JP3465287B2 - 音響材料 - Google Patents

音響材料

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JP3465287B2
JP3465287B2 JP05384493A JP5384493A JP3465287B2 JP 3465287 B2 JP3465287 B2 JP 3465287B2 JP 05384493 A JP05384493 A JP 05384493A JP 5384493 A JP5384493 A JP 5384493A JP 3465287 B2 JP3465287 B2 JP 3465287B2
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  • Veneer Processing And Manufacture Of Plywood (AREA)
  • Chemical And Physical Treatments For Wood And The Like (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ピアノ、ギター、バイ
オリン等の振動部材とかコンサートホール等の内装材料
に好適に使用される音響材料に関する。
【0002】
【従来の技術】森林の保護は地球環境にとって必要不可
欠の課題であり、森林の利用における理想循環系の確立
が急務とされている。特に、我が国は、国土の70%が
森林におおわれているにも拘わらず、木材消費量の60
%近くを海外の森林資源に依存しており、このような消
費形態の改善は、諸外国からも強く求められている。
【0003】このような状況下、楽器用木材資源のほと
んどを輸入に頼っている我が国の楽器業界の将来は、も
っとも憂慮すべきところである。実際、これまで最高級
ギターの裏板に用いられてきたブラジリアンローズウッ
ドは、産出国からの輸出が禁じられ、もはや入手できな
く、又、高級なギター、ピアノ、バイオリンの響板に用
いられているドイツトウヒも、酸性雨の影響による森林
の疲弊にともない、材質の低下と共に、その生産量が減
少している。
【0004】ところで、ドイツトウヒやアカエゾマツな
どトウヒ属の木材は他の木材と異なる音響特性を有して
いる。これは木材を叩いてみれば分かるような性質で、
バイオリン製作者は、トウヒ属の中から、木を叩きなが
ら良材を選び出している。そこで、本発明者が、バイオ
リン製作者が判断した結果と木材の音響的性質との関係
について調べてみると、トウヒ属の木材、なかでも良材
は、木目の方向において、ヤング率を比重で割った比動
的ヤング率という値が大きく、内部摩擦という値が小さ
いことが判明した。ヤング率が大きい材料ほど変形しに
くいので、良材は軽い(比重が小さい)わりに変形しに
くい、すなわち、駒をはさんで弦から受ける力などに良
く耐えることできるものである。又、比動的ヤング率
が大きいことは、木材の中を伝わる音速が大きいことを
示し、これは比重が小さいことをあわせて木材が振れや
すいことにも関係する。一方、内部摩擦は、振動の吸収
しやすさに関係し、この値が小さい木材ほど、木材内部
での振動摩擦が小さく、木材に吸収される振動エネルギ
ーが少なくなる。良材は、振動しやすく、且つ、振動を
吸収しにくい。すなわち、弦から与えられた振動を音に
変換する効率に優れている。このことから、響板用木材
の比重を増大させることなしに、比動的ヤング率をさら
に大きく、あるいは内部摩擦をさらに小さくできれば、
楽器の音質が向上するものと考えられる。さらに、高比
重材(比重0.7〜1.1程度)が得られれば、ギター
やバイオリンの裏板用材となると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一方、我が国の森林資
源に目を転じると、例えば、戦後、大規模な植林が行わ
れた杉は、低比重で、軽軟なことから、付加価値の高い
有効な利用方法が見つからず、多くはいまだに森林に放
置された状態である。本発明は上記課題を解決するため
に上記知見に基づいてなされたものであり、その目的と
するところは、低比重木材に化学的及び物理的処理を施
して種々の楽器の音響部位やコンサートホール等の内装
に使用が可能な音響部材を製造することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の音響材料は、低
比重木材1からなるロータリ単板2に、低分子量の熱硬
化性樹脂を含浸させて樹脂含浸単板3を得、この樹脂含
浸単板3のみを発泡性の接着剤を介して複数枚繊維方向
を合わせて積み重ね、圧締加熱して成ることを特徴とす
るものであり、この構成により上記課題が解決されたも
のである。
【0007】
【作用】低比重木材1として杉のような未利用木材を使
用できるので、森林資源を有効に利用でき、しかも圧締
加熱条件を変えることにより、得られる材料の比重を容
易に変えることができ、又、含浸させる熱硬化性樹脂の
種類を変えることにより、種々の音響特性を具備させる
ことができるものであり、種々の楽器の音響部位に使用
できる音響材料を容易に製造することができるものであ
る。
【0008】以下、本発明を添付の図面を参考にして詳
