【発明の詳細な説明】
cDNA合成のための方法及び組成物 技術の分野
本発明は、DNA合成、特にインビボでの相補的DNAの合成のための方法及び組成
物に係わる。発明の背景
本発明は、分子生物学のための道具である。分子生物学の術語、DNA、RNA及び
タンパクの構造、及びこれらの分子の相互関係についての概説は、Darnell et a
l.のSynthesis of Proteins andNucleic Acids第4章、Molecular Cell Biology
,Scientific American Books(1989)に見られる。これらの問題については、D
arnell et al.,(1989)の本文全体及びLewin,Genes IV,Oxford University
Press(1990)により詳細に取り扱われている。
遺伝情報は生物の遺伝子にコードされている。遺伝子は核酸、通常はデオキシ
リボ核酸(DNA)のポリマーからなる。DNAは4種のヌクレオチド塩基の連続から
なり、遺伝子により運ばれる遺伝情報はDNA分子中のヌクレオチド塩基の特異的
配列によりコードされている。構造遺伝子中の遺伝情報はタンパクをコードし、
特定のタンパクの配列及び構造(従って機能)は、そのタンパクをコードする遺
伝子内のヌクレオチド塩基の順番により決定される。タンパクは、細胞構造から
環境に対する生物の反応まで、生物のアイデンティティーを決定する。即ち、こ
れらのタンパクをコー
ドする遺伝子が生物のアイデンティティーを決定するのである。
構造遺伝子内にコードされる情報は、転写及び翻訳の工程を経て「発現」され
る。転写によりメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる遺伝子コードの中間キャ
リアーが生産される。メッセンジャーRNAは遺伝子の効率的なコピーであり、デ
オキシリボ核酸ではなくリボ核酸(即ちRNA)のポリマーである。
真核生物(これは一般に細菌よりも複雑な生物である)においては、遺伝子は
コード領域(「エキソン」と呼ばれる)と非コード領域(「イントロン」と呼ば
れる)からなる。エキソンは遺伝子のタンパク配列を直接コードする。イントロ
ンは非常に大きいものもあり、特定の遺伝子中には多くのイントロン配列が存在
し得る。非コードイントロンの役割は明確ではない。しかし、これらの介在配列
は2つの重要な役割を果たす証拠がある。即ち、第1にこれらはエキソンのコー
ド領域をより小さなタンパクコード単位に分け、転写及び翻訳の間のエラーを減
らし、そして第2にそれらはタンパク配列の別々の部分あるいはカセットを進化
の間により容易に組み換えられるエキソン単位に制御し、そして新たなタンパク
の発生を容易にし、これは究極的には種の生き残りを促進するものである。
転写の工程は遺伝子全体のmRNAコピーの形成を含む。即ち、転写工程により生
産されたmRNAは、非コードイントロン配列とタンパクコードエキソン配列の両方
を含んでいる。従って、転写により最初に生成されるmRNAはそれがコピーされた
遺伝子と同じ長さを有する。次にこの未成熟なmRNAはプロセシング段階を経て、
この間に非コードイントロン領域はスプライシングにより除かれる。
従って得られるプロセシングを受けたmRNA分子はタンパクをコードするのに必要
な情報のみを含む(即ち、結合されたエキソン配列のみのコピーを含む)。従っ
てこれらのプロセシングを受けたmRNA分子はそのmRNAが最初にコピーされた「ゲ
ノム配列」(クロモソーム中に存在するままの遺伝子エキソン及びイントロン)
よりも長さがかなり短い。プロセシングを受けたmRNAはこの段階においてポリリ
ボアデニル酸、ポリ(A)のテイルを分子の一方の末端(3’末端)に含み、分
子の他端(5’末端)に「キャップ」構造を含むように改変もされる(標準的な
命名法によれば、分子の末端化学基によりDNA及びRNA分子の一方の末端を5’末
端とし、他端を3’末端としている)。イントロンを除去するようにプロセシン
グを受け、5’キャップと3’ポリ(A)テールを有するmRNA分子は、「成熟」
mRNA分子と呼ばれる。非コードイントロン配列の除去を説明する、転写工程の極
めて簡略化された図を図1に示す。
成熟メッセンジャーRNAにより運ばれる情報をタンパクに変換する段階は翻訳
と呼ばれる。翻訳は、構造遺伝子中にあるヌクレオチド配列によりコードされた
情報をアミノ酸の配列からなる特定のタンパクに変換する手段の最後の段階であ
る。
遺伝子のクローニングは1970年代に可能になった。初期の実験においては、細
菌から小さい遺伝子がクローン化された。それ以来、分子生物学及び遺伝子工学
の進歩はとてつもない速度で進行し、ヒトゲノム全体の配列が現在決定されつつ
あるまでになった。しかしこの分野の技術の急速な進歩にもかかわらず、いくつ
かの限界が依然として存在する。その1つは非常に大きな構造遺伝子のクローニ
ングが困難なことである。
遺伝子のサイズは、それが含むヌクレオチド塩基の数により測定され、通常は
塩基の千単位(キロ塩基、kb)で表される。より大きな遺伝子のいくつかの例は
あるものの、殆どの構造遺伝子(エキソン)の全コード配列は典型的には全体で
1〜10kbである。しかし、エキソンセグメントの間の多数の大きなイントロン配
列の存在により、ゲノムレベルではこれらの遺伝子はずっと大きな領域にわたっ
て拡がり、数十あるいは数百キロ塩基にわたることも多い。例えばYAC(Yeast A
rtificial Chromosome)のような現在の遺伝子クローニングベクターにより非常
に大きな(100〜300kb)ゲノムセグメントのクローニングが可能であるが、この
ようなゲノムインサートは非コードイントロン配列を含み、これは人工的な系に
おけるタンパクの発現を妨げる。部分的遺伝子配列、あるいはイントロンを含む
配列は、非機能的な切断されたタンパクの発現を生じ、あるいは5’翻訳開始部
位の配列がない場合は、関係のない誤ったタンパク配列の発現を生じる。スクリ
ーニングの工程の間に部分的遺伝子が特定された場合でも、遺伝子の残りの部分
を回復する必要がある。これは極めて複雑な工程である。遺伝子が多くのイント
ロン配列を含む場合、それ故に遺伝子が大きく、遺伝子の残りの部分を回復しよ
うとすると何年もの努力を必要とするかもしれない。その後に遺伝子フラグメン
トの相対的な順番を決定し、イントロン配列からエキソン配列を区別するために
さらに労力を要する。遺伝子を一つの範囲内の(contiguous)タンパクをコード
するカセットとしてクローン化する能力は、遺伝子の同定が、クローン化された
遺伝子を同定する通常の方法である、組換え体細菌またはウィスル系におけるタ
ンパクの産生と所望の
タンパクの機能または構造についての「スクリーニング」による検出方法により
なされる場合には特に重要である。
構造遺伝子をクローン化するために、分子生物学者は上記の細胞mRNAのプロセ
シング機能を利用した。それによりイントロン配列はスプライシングにより未成
熟mRNAから除去され、当初の遺伝子よりもかなり小さい成熟mRNAが生成される。
成熟mRNA分子を変換してDNA分子に戻す(従って「逆転写」と呼ばれる)ことに
より、本質的部分ではないイントロン配列を含まない当初のコード配列(エキソ
ン)を得ることができる。そのようなDNA分子はそれが由来するmRNA分子に相補
的なものであるので、相補的DNAと呼ばれる。相補的DNA(cDNA)合成は遺伝子ク
ローニングのための好ましい方法であり、これは組換えタンパク生産に順応でき
る比較的小さな一つの範囲内のタンパクコードカセット中に所望の遺伝子を回収
できるからである。
cDNA技術の別の重要な使用は、特定の時期に細胞により発現される遺伝子を同
定することである。遺伝子発現は細胞の部分においてかなりのエネルギー消費を
必要とし、mRNA分子は短命な「タンパクを要請する者(protein requests)」と
して設計されている。従って僅かな例外(特に発生中の卵における)を除いてす
ぐに必要なタンパクをコードする遺伝子のみがmRNAに転写される。研究者は、細
胞中に存在するmRNAの集団のcDNAコピーを作成し生成されたcDNAをクローニング
することにより、その時に発現された遺伝子からcDNAライブラリーを作成するこ
とができる。従って研究者は、発生の所与の段階において、あるいは与えた剌激
に応答して、どの遺伝子が所与の組織タイプにおいて発現されたかを具体
的に特定することができる。
相補的DNAクローンは、研究及び産業の両方において非常に重要である。研究
においては、タンパクの機能及び構造を決定するためにクローン化された遺伝子
の発現を必要とする。さらに、大量のタンパクがポリクローナルまたはモノクロ
ーナル抗体の生産に必要であり、これらはその後の研究プロトコールを通じて少
量のタンパクに対して不可欠であり、そして細胞中のタンパクの位置を決定する
のに不可欠である。細菌はクローン化された遺伝子を発現する宿主として一般的
に使用される。細菌のような原核生物の遺伝子はイントロンを含んでいないので
、これらの細胞は未成熟mRNAを機能的タンパクに翻訳されることのできる成熟mR
NAにプロセシングするのに必要なスプライシング機構を有していない。真核生物
遺伝子(即ちイントロン及びエキソンを含む)のゲノムクローンは細菌宿主中で
は発現され得ないが、同じ遺伝子のcDNAコピーは原核生物あるいは真核生物のい
ずれかにおいて発現され得る。従ってcDNAクローンは大きなスケールのタンパク
生産に日常的に使用されている。この人工的なタンパク発現は、「組換え体タン
パク」生産と呼ばれ、長年他の動物の組織からの単調で退屈な抽出により少量を
手に入れることしかできなかった多くの医薬の製造の益々日常的な方法となりつ
つある。
現在使用されているcDNA合成の方法はBerger and Kimmel,Guide to Molecula
r Cloning Techniques.in Method in Enzymology Volume 152,Academic Press
Inc.(1987); Sambrook et al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor
Laboratory Press(1989)及びOkayama,H.,et al.,Meth.Enzymol.159:3-27
(198
7)に概観されている。mRNA単離法の概観はSambrook et al.(1989)の7章及
び8章にある。
mRNAの単離は、多くの技術的に困難な段階を含む単調で退屈な工程である。要
約すると、細胞からのmRNA単離のための典型的な手順は、(1)細胞を破壊して
細胞内容物を放出させること、(2)細胞からの全RNAを単離すること、(3)
抽出されたRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムを通してmRNA集団を選択するこ
と、及び(4)単離されたmRNAをサイズにより分画化することを必要とする。す
べての段階において、調製物がRNAを破壊し得る活性なリボヌクレアーゼ酵素に
接触しないようにする細心の注意が必要である。cDNAクローニング方法の目的は
、遺伝子の全コード配列を含む「完全長」cDNAクローンを得ることであるので、
mRNAの一体性を保持する方法を使用することが非常に重要である。リボヌクレア
ーゼ(RN アーゼ)酵素は非常に安定であるので、この活性酵素の非常に少量がm
RNA調製物中に存在するだけで問題となる。RNアーゼは、ヒト皮膚を含む殆どあ
らゆる表面に存在し、従って非常に容易にRNA調製物に侵入し得る。汚染の問題
をさけるため、全ての溶液、ガラス製品及びプラスチック製品を特別に処理して
おかなければならない。そこからmRNAが分離される細胞は、非常に過酷で、どこ
にでもあるリボヌクレアーゼ酵素を直ちに不活性化する成分を含む溶液中で破壊
され、その後RNA調製において使用される全ての溶液は、RNアーゼを不活性化す
る発癌物質と考えられているジエチルピロカーボネート(DEPC)により処理され
る。研究室においては、「リボヌクレアーゼフリー」と指定されるような特定の
設備及び作業空間を別に確保しておくことも多いであろう。
RNA分解の可能性は細胞を破り開ける最初の段階に始まり(細胞自体がリボヌク
レアーゼを含み、細胞の溶解に際してRNAと接触する)、方法を通じて継続する
。
細胞から抽出された全RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA
(tRNA)及びリボソームRNA(rRNA)からなる。mRNAは典型的には全細胞RNAのわ
ずか1〜3%を構成するのみである(真核細胞あたり約1x10-12g mRNA,Sarge
nt,T.D.,Methods Enzymol.152:423-432(1987))。殆どのcDNA合成反応は、
成熟mRNA転写物のみに存在するポリ(A)テイルの存在に依存している。成熟RN
A転写物は細胞RNAの全部の中から、通常はアフィニティクロマトグラフィーによ
り選択的に抽出される。これはインビトロでうまくcDNAを合成するのに必須の段
階であり、成熟mRNAの濃縮ができないことは、cDNAの低い収率や貧弱な品質を招
く。
cDNA合成の前の最後の段階として、mRNA調製物をサイズにより選択する。これ
は通常、より小さいサイスの分子(通常はより大きいmRNAの分解された形態であ
る)を除くことによって行われ、これらは除かれないとcDNAクローニング工程を
妨害する。サイズによる選択は、既知のサイズのmRNA種を濃縮するためにも行わ
れる。サイズ選択はアガロースゲルを通す電気泳動、カラムクロマトグラフィー
、あるいはシュクロース勾配を通す沈殿分離により行うことができる。これらの
方法は低収率を招き、二次分子内構造を破壊するために水酸化メチル水銀の存在
を必要とし得る。水酸化メチル水銀は非常に毒性が強く、揮発性であり、取り扱
いに細心の注意を要する。より安全な代替物(例えばグリオキサール/ジメチル
スルホキシドまたはホルムアルデヒドを含むゲルの使
用)が使用できるが、これらの方法はやはり危険な化学物質を必要とするもので
あり不利な点を有する。
cDNA合成に先立って細胞からmRNAを抽出する必要があることから別の欠点が発
生する。例えば、特定の条件または生物の発生における特定の段階において細胞
中でどの遺伝子が発現されるかを調べるのにcDNAクローニングがよく使用される
。mRNAを抽出するために必要な時間及び条件はそれ自体が細胞の遺伝子発現パタ
ーンの変化を起こしかねない。さらに、非常に少量しか存在しない(細胞あたり
20コピーと考えられる)又は不安定なmRNA分子は、RNA単離工程の間に失われて
しまい得る。現在のところ、mRNA単離工程に内在する損失のために、cDNAライブ
ラリーを作成するのに必要な細胞数の下限がある。本発明は、最初のmRNA単離の
必要を完全に避けることによりこの問題を解決しようとするものである。
mRNAの抽出と精製の後、cDNAの合成はインビトロで行われる。cDNA合成に現在
使用されている方法は全て、mRNAの抽出と精製の後に行うものであるか、インビ
トロの条件下に死細胞について行われるものである。これらの方法については、
Kimmel and Berger(1987); Okayama,H.,et al.,(1987)及びEmbleton,M
.J.,et al.,Nucleic Acid Res.,20:3831-3837(1992)に詳細に記載されてい
る。
現在使用可能な方法は全てRNA依存性DNAポリメラーゼ酵素(より一般的には逆
転写酵素と呼ばれる)を使用してmRNA鋳型からcDNAの第1の鎖を合成する。逆転
写酵素は、他のDNAポリメラーゼと同様に、新たに核酸合成を開始できない。そ
うではなく、
mRNA鋳型にアニールした前もって存在するRNAまたはDNA鎖の3’末端のヒドロキ
シル基に、生成するcDNA鎖の第1のヌクレオチドを付加するのである。前記酵素
が第1のヌクレオチドを付加する、この前もって存在する鎖はプライマーと呼ば
れ、逆転写酵素活性に不可欠であるようである。その自然界における役割におい
ては、逆転写酵素は感染レトロウィルス内で細胞に入る。この酵素は、ウィルス
が先の感染の間に宿主細胞から除去した、特定の細胞トランスファーRNA(tRNA
)分子(全ての宿主細胞中に存在する)及びウィルスRNAクロモソームの両方と
既に結合している。トランスファーRNAは短い(70〜80ヌクレオチド長)RNA分子
であり、複雑な三次構造に折り畳まれている。これらの通常の細胞での役割は翻
訳過程にある(Darnell et al.(1989),4章)。ウィルスが新たに感染した
細胞に入った後、逆転写酵素−tRNA複合体は、この複合体が既に結合したウィル
スRNA分子をRNA鋳型として使用したインビボ(細胞内)逆転写酵素反応のための
プライマーとして機能する。このインビボ反応から形成されたcDNAは次に、同じ
逆転写酵素複合体により二本鎖DNAに変換され、感染細胞のクロモソームに組み
込まれる。逆転写酵素に親和性を有するtRNA種(細胞中に存在する約40種のうち
の2種)が特異的RNA分子上に存在する配列に相補的であり、従ってこれのみか
ら発現するので、ウィルス複製に必要な逆転写酵素−tRNAプライマー複合体は細
胞mRNA鋳型からのcDNA合成のためのプライマーとしては機能しないということは
重要である。しかし、レトロウィルスに強い相同性を有する領域を持つマウス細
胞中に存在するウィルス様の30S(VL30)エレメントが存在することは興味深い
。これらのエレメント
