JPH08128917A - 風洞試験用模型支持装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 空力特性の試験を行う模型を、風洞内の計測
位置に配設するための風洞試験用模型支持装置の提供。 【構成】 風洞内で移動させる必要のある可動部にかか
る空力荷重を支持するストラット２を、測定部カート１
中央に立設し、その上、下端を風洞壁に固着して、両端
固定梁構造にして剛性の大きいものにするとともに、移
動部３を、その上、下端部に連結した駆動索１０を駆動
装置１２により駆動させ、ストラット２に沿って移動さ
せ、模型７をはじめとする可動部を上下動させ、不具合
が解消できるとともに、ストラットの断面積を小さくで
き、気流の乱れ、送風機の負担軽減、および装置の小型
化が図れる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、航空機等の開発の為に
実施される風洞試験において、使用される風洞試験用模
型支持装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】航空機等の開発において、設計された航
空機等の空力特性を、風洞試験により地上で取得するこ
とが通常行われている。図４は、比較的低速の風洞試験
において使用されている、風洞試験用模型支持装置の側
面図である。

【０００３】図に示すように、設計された航空機を縮尺
して製作された模型０８は、内挿式６分力天秤０７を介
装して、スティング０６の先端に固着され、測定部カー
ト０１内の風路中心に設定された計測位置に設置され
る。スティング０６の後端には、迎角（α）変角機構０
５、および偏搖れ角（β）変角機構０４が設けられてい
る。また、これらの変角機構０５，０４は、測定部カー
ト０１の底面（下壁）を貫通して、測定部カート０１の
下方の地盤０２５に画成された、地下ピット０２６へ垂
下された上下動式ストラット０２２の上端部に結合さ
れ、支持されている。

【０００４】地下ピット０２６内には、上下動式ストラ
ット０２２を支持するとともに、その上下動をガイドす
る、図示しない枠組みのガイドが設けられている。ま
た、地下ピット０２６内には、伸縮して上下動式ストラ
ット０２２を上下動させる、上下駆動用アクチュエータ
０２３が設けられている。

【０００５】このような、風洞試験用模型支持装置を使
用して風洞試験を行うとき、模型０８を試験目的に合わ
せて、作動させる必要が生じて来る。例えば、図に鎖線
で示すように、一様流に対して、航空機が迎角αの姿勢
にあるときの空力特性を試験する、模型０８の迎角α変
角操作時、又は偏搖れ部変角操作時等である。このよう
な変角操作時には、模型０８の変角操作を行うばかりで
なく、模型０８の重心位置が測定部カート０１の略中心
になるように、模型０８の位置を移動させる必要があ
る。

【０００６】すなわち、模型０８の変角操作を行う迎角
変角機構０５、又は偏搖れ角変角機構０６による変角操
作に連動させて、上下動式ストラット０２２を上下動さ
せ、変角の大きさに拘わらず、自動的に、模型０８の重
心位置が、測定部カート０１の略中心の計測位置に配置
されるように、移動させる必要がある。

【０００７】また、航空機の離着陸時の空力特性を試験
する地面効果試験においては、模型０８の迎角αを全ん
ど変動させず、上下動式ストラット０２２を上昇、下降
させて模型０８の測定部カート０１の底面からの高さを
変化させ、地面効果を確認することが行われている。

【０００８】このように、上下動式ストラット０２２の
上下動は、風洞試験において重要な操作であるととも
に、その上下移動量は、略測定部カート０１の高さと同
等の大きさが必要となる。一方、上下動式ストラット０
２２は、模型０８およびスティング０６を支持するとと
もに、測定部カート０１の底面を貫通して、風路内に突
出して、模型０８およびスティング０６に発生する空気
力を、頂部で支持する片持ち梁構造とされており、ま
た、それ自体に発生する空気力も大きくなり、これらの
荷重に耐える剛性確保のため断面形状は大きくせざる得
ず、大きな重量のものとなっている。

【０００９】従って、上下動式ストラット０２２を上下
動させる、上下駆動用アクチュエータ０２３は、最大重
量物のストラット０２２を含む、全支持装置の重量を支
え、さらに模型０８等に生ずる空気力に打ち勝って、こ
れらを動かせるパワーが必要となる。

【００１０】このように、従来の風洞試験用模型支持装
置では、 （１）上下動式ストラット０２２は大きく、重くなる。 （２）これに伴い、上下動式ストラット０２２を支える
枠組みのガイドを大きくする必要があり、地下ピット０
２６面積も広くする必要がある。 （３）また、上下動式ストラット０２２を上下駆動す
る、上下動駆動アクチュエータ０２３に必要なパワー
が、大きいものを必要とする。 等の不具合がある。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の不具
合を解消するため、上下動式ストラットの小型軽量化を
図り、装置をコンパクトにできるとともに、風洞試験に
おける、ストラット駆動のための駆動力を、削減できる
風洞試験用模型支持装置を提供することを課題とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】このため、本発明の風洞
試験用模型支持装置は次の手段とした。

