JPH08294527A - 創傷被覆材及びその製造方法 - Google Patents

創傷被覆材及びその製造方法

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JPH08294527A
JPH08294527A JP7125701A JP12570195A JPH08294527A JP H08294527 A JPH08294527 A JP H08294527A JP 7125701 A JP7125701 A JP 7125701A JP 12570195 A JP12570195 A JP 12570195A JP H08294527 A JPH08294527 A JP H08294527A
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wound dressing
sheet
silver
wound
polyvinyl alcohol
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JP7125701A
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English (en)
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Yukimasa Sawada
幸正 澤田
Tadashi Okubo
正 大久保
Kenji Uno
憲治 宇野
Hironobu Fukuzaki
裕延 福崎
Fumiko Izutsu
史子 井筒
Yukihiko Yoshimi
幸彦 吉見
Yukari Imamura
由賀里 今村
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Seed Co Ltd
Taki Chemical Co Ltd
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Seed Co Ltd
Taki Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 火傷、創傷等によって損傷した皮膚の治療を
行うことを目的とするシートの透明性、生体親和性、柔
軟性、水透過性、酸素透過性等に優れ、長期間にわたっ
て抗菌持続性の優れた創傷被覆材を提供する。 【構成】 380nm〜780nmに於ける可視光線透過率が5%
以上である銀系抗菌剤を含有したポリビニルアルコール
シートよりなる創傷被覆材であって、このような創傷被
覆材は、銀系抗菌剤を含有したポリビニルアルコール水
溶液を凍結乾燥する方法によって製造することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は創傷被覆材及びその製造
方法に関し、更に詳しくは火傷、創傷等によって損傷し
た皮膚の治療を行うことを目的とするシートの透明性、
生体親和性、柔軟性、水透過性、酸素透過性等に優れ、
長期間にわたって抗菌持続性の優れた創傷被覆材を提供
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より火傷、創傷による皮膚の保護と
治癒の促進を目的とする創傷被覆材として多くの材料が
提案され、また商品化が行われている。例えば、合成物
からなる創傷被覆材として、ナイロン繊維、ポリエステ
ル繊維からなるシート、ポリウレタン多孔体シート、架
橋ポリビニルアルコールシート、シリコーン膜等があ
る。また、生体由来化合物からなる創傷被覆材として、
コラーゲン不織布、凍結豚皮、フィブリン膜等がある。
しかし、これらの創傷被覆材は多くの問題点を有してい
る。例えば、合成物からなる創傷被覆材は、一般には生
体との親和性が低く、更に酸素透過性、水透過性が低い
という問題がある。また、生体由来化合物のコラーゲ
ン、凍結豚皮等の創傷被覆材は、生体との免疫上の拒絶
が強く、また分解、吸収性が早いために、長期間の被覆
には適さないという問題がある。
【0003】このような創傷被覆材は、大きく二つのタ
イプに分類される。即ち、創傷面を乾燥状態に保ち、痂
