【発明の詳細な説明】
因子VIII:C活性を有するタンパク質の改良された組換生産
技術分野
本発明は組換タンパク質、特に因子VIII:C活性を有するタンパク質の増加
せしめられた発現を行う方法に関する。
発明の背景
血友病Aは、10,000につき1〜2人の男性を苦しめるX−染色体−関連で遺伝で
受け継いだ疾患である。この疾患は、因子VIII:Cの欠乏の不存在によっても
たらされる。因子VIII:Cは非常に大きな糖タンパク質(天然Mr330K-360K)で
あり、これはプラスマ中に極めて低濃度で存在する。それはタンパク分解カスケ
ードにおいて必要な要素であり、そのカスケード可溶性フィブリノーゲンを不溶
性フィブリンに変え、傷つけられた組織から血液の損失を防止するため血塊を形
成する。血流中に、それは安定化担体タンパク質として作用する、フォン・ビル
ブラン因子(vWF)との非共有会合において見出される。因子VIII:Cは、トロン
ビン、プラスマ、活性化タンパク質Cおよび他のセリンプロテアーゼにより非常
に分解されやすい。それは一般にプラスマ又はプラスマ生成物からMr160K-77Kに
わたる一連の関連したポリペプチドとして単離され、Mr92K並びにMr80-77Kが優
先する種である。この複合体パターンは、活性因子VIII:Cの構分析を非常に
困難なものにしてきた。
因子VIII:Cおよび関連ポリペプチドは、ロバート等、Biochemistry(1985)2 4
:4294-4300;G.A.Vehar et al,Nature(1984)312:337-342;J.J.ツール等
、Nature(1984)312:342-347;お
よびM.A.ツルッテ等、DNA(1985)4:333-349.E.オール等、Molecular Genetic s of Clotting Factors
,p.51,s321に記載されてきた。配列はJ.J.ツール等、
同上; W.I.ウッド等、Nature(1984)312:330-336;およびM.A.ツルッテ等、
同上により報告されてきている。全長のタンパク質は、第一の配列(I)の3つ
の繰り返し、および第二の配列(III)の2つの繰り返しを含有する。第三の著
るしくグリコシル化された配列(II)は第二のIの繰り返しと第三のIの繰り返
しの間に存在し、そして明らかにタンパク分解的に開裂しMr92KおよびMr80Kポリ
ペプチドを形成する。第一の二つのIの繰り返しはAドメインを形成し、一方第
三のIの繰り返しおよび二つのIIIの繰り返しはCドメインを形成する。IIの配
列はBドメインを形成する。従って、全長のタンパク質は構造I1−I2−II−I1
−III1−III2(A−B−C)を有し、一方Mr92KおよびMr80Kポリペプチド(A
およびC)はそれぞれ、構造I1−I2およびI3−III1−III2を有する。R.L.
バーク等、J.Biol Chem(1986)、は92Kおよび80Kポリペプチドを表すことによ
り、両ペプチドが因子VIII:C活性に対し必要であることを示した。因子VIII
:Cは、歴史的には血友病の治療に対し濃縮した形で血液から単離されてきた。
しかし、HIVおよび他の血液−産生疾患の伝播に関する心配は、因子VIII:Cの
択一的提供を与えるための活性を刺激した。生来の因子VIII:Cに関係する伝
染ウイルス性疾患に関しての心配なくして因子VIII:C活性を有する組成物を
提供しうることは実質的に興味がある。
本発明方法に従って製造される因子VIII:C活性を有する組換タンパク質は
プラスマから単離されたタンパク質に相当する全長因子VIII:Cであってよい
か、又は因子VIII:Cの欠損により引きおこされる不十分な血液凝固を正常化
する能力を有するその誘導体であ
ってよい。それ自体凝固薬活性を示さないかもしれないが、しかし例えば因子V
III:Cに対する抗体の飽和に対し、血友病者の治療において使用してもよい因
子VIII:Cさえインヒビター患者内に存在する。
本発明に従って生産されるタンパク質は、天然因子VIII:C分子の全て又は
一部と相同性を示す。
組換え工学による因子VIII:C活性を有する組換タンパク質の製造は、とり
わけ多くの出版物に開示されてきた。従って、ヨーロッパ特許出願第160457号お
よび国際特許出願WO 86/01961は、全長因子VIII:Cの製造を開示しており、そ
してヨーロッパ特許出願(EP)第150735号、国際特許出願WO 86/06101、ヨーロ
