(O)-及び-OC(O)-(式中、R′は水
素又は式R-C(O)O-フェニル−の基であり、nは1〜10の整数である)の基から選
択される。
本明細書に於いて、用語「アシル」はカルボン酸、カルボン酸エステル、カル
ボン酸ハライド、カルボン酸無水物及びイソチオシアネートの反応性残基、例え
ばホルミル、アセトアセチル、C1〜C6−アルキルアミノカルボニル、C5〜C7
−シクロアルキルカルボニル、アロイル(アリールカルボニル)、アロイルオキ
シカルボニル及びアリールアミノカルボニルを含めるために使用される。好まし
い「アシル」基はC1〜C6−アルキルカルボニル、特にアセチルである。
用語「C1〜C6−アルキル」及び「C1〜C8−アルキル」に於いて、アルキル
基には任意にヒドロキシ、ハロゲン、C1〜C6−アルコキシ、アリール、C1〜
C6−シクロアルキル、シアノ等から選択される1〜3個の置換基が含まれてい
てもよい。
用語「アリール」内の基の例には、フェニル、2(3)−フリル
及び2(3)−チエニル並びにC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ又は
ハロゲンから選択される1〜3個の置換基を含むこのような基が含まれる。
用語「C5〜C7−シクロアルキル」は、シクロペンチル、シクロヘキシル及び
シクロヘプチル並びにC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ又はハロゲン
で1〜3回置換されたこのような基を含めるために使用される。
ヒドロキシ官能化ビニルポリマーを与えるための好ましい方法工程は下記の通
りである。即ち、
(a)1種又はそれ以上の4−アシルオキシスチレン、1種又はそれ以上のア
クリル酸エステル及び任意に1種又はそれ以上のスチレン又はアクリル酸ビニル
コモノマーからなる混合物を、フリーラジカル開始剤の存在下で反応させる工程
及び
(b)続いて、このようにして(a)で生成したビニルポリマーに存在するア
シルオキシ基をアルコールと反応させることによってエステル交換反応させて、
所望のフェノール官能化樹脂を製造する工程。
過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、過硫酸塩、例えば、過硫酸ナトリウム
、過ホウ酸塩、過マンガン酸塩並びに脂肪族アゾ化合物、例えば、アゾビス−イ
ソブチロニトリル及び2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
等のような種々の種類のフリーラジカル開始剤が当該技術分野で知られており、
広く使用されている。
エステル交換反応工程(b)は、工程(a)で製造されたポリマーを受容でき
るエステル交換反応速度を与える1種又はそれ以上のアルコール(第一級アルコ
ールが好ましい)で処理することによって便利に行うことができる。反応を容易
にするためにエステル交換
反応触媒を使用することもできる。典型的な触媒には、有機スルホン酸、例えば
、p−トルエンスルホン酸、ブチル錫酸(butylstannoic acid)、チタンアルコ
キシド、例えば、チタンテトライソプロポキシド、アシル化水酸化亜鉛、例えば
、酢酸亜鉛等が含まれる。第一級C1〜C6−アルコールを使用し、反応を大気圧
下で行うことが好ましい。しかしながら、メタノールのような一層揮発性のアル
コールで、所望の温度及びエステル交換反応の速度を得るために必要なとき、加
圧反応器を使用することができる。一つの望ましい変形に於いて、エステル交換
反応工程(b)は工程(a)に存在する同じアルコール中で行われる。アシルオ
キシフェニル基のヒドロキシフェニル基への転換は、赤外スペクトルの分析によ
って証明される。
ビニル重合はアルコール、ケトン、例えば、メチルエチルケトン及びメチルn
−アミルケトン、CELLOSOLVES(商標)、例えば、メチルセロソルブ(2−メト
キシエタノール)並びに1,4−ジオキサン及びテトラヒドロフランのような環
式エーテルを含む種々の極性溶媒中で行うことができるけれども、アルコールが
好ましく、ブタノールが特に好ましい。トルエン、キシレン、シクロヘキサン、
ヘキサン及びヘプタンのような非極性溶媒が、好ましくは反応混合物の25重量%
より少ない量で存在してもよい。
工程(a)に於けるポリマーの分子量は、少量のアルキルメルカプタンのよう
な連鎖移動剤を存在させることによって調節される。また、使用される極性溶媒
、特にアルコール又はテトラヒドロフランは連鎖移動剤として機能し得る。
典型的に、式(B)のスチレン化合物には、スチレン、α−メチルスチレン、
