JPH0825312A - 音響材料及びその製造方法 - Google Patents

音響材料及びその製造方法

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JPH0825312A
JPH0825312A JP6158422A JP15842294A JPH0825312A JP H0825312 A JPH0825312 A JP H0825312A JP 6158422 A JP6158422 A JP 6158422A JP 15842294 A JP15842294 A JP 15842294A JP H0825312 A JPH0825312 A JP H0825312A
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JP
Japan
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molecular weight
wood
low molecular
phenolic resin
acoustic material
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JP6158422A
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Inventor
Hiroyuki Yano
浩之 矢野
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GETSUKOUDOU KK
TAKAMINE GAKKI SEISAKUSHO KK
Original Assignee
GETSUKOUDOU KK
TAKAMINE GAKKI SEISAKUSHO KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 低分子量フェノール樹脂を用いて木材を処理
するに際し、木材の変形、落込み等が生じることのない
音響材料の製造方法を提供する。 【構成】 低分子量フェノール樹脂の水溶液に木材を浸
漬して、該フェノール樹脂を含浸させる含浸工程と、低
分子量フェノール樹脂を含浸した木材を自然乾燥させる
第一の乾燥工程と、自然乾燥後の前記木材を30〜60
℃で送風乾燥させる第二の乾燥工程と、送風乾燥後の前
記木材を100℃から160℃まで1〜6時間に亙って
徐々に又は段階的に昇温して前記低分子量フェノール樹
脂を硬化させる第一の硬化工程と、160±5℃の温度
範囲を30分〜1時間維持して更に前記低分子量フェノ
ール樹脂の硬化を行う第二の硬化工程とを経て音響材料
を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ギターの響板等に適し
た音響材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】木材は比重が比較的小さく、その割に強
度が大きく、しかも加工性に優れているという性質を有
している。このような軽くて強い素材は他に見当らず、
近年、種々の新素材が開発されているにもかかわらず、
未だにギターの響板(表板)等の音響材料には木材が使
用されている。しかしその一方、木材は、楽器の材料と
して見ると、振動を吸収し易いという欠点を有してい
る。ギターの製作者達は木材のこのような欠点をよく知
っており、古くから、トウヒ(Picea )属及びネズコ
(Thuja )属の樹種の木材だけをギターの響板に使用し
ている。
【0003】木材の軽くて強いという性質は、比動的ヤ
ング率によって表すことができる。
【0004】比動的ヤング率はヤング率を比重で除算し
た値であり、この値が大きいほど軽くて変形し難く、弦
の振動に対する応答が速いと考えることができる。ま
た、木材の振動の吸収の程度は、内部摩擦と呼ばれる数
値によって表すことができる。
【0005】上述の振動を吸収し易いという木材の欠点
を補うための数多くの研究が為されている。また、ギタ
ーの音質に対する好みは人によって様々であるため、従
来の素材に種々の改良を加えることによって、音質に対
する多様な好みに対応した木材を創り出そうとする研究
も為されている。その一つとして、低分子量フェノール
樹脂を木材に含浸させて木材の細胞壁中で硬化させる研
