JPH08219973A - 落体式粘度測定方法及びその装置 - Google Patents

落体式粘度測定方法及びその装置

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JPH08219973A
JPH08219973A JP7046094A JP4609495A JPH08219973A JP H08219973 A JPH08219973 A JP H08219973A JP 7046094 A JP7046094 A JP 7046094A JP 4609495 A JP4609495 A JP 4609495A JP H08219973 A JPH08219973 A JP H08219973A
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JP
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falling
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columnar
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JP7046094A
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Hideki Yamamoto
秀樹 山本
Hayaji Shibata
隼次 芝田
Fumio Tanimoto
文男 谷本
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Original Assignee
Research Institute for Production Development
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Newton流体、Power Law 流体に加えて降伏応
力を持つBingham 流体や非Bingham 流体等に対しても精
度良く流動曲線を解析することができる落体式粘度測定
方法及びその装置を提供する。 【構成】 被測定物である流体中に密度の異なる複数の
円柱状落体を落下して各円柱状落体毎に落下終端速度U
t を測定し、円柱状落体が有する密度ρs と被測定物で
ある流体が有する密度ρf との密度差(ρs −ρf )と
円柱状落体の落下終端速度Ut とを座標軸として各円柱
状落体毎に得た座標の分布を満足する線分を求め、該線
分に近似する流体の流動曲線から流体の種類を特定して
該流体の構成方程式を用いることにより被測定物である
流体の粘度を求める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体中に密度の異なる
複数の円柱状落体を落下させて落下終端速度を測定する
ことにより流体の流動特性を求める落体式粘度測定方法
及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知の通り、流体の流動特性を求めるに
は、一般に回転法による粘度測定方法が広く用いられて
いるが、その他、流体中に球や円柱の物体を落下させて
粘度を測定する落下法による粘度測定方法がある。この
方法は、特に、Newton流体(ニュートン流体)に対して
信頼できる測定結果を得ることができる。
【0003】Park等は落体の両端に半球部分をもつ円柱
形状のニードルをFalling Needle Viscomter(以下、
「FNV」という。)の落体として採用し、このニード
ルの両端の半球部分について一つの球とみなし、以下に
示す流体に対するStokesの式を適用して粘度を測定して
いる。 Ut ={( 2kR)2( ρs −ρf)g /18μ}Cw … (1) (1)式中、Ut はニードルの落下終端速度、kRはニー
ドルの半径、ρs はニードルの密度、ρf は流体の密
度、g は重力の加速度、μは流体の粘度、そしてCw は
壁面補正係数である。また、Park等は壁面補正係数Cw
として、以下に示すFaxon の提案式を用いている。 Cw =1−2.014k+2.09k3−0.95k5 … (2) (2)式中、kはFNVで使用される容器の径に対する
ニードルの径の割合(装置定数)である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記回転法による粘度
測定方法は回転体を回転させて設定回転数に対する流体
の粘性抵抗によるトルクを測定しているので、回転体に
接していない流体部分の流動挙動を検出することは難し
く、特に降伏応力を持つような非Newton流体を測定する
場合、低剪断速度領域においては部分流動が生じるた
め、測定精度が低下するという問題点があった。また、
前記落下法による粘度測定方法によりNewton流体以外の
流体の流動特性を測定するのは、一般に不向きであると
されており、Park等が使用した円柱状ニードルにおいて
もNewton流体やPower Law 流体についてのみ提案され、
その他の降伏応力を持つような非Newton流体について使
用できるという報告はなく、この円柱状ニードルを非Ne
wton流体に使用して得た実測値を前記(1),(2)式
に用いることができる確証がないという問題点や前記
(2)式はNewton流体について与えられた式であるため
非Newton流体に適用する場合には、壁面補正係数Cwを流
体の構成方程式に応じて補正する必要があり、各流体に
対して経験的に壁面補正係数Cwを決定することは、非Ne
wton流体の絶対的な測定法が確立されていない現状では
非常に困難であるという問題点があった。さらに、球体
を使用した落下法による粘度測定方法においては、寸法
的に完全な球体を得ることは難しく、不完全な球体を落
下させた場合、一定軌道を有さない降下運動をすること
となり、信頼できる測定結果が得られないという問題点
があった。
【0005】そこで、本発明者等は、落体を落下させる
だけで流体の流動特性を容易に測定することができる極
めて単純な落下法による粘度測定方法を採用して、簡単
にそして精度良く成形できる円柱状ニードルを使用する
ことにより、Newton流体だけでなく非Newton流体の流動
特性をも精度良く得ることはできないかと、その具現化
をはかるべく研究、実験を重ねてきた。その結果、先
ず、円柱状ニードルの胴の部分をPark等が使用した円柱
状ニードルの半球部分に対して十分に長くすると、流体
が高粘性を有するものであれば、ニードルの落下終端速
度Ut はニードルの密度によって異なるが一般に0.1 ×
10 -3m/s 〜0.8 ×10-1m/s であることから、半球部分の
ために生じる落下終端速度誤差が小さいということに着
目し、両端に半球を持たない円柱のみから構成されるニ
ードルを採用して、種々の流体について実験を重ねた結
果、ニードルの落下軌道が安定していることを確認でき
た。そこで、このニードルを用いることにより落体法に
より、非Newton流体についても流動特性を得られないも
のかと、さらに実験を重ねた結果、ニードルの密度ρs
と流体密度ρf との密度差(ρs −ρf )と落下終端速
度Ut とを座標軸とする座標の分布状態に近似する線分
