JPH08189923A - 固体材料の物性測定方法 - Google Patents

固体材料の物性測定方法

Info

Publication number
JPH08189923A
JPH08189923A JP7002183A JP218395A JPH08189923A JP H08189923 A JPH08189923 A JP H08189923A JP 7002183 A JP7002183 A JP 7002183A JP 218395 A JP218395 A JP 218395A JP H08189923 A JPH08189923 A JP H08189923A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
porosity
unit
solid material
ultrasonic
pore
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP7002183A
Other languages
English (en)
Inventor
Jiyunji Takatsubo
純治 高坪
Shigeyuki Yamamoto
茂之 山本
Takanori Katou
崇典 加藤
Hiroshi Isozaki
啓 磯崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denka Co Ltd
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
Agency of Industrial Science and Technology
Denki Kagaku Kogyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Agency of Industrial Science and Technology, Denki Kagaku Kogyo KK filed Critical Agency of Industrial Science and Technology
Priority to JP7002183A priority Critical patent/JPH08189923A/ja
Publication of JPH08189923A publication Critical patent/JPH08189923A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Length Measuring Devices Characterised By Use Of Acoustic Means (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Ultrasonic Waves (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 固体材料の表面に送受信兼用の超音波センサ
を配置して短パルス超音波を発振させ、超音波の単位伝
播時間を測定し、単位伝播時間と気孔率、気孔率と単位
伝播時間と気孔形状係数、気孔率と気孔形状係数と弾性
率とが、それぞれ一定の関係にあることを利用して、気
孔率、気孔形状係数及び弾性率を測定する固体材料の物
性測定方法である。 【効果】 固体材料の気孔率、気孔形状及び弾性率を、
該材料の材質や形状、センサや計測装置の特性などに左
右されずに、非破壊的に簡便かつ正確に測定することが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体材料の新規な物性
測定方法に関するものである。さらに詳しくいえば、本
発明は、固体材料の気孔率、気孔形状及び弾性率を、超
音波を用い、非破壊的に簡便、かつ正確に測定する実用
化可能な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、固体材料の気孔率を測定する方法
としては、例えばアルキメデス法による比重測定によっ
て気孔率を求める方法やX線吸収係数法による比重測定
によって気孔率を求める方法が実用化されている。しか
しながら、前者のアルキメデス法による方法は被検体の
局所気孔率を測定することができない上、測定が煩雑
で、精度が低いなどの欠点があり、また、X線吸収係数
法による方法においては、被検体に対応する大型の装置
が必要なため実機材料の検査が不可能である上、気孔径
を測定できないという欠点がある。
【0003】他方、超音波を利用して非破壊的に、固体
材料の気孔率を測定する方法としては、超音波の音速が
気孔に当って減速する点に着目し、その減衰率との関係