は欠陥C型ウィルスの性質を有し、逆転写され、レトロウィルスビリオン中にパ
ッケージされる(Howk,R.S.,et al.,J.Virol.25:115-123(1978); Besme
r,P.U.,et al.J.Virol.29:1168-1176(1979))。
逆転写酵素をインビトロ(細胞環境の外)cDNA合成に使用する場合、酵素のプ
ライマー分子に対する必要性は通常、反応混合物中にオリゴデオキシヌクレオチ
ドプライマーを含有させることにより満足させられる。最も一般的なプライマー
はデオキシリボチミジル酸のオリゴマー、オリゴ(dT)である。このプライマー
は3’に位置し、mRNA分子のポリ(A)テイルに相補的なものである(“A”ヌク
レオチドは“T”または“U”ヌクレオチドに相補的であり、アニールする)。従
って、このオリゴ(dT)プライマー分子はポリ(A)テイル領域にアニールし、
逆転写酵素のプライマーとして機能する。あるいは、インビトロcDNA合成ではRN
A分子中の別の配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用し得るが、
アニーリングが起こるために必要な相補的ヌクレオチドの広い範囲のために、そ
のようなプライマーは、それがアニールするように設計されたmRNA分子について
「配列特異的」なものとなる。そのような配列特異的プライマーの合成にはmRNA
の部分のヌクレオチド配列を予め知っておく必要がある。逆転写酵素のプライマ
ーの要件に関しては、Sambrook,et al.(1989)の5章に記載されている。
最初のインビトロ逆転写酵素反応の生成物は、mRNA分子の単鎖相補的DNAコピ
ーである。この反応は、「第1鎖cDNA合成」と指称されることが多い。その後、
前記cDNAの第2の鎖を生成するた
めに種々の方法が使用される。得られた二本鎖DNA(dsDNA)分子は次に末端を改
変され、そして「ベクター」に挿入され、これにより各コピーの増殖、選択及び
増幅が可能となる。最も一般的に使用される方法(例えば、Okayama and Berg,
Molecular and Cell ular Biology 2:161-170(1982))は、以下のように要約
することができる。mRNAの抽出と精製、及びmRNAのインビトロでの逆転写により
単鎖cDNA分子を生産した後、mRNA鋳型を除去してDNAの第2の鎖を合成できるよ
うにし、これにより二本鎖cDNA分子を形成する。次に特異的なDNAリンカーを二
本鎖cDNAの平滑化した末端に結合し、そのcDNAを適当なクローニングベクターに
結合する。
現在使用されている方法は全て、mRNAのcDNAコピーを製造する逆転写酵素触媒
段階を常にインビトロ条件下で行うものである。cDNA合成の品質(即ち、正確か
つ完全長の相補的DNAを生成する能力)は、選択した酵素の忠実度と進行能力
(processivity)、及び反応を行った条件に依存する。完全長cDNAよりも明らか
に短いcDNAは許容できないし、高いエラー率は生成されるcDNAの有用性を減じて
しまう。酵素が機能するように進化したインビボ条件ではなく、インビトロで逆
転写酵素を使用すると、酵素の忠実度及び進行能力に悪影響を与えるようである
。MuLV逆転写酵素のインビトロにおける忠実度は10-4(即ち、10,000塩基につい
て1つの誤ったヌクレオチド、あるいは100kbについて10の誤り)と見積もられ
、最近の研究によればインビボにおける忠実度は約2x10-5(50,000塩基コピー
について1つの誤り、100kbあたり2つの誤り;Mont et al.,J.Virol.66:368
3-3689(1992))と測定され
ている。さらに、人工的な環境下では完全長の第1鎖の合成を得ることは困難で
あるが、インビボcDNA合成反応における酵素の進行能力は優れており、10kbの範
囲を十分に越えて延びるcDNA導入が可能である(記載のデータを参照)。インビ
トロにおける逆転写酵素の性能を最適化するために条件が開発されてきたが、こ
れらの条件はエラーの一定の頻度と、第1鎖cDNA合成の未成熟な終結とを招く。
インビトロ条件は酵素についての最適な条件を反映するものではないことは明ら
かである。
従って、現在のcDNA合成方法は、(1)mRNAが細胞から抽出及び精製されなけ
ればならないという必要、及び(2)インビトロ条件下における逆転写酵素の性
能に制限されるものである。これらのファクターは組合わさって、cDNA合成の容
易さ、cDNA合成の効率、生成できるcDNA分子のサイズ(これにより遺伝子はこの
方法により容易にクローン化できるものである)、特定の条件下においてどの遺
伝子が発現されるのかの決定におけるcDNA合成の正確さ、及び生成されたcDNAの
忠実度を制限する。
本発明の目的は、細胞からのmRNA分子の単離を必要としないcDNAの合成方法を
提供することである。
本発明の別の目的は、逆転写酵素のインビトロにおける活性を必要としないcD
NAの合成方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、方法の効率、生成されるcDNAの忠実度、及びその
方法により製造できるcDNAのサイズが、現在使用されているあらゆる方法よりも
優れた、cDNAの合成方法を提供することである。発明の開示
本発明は、インビボにおけるRNA鋳型の相補的DNAコピーの合成のための方法及
び組成物に係わる。
本発明によれば、RNA鋳型分子の相補的DNAコピーの合成のための方法が提供さ
れる。該方法は、RNA鋳型分子にインビボでアニールできるポリヌクレオチド分
子を用意し、該ポリヌクレオチド分子をプライマーとして使用してDNA合成を開
始できる少なくとも1の逆転写酵素を用意し、該逆転写酵素の存在下に前記ポリ
ヌクレオチド分子を生存可能な標的細胞中に導入し、RNA鋳型分子に相補的なDNA
分子の合成を可能とする条件下に標的細胞をインキュベートすることを含む。
本発明の別の形態は、少なくともその部分的な配列が既知のRNA鋳型分子の相
補的DNAコピーをインビボで生成するための方法を提供する。この方法は、イン
ビボでRNA鋳型分子にアニールでき、さらに少なくとも1の逆転写酵素のための
プライマーとして機能できるポリヌクレオチド分子をコードする配列に機能する
ことができるように結合されたプロモーターをコードする配列を含むDNA分子を
用意し、前記プロモーター配列の5’末端に位置する配列に相同なプライマーで
ある第1のヌクレオチドプライマーを用意し、既知のRNA鋳型分子配列の部分に
相補的な5’配列に結合したポリヌクレオチド分子の3’領域に相補的な3’配列
を含むプライマーである第2のヌクレオチドプライマーを用意することを含む。
その後、DNA分子を第1及び第2のプライマーと接触させ、そして混合物をクロ
ーン化DNA分子の増幅に適当な条件でクローン化DNA分子の増幅に適当な試薬によ
り処理する。それにより生
成された少なくとも1の増幅されたDNA分子を次に、コードされたRNA分子の生成
に適当な条件でコードされたRNA分子の生成に適当な試薬により処理し、これを
前記RNA分子をプライマーとして使用してDNA合成を開始できる少なくとも1の逆
転写酵素の存在下に生存可能な標的細胞中に導入する。次に標的細胞を、少なく
とも1のRNA鋳型分子に相補的なDNA分子が生成されるような条件下にインキュベ
ートする。
さらに本発明により、本発明の方法を実施するのに有用な組成物も提供される
。そのような組成物は、インビボでRNA鋳型分子にアニールでき、さらに少なく
とも1の逆転写酵素のためのプライマー分子として機能することができるポリヌ
クレオチド分子を、そのようなポリヌクレオチド分子をコードするDNA分子及び
組換え体DNAベクターとともに含み、そのような組成物を含むキットが提供され
る。図面の簡単な説明
図1は、真核生物のRNA転写工程の簡略化された図を示すものであり、mRNAの
プロセシングの間の非コードイントロン配列の除去を説明するものである。
図2は、本発明における遺伝子カセットのクローニングを示すものであり、こ
こで、
図2Aは、tRNApro遺伝子カセットのクローニングに使用する特定の方法の概
略図を示し、
図2Bは、Moloneyマウス白血病ウィルスに使用される「野性型」マウスtRNAp ro 1,2
に対応するtRNA分子の構造及び配列を示
し、実線はビリオンRNA鋳型にアニールし、レトロウィルス逆転写酵素反応を開
始する3'ヌクレオチド配列を示す。
図3は、cDNA合成に必要な、逆転写酵素、tRNAプライマー、及びRNA鋳型の相
互作用における関係を示し、ここで、
図3Aは、Moloneyマウス白血病ウィルスに使用される同族の(cognate)tRNApro wt
の3'領域と、該tRNAが結合する、レトロウィルスRNAセグメント(真っ直ぐ
な実線)上の相補的プライマー結合部位の両方についてのレトロウィルスcDNA合
成配列、及びレトロウィルス複製の最初の段階(破線はcDNA合成を示す)を
示し、
図3Bは、ポリアデニル化メッセンジャーRNAからのインビボにおけるcDNAの
合成を示し、ここではインビトロで改変され合成されたtRNApro polyUの3'領域と
、該tRNAが結合するmRNAポリアデニル化3'セグメントの両方について配列が示さ
れ、さらにインビボにおけるcDNA合成の最初の段階(破線)が示されている。
図4は、tRNA−コードプロモーター−tRNAカセットの増幅−突然変異に使用さ
れる段階を示すものであり、ここでは第1及び第2のプライマーが破線で示され
、5'から3'への方向を示す矢印が付されており、第2のプライマーは曲がった破
線で示され、5'塩基が最初の鋳型DNA分子中の非相補的塩基にアニールできない
ことを示しており、下側の概略図は、3'の殆どの塩基が第2のプライマーにコー
ドされた規定配列に変化させられた、増幅及び改変された転写カセットを示し、
カセットの3'末端はこの第2のプライマー配列の末端で切断されている。
図5は、昆虫Sf9細胞からのインビボにおけるcDNA生成物のエチジウムブロミ
ド染色1%アガロース/TAEゲルを写真により再現し
たものであり、ここでレーン1及び10は1kbラダー(BRL)を示し、レーン2及
び6は対照([α-32P]dCTPのみ)を示し、レーン3及び7は対照([α-32P
]dCTP+逆転写酵素)を示し、レーン4及び8は対照([α-32P]dCTP+逆転写
酵素+tRNAwt)を示し、レーン5、9、11及び12は改変tRNAプライマーによる実
験([α-32P]dCTP+逆転写酵素+tRNApolyU)を示す。この実験においては、
レーン11及び12の試料はRNアーゼAにより処理せず、レーン2〜5、及び11の試
料は0.4cmキュベット中でのエレクトロポレーションであり、レーン6〜9、
及び12における試料は0.2cmキュベット中でのエレクトロポレーションである。
図6は、図5に示したゲル像のオートラジオグラフの写真による再現である。
図7は、ハムスター(CHO)細胞からのインビボにおけるcDNA生成物のエチジ
ウムブロミド染色1%アガロース/TAEゲルを写真により再現したものであり、ここ
でレーン1及び10は1kbラダー(BRL)を示し、レーン2及び6は対照([α-32
P]dCTPのみ)を示し、レーン3及び7は対照([α-32P]dCTP+逆転写酵素)
を示し、レーン4及び8は対照([α-32P]dCTP+逆転写酵素+tRNAwt)を示し
、レーン5及び9は改変tRNAプライマーによる実験([α-32P]dCTP+逆転写酵
素+tRNApolyU)を示す。
図8は、図6に示したゲル像のオートラジオグラフの写真による再現である。
図9は、ハムスター(CHO)細胞からのインビボにおけるcDNA生成物のエチジ
ウムブロミド染色1%アガロース/TAEゲルを写真により再現したものであり、ここ
でレーン1及び8は1kbラダー(BR
L)を示し、レーン2及び3は対照([α-32P]dCTP+逆転写酵素+tRNAwt)を
示し、レーン4及び5は改変tRNAプライマーによる実験([α-32P]dCTP+逆転
写酵素+tRNApolyU)を示し、レーン6及び7は対照([α-32P]dCTP+逆転写
酵素+オリゴ(dT)(5μg))を示す。この実験においては、レーン3、5及
び7の試料はS1ヌクレアーゼにより処理した。
図10は、図9に示したゲル像のオートラジオグラフの写真による再現である。発明の詳細な説明
本発明は、相補的DNA(cDNA)の合成のための方法及び組成物に係わる。本発
明は、インビボにおけるcDNA合成を可能とする方法を初めて提供するものである
。この方法においては、逆転写酵素の存在下に適当なプライマー分子を生存可能
な標的細胞に導入し、RNA鋳型分子に相補的なDNA分子が生成されるような条件下
で標的細胞をインキュベートする。本発明のある態様においては、RNA鋳型分子
はメッセンジャーRNA(mRNA)であり、多くの態様においてはポリヌクレオチド
分子は改変された逆転写酵素同族プライマートランスファーRNA分子である。
特に断らない限り、本発明が関連する技術分野の当業者の一般的な理解に従っ
た技術用語及び科学的用語を使用する。本明細書で使用するように、以下の用語
は、その用語が使用される文脈から明らかに異なった定義が示されているのでな
い限り、本来のその意味を有する。
鋳型の用語は、そこから相補的配列が生成されるヌクレオチド
配列を示す。
アナローグの用語は、天然に存在するヌクレオチドの任意の配列特異的類似物
(representative)を示すのに使用される。
逆転写酵素の用語は、デオキシヌクレオチドトリホスフェートまたはそのアナ
ローグのRNA鋳型にアニールしたプライマーへの付加を触媒できる任意のポリメ
ラーゼを意味するのに使用される。
ポリヌクレオチドの用語は、デオキシリボ核酸、リボ核酸、及びそのアナロー
グのホモ及びヘテロポリマーを含む。
改変された逆転写酵素同族プライマートランスファーRNA分子の用語は、人工
的な生物学系により化学的に生成されたか、あるいは生物学的起源から精製され
た任意のtRNA分子であって、インビボで特異的逆転写酵素の活性を発現させるよ
うに改変されたものを示す。
天然に存在するプライマー結合部位の用語は、特定の逆転写酵素の天然に存在
する同族プライマーがアニールしてcDNA合成を開始する、RNA鋳型分子中の特定
のヌクレオチド配列を示す。従って、プライマーがアニールするRNA鋳型配列中
の変化を起こす、天然に存在する同族プライマー中の任意のヌクレオチド付加、
欠失、あるいはその他の改変は、天然に存在するプライマー結合部位以外の部位
における結合を生じる。
発現カセットの用語は、コードされた生成物の発現に必要な全ての配列を含む
DNA構築物を示す。従って、発現カセットは、少なくともプロモーター領域、所
望の配列、及び転写終結領域をコード化するDNAを含むことになる。
ベクター及びプラスミドの用語は、特定の系においてDNAが複
製されたり選択されたりすることを可能とする任意の手段を含むのに使用され、
互換的に使用できるものである。
機能できるように結合(operative linkage)の用語は、結合の両側において
配列間の機能的関係を維持するように結合したヌクレオチドをいうものである。
例えば、DNA配列に機能することができるように結合したプロモーターは、転写
の方向及び転写開始部位の両方について上流で、転写延長がDNA配列の端から端
まで進行するように挿入されている。
本発明のcDNA合成方法は、細胞からのmRNAの単離を必要としない。インビボで
cDNAを合成することにより、mRNAの単離を必要とする(あるいは細胞が殺され、
厳しい条件にかけられる)従来のインビトロにおける方法にみられる問題が回避
されるので、mRNA鋳型は本来の形のままである可能性がより高く、完全長のcDNA
クローンをより容易に得ることができる。さらに、インビボでのcDNA合成は逆転
写酵素のインビトロ活性を必要とせず、逆転写段階をインビボ(即ち細胞内環境
で)において行うことを可能とし、逆転写酵素の効率、忠実度、及び進行能力は
最適化される。従って、この方法により、より長いcDNAクローンをヌクレオチド
配列エラーが殆どない状態で生成することができる。さらに、これは実施するの
がより容易で、かなり短い時間しか必要とせず、この手順は、より少ない最初の
細胞数から出発してcDNA生成物を得ることができる能力を有している。
前記の発明の背景の項に記載したように、従来のcDNA合成はインビトロcDNA合
成段階の前に細胞からmRNAを単離し精製することを必要とする。インビトロcDNA
合成段階においては、逆転写酵素
のためのプライマーの必要性は、mRNA分子のポリ(A)テイルにアニールするオ
リゴ(dT)プライマー分子、あるいは標的mRNA配列の既知の部分に相補的なオリ
ゴヌクレオチド分子を与えることで充足するのが最も一般的である。しかしこれ
らのタイプのオリゴヌクレオチドプライマーはいずれもインビボにおいては有効
ではない(下記の実施例を参照)。なぜインビトロcDNA合成反応をうまく開始す
る相補的配列の単純なポリヌクレオチドオリゴマーがインビボcDNA合成反応を開
始できないのかということを確認する具体的な証拠はないが、そのできないこと
について少なくとも2つの説明が可能であり得る。即ち、1)逆転写酵素は、特
定の配列、従って特定の三次元構造を有する同族tRNA分子を認識し結合すること
が知られている。これはHIVからの逆転写酵素を用いたゲル移動度シフト実験に
より天然及び合成tRNA分子の両方で詳細に研究されている(Barat,C.,et al.