と流体の流動曲線とが相似性を有するという刮目すべき
知見を得た。これにより、Newton流体、Power Law 流体
に加えて降伏応力を持つBingham 流体(ビンガム流体)
や非Bingham 流体(非ビンガム流体)等に対しても流動
曲線を解析することができ、このように解析範囲が拡張
されることにより、前記技術的課題を達成したものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記技術的課題は、次の
通りの本発明によって解決できる。即ち、本発明に係る
落体式粘度測定方法は、流体を満たした円筒状容器内を
落下する円柱状落体の落下終端速度を測定することによ
り流体の粘度を求める落体式粘度測定方法において、被
測定物である流体中に密度の異なる複数の円柱状落体を
落下して各円柱状落体毎に落下終端速度Ut を測定し、
円柱状落体が有する密度ρs と被測定物である流体が有
する密度ρf との密度差(ρs −ρf )と円柱状落体の
落下終端速度Ut とを座標軸として各円柱状落体毎に得
た座標の分布を満足する線分を求め、該線分に近似する
流体の流動曲線から流体の種類を特定して該流体の構成
方程式を用いることにより被測定物である流体の粘度を
求めるものである。また、本発明に係る落体式粘度測定
方法は、流体を満たした円筒状容器内を落下する円柱状
落体の落下終端速度を測定することにより流体の粘度を
求める落体式粘度測定方法において、被測定物である流
体中に密度の異なる複数の円柱状落体を落下して各円柱
状落体毎に落下終端速度Ut を測定し、円柱状落体が有
する密度ρs と被測定物である流体が有する密度ρf と
の密度差(ρs −ρf )と円柱状落体の落下終端速度U
t とを座標軸として各円柱状落体毎に得た座標の分布を
満足する第一の線分を求め、前記密度差(ρs −ρf )
の対数と前記落下終端速度(Ut )の対数とを座標軸と
して各円柱状落体毎に得た座標の分布を満足する第二の
線分を求め、第一の線分がほぼ原点を通り、第二の線分
がほぼ直線である場合に、第一の線分に近似する流体の
流動曲線と第二の線分の勾配から少なくともNewton流
体、Pseudoplastic 流体(擬塑性流体)又はDilatant流
体(ダイラタント流体)を特定し、該流体の構成方程式
を用いることにより被測定物である流体の粘度を求める
ものである。さらに、本発明は前記落体式粘度測定方法
において、第二の線分の勾配がほぼ1に等しい場合は、
被測定物である流体はNewton流体であるとして特定し、
第二の線分の勾配がほぼ1より小さい場合は、Pseudopl
astic 流体であるとして特定し、第二の線分の勾配がほ
ぼ1より大きい場合は、Dilatant流体であるとして特定
するものである。
【0007】また、本発明に係る落体式粘度測定装置
は、流体を満たした円筒状容器内を落下する円柱状落体
の落下終端速度を測定することにより流体の粘度を求め
る落体式粘度測定装置において、密度の異なる複数の円
柱状落体と、被測定物である流体中を落下する前記円柱
状落体の落下終端速度Ut を検出する検出手段と、円柱
状落体が有する密度ρs と被測定物である流体が有する
密度ρf との密度差(ρs −ρf )と前記落下終端速度
Ut とを座標軸とする各円柱状落体毎に得た座標の分布
を満足する線分を求め、該線分に近似する流体の流動曲
線から流体の種類を特定し、該流体に対応する流体の構
成方程式を用いて前記被測定物である流体の流動曲線を
算出する演算手段とを含んでなるものである。また、本
発明に係る落体式粘度測定装置は、流体を満たした円筒
状容器内を落下する円柱状落体の落下終端速度を測定す
ることにより流体の粘度を求める落体式粘度測定装置に
おいて、密度の異なる複数の円柱状落体と、被測定物で
ある流体中を落下する前記円柱状落体の落下終端速度U
t を検出する検出手段と、円柱状落体が有する密度ρs
と被測定物である流体が有する密度ρf との密度差(ρ
s −ρf )と円柱状落体の落下終端速度Ut とを座標軸
とする各円柱状落体毎に得た座標の分布を満足する第一
の線分を求め、前記密度差(ρs −ρf )の対数と前記
落下終端速度(Ut )の対数とを座標軸とする各円柱状
落体毎に得た座標の分布を満足する第二の線分を求め、
第一の線分がほぼ原点を通り、第二の線分がほぼ直線で
ある場合に、第一の線分に近似する流体の流動曲線と第
二の線分の勾配から少なくともNewton流体、Pseudoplas
tic 流体又はDilatant流体を特定し、該流体に対応する
流体の構成方程式を用いて前記被測定物である流体の流
動曲線を算出する演算手段とを含んでなるものである。
さらに、本発明は前記落体式粘度測定装置において、第
二の線分の勾配nが0.95≦n≦1.05の場合は、被測定物
である流体はNewton流体であるとして特定し、第二の線
分の勾配nがn<0.95の場合は、Pseudoplastic 流体で
あるとして特定し、第二の線分の勾配nがn>1.05の場
合は、Dilatant流体であるとして特定するものである。
【0008】次に、本発明における流体に対する流動特
性解析方法について説明する。図1は本発明における円
柱状落体が落下している状態を示す概念図、図2はNewt
on流体及びPower Law 流体についての落下する円柱状落
体が押し退ける流体の移動方向を示す速度断面説明図、
図3は本発明における流体の流動特性解析手順を説明す
る説明図であり、図1及び図2において、1は半径kR、
長さLの円柱状落体である円柱状ニードル、2は流体で
満たされた半径Rの円筒状容器、3は落下する円柱状ニ
ードル1により押し退けられる円柱状ニードル1周囲の
流体要素としての、内半径r、外半径r+dr、長さLと
した微小円柱殻である。
【0009】円柱状ニードル1の落下速度が0.1 ×10-3
m/s 〜0.8 ×10-1m/s と非常に小さく、円柱状ニードル
1と流体との間には滑りが発生せず、流体は非圧縮性で
あるという条件の下で円筒状容器2に満たされた流体の
中央を円柱状ニードル1が落下終端速度Ut で落下する
と、図1に示すように、微小円柱殻3の上面及び下面に
はそれぞれ圧力p1 ,p2 が働き、内側面及び外側面に
はそれぞれ剪断応力τ,τ+dτが働く。また、流体は
等速落下運動をしているので、運動量増加速度は0とな
る。よって、このときの微小円柱殻3に働く力の釣り合
いから以下の関係式が成り立つ。
【0010】
【数1】
【0011】ただし、Δp=p1 −p2 (Δp<0) また、このとき、図2に示すように、円柱状ニードル1
と円筒状容器2との壁面には滑りが生じないと仮定して
いるので、速度に関する境界条件として以下の関係式が
成り立つ。
【0012】
【数2】
【0013】また、円柱状ニードル1の壁面と円筒状容
器2の壁面との間に形成される環状流路を単位時間当た
りに通過する流体の量は円柱状ニードル1が押し退ける
流体の量と等しいので以下の関係式が成り立つ。
【0014】
【数3】
【0015】さらに、円柱状ニードル1の壁面におい
て、重力、浮力、圧力及び粘性力が釣り合っているので
以下の関係式が成り立つ。
【0016】
【数4】
【0017】以上の(3)〜(6)式に各種流体の構成
方程式、即ち、Newton流体の場合は、
【0018】
【数5】