から気孔率を求める方法が報告されている(「非破壊検
査」第36巻、第3号、第201〜205ページ)。
【0004】しかしながら、この方法は、気孔分布特性
と超音波伝播特性との間の定量的な関係の把握が不十分
なため気孔率や平均気孔径を正確に測定できないし、ま
た、同一の気孔分布であっても、材料の材質、形状、測
定条件によって測定結果が異なるため、普遍的な適用が
できない上に、0.1mm以下の気孔は検出できないと
いう欠点があるため、まだ実用化されていない。
【0005】本発明者らは、このような欠点を改良した
固体材料の気孔率や気孔径の測定方法を開発するために
研究を重ね、先に、気孔を有する固体材料の超音波応答
波形を、気孔が全く存在しない同じ材質の固体材料から
得た超音波応答波形との対比による逆たたみ込み積分処
理して求めた気孔関数を用い、気孔率や気孔径を測定す
る方法を提案した(特開平6―18403号公報)。
【0006】しかしながら、この方法においては、試料
の両側にセンサを配置し、その一方のセンサから超音波
を発振させ、他方のセンサで試料の通過波形を検出し、
それを分析するため、2つのセンサが必要であり、しか
も試料の両側にそれを正確に配置しなければならないと
いう面倒な作業を伴う上、気孔が全く存在しない同質の
固体材料の超音波応答を基準信号として用いるため、気
孔を含まない同質、同形状の基準試料を、測定のつど作
製しなければならないし、気孔応答関数を利用するた
め、高価な波形取り込み装置が必要である上、逆たたみ
込み積分という逆問題解析を行うので、超音波伝播波形
を精度よく測定しなければ解析誤差が拡大する傾向があ
るし、気孔形状の影響を考慮していないため、気孔同士
が連結した状態で存在する多孔質材料については、気孔
検出精度が悪くなり、例えばセラミックスでは、気孔率
が20%を超すと適用が不可能である、などの問題を有
し、必ずしも十分に満足しうるものではなかった。
【0007】一方、弾性率の測定方法については、気孔
率(ψ)と弾性率(E)との関係を示す式として、 E/E0=exp(−c1ψ) E/E0=(1−ψ)C2 などが報告され[「セラミックス先端材料」第31ペー
ジ(1991年)、日本セラミックス協会編、オーム
社]、気孔率から弾性率を推定する方法が提案されてい
る。
【0008】しかしながら、この場合、これらの式が適
用できるのは、気孔率が低い範囲のみに限定されてお
り、また、これらの式は経験式であるため、係数c1
2の値を決定する一般的な方法がなく、試料の材質や
形状が異なるたびに弾性率測定試験をしてc1やc2の値
を求めなければならないなどの欠点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来技術がもつ欠点を克服し、固体材料の物性、すなわ
ち気孔率、気孔形状及び弾性率を、非破壊的に簡便、か
つ精度よく測定することができ、しかも気孔同士が連結
した状態で存在する多孔質材料にも適用しうる実用化可
能な固体材料の物性測定方法を提供することを目的とし
てなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、被測定試料の
固体材料の表面に送受信兼用の超音波センサを配置し
て、該固体材料の超音波の単位伝播時間を測定し、
(1)固体材料の超音波の単位伝播時間と気孔率とが一
定の関係にあること、(2)固体材料の気孔率と超音波
の単位伝播時間及び気孔形状係数とが一定の関係にある
こと、及び(3)固体材料の気孔率と気孔形状係数及び
弾性率とが一定の関係にあること、を利用することによ
り、固体材料の気孔率、気孔形状係数及び弾性率を精度
よく算出することができ、その目的を達成しうることを
見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0011】すなわち、本発明は、超音波を利用して固
体材料の物性を測定するに当り、まず、固体材料の表面
に送受信兼用の超音波センサを配置して短パルス超音波
を発振させ、固体材料底面からの超音波の反射波を検出
して、超音波の単位伝播時間:(tunit)を測定し、
(イ) 固体材料の超音波の単位伝播時間(tunit)と
気孔率(ψ)との関係式を用いて気孔率(ψ)を算出す
ること、(ロ) 固体材料の気孔率(ψ)と超音波の単
位伝播時間(tunit)及び気孔形状係数(β)(ただ
し、β=Lp/2πr、Lp:気孔断面の周囲長さ、r:
気孔と同体積を有する真球の半径)との関係式を用い
て、気孔形状係数(β)を算出すること、及び(ハ)
固体材料の気孔率(ψ)と気孔形状係数(β)及び弾性
率(E)の関係式を用いて弾性率(E)を算出すること
を特徴とする固体材料の物性測定方法を提供するもので