ッパ特許出願(EP)第232112号、国際特許出願WO 87/04187、国際特許出願WO 87
/07144、国際特許出願WO 88/00381、ヨーロッパ特許出願(EP)第251843号、ヨ
ーロッパ特許出願(EP)第253455号、米国特許第4,980,456号、ヨーロッパ特許
出願(EP)第294910号、ヨーロッパ特許出願(EP)第265778号、ヨーロッパ特許
出願(EP)第303540号、国際特許出願WO 91/07490および国際特許出願WO 91/091
22は、抗体阻害因子VIII:Cに対する結合親和性又は凝固薬活性を示す複合体
の生産のためのサブユニットの同時発現又は因子VIII:Cの短縮型一本鎖形も
しくはサブユニットの組換発現を開示する。
組換え全長ヒト因子VIII:Cの発現は通常低くそして分子はタンパク質分解
に起因して不安定である。
短縮型一本鎖形の形態にある因子VIII:Cの誘導体又は二本鎖を含んでなる
誘導体は、組換工学により成功裏に生産されてきた。これらの誘導体は全長因子
VIII:Cよりも高収率で発現されるけれども、発現のレベルを増加したい要求
が未だ存在する。
WO 87/04187およびEP 25/843には次のように開示されている;
すなわちフォンビルブラン因子(vWF)又はリン脂質の存在下、因子VIII:Cの
発現は因子VIII:Cの発現を増加させる。EP441695において、カチオン又はア
ニオンポリマー、好ましくは多糖類(これは硫酸塩化されたものが最も好ましい
)の存在下、因子VIII:C又はその類似体を発現することが開示されている。
他の添加剤の内で、ヘパリンが10〜80IU/mlの量で試験された。ヘパリンの添加
は、無血清培地と比較される如くEP303540において開示されるように、アミノ酸
771から1666までの欠失を有する因子VIIIデルタ2の発現に関し「極めて制限さ
れた効果ないし全く効果を示さない」。発現レベルはヘパリンの濃度の増加と共
にわずかに増加する。しかし、発現レベルは血清又はvWFの存在下、発現レベル
よりもはるかに低い。
発明の開示
本発明は、組換タンパク質を発現することのできる宿主細胞内で因子VIII:
C活性を有する組換タンパク質の増加せしめられた発現を行う方法に関し、この
方法は該タンパク質を発現するために10IU/ml未満の極めて低濃度でヘパリンを
含んでなる細胞増殖培地中で該宿主を培養することを含んでなる。
発明の詳細な記載
驚くべきことに次の内容が見出された;すなわち10IU未満のヘパリン/mlの少
量でヘパリンを添加すると、因子VIII:C活性を示す組換タンパク質の発現を
増加しそして50%以上の増加せしめられた収率に到る程度にまで生成物を安定化
させる。ヘパリンの安定化効果は、プロテアーゼによる92kDサブユニットの活性
化の観察された減少によって示される。本発明に係る、そのような添加は、血清
を
、好ましくは胎児の又は新生の子ウシの血清の形で含んでなる細胞増殖培地に並
びにリポタンパク質、vWF又はリン脂質又は改善される発現を得るため無血清培
地中で発現を増加させるために用いられる他の追加の成分を含んでなる無血清培
地中に行うことができる。
本発明方法で用いられるリポタンパク質は、例えばEP254076に記載される如き
リポタンパク質であってよい。そのようなリポタンパク質は商標EX-CYTEのもと
で商業的に入手可能である。リポタンパク質は又、卵黄から、例えばImmunologi
cal Communications 9 (5),475-493(1980)に記載される方法により単離で
きる。
本発明方法で用いられるリン脂質は、例えばWO/04187に記載される如きそのよ
うなリン脂質であってよい。
無血清培地中での発現を増加させるために用いられる他の追加の成分は、例え
ばリポタンパク質および脂質の存在しない黄卵分画であってよい。
本発明の好ましい面によれば、ヘパリンは0.5〜8IU/mlの濃度で添加され、1
〜2IU/mlの濃度が最も好ましい。
血清を含んでなる細胞増殖培地にヘパリンを添加することは、因子VIII:C
レベルの相当の増加を生ぜしめる本発明の好ましい面である。
血清並びに懸濁液中での発現に関し因子VIII:Cの極めて高レベルに高める
更に添加されるリン脂質を含んでなる細胞増殖培地にヘパリンを添加することは
、なお更に好ましい。
本発明の他の好ましい態様によれば、血液産生疾患の転移を引き起こすかもし