究がある(例えば、「化学処理木材の振動特性」、秋津
裕志,則元京,師岡淳郎、木材学会誌,37(7),590-597
(1991) 、「サリゲニン処理によるシトカプルース材の
音響特性変化」、矢野浩之,荻野直美,椋代純輔、木材
学会誌,36(11),923-929(1990))。これらの研究から、
低分子量フェノール樹脂処理を木材に施すことにより、
比動的ヤング率、内部摩擦等の音響特性を変えることが
できることが明らかとなった。
【0006】なお、本明細書に於いて「低分子量フェノ
ール樹脂」とはフェノールをモノメチロール化したもの
(サリゲニン)、ジメチロール化したもの及びトリメチ
ロール化したもの、並びにこれらのメチロール化物を重
合させたものをも含む概念を言う。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、木材を
低分子量フェノール樹脂で処理する場合、これらの薬剤
が木材の細胞壁に含浸されず、細胞壁に囲まれた空腔内
に含浸される場合がある。低分子量フェノール樹脂が細
胞の空腔内に含浸されると、比重の増大が著しく、比動
的ヤング率の低下が生じるという問題がある。また、木
材を低分子量フェノール樹脂で処理するには、その水溶
液を木材に含浸させ、これを乾燥し、更に加熱硬化を行
わなければならない。そのため、乾燥工程に於いては木
材の変形、落込み等が生じることがある。また、加熱硬
化工程に於いても木材のねじれ、反り等の変形が生じる
ことがある。このような変形を生じた木材は、ギターの
響板として使用することができない。
【0008】本発明はこのような従来技術の問題点を解
決するために為されたものであり、本発明の目的は、低
分子量フェノール樹脂を用いて木材を処理するに際し、
木材の細胞壁に低分子量フェノール樹脂を含浸させて硬
化させた音響材料を提供することである。また、本発明
の他の目的は、木材の変形、落込み等が生じることのな
い音響材料の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の音響材料は、平
均分子量が200〜500の低分子量フェノール樹脂を
木材に含浸させ、該低分子量フェノール樹脂を加熱硬化
させたことを特徴とする。
【0010】上記に於いて、前記木材の樹種が、トウヒ
(Picea )属又はネズコ(Thuja )属であることが好ま
しい。
【0011】本発明の音響材料の製造方法は、(1)平
均分子量が200〜500の低分子量フェノール樹脂を
木材の細胞壁に含浸させる含浸工程と、(2)該低分子
量フェノール樹脂を加熱硬化させる硬化工程とを包含す
ることを特徴とする。
【0012】また、本発明の音響材料の製造方法は、
(1)低分子量フェノール樹脂の水溶液に木材を浸漬し
て、該フェノール樹脂を含浸させる含浸工程と、(2)
低分子量フェノール樹脂を含浸した木材を自然乾燥させ
る第一の乾燥工程と、(3)自然乾燥後の前記木材を3
0〜60℃で送風乾燥させる第二の乾燥工程と、(4)
送風乾燥後の前記木材を100℃から160℃まで1〜
6時間に亙って徐々に又は段階的に昇温して前記低分子
量フェノール樹脂を硬化させる第一の硬化工程と、
(5)160±5℃の温度範囲を30分〜1時間維持し
て更に前記低分子量フェノール樹脂の硬化を行う第二の
硬化工程とを包含することを特徴とする。
【0013】上記構成に於いて、前記含浸工程に於ける
前記低分子量フェノール樹脂の平均分子量は200〜5
00であることが好ましい。
【0014】また、前記含浸工程に於ける前記水溶液中
の前記低分子量フェーノール樹脂の濃度は3〜15重量
%であることが好ましい。
【0015】また、前記含浸工程に於ける前記期間の間
に、減圧し及び常圧に戻す操作を少なくとも1回行うこ
とが好ましい。
【0016】本発明の音響材料の製造方法に於いては、
上述のように、低分子量フェノール樹脂の水溶液に木材
を浸漬して低分子量フェノール樹脂を含浸させた後、乾
燥が行われる。この乾燥は2工程で行われる。まず、第
一の乾燥工程で自然乾燥が行われる。この自然乾燥に要
する時間は木材の大きさに応じて適宜決めればよいが、
通常7日〜10日である。次の第二の乾燥工程では、3
0〜60℃で送風乾燥が行われる。この送風乾燥を行う
時間も木材の大きさに応じて適宜決めればよいが、通常
24時間前後である。このように乾燥を2工程で行うこ
