JPH08197386A

JPH08197386A - 歯科補綴物用倣い切削盤

Info

Publication number: JPH08197386A
Application number: JP7004395A
Authority: JP
Inventors: Toshio Sumii; 俊夫住井; Akitsugu Hasegawa; 晃嗣長谷川; Eiji Kawada; 英司河田; Takashi Oyama; 貴司大山
Original assignee: Hakusui Trading Co Ltd
Current assignee: Hakusui Trading Co Ltd
Priority date: 1995-01-13
Filing date: 1995-01-13
Publication date: 1996-08-06

Abstract

(57)【要約】【目的】歯冠修復を行うための補綴物のモデルを精密
に再現できるように、トレース圧力を所定範囲内で一定
に保つことができる歯科補綴物用倣い切削盤を提供す
る。【構成】歯科補綴物のモデルＰを固定するモデル用固
定台２と、被切削材Ｂを固定する被切削材用固定台４
と、モデルＰをトレースするトレース用ツール１２と、
被切削材Ｂをミリングするミリング用ツール３と、トレ
ース用ツール１２とミリング用ツール３とを連動させる
倣い機構８とを有する歯科補綴物用倣い切削盤。トレー
ス用ツールのツール軸１１に取り付けられる歪み検出手
段９と、歪み検出手段９が検出した歪み量を表示する表
示手段１０とを備えている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、歯科用補綴物の倣い切
削盤に関し、更に詳しくは、歯科用補綴物のモデルをト
レースする際に、トレーサに生じる歪みの量を最小限に
抑えて精密な倣い加工ができる切削盤に関する。

【０００２】

【従来の技術】歯冠修復は、コンポジットレジン，セラ
ミックス，金，アマルガム等の歯科用補綴物により行わ
れている。歯冠修復に用いられる補綴物において、コン
ポジットレジンは、接着強さが高く、強度に優れてお
り、可及的に歯牙を保存する歯冠修復を行うことができ
る。しかしながら、コンポジットレジンは、重合収縮に
より辺縁漏洩や二次カリエスを引き起こしやすく、更
に、摩耗度が高いので、咬合面の初期状態を長期間保持
することが難しい。また、歯冠修復にあたっては、繊細
な技術を要するので、取扱が難しい材料である。

【０００３】金やアマルガム等金属の補綴物は、加工性
に優れているため、従来から歯冠修復には広く用いられ
ている材料である。しかしながら、前記金属の補綴物
は、歯冠修復において審美性を損なうため、患者自体の
審美的要求を満たし得ないものとなっている。セラミッ
クスは、コンポジットレジンに比べ、非常に硬く、耐摩
耗性に優れていることから咬合面の初期状態を保持しや
すく、また、化学的にもコンポジットレジンより安定し
ているので、唾液による溶解や変色もみられない。更
に、天然歯に類似した色を有しているので、残存歯牙と
大変調和した色調が得られ、金やアマルガム等に比べ審
美性に優れている。更にまた、生体親和性に優れている
ので、金属アレルギーの患者にも採用することができ
る。

【０００４】セラミックスで補綴物を製作する方法とし
ては、耐火模型上でセラミックスの原料を築盛，焼成す
る方法が一般に用いられているが、この方法は、製作工
程が煩雑であり、技術的にも困難なので、かなりの製作
時間を要する。特に、焼成の工程において、セラミック
スが収縮するため、収縮を計算に入れて製作する必要が
あり、熟練を要する作業となっている。

【０００５】この方法により得られるセラミックス製補
綴物は、耐破折性が比較的低く、破断係数（ＭＯＲ）も
５０ＭＰａ以下にすぎない。また、硬度が高すぎるた
め、対合する天然歯の摩耗を促進するという問題もあ
る。一方、前記したような築盛，焼成によるセラミック
ス製補綴物の製作方法に対して、機械切削用に製造され
ているセラミックスブロックを機械切削（本発明では、
「ミリング」という）することによりセラミックス製補
綴物を製作する方法が考案されている。