皮を形成して治癒を行うことを目的とするドライ・ドレ
ッシングタイプと、適度な湿潤状態で速やかな表皮細胞
の遊走を行わせることを目的とするウェット・ドレッシ
ングタイプがある。一般には後者の方が治癒が速やかで
あり、創傷表面の乾燥による表皮細胞の壊死が少なく、
創面の保護効果もあることから有利であることが知られ
ている。この後者に属する創傷被覆材として、前述のポ
リウレタン多孔体シート、架橋ポリビニルアルコールシ
ート、シリコーン膜等が挙げられる。しかし、このよう
なウェット・ドレッシングタイプの欠点として、被覆シ
ートが体内からの浸出液を内部に蓄え湿潤状態となるた
め、雑菌感染が極めて起こりやすくなることが挙げられ
る。このため、被覆シートに抗生物質等を含有させて抗
菌性を付与する等の対策も行われているが、抗生物質の
溶出による消失によって、創傷面が治癒できるまでの
間、抗菌性を長期間にわたって維持することは難しく、
仮に抗生物質が被覆シート内に存在していても耐性菌が
産生するという問題があった。また、治療時に於いて創
傷部の治癒状態がシートの上から直接観察できる透明性
を有する創傷被覆材が強く要請されている。しかしなが
ら、抗菌持続性に優れ、しかも透明性に優れた創傷被覆
材がないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは前述の実
状に鑑み、ウェット・ドレッシングタイプに属する創傷
被覆材として、(1)シートの透明性に優れること、(2)雑
菌の薬剤耐性を生じにくく、治癒期間中に持続的に効果
を発現できること、(3)創面の保護効果を有し、適切な
湿潤状態に保てること、(4)複雑な創面部位、また動く
創面に対して密着できるような柔軟性を有すること、
(5)生体親和性が良好であること、更に(6)適切な水透過
性と酸素透過性を有すること、などの条件を具備する創
傷被覆材を開発すべく鋭意検討を重ねた。
【0005】
【課題を解決するための手段】その結果、銀系抗菌剤を
分散させたポリビニルアルコールシートが前述の課題条
件を具備する創傷被覆材として優れた効果を有するこ
と、しかもこのような効果は特に抗菌性能の持続性に於
いて銀系抗菌剤とポリビニルアルコールとの併用によっ
て始めて奏する効果であることを見い出し、係る知見に
基づき本発明を完成させるに至ったものである。
【0006】即ち、本発明は380nm〜780nmに於ける可視
光線透過率が5%以上である銀系抗菌剤を含有したポリ
ビニルアルコールシートよりなる創傷被覆材に関し、更
に銀系抗菌剤を含有したポリビニルアルコール水溶液を
凍結乾燥することからなるポリビニルアルコールシート
創傷被覆材の製造方法に関する。
【0007】
【作用】以下本発明について更に詳述する。本発明の創
傷被覆材は、銀系抗菌剤を含有したポリビニルアルコー
ル水溶液を凍結乾燥することによって製造するものであ
る。このような創傷被覆材の製造に使用する基材原料は
ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)である
が、このPVAの安全性や生体親和性が高いことは既に
周知の通りである。
【0008】本発明では、このようなPVAを加熱溶解
してPVA水溶液とし、この中に銀系抗菌剤を添加、分
散させ、次いでPVA水溶液を凍結乾燥によって架橋さ
せることにより創傷被覆材を得る。このようなPVA水
溶液の架橋の方法として、本発明ではPVA水溶液を凍
結乾燥することにより架橋を行うが、この凍結乾燥法に
代えて他の化学架橋のような薬剤を使用する方法、ある
いは放射線照射によって架橋を行う方法では、本発明の
優れた特性を有する創傷被覆材を得ることが困難であ
り、しかも凍結乾燥法はその安全性が高いことからも有
利な方法である。また、PVA水溶液の架橋方法とし
て、従来より知られている凍結と融解を繰り返す方法が
ある。これはPVA水溶液を凍結させ、これを常温で融
解させる操作を繰り返すことにより、PVAを徐々に架
橋させることにより強靱なPVAシートを得る方法であ
る。しかし、このような方法では高い強度の創傷被覆材
を得ることが可能であるが、創傷被覆材のシートの透明
性が極度に低下する。これに対し、本発明の方法によれ