,EMBO J.8:3279-3285(1989);Barat,C,et al.,Nucleic Acid Res.19: 7
51-757(1991);Weiss,S.,et al.Gene 111:183-197(1992))。単純なオリ
ゴマーのプライマーはこの構造的な要件を充足しておらず、従ってそのポリヌク
レオチドプライマーがmRNA鋳型にアニールできるとしても、逆転写酵素はインビ
ボ条件でプライマーを認識し結合することができない可能性がある。2)あるい
は単純に、インビトロ条件下でmRNA鋳型にアニールするポリヌクレオチドプライ
マーがインビボでmRNA鋳型にアニールできないのかもしれない。
レトロウィルスの自然のライフサイクルにおいては、ウィルス逆転写酵素は宿
主tRNA分子をプライマーとして利用して、単鎖レトロウィルスRNAゲノムのDNAコ
ピーを合成する。動物細胞中に
は40を越える異なるタイプのtRNAが存在し得る。感染性のレトロウィルス粒子の
それぞれは、単鎖ウィルスRNAクロモソームの2つのコピーを含み、そのそれぞ
れは、プライマー結合部位と呼ばれるレトロウィルスRNAの特定の領域にアニー
ルする特定の宿主tRNA分子と結合している。逆転写工程を開始するために、tRNA
の3'末端の塩基の配列がレトロウィルスRNAのプライマー結合部位にアニールす
る。逆転写酵素(これは既にこの複合体と結合している)は次いでこのtRNAをプ
ライマー分子として使用して、新生DNA分子の第1のヌクレオチドをtRNAの3'ヒ
ドロキシ末端に付加する。
レトロウィルス逆転写発現の特異性は、レトロウィルスゲノムにアニールする
tRNA分子の3'末端の塩基対配列により決定される。各レトロウィルスは、レトロ
ウィルスゲノム中に存在する特異的プライマー結合部位配列にアニールすること
ができるtRNAプライマーを利用する。例えば、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)ゲ
ノムはtRNALys 3をプライマーとして利用する。HIVウィルスのDNAコピーの合成を
開始するために、tRNALys 3の3'末端の18ヌクレオチドが広がり、これはHIVプラ
イマー結合部位を有する塩基対である(Weiss et al.,RNA Tumor Viruses,Col
d Spring Harbor(1982);Goff,J.Acquired Immune Deficiency Syndrome3:8
17-83(1990))。従って、tRNALys 3の3'末端の18ヌクレオチドは、HIVプライマ
ー結合部位配列に相補的なものである。このtRNAプライマーのウィルスRNA鋳型
へのアニーリングに加えて、同じtRNA分子の部分がウィルス逆転写酵素に認識さ
れて、最終的に3分子複合体が形成される(tRNAプライマー−逆転写酵素−RNA
鋳型)。
従って、全てのインビボcDNA合成反応について、プライマー分子は2つの基準
を満足しなければならない。第1に、プライマー分子は標的RNA分子にインビボ
でアニールできなければならない。第2に、アニールしたプライマー−RNA複合
体は逆転写酵素に利用され、該酵素がRNA鋳型とアニールしたプライマーを使用
したcDNA合成を触媒できなければならない。現在インビトロcDNA合成に使用され
ているオリゴヌクレオチドプライマーは、インビボでは機能しない(記載したデ
ータを参照)。さらに、特定のtRNA分子はレトロウィルスゲノム上での逆転写酵
素のインビボ作用のためのプライマーとして機能できるが、これらのtRNAプライ
マーはレトロウィルスプライマー結合部位に特異的にアニールし、全ての成熟細
胞mRNA分子中に存在する配列にアニールするようには設計されていない。本発明
は、全てのポリアデニル化された細胞内mRNA分子にアニールし、逆転写酵素に利
用されてプライマー分子がアニールするmRNA分子のcDNAコピーを生成するような
プライマー分子を与えることにより、インビボにおけるcDNA合成方法を提供する
ものである。本発明は、天然に存在する細胞tRNAプライマーを改変tRNAプライマ
ーに換えて、レトロウィルス複製工程(実際にインビボcDNA合成反応である)を
模倣するものである。
本発明のある態様においては、プライマー分子は改変された逆転写酵素同族プ
ライマーtRNA分子であって、該tRNA分子の3'領域(その部分はウィルスRNAプラ
イマー結合部位にアニールし、レトロウィルス逆転写を発現する役割りを果たす
)がポリウリジル酸配列により置き換えられており、tRNA分子は成熟細胞mRNA分
子
上に存在する3'ポリ(A)テイルにアニールする。そのような好ましいtRNAプラ
イマー(「ポリU tRNAプライマー」)は、生存可能な細胞に含まれている全ての
成熟mRNA分子のcDNAコピーをインビボで合成するのに使用できる。このプライマ
ーは全ての成熟mRNA分子とアニールするので、プライマーはcDNAライブラリーを
作成するのに使用でき、これは所与の時点において細胞内で発現される構造遺伝
子の全てを表すcDNA分子のコレクションである。
本発明の別の態様においては、tRNAプライマーの3'領域は、それが特定のRNA
配列の部分に相補的であるように改変されている。これは、所望のRNA分子のヌ
クレオチド配列が既に判っているか、その相補的配列を含むRNAの集団からcDNA
を製造することが望まれていることが必要である。特定のcDNA分子の合成は種々
の方法において有用であり、限定するものではないが、以下のものが含まれる。
配列特異的tRNAプライマーは既知の配列を有するcDNAをクローン化するのに、あ
るいは特定の遺伝子ファミリー(その全ては共通の配列を有する)を示す遺伝子
からクローン化するのに利用できる。あるいは、RNA鋳型について選択的である
プライマーをインビボDNA配列決定反応に使用し、鋳型をクローン化及び単離す
る必要なしに所望のRNA鋳型の5’配列を決定できる。さらに、特定のmRNA種の
発現が特定の疾患状態の信頼できる指示である場合には、インビボcDNA合成はポ
リメラーゼチェーンリアクション(PCR)に基づいた診断方法の有用な代替手段
となり得、あるいはそのような診断方法と合わせて治療剤として利用できる。例
えば、HIV特異性相補的プライマーは、改変されたデオキシヌクレオチド塩基をc
DNA中に導入することができ、これは検出、配列
決定あるいは並べ替えに使用でき(Link,H,et al.,J.Med.Virol.37:143-14
8(1992);Prober,J.M.etal.,(1989))、あるいは導入されたヌクレオチ
ドアナローグが細胞毒性になるように塩基を設計し、感染したCD4細胞のみが除
去され、非感染の生存できるCD4細胞はそのままにすることができる。さらに、
配列特異的tRNAプライマーは、細胞または組織中に存在する転写パターンの内部
(インビボ)「スナップショット」を得、発生あるいは誘導の特定の期間におけ
るスプライス変異体あるいは遺伝子ファミリー転写物の相対的割合を決定するの
に使用できる。ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)は、過去においてこ
の目的に使用されているが、最もよい状態でも増幅の間に起こる問題により信頼
性がなく、誤差の大きいものである(Gilliland,G.,et al.in PCR Protocols
:A Guide to Methods and Applications,Academic Press(1990))。
従って、本発明はインビボcDNA合成のために使用し得るプライマー分子を包含
する。より具体的には、そして好ましい態様においては、これらのプライマー分
子は改変された逆転写酵素同族プライマートランスファーRNA分子である。典型
的には、3'末端におけるtRNAヌクレオチド配列の改変は同数のtRNA塩基の置換を
使用し、置換された塩基が標的RNA分子に相補的な配列を形成するようにする。
本発明の好ましい態様においては、tRNA分子の3'末端の塩基は置換配列によって
置き換えられる。本発明の別の好ましい態様においては、Moloneyマウス白血病
ウィルス逆転写酵素tRNAproGGG同族プライマーの3'末端の20ヌクレオチド塩基が
ウラシル残基で置き換えられている。
tRNA分子の三次元構造は逆転写酵素によるtRNA分子の認識に重要であると考え
られる。溶液中のトランスファーRNA分子は三次元構造に折り畳まれており、そ
の主鎖はクローバーの葉に似たステムループ構造を有している。このクローバー
の葉の4つのステムは、ワトソン−クリック塩基対形成により安定化されている
(4つのステムのうち3つはループ内で終了している)。tRNA分子の構造の一体
的な部分としてtRNAの3'末端の塩基はtRNAの5'末端の塩基と塩基対結合を形成し
ている。簡略化したtRNA分子の一次構造を図2Bに示す。上記したようなtRNA分
子の3'末端のヌクレオチド塩基の配列の改変は、tRNA分子の3'及び5'末端の塩基
対形成相互作用を中断し得、従ってtRNA分子の全体的な三次元構造を阻害し得る
。これらの改変による構造の破壊を最小にするために、tRNA配列の別の改変が必
要となり得る。
本発明のある態様においては、tRNA分子の5'末端の領域に補償的なヌクレオチ
ド塩基の変更を行い、改変された分子の5'及び3'末端がワトソン−クリック塩基
対を形成できるようにする。さらに、コード配列の5'末端に追加のグアニン残基
を付加し、T7 RNAポリメラーゼを使用したtRNAプライマーのインビトロ生産を容
易化した。分子の5'末端になされるヌクレオチド塩基の特定の補償的な変更は分
子の3'末端になされる置換に依存することになることは当業者には明らかであろ
う。例えば、tRNA分子の3'末端がポリウリジル酸配列に改変される(ポリU tRNA
プライマーにおいて)場合、tRNA分子の5'末端に存在する塩基をアデニン塩基で
置換することにより、分子のこの領域におけるワトソン−クリック塩基対形成が
復活され、従ってtRNAの三次元構造が保持される。
当業者であれば、本発明の実施において、インビボcDNA合成に使用されるプラ
イマー分子が先に存在するtRNA分子に由来するものである必要はないことが判る
であろう。即ち、(a)RNA分子にインビボで結合することができ、(b)逆転写
酵素のためのプライマーとして作用することができ、それによりそのRNA鋳型分
子に相補的なDNA分子の合成が起こり得るような任意のオリゴヌクレオチドを本
発明のインビボcDNA合成方法に使用することができる。特定のプライマーのイン
ビボcDNA合成での使用についての適合性は、以下に記載するようにインビボcDNA
合成を行い、その合成の生成物をアッセイすることにより調べることができる。
レトロウィルスのそれぞれは、その宿主細胞によりコード化されそれに由来す
る特定の同族tRNAプライマーを使用する逆転写酵素を、その複製サイクルの間に
cDNA合成を発現し開始するために生成する。例えば、ヒト免疫不全ウィルス(HI
V)からの逆転写酵素はtRNALys 3をプライマーとして使用し、Moloneyマウス白血
病ウィルス(MoMuLV)逆転写酵素はtRNApro 1,2を発現のために使用し、Rous肉腫
ウィルス(RSV)はtRNATTrDを発現のために使用する。これらの組合せにおいて
、ウィルス逆転写酵素−細胞tRNA分子は結合し、検出可能な複合体を形成する。
従って、tRNAプライマー分子の独特な3'ヌクレオチド配列がウィルスRNA鋳型の
相補的塩基にアニールする場合は、これが実際に逆転写酵素を鋳型に運び、cDNA
合成の開始に使用される3分子複合体を形成する。この酵素、プライマー、鋳型
結合による便宜はウィルス複製において不可欠な段階であり、本発明において模
倣されるものである。tRNA分子は、これがインビトロ逆転写反応を発現するのに
使用で
きるある程度の柔軟性を有すること(Kohlstaedt,L.A.and T.A.Steitz,Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 89:9652-9656(1992))、及び組換え体同族tRNAプラ
イマーのフラグメントでもインビトロで逆転写酵素と結合しcDNA合成を発現する
ことが確かめられている(Weiss,S.et al.(1992))。しかし、使用される
tRNA分子が、そこから合成が目論まれる鋳型に相補的な3'配列を有していなけれ
ばならないという要件があるようである。もしそうだとしても、プライマーとし
て機能できるtRNA分子の範囲はインビトロにおいて限定され、この柔軟性はイン
ビボにおけるtRNA利用の要件を反映するものではないであろう。
本発明のインビボcDNA合成方法では、インビボcDNA合成プライマー分子(「プ
ライマー」)が標的RNA分子にアニールし、この複合体が逆転写酵素によって利
用される。本発明のこの形態においては、ある態様においては、プライマーと逆
転写酵素の間の二成分複合体(duplex)を形成し、これによりプライマーがRNA
鋳型分子にアニールするのを容易化することが望ましい場合がある。
プライマー及び逆転写酵素は細胞内に存在してもよく、いずれか一方あるいは
両方が細胞内で合成されてもよく、また導入されてもよい。従って、本発明の1
つの態様においては、逆転写酵素及びプライマー分子をコードする遺伝子を有す
る細胞系内でインビボcDNA合成を行うことができる。これらの遺伝子の発現によ
り細胞内で逆転写酵素及びプライマーが合成される。他の態様においては、逆転
写酵素及びプライマーをコードする遺伝子を誘導可能なプロモーターの制御下に
発現させ、遺伝子の誘導により逆転写酵素とプライマーの発現を導き、これによ
りcDNA合成を開始す
るようにすることができる。
より一般的には、プライマー及び逆転写酵素は外部起源から細胞に導入される
。生物学的物質を生存可能な細胞中に導入するための方法が数多く確立されてい
る。これらの方法の多くが刊行物に記載されており(Molecular Cloning;A Lab
oratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor
,NY.(1989);Keown,W.A.et al.,Meth.Enzymol.185:527-537(1990))
、限定するものではないが、エレクトロポレーション(Neumann,E.et al.,EM
BO J.1:841-845(1982);Electroporation and electrofusion incell biolog
y,Neumann,E.et al.eds.,Plenum Press,New York(1989);Kamdar,P.e
t al.,Nucleic Acids Res.20:3526(1992);Rols,M-P,et al.,Eur.J.Bi
ochem.206:115-121(1992);Tsongalis,G.J.,et al.,Mutat.Res.244:257
-263(1990);Lambert,H.,et al.,Biochem.Cell Biol.68:729-734(1990
);Yorifuji,T.,and H.Mikawa,Mutat.Res.243:121-126(1990);Winega
r,R.A.,et al.,Mutat.Res.225:49-53(1989));DEAE-デキストラン(Lev
esque,J.P.,et al.,Biotechniques 11:313-4,316-8(1991);Ishikawa,Y.