【０００６】この方法は、マイクロミリングテクニック
と呼ばれ、まず、補綴物のモデルを製作し、このモデル
をトレーサでトレースすることにより、前記トレーサに
連動したミリング部によりセラミックスブロックを前記
モデルと同形態にミリングするものである。つまり、こ
のマイクロミリングテクニックは、モデルをトレースす
るだけで、モデルを複製することができるので、セラミ
ックス製補綴物を短時間に製作することができる。

【０００７】このマイクロミリングテクニックで用いる
セラミックスブロックは、すでに焼成されているので、
補綴物形成後に収縮することはなく、また、材料および
製造工程が管理されているので、セラミックス内の気泡
や傷が最小限に抑えられ、耐破折性が比較的高く、破断
係数も１６０ＭＰａ以上と、優れた物性を示している。
更に、微粒子の材料を用い、微細構造とすることによ
り、補綴物を適当な硬さに調整することができるので、
対合する天然歯の摩耗も抑制することができる。このよ
うに、マイクロミリングテクニックでは、審美性に優
れ、優れた物性を示すセラミックス製補綴物を容易に製
作することができる。

【０００８】ところで、マイクロミリングテクニックに
よりセラミックス製補綴物を製作する場合、まず、修復
個所の印象を採得する。ついで、採得した印象をもとに
石膏で歯型を作り、歯型の修復個所に、例えば、光重合
型のコンポジットレジンを適量充填し、光を照射して硬
化させ、その後、咬合面をカービング器具またはバーで
形成し、歯冠修復用の補綴物のモデルを製作する。尚、
このモデルを以下、プロインレイという。

【０００９】次に、マイクロミリングテクニック用の装
置（倣い切削盤）を用いて前記プロインレイと同形態の
補綴物を製作する。この倣い切削盤は、トレース部とミ
リング部を有している。図１に倣い切削盤のトレース部
Ｔとミリング部Ｍの概略構成を示す。まず、トレース部
Ｔは、プロインレイＰをトレースするトレーサ１とプロ
インレイＰを固定するプロインレイ用固定台２とを備え
ている。尚、トレーサ１は、ツール軸（マンドレル）１
１と、ツール軸１１にねじ止めされるトレース用のツー
ル（ディスク，コニカルピン，シリンダーピン等）１２
とを有している。一方、ミリング部Ｍは、被切削材であ
るセラミックスブロックＢを切削するミリング用のツー
ル（ディスク，フィッシャーバー，シリンダーバー等）
３と、セラミックスブロックＢを固定するセラミックス
ブロック用固定台４とを有している。尚、プロインレイ
用固定台２とセラミックスブロック用固定台４とは、図
示しない回転伝達機構７によって連動しており、取り付
け軸廻りに同方向に回転可能である。また、トレーサ１
とミリング用ツール３とは倣い機構８により連動してお
り、これらは同じ動きをする。

【００１０】上記したような倣い切削盤を用いた歯冠修
復物の製作工程について、以下に説明する。まず、得ら
れたプロインレイＰをプロインレイ用固定台２に固定
し、セラミックスブロックＢをセラミックスブロック用
固定台４に固定する。次に、ツール軸１１の先端にトレ
ース用のツール（例えば、ディスク）１２を取り付け
る。一方、ミリング用ツール３としてトレース用ディス
クと同形状のミリング用ディスクを駆動機構（図示せ
ず）により高速回転させる。この状態で、プロインレイ
Ｐにトレース用のディスク１２を接触させてトレースす
ると、ミリング用ディスク３が同じ動きをしてセラミッ
クスブロックＢをプロインレイＰと同じ形態にミリング
していく。このようにしてプロインレイと同じ形態のセ
ラミックス製補綴物が得られる。得られたセラミックス
製補綴物は、修復個所に接着剤で接着固定され、歯冠修
復が行われる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記したマ
イクロミリングテクニックにおいては、トレースを行う
際、モデルを精密に再現するために、トレース用のツー
ルをプロインレイに接触させる圧力（以下、単に「トレ
ース圧力」という）を所定の範囲内で一定にする必要が
ある。しかしながら、作業者の熟練の度合いや個人差に
よって、トレース圧力が変わってしまい、得られる補綴
物の寸法精度が低くなるという問題が起こる。