【００１３】（１）測定部カートの上壁、および下壁の
枠組みに、その上端および下端を固定して、測定部カー
ト内にストラットを立設した。

【００１４】（２）先端に模型を装着したスティングの
後端部を、その前端部に連結するとともに、ストラット
の側面を摺動し、ストラットの側面に沿って、測定部カ
ート内を上下動する移動部を設けた。

【００１５】（３）移動部の上部に一端が繋着され、他
端が測定部カートの上壁を通って、外部へ誘導された第
１の駆動索と、移動部の下部に一端が繋着され、他端が
測定部カートの下壁を通って外部へ誘導された第２の駆
動索とからなり、第１，第２の駆動索の外部へ誘導され
た他端に、それぞれ連結され、両駆動索の間に介装され
たカウンターウエイトを具えた駆動索を設けた。なお、
第１の駆動索、第２の駆動索は、チェーンでもワイヤロ
ープでも良い。

【００１６】（４）駆動索を駆動して、駆動索の一端に
連結されている移動部を、ストラット側面に沿って、測
定部カート内を上下動させる駆動装置を設けた。この駆
動装置は、駆動索を外部へ誘導するスプロケットを駆動
し、これに係合する駆動索を作動するようにしたもので
も、摩擦力により駆動索を移動させるようにしたもので
も良い。また、駆動装置は、第１又は第２の駆動索の何
れかを駆動する１台設けるようにしても良く、又は、そ
れぞれの駆動索を同期して駆動する２台設けるようにし
ても良い。

【００１７】

【作用】本発明の風洞試験用模型支持装置は、上述の手
段により、 （１）ストラットは、測定部カートの上下壁面で固定さ
れているため、両端固定梁となり、片持梁に比較して高
剛性にできる。従って、片持梁と同一たわみ量を許容す
るもので板厚を薄くすることができ、重量軽減が達成で
きるとともに、測定部カート内の流路を塞ぐ面積が小さ
くできる。また、測定部カートの下方に必要としていた
地下ピット、およびストラットを支持していた枠組みの
ガイドをなくすることができる。

【００１８】（２）移動部を設けて、風洞試験で必要と
する模型、天秤、スティングのα変角機構、β変角機構
からなる可動部のみを上下動させるようにして、従来、
これらの重量、および空力荷重を支持するために、重量
が大きくなっていたストラットの上下動を不要としたの
で、その上下動に必要な駆動力を小さくできる。また、
移動部はストラットの側面と摺動して上下動するので、
ストラットまわりに生じる移動部不釣合モーメントは、
ストラットで吸収させることができる。

【００１９】（３）模型をはじめとする可動部を、風洞
試験で必要とする位置に正確に設定できる。また、移動
部を駆動索にカウンターウエイトを設けることにより、
カウンターウエイトを可動部を含む移動部の全重量に釣
り合せておき、これらの上下動に必要な駆動力を小さく
することができる。また、測定部カートの外にカウンタ
ーウエイトを設けたことにより、その取付け、取外し、
調整が容易になる。

【００２０】（４）駆動索の駆動で移動部を必要な位置
に設定できるので、駆動機構が簡単にまとめることがで
きるとともに、小型軽量化できる。

【００２１】

【実施例】以下、本発明による風洞試験用模型支持装置
の一実施例を、図面に基づき説明する。図１は測定部カ
ートを上から見た平面図、図２は測定部カートを側部か
ら見た側面図、図３は測定部カートを後方から見た正面
図である。

【００２２】図に示すように、模型８は内挿式６分力天
秤７を介してスティング６の先端に装着され、測定部カ
ート１の風路中心に設定された計測位置に設置される。
スティング６の後方に設けられ、２つの回転中心軸を持
った横滑り角変角機構４によって、図１の鎖線で示すよ
うに横滑り部βが模型８に与えられる。横滑り角変角機
構４は、図示するように、２つの回転軸があることで、
模型８の基準点、たとえば６分力天秤７の中心は、測定
部カート１中心線上を動くよう制御できる。

【００２３】また、迎角変角機構５によって、図２の鎖
線で示すように、迎角αが模型８に与えられる。模型８
に迎角αを与える場合も、模型８の基準点を測定部カー
ト１の上下方向中心線上を保ちながら変角させる。この
ため、横滑り変角機構４の後端には、上、下に移動でき
る、円断面に形成された移動部（ポッド）３が設けられ
ている。この移動部３は、その上端部および下端部が、
測定部カート１の上壁および下壁の枠組みに固着され、
測定部カート１内に鉛直に立設された、ストラット２の
側面を取り巻いてストラット２に取り付けられており、
ストラット２の側面に設けたリニアガイド（直動ベアリ
ング）を作動させて、ストラット２の側面に沿って、上
下動できる。