4−イソプロピルスチレン、2−、3−又は4−メチルスチレン、2−、3−又
は4−クロロスチレン及び2−、3−又
は4−メトキシスチレンが含まれ、スチレン自体が特に好ましい。
上記の式(C)の典型的なアシル化ビニルアルコールには、酢酸ビニル、プロ
ピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シアン酸2−エチル、(ユニオンカーバイド社(
Union Carbide Co.)から入手できる)ピバル酸ビニル等が含まれる。酢酸ビニ
ルが非常に好ましい。
式(D)の好ましいアクリル酸エステルの例には、アクリル酸メチル、メタク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル
、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチ
ル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸4−メチルベンジル、アクリル酸フリル
、酢酸メチルフリル、アクリル酸2−(2−チエニル)エチル、アクリル酸n−
ヘキシル、メタクリル酸イソアミル、アクリル酸2−(ヒドロキシエチル)、メ
タクリル酸2−(ヒドロキシエチル)、メタクリル酸3−(ヒドロキシプロピル
)、アクリル酸2−(エトキシエチル)、メタクリル酸2−(メトキシエチル)
、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロ
ペンチル、メタクリル酸シクロヘキシルメチル、メタクリル酸シクロヘキシル、
アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、アクリ
ル酸ステアリル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸テト
ラヒドロフルフリル、メタクリル酸フルフリル、アクリル酸2−(アセトキシエ
チル)、メタクリル酸3−(アセトキシプロピル)、アクリル酸2−(ジメチル
アミノエチル)、メタクリル酸3−(ジメチルアミノプロピル)、アクリル酸ア
セトアセトキシエチル、メタクリル酸アセトアセトキシエチル、アクリル酸アセ
トアセトキシプロピル及びメタクリル酸アセトアセトキシプロピルが含まれる。
上記水性エナメル組成物の製造に於いて、この硬化性アクリルポ
リマーをアミンで直接処理して水分散性の樹脂にする。典型的なアミンには、ア
ンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノイ
ソプロパノールアミン、モルホリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、
トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチル
エタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等が含まれる。上記のように
、本発明の硬化性アクリル樹脂は、アミンと直接反応するために十分に酸性であ
るフェノール官能基を有している。しかしながら、20〜40mg KOH/gのカルボ
ン酸価を有する樹脂が好ましい。樹脂の酸価は配合に使用するアクリル酸及び/
又はメタクリル酸樹脂の量によって調節することができる。従来のカルボキシル
−濃縮−アミン−中和法(carboxyl-enrichment-amine-neutralization method
)は既に他の人によって非常に詳細に記載されている(例えば、Olding及びHayw
ard編、「表面塗膜用樹脂(Resins for Surface Coatings)」、第III巻、SITA
Technology, ロンドン、1987年、182頁参照)。
勿論、上記の記載に於いて、下記に示すように、この組成物中の種々のモル及
び重量パーセントは常に合計が100パーセントであることが認められるであろう
。
この硬化性エナメル組成物用の適当な溶媒には、キシレン、シクロヘキサノン
、ケトン(例えば、メチルアミルケトン)、2−ブトキシエタノール、エチル−
3−エトキシプロピオネート(EEP)、トルエン、n−ブタノール及び工業用ベ
ーキング(即ち、熱硬化性)エナメルで典型的に使用されるその他の揮発性不活
性溶媒が含まれる。
本発明の水性組成物用の適当な共溶媒には、エタノール、n−プロパノール、
イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノー
ル、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリ
コールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレン
グリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジ
アセトンアルコール及びその他の水混和性溶媒が含まれる。
「アミノ架橋剤」は好ましくはメラミン−ホルムアルデヒド型架橋剤、即ち、
複数個の-N(CH2OR3)2官能基(式中、R3はC1〜C4アルキル又は水素であり、好
ましくはメチルである)を有する架橋剤である。
この架橋剤はまたトルエンスルホンアミド変性メラミン−ホルムアルデヒド樹
脂等のような変性メラミン−ホルムアルデヒド型樹脂であってもよい。
一般に、架橋剤は下記の式(式中、R3は独立にC1〜C4アルキル又は水素で
ある)の化合物から選択することができる。
この点で、好ましい架橋剤には、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメト
キシメチルベンゾグアナミン、テトラメトキシメチル尿素、混合ブトキシ/メト
キシ置換メラミン等が含まれる。最も好ましい架橋剤はヘキサメトキシメチルメ
ラミンである。
本発明の別の面として、更に1種又はそれ以上の架橋触媒からなる硬化性エナ
メル組成物が提供される。このような触媒の例には、p−トルエンスルホン酸、
キング・インダストリー社(King Industrles)から販売されているNACURE(商
標)155、5076、1051、5225、4167及び2547触媒、BYK−ヘミー米国(BYK-Chemie
U.S.A.)から入手できるBYK(商標)触媒450及び470、メチルトリルスルホンイ
ミド等が含まれる。
本発明の別の面として、更に1種又はそれ以上の、シリコーン、炭化フッ素又
はセルロース系物質のようなレベリング、レオロジー及び流れ調節剤;艷消剤;
顔料湿潤及び分散剤;界面活性剤;紫外(UV)吸収剤;UV光安定剤;着色顔料;
脱泡及び消泡剤;沈降防止、垂れ防止及び増粘剤,皮張り防止剤,浮き色防止及
び浮動防止剤;殺菌及び殺カビ剤;腐食抑制剤;増粘剤又は凝集剤からなる上記
のような架橋性エナメル組成物が提供される。
このような添加剤の具体例は、National Paint & Coatings Association,150
0 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington,D.C.20005により刊行された「原
材料インデックス(Raw Materials Inde
x)」に記載されている。
艷消し剤の例には、W.R.Grace & CompanyのDavison Chemical Divisionから
商品名SYLOID(商標)で入手できる合成シリカ;Hercules Inc.から商品名HERC
OFLAT(商標)で入手できるポリプロピレン;J.M.Huber Corporationから商品
名ZEOLEX(商標)で入手できる合成ケイ酸塩が含まれる。
分散剤及び界面活性剤の例には、ビズ(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウ
ム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコ
ハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアミルスル
ホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、イソデシルス
ルホコハク酸ジナトリウム、スルホコハク酸のエトキシル化アルコール半エステ
ルジナトリウム、アルキルアミドポリエトキシスルホコハク酸ジナトリウム、N
−(1,2−ジカルボキシ−エチル)−N−オクタデシルスルホスクシンアミド
酸テトラナトリウム、N−オクタスルホスクシンアミド酸ジナトリウム、硫酸化
エトキシル化ノニルフェノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等
が含まれる。
粘度、懸濁及び流れ調節剤の例には、燐酸ポリアミノアミド、ポリアミンアミ
ドの高分子量カルボン酸塩及び不飽和脂肪酸のアルキルアミン塩が含まれ、全て
BYK-ヘミー米国から商品名ANTI TERRA(商標)で入手できる。別の例には、ポリ