【0019】(7)式を、Pseudoplastic 流体の場合
は、
【0020】
【数6】
【0021】(8)式を、Dilatant流体の場合は、
【0022】
【数7】
【0023】(9)式を、Bingham 流体の場合は、
【0024】
【数8】
【0025】(10)式を、非Bingham 流体の場合は、
【0026】
【数9】
【0027】(11)式を連立させることによって、流体
の粘度、剪断速度、剪断応力等の流動特性を解析するこ
とができる。なお、τは剪断応力、
【0028】
【数10】
【0029】(以下、「γ」と記す。)は剪断速度、μ
は流体の粘度、Kは流体粘稠度、ηB及びηH はビンガ
ムパラメーター、nは流動指数、τy は降伏応力であ
る。なお、流体粘稠度K、ビンガムパラメーターηB
びηH は粘度μに該当するものである。
【0030】そこで、先ず、密度の異なる複数の円柱状
ニードル1を自然落下させて各円柱状ニードル1毎に落
下終端速度Ut を測定し、落下終端速度Ut をX軸、密
度差(ρs −ρf )をY軸として、Ut −(ρs −ρf
)線分を得る(図3参照)。このUt −(ρs −ρf
)線分と流体の流動曲線とは相似性を有することか
ら、Ut −(ρs −ρf )線分が原点(0,0)を通れ
ば、Newton流体、Pseudoplastic 流体或いはDilatant流
体であると判別することができ、原点(0,0)を通ら
なければ、Bingham 流体、非Bingham 流体或いはそれ以
外の流体であると判別することができる。
【0031】ここで、流動指数nの値を知るために、Po
wer Law 流体の構成方程式 τ=Kγn ((8)或いは
(9)式)を前記(3)式と(6)式にそれぞれ代入
し、
【0032】
【数11】
【0033】(12)式及び(13)式を得る。続いて、
(12)式を無次元化し、簡単にして(13)式に代入する
と、
【0034】
【数12】
【0035】(14)式が得られ、(ρs −ρf )とUt
との関係が示される。ただし、C1 は積分定数である。
次に、流動指数nの意味を明確にするために、(14)式
の両辺の対数をとると、
【0036】
【数13】
【0037】となる。(15)式より明らかなように、流
動指数nはlog (Ut )をX軸、log (ρs−ρf )Y
軸として得た直線の勾配を表しているので、落下終端速
度Ut と密度差(ρs −ρf )との対数をとり、落下終
端速度(Ut )の対数と密度差(ρs−ρf )の対数と
を座標軸とする線分の勾配を調べることにより、判別で
きた流体をよりいっそう確実なものとすることができ
る。即ち、図3に示すように、原点(0,0)を通り、
且つ、勾配nが1であれば、(7)式よりNewton流体で
あると特定でき、勾配nが1以下の場合は、(8)式よ
りPseudoplastic 流体であると特定でき、勾配nが1以
上の場合は、(9)式よりDilatant流体であると特定す
ることができる。また、原点(0,0)を通らず、且
つ、勾配nが1であれば、(10)式よりBingham 流体で
あると特定することができる。
【0038】流体の種類が特定されることにより、各流
体の構成方程式を使用することができるので、(3)〜
(6)式に(7)〜(11)式のいずれかの、該当する流
体の構成方程式を連立することにより、被測定物である
流体の流動曲線を得ることができ、流動特性を解析する
ことができる。
【0039】なお、落下終端速度とは、流体中を等速度
落下運動をしているときの速度をいい、流体中の落体が
約4 cm の間隔を3秒以上で通過するとき等速度落下運
動をしていることが経験的にわかっている。
【0040】また、落下終端速度Ut と密度差(ρs −
ρf )とを座標軸とする第一の線分が原点(0,0)を
通るか否かは、第一の線分を表す関数の定数項が0であ
るものの他、計算上の誤差を見越して、−0.07≦(定数
項)≦0.07を満足するものも原点(0,0)を通るとし
た。これは多数の実験結果から統計的に得られたもので
ある。
【0041】さらに、第一の線分がほぼ原点を通り、落
下終端速度(Ut )の対数と密度差(ρs −ρf )の対
数とを座標軸とする第二の線分がほぼ直線である場合
に、該線分の勾配nが1であるか否かを境にして、1で
あれば、Newton流体、1以下であれば、Pseudoplastic
流体、1以上であれば、Dilatant流体として分類する
と、Newton流体でありながら、Pseudoplastic 流体やDi
latant流体として分類される場合があるという弊害があ
ったので、Newton流体について多数サンプリングし、統
計的に、勾配nが0.95≦n≦1.05を満足すればNewton流
体であるとして特定できるという結果を得ている。
【0042】
【作用】本発明においては、円柱状ニードルを落体とし
て用いたので、形状の揃ったものを容易に得ることがで
き、密度の異なる円柱状ニードルを比較的容易に得るこ
とができる。また、密度の異なる複数の円柱状ニードル
を被測定物である流体に落下し、各円柱状ニードル毎に
落下終端速度Ut を測定して、落下終端速度Ut と密度
差(ρs −ρf )とを座標軸とする線分を得て、該線分
に近似する流動曲線を有する流体を未知の流体として流
動曲線を得るようにしたので、予め粘度計校正用標準液
等の標準流体を用いて装置定数等を決定しておく必要が
なく、より簡便に被測定物である流体の流動解析をする
ことができる。また、本発明は流体が高粘性で低速流動
する場合に特に適しているので、一般に測定が困難とさ
れていた降伏応力を有する流体について精度良く流動解
析することができる。さらに、落下終端速度(Ut )の
対数と密度差(ρs −ρf )の対数をとり、これらを座
標軸とする線分を得て、該線分がほぼ直線である場合に
該線分の勾配により流体を特定するようにしたので、よ
り明確に流体を特定することができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。実施例
1.図4は本発明に係る落体式粘度測定装置の一実施例
を模型的に示した縦断面説明図、図5は図4に示すニー
ドルの縦断面図、図6は図4に示す演算制御装置の構成
を示すブロック図、図7は図6に示す演算制御装置を制
御するプログラムのフローチャート図、図8は流体の流
動曲線を解析するプログラムのフローチャート図、図9
はUt をX軸、d(ρs −ρf )/d(Ut )をY軸と
する座標軸におけるBingham 及び非Bingham 流体の曲線
の形状を示すグラフである。これらの図において、図1
と同一符号は同一又は相当部分を示し、本実施例におけ
る落体式粘度測定装置4は、円柱状ニードル(以下、単
に「ニードル」という。)1と、流体中を落下する前記
ニードル1の落下終端速度を測定する測定装置5と、流
体の流動曲線を特定して流動特性を解析する演算制御装
置6とからなる。
【0044】次に、前記測定装置5、ニードル1及び演
算制御装置6の構成について説明する。前記測定装置5
は、図4に示すように、二重のガラス管により構成され
ており、7は未知の流体8を満たした内径4cm,深さ40
cmの内管(円柱状容器)2を中央に据えた外管であり、
内管2と外管7との隙間には内管2内の流体8の温度を
適温に保つために恒温槽(図示せず。)からの温水を循