ある。
【0012】本発明の固体材料の物性測定方法は、超音
波を利用する方法であり、その具体的な実施態様を添付
図面で説明すると、図1は本発明方法を実施するための
計測システムの1例の概略図であって、まず、固体材料
試片1の表面に、送受信兼用の超音波センサ2を配置
し、超音波発振器3より短パルス電圧を出力させてセン
サ2に送信する。センサ2から発振された短パルス超音
波は試片1の底面で反射されて表面に帰ってくる。この
反射エコーをセンサ2で検出し、デジタルオシロスコー
プ4に収録する。このようにして得られた反射エコー信
号は、次いで、計測制御及び解析用のパーソナルコンピ
ュータ5で処理され、所望のデータとして出力される。
超音波センサを試片上で走査させながら計測・解析を繰
り返すことにより気孔や弾性率の分布状態を測定するこ
とができる。
【0013】なお、上記計測法において、デジタルオシ
ロスコープの代わりに、反射エコーの音速を測定できる
機能を有する計算機基板を作製してコンピュータに組み
込めば、さらに安価なシステムが構成できる。
【0014】本発明方法においては、前記のようにし
て、まず反射エコーを超音波センサで検出し、超音波の
単位伝播時間すなわち単位長さを伝播するのに要する時
間:(tunit)を測定する。この超音波の単位伝播時間
(tunit)と気孔率(ψ)との間に、次の関係式
【数4】 (ただし、Vpは気孔を全く含まない場合の音速、α=
c/Vp、Vcは超音波が気孔表面に沿って迂回すると
きの迂回波音速、βは気孔形状係数でLp/2πr、Lp
は気孔断面の周囲長さ、rは同体積を有する真球の半
径)が成り立つ。なお、この数式(I)は、以下のよう
にして導かれる。
【0015】図2は固体材料を伝播する超音波の挙動を
説明するためのモデル図であり、この図2に示されるよ
うに、固体材料の内部に気孔が等間隔に配列されたモデ
ルを考える。超音波が一個の気孔に当ると気孔表面に沿
って迂回して進むため、気孔に当らずに進む波(直接
波)に比べてわずかに伝播時間に遅れが生じる。この伝
播時間遅れをΔtとする。
【0016】次に、任意の時刻に到達する超音波の確率
を求める。図2に示したモデルは、超音波の伝播方向に
垂直な(図2において紙面に垂直な)N枚の断面に、気
孔が面積率φで分布しているモデルに置き換えて考える
ことができる。直接波よりもjΔt時間遅れて到達する
波の確率P(jΔt)は、j枚の断面で気孔に当たり、
残り(N−j)枚の断面で気孔に当たらない確率に等し
いから、 P(jΔt)=φj(1−φ)(N-j) Nj (j=0,1,2,…,N) (II) となる。ただし、NjはN枚の中からj枚を取り出す組
合せの数である。
【0017】数式(II)を、横軸に時間、縦軸にP
(jΔt)をとって表示した場合、図3に示すような二
項分布となり、P(jΔt)が最大値をとる時の時刻t
Pは tP=N・φ・Δt (III) となる。
【0018】超音波センサで検出された波は、音波の圧
力を時間を追って測定したものであるから、当然、数式
(III)で表される到達遅れ時間に対応して遅れる。
【0019】次に数式(III)を気孔に関するパラメ
ータで記述することを考える。図2において固体内部に
気孔がピッチpで等間隔に配列したモデルを考えると、
その幾何学的関係から、気孔率ψ、気孔半径rと断面数
N、各断面に占める気孔の面積率φ、伝播距離Lとの間
に、 N=L/p φ=πr2/p2 ψ=(4πr3/3)/p3 なる関係が成立する。これらの関係よりpを消去すれ
ば、N,φは N=(4π/3ψ)-1/3L/r (IV) φ=π(4π/3ψ)-2/3 となる。
【0020】数式(IV)を数式(III)に代入すれ
ば、 tp=(3ψL/4r)×Δt (V) が得られる。
【0021】次に超音波が1個の気孔に当ることによっ
て生じる伝播時間遅れΔtを求める。図2の下図に示す
ように、超音波が気孔表面に沿って、Vcなる迂回波伝
播速度で1/4周進み、その後、気孔から離れて縦波音
速Vpで伝播すると仮定する。いま、気孔の周囲長さを
pとすると、 Δt=(Lp/4)/Vc−r/Vp (VI) なる関係が成立する。
【0022】ここで、音速比α及び気孔形状係数βを次
式で定義する。 α=Vc/Vp (VII) β=Lp/2πr βは、気孔が真球のとき1になり、気孔形状が複雑にな
るにつれて大きな値となる。数式(VI)、(VII)
よりLp、Vcを消去すれば、 Δt=r(πβ/α−2)/(2Vp) (VIII) が得られる。
【0023】さらに、数式(VIII)を数式(V)に
代入して整理すれば、超音波の伝播遅れ時間tPと気孔
率ψの関係を表す式として、 tP=3ψL(πβ/α−2)/(8Vp) (IX) が得られる。