シロキサンコポリマー、ポリアクリレート溶液、セルロースエステル、ヒドロキ
シエチルセルロース、疎水性に変性したヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルセルロース、ポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、カルボ
キシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウ
ム及びポリエチレンオキシドが含まれる。
幾つかの専売の消泡剤は、例えば、Buckman Laboratories Inc.の商品名BRUB
REAKで、BYK-Chemie U.S.A.の商品名BYK(商標)で、Henkel Corp./Coating C
hemicalsの商品名FOAMASTER(商標)及びNOPCO(商標)で、Ashland Chemical C
ompanyのDrew Industrial Divisionの商品名DREWPLUS(商標)で、Troy Chemica
l Corpolationの商品名TROYSOL(商標)及びTROYKYD(商標)で、並びにUnion C
arbide Corporationの商品名SAG(商標)で市販されている。
殺菌剤、殺カビ剤及び殺生物剤の例には、4,4−ジメチルオキサゾリジン、
3,4,4−トリメチルオキサゾリジン、変性メタ硼酸バリウム、N−ヒドロキ
シメチル−N−メチルジチオカルバミン酸カリウム、2−(チオシアノメチルチ
オ)ベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、アダマンタン、
N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、2,4,5,6−テトラクロロイ
ソフタロニトリル、オルトフェニルフェノール、2,4,5−トリクロロフェノ
ール、デヒドロ酢酸、ナフテン酸銅、オクトエ酸銅、有機砒素、酸化トリブチル
錫、ナフテン酸亜鉛及び8−キノリン酸銅が含まれる。
UV吸収剤及びUV光安定剤の例には、American Cyanamid Companyから商品名Cya
sorb UVで入手でき、そしてCiba Geigyから商品名Tinuvinで入手できる置換ベン
ゾフェノン、置換ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン及びヒンダード安息香
酸塩、並びにジエチル−3−アセチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホン酸
塩、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン及び一安息香酸レゾル
シノールが含まれる。
上記のような塗料又は被覆物添加剤は、エナメル組成物の比較的少量部分、好
ましくは約0.05重量%〜約5.00重量%を形成する。
本発明の別の面として、任意に1種又はそれ以上の上記の添加剤
を含み、更に1種又はそれ以上の顔料からなる硬化性エナメル組成物が提供され
る。
本発明により意図されるエナメル組成物で使用するために適した顔料は、表面
塗料の技術分野の当業者に公知の典型的な有機及び無機顔料であり、特に、Amer
ican Association of Textile Chemists and Coloristsと共同でSosiety of Dye
rs and Colouristsにより発行された、カラーインデックス、第3版第2改訂、1
982年に記載されているものである。例には下記のものが含まれるが、これらに
限定されない。CI Pigment White6(二酸化チタン);CI Pigment Red 101(べ
んがら);CI Pigment Yellow 42;CI Pigment Blue15、15:1、15:2、15:
3、15:4(銅フタロシアニン類);CI Pigment Red 49:1;及びCI Pigment
Red 57:1。
上記処方の際に、次いで硬化性エナメル組成物を所望の基体又は物品、例えば
、(下塗をした又は下塗りしない)スチール、アルミニウム又は亜鉛メッキをし
たシートに適用し、約130℃〜約175℃の温度に5〜60分間加熱し(即ち硬化させ
)、次いで冷却させる。かくして、本発明の別の面として、本発明の熱硬化性塗
料組成物で塗布し、そして硬化させた成形又は形成物品が提供される。
典型的な適用及び硬化方法の別の例は、米国特許第4,737,551号及び同第4,698