環させる。そのために、外管7の下部には温水を取り入
れる注入口9を、上部には温水を排出する排出口10を
設けてある。
【0045】11、12はステンレス管13内に4.817c
m の間隔を設けて設置した第一の磁気センサーと第二の
磁気センサーであり、第一の磁気センサー11が内管2
の中間部より下方に位置し、第二の磁気センサー12が
その下方に位置するようにステンレス管13を外管7内
の内管2外壁に添うようにして立設してある。また、1
4は第一の磁気センサー11からの検知信号を受けた
後、第二の磁気センサー12からの検知信号を受けるま
での時間を測定するカウンターであり、これにより第一
の磁気センサー11と第二の磁気センサー12との間を
落下するニードル1の通過時間を各ニードル1毎に得る
ことができる。
【0046】15は内管2と外管7とにより二重構造と
なったガラス管部を載せる架台であり、架台15内部の
内管2下方には、内管2内の流体8を排出するためにド
レインバルブ16が設けられている。また、17はニー
ドル1を内管2の中心軸に沿って落下させるために内管
2の開口に嵌め込むようにして設けた中央にニードル差
し込み口を有するランチャーであり、18は恒温槽から
送られてきた外管7内の温水の温度を測定するデジタル
温度計である。
【0047】前記ニードル1は、図5に示すように、円
筒状のガラス管1aよりなり、両端の開口は角に丸みを
有するテフロンキャップ1bにより密封され、外径4m
m,長さ12cmの外形形状となっており、ガラス管1a内
の先端には下から順に磁石1c、重り1d及び密度を示
すラベル1eが収められている。よって、異なる重さの
重り1dを収めることにより、密度の異なるニードル1
を得ることができる。
【0048】前記演算制御装置6は、図6に示すよう
に、入力部19と制御部20と表示部21と印字部22
とからなり、入力部19では、センサー間距離及び流体
8の密度とニードル1の密度との各数値、それにカウン
ター14で得られた各ニードル1毎の通過時間をキーボ
ードから入力する。また、制御部20は、演算制御装置
6を制御するCPU23と、該CPU23が実行するプ
ログラムに基づいて演算を行う演算部24と、各種流体
の流動構成方程式及び標準の流動曲線を描くためのデー
タ並びに予めキーボード(入力部)19から入力される
センサー間距離と流体の密度数値とを格納する記憶部2
5とからなる。さらに、表示部21ではCRTに、そし
て印字部22ではプリンタに解析結果を出力する。
【0049】従って、本実施例における落体式粘度測定
装置4では、流体8中を落下するニードル1の落下終端
速度を検出する検出手段は、第一及び第二の磁気センサ
ー11,12と、カウンター14と、該カウンター14
で得た通過時間と予め入力されたセンサー間距離とから
落下終端速度を算出する演算制御装置6とを含んでな
る。
【0050】次に、測定手順について説明する。先ず、
被測定物である流体8を内管2に満たす。続いて、恒温
槽からの温水を内管2と外管7との間の槽に満たし、該
温水を恒温槽、注入口9、外管7、排出口10、恒温槽
と循環させ、内管2内の流体8の温度を一定温度に保
つ。恒温槽から25℃の温水を循環させることによりデジ
タル温度計18が表示する温度が25℃の値を変動しなく
なったとき、流体8の温度は25℃になったとする。その
後、ランチャー17からニードル1を自然落下させる。
ランチャー17のニードル差し込み口は中央に設けられ
ているので、ニードル1は内管2の中心軸に沿って落下
する。ニードル1の先端が第一の磁気センサー11位置
を通過すると、第一の磁気センサー11がニードル1内
に収められた磁石の磁気を検知してニードル検知信号を
カウンター14に出力するので、ニードル検知信号を受
けたカウンター14は時間の測定を開始する。ニードル
1の先端が続いて第二の磁気センサー12位置を通過す
ると、第二の磁気センサー12がニードル1内に収めら
れた磁石の磁気を検知してニードル検知信号をカウンタ
ー14に出力するので、ニードル検知信号を受けたカウ
ンター14は時間の測定を終了する。よって、カウンタ
ー14は通過時間を表示することとなる。
【0051】次に、演算手順について説明する。演算制
御装置6のCPU23は図7に示す制御プログラムと図
8に示す解析プログラムを実行する。制御プログラムで
は、キーボード19からセンサー間距離4.817cm と流体
密度の数値が入力されると(ステップ31)、CPU2
3の制御によりこれらの数値が記憶部25に格納され
る。続いて、測定に供されたニードル1の密度数値とそ
の通過時間が入力されると(ステップ32)、CPU2
3は解析プログラムを実行する(ステップ33)。解析
プログラムによって解析された流体の流動特性はCPU
23の制御により、CRT(表示部)21及びプリンタ
(印字部)22に出力される(ステップ34,35)。
【0052】解析プログラムでは、演算部24におい
て、落下終端速度Ut をX軸、密度差(ρs −ρf )を
Y軸とする各ニードル1毎に求められた座標の分布を満
足する線分(以下、「(Ut )−(ρs −ρf )線分」
ともいう。)の関数を最小二乗法により算出する(ステ
ップ41)。(Ut )−(ρs −ρf )線分が原点を通
る線分であるか否かを調べるために(Ut )−(ρs −
ρf )線分を表す関数の定数項が−0.07より大きく0.07
までの値であるか否かを判断する(ステップ42)。定
数項が±0.07の間の値であれば、Newton流体、Pseudopl
astic 流体又はDilatant流体の中から選択し、±0.07よ
り外れる値であれば、Bingham 流体又は非Bingham 流体
の中から選択する。得られた(Ut )−(ρs −ρf )
線分に近似する流動曲線を予め記憶部25に記憶されて
いる各流体の流動曲線から選択し、CPU23の制御に
より(Ut )−(ρs −ρf )線分と共に、選択された
流体の流動曲線をCRT21に表示させる。Newton流
体、Pseudoplastic 流体或いはDilatant流体であるかを
明確にするために、落下終端速度の対数ln(Ut )をX
軸、密度差の対数ln(ρs −ρf )をY軸とする各ニー
ドル1毎に求められる座標の分布を満足する線分(以
下、「(Ut )−(ρs −ρf )対数線分」ともい
う。)の関数を最小二乗法により算出する(ステップ4
3)。(Ut )−(ρs −ρf )対数線分を直線とする
と誤差が生じ無理があるとなった場合には直線の勾配を
求めることができないため、Newton流体、Pseudoplasti
c 流体及びDilatant流体のいずれにも該当しない流体で
あるとして処理するために、(Ut )−(ρs −ρf )
対数線分を直線として処理することができるか否かを判
断する(ステップ44)。最小二乗法により得られる線
分を直線とするには無理がある場合には、Newton流体、
Pseudoplastic 流体、Dilatant流体、Bingham 流体及び
非Bingham 流体のいずれにも属さない流体であるとして
特定し(ステップ45)、この解析プログラム(ステッ
プ33)の出口へジャンプする。(Ut )−(ρs −ρ
f )対数線分がほぼ直線である場合には、該線分につい
てその勾配nを調べ(ステップ46)、勾配nがn<0.
