JPH083010A - 植物の遺伝子発現を調節する制御剤 - Google Patents

植物の遺伝子発現を調節する制御剤

Info

Publication number
JPH083010A
JPH083010A JP6163231A JP16323194A JPH083010A JP H083010 A JPH083010 A JP H083010A JP 6163231 A JP6163231 A JP 6163231A JP 16323194 A JP16323194 A JP 16323194A JP H083010 A JPH083010 A JP H083010A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molecular weight
plant
gene expression
low molecular
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP6163231A
Other languages
English (en)
Inventor
Tadamoro Inoue
唯師 井上
Tetsuzo Tsujimura
鉄蔵 辻村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyowa Technos Co Ltd
Original Assignee
Kyowa Technos Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyowa Technos Co Ltd filed Critical Kyowa Technos Co Ltd
Priority to JP6163231A priority Critical patent/JPH083010A/ja
Publication of JPH083010A publication Critical patent/JPH083010A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 花の開花遺伝子を調節して、開花速度を制御
するとか、花の色素遺伝子を調節して花の色の変化を制
御するとか、ランナ−増殖の獲得性遺伝子を調節して株
の分化増殖のみに制御するとか植物の種々の遺伝子発現
を調節する制御剤を提供する。 【構成】 分子量が800〜30,000に調節された
低分子量化キトサン、キトオリゴ糖及び2,5ーアンヒ
ドローDーマンノースで構成される水溶性ヘテロ糖から
なり、これを目的の植物に施用して種々の遺伝子発現を
調節することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物の遺伝子発現を調
節する制御剤に関する。詳しくは、バラの花の開花遺伝
子を調節して開花速度を制御するとか、えびねの花の色
素遺伝子を調節して花の色の変化を制御するとか、いち
ごや折り鶴ランなどはランナーにより増殖するが、この
植物が獲得した獲得性遺伝子を調節して株の分化増殖の
みに制御するとか、ほうれん草など種子形成の遺伝子を
調節して結実をおくらせるとか、さといもなどの根菜類
及び花弁類の球根の分裂分化を誘導するなど植物の遺伝
子発現を調節する制御剤に関する。
【0002】
【従来の技術】節足動物の外殻を構成するキチン質はセ
ルロ−スによく似た直鎖状の高分子で、ムコ多糖とも呼
ばれる。キチン質を濃アルカリで加熱処理することによ
り、脱アセチル化するとキトサンが得られる。即ち、キ
トサンはキチン分子を構成するNーアセチルグルコサミ
ン分子からアセチル基が外れたものである。これらの処
理により、市販されているキチン、キトサンは、分子量
が約30万から15万あたりで、凝集剤として、また、
希酸により溶解させたものは肥料及び植物活性剤などの
名称で販売されている。
【0003】酵素分解によるキチン、キトサンのオリゴ
糖も肥料及び抗菌剤として販売されている。これらの高
分子素材は希酸に溶解はしているが、アルカリ性側のp
H7.2あたりにすると白色沈降して高分子体となり確
認される。しかしこれらの素材はpH3〜5程度である
ので長い間に徐々に分子末端よりランダムに分解し、植
物の成育に寄与する場合もある。別に酵素によりオリゴ
糖に分解されたもので、活性剤として使用される素材は
酵素により酵素産生分泌由来の微生物が混在して存在し
ているので、外気温度により酵素が活性化して、キチ
ン、キトサンが分子末端よりの分解系により2糖若しく
はモノマーとなり、呈色反応は目視されるが、有効な物
質としてのキチン、キトサンがなくなるところから、最
近ではpH3あたりとして微生物の活性化を抑制制御さ
せ、これらのpHに耐えうるために高分子量のキチン、
キトサンを混合して成分量の調節をしたものが市販され
ている。
【0004】しかし、植物に施用された場合、植物の種
により相違するが、およそ分子量7、000あたりが植
物生体内に取り込まれ、植物細胞膜を透過可能な分子量
は4、000前後のものが放射線ラベルで確認されてい
る。
【0005】これらのキチン、キトサンの関連素材で一
番問題であるのは効果が安定していないことである。そ
の最大の原因となるものはキチン、キトサンの分子環構