,and C.J.Homcy,NucleicAcids Res.20:4367(1992);カチオン性リポソー
ム(Jarnagin,W.R.et al.,Nucleic Acids Res.20:4205-4211(1992))ある
いはカチオン性脂質(Walker,C.etal.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7915
-7918(1992);レセプター媒介導入(delivery)(Wagner,E.et al.,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 89:6099-6103(1992);マイクロインジェクション(Mar
tin,P.et al.,Dev.Biol.,117:574-580(1986));プロト
プラスト融合;レーザーまたは粒子ボンバードメント;ウィルスベクター導入等
が含まれる。当業者であれば、これらの方法はそれぞれ利点と欠点を有している
ことを理解し、使用する細胞の種類について最も適した導入方法を選択すること
ができるであろう。
本発明のある態様においては、インビボcDNA合成プライマーの細胞内への導入
方法はエレクトロポレーションである。以下に記載するように、この方法を使用
して改変されたtRNAプライマー、逆転写酵素、及び改変されたデオキシヌクレオ
チドトリホスフェートを多くの異なる細胞種に導入した。
外部起源から逆転写酵素を細胞内に導入する場合は、インビボcDNA合成プライ
マーの選択は、選択された逆転写酵素の種類により決定されることになる。2種
類の一般的に使用され市販されている逆転写酵素、即ち鳥類骨髄芽球症ウィルス
逆転写酵素、及びMolonyマウス白血病ウィルス逆転写酵素がある。これらの酵素
は以下のような販売者、Stratagene,11011 N.Torrey Pines Road,La Jolla,
California 92037;Bethesda Research Laboratories,Inc.,P/O.Box 6009,G
aithersberg,Maryland,20877;New England Bio Labs,Inc.,32 Tozer Road
.Beverly,Massachusetts,01915;Boehringer Mannheim Biochemicals,9115
Hague Road,P.O.Box 50816,Indianapolis,Indiana,46250等から商業ベース
で入手可能である。これらの種々の酵素は固有のパラメーター、即ち忠実度(エ
ラー率)、進行能力(cDNA合成を完遂する能力)及び構造(ヘテロダイマーある
いはモノマー)、並びに市場のパラメーター、例えば入手のし易さや評判等の両
方を有しており、これらは酵素の選択において考慮しなければならないファ
クターである。
本発明の目的のために、プロモーター配列に機能することができるように結合
されたコードされた改変tRNA配列を含むDNAカセットを細菌ベクター中にクロー
ン化した。これによりプロモーター配列を認識するRNAポリメラーゼを使用した
、インビトロにおける改変されたtRNAプライマーの生産が可能となった。インビ
ボcDNA合成プライマーがインビトロで転写される場合における使用のためのプロ
モーターの選択は、選択されたインビトロ転写系中において使用されるポリメラ
ーゼ酵素により決まることになる。本発明の好ましい態様においては、改変され
たtRNAproGGGプライマーが、バクテリオファージT7プロモーターの制御下に、T7
RNAポリメラーゼ酵素を使用したインビトロ転写系において発現された。生成さ
れた改変tRNAプライマーを単離して逆転写酵素及び放射活性標識されたデオキシ
ヌクレオチドとともに細胞中に導入した。これらの外来成分の導入の後、細胞を
適当な条件下に十分な時間インキュベートし、インビボcDNA合成が起こるように
した。適当な条件は一般的に、問題となっている細胞種が通常増殖するような条
件である。本発明の好ましい態様においては、プライマー及び逆転写酵素の導入
の後、その細胞種の通常の培養条件下に標的細胞を0.5〜2時間インキュベート
する。下記に挙げた実施例中に記載するように、放射活性標識dNTP(例えば、[
α-32P]dCTP)を使用して特定の条件下で特定のプライマーを使用したインビボ
cDNA合成の効率を測定できる。細胞のインキュベーションの後、インビボで生成
されたcDNAを、Hirtの抽出方法(Hirt,B.,J.Mol.Biol.26:365-369(1967
))を使用して標的細胞から抽出し
た。抽出されたcDNA生成物は二本鎖核酸であり、通常のクローニング方法を使用
してうまくクローン化されたことが判った。別の方法として、プライマー及び/
または酵素は細胞に導入された遺伝子から生成できた。酵素は細胞内の遺伝子か
ら発現させ、プライマーを細胞内に導入することができ、あるいはプライマーを
細胞内で発現させ、逆転写酵素を外部から導入することもできた。改変された(
放射活性標識された)デオキシヌクレオチドトリホスフェートを反応において使
用して、デオキシヌクレオチドの取り込みの追跡手段としたが、前記方法の要件
となるものではない。しかし、改変されたデオキシヌクレオチドを使用すること
は、取り込み及び合成を追跡する便利な方法となり(α−標識されたデオキシヌ
クレオチドを使用した場合)、(ビオチニル化またはその他のデオキシヌクレオ
チドアナローグを使用した)インビボcDNA導入反応の生成物を選択または区別す
る手段を与えるものであることは注目すべきである。改変されたデオキシヌクレ
オチド及びデオキシヌクレオチドアナローグは全ての種類のポリメラーゼ反応に
おいて成功裏に使用でき、これらは当業者には自明の方法である(Prober,J.M
.et al.,Science 238:336-341(1987);Klevan,L.and G.Gebeyehu,Meth
.Enzymol.,154:561-577(1987);Chan,V.T-W.,et al.,Nucleic Acids Re
s.13:8083-8091(1985):Lo,Y-M.D.,et al.,Nucleic Acids Res.16:8719
(1988))。
これらの反応の生成物は種々の方法において使用することができ、限定するも
のではないが、subtractive cDNAライブラリーの構築、特定の細胞毒性または感
光性cDNA生成物の生産、インビボ
DNA配列決定、及び分析的、診断的、または調製的な使用のためのcDNAプローブ
等に使用できる。
以下の実施例は本発明の特定の好ましい態様と形態を説明するためのものであ
り、その範囲を限定するものと解してはならない。
実験
以下の実験の開示において、下記の略号を適用する:eq(当量);M(モル)
;mM(ミリモル);μM(マイクロモル);N(規定);モル(モル数);ミリ
モル(ミリモル数);μモル(マイクロモル数);nモル(ナノモル数);kg(
キログラム);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(
ナノグラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル
);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);n
m(ナノメートル);V(ボルト);μF(マイクロファラッド)および℃(摂氏
温度)。
以下の実施例において、特にことわらない限り、制限酵素、T4DNAリガーゼ、
およびポリヌクレオチドキナーゼはニューイングランド・バイオラボから得られ
る。[α-32P]dCTP、[α-32P]UTP、および[γ-32P]ATPはアマシャム社から
得られ、Molonyマウス白血病ウイルス逆転写酵素緩衝液および酵素はベセスダ・
リサーチ・ラボラトリィズから得られる。これらの物質は、特にことわらない限
り、製造業者の指示に従って使用される。エレクトロポレーションは、インビト
ロゲン社からのエレクトロポレーター、およびバイオラド社からのエレクトロポ
レーションキュベットを使用して行われる。オリゴヌクレオチドはオペロン・テ
クノロジーズ社から得られ、または、例えば、製造業者の指示に従ってアプライ
ド・バイオシステムズDNA合成装置で合成し得る。サーマス・アクアチクス(The
rmus aquaticus)DNAポリメラーゼIはパーキン−エルマー・シータスから入手
される。全ての通常の分子生物学技術は、参考として本明細書に含まれるSambro
okら
(1989)またはBergerおよびKimmel(1987)に従って行われる。
本明細書に開示された核酸配列は便宜上10-mer以下のオリゴヌクレオチドに分
けられ、特にことわらない限り、連続配列と解されるべきである。
実施例1
I.tRNAプライマーをコードする遺伝子の合成
Molonyマウス白血病ウイルス(MoMuLV)は、レトロウイルス DNAの合成のた
めのプライマーとしてマウスtRNApro 1,2イソアクセプター分子を使用する(Hara
da,F.ら,J.Biol.Chem.254:10979-10985(1979);PetersおよびDahlberg,J
.Virol.31:398(1979))。これらの特定のtRNA分子はウイルス粒子中にMoMuLV
逆転写酵素と複合体形成されて見られ、この複合体は、順に、ウイルスRNAゲノ
ムのプライマー結合部位にアニールする(図2Bおよび3Aを参照のこと)。アニー
ルされたtRNA分子をプライマーとして使用できるMoMuLV逆転写酵素がDNA合成を
開始し、そしてtRNAプライマーがアニールする鋳型RNA分子に相補的であるDNA分
子を合成し続ける。
マウスtRNAproGGGプライマーのヌクレオチド配列が知られている(Haradaら,
(1979))。このtRNA分子の2種のバージョンは遺伝子カセットからインビトロ
で転写され、これらのカセットはオリゴヌクレオチドを使用して合成され、次に
クローン化され、そして配列分析により確認される。これらの反応を使用したデ
オキシリボヌクレオチドプライマーを以下に示す。
プライマーNo.1(配列番号1):
プライマーNo.2(配列番号2):
プライマーNo.3(配列番号3):
プライマーNo.4(配列番号4):
プライマーNo.5(配列番号5):
プライマーNo.6(配列番号6):
オリゴヌクレオチドプライマーNo.1およびNo.2を、図2Aに示された“野生型
”マウスtRNAproGGGプライマーに相当する組換えtRNA分子を生成するように設計
する。インビトロで転写されたtRNAは、それらの細胞相対物中に存在する改変リ
ボヌクレオチド塩基を含まない点で、或る種の相違がある。しかしながら、これ
らの改変は逆転写酵素-tRNA相互作用、および天然産の同系tRNA(Barat,C.ら
(1989);Weiss,S.ら(1992);Barat,C.ら
(1991))のようにインビトロでのcDNA合成を開始するそれらの能力の両方に関
して同じ効力を有することがわかった。これらのプライマーの3'末端は相補的で
あり、その結果、プライマーNo.1およびプライマーNo.2の3'末端がインビトロ
でアニールされ、次にdNTPの存在下でDNAポリメラーゼIのクレノーフラグメン
トで処理されてT7 RNAポリメラーゼプロモーター−tRNAwtをコードするカセット
を含む二本鎖DNA分子を生成し得る。(図2Aを参照のこと)。このプライマー対
を、このバクテリオファージT7プロモーター配列が tRNA分子の5'末端に操作に
より結合されるように設計する。このプロモーター-tRNAカセットは制限部位と
隣接してそのカセットがクローニングベクターから開裂されることを可能にし、
そしてEarI制限部位をカセットの3'末端にとり込み、その結果、インビトロでの
転写反応の前のEarIエンドヌクレアーゼによるカセットの消化が、コードされた
tRNA配列の正確な3'末端で鋳型の直鎖化(それ故、転写の終止)をもたらす。プ
ライマーNo.1およびNo.2のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号1および配列
番号2に示す。
第二プライマー対(プライマーNo.3およびNo.4)を、下記のtRNAの改変形態
(その改変tRNA分子はtRNApolyUと称される)をコードするように設計する。
配列番号7
tRNAwtと同様に、バクテリオファージT7プロモーター配列を、
tRNA配列および隣接制限部位の5'末端に操作により結合し、EarI部位をとり込む
。そのtRNApolyU分子の3'末端を含むプライマーNo.4は、野生型tRNA分子の3'末
端ヌクレオチドに代えてポリ(U)配列をコードする(図3Aおよび3B中のtRNA配
列と比較のこと)。プライマーNo.3およびNo.4をそれぞれ配列番号3および配
列番号4に示す。
等モル比のプライマーNo.1&2、および3&4を、T4 DNAキナーゼ(ポリヌ
クレオチドキナーゼ)を使用してキナーゼ処理する。キナーゼ処理されたオリゴ
マープライマー対No.1およびNo.2、並びにプライマーNo.3およびNo.4を、2
mMのdNTPを含むクレノー緩衝液(50mMのトリスークロリド(pH7.6)、25℃、10m
MのMgCl2、10mMのβ−メルカプトエタノール)中でアニールする(80℃で3分間
、20分間にわたって60℃から37℃に徐々に冷却する)。次に、アニールしたプラ
イマー対を、30μlの容積中のDNAポリメラーゼIのクレノーフラグメント10単
位とともに37℃で30分間インキュベートして二本鎖DNA合成を完結する。次に、
普通に利用できる技術を使用してこれらの二本鎖DNAカセットを抽出し、沈殿さ
せ、1/10TE緩衝液(1mMのトリス−クロリド、0.1mMのEDTA(pH8.0))中で再度
懸濁させ、そしてpUCl8クローニングベクター(Yannish- Perronら,Gene 33:10
3-119(1985))中の脱ホスホリル化SmaI位に連結する。プライマーNo.1および
No.2の組み合わせにより生じた野生型tRNA遺伝子をpUC18にクローン化してpUC1
8-T7tRNAwtをつくる。プライマーNo.3およびNo.4の組み合わせにより生じた改
変tRNA遺伝子をpUCl8にクローン化してpUCl8-T7tRNApolyUをつくる。これらの2
種のプロモーター-tRNAカセットの
配列および方向をDNA配列決定により確かめる(この配列決定は、供給業者の推
奨に従ってシーケナーゼ(商標)2.0(U.S.バイオケミカルズ)を使用して行う
)。
II.tRNAプライマーの合成
tRNAwtまたはtRNApolyUのいずれかをコードするクローン化DNA分子を上記のよ
うにして生成する。そのtRNA遺伝子をバクテリオファージT7 RNAポリメラーゼの
存在下でインキュベートすることにより、これらのクローン化tRNA遺伝子からト
ランスファーRNA分子を生成する。RNAポリメラーゼは、それらが鋳型DNA配列中
の転写終止シグナルに出会い、またはDNA鋳型を単に複写する(run off)まで鋳
型DNAに相補的であるRNA分子を合成し続ける。T7 RNAポリメラーゼの作用により
生成されたtRNA分子がそのtRNA遺伝子の末端で適当に終止することを確実にする
ために、与えられたtRNA鋳型をtRNA遺伝子の末端で直鎖化する。これは、幾つか
の方法で行い得る。
一つの技術はクローン化インサートを制限酵素消化により切断することを伴う
。EarI制限エンドヌクレアーゼによる消化はプロモーター-tRNAカセットをpUCl8
-T7tRNAwtから除去し、ベクター配列中で実質的に5'からT7プロモーター配列を
消化し、そしてtRNA遺伝子鋳型の3'末端で正確に消化する。
tRNApolyUインサートの3'末端にあるEarI制限部位は消化に対し耐性であるこ
とがわかっているので、上記のアプローチはpUC18-T7tRNApolyUクローニングベ
クターと共に使用されなくてもよい。この問題を回避するために、ポリメラーゼ
連鎖反応(PCR)を
利用する別の技術を使用して特定のプロモーター-tRNApolyUフラグメントを増幅
するとともに、鋳型をコードするtRNApolyUの末端を規定する。この目的のため
に、2種のプライマーを使用する:第一プライマーはT7プロモーター領域配列に
向けられた3'末端を有する挿入T7プロモーター領域に対し5'に位置されたpUC18
ベクター中の配列にアニールする市販のプライマーであり、第二プライマーは所
望のT7プロモーター- tRNApolyUカセットの塩基にアニールする“逆RNAプライマ
ー”(配列番号5に示される)であり、その結果、逆RNAプライマーの最も5'側
の塩基は、以下のようなコードされたtRNApolyU鋳型の最も3'側の塩基である。
配列番号8
そのPCRを下記の条件に従って行う:PCR緩衝液:67mMのトリス(25℃でpH9.2
)、16.6mMの(NH4)2SO4、1.5mMのMgCl2;50ngのそれぞれのプライマー、約1x
108分子のpUC18-T7tRNApolyU構築物、および250 μM濃度のそれぞれのデオキシ
ヌクレオチドトリホスフェート。その反応混合物を100℃で3分間加熱し、次に1
5℃に冷却する。チューブを短時間遠心分離して内容物を回収し、次に1単位のT
aqポリメラーゼおよび1滴の鉱油をそれぞれ20μlの反応液に添加する。その反