【００１２】例えば、トレース用ツールをプロインレイ
に強く押し当てて、トレース圧力が所定範囲を越えた状
態でトレースを行うと、トレース用のツールがプロイン
レイにくい込んだり、装置が変形するなどして、ミリン
グ部において、セラミックスブロックを実際のプロイン
レイよりも過剰にミリングしてしまい、得られる補綴物
がプロインレイよりも寸法が小さい物となってしまう。

【００１３】このように実際よりも小さい補綴物を修復
個所へ装着すると残存歯牙と補綴物との間に隙間が生じ
た状態になってしまう。このような状態で接着を行う
と、残存歯牙と補綴物との間に存在する接着剤と唾液等
が接する部分が多くなり、接着剤の劣化が起こる。そし
て、最悪の場合は、補綴物が脱落するという問題が生じ
てしまう。また、前記したような隙間には、歯垢等が付
着し易くなり、再び虫歯が発生する原因となってしま
う。

【００１４】よって、本発明は、歯冠修復を行うための
補綴物のモデルを精密に再現できるように、トレース圧
力を所定範囲内で一定に保つことができる歯科補綴物用
倣い切削盤を提供することを目的とする。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、歯科補綴物のモデルを固定するモデル
用固定台と、被切削材を固定する被切削材用固定台と、
前記モデルをトレースするトレース用ツールと、前記被
切削材をミリングするミリング用ツールと、前記トレー
ス用ツールと前記ミリング用ツールとを連動させる倣い
機構とを有する歯科補綴物用倣い切削盤において、前記
トレース用ツールのツール軸に取り付けられ、該ツール
軸の変形を検出する歪み検出手段と、該歪み検出手段が
検出した歪み量を表示する表示手段とを備えていること
を特徴とする歯科補綴物用倣い切削盤が提供される。

【００１６】好ましくは、前記歪み検出手段が歪みゲー
ジであり、前記表示手段が動歪み測定器である構成にす
る。

【００１７】

【作用】本発明による歯科補綴物用倣い切削盤は、倣い
加工において、補綴物のモデルをトレースしている際
に、トレーサに生じる歪みを歪み検出手段により検出す
る。そして、前記歪みが所定範囲内で一定になるように
モデルをトレースすることにより、トレース圧力を一定
に保つことができる。そのため、セラミックスブロック
を過剰にミリングしてしまうことを抑制できるので、モ
デルを忠実に再現した精密な補綴物を得ることができ
る。

【００１８】

【実施例】本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明
する。図２に、本発明の歯科補綴物用倣い切削盤の概略
構成を示す。この倣い切削盤は、サドルＳとコラム８１
を備えている。サドルＳは、テーブル等に載置固定され
た基板に固定されている。

【００１９】コラム８１は、前記基板に固定されたロッ
ドおよび該ロッドに外嵌されたロッドガイド（共に図示
せず）を介して水平方向（図２の紙面表裏方向）に移動
し、サドルＳに対して離接自在に配設されている。すな
わち、コラム８１は、サドルＳの長手方向に対して直交
する方向に移動する。サドルＳには、その両端にトレー
ス部Ｔの後述するプロインレイ用固定台２とミリング部
Ｍのセラミックスブロック用固定台４が配設され、コラ
ム８１には、トレース部Ｔの後述するトレーサ取付台５
とミリング部Ｍのツール取付台６が倣い機構８を介して
取り付けられている。

【００２０】トレース部Ｔは、後述するトレース側ヘッ
ドＨ1 に回動自在に取り付けられるトレーサ取付台５
と、トレーサ取付台５にチャック（図示せず）を介して
取り付けられるトレーサ１と、プロインレイ用固定台２
と、固定アーム２１とを備えている。トレーサ取付台５
は、略円筒状をなし、その軸線廻りに回転自在にヘッド
Ｈ1の正面壁に取り付けられている。そして、取付台５
の側壁に前述したチャックが設けられ、このチャックの
取付軸と略直交する側壁に、側壁から外方に突出するよ
うにハンドル５１が配設されている。