95を満足すれば、Pseudoplastic 流体であるとして確定
し(ステップ47)、勾配nが0.95≦n≦1.05を満足す
れば、Newton流体であるとして確定し(ステップ4
8)、勾配nがn>1.05を満足すれば、Dilatant流体で
あるとして確定する(ステップ49)。定数項が±0.07
の範囲にない値、即ち、原点を通らない(Ut )−(ρ
s −ρf )線分については、(Ut )−(ρs −ρf )
線分を表す関数の微分係数を調べ(ステップ50)、U
t をX軸、d(ρs −ρf )/d(Ut )をY軸とする
線分が極値を有しているか否かを判断する(ステップ5
1)。極値を有していれば、(Ut )−(ρs −ρf )
線分は複雑なS字曲線を描いていることから、Newton流
体、Pseudoplastic 流体、Dilatant流体、Bingham 流体
及び非Bingham 流体のいずれにも属さない流体であると
して特定し(ステップ45)、この解析プログラム(ス
テップ33)の出口へジャンプする。ステップ51にお
いて、Ut をX軸、d(ρs −ρf )/d(Ut )をY
軸とする線分が極値を有していなければ、図3よりBing
ham 流体の流動曲線は直線部分を有し、非Bingham 流体
の流動曲線は上に凸で減少傾向の形状であることがわか
っていることから、その線分に一定部分が存在するか否
かを判断し(ステップ52)、図9に示すように、Ut
をX軸、d(ρs −ρf )/d(Ut )をY軸とする座
標軸において、Bingham 流体の線分に一定部分が存在す
れば、Bingham流体であると確定し(ステップ53)、
非Bingham 流体の流動曲線の形状から明らかなように、
線分が単調減少であるので、非Bingham 流体であるとし
て確定する(ステップ54)。そして、前記(3)〜
(6)式の4式と確定した流体の構成方程式、即ち、Ne
wton流体の場合は、(7)式を、Pseudoplastic 流体の
場合は、(8)式を、Dilatant流体の場合は、(9)式
を、Bingham 流体の場合は、(10)式を、非Bingham 流
体の場合は、(11)式を連立させて剪断応力τ、剪断速
度γ及び流体の粘度μ、流体粘稠度K,ビンガムパラメ
ーターηB 或いはηH を計算する(ステップ55)。
【0053】次に、具体的数値を用いて図面に基づき特
定手順を説明する。図10、図11及び図12はそれぞ
れ流体Aの(Ut )−(ρs −ρf )線分、(Ut )−
(ρs −ρf )対数線分及び流動曲線を表示した画面を
示した図であり、図13、図14及び図15はそれぞれ
流体Bの(Ut )−(ρs −ρf )線分、(Ut )−
(ρs −ρf )対数線分及び流動曲線を表示した画面を
示した図であり、図16、図17及び図18はそれぞれ
流体Cの(Ut )−(ρs −ρf )線分、(Ut )−
(ρs −ρf )対数線分及び流動曲線を表示した画面を
示した図であり、図19及び図20は流体Dの(Ut )
−(ρs −ρf )線分及び流動曲線を表示した画面を示
した図であり、図21及び図22は流体Eの(Ut)−
(ρs −ρf )線分及び流動曲線を表示した画面を示し
た図である。
【0054】試料として、粘度計校正用標準液JS2000
(昭和シェル石油株式会社製:20℃で密度876.7kg/m3
を流体Aとした。また、ポリエチレングリコール(和光
純薬株式会社製:一級試薬:分子量4,000,000 )の1.0
重量%水溶液(25℃で水溶液密度998.9kg/m3)を流体B
とした。また、ポリエチレングリコール(和光純薬株式
会社製:一級試薬:分子量4,000,000 )の0.2 重量%水
溶液(25℃で水溶液密度918kg/m3)に低密度ポリエチレ
ンの微粒子(商品名:フロービーズLE1080:住友精化株
式会社製:平均粒子径6±1μm :密度918kg/m3)を0.
52体積%となるように調製し、密度918.0kg/m3の流体C
とした。また、ポリエチレングリコール(和光純薬株式
会社製:一級試薬:分子量4,000,000 )の0.1 重量%水
溶液(25℃で水溶液密度917.6kg/m3)に低密度ポリエチ
レンの微粒子(商品名:フロービーズ3μ試作品:住友
精化株式会社製:平均粒子径3±0.5 μm :密度917.6k
g/m3)を0.21体積%となるように調製し、密度917.6kg/
m3の流体Dとした。さらに、低密度ポリエチレンの微粒
子(商品名:フロービーズ3μ試作品:住友精化株式会
社製:平均粒子径3±0.5 μm :密度917.8kg/m3)の0.