とにより、急激な乾燥を避けて木材の変形、落込み等を
防ぐことができる。なお、第二の乾燥工程の温度が30
℃より低いと十分な乾燥速度が得られず、60℃より高
いと乾燥速度が速くなり過ぎて木材の変形、落込み等が
生じるので好ましくない。
【0017】次に、送風乾燥後の木材中に含浸されてい
る低分子量フェノール樹脂の硬化が行われる。本発明の
製造方法では、この硬化も2工程で行われる。第一の硬
化工程では、100℃から160℃まで1〜6時間に亙
り徐々に又は段階的に昇温が行われる。更に、第二の硬
化工程では、160±5℃の温度が30分〜1時間維持
される。このように、低分子量フェノール樹脂の硬化を
2工程で行うことにより、低分子量フェノール樹脂の急
激な硬化を抑制して木材のねじれ、反り等の変形を防止
することができる。
【0018】本発明に用いられる低分子量フェノール樹
脂は、硬化後の架橋密度を高めるため、単位フェノール
骨格あたりにできるだけ多くのメチロール基を含有して
いることが好ましい。含浸工程で含浸されるフェノール
樹脂の平均分子量は、200〜500であることが好ま
しい。この平均分子量が200より小さいと、単位フェ
ノール骨格あたりに含有されるメチロール基の数が少な
くなるので好ましくない。また、この平均分子量が50
0より大きいと、木材の細胞壁に保持される低分子量フ
ェノール樹脂が少なくなり、比動的ヤング率を増大させ
る効果及び内部摩擦を低減させる効果が小さくなるので
好ましくない。なお、また、含浸工程で使用する水溶液
中の低分子量フェノール樹脂の濃度は、3〜15重量%
であることが好ましく、5〜10重量%であることが更
に好ましい。
【0019】この濃度が3重量%より低いと、木材の細
胞壁に保持される低分子量フェノール樹脂が少なくな
り、比動的ヤング率を増大させる効果及び内部摩擦を低
減させる効果が小さくなるので好ましくない。また、こ
の濃度が15重量%より高いと、得られる音響材料の比
重が大きくなりすぎ、従って比動的ヤング率が小さくな
るので好ましくない。
【0020】含浸工程に於ける低分子量フェノール樹脂
の含浸は、10〜20℃で1〜7日の期間かけて行うこ
とが好ましい。この含浸温度が10℃より低いと十分な
量の低分子量フェノール樹脂が含浸されず、20℃より
高いと比較的短期間(10日程度)で樹脂の高分子量化
が生じるので好ましくない。
【0021】また、上記の含浸期間が1日より短いと十
分な量の低分子量フェノール樹脂が含浸されず、7日よ
り長いと低分子量フェノール樹脂の高分子量化、樹脂液
の作用による木材の汚れ等が生じるので好ましくない。
【0022】また、含浸工程に際し、木材を減圧下に置
き、次に常圧に戻す操作を少なくとも1回行うことによ
り、低分子量フェノール樹脂を木材の各部に確実に含浸
させることができ、しかも含浸に要する期間を短縮する
ことができる。
【0023】上記の音響材料の製造方法は、従来よりギ
ターの響板として使用されているトウヒ(Picea )属又
はネズコ(Thuja )属の木材に適しており、特にトウヒ
属に適している。これらの樹種の木材に本発明の製造方
法を適用することにより、従来のギターにはない音色を
有する音響材料を得ることができる。
【0024】
【作用】本発明の音響材料及びその製造方法では、平均
分子量が200〜500の低分子量フェノール樹脂が用
いられているので、主として木材の細胞壁に低分子量フ
ェノール樹脂を含浸させることができる。従って、これ
を細胞壁中で硬化させると、木材の比重の増大を抑制し
つつヤング率を増大させることができる。また、フェノ
ール樹脂で処理したことによって内部摩擦は増大しな
い。本発明は、従来よりギターの表板として使用されて
いるトウヒ(Picea )属又はネズコ(Thuja)属に適用
すれば、その音響特性を改良することができる。
【0025】また、本発明の音響材料の製造方法では、
低分子量フェノール樹脂水溶液に浸漬した後の木材の乾
燥が、自然乾燥と30〜60℃の送風乾燥との2工程で
行われるため、木材の変形、落込み等が生じない。
【0026】更に、乾燥後の木材中の低分子量フェノー
ル樹脂の硬化が、徐々に又は段階的に昇温する第一の乾
燥工程と、その到達温度を維持する第二の乾燥工程との
2工程で行われるため、フェノール樹脂の急激な硬化が
起らず、木材のねじれ、反り等の変形が生ずるのを防止