細に説明する。本発明で使用する低比重木材1として
は、比重が0.35以下のものであれば、その種類は特
に制約を受けないが、杉のような未利用木材が森林資源
を有効利用する観点からは好ましい。この低比重木材1
は15年生以上が好ましく、より好ましくは20年生以
上である。15年生未満であると、音響特性が劣り、
又、丸太の直径が小さくて表面積の大きいロータリ単板
2が得られないおそれがある
【0009】まず、この低比重木材1からロータリレー
ス4によりロータリ単板2を製造する。主に樹脂を含浸
しやすい辺材部から得る。厚さは1〜3mm程度であ
る。次に、このロータリ単板2を樹脂溶液槽に浸漬して
熱硬化性樹脂を含浸させる。熱硬化性樹脂としてはフェ
ノール樹脂、メラミン樹脂等汎用のものを採用できる。
この熱硬化性樹脂は平均分子量が200〜1000の
分子量のものであることが好ましい。分子量が200未
満のものは入手しがたく、逆に1000を超えるもの
は、単板2の細胞壁内に侵入できなく、音響特性の向上
が見られなく、樹脂を含浸させる効果が期待できなくな
おそれがある。熱硬化性樹脂の濃度は、処理による重
量増加が少ないようにするために、好ましくは5〜10
wt%である。
【0010】樹脂を含浸させた単板を風乾、自然乾燥等
させて単板の含水率を10〜20wt%まで低下させ、
樹脂含浸単板3を製造する。この後、繊維方向aを合わ
せて複数枚の樹脂含浸単板3を積み重ね、次いで圧締加
熱して音響材料を製造する。この場合、裏割れが内側と
なるように積層する。又、ピアノ響板材料、ギター表板
材料などの低比重材料を製造する際は、単板に発泡性の
接着剤、例えば、イソシアネート系接着剤を塗布して圧
締圧を低くする。一方、ギター裏板材料などの高比重材
料を製造する際は、単板に接着剤を塗布しなくてもよ
く、含浸させた熱硬化性樹脂により単板は接着される。
このように圧締条件を変えることにより所望の比重のも
のを得ることができる。
【0011】次に、本発明を実施例に基づいて具体的に
説明する。 (実施例1)20年生の杉材からロータリレースにより
厚さ2mm、比重0.32の単板を得た。次いで、この
ロータリ単板をフェノール樹脂水溶液(固形分濃度:1
0wt%平均分子量:400)に3日間浸漬してフェノ
ール樹脂を含浸させた。含浸率は20wt%であった。
【0012】この後、風乾させ、さらに70℃で送風乾
燥させて含水率が10〜20wt%の樹脂含浸単板を得
た。次いで、二枚の樹脂含浸単板を裏割れを内側にして
イソシアネート系発泡性接着剤を80g/m2 塗布し、
ホットプレスにより圧力5kgf/cm2 、温度170
℃、30min圧締加熱した。
【0013】この後、170℃で12hr、熱処理を施
して厚さ3.6mmの音響材料を製造した。この音響材
料の音響特性として比重、比動的ヤング率及び内部摩擦
を測定した。結果を第1表に示す
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】比較例1) 実施例1で使用した無処理のロータリ単板の音響特性を
測定した。結果を第1表に示す。 (比較例2) バイオリン用ドイツトウヒの音響特性を測定した。結果
を第1表に示す。 (比較例3) ガットギター用ブラジリアンローズウッドの音響特性を
測定した。結果を第1表に示す。(比較例4) 厚さ3mmの単板を使用し、四枚の樹脂含浸単板を接着
剤を使用しないで、ホットプレスの熱盤間の最終距離を
1cmに規制して圧力20kgf/cm 、温度170
℃、30minで圧締加熱した以外は実施例1と同様に
して厚さ1cmの音響材料を製造した。 この音響材料の
音響特性を測定した。結果を第1表に示す。 (比較例5) 厚さ3mmの単板を使用し、六枚の樹脂含浸単板を接着
剤を使用しないで、ホットプレスの熱盤間の最終距離を
1cmに規制して圧力35kgf/cm 、温度170
℃、30minで圧締加熱した以外は実施例1と同様に
して厚さ1cmの音響材料を製造した。 この音響材料の
音響特性を測定した。結果を第1表に示す。 (比較例6) 厚さ3mmの単板を使用し、八枚の樹脂含浸単板を接着
剤を使用しないで、ホットプレスの熱盤間の最終距離を
1cmに規制して圧力40kgf/cm 、温度170
℃、30minで圧締加熱した以外は実施例1と同様に
して厚さ1cmの音響材料を製造した。 この音響材料の
音響特性を測定した。結果を第1表に示す。 (比較例7) 厚さ3mmの単板を使用し、一〇枚の樹脂含浸単板を接
着剤を使用しないで、 ホットプレスの熱盤間の最終距離
を1cmに規制して圧力45kgf/cm 、温度17
0℃、30minで圧締加熱した以外は実施例1と同様
にして厚さ1cmの音響材料を製造した。 この音響材料
の音響特性を測定した。結果を第1表に示す。
【表1】 <比動的ヤング率と内部摩擦の測定法> 比動的ヤング率と内部摩擦は、以下に示すように両端自
由たわみ振動法により繊維方向a(木目に沿った方向)
と接線方向b(木目に直交する方向)について測定し
た。尚、比較例2のドイツトウヒと比較例3のブラジリ
アンローズウッドについては、実際の楽器には柾目板が
用いられているので、繊維方向と接線方向の代わりに放
射方向(木目に直交し、かつ樹木の中心から外周の方