,391号(本明細書に参照して含める)に記載されている。
本発明の別の面として、上記のような硬化性エナメル組成物を適用し硬化させ
ることによって得られる塗膜が提供される。
下記の例は更に本発明の実施を示す。実験部 例1−ビニルモノマーの重合
水凝縮器を取り付けた500mL丸底フラスコ中で、下記の成分、即
ちメタクリル酸メチル(25g)、アクリル酸n−ブチル(25g)、スチレン(25
g)、4−アセトキシスチレン(26.1g)、tert−ドデカンチオール(0.2g)
及びn−ブタノール(90g)を攪拌しながら混合した。次いでこの混合物を約10
0℃に加熱し、攪拌を続けた。n−ブタノール(10g)に溶解した開始剤アゾビ
スイソブチロニトリル(AIBN)(2.0g)の溶液を調製した。この開始剤懸濁液
を反応混合物に0.5時間毎に3回に分けて続いて添加した。100℃で4時間還流さ
せた後、反応混合物の固体パーセントを測定することによって重合を完結させた
。得られた樹脂溶液は冷却すると白色に変わった。例2−例1の樹脂のアセトキシフェニル基のエステル交換反応
上記樹脂溶液の一部(100g)に、FASCAT 4100触媒(0.1g)(Atochem North
America,Inc.)を添加し、混合物を110℃で15時間還流させて、エステル交換
反応を完結させた。この混合物にキシレン(20g)を添加し、温度を135℃に上
昇させて、触媒約50mLを留去させた。得られた樹脂1を捕集し、これは固体66%
を有すると測定された。例3−樹脂2の合成
水凝縮器を取り付けた500mL丸底フラスコ中で、下記の成分、即ちメタクリル
酸メチル(25g)、アクリル酸n−ブチル(25g)、スチレン(25g)、4−ア
セトキシスチレン(13g)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(9g)、tert
−ドデカンチオール(0.2g)及びn−ブタノール(85g)を攪拌しながら混合
した。次いでこの混合物を約100℃に加熱し、攪拌を続けた。n−ブタノール(1
5g)に溶解した開始剤アゾビスイゾブチロニトリル(AIBN)(3.0g)の溶液を
調製した。この開始剤懸濁液を反応混合物に0.5時間毎に3回に分けて続いて添
加した。100℃で3時間還流させた後
、反応混合物の固体パーセントを測定することによって重合を完結させた。
上記樹脂溶液に、FASCAT 4100(0.2g)を添加し、混合物を110℃で15時間還
流させて、エステル交換反応を完結させた。この混合物にキシレン(40g)を添
加し、温度を135℃に上昇させて、溶媒約123mLを留去させた。得られた樹脂2を
捕集し、これは固体約70%を有すると測定された。例4−樹脂3の合成
水凝縮器を取り付けた500mL丸底フラスコ中で、下記の成分、即ちメタクリル
酸メチル(53g)、アクリル酸n−ブチル(17g)、4−アセトキシスチレン(
26g)、tert−ドデカンチオール(0.2g)及びn−ブタノール(85g)を攪拌
しながら混合した。次いでこの混合物を約100℃に加熱し、攪拌を続けた。n−
ブタノール(15g)に溶解した開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(3.
0g)の溶液を調製した。この開始剤懸濁液を反応混合物に0.5時間毎に3回に分
けて続いて添加した。100℃で4時間還流させた後、反応混合物の固体パーセン
トを測定することによって重合を完結させた。
上記樹脂溶液に、FASCAT 4100触媒(0.2g)を添加し、混合物を110℃で15時
間還流させて、エステル交換反応を完結させた。この混合物にメチルn−アミル
ケトン(MAK)(43g)を添加し、温度を135℃に上昇させて、溶媒約123mLを留
去させた。得られた樹脂3を捕集し、これは固体約70%を有すると測定された。例5−対照樹脂1の合成
水凝縮器を取り付けた500mL丸底フラスコ中で、下記の成分、即ちメタクリル
酸メチル(25g)、アクリル酸n−ブチル(25g)、スチレン(29.2g)、メタ
クリル酸2−ヒドロキシエチル(18.6g
)、tert−ドデカンチオール(0.2g)及びメチルn−アミルケトン(MAK)(96
g)を攪拌しながら混合した。次いでこの混合物を約100℃に加熱し、攪拌を続
けた。MAK(10g)に溶解した開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(2.0
g)の溶液を調製した。この開始剤懸濁液を反応混合物に0.5時間毎に3回に分
けて続いて添加した。140℃で3時間還流させた後、反応混合物の固体パーセン