することができる。
【0027】
【実施例】本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明す
る。本実施例ではシトカスプルース材(Picea sitchens
is)に対し、低分子量フェノール樹脂を用いて処理を行
った場合について説明する。フェノール処理は、繊維方
向試料と放射方向試料とについて行った。繊維方向試料
の大きさ及び切り出し方向は、160mm(繊維方向)
×12mm(放射方向)×3mm(接線方向)であり、
放射方向試料の大きさ及び切り出し方向は、160mm
(放射方向)×12mm(繊維方向)×3mm(接線方
向)である。
【0028】まず、上記各試料を、平均分子量235、
378、656、799及び952の低分子量フェノー
ル樹脂の各水溶液に浸漬した。低分子量フェノール樹脂
の平均分子量は、液体クロマトグラフにより測定した。
低分子量フェノール樹脂水溶液の濃度は全て5重量%で
ある。本実施例ではこのフェノール樹脂の水溶液に各試
料を浸漬した後、減圧し及び常圧に戻す操作を3回行っ
た。また、本実施例ではこの浸漬を5日間に亙って行っ
た。浸漬温度は10〜20℃の範囲を保った。
【0029】次に、低分子量フェノール樹脂の含浸を終
えた試料を10日間自然乾燥させた(第一の乾燥工
程)。更に、これらの試料を約50℃に設定した送風乾
燥機内に入れ、24時間乾燥させた(第二の乾燥工
程)。
【0030】次に、送風乾燥後の試料に含浸されている
低分子量フェノール樹脂の硬化を行った。まず、100
℃で2時間、120℃で2時間、140℃で2時間のス
ケジュールで段階的に温度を上げ、最終的に160℃ま
で温度を上昇させた(第一の硬化工程)。そして、到達
温度160℃を更に1時間維持した(第二の硬化工
程)。
【0031】以上のようにして作製した試料には、木材
の変形、落込み等は全く生じておらず、外観上も問題は
なかった。なお、上記実施例の自然乾燥工程、送風乾燥
工程、第一の硬化工程及び第二の硬化工程に於いては、
各試料は桟積、即ち、各試料の間に棒を挟み込んで試料
の上下の面が互いに接しないようにした。
【0032】上述のようにして得られた各試料につい
て、比重、比動的ヤング率(1次モード)及び内部摩擦
を後述する方法で測定し、低分子フェノール樹脂による
処理の前後でこれらの特性値がどのくらい変化するかを
調べた。その結果を表1に示した。表1に於いて、Δγ
は比重の変化率(%)を表し、Δ(E/γ)は比動的ヤ
ング率の変化率(%)を表し、Δ(tanδ)は内部摩
擦の変化率(%)を表している。
【0033】表1から明らかなように、繊維方向では、
内部摩擦(tanδ)は何れのフェノール樹脂を用いた
場合にも減少し、比動的ヤング率(E/ γ)は分子量6
56以下の低分子フェノール樹脂を用いた場合に増大が
見られる。また、放射方向では、何れのフェノール樹脂
を用いた場合にも、内部摩擦(tanδ)は減少し、比
動的ヤング率(E/ γ)は増大している。
【0034】
【表1】
【0035】<比動的ヤング率と内部摩擦の測定>各試
料の比動的ヤング率(E/γ:Eはヤング率、γは比
重)と内部摩擦(tanδ)は、以下に示す両端自由た
わみ振動法を用い、繊維方向(木目に沿った方向)と放
射方向(木目に直交する方向)とについて、共振周波数
と減衰波形とを測定することにより得た。
【0036】まず、比動的ヤング率(E/γ)の測定に
ついて説明する。試料の各振動モードに対応した振動の
節の位置で、絹糸又は木綿糸によりこれを支持する。絹
糸又は木綿糸によって支持する位置はできるだけ正確に
決める。次に、発振器からの信号を電力増幅器で増幅し
て電磁石に入力し、試料に貼り付けた薄鉄片を介して電
磁的に試料を加振する。試料の振動を妨げないように非
接触変位計を用いて、振動応答の検出を試料の末端で行
う。発振器の周波数を変化させ、最も大きな振幅(ピー
クレベル)が得られる周波数を捜し、これを共振周波数
(fr )とする。比動的ヤング率(E/γ)はこの共振
周波数(fr )を用いて以下の式により算出する。
【0037】
【数1】
【0038】ここで、mn はモード次数(n)で決る定
数で、m1 =4.73、m2 =7.853、n>2では
n =(2n+1)π/2である。また、hは試料の厚
さ(cm)、lは試料の長さ(cm)である。表1は1