造が水素結合しており、強固な構造であることによる。
酵素分解の場合、微生物由来の酵素はキチン、キトサン
の構成分子の末端単位2糖もしくはせいぜい30糖あた
りの単位で分解し、この分解された糖も最終的には2糖
の単位にまで分解され生体代謝物として利用される。
【0006】これらのことは動植物、微生物もそれぞれ
生体内で利用される糖質としては、炭素源または糖鎖の
必要構成単位で生体内で利用されるものとみられる。全
ての生物が利用可能な単位としては2糖単位の大きさで
あり、現在までグルカナーゼ、リゾチーム、キチナー
ゼ、キトサナアーゼなどの加水分解酵素が色々な微生
物、動物から発見されている。
【0007】また、土壌中に生息する微生物の量の多
少、施用する動植物の種、施用条件、施用濃度、土壌の
成分等自然の物質であるので他の環境条件、化合物の形
成により効果が左右されやすいことはいがめられない。
【0008】最近は、これらに加えて大気中や地下水
系、産業や生活排水に含まれる無機、有機物質の量とそ
の多様性も考慮して考える必要がある。これら自然界の
物質は他の物質と有機的、無機的に色々な化学的結合を
して化合物と成っている。この化合物を正常な個々の物
質に解離して生物が活用できるようなものとするために
は、カチオンに荷電したキチン、キトサンを低分子量化
して水、酸、アルカリ性の水系に溶解する分子量に制御
したり、荷電量を制御したりして、分離、錯体、結合さ
せる方法が提案されている。
【0009】特開平3ー297305号公報にはもみを
分子量3,000以上30,000以下からなる低分子
量キトサンの水溶液に浸漬することによって稲丈が短く
倒伏の少ない稲を作ることが開示され、特開平4ー69
305号公報には低分子量キトサンの水溶液を芝生に散
布して「春はげ症」を改善することが開示されている。
特開平4ー210589号公報には分子量1、500以
上30,000以下の低分子量キトサンを植物カルス培
養に使用して微生物汚染を低減すると共に細胞外に有用
成分を生成させることが開示されている。また特開平5
ー65368号公報には分子量500〜30,000で
分子末端に2、5アンヒドローDーマンノースを一分子
以上持つ低分子量キトサン及びキトオリゴ糖からなる低
分子量キトサンとカルシウム元素含有無機物質を主成分
とする植物機能調節用組成物が開示されている。
【0010】植物の場合は外来の異物に対して、自己の
過去からの経験を基礎とする物質に依存対応するので、
新規の外来異物や人為的な物質に対応する物質生産が遅
れて対応することが出来ない場合が多い。また長期間の
施用は植物ストレスの誘因となり植物の細胞死につなが
る恐れがある。植物の防御機構及び防衛物質として疏水
性「ろう物質」が外界に面した葉にあり、人為的に施用
する物質が摂取されにくい。特開平5ー65368号公
報等に開示されている低分子量キトサンは、カルシウム
元素含有無機物質と併用することにより、これを使った
人為的に施用する物質が植物生体内で摂取され、酵素活
性の誘導作用に有効的に働くというものである。
【0011】これらの物質は植物に散布することによっ
て、植物の構成物質間を透過し、生体内物質間及び細胞
内オルガネラに働き、荷電を制御し、生体内標的細胞へ
の結合と代謝系促進や、遺伝子発現の制御、調節を行う
ものと見られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】近年、植物の生体生理
機能を活性化する薬物の生体内輸送において、種々の担
体が開発されているが、植物はそれ自体生体内に分解系
を持っているので、それによって薬物の効果が半減する
ということが報告されている。その為に薬物を施用する
とき、低濃度では効果が少なく、また、過剰な薬物の施
用もできないという問題がある。本発明は、この点を踏
まえて植物の遺伝子発現を調節する制御剤を提供するこ
とにある。具体的には、植物の花の開花をつかさどる開
花遺伝子発現、植物の花の色をつかさどる色素遺伝子発
現、植物のランナーのように植物が獲得した獲得性遺伝
子発現、及び種子などの形成をつかさどる形成遺伝子発
現など植物の形態、形成の遺伝子発現等植物の遺伝子発
現を調節する制御剤に関する。例えば、バラの花の開花
遺伝子を調節して開花速度が制御することができれば、
園芸用切り花としてのバラの老化速度を遅くすることが
できるので、切り花の市場価格の安定化につながること
が期待される。また、ラン科植物のえびねの花の色素遺
伝子を調節して花の色を変化させて観賞を楽しむとか、
また、いちごや折り鶴ランなどはランナーにより増殖す
るが、このランナーによる分化は余分な手間と肥料がか
かる。この植物が獲得した増殖能力の獲得性遺伝子を調
節することにより、ランナーによる分化を抑制して株の
分化増殖のみに制御することができれば、植物工場の水
耕栽培用植物として活用ができる。また、ほうれん草な
ど比較的短期間に植物が種子の結実のために“とう”が
形成されるために出荷の期間が制限されるという制約が
ある。その為、この種子形成の遺伝子を調節して種子の
結実をおくらせることができれば、種子の結実までの期
間を調節することができる。また、さといもなどの根菜
類及び花弁類の球根の分裂分化を誘導するなど、種々の