ば、得られる創傷被覆材は、380nm〜780nmに於ける可視
光線透過率が5%以上でありその透明性に優れ、シート
を通しての生体組織の観察が容易である。尚、本発明で
の380nm〜780nmに於ける可視光線透過率は、「プラスチ
ックの光学的特性試験法」(JIS K7105(1981))の「5.5
光線透過率及び全光線反射率」の測定法に基づくもの
であり、本発明創傷被覆材の可視光線透過率は5%以上
である。
【0009】また、本発明で使用するPVAは、その重
合度が1000以上で懸化度は99モル%以上のものを使用す
ることが望ましく、重合度と懸化度がこれ以下では、凍
結乾燥によって得られる創傷被覆材の強度が低下するこ
とから望ましくない。PVA原料の使用割合に関して云
えば、PVA水溶液の濃度は、凍結乾燥後に得られる本
発明創傷被覆材の強度と透明性の関係より5〜20重量%
の範囲であることが望ましく、この濃度が5重量%以下
では被覆材の強度が低下し、また20重量%以上では被覆
材の強度は高くなるものの透明性が著しく低下すること
から創傷被覆材として好ましくない。
【0010】本発明で使用できる銀系抗菌剤としては、
ゼオライト、シリカゲル、リン酸カルシウム等の担体に
銀を担持させた市販の無機系の銀系抗菌剤、あるいはス
ルファジアジン銀、有機系ポリマー粒子に銀を担持させ
た有機系の銀系抗菌剤があるが、本発明では銀系の抗菌
剤であれば特にその種類に制限はない。また、銀系抗菌
剤の使用割合は、抗菌剤の銀含有量、所望する創傷被覆
材の抗菌性能等によって異なり一概に云えないが、使用
するPVA量に対して0.1〜20重量%の範囲が好適であ
る。即ち、抗菌剤使用量が0.1重量%以下では、本発明
創傷被覆材の抗菌性能が充分でなく、雑菌による感染を
抑制することが困難であり、また20重量%以上の使用量
では、創傷被覆材の透明性が低下することから好ましく
ない。
【0011】本発明の創傷被覆材について、図面に基づ
いて更に詳記すると、図1は本発明の創傷被覆材の概略
図であって、創傷被覆材シート1内に後述するメッシュ
材2を介在させた例である。このような本発明創傷被覆
材の製造方法は、先ずPVAを加熱溶解し、これに銀系
抗菌剤を添加、分散させる。この銀系抗菌剤を含有した
PVA水溶液を、図2に示したような厚さ0.1〜2mm程度
のスペーサー4を入れた2枚のガラス板やアルミ板3の
間に注入し、これを凍結させることにより成型する。図
2の(a)はPVA水溶液5を注入した状態を示す図であ
る。この場合の凍結温度は、温度-50〜-5℃の範囲であ
ることが望ましく、-50℃以下では凍結乾燥後に得られ
る架橋したPVAシートが湿潤状態で脆くなる。また、
-5℃以上では凍結時間が長時間必要となることから工業
的でない。また、ここで使用するスペーサー4の厚みを
変えることによって、製造するPVAシート5の厚さを
容易に変えることができるが、シートの厚さが0.1mm以
下ではシート強度が低下し、また2mm以上ではシートの
透明性が低下することから、創傷被覆材の基材としては
好ましくないものとなる。凍結後は上述のガラス板3等
を取り除き(図2の(b)と(c)を参照)、凍結したPVA
シート5の乾燥を行う。乾燥は通常の凍結乾燥法に従
い、10-2〜10-3mmHg程度の真空条件下で常温で乾燥を行
えばよい。
【0012】このようにして得られる銀系抗菌剤を含有
したPVAシートよりなる本発明の創傷被覆材は、通常
は使用する場合に含水率が60〜90重量%の湿潤状態にし
て使用する。即ち、このようなシートを水あるいは生理
食塩水等によって湿潤状態にすることで、シート内の抗
菌剤中の銀イオンが長期間にわたり徐放化され、これに
よって創傷部が長期間にわたり保護される。このような
抗菌剤は、抗生物質と比べると一般的に菌が耐性を獲得
する可能性は極めて低いことが知られており、創傷部位
の雑菌による感染を防ぐ抗菌剤として望ましいものであ
る。このような湿潤状態でのPVAシートの酸素透過性
(Dk値)は、30×10-11〜80×10-11(cm2/sec)・(ml O2/ml
×mmHg)の範囲であることから高い酸素透過性を有す
る。また、このPVAシートの水蒸気透過性は3000〜70
00(g/m2/day)であって、創傷部位からの水分散逸量とほ