向)について測定した。
【0018】試料には、ねじれ振動を生じにくい棒状試
片を用い、各モードに対応した振動の節の位置で、絹糸
あるいは木綿糸によりできるだけ正確に支持する。発振
器からの信号を電力増幅器で増幅して電磁石に入力す
る。試料に貼り付けた薄鉄片を介して電磁的に試料を加
振する。試料の振動応答の検出を試料の一端で、試料の
振動を妨げないように非接触変位計を用いて行う。発振
器の周波数を変えていきながら最も大きな振幅(ピーク
レベル)が得られる周波数を捜し、これを共振周波数と
する。
【0019】比動的ヤング率(E/γ)は共振周波数
(fr )と試料形状から次式により求められる。 fr =mn 2 h(E/γ)1/2 /(4×31/2 πl2 ) mn :モード次数(n)で決まる定数、m1 は4.7
3、m2 は7.853、n>2では、(2n+1)π/
2 l:試料長(cm) h:試料厚さ(cm) 続いて、共振点で加振を止め減衰波形をスペクトルアナ
ライザーの波形記憶メモリに取り込み、これをスペクト
ル解析機能でフーリエ変換してピークレベル値を得る。
一定時間毎に減衰波形を移動させて、それに伴うピーク
レベル値の変化を読み取る。経過時間とピークレベル値
の関係について回帰直線式を求め、そこからピークレベ
ル値が6.02dB減少するのに要する時間T(振動振
幅が半分になる時間)を計算する。半減時間Tと共振周
波数(fr )から次式を用いて対数減衰率(λ)を計算
する。
【0020】λ=0.6932/(T×f) 対数減衰率(λ)をπで除して内部摩擦(tanδ)を
求める。第1表から明らかなように、無処理である比較
例1の単板に比して、実施例のものにあっては、比動的
ヤング率は変わらないが、内部摩擦は繊維方向では30
%程度、接線方向では50%程度低下する。
【0021】又、杉材である比較例1は、繊維方向では
比動的ヤング率、内部摩擦といった音響特性において
は、ピアノ、バイオリン響板用ドイツトウヒ材や高級ギ
ター裏板用ブラジリアンローズウッド材とあまり変わり
なく、実施例からも明らかなように、杉材に化学的及び
物理的処理を施すことにより音響材料として好適に採用
できることがわかる。
【0022】
【発明の効果】請求項1に係る発明にあっては、低比重
木材からなるロータリ単板に、低分子量の熱硬化性樹脂
を含浸させて樹脂含浸単板を得、この樹脂含浸単板のみ
を発泡性の接着剤を介して複数枚繊維方向を合わせて積
み重ね、圧締加熱することから、低比重木材として杉の
ような未利用木材を使用できるので、森林資源を有効に
利用でき、しかも単板に発泡性の接着剤を塗布すること
によって圧締圧を低くすることができ、上記接着剤の塗
布により形成された接着層に中空部ができることによっ
、比重を増大させることなく結果的に低比重(0.5
以下)であって音響に優れた変形しにくい材料を安定的
得ることができること、又、含浸させる熱硬化性樹脂
の種類を変えることにより、種々の音響特性を具備させ
ることができるものであり、種々の楽器の音響部位に使
用できる音響材料、具体的にはピアノ響板材料、ギター
表板材料などの低比重材料を容易に製造することができ
るものである。また請求項2に係る発明にあっては、熱
硬化性樹脂の平均分子量が200〜1000であると共
に熱硬化性樹脂の濃度が5〜10wt%であるので、請
求項1に係る発明の効果のほか、樹脂が木材に含浸しや
すく、軽量の音響材料を安定的に得ることができるもの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における単板の製造工程を示
す説明図である。
【図2】同上の単板の平面図である。
【図3】同上における圧締工程を示す説明図である。
【符号の説明】
1 低比重木材 2 ロータリ単板 3 樹脂含浸単板
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−85702(JP,A) 特開 平3−140207(JP,A) 特開 平3−247409(JP,A) 特開 平3−79302(JP,A) 特開 昭60−98490(JP,A) 特開 昭55−11862(JP,A) 特開 昭57−2752(JP,A) 特開 昭57−165248(JP,A) 実開 昭54−74779(JP,U) 特公 昭36−18698(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B27D 1/00 B27D 1/04 B27K 3/15 B32B 21/13

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】低比重木材からなるロータリ単板に、低分
    子量の熱硬化性樹脂を含浸させて樹脂含浸単板を得、こ
    の樹脂含浸単板のみを発泡性の接着剤を介して複数枚繊
    維方向を合わせて積み重ね、圧締加熱して成ることを特
    徴とする音響材料。
  2. 【請求項2】熱硬化性樹脂の平均分子量が200〜10
    00であると共に熱硬化性樹脂の濃度が5〜10wt%
    であることを特徴とする請求項1に記載の音響材料。
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