植物の形態、形成の遺伝子発現を調節することによっ
て、産業発展に寄与する素材を提供することを目的とし
ている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、及
び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とする
水溶性ヘテロ糖からなり、これを所定の濃度、pHに調
整した液状または粉状にして、目的とする植物の葉面、
茎、根部や土壌に散布、塗布、または含浸させることに
より、植物の形態、形成の遺伝子発現を調節することに
ある。
【0014】また、本発明に使用する低分子量化キトサ
ンの分子量が800〜30,000に調整されて水に溶
解することを特徴とする。
【0015】また、本発明は、低分子量化キトサンの分
子環のC−2位の第一級アミノ基を酢酸ソーダ等有機
酸、無機酸の塩類によってブロックされてなる塩基性低
分子量化キトサンであることを特徴とする。
【0016】また、低分子量化キトサンの分子環のC−
2位の第一級アミノ基にラジカル活性を持たせた、酸、
アルカリ、水に溶解可能で、アルコールに不容な液状ま
たは粉体物であることを特徴とする。
【0017】また、本発明に使用する低分子量化キトサ
ン、キトオリゴ糖、及び2,5ーアンヒドローDーマン
ノースを主成分とする水溶性ヘテロ糖の濃度を有機酸、
無機酸、タンパク質など任意に混合する水溶液に対して
1〜1,000ppm重量濃度の範囲とすることを特徴
とする。
【0018】さらに、低分子量化キトサン、キトオリゴ
糖、及び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分
とする水溶性ヘテロ糖の水溶液のpH3〜9であること
を特徴とする。
【0019】以上の手段を更に詳述すると、本発明によ
れば、キトサンの分子量を低分子化して、分子量800
〜30,000の低分子量キトサン、好ましくは、80
0〜10,000の低分子量キトサン、分子鎖が切断さ
れて低分子化したキトサンオリゴ糖(以下キトオリゴ糖
という)、糖鎖の末端の分子環の2位と5位の間が縮合
した無水糖と呼ばれる2、5ーアンヒドローDーマンノ
ースを主成分とする水溶性ヘテロ糖(以下ヘテロ糖とい
う)は、水、酸性、アルカリ性に溶解でき、その濃度を
1〜1,000ppm重量濃度、好ましくは100〜5
00ppm重量濃度の液状または粉状にして、植物に対
してpH3〜9の任意のpH条件として、目的とする植
物の葉面、茎、根部や土壌に散布、塗布または含浸させ
植物の形態、形成の遺伝子発現を調節することにある。
この水溶性ヘテロ糖の平均分子量が7,000以下のも
のは植物細胞壁の透過が可能で、平均分子量が4,00
0以下のものは植物細胞膜を透過し、細胞内に固定化し
て、植物の生体生理の遺伝子発現をより効果的に制御す
ることができるのである。
【0020】このヘテロ糖の製造法は化学的な方法、微
生物学的な方法いずれの方法でもよいが、例えば、特願
平5−116301号、特開平2ー41301号公報及
び特開平5ー65302号公報によって得られる。
【0021】本発明のヘテロ糖は前述のように水、酸
性、アルカリ性の溶液に溶解し、通常、植物に対してホ
ウレンソウなど特殊な成育を行う植物以外では評価され
ないpH7.5あたりの弱アルカリでも、他の酸性生育
植物の生体内への摂取が確認されている。この場合は施
用方法に当り環境条件を考慮する必要があるが、当該ヘ
テロ糖はアルカリ側より酸性側への移行に対して、土壌
中の酸性条件程度では植物生体に馴染みやすいpH(p
H5.6)にはならない。この事は低分子量化キトサン
のアミノ基を酢酸ソーダでブロックしているので、植物
の生体内の生体生理で解離させること以外では、植物の
根部より産生分泌される酢酸、酪酸、その他有機酸類及
び生体内の生体生理で解離させることにより、酢酸はカ
ルボン酸を経てグルタル酸に変換されTCA回路に入
り、植物に利用され、微量な塩は生体生理シグナル物質
として、細胞膜のカリウムチャンネルをカリウムととも
に細胞内のイオン濃度に働く。
【0022】しかし、植物内で確認される低分子量キト
サンは細胞膜内に存在が確認されるので、膜透過のプロ
セスについては、分子環に構成されるアミノ基のブロッ
クに結合している有機酸、無機酸の塩類と植物の代謝系
由来の生体酸の置換反応系が行われると考えられる。こ
の事が細胞膜の浸透圧の変化やプロトン放出、カルシュ
ウムの取り込みなど生体生理と関連して能動的に細胞膜
透過に働くのではないかと考えられる。
【0023】植物の細胞膜は、全体としてはpH7.6
あたりで細胞外シグナルによりpH7.2となり、シグ
ナル物質により徐々にpH7.5あたりに戻ることが知
られており、細胞膜の至的pHは弱アルカリ側にあるこ
とも代謝生理を考える上で重要である。
【0024】いちご、折り鶴ラン、すいか、かぼちゃな
どの植物はランナーにより増殖するが、この植物に本発
明のヘテロ糖をpH7で、施用濃度100〜1、000
ppmの溶液にして、土壌散布することにより、植物が
獲得した増殖能力を株の分化増殖のみとした遺伝子発現
の制御を行うことができる。そうすることにより、野菜
工場用の植物の場合、ランナーによる分化は余分な手間