【0024】tPは、気孔がまったく存在しない場合の
超音波伝播時間に対する固体材料の伝播時間遅れを示し
たものであるから、固体材料の伝播時間をtaとすれ
ば、taとtPとの間には次の関係が成立する。 ta=L/Vp+tP 上式に数式(IX)を代入して整理すれば、
【数5】 となる。ここで、単位伝播時間(tunit)を、 tunit=ta/L で定義すれば、数式(X)は
【数6】 と書き直される。
【0025】さらに数式(XI)を気孔率ψについて整
理し直せば、気孔率ψと超音波の単位伝播時間tunit
の関係式、
【数7】 が導かれる。
【0026】前記数式(I)におけるパラメータVp
びβ/αは、横軸を気孔率(ψ)、縦軸を超音波の単位
伝播時間(tunit)としたグラフ上に、数個の試料につ
いての気孔率(ψ)と超音波の単位伝播時間(tunit
の測定データをプロットし、これらのデータの最小二乗
直線の傾きと切片及びVp、β/αとが、関係式 Vp=1/B (XII) β/α=(8A/3B+2)/π (XIII) (ただし、Aは最小二乗直線の傾き、Bは最小二乗直線
の切片)で結ばれていることを利用して決定することが
できる。これは、数式(XI)が次式で示される気孔率
ψに関する一次方程式で記述されることによる。 tunit=Aψ+B ただし A=3(πβ/α−2)/8Vp B=1/Vp また、超音波の単位伝播時間(tunit)と気孔形状係数
(β)との関係式である前記数式(XI)を、横軸を気
孔率(ψ)、縦軸を単位伝播時間(tunit)とするグラ
フ上に作成しておき、このグラフと気孔率及び超音波の
単位伝播時間の測定値とから、気孔形状係数(β)を決
定することができる。なお、この気孔形状係数(β)
は、気孔形状の複雑度を定量的に表現するための係数で
あって、前記したようにβ=Lp/2πrで定義され
る。ここで、Lpは気孔断面の周囲長さ、rは気孔と同
体積を有する真球の半径である。
【0027】さらに、固体材料の弾性率(E)と気孔率
(ψ)及び気孔形状係数(β)との関係式
【数8】 (ただし、E0は気孔を全く含まない場合の弾性率)か
ら、弾性率(E)を算出することができる。なお、前記
数式(XIV)は、次のようにして導かれたものであ
る。
【0028】固体材料の見かけの縦波音速をV、気孔率
が零の場合の縦波音速をVpとすれば、 tp=L/V−L/Vp なる関係より、見かけの音速Vと超音波の伝播遅れ時間
pとの関係は、 V=LVp/(tpp+L) で表わされる。上式に数式(IX)を代入すれば、
【数9】 が得られる。
【0029】一方、見かけの音速Vと縦弾性率Eとの間
には、既に弾性学で明らかにされているように、
【数10】 (ただし、νはポアソン比、ρは見かけの密度)なる関
係式が成立する。これより、ポアソン比νが一定である
と仮定すれば、 E/E0=(V/V02(ρ/ρ0) (ただし、E0、V0及びρ0はそれぞれ気孔率が零の場
合の同質材料の弾性率、縦波音速及び密度であり、V0
はVpに等しい)なる関係式が得られる。
【0030】また、密度と気孔率の間には次の関係があ
る。 ρ/ρ0=1−ψ (XVII) 数式(XV)及び(XVII)を数式(XVI)に代入
して整理すれば、
【数11】 が導かれる。
【0031】
【発明の効果】本発明の固体材料の物性測定方法は、本
発明者らが先に提案した気孔率及び気孔径の測定方法
(特開平6−18403号公報)に比べて極めて簡便
に、気孔率のみならず、気孔形状や弾性率も測定するこ
とができ、また、気孔率が高い場合にも適用しうる上、
低価格で装置の構成が可能で、しかも1センサ法である
ためセンサ走査による気孔分布の測定が容易であるなど
の特徴を有し、各種固体材料の気孔分布状態の把握、製
品の品質判定などに適用できる。
【0032】これまで広く使用されてきたアルキメデス
法(アルキメデスの原理を利用して相対密度を測定する
方法)による気孔率測定では、測定に時間がかかる上、
試料の平均気孔率しか測れないという欠点を有していた
が、本発明方法は試料の局所気孔率を一瞬にして測定で
きるという利点を有しており、アルキメデス法に代わる
新しい気孔検査の手法として実用化が期待される。
【0033】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。なお、セラミックスに残留する気孔の非破壊検
出に適用した例を示す。
【0034】参考例 被検体には、窒化ケイ素(Si34)の焼結体、仮焼結
体及び成形体を用いた。各被検体試料の気孔率と板厚
(超音波伝播距離)を表1に示す。表に示す気孔率は従
来のアルキメデス法で測定した値である。
【0035】各試料底面からの超音波反射エコーを検出