トを測定することによって重合を完結させた。次いで溶媒約71mLを155℃で留去
して固体約70%を有する樹脂を得た。例6−対照樹脂2の合成
水凝縮器を取り付けた500mL丸底フラスコ中で、下記の成分、即ちメタクリル
酸メチル(15g)、アクリル酸n−ブチル(15g)、スチレン(48g)、メタク
リル酸2−ヒドロキシエチル(19g)、tert−ドデカンチオール(0.2g)及び
メチルn−アミルケトン(MAK)(85g)を攪拌しながら混合した。次いでこの
混合物を約100℃に加熱し、攪拌を続けた。MAK(15g)に溶解した開始剤アゾビ
スイソブチロニトリル(AIBN)(3.0g)の溶液を調製した。この開始剤懸濁液
を反応混合物に0.5時間毎に3回に分けて続いて添加した。110℃で3時間還流さ
せた後、反応混合物の固体パーセントを測定することによって重合を完結させた
。次いで溶媒約72mLを160℃で留去して固体約70%を有する樹脂を得た。例7−エナメルの製造
下記の成分、即ち、CYMEL 303(American Cyanamid Co.)2.5g、NACURE 5076
(King Indusries)0.36g、FLUORAD FC-430(3MCo.)(イソプロパノール中2
0%)0.2g及び溶媒ブレンド(メチルn−アミルケトン/キシレン/EKTAPRO EE
P(エチル−3−エトキシプロピオネート)(イーストマン・ケミカル社)=70
/15/15重量)10gを、種々の樹脂(固体70%)14.3gに添加することによ
ってエナメルを製造した。次いで、この混合物を十分に攪拌して透明な溶液を得
た。例8−塗膜の製造
種々のエナメルを冷間圧延スチール試験パネル(Advanced Coating Technolog
iesからのACT3×9×032)に適用し、130℃で30分間オーブン中でベーキングす
ることによって、塗膜を製造した。塗膜フィルムの厚さは約1.0〜1.5ミルであっ
た。種々の樹脂及び塗膜の性質を表I及びIIに示す。分子量はゲル浸透クロマト
グラフィーによって測定した。塗膜の耐酸腐食性は、塗覆したパネルのフィルム
表面に10%硫酸の数滴(例えば6滴)を落とし、オーブン中で50℃、60℃又は70
℃で0.5時間ベーキングすることによって試験した。他の塗膜試験は下記の標準
法に従って行った。
1.フィルム厚さ(フィッシャー・デルタスコープ(Fisher Deltascope MP 2
)
2.耐溶媒性(MEKダブルラブ、ASTMD 1308)
3.光沢(BYK-ミクロ光沢、ASTM D523)
4.硬度(ASTM D3362)
5.耐衝撃性(BYK-ガードナー衝撃試験器、ASTM D2794)
例9−水性樹脂の合成
水凝縮器を取り付けた500mL丸底フラスコ中で、下記の成分、即ちメタクリル
酸メチル(25g)、アクリル酸n−ブチル(25g)、スチレン(20g)、4−ア
セトキシスチレン(25g)、アクリル酸(2.57g)、tert−ドデカンチオール(
0.4g)及びn−ブタノール(85g)を攪拌しながら混合した。次いでこの混合
物を約100℃に加熱し、攪拌を続けた。n−ブタノール(15g)に溶解した開始
剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(4.0g)の溶液を調製した。この開始
剤懸濁液を反応混合物に0.5時間毎に3回に分けて続いて添加した。100℃で4時
間還流させた後、反応混合物の固体パーセントを測定することによって重合を完
結させた。
上記樹脂溶液に、FASCAT 4100触媒(0.2g)を添加し、混合物を110℃で15時
間還流させて、エステル交換反応を完結させた。この混合物にエチレングリコー
ルモノブチルエーテル(EB)(43g)を添加し、温度を135℃に上昇させて、溶
媒約123mLを留去させた。得られた樹脂を補修し、これは固体67%を有すると測
定された。例10−水性エナメルの製造
上記の樹脂(EB中固体67%)14.9gに、N,N−ジメチルエタノールアミン(
DMEA)(0.66g)及び蒸留水(33g)を添加した。この混合物を攪拌して水性分
散液を得た。この分散液に、Cymel 303(2.5g)及びFLUORAD FC-430(イソプロ
パノール中20%、0.2g)を添加して、水性エナメルを得た。このエナメルを試
験パネルに適用し、175℃で30分間硬化させた。塗膜は下記の性質を示した。光
沢(60°/20°)、99/86;鉛筆硬度、4H;耐衝撃性(直接/逆)、40/<20
;耐酸腐食性、50℃−影響無し、60℃−ふくれ。