【００２１】トレーサ１は、その詳細が図３に示される
ように、基端が前述のチャックに取り付けられるツール
軸１１と、ツール軸１１の先端に取り付けられるトレー
ス用のツール１２とを備えている。この実施例では、ツ
ール１２としてディスクトレーサが取り付けられてい
る。一方、ミリング部Ｍは、ミリング側ヘッドＨ2 に回
動自在に取り付けられるミリング用ツール取付台（以
下、単に「ツール取付台」という）６と、ツール取付台
６にチャック（図示せず）を介して取り付けられ、被切
削材であるセラミックスブロックＢを切削するミリング
用のツール（例えば、ディスク）３と、セラミックスブ
ロックＢを固定するセラミックスブロック用固定台４と
を備えている。

【００２２】ツール取付台６は、下端面に前述したチャ
ックが回転自在に取り付けられる円筒部本体６ａと、こ
の円筒部本体６ａの上端面に固設され、エアタービンが
内蔵される円筒のタービンハウジング６ｂとで構成さ
れ、円筒部本体６ａは、その側壁から突設される回転軸
によって、ミリング側ヘッドＨ2 に回転自在に取り付け
られている。タービンハウジング６ｂには、加圧空気が
供給されるエアポート（図示せず）が設けられ、円筒部
本体６ａには、チャック軸の潤滑のためのクーラントの
供給および排出ポート（共に図示せず）が設けられてい
る。前述のエアタービンは供給される加圧空気によって
回転し、ツール３を回転駆動する。尚、取り付けられる
ミリング用ツール３は、トレース部Ｔのトレーサ１と同
じ外形形状のものが取り付けられる。

【００２３】サドルＳの両端に取り付けられるプロイン
レイ用固定台２とセラミックスブロック用固定台４と
は、サドルＳの内部に配設される回転伝達機構によって
連動しており、プロインレイ用固定台２を回動させると
セラミックスブロック用固定台４も、その取り付け軸廻
りに同方向に回転可能である。回転伝達機構としては、
例えば、ラックアンドピニオン機構をあげることができ
る。

【００２４】また、トレーサ取付台５とツール取付台６
とは、以下に説明する倣い機構８により連動しており、
これらは同じ動きをする。倣い機構８は、中空軸から成
るロッド８３を備えており、このロッド８３は、図４に
示すように、コラム８１に対して上下に自在に動くロッ
ドガイド８２に内嵌され、左右方向（Ｘ−Ｘ方向）およ
び軸廻り（θ2 ）方向に自在に動くことができる。ロッ
ド８３の図示左端には、トレース側ヘッドＨ1 が固設さ
れ、ロッド８３の図示右端には、ミリング側ヘッドＨ2
が固設されている。

【００２５】コラム８１は、図５に示すように、その内
部にレール８４を備えており、レール８４にはガイド８
５が外嵌され、レール８４に沿って上下に自在に移動す
ることが可能となっている。そして、ガイド８５には、
アーム８６がコラム８１の窓８ａから外方前方に突出さ
せて固設されており、アーム８６の先端にはロッドガイ
ド８２が固設されている。したがって、ロッドガイド８
２は、上下（Ｙ−Ｙ方向）に自在に動かすことが可能と
なっている。尚、ロッド８３の内部は中空になってお
り、この中空部８７には、トレーサ取付台５とツール取
り付け台６とを、それらの取付軸廻りに同方向に回転可
能にするためのラックアンドピニオン機構が挿通され
る。