して超音波の単位伝播時間tunitを測定し、横軸をアル
キメデス法による気孔率の測定値、縦軸をtunitとして
グラフを作成すると図4のようになる。このグラフから
分かることは、焼結体においては、気孔率が低い範囲
(20%以下)では気孔率の増加とともに超音波の伝播
時間が単調に増加し、その後は気孔率の増加とともに伝
播時間が指数関数的に増加するということである。ま
た、成形体では気孔率と伝播時間の間に線形関係が認め
られることである。この現象を前記した数式(XI)に
対比させると、次のことがいえる。すなわち、(1)成
形体の気孔は、複雑な形状(気孔形状係数βの値が大き
い)をしているが、その形状は気孔率にほとんど依存せ
ずに相似形を保つ、(2)成形体を焼結する段階で気孔
形状が次第に単純化していく(βの値が1に近づく)、
(3)ある程度まで焼結が進むと気孔は球に近い一定形
状を保ったまま(βの値が1に近い一定値をとる)気孔
が減少していく。これらの点は、気孔分布状態を顕微鏡
観察した結果とよく一致した(ただし、成形体について
は顕微鏡観察用サンプルの作製が困難であるため確認し
ていない)。本発明の利点は、このような気孔形成過程
を非破壊的に検出できる点にもある。また、窒化ケイ素
だけではなくアルミナの焼結体及び仮焼結体についても
実験を行った結果、窒化ケイ素と同様に、気孔率が20
%以下の範囲では気孔率と超音波伝播時間の間に線形関
係があり、その後、気孔率の増加とともに伝播時間が指
数関数的に増加することを確認している。通常、どのよ
うな固体材料であれ、内部に含まれる気孔の体積率が増
加すれば気孔同士がリンクして複雑な形状になることは
明らかであるから、以下で説明する本発明の実施例はセ
ラミックスをはじめとする多孔質材料一般についても適
用できるものだといえる。
【0036】
【表1】
【0037】実施例1 まず、数式(I)で使用するパラメータVp及びβ/α
を求める。図4に示したグラフより、気孔率20%以下
の焼結体の測定データの最小二乗直線を求めると、図4
に実線で示す直線となる。この最小二乗直線の傾きと切
片をそれぞれA及びBとすると、 A=0.1036μs/mm B=0.0901μs/mm となる。これらの値を数式(XII)及び(XIII)
に代入してVp及びβ/αを求めると Vp=11100m/s β/α=1.61 が得られる。なお、Vp及びβ/αは材料固有の物性値
と考えてよく、一度測定しておけば試料の形状や測定条
件が異なっても使用することができる。
【0038】Vp及びβ/αの値を数式(I)に代入す
れば、気孔率ψと単位伝播時間の関係が決定される。気
孔率20%以下の焼結体について測定した単位伝播時間
を数式(I)に代入して気孔率を算出した。その結果
を、アルキメデス法による測定値と比較して図5の○印
で示す。超音波法による測定値はアルキメデス法による
測定値とよい対応を示している。
【0039】実施例2 実施例1は、気孔率が低い(20%以下)場合の気孔率
測定方法について説明したものであるが、ここでは、気
孔率が高い場合、すなわち、気孔形状が複雑な場合の気
孔率測定方法について説明する。
【0040】気孔率が高い場合にも数式(I)を用いて
気孔率を算出できるのは同様であるが、気孔率が高い場
合には気孔形状が複雑になるので気孔形状係数βの値が
違ってくる。まず、成形体の場合について説明する。図
4に示したグラフより、成形体の気孔率と単位伝播時間
の関係は図4に破線で示す関係にある。成形体の気孔形
状係数をβgとして、この直線の傾きからβg/αを求め
ると、 βg/α=11.8 となる。したがって、一度(βg/α)の値を求めてお
けば、気孔率が低い場合と同様にして、成形体の気孔率
も測定することができる。このようにして測定した成形
体の気孔率測定結果を、アルキメデス法による測定値と
比較して図5の□印で示す。超音波法による測定値はア
ルキメデス法による測定値とよい対応を示している。な
お、成形体の場合は高周波超音波の減衰が著しいので、
低周波で感度のよい超音波センサを使用するのがよい。
【0041】実施例3 気孔率が高い(20%以上)場合の焼結体の気孔率測定
方法について説明する。この場合は、気孔形状が気孔率
に依存するので、あらかじめ図4に示すグラフに気孔率
−単位伝播時間の関係を表わすマスターカーブを作成し
ておき、測定した単位伝播時間とマスターカーブとの交
点から気孔率を推定する方法を推奨する。このマスター
カーブは試料の形状が異なっても同一曲線になる。もう
一つの方法として、顕微鏡観察などで気孔の形状係数β
sを測定し、 βs/α=(β/α)・(βs/β) なる関係を利用して、(βs/α)の値をそのつど決定
して、数式(I)を利用して気孔率を算出する方法もあ