れない成分の添加を避けるため無血清細胞培地が用いられ、そのような培地には
リポタンパク質、フォンビルブラン因子、リン脂質又はこれらの2種又はそれ以
上の組合せが加えられる。
本発明のより好ましい面によれば、リポタンパク質およびヘパリ
ンが無血清培地に加えられる。好ましい態様において、約5%のリン脂質分画お
よび2IUのヘパリンが加えられ、発現せしめられた因子VIII:C活性の見地か
ら因子VIII:Cの非常に高い発現が生ぜしめられる。
本発明の別の好ましい面によれば、ヘパリンが因子VIII:Cの92kDおよび80
/77kDサブユニットの複合体を発現するために宿主細胞を培養するための増殖培
地に添加される。そのような培養に対し、ヘパリンは因子VIII:Cの個々のサ
ブユニットの発現レベルを増加させるのみならず、複合体形成の程度を増加させ
そして生産された複合体を安定化させそして従って、生成物の収率は凝固薬活性
を示す。
語句「Aドメイン」はMr92Kタンパク質サブユニット又は因子VIII:C重鎖(
FVIII−HC)を構成するヒト因子VIII:Cの部分を言う。Aドメインは約740個
から約760個のアミノ酸を含有し、そして天然のヒト因子VIII:CのN−末端で
見出される。Arg740-Ser741でのトロンビン開裂部位までの全配裂を有するN−
末端鎖は特に興味がある。
語句「Bドメイン」は、一般に細胞内開裂によって一般に除かれそしてヒトプ
ラスマ中でひどくグリコシル化されそしてC0S7,CHOおよびBHKの如き哺乳動物細
胞中で発現されたときひどくグリコシル化される天然ヒト因子VIII:Cの部分
を言う。BドメインはN末端配列を含有し、これはトロンビンによりBドメイン
からAドメインを開裂せしめる。Bドメインは又プロセシング部位を有し、これ
は哺乳細胞のゴルギ(golgi)装置内で酵素によりA−B前駆体からCドメイン
の開裂を許容する。
語句「Cドメイン」は全長タンパク質のC−末端を構成する天然ヒト因子VII
I:Cのその部分を言い、そして細胞内に開裂し因子V
III:C軽鎖(FVIII−LC)を形成する。軽鎖は因子VIII:CポリペプチドのC
−末端のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するであろうし、通常少
なくとも約80%、より通常には少なくとも90%の因子VIII:C Mr80K鎖を有し、
特にアミノ酸1640、好ましくはアミノ酸1649、(±10個のアミノ酸)から始まり
そして少なくとも約アミノ酸2300、通常2310、(±10個のアミノ酸)まで続き、
より好ましくは末端アミノ酸(2332)まで続く。通常、軽鎖は少なくとも約85%
、より通常は少なくとも95%のIII1−III2ドメイン、好ましくはI3−III1−III2
ドメインを有するであろう。
本発明で用いられる語句「共−発現」は、同じ宿主細胞内でAドメインポリペ
プチド(92K)およびCドメインポリペプチド(80K)の同時発現を言う。Aド
メインおよびCドメインをエンコードするポリヌクレオチド配列は、同じ又は異
なる発現カセット又はプラスミド上にあってよい。AドメインおよびCドメイン
の共−発現は適当な折りたたみを生ぜしめ、これは一方では活性および分泌の効
力を有するA−C複合体を与える。
本発明で用いられる語句「生産培地」は、宿主細胞を培養するために適当な如
何なる培地を言い、そして実際の細胞「増殖」が生じるかどうかにかゝわらず組
換生産物の発現を得るために適当な培地を含む。所望により、生産培地は又、本
発明の組換ポリペプチドの発現を誘発する化合物を含む。そのような誘発化合物
の選択は、発現を制御するために選ばれたプロモーターに依存する。他の典型的
添加剤には、選択化合物(すなわち、形質転換される宿主細胞のみが培地中で生
存することを確保するため培地に加えられる薬又は他の化学薬品)および血清、
例えば胎児の子ウシ血清(FBS)が含まれる。
語句「無血清培地」は、血清中に存在する必要な微量因子が血清
の形で添加される必要のないそのような程度に加えられている溶液を言う。無血
清培地は合成培地であってよく、動物組織又は体液から単離された成分を含まな
いでよい。商業的に入手可能な多くの適当な細胞増殖培地が存在する。
ヘパリンに関して本発明で用いられる如き語句「IU」は、ナショナル インス
ティチュート フォー バイオロジー アンド スタンダード アンド コント