ぼ同程度であることから、創傷面を適切な湿潤状態に保
つことができる。また、PVAシートのこのような酸素
透過性から、湿潤状態でのPVAシートの孔径は20〜50
オンク゛ストロームと推測され、このような孔径であることから
外部からの病原微生物の侵入を完全に遮断することがで
きる。
【0013】本発明では、このようなPVAシートの透
明性をより高くすることを目的に、凍結処理前のPVA
水溶液に予めグリセリン、プロピレングリコール、糖ア
ルコール、数平均分子量1000以下のポリエチレングリコ
ール(以下、PEGと略記する)から選ばれた化合物の1
種以上を添加することができる。尚、ここで使用できる
糖アルコールの種類としては、ソルビット、マンニッ
ト、ズルシット、イジット、エリトリット、アラビッ
ト、アドニット、キシリット、タリット等があり、ま
た、PEGとしては、(-O-CH2-CH2-)のユニット数が3〜
22の範囲であって分子量は概ね1000以下のものである。
またこれらの化合物は、水への溶解度が高いことから、
化合物を添加して得た凍結乾燥後の架橋したPVAシー
トを水で洗浄することにより、シートからこれら化合物
を完全に除去することが可能であり、シートを創傷被覆
材として使用する場合に何等問題がないものである。更
に、このような化合物を使用し、架橋したPVAシート
からこれら化合物を除去した場合、シートの透明性だけ
でなく柔軟性もより良好となる。これら化合物の使用量
に関して云えば、使用するPVA量に対して5〜100重量
%の範囲が望ましく、5重量%以下では目的とする効果
が期待できず、また100重量%以上では架橋PVAシー
トの柔軟性は向上するものの、シートの強度が低下する
ことから好ましくない。
【0014】本発明のPVAシートを基材とする創傷被
覆材は、このシートをそのまま被覆材として使用しても
充分な強度を有するものであるが、このシートにメッシ
ュ材のようなシートの透明性を低下させない素材を補強
材として併用すれば、本発明の創傷被覆材は、更に高い
強度が要求されるような部位にも適用することができ
る。使用できるメッシュ材としては、綿、ナイロン、ポ
リエステル、ポリウレタン等の素材繊維があり、本発明
創傷被覆材の透明性や柔軟性を損なわないものであれ
ば、特にその種類に制限はない。メッシュ材を入れたP
VAシートの製造は、このようなメッシュ材を予めスペ
ーサーを入れた2枚のガラス板やアルミ板の間に挟み込
み、この中にPVA水溶液を入れて凍結乾燥を行うこと
により容易に製造することができる。
【0015】
【実施例】以下に本発明の実施例を掲げ更に説明を行う
が、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではな
い。尚、本実施例に於いて%は特に断らない限り全て重
量%を示す。
【0016】(実施例1、2)耐熱ねじ口瓶にPVA
(重合度約2000,懸化度99.5モル%)50g、イオン交換水450
g、ゼオライトを銀の担体とする市販の銀系抗菌剤であ
るバクテキラー(鐘紡(株)製商品名)2.5g(実施例1)また
はスルファジアジン銀2.0g(実施例2)を採り、これをオ
ートクレーブを用いて120℃で加熱溶解させ、銀系抗菌
剤を分散させたPVA水溶液を得た。厚さ1mmのスペー
サーを入れ2枚のガラス板で挟み込み固定した容器中に
このPVA水溶液を入れ、これを-20℃の冷凍庫中に入
れて凍結させた。PVA水溶液が凍結した後、上記ガラ
スの1枚を取り除き、次いでこれを真空容器内に入れて
凍結乾燥を行い、本発明の創傷被覆材を得た。
【0017】これら実施例1及び2の創傷被覆材をイオ
ン交換水で洗浄したところ、被覆材の湿潤状態での含水
率は各々74%(実施例1)と72%(実施例2)であった。ま
た、この湿潤状態の創傷被覆材の片面をイオン交換水と
接触させ、温度30℃、湿度50%の条件下で被覆材から蒸
発する水分量を測定した結果、被覆材の水蒸気透過速度
は、4570(g/m2/day)(実施例1)と4450(g/m2/day)(実施
例2)であった。更に、380nm〜780nmに於ける可視光線
透過率を、「プラスチックの光学的特性試験法」(JIS
K7105(1981))の「5.5 光線透過率及び全光線反射率」