次モードでの測定結果を示したものである。
【0039】次に、内部摩擦(tanδ)の測定につい
て説明する。まず、共振周波数(fr )で加振した後こ
れを止め、その減衰波形をスペクトルアナライザーの波
形記憶メモリーに記憶させる。記憶した波形をスペクト
ルアナライザーのスペクトル解析機能を用いてフーリエ
変換し、ピークレベル値を得る。一定時間毎に減衰波形
を移動させ、それに伴うピークレベル値の変化を読み取
る。経時時間とピークレベル値との関係について回帰直
線式を求め、それを用いてピークレベル値が6.02d
B減少するのに要する時間(振幅が2分の1になる時
間)を算出し、これを半減時間(T)とする。この半減
時間(T)と共振周波数(fr )とを用いて次式から対
数減衰率(λ)を算出し、この対数減衰率(λ)をπで
除して内部摩擦(tanδ)を得る。
【0040】
【数2】
【0041】次に、上述の各試料を用い、振動モードを
1次モードから最大10次モードまで変化させて試料の
共振周波数を変化させることにより、比動的ヤング率
(E/γ)と内部摩擦(tanδ)の周波数依存性を調
べた。その結果を図1及び図2に示す。図1から明らか
なように、比動的ヤング率(E/γ)は繊維方向ではフ
ェノール樹脂の分子量が小さければ殆ど変化せず、フェ
ノール樹脂の分子量が大きくなると比動的ヤング率(E
/γ)は減少している。これに対して放射方向では、測
定した周波数の全域で比動的ヤング率(E/γ)が増大
し、特に低周波数域でその傾向が大きく現れている。こ
の結果から、低分子フェノール樹脂による処理によって
試料として用いたシトカスプルース材の強度が増大して
いることが分る。
【0042】また、図2から、繊維方向及び放射方向の
両方向に於いて内部摩擦(tanδ)の低下が見られ
る。そして、内部摩擦(tanδ)の低下は低周波数側
で大きく、高周波数側で小さくなっている。この結果か
ら、低分子フェノール樹脂を用いて処理したシトカスプ
ルース材を使用すれば、低音域に比べて耳障りな高音域
がカットされることが分る。実際に上述のように低分子
フェノール樹脂で処理したシトカスプルース材を響板と
してギターを製作してその音質を調べたところ、高音域
がカットされた艶やかな音色が得られた。
【0043】本実施例ではシトカスプルース材を使用し
た場合について説明したが、上述と同様の低分子フェノ
ール樹脂処理をドイツトウヒ材、ベイスギ材等に施した
場合にも木材の変形、落込み等は全く生じなかった。表
1にはベイスギ材に本発明を適用した場合についても併
せて記載した。ベイスギ材を使用した場合、ドイツトウ
ヒ材とほぼ等しい比重となる。また、表1から明らかな
ように、木材中に含まれる心材成分が含浸処理中に溶脱
する点でシトカプルース材と異なり、低周波数側では内
部摩擦(tanδ)は増大する。同様の理由により、比
動的ヤング率(E/γ)もシトカプルース材と異なり、
繊維方向では低下することが明らかになった。低分子フ
ェノール樹脂処理を施したベイスギ材を響板としてギタ
ーを製作してその音質を調べたところ、芯があってなお
かつ華やかな音色が得られた。
【0044】
【発明の効果】本発明の音響材料では、平均分子量が2
00〜500の低分子量フェノール樹脂を細胞壁中で硬
化させたため、木材の比重の増大を抑制しつつヤング率
を増大させることができる。また、フェノール樹脂で処
理したことによって内部摩擦は増大しない。
【0045】また、本発明の音響材料の製造方法によれ
ば、低分子量フェーノール樹脂水溶液を含浸させた木材
を2段階で乾燥させ、また乾燥後のフェノール樹脂の重
合を2段階で行うので、得られる音響材料の変形、落込
み等は生じない。また、低分子量フェノール樹脂の平均
分子量は200〜500の範囲であるため、このフェノ
ール樹脂は木材の細胞壁に保持される。また、低分子量
フェノール樹脂水溶液の濃度が3〜15重量%の範囲で
あるため、木材の細胞壁にフェノール樹脂が適切な量だ
け保持される。これらの構成により、比動的ヤング率を
増大させる効果及び内部摩擦を低減させる効果が大きく
なる。更に、低分子量フェノール樹脂の含浸工程で減圧
し及び常圧に戻す操作を少なくとも1回行うことによ
り、フェノール樹脂を木材の各部に確実に含浸させると
ともに含浸に要する期間も短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はシトカスプルース材を低分子量フェノ