【００２６】また、コラム８１は、その下部において、
ロッド（基板に固定されている）に外嵌されたロッドガ
イドに固設されており（図示せず）、コラム８１の全体
がロッドに沿って、前記したＸ−Ｘ方向およびＹ−Ｙ方
向に垂直なＺ−Ｚ方向（紙面表裏方向）にも移動が可能
になっている。上記したような、倣い機構８により、ツ
ール取付台６は、トレーサ取付台５の動きに追従して連
動し、それらの先端に取り付けられたトレース用ツール
１２とミリング用ツール３とは、Ｘ，Ｙ，Ｚ，θ1 ，θ
2 方向に同じ動きをする。

【００２７】ついで、本発明では、図６，７に示すよう
に、上記したトレーサ１のツール軸１１に抵抗素子から
成る歪みゲージ９，９を２個取り付け、ツール軸１１に
生じる歪みを検出できるようにしている。尚、本実施例
では、歪みの検出手段として歪みゲージを用いたが、歪
み検出手段としては、ツール軸に生じる歪みを検出でき
るものであれば格別限定されるものではなく、抵抗素子
から成る歪みゲージの他に、例えば、圧電変換素子，磁
気抵抗素子，静電容量素子等の荷重−電気変換素子を使
用してもよい。

【００２８】本発明におけるトレーサ１は、図６に示す
ように、ツール軸１１のトレーサ取付台５への取付部１
３とトレース用ツール１２の取付部１４との中間におい
て、厚みを薄くした板状部１１ａを設けた。そして、こ
の板状部１１ａの表面１１ｂと裏面１１ｃに、歪みゲー
ジ９，９をそれぞれ接着剤により接着固定してある。
尚、この板状部１１ａは、厚さを薄くすることによりた
わみやすい形状になっているので、歪みの検出が容易で
ある。

【００２９】歪みゲージ９としては、ツール軸１１の板
状部１１ａに生じる歪みを検出できる所望の測定精度を
有するものであれば格別限定されるものではない。ま
た、歪みゲージ９の取り付け位置および個数としては、
ツール軸１１の板状部１１ａに生じる歪みを精度良く検
出できる位置および個数であれば格別限定されない。こ
の歪みゲージ９，９は、リード線９１，９１を介して歪
み量の表示手段である動歪み測定器１０に接続され（図
２参照）、この動歪み測定器１０のメータ１０１に歪み
量が表示される。すなわち、動歪み測定器１０のメータ
１０１の指針１０２の振れ幅により歪みの量が読み取れ
るようになっている。尚、動歪み測定器１０としては、
一般に歪み測定に用いられているものであれば格別限定
されるものではない。

【００３０】本発明の歯科補綴物用倣い切削盤は、作業
者は、ハンドル５１を握ってトレース用ツール１２をプ
ロインレイＰに押し当てる際に、ツール軸１１の板状部
１１ａに生じる歪みから、トレースの際のトレース圧力
を動歪み測定器１０により把握することができ、動歪み
測定器１０の指針１０２の振れ幅を適正範囲内に調整し
ながらトレースすることによりトレース圧力を一定に保
つことができる。つまり、プロインレイをトレースする
際、動歪み測定器１０のメータ１０１を見ながら、指針
１０２が適正範囲内にある状態を保ちながらトレースを
行うと、モデルへのトレース圧力が最適な値で一定にな
り、モデルや装置の変形が抑えられる。そのため、寸法
誤差の少ない歯科用補綴物を製作することができる。