24体積%水溶液にポリエチレングリコール(和光純薬株
式会社製:一級試薬:分子量300,000 〜500,000 )を分
散剤として調製して密度917.8kg/m3の流体Eとした。
【0055】次に、各試料流体の解析結果について説明
する。 (流体Aについて)密度1.0203,1.0488, 1.1024, 1.24
68, 1.3409, 1.5022, 1.5377及び1.5900 g/cm3 の8種
類のニードルを使用した。各ニードルが第一の磁気セン
サー11と第二の磁気センサー12との間を通過した時
間(以下、「落下時間」という。)と落下終端速度(以
下、単に「終端速度」ともいう。)の測定結果を表1に
示す。
【0056】
【表1】
【0057】表1に示すデータに基づき、落下終端速度
Ut と密度差(ρs −ρf )とを座標軸としてプロット
し、(Ut )−(ρs −ρf )線分を表す関数を算出し
た結果、(ρs −ρf )= 0.01688 (Ut )2 + 0.9
2810(Ut )+ 0.01592 となり、定数項は0.01592 で
あった。0.01592 は−0.07≦(定数項)≦0.07を満足す
ることから、定数項の値とこの線分の形状から、図10
に示すように、流体AはNewton流体であるとして、CR
T21にグラフが表示された。さらに、確実なものとす
るために、落下終端速度(Ut )の対数と密度差(ρs
−ρf )の対数をとった結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】表2に示すデータに基づき、落下終端速度
の対数ln(Ut )と密度差の対数ln(ρs −ρf )とを
座標軸としてプロットし、(Ut )−(ρs −ρf )対
数線分を表す関数を算出した結果、ln(ρs −ρf )=
0.95748 ln(Ut )+ 11.26626 となり、その勾配n
の値は0.95748 で、0.95≦n≦1.05を満足することか
ら、図11に示すように、流体Aは確実にNewton流体で
あると確定し、CRT21にグラフが表示された。
【0060】前記(3)〜(6)式の4式とNewton流体
の構成方程式(7)式とを連立させてNewton流体の粘度
μを算出し、図12に示すように、流体Aの流動曲線が
CRT21にグラフとして表示された。流体Aの流動曲
線はτ=1.2471γであった。流体Aの粘度μは1.2471Pa
・sec であった。
【0061】なお、一般に、粘度計校正用標準液JS20
00(昭和シェル石油株式会社製:20℃で密度876.7kg/
m3)はNewton流体として知られている。
【0062】(流体Bについて)流体Aに使用したもの
と同じニードルを使用した。各ニードルの落下時間と終
端速度との測定結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】同様にして、(Ut )−(ρs −ρf )線
分を表す関数は(ρs −ρf )= −0.02163 (Ut )
2 + 0.27055(Ut )+ 0.04247 となり、定数項は0.
04247 であった。0.04247 は−0.07≦(定数項)≦0.07
を満足することから、定数項の値と線分の形状から、図
13に示すように、流体BはPseudoplastic 流体である
として、CRT21にグラフが表示された。さらに、確
実なものとするために、落下終端速度(Ut )の対数と
密度差(ρs −ρf )の対数をとった結果を表4に示
す。
【0065】
【表4】
【0066】(Ut )−(ρs −ρf )対数線分を表す
関数を算出した結果、ln(ρs −ρf )= 0.75040 ln
(Ut )+ 9.14046 となり、その勾配nの値は0.7504
0 で、n≦0.95を満足することから、図14に示すよう
に、流体Bは確実にPseudoplastic 流体であると確定
し、CRT21にグラフが表示された。
【0067】前記(3)〜(6)式の4式とPseudoplas
tic 流体の構成方程式(8)式とを連立させてPseudopl
astic 流体の流体粘稠度Kを算出し、図15に示すよう
に、流体Bの流動曲線がCRT21にグラフとして表示
された。流体Bの流動曲線はτ=2.4626γ0.7504であっ
た。流体Bの流体粘稠度Kは2.4626Pa・sec であった。
【0068】なお、流体BがPseudoplastic 流体である
ことは、回転法による粘度測定法によっても確認した。
回転粘度計はHAAKE社製の機種:CV20型を使用
した。
【0069】(流体Cについて)密度1.0203,1.0488,
1.1024, 1.2468, 1.3409, 1.5022及び1.5377g /cm3
7種類のニードルを使用した。各ニードルの落下時間と
終端速度との測定結果を表5に示す。
【0070】
【表5】
【0071】(Ut )−(ρs −ρf )線分を表す関数
は(ρs −ρf )= 0.02313(Ut )2 + 0.12617(U
t )− 0.01852 となり、定数項は−0.01852 であっ
た。−0.01852 は−0.07≦(定数項)≦0.07を満足する
ことから、定数項の値と線分の形状から、図16に示す
ように、流体CはDilatant流体であるとして、CRT2
1にグラフが表示された。さらに、確実なものとするた
めに、落下終端速度(Ut )の対数と密度差(ρs −ρ
f )の対数をとった結果を表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】(Ut )−(ρs −ρf )対数線分を表す
関数を算出した結果、ln(ρs −ρf )= 1.34022 ln
(Ut )+ 11.05186 となり、その勾配nの値は1.3402
2 で、n≧1.05を満足することから、図17に示すよう
に、流体Cは確実にDilatant流体であると確定し、CR
T21にグラフが表示された。
【0074】前記(3)〜(6)式の4式とDilatant流
体の構成方程式(9)式とを連立させてDilatant流体の
流体粘稠度Kを算出し、図18に示すように、流体Cの
流動曲線がCRT21にグラフとして表示された。流体
Cの流動曲線はτ=0.2894γ1.34022 であった。流体C
の流体粘稠度Kは0.2894Pa・sec であった。
【0075】なお、流体CがDilatant流体であること
は、回転粘度計(HAAKE社製:CV20型)を使用
して回転法による粘度測定法によっても確認した。
【0076】(流体Dについて)密度1.0203,1.0488,
1.1024, 1.2468及び1.3409g /cm3 の5種類ニードルを
使用した。各ニードルの落下時間と終端速度との測定結
果を表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】(Ut )−(ρs −ρf )線分を表す関数
は (ρs −ρf )= − 0.00240(Ut )2 + 0.08510
(Ut )+ 0.13720 となり、定数項は0.13720 であっ
た。0.13720 は−0.07≦(定数項)≦0.07を満足しない