がかかるが、この手間と肥料の節約になり、例えば、い
ちごの場合は、栽培期間が長くなり生産者の利益につな
がるのである。また、このようないちごは園芸用の花卉
と同じ観点から市場の開発にもつなげることも可能とな
る。
【0025】ほうれん草、レタスなどは本発明のヘテロ
糖をpH7で、施用濃度100〜1、000ppmの溶
液にして、土壌散布することにより、比較的栽培期間が
短いとされる“とう”が形成されるのを制御することが
できる。
【0026】また、和産ラン科植物のえびねの花の色を
変化させること、また、草丈が高く、花が過ぎると葉が
著しく劣化して見苦しいので矮化させること、更にラン
科植物は全般に花柄が長く、園芸業者としては、現在の
花柄を30%程度短くすることが求められていること
等、これらの植物に対して、本発明のヘテロ糖をpH7
で、施用濃度100〜500ppmの溶液にして、土壌
散布することにより、これらの遺伝子発現を誘導して制
御することができる。
【0027】また、園芸用切り花としてバラは老化速度
が早く、このバラの開花速度の制御ができれば市場価格
の安定化につながるので、花の開花遺伝子の発現を調節
するために、本発明のヘテロ糖をpH7に調節して、施
用濃度1〜500ppmの溶液中に、バラの切り口を約
10分間浸漬することにより、バラの開花速度が制御で
きる。ヘテロ糖の濃度を変えることにより開花速度の調
節が可能となる。
【0028】低分子量キトサンでその分子環のCー2位
の第一級アミノ基を酢酸ソーダ等有機酸、無機酸の塩類
によって塩基性低分子量化キトサンにしたもの及びアミ
ノ基にラジカル活性を持たせたものを使用することによ
り、植物への固定、透過性がさらに向上でき、植物の遺
伝子発現を誘導するにあたり有利である。
【0029】
【作用】上記のように構成されたヘテロ糖、即ち分子量
800〜30、000の低分子量化キトサン、キトオリ
ゴ糖、及び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成
分とするヘテロ糖はその作用機序及び使用技術について
未開発の点が多く、特に生体内での挙動については未解
明のことが多い。また、植物の新機能作出機序について
は、キトサンの分子量を水に溶解可能な分子量とし、酸
性、アルカリ性の溶液においても析出沈降しないものに
分子量を制御した低分子量キトサンによって誘導される
ことは、以下のような当該ヘテロ糖の特異的な作用機序
により誘導されるのではないかと考えられる。
【0030】キトサンはカチオン系糖質で、等電点はp
H8.5あたりに存在しており、分子構造もCー2位に
反応性の強い、カチオンに荷電した第一級のアミノ基、
Cー3位にヒドロキシル基、Cー5位にヒドロキシル基
を持っているが、更に、化学的な薬剤処理により脱アセ
チル化されたキトサンは分子鎖の末端部位に脱水縮合し
た2、5ーアンヒドローDーマンノースが存在する。こ
れらキトサンの分子量の分布、分子の大きさ、分子内荷
電を制御し、標的作用部位に併せ、施用濃度、施用量、
施用方法、施用時期、細胞周期、他の有機、無機物質と
の分子設計により、それぞれ相違した作用機序と作用効
果がみられる。2、5ーアンヒドローDーマンノースを
構成している環の炭素鎖に結合するヒドロキシル基は安
定した強固な結合であり、炭素鎖とカルボキシル基の結
合より結合強度が安定している。このような構造は、ス
トレプトマイシンに代表される黴類由来の抗生物質の母
核構造に多く見られ、特に低分子量化したキトサンはC
ー2位にアミノ基を持ち、カナマイシン類と同じ分子環
のβ位にアミノ基が存在した類似の構造を持ち、動物細
胞の16SリボソームRNAに働き、リボソームの翻訳
を特異的に阻害すると報告されている。またリボソーム
は、その働きの一つとして知られている遺伝子鎖イント
ロンの5´側のエキソンの切離しに働くグアノシンに働
き、イントロンのスブライシングを阻害することも報告
されているので、低分子量化したキトサンは16Sリボ
ソームRNAの高次構造の認識に働くことが考えられ
る。これらの事が二本鎖遺伝子の遅行鎖の誤認を高めた
り、作用点の位置の移動に働きミュウテーションを誘導
するものと思われる。
【0031】また、ヘテロ糖は細胞膜のバアースト発生
がなく、細胞膜に対して親和性があることが確認され、
低分子量キトサンの分子構造及び分子鎖の切断面と目的
とする細胞間の物質構造認識に、低分子量キトサンの分
子内荷電が重要な構造認識の条件として存在しているこ
とを示唆するものである。
【0032】低分子量キトサンが植物遺伝子のストレス
タンパク質として生体内シグナルへ働くことも考えら
れ、この場合はパル遺伝子が調節遺伝子に優先して発現
するので、花の色やランナーの分化が抑制されたり、変
化したりするのではないかと思われる。また、ストレス
による変性タンパク質は、細胞質に存在するシャペロニ
ンにより再構築されることも知られているが、この再構
築が試験開始後4年を経過しても行われないので、実際
は、一種のミュウテーションではないかと考えられる。
【0033】例えば、ヘテロ糖1%の水溶液を山に自生
している「漆の木」に平成4年6月20日に300ml
土壌散布したところ、6月28日季節を間違えて紅葉を
して、落葉し、約1カ月後の7月29日には、芽吹きを