応を下記のレジメで40サイクルで行う:94℃で1分間;次に55℃で1分間。増幅
生成物を5つの反応からプールし、クレノーフラグメントおよび1mMのdNTPでブ
ラント末端にし、抽出してタンパク質および痕跡の鉱油を除去し、
そして通常のプロトコルを使用してEtOH沈殿する。そのペレットを70%のエタノ
ール(EtOH)ですすぎ、乾燥させる。次にそのペレットを1/10TE中で再度懸濁し
、そしてフラグメントを既知のサイズの標準物質に対して2%のアガロース/TA
Eゲルで調べる。
PCRは、鋳型依存性様式で増幅生成物の末端への単一ヌクレオチド(通常、デ
オキシリボアデニル酸残基)のとり込みを可能にすることが知られていることに
留意すべきである(Clark,J.M.,Nucleic Acids Res.16:9677-9686(1988)
)。しかしながら、この鋳型依存性とり込みは稀に起こり、そして余分なアデニ
ン残基が付加されると、それは鋳型をコードする配列にではなく3'末端(これは
T7プロモーターの上流である)に付加される。これらの鋳型を使用するその後の
試験管内の転写反応の放射能標識生成物を、既知のサイズの標準物質を用いて変
性ポリアクリルアミド電気泳動を使用して調べたところ、所望のサイズのもので
ある。
T7プロモーター-tRNAwtカセットおよびT7プロモーター-tRNApolyUカセットを
含む直鎖状DNAフラグメントを、tRNA分子をインビトロで生成するための鋳型分
子として使用する。これを、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ酵素を使
用するラン−オフ(run-off)転写により行う(以下を参照のこと)。
tRNAwtのインビトロでの生成につき、EarI直鎖化pUC18-tRNAwt鋳型を使用して
反応を行う。tRNApolyUのインビトロでの生成につき、PCR増幅T7- tRNApolyUカ
セットを鋳型として使用する。また、DraI感受性T7- tRNApolyUカセットを直鎖
化にし、インビトロでの転写反応のための鋳型として使用する(EarI適合性T7-t
RNApolyU鋳型の生成に使用されたのと同じプロトコルを使用し
て、オリゴマーNo.3および6を用いて生成した)。インビトロ反応につき、下
記の条件が使用し得る(Gurevich,V.V.ら,Anal.Biochem.195:207-213(1991
):簡単に言えば、RNaseを含まないエッペンドルフチューブに、下記の成分を2
5℃で添加する:80mMのHepes-KOH(pH7.5)、12mMのMgCl2、20mMのDTT、5mMのd
NTP、2mMのスペルミジン;RNaseを含まないdH2O; 50-100μg/mlの鋳型DNAおよ
び5μlの[α-32P]ATP(30μCi;3000Ci/ミリモル;生成物を調べ、定量する
ために添加した)。反応成分を混合し、次にその反応をT7 RNAポリメラーゼ酵素
反応ミックス(1200-1800 U/mlの最終濃度まで)の添加で開始する。次にチュー
ブを37℃で4時間インキュベートする。RNaseを含まないDNaseを反応に添加し、
そして鋳型DNAの消化を15〜30分間進行させる。この時点で、とり込みの効率を
測定するために、反応混合物の少量のアリコートを除去することができる。この
測定を、過剰のRNaseを含まないキャリヤーDNAの存在下で反応混合物のアリコー
トの低温トリクロロ酢酸沈殿により行うことができる。この測定、合計カウント
の対照を、同反応混合物から沈殿されなかった物質で行う。次に反応混合物のそ
れぞれに、150μlのRNaseを含まないdH2Oおよび20μlの3MのNaOAcを添加し、
その混合物を等容積のフェノール/CHCI3(pH6.5)(pH6.5で緩衝されたフェノ
ールを使用してRNA生成物の塩基触媒加水分解の可能性を最小にする)、続いてC
HCl3により抽出する。生成物を2−プロパノールで沈殿させ、ペレットをすすぎ
、沈殿を乾燥させる。プライマー生成物をRNaseを含まないdH2O中で再度懸濁さ
せ、そして既知のサイズの標準物質で行われるポリアクリルアミド/尿素ゲルの
オ
ートラジオグラフィー露出を使用してアリコートをサイズにつきチェックする。
III.固相担体を使用する化学合成
改変されていないオリゴヌクレオチドおよび2’−O−メチルオリゴリボヌク
レオチドを固相で高収率で化学合成できることは、本発明を分取用、分析用およ
び治療用に容易に採用されることを可能にする。改変オリゴリボヌクレオチド生
成に有益な合成技術および試薬(例えば、本明細書に参考として含まれるSprout
,B.S.ら,Nucleic Acids Res.17:3373-3386(1989))は、RNAプライマーがDN
A鋳型からインビトロで生成される場合に行い得なかった幾つかの実施態様を与
える。例えば、2’−O−メチルオリゴリボヌクレオチドはRNase活性に耐性で
あることが知られている(Sprout,B.S.ら,(1989);Inoue,H.ら,FEBS Let
t.215:327- 330(1987))。それ故、オリゴリボヌクレオチドに代えて、イン
ビボでのcDNA合成反応のプライマーとしてのこれらの改変RNA分子の使用は、初
期のcDNA合成プライマーのRNaseH触媒除去(あらゆる既存の改変を含む)に対
する耐性をもたらす。次に、これらのプライマーはビオチニル化でき、32P標識
でき、または初期の鋳型の塩基触媒加水分解後の第二鎖cDNA合成中に占有され、
とり込まれる制限部位の如き配列要素を含むことができる(2’−O−メチルプ
ライマーは、初期のRNA鋳型のアニールした相補部分も同様に保護するであろう
)。これらの改変はタンパク質と会合するプライマーの能力を損なわないことが
明らかであり(Sprout,B.S.ら,(1989))、そして改変オリゴリボヌクレオチ
ドは
予想された特異性でアニールする。2’−OH基の脱離はRNAプライマーを隣接
3’,5’−ホスホジエステル結合に対する塩基触媒(求核性)攻撃に対し更に
耐性にし、またそれは種々の汎存RNaseに耐性である。
IV.実験設計
上記のようにして合成された改変tRNAプライマーを多種の細胞系におけるイン
ビボcDNA合成反応に使用する。また、対照反応は、プライマーの不在下で、プラ
イマーとしてオリゴ(dT)プライマー、またはインビトロで転写された野生型tR
NAwt分子を用いて行う。これらの実験において、プライマーを、Molonyマウス白
血病ウイルス逆転写酵素および[α-32P]dCTPと共に、エレクトロポレーション
により細胞に導入する。放射能標識dCTPは、これらの反応の生成物の分析を容易
にするのに含まれる。インビボでのcDNA合成反応のための標的細胞の調製におけ
る注意が重要であり、そしてプライマー−逆転写酵素(そして、おそらく改変デ
オキシヌクレオチドトリホスフェート、またはアナローグ)送出の方式の評価を
慎重に考慮すべきである。当業者に自明であるように、多くの別法が存在する。
これらの技術の幾つかが上記されており、下記の実施例におけるエレクトロポレ
ーションの使用は本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
標的細胞への反応成分のエレクトロポレーションおよび細胞のインキュベーシ
ョン後に、反応の生成物をハート抽出技術(Hirt,B.,J.Mol.Biol.26:365-369
(1967))により細胞から抽出し、リボヌクレアーゼAで完全に消化する。フェ
ノール/クロロホルム
抽出およびエタノール沈殿後に、とり込みを定量化することにより、またオート
ラジオグラフィーを使用して、既知のサイズの標準物質を用いてアガロースゲル
で分離された生成物のサイズを調べることにより生成物を分析する。更にS1ヌク
レアーゼ処理、およびRNase H 処理を使用してDNA生成物の性質を測定する。
V.昆虫細胞中のインビボでのcDNA合成
昆虫Sf9細胞系をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)か
ら入手し、供給者により推奨されたように維持する。インビボでのcDNA合成につ
き、細胞をグレース培地中で1x107細胞/mlの濃度で懸濁させる。
エレクトロポレーションの前に、逆転写酵素(1000単位)、tRNAプライマー(
5μg)および[α-32P]dCTP(50μCi)を含む反応成分を、ジチオスレイトー
ル(DTT)(10mM)を含む逆転写緩衝液(BRLから入手した)中で合計容積50μl
で混合し、そして室温で10分間インキュベートする。次にSf9細胞(0.5ml中 5x1
06細胞)を反応成分に添加し、その混合物を冷却した0.4cmのエレクトロポレー
ションキュベットに移す。次にエレクトロポレーションを200V、250μFおよび
無限抵抗にセットしたエレクトロポレーターで行う。
エレクトロポレーション後に、温めたグレース培地1mlをキュベットに添加し
、その混合物をプラスチックチューブ(ファルコン#2059)に移す。次にその混
合物を37℃で1時間インキュベートする。Sf9昆虫細胞系を維持するのに通常の
温度は約25℃であるが、改変された酵素活性の取得が主たる関心事項である。
37℃のインキュベーション期間後に、細胞をエッペンドルフ型式5415Cマイク
ロフュージ(または均等物)中でセッティング5で5分間の遠心分離によりペレ
ットにする。放射性上澄みを注意して除去し、適当に処理し、そして0.6%のド
デシル硫酸ナトリウム(SDS)1ml、10mMのEDTA(pH7.5)を細胞ペレットに添加
する。直ちに、このペレットを大きな穴のピペットマンP1000チップで軽く再度
懸濁させる(チップの一部を除去して穴の直径を増大し、こうして剪断力および
ゲノムDNAの断片化を低下する)。粘稠な溶解産物を氷上に5分間置き、次に5M
のNaCl 250μlを添加し、チューブを数回倒立させて混合する。次に管を氷上に
置く。このハート抽出のインキュベーション期間(2〜12時間)後に、抽出物を
低温エッペンドルフ・マイクロフュージ中でトップスピードで20分間遠心分離す
る。上澄みをペレット(これは放射性廃棄物中に捨てられる)から抜取り、そし
て上澄みを二つの新しい1.5mlのマイクロフュージ管の間で分離する。これらの
上澄みをフェノール/クロロホルム(1:1)で2回抽出し、クロロホルムで1回
抽出する。次に核酸フラクションを1/10容積の3MのNaOAcおよび1/6容積の2−プ
ロパノールの添加で沈殿させる。そのペレットを70%のエタノールですすぎ、次
に乾燥させる。ペレットを18μlの1mMのトリス−クロリド、0.1mMのEDTA(pH7
.0)中で再度懸濁させる。再度懸濁した核酸フラクションをリボヌクレアーゼA
(10mg/mlの原液2μl)で37℃で15分間処理し、続いて30μlの1mMのトリス
−クロリド、0.1mMのEDTA(pH7.0)を添加する。次にその溶液をフェノール/ク
ロロホルム(1:1)で1回抽出し、次にクロロホルムで1回抽出する。次に核酸
フラクションを1/10
容積の3MのNaOAcおよび2容積のエタノールの添加で沈殿させる。ペレットを70
%のエタノールですすぎ、乾燥させる。セレンコフ(Cerenkov)・カウントを乾
燥ペレットに関して得、ペレットを再度懸濁し、そしてアリコートをシンチラン
トでカウントする。放射標識した分子量標準物質を用いて、生成物をアガロース
/TAEゲルで電気泳動にかける。次にゲルを臭化エチジウムで染色し、乾燥し、オ
ートラジオグラフィーにより調べる。
VI.ハムスター細胞中のインビボでのcDNA合成
ハムスターCHO細胞系をATCCから入手し、ATCCにより推奨されたようにして維
持する。エレクトロポレーションの前に、トリプシン/EDTA溶液を使用してCHO細
胞を単層培養から回収する。はがした細胞をカウントし、PBS中ですすぎ、そし
て1x107または1x108の細胞/ml でPBS中で再度懸濁する。反応成分はDTT(10mM)
を含む逆転写緩衝液(BRL)中で50μlの合計容積で混合した逆転写酵素(1000
単位)、tRNAプライマー(5μg)、および[α-32P]dCTP(50μCi)であり、室
温で10分間インキュベートする。プレインキュベーション後に、CHO 細胞0.5ml
をその混合物に添加し、細胞を混合し、直ちに冷却した0.4cmのエレクトロポレ
ーションキュベットに移す。エレクトロポレーションを下記の条件下で行う:33
0V、1000μFおよび無限抵抗。エレクトロポレーション後に、温めたCO2平衡ハム
(Ham's)培地(ギブコ)1mlをキュベットに添加し、その混合物をプラスチッ
クチューブ(ファルコン#2059)に移し、その混合物を37℃で1時間インキュベ
ートする。
そのインキュベーション期間後に、細胞をエッペンドルフ型式5415Cマイクロ
フュージ(または均等物)中でセッティング5で5分間の遠心分離によりペレッ
トにする。放射性上澄みを注意して除去し、適当に処理し、そして0.6%のSDS(
ドデシル硫酸ナトリウム)1ml、10mMのEDTA(pH7.5)を細胞ペレットに添加す
る。直ちに、このペレットを大きくした穴のピペットマンP1000チップで穏やか
に再度懸濁する。粘稠な溶解産物を氷上に5分間置き、次に5MのNaCl250μlを
添加し、チューブを数回倒立させて混合する。次に管を氷上に置く。このハート
抽出のインキュベーション期間(2〜12時間)後に、抽出物を低温エッペンドル
フ・マイクロフュージ中でトップスピードで20分間遠心分離する。上澄みをペレ
ット(これは放射性廃棄物中に捨てられる)から抜取り、そして上澄みを二つの
新しい1.5mlのマイクロフュージ管の間で分離する。これらの上澄みをフェノー
ル/クロロホルム(1:1)で2回抽出し、次にクロロホルムで1回抽出する。次
に核酸フラクションを1/10容積の3MのNaOAcおよび1/6容積の2−プロパノールの
添加で沈殿させる。そのペレットを70%のエタノールですすぎ、乾燥させる。ペ
レットを18μlの1mMのトリス−クロリド、0.1mMのEDTA(pH7.0)中で再度懸濁
する。再度懸濁した核酸フラクションをリボヌクレアーゼA(10mg/mlの原液2
μl)で37℃で15分間処理し、続いて30μlの1mMのトリス−クロリド、0.1mM
のEDTA(pH7.0)を添加する。次にその溶液をフェノール/クロロホルム(1:1)
で1回抽出し、次にクロロホルムで1回抽出する。次に核酸フラクションを1/10
容積の3MのNaOAcおよび2容積のエタノールの添加で沈殿させる。ペレットを70
%のエタノールです
すぎ、乾燥させる。次に第V節に記載されたようにしてセレンコフ・カウントを
乾燥ペレットに関して得る。
VII.ヒト細胞中のインビボでのcDNA合成
ヒトヒーラ(HeLa)細胞系をATCCから入手し、ATCCにより推奨されたようにし
て維持する。エレクトロポレーションの前に、トリプシン/EDTA溶液を使用して
ヒーラ細胞を単層培養から回収する。はがした細胞をカウントし、PBS中ですす
ぎ、そして1x107の細胞/mlでPBS中で再度懸濁する。反応成分はDTT(10 mM)を
含む逆転写緩衝液(BRL)中で50μlの合計容積で混合した逆転写酵素(1000単
位)、tRNAプライマー(5μg)、および[α-32P]dCTP(50μCi)であり、室
温で10分間インキュベートする。次にヒーラ細胞(5x106)0.5mlをその反応成分
に添加し、その混合物を冷却した0.4cmのエレクトロポレーションキュベット(
バイオラド)に移す。次にエレクトロポレーションを下記のセッティングで行う
:330V、1000μFおよび無限抵抗。エレクトロポレーション後に、温めたCO2−
平衡イーグル最小必須培地(ギブコ)1mlをキュベットに添加し、その混合物を
プラスチックチューブ(ファルコン#2059)に移し、次にその混合物を37℃で1
時間インキュベートする。
そのインキュベーション期間後に、細胞を第V節に記載されたようにしてハー
ト抽出にかけ、そしてセレンコフ・カウントを乾燥ペレットに関して得る。
下記の条件を、試験した細胞系の全てにおけるインビボでのcDNA合成反応の対
照として使用する:全ての反応液は[α-32P]dC
TP 50μCi(約3000Ci/ミリモル)を含む。含む場合、逆転写酵素(MoMuLV;BRL
)1000単位を反応混合物に添加する。tRNAプライマーを必要とする反応において
、プライマー1〜10μgを細胞0.5mlに対し添加し、その量を全ての利用可能な
逆転写酵素と複合体を形成するのに所望される量により決定する。オリゴ(dT)
プライマーは、デオキシリボチミジル酸の12〜18塩基のオリゴマーからなること
が好ましい。示される場合、このオリゴヌクレオチドプライマー1または5μg
を反応液に添加する。
VIII.生成物の分析
第V、VIおよびVII節において記載するように、セレンコフ・カウントを乾燥
ペレットに関して得ることができる。ペレットを再度懸濁することができ(そし
てアリコートをシンチラントでカウントし)、そして生成物をアガロース/TAEゲ
ルで電気泳動にかけることができる。これらのゲルを放射標識した分子量標準物
質を用いて泳動し、そしてゲルをEtBrで染色することができ(図5、7、および
9を参照のこと)、乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーにより調べること
ができる(図6、8、および10を参照のこと)。
反応生成物をS1ヌクレアーゼで処理してポリデオキシリボヌクレオチド生成物