の測定法に基づき測定した結果、本発明被覆材の可視光
線透過率は、14%(実施例1)と12%(実施例2)であっ
た。
【0018】(比較例1)実施例1と同様に、銀系抗菌
剤を分散させたPVA水溶液を調製し、同様に厚さ1mm
のスペーサーを入れ2枚のガラス板で挟み込み固定した
容器中に入れ、これを-20℃の冷蔵庫中に入れて凍結さ
せた。PVA水溶液が凍結した後、ガラス板の1枚を取
り除き室温下で放置して融解させた。融解後のシートを
再び凍結させ、このような操作を5回繰り返し行った。
得られたシートの透明性は殆ど無く、その可視光線透過
率を測定した結果0.3%であった。
【0019】(実施例3〜5)実施例1で使用した厚さ
1mmのスペーサーに代えて、厚さ0.1mm(実施例3)、0.2m
m(実施例4)、0.4mm(実施例5)のスペーサーをそれぞれ
使用し、実施例1と同様の操作を行うことによって各々
厚さの異なる本発明創傷被覆材を得た。これらの創傷被
覆材を用い、電極法によって37℃に於ける湿潤状態での
酸素透過性を測定した結果、酸素透過性(Dk値)は、68×
10-11(cm2/sec)・(ml O2/ml×mmHg)であった。また、可
視光線透過率を測定した結果、各々の被覆材は54%(実
施例3)、35%(実施例4)及び23%(実施例5)であっ
た。
【0020】(実施例6)次の方法により本発明創傷被
覆材に使用する銀系抗菌剤を得た。先ず、攪拌機を備え
た1L容の4ッ口フラスコにn−ヘキサン500gを入れ、こ
れにスルホン酸基を有するラジカル重合性の界面活性剤
JS−2(三洋化成工業(株)製商品名,38%水溶液)31.4
g、メタクリル酸メチル42.5g及びジエチレングリコール
ジメタクリレート4.7gを添加溶解させた。更に、30%硝
酸銀水溶液15.4gと重合触媒として過酸化ベンゾイル0.5
gをこれに加えた。次に、溶液を窒素置換により脱気を
行いながら、攪拌下、反応系を50℃に加熱しながら10時
間の反応を行った。反応の進行と共に共重合体は微粒子
状の懸濁液となって生成した。反応後の懸濁液を吸引濾
過によって懸濁粒子を分取し、これをn−ヘキサンで洗
浄した後、真空乾燥を行うことにより銀系抗菌剤57gを
得た。
【0021】実施例1で使用した抗菌剤のバクテキラー
に代えて、前記の銀系抗菌剤2gを使用し、同様の操作を
行うことによって本発明の創傷被覆材を得た。この創傷
被覆材を水で湿潤状態とし、可視光線透過率を測定した
結果15%であった。
【0022】(実施例7〜9)次の方法により本発明創
傷被覆材に使用する銀系抗菌剤を得た。先ず、攪拌機を
備えた1L容の4ッ口フラスコにメチルイソブチルケトン
500gを入れ、これにジエチレングリコールジメタクリレ
ート47gを添加溶解させた。次に、この溶液にミリスチ
ン酸銀5.8gを添加して懸濁溶液とし、更に重合触媒とし
て過酸化ベンゾイル1gを添加した。次いで、この溶液を
窒素置換により脱気を行いながら、攪拌下、反応系を60
℃に加熱しながら10時間の反応を行った。反応後、この
懸濁液を吸引濾過によって懸濁粒子を分取し、これをメ
チルエチルケトンで洗浄後、真空乾燥を行うことにより
銀系抗菌剤50gを得た。
【0023】実施例1で使用した抗菌剤のバクテキラー
に代えて、前記の銀系抗菌剤0.04g(実施例7)、0.5g(実
施例8)、2.0g(実施例9)を各々使用し、実施例1と同
様の操作を行うことによって本発明の創傷被覆材を得
た。これらの創傷被覆材に水を加えて湿潤状態とし、可
視光線透過率を測定した結果、各々58%(実施例7)、31
%(実施例8)及び16%(実施例9)であった。
【0024】(実施例10〜12)実施例1の凍結温度を-2
0℃に代えて、-10℃(実施例10)、-40℃(実施例11)、-60
℃(実施例12)とし、各々実施例1と同様の操作を行うこ
とによって本発明の創傷被覆材を得た。これらの創傷被
覆材に水を加えて湿潤状態にしたところ、実施例10及び
11で得た被覆材は実施例1で得た被覆材とその強度に於
いて殆ど差はなかったが、実施例12で得た被覆材は、そ
の強度がやや低いものであった。また、これら創傷被覆
材の可視光線透過率を測定した結果、各々16%(実施例1