して新芽が発生した。同年8月1日には時ならぬ新緑と
なった。このことは樹木の謎の一つとされる紅葉のプロ
セスに迫る樹木の生理的変化に、低分子量キトサンのヘ
テロ糖が何等かに関与するのではないかと示唆される。
【0034】低分子量キトサンがバラの場合の開花に働
く場合は、その濃度により開花遺伝子に抑制的に働き、
また、サトイモ、ジャガイモ等の根菜類、ユリ、グロリ
オサ等の球根類、スパテイフローなどの植物に対して
は、地下部の分化に促進的に働き、葉の進化した花弁を
増やすので、植物個体に対して特異的な作用をするもの
と考えられる。
【0035】
【実施例】
実施例1 いちごは毎年3月上旬に施用する。分子量が800〜3
0,000の低分子量キトサン及びキトオリゴ糖、2、
5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とするヘテロ
糖を水に対して100ppmの濃度に溶解し、pH7と
した溶液を、1株あたり50ml程度、葉面散布若しく
は根部に土壌散布することにより、ランナーの分化を停
止して個体株分化のみとなるので容易に確認できる。い
ちごは施用後3年間は、移植などによる刺激によりラン
ナー分化がしやすく、安定的な成育栽培が必要であり、
3年目より種子の回収に務め、種子による植物体の形成
の確認をする。
【0036】ランナ−を抑制したいちごの果実より採取
した種子の育種によるランナ−分化阻害の割合をみる
と、ランナ−を抑制したいちご種子数各々50粒を育種
し、育種後2年目の種子によるランナ−を作らないいち
ごは35粒であった。ランナ−分化阻害率は70%であ
った。育種後3年目の種子によるランナ−分化阻害率は
60%、育種後4年目の種子によるランナ−阻害率は9
0%であった。
【0037】実施例2 折り鶴ランは毎年3月の頃に施用する。分子量が800
〜30,000の低分子量キトサン及びキトオリゴ糖、
2、5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とするヘ
テロ糖を水に対して100ppmの濃度に溶解し、pH
7とした溶液を、1株あたり20ml程度、葉面散布若
しくは根部に土壌散布することにより、ランナーの分化
を抑制することができる。これにより、折り鶴ランは縦
の生育となり、根部が発達して地上部に立脚するので、
植物の進化の研究に役立つことができる。
【0038】実施例3 和産ラン科植物えびねは、毎年2月下旬に施用する。分
子量が800〜30,000の低分子量キトサン及びキ
トオリゴ糖、2、5ーアンヒドローDーマンノースを主
成分とするヘテロ糖を水に対して200ppmの濃度に
溶解し、pH7とした溶液を、1m2あたり500ml
程度、根部に土壌灌注する。
【0039】最初の年に発が成育したえびねの50%は
ピンクから黄色の花弁をつける。これらの作出した植物
個体をスクリーニングして移植し、翌年はこれらの植物
体の30%が矮化して草丈約50%程度の植物体とな
る。花の色はピンク色から黄色となり、更に黄色の斑入
りの花が作出される。これらの花は更に2年間安定栽培
し、遺伝子の安定化を図る。
【0040】実施例4 バラは毎年3月頃に施用する。分子量が800〜30,
000の低分子量キトサン及びキトオリゴ糖、2、5ー
アンヒドローDーマンノースを主成分とするヘテロ糖を
水に対して1〜500ppmの濃度に溶解し、pH7と
した溶液を、バラの頂芽及び葉面、切り花の切り口へ散
布、塗布または含浸させる。200ppmで緩やかに開
花をし、500ppmでは開花しなかった。バラの開花
に対してヘテロ糖は抑制的に働くことが観察された。
【0041】実施例5 さといもの花弁や球根に対して、分子量が800〜3
0,000の低分子量キトサン及びキトオリゴ糖、2、
5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とするヘテロ
糖を水に対して300ppmの濃度に溶解し、pH7と
した溶液を、1株あたり100ml程度、根部に土壌散
布することにより、強く分裂分化することが観察され
た。
【0042】実施例6 キンセンカの幼苗に対して、分子量が800〜30,0
00の低分子量キトサン及びキトオリゴ糖、2、5ーア
ンヒドローDーマンノースを主成分とするヘテロ糖を水
に対して100ppmの濃度に溶解し、pH7とした溶
液を、1m2あたり100ml程度、根部に土壌灌注す
る。キンセンカは開花後、萼が花柄となり進化してそれ
ぞれ花となる。しかし、この場合のキンセンカには種子
は形成されない。
【0043】
【発明の効果】本発明、低分子量化キトサン、キトオリ
ゴ糖、及び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成
分とする水溶性ヘテロ糖からなり、これを所定の濃度、
pHを調整して、液状または粉状にして、目的とする植
物の葉面、茎、根部や土壌に散布、塗布、または含浸さ
せることにより、植物の形態、形成の遺伝子発現を調節
することが可能である。即ち、本発明によって、植物の
花の開花をつかさどる開花遺伝子発現、植物の花の色を
つかさどる色素遺伝子発現、植物のランナーのように植
物が獲得した獲得性遺伝子発現、及び種子などの形成を