の性質を調べる。S1ヌクレアーゼは二本鎖核酸分子を制限された範囲で消化する
が、その酵素は一本鎖核酸基質に対し最も有効に作用する。こうして、一本鎖で
ある(または一本鎖領域を含む)ポリヌクレオチドをS1ヌクレアーゼ処理(Samb
rook 1989)により非常に迅速に完全に消化する。図10に見られる
ように、S1ヌクレアーゼで処理された試料は、未処理の試料と比較した場合、認
められる分解を示さない(図10;レーン2&3、およびレーン4&5を比較のこ
と)。実際に、主要なcDNA生成物(約1.9kbのサイズ)(これはtRNAwtプライマ
ーで得られたインビボでのcDNA合成反応中に現れる)は、S1ヌクレアーゼ処理の
前後で認められる相違を示さない(図10:レーン2と3を比較のこと)。
インビボでのcDNA生成物を更に同定するために、S1ヌクレアーゼ処理をリボヌ
クレアーゼH処理の前後の並行試料につき行う。リボヌクレアーゼHはDNA-RNA
ヘテロ二本鎖のRNA鎖を消化する活性を有する。二本鎖cDNA生成物がヘテロニ本
鎖である場合、リボヌクレアーゼHによるその物質の処理、続いてS1ヌクレアー
ゼによる処理は、その物質の分解およびアガロース/TAE電気泳動ゲルの高分子量
範囲におけるオートラジオグラフィーシグナルの損失をもたらすであろう。これ
らの実験を行う時、反応生成物はS1ヌクレアーゼによる処理単独の生成物から区
別できないで現れる。しかしながら、RNaseHおよびS1ヌクレアーゼ処理で行わ
れる実験は、生体内のcDNA生成物中のヘテロニ本鎖を除くために反復されるであ
ろう。
IX.インビボで合成されたcDNA生成物のクローニング
上記の反応からの二本鎖cDNA生成物を、認められたクローニング技術を使用し
てベクターにクローン化する。簡単に言えば、細胞を改変tRNAプライマー、逆転
写酵素、および[α-32P]dCTP(とり込みを追跡するため)を用いてエレクトロ
ポレーションに
かける。エレクトロポレーション及びとり込みの後に、細胞を上記の第V、VIお
よびVII節に記載されたようにして処理する。最終ペレットを70%のエタノール
ですすぎ、乾燥させる。セレンコフ・カウントを乾燥ペレットに関して得、ペレ
ットを再度懸濁させ、そしてアリコートをシンチラントでカウントする。放射能
標識した分子量標準物質を用いて生成物をアガロース/TAEゲルで電気泳動にかけ
る。ゲルをEtBrで染色し(図5、7、および9を参照のこと)、乾燥し、そして
オートラジオグラフィーにより調べる(図6、8、および10を参照のこと)。
このインビボでのcDNA合成反応で生じる第二鎖cDNA合成は、いずれも第一鎖cD
NA生成物の3'末端により開始されることが可能である。RNase活性はRNA鋳型分解
中に作用して第一鎖cDNA生成物の3'末端を遊離し、隣接配列をこの3'末端により
アニーリングを受け易くなるようにする。これがこの酵素によるインビトロでの
cDNA合成に共通の機構である(Okayama,H.ら,Recombinant DNA Methodology ,
Academic Press,Inc.,235-260頁(1989))。cDNA生成物の末端がクローニ
ングを受け易くすることを確実にするために、インビボのcDNA反応生成物をS1ヌ
クレアーゼで処理し、そしてアダプター分子またはリンカー分子の添加の前に、
T4 DNAポリメラーゼおよび高濃度のdNTPでブラント末端にする。S1ヌクレアーゼ
は使用直前に希釈されること、そして使用される濃度はスケールアップ反応の前
にcDNA生成物の小部分を用いて測定することが重要である。RNaseA処理、抽出
および沈殿後に、cDNAをS1ヌクレアーゼ緩衝液:200 mMのNaCl、50mMのNaOAc(p
H4.5)、1mMの ZnSO4、0.5%のグリセロール中で再度懸濁し、そして37
℃で30分間にわたってcDNA1μg当たり約100単位の希釈S1ヌクレアーゼで処理
する(Kimmel,A.R.,およびS.L.Berger,Guide to Molecular Cloning Techniqu
es,Academic Press,328-329(1987))。EDTAを20mMまで添加して反応を停止
する。生成物を緩衝されたフェノール/クロロホルムで2回抽出し、次にクロロ
ホルムで1回抽出する。水相を含むチューブに、1/10容積の酢酸ナトリウムお
よび2容積のエタノールを添加し、その反応混合物を-70℃で30分間放置する。
チューブを低温マイクロフュージ中で15分間にわたって遠心分離し、上澄みを捨
てる。ペレットを80%のエタノールで注意してすすぎ、スピードバック(Savant
)中で乾燥させる。
その生成物を高レベルのdNTPの存在下でT4 DNAポリメラーゼで処理して末端を
ブラントにすることを確実にする。cDNA生成物をT4 DNAポリメラーゼ緩衝液(50
mMのトリス-HCl(pH8.3)、50mMのNaCl、10mMのMgCl2、10mMのDTT)中で懸濁さ
せる。それぞれのデオキシヌクレオチドトリホスフェートを含む原液を添加して
500μMの最終濃度を得る。次に10単位のT4 DNAポリメラーゼを50μlの最終濃度
まで添加し、その反応を37℃で30分間インキュベートする。その反応を20mMまで
のEDTAの添加により停止する。もう一度、生成物を抽出し、沈殿させ、そしてペ
レットを第V節に記載されたようにしてすすぎ、乾燥させる。
それから、アダプターまたはリンカーをcDNA生成物に添加することができる。
アニールしたヘミホスホリル化アダプター(プロメガ:アダプターの5'ブラント
末端のみがホスホリル化される)は、それが、リンカーコンカテマーを除去する
ためのcDNAインサ
ートの消化をしないで、アダプターの結合および過剰の未結合のアダプターの排
除後にcDNA生成物のクローニングを可能にする点で有利と考えられる。加えて、
“リンカーライブラリー”構築物を排除するのに必要な過剰のアダプターを除去
する工程が、ベクターへの結合の前にcDNAをサイジング(sizing)するのに同様
に利用し得る。
また、アニールした、ホスホリル化されていないリンカー(ベーリンガー・マ
ンハイム)を使用することができ、そして過剰の未結合のリンカーを、その結合
生成物を60℃〜70℃の範囲で短時間加熱することにより簡単に除去することがで
きる。これは結合されていない付着末端を溶融し、そして連結したリンカー付き
のcDNA生成物をカラムクロマトグラフィーまたはゲル電気泳動により分離するこ
とができる。
cDNAの末端およびアダプターのモル当量の濃度を計算し、そして約20倍過剰の
アダプターまたはリンカーを結合反応に使用する(Wu,R.ら,Meth.Enzymol.
152:343-349(1987))。その結合反応を、以下のようにして行う。チューブに
、合計容積20μl中、2μlの10X連結緩衝液(666mMのトリス-HCI(pH7.6)、1
00 mMのMgCl2、100 mMのDTT、3mMのATP、10mMのスペルミジン-HCl、10mMのヘキ
サミンコバルトクロリド、2mg/mlのウシ血清アルブミン)、ヘミホスホリル化
アダプター、二本鎖ブラントcDNA、および5単位のT4 DNAリガーゼを添加する。
その混合物を15℃で一夜インキュベートする。ブラント末端の結合をPEG8000の
添加により増進することができる。しかしながら、ポリエチレングリコールはフ
ァージパッケージング反応を抑制し、このためこれらの
反応の前に完全に除去すべきである。次にその結合反応液を1mlの床容積のセフ
ァクリルS400スピンカラム(プロメガ)に装填し、これを800xgで遠心分離して
過剰のアダプターおよびアダプター二量体を除去する。cDNA生成物の更に正確な
サイズ選択を可能にする別の技術は、アガロースゲル電気泳動、続いて陽イオン
ニトロセルロース(例えば、DEAEニトロセルロース)からの捕捉および溶離、ま
たは低融点のアガロースの回収部分から直接回収することを含む。
シンチレーションを使用してcDNAを定量し、そのモル末端を計算する(量およ
び平均サイズを基準とした)。今、cDNAインサートが選択されるベクターへの連
結に供される(インサートのサイズおよび付着末端の適合性により若干拘束され
る)。もう一度、連結を上記のようにして行う。ヘミホスホリル化アダプターま
たはホスホリル化されていないアダプターの使用により、多重インサートクロー
ニングが起こりそうにない。何となれば、ベクターのみが接近可能なホスホリル
化末端を有するからである。
次にその結合反応をファージパッケージングに使用し、または化学変換もしく
はエレクトロポレーションのために希釈する。現れるコロニーまたはファージを
最初に豊富な遺伝子につき青色/白色の色選別(α相補性)、またはプローブで
スクリーニングする。加えて、ランダムコロニーまたはプラークを、クローニン
グ部位に隣接するプライマーによるPCRを使用して、または制限消化分析により
インサートサイズにつき調べる。
これらの一般的な技術を使用して、インビボでのcDNA合成方法を使用してCHO
細胞からつくられたcDNAからライブラリーを構築
する。ライブラリーの一つをCHO細胞からのtRNAwtで開始された生体内のcDNA生
成物(約1.9kb)からつくり(図8、レーン4および8を参照のこと)、これを
クローニングの前にDEAEニトロセルロース(NA45、S&S)捕捉/溶離操作を使
用してアガロースゲルでサイズ選別する。別のライブラリーをCHO細胞からのtRN
ApolyU開始されたインビボでのcDNA生成物からつくり、これをアガロースゲル電
気泳動を使用して4-10 kbの間でcDNAにつきサイズ選別する。
tRNAwtプライマーによりCHO細胞中に現れるcDNA生成物(約1.9kb)は、試験し
た全てのCHO細胞系(Anderson,K.P.ら,Virol.181:305-311(1991))に見ら
れる保存された適度に反復性のC型配列および細胞質内A型粒子(IAP)配列か
らの配列特異性プライミングおよび合成を代表し得る。これらの種はマウス白血
病ウイルスのゲノムに対し広範な相同性を有する。
実施例2
I.インビボでのcDNA合成に関するプライマーの適性を評価するための一般的 な方法
改変リボヌクレオチド塩基(図2Bを参照のこと)を含む細胞の逆転写酵素同族
tRNA分子は、ウイルス複製中にレトロウイルスのcDNA合成を開始する。これらの
分子は、本発明により実証され、またインビトロで先に行われた研究(Barat,C
.ら,Nucleic Acids Res.19:751-757(1991);Weiss,S.ら,Gene 111:183-19
7(1992);Kohlstaedt,L.A.およびT.A.Steitz,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89
:9652-9656(1992))から推定されるように、インビボでのcDNA合成を全く開始
することができない。実際に、塩基改変を欠いている合成tRNA分子のフラグメン
トはインビトロでRNA鋳型にアニールでき、そしてこれらの鋳型からインビトロ
でのcDNA合成を誘導することができる(Weiss,S.ら,Gene 111:183-197(1992
))。
ショウジョウバエ属において、コピアレトロウイルス様粒子中の逆転写はショ
ウジョウバエtRNAi Met分子からの開裂および開始から起こる(Kikuchi,Y.ら,P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 87:8105-8109(1990))。それ故、逆転写酵素の同族t
RNAプライマー分子の、先端を切ったアナローグである合成ポリヌクレオチドは
本発明のプライマーとして同様に機能し得ることが明らかである。
インビボでのcDNA合成反応に関するポリヌクレオチドプライマーの適性の測定
は直接的である。前記のように、プライマーは二つの重要な基準を満足できるで
あろう。(a)インビボでRNA鋳型分子に結合でき、かつ(b)そのRNA鋳型分子
に相補的なDNAの合
成が起こるように少なくとも一つの逆転写酵素のプライマーとして作用できるあ
らゆるオリゴヌクレオチドが、本発明のインビボでのcDNA合成の真正プライマー
である。有望なプライマーの適性を定性的かつ定量的に評価する実験が、チャイ
ニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を使用して行い得る(上記の実施例1を参照
のこと)。
インビボアッセイは、エレクトロポレーションによる細胞への[α-32P]dCTP
、推定プライマー、およびMolonyマウス白血病ウイルス逆転写酵素の導入からな
る。インビボでのcDNA合成のプライマーの適性を評価するための対照として、下
記の陰性対照が挙げられる。
1)[α-32P]dCTP単独のエレクトロポレーション
2)逆転写酵素と共に[α-32P]dCTPのエレクトロポレーション実際のプライ
マー試験反応は、
3)“候補”ポリヌクレオチドプライマーおよび逆転写酵素と共に[α-32P]
dCTPのエレクトロポレーションからなることができる。
陽性対照反応は、
4)改変tRNApolyUプライマーおよび逆転写酵素と共に[α-32P]dCTPのエレ
クトロポレーションからなることができる。
ハムスターCHO細胞系をATCCから入手し、実施例1に記載されたようにして維
持する。エレクトロポレーションの前に、トリプシン/EDTA溶液を使用してCHO
細胞を単層培養から回収する。はがした細胞をカウントし、PBS中ですすぎ、そ
して1x108細胞/mlでPBS中で再度懸濁する。反応成分はDTT(10mM)を含む逆転
写緩衝液(BRL)中で50μlの合計容積で混合された逆転写酵素(1000単位)、t
RNAプライマー(5μg;またはモル当量の候補プライマー)、および[α-32P]
dCTP(50μCi)を含み、室温で10分間インキュベートする。プレインキュベーシ
ョン後に、CHO細胞0.5mlをその混合物に添加し、細胞を混合し、直ちにエレクト
ロポレーションキュベットに移す。エレクトロポレーションを下記の条件下で行
う:330V、1000μFおよび無限抵抗。エレクトロポレーション後に、温めたCO2平
衡ハム培地(ギブコ)1mlをキュベットに添加し、その混合物をプラスチックチ
ューブ(ファルコン#2059)に移し、次にその混合物を37℃で1時間インキュベ
ートする。
そのインキュベーション期間後に、細胞をエッペンドルフ型式5415Cマイクロ
フュージ(または均等物)中でセッティング5で5分間の遠心分離によりペレッ
トにし、実施例1、第VI節に記載されたようにして抽出プロトコルにかけ、そし
てセレンコフ・カウントを乾燥ペレットに関して得る。
ペレットを再度懸濁し、アリコートをシンチラントでカウントする。放射標識
した分子量標準物質を用いて、生成物をアガロース/TAEゲルで電気泳動にかける
。次にゲルを臭化エチジウムで染色し、乾燥させ、オートラジオグラフィーによ
り調べる。
結果の解釈
候補ポリヌクレオチドプライマーを用いる実験からの最終ペレットへの標識デ
オキシリボヌクレオチドのとり込みのセレンコフ・カウントの結果が陰性対照で
見られたとり込みを越え、また陽性
対照で見られたとり込みが陰性対照で見られたレベルより約10倍高い場合、その
試験プライマーはcDNA合成を開始しているかもしれない。しかしながら、cDNA生
成物の性質が非常に重要であり、調べるべきである。
それ故、第二の基準は生成物の定性評価であり、最初にアガロース/TAEゲルで
、放射標識した分子量標準物質と並行して実験された10のアリコートから得られ
たオートラジオグラフィーシグナルのパターンおよび密度から測定される。ポリ
ヌクレオチドプライマーが異なるサイズのRNA鋳型、またはRNA鋳型分子の5'から
の異なる距離にある結合部位にアニールするように設計される場合、cDNA生成物
の異種集団が予想される。しかしながら、プライマーが特定の同種RNA鋳型にア
ニールするように設計される場合、特定のcDNA生成物が生成されるべきである(
例えば、図8、レーン4および5、並びにレーン8および9を比較のこと)。そ
れ故、定性パラメーターおよび定量パラメーターの両方を調べて有望なプライマ
ーの効力を測定すべきである。
実施例3
I.配列特異的インビボcDNA合成プライマーの発生
また、本発明は、適合性逆転写酵素および、所望により、改変デオキシヌクレ
オチドトリホスフェートまたはデオキシヌクレオチドトリホスフェートアナロー
グと組み合わせて細胞に導入される配列特異的プロモーターを使用する配列特異
的インビボcDNA合成反応を提供する。これらの配列特異的プライマーは、DNA鋳
型から調製される転写産物として、または化学手段(例えば、固相
担体による)により合成し得る。
II.固相担体を使用する化学合成
改変されていないオリゴヌクレオチド、および2’−O−メチルオリゴリボヌ
クレオチドを固相で高収率で化学合成できることは、本発明を分取用、分析用お
よび治療用に容易に採用されることを可能にする。改変オリゴリボヌクレオチド
生成に有益な合成技術および試薬(例えば、本明細書に参考として含まれるSpro
ut,.S.ら,Nucleic Acids Res.17:3373-3386(1989))は、RNAプライマーがDN
A鋳型からインビトロで生成される場合に行い得なかった幾つかの実施態様を与
える。例えば、2’−O−メチルオリゴリボヌクレオチドはRNase活性に耐性で