0)、15%(実施例11)及び7%(実施例12)であった。
【0025】(実施例13〜15)実施例1のPVA使用量
50gに代えて、PVA使用量を各々10g(実施例13)、25g
(実施例14)、100g(実施例15)とし、実施例1と同様に操
作を行い本発明の創傷被覆材を得た。これら創傷被覆材
を水で湿潤状態としたところ、実施例14〜15の被覆材は
充分な強度を有するものであったが、実施例13の被覆材
はその強度がやや低いものであった。また、これら創傷
被覆材の可視光線透過率を測定した結果、各々21%(実
施例13)、18%(実施例14)及び12%(実施例15)であっ
た。
【0026】(実施例16)実施例6と同条件で、厚さ1m
mのスペーサーを入れ2枚のガラスで挟み込み固定した
容器中に、ポリエステル・ポリウレタン製の伸縮性のあ
るメッシュ材を挟み込み、この中にPVA水溶液を入れ
ることにより、シート内にメッシュ材を介在させた本発
明の創傷被覆材を得た。得られた創傷被覆材は、透明性
と柔軟性は実施例6で得られた被覆材と殆ど変わらない
ものの、シートの強度は高く、特に引き裂きによる強度
が高いことから、被覆材を創傷面に針で縫合するのに好
適であった。
【0027】(実施例17〜21)実施例6と同様に銀系抗
菌剤を含有するPVA水溶液を調製した後、この中に各
々PVAに対して50%の割合となるようにプロピレング
リコール(実施例17)、グリセリン(実施例18)、数平均分
子量400のポリエチレングリコール(実施例19)、ソルビ
ット(実施例20)、マンニット(実施例21)を添加し、実施
例6と同様に本発明の創傷被覆材を得た。得られた創傷
被覆材を多量のイオン交換水で充分に洗浄することによ
り、上記の添加物を被覆材から除去した。洗浄後に得ら
れた創傷被覆材の可視光線透過を測定した結果、各々25
%(実施例17)、23%(実施例18)、23%(実施例19)、21%
(実施例20)及び22%(実施例21)であった。
【0028】<抗菌性評価試験1>実施例で得た創傷被
覆材を用い、以下のような病原菌の発育阻止円の形成に
よる抗菌性の評価試験を行った。評価試験の方法は、直
径9cmのシャーレに10mlの肉エキス寒天培地溶液を注
入、固化させて形成した培地上に、1×105個/cm2の密度
となるように被検菌を均一に接種し、この上に直径2cm
の円形に切り取った創傷被覆材を置き、30℃で2日間培
養を行った。培養後、寒天培地上に形成された被検菌の
発育阻止円の直径を計測することにより、創傷被覆材の
抗菌性を評価した。尚、被検菌としてシュードモナス・
エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa IFO-13275)(緑
膿菌)とスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococc
us aureus IFO-12732)(黄色ブドウ球菌)を用いた。ま
た、創傷被覆材は滅菌水で洗浄した後、再度多量の滅菌
水で1日間膨潤させて洗浄し、これを抗菌性試験に供し
た。各々の創傷被覆材を用いて病原菌の発育阻止円を測
定した結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】<抗菌性評価試験2>実施例で得た創傷被
覆材を用い、抗菌活性の持続性について評価を行った。
評価試験の方法は、創傷被覆材を滅菌水で洗浄した後、
再度多量の滅菌水で1日間膨潤させて洗浄し、これを37
℃の滅菌済の生理食塩水中に、各々3日間、7日間、14日
間浸漬させた。所定期間浸漬後、抗菌性評価試験1と同
様に緑膿菌を用いて同方法にて発育阻止円を測定した。
結果を表2に示した。
【0031】
【表2】 注)*1 発育阻止円は形成されず、創傷被覆材下の培地に
菌の繁殖が認められた。
【0032】<抗菌性評価試験3>実施例16で得た創傷
被覆材を用い、6-8週齢のウィスター系ラットによる評
価試験を行った。評価試験の方法は、1群5匹のラット背
部の片側に、皮膚全層欠損傷(3cm×3cm、厚さ約250μm)
を外科的に創り、これに創傷被覆材を縫合して固定し
た。創傷被覆材の上より毎日患部を観察した結果、充分
に患部の治癒状態を観察することができた。1週間目に