ロール(ロンドン、英国)により作成されたヘパリンに対する第4標準(コード
−ラベル82/502)に対しての標準化により定義される。
本発明で用いられる語句「相同性」は、二つのポリヌクレオチド又は二つのポ
リペプチド間で同一又は実質的類似性を意味する。相同性は、ヌクレオチド又は
ポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのアミノ酸配列を基礎にして決定さ
れる。一般的用語では、通常10以下、より通常は5以下の数の%、好ましくは約
1以下の数の%の鎖中のアミノ酸が、因子VIII:C AおよびBドメイン中に
天然に存在するアミノ酸と異なるであろう。部分的には、約5%以下、より通常
では約1%以下が非保存性置換であろう。保存性置換は次のものが含まれる:
非保存性交換は、一般に異なる群からのアミノ酸で前記アミノ酸の一つの置換
(例えばGluの代りにAsnの置換)、又は前記アミノ酸のいずれかの代わりにCys
,Met,His、又はProを置換することである。
本発明に従って調製されるタンパク質の特異的活性は、以下に記載される如く
当業者に公知の方法により(例えば、商業的に入手可
能なコーテスト(Coatest)分析を用いることにより)測定できる。
構造遺伝子は、典型的にはシグナルペプチドをコードするリーダー配列を含み
、このシグナルペプチドはポリペプチドをプロセッシングおよび成熟のために小
胞体の内腔内に導く。所望により、プロペプチドをエンコードする追加の配列が
含まれ、このプロペプチドはエンドペプチダーゼにより後一ほん翻的に加工され
、一方エンドペプチダーゼはペプチド結合を開裂し、プロペプチドを除き成熟ポ
リペプチドを発生させる。シグナルペプチドは特にN−末端シグナルに対し天然
ものでよいか、又はポリペプチドのプロセッシングおよび成熟に対応して与える
如何なるシグナルペプチドであってもよい。
種々の哺乳動物細胞が用いられ、ここにおいて調節配列および複製系は機能的
である。そのような細胞にはC0S7細胞、中国ハムスター卵巣(CHO)細胞、マウ
ス腎臓細胞、ヘラ(Hela)細胞、HepG2細胞、等、例えばVERO細胞、w-138又MDC
K細胞が含まれる。
発現された生産物は、抗体、特にFVIII−LC又はFVIII−HCに向けられたモノク
ローナル抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィー法、クロマトグラフィー
法、例えばHPLC、電気泳動又は抽出を用いて精製できる。
主題の方法は、因子VIII:C活性を有する活性鎖(92Kおよび80K)の複合
体の生産を与える。生産は実験節において述べられる如き調整培地により立証さ
れ、これはコーテスト分析において少なくとも約1、通常少なくとも約5U/ml
、より通常は少なくとも約10U/mlの因子VIII:C活性を有するであろう。
本発明に従って生産された因子VIII:C活性を有するタンパク質は、血友病
者および血液凝固疾患を含む他の症状に悩む患者の治療に対して主に意図される
。主題のタンパク質は、生理学的に許容し
得る担体、例えば水、食塩水、ホスフェート緩衝化塩類液、およびシトレート緩
衝化塩類液中に約10−200 U/mlの範囲の濃度で投与することができる。
投与方法および量については、米国特許第3,631,018号;第3,651,530号、およ
び第4,069,216号を参照のこと。他の通常の添加剤も又含有してもよい。それら
の添加剤は抗体の生産のための免疫原として、アフィニティクロマトグラフィー
によるフォンブランド因子の単離に対しそして因子VIII:Cに対する診断分析
において多様の用途を有する。
図面の簡単な説明
本発明を図面を参照しつつ説明する。
図1は懸濁培養物中での因子VIII:C単位レベルに関してのヘパリンの効果
の力価を示す。
図2は因子VIII−HCに対するヘパリンの安定化効果を説明するゲルを示す。
以下に示す実施例は当業者に対し更にガイドとして与えられそして如何なる場
合も本発明を制限するものでない。
実験部
原料および方法
DAK(デンマーク)市販のヘパリンを全ての実験に対して行った。
リポタンパク質を卵黄から、分画リポタンパク質に富んでいる形で単離した。
分画は例6で詳しく説明されるように行った。メルク市販のPEG6000(カタログN
o.807491)を卵黄の分画に対して用いた。
卵黄の分画に対して用いたPBSを、脱イオン水に8.0gのNaCl,0.2gのKCl,1.