つかさどる形成遺伝子発現など、植物の種々の形態、形
成の遺伝子発現を調節して、制御することができる。例
えば、バラの花の開花遺伝子を調節して開花速度を制御
することにより、園芸用切り花としてのバラの老化速度
を遅くすることができるので、切り花の市場価格の安定
化につながることが期待できる。また、ラン科植物のえ
びねの花の色素遺伝子を調節して、花の色を変化させて
観賞を楽しむとか、また、いちごや折り鶴ランなどこの
植物が獲得した増殖能力の獲得性遺伝子であるランナー
による分化を抑制して、株の分化増殖のみに制御するこ
とにより、このランナーによる分化作業にかかる余分な
手間と肥料を省くことができるので、植物工場の水耕栽
培用植物として活用ができる。また、ほうれん草など比
較的栽培期間の短い植物が種子を結実する“とう”が形
成されるために、出荷の期間が制限されるという制約が
あるが、種子の結実期間を調節することにより、この点
が解消される。また、さといもなどの花弁及び根菜類の
分裂分化を誘導するなど植物の形態、形成の遺伝子発現
を調節することによって、産業発展に寄与する素材を提
供することができる。
【0044】更に、本発明のヘテロ糖を構成する低分子
量キトサン及びキトオリゴ糖、2、5ーアンヒドローD
ーマンノースの分子設計により、無機金属、有機金属、
半金属類、タンパク質、糖質、脂質、有機酸、無機酸を
組合せて、錯体若しくは結合させることにより、菌類増
殖抑制、静菌に働く化合物の作出も考えられる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、及
    び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とする
    水溶性ヘテロ糖からなり、植物の遺伝子発現を調節する
    ことを特徴とする植物の遺伝子発現を調節する制御剤。
  2. 【請求項2】 低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、及
    び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とする
    水溶性ヘテロ糖からなり、植物の開花の遺伝子発現を調
    節することを特徴とする植物の遺伝子発現を調節する制
    御剤。
  3. 【請求項3】 低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、及
    び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とする
    水溶性ヘテロ糖からなり、植物の花の色素の遺伝子発現
    を調節することを特徴とする植物の遺伝子発現を調節す
    る制御剤。
  4. 【請求項4】 低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、及
    び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とする
    水溶性ヘテロ糖からなり、植物の獲得性の遺伝子発現を
    調節することを特徴とする植物の遺伝子発現を調節する
    制御剤。
  5. 【請求項5】 低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、及
    び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とする
    水溶性ヘテロ糖からなり、植物の種子形成の遺伝子発現
    を調節することを特徴とする植物の遺伝子発現を調節す
    る制御剤。
  6. 【請求項6】 低分子量化キトサンの分子量が800〜
    30,000に調節されてなることを特徴とする請求項
    1、2、3、4、5記載の植物の遺伝子発現を調節する
    制御剤。
  7. 【請求項7】 低分子量化キトサンの分子環のC−2位
    の第一級アミノ基を酢酸ソーダ等有機酸、無機酸の塩類
    によってブロックされてなる塩基性低分子量化キトサン
    であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5記載
    の植物の遺伝子発現を調節する制御剤。
  8. 【請求項8】 低分子量化キトサンの分子環のC−2位
    の第一級アミノ基にラジカル活性を持たせた、酸、アル
    カリ、水に溶解可能で、アルコールに不容な液状または
    粉体物であることを特徴とする請求項1、2、3、4、
    5記載の植物の遺伝子発現を調節する制御剤。
  9. 【請求項9】 低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、及
    び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とする
    水溶性ヘテロ糖の濃度を有機酸、無機酸、タンパク質な
    ど任意に混合する水溶液に対して1〜1,000ppm
    重量濃度の範囲とすることを特徴とする請求項1、2、
    3、4、5記載の植物の遺伝子発現を調節する制御剤。