【００２４】ストラット２は、模型８、天秤７、スティ
ング６、横滑り変角機構４、迎角変角機構５からなる可
動部、および移動部３に発生する空力荷重に耐える剛性
をもつ、鋼製の薄板で形成されており、測定部カート１
を通過する気流Ｗの通過面積を可能な限り狭くしないよ
うにするとともに、それ自体に発生する空力荷重を小さ
くするために、流線形に形成され、上述の通り、上端部
および下端部が上壁、および下壁に固着されて、両端固
定梁構造にされている。

【００２５】これにより、測定部カート１の上壁、又は
下壁から外部へ突出することがなく、特に、下壁を貫通
して下方へ移動することがなく、従来、測定部カートの
下方に必要として地下ピットが不要となる。

【００２６】さらに、移動部３も上記可動部に発生する
不釣合モーメントを含む空力荷重に耐える鋼製の円筒状
のもので形成されており、ストラット２と同様に流路方
向には、流線形に形成されている。

【００２７】移動部３の上下方向の移動は、ストラット
２内を通り一端が、図３に示すように、移動部３の上端
部および下端部に、それぞれ連結された駆動索としての
チェーン１０によって動かされる。チェーン１０は、測
定部カート１の上壁および下壁を通って測定部カート１
の外側へ導出され、測定部カート１の上面、下面に設け
たスプロケット１１で風路と直交する方向に方向変換さ
れて、それぞれの他端側は、カウンターウエイト９に接
続している。カウンターウエイト９は、測定部カート１
の外側面を上下動するように配置されており、前記可動
部および移動部３の全重量と略同じ重量に調整されてい
る。これにより、移動部３の上下動させるためのチェー
ン１０の駆動には、略んど動力を必要としない。

【００２８】また、チェーン１０の方向変換を行ってい
る、スプロケット１１の軸に歯車１２を設け、この歯車
と、測定部カート１の上壁上に設けたサーボモータ１２
の出力軸に設けた歯車１３を噛み合わせ、チェーン１０
を上下に引張り、駆動するようにしている。すなわち、
サーボモータ１２のチェーン１０駆動により、移動部３
が下へ動けばカウンターウエイト９は上へ動く。

【００２９】また模型８に発生する空気力の大きさによ
って、サーボモータ１１容量の選定、又は設置台数の増
減を考慮すれば良い。

【００３０】

【発明の効果】以上述べたように、本発明の風洞試験用
模型支持装置によれば、特許請求の範囲に示す構成によ
り、次の効果が得られる。

【００３１】（１）ストラットを、測定部カートの上、
下壁面に、上、下端部を固定した両端固定梁構造にで
き、剛性の高い支持装置とすることができる。

【００３２】（２）また、気流に正対する断面積が、従
来構造より小さくでき、気流の乱れ、送風機の負担軽減
が達成できる。

【００３３】（３）最大重量物であるストラットを固定
したことによって、模型の上下駆動に必要なパワーを大
幅に削減できる。また、カウンターウエイトを設け、可
動部重量を含む移動部重量に対し釣り合わすことによっ
て、模型の上下駆動に必要なパワーは、模型に生ずる空
気力と、ストラット中心まわりに発生する可動部の不釣
合モーメントによって作り出される摩擦力だけとなり、
駆動装置を低容量のものにでき、省エネルギー化が可能
となる。

【００３４】（４）さらに、装置が小型化で、スペース
の有効活用ができると共に、地下ピットを設ける大工事
が不要となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の風洞試験用模型支持装置の一実施例を
示す平面図、

【図２】図１に示す実施例の側面図、

【図３】図１に示す実施例の正面図、

【図４】従来の風洞試験用模型支持装置の一例を示す側
面図である。

【符号の説明】

１ 測定部カート ２ ストラット ３ 移動部 ４ 横滑り角（β）変角機構 ５ 迎角（α）変角機構 ６ スティング ７ 内挿式６分力天秤 ８ 模型 ９ カウンターウエイト １０ チェーン １１ スプロケット（方向変換用） １２ サーボモータ（含む減速機） １３，１４ 歯車

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 スティングの先端に天秤を介して装着さ
   れた模型を、測定部カート内計測位置に設置するための
   風洞試験用模型支持装置において、前記測定部カートの
   上壁および下壁にそれぞれ上端および下端を固定して立
   設したストラットと、前端部に前記スティングの後端を
   連結し前記ストラットと摺動し前記測定部カート内を上
   下動する移動部と、前記移動部の上部および下部にそれ
   ぞれ一端が連結され前記測定部カートの上壁および下壁
   から外部へ誘導された他端にカウンターウエイトを介装
   した駆動索と、前記駆動索を駆動し前記移動部を上下動
   させる駆動装置とからなることを特徴とする風洞試験用
   模型支持装置。