15gのNa2HPO4および0.2gのKH2PO4を溶解し、
1MのHCl/NaOHを加えることによりpHを7.3に調節し次いで脱イオン水を1lま
で加えることによって作成した。全ての化学薬品はメルク製であった。
例1
細胞系共−発現因子VIII:C重鎖および軽鎖を得ること移入−手順
DHFR CHO細胞系DG44 CG.ウララウブ等、Som Cell Mol Genet(1986)12:555-
566)にプラスミドpCMF8-80ATを先ず移入した:このプラスミドにおいて、CMVプ
ロモーター(WO 91/07490の例7において記載)はpSVF-8-80AT(WO 91/07490の
例6において記載)から由来するFVIII−LC cDNAを転写しそしてpAd-DHFR(WO 9
1/07490の例4に記載)から由来するAd-MLP/dhfrカセットが下流にある。用いら
れる移入方法は、W.チャニー等(Som Cell Mol Genet(1986)12:237-244)の
ポリブレン法であった。DHFR+細胞(DHER+10%DFCS)の選択により、幾つかのF
VIII−LC生産体を単離し;これらの1つは11Mと称した。
11W中にFVIII−HCを導入するため、細胞系をプラスミドpPR78(このプラスミ
ドはpCMVF8-80ATに対し類似体である、しかしFVIII−LCcDNAの代わりにWO 91/07
490の例8で記載されるpCMVF8-92R由来するFVIII−HC cDNAを有する)およびpSV
2-neo CP.J.サザーンおよびP.ベルク、J.Mol Appl Genet(1982)1 :327-341
)と同時移入した。用いた移入方法は、C.チェンおよびH.オカヤマ(Mol Cell B
lol(1987)1:2745-2752)の修正カルシウムホスフェート手順であった。トラ
ンスフェクタントを、1ml当たり700μgのゲネチシン(Geneticin)CG418スル
フェート、ギブコ)を含有する培地中で単離した。主プールからの細胞を制限希
釈法によりサブクローン化し次
いで個々のクローンを活性FVIIIに対する発現に対し試験した。この方法で幾
つかのFVIII:C生産細胞系を単離しそしてこれらの内の2つを「45」および
「57」をそれぞれ称した。
発現レベルを基礎にしてこの方法で選ばれた細胞を、ヘパリンの不存在下又は
種々の濃度のヘパリンの存在下、培養のためのT−フラスコ又はスピンナー内に
播種した。
WO 91/07490に言及されている移入の記載は、それぞれ寄託番号ATCC40222,AT
CC40223およびATCC40190のもとで寄託されたプラスミドpSVF8-92,pSVF8-80およ
びpSVF8-200に対する引用を含めて、それを引用することにより本明細書に加え
られる。
例2
細胞系共−発現因子VIII:C重鎖および軽鎖の培養
「45」共−発現因子VIII:C重鎖および軽鎖と称される細胞系を、DMEM+10
%透析子ウシ血清中細胞工業内で37℃の懸濁液中で常法により培養し、そして細
胞をトリプシン処理により集めそして110mg/lのNa−ピルベート、150mg/l
の1−プロリン、3.7g/lのNaCO3,1.4g/lのトリプトースホスフェート、
5mg/lのインシュリンそして56℃で30分間熱不活性化された2%NBSを加えたD
MEM(ギブコ074-90024T)中1ml当たり200万個の細胞濃度で100mlのTECHNEス
ピンナー中に再懸濁させた。培養物を27℃でインキュベートした。サンプルを9
日間にわたって採取した。種々の量のヘパリンを加えた。
ヘパリン効果の力価の結果を図1に示す。このタイプの培養物のヘパリンの最
適濃度は、1−2IU/mlであることが分かり、ここでは発現せしめられた因子V
III:Cのレベルの50%だけの増加が見られる。ヘパリンの効果は、5および10I
U/mlの濃度においては明らかにより少なく現われる。
例3