創傷被覆材を剥がし、被検体のラット全例に於いて患部
に正常な新生真皮が形成されいることを確認した。
【0033】
【発明の効果】本発明の創傷被覆材は、ウェット・ドレ
ッシングタイプに属する創傷被覆材として、(1)シート
の透明性に優れ、(2)雑菌の薬剤耐性を生じにくく、治
癒期間中に持続的に効果を発現できること、(3)創面の
保護効果を有し適切な湿潤状態に保ち、(4)複雑な創面
部位また動く創面に対して密着できるような柔軟性を有
し、(5)生体親和性が良好であり、更に(6)適切な水透過
性と酸素透過性を有する。従って、本発明の創傷被覆材
は優れた透明性を有するので、創傷被覆材を都度剥がし
て治癒状態を観察する必要がないために新生真皮を傷つ
けることがなく、持続的抗菌性を有するので、初期治療
のみで患部への二次感染を防止しながら患部の上皮細胞
を形成させることができる。従って、治療時の患者への
苦痛を排除できる。また、生体親和性に優れることから
生体への拒絶反応もない。更に、患部再生が可能である
ことは、従来のような治療薬剤の交換作業を軽減でき非
常に有益である。このような優れた効果を有する本発明
の創傷被覆材は、火傷、創傷等によって損傷した皮膚の
治療を行う創傷被覆材として優れたものであるだけでな
く、このような利用のみならず広く肥圧性はん痕、辱そ
う等の治療材料としても使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の創傷被覆材の概略図であり、創傷被覆
材シート内にメッシュ材を介在させた例である。
【図2】本発明の創傷被覆材を製造する工程を示す図で
あり、(a)は2枚のガラス板中にPVA水溶液を注入し
た状態を示し、(b)、(c)は凍結後にガラス板とスペー
サーを取り除いた状態を示す図である。
【符号の説明】
1 創傷被覆材シート 2 メッシュ材 3 ガラス板 4 スペーサー 5 PVA水溶液又はその凍結物
フロントページの続き (72)発明者 澤田 幸正 青森県弘前市樹木4丁目3−4番地 (72)発明者 大久保 正 青森県弘前市学園町1−1番地 (72)発明者 宇野 憲治 東京都文京区本郷2丁目40番2号 株式会 社シード内 (72)発明者 福崎 裕延 茨城県つくば市二の宮1−16−4番地 (72)発明者 井筒 史子 茨城県つくば市梅園2丁目2−20番地 (72)発明者 吉見 幸彦 茨城県つくば市吾妻4−16−4番地 (72)発明者 今村 由賀里 兵庫県姫路市東今宿4−2−22番地

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 380nm〜780nmに於ける可視光線透過率が
    5%以上である銀系抗菌剤を含有したポリビニルアルコ
    ールシートよりなる創傷被覆材。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコールシート内にメッシ
    ュ材を介在させた請求項1の創傷被覆材。
  3. 【請求項3】 銀系抗菌剤を含有したポリビニルアルコ
    ール水溶液を凍結乾燥することからなるポリビニルアル
    コールシート創傷被覆材の製造方法。
  4. 【請求項4】 凍結温度が-50〜-5℃の範囲である請求
    項3の製造方法。
  5. 【請求項5】 銀系抗菌剤を含有したポリビニルアルコ
    ール水溶液が、グリセリン、プロピレングリコール、糖
    アルコール、数平均分子量1000以下のポリエチレングリ
    コールから選ばれた化合物の1種以上を含んだ水溶液で
    ある請求項3または4の製造方法。
  6. 【請求項6】 ポリビニルアルコール水溶液の濃度が5
    〜20重量%の範囲である請求項3、4または5の製造方
    法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE19958458A1 (de) * 1999-12-03 2001-06-21 Beiersdorf Ag Antimikrobiell ausgerüstete Wundauflagen
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