る。ただし、後者の方法は、被検体の気孔形状係数βs
及び気孔率が低い場合の気孔形状係数βを測定する必要
があり、簡便性に劣る。
【0042】実施例4 数式(XI)を利用して、気孔形状を推定する方法につ
いて説明する。数式(XI)を(β/α)をパラメータ
にしてグラフにすると図6に示すような関係にある。し
たがって、測定した気孔率と伝播時間のなす交点がどの
直線上にあるかを調べれば(β/α)の値を推定するこ
とができる。音速比αは一定値であるから気孔形状の複
雑さ、すなわち気孔形状係数βを決定することができ
る。本発明者らの研究結果により、音速比αの値はセラ
ミックスではほぼ0.7となることが確認されている。
いま、α=0.7として、いくつかの試料の気孔形状係
数を求めてみる。アルキメデス法で測定した気孔率と超
音波の伝播時間とから気孔形状係数を求め、図6を利用
して気孔形状係数βを推定した。その結果を、顕微鏡画
像解析による測定結果と比較して表2に示す。本手法に
よる測定結果は顕微鏡画像解析による測定値と比較的よ
い対応を示している。なお、成形体及び気孔率が20%
以上の焼結体では顕微鏡観察試料の作製が困難なことや
二値化による気孔判定が難しいこともあり画像解析によ
る測定はできなかった。このことを逆にいえば、これま
では多孔質材料の気孔形状を顕微鏡観察することは難し
かったが、超音波法は、気孔形状そのものは観察できな
いにしても、形状の複雑さだけならこれを数値化して検
出することができる優れた方法だということができる。
【0043】
【表2】
【0044】実施例5 数式(XIV)を利用した弾性率の推測法について説明
する。音速比αを0.7として、弾性率比(E/E0
と気孔率(ψ)の関係を気孔形状係数(β)をパラメー
タにしてグラフにすると図7のようになる。したがっ
て、気孔率と気孔形状係数を測定すれば弾性率の低下率
を知ることができる。
【0045】参考までに、これまでに提案されてきた
(気孔率が低い場合の)弾性率と気孔率の関係を表す経
験式 E/E0=exp(−c1ψ) (XVIII) を図7の破線で示す。ただし、c1はセラミックスで2
〜4の値をとるといわれているのでc1=3のときの曲
線を示した。この曲線は、本発明者らが提案した関係式
(XIV)において気孔形状係数の値を1.1(表2に
おいて気孔率が低い場合の気孔形状係数の値)とした場
合の理論曲線によく一致している。このことは、本発明
者らの理論式の妥当性を示しているともいえる。
【0046】従来の関係式で使用する係数c1の値は気
孔形状に依存するといわれていたが、両者の関係を表わ
す理論式が得られていなかったため、c1の値は実験的
に求めるしかなかった。本発明者らがその理論的関係を
明らかにしたことにより、気孔率と気孔形状を測定する
だけで弾性率を推定することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法を実施するための計測システムの
1例の概略図。
【図2】 固体材料を伝播する超音波の挙動を説明する
ためのモデル図。
【図3】 任意の時間遅れで到達する超音波の確率を表
わすグラフ。
【図4】 各試料の気孔率及び超音波の単位伝播時間の
測定結果をプロットした図。
【図5】 超音波法による気孔率の測定結果をアルキメ
デス法による気孔率の測定結果と対比させて示した図。
【図6】 気孔率と超音波の単位伝播時間との関係を
(β/α)をパラメータにして描いた図。
【図7】 気孔率と弾性率との関係を気孔形状係数
(β)をパラメータにして描いた図
【符号の説明】
1 被測定物 2 超音波センサ 3 超音波発振器 4 デジタルオシロスコープ 5 パーソナルコンピュータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 茂之 広島県呉市広末広2丁目2番2号 工業技 術院中国工業技術研究所内 (72)発明者 加藤 崇典 福岡県大牟田市新開町1 電気化学工業株 式会社大牟田工場内 (72)発明者 磯崎 啓 福岡県大牟田市新開町1 電気化学工業株 式会社大牟田工場内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超音波を利用して固体材料の物性を測定
    するに当り、まず、固体材料の表面に送受信兼用の超音
    波センサを配置して短パルス超音波を発振させ、固体材
    料底面からの超音波の反射波を検出して、超音波の単位
    伝播時間:(tunit)を測定し、(イ) 固体材料の超
    音波の単位伝播時間(tunit)と気孔率(ψ)との関係
    式を用いて気孔率(ψ)を算出すること、(ロ) 固体