「57」共−発現因子VIII:C重鎖および軽鎖と称される単離された細胞系をD
MEM+10%透析子ウシ血清中t−フラスコ中常法によりコンフルエンスまでに培
養した。コンフルエントなt−フラスコを例2におけると同じ培地に移し、そし
てヘパリンの存在および不存在下、同温度でインキュベートした。培養物に3日
の間隔で新しい培地を供給した。培地の交換の前にFVIII分析に対しサンプルを
採取した。
表1は、ヘパリンが低濃度(2IU/ml)で添加されたとき、t−フラスコ培養
物から得られる増加せしめられたFVIII:Cレベルを示す。増加は、ヘパリンの
存在下培養時間の関数として、ヘパリン添加なしの対照のFVIIIレベルの113%か
ら138%までのレベルに対する。
例4
「45」および「57」共−発現因子VIII−C重鎖および軽鎖と称される単離さ
れた細胞系を、ヘパリンの存在および不存在下、先に説明したように懸濁液中で
培養した。
例3と比較して、FVIIIレベルの増加は細胞を懸濁液中で培養する
ときよりもより顕著である。表2および表3から明らかなように、ヘパリンの添
加によりもたらされるFVIIIレベルの増加は、ヘパリンが添加されていない対照
の120ないし193%である。
表2および表3は又次の内容を示している;すなわち因子VIII:Cレベルの
増加は、ヘパリンの存在下での共−発現の場合、因子VIII:LCおよび因子VIII
:HCの増加せしめられた発現を超えている。
例5
因子VIII:C重鎖および因子VIII:C軽鎖の共発現中、因子VIII:C重鎖
に関するヘパリンの安定化効果
3.5cmの皿に、次の培地:DMEM+2%NCS+5mg/lのインシュリン+1.4g/
lのトリプトースホスフェート(TP)中および2U/mlのヘパリンが添加された
同じ培地中に細胞系「45」を播種しコンフルエンシーとした。37℃で一夜インキ
ュベーションした後、皿を適合のため27℃で5日間インキュベートした。2回洗
浄後、各皿を次のメチオニンが存在しない培地中20時間80μCi35S−メチオニン
で標識した:
1.DMEM+2% NCS+5mg/l インシュリン+1.4g/l TP
2.DMEM+2% NCS+5mg/l インシュリン+1.4g/l
TP+2 IU/mlヘパリン。
標識期間後、ヒトFVIIIに対する犬ポリクロナール抗血清を用いた免疫沈殿に
対して集め;この抗血清はサブユニットの複合体および
フリーのFVIIIの重鎖および軽鎖の双方と結合する。沈殿した試料を10% SDSゲ
ル上に載せる。得られた照射物を図2に示す。92kD HCおよび80kD LCダブレット
が全てのレーン内に見られる。レーン1およびレーン2を比較すると、次の内容
がわかる;すなわち、HCから由来する50/43kD帯の量は、レーン2におけるより
もレーン1においてはるかにより顕著であり、ヘパリンが重鎖の活性化開裂を抑
圧したことを示しており、そして従ってサブユニット−複合体のより大きな分画
が92kDサブユニットおよび80kDサブユニットのより安定な複合体として見出され
る。
例6
ヘパリンおよびリポタンパク質を含有する無血清培地中、T−フラスコ培養物
中の因子VIII:Cの増加収率卵黄リポタンパク質分画の調製
100mlの卵黄と200mlのPBSを30分間攪拌した。PEG6000を3.5%まで加え、60分
間攪拌し次いで3000RPMで30分間遠心分離した。
沈降物を200mlのPBSに溶解し、30分間攪拌し次いで10,000RPMで20分間回転さ
せた。
沈降物を200mlの1M NaClに再溶解し次いで40℃で一夜攪拌した。次いで、混
合物を10,000RPMで20分間遠心分離しそして上澄みを0.2μ孔径フィルターを通し
て濾過することにより殺菌した。
リポタンパク質分画を下記の培養において用いた。
「57」共一発現因子VIII:C重鎖および因子VIII:C軽鎖と称される細胞系
を血清含有培地中、T−80フラスコ内で培養した。コンフルエンシーに達した後