ール樹脂処理した場合の繊維方向に於ける比動的ヤング
率(E/γ)の周波数依存性を示す図、(b)は放射方
向に於ける比動的ヤング率(E/γ)の周波数依存性を
示す図である。
【図2】(a)はシトカスプルース材を低分子量フェノ
ール樹脂処理した場合の繊維方向に於ける内部摩擦(t
anδ)の周波数依存性を示す図、(b)は放射方向に
於ける内部摩擦(tanδ)の周波数依存性を示す図で
ある。
【手続補正書】
【提出日】平成6年11月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均分子量が200〜500の低分子量
    フェノール樹脂を木材に含浸させ、該低分子量フェノー
    ル樹脂を加熱硬化させたことを特徴とする音響材料。
  2. 【請求項2】 前記木材の樹種が、トウヒ(Picea )属
    又はネズコ(Thuja)属である請求項1記載の音響材
    料。
  3. 【請求項3】 (1)平均分子量が200〜500の低
    分子量フェノール樹脂を木材の細胞壁に含浸させる含浸
    工程と、 (2)該低分子量フェノール樹脂を加熱硬化させる硬化
    工程とを包含する音響材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 (1)低分子量フェノール樹脂の水溶液
    に木材を浸漬して、該フェノール樹脂を木材の細胞壁に
    含浸させる含浸工程と、 (2)低分子量フェノール樹脂を含浸した木材を自然乾
    燥させる第一の乾燥工程と、 (3)自然乾燥後の前記木材を30〜60℃で送風乾燥
    させる第二の乾燥工程と、 (4)送風乾燥後の前記木材を100℃から160℃ま
    で1〜6時間に亙って徐々に又は段階的に昇温して前記
    低分子量フェノール樹脂を硬化させる第一の硬化工程
    と、 (5)160±5℃の温度範囲を30分〜1時間維持し
    て更に前記低分子量フェノール樹脂の硬化を行う第二の
    硬化工程とを包含する音響材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記低分子量フェノール樹脂の平均分子
    量が200〜500である請求項4記載の音響材料の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 前記含浸工程に於ける前記水溶液中の前
    記低分子量フェーノール樹脂の濃度が3〜15重量%で
    ある請求項4又は5に記載の音響材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記含浸工程に於ける前記期間の間に、
    減圧し及び常圧に戻す操作を少なくとも1回行うことを
    特徴とする請求項4乃至6に記載の音響材料の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記木材の樹種が、トウヒ(Picea )属
    又はネズコ(Thuja)属である請求項3乃至7記載の音
    響材料の製造方法。
JP6158422A 1994-07-11 1994-07-11 音響材料及びその製造方法 Pending JPH0825312A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2162542A1 (es) * 1998-11-04 2001-12-16 Gayol Roman Martinez Procedimiento catalitico para la conservacion y mejora acustica de maderas especiales o sus derivados.
US7982125B2 (en) 2005-04-28 2011-07-19 Yamaha Corporation Transducer and stringed musical instrument including the same
JP2019184097A (ja) * 2018-04-04 2019-10-24 国立大学法人 鹿児島大学 木材の乾燥方法

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