【００３１】以上のような歯科補綴物用倣い切削盤を用
いてセラミックス製補綴物を製作する場合、まず、従来
の方法に従って補綴物のモデル、つまりプロインレイを
製作する。そしてこのプロインレイＰをプロインレイ用
固定台２の上面に立設された固定用の爪２２，２２と固
定アーム２１の先端に配設された固定用の爪２３により
上下からはさむようにして固定台２に固定する（図１参
照）。一方、セラミックスブロックＢは、その下部に固
定用のロッドが設けられているので、前記ロッドをセラ
ミックスブロック用固定台４に設けられている固定用の
チャックに差し込み固定する。尚、固定アーム２１は、
サドルＳとの接続部に高さ調整機構（図示せず）を有し
ており、前記調整機構で固定アーム２１の高さを調節す
ることによりプロインレイＰを固定台２と固定アーム２
１の間にはさみこむことができる。また、爪２３は、固
定アーム２１の先端部に回転自在に配設されており、そ
の回転軸は、回転台２の回転軸と一致させてある。その
ため、プロインレイＰは、固定台２の回転軸廻りに回転
させることが可能となっている。更に、プロインレイが
固定用の爪で固定できないくらい小さい場合は、プロイ
ンレイ製作時にコンポジットレジンの中にロッドを差し
込み、この状態で前記コンポジットレジンを硬化させ、
ロッド付きのプロインレイを製作する。そして、プロイ
ンレイ固定台２をチャック付きの固定台に変更して、前
記チャックにプロインレイのロッドを差し込んで固定を
する。更にまた、プロインレイＰおよびセラミックスブ
ロックＢは、プロインレイ用固定台２およびセラミック
スブロック用固定台４の下方に配設されているノブＮ1
，Ｎ2 により高さを微調整することができる（図２参
照）。

【００３２】次に、トレース用のツール１２としてディ
スクをツール軸１１に取り付け、また、ツール取り付け
台６の先端にミリング用ツール３として、例えば、目の
粗いダイヤモンドディスク３を取り付ける。この場合、
トレース用ツール１２のディスク径とミリング用ツール
３のディスク径は等しいものを用いる。そして、ダイヤ
モンドディスク３を高速回転させた状態で、ハンドル５
１を持ってトレース用のディスク１２を任意の角度，位
置でプロインレイＰに接触させトレースしていく。尚、
このとき、動歪み測定器１０のメータ１０１の指針１０
２が適正範囲内におさまるようなトレース圧力でプロイ
ンレイＰをトレースする。

【００３３】このようにプロインレイＰをトレースして
いくとダイヤモンドディスク３がトレース用のディスク
１２の動きを正確に複写し、セラミックスブロックＢを
ミリングしていく。尚、ミリングの際は、熱が発生する
ので、セラミックスブロックに冷却液を噴射しながらミ
リングを行う。冷却液は、セラミックスブロック用固定
台４の下部に設けられた噴射口４１，４１よりセラミッ
クスブロックに向かって噴射される。このとき、倣い機
構８を通すために隔壁８８に設けられた貫通孔８８ａか
ら冷却液が外部へ飛び出すことを防ぐために、ゴム製の
ブーツ８９が、ミリング側ヘッドＨ₂から隔壁８８にわ
たって貫通孔８８ａをふさぐように配設されている（図
４参照）。また、冷却液の飛散を防止するために、ミリ
ングの際は、ミリング部Ｍの全体を被う透明の樹脂製カ
バーＣをしめてミリングを行う。

【００３４】トレースは、例えば、トレース用ツール１
２をプロインレイＰの上から下へ接触させながら移動さ
せ、その後、プロインレイ用固定台２を適宜方向に僅か
に回し、また、上から下へ接触させながら移動させてい
く。この操作を繰り返すことにより、プロインレイ全体
をトレースし、プロインレイと同じ形態のセラミックス
製の補綴物を粗加工する。ついで、段々に目の細かい適
切な形態のダイヤモンドディスクを用い、再度トレース
することにより仕上げ加工を行っていく。最後に、トレ
ース用のツールをコニカルピンあるいはシリンダーピン
に取り替え、それにあわせて、ツール取り付け台６（エ
アタービン）の先端にダイヤモンドが塗布されたフィッ
シャーバーまたはシリンダーバーを取り付ける。そし
て、前記ピンによりプロインレイの咬合面をトレースす
ることにより、前記バーで咬合面の加工を行い、セラミ
ックス製補綴物を製作する。

【００３５】尚、本発明の歯科補綴物用倣い切削盤は、
セラミックスのみに用いられるものではなく、コンポジ
ットレジン，金，アマルガム等一般に用いられている歯
科用補綴物の精密切削にも用いることができる。