  10. 【請求項10】 低分子量化キトサン、キトオリゴ糖、
    及び2,5ーアンヒドローDーマンノースを主成分とす
    る水溶性ヘテロ糖の水溶液のpH3〜9であることを特
    徴とする請求項1、2、3、4、5記載の植物の遺伝子
    発現を調節する制御剤。
JP6163231A 1994-06-22 1994-06-22 植物の遺伝子発現を調節する制御剤 Pending JPH083010A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6163231A JPH083010A (ja) 1994-06-22 1994-06-22 植物の遺伝子発現を調節する制御剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6163231A JPH083010A (ja) 1994-06-22 1994-06-22 植物の遺伝子発現を調節する制御剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH083010A true JPH083010A (ja) 1996-01-09

Family

ID=15769828

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6163231A Pending JPH083010A (ja) 1994-06-22 1994-06-22 植物の遺伝子発現を調節する制御剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH083010A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008074752A (ja) * 2006-09-20 2008-04-03 Kagawa Univ 希少糖を植物のシュートの成長促進または調整へ利用する方法。
US8946119B2 (en) 2011-09-23 2015-02-03 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing soybean growth
US8992653B2 (en) 2011-09-08 2015-03-31 Novozymes Bioag A/S Seed treatment methods and compositions
US9055746B2 (en) 2011-09-23 2015-06-16 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing plant growth
US9055747B2 (en) 2011-09-23 2015-06-16 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing corn growth
US9554575B2 (en) 2011-09-23 2017-01-31 Novozymes Bioag A/S Combinations of lipo-chitooligosaccharides and methods for use in enhancing plant growth
WO2019093415A1 (ja) * 2017-11-08 2019-05-16 三菱ケミカル株式会社 植物栽培方法
US11999666B2 (en) 2011-09-14 2024-06-04 Novozymes Bioag A/S Use of lipo-chitooligosaccharides and/or chitooligosaccharides in combination with phosphate-solubilizing microorganisms to enhance plant growth

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008074752A (ja) * 2006-09-20 2008-04-03 Kagawa Univ 希少糖を植物のシュートの成長促進または調整へ利用する方法。
US10239798B2 (en) 2011-09-08 2019-03-26 Novozymes Bioag A/S Seed treatment methods and compositions
US8992653B2 (en) 2011-09-08 2015-03-31 Novozymes Bioag A/S Seed treatment methods and compositions
US11560340B2 (en) 2011-09-08 2023-01-24 Novozymes Bioag A/S Seed treatment methods and compositions
US11999666B2 (en) 2011-09-14 2024-06-04 Novozymes Bioag A/S Use of lipo-chitooligosaccharides and/or chitooligosaccharides in combination with phosphate-solubilizing microorganisms to enhance plant growth