あることが知られている(Sprout,B.S.ら,(1989);Inoue,H.ら,FEBS Let
t.215:327-330(1987))。それ故、オリゴリボヌクレオチドに代えて、インビ
ボでのcDNA合成反応のプライマーとしてのこれらの改変RNA分子の使用は、初期
のcDNA合成プライマーのRNase H触媒除去(あらゆる既存の改変を含む)に対す
る耐性をもたらす。次にこれらのプライマーはビオチニル化でき、32P標識でき
、または初期の鋳型の塩基触媒加水分解後の第二鎖cDNA合成中に占有され、とり
込まれる制限部位の如き配列要素を含むことができる(2’−O−メチルプライ
マーは初期のRNA鋳型のアニールした相補部分をも同様に保護するであろう)。
これらの改変はタンパク質と会合するプライマーの能力を損なわないようであり
(Sprout,B.S.ら,(1989))、そして改変オリゴリボヌクレオチドは予想され
た特異性でアニールする。2’−OH基の脱離はRNAプライマー
を隣接3’,5’−ホスホジエステル結合に対する塩基触媒(求核性)攻撃に対
し更に耐性にし、またそれは種々の汎存RNaseに耐性である。
III.配列特異的DNA鋳型からの転写
所望の配列特異的tRNAプライマーを生成できる一つの実施態様は、一般に下記
のように、DNA鋳型からのインビトロ転写からなる。
配列特異的tRNAプライマーをコードする発現カセットの生成のための初期の鋳
型は、pUC18-T7tRNAwtベクター構築物であり得る。この構築物はtRNAwt分子をコ
ードする(図2Bおよび3Aを参照のこと)。2種のプライマーのうちの第一プライ
マーは、pUC18ベクター中の5'からT7プロモーター配列に向けて存在し(図4を
参照のこと)、T7プロモーター配列に向かって3'方向に延びる配列にアニールす
る。市販のプライマーをこのようにしてpUC18-T7tRNApolyU発現カセットの増幅
に使用した。
第二プライマーは、インビボcDNA合成反応のRNA鋳型(例えば、既知の配列のR
NA鋳型)中の配列に相補的であるが、初期のDNA鋳型の配列に相補的ではないプ
ライマーの5'末端にある塩基を含むことが望ましいであろう(図4を参照のこと
)。プライマー中の残りの塩基は、pUC18-T7tRNAwtDNAベクター中のコードされ
たtRNA鋳型の正確な3'末端から同様の距離にあり、そしてT7プロモーター配列に
向かって3'方向に延びるDNA鋳型中の塩基に相補性であろう(即ち、この第二プ
ライマーの5'末端にある20の塩基はインビボcDNA合成のRNA標的に相補的であり
、次に残りの塩基は
その3'末端から20の塩基で開始するコードされたT7tRNAwtDNA中の塩基に相補的
であろう)。この状況が図4に表される。
PCRにおいてこれらの2種のプライマーを使用して、増幅されたDNA T7発現カ
セット中にコードされたtRNAプライマーを、初期のtRNAwt鋳型から増幅プロセス
中に所望のtRNAspecific鋳型に改変する(図4を参照のこと)。同時に、第二プ
ライマーの5'塩基が、得られたtRNAspecificをコードするカセットの3'境界を形
成する。このカセットは、第二PCRプライマー中にコードされた5'配列、および
インビボcDNA合成反応についてのRNA標的の両方に相補的である3'末端を有するt
RNAspecific分子を生じる(図4を参照のこと)。
そのPCRを20μlの容積で下記の条件に従って行う:PCR緩衝液:67mMのトリス
(pH9.2、25℃)、16.6mMの(NH4)2SO4、1.5mMのMgCl2;50ngのそれぞれのプラ
イマー、約1x108分子のpUC18-T7tRNAwt構築物、および250μM濃度のそれぞれの
デオキシヌクレオチドトリホスフェート。その反応混合物を100℃で3分間加熱
し、次に15℃に冷却する。チューブを短時間遠心分離して内容物を回収し、次に
1単位のTaqポリメラーゼおよび1滴の鉱油をそれぞれ20μlの反応液に添加す
る。その反応を下記のレジメで40サイクルで行う:94℃で1分間;次に55℃で1
分間。生成物を5つの反応からプールし、クレノーフラグメントでブラント末端
にし、抽出してタンパク質および痕跡の鉱油を除去し、そして通常のプロトコル
を使用してEtOH沈殿させる。フラグメントを1mMのトリス−クロリド(pH8.0)
、0.1mMのEDTA中で再度懸濁し、そしてアリコートを既知のサイズの標準物質で
2%のアガロース
/TAEゲルで調べてサイズを確かめ、定量する。典型的な収量はそれぞれの20μ
lの反応につき約500ng〜1μgであると予想される。
次にtRNAspecific分子を上記のtRNApolyUの生成に使用されたインビトロでの
転写反応と同様の転写反応で生成する。簡単に言えば、RNaseを含まないエッペ
ンドルフチューブに、下記の成分を25℃で添加する:80mMのHepes-KOH(pH7.5)
、12mMのMgCl2、20mMのDTT、5mMのdNTP、2mMのスペルミジン;RNaseを含まな
いdH2O;50-100μg/mlの鋳型DNAおよび5μlの[α-32P]ATP(30μCi;3000Ci
/ミリモル;生成物を調べ、定量するために添加した)。反応成分を混合し、次
にその反応をT7 RNAポリメラーゼ酵素反応ミックス(1200-1800U/mlの最終濃度
まで)の添加で開始する。次にチューブを37℃で4時間インキュベートする。次
にRNaseを含まないDNaseを反応に添加し、そして鋳型DNAの消化を15〜30分間進
行させる。この時点で、とり込みの効率を測定するために、反応混合物の少量の
アリコートを除去することができる。(これは、過剰のRNaseを含まないキャリ
ヤーDNAの存在下で反応混合物のアリコートの低温トリクロロ酢酸沈殿により行
うことができる。この測定、合計カウントの対照は、同反応混合物から沈殿され
なかった物質で行う。)次に反応混合物のそれぞれに、150μlのRNaseを含まな
いdH2Oおよび20μlの3MのNaOAcを添加し、その混合物を等容積のフェノール/C
HCl3(pH6.5)、続いてCHCl3により抽出する。生成物を2−プロパノールで沈殿
させ、ペレットをすすぎ、沈殿を乾燥させる。プライマー生成物をRNaseを含ま
ないdH2O中で再度懸濁し、そして既知のサイズの
標準物質で行われるポリアクリルアミド/尿素ゲルのオートラジオグラフィー露
出を使用してアリコートをサイズにつきチェックする。細胞への導入の前に、プ
ライマーを精製し、定量する。
このアプローチは、MoMuLV逆転写酵素と共に使用するための配列特異的tRNAプ
ライマーのインビトロでの生成に使用されるDNAカセットの直接の増幅を可能に
する。その技術は単一の配列特異的DNAプライマー、5'ユニバーサルプライマー
およびカセット増幅のためのtRNAwtDNA鋳型を使用する。
実施例4
I.細胞中のスプライス変異体の比を測定するための配列特異的プライマーの 使用
インビボcDNA反応に使用するために配列特異的プライマーを生成できることは
、研究者らが標的細胞または組織中に存在する転写パターンの実時間“スナップ
ショット”をとることを可能にする。インビボcDNA合成技術の、この分析用標的
細胞の調製に際する注意は、おそらく簡単な分取用(例えば、cDNAライブラリー
構築物)よりも更に重要であり、そしてRNAプライマーの型の実際の評価、プラ
イマー−逆転写酵素(および、おそらく改変デオキシヌクレオチドトリホスフェ
ート、またはアナローグ)および送出の方式が慎重に考慮されるべきである。プ
ライマー/酵素複合体を送出するための多くの別法が存在し、そして代表的な選
択が先に概説された。
配列特異的プライマーのインビトロでの生成を可能にするDNAカセットの製造
のための一つの技術が上記の実施例3に概説され
る。
このような合成後に、プライマー生成物をRNaseを含まないdH2O中で再度懸濁
し、そして既知のサイズの標準物質で行われるポリアクリルアミド/尿素ゲルの
オートラジオグラフィー露出を使用してアリコートをサイズにつきチェックする
。細胞への導入の前に、プライマーを精製し、定量する。
別のそして更に直接のアプローチは、実施例3、第II節に一般に記載されるよ
うに、固相担体上でRNAプライマーを化学合成することである。このアプローチ
は配列特異的プライマーの直接合成を可能にするだけでなく、cDNA生成物の検出
、精製および/または改変(例えば、それぞれ、32P−標識、ビオチニル化、お
よび/または配列とり込み)に有益であるような改変された安定なリボ核酸アナ
ローグをとり込む機会を与える。
細胞を、所望の条件に対する最小の変動を可能にする方法で調製し、そして反
応成分の送出の速度を最大にし、かつ細胞または組織へのストレスを最小にする
のに最良であると評価される送出系を使用する。
一つのこのような実施態様において、配列特異的プライマー、逆転写酵素、お
よび[α-32P]dCTPを、細胞または組織への添加の前に、インビトロで一緒に短
時間インキュベートする(上記の実施例1に記載されたようにして)。細胞また
は組織への導入後に、細胞または組織を特異的RNA鋳型に相補的であるDNA分子の
合成を可能にする条件下でインキュベートする。この反応の対照は、下記のもの
を含む。
1)[α-32P]dCTP単独の送出
2)逆転写酵素と共に[α-32P]dCTPの送出
3)インビトロで転写された“野生型”プライマーおよび適当な逆転写酵素と
共に[α-32P]dCTPの送出
上記のような抽出および精製後に、cDNA生成物を適当な放射標識サイズ標準物
質を用いて行われるゲルのオートラジオグラフィー分析により定性的に調べるこ
とができる。加えて、特定の生成物を分析電気泳動ゲルの走査オートラジオグラ
フィーまたは分取電気泳動ゲルから切除されたバンドの液体シンチレーションカ
ウンティングにより定量することができる。PCRを使用して処理されていないRNA
鋳型から生成されるcDNAを検出することができる。
実施例5
I.細胞中の遺伝子転写産物の比を測定するための多重配列特異的プライマー の使用
インビボcDNA反応に使用するために配列特異的プライマーを生成できることは
、標的細胞転写パターンの実時間“スナップショット”を使用して特異な転写パ
ターンおよび転写レベル(これらは多数の病気の症状と関連している)を検出す
ることをまた可能にする。内部対照転写産物(例えば、“ハウスキーピング遺伝
子”)のレベルに対して、種々のオンコジーン転写産物のレベルを同定すること
は、診断および研究の予想の両方から望ましい。PCRがこの目的のために過去に
使用されていたが、増幅中に起こる問題のため、よくても信頼性がなく、かたよ
っている(Gilliland,Gら,(1990))。
このような本発明の使用、および配列特異的プライマーのイン
ビトロでの生成を可能にするDNAカセットの製造技術に関する考察を上記の実施
例3および4に概説する。この実施態様における望ましいアプローチは、実施例
3、第II節に一般に記載されたようにして、固相担体上でRNAプライマーを化学
合成することである。このアプローチは異なる配列特異的プライマーの直接合成
を可能にし、そしてcDNA生成物の差別的検出、精製および/または改変(例えば
、それぞれ、32P−標識、ビオチニル化、および/または配列とり込み)に有益
であるような異なる改変されたリボ核酸アナローグをそれぞれのプライマーにと
り込む機会を与える。
このような合成後に、異なるプローブおよび対照プライマー生成物をRNaseを
含まないdH2O中で再度懸濁し、そして既知のサイズの標準物質で行われるポリア
クリルアミド/尿素ゲルのオートラジオグラフィー露出を使用してアリコートを
サイズにつきチェックする。標的細胞または組織への同時導入の前に、プライマ
ーを精製し、定量する。
細胞を、所望の条件に対する最小の変動を可能にする方法で調製し、そして反
応成分の送出の速度を最大にし、かつ細胞または組織へのストレスを最小にする
のに最良であると評価される送出系を使用する。
一つのこのような実施態様において、オンコジーン配列特異的プライマーおよ
びアクチン配列特異的プライマーをそれぞれプローブプライマーおよび対照とし
て使用する。これらの異なるプライマー、逆転写酵素、および[α-32P]dCTPを
、細胞または組織への添加の前に、インビトロで一緒に短時間インキュベートす
る(上記の実施例1に記載されたようにして)。導入後に、細胞ま
たは組織を特異的RNA鋳型に相補性であるDNA分子の合成を可能にする条件下でイ
ンキュベートする。この反応の対照は、下記のものを含む。
1)[α−32P]dCTP単独の送出
2)逆転写酵素と共に[α-32P]dCTPの送出
3)所望のRNA鋳型の一つのプライマーおよび適当な逆転写酵素と共に[α-32
P]dCTPの送出
4)それぞれの付加的な所望のRNA鋳型のプライマーおよび適当な逆転写酵素
と共に[α-32P]dCTPの送出
上記のような抽出および精製後に、cDNA生成物を適当な放射能標識サイズ標準
物質を用いて行われるゲルのオートラジオグラフィー分析により定性的に調べる
ことができる。加えて、特定の生成物の同一性を、例えば、ビオチニル化された
分子量標準物質を使用して確かめることができ、そしてゲルを移し、サザンブロ
ットをストレプトアビジン/アルカリ性ホスファターゼ接合系(例えば、ブルジ
ーン(BluGENE)系、ベセスダ・リサーチ・ラボラトリィズ、ガイザースブルグ
、MD)を使用して調べることができる。
実施例6
I.特定の遺伝子ファミリーのメンバーをクローン化するための配列特異的プ ライマーの使用
インビボcDNA反応に使用するために配列特異的プライマーを生成できることは
、研究者らが特定の配列を含むRNA鋳型からcDNAを選択的に生成することを可能
にする。
インビトロでの配列特異的プライマーの生成を可能にするDNA
カセットの製造のための一つの技術が上記の実施例3に概説され、記載されたよ
うにして使用し得る。細胞への導入の前に、プライマーを精製し、定量する。
更に直接の別法は、実施例3に記載されたような固相化学合成技術を使用する
ことである。
細胞を、所望の条件に対する最小の変動を可能にする方法で調製し、そして反
応成分の送出の速度を最大にし、かつ細胞または組織へのストレスを最小にする
のに最良であると評価される送出系を使用する。これらの別法の幾つかが上記の
発明の詳細な説明に概説される。
最初に分析プロトコルに従う。予想されるサイズまたはサイズ分布の生成物が
得られると、分取cDNA合成反応を行うことができる。
プライマーおよび技術の分析評価につき、[α-32P]dCTPを入れてインビボで
のcDNA合成反応の結果を定量的かつ定性的の両方で迅速に研究することができる
。
一つの実験スキームにおいて、配列特異的プライマー、逆転写酵素、および[
α-32P]dCTPを、細胞または組織への添加の前に、上記の実施例1に記載された
ようにして、インビトロで一緒に短時間インキュベートする。細胞または組織へ
の導入後に、細胞または組織を特異的RNA鋳型に相補的であるDNA分子の合成を可
能にする条件下でインキュベートする。この反応の対照は、下記のものを含み得
る。
1)[α-32P]dCTP単独のエレクトロポレーション
2)逆転写酵素と共に[α-32P]dCTPのエレクトロポレーション
3)インビトロで転写された“野生型”プライマーおよび適当な逆転写酵素と
共に[α-32P]dCTPのエレクトロポレーション
上記の抽出および精製後に、cDNA生成物をエチジウム染色ゲル(図7、レーン
4および8を参照のこと)、または適当な放射標識サイズ標準物質を用いて行わ
れるゲルのオートラジオグラフィー分析(図8、レーン4および8を参照のこと
)により定性的に調べることができる。加えて、とり込みのレベルをセレンコフ
・カウントの測定により、または、再度の懸濁後に、アリコートの液体シンチレ
ーションカウンティングにより測定することができる。
分析試験後に、同様の反応を放射標識デオキシヌクレオチドトリホスフェート
の不在下で(またはトレーサーとして減少された量を使用して)行うことができ
る。所望の生成物を得るのに必要とされる反応の数が先の分析反応により決めら
れる。
上記の反応からのcDNA生成物を、実施例1、第IX節に記載されたようにして、
認められたクローニング技術を使用してベクターにクローン化する。
実施例7
I.インビボcDNA生成物の直接配列決定のための配列特異的プライマーおよび 4種の蛍光ジデオキシヌクレオチドアナローグの使用
別個の蛍光放出スペクトルを有し、かつ逆転写酵素によりDNAに容易にとり込
まれる一連の蛍光ジデオキシヌクレオチドトリホスフェートアナローグが開発さ
れていた(Prober,J.M.ら,(1987
))。それぞれのアナローグは特定のジデオキシヌクレオチド鎖末端塩基を置換
し、そして鋳型誘導様式でDNAにとり込まれる。配列特異的プライマーから誘導
された、インビボで改変ジデオキシヌクレオチドアナローグをとり込む能力は、
所望の3'配列を含み、かつ検出可能な量で存在するRNA鋳型の直接の配列決定を
可能にする。
典型的な真核細胞中にはおそらく約15,000の異なる転写産物がある(Sargent
,T.D.(1987))。配列特異的プライマーが3'末端付近でのポリウリジル酸伸
長(RNA鋳型のポリアデニル化3'末端にプライマーを位置するように設計される
)と、それに続く極限の3'末端での特定の8塩基配列でもって生成される場合、
唯一のcDNA生成物がおそらく真核細胞中に存在するmRNA鋳型から生成される(0.