    材料の気孔率(ψ)と超音波の単位伝播時間(tunit
    及び気孔形状係数(β)(ただし、β=Lp/2πr、
    p:気孔断面の周囲長さ、r:気孔と同体積を有する
    真球の半径)との関係式を用いて、気孔形状係数(β)
    を算出すること、及び(ハ) 固体材料の気孔率(ψ)
    と気孔形状係数(β)及び弾性率(E)との関係式を用
    いて、弾性率(E)を算出することを特徴とする固体材
    料の物性測定方法。
  2. 【請求項2】 超音波の単位伝播時間(tunit)と気孔
    率(ψ)との関係式が、 【数1】 (ただし、Vpは気孔を全く含まない場合の音速、α=
    c/Vp、Vcは超音波が気孔表面に沿って迂回すると
    きの迂回波音速、βは気孔形状係数)である請求項1記
    載の測定方法。
  3. 【請求項3】 横軸を気孔率(ψ)、縦軸を超音波の単
    位伝播時間(tunit)としたグラフ上に、数個の試料に
    ついての気孔率(ψ)と超音波の単位伝播時間
    (tunit)の測定データをプロットし、これらのデータ
    の最小二乗直線の傾きと切片及びVp、β/αとが、関
    係式 Vp=1/B β/α=(8A/3B+2)/π (ただし、Aは最小二乗直線の傾き、Bは最小二乗直線
    の切片)で結ばれていることを利用して、Vp及びβ/
    αを決定する請求項2記載の測定方法。
  4. 【請求項4】 超音波の単位伝播時間(tunit)と気孔
    形状係数(β)との関係式 【数2】 を、横軸を気孔率(ψ)、縦軸を超音波の単位伝播時間
    (tunit)とするグラフ上に作成しておき、このグラフ
    と気孔率及び超音波の単位伝播時間の測定値とから、気
    孔形状係数(β)を決定する請求項1記載の測定方法。
  5. 【請求項5】 固体材料の弾性率(E)と気孔率(ψ)
    及び気孔形状係数(β)との関係式が 【数3】 (ただし、E0は気孔を全く含まない場合の弾性率)で
    ある請求項1記載の測定方法。
JP7002183A 1995-01-10 1995-01-10 固体材料の物性測定方法 Pending JPH08189923A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7002183A JPH08189923A (ja) 1995-01-10 1995-01-10 固体材料の物性測定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7002183A JPH08189923A (ja) 1995-01-10 1995-01-10 固体材料の物性測定方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08189923A true JPH08189923A (ja) 1996-07-23

Family

ID=11522257

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP7002183A Pending JPH08189923A (ja) 1995-01-10 1995-01-10 固体材料の物性測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08189923A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005521051A (ja) * 2002-03-19 2005-07-14 ミリポア・コーポレーシヨン 多孔性媒体特性の超音波探知
WO2009044565A1 (ja) * 2007-10-01 2009-04-09 Denki Kagaku Kogyo Kabushiki Kaisha テープ状フィルムの巻き取り状態評価方法およびテープ状フィルムの巻き取り方法
JP2010203897A (ja) * 2009-03-03 2010-09-16 Ihi Corp ガラス中の金属粒子の状態検出方法
CN102359930A (zh) * 2011-09-19 2012-02-22 西安公路养护技术工程研究中心有限公司 沥青混合料孔隙率的测试方法及装置

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005521051A (ja) * 2002-03-19 2005-07-14 ミリポア・コーポレーシヨン 多孔性媒体特性の超音波探知
WO2009044565A1 (ja) * 2007-10-01 2009-04-09 Denki Kagaku Kogyo Kabushiki Kaisha テープ状フィルムの巻き取り状態評価方法およびテープ状フィルムの巻き取り方法