US9055746B2 (en) 2011-09-23 2015-06-16 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing plant growth
US9414591B2 (en) 2011-09-23 2016-08-16 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing corn growth
US9554575B2 (en) 2011-09-23 2017-01-31 Novozymes Bioag A/S Combinations of lipo-chitooligosaccharides and methods for use in enhancing plant growth
US10206396B2 (en) 2011-09-23 2019-02-19 Novozymes Bioag A/S Agricultural compositions comprising chitin oligomers
US9414592B2 (en) 2011-09-23 2016-08-16 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing plant growth
US11134683B2 (en) 2011-09-23 2021-10-05 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing plant growth
US9055747B2 (en) 2011-09-23 2015-06-16 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing corn growth
US8946119B2 (en) 2011-09-23 2015-02-03 Novozymes Bioag A/S Chitooligosaccharides and methods for use in enhancing soybean growth
WO2019093415A1 (ja) * 2017-11-08 2019-05-16 三菱ケミカル株式会社 植物栽培方法
JPWO2019093415A1 (ja) * 2017-11-08 2020-11-19 三菱ケミカル株式会社 植物栽培方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20220015375A1 (en) Concentrated extract of algae, production method thereof and use of same in agriculture
Zodape Seaweeds as a biofertilizer
US11617370B2 (en) Melanoidins and their use for improving properties of plants
CN101223846B (zh) 年宵开花的盆栽树状月季的生产方法
CN104542305A (zh) 一种蝴蝶兰北方温室的栽培方法
CN104838836A (zh) 一种快速繁育、夏季结果的草莓种植方法
CN107307003B (zh) 一种三角梅生根剂及其制备方法
JPH083010A (ja) 植物の遺伝子発現を調節する制御剤
CN104270952A (zh) 植物生长增强混合物
CN104303670A (zh) 一种苹果在干旱胁迫下的水肥管理办法
CN107660464B (zh) 一种北美红杉优良种苗的组培快繁方法
Li et al. Response of tomato plants to saline water as affected by carbon dioxide supplementation. I. Growth, yield and fruit quality
RU2520021C2 (ru) Способ обогащения селеном перца сладкого сортотипа паприка
KR100927314B1 (ko) 칼슘의 함량이 높고 상품성이 우수한 토마토의 재배 방법
JPS62408A (ja) 新規な植物生長調節剤
KR20180042623A (ko) 빌레나무의 실생번식 방법
CN116477984A (zh) 一种颗粒氮肥用涂层剂、缓释氮肥及其制备方法
CN104106351A (zh) 一种红梅的栽培方法
JPS63297304A (ja) サトイモ科植物の培養、栽培方法
CN112979361A (zh) 一种无土栽培营养凝胶
CN105027927A (zh) 一种补锌菊花的种植方法
TW201524357A (zh) 一種提高植物抗旱的植物生長調節組合物
CN110024618B (zh) 一种虎乳灵芝的段木栽培方法
JPH083011A (ja) 異種植物の接合促進剤
US11440855B2 (en) Use of phycobiliproteins or an extract containing same as fertilizer