、細胞は3日間生産状態に適合していた。生産培地および条件は例3に記載した
、但し血清の添加はなくそして基礎培地はDMEM/F-12であった。リポタンパク質
を含有する卵黄分画の5%添加を単独で並びに1,2および5IUヘパリンと共に
試
験し、そして比較のためリポタンパク質を有しない同じ培地を、1,2および5
IUヘパリンを用いて試験した。リポタンパク質およびヘパリンを有しない無血清
培地を対照として用いた。培地を交換しそして試料を2日および4日目に採取し
そしてFVIII:C(coa)活性に関して分析した。
リポタンパク質(卵黄分画)を含有する試料において、FVIII:C活性は1IU
/mlのヘパリンを添加すると60−70%,2IU/mlを添加すると80−100%そして
5IU/mlを添加すると6−32%増加する。ヘパリン単独の添加は、FVIII:C活
性を増加しなかった。従って、リポタンパク質とヘパリンの添加の組合された効
果は、2種の別個の成分の添加剤効果よりもより高い。
例7
ヘパリン並びにリポタンパク質を有しない卵黄分画を含有する無血清培地中、
T−フラスコ培養物内での因子VIII:Cの増加収率リポタンパク質を有しない卵黄タンパク質分画の調製
100mlの卵黄および200mlのPBSを30分間攪拌した。PEG6000を3.5%まで加え、6
0分間攪拌しそして3000RPMで30分間遠心分離した。
上澄みはリポタンパク質を有しない卵黄タンパク質分画(SUP 0)である。
このタンパク質分画を以下の培養において用いた。
「57」共−発現因子VIII:C重鎖および因子VIII:C軽鎖と称される細胞系
を血清含有培地中、T−80フラスコ内で培養した。コンフルエンシーに達した後
、細胞を3日間生産条件に適合させた。生産培地および条件は例3に記載した、
但し血清の添加はなくそして基礎培地はDMEM/F-12であった。卵黄タンパク質分
画の5%添加を単独でおよび1,5および10IUヘパリンと共に試験した。培地を
交換しそして試料を2日および4日目に採取しそしてFVIII:C(coa)活性に関
して分析した。
SUP 0を含有する試料において、ヘパリンを添加するとFVIII:C活性は著るし
く増加し、増加したレベルの因子VIII:C活性を与えた。この効果は10IUほど
のヘパリンを添加するとき減少する。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年12月14日
【補正内容】
請求の範囲
1.組換タンパク質を発現することのできる宿主細胞内で因子VIII:C活性
を有する組換タンパク質のレベルを増加する方法であって、該タンパク質を発現
するために10IU/ml未満の濃度でヘパリンを含んでなる細胞増殖培地中で該宿主
を培養することを含んでなる、前記方法。
2.ヘパリンの濃度が0.5〜8IU/mlである、請求の範囲第1項記載の方法。
3.ヘパリンの濃度が1〜2IU/mlである、請求の範囲第2項記載の方法。
4.細胞増殖培地が血清を含んでなる、請求の範囲第1〜3項のいずれか1項
に記載の方法。
5.細胞増殖培地がリポタンパク質を含んでなる、請求の範囲第4項記載の方
法。
6.細胞増殖培地が、リポタンパク質、フォン・ビルブラント因子又はリン脂
質、又はこれらの2つ又はそれ以上の組合せを加えられた無血清培地である、請
求の範囲第1〜3項のいずれか1項に記載の方法。
7.増殖培地がリポタンパク質を加えられた無血清培地である、請求の範囲第
6項記載の方法。
8.生産される因子VIII:C活性を有するタンパク質が、因子VIII:Cの92
kDおよび80/77kDサブユニットの複合体である、請求の範囲第1〜7項のいずれ
か1項に記載の方法。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),AU,BG,BR,BY,C
A,CZ,FI,HU,JP,KP,KR,NO,NZ
,PL,RO,RU,SK,UA