ので、原点を通らず、Newton流体、Pseudoplastic 流体
及びDilatant流体以外の流体であると判断され、さら
に、線分の微分係数を調べたが極値は有しておらず、線
分には水平な領域が存在することから、図19に示すよ
うに、流体DはBingham 流体であると確定し、CRT2
1にグラフが表示された。
【0079】前記(3)〜(6)式の4式とBingham 流
体の構成方程式(10)式とを連立させてBingham 流体の
ビンガムパラメーターηB を算出し、図20に示すよう
に、流体Dの流動曲線がCRT21にグラフとして表示
された。流体Dの流動曲線はτ=0.0701γ+0.798 であ
った。流体DのビンガムパラメーターηB は0.0701Pa・
sec 、降伏応力τy は0.798Paであった。
【0080】なお、流体DがBingham 流体であること
は、回転粘度計(HAAKE社製:CV20型)を使用
して回転法による粘度測定法によっても確認した。
【0081】(流体Eについて)流体Dに使用したニー
ドルと同じニードルを使用した。各ニードルの落下時間
と終端速度との測定結果を表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】(Ut )−(ρs −ρf )線分を表す関数
は (ρs −ρf )= −0.09526 (Ut )2 + 0.40453
(Ut )+ 0.18254 となり、定数項は0.18254 であっ
た。0.18254 は−0.07≦(定数項)≦0.07を満足しない
ので、原点を通らないと判断され、さらに、線分の微分
係数を調べたが極値は有しておらず、線分の形状が単調
減少であることから、図21に示すように、流体Eは非
Bingham 流体であると確定し、CRT21にグラフが表
示された。
【0084】前記(3)〜(6)式の4式と非Bingham
流体の構成方程式(11)式とを連立させて非Bingham 流
体のビンガムパラメーターηH を算出し、図22に示す
ように、流体Eの流動曲線がCRT21にグラフとして
表示された。流体Eの流動曲線はτ=0.8988γ0.45121
+0.7892であった。流体EのビンガムパラメーターηH
は0.8988Pa・sec 、降伏応力τy は0.7892Paであった。
【0085】なお、流体Eが非Bingham 流体であること
は、回転粘度計(HAAKE社製:CV20型)を使用
して回転法による粘度測定法によっても確認した。
【0086】本実施例では自然対数lnを採用したが、対
数をとることより、(Ut )−(ρs −ρf )対数線分
の勾配を調べているので、自然対数lnの代わりに常用対
数log により計算するようにしてもよいことはいうまで
もない。
【0087】実施例2.図23は演算制御装置の構成を
示すプロック図であり、図4及び図6と同一符号は同一
又は相当部分を示し、本実施例は実施例1の変形例であ
って、カウンター14で得られた通過時間(落下時間)
はデータ信号として演算制御装置6に直接入力される。
よって、本実施例においては、実施例1のように落下時
間をキーボード19より入力する必要がない。
【0088】実施例3.図24は演算制御装置の構成を
示すプロック図であり、図4及び図6と同一符号は同一
又は相当部分を示し、本実施例は実施例1の変形例であ
って、カウンター14は設けられておらず、第一及び第
二の磁気センサー11,12はインターフェース(図示
せず)を介して演算制御装置6に接続されている。よっ
て、本実施例では、CPU23が第一の磁気センサー1
1からの検知信号を受けることにより、演算部24にお
いて、落下時間のカウントを開始し、CPU23が第二
の磁気センサー12からの検知信号を受けることによ
り、落下時間のカウントを終了し、その間の時間を算出
して終端速度を算出するようになっている。従って、本
実施例における検出手段は、第一及び第二の磁気センサ
ー11,12と終端速度を算出する演算制御装置6とを
含んでなる。本実施例においては、実施例2と同様に落
下時間をキーボード19から入力する必要がない。
【0089】なお、第一及び第二の磁気センサー11,
12の代わりに、終端速度を検出するスピードメータを
演算制御装置6に接続してもよい。この場合における検
出手段はスピードメータとなる。
【0090】実施例4.本実施例では、図3に示すよう
に、Bingham 流体においては(Ut )−(ρs−ρf )
線分が降伏値を持つ(原点を通らない)と共に(Ut )
−(ρs −ρf)対数線分が直線部分を有し、この直線
の勾配がほぼ1であることから、実施例1の解析プログ
ラムにおけるステップ43をステップ50でも実施する
ようにしたものである。即ち、Bingham 流体及び非Bing
ham 流体と思われる流体に対しても(Ut )−(ρs −
ρf )対数線分を表す関数を算出し、ステップ52で
は、その勾配nの値を調べ、0.95≦n≦1.05を満足すれ
ば、Bingham 流体とし、満足しなければ、非Bingham 流
体として分類するようにしたものである。
【0091】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、落
体として使用するニードルを円柱形状としたので、同一
形状で密度の異なるものを精度良く容易に得ることがで
きる。また、ニードルの落下終端速度Ut を測定して落
下終端速度Ut と密度差(ρs −ρf )とを座標軸とす
る線分を得て流体の流動曲線と比較することにより被測
定物である流体を特定するようにしたので、経験を必要
とすることなく、だれでも簡単に流体を特定し、流動解
析をすることができ、一般に測定が困難とされていた降
伏応力を有する流体においても精度良く流動解析するこ
とができる。また、本発明によれば、落下終端速度(U
t )の対数と密度差(ρs −ρf )の対数とを座標軸と
する線分の勾配を算出して流体を確定するようにしたの
で、流体をより明確に特定することができ、より信頼で
きる分類をすることができる。さらに、これらの計算を
コンピュータに任せることができるので、素早く結果を
得ることができる。従って、本発明の産業上利用性は非
常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における円柱状落体が落下している状態
を示す概念図である。
【図2】Newton流体及びPower Law 流体についての落下
する円柱状落体が押し退ける流体の移動方向を示す速度
断面説明図である。
【図3】本発明における流体の流動特性解析手順を説明
する説明図である。
【図4】本発明に係る落体式粘度測定装置の一実施例を
模型的に示した縦断面説明図である。
【図5】図4に示すニードルの縦断面図である。
【図6】図4に示す演算制御装置の構成を示すブロック
図である。
【図7】図6に示す演算制御装置を制御するプログラム
のフローチャート図である。
【図8】流体の流動曲線を解析するプログラムのフロー
チャート図である。
【図9】Bingham 及び非Bingham 流体の(Ut )−d
(ρs −ρf )/d(Ut )座標軸における曲線を示す
グラフである。