JP2009084010A (ja) * 2007-10-01 2009-04-23 Denki Kagaku Kogyo Kk テープ状フィルムの巻き取り状態評価方法およびテープ状フィルムの巻き取り方法
US8289810B2 (en) 2007-10-01 2012-10-16 Denki Kagaku Kogyo Kabushiki Kaisha Winding state evaluation method for tape film and winding method for tape film
JP2010203897A (ja) * 2009-03-03 2010-09-16 Ihi Corp ガラス中の金属粒子の状態検出方法
CN102359930A (zh) * 2011-09-19 2012-02-22 西安公路养护技术工程研究中心有限公司 沥青混合料孔隙率的测试方法及装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Radovic et al. Comparison of different experimental techniques for determination of elastic properties of solids
Shirley et al. Shear‐wave measurements in laboratory sediments
US6082181A (en) Ultrasonic fluid densitometer having liquid/wedge and gas/wedge interfaces
US20040050165A1 (en) Method for determining the wall thickness and the speed of sound in a tube from reflected and transmitted ultrasound pulses
Dunegan Modal analysis of acoustic emission signals
Piche Ultrasonic velocity measurement for the determination of density in polyethylene
JP4686648B1 (ja) 超音波検査方法
US20060144149A1 (en) Nondestructive inspection method and system therefor
EP0057521B1 (en) Determination of plastic anisotropy in sheet material
JPH08189923A (ja) 固体材料の物性測定方法
Spratt et al. Torsional ultrasonic waveguide sensor
Sasmita et al. Determination of elastic modulus of ceramics using ultrasonic testing
JP3245606B2 (ja) 固体材料の粒子分散量及び粒子寸法の測定法
JP3597182B2 (ja) 超音波音速測定方法及びこれらに基づいてヤング率及びポアソン比を求める方法
JP4701396B2 (ja) 超音波法によるコンクリート構造物のひび割れ深さ探査方法及びそのひび割れ深さ探査装置
van Deventer et al. Thermostatic and dynamic performance of an ultrasonic density probe
Sathish et al. Quantitative imaging of Rayleigh wave velocity with a scanning acoustic microscope
JP4403280B2 (ja) 軟質薄膜の物性値測定方法とそのための装置
JP2000221076A (ja) 超音波音速測定方法
JP2003149214A (ja) 超音波センサを用いた非破壊検査法及びその装置
JPH076955B2 (ja) 固体材料の気孔率及び気孔径の測定方法
JP2007309850A5 (ja)
JPH09138222A (ja) 鋳片又は圧延された鋼材の超音波検査法
Balasubramaniam et al. Temperature and viscosity in-situ sensor for hostile processes
Spratt et al. Liquid level torsional ultrasonic waveguide sensor