258=1/65,536)。
適合性逆転写酵素、bio-11-dUTPデオキシヌクレオチドアナローグ(プライマ
ーがビオチニル化されていない場合;実施例3;下記の実施例8を参照のこと)
、および4種の蛍光塩基特異的およびスペクトル特異的ジデオキシヌクレオチド
トリホスフェートアナローグ(Prober,J.M.ら,(1987))と共に、この改変tRN
Aプライマー(実施例3に記載された技術と同様の方法で生成された)の導入は
、一群のcDNA合成生成物をもたらし、これらを、例えば、アビジン被覆ポリスチ
レン(バクスター・ヘルスケアー、ムンデレイン、IL)またはストレプトアビジ
ン結合ビードを使用して抽出し、濃縮し、ゲル装填緩衝液中で加熱することによ
り溶離し、そして分析用変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動にかける。その
ゲル装置をレーザーを装備したスペクトル識別蛍光励起、検
出装置に取り付ける。これは、先のクローニング、または更には配列の既存の知
識を必要としないで、生物からの発現遺伝子の直接のDNA配列決定を可能にする
。勿論、単一cDNA種がプライマーで生成されることを確かめるために、同様の予
備実験([α-32P]dCTPのとり込み、およびジデオキシ鎖末端アナローグの不在
を伴う)を行うことができる。これは、アガロース/TAE電気泳動ゲルでのオート
ラジオグラフィーによる抽出後に確認し得る。
クローニングしないでインビボcDNA生成物から直接にDNA配列情報を得るため
の別の技術は、低融点のアガロース電気泳動ゲルで特定のcDNAバンドをゲル精製
することである。これらの生成物は、ビオチニル化プライマーを使用する場合の
固相配列決定を含む現在認められている配列決定技術(Syvanen,A-C.ら,FEBS
Lett.258:71-74(1989))を使用して直接に配列決定し得る。cDNA合成に使用
される配列特異的tRNAプライマー分子は、その反応に使用される配列決定プライ
マーを示唆する。
更に別の有益なアプローチは、[α-32P]dNTP、ビオチニル化された配列特異
的tRNAプライマー、逆転写酵素、および4種のジデオキシヌクレオチドトリホス
フェート鎖末端分子の一つを標的細胞に導入することである。このようにして、
4つの別個の導入を行い、それぞれ異なる鎖末端ジデオキシヌクレオチド塩基を
導入する。次に細胞を、とり込みを可能にする時間、および方法でインキュベー
トする。一群のcDNA生成物を、例えば、アビジン被覆ポリスチレン(バクスター
・ヘルスケアー、ムンデレイン、IL)またはストレプトアビジン結合ビードを使
用して抽出し、濃縮し、そして配列決定ゲルを装填する直前に配列決定ゲル装填
緩衝
液中で加熱することによりビードから溶離する。次に配列をオートラジオグラフ
ィーにより決定することができる。
加えて、これらの技術は、3'配列に関する情報が入手できる場合に、クローン
の5'配列を決定する直接アプローチを可能にする。特定の18塩基プライマー配列
の選択は、cDNA生成物をクローニングする時間および困難を生じないで、インビ
ボの特異的配列決定を可能にするであろう。
実施例8
I.インビボcDNA合成反応中のビオチニル化dUTPのとり込み
デオキシヌクレオチドアナローグをインビボcDNA生成物にとり込むことができ
ることは、幾つかの重要な分野で有益であり得るビオチニル化cDNAの調製および
回収を可能にする。特定のビオチニル化デオキシヌクレオチドアナローグが特定
の実験に適しており、多くの候補基質が存在する(Klevan,L.およびGebeyehu
,G.,Meth.E-nzymol.154:561-577(1987))。下記の実施例は一つのアプロ
ーチを使用し、インビボcDNA生成物のビオチニル化の別の方法または技術を特定
または限定するものと見なされるべきではない。別法、例えば、RNAプライマー
のビオチニル化(実施例3を参照のこと)またはインビボcDNA合成反応中のdATP
アナローグN6-(-アミノアルキル)dATPのとり込み、続いて、抽出そして精製後
のアミン標識cDNAとリポーター分子、ビオチン-N-ヒドロキシスクシンイミドエ
ステルの反応が、有益なアプローチである。
ハムスターCHO細胞系をATCCから入手し、推奨されるように管理する。エレク
トロポレーションの前に、トリプシン/EDTA溶液を使用してCHO細胞を単層培養か
ら除去する。脱着細胞をカウントし、食塩加リン酸緩衝液中ですすぎ、そして1x
108の細胞/mlで食塩加リン酸緩衝液中に再度懸濁させる。反応成分は、DTT(10m
M)を含む逆転写緩衝液(BRL)中50μlの合計容積で混合される逆転写酵素(10
00単位)、tRNAプライマー(5μg;配列特異性であってもよく、または一般のプ
ライマー、例えば、tRNApolyUであってもよい)、およびbio-11-dUTP(0.03 mM
または0.3mM最終)であり、室温で10分間インキュベートされる。プレインキュ
ベー
ション後に、CHO細胞0.5mlをその混合物に添加し、細胞を混合し、直ちに冷却し
た0.4cmのエレクトロポレーションキュベットに移す。エレクトロポレーション
を下記の条件で行う:330ボルト(V)、1000マイクロファラッド(μF)および
無限抵抗。エレクトロポレーション後に、温めたCO2平衡ハム培地(ギブコ)1m
lをキュベットに添加し、その混合物をプラスチック管(ファルコン#2059)に移
し、次に混合物を37℃で1時間インキュベートする。
そのインキュベーション期間後に、細胞をエッペンドルフ型式5415Cマイクロ
フュージ(またはその均等物)中でセッティング5で5分間の遠心分離によりペ
レットにし、cDNA生成物を実施例1に記載されたようにして回収する。そのビオ
チニル化cDNAペレットを再度懸濁させ、生成物をアガロース/TAEゲルで電気泳動
にかける。これらのゲルをビオチニル化された分子量標準物質で実験することが
でき、そしてゲルを移し、ストレプトアビジン/アルカリ性ホスファターゼ接合
系(例えば、BluGENE系、ベセスダ・リサーチ・ラボラトリィズ、ガイザースブ
ルグ、MD)を使用してサザンブロットを調べる。
生成物は分取アガロースゲルから精製し、抽出することができ、そしてその生
成物は電子顕微鏡のプローブ(ストレプトアビジン−金を使用する)、in situ
ハイブリダイゼーション(ストレプトアビジン/アルカリ性ホスファターゼ検出
系(Chanら(1985))、消去(subtractive)ライブラリー構築、並びにその他
の分取目的、分析目的および治療目的に使用し得る。
実施例9
I.消去(subtractive)ライブラリー構築におけるビオチニル化インビボcDN Aの使用
cDNAライブラリーの構築そしてスクリーニングの前に誘発特異性メッセージ、
または細胞もしくは組織特異性メッセージの相対頻度を増大できることは、大き
な戦略上の利点であり、そして多くの場合低アバンダンスのmRNAにより提示され
る遺伝子の同定および回収の唯一の希望である(Hedrick,S.ら,Nature 308:14
9(1984))。既に知られている消去技術(subtraction techniques)は分離戦
略を使用し、それにより一本鎖cDNA(所望の細胞、組織または条件から選択され
たmRNAから生成される)を別の細胞、組織または条件から抽出された過剰のmRNA
にアニールする。ヒドロキシルアパタイト、またはその他の選択的マトリックス
を使用して、ヘテロ二本鎖分子を一本鎖cDNA(およびmRNA)から分離する。
デオキシヌクレオチドアナローグをインビボcDNA生成物にとり込むことができ
ることは、ビオチニル化cDNAの調製および回収を可能にする。
このインビボのとり込みのビオチニル化cDNA生成物の使用の一つは、消去(su
btractive)ライブラリー構築にある。ライブラリー構築のこの別の技術は、所
望の鋳型、および消去(subtracting)鋳型分子の両方がcDNAであり、従来可能
ではないハイブリダイゼーションおよび選択プロセス中の安定性を可能にする点
で、従来技術より優れている。加えて、cDNA生成物が、インビトロで生成された
生成物の性質を越え得る適合度およびプロセシビティで、
初期の少数の細胞から生成される。
とり込み反応を実施例3または8に記載されたようにして、または別の手段に
より行うことができる。ビオチニル化cDNAを、所望のcDNAライブラリーの条件以
外の条件下で増殖される細胞または組織中で生成する。抽出され、単離されたビ
オチニル化cDNA生成物をS1ヌクレアーゼで処理して一つ以上のヘアピン構造(こ
れは第二ストランド生成物から第一ストランド生成物を結合し得る)を開裂し、
カラムクロマトグラフィーまたはゲル電気泳動により汚染している共有ゲノムDN
Aから分離し、そして所望の細胞または組織、または別の所望の条件下で増殖さ
れた細胞または組織から生成された(そしてゲノムDNA汚染物質から同様に分離
された)ビオチニル化されていないcDNA生成物の量の約1/30にアニールする。ル
ーチンハイブリダイゼーション条件は、約5mg/mlの最終DNA濃度で120 mMのNaH2P
O4(pH6.8)、820mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のSDSである。その反応混合物を
5分間にわたって90℃に加熱し、次に12〜18時間にわたって65℃に保つ。その反
応液をリン酸緩衝液(120mMのNaH2PO4、pH6.8)で希釈し、そしてアニールされ
た共通のcDNA配列を含むビオチニル化cDNAをストレプトアビジンカラムで単離す
る。フロー−スルーcDNAフラクションをエタノール沈殿により濃縮し、そして許
された方法および技術(Sambrook,(1989))を使用してクローン化する。
実施例10
I.HIV感染CD4リンパ球を同定するための、HIV配列特異的プライマーから導か れるインビボcDNA合成の間の蛍光デオキシヌクレオチドアナローグの導入
多くの蛍光デオキシヌクレオチドトリホスフェートアナローグが市販品として
利用可能であり、これらは特有の蛍光発光スペクトルを有し、ポリメラーゼ酵素
により容易にDNAに導入することができる。それぞれのアナローグは、鋳型によ
り導かれる方法でDNAに導入される。配列特異的プライマーにより導かれる、こ
れらの改変されたデオキシヌクレオチドアナローグをインビボで導入する能力に
より、フローサイトメトリーを使用したHIV-感染CD4リンパ球のスクリーニング
のための迅速で直接的な方法が可能となる。このスクリーニングは分析的な目的
に使用することができ、あるいは感染していないCD4リンパ球から感染したCD4リ
ンパ球を分離するのに使用することができ、それによりHIV陽性の個体の治療方
法が得られる。
本発明のインビボcDNA合成において使用するためのヒト免疫不全ウィルスI型
配列特異的プライマーは、適当なHIV特異的配列を使用して形成される。SK69プ
ライマーの配列に基づいた1つのそのようなPCRプライマーが製造され(Ou,C-Y
et al.,Science239:295-297(1988);Zack,J.A.et al.,Cell 61:213-222(
1990)、これは下記のHIVのenv領域:
に対応し、これは実施例3に記載したPCRに使用してHIV-特異的tRNAプライマー
の製造のためのDNAカセットを生成できる。
あるいは、Watoson&Wilburn(1992)のM666プライマーに基づいたPCRプライ
マーも可能であり、これは下記のLAV-1BRUのU3領域:
に対応する。
次に、精製され、試験され、定量されたプライマーを、適当な方法(特にエレ
クトロポレーション及びカチオン性脂質媒介導入)を使用して、MoMuLV逆転写酵
素及び蛍光デオキシヌクレオチドトリホスフェートアナローグとともに、サイト
カイン活性化(Poli,G.and A.S.Fauci,AIDS Res.Hum.Retroviruses 8:191
(1992))リンパ球(分画化されたものあるいは分画化されていないもの)に導
入する。標的細胞中にあるHIV-特異的RNA鋳型の任意の存在するものに対してcDN
Aを製造するのに必要な条件下にそれに必要な時間、細胞をインキュベートする
。同様の非感染細胞集団について、対照の反応を行うことができる。
細胞を洗浄し、次いで所望によりCD4分子に対する抗体(例えばATCCからのOKT
4)とともに氷上で30分間インキュベートし、洗浄し、そしてFITC-標識F(ab')2
ヤギ抗マウスIgGとともにインキュベートする。さらに細胞を再び洗浄し、調製
し、導入された
蛍光標識を励起しスクリーニングするのに必要なパラメーター(例えば細胞サイ
ズ、蛍光、及び閾値スペクトルについてのゲーティング(gating))を使用して
蛍光活性化細胞ソーティング(Fluorescence Activated Cell Sorting,FACS)
によりスクリーニングする。適当なパラメーターは、陰性対照細胞集団を使用し
て決定できる。
抗CD4抗体(適当な代わりの発光波長を有する)を含ませて実験を行った場合
は、これらの方法によりHIV-感染リンパ球の定量及び分離の両方が可能となる。
あるいは、インビボcDNA合成の後、試験の前に細胞を固定し透過性にすること
ができる。しかしこれは調製的なものではなく、主として分析的態様である。
このように、本発明が有用なcDNA合成のための方法及び組成物を提供すること
が示された。(a)不均一なmRNA鋳型集団を使用したcDNA合成反応について予測
されるような、種々のサイズのポリヌクレオチドフラクションへのデオキシヌク
レオチドの導入(図6のレーン5、9、11、及び12、図8のレーン5及び9参照
)、(b)反応が逆転写酵素及びプライマーの両方を含めることに依存すること
(図6のレーン3及び5、レーン7及び9、図8のレーン3及び5、レーン7及
び9を比較せよ)、(c)反応生成物がリボヌクレアーゼA処理に抵抗性を有す
ること(抽出物中に存在するリボソームRNAフラクションが完全に消化される場
合でも)(図5及び6においてレーン5及び11、レーン9及び12を比較せよ)、
及び(d)生成物の不均一な性質が、ポリアデニル化メッセンジャーRNAの不均一
な細胞集団にアニールし開始させる(prime
off)ように設計された改変tRNAプライマーを含めることに依存することと、特
異的なプライマーを使用したときに単一の優勢なcDNA生成物が得られる反応(〜
1.9kb)の対比(図7及び8、レーン4及び5、及びレーン8及び9を比較せよ
)により証拠付けられるように、インビボcDNA合成反応が効率的に進行すること
が示された。
また、いくつかの関連のないタイプの細胞により(試みた全ての真核生物細胞
、Sf9(昆虫細胞)、CHO細胞(ハムスター細胞)、ヒーラー細胞(ヒト細胞)に
おいて)、インビボcDNA合成反応がうまく起こったことが示された。
さらに、(a)S1ヌクレーアーゼによる処理により反応生成物に有意な分解が
起こらなかったこと(図10、レーン2及び3、レーン4及び5を比較せよ)、(
b)生成物をリボヌクレアーゼHにより処理し、次いでS1ヌクレアーゼにより処理
した場合に反応生成物の識別できる分解は起こらなかったようであること、(c
)リボヌクレアーゼH活性を欠く逆転写酵素を使用した場合に、インビボcDNA合
成反応は起こらないこと(インビボcDNA合成反応の成功は、当初のRNA鋳型を消
化除去する逆転写酵素の能力にある程度依存しているようである。当初のRNA鋳
型はインビトロ及びレトロウィルス複製の両方において第2の鎖の合成のブロッ
クとなる(Tanese,N.,et al.,J.Virol.65:4387-4397(1991))、及び(d
)生成物は慣用のクローニング方法を用いてクローン化可能であることにより証
拠付けられるように、インビボcDNA合成反応の生成物は二本鎖ポリヌクレオチド
(二本鎖DNAである可能性が最も高い)であることが示された。
本明細書中で引用した全ての刊行物及び特許出願については、それぞれ個々の
刊行物及び特許出願について引用により本明細書の一部とすることを具体的に個
々に明記したものとして、引用により本明細書の一部とする。
上記の発明については明確さと理解のために例示及び実施例により詳細に記載
したが、本発明の教示によれば、添付の請求の範囲の概念あるいは範囲を逸脱す
ることなくそれらに対して一定の変更及び改変を加え得ることは当業者に明らか
であろう。
配列表
(2)配列番号:1の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:67塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:1:
(3)配列番号:2の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:66塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:2:
(4)配列番号:3の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:68塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:3:
(5)配列番号:4の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:64塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:4:
(6)配列番号:5の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:29塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:5:
(7)配列番号:6の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:59塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:6:
(8)配列番号:7の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:76塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:RNA(genomic)
(xi)配列;配列番号:7:
(9)配列番号:8の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:76塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:8:
(10)配列番号:9の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:43塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:9:
(11)配列番号:10の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:43塩基
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列;配列番号:10:
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12N 5/10
C12Q 1/68 A 9453−4B
G01N 33/543 541 A 8310−2J
【要約の続き】