【図10】流体Aの(Ut )−(ρs −ρf )線分を示
すグラフを表示した画面を示す図である。
【図11】流体Aの(Ut )−(ρs −ρf )対数線分
を示すグラフを表示した画面を示す図である。
【図12】流体Aの流動曲線を示すグラフを表示した画
面を示す図である。
【図13】流体Bの(Ut )−(ρs −ρf )線分を示
すグラフを表示した画面を示す図である。
【図14】流体Bの(Ut )−(ρs −ρf )対数線分
を示すグラフを表示した画面を示す図である。
【図15】流体Bの流動曲線を示すグラフを表示した画
面を示す図である。
【図16】流体Cの(Ut )−(ρs −ρf )線分を示
すグラフを表示した画面を示す図である。
【図17】流体Cの(Ut )−(ρs −ρf )対数線分
を示すグラフを表示した画面を示す図である。
【図18】流体Cの流動曲線を示すグラフを表示した画
面を示す図である。
【図19】流体Dの(Ut )−(ρs −ρf )線分を示
すグラフを表示した画面を示す図である。
【図20】流体Dの流動曲線を示すグラフを表示した画
面を示す図である。
【図21】流体Eの(Ut )−(ρs −ρf )線分を示
すグラフを表示した画面を示す図である。
【図22】流体Eの流動曲線を示すグラフを表示した画
面を示す図である。
【図23】演算制御装置の構成を示すプロック図であ
る。
【図24】演算制御装置の構成を示すプロック図であ
る。
【符号の説明】
1 円柱状ニードル(ニードル) 1a ガラス管 1c 磁石 1d 重り 1e ラベル 2 円柱状容器(内管) 3 微小円柱殻 4 落体式粘度測定装置 5 測定装置 6 演算制御装置 7 外管 8 流体 11 第一の磁気セイサー 12 第二の磁気セイサー 13 ステンレス管 14 カウンター 19 入力部 20 制御部 21 表示部(CRT) 22 印字部(プリンタ) 23 CPU 24 演算部 25 記憶部

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流体を満たした円筒状容器内を落下する
    円柱状落体の落下終端速度を測定することにより流体の
    粘度を求める落体式粘度測定方法において、被測定物で
    ある流体中に密度の異なる複数の円柱状落体を落下して
    各円柱状落体毎に落下終端速度Ut を測定し、円柱状落
    体が有する密度ρs と被測定物である流体が有する密度
    ρf との密度差(ρs −ρf )と円柱状落体の落下終端
    速度Ut とを座標軸として各円柱状落体毎に得た座標の
    分布を満足する線分を求め、該線分に近似する流体の流
    動曲線から流体の種類を特定して該流体の構成方程式を
    用いることにより被測定物である流体の粘度を求めるこ
    とを特徴とする落体式粘度測定方法。
  2. 【請求項2】 流体を満たした円筒状容器内を落下する
    円柱状落体の落下終端速度を測定することにより流体の
    粘度を求める落体式粘度測定方法において、被測定物で
    ある流体中に密度の異なる複数の円柱状落体を落下して
    各円柱状落体毎に落下終端速度Ut を測定し、円柱状落
    体が有する密度ρs と被測定物である流体が有する密度
    ρf との密度差(ρs −ρf )と円柱状落体の落下終端
    速度Ut とを座標軸として各円柱状落体毎に得た座標の
    分布を満足する第一の線分を求め、前記密度差(ρs −
    ρf )の対数と前記落下終端速度(Ut )の対数とを座
    標軸として各円柱状落体毎に得た座標の分布を満足する
    第二の線分を求め、第一の線分がほぼ原点を通り、第二
    の線分がほぼ直線である場合に、第一の線分に近似する
    流体の流動曲線と第二の線分の勾配から少なくともNewt
    on流体、Pseudoplastic 流体又はDilatant流体を特定し
    て該流体の構成方程式を用いることにより被測定物であ
    る流体の粘度を求めることを特徴とする落体式粘度測定
    方法。
  3. 【請求項3】 第二の線分の勾配がほぼ1に等しい場合
    は、被測定物である流体はNewton流体であるとして特定
    し、第二の線分の勾配がほぼ1より小さい場合は、Pseu
    doplastic 流体であるとして特定し、第二の線分の勾配
    がほぼ1より大きい場合は、Dilatant流体であるとして
    特定する請求項2記載の落体式粘度測定方法。
  4. 【請求項4】 流体を満たした円筒状容器内を落下する
    円柱状落体の落下終端速度を測定することにより流体の
    粘度を求める落体式粘度測定装置において、 密度の異なる複数の円柱状落体と、 被測定物である流体中を落下する前記円柱状落体の落下
    終端速度Ut を検出する検出手段と、 円柱状落体が有する密度ρs と被測定物である流体が有
    する密度ρf との密度差(ρs −ρf )と前記落下終端
    速度Ut とを座標軸とする各円柱状落体毎に得た座標の
    分布を満足する線分を求め、該線分に近似する流体の流
    動曲線から流体の種類を特定し、該流体に対応する流体
    の構成方程式を用いて前記被測定物である流体の流動曲
    線を算出する演算手段とを含んでなることを特徴とする
    落体式粘度測定装置。
  5. 【請求項5】 流体を満たした円筒状容器内を落下する
    円柱状落体の落下終端速度を測定することにより流体の
    粘度を求める落体式粘度測定装置において、密度の異な
    る複数の円柱状落体と、 被測定物である流体中を落下する前記円柱状落体の落下
    終端速度Ut を検出する検出手段と、 円柱状落体が有する密度ρs と被測定物である流体が有
    する密度ρf との密度差(ρs −ρf )と円柱状落体の
    落下終端速度Ut とを座標軸とする各円柱状落体毎に得
    た座標の分布を満足する第一の線分を求め、前記密度差
    (ρs −ρf )の対数と前記落下終端速度(Ut )の対
    数とを座標軸とする各円柱状落体毎に得た座標の分布を
    満足する第二の線分を求め、第一の線分がほぼ原点を通
    り、第二の線分がほぼ直線である場合に、第一の線分に
    近似する流体の流動曲線と第二の線分の勾配から少なく
    ともNewton流体、Pseudoplastic 流体又はDilatant流体
    を特定し、該流体に対応する流体の構成方程式を用いて
    前記被測定物である流体の流動曲線を算出する演算手段
    とを含んでなることを特徴とする落体式粘度測定装置。
  6. 【請求項6】 第二の線分の勾配nが0.95≦n≦1.05の
    場合は、被測定物である流体はNewton流体であるとして
    特定し、第二の線分の勾配nがn<0.95の場合は、Pseu
    doplastic 流体であるとして特定し、第二の線分の勾配
    nがn>1.05の場合は、Dilatant流体であるとして特定
    する請求項5記載の落体式粘度測定装置。
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