【００３６】

【発明の効果】請求項１の歯科補綴物用倣い切削盤は、
少なくとも１個の歪み検出手段を装着しているので、プ
ロインレイをトレースする際に、トレーサに生じる歪み
の量を検出することができ、この歪み量からトレースの
圧力を把握することができる。そのため、トレースの
際、歪み検出手段が検出したひずみ量を表示する表示手
段をみながら歪み量が所定範囲内になるようにトレース
すれば、トレース圧力を一定にすることができ、トレー
ス用のツールがプロインレイにくい込むことが抑えられ
る。したがって、被切削材を過剰にミリングしてしまう
ことを抑制することができプロインレイと同形態の補綴
物を忠実に複製することができる。よって、得られた補
綴物を修復個所に接着しても隙間が生じることは無く、
接着剤の劣化による補綴物の脱落や、歯垢等の付着物が
前記隙間に付着することによる虫歯の再発を防ぐことが
できる。

【００３７】請求項２の歯科補綴物用倣い切削盤は、歪
み検出手段および歪み量の表示手段として、入手が容易
な歪みゲージおよび動歪み測定器を用いているので、比
較的簡便に歪みの測定を行うことができる。また、本発
明では、トレース圧力を動歪み測定器により具体的に把
握できるので、最適なトレース圧力でモデルをトレース
することに関して熟練を必要とせず、だれでも精密な補
綴物を簡便に製作することができる。

【００３８】以上の説明で明らかなように、本発明の歯
科補綴物用倣い切削盤は、審美性，生体親和性に優れた
セラミックス製の歯科用補綴物を、簡便に、且つ、精密
に製作することができるので、歯冠修復の迅速化に寄与
するとともに、得られる補綴物と残存歯牙とは、整合性
が良好で、色調も合わせることができるので歯冠修復の
質の向上に寄与している。

【図面の簡単な説明】

【図１】倣い切削盤のトレース部Ｔとミリング部Ｍの概
略構成図である。

【図２】倣い切削盤の要部概略構成斜視図である。

【図３】図２の円Ａ部のトレーサの拡大図である。

【図４】倣い機構の構成を示す平面図である。

【図５】図４のＶ−Ｖ線に沿う倣い機構のコラム内の要
部断面図である。

【図６】トレーサ１の正面図である。

【図７】トレーサ１の側面図である。

【符号の説明】

１トレーサ２プロインレイ用固定台３ミリング用のツール４セラミックスブロック用固定台５トレーサ取付台６ツール取付台（ミリング用ツールの）７回転伝達機構８倣い機構９歪みゲージ（歪み検出手段）１０動歪み測定器（表示手段）１１ツール軸１１ａ板状部１２トレース用のツール５１ハンドル８１コラム９１リード線１０１メータ１０２指針Ｂセラミックスブロック（被切削材）Ｈ1 トレース側ヘッドＨ2 ミリング側ヘッドＭミリング部Ｐプロインレイ（歯科用補綴物のモデル）ＳサドルＴトレース部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者住井俊夫千葉県千葉市花見川区作新台７丁目８番16 号 (72)発明者長谷川晃嗣東京都中央区佃１丁目11番地７号スカイライトタワー2407号 (72)発明者河田英司千葉県千葉市美浜区高洲４−８−３−504 (72)発明者大山貴司神奈川県川崎市麻生区百合丘１−18−６

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】歯科補綴物のモデルを固定するモデル用
固定台と、被切削材を固定する被切削材用固定台と、前
記モデルをトレースするトレース用ツールと、前記被切
削材をミリングするミリング用ツールと、前記トレース
用ツールと前記ミリング用ツールとを連動させる倣い機
構とを有する歯科補綴物用倣い切削盤において、前記ト
レース用ツールのツール軸に取り付けられ、該ツール軸
の変形を検出する歪み検出手段と、該歪み検出手段が検
出した歪み量を表示する表示手段とを備えていることを
特徴とする歯科補綴物用倣い切削盤。
【請求項２】前記歪み検出手段が歪みゲージであり、
前記表示手段が動歪み測定器である請求項１記載の歯科
補綴物用倣い切削盤。